T細胞共同刺激性ポリペプチド、モノクローナル抗体、ならびにその製法および使用
【課題】T細胞を共同刺激する生物学的活性を有するポリペプチドの提供。
【解決手段】T細胞を共同刺激する生物学的活性を有するポリペプチド(8F4分子)、ならびにその8F4分子に対するモノクローナル抗体、およびそのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞、特に免疫系が関与する疾患の予防または治療のための、開示された8F4ポリペプチドの生物学的活性を阻害する物質、特にモノクローナル抗体、天然もしくは合成リガンド、アゴニストもしくはアンタゴニストの医薬としての使用。
【解決手段】T細胞を共同刺激する生物学的活性を有するポリペプチド(8F4分子)、ならびにその8F4分子に対するモノクローナル抗体、およびそのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞、特に免疫系が関与する疾患の予防または治療のための、開示された8F4ポリペプチドの生物学的活性を阻害する物質、特にモノクローナル抗体、天然もしくは合成リガンド、アゴニストもしくはアンタゴニストの医薬としての使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、T細胞を共同刺激する生物学的活性を有するポリペプチド(8F4分子)に関する。本発明はさらに、8F4分子に対するモノクローナル抗体、およびそのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞に関する。加えて本発明は、医薬として、本発明のポリペプチド8F4の生物学的活性を阻害する物質、特にモノクローナル抗体、天然もしくは合成リガンド、アゴニストもしくはアンタゴニストの使用に関する。詳しくは、本発明は、免疫系が関与する疾患の予防または治療、特には自己免疫疾患の治療および臓器移植に伴う拒絶反応の予防を目的とするこれらの物質の使用に関する。本発明は加えて、特に免疫系が関与する疾患の予防または治療、特には癌、エイズ、喘息性疾患またはHCVもしくはHBV感染のような慢性的ウイルス病の治療を目的とした医薬としての8F4分子または8F4分子を含む細胞の使用に関する。さらに本発明は、免疫系が関与する疾患の診断のための、本発明のポリペプチドを特異的に認識する物質、特にモノクローナル抗体、天然もしくは合成リガンド、アゴニストもしくはアンタゴニストの使用に関する。詳しくは、本発明は、ELISA検出法、フローサイトメトリーもしくはウエスタンブロット、放射性免疫学的検出法、比濁分析法または組織化学的染色による診断に関する。
【0002】
Tリンパ球は、それらのT細胞受容体を介して「抗原提示細胞」、例えば樹状細胞、B細胞およびマクロファージによって提示されたそれらの抗原を認識する。しかしながら、T細胞受容体単独による抗原の認識は、Tリンパ球の適切な活性化には不十分である場合が多い。このためTリンパ球の表面の他の受容体によるさらなる同時的刺激(以下、「共同刺激」ともいう)が必要となる。これらの受容体分子の1つにいわゆるCD28受容体があり、これは共同刺激性分子B7によって刺激される。これらの「共同刺激性」分子、例えばCD28が有効であれば、T細胞受容体によって抗原が認識された後にT細胞の活性化は十分なレベルに達する。このように完全に活性化された後、T細胞はその表面でさらなる分子、例えばCD25、CD69、CD71を発現し、伝達物質として機能する例えばIL−2やIFN−γなど、多くのサイトカインを合成する。これらのさらなる表面分子とサイトカインの両者は、T細胞が免疫系の他の細胞と情報交換をするための働く。活性化されたT細胞はこのさらなる表面分子とサイトカインによって完全な抗原特異的免疫防御を指示する。細胞傷害性細胞(「キラー細胞」)の生成およびB細胞による抗原特異的抗体の生成は双方ともこのようにして制御される。細胞傷害性細胞ならびに特異的に形成される抗体は、体内に入るウイルスまたは細菌性の病原体を排除する。しかしながら、この免疫応答が及びすぎて免疫系が身体の自己細胞に対して向けられることもある。これにより「自己免疫疾患」、例えばとりわけリウマチ様関節炎、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎が起こる。抗原により活性化されたT細胞と免疫系の他の細胞との共同の必須部位の1つとして、扁桃腺をはじめとする二次的なリンパ器官がある。そこでは樹状細胞によって提示された抗原によりTリンパ球が活性化され、かつ、Tリンパ球がB細胞と相互作用する。この相互作用を通じ、B細胞は分化段階がいくつか介在した後にIgMおよび遺伝子IgG型の抗原特異的抗体を分泌する。
【0003】
最もよく特徴づけられ、またこれまでに最も有効なものに属する共同刺激性分子はCD28表面分子(以下、CD28受容体またはCD28と呼ばれる)であり、これはT細胞の大フラクションで構成的に発現する。in vitroにおいてCD28により共同刺激すると、T細胞受容体により抗原が認識された後、サイトカイン、例えばIL−2およびIFN−γの分泌が極めて高くなり、T細胞と他の免疫細胞、例えばBリンパ球との相互作用に必要なCD25、CD69、CD71のような細胞表面分子の発現の顕著なアップレギュレーションが起こる;Chambers and Allison, Current Opinion in Immunology 9 (1997), 396, 404を参照。CD28受容体による共同刺激はまた、Tリンパ球の増殖を顕著に増加させることができる。さらに、CD28受容体による共同刺激はT細胞のB細胞を制御する機能を至適化して抗体の分泌を高める。
【0004】
CD28受容体の機能が無効になると、免疫防御の機能が劇的に低下する。このことは、相同組換えによりCD28遺伝子が破壊されたトランスジェニックマウス(いわゆる「CD28ノックアウト」)によって示されている。抗原特異的T細胞の活性化のこうした破壊により共同刺激が欠如することとなる。このことは次ぎに、T細胞機能の攪乱、すなわちT細胞増殖の低下、および種々のサイトカインの合成の劇的な低下をもたらす。共同刺激の欠如は結果として抗原特異的免疫防御の機能を低下させることとなる。このようにとりわけBリンパ球による抗原特異的IgG1およびIgG2抗体の形成は、CD28の欠如により正常レベルの10%まで低下する;Shahinian et al., Science 262 (1993), 609-612; Lucas et al., Journal of Immunology 154 (1995), 5757-5768を参照。また、in vitroでCD28による共同刺激によりエイズウイルスがTリンパ球に侵入するのを防ぐこともできる;Riley et al., Journal of Immunology 158 (1997), 5545-5553を参照。これに対応するin vivoにおける実験はまだ行われていない。CD28はin vivoにおいて重大な副作用をもたらし得る多数のサイトカイン遺伝子のスイッチを入れる。可溶性CTLA−4免疫グロブリン分子によるCD28受容体のブロックは、移植された腎臓の拒絶反応を防ぐためにサルのモデルで首尾良く使用されている。この場合、CTLA−4はCD40リガンド分子に対する抗体と組み合わせて使用されてきた;Kirk et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94 (1997) 8789-8794を参照。しかしながら、CD28はTリンパ球で構成的に発現するので、CD28受容体のブロックは総てのTリンパ球に影響を及ぼし、すでに活性化されたものには影響を及ぼさない。
【0005】
このように、活性化されたTリンパ球でしか発現しない共同刺激性表面分子が必要とされている。従って本発明は、Tリンパ球の中心機能に対して強い共同刺激作用を有する表面分子を活性化T細胞上に提供するという目的に基づいている。本発明のもう1つの目的は、例えば共同刺激性表面分子に対するモノクローナル抗体、その表面分子の天然もしくは合成リガンド、アゴニストもしくはアンタゴニストといった物質を提供することである。
【0006】
第1の具体例では、本発明は、T細胞の共同刺激の生物学的活性を有するポリペプチドであって、a)活性化されたCD4+およびCD8+Tリンパ球で生じるが、休止中の、もしくは活性化されたB細胞、顆粒球、単球、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)または樹状細胞では生じないこと、およびb)二量体であり、非還元ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で測定した場合に約55〜60kDa(キロダルトン)の分子量を有し、その2つのポリペプチド鎖が還元SDS−PAGEで測定した場合に約27kDaおよび約29kDaの分子量を有することを特徴とするポリペプチドに関する。
【0007】
本発明のポリペプチド(以下、8F4分子または8F4とも呼ばれる)は、Tリンパ球、特にCD4+およびCD8+T細胞の双方が活性化された後にのみ発現される。非還元SDS−PAGEでは、8F4分子は約55〜60kDa(キロダルトン)の間の分子量を有する。この8F4分子は2つのペプチド鎖からなり、その2つのペプチド鎖は還元SDS−PAGEでは約27および29kDaの分子量を有する。8F4抗原は扁桃腺およびリンパ節のリンパ組織、特に胚細胞の中心部、抗体の生成時にTリンパ球とBリンパ球が相互作用する部位において活性化されたTリンパ球で組織学的に明らかに検出できる。ex vivoに単離された扁桃T細胞は約50〜80%が8F4抗原に関して陽性であり、活性化の進行の徴候を示す。8F4分子は休止中の、または活性化されたB細胞、顆粒球、単球、NK細胞および樹状細胞では検出されない。
【0008】
8F4分子の重要な生物学的活性は、Tリンパ球に対するその共同刺激活性でである。この共同刺激活性はLinsley ea al., Journal of Experimental Medicine 176 (1992), 1595-604の方法によって測定できる。8F4分子の共同刺激活性は、免疫系による抗原認識の中枢増強要素として同定されているCD28分子の共同刺激活性と類似している。しかしながら8F4分子は多くの点でCD28とは異なっている。例えば、T細胞の表面における8F4分子の発現には誘導を要するが、CD28は構成的に発現する。また機能において検出可能な明瞭な違いもあり、CD28による共同刺激は多くのリンパ球、とりわけインターロイキン−2(IL−2)の過剰発現をもたらす。8F4による共同刺激もまた、リンホカインの分泌を増強するが、IL−2の分泌は増強しない。このように8F4分子の共同刺激活性は、CD28分子の活性とは異なっている。8F4による共同刺激は総てのサイトカイン遺伝子のスイッチを入れることはなく、in vivoにおける8F4による共同刺激は、例えばCD28受容体を介する共同刺激と比較すると有利である。さらに、8F4分子の誘導、発現、発現部位および機能は、共同刺激活性を有する他の公知の分子のいずれとも異なっている。
【0009】
本発明の8F4分子は、Tリンパ球の中枢機能に強い共同刺激作用を有する、活性化されたT細胞上の新規な表面分子である。in vivoにおける発現は、とりわけウイルスおよび細菌に対する体液性および細胞性免疫防御の範囲で、T細胞と、B細胞または樹状細胞のような免疫系の他の細胞との共同作用における8F4分子の必須の関与を示している。
【0010】
発現の後、8F4分子はin vitroにおいてTリンパ球の種々の機能に強い共同刺激作用を有する:
1.Tリンパ球の増殖の顕著な増強
2.Tリンパ球によるある種のサイトカイン合成の顕著な増強
3.Tリンパ球上およびTリンパ球内での制御分子、例えば表面分子およびサイトカインの極めて高い発現
4.T細胞によって誘導されるB細胞による抗体形成(IgMおよびIgG)における顕著な向上。
【0011】
さらに本発明は、T細胞の共同刺激の生物学的活性を有し、かつ、図15(配列番号2)の199個のアミノ酸を含んでなる配列、またはその生物学的に有効な断片もしくは類似体と少なくとも40%の相同性を示すアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。生物学的に有効な断片または類似体とは、T細胞リンパ球に対して同様に共同刺激作用を示すか、あるいは少なくともブロックの特徴の生物学的作用示す断片または類似体をいう。図15(配列番号2)の199個のアミノ酸を含んでなる配列と少なくとも60%の相同性を示すポリペプチド、またはその生物学的に有効な断片もしくは類似体が好ましい。特に好ましい具体例では、本発明のポリペプチドは、図15(配列番号2)の199個のアミノ酸を含んでなる配列と少なくとも80%の相同性を示すアミノ酸配列、またはその生物学的に有効な断片もしくは類似体を含んでなる。
【0012】
特に好ましいポリペプチドはT細胞を共同刺激する生物学的活性を有し、かつ図15に示されるアミノ酸配列(配列番号2)、またはその生物学的に有効な断片もしくは類似体を含んでなる。
【0013】
本発明には8F4分子の対立遺伝子変異体、断片および類似体が含まれる。これらの変異体には、天然に存在している対立遺伝子変異体、1以上のアミノ酸が異なるアミノ酸で置換された置換類似体、1以上のアミノ酸を欠失した欠失類似体および、1以上のアミノ酸が付加された付加類似体が含まれる。1以上のアミノ酸の欠失および付加はポリペプチドの内部領域か、またはアミノもしくはカルボキシル末端のいずれで行われてもよい。
【0014】
異種ポリペプチドと融合した本発明のポリペプチドも同様に包含される。
【0015】
もう1つの具体例では、本発明は、本発明のポリペプチドまたはその生物学的に有効な断片もしくは類似体をコードするDNA配列に関する。
【0016】
これらのDNA配列には、配列番号1で示される配列(図16)ならびに生物学的活性を有する対立遺伝子変異体、断片および類似体が含まれる。
【0017】
好ましいDNA配列は、T細胞を共同刺激する生物学的活性を有するポリペプチドをコードし、その配列は:
a)配列番号1で示されるDNA配列(図16)、およびその相補鎖
b)(a)の配列とハイブリダイズするDNA配列
c)遺伝子コードの縮重により(a)および(b)の配列とハイブリダイズするDNA配列
からなる群から選択される。前記のDNA配列はストリンジェントな条件下でともにハイブリダイズすることが好ましい。
【0018】
またこれらのDNA配列を含んでなるベクター、およびこれらのベクターで形質転換されるか、またはトランスフェクトされた宿主細胞も提供される。
【0019】
もう1つの具体例では、本発明は8F4分子に対するモノクロナール抗体に関する。本発明のモノクロナール抗体は、Milstein and Kohler, Nature 256 (1975), 495-497により記載されている常法で調製できる。本発明のモノクロナール抗体は特に、in vitroでホルボールミリステートアセテート(PMA)およびイオノマイシン(「2シグナル系」)で24時間活性化させたT細胞でマウスを免疫化することにより調製できる。免疫化したマウスの脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合させる。8F4特異的モノクロナール抗体は休止中のものではなく、2つのシグナルで活性化されたTリンパ球を認識することにより同定される。さらに8F4特異的抗体は、常法で行われる検出法において1つのシグナル(PMAまたはイオノマイシンのいずれか)で刺激されたT細胞を染色しない。8F4特異的抗体は典型的な扁桃T細胞の染色パターンを示し、活性化されたTリンパ球の非還元SDS−PAGEでは約55〜60kDa、および還元SDS−PAGEで約27kDaおよび約29kDaの抗原を認識する。
【0020】
もう1つの具体例では、本発明は、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞に関する。
【0021】
もう1つの具体例では、本発明は、本発明のポリペプチド8F4の生物学的活性を阻害する物質の医薬としての使用に関する。本発明の8F4分子のモノクロナール抗体、天然または合成リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストの使用が特に好ましい。これらの物質は免疫系が関与する疾患の予防または治療、特には自己免疫疾患の治療、または臓器移植における拒絶反応の予防を目的とした医薬として使用され得る。8F4抗原のその受容体との相互作用のブロックは予め活性化されたTリンパ球にのみ影響を及ぼすため、例えば臓器拒絶の予防に適している。本発明のもう1つの具体例は、本発明のポリペプチドの医薬としての使用に関する。本発明のポリペプチドは、特に免疫系が関与する疾患の予防または治療、特には癌、エイズ、喘息性疾患またはHCVもしくはHBV感染などの慢性ウイルス病の治療を目的として使用され得る。
【0022】
同様に本発明のポリペプチドは、これらの細胞が例えばそのポリペプチドを構成的に発現するように常法で細胞に導入することができる。例えばそのポリペプチドをコードする核酸配列、またはそのポリペプチド、例えばcDNAまたはゲノムDNA、プロモーター、エンハンサーおよび核酸配列の発現に必要な他のエレメントを含んでなるベクターを細胞に挿入することができる。図16で示された8F4 cDNA(2641個のヌクレオチド)(配列番号1)またはその断片もしくは誘導体を本発明のポリペプチドまたはその断片の発現に使用することが好ましい。
【0023】
本発明のポリペプチドはまた、例えばリポソームにより、後にその細胞表面にポリペプチドを形成する細胞へ導入することができる。これらの細胞は本発明に従い医薬として、特に多くの慢性感染症、例えばエイズ、喘息性疾患、または慢性ウイルス性肝炎(例えばHCV、HBV感染)の枠組み内にあるとき、ヒト免疫系の正確な調節を回復させるために、または例えば癌の治療のようなin viroまたはin vivoで免疫系を刺激するために使用できる。
【0024】
もう1つの具体例では、本発明のポリペプチドを特異的に認識する物質が、免疫系が関与する疾患を診断するために使用される。この物質には特に、モノクロナール抗体、天然または合成リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストが包含される。例えばELISA検出法、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、放射性免疫検定法、比濁分析法または組織化学的染色が診断のために使用可能である。本発明のポリペプチドを認識する物質はまた核酸配列もまた含んでおり、それはハイブリダイゼーションおよび/または核酸(RNA,DNA)増幅(例えば、PCR)に使用することが好ましい。
【0025】
もう1つの具体例では、本発明は、本発明のポリペプチドのT細胞へのシグナル変換経路に正または負の影響を及ぼす(調節する)物質、およびこれらの物質の医薬としての使用に関する。
【0026】
もう1つの具体例では、本発明はT細胞表面の本発明のポリペプチドのアップレギュレーションを妨げる物質、およびその医薬としての使用に関する。
【0027】
もう1つの具体例では、本発明のポリペプチドまたはその断片はトランスジェニック動物により発現される。
【0028】
もう1つの具体例では、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子のスイッチが切られた(「ノックアウト」)トランスジェニック動物を包含する。
【0029】
以下、実施例により本発明を説明するが、それらに限定するものではない。
【0030】
実施例1:8F4抗体の作製
Balb/cマウスを、予めホルボールエステル、ホルボールミリステートアセテート(PMA)(Sigma,Deisenhofen)33ng/mlおよびCa2+イオノフォア、イオノマイシン(Sigma,Deisenhofen)20ng/mlで24時間活性化(いわゆる、「2−シグナル活性化」)させたヒトT細胞で免疫化した。3度追加抗原投与した後、マウスの脾臓細胞を骨髄腫P3X63Ag8.653(ATCC CRL−1580)と融合させ、標準法により抗体分泌ハイブリドーマを作製した;Peters and Baumgarten, Monoclonal Antibodies, Springer, Heidelberg, 1992を参照。得られた抗体をフローサイトメトリーにおいて休止中のT細胞に対して活性化されたものについてスクリーニングした。活性化され(「2シグナル活性化」)かつ休止中のT細胞をハイブリドーマ上清とともにインキュベートし、次いで蛍光標識二次抗体で標識した;Shapiro, Practical Flow Cytometry, Wiley-Liss, New York, 1995を参照。T細胞表面において1つの薬剤単独によってではなく、優先的にPMAおよびCa2+イオノフォア、イオノマイシンによってのみ誘導された分子(2シグナル分子)を認識する抗体だけをさらなる精製により選択した。得られた抗体をフローサイトメトリーにおいてT細胞の活性化分子に対する既知の抗体(表1参照)との類似点または相違点について調べた。これについての基準は前記の「2シグナル依存性」のほか、刺激されたT細胞における誘導の速度論および様々な細胞系における発現であった。
【0031】
実施例2:8F4抗原の免疫沈降
活性化されたヒトT細胞由来の分子の表面を125Iで標準法によりヨウ素化し、抗体8F4で標準法により免疫沈降させた;Goding, Monoclonal Antibodies: Principle and Practice, Academic Press, London, 1996を参照。免疫沈降反応用の抗体をSchneider et al., Journal of Biological Chemistry 257 (1982), 10766-10769の方法によりprotein G(Pharmacia, Freiburgへ結合させた(8F4マトリックス)。このマトリックスをSchneider et al.により記載されるように洗浄した、前記参照。免疫沈降した8F4分子をSDS−PAGE(非還元および還元)により常法で分子量について解析した;Goding 、前記参照。
【0032】
実施例3:フローサイトメトリー
8F4を有するT細胞をフローサイトメトリーにおいて標準法により解析した;Shapiro, Practical Flow Cytometry, Wiley-Liss, New York, 1995を参照。
【0033】
具体例3.1:CD4+T細胞における8F4抗原誘導後のフローサイトメトリー。
末梢血由来のCD4+T細胞を様々な薬剤により常法で刺激し、8F4分子の発現をフローサイトメトリーにおいて常法で調べた。T細胞の活性化時間は種々の薬剤で24時間〜144時間の間とした。活性化モード:ホルボールミリステートアセテート(PMA;33ng/ml)、イオノマイシン(200ng/ml)、フィトヘマグルチニン(PHA 1.5mg/ml)、OKT3(CD3に対するモノクロナール抗体)、混合リンパ球反応(MLR,CD4+T細胞50,000とB細胞100,000間)、mAk9.3(CD28に対するモノクロナール抗体)、ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB,0.1ng/ml)。解析により、種々の刺激はT細胞の8F4分子の誘導に好適であるが、発現強度が異なっていることが示された。最も有効な刺激は、非常に有効な薬理学的薬剤であるPMAおよびイオノマイシンの他、例えばMLRの補助細胞または共同刺激性mAk9.3などの共同刺激状態を示すものである。
【0034】
具体例3.2:PMAおよびイオノマイシンでの活性化後のCD4+T細胞における8F4抗原誘導の速度論
末梢血由来のCD4+T細胞をPMA(33ng/ml)およびイオノマイシン(200ng/ml)により常法で刺激し、0,4,8,12,24および48時間後、8F4分子の発現をフローサイトメトリーにおいて常法で調べた。この分子は4時間後でのみ表面上で検出可能であり、比較的初期のクラスの活性化抗原に属する。48時間後の抗原でもさらに強い発現がある。
【0035】
具体例3.3:「混合リンパ球反応」において8F4の誘導に関与する分子を同定するためのフローサイトメトリー
末梢血由来のCD4+T細胞50,000を同種扁桃B細胞100,000と6日間同時培養し(37℃、5.2%CO2、96ウェル丸底プレートに10%FCSの入ったPRMI 200μl)、次いで8F4分子の発現をフローサイトメトリーで調べた。培養の開始時に種々の抗体(抗CD80、抗CD86、抗MHCII;総て10mg/ml)を培地に添加し、8F4誘導のこれら分子への依存性を試験した。8F4の発現はCD86/CD28の相互作用のブロックによってのみ阻害でき、CD80のブロックによっては阻害できない。この場合のブロック作用はMHCIIのブロックよりいっそう強いものである(正の調節)。
【0036】
具体例3.4:ヒト扁桃由来のTおよびB細胞の発現
種々の起源からの扁桃組織のTおよびB細胞を常法で精製し、8F4分子の発現をフローサイトメトリーにより調べた。B細胞ではシグナルが明らかに有意でなかったのに対し、扁桃T細胞の密度が約50〜80%の場合には8F4分子の発現がみられた。この場合、蛍光のレベルが異なり(それぞれ8F4が高いものと低いもの)、かつ種々の扁桃における発現が異なる2集団の同定が可能である。従って、例えばある扁桃は明らかに8F4の低い集団を示し、他の扁桃は明らかに8F4の高い集団を示す。
【0037】
具体例3.5:8F4分子の他の活性化マーカーとの同時発現
ヒト扁桃から精製したT細胞を、8F4分子の他の活性化マーカーとの同時発現について2色系フローサイトメトリーで解析した。扁桃において8F4はCD69と、ならびにCD45分子の変異体とともに同時発現する。この場合、8F4の高い細胞は明らかにCD45RO発現と相互関係があるが、一方8F4が陰性の細胞は表現型CD45RAを有する。CD45RAは主として、いわゆる「天然」T細胞により発現されるが、CD45ROはエフェクター細胞の機能に関与している。よって8F4+細胞は主として「成熟」T細胞である。CD45ROおよびCD45RAはCD45のイソ型である。
【0038】
実施例4:8F4陽性細胞の扁桃における局在性
扁桃組織の凍結切片をAPAAP手法(アルカリ性ホスファターゼ−抗アルカリ性ホスファターゼ)において標準法により8F4抗体で染色した。8F4+細胞は扁桃の胚中心で優先的に見られるが、扁桃のT細胞ゾーンの一部分でも見られた。
【0039】
実施例5:Tリンパ球の共同刺激
96ウェルプレートにヤギ抗マウスIg抗体(20μg/ml)を塗布し、洗浄して、抗CD3モノクロナール抗体OKT3(種々の希釈の腹水)および本発明の8F4抗体(2μg/ml)を添加した。OKMl抗体または2A11抗体(双方2μg/ml)をイソタイプの対照として用いた。
【0040】
具体例5.1:8F4により共同刺激された後のTリンパ球の活性化分子の発現の増強
末梢血由来の精製CD4+T細胞を種々の濃度のモノクロナール抗体OKT3、同時に8F4抗体または同じイソタイプの非特異的抗体により活性化した。比較として、既知の最も強い共同刺激性抗体の1つである抗CD28抗体−9.3により共同刺激を行った。CD3によっては最適に共同刺激されるものの、mAk8F4およびmAk9.3双方によってもなお共同刺激作用が認められる。最適下限のOKT3領域、すなわち共同刺激無しではT細胞の完全な活性化がなされ得ない領域では、両抗体は4〜100の因子によって他の活性化抗原の発現を高めることができ、抗CD28抗体の作用はOKT3の希釈度が非常に高いときでもなお認識できる。このことは極めて弱いOKT3による刺激では、8F4抗原はもはや細胞表面にもたらされず、そのためmAk 8F4のいずれかでは架橋できないということに帰すことができる。
【0041】
具体例5.2:8F4の共同刺激作用とCD28の共同刺激作用との比較
精製CD8+T細胞を最適下限濃度のモノクロナール抗体OKT3で51時間刺激した。使用した共同刺激物質は抗体8F4、抗体9.3(抗体CD28)およびイソタイプの対照(各2μg/ml)であった。刺激時間が完了した後、T細胞増殖速度を3H−チミジンの組み込みにより求めた。同時に行った培養では上清を除去し、サイトカイン ATAC/リンフォタクチンおよびIL−2の濃度を決定した。8F4およびCD28はIL−2合成に関して、互いに顕著に異なっている。CD28共同刺激により、先行技術にも記載されるように(Chambers and Allison, Current Opinion in Immunology 9 (1997), 396-404)IL−2の分泌が極めて多くなる。これに対し、8F4によるIL−2産生は検出限界以下である。しかしながら、増殖については2つの混合物で比較できる、よってT細胞の自己分泌増殖は8F4の共同刺激における他の因子に帰すべきであろう。この2つの抗体はリンフォカインATACの分泌に関する共同刺激作用においてほとんど全く差がない。
【0042】
実施例6:8F4により共同刺激されたT細胞との相互作用後にB細胞によって合成された免疫グロブリンの測定
96ウェルプレートをヤギ抗マウスIg抗体(20μg/ml)で被覆し、抗CD3モノクローナル抗体OKT3(1:500〜1:80,000腹水)および本発明の8F4抗体(2μg/ml)を入れた。OKM1抗体または2A11抗体をイソタイプ対照として使用した。ある実験では、比較のためにCD28特異的抗体(「9.3」)を用いて共同刺激を行った;Hara et al., Journal of Experimental Medicine 161 (1985), 1513-1524を参照。末梢血由来の50,000個の精製した(Magnetbeads, Dynal, Hamburg)CD4+T細胞(純度>95%)および25,000個の同種扁桃B細胞(ヒツジ赤血球とロゼットを形成するT細胞による負の選抜、純度96%)をこのように予め処理した培養プレートの各ウェルにピペットで入れ、8日間共存培養した。この後、上清を採取してIgMおよびIgG型の分泌免疫グロブリンの濃度を常法にてELISA法で分析した;Nishioka and Lipsky, Journal of Immunology 153 (1994), 1027-1036を参照。
【0043】
具体例6.1:T細胞の共同刺激後のB細胞によるIgMおよびIgG型の抗体合成の増強
末梢血由来の精製したCD4+T細胞を扁桃由来の同種B細胞とともに常法で8日間共存培養した。OKT3抗体によるT細胞の最適下限刺激では、8F4によるT細胞の共同刺激はIgMおよびIgG型免疫グロブリンの分泌を40だけ増強する。
【0044】
実施例7:8F4による共同刺激後の末梢T細胞の活性化誘導性アポトーシスの阻害
末梢T細胞(常法においてナイロンウール付着によって精製した)をPHA(1.5mg/ml)で20時間刺激し、IL−2とともに6日間培養した。次いで、細胞をmAK 8F4(2μg/ml)による共同刺激を伴い、または伴わずにOKT3で再刺激した。フローサイトメトリー(FACS)においてヨー化プロピジウムでDNAを染色することによってアポトーシスを測定した。T細胞受容体複合体を介した最適下限の刺激を伴う8F4による共同刺激は、アポトーシス細胞の割合を4だけ減少できる。
【0045】
実施例8:8F4タンパク質をコードするcDNAのクローニング
フローサイトメトリーにおいて蛍光色素を結合させた8F4抗体で染色することによって、8F4抗原を構成的に発現する細胞系統(MOLT−4V)を同定した(図11)。MOLT−4V系統はヒトT細胞系統MOLT−4の変異体である(American Type Culture Collection(ATCC) CRL−1582)。
【0046】
この細胞系統をモノクローナル抗体を用いる8F4抗原の予備精製に使用した。
細胞を回転培養瓶中で大量培養し(150l)、遠心分離により回収して溶解緩衝液(50mM トリス、pH8.0、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM PMSF(Sigma、Deisenhofen)、1% NP−40(Boehringer, Mannheim))を用いて細胞性タンパク質を抽出した。細胞核および他の不溶性成分を超遠心分離によって除去した。このようにして得た細胞溶解物をセファロースCL4−B(Pharmacia, Freiburg)とともに2時間プレインキュベートしてセファロースに非特異的に結合するタンパク質を除去した。次いで前記実施例2に記載の8F4免疫親和性マトリックスとともにインキュベーションを行った(4℃で4時間)。マトリックスをカラムに詰め、次いで非特異的に結合しているタンパク質の完全な除去を行う条件(1.50mM トリス、pH8.0、300mM NaCl、1mM EDTA、1mM PMSF、0.5% NP−40;2.50mM トリス、pH8.0、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM PMSF、0.5% NP−40、0.1% SDS;3.0.2M グリシン pH4.0、0.5% CHAPS(Merck, Darmstadt))下で数回洗浄した。0.2M グリシン、pH2.5、0.5% CHAPSを用いてマトリックスから8F4抗原を溶出させた。溶出液を限外濾過(Amicon Centricon 10, Millipore, Eschborn)によって濃縮した。
【0047】
8F4分子のさらなる精製を実施するために、ニ次元ゲル電気泳動(非還元/還元)において分子のニ量体構造(図1を参照)を利用した。ほとんどのタンパク質は単量体として生じるので、それらがゲル電気泳動においては対角線上に移動するのに対し、8F4分子は第1の次元(非還元)では55〜60kDaに、また第2の次元(還元)では27および29kDaに移動する(図12)。
【0048】
予備分画のために、各場合において20×109細胞からの免疫沈降物を図12に関して前記に記載のように調製し、ニ次元ゲル電気泳動で分画し、ゲルをクマシーブルーG250(Biorad, Munich)で染色して図12において示された領域をゲルから個々に切り出した(それぞれ8F4−27kDaおよび8F4−29kDa)。
【0049】
ペプチドのマイクロシーケンシングのために、各場合においてゲル4片からのタンパク質をトリプシンで消化してゲルから溶出させた。トリプシンによって生じた断片をHPLCによって分画し、個々の画分をEdman分解(Groettrup, M. et al. (1996), Eur. J. Immunol., 26: 863-869に詳細に記載された方法)に付した。
【0050】
8F4−29kDaサンプルの配列決定により、既知のタンパク質の断片に加え、いずれのタンパク質データベースにおいてもヒトとの相関性が認められないペプチド配列XRLTDVTが示された。
【0051】
タンパク質配列のDNA配列への明確な逆翻訳は可能でない。従って前記のペプチド配列の、17個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドへの逆翻訳は結果として2048通りの組合せを生ずる。しかしながら、特殊な方法(Wozney, J.M. (1990), Methods Enzymol. 182; 738-751)により縮重オリゴヌクレオチドを用いてcDNAバンクをスクリーニングすることは可能である。見出したペプチド配列をもとにして、2つのオリゴヌクレオチド(オリゴ1(配列番号3);MGN CTS ACN GAY GTN AC、512通りの組合せ;オリゴ2(配列番号4):MGN YTD ACN GAY GTN AC、1024通りの組合せ)を合成した。
【0052】
スクリーニングのために、タンパク質精製のためにも用いたMOLT−4V細胞系統からcDNAバンクを構築した。:
グアニジニウム/CsCl法(Chirgwin, J.M. et al. (1979), Biochemistry 18: 5294-5299)によって完全RNAを単離し、オリゴ−dT−セルロースカラム(Gibco BRL, Eggenstein)でmRNAを濃縮した。オリゴ−dT−プライマーを用いる市販のcDNA合成系(Gibco BRL, Eggenstein)を用いて、製造業者の使用説明書に従って第1および第2cDNA鎖の合成を行った。cDNAをEcoRIアダプターを介してLambda ZAPIIベクター(Stratagene, Heidelberg)に連結した。
【0053】
cDNAバンクを標準法(Vogeli, G, and kaytes, P.S. (1987), Methods Enzymol., 152: 407-515)によって平板培養し、ニトロセルロースフィルター(Optitran BA-S 85, Schleicher&Schuell, Dassel)上にLambda DNAを固定した。
【0054】
前記のオリゴヌクレオチドをT4ポリヌクレオチドキナーゼ(NEBL、Schwalbach)およびγ−32P ATP(NEN Du Pont、Brussels)を用いて放射性標識した(Wallace, R.B. and Miyata, C.G. (1987), Methods Enzymol.,152: 432-442)。
【0055】
3Mのテトラメチル塩化アンモニウム(Roth、Karlsruhe)を含む縮重オリゴヌクレオチドに関して記載された緩衝液(Wozney, J.M. (1990), Methods Enzymol, 182: 738-751)中、48℃でフィルターのハイブリダイゼーションを行った。洗浄温度を50℃とし、前記参照文献に記載のようにフィルターを洗浄した。X線フィルム上でのこれらのフィルターの露光により、100,000個の平板培養ファージ当たり約50個の陽性クローンが現れた(図13)。
【0056】
ベクターの製造業者(Stratagene, Heidelberg)によって記載された方法を用いるin vivo切り出しによって、それらをプラスミドベクターに導入することにより6個のクローンをさらに同定し、T3およびT7プライマーを用いて部分的に配列決定した(BigDyeターミネーターサイクルシークエンシングキット、Applied Biosystems, Foster City, USA)。1つのクローンは、求めたペプチド配列を翻訳時に正確に提供する配列を含んでいた。このクローンをノーザンブロットのハイブリダイゼーション(図14)に用いた(Kroczek, R.A. (1993), J. Chromatogr., 618, 133-145)。フローサイトメトリーによるモノクローナル抗体に対する研究から知られていたように、mRNAの発現パターンは8F4分子の発現に厳密に対応した。見出されたクローンは求めるcDNAの3’末端のみしか含んでいなかったので、5’側に対する断片を用いて完全な8F4cDNAを単離した。数個のクローンを両鎖に関して配列決定した。
【0057】
8F4cDNA(2641個のヌクレオチド)は図16および配列番号1で記載されている配列中に示されており、また図15および配列番号2で記載されている配列中に示されている199個のアミノ酸(ヌクレオチド68〜664)を有するタンパク質をコードする。cDNAバンク由来の数個の独立したクローンの配列決定により、本明細書に示される配列からのいくらかのずれが示されたが、これらは総て3’非翻訳領域中にある:
位置909−910:欠失
位置1631:T→C
位置2074:G→T
位置2440:G→C
位置2633:選択可能なポリアデニル化部位。
【0058】
表1:表1は使用した抗体(クローン)、それらの起源の供給源(供給源)、それらの特定の抗原に対する特異性(特異性)、および要すればそれらの標識化(標識)をまとめたものである。
【表1】
実施例で使用した抗血清および二次試薬は以下から購入した:Jackson Immuno Research Lab., USAからのFITC結合ヤギ抗マウスIg;Jackson Immuno Research Lab., USAからのPE結合ストレプトアビジン;Sigma, Deisenhofenからのウサギ抗マウスIg画分。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】活性化されたヒトT細胞由来の8F4抗原の免疫沈降反応の結果を示す図である。(a)還元ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE;12%ポリアクリルアミドゲル(PAAゲル))、(b)非還元SDS−PAGE(10%PAAゲル)。8F4マトリックスから抗原を溶出させる条件を示す。「SDS」はドデシル硫酸ナトリウムを意味し;「DTT」はジチオトレイトールを意味し、「Mr」は分子量を意味し、「kDa」はキロダルトンを意味する。
【図2a】CD4+T細胞のおける8F4抗原の誘導後のフローサイトメトリーの結果を示す図である。T細胞の活性化時間を括弧内に示す。「PMA」はホルボールミリステートアセテートを意味し;「PHA」はフィトヘマグルチニンを意味し;「OKT3」はCD3に対するモノクロナール抗体であり;「MLR」は混合リンパ球反応を意味し;「mAK9.3」はCD28に対するモノクロナール抗体であり;「SEB」はブドウ球菌エンテロトキシンBを意味する。
【図2b】フローサイトメトリーにおいてPMAおよびイオノマイシンで活性化させた後のCD4+T細胞の8F4抗原誘導の速度論についての結果を示す図である。免疫蛍光(log)は細胞数に対してプロットされている。
【図3】混合リンパ球反応における8F4の誘導に関与している分子の同定についてのフローサイトメトリーの結果を示す図である。「bio」はビオチン化された抗体を意味する。
【図4】扁桃における8F4陽性細胞の局在性に関する組織化学的研究の結果を示す図である。
【図5】フローサイトメトリーにおけるヒト扁桃由来TおよびB細胞の8F4の発現解析の結果を示している。「bioPE」はビオチン化された抗体およびストレプトアビジン−フィコエリトリン二次試薬を意味する。
【図6】フローサイトメトリーにおける8F4分子の他の活性化マーカー(CD69,CD45)との同時発現を示す図である。
【図7】8F4により共同刺激された後のTリンパ球の活性化分子の発現の高まりを図示している。白丸(○)は8F4抗体を示し;三角(▲)は同じイソタイプの非特異的抗体を示し;黒丸(●)抗CD28抗体9.3を示している。
【図8】8F4の共同刺激作用とCD28の共同刺激作用との比較を図示している。「mAk」はモノクロナール抗体を意味し;「ATAC」は「活性化により誘導されたT細胞誘導および化学運動性関連」を意味し;「cpm」は毎分の放射性放出を意味する。
【図9】T細胞の共同刺激後のB細胞によるIgMおよびIgG型の抗体の合成の増強を図示している。「ng」はナノグラムを意味し;「ml」はミリリットルを意味し;「mAk」はモノクロナール抗体を意味する。
【図10】8F4による共同刺激後の周辺T細胞の活性化により誘導されるアポトーシスの阻害を図示している。
【図11】MOLT−4V細胞系の8F4抗原の発現を示している。MOLT−4V細胞をフルオレセインで標識された8F4抗体(8F4−FITC)で染色し、フローサイトメトリーで調べた(白抜きのライン、イソタイプの対照(塗りつぶしたライン)との比較)。
【図12】二次元ゲル電気泳動を図示している。300x106細胞からのMOLT−4V細胞溶解物を記載のように免疫沈降させた。溶出液を非還元SDS−PAGE(10%PAA)で分画し、60kDa付近の領域をゲルから切り取った。8F4分子のジスルフィド架橋を還元するために、ゲル片を5.3M尿素、0.5M Tris、pH8.0、1%SDS、1%β−メルカプトエタノール中50℃で1時間インキュベートし、分子中の遊離システイン残基を10mMヨードアセトアミド(Sigma,Deisenhofen)でアルカリ化した(37℃、30分)。ゲル片を1xSDS−PAGEサンプル緩衝液でさらに30分間平衡化し、12%PAA−SDSゲル上に(積層ゲル)のせた。電気泳動により分画した後、ゲルを銀染色した。8F4タンパク質の位置を表面のヨウ素処理により決定し(参照図1)、丸で印をつけた。(詳細に記載していない手順は総て標準法により行った、例えばWestermeier, R., Electrophoresis in Practice, VCH Verlagsgesellschaft, Weinheim, 1997を参照)。
【図13】オリゴ1(配列番号3)とのハイブリダイゼーションを示す図である。ニトロセルロースフィルター上に固定化したラムダクローンを実施例で記載されるようにオリゴ1とハイブリダイズさせた。X線フィルムに対する露光を示している(詳細)。
【図14】8F4 cDNAを用いたノーザンブロット解析を示す図である。ノーザンブロットと8F4 cDNAとのハイブリダイゼーションによりゲル中18S〜28SRNA間に移動するバンドが生ずる。図14は2シグナル依存性(前記参照)活性化抗原としての挙動:休止中のリンパ球(PBL)では発現せず、PMA+イオノマイシン活性化CD4+T細胞では強く発現され、かつPMAまたはイオノマイシン単独では明らかに発現が低下することを示している。図14は異なる刺激時間(ナイロンウールの付着により精製した、NTC)T細胞を(PMA+イオノマイシン)により刺激する)の後のmRNAの発現の強さを示している。このほか、最小限の発現しか示さないMOLT−4細胞系(ATCC CRL−1582)、離れて右側にクローニングに用いられ、かつ異なるシグナルを示すMOLT−4V。フローサイトメトリーによる解析では8F4発現が検出できない他の細胞系:CEM(ATCC CCL−119)、HUT−102(ATCC TIB−162)、HUT−78(ATCC TIB−161)、Jurkat(ATCC TIB−152)、DG75(Deutsche Sammlung von Mikrooganismen und Zellkulturen(DSMZ) ACC83)、Karpas 299(Fischer, P. et al., (1988), Blood, 72: 234-240)、DEL(Barbey, S. et al., (1990), Int. J. Cancer, 45: 546-553)由来のRNAも添加する。
【図15】ポリペプチド8F4のアミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。
【図16】8F4 cDNA(配列番号1)を示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、T細胞を共同刺激する生物学的活性を有するポリペプチド(8F4分子)に関する。本発明はさらに、8F4分子に対するモノクローナル抗体、およびそのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞に関する。加えて本発明は、医薬として、本発明のポリペプチド8F4の生物学的活性を阻害する物質、特にモノクローナル抗体、天然もしくは合成リガンド、アゴニストもしくはアンタゴニストの使用に関する。詳しくは、本発明は、免疫系が関与する疾患の予防または治療、特には自己免疫疾患の治療および臓器移植に伴う拒絶反応の予防を目的とするこれらの物質の使用に関する。本発明は加えて、特に免疫系が関与する疾患の予防または治療、特には癌、エイズ、喘息性疾患またはHCVもしくはHBV感染のような慢性的ウイルス病の治療を目的とした医薬としての8F4分子または8F4分子を含む細胞の使用に関する。さらに本発明は、免疫系が関与する疾患の診断のための、本発明のポリペプチドを特異的に認識する物質、特にモノクローナル抗体、天然もしくは合成リガンド、アゴニストもしくはアンタゴニストの使用に関する。詳しくは、本発明は、ELISA検出法、フローサイトメトリーもしくはウエスタンブロット、放射性免疫学的検出法、比濁分析法または組織化学的染色による診断に関する。
【0002】
Tリンパ球は、それらのT細胞受容体を介して「抗原提示細胞」、例えば樹状細胞、B細胞およびマクロファージによって提示されたそれらの抗原を認識する。しかしながら、T細胞受容体単独による抗原の認識は、Tリンパ球の適切な活性化には不十分である場合が多い。このためTリンパ球の表面の他の受容体によるさらなる同時的刺激(以下、「共同刺激」ともいう)が必要となる。これらの受容体分子の1つにいわゆるCD28受容体があり、これは共同刺激性分子B7によって刺激される。これらの「共同刺激性」分子、例えばCD28が有効であれば、T細胞受容体によって抗原が認識された後にT細胞の活性化は十分なレベルに達する。このように完全に活性化された後、T細胞はその表面でさらなる分子、例えばCD25、CD69、CD71を発現し、伝達物質として機能する例えばIL−2やIFN−γなど、多くのサイトカインを合成する。これらのさらなる表面分子とサイトカインの両者は、T細胞が免疫系の他の細胞と情報交換をするための働く。活性化されたT細胞はこのさらなる表面分子とサイトカインによって完全な抗原特異的免疫防御を指示する。細胞傷害性細胞(「キラー細胞」)の生成およびB細胞による抗原特異的抗体の生成は双方ともこのようにして制御される。細胞傷害性細胞ならびに特異的に形成される抗体は、体内に入るウイルスまたは細菌性の病原体を排除する。しかしながら、この免疫応答が及びすぎて免疫系が身体の自己細胞に対して向けられることもある。これにより「自己免疫疾患」、例えばとりわけリウマチ様関節炎、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎が起こる。抗原により活性化されたT細胞と免疫系の他の細胞との共同の必須部位の1つとして、扁桃腺をはじめとする二次的なリンパ器官がある。そこでは樹状細胞によって提示された抗原によりTリンパ球が活性化され、かつ、Tリンパ球がB細胞と相互作用する。この相互作用を通じ、B細胞は分化段階がいくつか介在した後にIgMおよび遺伝子IgG型の抗原特異的抗体を分泌する。
【0003】
最もよく特徴づけられ、またこれまでに最も有効なものに属する共同刺激性分子はCD28表面分子(以下、CD28受容体またはCD28と呼ばれる)であり、これはT細胞の大フラクションで構成的に発現する。in vitroにおいてCD28により共同刺激すると、T細胞受容体により抗原が認識された後、サイトカイン、例えばIL−2およびIFN−γの分泌が極めて高くなり、T細胞と他の免疫細胞、例えばBリンパ球との相互作用に必要なCD25、CD69、CD71のような細胞表面分子の発現の顕著なアップレギュレーションが起こる;Chambers and Allison, Current Opinion in Immunology 9 (1997), 396, 404を参照。CD28受容体による共同刺激はまた、Tリンパ球の増殖を顕著に増加させることができる。さらに、CD28受容体による共同刺激はT細胞のB細胞を制御する機能を至適化して抗体の分泌を高める。
【0004】
CD28受容体の機能が無効になると、免疫防御の機能が劇的に低下する。このことは、相同組換えによりCD28遺伝子が破壊されたトランスジェニックマウス(いわゆる「CD28ノックアウト」)によって示されている。抗原特異的T細胞の活性化のこうした破壊により共同刺激が欠如することとなる。このことは次ぎに、T細胞機能の攪乱、すなわちT細胞増殖の低下、および種々のサイトカインの合成の劇的な低下をもたらす。共同刺激の欠如は結果として抗原特異的免疫防御の機能を低下させることとなる。このようにとりわけBリンパ球による抗原特異的IgG1およびIgG2抗体の形成は、CD28の欠如により正常レベルの10%まで低下する;Shahinian et al., Science 262 (1993), 609-612; Lucas et al., Journal of Immunology 154 (1995), 5757-5768を参照。また、in vitroでCD28による共同刺激によりエイズウイルスがTリンパ球に侵入するのを防ぐこともできる;Riley et al., Journal of Immunology 158 (1997), 5545-5553を参照。これに対応するin vivoにおける実験はまだ行われていない。CD28はin vivoにおいて重大な副作用をもたらし得る多数のサイトカイン遺伝子のスイッチを入れる。可溶性CTLA−4免疫グロブリン分子によるCD28受容体のブロックは、移植された腎臓の拒絶反応を防ぐためにサルのモデルで首尾良く使用されている。この場合、CTLA−4はCD40リガンド分子に対する抗体と組み合わせて使用されてきた;Kirk et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94 (1997) 8789-8794を参照。しかしながら、CD28はTリンパ球で構成的に発現するので、CD28受容体のブロックは総てのTリンパ球に影響を及ぼし、すでに活性化されたものには影響を及ぼさない。
【0005】
このように、活性化されたTリンパ球でしか発現しない共同刺激性表面分子が必要とされている。従って本発明は、Tリンパ球の中心機能に対して強い共同刺激作用を有する表面分子を活性化T細胞上に提供するという目的に基づいている。本発明のもう1つの目的は、例えば共同刺激性表面分子に対するモノクローナル抗体、その表面分子の天然もしくは合成リガンド、アゴニストもしくはアンタゴニストといった物質を提供することである。
【0006】
第1の具体例では、本発明は、T細胞の共同刺激の生物学的活性を有するポリペプチドであって、a)活性化されたCD4+およびCD8+Tリンパ球で生じるが、休止中の、もしくは活性化されたB細胞、顆粒球、単球、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)または樹状細胞では生じないこと、およびb)二量体であり、非還元ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で測定した場合に約55〜60kDa(キロダルトン)の分子量を有し、その2つのポリペプチド鎖が還元SDS−PAGEで測定した場合に約27kDaおよび約29kDaの分子量を有することを特徴とするポリペプチドに関する。
【0007】
本発明のポリペプチド(以下、8F4分子または8F4とも呼ばれる)は、Tリンパ球、特にCD4+およびCD8+T細胞の双方が活性化された後にのみ発現される。非還元SDS−PAGEでは、8F4分子は約55〜60kDa(キロダルトン)の間の分子量を有する。この8F4分子は2つのペプチド鎖からなり、その2つのペプチド鎖は還元SDS−PAGEでは約27および29kDaの分子量を有する。8F4抗原は扁桃腺およびリンパ節のリンパ組織、特に胚細胞の中心部、抗体の生成時にTリンパ球とBリンパ球が相互作用する部位において活性化されたTリンパ球で組織学的に明らかに検出できる。ex vivoに単離された扁桃T細胞は約50〜80%が8F4抗原に関して陽性であり、活性化の進行の徴候を示す。8F4分子は休止中の、または活性化されたB細胞、顆粒球、単球、NK細胞および樹状細胞では検出されない。
【0008】
8F4分子の重要な生物学的活性は、Tリンパ球に対するその共同刺激活性でである。この共同刺激活性はLinsley ea al., Journal of Experimental Medicine 176 (1992), 1595-604の方法によって測定できる。8F4分子の共同刺激活性は、免疫系による抗原認識の中枢増強要素として同定されているCD28分子の共同刺激活性と類似している。しかしながら8F4分子は多くの点でCD28とは異なっている。例えば、T細胞の表面における8F4分子の発現には誘導を要するが、CD28は構成的に発現する。また機能において検出可能な明瞭な違いもあり、CD28による共同刺激は多くのリンパ球、とりわけインターロイキン−2(IL−2)の過剰発現をもたらす。8F4による共同刺激もまた、リンホカインの分泌を増強するが、IL−2の分泌は増強しない。このように8F4分子の共同刺激活性は、CD28分子の活性とは異なっている。8F4による共同刺激は総てのサイトカイン遺伝子のスイッチを入れることはなく、in vivoにおける8F4による共同刺激は、例えばCD28受容体を介する共同刺激と比較すると有利である。さらに、8F4分子の誘導、発現、発現部位および機能は、共同刺激活性を有する他の公知の分子のいずれとも異なっている。
【0009】
本発明の8F4分子は、Tリンパ球の中枢機能に強い共同刺激作用を有する、活性化されたT細胞上の新規な表面分子である。in vivoにおける発現は、とりわけウイルスおよび細菌に対する体液性および細胞性免疫防御の範囲で、T細胞と、B細胞または樹状細胞のような免疫系の他の細胞との共同作用における8F4分子の必須の関与を示している。
【0010】
発現の後、8F4分子はin vitroにおいてTリンパ球の種々の機能に強い共同刺激作用を有する:
1.Tリンパ球の増殖の顕著な増強
2.Tリンパ球によるある種のサイトカイン合成の顕著な増強
3.Tリンパ球上およびTリンパ球内での制御分子、例えば表面分子およびサイトカインの極めて高い発現
4.T細胞によって誘導されるB細胞による抗体形成(IgMおよびIgG)における顕著な向上。
【0011】
さらに本発明は、T細胞の共同刺激の生物学的活性を有し、かつ、図15(配列番号2)の199個のアミノ酸を含んでなる配列、またはその生物学的に有効な断片もしくは類似体と少なくとも40%の相同性を示すアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。生物学的に有効な断片または類似体とは、T細胞リンパ球に対して同様に共同刺激作用を示すか、あるいは少なくともブロックの特徴の生物学的作用示す断片または類似体をいう。図15(配列番号2)の199個のアミノ酸を含んでなる配列と少なくとも60%の相同性を示すポリペプチド、またはその生物学的に有効な断片もしくは類似体が好ましい。特に好ましい具体例では、本発明のポリペプチドは、図15(配列番号2)の199個のアミノ酸を含んでなる配列と少なくとも80%の相同性を示すアミノ酸配列、またはその生物学的に有効な断片もしくは類似体を含んでなる。
【0012】
特に好ましいポリペプチドはT細胞を共同刺激する生物学的活性を有し、かつ図15に示されるアミノ酸配列(配列番号2)、またはその生物学的に有効な断片もしくは類似体を含んでなる。
【0013】
本発明には8F4分子の対立遺伝子変異体、断片および類似体が含まれる。これらの変異体には、天然に存在している対立遺伝子変異体、1以上のアミノ酸が異なるアミノ酸で置換された置換類似体、1以上のアミノ酸を欠失した欠失類似体および、1以上のアミノ酸が付加された付加類似体が含まれる。1以上のアミノ酸の欠失および付加はポリペプチドの内部領域か、またはアミノもしくはカルボキシル末端のいずれで行われてもよい。
【0014】
異種ポリペプチドと融合した本発明のポリペプチドも同様に包含される。
【0015】
もう1つの具体例では、本発明は、本発明のポリペプチドまたはその生物学的に有効な断片もしくは類似体をコードするDNA配列に関する。
【0016】
これらのDNA配列には、配列番号1で示される配列(図16)ならびに生物学的活性を有する対立遺伝子変異体、断片および類似体が含まれる。
【0017】
好ましいDNA配列は、T細胞を共同刺激する生物学的活性を有するポリペプチドをコードし、その配列は:
a)配列番号1で示されるDNA配列(図16)、およびその相補鎖
b)(a)の配列とハイブリダイズするDNA配列
c)遺伝子コードの縮重により(a)および(b)の配列とハイブリダイズするDNA配列
からなる群から選択される。前記のDNA配列はストリンジェントな条件下でともにハイブリダイズすることが好ましい。
【0018】
またこれらのDNA配列を含んでなるベクター、およびこれらのベクターで形質転換されるか、またはトランスフェクトされた宿主細胞も提供される。
【0019】
もう1つの具体例では、本発明は8F4分子に対するモノクロナール抗体に関する。本発明のモノクロナール抗体は、Milstein and Kohler, Nature 256 (1975), 495-497により記載されている常法で調製できる。本発明のモノクロナール抗体は特に、in vitroでホルボールミリステートアセテート(PMA)およびイオノマイシン(「2シグナル系」)で24時間活性化させたT細胞でマウスを免疫化することにより調製できる。免疫化したマウスの脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合させる。8F4特異的モノクロナール抗体は休止中のものではなく、2つのシグナルで活性化されたTリンパ球を認識することにより同定される。さらに8F4特異的抗体は、常法で行われる検出法において1つのシグナル(PMAまたはイオノマイシンのいずれか)で刺激されたT細胞を染色しない。8F4特異的抗体は典型的な扁桃T細胞の染色パターンを示し、活性化されたTリンパ球の非還元SDS−PAGEでは約55〜60kDa、および還元SDS−PAGEで約27kDaおよび約29kDaの抗原を認識する。
【0020】
もう1つの具体例では、本発明は、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞に関する。
【0021】
もう1つの具体例では、本発明は、本発明のポリペプチド8F4の生物学的活性を阻害する物質の医薬としての使用に関する。本発明の8F4分子のモノクロナール抗体、天然または合成リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストの使用が特に好ましい。これらの物質は免疫系が関与する疾患の予防または治療、特には自己免疫疾患の治療、または臓器移植における拒絶反応の予防を目的とした医薬として使用され得る。8F4抗原のその受容体との相互作用のブロックは予め活性化されたTリンパ球にのみ影響を及ぼすため、例えば臓器拒絶の予防に適している。本発明のもう1つの具体例は、本発明のポリペプチドの医薬としての使用に関する。本発明のポリペプチドは、特に免疫系が関与する疾患の予防または治療、特には癌、エイズ、喘息性疾患またはHCVもしくはHBV感染などの慢性ウイルス病の治療を目的として使用され得る。
【0022】
同様に本発明のポリペプチドは、これらの細胞が例えばそのポリペプチドを構成的に発現するように常法で細胞に導入することができる。例えばそのポリペプチドをコードする核酸配列、またはそのポリペプチド、例えばcDNAまたはゲノムDNA、プロモーター、エンハンサーおよび核酸配列の発現に必要な他のエレメントを含んでなるベクターを細胞に挿入することができる。図16で示された8F4 cDNA(2641個のヌクレオチド)(配列番号1)またはその断片もしくは誘導体を本発明のポリペプチドまたはその断片の発現に使用することが好ましい。
【0023】
本発明のポリペプチドはまた、例えばリポソームにより、後にその細胞表面にポリペプチドを形成する細胞へ導入することができる。これらの細胞は本発明に従い医薬として、特に多くの慢性感染症、例えばエイズ、喘息性疾患、または慢性ウイルス性肝炎(例えばHCV、HBV感染)の枠組み内にあるとき、ヒト免疫系の正確な調節を回復させるために、または例えば癌の治療のようなin viroまたはin vivoで免疫系を刺激するために使用できる。
【0024】
もう1つの具体例では、本発明のポリペプチドを特異的に認識する物質が、免疫系が関与する疾患を診断するために使用される。この物質には特に、モノクロナール抗体、天然または合成リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストが包含される。例えばELISA検出法、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、放射性免疫検定法、比濁分析法または組織化学的染色が診断のために使用可能である。本発明のポリペプチドを認識する物質はまた核酸配列もまた含んでおり、それはハイブリダイゼーションおよび/または核酸(RNA,DNA)増幅(例えば、PCR)に使用することが好ましい。
【0025】
もう1つの具体例では、本発明は、本発明のポリペプチドのT細胞へのシグナル変換経路に正または負の影響を及ぼす(調節する)物質、およびこれらの物質の医薬としての使用に関する。
【0026】
もう1つの具体例では、本発明はT細胞表面の本発明のポリペプチドのアップレギュレーションを妨げる物質、およびその医薬としての使用に関する。
【0027】
もう1つの具体例では、本発明のポリペプチドまたはその断片はトランスジェニック動物により発現される。
【0028】
もう1つの具体例では、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子のスイッチが切られた(「ノックアウト」)トランスジェニック動物を包含する。
【0029】
以下、実施例により本発明を説明するが、それらに限定するものではない。
【0030】
実施例1:8F4抗体の作製
Balb/cマウスを、予めホルボールエステル、ホルボールミリステートアセテート(PMA)(Sigma,Deisenhofen)33ng/mlおよびCa2+イオノフォア、イオノマイシン(Sigma,Deisenhofen)20ng/mlで24時間活性化(いわゆる、「2−シグナル活性化」)させたヒトT細胞で免疫化した。3度追加抗原投与した後、マウスの脾臓細胞を骨髄腫P3X63Ag8.653(ATCC CRL−1580)と融合させ、標準法により抗体分泌ハイブリドーマを作製した;Peters and Baumgarten, Monoclonal Antibodies, Springer, Heidelberg, 1992を参照。得られた抗体をフローサイトメトリーにおいて休止中のT細胞に対して活性化されたものについてスクリーニングした。活性化され(「2シグナル活性化」)かつ休止中のT細胞をハイブリドーマ上清とともにインキュベートし、次いで蛍光標識二次抗体で標識した;Shapiro, Practical Flow Cytometry, Wiley-Liss, New York, 1995を参照。T細胞表面において1つの薬剤単独によってではなく、優先的にPMAおよびCa2+イオノフォア、イオノマイシンによってのみ誘導された分子(2シグナル分子)を認識する抗体だけをさらなる精製により選択した。得られた抗体をフローサイトメトリーにおいてT細胞の活性化分子に対する既知の抗体(表1参照)との類似点または相違点について調べた。これについての基準は前記の「2シグナル依存性」のほか、刺激されたT細胞における誘導の速度論および様々な細胞系における発現であった。
【0031】
実施例2:8F4抗原の免疫沈降
活性化されたヒトT細胞由来の分子の表面を125Iで標準法によりヨウ素化し、抗体8F4で標準法により免疫沈降させた;Goding, Monoclonal Antibodies: Principle and Practice, Academic Press, London, 1996を参照。免疫沈降反応用の抗体をSchneider et al., Journal of Biological Chemistry 257 (1982), 10766-10769の方法によりprotein G(Pharmacia, Freiburgへ結合させた(8F4マトリックス)。このマトリックスをSchneider et al.により記載されるように洗浄した、前記参照。免疫沈降した8F4分子をSDS−PAGE(非還元および還元)により常法で分子量について解析した;Goding 、前記参照。
【0032】
実施例3:フローサイトメトリー
8F4を有するT細胞をフローサイトメトリーにおいて標準法により解析した;Shapiro, Practical Flow Cytometry, Wiley-Liss, New York, 1995を参照。
【0033】
具体例3.1:CD4+T細胞における8F4抗原誘導後のフローサイトメトリー。
末梢血由来のCD4+T細胞を様々な薬剤により常法で刺激し、8F4分子の発現をフローサイトメトリーにおいて常法で調べた。T細胞の活性化時間は種々の薬剤で24時間〜144時間の間とした。活性化モード:ホルボールミリステートアセテート(PMA;33ng/ml)、イオノマイシン(200ng/ml)、フィトヘマグルチニン(PHA 1.5mg/ml)、OKT3(CD3に対するモノクロナール抗体)、混合リンパ球反応(MLR,CD4+T細胞50,000とB細胞100,000間)、mAk9.3(CD28に対するモノクロナール抗体)、ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB,0.1ng/ml)。解析により、種々の刺激はT細胞の8F4分子の誘導に好適であるが、発現強度が異なっていることが示された。最も有効な刺激は、非常に有効な薬理学的薬剤であるPMAおよびイオノマイシンの他、例えばMLRの補助細胞または共同刺激性mAk9.3などの共同刺激状態を示すものである。
【0034】
具体例3.2:PMAおよびイオノマイシンでの活性化後のCD4+T細胞における8F4抗原誘導の速度論
末梢血由来のCD4+T細胞をPMA(33ng/ml)およびイオノマイシン(200ng/ml)により常法で刺激し、0,4,8,12,24および48時間後、8F4分子の発現をフローサイトメトリーにおいて常法で調べた。この分子は4時間後でのみ表面上で検出可能であり、比較的初期のクラスの活性化抗原に属する。48時間後の抗原でもさらに強い発現がある。
【0035】
具体例3.3:「混合リンパ球反応」において8F4の誘導に関与する分子を同定するためのフローサイトメトリー
末梢血由来のCD4+T細胞50,000を同種扁桃B細胞100,000と6日間同時培養し(37℃、5.2%CO2、96ウェル丸底プレートに10%FCSの入ったPRMI 200μl)、次いで8F4分子の発現をフローサイトメトリーで調べた。培養の開始時に種々の抗体(抗CD80、抗CD86、抗MHCII;総て10mg/ml)を培地に添加し、8F4誘導のこれら分子への依存性を試験した。8F4の発現はCD86/CD28の相互作用のブロックによってのみ阻害でき、CD80のブロックによっては阻害できない。この場合のブロック作用はMHCIIのブロックよりいっそう強いものである(正の調節)。
【0036】
具体例3.4:ヒト扁桃由来のTおよびB細胞の発現
種々の起源からの扁桃組織のTおよびB細胞を常法で精製し、8F4分子の発現をフローサイトメトリーにより調べた。B細胞ではシグナルが明らかに有意でなかったのに対し、扁桃T細胞の密度が約50〜80%の場合には8F4分子の発現がみられた。この場合、蛍光のレベルが異なり(それぞれ8F4が高いものと低いもの)、かつ種々の扁桃における発現が異なる2集団の同定が可能である。従って、例えばある扁桃は明らかに8F4の低い集団を示し、他の扁桃は明らかに8F4の高い集団を示す。
【0037】
具体例3.5:8F4分子の他の活性化マーカーとの同時発現
ヒト扁桃から精製したT細胞を、8F4分子の他の活性化マーカーとの同時発現について2色系フローサイトメトリーで解析した。扁桃において8F4はCD69と、ならびにCD45分子の変異体とともに同時発現する。この場合、8F4の高い細胞は明らかにCD45RO発現と相互関係があるが、一方8F4が陰性の細胞は表現型CD45RAを有する。CD45RAは主として、いわゆる「天然」T細胞により発現されるが、CD45ROはエフェクター細胞の機能に関与している。よって8F4+細胞は主として「成熟」T細胞である。CD45ROおよびCD45RAはCD45のイソ型である。
【0038】
実施例4:8F4陽性細胞の扁桃における局在性
扁桃組織の凍結切片をAPAAP手法(アルカリ性ホスファターゼ−抗アルカリ性ホスファターゼ)において標準法により8F4抗体で染色した。8F4+細胞は扁桃の胚中心で優先的に見られるが、扁桃のT細胞ゾーンの一部分でも見られた。
【0039】
実施例5:Tリンパ球の共同刺激
96ウェルプレートにヤギ抗マウスIg抗体(20μg/ml)を塗布し、洗浄して、抗CD3モノクロナール抗体OKT3(種々の希釈の腹水)および本発明の8F4抗体(2μg/ml)を添加した。OKMl抗体または2A11抗体(双方2μg/ml)をイソタイプの対照として用いた。
【0040】
具体例5.1:8F4により共同刺激された後のTリンパ球の活性化分子の発現の増強
末梢血由来の精製CD4+T細胞を種々の濃度のモノクロナール抗体OKT3、同時に8F4抗体または同じイソタイプの非特異的抗体により活性化した。比較として、既知の最も強い共同刺激性抗体の1つである抗CD28抗体−9.3により共同刺激を行った。CD3によっては最適に共同刺激されるものの、mAk8F4およびmAk9.3双方によってもなお共同刺激作用が認められる。最適下限のOKT3領域、すなわち共同刺激無しではT細胞の完全な活性化がなされ得ない領域では、両抗体は4〜100の因子によって他の活性化抗原の発現を高めることができ、抗CD28抗体の作用はOKT3の希釈度が非常に高いときでもなお認識できる。このことは極めて弱いOKT3による刺激では、8F4抗原はもはや細胞表面にもたらされず、そのためmAk 8F4のいずれかでは架橋できないということに帰すことができる。
【0041】
具体例5.2:8F4の共同刺激作用とCD28の共同刺激作用との比較
精製CD8+T細胞を最適下限濃度のモノクロナール抗体OKT3で51時間刺激した。使用した共同刺激物質は抗体8F4、抗体9.3(抗体CD28)およびイソタイプの対照(各2μg/ml)であった。刺激時間が完了した後、T細胞増殖速度を3H−チミジンの組み込みにより求めた。同時に行った培養では上清を除去し、サイトカイン ATAC/リンフォタクチンおよびIL−2の濃度を決定した。8F4およびCD28はIL−2合成に関して、互いに顕著に異なっている。CD28共同刺激により、先行技術にも記載されるように(Chambers and Allison, Current Opinion in Immunology 9 (1997), 396-404)IL−2の分泌が極めて多くなる。これに対し、8F4によるIL−2産生は検出限界以下である。しかしながら、増殖については2つの混合物で比較できる、よってT細胞の自己分泌増殖は8F4の共同刺激における他の因子に帰すべきであろう。この2つの抗体はリンフォカインATACの分泌に関する共同刺激作用においてほとんど全く差がない。
【0042】
実施例6:8F4により共同刺激されたT細胞との相互作用後にB細胞によって合成された免疫グロブリンの測定
96ウェルプレートをヤギ抗マウスIg抗体(20μg/ml)で被覆し、抗CD3モノクローナル抗体OKT3(1:500〜1:80,000腹水)および本発明の8F4抗体(2μg/ml)を入れた。OKM1抗体または2A11抗体をイソタイプ対照として使用した。ある実験では、比較のためにCD28特異的抗体(「9.3」)を用いて共同刺激を行った;Hara et al., Journal of Experimental Medicine 161 (1985), 1513-1524を参照。末梢血由来の50,000個の精製した(Magnetbeads, Dynal, Hamburg)CD4+T細胞(純度>95%)および25,000個の同種扁桃B細胞(ヒツジ赤血球とロゼットを形成するT細胞による負の選抜、純度96%)をこのように予め処理した培養プレートの各ウェルにピペットで入れ、8日間共存培養した。この後、上清を採取してIgMおよびIgG型の分泌免疫グロブリンの濃度を常法にてELISA法で分析した;Nishioka and Lipsky, Journal of Immunology 153 (1994), 1027-1036を参照。
【0043】
具体例6.1:T細胞の共同刺激後のB細胞によるIgMおよびIgG型の抗体合成の増強
末梢血由来の精製したCD4+T細胞を扁桃由来の同種B細胞とともに常法で8日間共存培養した。OKT3抗体によるT細胞の最適下限刺激では、8F4によるT細胞の共同刺激はIgMおよびIgG型免疫グロブリンの分泌を40だけ増強する。
【0044】
実施例7:8F4による共同刺激後の末梢T細胞の活性化誘導性アポトーシスの阻害
末梢T細胞(常法においてナイロンウール付着によって精製した)をPHA(1.5mg/ml)で20時間刺激し、IL−2とともに6日間培養した。次いで、細胞をmAK 8F4(2μg/ml)による共同刺激を伴い、または伴わずにOKT3で再刺激した。フローサイトメトリー(FACS)においてヨー化プロピジウムでDNAを染色することによってアポトーシスを測定した。T細胞受容体複合体を介した最適下限の刺激を伴う8F4による共同刺激は、アポトーシス細胞の割合を4だけ減少できる。
【0045】
実施例8:8F4タンパク質をコードするcDNAのクローニング
フローサイトメトリーにおいて蛍光色素を結合させた8F4抗体で染色することによって、8F4抗原を構成的に発現する細胞系統(MOLT−4V)を同定した(図11)。MOLT−4V系統はヒトT細胞系統MOLT−4の変異体である(American Type Culture Collection(ATCC) CRL−1582)。
【0046】
この細胞系統をモノクローナル抗体を用いる8F4抗原の予備精製に使用した。
細胞を回転培養瓶中で大量培養し(150l)、遠心分離により回収して溶解緩衝液(50mM トリス、pH8.0、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM PMSF(Sigma、Deisenhofen)、1% NP−40(Boehringer, Mannheim))を用いて細胞性タンパク質を抽出した。細胞核および他の不溶性成分を超遠心分離によって除去した。このようにして得た細胞溶解物をセファロースCL4−B(Pharmacia, Freiburg)とともに2時間プレインキュベートしてセファロースに非特異的に結合するタンパク質を除去した。次いで前記実施例2に記載の8F4免疫親和性マトリックスとともにインキュベーションを行った(4℃で4時間)。マトリックスをカラムに詰め、次いで非特異的に結合しているタンパク質の完全な除去を行う条件(1.50mM トリス、pH8.0、300mM NaCl、1mM EDTA、1mM PMSF、0.5% NP−40;2.50mM トリス、pH8.0、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM PMSF、0.5% NP−40、0.1% SDS;3.0.2M グリシン pH4.0、0.5% CHAPS(Merck, Darmstadt))下で数回洗浄した。0.2M グリシン、pH2.5、0.5% CHAPSを用いてマトリックスから8F4抗原を溶出させた。溶出液を限外濾過(Amicon Centricon 10, Millipore, Eschborn)によって濃縮した。
【0047】
8F4分子のさらなる精製を実施するために、ニ次元ゲル電気泳動(非還元/還元)において分子のニ量体構造(図1を参照)を利用した。ほとんどのタンパク質は単量体として生じるので、それらがゲル電気泳動においては対角線上に移動するのに対し、8F4分子は第1の次元(非還元)では55〜60kDaに、また第2の次元(還元)では27および29kDaに移動する(図12)。
【0048】
予備分画のために、各場合において20×109細胞からの免疫沈降物を図12に関して前記に記載のように調製し、ニ次元ゲル電気泳動で分画し、ゲルをクマシーブルーG250(Biorad, Munich)で染色して図12において示された領域をゲルから個々に切り出した(それぞれ8F4−27kDaおよび8F4−29kDa)。
【0049】
ペプチドのマイクロシーケンシングのために、各場合においてゲル4片からのタンパク質をトリプシンで消化してゲルから溶出させた。トリプシンによって生じた断片をHPLCによって分画し、個々の画分をEdman分解(Groettrup, M. et al. (1996), Eur. J. Immunol., 26: 863-869に詳細に記載された方法)に付した。
【0050】
8F4−29kDaサンプルの配列決定により、既知のタンパク質の断片に加え、いずれのタンパク質データベースにおいてもヒトとの相関性が認められないペプチド配列XRLTDVTが示された。
【0051】
タンパク質配列のDNA配列への明確な逆翻訳は可能でない。従って前記のペプチド配列の、17個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドへの逆翻訳は結果として2048通りの組合せを生ずる。しかしながら、特殊な方法(Wozney, J.M. (1990), Methods Enzymol. 182; 738-751)により縮重オリゴヌクレオチドを用いてcDNAバンクをスクリーニングすることは可能である。見出したペプチド配列をもとにして、2つのオリゴヌクレオチド(オリゴ1(配列番号3);MGN CTS ACN GAY GTN AC、512通りの組合せ;オリゴ2(配列番号4):MGN YTD ACN GAY GTN AC、1024通りの組合せ)を合成した。
【0052】
スクリーニングのために、タンパク質精製のためにも用いたMOLT−4V細胞系統からcDNAバンクを構築した。:
グアニジニウム/CsCl法(Chirgwin, J.M. et al. (1979), Biochemistry 18: 5294-5299)によって完全RNAを単離し、オリゴ−dT−セルロースカラム(Gibco BRL, Eggenstein)でmRNAを濃縮した。オリゴ−dT−プライマーを用いる市販のcDNA合成系(Gibco BRL, Eggenstein)を用いて、製造業者の使用説明書に従って第1および第2cDNA鎖の合成を行った。cDNAをEcoRIアダプターを介してLambda ZAPIIベクター(Stratagene, Heidelberg)に連結した。
【0053】
cDNAバンクを標準法(Vogeli, G, and kaytes, P.S. (1987), Methods Enzymol., 152: 407-515)によって平板培養し、ニトロセルロースフィルター(Optitran BA-S 85, Schleicher&Schuell, Dassel)上にLambda DNAを固定した。
【0054】
前記のオリゴヌクレオチドをT4ポリヌクレオチドキナーゼ(NEBL、Schwalbach)およびγ−32P ATP(NEN Du Pont、Brussels)を用いて放射性標識した(Wallace, R.B. and Miyata, C.G. (1987), Methods Enzymol.,152: 432-442)。
【0055】
3Mのテトラメチル塩化アンモニウム(Roth、Karlsruhe)を含む縮重オリゴヌクレオチドに関して記載された緩衝液(Wozney, J.M. (1990), Methods Enzymol, 182: 738-751)中、48℃でフィルターのハイブリダイゼーションを行った。洗浄温度を50℃とし、前記参照文献に記載のようにフィルターを洗浄した。X線フィルム上でのこれらのフィルターの露光により、100,000個の平板培養ファージ当たり約50個の陽性クローンが現れた(図13)。
【0056】
ベクターの製造業者(Stratagene, Heidelberg)によって記載された方法を用いるin vivo切り出しによって、それらをプラスミドベクターに導入することにより6個のクローンをさらに同定し、T3およびT7プライマーを用いて部分的に配列決定した(BigDyeターミネーターサイクルシークエンシングキット、Applied Biosystems, Foster City, USA)。1つのクローンは、求めたペプチド配列を翻訳時に正確に提供する配列を含んでいた。このクローンをノーザンブロットのハイブリダイゼーション(図14)に用いた(Kroczek, R.A. (1993), J. Chromatogr., 618, 133-145)。フローサイトメトリーによるモノクローナル抗体に対する研究から知られていたように、mRNAの発現パターンは8F4分子の発現に厳密に対応した。見出されたクローンは求めるcDNAの3’末端のみしか含んでいなかったので、5’側に対する断片を用いて完全な8F4cDNAを単離した。数個のクローンを両鎖に関して配列決定した。
【0057】
8F4cDNA(2641個のヌクレオチド)は図16および配列番号1で記載されている配列中に示されており、また図15および配列番号2で記載されている配列中に示されている199個のアミノ酸(ヌクレオチド68〜664)を有するタンパク質をコードする。cDNAバンク由来の数個の独立したクローンの配列決定により、本明細書に示される配列からのいくらかのずれが示されたが、これらは総て3’非翻訳領域中にある:
位置909−910:欠失
位置1631:T→C
位置2074:G→T
位置2440:G→C
位置2633:選択可能なポリアデニル化部位。
【0058】
表1:表1は使用した抗体(クローン)、それらの起源の供給源(供給源)、それらの特定の抗原に対する特異性(特異性)、および要すればそれらの標識化(標識)をまとめたものである。
【表1】
実施例で使用した抗血清および二次試薬は以下から購入した:Jackson Immuno Research Lab., USAからのFITC結合ヤギ抗マウスIg;Jackson Immuno Research Lab., USAからのPE結合ストレプトアビジン;Sigma, Deisenhofenからのウサギ抗マウスIg画分。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】活性化されたヒトT細胞由来の8F4抗原の免疫沈降反応の結果を示す図である。(a)還元ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE;12%ポリアクリルアミドゲル(PAAゲル))、(b)非還元SDS−PAGE(10%PAAゲル)。8F4マトリックスから抗原を溶出させる条件を示す。「SDS」はドデシル硫酸ナトリウムを意味し;「DTT」はジチオトレイトールを意味し、「Mr」は分子量を意味し、「kDa」はキロダルトンを意味する。
【図2a】CD4+T細胞のおける8F4抗原の誘導後のフローサイトメトリーの結果を示す図である。T細胞の活性化時間を括弧内に示す。「PMA」はホルボールミリステートアセテートを意味し;「PHA」はフィトヘマグルチニンを意味し;「OKT3」はCD3に対するモノクロナール抗体であり;「MLR」は混合リンパ球反応を意味し;「mAK9.3」はCD28に対するモノクロナール抗体であり;「SEB」はブドウ球菌エンテロトキシンBを意味する。
【図2b】フローサイトメトリーにおいてPMAおよびイオノマイシンで活性化させた後のCD4+T細胞の8F4抗原誘導の速度論についての結果を示す図である。免疫蛍光(log)は細胞数に対してプロットされている。
【図3】混合リンパ球反応における8F4の誘導に関与している分子の同定についてのフローサイトメトリーの結果を示す図である。「bio」はビオチン化された抗体を意味する。
【図4】扁桃における8F4陽性細胞の局在性に関する組織化学的研究の結果を示す図である。
【図5】フローサイトメトリーにおけるヒト扁桃由来TおよびB細胞の8F4の発現解析の結果を示している。「bioPE」はビオチン化された抗体およびストレプトアビジン−フィコエリトリン二次試薬を意味する。
【図6】フローサイトメトリーにおける8F4分子の他の活性化マーカー(CD69,CD45)との同時発現を示す図である。
【図7】8F4により共同刺激された後のTリンパ球の活性化分子の発現の高まりを図示している。白丸(○)は8F4抗体を示し;三角(▲)は同じイソタイプの非特異的抗体を示し;黒丸(●)抗CD28抗体9.3を示している。
【図8】8F4の共同刺激作用とCD28の共同刺激作用との比較を図示している。「mAk」はモノクロナール抗体を意味し;「ATAC」は「活性化により誘導されたT細胞誘導および化学運動性関連」を意味し;「cpm」は毎分の放射性放出を意味する。
【図9】T細胞の共同刺激後のB細胞によるIgMおよびIgG型の抗体の合成の増強を図示している。「ng」はナノグラムを意味し;「ml」はミリリットルを意味し;「mAk」はモノクロナール抗体を意味する。
【図10】8F4による共同刺激後の周辺T細胞の活性化により誘導されるアポトーシスの阻害を図示している。
【図11】MOLT−4V細胞系の8F4抗原の発現を示している。MOLT−4V細胞をフルオレセインで標識された8F4抗体(8F4−FITC)で染色し、フローサイトメトリーで調べた(白抜きのライン、イソタイプの対照(塗りつぶしたライン)との比較)。
【図12】二次元ゲル電気泳動を図示している。300x106細胞からのMOLT−4V細胞溶解物を記載のように免疫沈降させた。溶出液を非還元SDS−PAGE(10%PAA)で分画し、60kDa付近の領域をゲルから切り取った。8F4分子のジスルフィド架橋を還元するために、ゲル片を5.3M尿素、0.5M Tris、pH8.0、1%SDS、1%β−メルカプトエタノール中50℃で1時間インキュベートし、分子中の遊離システイン残基を10mMヨードアセトアミド(Sigma,Deisenhofen)でアルカリ化した(37℃、30分)。ゲル片を1xSDS−PAGEサンプル緩衝液でさらに30分間平衡化し、12%PAA−SDSゲル上に(積層ゲル)のせた。電気泳動により分画した後、ゲルを銀染色した。8F4タンパク質の位置を表面のヨウ素処理により決定し(参照図1)、丸で印をつけた。(詳細に記載していない手順は総て標準法により行った、例えばWestermeier, R., Electrophoresis in Practice, VCH Verlagsgesellschaft, Weinheim, 1997を参照)。
【図13】オリゴ1(配列番号3)とのハイブリダイゼーションを示す図である。ニトロセルロースフィルター上に固定化したラムダクローンを実施例で記載されるようにオリゴ1とハイブリダイズさせた。X線フィルムに対する露光を示している(詳細)。
【図14】8F4 cDNAを用いたノーザンブロット解析を示す図である。ノーザンブロットと8F4 cDNAとのハイブリダイゼーションによりゲル中18S〜28SRNA間に移動するバンドが生ずる。図14は2シグナル依存性(前記参照)活性化抗原としての挙動:休止中のリンパ球(PBL)では発現せず、PMA+イオノマイシン活性化CD4+T細胞では強く発現され、かつPMAまたはイオノマイシン単独では明らかに発現が低下することを示している。図14は異なる刺激時間(ナイロンウールの付着により精製した、NTC)T細胞を(PMA+イオノマイシン)により刺激する)の後のmRNAの発現の強さを示している。このほか、最小限の発現しか示さないMOLT−4細胞系(ATCC CRL−1582)、離れて右側にクローニングに用いられ、かつ異なるシグナルを示すMOLT−4V。フローサイトメトリーによる解析では8F4発現が検出できない他の細胞系:CEM(ATCC CCL−119)、HUT−102(ATCC TIB−162)、HUT−78(ATCC TIB−161)、Jurkat(ATCC TIB−152)、DG75(Deutsche Sammlung von Mikrooganismen und Zellkulturen(DSMZ) ACC83)、Karpas 299(Fischer, P. et al., (1988), Blood, 72: 234-240)、DEL(Barbey, S. et al., (1990), Int. J. Cancer, 45: 546-553)由来のRNAも添加する。
【図15】ポリペプチド8F4のアミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。
【図16】8F4 cDNA(配列番号1)を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)T細胞の共同刺激の生物学的活性を有し、
b)活性化されたCD4+およびCD8+Tリンパ球で生じるが、休止中の、もしくは活性化されたB細胞、顆粒球、単球、NK細胞または樹状細胞では生じず、かつ
c)2つのポリペプチド鎖を有し、非還元SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で測定した場合に約55〜60kDaの分子量を有し、その分子の2つのポリペプチド鎖が還元SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で測定した場合に約27kDaおよび約29kDaの分子量を有する、共同刺激性分子。
【請求項2】
図15(配列番号2)の199個のアミノ酸を含んでなる配列と少なくとも40%の相同性を示すアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な断片もしくは類似体を含んでなり、T細胞の共同刺激の生物学的活性を有する共同刺激性分子。
【請求項3】
請求項2記載のT細胞の共同刺激の生物学的活性を有する共同刺激性分子であって、図15(配列番号2)で示されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な断片もしくは類似体を含んでなる分子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子またはその断片をコードするDNA配列。
【請求項5】
T細胞の共同刺激の生物学的活性を有する共同刺激性分子をコードするDNA配列であって、
a)配列番号1(図16)で示されるDNA配列およびその相補鎖、
b)(a)の配列とハイブリダイズするDNA配列、および
c)遺伝子コードの縮重のために(a)および(b)の配列とハイブリダイズするDNA配列
からなる群から選択される配列。
【請求項6】
請求項4または5のDNA配列を含んでなるプラスミドまたはウイルスDNAベクター。
【請求項7】
請求項6記載のプラスミドまたはDNAベクターで安定して形質転換またはトランスフェクトされた原核生物または真核生物宿主細胞。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子を製造する方法であって、宿主細胞におけるその分子の発現のために請求項7記載の宿主細胞を培養することを含んでなる方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子と結合する抗体。
【請求項10】
モノクロナール抗体である、請求項9記載の抗体。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子を特異的に認識するモノクローナル抗体であり、ヒトTリンパ球により活性化されるPMAおよびCa2+イオノホアイオノマイシンで免疫化されたマウスのB細胞をミエローマ細胞系統と融合して抗体分泌ハイブリドーマとし、かつ、休止中のT細胞に対して2種のシグナル分子で活性化されるものに関してフローサイトメトリーで精製されるモノクローナル抗体。
【請求項12】
請求項10または11記載のモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子の生物学的活性を阻害する物質の医薬としての使用。
【請求項14】
物質がモノクローナル抗体、天然または合成リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストを含んでなる、請求項13記載の使用。
【請求項15】
自己免疫疾患の治療、臓器移植における拒絶反応の予防、および免疫系の調節異常の治療用医薬の製造のための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子の生物学的活性を阻害する物質の使用。
【請求項16】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子の医薬としての使用。
【請求項17】
癌、エイズ、喘息性疾患、またはHCVもしくはHBV感染などの慢性的ウイルス病の治療用医薬の製造のための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子の使用。
【請求項18】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子を含んでなる細胞の医薬としての使用。
【請求項19】
癌、エイズ、喘息性疾患、またはHCVもしくはHBV感染などの慢性的ウイルス病の治療用医薬の製造のための、請求項18記載の細胞の使用。
【請求項20】
免疫系が関与する疾患の診断のための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子を特異的に認識する物質の使用。
【請求項21】
物質が核酸(RNA、DNA)分子を含んでなる、請求項20記載の使用。
【請求項22】
診断のためにハイブリダイゼーションまたは核酸適用技術(例えば、PCR)が用いられる、請求項21記載の使用。
【請求項23】
物質がモノクローナル抗体、天然または合成リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストを含んでなる、請求項20記載の使用。
【請求項24】
診断のためにELISA検出法、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、放射性免疫検定法、比濁分析法、または組織化学的染色が用いられる、請求項20または21記載の使用。
【請求項25】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子のT細胞へのシグナル変換経路に対して正または負の作用を有する(調整する)物質の医薬としての使用。
【請求項26】
T細胞表面で請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子のアップレギュレーションを妨げる物質の医薬としての使用。
【請求項27】
抗体を製造するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子の使用。
【請求項1】
a)T細胞の共同刺激の生物学的活性を有し、
b)活性化されたCD4+およびCD8+Tリンパ球で生じるが、休止中の、もしくは活性化されたB細胞、顆粒球、単球、NK細胞または樹状細胞では生じず、かつ
c)2つのポリペプチド鎖を有し、非還元SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で測定した場合に約55〜60kDaの分子量を有し、その分子の2つのポリペプチド鎖が還元SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で測定した場合に約27kDaおよび約29kDaの分子量を有する、共同刺激性分子。
【請求項2】
図15(配列番号2)の199個のアミノ酸を含んでなる配列と少なくとも40%の相同性を示すアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な断片もしくは類似体を含んでなり、T細胞の共同刺激の生物学的活性を有する共同刺激性分子。
【請求項3】
請求項2記載のT細胞の共同刺激の生物学的活性を有する共同刺激性分子であって、図15(配列番号2)で示されるアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な断片もしくは類似体を含んでなる分子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子またはその断片をコードするDNA配列。
【請求項5】
T細胞の共同刺激の生物学的活性を有する共同刺激性分子をコードするDNA配列であって、
a)配列番号1(図16)で示されるDNA配列およびその相補鎖、
b)(a)の配列とハイブリダイズするDNA配列、および
c)遺伝子コードの縮重のために(a)および(b)の配列とハイブリダイズするDNA配列
からなる群から選択される配列。
【請求項6】
請求項4または5のDNA配列を含んでなるプラスミドまたはウイルスDNAベクター。
【請求項7】
請求項6記載のプラスミドまたはDNAベクターで安定して形質転換またはトランスフェクトされた原核生物または真核生物宿主細胞。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子を製造する方法であって、宿主細胞におけるその分子の発現のために請求項7記載の宿主細胞を培養することを含んでなる方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子と結合する抗体。
【請求項10】
モノクロナール抗体である、請求項9記載の抗体。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子を特異的に認識するモノクローナル抗体であり、ヒトTリンパ球により活性化されるPMAおよびCa2+イオノホアイオノマイシンで免疫化されたマウスのB細胞をミエローマ細胞系統と融合して抗体分泌ハイブリドーマとし、かつ、休止中のT細胞に対して2種のシグナル分子で活性化されるものに関してフローサイトメトリーで精製されるモノクローナル抗体。
【請求項12】
請求項10または11記載のモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子の生物学的活性を阻害する物質の医薬としての使用。
【請求項14】
物質がモノクローナル抗体、天然または合成リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストを含んでなる、請求項13記載の使用。
【請求項15】
自己免疫疾患の治療、臓器移植における拒絶反応の予防、および免疫系の調節異常の治療用医薬の製造のための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子の生物学的活性を阻害する物質の使用。
【請求項16】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子の医薬としての使用。
【請求項17】
癌、エイズ、喘息性疾患、またはHCVもしくはHBV感染などの慢性的ウイルス病の治療用医薬の製造のための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子の使用。
【請求項18】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子を含んでなる細胞の医薬としての使用。
【請求項19】
癌、エイズ、喘息性疾患、またはHCVもしくはHBV感染などの慢性的ウイルス病の治療用医薬の製造のための、請求項18記載の細胞の使用。
【請求項20】
免疫系が関与する疾患の診断のための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子を特異的に認識する物質の使用。
【請求項21】
物質が核酸(RNA、DNA)分子を含んでなる、請求項20記載の使用。
【請求項22】
診断のためにハイブリダイゼーションまたは核酸適用技術(例えば、PCR)が用いられる、請求項21記載の使用。
【請求項23】
物質がモノクローナル抗体、天然または合成リガンド、アゴニストまたはアンタゴニストを含んでなる、請求項20記載の使用。
【請求項24】
診断のためにELISA検出法、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、放射性免疫検定法、比濁分析法、または組織化学的染色が用いられる、請求項20または21記載の使用。
【請求項25】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子のT細胞へのシグナル変換経路に対して正または負の作用を有する(調整する)物質の医薬としての使用。
【請求項26】
T細胞表面で請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子のアップレギュレーションを妨げる物質の医薬としての使用。
【請求項27】
抗体を製造するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共同刺激性分子の使用。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−42007(P2010−42007A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211970(P2009−211970)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2000−512857(P2000−512857)の分割
【原出願日】平成10年9月23日(1998.9.23)
【出願人】(500129845)
【氏名又は名称原語表記】BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2000−512857(P2000−512857)の分割
【原出願日】平成10年9月23日(1998.9.23)
【出願人】(500129845)
【氏名又は名称原語表記】BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
【Fターム(参考)】
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