説明

TAARリガンドとしての2−アゼチジンメタンアミン及び2−ピロリジンメタンアミン

本発明は、式(I)[式中、Rは、水素、場合によりハロゲンで置換されている、低級アルキルもしくはベンジル、又は低級アルコキシであり;Rは、水素、ハロゲン又はORであり、ここで、Rは、低級アルキル、アリール又は場合によりハロゲンで置換されている低級アルキルであり;Rは、水素又はフッ素であり;Arは、フェニルであり;nは、0又は1であり;oは、0、1又は2である]で示される化合物、及びその薬学的に活性な塩に関する。式(I)で示される化合物がトレースアミン関連受容体(TAAR)、特にTAAR1に対して良好な親和性を有することが見出されている。本化合物は、うつ病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、ストレス関連障害、精神障害、例えば統合失調症、神経障害、例えばパーキンソン病、神経変性障害、例えばアルツハイマー病、てんかん、偏頭痛、高血圧症、物質乱用及び代謝障害、例えば摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満症、脂質代謝異常、エネルギーの消費及び同化の障害、体温恒常性の障害及び機能不全、睡眠及び概日リズムの障害及び心血管障害の処置に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【0002】
【化1】


[式中、
は、水素、場合によりハロゲン又は低級アルコキシで置換されている、低級アルキル又はベンジルであり;
は、水素、ハロゲン又はORであり、ここで、Rは、低級アルキル、アリール又は場合によりハロゲンで置換されている低級アルキルであり;
は、水素又はフッ素であり;
Arは、フェニルであり;
nは、0又は1であり;
oは、0、1又は2である]
で示される化合物、及びその薬学的に活性な塩に関する。
【0003】
本発明は、全てのラセミ混合物、対応する全ての鏡像異性体及び/又は光学異性体を含む。
【0004】
式(I)で示される化合物が、微量アミン関連受容体(TAAR)、特にTAAR1に対して良好な親和性を有することが見出されている。本化合物は、うつ病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、ストレス関連障害、精神障害、例えば統合失調症、神経障害、例えばパーキンソン病、神経変性障害、例えばアルツハイマー病、てんかん、偏頭痛、高血圧症、物質乱用及び代謝障害、例えば摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満症、脂質代謝異常、エネルギーの消費及び同化の障害、体温恒常性の障害及び機能不全、睡眠及び概日リズムの障害及び心血管障害の処置に使用できる。
【0005】
古典的生体アミン(セロトニン、ノルエピネフリン、エピネフリン、ドーパミン、ヒスタミン)は、中枢及び末梢神経系において神経伝達物質としての重要な役割を果たす[1]。それらの合成及び保存は、それらの分解及び放出後の再取り込みと同様に、厳密に制御されている。生体アミンのレベルの不均衡が、多くの病理学的な条件下において、脳機能の変化の要因であることが知られている[2〜5]。第二の種類の内在性アミン化合物、いわゆる微量アミン(TA)は、構造、代謝及び細胞内局在に関して古典的生体アミンと有意に重複する。TAは、p−チラミン、β−フェニルエチルアミン、トリプタミン及びオクトパミンを含み、それらは古典的生体アミンより一般的に低いレベルで哺乳類の神経系に存在する[6]。
【0006】
それらの調整不全は、統合失調症及びうつ病のようなあらゆる精神疾患と[7]、ならびに注意欠陥多動性障害、偏頭痛、パーキンソン病、物質乱用及び摂食障害のような他の状態[8、9]と関連づけられてきた。
【0007】
長い間、TAに特異的な受容体は、ヒト及び他の哺乳類のCNSにおける解剖学的に分離した高親和性TA結合部位に基づいてのみ仮説が立てられていた[10、11]。このため、TAの薬理学的効果は、古典的生体アミンの周知の機構、つまりそれらの放出を促すこと、それらの再取り込みを阻害すること又はそれらの受容体システムと「交差反応する」ことのずれかにより媒介されると考えられてきた[9、12、13]。この見解は、新規なGPCRファミリーのいくつかのメンバー、微量アミン関連受容体(TAAR)が最近特定されたことにより著しく変化した[7、14]。ヒトには9種のTAAR遺伝子が存在し(3種の偽遺伝子を含む)、マウスには16種の遺伝子(1種の偽遺伝子を含む)が存在する。TAAR遺伝子はイントロンを含まず(例外が一つだけあり、TAAR2はイントロンを1つ含む)、同じ染色体セグメント上で互いに隣り合うように位置している。受容体遺伝子の系統的関連性は、綿密なGPCRファルマコフォア類似性比較及び薬理学的データと一致して、これらの受容体が三つの異なるサブファミリーを形成することを示唆する[7、14]。TAAR1は、4種の遺伝子(TAAR1〜4)の第一のサブクラスにあり、ヒトとげっ歯類の間で高度に保存されている。TAはGαを経由してTAAR1を活性化する。TA調整不全は、うつ病、精神病、注意欠陥多動性障害、物質乱用、パーキンソン病、偏頭痛、摂食障害、代謝障害のような種々の疾患の病因論に寄与することが示され、そのためTAAR1リガンドはこれらの疾患の処置において高い可能性を有している。
【0008】
従って、微量アミン関連受容体に関する知識を増やすことに対して広範な興味がある。
【0009】
【表1】

【0010】
本発明の目的は、式(I)で示される新規な化合物、それらの製造、本発明の化合物に基づく医薬及びそれらの生産、そして同様に、例えばうつ病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害、ストレス関連障害、精神障害、例えば統合失調症、神経障害、例えばパーキンソン病、神経変性障害、例えばアルツハイマー病、てんかん、偏頭痛、高血圧症、物質乱用及び代謝障害、例えば摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満症、脂質代謝異常、エネルギーの消費及び同化の障害、体温恒常性の障害及び機能不全、睡眠及び概日リズムの障害及び心血管障害などの疾病の制御又は予防における式(I)で示される化合物の使用である。
【0011】
本発明の化合物を使用する適応症は、好ましくはうつ病、精神病、パーキンソン病、不安症及び注意欠陥多動性障害(ADHD)である。
【0012】
本明細書で使用される用語「低級アルキル」は、1〜7個の炭素原子を含有する直鎖状又は分岐鎖状の飽和基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、2−ブチル、t−ブチルなどを意味する。好ましいアルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する基である。
【0013】
本明細書で使用される用語「低級アルコキシ」は、上記と同義の飽和した直鎖又は分岐鎖を意味し、これは、酸素原子を介して結合している。
【0014】
本明細書で使用される用語「ハロゲンで置換されている低級アルキル」は、上記と同義のアルキル基を意味し、ここで、1つ以上の水素原子はハロゲンにより置換されており、例えばCF、CHF、CHF、CHCF、CHCHCF、CHCFCF等である。
【0015】
本明細書で使用される用語「アリール」は、フェニル又はナフタレン−1−イルから選択される芳香族基を意味する。
【0016】
用語「ハロゲン」は、塩素、ヨウ素、フッ素及び臭素を意味する。
【0017】
用語「薬学的に許容し得る酸付加塩」は、無機及び有機酸、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等との塩を包含する。
【0018】
好ましい式(I)で示される化合物は、nが、1であるもの(ピロリジン)である:
【0019】
【化2】


[式中、
は、水素、場合によりハロゲン又は低級アルコキシで置換されている、低級アルキル又はベンジルであり;
は、水素、ハロゲン又はORであり、ここで、Rは、低級アルキル、アリール又はハロゲンで置換されている低級アルキルであり;
は、水素又はフッ素であり;
Arは、フェニルであり;
oは、0、1又は2である]
で示される化合物、及びその薬学的に活性な塩である。
【0020】
そのような構造の例は、
エチル−(3−フェノキシ−フェニル)−(R)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
エチル−(3−フェノキシ−フェニル)−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
(3,4−ジクロロ−フェニル)−エチル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
(4−クロロ−3−メトキシ−フェニル)−メチル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
(4−クロロ−3−メトキシ−フェニル)−エチル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
(4−クロロ−フェニル)−エチル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
(4−クロロ−3−メトキシ−フェニル)−イソプロピル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
(3,4−ジクロロ−フェニル)−イソプロピル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン又は
(4−クロロ−フェニル)−エチル−(R)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミンである。
【0021】
好ましい化合物は、さらに、nが、0であるもの(アゼチジン)である:
【0022】
【化3】


[式中、
は、水素、場合によりハロゲン又は低級アルコキシで置換されている、低級アルキル又はベンジルであり;
は、水素、ハロゲン又はORであり、ここで、Rは、低級アルキル、アリール又はハロゲンで置換されている低級アルキルであり;
は、水素又はフッ素であり;
Arは、フェニルであり;
oは、0、1又は2である]
で示される化合物、及びその薬学的に活性な塩である。
【0023】
そのような構造の例は、
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−(4−クロロ−フェニル)−エチル−アミン
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−エチル−フェニル−アミン
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−エチル−(3−メトキシ−フェニル)−アミン
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−(3−ブロモ−フェニル)−エチル−アミン
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−(4−クロロ−フェニル)−メチル−アミン
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−(4−クロロ−フェニル)−イソプロピル−アミン
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−ベンジル−(4−クロロ−フェニル)−アミンである。
【0024】
本発明の式(I)で示される化合物及びその薬学的に許容し得る塩は、当該技術分野において周知の方法、例えば以下に記載される方法によって調製することができ、該方法は、
a)式(II):
【0025】
【化4】


で示される化合物を、式(III):
【0026】
【化5】


で示される化合物と反応させて、式(IV):
【0027】
【化6】


で示される化合物とし、そして式(IV)で示される化合物を脱保護して、式(I−1):
【0028】
【化7】


[式中、置換基は上記と同義である]で示される化合物とするか、あるいは
b)式(IV):
【0029】
【化8】


で示される化合物を、式R1’−CHOで示されるアルデヒドと反応させて、式(IV−1):
【0030】
【化9】


で示される化合物とし、そして式(IV−1)で示される化合物を脱保護して、式(I−2):
【0031】
【化10】


[式中、R1’は、低級アルキル又は水素であり、そして他の定義は上記と同義である]で示される化合物とするか、あるいは
c)式(II−1):
【0032】
【化11】


で示される化合物を、式(VIII):
【0033】
【化12】


で示される化合物と反応させて、式(IX):
【0034】
【化13】


で示される化合物として、式(IX)で示される化合物を還元し、そして脱保護して、式(I):
【0035】
【化14】


[式中、置換基は上記と同義である]で示される化合物とし、
そして、所望の場合には、得られた化合物を薬学的に許容し得る酸付加塩に変換する方法である。
【0036】
式(I)で示される化合物は、上に記載した方法の変形及び以下のスキーム1〜3にしたがって調製できる。出発物質は、市販されているか、あるいは化学文献において公知であるか、又は当該技術分野において周知の方法にしたがって調製できる。
【0037】
【化15】

【0038】
式(I−1)で示される化合物は、式(II)で示されるアニリン及び式(III)(n=1)で示されるN−保護ピロリジン−2−カルバルデヒド又は式(III)(n=0)で示されるN−保護2−ホルミルアゼチジンを用い、NaCNBH又はNaBH(OAc)のような還元剤の存在下における還元的アミノ化、そしてこれに続く、中間体(IV)に対する通常の脱保護工程により調製され得る。
【0039】
【化16】

【0040】
式(I−2)及び(I−3)で示される化合物は、第二の還元的アミノ化工程により、中間体(IV)から出発して、例えばアルデヒド(V)、エノールエーテル(VI)又はアルデヒドアセタール(VII)のような試薬を、NaCNBH又はNaBH(OAc)のような還元剤の存在下で使用し、続けてピロリジン又はアゼチジンに対して通常のN−脱保護を行う。
【0041】
【化17】

【0042】
スキーム3は、アミド(IX)を形成し、続けてボラン又はリチウムアルミニウムヒドリドのような還元剤によりアミド結合を還元し、そして通常の保護基の除去することによる、式(I)で示される化合物の調製を記載している。
【0043】
化合物の単離及び精製
本明細書に記載される化合物及び中間体の単離及び精製は、所望であれば、任意の適切な分離又は精製の手法、例えば濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、厚層クロマトグラフィー、分取の低圧もしくは高圧液体クロマトグラフィー又はこれらの手法の組み合わせによっても達成することができる。適切な分離及び単離手法の具体的な説明は、以下の調製及び実施例を参照することにより得られる。しかしながら、他の同等の分離又は単離手法も、当然のことながら用いることができる。式(I)で示されるキラル化合物のラセミ混合物は、キラルHPLCを用いることで分離できる。
【0044】
式(I)で示される化合物の塩
式(I)で示される化合物は塩基性であり、対応する酸付加塩に変換できる。変換は、少なくとも化学量論量の適した酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等、及び有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等と処理することにより成し遂げられる。典型的には、遊離塩基を不活性有機溶媒、例えばジエチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、エタノール又はメタノール等に溶解させ、酸を類似の溶媒中で加える。温度は0〜50℃に保たれる。結果として得られる塩は、自然に沈殿するか、又はより極性の低い溶媒により溶液から取り出してもよい。
【0045】
式(I)で示される塩基性化合物の酸付加塩は、少なくとも化学量論量の適切な塩基、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等と処理することによって、対応する遊離塩基に変換できる。
【0046】
式(I)で示される化合物及びその薬学的に使用され得る付加塩は、有益な薬理学的性質を有する。具体的には、本発明の化合物は微量アミン関連受容体(TAAR)、特にTAAR1に対して良好な親和性を有することが見出された。
【0047】
本化合物を、以下に与えられる試験にしたがって調べた。
【0048】
材料及び方法
TAAR発現プラスミド及び安定にトランスフェクトされた細胞株の構築
発現プラスミドの構築のために、ヒト、ラット及びマウスのTAAR1のコード配列を、基本的にはLindemannら[14]により記載されているようにして、ゲノムDNAから増幅した。Expand High Fidelity PCR System (Roche Diagnostics)を1.5mM Mg2+と共に使用し、精製されたPCR生成物は製造者の使用説明書に従ってpCR2.1−TOPOクローニングベクター(Invitrogen)にクローンされた。PCR生成物は、pIRESneo2ベクター(BD Clontech, Palo Alto, California)にサブクローンされ、発現ベクターを、細胞株に導入する前に配列検証した。
【0049】
HEK293細胞(ATCC#CRL-1573)を基本的にはLindemannら(2005)が記載したようにして培養した。安定的にトランスフェクトされた細胞株を生成するために、HEK293細胞を、TAARコード配列(上記に記載)を含むpIRESneo2発現プラスミドと共に、Lipofectamine2000(Invitrogen)によって、製造者の使用説明書に従ってトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後、培地に1mg/mlのG418(Sigma, Buchs, Switzerland)を補充した。約10日の培養期間の後、クローンを単離し、増幅し、cAMP Biotrak Enzyme immunoassay (EIA) System (Amersham)を用いて製造者により提供された非アセチル化EIA手順に従って微量アミン(全てSigmaから購入した化合物)に対する応答性を試験した。15継代に亘る培養期間において安定なEC50を示した単クローンの細胞株を、以降の全ての研究において使用した。
【0050】
膜の調製及び放射性リガンド結合
コンフルエンスの状態にある細胞を、Ca2+及びMg2+を含まず、10mM EDTAを含む氷冷リン酸緩衝生理食塩水ですすぎ、1000rpmで5分間、4℃で遠心分離してペレット化した。次にペレットを氷冷リン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄し、細胞ペレットを液体窒素に浸すことで直ちに凍結させ、使用するまで−80℃で保存した。次に細胞ペレットを、10mM EDTAを含有するpH7.4のHEPES−NaOH(20mM)20mlに懸濁し、Polytron (PT 3000, Kinematica)を用いて10000rpmで10秒間ホモジナイズした。ホモジネートを48000xgで30分間、4℃で遠心分離し、ペレットを、0.1mM EDTAを含有するpH7.4のHEPES−NaOH(20mM)(緩衝液A)20mlに再懸濁し、Polytronを用いて10000rpmで10秒間ホモジナイズした。次にホモジネートを48000xgで30分間、4℃で遠心分離し、ペレットを緩衝液A 20mlに再懸濁させ、Polytronを用いて10000rpmで10秒間ホモジナイズした。タンパク質濃度を、Pierce (Rockford, IL)の方法により決定した。次にホモジネートを48000xgで10分間、4℃で遠心分離し、1ml当りMgCl(10mM)及びCaCl gタンパク質、及び(2mM)を含むpH7.0のHEPES−NaOH(20mM)(緩衝液B)に再懸濁し、200においてPolytronを用いて10000rpmで10秒間ホモジナイズした。
【0051】
結合アッセイは、最終容量1mlにて4℃で、30分間のインキュベーション時間で行った。放射性リガンド[H]−rac−2−(1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフチル)−2−イミダゾリンを、計算されたK値である60nMと同じ濃度で使用し、添加した放射性リガンド総濃度のおよそ0.1%の結合、及び結合全体の約70〜80%に相当する特異的結合を得た。非特異的結合は、適切な非ラベル化リガンド(10μM)の存在下で結合した[H]−rac−2−(1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフチル)−2−イミダゾリンの量として規定された。広い濃度範囲(10pM〜30μM)において競合リガンドを試験した。アッセイにおける最終ジメチルスルホキシド濃度は2%であり、放射性リガンド結合には影響しなかった。各実験は重複して行った。全てのインキュベーションは、UniFilter−96プレート(Packard Instrument Company)及びガラスフィルターGF/Cを通す急速濾過、少なくとも2時間の0.3%ポリエチレンイミンへの予備浸漬、そしてFiltermate 96 Cell Harvester(Packard Instrument Company)の使用により停止させた。次に、チューブ及びフィルターを、1mlアリコートの冷緩衝液Bで3回洗浄した。フィルターは乾燥させず、Ultima gold(45μl/ウェル、Packard Instrument Company)に浸し、結合放射活性をTopCount Microplate Scintillation Counter(Packard Instrument Company)で計数した。
【0052】
好ましい化合物は、下記の表に示されるように、マウスのTAAR1に対するKi値(μM)は<0.1μMの範囲内にあった。
【0053】
【表2】

【0054】
式(I)で示される化合物及び式(I)で示される化合物の薬学的に許容され得る塩は、医薬、例えば医薬製剤の形態で用いることができる。医薬製剤は、例えば錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳濁剤又は懸濁剤の剤形で経口投与され得る。しかし、投与はまた、例えば、坐剤の剤形で直腸内にも、例えば、注射液の剤形で非経口的にも遂行することができる。
【0055】
式(I)で示される化合物は、医薬製剤を製造するため、薬学的に不活性な無機又は有機担体と共に製剤化することができる。乳糖、トウモロコシデンプン又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩などは、例えば錠剤、コーティング錠、糖衣錠及び硬ゼラチンカプセル剤のための、そのような担体として使用することができる。軟ゼラチンカプセル剤のための適切な担体は、例えば、植物油、ロウ、脂肪、半固体及び液体ポリオール等である。しかし、活性物質の性質によっては、軟ゼラチンカプセル剤の場合は、通常担体を必要としない。溶剤及びシロップ剤の製造に適切な担体は、例えば、水、ポリオール、グリセリン、植物油等である。坐剤に適切な担体は、例えば、天然又は硬化油、ロウ、脂肪、半液体又は液体のポリオール等である。
【0056】
更に、医薬製剤は、防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、着香剤、浸透圧を変化させる塩、緩衝剤、マスキング剤又は酸化防止剤を含むことができる。それらはまた、更に他の治療上有益な物質を含むことができる。
【0057】
式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容され得る塩及び治療上不活性な担体を含有する医薬もまた、式(I)で示される化合物及び/又は薬学的に許容され得る酸付加塩の1種以上と、所望により、他の治療上有益な物質の1種以上とを、治療上不活性な担体の1種以上と共に、ガレヌス製剤の投与形態にすることを含む製剤方法と同様に、本発明の目的である。
【0058】
本発明の最も好ましい適応症は、中枢神経系の障害を含むものであり、例えば、統合失調症、うつ病、認知障害及びアルツハイマー病の治療又は予防である。
【0059】
用量は、広い範囲内で変えることができ、当然特定の症例それぞれにおける個別の要求に適合させなければならない。経口投与の場合、成人への用量は、一般式(I)で示される化合物1日当たり約0.01mg〜約1000mg、又は対応する量の、その薬学的に許容され得る塩で変えることができる。1日量を、1回量として又は分割量として投与してよく、さらに、必要性が示される場合、上限を超えることもできる。
【0060】
錠剤の処方(湿式顆粒化)
項目 成分 mg/錠剤
5mg 25mg 100mg 500mg
1.式(I)の化合物 5 25 100 500
2.無水乳糖DTG 125 105 30 150
3.Sta-Rx 1500 6 6 6 30
4.微晶質セルロース 30 30 30 150
5.ステアリン酸マグネシウム 1 1 1 1
合計 167 167 167 831
【0061】
製造手順
1.品目1、2、3及び4を混合し、精製水と共に造粒する。
2.顆粒を50℃で乾燥させる。
3.顆粒を適切な微粉砕装置に通す。
4.品目5を加え、3分間混合し、適切な成形機で圧縮する。
【0062】
カプセルの処方
項目 成分 mg/カプセル
5mg 25mg 100mg 500mg
1.式(I)の化合物 5 25 100 500
2.含水乳糖 159 123 148 ---
3.トウモロコシデンプン 25 35 40 70
4.タルク 10 15 10 25
5.ステアリン酸マグネシウム 1 2 2 5
合計 200 200 300 600
【0063】
製造手順
1.品目1、2及び3を適切なミキサーで30分間混合する。
2.品目4及び5を加え、3分間混合する。
3.適切なカプセルに充填する。
【0064】
実験
下記の実施例は本発明を説明するが、本発明の範囲を制限するものではない。
【0065】
実施例1
(3−フェノキシ−フェニル)−(R)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
【0066】
【化18】

【0067】
1,2−ジクロロエタン(4ml)中の3−フェノキシアニリン(0.3g、1.62mmol)の溶液に、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−プロリナール(0.322g、1.62mmol)及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.480g、2.26mmol)を加えた。得られた懸濁液を50℃で一晩撹拌した。次に混合物を室温に冷まし、水(8ml)を加え、酢酸エチルで抽出した(3×20ml)。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO:ヘプタン/酢酸エチル=70:30)により精製して、明黄色の油状物を得て、これをジクロロメタン(4ml)に溶解した。トリフルオロ酢酸(1ml)を加え、そして混合物を室温で3時間撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液溶液(4N)を、塩基性のpHになるまで加え、そして混合物を酢酸エチルで抽出した(30mlで2回)。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(カラム:Isolute(登録商標)フラッシュ−NH Separtis製;溶離液:酢酸エチル)により精製して、無色の油状物を得た(0.256g、59%);MS(ISP):269.1((M+H)+.)。
【0068】
実施例2
(3−フェノキシ−フェニル)−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
【0069】
【化19】

【0070】
N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−プロリナールの代わりにN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリナールを使用し、実施例1に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):269.1([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0071】
実施例3
エチル−(3−フェノキシ−フェニル)−(R)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
【0072】
【化20】

【0073】
a)(R)−2−{[エチル−(3−フェノキシ−フェニル)−アミノ]−メチル}−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル
1,2−ジクロロエタン(4ml)中の3−フェノキシアニリン(0.3g、1.62mmol)の溶液に、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−プロリナール(0.322g、1.62mmol)及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.480g、2.26mmol)を加えた。得られた懸濁液を、50℃で一晩撹拌した。次に混合物を室温に冷まし、水(8ml)を加え、酢酸エチルで抽出した(3×20ml)。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO:ヘプタン/酢酸エチル=70:30)により精製して、明黄色の油状物を得て、これをメタノール(8ml)に溶解した。アセトアルデヒド(0.134g、3.05mmol)、塩化亜鉛(0.333g、2.44mmol)及びシアノ水素化ホウ素ナトリウム(0.115g、1.83mmol)を加え、そして混合物を40℃で一晩撹拌した。飽和酢酸アンモニウム溶液(10ml)を加え、そして酢酸エチルで抽出した(3×30ml)。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO:ヘプタン/酢酸エチル=70:30)により精製して、無色の油状物を得た0.43g(67%);MS(ISP):397.0((M+H)+.)。
【0074】
b)エチル−(3−フェノキシ−フェニル)−(R)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
ジクロロメタン(3ml)中の(R)−2−{[エチル−(3−フェノキシ−フェニル)−アミノ]−メチル}−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(0.162g、0.41mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(1ml)を加え、そして混合物を室温で3時間撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(4N)を、塩基性のpHになるまで加え、そして混合物を酢酸エチルで抽出した(30mlで2回)。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(カラム:Isolute(登録商標)フラッシュ−NH Separtis製;溶離液:酢酸エチル)により精製して、無色の油状物を得た(0.043g、36%);MS(ISP):297.5((M+H)+.)。
【0075】
実施例4
エチル−(3−フェノキシ−フェニル)−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
【0076】
【化21】

【0077】
工程a)において、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−プロリナールの代わりにN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリナールを使用し、実施例3に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):297.5([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0078】
実施例5
(3−ブロモ−フェニル)−エチル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
【0079】
【化22】

【0080】
工程a)において、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−プロリナールの代わりにN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリナールを、そして3−フェノキシアニリンの代わりに3−ブロモアニリンを使用し、実施例3に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):283.1;285.1([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0081】
実施例6
(3,4−ジクロロ−フェニル)−エチル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
【0082】
【化23】

【0083】
工程a)において、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−プロリナールの代わりにN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリナールを、そして3−フェノキシアニリンの代わりに3,4−ジクロロアニリンを使用し、実施例3に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):273.2;275.1([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0084】
実施例7
エチル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−(3−トリフルオロメトキシ−フェニル)−アミン
【0085】
【化24】

【0086】
工程a)において、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−プロリナールの代わりにN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリナールを、そして3−フェノキシアニリンの代わりに3−トリフルオロメトキシ−アニリンを使用し、実施例3に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):289.0([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0087】
実施例8
(4−クロロ−3−メトキシ−フェニル)−メチル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
【0088】
【化25】

【0089】
工程a)において、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−プロリナールの代わりにN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリナールを、3−フェノキシアニリンの代わりに4−クロロ−3−メトキシ−アニリンを、そしてアセトアルデヒドの代わりにパラホルムアルデヒドを使用し、実施例3に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):255.3([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0090】
実施例9
(4−クロロ−3−メトキシ−フェニル)−エチル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
【0091】
【化26】

【0092】
工程a)において、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−プロリナールの代わりにN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリナールを、そして3−フェノキシアニリンの代わりに4−クロロ−3−メトキシ−アニリンを使用し、実施例3に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):269.4([M+H])+.)を同等の収率で得た。
【0093】
実施例10
(4−クロロ−フェニル)−メチル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
【0094】
【化27】

【0095】
工程a)において、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−プロリナールの代わりにN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリナールを、3−フェノキシアニリンの代わりに4−クロロアニリンを、そしてアセトアルデヒドの代わりにパラホルムアルデヒドを使用し、実施例3に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):225.3([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0096】
実施例11
(4−クロロ−フェニル)−エチル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
【0097】
【化28】

【0098】
工程a)において、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−プロリナールの代わりにN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリナールを、そして3−フェノキシアニリンの代わりに4−クロロアニリンを使用し、実施例3に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):239.3([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0099】
実施例12
(4−クロロ−3−メトキシ−フェニル)−イソプロピル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
【0100】
【化29】

【0101】
a)(S)−2−[(4−クロロ−3−メトキシ−フェニルアミノ)−メチル]−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル
メタノール(27ml)中の4−クロロ−3−メトキシアニリン(1.57g、10.0mmol)の溶液に、酢酸(3ml)、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリナール(2.40g、12.05mmol)及びシアノ水素化ホウ素ナトリウム(1.56g、24.1mmol)を加えた。得られた懸濁液を室温で2時間撹拌した。重炭酸ナトリウム水溶液(30ml)を加え、そして混合物を酢酸エチルで抽出した(3×20ml)。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO:ヘプタン/酢酸エチル=70:30)により精製して、明黄色の油状物を得た(2.31g、68%);MS(ISP):341.0,342.9((M+H)+.)。
【0102】
b)(4−クロロ−3−メトキシ−フェニル)−イソプロピル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
(S)−2−[(4−クロロ−3−メトキシ−フェニルアミノ)−メチル]−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(0.68g、2.0mmol)の溶液に、2−メトキシプロペン(0.216g、3.0mmol)、トリフルオロ酢酸(0.228g、2.0mmol)及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.64g、3.0mmol)を加えた。混合物を60℃で一晩撹拌した。飽和重炭酸ナトリウム溶液(10ml)を加え、そして混合物を酢酸エチルで抽出した(3×30ml)。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。残留物をジクロロメタン(3ml)に溶解し、そしてトリフルオロ酢酸(3ml)を加えた。溶媒及び過剰のトリフルオロ酢酸を蒸発させ、ジイソプロピルエチルアミン(1ml)を加えて、遊離塩基を遊離させ、そして混合物をフラッシュクロマトグラフィー(カラム:Isolute(登録商標)フラッシュ−NH Separtis製;溶離液:酢酸エチル/ヘプタン1:1)により精製して、明黄色の油状物を得た(0.185g、33%);MS(ISP):283.5,285.2((M+H)+.)。
【0103】
実施例13
(3,4−ジクロロ−フェニル)−イソプロピル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
【0104】
【化30】

【0105】
工程a)において、4−クロロ−3−メトキシアニリンの代わりに3,4−ジクロロアニリンを使用し、実施例12に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):287.1,289.1([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0106】
実施例14
ベンジル−(3,4−ジクロロ−フェニル)−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
【0107】
【化31】

【0108】
工程a)において、4−クロロ−3−メトキシアニリンの代わりに3,4−ジクロロアニリンを、そして工程b)において2−メトキシプロペンの代わりにベンズアルデヒドジメチルアセタールを使用し、実施例12に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):335.3,337.2([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0109】
実施例15
(4−クロロ−フェニル)−エチル−((2S,4S)−4−フルオロ−ピロリジン−2−イルメチル)−アミン
【0110】
【化32】

【0111】
ジクロロメタン(8ml)中のN−エチル−4−クロロ−アニリン(0.31g、2.0mmol)の溶液に、(2S,4S)−tert−ブチルオキシカルボニル−4−フルオロ−ピロリジン−2−カルボン酸(0.47g、2.0mmol)、ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)−塩化ホスフィン酸(0.76g、3.0mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(0.39g、3.0mmol)を加えた。混合物を室温で3日間撹拌した。重炭酸ナトリウム水溶液(20ml)を加え、そして混合物をジクロロメタンで抽出した(3×20ml)。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO:ヘプタン/酢酸エチル=2:1)により精製して、明黄色の油状物を得て(0.55g)、これをテトラヒドロフラン(15ml)に溶解した。ボラン−テトラヒドロフラン−錯体(7.4ml、1M、7.4mmol)を加え、そして混合物を60℃で一晩加熱した。冷却後、塩酸水溶液(4N)を5滴加え、そして溶媒を蒸発させた。白色の残留物を塩酸水溶液(4N、10ml)に溶解し、60℃で1時間加熱した。冷却後、水酸化ナトリウム水溶液を、塩基性のpHになるまで加え、そして混合物をジクロロメタンで抽出した(2×30ml)。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(カラム:Isolute(登録商標)フラッシュ−NH Separtis製;溶離液:酢酸エチル/ヘプタン1:1)により精製して、明黄色の油状物を得た(0.137g、27%);MS(ISP):257.1((M+H)+.)。
【0112】
実施例16
(4−クロロ−フェニル)−エチル−(R)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
【0113】
【化33】

【0114】
工程a)において、3−フェノキシアニリンの代わりに4−クロロアニリンを使用し、実施例3に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):239.0,241.1([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0115】
実施例17
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−(4−クロロ−フェニル)−エチル−アミン
【0116】
【化34】

【0117】
a)(S)−2−[(4−クロロ−フェニルアミノ)−メチル]−アゼチジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル
メタノール(18ml)中の4−クロロ−アニリン(0.57g、4.5mmol)の溶液に、酢酸(2ml)、(S)−2−ホルミル−アゼチジン−1−カルボン酸 tert.ブチルエステル(1.74g、9.4mmol)を加え、15分間撹拌した後、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(0.57g、9.0mmol)を加えた。得られた懸濁液を室温で2時間撹拌した。重炭酸ナトリウム水溶液(20ml)を加え、そして混合物を酢酸エチルで抽出した(3×20ml)。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO:ヘプタン/酢酸エチル=9:1)により精製して、無色の油状物を得た(0.99g、74%);MS(ISP):297.1((M+H)+.);241.3((M−C(CH+H)+.)。
【0118】
b)(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−(4−クロロ−フェニル)−エチル−アミン
(S)−2−[(4−クロロ−フェニルアミノ)−メチル]−アゼチジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(0.08g、0.27mmol)をメタノール(3ml)に溶解し、次にアセトアルデヒド(0.059g、1.35mmol)、塩化亜鉛(0.147g、1.1mmol)及びシアノ水素化ホウ素ナトリウム(0.51g、0.81mmol)を加え、そして混合物を40℃で一晩撹拌した。飽和酢酸アンモニウム溶液(10ml)を加え、そして酢酸エチルで抽出した(3×30ml)。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮した。残留物をジクロロメタン(3ml)に溶解し、そしてトリフルオロ酢酸(3ml)を加えた。溶媒及び過剰のトリフルオロ酢酸を蒸発させ、ジイソプロピルエチルアミン(0.3ml)を加えて、遊離塩基を遊離させ、そして混合物をフラッシュクロマトグラフィー(カラム:Isolute(登録商標)フラッシュ−NH Separtis製;溶離液:酢酸エチル/ヘプタン1:1)により精製して、明黄色のガム状物を得た(0.022g、38%);MS(ISP):225.1((M+H)+.)。
【0119】
実施例18
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−エチル−フェニル−アミン
【0120】
【化35】

【0121】
工程a)において、4−クロロアニリンの代わりにアニリンを使用し、実施例17に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):191.4([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0122】
実施例19
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−エチル−(3−メトキシ−フェニル)−アミン
【0123】
【化36】

【0124】
工程a)において、4−クロロアニリンの代わりに3−メトキシアニリンを使用し、実施例17に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):221.4([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0125】
実施例20
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−(3−ブロモ−フェニル)−エチル−アミン
【0126】
【化37】

【0127】
工程a)において、4−クロロアニリンの代わりに3−ブロモアニリンを使用し、実施例17に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):269.4;271.4([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0128】
実施例21
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−(4−クロロ−フェニル)−メチル−アミン
【0129】
【化38】

【0130】
工程b)において、アセトアルデヒドの代わりにパラホルムアルデヒドを使用し、実施例17に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):211.1([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0131】
実施例22
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−(4−クロロ−フェニル)−イソプロピル−アミン
【0132】
【化39】

【0133】
工程a)において、4−クロロ−3−メトキシアニリンの代わりに4−クロロアニリンを、そしてN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリナールの代わりに(S)−2−ホルミル−アゼチジン−1−カルボン酸 tert.ブチルエステルを使用し、実施例12に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):239.3([M+H]+.)を同等の収率で得た。
【0134】
実施例23
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−ベンジル−(4−クロロ−フェニル)−アミン
【0135】
【化40】

【0136】
工程a)において、4−クロロ−3−メトキシアニリンの代わりに4−ジクロロアニリンを、そしてN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−プロリナールの代わりに(S)−2−ホルミル−アゼチジン−1−カルボン酸 tert.ブチルエステルを、そして工程b)において、2−メトキシプロペンの代わりにベンズアルデヒドジメチルアセタールを使用し、実施例12に関して記載された手順と同様にして、標記化合物、MS(ISP):287.3([M+H]+.)を同等の収率で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化41】


[式中、
は、水素、場合によりハロゲン又は低級アルコキシで置換されている、低級アルキル又はベンジルであり;
は、水素、ハロゲン又はORであり、ここで、Rは、低級アルキル、アリール又は場合によりハロゲンで置換されている低級アルキルであり;
は、水素又はフッ素であり;
Arは、フェニルであり;
nは、0又は1であり;
oは、0、1又は2である]
で示される化合物、及びその薬学的に活性な塩。
【請求項2】
式(IA):
【化42】


[式中、
は、水素、場合によりハロゲン又は低級アルコキシで置換されている、低級アルキル又はベンジルであり;
は、水素、ハロゲン又はORであり、ここで、Rは、低級アルキル、アリール又は場合によりハロゲンで置換されている低級アルキルであり;
は、水素又はフッ素であり;
Arは、フェニルであり;
oは、0、1又は2である]
で示される、請求項1記載の化合物、及びその薬学的に活性な塩。
【請求項3】
化合物が、
エチル−(3−フェノキシ−フェニル)−(R)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
エチル−(3−フェノキシ−フェニル)−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
(3,4−ジクロロ−フェニル)−エチル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
(4−クロロ−3−メトキシ−フェニル)−メチル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
(4−クロロ−3−メトキシ−フェニル)−エチル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
(4−クロロ−フェニル)−エチル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
(4−クロロ−3−メトキシ−フェニル)−イソプロピル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
(3,4−ジクロロ−フェニル)−イソプロピル−(S)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン又は
(4−クロロ−フェニル)−エチル−(R)−1−ピロリジン−2−イルメチル−アミン
である、請求項2記載の式(IA)で示される化合物。
【請求項4】
式(IB):
【化43】


[式中、
は、水素、場合によりハロゲン又は低級アルコキシで置換されている、低級アルキル又はベンジルであり;
は、水素、ハロゲン又はORであり、ここで、Rは、低級アルキル、アリール又は場合によりハロゲンで置換されている低級アルキルであり;
は、水素又はフッ素であり;
Arは、フェニルであり;
oは、0、1又は2である]
で示される、請求項1記載の化合物、及びその薬学的に活性な塩。
【請求項5】
化合物が、
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−(4−クロロ−フェニル)−エチル−アミン
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−エチル−フェニル−アミン
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−エチル−(3−メトキシ−フェニル)−アミン
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−(3−ブロモ−フェニル)−エチル−アミン
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−(4−クロロ−フェニル)−メチル−アミン
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−(4−クロロ−フェニル)−イソプロピル−アミン
(S)−1−アゼチジン−2−イルメチル−ベンジル−(4−クロロ−フェニル)−アミン
である、請求項4記載の式(IB)で示される化合物。
【請求項6】
請求項1記載の式(I)で示される化合物の製造方法であって、
a)式(II):
【化44】


で示される化合物を、式(III):
【化45】


で示される化合物と反応させて、式(IV):
【化46】


で示される化合物とし、そして式(IV)で示される化合物を脱保護して、式(I−1):
【化47】


[式中、置換基は上記と同義である]で示される化合物とするか、あるいは
b)式(IV):
【化48】


で示される化合物を、式R1’−CHOで示されるアルデヒドと反応させて、式(IV−1):
【化49】


で示される化合物とし、そして式(IV−1)で示される化合物を脱保護して、式(I−2):
【化50】


[式中、R1’は、低級アルキル又は水素であり、そして他の定義は上記と同義である]で示される化合物とするか、あるいは
c)式(II−1):
【化51】


で示される化合物を、式(VIII):
【化52】


で示される化合物と反応させて、式(IX):
【化53】


で示される化合物とし、式(IX)で示される化合物を還元し、そして脱保護して、式(I):
【化54】


[式中、置換基は上記と同義である]で示される化合物とし、
そして、所望の場合には、得られた化合物を薬学的に許容し得る酸付加塩に変換することを含む方法。
【請求項7】
請求項6記載の工程又は同等の方法により製造された、請求項1記載の式(I)で示される化合物。
【請求項8】
1種以上の式(I)で示される化合物及び薬学的に許容し得る賦形剤を含有する医薬。
【請求項9】
うつ病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害、ストレス関連障害、精神障害、統合失調症、神経障害、パーキンソン病、神経変性障害、アルツハイマー病、てんかん、偏頭痛、高血圧症、物質乱用及び代謝障害、摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満症、脂質代謝異常、エネルギーの消費及び同化の障害、体温恒常性の障害及び機能不全、睡眠及び概日リズムの障害、及び心血管障害の処置のための、請求項7記載の医薬。
【請求項10】
うつ病、精神病、パーキンソン病、不安障害及び注意欠陥多動性障害(ADHD)の処置のための、1種以上の請求項1〜5に記載の化合物を含有する、請求項9記載の医薬。
【請求項11】
うつ病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害、ストレス関連障害、精神障害、統合失調症、神経障害、パーキンソン病、神経変性障害、アルツハイマー病、てんかん、偏頭痛、高血圧症、物質乱用及び代謝障害、摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満症、脂質代謝異常、エネルギーの消費及び同化の障害、体温恒常性の障害及び機能不全、睡眠及び概日リズムの障害、及び心血管障害の処置のための医薬の製造における、請求項1記載の式(I)で示される化合物の使用。
【請求項12】
本明細書に記載の発明。

【公表番号】特表2010−534701(P2010−534701A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518608(P2010−518608)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059429
【国際公開番号】WO2009/016048
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】