説明

TCC特性が優秀なキャパシター用樹脂組成物及びポリマー/セラミック複合体

【課題】誘電体材料の誘電率を向上させつつ、高温で発生する温度安定性悪化問題を解決する。
【解決手段】ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂5ないし30重量%、ノボラックタイプエポキシ樹脂、ポリイミド、シアネートエステル及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂60ないし85重量%及び多機能性エポキシ樹脂10ないし30重量%を含み構成されることを特徴とするエンベデッドキャパシター用の樹脂組成物及びこの樹脂組成物を含むポリマー/セラミック複合体が提供される。また、これらから形成されたキャパシターの誘電体層及びこれを含むプリント回路基板が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高誘電性エンベデッドキャパシター用誘電体材料に関することとして、特に高誘電率と高い温度安定性を有するポリマー/セラミック複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、積層型回路基板において小型化及び高周波化の進展により従来のプリント回路基板(Printed Circuit Board、'PCB')上に搭載され配置された受動素子らは製品の小型化に障害要因として作用している。特に、半導体素子の急激なエンベデッド(embedded)傾向と入力/出力端子数の増加により能動集積回路チップの周りにキャパシターを含んだ数多くの受動素子らが配置される空間が確保し難くなっている。
【0003】
また、入力端子に安定的な電源を供給するためデカップリング(decoupling)用キャパシターが使用されるが、このようなデカップリングキャパシターは高周波として入力端子から最近接距離に配置されてのみ高周波化による誘導インダクタンスを低減させることが可能である。
【0004】
このような電子素子の小型化と高周波要求に応じて能動集積回路チップの周りにキャパシターを最適に備えるための方案として、キャパシター等受動素子を集積回路チップのすぐ下に内蔵する方法等が提案された。これに伴い、低等価直列インダクタンス(low Equivalent Series Inductance;low ESL)を有する多層セラミックキャパシター(Multi−Layer Ceramic Capacitor;MLCC)が開発されつつある。
【0005】
また、高周波による誘導インダクタンスの問題点を克服し小型化を具現するための解決方案としてエンベデッドキャパシターが提案された。エンベデッドキャパシターは能動集積回路チップの下のPCB内に一つの層を誘電体層に形成して成るキャパシターである。エンベデッドキャパシターは能動集積回路チップの入力端子から非常に近接した距離に配置されることによりキャパシターと連結される導線の長さを最小化し高周波による誘導インダクタンスを効果的に減少させることが可能である。
【0006】
エンベデッドキャパシターを具現するためのキャパシター用誘電体としては既存のPCB部材として使用されたFR4と言うガラス繊維強化エポキシが使用され得ると知られている。また、要求される静電容量を具現するため高誘電率の強誘電体セラミックパウダーからなるフィラーをポリマーに分散させて得た複合体がエンベデッドキャパシター用誘電体として使用され得る。例えば、エンベデッドキャパシター用高誘電率複合体として、強誘電体セラミック材料のBaTiOフィラーがエポキシ樹脂に分散して成る複合体が使用されている。このように、エンベデッドキャパシター用誘電体材料としてポリマー強誘電性セラミックの複合体を使用する場合、誘電率を高めるためにはポリマーの体積に対する強誘電性セラミックフィラーの体積比率を増加させるか、またはポリマーの誘電率を向上させるべきである。
【0007】
しかし、BaTiO等の強誘電性セラミックフィラーの体積比率を増加させ誘電率が高くなると、強誘電性セラミックフィラーの温度特性により所定の高温で誘電率が急激に変化する現象が発生する。例えば、エポキシ樹脂に BaTiOにフィラーを45体積%で分散させて得た複合体の場合、約125℃辺りで上記複合体の誘電率が急激に増加しキャパシターの静電容量に対する温度安定性が非常に悪化される。これは相当な体積%でエポキシ樹脂に分散されているBaTiOが温度が増加することに伴い約125℃辺りで正方晶系(tetragonal)から立方晶系(cubic)に相転移が起こるからである。
【0008】
一方、高誘電率のポリマー/セラミック複合体のためポリマーの誘電率を向上させる方法が使用されることもある。ポリマーの誘電率を向上させるためにポリマーに金属イオン有機物触媒を添加しポリマーチェーンの極性を増大させる方法があるが、この方法で製造された材料の場合、ポリマーの極性が増加することに伴いポリマー自体の誘電率向上による全体誘電率向上効果に比べ、所定の高温からの温度安定性が急激に悪化される特性を示す。
【0009】
複合系誘電率増加の一例として、エポキシの高誘電率化に関しても多くの研究が進行されている。これと関連しアメリカ特許第6,544,651号はエポキシ樹脂に金属有機物触媒を添加することによりエポキシ樹脂の極性を高めエポキシ樹脂の誘電率を向上させることを提案した。しかし、上記特許ではエポキシ樹脂の誘電率を増加させることにおいて、エンベデッドキャパシターの重要な製品特性である静電容量の温度安定性、すなわちTCC特性は考慮されていない。実際試験した結果(図2)、上記の通り誘電率向上効果に比べ温度安定性が悪くなる影響が遥かに大きいことが分かる。従って、高誘電率を有するエポキシ樹脂を金属有機物触媒を利用しエンベデッドキャパシターのマトリックス材料として使用するためにはTCC特性が非常に重要である。
【0010】
従って、強誘電性セラミック材料が含まれたポリマー/セラミック複合体をキャパシター用誘電体材料として使用する場合、高誘電率を確保しつつ高温で優秀な温度安定性を達成することは非常に難しいことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述の従来技術の問題点を解決するためのこととして、高誘電率エンベデッドキャパシターの誘電体材料において、温度安定性が優秀なポリマー材料を使用し、強誘電性パウダーのTcを変化させることにより、誘電体材料の誘電率を向上させつつ、高温で発生する温度安定性悪化問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1見地によると、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂5ないし30重量%、ノボラックタイプエポキシ樹脂、ポリイミド、シアネートエステル及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂60ないし85重量%及び多機能性エポキシ樹脂10ないし30重量%を含み構成されることを特徴とするエンベデッドキャパシター用樹脂組成物が提供される。
【0013】
本発明の第2見地によると、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂5ないし30重量%、ノボラックタイプエポキシ樹脂、ポリイミド、シアネートエステル及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂60ないし85重量%及び多機能性エポキシ樹脂10ないし30重量%を含み構成される混合樹脂50ないし70体積%及びセラミックフィラー30ないし50体積%を含むことを特徴とするエンベデッドキャパシター用ポリマー/セラミック複合体が提供される。
【0014】
本発明の第3見地によると、上記混合樹脂及びセラミックフィラーを含むポリマー/セラミック複合体で形成されたキャパシターの誘電体層が提供される。
【0015】
本発明の第4見地によると、上記キャパシターの誘電体層を含むプリント回路基板が提供される。
【0016】
本発明の第5見地によると、強誘電性パウダーを800ないし1300℃で熱処理し、0.01ないし10μmに粉砕することを特徴とするエンベデッドキャパシター用セラミックフィラーの誘電率を向上させる方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、極性が低いか、またはTs、Tgが高いか、架橋密度が高い ポリマーとTcが異なる強誘電性フィラーを利用し誘電率が高いセラミック材料から始まる温度安定性悪化問題を緩和させ、高い誘電率と優秀な温度安定性を有するポリマー/セラミック材料を得ることが可能となる。また、上記ポリマー/セラミック複合体をエンベデッドキャパシターに適用することにより高くて安定的な静電容量を具現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明をより詳細に説明する。本発明による樹脂とセラミックフィラーを含むエンベデッドキャパシター用誘電体層ポリマー/セラミック複合体は高い誘電特性を示しつつ優秀な温度安定性を有する。
【0019】
本発明の一具現例として、エンベデッドキャパシター用樹脂組成物は優秀な温度安定性を付与するため2以上のポリマーを混合した混合樹脂を使用する。
【0020】
上記樹脂組成物に使用されるポリマーとしては比較的極性が低いポリマーを使用することが好ましい。相対的に極性を有するポリマーは電子結合(electronic bond)と双極子分極(dipolar polarization)モデルに従う。極性を有するポリマーの場合永久双極子を有するため、両分極中双極子分極がTCCに大きい影響を及ぼす。ポリマー内の永久双極子らはセラミックでとは違ってポリマーチェーンが長く分布されているため、低い温度では電界が加われても一定の方向に配列され難い。
【0021】
しかし段々温度が高くなり一定温度、すなわちTs(softening point)になるとこれら双極子らの移動がよりスムーズになり電界方向への配列が容易になり、これによって誘電率が増加するようになる。このような現象は極性が大きい程双極子らの配列が相対的に容易になるため、極性が大きいポリマーであるほどよく発現され、強い架橋結合により双極子らの動きが制限される熱硬化性樹脂よりは相対的に双極子らの配列が自由な熱可塑性樹脂でよりよく現れる。すなわち、ポリマーチェーンで双極子の配列が容易になるとTCC(Temperature Coefficient Capacitency)に悪影響を及ぼすようになり、ポリマーのTs及びTc(curie temperature)が低い場合より低い温度からTCCが悪くなる。従って温度安定性向上のため極性が低いポリマーを使用することが好ましい。
【0022】
本発明に使用され得るポリマーとしてこれに限定されることではないが、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂、ノボラックタイプエポキシ樹脂、ポリイミド、シアネートエステル及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂及び多機能性エポキシ樹脂を挙げることが可能である。
【0023】
高誘電率エンベデッドキャパシターの誘電体層材料として強誘電性パウダーを使用することによって引き起こされる急激な温度安定性悪化問題を緩和させるため極性が相対的に低いポリマーを使用し緩和させながら解決することが可能である。また、温度安定性悪化問題を緩和させるため調節することが可能なポリマーの特性としては低い極性だけではなく高いTs、Tg及び高い架橋密度などを挙げることが可能である。
【0024】
従って、上記ポリマー中相対的に極性が低くTs、Tg及び架橋密度が高いビスフェノールAエポキシ樹脂、ブロミネートエポキシ樹脂及びビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂を混合し使用することがより好ましい。
【0025】
上記エンベデッドキャパシター用樹脂組成物において、混合される各樹脂の含量はビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂5ないし30重量%、ノボラックタイプエポキシ樹脂、ポリイミド、シアネートエステル及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂60ないし85重量%及び多機能性エポキシ樹脂10ないし30重量%を含有することが可能である。
【0026】
ビスフェノールAエポキシ樹脂等の樹脂が5重量%未満で含有すると樹脂を硬化させた時砕かれが発生し、30重量%を超過するとTgが誘電体層材料として要求される値に到達することが不可能になる問題があり、ノボラックタイプエポキシ等の樹脂が60重量%未満であってもTgが減少し、85重量%を超過すると剥離強度が低下されプリント回路基板の信頼性に問題を引き起こし、多機能性エポキシ樹脂が10重量%未満であると難軟性が低下され、30重量%を超過すると剥離強度が悪くなり好ましくない。
【0027】
本発明の他の具現例として、エンベデッドキャパシター用ポリマー/セラミック複合体は優秀な温度安定性及び高誘電率を付与するため上記混合樹脂と高誘電率セラミックフィラーを含み使用することが可能である。
【0028】
複合系の誘電率を向上させるためには強誘電性パウダーの使用が不可避である。しかし、このような強誘電性パウダーはTc(Curie Temperature)辺りの温度に到達すると正方晶系(Tetragonal)相から立方晶系(Cubic)相へと相転移を同伴するようになる。このような相転移現象により格子はストレスを受け、誘電率の急激な変化が起こるようになる。静電容量は誘電率に対する関数であるため、静電容量の温度安定性もまた悪影響を受けるようになる。
【0029】
アメリカ特許第6,608,762号はこのような問題点を克服するためnmサイズのBT粒子を使用する方法を提案した。nmサイズのBT粒子は常温でも立方晶系相を有するためTcで相転移が起こらず、これによってTCC特性も改善可能なことである。しかし、このような方法で製造された複合体の場合、X7R TCC特性を満足することは可能であるが、この際の誘電率は30以下の低い値を有する。すなわち、誘電率を高めるためには正方晶系相の強誘電体使用が不可避である。
【0030】
本発明は正方晶系相を維持しながらも誘電率が高い複合体を製造しようと使用される強誘電体のTcを変化させる方法を使用する。すなわち、セラミックフィラーを上記のような粉砕により強誘電性パウダーがTc辺りに到達するとしても相転移による誘電率の急激な変化を防止し、熱処理によりフィラーが粉砕されても正方晶系相を維持することを可能にしポリマー/セラミック複合体が高い誘電率を維持しつつTCC特性を満足するようにする。
【0031】
上記セラミックフィラーはポリマー/セラミック複合体の総体積に対し30ないし50体積%に添加する。セラミックフィラーが30体積%未満であると静電容量が低下され好ましくなく、50体積%を超過する場合はエポキシ樹脂の減少により金属フォイルに対する接着力が低下され好ましくない。
【0032】
上記セラミックフィラーは特に限定されることではないが、例えばBaTiO、PbTiO、PMT−PT等のPb系、SrTiO、CaTiOまたはMgTiO等の強誘電性絶縁体が単独または混合して使用され得る。また、フィラーの大きさは本発明が属する分野で通常使用される粒径を有するものを使用することが可能である。
【0033】
上記添加剤はMn、Mg、Sr、Ca、Y、Nb等の2+、3+、5+酸化物、またはCe、Dy、Ho、Yb、Nd等のランタン系元素の酸化物が単独または混合で使用され得る。
【0034】
上記添加剤は強誘電体1mol当たり0.01−5mol%、より好ましくは1−2mol%に添加され得る。添加剤の含量が0.01mol%未満であると誘電率上昇効果は微々たるもので、5mol%を超過すると却って誘電率が減少し好ましくない。
【0035】
上記添加剤を導入した強誘電体を酸化雰囲気、還元雰囲気または真空雰囲気下で800−1300℃、好ましくは1000−1300℃で30分-2時間熱処理を行う。
【0036】
800℃より低い温度または30分未満で熱処理する場合は上記セラミックフィラーに対する添加剤の結合量が充分ではないため誘電率上昇効果が小さく、1300℃を超過するか2時間以上熱処理する場合は熱処理による粒成長及び絶縁層が厚くなり却って誘電率が減少するため好ましくない。
【0037】
上記熱処理は酸化雰囲気、還元雰囲気または真空雰囲のように通常行う方法で熱処理することが可能である。
【0038】
このような添加剤を導入し熱処理過程を経たセラミックフィラー、これに限定することではないが、例えば、BaTiOパウダーにCaを導入し熱処理したBaCaTiO3フィラーのようなセラミックフィラーは高誘電率を有し、正方晶系相を維持し、Tcが上昇するようになる。このような処理を経たセラミックフィラーは誘電率が常温、1kHz帯域で40以上の値を有し、Tcが125℃以上の値を有する。従って、プリント回路基板の製造工程中高温工程でもTcの上昇により正方晶系相から立方晶系相への相転移が起こらなくなり、相転移による誘電率の急激な変化も発生せず、安定なTCC特性を有する。
【0039】
上記添加剤を導入し熱処理した上記フィラーは平均粒径0.01ないし10μmへの粉砕過程を経る。平均粒径が0.01μm未満であると、満遍なく分散させ難く、10μmを超過するとキャパシター製造時成形性が低下され、洞空が発生するため好ましくない。
【0040】
さらに、上記ポリマー/セラミック複合体は硬化剤、硬化促進剤、分散剤及び/または気泡除去剤等を追加で含むことが可能である。これらの種類及び使用量はこの技術分野の技術者が適合に選定し使用可能である。
【0041】
例えば、上記硬化剤はビスフェノールAノボラック樹脂のようなフェノール類、ジシアンジアミド、ジシアングアニジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等のアミン系、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカーボン酸などの酸無水物硬化剤などの一般的に知られているものを単独または混合して使用され得る。上記硬化促進剤は2−メチルイミダゾールのような一般的に知られているものを使用することが可能である。
【0042】
本発明の他の具現例として、上記のように3種類のポリマーを混合した混合樹脂及び高誘電率セラミックフィラーに添加剤を添加して熱処理し粉砕したセラミックフィラーを含む組成物からなるエンベデッドキャパシター用誘電体層ポリマー/セラミック複合体を使用しエンベデッドキャパシター層を製造する場合、高誘電率を有しつつTCC特性がX7Rを満足する温度安定性が優秀な材料が得られる。
【0043】
本発明の他の具現例として、上記のような2以上のポリマーを混合した混合樹脂及び熱処理して粉砕したセラミックフィラーを含む組成物からなるポリマー/セラミック複合体を使用したエンベデッドキャパシター層を使用しプリント回路基板を製作する場合、高誘電率及びTCC特性がX7Rを満足する温度安定性が優秀な基板を得ることが可能である。
【0044】
本発明の他の具現例として、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂、ノボラックタイプエポキシ樹脂、ポリイミド、シアネートエステル及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂及び多機能性のエポキシ樹脂を混合する方法によりエンベデッドキャパシター用誘電体層材料の温度安定性を向上させることが可能である。
【0045】
本発明の他の具現例として、強誘電性パウダーに添加剤を添加し800ないし1300℃で熱処理し0.01ないし10μmに粉砕する方法によりエンベデッドキャパシター用セラミックフィラーの誘電率を向上させる方法が提供される。
【0046】
以下、本発明を実施例を通じより具体的に説明する。しかし、本発明は実施例により限定されることではない。
【実施例1】
【0047】
本実施例はポリマーのみ利用しキャパシター用誘電体層を製造した。ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂(EEW=210-240)、ブロミネートビスフェノールAエポキシ樹脂(EEW=380-420)、ビスフェノールAエポキシ樹脂(EEW=184-190)を混合した混合樹脂を2-メトキシエタノールに80重量%溶解させた後、硬化剤として、ビスフェノールAノボラック樹脂0.8eq、硬化促進剤として2MI(2−メチルイミダゾール)0.1重量%を添加し50℃で混合した。この混合溶液をCuフォイルにキャスティングし170℃オーブンで2分30秒間B-ステージまで半硬化させた後、このRCC2枚を重ね200℃で積層した。この積層されたCCLにテープを貼り硝酸水溶液にエッチングし電極を形成しTCCを測定した。この際、TCC特性を図3(ΔC(%)D)に図示した。
【実施例2】
【0048】
ポリマー/セラミック複合体として、セラミックフィラーはBaCaTiO3(0.2μm)を1000℃で2時間熱処理した後、2時間粉砕し粒子のサイズが0.2μmのものを使用した。ポリマーとしては上記実施例1と同一のポリマーを使用し、この際、ポリマー/セラミックの含量比は80重量%(45体積%):20重量%(55体積%)である。
【0049】
この複合体の製造方法は次の通りである。メチルエチルケトンに80重量%溶解されている混合樹脂に硬化剤としてビスフェノールAノボラック樹脂0.8eq、硬化促進剤として2MI(2-メチルイミダゾール)0.1重量%を添加した後50℃で混合した。この混合溶液に分散剤、気泡除去剤、BaCaTiO3を45重量%添加し、Cuフォイルにキャスティングした後170℃オーブンで2分30秒間B-ステージまで半硬化させた後、このRCC2枚を重ね200℃で積層した。この積層されたCCLにテープを貼り硝酸水溶液にエッチングし電極を形成しTCC特性を測定した。この際、TCC特性を図4(D+フィラー)及び図6(Tc=129.3℃)に図示した。
【実施例3】
【0050】
実施例2と同様の方法を利用しポリマー/セラミック複合体を製造した。この際、セラミックフィラーとしてBaTiO0.3μmを使用し、エポキシ樹脂と硬化剤、硬化促進剤は実施例1と同一組成を使用した。この際、TCC特性を図5(Tc:128.3℃)に図示した。
【実施例4】
【0051】
実施例2と同様の方法を利用しポリマー/セラミック複合体を製造した。この際、セラミックフィラーとしてBaTiO0.5μmを使用し、エポキシ樹脂と硬化剤、硬化促進剤は実施例1と同一組成を使用した。この際、TCC特性を図5(Tc:130.1℃)に図示した。
【実施例5】
【0052】
実施例2と同様の方法を利用しポリマー/セラミック複合体を製造した。この際、セラミックフィラーとしてBaTiO0.7μmを使用し、エポキシ樹脂と硬化剤、硬化促進剤は実施例1と同一の組成を使用した。この際、TCC特性を図5(Tc:130.6℃)に図示した。
(比較例1)
【0053】
実施例2と同一方法でポリマー/セラミック複合体を製造した。この際、セラミックフィラーはBaCaTiO3(0.25μm)を1100℃で2時間熱処理した後12時間粉砕し粒子のサイズが0.2μmのものを使用し、ポリマーはビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂を使用し、硬化剤はDICY(ジシアンジアミド)をエポキシ対比2.5重量%使用した。この際の誘電率は1kHzで31であり、TCC特性を図1(k=31)に図示した。
(比較例2)
【0054】
セラミックフィラーとしてBaTiO30.5μmを使用することを除いては比較例1と同一方法でポリマー/セラミック複合体を製造した。この際の誘電率は14.5であり、TCC特性を図1(k=14.5)に図示した。
(比較例3)
【0055】
ポリマーのみ利用し誘電体層を製造した。エポキシ樹脂は一般FR−4適用エポキシのブロミネートビスフェノールAエポキシ樹脂(EEW440−460)を使用し、硬化剤はDICYをエポキシ対比2.9重量%を使用し、セラミックフィラーを使用しないことを除いては実施例1と同一方法で実施した。この際、TCC特性を図2(DIM−110_3)で図示した。
(比較例4)
【0056】
コバルト(III)アセチルアセトナートをエポキシ対比5重量%添加し混合する過程を追加することを除いては比較例3と同一方法で実施した。この際、TCC特性を図2(DIM−110_5_wtCo1)で図示した。
(比較例5)
【0057】
ポリマーとしてPMMA(ポリ(メチルメタクリレート))を使用し、このPMMAパウダーをマウンティングプレス(SIMPLIMET1000)を使用し180℃、300barの圧力で30分間維持させて硬化させ、電極を形成するため一定の大きさに切断された銅フォイルを両面に付着し150℃で300barの圧力で5分間圧着させた。この際TCC特性を図3(ΔC(%)A)に図示した。
(比較例6)
【0058】
実施例1と同様の方法でポリマー/セラミック複合体を製造した。この際、エポキシ樹脂はビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂(EEW=270−310)、硬化剤はDICY2.5重量%、硬化促進剤2MIは0.1重量%を使用した。この際TCC特性を図3(ΔC(%)B)に図示した。
(比較例7)
【0059】
実施例1と同様の方法でポリマー/セラミック複合体を製造した。この際、エポキシ樹脂はブロミネートビスフェノールAエポキシ樹脂(EEW=350−370)、硬化剤はDICY2.9重量%、硬化促進剤2MIは0.1重量%を使用した。この際TCC特性を図3(ΔC(%)C)に図示した。
(比較例8)
【0060】
実施例2と同様の方法を使用し、ポリマー/セラミック複合体を製造した。この際、エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤は比較例6と同一組成を利用した。この際、TCC特性を図4(B+フィラー)に図示した。
(比較例9)
【0061】
実施例2と同様の方法を使用し、ポリマー/セラミック複合体を製造した。この際、セラミックフィラーはBaCaTiO3(0.2μm)を1100℃で2時間熱処理した後2時間粉砕し粒子サイズが0.2μmのものを使用し、エポキシ樹脂と硬化剤、硬化促進剤は実施例1と同一組成を利用した。この際TCC特性を図6(Tc:127℃)に図示した。
【0062】
図1は比較例1及び2によるポリマー/セラミック複合体のTCCを示したグラフである。全体複合体の誘電率を高めるためにはフィラーの含量を増加させるか、またはフィラーの種類を変化させる方法とエポキシの誘電率を増加させる方法等を使用することが可能である。まず、フィラーの含量及び種類を変化させ誘電率が異なる2つの複合体を製造した後TCC特性を比較してみると、誘電率が2倍以上増加した場合、TCC特性がX7R(-155〜125℃、ΔC≦±15%)を満足しないことが分かる。
【0063】
図2は比較例3及び4による結果を示したものである。図2に示された通り、比較例2は誘電率が低いためデカップリングキャパシターとして適せず、このような問題を解決するため比較例4のように金属有機物触媒を利用し誘電率を増加させたエポキシ樹脂の場合(ΔC(%)DIM110_5wtCo_1)、フィラーを使用していないにもかかわらずエポキシ樹脂の極性増加によりΔCの変化量が30%を超過する。従って、デカップリングキャパシターへの活用が不可能であることが分かる。
【0064】
実施例1、比較例5ないし7からポリマーの極性程度に伴いPMMA(A)、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂(B)、ブロミネートエポキシ樹脂(C)、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ブロミネートエポキシ樹脂及びビスフェノールAエポキシ樹脂の混合樹脂(D)のTCC特性を比較し図3に示した。図3はカルボニル基により極性が最も高いと予想される熱可塑性樹脂のPMMAが高温での温度安定性が最も悪く、エポキシ基とフェニル基の比率が高いため極性が高いビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂のTCCがその次に悪く、電気陰性度が大きいブロムとの結合で極性が一般的なビスフェノールAエポキシ樹脂より強くなるブロミネートエポキシ樹脂がその次、最も極性が小さいビスフェノールAエポキシ樹脂を一定量含有しているD組成樹脂のTCCが一番優秀であることが分かる。
【0065】
図4は極性が異なるポリマーに同じフィラーを混合した時の相違点を比較するため実施例2及び比較例8のような熱硬化性樹脂や極性が違うB組成のエポキシ樹脂とD組成のエポキシ樹脂に同一フィラーを混合しTCC挙動を測定し示したものである。ここに混合したフィラーは常温、1kHz帯域でポリマーに45体積%を混合した場合誘電率が45ないし50程度の高い強誘電性パウダーを使用したものである。その結果、常温における誘電率は誤差範囲内で同じであるが、温度が高くなるに連れ極性が低いD組成の温度安定性がB組成より遥かに優秀である。これは極性が低いポリマーの使用が強誘電性フィラーを多量添加した場合生じる高温での温度安定性低下を緩和させることと判断することが可能である。
【0066】
図5は実施例3ないし5の結果として、強誘電体のTc移動によるTCC特性を示したものである。図面に示した通り同一誘電常数(k=29)を有する材料においてTcによるTCC挙動は差をみせる。すなわち、Tcが高いほど安定的なTCC挙動をみせることが分かる。
【0067】
図6は実施例2及び比較例9によるTCC特性を示したこととして、強誘電性パウダーに熱処理及び粉砕しフィラーの誘電率を高めた後、このパウダーを他の熱処理及び粉砕しTcが相違な2種類のフィラーに製造し、エンベデッドキャパシター用ポリマー/セラミック複合体を製造したものである。この際、複合体の誘電率は約50で2種類のパウダーを使用した系において同一であり、既存エンベデッドキャパシター用ポリマーセラミック複合体と比較し同一フィラーの体積比と仮定する場合2倍以上の値を有するものである。図6に示した通りTcが低い複合体(比較例9)のTCC特性はX7R特性を外れ静電容量の変化が30%を上回る。しかし、Tcが高い複合体(実施例2)のTCC特性はX7Rを満足することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】従来技術に伴う比較例1及び2によるポリマー/セラミック複合体のTCC特性を比較したグラフである。
【図2】従来技術に伴う比較例3及び4による有機物触媒により誘電率が向上されたエポキシ樹脂及び誘電率が改善されない樹脂のTCC特性を比較したグラフである。
【図3】本発明に伴う実施例1及び従来技術による比較例5ないし7によるエポキシ種類別TCC特性を示したグラフである。
【図4】本発明に伴う実施例2及び従来技術による比較例8による極性が異なるポリマーに同じフィラーを混合した場合のTCC特性を比較したグラフである。
【図5】実施例3ないし5による強誘電体のTc移動によるTCC特性を示したグラフである。
【図6】フィラー及び樹脂が同一の場合、本発明に伴う実施例2及び従来技術による比較例9によるTcの差によるTCC特性を比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂5ないし30重量%、ノボラックタイプエポキシ樹脂、ポリイミド、シアネートエステル及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂60ないし85重量%及び多機能性エポキシ樹脂10ないし30重量%を含み構成されることを特徴とするエンベデッドキャパシター用樹脂組成物。
【請求項2】
ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂5ないし30重量%、ノボラックタイプエポキシ樹脂、ポリイミド、シアネートエステル及びこれらの組合せからなる群から選択される樹脂60ないし85重量%及び多機能性エポキシ樹脂10ないし30重量%を含み構成される混合樹脂50ないし70体積%及びセラミックフィラー30ないし50体積%を含むことを特徴とするエンベデッドキャパシター用ポリマー/セラミック複合体。
【請求項3】
上記セラミックフィラーはBaTiO、PbTiO、PMT−PT、SrTiO、CaTiOまたはMgTiOであることを特徴とする請求項2に記載のエンベデッドキャパシター用ポリマー/セラミック複合体。
【請求項4】
上記セラミックフィラーは強誘電性パウダーに添加剤を添加し800ないし1300℃で30分ないし2時間熱処理し、0.01ないし10μmに粉砕しセラミックフィラーの誘電率が上昇されたことを特徴とする請求項2に記載のエンベデッドキャパシター用ポリマー/セラミック複合体。
【請求項5】
上記セラミックフィラーは誘電率が常温、1kHz帯域で40以上であることを特徴とする請求項4に記載のエンベデッドキャパシター用ポリマー/セラミック複合体。
【請求項6】
上記セラミックフィラーはTcが少なくとも125℃以上に上昇されたことを特徴とする請求項4に記載のエンベデッドキャパシター用ポリマー/セラミック複合体。
【請求項7】
硬化剤、硬化促進剤、気泡除去剤及び/または分散剤を追加で含むことを特徴とする請求項2ないし請求項6中いずれか一つに記載のエンベデッドキャパシター用ポリマー/セラミック複合体。
【請求項8】
請求項7のエンベデッドキャパシター用誘電体層ポリマー/セラミック複合体で形成されたキャパシターの誘電体層。
【請求項9】
請求項8のキャパシターの誘電体層を含むプリント回路基板。
【請求項10】
強誘電性パウダーを800ないし1300℃で30分ないし2時間熱処理し、0.01ないし10μmに粉砕しセラミックフィラーのTcを上昇させることを特徴とするエンベデッドキャパシター用セラミックフィラーの誘電率を向上させる方法。
【請求項11】
上記強誘電性パウダーはBaTiO、PbTiO、PMT−PT、SrTiO、CaTiOまたはMgTiOであることを特徴とする請求項10に記載の誘電率を向上させる方法。
【請求項12】
上記強誘電性パウダーの熱処理はMn、Mg、Sr、Ca、Y、Nbの2+、3+、5+酸化物、またはCe、Dy、Ho、Yb、Ndランタン系元素の酸化物が単独または混合からなる添加剤を導入した後行うことを特徴とする請求項11に記載の誘電率を向上させる方法。
【請求項13】
セラミックフィラーの誘電率が常温、1kHz帯域内で40以上であることを特徴とする請求項10に記載の誘電率を向上させる方法。
【請求項14】
上記セラミックフィラーは熱処理及び粉砕後Tcが処理前と比べ少なくとも2℃上昇されることを特徴とする請求項10に記載の誘電率を向上させる方法。
【請求項15】
上記セラミックフィラーはTcが少なくとも125℃以上であることを特徴とする請求項14に記載のエンベデッドキャパシター用セラミックフィラーの誘電率を向上させる方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−229225(P2006−229225A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35815(P2006−35815)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】