説明

TGFβ由来アポトーシス調節方法

【課題】アポトーシス抑制物質およびアポトーシス促進物質を探索するのに有用なタンパク質及びそれをコードする遺伝子を同定し、当該遺伝子を利用することによってTGFβに由来するアポトーシスを調節する方法を提供することである。
【解決手段】アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現および/又は機能を調節することを含む、TGFβ由来のアポトーシスを調節する方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、TGFβに由来するアポトーシスの調節方法に関する。より詳細には、本発明は、TGF−βによるアポトーシス誘導の際に高発現する遺伝子を利用してアポトーシスを調節する方法に関する。本発明はまた、薬剤のスクリーニング方法にも関する。
【0002】
【従来技術】
アポトーシスは、細胞及び個体の発生、分化、成熟におけるプログラムされた細胞死において、または、種々の状況下に誘導される細胞死において、認められる細胞が死に至る過程を意味する。アポトーシスは、生理学上の種々の条件下に起こるとされている。その形態学的特徴としては、周囲の細胞との接触の欠乏、細胞質の濃縮化、エンドヌクレアーゼの活性に関連したクロマチンの凝縮及び核凝縮、核の分節化等を挙げることができ、更に細胞表面の微絨毛の消失、細胞表面の平滑化(細胞表面の水泡形成:membranece blebbing)等も観察される。またエンドヌクレアーゼ活性により、DNAが断片化する現象も観察され、アポプティック体の細胞の最終断片は、隣接する細胞により貪食される機構として論じられている[Immunology Today,7(4),115-119 (1986)]。
【0003】
アポトーシスは、各種多様な疾患において重要な係わりを有することが明らかにされてきており、細胞のアポトーシスを誘導または抑制することにより、これら疾患の診断、予防及び治療を図る試みが近年種々行なわれている。
【0004】
アポトーシスとは、プログラム細胞死とも言われ、正常な生理学的過程として多くの組織で起こるある種の細胞死を指し、細胞自身に備わっている遺伝的プログラムの活性化によって引き起こされる。そして、最終的にこれらアポトーシスを起こした細胞は、炎症を起こしたりすることもなく、周辺の食細胞によって取り除かれる(長田重一、(1998) 実験医学、Vol.16、1242-1246)。アポトーシスは、正常な生理学的過程以外にも、癌、自己免疫疾患、神経変性疾患等の重篤な疾患の発症にも関与していることが知られている。そこで、上記疾患の治療法としてアポトーシスを誘導または阻害する方法およびこれらの方法に有用な薬剤の開発が切望されている。アポトーシスの誘導メカニズムに関しては、これまでに例えば、Fas抗原や腫瘍壊死因子レセプターのリガンドが動物細胞表面に局在するそれらのレセプターと結合することにより、アポトーシスを誘導する過程(Nagata, S., (1997) Cell, 88, 355-365)や、抗癌剤やX線照射による癌細胞の殺傷がアポトーシスを誘導する細胞内経路を活性化することによって起こること(Haldar, S., et al.,(1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92, 4507-4511)が詳細に解明された。
【0005】
【非特許文献1】
Immunology Today, 7(4),115-119 (1986)
【非特許文献2】
長田重一、(1998) 実験医学、Vol.16、1242-1246
【非特許文献3】
Nagata, S., (1997) Cell, 88, 355-365
【非特許文献4】
Haldar, S., et al.,(1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92, 4507-4511
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
細胞のアポトーシス誘導時に活性化されて特異的に発現される遺伝子が提供されれば、各細胞でのその発現レベルや構造及び機能解析、並びにその発現産物に関する解析を行なうことにより、アポトーシスまたはその関連疾患の病態を解明したり、その診断および治療方法を確立することが可能になる。
【0007】
本発明の第一の目的は、アポトーシス抑制物質およびアポトーシス促進物質を探索するのに有用なタンパク質及びそれをコードする遺伝子を同定し、当該遺伝子を利用することによってTGFβに由来するアポトーシスを調節する方法を提供することである。
本発明の第二の目的は、上記遺伝子を標的として作用するアポトーシス抑制物質またはアポトーシス促進物質をスクリーニングする方法、並びにアポトーシス抑制物質またはアポトーシス促進物質を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、マイクロアレイを用いて、TGF-βによって発現誘導される遺伝子の網羅的な単離を進めてきた。その過程において、TGF-βにより発現量に有意な差を示す遺伝子として、Bimを同定した。本発者らはさらに研究を進め、BimのRNAi効果によって、TGF-βによって誘導されるアポトーシスを抑制できることを実証した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0009】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現および/又は機能を調節することを含む、TGFβ由来のアポトーシスを調節する方法。
(2)アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現および/又は機能を阻害することを含む、アポトーシスを抑制する方法。
(3)アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現および/又は機能を阻害する物質を含む、アポトーシス抑制剤。
(4) アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現および/又は機能を増大することを含む、アポトーシスを促進する方法。
(5) アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現および/又は機能を増大する物質を含む、アポトーシス促進剤。
【0010】
(6) アポトーシス誘導遺伝子Bimの塩基配列中の連続する少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド、又は該オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、アポトーシス診断薬。
(7) アポトーシス誘導遺伝子Bimの塩基配列中の連続する少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、アポトーシス抑制剤。
(8) アポトーシス誘導遺伝子Bimの塩基配列から転写されるRNAの塩基配列中の連続する少なくとも10ヌクレオチドを含む二本鎖RNA、またはそれをコードするDNAを含む、アポトーシス抑制剤。
【0011】
(9) アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現および/又は機能の変化を指標として、アポトーシスを抑制又は促進する物質をスクリーニングする方法。
(10) アポトーシス誘導タンパク質Bimをコードする遺伝子を有する細胞をTGF−βと一緒に、被験物質の存在下および非存在下において培養し、被験物質の有無に応じた当該アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現および/又は機能の変化を指標として、アポトーシスを抑制又は促進する物質をスクリーニングする、(9)に記載の方法。
(11) 配列番号6及び配列番号7を有するRNAi試薬。
UGGCUCUGUC UGUAGGGAGG UAGGGGCC(配列番号6);
GGCCCCUACC UCCCUACAGA CAGAGCCA(配列番号7)
(12) (UGGCUCUGUC UGUAGGGAGG UAGGGGCC(配列番号6))−(リンカー配列)−(GGCCCCUACC UCCCUACAGA CAGAGCCA(配列番号7))からなるRNAi試薬。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(1)本発明で利用するアポトーシス誘導タンパク質(Bim)及びアポトーシス誘導遺伝子(Bim)について
本発明で利用する本発明で利用するアポトーシス誘導タンパク質(Bim)およびアポトーシス誘導遺伝子(Bim)は、ヒトなどの哺乳動物を含む任意の生物に由来するアポトーシス誘導タンパク質およびその遺伝子である。Bim遺伝子は各種生物においてその配列が公知であり、例えば、O'Connor, L., (1998) EMBO J, 17, 384-395、Mami, U., (2001) FEBS Letters, 509, 135-141、およびMichela, M., (2002) Mol. Cell. Biol, 22, 3577−3589などに記載されている。これまでに、アポトーシスの制御に関係する数多くのBcl-2ファミリー分子が同定されている。このファミリー分子の構造的特徴は、Bcl-2に高い相同性を有するBH1、BH2、BH3、BH4と呼ばれるドメインのいくつかを有することであり、その構造および機能から3つのサブファミリーに分類される。BH1、BH2、BH3、BH4ドメインを有しアポトーシス抑制作用をもつBcl-2サブファミリー (Bcl-2、Bcl-xL)、BH1、BH2、BH3ドメインを有しアポトーシス促進作用をもつBaxサブファミリー (Bax、 Bak)、そしてBH3ドメインのみを有しアポトーシス促進作用をもつBH3 only タンパク質 (Bim、Bik、Bad、Bid、Hrk/DP5、Noxa、Puma、Bmf) である。BH3 only タンパク質はBH3ドメインを介してBcl-2サブファミリーおよびBaxサブファミリーと結合しアポトーシスを促進する。本発明で利用するアポトーシス遺伝子(Bim)はBH3 only タンパク質に属する。
【0013】
本発明では特に好ましくは、ヒト由来のアポトーシス誘導タンパク質(Bim)を対象とすることができる。ヒト由来のアポトーシス誘導タンパク質(Bim)のアミノ酸配列と塩基配列は公知であり、その一例を配列表の配列番号1から4に記載する。BimSのDNA塩基配列とアミノ酸配列を配列番号1と2に示し、BimADのDNA塩基配列とアミノ酸配列を配列番号3と4に示す。
【0014】
本明細書で「アポトーシス誘導タンパク質(Bim)又はアポトーシス誘導タ遺伝子(Bim)」と言う場合、上記した天然に存在する野生型タンパク質や野生型遺伝子のみならず、アポトーシスを誘導する活性を有する限りは、それらの変異体又は相同体の全てを包含するものとする。
【0015】
変異体タンパク質又は相同体タンパク質としては、以下のものが挙げられる。
(a)野生型のBimタンパク質のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつアポトーシスを誘導する活性を有するタンパク質;又は
(b)野生型のBimタンパク質ののアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつアポトーシスを誘導する活性を有するタンパク質:
【0016】
本明細書で言う「アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。
【0017】
本明細書で言う「95%以上の相同性を有するアミノ酸配列とは」とは、アミノ酸の相同性が少なくとも95%以上であることを意味し、相同性は好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上である。
【0018】
本明細書で言う「アポトーシスを誘導する活性を有するタンパク質」とは、TGF−βによるアポトーシス誘導を促進できる活性を有するタンパク質を意味する。
【0019】
あるタンパク質がTGF−βによるアポトーシス誘導を促進できる活性を有するか否かは、例えばTGF−βによってアポトーシスが誘導され得る細胞に、上記タンパク質をコードするDNAを導入して一過性に過剰発現させ、該細胞にTGF−βを添加してアポトーシスを誘導した際に当該DNAの過剰発現が、アポトーシスを誘導する細胞の数を増やすか否かを調べることにより検出することができる。
【0020】
また、変異体遺伝子又は相同体遺伝子としては、以下のものが挙げられる。
(a)野生型のBim遺伝子の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換及び/又は付加された塩基配列からなり、かつアポトーシスを誘導する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;又は
(b)野生型のBim遺伝子の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつアポトーシスを誘導する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子:
【0021】
本明細書で言う「塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換及び/又は付加された塩基配列」における「1もしくは数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から60個、好ましくは1から30個、より好ましくは1から20個、さらに好ましくは1から10個、特に好ましくは1から5個程度を意味する。
【0022】
本明細書で言う「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、通常の条件下(例えば DIG DNA Labeling kit(ベーリンガー・マンハイム社製Cat No.1175033)でプローブをラベルした場合に、32℃のDIG Easy Hyb溶液(ベーリンガー・マンハイム社製CatNo.1603558)中でハイブリダイズさせ、50℃の0.5×SSC溶液(0.1%[w/v]SDSを含む)中でメンブレンを洗浄する条件(1×SSCは0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウムである)でのサザンハイブリダイゼーションで、Bim遺伝子にハイブリダイズする程度であればよい。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989(以下、モレキュラークローニング第2版と略記)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0023】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有するDNAが挙げられ、例えば80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するDNAが挙げられる。
【0024】
(2)本発明で用いる遺伝子の取得
本発明で用いるBim遺伝子の取得方法は特に限定されない。本明細書の配列表の配列番号1〜4に記載した塩基配列およびアミノ酸配列の情報に基づいて適当なブローブやプライマーを調製し、それらを用いて、ヒトcDNAライブラリー(本発明の遺伝子が発現される適当な細胞より常法に従い調製したもの)から所望クローンを選択することにより、所望の遺伝子を単離することができる。
【0025】
PCR法により本発明の遺伝子を取得することもできる。例えば、ヒト培養細胞由来の染色体DNAまたはcDNAライブラリーを鋳型として使用し、所望のBim遺伝子を増幅できるように設計した1対のプライマーを使用してPCRを行う。
PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応工程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができる。次いで、増幅されたDNA断片を、大腸菌等の宿主で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。
【0026】
上記したブローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、並びに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、モレキュラークローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載された方法に準じて行うことができる。
【0027】
本明細書中上記したBim遺伝子の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換及び/又は付加された塩基配列からなり、かつアポトーシスを誘導する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(変異遺伝子)は、化学合成、遺伝子工学的手法又は突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法で作製することもできる。例えば、Bim遺伝子の塩基配列を有するDNAを利用し、これらDNAに変異を導入することにより変異DNAを取得することができる。具体的には、Bim遺伝子の塩基配列を有するDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的手法等を用いて行うことができる。遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、モレキュラークローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載の方法に準じて行うことができる。
【0028】
上述の通り、Bim遺伝子の塩基配列において、種々の人為的処理、例えば部位特異的変異導入、変異剤処理によるランダム変異、制限酵素切断によるDNA断片の変異・欠失・連結等により、部分的にDNA配列が変化したものであっても、これらDNA変異体がアポトーシスを誘導する活性を有するタンパク質をコードするDNAであれば、本発明で使用することができる。
【0029】
本明細書中上記した、Bim遺伝子の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつアポトーシスを誘導する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子は、上述した条件下で、一定のハイブリダイゼーション条件下でコロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを行うことにより得ることができる。
【0030】
(3)アポトーシス誘導タンパク質(Bim)に対する抗体を用いたアポトーシス抑制剤
本発明によれば、アポトーシス誘導タンパク質(Bim)に対する抗体を用いたアポトーシス抑制剤が提供される。本発明の抗体としては、上記のアポトーシス誘導タンパク質に特異的に結合できるものであれば、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれでもよい。
【0031】
ポリクローナル抗体は、抗原を免役した動物から得られる血清を分離、精製することにより調製することができる。モノクローナル抗体は、抗原を免疫した動物から得られる抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合させてハイブリドーマを作製し、該ハイブリドーマを培養するか、動物に投与して該動物を腹水癌化させ、上記の培養液または腹水を分離、精製することにより調製することができる。
【0032】
抗原は、各種ヒト培養細胞から本発明のタンパク質を精製するか、配列番号2に記載のアミノ酸配列またはその変異配列またはそれらの一部を有するタンパク質をコードするDNAを含む組換えベクターを大腸菌、酵母、動物細胞または昆虫細胞などの宿主に導入して、該DNAを発現させて得られるタンパク質を分離、精製することにより調製できる。また、抗原は、配列番号2に示されるアミノ酸配列の部分配列を有するペプチドをアミノ酸合成機を用いて合成することによって調製することもできる。
【0033】
免疫方法としては、抗原をウサギ、ヤギ、ラット、マウスまたはハムスター等などの非ヒト哺乳動物の皮下、静脈内または腹腔内にそのまま投与してもよいが、抗原をスカシガイヘモシアニン、キーホールリンペットヘモシアニン、牛血清アルブミン、牛チログロブリン等の抗原性の高いキャリアタンパク質と結合して投与したり、フロインドの完全アジュバント(Complete Freund's Adjuvant)、水酸化アルミニウムゲル、百日咳菌ワクチン等の適当なアジュバントとともに投与することも好ましい。
【0034】
抗原の投与は、1回目の投与の後1〜2週間おきに3〜10回行うことができる。各投与後3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、該血清が免疫に用いた抗原と反応するか否かを酵素免疫測定法等に従い、抗体価を測定することにより調べる。免疫に用いた抗原に対し、その血清が十分な抗体価を示す非ヒト哺乳動物を、血清または抗体産生細胞の供給源として使用することができる。ポリクローナル抗体は、上記の血清を分離、精製することにより調製することができる。
【0035】
モノクローナル抗体は、該抗体産生細胞と非ヒト哺乳動物由来の骨髄腫細胞とを融合させてハイブリドーマを作製し、該ハイブリドーマを培養するか、動物に投与して該動物を腹水癌化させ、該培養液または腹水を分離、精製することにより調製することができる。抗体産生細胞としては、脾細胞、リンパ節、末梢血中の抗体産生細胞を使用することができ、特に好ましくは脾細胞を使用することができる。
【0036】
骨髄腫細胞としては、8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株であるP3−X63Ag8−U1(P3−U1)株[Current Topics in Microbiology and Immunology,18,1-7(1978)]、P3−NS1/1−Ag41(NS−1)株[European J.Immunology,6,511-519(1976)]、SP2/0−Ag14(SP−2)株[Nature,276,269-270(1978)]、P3−X63−Ag8653(653)株[J.Immunology,123,1548-1550(1979)]、P3−X63−Ag8(X63)株[Nature,256,495-497(1975)]等のマウス由来の株化細胞を用いることができる。
【0037】
ハイブリドーマ細胞は、以下の方法により作製できる。先ず、抗体産生細胞と骨髄腫細胞を混合し、HAT培地[正常培地にヒポキサンチン、チミジンおよびアミノプテリンを加えた培地]に懸濁したのち、7〜14日間培養する。培養後、培養上清の一部をとり酵素免疫測定法などにより、抗原に反応し、抗原を含まないタンパク質には反応しないものを選択する。次いで、限界希釈法によりクローニングを行い、酵素免疫測定法により安定して高い抗体価の認められたものをモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞として選択する。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞を培養して得られる培養液、またはハイブリドーマ細胞を動物の腹腔内に投与して該動物を腹水癌化させて得られる腹水から分離、精製することにより調製できる。
【0038】
ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を分離、精製する方法としては、遠心分離、硫安沈殿、カプリル酸沈殿、またはDEAE−セファロースカラム、陰イオン交換カラム、プロテインA若しくはG−カラム、若しくはゲル濾過カラム等を用いるクロマトグラフィー等による方法を、単独または組み合わせて処理する方法があげられる。
【0039】
本明細書で抗体と言う場合、全長の抗体だけではなく抗体の断片も包含するものとする。抗体の断片とは、機能性の断片であることが好ましく、例えば、F(ab’)2、Fab’などが挙げられる。F(ab’)2、Fab’とは、イムノグロブリンを、蛋白分解酵素(例えば、ペプシン又はパパイン等)で処理することにより製造されるもので、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体断片である。
【0040】
本発明の抗体をヒトに投与する目的で使用する場合は、免疫原性を低下させるために、ヒト型化抗体あるいはヒト化抗体を用いることが好ましい。これらのヒト型化抗体やヒト化抗体は、トランスジェニックマウスなどの哺乳動物を用いて作製することができる。ヒト型化抗体については、例えば、Morrison,S.L.et al.〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)〕、野口浩〔医学のあゆみ 167:457−462(1993)〕に記載されている。ヒト化キメラ抗体は、マウス抗体のV領域とヒト抗体のC領域を遺伝子組換えにより結合し、作製することができる。ヒト化抗体は、マウスのモノクローナル抗体から相補性決定部位(CDR)以外の領域をヒト抗体由来の配列に置換することによって作製できる。
さらに、上記のうち、本発明で同定されたアポトーシス誘導タンパク質(Bim)に特異的に結合してその機能を阻害できる抗体については、アポトーシス抑制剤として使用することができる。
【0041】
本発明の抗体をアポトーシス抑制剤として医薬組成物の形態で使用する場合には、上記抗体を有効成分として使用し、さらに薬学的に許容可能な担体、希釈剤(例えば、免疫原性アジュバントなど)、安定化剤または賦形剤などを用いて医薬組成物を調製することができる。本発明の抗体を含むアポトーシス抑制剤は、濾過滅菌および凍結乾燥し、投薬バイアルまたは安定化水性調製物中に投薬形態に製剤化することができる。
【0042】
患者への投与は、たとえば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などの当業者に公知の方法により行うことができる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。有効成分である抗体の投与量としては、一般的には一回につき体重1kgあたり0.1μg〜100mg程度の範囲である。本発明の抗体は、アポトーシスを抑制することにより、アポトーシス促進に関連する疾患に対する治療効果を示す。
【0043】
(4)オリゴヌクレオチド及びアンチセンスオリゴヌクレオチド
本発明によって明らかにされたBim遺伝子の塩基配列情報を基にすれば、例えば該遺伝子の一部又は全部の塩基配列を有するプローブまたはプライマーを利用することにより、各種のヒト組織におけるBim遺伝子の発現を検出することができる。Bim遺伝子の発現の検出は、ノザンブロットまたはRT−PCR等の常法により行うことができる。本発明で同定されたBim遺伝子は細胞のアポトーシスの誘導に関与する遺伝子である。後述する通り、アポトーシスは種々の疾患に関与しているため、Bim遺伝子の発現を検出することによりアポトーシス関連疾患を診断することができる。
【0044】
PCRを行なう場合、プライマーは、Bim遺伝子のみを特異的に増幅できるものであれば特に限定されず、公知のBim遺伝子の配列情報に基づき適宜設定することができる。例えば、Bim遺伝子の塩基配列中の連続する少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド、並びに該オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドをプローブまたはプライマーとして使用することができる。より具体的には、配列番号1に記載の塩基配列中の連続した10〜60残基、好ましくは10〜40残基の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド、並びに該オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用することができる。
【0045】
上記したオリゴヌクレオチド及びアンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA合成機を用いて常法により製造することができる。該オリゴヌクレオチドまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドとして、例えば、検出したいmRNAの一部の塩基配列において、5'末端側の塩基配列に相当するセンスプライマー、3'末端側の塩基配列に相当するアンチセンスプライマー等を挙げることができる。センスプライマーおよびアンチセンスプライマーとしては、それぞれの融解温度(Tm)および塩基数が極端に変わることのないオリゴヌクレオチドであって、10〜60塩基程度のものが挙げられる、10〜40塩基程度のものが好ましい。また、本発明においては、上記したオリゴヌクレオチドの誘導体を用いることも可能であり、例えば、該オリゴヌクレオチドのメチル体やフォスフォロチオエート体等を用いることもできる。
【0046】
さらに本発明では、上記したアンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞に導入してBim遺伝子の転写や翻訳を抑制することにより細胞のアポトーシスを抑制することができる。即ち、本発明によれば、Bim遺伝子の塩基配列中の連続する少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、アポトーシス抑制剤が提供される。
【0047】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞への導入方法は、組換えベクターの導入方法と同様にして行うことができる。また、細胞のアポトーシス検出法としては特に限定されないが、顕微鏡観察、TUNEL法、DNAラダー検出法、DNAの断片化率の定量、細胞のサイズ分布測定等が挙げられる。
【0048】
顕微鏡観察では、アポトーシスに特徴的な細胞形態変化、例えば核の濃縮、クロマチンの凝縮、細胞小器官の萎縮、アポトーシス小体の形成、細胞全体の収縮等を観察する。TUNEL法は、アポトーシスによって生ずるDNAの切断末端をterminal deoxynucleotidyl transferase(TdT)を用いてビオチンやジゴキシゲニンで標識することにより検出する方法である。DNAラダー検出法は、アポトーシスによっておこるクロマチンDNAの断片化を、細胞からDNAを抽出し、アガロースゲル電気泳動をすることにより検出する方法で、断片化したDNAがラダー(はしご)状に検出される。DNAの断片化率の定量は、断片化した低分子DNAのみを抽出し、ジフェニルアミンを用いてDNAの定量を行う方法である。細胞サイズ分布測定は、アポトーシスにより細胞の収縮や断片化がおこり小さなサイズの細胞が増加するのを、コールター・マルチサイザー(Coulter multisizer)等の粒子サイズ測定装置を利用して測定する方法である。これらの方法により、細胞がアポトーシスをおこしているかどうかを検出することができる。
【0049】
上記した本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、Bim遺伝子の転写および/または翻訳を抑制してアポトーシスを抑制することにより、アポトーシスの促進が病態に関与している疾患(例えば、アルツハイマー病などの神経変性疾患など)を治療することができる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞への取り込みを助けるために使用される、細胞膜との親和性の高い適当な担体(例えばリポソームやコレステロール等)と一緒に患者の患部又は全身に注射などにより投与し、患者の細胞に取り込ませてアポトーシスを抑制することにより、上記疾患を治療することができる。有効成分であるアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与量としては、一般的には一回につき体重1kgあたり0.1μg〜100mg程度の範囲である。
【0050】
(5)RNAiによるアポトーシス抑制
さらに本発明では、上記(4)に記載したアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用する代わりにRNAiを利用してアポトーシスを抑制することも可能である。
RNAi(RNAinterference)とは、ある標的遺伝子の一部をコードするmRNAの一部を二本鎖にしたRNA(double strandedRNA:dsRNA)を細胞へ導入すると、標的遺伝子の発現が抑制される現象を言う。
【0051】
即ち、本発明によれば、本発明のアポトーシス誘導遺伝子(Bim遺伝子)の塩基配列から転写されるRNAの塩基配列中の連続する少なくとも10ヌクレオチドを含む二本鎖RNA、またはそれをコードするDNAが提供される。二本鎖RNAをコードするDNAとしては、例えば、アポトーシス誘導遺伝子(Bim遺伝子)またはその部分配列の逆向き反復配列を有するDNAを挙げることができる。
このような逆向き反復配列を有するDNAを哺乳動物の細胞に導入することにより、細胞内で標的遺伝子の逆向き反復配列を発現させることができ、これによりRNAi効果により標的遺伝子(Bim遺伝子)の発現を抑制することが可能になる。
本発明のRNAi試薬の具体例としては、配列番号6及び配列番号7を有するRNAi試薬、特には、(配列番号6)−(リンカー配列)−(配列番号7)からなるRNAi試薬が挙げられる。
【0052】
逆向き反復配列とは、標的遺伝子並びにその逆向きの配列が適当な配列を介して並列している配列を言う。具体的には、標的遺伝子が、以下に示すn個の塩基配列から成る2本鎖を有する場合、
5’−X12......Xn-1n−3’
3’−Y12......Yn-1n−5’
その逆向き配列は以下の配列を有する。
5’−Ynn-1......Y21−3’
3’−Xnn-1......X21−5’
(ここで、Xで表される塩基とYで表される塩基において、添え字の数字が同じものは互いに相補的な塩基である)
【0053】
逆向き反復配列は上記2種の配列が適当な配列を介した配列である。逆向き反復配列としては、標的遺伝子の配列が逆向き配列の上流にある場合と、逆向き配列が標的遺伝子の配列の上流にある場合の2つの場合が考えられる。本発明で用いる逆向き反復配列は上記の何れでもよいが、好ましくは、逆向き配列が標的遺伝子の配列の上流に存在する。
【0054】
標的遺伝子の配列とその逆向き配列の間に存在する配列は、RNAに転写された際にヘアピンループを形成する領域である。この領域の長さは、ヘアピンループを形成できる限り特には限定されないが、一般的には、0bpから700bpであり、好ましくは0〜300bp程度、より好ましくは0〜100bp程度である。この配列の中には制限酵素部位が存在していてもよい。
【0055】
本発明では、哺乳動物で作動可能なプロモーター配列の下流に標的遺伝子の逆向き反復配列を組み込むことにより、哺乳動物の細胞内において標的遺伝子の逆向き反復配列を発現させることができる。本発明で用いるプロモーター配列は、哺乳動物で作動可能であれば特に限定されない。
【0056】
さらに本発明によれば、上記した二本鎖RNAまたはDNAを含むアポトーシス抑制剤が提供される。上記した二本鎖RNAまたはDNAを用いて、Bim遺伝子の転写および/または翻訳を抑制してアポトーシスを抑制することにより、アポトーシスの促進が病態に関与している疾患(例えば、アルツハイマー病などの神経変性疾患)を治療することができる。例えば、上記した二本鎖RNAまたはDNAは、細胞への取り込みを助けるために使用される、細胞膜との親和性の高い適当な担体(例えばリポソームやコレステロール等)と一緒に患者の患部又は全身に注射などにより投与し、患者の細胞に取り込ませてアポトーシスを抑制することにより、上記疾患を治療することができる。有効成分である二本鎖RNAまたはDNAの投与量としては、一般的には一回につき体重1kgあたり0.1μg〜10mg程度の範囲である。
【0057】
(6)本発明のアポトーシス誘導タンパク質を利用したアポトーシスの制御
本明細書中の(3)アポトーシス誘導タンパク質(Bim)に対する抗体を用いたアポトーシス抑制剤、(4)オリゴヌクレオチド及びアンチセンスオリゴヌクレオチド、及び(5)RNAiによるアポトーシス抑制、に記載した通り、本発明のアポトーシス誘導タンパク質(Bim)の発現および/又は機能を阻害することにより、アポトーシスを抑制することが可能である。このように本発明のアポトーシス誘導タンパク質の発現および/又は機能を阻害することによりアポトーシスを抑制する方法は全て本発明の範囲内のものである。
【0058】
アポトーシスを抑制する方法の具体例としては、アポトーシスの促進を伴う疾病の治療の他、アポトーシスによる細胞死を抑制する方法を挙げることができ、例えば、以下の(a)有用タンパク質の生産、及び(b)移植細胞・移植臓器に記載の利用例などが挙げられる。
【0059】
(a)有用タンパク質の生産
抗体産生細胞株(ハイブリドーマ)やウイルスベクター産生細胞株などの有用タンパク質を生産する細胞株は、長期間培養している間に生産されるタンパク質の細胞障害性により細胞死を引き起こす場合がある。また、これらの細胞株では培養液中の血清を取り除くことでタンパク質の生産をより効率的に行うことが可能であるが、血清非存在下では細胞死を誘導してしまうという問題がある。このような細胞死の多くはアポトーシスによるものであることが知られている。従って、本発明の手法によりアポトーシスを抑制することにより、有用タンパク質の生産効率を上昇させることが可能になる。
【0060】
(b)移植細胞・移植臓器
パーキンソン病の治療の際、死亡胎児の神経細胞やドーパミン生産細胞を患者の脳内に移植する手法が用いられている。また輸血や骨髄移植、遺伝子治療におけるex vivo法など自家若しくは他者の細胞を患者に導入する細胞移植療法も行われている。移植細胞は、一般的にアポトーシスなどによる細胞死を起こし、長期維持が困難である。従って、本発明の手法によりアポトーシスを抑制することにより、臓器移植や細胞移植療法において効果をあげることができる。
【0061】
さらに、本発明のアポトーシス誘導タンパク質の発現および/又は機能を阻害する物質を含むアポトーシス抑制剤も本発明の範囲内である。本発明のアポトーシス誘導タンパク質の発現および/又は機能を阻害する物質の具体例としては、本明細書中上記(4)に記載の抗体、(5)に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド、及び(6)に記載の二本鎖RNAまたはそれをコードするDNAなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
さらに上記とは反対に、アポトーシス誘導タンパク質(Bim)の発現および/又は機能を増大することによってアポトーシスを促進する方法も本発明の範囲内であり、同様にアポトーシス誘導タンパク質(Bim)の発現および/又は機能を増大する物質を含むアポトーシス促進剤も本発明の範囲内である。
アポトーシス誘導タンパク質(Bim)の発現および/又は機能を増大する方法としては、Bimをコードする遺伝子を細胞に導入する方法、該遺伝子のプロモーター領域に作用してその発現を増大する因子またはそれをコードする遺伝子を細胞に導入する方法などが挙げられる。
【0063】
また、アポトーシスの抑制または促進の有無並びにその程度は、本明細書中上記した顕微鏡観察、TUNEL法、DNAラダー検出法、DNAの断片化率の定量、細胞のサイズ分布測定などの手法により検出することができる。
【0064】
(7)アポトーシス調節物質のスクリーニング方法
本発明により同定されたアポトーシス誘導タンパク質(Bim)の発現および/又は機能の変化を指標とすることにより、アポトーシスを抑制又は促進する物質をスクリーニングすることができる。スクリーニングの一例としては、Bimをコードする遺伝子を有する細胞をTGF−βと一緒に、被験物質の存在下および非存在下において培養し、被験物質の有無に応じた当該Bimの発現および/又は機能の変化を指標として、アポトーシスを抑制又は促進する物質をスクリーニングすることができる。
【0065】
アポトーシス誘導タンパク質のmRNAレベルでの発現量の測定は、ノザンブロットまたはRT−PCR等の常法により行うことができ、またタンパク質レベルでの発現量の測定は、本明細書中上記(3)記載の抗体を用いたウエスタンブロット又はELISA等の通常の免疫分析により行なうことができる。具体的には、モレキュラークローニング第2版又はカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載された当業者に公知の常法により行うことができる。
【0066】
また、アポトーシス誘導タンパク質の機能の変化の分析は、アポトーシス誘導が抑制または促進の有無または程度を測定することにより分析することができる。アポトーシス誘導の上記測定については、本明細書中上記した顕微鏡観察、TUNEL法、DNAラダー検出法、DNAの断片化率の定量、細胞のサイズ分布測定等により行なうことができる。
【0067】
本発明のスクリーニング方法に供される被験物質としては任意の物質を使用することができる。被験物質の種類は特に限定されず、個々の低分子合成化合物でもよいし、天然物抽出物中に存在する化合物でもよく、合成ペプチドでもよい。あるいは、被験化合物はまた、化合物ライブラリー、ファージディスプレーライブラリーもしくはコンビナトリアルライブラリーでもよい。被験物質は、好ましくは低分子化合物であり、低分子化合物の化合物ライブラリーが好ましい。化合物ライブラリーの構築は当業者に公知であり、また市販の化合物ライブラリーを使用することもできる。
【0068】
アポトーシスは、正常な生理学的過程以外にも、癌、自己免疫疾患(例えば、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、多発性硬化症等など)、神経変性疾患等の重篤な疾患の発症にも関与していることが知られている。例えば、癌細胞の悪性化は、癌細胞におけるアポトーシスの過程が阻害され、本来死滅するべき細胞が増殖し続けることによって引き起こされると考えられている(Harris,C.C., (1996)J. Natl. Cancer Instit., 88, 1442-1445)。また、自己免疫疾患は、本来、発生過程でアポトーシスによって除去されるはずの自己の抗原に対して反応する免疫細胞が、アポトーシス制御の異常により除去されなくなったことが原因で発症する(Rieux-Laucat,F. et al., (1995) Science, 268, 1347-1349)。神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン舞踏病など)は、アポトーシスの異常な亢進が原因と考えられている(Wolozin, B., et al., (1996) Science, 274, 1710-1713)。
【0069】
従って、上記した本発明のアポトーシス抑制物質は、特に神経変性疾患の治療剤として有効であると考えられる。また、アポトーシス促進物質は、特に各種の癌の治療やリウマチなどの自己免疫疾患の治療剤として有効であると考えられる。
【0070】
上記の本発明によるアポトーシス抑制物質及びアポトーシス促進物質を有効成分として含むアポトーシスが関与する疾患の治療薬は、経口または非経口的に全身又は局所的に投与することができる。非経口的な投与方法としては、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などを挙げることができる。患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。その投与量は、年齢、投与経路、投与回数により異なり、当業者であれば適宜選択できる。
【0071】
非経口投与に適した製剤形態として、例えば安定剤、緩衝剤、保存剤、等張化剤等の添加剤を含有したものは挙げられ、さらに薬学的に許容される担体や添加物を含むものでもよい。このような担体及び添加物の例として、水、有機溶剤、高分子化合物(コラーゲン、ポリビニルアルコールなど)、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ツルビトール、ラクトース、界面活性剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0073】
【実施例】
実施例1:TGF-β標的遺伝子のスクリーニング
2×106のA549細胞に10 mlのOpti MEM培地 (0.02%FBS) を加え、24時間後、1 ng/mlになるようにTGF-β1(R&D) を加え1時間放置した。Total RNAの回収にはRNeasy Mini kit (QIAGEN) を用い、poly(A)+RNAの調製にはOligotex-dT30〈super〉(JRS) を使用した。その後、TGF-β1を1時間処理したA549細胞のPoly(A)+RNAから作成したcDNAから、TGF-β1を処理していないA549細胞のPoly(A)+RNAから作成したcDNAを差し引くことによりサブトラクションを行った。サブトラクションはCLONTECH PCR-SelectTM cDNA Subtraction Kit (CLONTECH) のプロトコールに従って行った。サブトラクションにより得られたライブラリーをPCRし、マイクロアレイを作成した。マイクロアレイには、プローブとして、TGF-β1を1時間処理したA549細胞から回収したPoly(A)+RNAを Cy5でラベルしたcDNAとTGF-β1を処理していないA549細胞から回収したPoly(A)+RNAをCy3でラベルしたcDNAを使用し、1つのマイクロアレイに対して両プローブをハイブリダイゼーションすることで発現の変化する遺伝子を解析した。その結果、TGF-β1により発現量に有意な差を示す新規遺伝子として、Bimを同定した。
【0074】
実施例2:TGF-β1によるBimの発現誘導
BimがTGF-β処理により発現誘導されることを確認するためにBimのORF(配列表の配列番号3に示すBimADのORF)の領域をプローブとしてノーザンハイブリダイゼーションを行った。RNA回収のために、A549細胞はOpti MEM培地、HaCaT細胞とHep3B細胞とHUH7細胞はDMEM培地で培養した。2×106の細胞に10 mlの適当な培地 (0.02 % FBS) を加え、24時間後、1 ng/mlになるようにTGF-β1 (R&D)を加え1時間放置した。Total RNAの回収にはRNeasy Mini kit (QIAGEN) を用い、poly(A)+RNAの調製にはOligotex-dT30〈super〉(JRS)を使用した。ノーザンハイブリダイゼーションには、TGF-β1を1時間処理した細胞と未処理の細胞から回収したPoly(A)+RNA 2 μgを使用し、BimのORFの領域をプローブとした。G3PDHはローディングコントロールとして、PAI-1はTGF-β1応答のポジティブコントロールとして使用した。
【0075】
結果を図1に示す。図1の結果から、全ての細胞でTGF-β1によってBimの発現が誘導されることが示された。
【0076】
実施例3:Bimのレポーターコンストラクション
BimのORFをNCBIのBLASTNのhttgで検索し、BACクローンRP11-438K19を選択した。RP11-438K19がNCBIのhuman genomeのDNA塩基配列と比較して異常がないことを確認し、BimのORFより5.7kb上流までのDNA断片(塩基配列を配列表の配列番号5に示す)をpGL3 promoter vector (Promega) に導入したレポーターを作成した。図3にBimのレポーターコンストラクションの概要を示す。
【0077】
実施例4:Bimのレポーターコンストラクションに対するSmadの効果
Bimのレポーターコンストラクションを1×105のHep3B細胞にEffecteneTM Transfection Reagent (QIAGEN) を使用して遺伝子導入した。コントロールにはpGL3 basic vector、ポジティブコントロールには3TPLux、インターナルコントロールにはpRLTKを使用した。遺伝子導入には、1 wellにつきレポーターを0.1μg、発現ベクターを0.1 μg、インターナルコントロールを0.001μg使用した。レポーターを導入して18時間後、10 ng/mlになるようにTGF-β1 (R&D) を加え、24時間放置した。ルシフェラーゼの測定はDual -Luciferase Repoter Assay system (Promega) を使用した。ルシフェラーゼアッセイを行った。結果を図2に示す。図2の結果から、BimはSmad3とSmad4依存的に転写が活性化することが示唆された。
【0078】
実施例5:TGF-β1によって誘導されるアポトーシスに対するBimの欠失変異体の効果
(1)Bimの欠失変異体の構築
欠失変異体はBimAD のcDNAをテンプレートとしてPCRにより作成した。
BMprimer 1 5'-ATATGAATTCATGGCAAAGCAACCTTCTG-3'(配列番号8)
BMprimer 2 5'-ATATGAATTCGGGGCCCCTACCTCCCTACA-3'(配列番号9)
BMprimer 3 5'-ATATGAATTCATGCGCCCAGAGATATGGA-3'(配列番号10)
BMprimer 4 5'-ATATGAATTCTTGCGGCGTATCGGAGACG-3'(配列番号11)
BMprimer 5 5'-ATATCTCGAGGTTAAACTCGTCTCCGATAC-3'(配列番号12)
BMprimer 6 5'-ATATCTCGAGTCAATGCATTCTCCACACCAG-3'(配列番号13)
【0079】
BimSΔN30 : BimSのアミノ酸配列中の31番目から76番目までのアミノ酸配列のC末にLeu Gly Lysが付加したアミノ酸配列
BimSΔN51 : BimSのアミノ酸配列中の52番目から76番目までのアミノ酸配列のC末にLeu Gly Lysが付加したアミノ酸配列
BimSΔN61 : BimSのアミノ酸配列中の62番目から76番目までのアミノ酸配列のC末にLeu Gly Lysが付加したアミノ酸配列
BimSΔC70 : BimSのアミノ酸配列中の1番目から70番目までのアミノ酸配列
BH3 : BimSのアミノ酸配列中の62番目から70番目までのアミノ酸配列
【0080】
(2) TGF-β1によって誘導されるアポトーシスに対するBimの欠失変異体の効果
LacZ発現plasmidとともに上記(1)で構築したそれぞれのBim欠失変異体を1×104のHep3B細胞にEffecteneTM Transfection Reagent (QIAGEN) を使用して遺伝子導入を行った。遺伝子導入には、発現ベクターを0.1μg、LacZ発現plasmidを0.025 μg使用した。遺伝子導入して18時間後、DMEM培地 (0 % FBS) に交換し、5 ng/mlになるようにTGF-β1を加え24時間培養した。TGF-β1を処理して24時間後、1 % グルタルアルデヒドで固定し、X-gal染色した。本研究ではwell上の全ての青色に染色された細胞をカウントし、青色に染色された細胞を生存した細胞とした。結果を図4に示す。図4の結果から、TGF-β1によって誘導されるアポトーシスはBimSΔN51の遺伝子導入によって抑制されることが示された。
【0081】
実施例6:Bimによって誘導されるアポトーシスに対するBimのドミナントネガティブ変異体の効果
0.025μgのLacZ発現plasmidとともに0.05μgのBim発現plasmidと0.01μg、0.025μg、0.05μg、0.1μgのBimSΔN51発現plasmidを1×104のHep3B細胞にEffecteneTM Transfection Reagent (QIAGEN) を使用して遺伝子導入を行った。遺伝子導入して24時間後、1 % グルタルアルデヒドで固定し、X-gal染色した。結果を図5に示す。図5の結果から、Bimによって誘導されるアポトーシスはBimSΔN51 dose dependentに抑制され、BimSΔN51はBimのドミナントネガティブ変異体であることが示唆された。
【0082】
実施例7:TGF-β1によって誘導されるアポトーシスに対するBimのドミナントネガティブ変異体の効果
0.025μgのLacZ発現vectorとともに0.01μg、0.025μg、0.05μg、0.1μgのBimSΔN51発現vectorを1×104のHep3B細胞にEffecteneTM Transfection Reagent (QIAGEN) を使用して遺伝子導入を行った。遺伝子導入して18時間後、DMEM培地 (0 % FBS) に交換し、5 ng/mlになるようにTGF-β1を加え24時間培養した。TGF-β1を処理して24時間後、1 % グルタルアルデヒドで固定し、X-gal染色した。結果を図6に示す。図6の結果から、TGF-β1によって誘導されるアポトーシスはBimSΔN51 dose dependentに抑制され、BimはTGF-β1によって誘導されるアポトーシスに対し重要な働きをしていることが示唆された。
【0083】
実施例8:BimのRNAiを発現するvectorの構築
BimのRNAiを発現するvectorは、BimSの92番目から123番目のDNA塩基配列をもとに合成オリゴ(Bim RNAi F1とBim RNAi R1)を作成した。アニーリングには、48μlのannealing buffer [100 mM potassium acetate、30 mM HEPES-KOH(pH7.4)、2 mM Mg acetate]に、1μlのBim RNAi F1(100 pmol)と1μlのBim RNAi R1(100 pmol)を加え、95℃で4分、70℃で10分処理した後、室温で30分放置した。その後、アニーリングした合成オリゴをpSHAGのBse RI-Bam HIサイトに挿入した(pSHAG-BimRNAi)。図7に、BimのRNAiを発現するvectorの構築の概要を示す。
【0084】
合成オリゴ
Bim RNAi F1
5'-tggctctgtctgtagggaggtaggggccgaagcttgggcccctacctccctacagacagagccacaatttttt -3'(配列番号14)
Bim RNAi R1
5'-gatcaaaaaattgtggctctgtctgtagggaggtaggggcccaagcttcggcccctacctccctacagacagagccacg -3'(配列番号15)
【0085】
実施例9:Bimによって誘導されるアポトーシスに対するBim RNAiの効果
0.025μgのLacZ発現plasmidとともに0.05μgのBim発現plasmidと0.01μg、0.025μg、0.05μg、0.1μgのpSHAG-BimRNAiを1×104のHep3B細胞にEffecteneTM Transfection Reagent (QIAGEN) を使用して遺伝子導入を行った。遺伝子導入して24時間後、1 % グルタルアルデヒドで固定し、X-gal染色した。結果を図8に示す。図8の結果から分かるように、Bimによって誘導されるアポトーシスはBimのRNAiによって抑制された。
【0086】
実施例10:TGF-β1によって誘導されるアポトーシスに対するBim RNAiの効果 0.025μgのLacZ発現plasmidとともに0.1μgのpSHAG-BimRNAiを1×104のHep3B細胞にEffecteneTM Transfection Reagent (QIAGEN) を使用して遺伝子導入を行った。遺伝子導入して18時間後、DMEM培地 (0 % FBS) に交換し、5 ng/mlになるようにTGF-β1を加え24時間培養した。TGF-β1を処理して24時間後、1 % グルタルアルデヒドで固定し、X-gal染色した。結果を図9に示す。図9の結果から、TGF-β1によって誘導されるアポトーシスはBimのRNAiによって抑制され、BimはTGF-β1によって誘導されるアポトーシスに対し重要な働きをしていることが示唆された。
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、新規なアポトーシス誘導遺伝子が同定された。本発明の遺伝子を利用することにより、本遺伝子の各組織での発現を検出したり、アポトーシス誘導タンパク質を遺伝子工学的に製造することができる。さらに、本発明の遺伝子を利用することにより、アポトーシス関連疾患の診断及びアポトーシス抑制剤または促進剤をスクリーニングすることができる。更に、本発明の遺伝子は、アポトーシス抑制を目的とする遺伝子治療やアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた疾患の予防法及び治療法の開発に極めて有用である。
【0088】
【配列表】











【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、TGF-β1によるBimの発現誘導の実験結果を示す。
【図2】図2は、Bimのレポーターコンストラクションに対するSmadの効果に関する実験結果を示す。
【図3】図3は、Bimのレポーターコンストラクションの概要を示す。
【図4】図4は、TGF-β1によって誘導されるアポトーシスに対するBimの欠失変異体の効果に関する実験結果を示す。
【図5】図5は、Bimによって誘導されるアポトーシスに対するBimのドミナントネガティブ変異体の効果に関する実験結果を示す。
【図6】図6は、TGF-β1によって誘導されるアポトーシスに対するBimのドミナントネガティブ変異体の効果に関する実験結果を示す。
【図7】図7は、BimのRNAiを発現するvectorの構築の概要を示す。
【図8】図8は、Bimによって誘導されるアポトーシスに対するBim RNAiの効果に関する実験結果を示す。
【図9】図9は、TGF-β1によって誘導されるアポトーシスに対するBim RNAiの効果に関する実験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現および/又は機能を調節することを含む、TGFβ由来のアポトーシスを調節する方法。
【請求項2】
アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現および/又は機能を阻害することを含む、アポトーシスを抑制する方法。
【請求項3】
アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現および/又は機能を阻害する物質を含む、アポトーシス抑制剤。
【請求項4】
アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現および/又は機能を増大することを含む、アポトーシスを促進する方法。
【請求項5】
アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現および/又は機能を増大する物質を含む、アポトーシス促進剤。
【請求項6】
アポトーシス誘導遺伝子Bimの塩基配列中の連続する少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド、又は該オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、アポトーシス診断薬。
【請求項7】
アポトーシス誘導遺伝子Bimの塩基配列中の連続する少なくとも10ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドに相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、アポトーシス抑制剤。
【請求項8】
アポトーシス誘導遺伝子Bimの塩基配列から転写されるRNAの塩基配列中の連続する少なくとも10ヌクレオチドを含む二本鎖RNA、またはそれをコードするDNAを含む、アポトーシス抑制剤。
【請求項9】
アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現および/又は機能の変化を指標として、アポトーシスを抑制又は促進する物質をスクリーニングする方法。
【請求項10】
アポトーシス誘導タンパク質Bimをコードする遺伝子を有する細胞をTGF−βと一緒に、被験物質の存在下および非存在下において培養し、被験物質の有無に応じた当該アポトーシス誘導タンパク質Bimの発現および/又は機能の変化を指標として、アポトーシスを抑制又は促進する物質をスクリーニングする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
配列番号6及び配列番号7を有するRNAi試薬。
【請求項12】
(配列番号6)−(リンカー配列)−(配列番号7)からなるRNAi試薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−265102(P2006−265102A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−129853(P2003−129853)
【出願日】平成15年5月8日(2003.5.8)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【出願人】(500048535)
【Fターム(参考)】