説明

TPE/PP/補強複層管

内側から外側へ向かって以下を含む複層管:
・ポリプロピレンと相溶性である熱可塑性エラストマーの内側層(1);
・内側層と直接接触するポリプロピレンの中間層(2)
・外側の補強層(4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジン用冷却回路中の流体輸送パイプとして、特に使用できる複層管に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の管構造が、冷却流体の輸送のために存在する。該構造の層を形成する材料の選択は、輸送される流体に耐える能力、流体透過性、機械的な強度、および 管のコストの間での妥協の結果である。
【0003】
この妥協は、管が高温、典型的には150℃超に供されるときに見出すことが特に難しい。
【0004】
管は、相互に相溶性に作られたポリアミドの層と熱可塑性エラストマーの層とを含むと考えられている。しかし、そうした管では、高温は、無水マレイン酸と、ポリアミドのアミン官能基または2つの層を相溶させるために機能するなんらか他の官能基との間の共有結合の破壊に繋がる。さらに、そうした共有結合は、輸送される流体に由来する化学的攻撃に非常に敏感であり、これにより、2つの層が剥離する場合がある。
【0005】
熱可塑性エラストマーでできた管も知られている。しかし、これらの管は高価であり、そして比較的高い透過性を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の目的は、種々の上記の制約間で得られる、よりよい妥協を可能にする管構造を与えることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は内側から外側まで以下を含む複層管を与える:
・ポリプロピレンと相溶性である熱可塑性エラストマーの内側層;
・内側層と直接接触するポリプロピレンの中間層;および
・外側の補強層。
【0008】
ポリプロピレン層は、冷却流体に対するバリアー機能の主要部を与える。熱可塑性エラストマー層もバリアー機能を与え、従ってこの層はポリプロピレン層を補強することができる。その柔軟性のために、熱可塑性エラストマーの内側層は割れに対する良い耐性を示し、それによって輸送流体が比較的長時間にわたって中間層と接触することを防止し、従って輸送流体に対する中間層のバリアー性を保護する。内側層は、冷却流体による攻撃から中間層のポリプロピレンを守り、そしてまた該管がクリスマスツリーの鋸歯状の縁を有するタイプの末端部に接続されることを可能にする。熱可塑性エラストマーは、また比較的高い(150℃超)温度までポリプロピレンに、自然に接着する特性も示す(ポリプロピレンと熱可塑性エラストマーと間で高分子レベルの相互浸透がある)。管が良好な性能を有することを可能にする内側層と中間層との間で相乗性がある。外側層は、管を機械的に強化し、そして温度および圧力に対する良好な耐性を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の他の特徴および利点は、本発明の特別な非限定の態様の以下の記載を読むことで明らかになる。
本発明に従う管の断面を示す唯一の添付図を参照する。
発明に従う管は、内側から外側に向かってを以下含む:
・内側層1;
・中間層2;
・バインダー層3;および
・外側の補強層4.
内側層1は、熱可塑性エラストマー(TPE)材料を含む。
本発明の第1の態様の熱可塑性エラストマー材料は、本実施例中では加硫されていない熱可塑性エラストマーオレフィン(TPE−O)アロイである。
【0010】
熱可塑性エラストマーオレフィン材料は、ポリオレフィンの主相および主相中に分散したエラストマーに基づく副相を含む。使用される熱可塑性エラストマーオレフィンアロイ材料は、一例として、マルチベース(Multibase)の名称でマルチベース社によって販売されているこれらの生産物の1つによって構成されている。
【0011】
第2の態様では、使用される熱可塑性エラストマー材料は、任意選択的に加硫され(TPV)、そしてエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)を含んでもよい。
具体的に使用される材料は、サントプレン(Santoprene)101−64A、101−73A、101−80A、101−87A、201−64A、201−73A、201−80A、または201−87Aの名称で、AES社によって生産される種類のポリプロピレンおよびエチレンプロピレンジエンモノマー(PP/EPDM)の混合物である。
【0012】
第3の態様では、使用される熱可塑性エラストマー材料は、熱可塑性エラストマーおよびスチレン(TPE−S)アロイであり、この例ではそこに分散したスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)またはスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)を有するポリプロピレンベースを含む。
【0013】
内側層1は、冷却流体に対する良好な耐性、および冷却流体に対する低浸透性示す。内側層1は変形可能である利点を提供し、従って管が、例えばクリスマスツリーの鋸歯状の縁を有するタイプの末端部に接続されるときに、シーリング機能を与えることを可能にする。内側層1は、好ましくは、例えば抗酸化剤を取り込むことによって、空気中の熱エージングに対して安定化しているグレードである。
【0014】
中間層2は、デグサ( Degussa)社によってSX8100またはSX8100swの名称で生産されているEPD60Rグレード(熱安定化および酸化および加水分解によるエージングに対して保護されている)のポリプロピレン等のポリプロピレン(PP);またはセクイール(Sequel)1420またはエルテックス(Eltex) PHL102工業用ポリオレフィンの名称で( Solvay)エンジニアリングポリマー社によって生産されている可能性があり;または他にはバポレン(Bapolene)グレードPP4012の名称で、バンバーガー(Bamberger)ポリマー社によって生産されている可能性があるもので出来ている。
【0015】
内側層1および中間層2の材料は、相互接着性を示す。内側層をなんとかして通り抜け、そして中間層によってブロックされる流体蒸気が層の間での再凝縮することを、この接着が防ぐ(または最小に制限する)ために、これは特に好都合である。そうした再凝縮は、管の結束にダメージを与え且つ特に機械的に菅を弱める危険性がある、泡をもたらす。
【0016】
バインダー3の層は、アドマー(Admer) QB520、 QF550E、QB510E、QF551E、AT843E、AT1190E、AT1647E、またはAT1658Eの名称で三井化学社によって生産され;またはプレクサー(Plexar) PX6002またはPX6006の名称でエクイスター(Equistar)社によって生産されている種類の無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン(PO−g−MA)をベースとしている。
【0017】
外側層4は、ハルス(Huls)社によってヴェストアミド(Vestamid DX9304またはDX9303またはX7099);メムスグリヴォリー(Mems−Grivory)社によるグリリオン(Grilon) CAE6またはCR9NAT6361;アシュレー(Ashley)ポリマー社によるアシュレン( Ashlene)982;またはコムアロイ社によるコムタフ(Comtuf)608;デュポンデネムアー(Dupont de Nemours)社によるジテル(Zytel)151L NC010またはEFE4168の名称で生産されているようなポリアミド6〜12(PA6−12)で出来ている。ポリアミド6〜12は、温度および圧力に対する比較的大きな耐性を与える。
【0018】
変異型では、外側層はポリフェニレンサルフォン(PPS)の主相を含む。第1の態様では、使用される材料は、XTEL XE3200または3400の名称でシェブロンフィリップス(Chevron Philips)社によって生産されるような衝撃改質剤と、ポリフェニレンサルフォンとの混合物である。第2の態様では、使用される材料は、XTEL、シリーズXKの名称で業者によって同様に生産されるようなポリフェニレンサルフォンおよびポリアミドの混合物である。
【0019】
一例として、27ミリメーター(mm)に等しい内径を有する管では、内側層は0.20mmの厚さを有し、中間層は0.20mmの厚さを有し、バインダー層は0.05mm〜0.10mmの厚み範囲にあり、そして外側層は0.90mm (値は桁で与えられる)の厚さを有する。管の浸透性は、厚さが増加するにつれて減少する。
【0020】
種々の層は、例えば共押し出しされてもよい。
前記管の製造中に、所望値に管の浸透性を制限するために充分な結晶顔料を得るために、冷却は速過ぎてはならない。押し出しは、外側から内側に向かって、冷却が比較的ゆっくりと起こることを可能にする。
管は、スムーズ型またはコルゲート型でもよい。
管がコルゲート型のときは、内側層1は中間層2を特に応力亀裂から保護する。
【0021】
当然のことながら、本発明は、記載された態様に限定されず、そして種々の態様は、請求項によって定義された本発明の範囲を超えることなく、それらに適用可能である。
特に、他の熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン、バインダーおよびポリアミドが、(特に、ポリアミド12では、PA6〜12の温度よりも低い最大の利用温度を示すにもかかわらず)使用可能である。
【0022】
特に補強外側層が、それ自体記載されたのと異なる材料で出来ているときは、該バインダー層は、記載されたのと異なるほかの材料で出来ていてもよい。
さらに、ポリプロピレン中間層と接着する自然特性を有する材料で出来ている補強外側層を選択することが可能である。もし自然接着によって得られる層間の結着が、意図する用途のために充分であるときは、これらの層の間にバインダーの層を入れても意味が無い。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側から外側に向かって以下を含む複層管:
・ポリプロピレンと相溶性である熱可塑性エラストマーの内側層(1);
・該内側層と直接接触するポリプロピレンの中間層(2);および
・外側の補強層(4)。
【請求項2】
該外側層(4)が、ポリアミドで出来ていることを特徴とする請求項1に記載の管。
【請求項3】
該外側層(4)が、ポリアミド6〜12で出来ていることを特徴とする請求項1に記載の管。
【請求項4】
該外側層(4)が、ポリフェニレンサルフォンの主相を有することを特徴とする請求項1に記載の管。
【請求項5】
無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィンのバインダー層(3)を有することを特徴とする、請求項1に記載の管。
【請求項6】
当該内側層(1)が、加硫処理した熱可塑性エラストマーで出来ていることを特徴とする請求項1に記載の管。
【請求項7】
当該内側層(1)が、熱可塑性エラストマーおよびオレフィンアロイで出来ていることを特徴とする請求項1に記載の管。
【請求項8】
当該内側層(1)が、熱可塑性エラストマーおよびスチレンアロイで出来ていることを特徴とする請求項1に記載の管。
【請求項9】
該スチレン熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエン−スチレンが分散したポリプロピレンのベースを含むことを特徴とする請求項8に記載の管。
【請求項10】
該スチレン熱可塑性エラストマーが、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンが分散したポリプロピレンのベースを含むことを特徴とする請求項8に記載の管。

【公表番号】特表2008−516814(P2008−516814A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537332(P2007−537332)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002593
【国際公開番号】WO2006/042966
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(505332082)ノベル プラスティクス (5)
【Fターム(参考)】