説明

Toll様受容体3モジュレーター、方法および用途

抗体のようなToll様受容体3(TLR3)調節物質、TLR3抗体をコードするポリヌクレオチド若しくはそれらのフラグメント、ならびに前述の作成および使用方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗体のようなToll様受容体3(TLR3)モジュレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物細胞による外来抗原の認識はToll様受容体(TLR)と呼ばれる一組の自然免疫受容体により媒介され得る。TLRはPAMP(pathogen−associated molecular pattern)として同定される微生物病原体由来の保存されたパターンを認識する(非特許文献1)。TLRのPAMPとの相互作用は、NF−κB活性化およびサイトカイン遺伝子発現の転写を伴うシグナル伝達カスケードをもたらす。10種のヒトtoll様受容体および5種のTLRアダプタータンパク質が同定されている。
【0003】
TLRは、ホモ若しくはヘテロ二量体を形成すること、ならびに多様なアダプタータンパク質を結合することにより、それらのリガンドレパートリーを拡大することが可能である。例えばTLR3はdsRNA(ウイルス複製における中間体)を結合する。TLR3はポリI:C(合成dsRNAアナログ)、および壊死細胞からのmRNAともまた相互作用する。TLR3の活性化は、ウイルス感染の制御で重要であるI型インターフェロンの分泌につながる。完全長のヒトTLR3のアミノ酸配列およびコードするポリヌクレオチドの配列をそれぞれ配列番号1および2に示す。TLR類、TLR7、TLR8およびTLR9は核酸リガンドもまた有し;これらTLRの活性化もまたインターフェロン分泌につながり得る。
【0004】
I型インターフェロンはシグナル伝達カスケードを誘発して一組の前初期応答遺伝子(IFN−stimulated geneすなわちISG)を活性化し、そして診察室で有用と判明している。生じる抗ウイルス活性は、mRNA翻訳阻害、RNRエディティングおよびRNA分解を包含する(非特許文献2)。現在、ペグ化インターフェロンおよび広域スペクトルの抗ウイルス化合物リバビリンの併用療法がC型肝炎感染を処置するのに使用されている(非特許文献3)。
【0005】
I型IFNの決定的に重要な抗ウイルス性の役割は、感染宿主細胞によるI型IFNの産生を阻害するウイルス耐性機構の進化によりさらに示される。例えば、インフルエンザのNS1タンパク質はIRF−3活性化およびIFNβ産生に拮抗し(非特許文献4)、また、A52Rポックスウイルスタンパク質はIRAK2およびTRAF6と会合してTLR3の下流のシグナル伝達を阻害する(非特許文献5)。従って、TLR活性化を誘発すること若しくはTLR媒介性のシグナル伝達経路を高めることに基づく治療は、内因性IFNα/β産生を増大しかつ急性ウイルス感染の制御において宿主を補助する。
【0006】
免疫応答の結果を調節するためのTLRアゴニストの使用が治療的使用に現在検討されている(非特許文献6;非特許文献7)。例えば、TLR9リガンド、CpGオリゴジヌクレオチド(ODN)は、I型IFNおよびT1応答の産生を刺激することが可能であり(非特許文献8)、これはワクチンアジュバントとしてのみならずしかしまた強力なT1応答を必要とする疾患の処置および若しくは予防のためのCpG ODNの可能な使用を示唆する知見である。別の例は、陰部疣贅の処置のための承認された剤、合成TLR7アゴニスト、イミキモド(imiquimod)であり;その保護効果はIFNα、TNFαおよびIL−1βのような炎症性サイトカインの刺激により媒介されると考えられる(非特許文献9)。全体として、これらの知見は、TLRアゴニストが、大きな治療上の利益を有する可能性をもつ免疫調節剤の新規一分類であることを示す。
【0007】
従って、TLRアゴニストの効果を増強する新規免疫調節剤の同定に対する必要性が存在する。こうした新規のTLRに基づく治療は、より少なく頻繁な投薬レジメンで持続性免疫応答を提供するという利点を有することが期待される。
【0008】
【非特許文献1】Bartonら、Science 300:1524−1525、2003
【非特許文献2】Samuelら、Clin Microbiol Rev 14:778−809、2001
【非特許文献3】Mannsら、Lancet 358:958−965、2001
【非特許文献4】Donelanら、J Virol 78:11574−11582、2004
【非特許文献5】Harteら、J Exp Med、197:343−351、2003
【非特許文献6】O’Neill、Curr Opin Pharm 3:396−403、2003
【非特許文献7】Schetterら、Curr Opin Drug Discov Devel 7:204−210、2004
【非特許文献8】Krieg、Annu Rev Immunol 20:709−60、2002
【非特許文献9】Saunder、J Amer Acad Derm 43:S6−S11、2000
【発明の開示】
【0009】
[発明の要約]
本発明の一局面は、IL−8、MCP−1、MIP1−α、RANTESおよびTNF−αよりなる群から選択されるサイトカインの細胞性産生を誘導する、ヒトToll様受容体3(hTLR3)若しくはそのホモログと反応性の単離された抗体である。
【0010】
本発明の別の局面は、他のToll様受容体リガンドに対する免疫応答を改変する、hTLR3若しくはそのホモログと反応性の単離された抗体である。
【0011】
本発明の別の局面は、配列番号9、11および13に示されるところのH鎖相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列、ならびに配列番号19、21および23に示されるところのL鎖CDRのアミノ酸配列を含んでなる、モノクローナル抗体の抗原結合能力を有する、hTLR3と反応性の単離された抗体である。
【0012】
本発明の別の局面は、配列番号9、11および13に示されるところのH鎖相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列、ならびに配列番号19、21および23に示されるところのL鎖CDRのアミノ酸配列を含んでなる、hTLR3と反応性の単離された抗体である。
【0013】
本発明の別の局面は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含んでなるH鎖および配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでなるL鎖を含んでなる、hTLR3と反応性の単離された抗体である。
【0014】
本発明の別の局面は、配列番号9、11および13に示されるCDRアミノ酸配列を含んでなる抗体H鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドである。
【0015】
本発明の別の局面は、配列番号19、21および23に示されるCDRアミノ酸配列を含んでなる抗体L鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドである。
【0016】
本発明の別の局面は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含んでなる抗体H鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドである。
【0017】
本発明の別の局面は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでなる抗体L鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドである。
【0018】
本発明の他の局面は、免疫刺激剤と組合せの治療上有効な量の本発明の抗体を患者に投与することを含んでなる、ウイルス感染症の処置若しくは予防方法を包含する。
【0019】
本発明の別の局面は、免疫刺激剤と組合せの治療上有効な量の本発明の抗体を患者に投与することを含んでなる、癌の処置方法である。
【0020】
本発明の別の局面は、免疫刺激剤と組合せの治療上有効な量の本発明の抗体を患者に投与することを含んでなる、炎症性腸疾患の処置方法である。
【0021】
本発明の他の局面は、Toll様受容体7(TLR7)アゴニストと組合せの治療上有効な量の本発明の抗体を患者に投与することを含んでなる、ウイルス感染関連症状の処置若しくは予防方法を包含する。
【0022】
本発明の他の局面は、TLR9若しくはTLR7アゴニストと組合せの治療上有効な量の本発明の抗体を患者に投与することを含んでなる、肺疾患および病原体媒介性の増悪の処置若しくは予防方法を包含する。
【0023】
本発明の他の局面は、TLR9若しくはTLR7アゴニストと組合せの治療上有効な量の本発明の抗体を患者に投与することを含んでなる、移植片対宿主病(GVHD)の処置若しくは予防方法を包含する。
【0024】
本発明の他の局面は、免疫処置と組合せの治療上有効な量の本発明の抗体を患者に投与することを含んでなる、自己免疫疾患の処置若しくは予防方法を包含する。
[発明の詳細な記述]
本明細で引用される、限定されるものでないが特許および特許出願を挙げることができる全刊行物は、完全に示されるかのように引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0025】
本明細書で使用されるところの「抗体」という用語は広範な意味で意味しており、そしてポリクローナル抗体、マウス、ヒト、ヒト化およびキメラモノクローナル抗体を包含するモノクローナル抗体を包含する免疫グロブリンすなわち抗体分子、ならびに抗体フラグメントを包含する。
【0026】
一般に、抗体は特異的抗原に対する結合特異性を表すタンパク質すなわちポリペプチドである。無傷の抗体は2本の同一のL鎖および2本の同一のH鎖から構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。典型的には、各L鎖は1個の共有ジスルフィド結合によりH鎖に連結される一方、ジスルフィド結合の数は多様な免疫グロブリンアイソタイプのH鎖間で変動する。各HおよびL鎖は規則的に空間を空けられた鎖内ジスルフィド架橋もまた有する。各H鎖は、一端に1個の可変ドメイン(V)、次いで多数の定常ドメインを有する。各L鎖は、一端に1個の可変ドメイン(V)およびその他端に1個の定常ドメインを有し;L鎖の定常ドメインはH鎖の第一の定常ドメインと整列され、また、L鎖可変ドメインはH鎖の可変ドメインと整列される。いずれの脊椎動物種の抗体L鎖も、それらの
定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、2種の明らかに異なるタイプすなわちκおよびλの一方に帰属し得る。免疫グロブリンは、H鎖定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、5種の主要なクラスすなわちIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMに帰属し得る。IgAおよびIgGはアイソタイプIgA、IgA、IgG、IgG、IgGおよびIgGとしてさらに下位分類される。
【0027】
「抗体フラグメント」という用語は、無傷の抗体の一部分、一般には無傷の抗体の抗原結合すなわち可変領域を意味している。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)およびFvフラグメント、二特異性抗体、一本鎖抗体分子、および最低2種の無傷の抗体から形成される多特異性抗体を包含する。
【0028】
本明細書で使用されるところの「抗原」という用語は、直接若しくは間接的いずれかで抗体を生成する能力を有するいかなる分子も意味している。タンパク質をコードする核酸が「抗原」の定義内に包含される。
【0029】
「CDR」は、免疫グロブリンHおよびL鎖の超可変領域である抗体の相補性決定領域のアミノ酸配列と定義する。例えば、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第4版、米国保健福祉省(U.S.Department of Health and Human Services)、国立保健研究所(1987)を参照されたい。免疫グロブリンの可変部分に3個のH鎖および3個のL鎖CDR若しくはCDR領域が存在する。従って、本明細書で使用されるところの「CDR」は、全3個のH鎖CDR、若しくは全3個のL鎖CDR、または適切な場合には全Hおよび全L鎖双方のCDRを指す。
【0030】
CDRは抗原若しくはエピトープへの抗体の結合のための接触残基の大多数を提供する。本発明の目的のCDRはドナー抗体の可変HおよびL鎖配列に由来し、そして天然に存在するCDRのアナログを包含し、このアナログは、それらが由来したドナー抗体と同一の抗原結合特異性および/若しくは中和能力もまた共有若しくは保持する。
【0031】
「ホモログ」という用語は、参照配列に対する40%と100%の間の配列同一性を有するタンパク質配列を意味している。hTLR3のホモログは、既知のhTLR3配列に対する40%と100%の間の配列同一性を有する他の種からのポリペプチドを包含する。2種のペプチド鎖間の同一性パーセントは、Vector NTI v.9.0.0(Invitrogen Corp.、カリフォルニア州カールズバッド)のAlignXモジュールのデフォルトの設定を使用した対にしたアライメントにより決定し得る。
【0032】
本明細書で使用されるところの「と組合せの」という用語は、記述される剤が、混合物で、単一の剤として同時に、若しくは単一の剤としていずれかの順序で連続して一緒に動物に投与され得ることを意味している。
【0033】
本明細書で使用されるところの「ミメティボディ(mimetibody)」という用語は、一般式(I):
(V1−Pep−Lk−V2−Hg−C2−C3)(t)
(I)
[式中、V1は免疫グロブリン可変領域のN末端の一部分であり、Pepは細胞表面TLR3に結合するポリペプチドであり、Lkはポリペプチド若しくは化学結合であり、V2は免疫グロブリン可変領域のC末端の一部分であり、Hgは免疫グロブリンヒンジ領域の一部分であり、C2は免疫グロブリンH鎖C2定常領域であり、およびC3は免疫グロブリンH鎖C3定常領域であり、ならびにtは独立に1ないし10の整数である]を有するタンパク質を意味している。ミメティボディは、該構築物中に存在するH鎖定常
ドメインのアミノ酸配列に依存して、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgDおよびIgEのような多様なタイプの免疫グロブリン分子の特性および機能を模倣し得る。いくつかのミメティボディの態様において、V1は非存在であってもよい。本発明のミメティボディは、TLR発現細胞への結合によりTLRの生物学的活性を調節する。
【0034】
本明細書で使用されるところの「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体(若しくは抗体フラグメント)を意味している。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、典型的には単一の抗原決定子に向けられる。「モノクローナル」という修飾語は該抗体の実質的に均質な特徴を示し、そしていずれかの特定の方法による抗体の製造を必要としない。例えば、マウスmAbはKohlerら、Nature 256:495−497(1975)のハイブリドーマ法により作成し得る。アクセプター抗体(典型的にはヒトのような別の哺乳動物種)由来のLおよびH鎖定常領域とともにのドナー抗体(典型的にはマウス)由来のL鎖およびH鎖可変領域を含有するキメラmAbは、米国特許第4,816,567号明細書に開示される方法により製造し得る。ヒト以外のドナー免疫グロブリン(典型的にはマウス)由来のCDR、および、場合によっては結合アフィニティーを保存するように変えられた枠組み支持残基を有する1種若しくはそれ以上のヒト免疫グロブリン由来である分子の残存する免疫グロブリン由来部分を有するヒト化mAbは、Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、86:10029−10032(1989)およびHodgsonら、Bio/Technology、9:421(1991)に開示される技術により得ることができる。
【0035】
ヒト化に有用な例示的ヒト枠組み配列は、例えば、www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi;www.ncbi.nih.gov/igblast;
atcc.org/phage/hdb.html;
www.mrc−cpe.cam.ac.uk/ALIGNMENTS.php;
www/kabatdatabase.com/top.html;
ftp.ncbi.nih.gov/repository/kabat;www.sciquest.com;
www.abcam.com/;www.antibodyresource.com/onlinecomp.html;
www.public.iastate.edu/〜pedro/research_tools.html;
www.whfreeman.com/immunology/CH05/kuby05.htm;
www.hhmi.org/grants/lectures/1996/vlab;
www.path.cam.ac.uk/〜mrc7/mikeimages.html;
mcb.harvard.edu/BioLinks/Immunology.html;
www.immunologylink.com;pathbox.wustl.edu/〜hcenter/index.html;www.appliedbiosystems.com;www.nal.usda.gov/awic/pubs/antibody;www.m.ehime−u.ac.jp/〜yasuhito/Elisa.html;www.biodesign.com;www.cancerresearchuk.org;www.biotech.ufl.edu;
www.isac−net.org;baserv.uci.kun.nl/〜jraats/links1.html;
www.recab.uni−hd.de/immuno.bme.nwu.edu;www.mrc−cpe.cam.ac.uk;www.ibt.unam.mx/vir/V_mice.html;http://www.bioinf.org.uk/abs;antibody.bath.ac.uk;www.unizh.ch;
www.cryst.bbk.ac.uk/〜ubcg07s/;
www.nimr.mrc.ac.uk/CC/ccaewg/ccaewg.html;
www.path.cam.ac.uk/〜mrc7/humanisation/TAHHP.html;
www.ibt.unam.mx/vir/structure/stat_aim.html;
www.biosci.missouri.edu/smithgp/index.html;www.jerini.de;imgt.cines.fr;およびKabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,米国保健省(U.S.Dept.Health)(1987)(それぞれそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0036】
いかなるヒト以外の配列も欠く完全にヒトのmAbは、例えば、Lonbergら、Nature 368:856−859(1994);Fishwildら、Nature
Biotechnology 14:845−851(1996)およびMendezら、Nature Genetics 15:146−156(1997)で参照される技術により、ヒト免疫グロブリントランスジェニックマウスから製造し得る。ヒトmAbは、例えばKnappikら、J.Mol.Biol.296:57−86(2000)およびKrebsら、J.Immunol.Meth.254:67−84(2001)で参照される技術により、ファージディスプレイライブラリーから調製かつ至適化もまたし得る。
【0037】
本発明は、TLR3受容体媒介性のシグナリングを調節することが可能なTLR3受容体結合剤に関する。こうした結合剤は、TLR3受容体を結合しかつTLR3受容体媒介性のシグナリングを調節するという特性を有する抗TLR3抗体を包含する。
【0038】
本発明の一局面は、IL−8、MCP−1、MIP1−α、RANTESおよびTNF−αよりなる群から選択されるサイトカインの細胞性産生を誘導する、ヒトToll様受容体3(hTLR3)若しくはhTLR3ホモログと反応性の抗体である。これらの抗体は、研究試薬、診断試薬および治療薬として有用である。とりわけ、本発明の抗体は、外来抗原に対する免疫応答を刺激し得る治療薬として有用である。
【0039】
本発明の別の局面は、他のTLRリガンドにより誘導されるサイトカイン応答を調節する、hTLR3若しくはhTLR3ホモログと反応性の抗体である。サイトカイン応答の調節は、Cpg ODNおよびR848を包含する他のTLRリガンドに対する免疫応答の増強若しくは改変をもたらす。例えば、本発明の化合物は、CpGオリゴジヌクレオチド(CpG ODN)のようなTLR9リガンドと組合せで使用される場合、インターフェロン−α(IFN−α)のような1型インターフェロンの産生を高め得る。
【0040】
本発明の別の局面は、TLR7アゴニストにより生じられるIL−10の産生を低下させる、hTLR3若しくはhTLR3ホモログと反応性の抗体である。例えば、本発明の抗体は、レシキモド(resiquimod)としてもまた知られるTLR7アゴニストR848により生じられる抗炎症性サイトカインIL−10の産生を有意に低下させる。いずれかの特定の理論に束縛されることを願わない一方、本発明の抗体はTLR7アゴニストに対する炎症応答を増強すると考えられる。
【0041】
一態様において、本発明の抗体は、配列番号9(CDR H1)、11(CDR H2)および13(CDR H3)に示されるところのH鎖相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列、ならびに配列番号19(CDR L1)、21(CDR L2)および23(CDR L3)に示されるところのL鎖CDRのアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体の抗原結合能力を有する、hTLR3と反応性の単離された抗体である。例示的一抗体は、配列番号9、11および13に示されるところのH鎖CDRアミノ酸配列、ならびに配列番号19、21および23に示されるところのL鎖CDRアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体である。
【0042】
本発明の別の態様は、配列番号9、11および13に示されるCDRアミノ酸配列を有する抗体H鎖をコードする単離されたポリヌクレオチド、若しくは相補核酸である。所定の発現系での遺伝暗号若しくはコドンの好みの縮重を考えれば配列番号9、11および13に示されるH鎖可変領域CDRをコードする他のポリヌクレオチドもまた、本発明の範囲内にある。
【0043】
本発明の別の態様は、配列番号19、21および23に示されるCDRアミノ酸配列を有する抗体L鎖をコードする単離されたポリヌクレオチド、若しくは相補核酸である。所定の発現系での遺伝暗号若しくはコドンの好みの縮重を考えれば配列番号19、21および23に示されるL鎖可変領域CDRをコードする他のポリヌクレオチドもまた、本発明の範囲内にある。
【0044】
本発明の別の態様は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するH鎖および配列番号16に示されるアミノ酸配列を有するL鎖を含んでなるhTLR3と反応性の単離された抗体である。
【0045】
本発明の別の態様は、配列番号6に示されるアミノ酸配列をコードする単離されたポリヌクレオチド若しくはその相補物である。配列番号6に示されるアミノ酸配列をコードする例示的一ポリヌクレオチドは、配列番号5に示される配列を有する。
【0046】
本発明の別の態様は、配列番号16に示されるアミノ酸配列をコードする単離されたポリヌクレオチド若しくはその相補物である。配列番号16に示されるアミノ酸配列をコードする例示的一ポリヌクレオチドは、配列番号15に示される配列を有する。
【0047】
例示的抗体は、IgG、IgD、IgGA若しくはIgMアイソタイプの抗体でありうる。加えて、こうした抗体は、グリコシル化、異性化、アグリコシル化、若しくはポリエチレングリコール部分の付加(ペグ化)および脂質化のような天然に存在しない共有修飾のような過程により翻訳後に修飾され得る。こうした修飾はin vivoでもin vitroでも起こりうる。完全にヒトの、ヒト化、およびアフィニティーで成熟させた抗体分子若しくは抗体フラグメントは、ミメティボディ、融合タンパク質およびキメラタンパク質がそうであるように、本発明の範囲内にある。
【0048】
本発明の抗体は、約10−7、10−8、10−9、10−10、10−11若しくは10−12M未満若しくはそれに等しいKでhTLR3を結合しうる。hTLR3受容体に対する所定の分子のアフィニティーは、いずれの適する方法を使用しても実験で決定し得る。こうした方法は、当業者に既知のBiacore若しくはKinExa装置、ELISAまたは競合結合アッセイを利用しうる。
【0049】
所望のアフィニティーをもつ所定のTLR3ホモログを結合する抗体分子は、抗体アフィニティー成熟を包含する技術、および抗体以外の分子に適する他の技術に認識された技
術により、バリアント若しくはフラグメントのライブラリーから選択し得る。
【0050】
本発明の別の態様は、本発明の最低1種のポリヌクレオチドを含んでなるベクターである。こうしたベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、トランスポゾンに基づくベクター、または所定の生物体若しくは遺伝的背景への本発明のポリヌクレオチドのいずれかの手段による導入に適するいかなる他のベクターでもありうる。
【0051】
本発明の別の態様は、配列番号9、配列番号11および配列番号13を含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびに配列番号19、配列番号21および配列番号23を含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのような本発明のポリヌクレオチドのいずれかを含んでなる宿主細胞である。こうした宿主細胞は真核生物細胞、細菌細胞、植物細胞若しくは古細菌細胞でありうる。例示的真核生物細胞は、哺乳動物、昆虫、トリ若しくは他の動物起源のものでありうる。哺乳動物真核生物細胞は、SP2/0(American Type Culture Collection(ATCC)、バージニア州マナサス、CRL−1581)、NS0(European Collection of Cell Cultures(ECACC)、英国ウィルトシャー州ソールズベリー、ECACC番号85110503)、FO(ATCC CRL−1646)およびAg653(ATCC CRL−1580)マウス細胞株のようなハイブリドーマ若しくは骨髄腫細胞株のような不死化細胞株を包含する。例示的一ヒト骨髄腫細胞株はU266(ATCC CRL−TIB−196)である。他の有用な細胞株はCHO−K1(ATCC CRL−61)若しくはDG44のようなチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞由来のものを包含する。
【0052】
本発明の別の態様は、本発明の宿主細胞を培養すること、および該宿主細胞により産生される抗体を回収することを含んでなる、本発明の抗体の作成方法である。こうした抗体は、配列番号6および16にそれぞれ示されるところのHおよびLアミノ酸配列を有するmAb C1130として下で例示されるhTLR3抗体でありうる。
【0053】
CpG媒介性のIFN−α産生を増強する本発明の抗体の能力は多様な組合せ型治療を提供する。例えば、TLRアゴニスト分子若しくはワクチン抗原のような外来抗原と組合せの本発明の抗体の使用は、免疫応答を調節しかつ感染症の処置において有用であることができる。従って、本発明の別の局面は、肝炎ウイルス、単純疱疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルスおよびヒトパピローマウイルスを包含するウイルス感染症、ならびに他の皮膚および粘膜関連の感染症を予防若しくは処置するためにI型IFN(例えばIFNα)の高められた産生により測定されるところの免疫応答を刺激かつ持続するための、インターフェロン、若しくは限定されるものでないがCpG ODNを挙げることができるTLR9アゴニストのような他の免疫刺激剤と組合せの本発明の抗体の使用である。また、本発明は、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、毛様細胞白血病、悪性黒色腫および肉腫(カポシ肉腫を包含する)を包含する癌を処置するための、インターフェロン、若しくは限定されるものでないがCpG ODNを挙げることができるTLR9アゴニストのような他の免疫刺激剤と組合せの本発明の抗体の使用を提供する。さらに、本発明は、炎症性腸疾患(例えばクローン病および潰瘍性大腸炎)を処置するための、インターフェロン、若しくは限定されるものでないがCpG ODNを挙げることができるTLR9アゴニストのような他の免疫刺激剤と組合せの本発明の抗体の使用もまた提供する。
【0054】
本発明の別の局面は、陰部疣贅のようなウイルス感染関連症状を予防若しくは処置するための併用療法を提供するための、R848(レシキモド)若しくはイミキモドのようなTLR7アゴニストと組合せの本発明の抗体の使用である。合成TLR7アゴニスト、イミキモドは陰部疣贅の処置のため規制当局により承認された。本発明の別の局面は、細菌、真菌およびウイルス性肺炎を包含する肺疾患、ならびに喘息、気管支炎および慢性閉塞
性肺疾患のような肺疾患の病原体媒介性の増悪を予防若しくは処置するための、TLR9若しくはTLR7アゴニストと組合せの本発明の抗体の使用である。本発明のなお別の局面は、移植片対宿主病(GVHD)を予防若しくは処置するためのTLR9若しくはTLR7アゴニストと組合せの本発明の抗体の使用である。本発明のなお別の局面は、多発性硬化症および狼瘡を包含する自己免疫疾患を予防若しくは処置するためのインターフェロンのような免疫処置と組合せの本発明の抗体の使用である。
【0055】
本発明の方法は、いずれの属に属する動物も処置するのに使用しうる。こうした動物の例はヒト、マウス、鳥類、は虫類および魚類を包含する。
【0056】
所定の状態を処置するのに十分な所定のTLR3抗体の量は容易に決定し得る。本発明の方法において、TLR3抗体は、単独で、または最低1種の他のTLRアゴニスト分子若しくはワクチン抗原と組合せで投与しうる。
【0057】
本発明の抗体の治療的使用のための投与様式は、宿主に該剤を送達するいずれの適する経路でもよい。該タンパク質、抗体、抗体フラグメントおよびミメティボディ、ならびにこれらの剤の製薬学的組成物は、非経口投与に、すなわち皮下、筋肉内、皮内、静脈内若しくは鼻内でとりわけ有用である。
【0058】
本発明の抗体は、製薬学的に許容できる担体中に有効成分として有効量の抗体を含有する製薬学的組成物として製造しうる。注入の準備ができている形態の、好ましくは生理学的pHで緩衝された、抗体を含有する水性懸濁液若しくは溶液が好ましい。非経口投与のための組成物は、一般に、製薬学的に許容できる担体、好ましくは水性担体に溶解された本発明の抗体若しくはそれらのカクテルの溶液を含むことができる。多様な水性担体、例えば0.4%生理的食塩水、0.3%グリシンなどを使用しうる。これらの溶液は無菌かつ一般に微粒子物質を含まない。これらの溶液は慣習的な公知の滅菌技術(例えば濾過)により滅菌しうる。該組成物は、pH調節剤および緩衝剤などのような、生理学的条件に近づけるために必要とされるところの製薬学的に許容できる補助物質を含有しうる。こうした製薬学的製剤中の本発明の抗体の濃度は広範に、すなわち約0.5%未満、通常は約1%若しくは最低約1%から約15若しくは20重量%まで変動し得、そして、選択される特定の投与様式に従って、液体の容量、粘度などに主として基づいて選択されることができる。
【0059】
従って、筋肉内注入のための本発明の製薬学的組成物は、1mLの無菌緩衝水、および約1ngないし約100mg、例えば約50ngないし約30mg、若しくはより好ましくは約5mgないし約25mgの間の本発明の抗体を含有するよう製造し得る。同様に、静脈内注入のための本発明の製薬学的組成物は、約250mlの無菌リンゲル液、ならびに約1mgないし約30mg、および好ましくは5mgないし約25mgの本発明の抗体を含有するよう構成し得る。非経口投与可能な組成物の実際の製造方法は公知であり、そして例えば“Remington’s Pharmaceutical Science”、第15版、Mack Publishing Company、ペンシルバニア州イーストンにより詳細に記述されている。
【0060】
本発明の抗体は、製薬学的製剤中の場合に単位用量形態物で存在しうる。適切な治療上有効な用量は当業者により容易に決定され得る。決定された用量は、必要な場合は、処置期間の間に医師により適切として選択される適切な時間間隔で反復されうる。
【0061】
本発明の抗体は、貯蔵のため凍結乾燥されかつ使用前に適する担体で再構成され得る。この技術は慣習的免疫グロブリンおよびタンパク質製剤で有効であることが示されており、そして、技術既知の凍結乾燥および再構成技術を使用し得る。
【0062】
本発明は今や、以下の特定の制限しない実施例を参照して記述されよう。
【0063】
実施例
【実施例1】
【0064】
抗TLR3 mAbの生成
抗TLR3 mAbは正常Balb/cマウスで標準的ハイブリドーマ技術を使用して生成した(Kohlerら、J Immunol 6:511−519、1976)、全動物手順は、施設の動物の管理および使用委員会により確立されたガイドラインに従って実施した。マウスに、ヒトTLR3のアミノ酸1−703をコードするプラスミドDNA(配列番号3)を2回皮内注入した。アミノ酸1−703は、hTLR3の予測される細胞外ドメイン(配列番号4)に対応する。該マウスは10μg/マウスのプラスミドDNA注入を2週間隔で受領した。マウスを精製組換えヒトTLR3タンパク質の細胞外ドメインの皮内注入により追加免疫した。15μgのタンパク質を用いる第一および第二のタンパク質免疫化が第二のプラスミドDNA注入の2および4週後に発生した。第三の追加免疫(10μgタンパク質)は5か月後に発生した。脾の収集の3日前にマウスにTLR3タンパク質(15μg/マウス)を静脈内注入した。B細胞融合を、標準的方法(Kohlerら、上記)を使用して実施した。ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジンを含有する培地を使用してハイブリドーマを選択した。ウェルをELISAによりスクリーニングして抗TLR3抗体を検出した。陽性のウェルを増殖させ、そして限界希釈を使用してクローン化した。抗体の大型バッチを調製し、そしてプロテインGカラムを使用して精製した。エンドトキシン濃度は<1EU/mgであることが確認された。mAb C1130をこの様式で生成した。該抗体の配列を図1および2に示す。
【実施例2】
【0065】
ヒト末梢血単核細胞の単離
PBMCをヒト血液から単離した。全血をヒトドナーからヘパリン被覆したシリンジに収集した。およそ50mLの無菌ハンクス液(HBSS)(Invitrogen)を100mLの血液ごとに添加した。38mLの血液:HBSSを50mLコニカルチューブに添加し、そして11mLのFicoll−Paque Plus溶液(Amersham)をゆっくりと下に層にした。チューブを400×gで室温で40分間遠心分離した。勾配を保存するため遠心機のブレーキのスイッチを切った。PBMCはFicollのすぐ上で白層を形成した。1個のコニカルからのPBMCをピペットで新たな50mLコニカルに吸引した。チューブをHBSSで満たしてFicollの残部を洗い流した。細胞を600×gで10分間回転した。上清を捨て、そしてペレットを単一チューブ中10mLの赤血球溶解溶液(Sigma)に再懸濁した。該チューブを室温で10分間インキュベートした。該チューブをHBSSで50mLにし、そして細胞を600×gでの遠心分離によりペレットにした。細胞をHBSSであと2回洗浄した。最終洗浄後にペレットを完全培地、すなわちRPMI 1640培地/10%FBS/1×非必須アミノ酸/1×ピルビン酸ナトリウム/10μg/mLゲンタマイシンに再懸濁した。ゲンタマイシンはSigmaから購入し;他の培地成分はInvitrogenから購入した。細胞のアリコートを取り出し、そして生存細胞数を得るため50μLのトリパンブルーと混合した。細胞を3×10細胞/ウェル(0.5mL/ウェル)の濃度で48ウェルプレートにプレーティングした。
【実施例3】
【0066】
サイトカイン/ケモカイン産生に対する抗hTLR3抗体の影響の測定
精製した抗体を20μg/mLの最終濃度までPBMCに添加した。細胞および抗体は、1μg/mLのCpG2216(Invitrogenにより合成された)若しくは1
μg/mLのR848(Invitrogen)の添加1時間前まで37℃で30分間インキュベートした。CpG2216は配列5’−ggG GGA CGA TCG TCg ggg gg−3’を有する。大文字の塩基はホスホジエステル結合により連結され、また、小文字のものはホスホロチオエート結合により連結されている。レシキモドとしてもまた知られるR848はイミダゾキノリンアミドであり、そしてイミキモドと同一の化合物分類にある。上清を24時間後に収集しかつ−20℃で凍結した。
【0067】
上清中のサイトカインおよびケモカイン濃度を、Luminex技術を使用して測定した。BiosourceからのLuminexキットは、以下のサイトカイン/ケモカイン、すなわちIL−1β、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、TNFα、IFNα、IFNγ、RANTES、MCP−1、MIP−1αおよびIP−10を測定するのに使用した。いくつかの場合には、IFNα濃度はELISAキット(PBL Biomedical Labs)を使用して測定した。統計学的解析は、追跡対比較を伴う二因子分散分析を使用して実施した。
【0068】
該結果を図3に示し、そして、C1130とのPBMCのインキュベーションがヒト細胞によるIL−8、MCP−1、MIP−1α、RANTESおよびTNFαの産生をもたらしたことを示す(n=3実験)。これらの影響は、C1130に類似の様式で生成した別の抗TLR3マウスIgG1抗体C1068とインキュベートしたPBMCで見られなかった。精製した抗体のロットをエンドトキシンについて試験し、そして該濃度は1EU/mgより低かった。
【実施例4】
【0069】
IFNα産生に対する抗hTLR3抗体の影響の測定
数種のTLRは二量体化しかつ/若しくは異なるアダプタータンパク質を使用してリガンド結合特異性を変えることが既知であるため、抗hTLR3抗体C1130で前処理したPBMCを、実施例3に記述されるとおり他のTLRのリガンド、具体的にはCpG2216で刺激して、他のTLRリガンドに対する応答に対するTLR3調節の影響を検査した。TLR3およびTLR9のリガンドは核酸であり、そして双方がインターフェロン分泌を活性化するため、それらがシグナル伝達経路を共有し得るという仮説を立てた。3実験からの結果を図4に示し、そして、C1130およびCpG2216とインキュベートしたPBMCがCpG単独で刺激した細胞より多いIFNαを分泌したことを示す。平均の増大は7倍であった。
【実施例5】
【0070】
IL10産生に対する抗hTLR3抗体の影響の測定
TLR7およびTLR8のリガンドもまた核酸である。R848(レシキモド)はヒトでのTLR7およびTLR8の合成リガンドであり、グアノシンおよびウリジン豊富な一本鎖RNAを認識することが示され(Heilら、Science 5663:1526、2004)、そしてヒトPBMCを刺激するのに使用した。TLR7の活性化は、TLR3同様、I型インターフェロンの分泌を誘発する。図5の結果は、C1130がR848に応答してPBMCにより分泌されるIFNαのレベルに影響を及ぼさなかったことを示す。PBMCは通常、R848に応答して非常に高レベルのIFNαを分泌するが、3実験のうち2回で、R848での刺激は約500pg/mLのIFNα(アゴニスト若しくはアンタゴニストmAbによるいかなる影響もおそらく見るのに十分に低いレベル)の産生を誘導した。C1130はR848誘導性のIL−10レベルに影響を及ぼさなかった。3実験で、C1130はR848誘導性のIL−10を平均5倍低下させた。
【実施例6】
【0071】
抗体C1130による上皮細胞表面TLR3の認識
フローサイトメトリー分析を蛍光標示式細胞分取器(FACS)装置で実施した。C1130抗体を、製造元のプロトコルに従ってZenonマウスIgG1標識キットを使用してAPCに複合した。1μgのmAbあたり5マイクロリットルの標識試薬を室温でかつ光から保護して5分間インキュベートした。製造元のプロトコルに従い、1μgのmAbに対し5μlの比でブロッキング試薬を添加した。Zenon標識した抗体は複合30分以内に使用した。ヒトTLR3で安定にトランスフェクトしたHEK293(ヒト胎児腎臓上皮細胞)はInvitrogenから購入した。
【0072】
293−TLR3を、染色前若しくは後いずれかにCytofix中で15分のインキュベーションにより固定した。50μl中およそ1×10細胞を、96ウェル丸底プレート中でAPC標識抗体と氷上で30〜60分間インキュベートした。細胞を1600rpmで2分間の遠心分離によりPBS+1%FBSで3回洗浄した。データ取得はBecton−Dickinson FACSCalibur装置で実施し、そして、データ解析はWinList(Verity Software House、メーン州トプシャム)を使用して実施した。
【0073】
図6の結果は、抗体C1130が染色前若しくは後いずれかに固定した293−hTLR3細胞上の表面TLR3に結合することを示す。商業的に入手可能なPE標識抗hTLR3(クローン3.7)を陽性対照として、また、Zenon APC標識マウスIgG1を陰性対照として使用した。これらのデータは、抗hTLR3抗体C1130が上皮細胞を認識することを示す。
【実施例7】
【0074】
抗体C1130による肺上皮細胞表面TLR3の認識
ヒト肺上皮細胞株A549細胞はAmerican Type Culture Collectionから得た(ATCC受託番号CCL−185)。Lipofectamine 2000試薬(Invitrogen,Inc.)を使用し、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下にヒトTLR3遺伝子の完全長コピーと一緒にネオマイシン選択可能なマーカーをコードする哺乳動物発現ベクターで細胞をトランスフェクトした。A549細胞は、対照としてベクタープラスミドDNAのみ(ネオマイシン耐性をコードする)でもまた同時にトランスフェクトした。トランスフェクション24時間後に、細胞をその後トリプシン処理し、そして0.5mg/mlのネオマイシン(G418)を含有する培地中20倍希釈で播種した。G418を含有する選択培地中で2週間増殖後に細胞クローンが出現した。各トランスフェクションからの細胞コロニーを個別にプールした。完全長ヒトTLR3発現ベクター(A549−hTLR3)若しくはベクター対照(A549−neo)でのトランスフェクションおよび選択由来のA549細胞株を、0.5mg/mlのG418を含有する成長培地中で維持した。
【0075】
C1130抗体は実施例7に記述されるとおりAPCに複合させた。A549−TLR3.2細胞を、染色前若しくは後いずれかにCytofix中で15分のインキュベーションにより固定した。50μl中およそ1×10細胞を、96ウェル丸底プレート中でAPC標識抗体と氷上で30〜60分間インキュベートした。細胞を1600rpmで2分間の遠心分離によりPBS+1%FBSで3回洗浄した。データ取得および解析は実施例7に記述されるとおり実施した。図7の結果は、C1130が、染色前若しくは後いずれかに固定したA549−TLR3.2細胞上の表面TLR3に結合することを示す。商業的に入手可能なPE標識抗TLR3(クローン3.7)を陽性対照として、およびZenon APC標識マウスIgG1を陰性対照として使用した。肺上皮細胞を認識するC1130の能力は、それが肺感染症で潜在的治療用途を有することを示す。
【実施例8】
【0076】
抗体C1130によるカニクイザル白血球の認識
カニクイザルからの全血をFACSLyse緩衝液で10倍希釈し、そして室温で15分間インキュベートして赤血球を溶解した。細胞をその後、1400rpmで8分間の遠心分離によりPBS+1%FBSで4回洗浄した。生じる細胞ペレットをPBS+1%FBSに再懸濁し、そして血球計算板を使用して手動で計数した。サンプル細胞集団を0.2%トリパンブルーで染色することにより細胞生存率を測定した。試験した全サンプルは最低95%生存可能であった。
【0077】
全細胞ペレットを、10%FBSを補充したPBS 1〜2mlに再懸濁し、そして受容体内部移行の差違について評価するため4℃若しくは37℃いずれかに保った。50マイクロリットル(およそ2×10細胞)を96ウェル丸底プレートの各ウェルに分配した。FITC、PEおよびAPC標識したmAbをウェルあたり1μgで添加し、4℃若しくは37℃いずれかでかつ光から保護して最低30分間インキュベートした。細胞をその後、1600rpmで2分間の遠心分離によりPBS+1%FBSで3回洗浄した。最終洗浄後に細胞をCytofix緩衝液に再懸濁し、そして4℃若しくは37℃いずれかで15分間インキュベートした。Cytofix緩衝液中でパラホルムアルデヒド固定後に、細胞を1600rpmで2分間の遠心分離により1回洗浄し、そして200μlのPBS+1%FBSに再懸濁した。サンプルは、直ちに読み取ったか、若しくは取得前に4℃で一夜保存したかのいずれかであった。データ取得および解析は実施例7に記述されるとおり実施した。
【0078】
図8に示される結果は、C1130が、カニクイザル(cyno)CD11b陽性細胞、CD83陽性細胞、CD86陽性細胞およびCD3陽性細胞に結合することを示す。CD83はB細胞および樹状細胞上で見出され、また、CD3はT細胞上のみで見出され、C1130がPBMC中の多様な細胞集団を認識することを示す。
【0079】
本発明は今や完全に記述されたので、付随する請求の範囲の技術思想若しくは範囲から離れることなく多くの変更および改変がそれに対しなされ得ることが当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】C1130抗hTLR3 mAbのH鎖可変領域配列を示す。
【図2】C1130抗hTLR3 mAbのL鎖可変領域配列を示す。
【図3】C1130が24時間でヒト末梢血単核細胞(PBMC)によるIL−8、MCP−1、MIP−1α、RANTESおよびTNFα分泌を誘導したことを示す。
【図4】C1130が24時間でCpG誘発性のIFNα産生を高めたことを示す。
【図5】C1130が24時間でR848誘発性のIL−10産生を低下したことを示す。
【図6】安定にトランスフェクトしたHEK293細胞上の細胞表面TLR3のC1130認識を示す。
【図7】安定にトランスフェクトしたA549−TLR3.2細胞上の細胞表面TLR3のC1130認識を示す。
【図8】カニクイザルPBMCのC1130認識を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL−8、MCP−1、MIP1−α、RANTESおよびTNF−αよりなる群から選択されるサイトカインの細胞性産生を誘導する、ヒトToll様受容体3(hTLR3)若しくはそのホモログと反応性の単離された抗体。
【請求項2】
他のToll様受容体リガンドに対する免疫応答を改変する、hTLR3若しくはそのホモログと反応性の単離された抗体。
【請求項3】
配列番号9、11および13に示されるところのH鎖相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列、ならびに配列番号19、21および23に示されるところのL鎖CDRのアミノ酸配列を含んでなる、モノクローナル抗体の抗原結合能力を有する、hTLR3と反応性の単離された抗体。
【請求項4】
配列番号9、11および13に示されるところのH鎖相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列、ならびに配列番号19、21および23に示されるところのL鎖CDRのアミノ酸配列を含んでなる、hTLR3と反応性の単離された抗体。
【請求項5】
配列番号6に示されるアミノ酸配列を含んでなるH鎖および配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでなるL鎖を含んでなる、hTLR3と反応性の単離された抗体。
【請求項6】
配列番号9、11および13に示されるCDRアミノ酸配列を含んでなる抗体H鎖をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項7】
配列番号19、21および23に示されるCDRアミノ酸配列を含んでなる抗体L鎖をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号6に示されるアミノ酸配列を含んでなる抗体H鎖をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
配列番号5に示される配列を含んでなる、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
配列番号16に示されるアミノ酸配列を含んでなる抗体L鎖をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項11】
配列番号15に示される配列を含んでなる、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項6、7、8、9、10若しくは11に記載の最低1種のポリヌクレオチドを含んでなるベクター。
【請求項13】
請求項12に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項14】
請求項13に記載の宿主細胞を培養すること、および該宿主細胞により産生された抗体を回収することを含んでなる、hTLR3と反応性の抗体の作成方法。
【請求項15】
請求項5に記載の抗体を産生するハイブリドーマ細胞株。
【請求項16】
免疫刺激剤と組合せの治療上有効な量の請求項1に記載の抗体を患者に投与することを含んでなる、ウイルス感染症の処置方法。
【請求項17】
免疫刺激剤がインターフェロン若しくはToll様受容体−9(TLR9)アゴニストである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ウイルス感染症が、肝炎ウイルス、単純疱疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス若しくは他の皮膚および粘膜関連の感染症である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
免疫刺激剤と組合せの予防上有効な量の請求項1に記載の抗体を患者に投与することを含んでなる、ウイルス感染症の予防方法。
【請求項20】
免疫刺激剤が、インターフェロン若しくはToll様受容体−9(TLR9)アゴニストである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ウイルス感染症が、肝炎ウイルス、単純疱疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルスまたは他の皮膚若しくは粘膜関連の感染症である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
免疫刺激剤と組合せの治療上有効な量の請求項1に記載の抗体を患者に投与することを含んでなる、癌の処置方法。
【請求項23】
免疫刺激剤が、インターフェロン若しくはToll様受容体9(TLR)アゴニストである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
癌が、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、毛様細胞白血病、悪性黒色腫若しくは肉腫である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
免疫刺激剤と組合せの治療上有効な量の請求項1に記載の抗体を患者に投与することを含んでなる、炎症性腸疾患の処置方法。
【請求項26】
免疫刺激剤がインターフェロン若しくはTLR9アゴニストである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
炎症性腸疾患がクローン病若しくは潰瘍性大腸炎である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
Toll様受容体7(TLR7)アゴニストと組合せの治療上有効な量の請求項1に記載の抗体を患者に投与することを含んでなる、ウイルス感染関連症状の処置方法。
【請求項29】
TLR7アゴニストがイミキモド若しくはレシキモドである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ウイルス感染関連症状が陰部疣贅である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
Toll様受容体7(TLR7)アゴニストと組合せの予防上有効な量の請求項1に記載の抗体を患者に投与することを含んでなる、ウイルス感染関連症状の予防方法。
【請求項32】
TLR7アゴニストがイミキモド若しくはレシキモドである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ウイルス感染関連症状が陰部疣贅である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
TLR9若しくはTLR7アゴニストと組合せの治療上有効な量の請求項1に記載の抗体を患者に投与することを含んでなる、肺疾患および病原体媒介性の増悪の処置方法。
【請求項35】
TLR7アゴニストがイミキモド若しくはレシキモドである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
肺疾患が細菌性、真菌性若しくはウイルス性肺炎であり、および病原体媒介性の増悪が喘息、気管支炎若しくは慢性閉塞性肺疾患である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
TLR9若しくはTLR7アゴニストと組合せの予防上有効な量の請求項1に記載の抗体を患者に投与することを含んでなる、肺疾患および病原体媒介性の増悪の予防方法。
【請求項38】
TLR7アゴニストがイミキモド若しくはレシキモドである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
肺疾患が細菌性、真菌性若しくはウイルス性肺炎であり、および病原体媒介性の増悪が喘息、気管支炎若しくは慢性閉塞性肺疾患である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
TLR9若しくはTLR7アゴニストと組合せの治療上有効な量の請求項1に記載の抗体を患者に投与することを含んでなる、移植片対宿主病(GVHD)の処置方法。
【請求項41】
TLR7アゴニストがイミキモド若しくはレシキモドである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
TLR9若しくはTLR7アゴニストと組合せの予防上有効な量の請求項1に記載の抗体を患者に投与することを含んでなる、GVHDの予防方法。
【請求項43】
TLR7アゴニストがイミキモド若しくはレシキモドである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
免疫処置と組合せの治療上有効な量の請求項1に記載の抗体を患者に投与することを含んでなる、自己免疫疾患の処置方法。
【請求項45】
免疫処置がインターフェロンである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
自己免疫疾患が多発性硬化症若しくは狼瘡である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
免疫処置と組合せの予防上有効な量の請求項1に記載の抗体を患者に投与することを含んでなる、自己免疫疾患の予防方法。
【請求項48】
免疫処置がインターフェロンである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
自己免疫疾患が多発性硬化症若しくは狼瘡である、請求項47に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2009−523010(P2009−523010A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538188(P2008−538188)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/060305
【国際公開番号】WO2007/051164
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(503054122)セントカー・インコーポレーテツド (74)
【Fターム(参考)】