説明

X線回折定量装置

【課題】基底基準吸収回折法に基づいたX線回折定量装置において、基底板を改良することにより安定した再現性の高い測定データを得ることができるようにする。
【解決手段】物質Sが無いときに基底板31で回折した回折線の強度と、物質Sを透過した後に基底板31で回折した回折線の強度とによって物質SのX線吸収量を求め、X線を用いて測定した物質Sの重量をその求められたX線吸収量に基づいて補正する基底基準吸収回折法を用いたX線回折定量装置である。この装置は、物質Sを保持するフィルタ33と、物質Sに照射するX線を発生するX線源Fと、物質Sで回折した回折X線を検出するX線検出器20と、フィルタ33におけるX線照射面の反対側に設けられた基底板31とを有し、基底板31のX線が照射される表面は結晶の配向性が低くなる処理、例えばサンドブラスト処理、ショットピーニング処理を受けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質の重量をX線を用いて測定するX線回折定量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基底基準吸収回折法に基づいた物質の定量法が知られている。この定量法は、例えば、空気中に含まれる特定物質の重量、すなわち空気に含まれる特定物質の含有量を測定する際に用いられる。さらに具体的には、この定量法は、例えば、空気中に含まれる微小物質の含有量を測定する際に用いられる。
【0003】
この基底基準吸収回折法に基づいた定量法は、例えば、次のようにして実施される。すなわち、例えば円板状でフィルム状のフィルタの所定面積内に被定量物である物質を空気吸引等によって捕獲し、その物質に固有の回折角度に対応した入射角度でその物質にX線を照射し、その物質で回折した回折線をX線検出器によって検出してその回折線の強度を測定し、測定されたその回折線強度を予め求めておいた検量線と比較することによりその物質の重量を決定する。
【0004】
上記の検量線は、理想的には図7に符号L1で示すように直線状であるが、実際には符号L2で示すように被定量物の重量が大きくなるに従って傾斜が緩やかになって直線から外れる傾向にある。これは、被定量物の重量が大きくなるとその被定量物によるX線の吸収が大きくなるからであると考えられる。このように検量線の傾斜が重量の大きい側で緩やかになると、この検量線を使って検量を行ったとき、すなわち被定量物質の重量を決めたとき、その決められた重量が被定量物の実際の重量よりも大きくなり、このため、正確な定量ができなくなるおそれがある。
【0005】
このような定量の誤差を解消するため、基底基準吸収回折法では従来から、例えばZn(亜鉛)から成る基底板を用いて検量線を補正する処理を行っている。具体的には、被定量物を捕獲する前のフィルタの下に基底板を配置して、被定量物が無いときの基底板からの回折線強度を測定し、次に、被定量物を捕獲した後のフィルタの下に同じ基底板を配置して、被定量物を透過した後に基底板で回折した回折線の強度を測定し、それらの測定結果に基づいて被定量物によるX線の吸収量を測定し、そして、そのX線吸収量に基づいて検量線を補正している。補正された検量線は、図7に符号L1で示すように直線状になる。
【0006】
このように、基底基準吸収回折法では、フィルタに捕獲された被定量物の回折線強度はもとより、被定量物が無いときに基底板で回折した回折線の強度、及び被定量物を透過した後に基底板で回折した回折線の強度の両方の強度が正確に測定されることが重要である。このことに鑑み、本件出願人は、特許文献1において、基底板をフィルタよりも小さく設定したX線回折定量装置、特に基底板をフィルタにおける被定量物捕獲領域よりも小さく設定したX線回折定量装置を提案した。
【0007】
このX線回折定量装置によれば、被定量物をフィルタ内に捕獲してそのフィルタを基底板の上に載せると、基底板はその全体が常に被定量物によって覆われて、被定量物の外側に基底板がはみ出すことがなくなるので、基底板で回折したX線は必ず被定量物を透過した後のX線に限られることになり、それ故、被定量物を透過した後に基底板で回折した回折線の強度を正確に測定できること、そのために被定量物によるX線の吸収量を正確に測定できること、そのために検量線を正確に補正できること、ひいては、被定量物質の検量を正確に行うことが可能になった。
【0008】
【特許文献1】特許第3673981号(第3頁、図3,6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された定量法には次のような不十分な点もあった。それは、複数の試料に対して測定を行う際に個々の試料に対して異なった基底板を用いると、得られた測定データの再現性が悪くなるということである。本発明者はこの問題を解消するために種々の実験を行い、その結果、複数の基底板間で結晶の配向性が異なっていると測定データの再現性が悪くなることを知見した。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたものであって、基底基準吸収回折法による定量法において、基底板を改良することにより安定した再現性の高い測定データを得ることができるX線回折定量装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るX線回折定量装置は、物質が無いときに基底板で回折した回折線の強度と、前記物質を透過した後に前記基底板で回折した回折線の強度とによって前記物質のX線吸収量を求め、X線を用いて測定した前記物質の重量をその求められたX線吸収量に基づいて補正する基底基準吸収回折法を用いたX線回折定量装置において、前記物質を保持する物質保持体と、前記物質に照射するX線を発生するX線源と、前記物質で回折した回折X線を検出するX線検出手段と、前記物質保持体におけるX線照射面の反対側に設けられた基底板とを有し、前記基底板のX線が照射される表面は結晶の配向性が低くなる処理を施されていることを特徴とする。
【0012】
このX線回折定量装置を用いて被定量物質を定量する際には、被定量物質にX線(例えば、CuKα線を含むX線)を照射し、その被定量物質で回折した回折線の強度を測定し、測定された回折線強度に基づいて検量線から被定量物質の重量を求める。例えば、被定量物質の回折線が図8において回折角度2θ=αにピークを持つ波形Ps として得られるものであるならば、そのピーク波形Ps の強度I=iをX線回折装置によって測定し、測定されたその回折線強度iに基づいて図7の検量線L1から重量mが読み取られ、この重量mが被定量物質の重量であると特定される。
【0013】
図7の検量線L1は、基本的には、重量が既知である数個の物質に対して回折線強度を実測によって求め、得られた(M,I)のデータ(但し、Mは物質の重量、Iはその物質からの回折線強度)を図7の検量線座標上にプロットすることによって求められる。しかしながら、単なる実測結果に基づいた検量線は符合L2で示すように、重量が大きい領域で傾斜が緩やかになって理想的な検量線L1から外れる傾向にある。これは、物質の重量が大きくなると、物質によるX線の吸収が大きくなって、測定される回折線強度がそのX線吸収の分だけ小さくなるからである。
【0014】
このような実測の検量線L2を用いて検量を行うと信頼性の高い正確な検量結果を得ることができないので、基底基準吸収回折法に基づいた一般的な検量処理においては、従来から、誤差を含む検量線L2を補正して正確な検量線L1を求めることにしている。具体的には、X線の照射領域内に回折角度が既知である材料(例えば、Zn)から成る基底板を配置し、被定量物質を透過することなく基底板で回折した回折線の強度と、被定量物質を透過した後に基底板で回折した回折線の強度の両方を実測し、それらの強度に基づいて被定量物質によるX線吸収量、又は被定量物質のX線吸収率を求め、この求められたX線吸収率等に基づいて図7の実測検量線L2を補正して正確な検量線L1を求めている。
【0015】
しかしながら、基底板を用いた従来の検量線補正方法においては、基底板を形成している材料、例えばZn(亜鉛)における結晶の配向性が基底板ごとに異なっていると、異なる基底板を用いて行われた測定間で誤差が生じるおそれがあった。つまり、測定の再現性が低下するおそれがあった。これに対し本発明に係るX線回折定量装置によれば、前記基底板のX線が照射される表面に結晶の配向性が低くなる処理が施されているので、基底板が異なる場合でも測定結果にばらつきが生じることが抑えられ、安定した再現性の高い特定データを得ることが可能となった。上記のような結晶の配向性が低くなる処理として、例えば、砥粒材を基底板の表面に流体と共に吹き付ける処理が考えられる。この場合、砥粒材としは鋼の粒又は砂を用いることができ、流体としは空気流を用いることができる。
【0016】
本発明に係るX線回折定量装置は、前記物質保持体及び前記基底板を支持する複数の試料ホルダと、それらの試料ホルダを1つずつ交互に測定位置へ搬送するサンプルチェンジャとを有することが望ましい。そして、前記複数の試料ホルダ内の前記基底板の個々が結晶の配向性が低くなる前記処理を受けていることが望ましい。
【0017】
本発明に係るX線回折定量装置において、前記基底板のX線が照射される表面は、結晶の配向性が低くなる前記処理を受けた後に、外観調整処理によってその表面状態が調整されることが望ましい。外観調整処理としては、例えばエッチング加工を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るX線回折定量装置を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、これ以降の説明では図面を参照するが、その図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で各構成要素を示す場合がある。
【0019】
図4は本発明に係るX線回折定量装置の一実施形態を示している。ここに示すX線回折定量装置1は、X線測定装置2と、CPU(Central Processing Unit)3と、RAM(Random Access Memory)4と、ROM(Read Only Memory)5と、記憶媒体であるメモリ6とを有する。これらの要素はバス7によってつなげられている。また、バス7には画像表示装置8及びプリンタ9がつなげられている。画像表示装置8は、例えば、CRTディスプレイ、フラットパネルディスプレイ等によって構成される。また、プリンタ9は、例えば、静電転写方式のプリンタ、インクドット方式のプリンタ、その他任意の構造のプリンタによって構成される。
【0020】
メモリ6は、例えば、ハードディスク等といった機械式メモリや、半導体メモリ等によって構成される。メモリ6の内部には、X線測定装置2によって行われるX線測定の制御を司るX線測定プログラムが所定領域に記憶され、X線測定によって求められた被定量物質の回折線強度に基づいてその被定量物質の重量を演算によって求める処理を実行するための検量プログラムが所定領域に記憶され、被定量物質の重量を測定する際に用いられる検量線を作成するための検量線作成プログラムが所定領域に記憶され、X線測定によって求められたデータを記憶する領域が設けられ、さらに、検量線作成プログラムの実行によって求められた検量線を記憶するための領域が設けられている。
【0021】
X線測定装置2は、例えば、図1に示すように、図示しない装置本体の適所に装着された試料支持装置としてのサンプルチェンジャ11と、入射側X線光学系12と、受光側X線光学系13と、入射側X線光学系12を駆動する入射側駆動装置14と、受光側X線光学系13を駆動する受光側駆動装置15とを有する。サンプルチェンジャ11は、円軌跡上に並べられた複数(本実施形態では6個)の試料ホルダ16Aを1つずつ交互に測定位置Pへ搬送する。個々の試料ホルダ16Aは測定の対象である被定量物質Sを支持している。符号X0で示す仮想線は、被定量物質Sの表面を通って延びる水平軸線である試料軸線を示している。
【0022】
入射側光学系12は、X線を放射するX線源Fと、X線源Fから放射されたX線の発散を規制する発散規制スリット18とを有する。入射側光学系12は、必要に応じて、他の任意のX線光学要素を含むこともできる。そのようなX線光学要素としては、例えば、X線を単色化するモノクロメータ、発散X線ビームを平行X線ビームに成形するコリメータ、同じく発散X線ビームを平行X線ビームに成形するソーラスリット、X線の強度を調節するX線フィルタ等が考えられる。
【0023】
受光側光学系13は、X線の集光点に配置された受光スリット19と、X線を検出するX線検出器20とを有する。受光側光学系13は、必要に応じて、他の任意のX線光学要素を含むこともできる。そのような他のX線光学要素としては、入射側光学系12の場合と同様に、例えば、X線を単色化するモノクロメータ、発散X線ビームを平行X線ビームに成形するコリメータ、同じく発散X線ビームを平行X線ビームに成形するソーラスリット、X線の強度を調節するX線フィルタ等が考えられる。X線検出器20は、例えば、X線を面状や線状でなく点状の範囲で取り込む構造の、いわゆる0次元X線カウンタを用いて構成できる。このような0次元X線カウンタとしては、例えば、PC(Proportional Counter)や、SC(Scintillation Counter)等を用いることができる。
【0024】
入射側駆動装置14は、入射側X線光学系12を試料軸線X0を中心として矢印Aで示すように連続的又は間欠的に回転移動させる。この回転は、被定量物質Sに対するX線の入射角度θを変化させるために行われるものである。この入射側駆動装置14は任意の構造の駆動装置によって構成できるが、例えば、電動モータの回転出力をウオームとウオームホイールとを有する動力伝達装置を介して入射側X線光学系12へ伝達する構成を採用できる。この場合、電動モータは、回転角度を制御可能なモータ、例えば、サーボモータ、パルスモータ等を用いることが望ましい。
【0025】
受光側駆動装置15は、受光側X線光学系13を試料軸線X0を中心として矢印Bで示すように連続的又は間欠的に回転移動させる。この回転は、被定量物質Sへ入射するX線に対するX線検出器20のX線取込み角度2θを変化させるために行われるものである。X線検出器20のX線取込み角度2θは、とりもなおさず、被定量物質Sから回折角度2θで回折したX線を検出できる角度である。この受光側駆動装置15は任意の構造の駆動装置によって構成できるが、例えば、電動モータの回転出力をウオームとウオームホイールとを有する動力伝達装置を介して受光側X線光学系13へ伝達する構成を採用できる。この場合、電動モータは、回転角度を制御可能なモータ、例えば、サーボモータ、パルスモータ等を用いることが望ましい。
【0026】
サンプルチェンジャ11は、X線回折定量装置の本体への装着部23と、その装着部23に固定された固定テーブル24と、その固定テーブル24に回転可能に設けられたターンテーブル25と、ターンテーブル25を回転させるための駆動力を発生する動力源としての電動モータ26とを有する。固定テーブル24の内部にはギヤ列等といった動力伝達装置が設けられており、電動モータ26の回転出力がその動力伝達装置によってターンテーブル25へ伝えられて、そのターンテーブル25が中心軸線X1を中心として回転する。このターンテーブル25の回転により、複数の試料ホルダ16Aを順々に測定位置へ搬送する。
【0027】
試料ホルダ16Aは、図3に示すように、リング形状の試料板29Aと、その試料板29Aの内部に設けられるリング形状の非晶質部材30と、その非晶質部材30の内部に設
設けられる円板形状の基底板31と、試料板29Aの内部であって非晶質部材30及び基底板31の底面側領域に設けられる補助板32とを有する。また、試料ホルダ16Aは、測定対象である被定量物質Sを保持する物質保持体としてのフィルタ33と、そのフィルタ33を押えるリング形状の押え板34とを有する。試料板29Aの内部には90°の角度間隔で4個の貫通穴が設けられ、それらの貫通穴の中に磁石37が埋設されている。これらの磁石37は試料板29Aの上面及び下面の両方に磁力を作用させる。
【0028】
本実施形態では、被定量物質Sとして粉塵の一種であるアスベスト(代表例として、クリソタイル)を考える。すなわち、本実施形態のX線回折定量装置は、空気中に含まれるアスベストの重量を測定するものとする。アスベストSは定量されるにあたってフィルタ33に捕獲されるのであるが、この捕獲処理は、例えば、図5に示すように、直径がD0(例えば、16mm)である貫通穴35を有する基台36上にフィルタ33を載せ、フィルタ33の反対側から矢印Cで示すように空気を吸気して吸引を行う。すると、空気中に含まれるアスベストがフィルタ33の内部及び表面に吸引されて保持される。フィルタ33のうち上記のようにしてアスベストSが捕獲される直径D0の円形状の領域が物質保持領域Asである。
【0029】
図2に示すように、非晶質部材30の外周側面はその全域又はその一部分が接着剤H1によって試料板29Aの内周面に接着されて固定される。また、基底板31の外周側面はその全域又はその一部分が接着剤H2によって非晶質部材30の内周面に接着されて固定される。非晶質部材30の上面と基底板31の上面は同一平面となるように、すなわち同じ高さとなるように設定される。さらに、補助板32の上面はその全域又はその一部分が接着剤H3によって基底板31の底面及び非晶質部材30の底面に接着されて固定される。
【0030】
補助板32を設けるのは次の理由による。すなわち、非晶質部材30の試料板29Aへの接着部分、及び基底板31の非晶質部材30への接着部分を外部から観察すると、接着剤が視認されて見栄えが悪くなるのであるが、基底板31及び非晶質部材30の両者の底面にわたって補助板32を設けると見栄えが改善されるからである。
【0031】
図5のようにして被定量物質Sを保持するに至ったフィルタ33は、図2において、試料板29Aの内部であって基底板31及び非晶質部材30の両者の上面に載置される。基底板31及び非晶質部材30は、予めそれらの上面が試料板29Aの上面に対してフィルタ33の厚さ“t”だけ低くなるように試料板29Aの内周面に接着されており、それ故、フィルタ33を基底板31及び非晶質部材30の上に載せたとき、フィルタ33の上面は試料板29Aの上面と一致する。さらに、押え板34を試料板29Aの上面に載せると、その押え板34は磁石37に吸着し、これにより、フィルタ33がその押え板34によって上から押えられて容易には位置移動しないように保持される。
【0032】
各要素の材質、形状、寸法等は、例えば、次の通りである。
1.試料板29A
材質=アルミニウム、外周径=約33mm、厚さ=約3.2mm、形状=リング形状
2.非晶質部材30
材質=ソーダガラス、外周径=約25mm,厚さ=約1mm、形状=リング形状
3.基底板31
材質=Zn、外径=約15mm、厚さ=約1mm、形状=円板形状
4.補助板32
材質=Al、外径=約25mm,厚さ=約0.5mm、形状=円板形状
5.押え板34
材質=ステンレス鋼、外周径=約32mm、厚さ=約0.2mm、形状=リング形状
6.フィルタ33
材質=フッ素樹脂バインダグラスファイバーフィルタ、外径=約25mm、物質保持領域(すなわち、有効ろ過面積)As=直径16mm。
【0033】
各要素の寸法を以上のように設定した結果、図2に示すように、基底板31の平面形状はフィルタ33の平面形状よりも小さく、特に物質保持領域Asの平面形状よりも小さくなっている。そして、フィルタ33を試料板29Aへ組み込んだ状態で基底板31の全域が物質保持領域Asの下に隠れる状態となっている。
【0034】
以下、上記構成より成るX線回折定量装置の動作を説明する。本実施形態のX線回折定量装置は、図7の検量線L1を作成する処理、及び図1のX線測定装置2を用いて行われる検量処理の2つの処理を行うことができる。以下、これらの処理を説明する。
【0035】
(検量線の作成)
図4において、CPU3がメモリ6内の検量線作成プログラムを読み出して、そのプログラムを起動すると、図7の検量線L1を作成するための処理を実行可能な状態になる。その処理を開始する前に、まず、重量が既知であるアスベストを複数個用意する。これらのアスベストの重量は互いに異なっている。それらのアスベストを、それぞれ、図5に示すようにフィルタ33の物質保持領域As内に捕獲して保持する。個々のフィルタ33を図2に示すように試料板29Aの中に組み込むことにより個々の重量のアスベストに関して試料ホルダ16Aを作製する。
【0036】
以上のようにして作製した重量の異なるアスベストを保持する複数の試料ホルダ16Aを図1のサンプルチェンジャ11のターンテーブル25上の所定位置にセットする。試料ホルダ16Aは磁石37(図2参照)の働きによってターンテーブル25上の固定される。その固定のため、ターンテーブル25の表面には必要に応じて位置決め手段、例えば位置決めピンが設けられる。そして、X線入射角度θがアスベストの回折角度2θm=12.18°に対応したθm=2θm/2=6.09°の回折ピークを測定する。
【0037】
具体的には、X線回折ゴニオメータの角度2θ=11.2°(θ=5.6°)から2θ=13.2°(θ=6.6°)までを測定して、その範囲での最強X線回折強度を回折強度(Im)として記録する。そして、図6(a)に示すように、複数のフィルタ33内の物質保持領域Asに順次にX線を照射して、個々の重量のアスベストの回折線強度Im1,Im2、Im3,……を測定する。この測定により、アスベスト重量mに対する回折線強度Imのデータ(m,Im)が複数得られる。なお、(Im)は、最強強度値でなく、回折ピークの積分値を計算して用いても良い。
【0038】
そして、これらのデータを図7の検量線グラフ上にプロットすると、実測検量線L2が求められる。この実測検量線L2は、重量が大きくなる領域で傾斜が緩くなるという誤差成分を含んでいるので、正確な検量を行う上では好ましいものではない。そこで、この実測検量線L2を補正して正確な検量線L1を次のようにして作成する。
【0039】
まず、図6(b)に示すように、X線入射角θを基底板31の材質であるZnの回折角度2θzn=39°に対応するθzn=2θzn/2=19.5°の回折ピークを使って、重量が異なる被定量物質Sが捕獲されている複数のフィルタ33の物質保持領域Asを通して基底板31へX線を照射して基底板31からの回折線強度Izn1,Izn2,……を順次に測定する。具体的には、X線回折ゴニオメータの角度2θ=38°(θ=19°)から2θ=40°(θ=20°)までを測定して、その範囲での最高X線強度値をIzn1,Izn2,……を順次に用いる。
【0040】
次に、図6(c)に示すように、X線入射角θを基底板31の材質であるZnの回折角度2θzn=39°に対応するθzn=2θzn/2=19.5°の回折ピークを使って、被定量物質Sが捕獲されていないフィルタ33を通して基底板31へX線を照射して基底板31からの回折線強度Izn0を測定する。具体的には、X線回折ゴニオメータの角度2θ=38°(θ=19°)から2θ=40°(θ=20°)までを測定して、その範囲での最高X線強度Iznoを用いる。
【0041】
被定量物質Sを透過したX線の回折線強度Izn1,Izn2,……と、被定量物質Sを透過していないX線の回折線強度Izn0とを比較すれば、被定量物質SのX線吸収量及びX線吸収率を演算によって求めることができる。図4の検量線作成プログラムは、そのようなX線吸収量又はX線吸収率に基づいて図7の実測検量線L2を補正して検量線L1を作成する。この検量線L1は図4のメモリ6内の検量線データの記憶領域内に、例えば、データテーブルの形、又は数式の形で記憶される。以上により、補正済みの正確な検量線L1が作成される。
【0042】
さて、本実施形態では、図2に示したように、基底板31の全体が物質保持領域Asの下に隠れるように設定されている。従って、図6(b)において物質保持領域As内に捕獲されたアスベストSを透過したX線によって基底板31からの回折線強度Izn1,Izn2,……を測定する際、アスベストSから外れたX線は基底板31に入射することがなくなり、その結果、Izn1,Izn2,……は正確に基底板31で回折した回折線の強度を表すことになる。
【0043】
この場合、Izn1,Izn2,……として基底板31からの回折線強度だけを取ることを目的として、基底板31に対するX線照射野を小さく絞ることにより、X線照射野が基底板31の外側に外れることを回避すれば良いのではないか、という考えが想起される。こうすれば、基底板31をわざわざ小さく形成してその全体が物質保持領域Asに隠れるようにするというような構成を採用するまでもないと考えられる。しかしながら、実際の測定においてX線照射野を小さく絞るということは測定に供するX線の強度を弱めてしまうということであり、この状態では正確な回折線情報が得られなくなるおそれがあることを意味している。このため、従来からのX線回折定量測定においては、強度の強いX線を得るために、基底板31に対するX線照射野を絞るということは行わずに、可能な限り基底板31の全体を含むX線照射野を形成して測定を行うことにしている。
【0044】
ところで、従来のX線回折定量装置では、基底板31として大きな面積のものが使用されることが多く、基底板31が物質保持領域Asの外側に張り出して設けられたり、あるいは、基底板31がフィルタ33の外側に張り出して設けられたりすることがあった。このような場合には、本来であればアスベストSを透過した後に基底板31で回折したX線の強度を知りたいのに、測定された回折線強度の中にアスベストSを透過せずに基底板31で回折したX線の強度が混ざってしまい、その結果、アスベストSのX線吸収率を正確に知ることができないという事態が生じていた。
【0045】
これに対し、基底板31の全体が物質保持領域Asの下に隠れるように設定されている本実施形態によれば、図6(b)において測定される回折線強度Izn1,Izn2,……には、アスベストSを透過しない回折線の情報が混入することはなく、回折線強度Izn1,Izn2,……は、必ず、アスベストSを透過した後に基底板31で回折したX線だけの強度を示すものとなる。その結果、アスベストSのX線吸収率を正確に測定することが可能となった。
【0046】
さらに本実施形態では、図2において、基底板31の外周側面の周囲にソーダガラス製の非晶質部材30を設けた。これに対し、特許第3673981号に開示された従来技術では、基底板の周囲には非晶質部材を介在させることなくAl製の試料板が直ぐに設けられていた。また、上述したように、基底板からの回折線強度を求める際には一般に、強度の強いX線を取り出すために、基底板に対するX線照射野はできるだけ基底板の全体を含むことができるように広く設定され、その結果、X線は基底板を外れてその外側領域にも照射されることが多い。
【0047】
以上のように、基底板を照射するX線は基底板の外側領域をも照射することがあり、しかも、従来技術では基底板の外側に直ぐにAl製の試料板が設けられていたので、従来技術では、図8において基底板からの回折線P0を測定するときに、基底板の周りに存在するAl製の試料板の回折線P1をも取り込んでしまい、その結果、基底板からの回折線強度を正確に測定できないという事態が生じていた。
【0048】
これに対し、本実施形態では、基底板31の周囲に直ぐに試料板29Aを設けるのではなく、基底板31と試料板29Aとの間に非晶質部材30を介在させている。このため、基底板31からの回折線を測定するために、基底板31よりも少し広い照射野のX線をその基底板31に照射した場合、基底板31の外側でX線を受けた非晶質部材30からは図8に符号P2で示すような強度の弱いバックグラウンド成分のX線が検出されるものの、ピーク波形は発生しない。そのため、基底板31からの回折線P0は正確に基底板31からの回折線強度だけを反映するものとなり、その結果、アスベストSのX線吸収率を極めて正確に測定することが可能となった。
【0049】
以上のように、本実施形態のX線回折定量装置では、図6(b)において基底板31からの回折線強度Izn1,Izn2,……を極めて正確に測定できるようになったので、図4の検量線作成プログラムによって図7の実測検量線L2を正確に補正でき、それ故、極めて正確な検量線L1を得られることになった。
【0050】
(被定量物質に対するX線回折測定及び検量処理)
次に、重量が未知であるアスベストに関して回折線強度を測定し、さらにその測定結果に基づいてアスベストの重量を求める処理について説明する。まず、重量を測定したいアスベストを含む環境下において、図5に示す空気吸引法によってフィルタ33の物質保持領域As内にアスベストSを捕獲する。必要に応じて、アスベストSは複数のフィルタ33に捕獲する。
【0051】
次に、1つ又は複数のフィルタ33に関して図2の試料ホルダ16Aを作製し、それらの試料ホルダ16Aを図1のサンプルチェンジャ11のターンテーブル25上の所定位置に磁力によって装着する。そして、図4のメモリ6内のX線測定プログラムを起動してX線回折測定を実行する。具体的には、X線回折ゴニオメータの角度2θ=11.2°(θ=5.6°)から2θ=13.2°(θ=6.6°)まで測定して、その範囲での最強強度を記録する。この動作を複数の試料ホルダ16A内のアスベストに順々に行う。なお、最強ピーク強度の記録に代えて、回折ピークの積分値を計算して用いても良い。
【0052】
こうして被定量物質である複数のアスベストに順々にX線が照射されたとき、それらのアスベストからの回折線(例えば、図8のピーク波形Psを示す回折線)の強度Iを測定する。そして、図4の検量プログラムを起動して、上記の測定された回折線強度Iに基づいて図7の検量線L1から重量mを演算によって求める。この求められた重量mが被定量物質であるアスベストの重量である。こうして求められた重量に関する測定データは、図4のメモリ6内の測定データファイル内に記憶される。測定データファイル内には、測定された重量データと共に回折線強度I等といった付随するデータも記憶される。
【0053】
本実施形態のX線回折定量装置において求められた図7の検量線L1は、上述の通り、図2の基底板31からだけの回折線強度に基づいて決められた極めて正確な検量線であるので、この検量線L1に基づいて求められたアスベストに関する重量データは非常に信頼性の高いデータである。
【0054】
図9は、試料ホルダの変形例を示している。この試料ホルダ16Bは図2に示した試料ホルダ16Aに代えて用いられる。この試料ホルダ16Bが図2に示した試料ホルダ16Aと異なる点は、非晶質部材30のX線受光面30aを基底板31のX線受光面31aよりも低く設定していることである。つまり、本変形例では、非晶質部材30のX線受光面30aが基底板31のX線受光面31aに比べて距離dだけX線源Fから遠くなっている。この構成により、基底板31からの回折線強度が非晶質部材30からの回折線強度に影響されて変動することを、両者のX線受光面30a,31aを同じに設定した場合に比べて、より一層確実に防止できる。
【0055】
図10及び図11は、試料ホルダの他の変形例を示している。図10はその試料ホルダの側面断面構造を示し、図11はその試料ホルダを分解した状態を示している。この試料ホルダ16Cは図2に示した試料ホルダ16Aに代えて用いられる。図11において、試料ホルダ16Cは、リング状ではなくて有底の試料板29Cと、その試料板29Cの内部に設けられる円板形状の基底板31と、測定対象である被定量物質Sを保持する物質保持体としてのフィルタ33と、そのフィルタ33を押えるリング形状の押え板34とを有する。試料板29Cの内部には90°の角度間隔で4個の貫通穴が設けられ、それらの貫通穴の中に磁石37が埋設されている。これらの磁石37は試料板29Cの上面及び下面の両方に磁力を作用させる。
【0056】
図10において、試料板29Cの底壁の中央には表面が平坦である突出部40が設けられ、その突出部40の周囲には矢印D方向から見てリング状の溝41が設けられている。基底板31は突出部40の表面に例えば接着剤によって接着されて固定されている。基底板31の外周側面の周りには溝41によって空間領域が設けられることになる。物質保持領域As内に被定量物質Sを保持したフィルタ33は、試料板29Cの内部であって基底板31の上面に載置される。フィルタ33を基底板31の上に載せたとき、フィルタ33の上面は試料板29Cの上面と一致する。さらに、押え板34を試料板29Cの上面に載せると、その押え板34は磁石37に吸着し、これにより、フィルタ33がその押え板34によって上から押えられて容易には位置移動しないように保持される。
【0057】
各要素の材質、形状、寸法等は、例えば、次の通りである。
1.試料板29C
材質=アルミニウム、外周径=約33mm、厚さ=約3.2mm、形状=リング形状
2.基底板31
材質=Zn、外径=約15mm、厚さ=約1mm、形状=円板形状
3.押え板34
材質:ステンレス鋼、外周径=約32mm、厚さ=約0.2mm、形状=リング形状
4.フィルタ33
材質:フッ素樹脂バインダグラスファイバーフィルタ、外径=約25mm、物質保持領域(すなわち、有効ろ過面積)As=直径16mm。
【0058】
各要素の寸法を以上のように設定した結果、基底板31の平面形状はフィルタ33の平面形状よりも小さく、特に物質保持領域Asの平面形状よりも小さくなっている。そして、フィルタ33を試料板29Cへ組み込んだ状態で基底板31の全域が物質保持領域Asの下に隠れる状態となっている。また、本実施形態では、溝41を設けたことにより、基底板31の外周側面の周りの領域に空間領域が設けられている。
【0059】
仮に基底板31に入射するX線の照射野が広く設定されていて、入射X線が基底板31の外側へ外れる場合があると、そのX線はAl製の試料板29Cに入射する。このため、図8において、基底板31からの回折線P0の近傍にAlの回折線P1が発生して、基底板31からの回折線P0が乱れるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、試料板29C(Al)へのX線の入射位置は基底板31(Zn)へのX線の入射位置よりもX線源Fから見て位置的に退避、すなわち位置的に遠くなっている。従って、図8の回折線図形における試料板(Al)の回折線P1は回折角度2θの低角度側へ移動して、例えば符号P1’で示す位置まで移動する。
【0060】
このように試料板の回折線が符号P1’で示す位置まで移動すれば、その回折線P1’は基底板の回折線P0に影響を及ぼすことがなくなり、それ故、回折線P0は正確に基底板からだけの回折線情報を示すことになる。従って、この回折線P0に基づいて図7の実測検量線L2を補正して検量線L1を求めれば、その検量線L1は基底板(Zn)だけからの回折線情報に基づいて補正された非常に正確なものとなる。そして、この正確な検量線L1を用いて行われた検量によって求められた被定量物質の重量は非常に正確で信頼性の高いものとなる。
【0061】
以上に説明した実施形態及び各変形例において基底板31の材料としてZnを用いることは既述した。しかし、基底板31のX線が照射される表面の状態については特に触れなかった。基底板31のX線が照射される表面の状態は、特定の状態に限定されるものではなく、任意の表面状態を採用できる。例えば、鋼材供給会社から市場に供給される通常の表面状態の鋼材を用いて基底板31を形成することができる。
【0062】
しかしながら、基底板31のX線が照射される表面にサンドブラスト処理を施したり、あるいは、砂、紙やすり等によって基底板31のX線が当たる表面を荒すことにすれば、安定した再現性の高い測定データが得られることが分かった。ここで、サンドブラスト処理とは、一般的には、対象物の表面に粗い面を造るため、または、対象物の表面から汚れ、さび、スケール等を除去するために、鋼の粒、砂、その他の砥粒材を対象物の表面に流体の流れと共に吹き付ける表面処理のことである。鋼の粒を流体としての空気の流れによって対象物へ吹き付ける処理は、ショットピーニングと呼ばれている。
【0063】
本実施形態において、基底板31のX線が照射される表面にサンドブラスト処理や、砂等による粗面化処理を行えば、基底板31の適宜の厚さの表面層内において、結晶を細くでき、結晶が配向することを低減でき、さらに結晶の微細化を促進できる。そして、この結果、測定の結果として得られる回折線図形においてX線強度のバラツキを小さく抑えることが可能となり、それ故、正確な判定を行うことができる。
【0064】
なお、サンドブラスト処理や、砂等による粗面化処理は基底板31の適宜の厚さの表面層内の結晶の配向等を調整することが目的であり、基底板31の表面それ自体を調整することが目的ではない。従って、サンドブラスト処理等を行って基底板31の表面層内に所定の配向状態等が得られた後には、基底板31の表面それ自体に対してエッチング加工、その他の外観調整処理を行うことができる。
【0065】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
例えば、以上の実施形態では試料板としてリング形状や有底円板形状のように平面視で円形状の試料板を用いたが、特許第3673981号に示されているように長方形状の試料板を用いたX線回折定量装置に本発明を適用することもできる。例えば、図2及び図3に示した構成を長方形状の試料板に関して適用する場合には、図12に示すように、リング形状の試料板29Aに代えて長方形状で板状の試料板29Dに、非晶質部材30、基底板31、補助板32、フィルタ33、及び押え板34を組み付ける。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るX線回折定量装置の一実施形態の要部を示す斜視図である。
【図2】図1の装置で用いる試料ホルダの一例を示す断面図である。
【図3】図2の試料ホルダの分解斜視図である。
【図4】本発明に係るX線回折定量装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図5】被定量物質の捕獲方法の一例を示す図である。
【図6】基底基準吸収回折法に基づいた物質の定量法を説明するための図である。
【図7】検量線の一例を示すグラフである。
【図8】基底基準吸収回折法に基づいた物質の定量法の基礎となる回折線図形を示す図である。
【図9】試料ホルダの変形例を示す断面図である。
【図10】試料ホルダの他の変形例を示す断面図である。
【図11】図10の試料ホルダの分解斜視図である。
【図12】試料ホルダのさらに他の変形例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
1.X線回折定量装置、 2.X線測定装置、 11.サンプルチェンジャ、
12.入射側X線光学系、 13.受光側X線光学系、
16A,16B,16C.試料ホルダ、 18.発散規制スリット、
19.受光スリット、 20.X線検出器、 23.装着部、 24.固定テーブル、
25.ターンテーブル、 26.電動モータ、 29A,29C,29D.試料板、
30.非晶質部材、 30a.X線受光面、 31.基底板、 31a.X線受光面、
32.補助板、 33.フィルタ(物質保持体)、 34.押え板、 35.貫通穴、
36.基台、 37.磁石、 40.突出部、 41.溝、 As.物質保持領域、
D0.直径、 F.X線源、 H1,H2,H3.接着剤、 L1.検量線、
P.測定位置、 S.被定量物質、 X0.試料軸線、 X1.中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質が無いときに基底板で回折した回折線の強度と、前記物質を透過した後に前記基底板で回折した回折線の強度とによって前記物質のX線吸収量を求め、X線を用いて測定した前記物質の重量をその求められたX線吸収量に基づいて補正する基底基準吸収回折法を用いたX線回折定量装置において、
前記物質を保持する物質保持体と、
前記物質に照射するX線を発生するX線源と、
前記物質で回折した回折X線を検出するX線検出手段と、
前記物質保持体におけるX線照射面の反対側に設けられた基底板と、を有し、
前記基底板のX線が照射される表面は結晶の配向性が低くなる処理を受けている
ことを特徴とするX線回折定量装置。
【請求項2】
請求項1記載のX線回折定量装置において、結晶の配向性が低くなる処理は、砥粒材を前記基底板の表面に流体と共に吹き付ける処理であることを特徴とするX線回折定量装置。
【請求項3】
請求項3記載のX線回折定量装置において、前記砥粒材は鋼の粒又は砂であり、前記流体は空気流であることを特徴とするX線回折定量装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のX線回折定量装置において、前記物質保持体及び前記基底板を支持する複数の試料ホルダと、それらの試料ホルダを1つずつ交互に測定位置へ搬送するサンプルチェンジャとを有し、前記複数の試料ホルダ内の前記基底板の個々が結晶の配向性が低くなる前記処理を受けていることを特徴とするX線回折定量装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のX線回折定量装置において、結晶の配向性が低くなる前記処理を受けた後に、前記基底板のX線が照射される表面の表面状態が粗面であることを特徴とするX線回折定量装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のX線回折定量装置において、前記基底板のX線が照射される表面は、結晶の配向性が低くなる前記処理を受けた後に、外観調整処理によってその表面状態が調整されることを特徴とするX線回折定量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−14958(P2008−14958A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248522(P2007−248522)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【分割の表示】特願2005−304340(P2005−304340)の分割
【原出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】