X線回折測定方法
【課題】透過法のX線回折測定を容易としうるX線回折測定方法の提供。
【解決手段】本発明のX線回折測定方法は、所定の回転軸線Zsまわりに試料48を回転させながらこの回転軸線Zsに略沿った方向の入射X線を試料48に透過させることにより、X線回折が測定される。好ましい測定方法では、貫通孔46を有する試料ホルダー34と、この試料ホルダー34が取り付けられた状態で回転軸線Zsまわりに回転しうる回転体25とが用いられる。この回転体25は、X線を通過させるためのX線通過孔32を有している。X線通過孔32は、上記回転軸線Zsを通過させるように上記回転体25を貫通している。試料ホルダー34の貫通孔46とX線通過孔32とが連通した連通孔が形成されるように試料ホルダー34が取り付けられている。試料48は、試料ホルダー34の貫通孔46の内側に配置される。
【解決手段】本発明のX線回折測定方法は、所定の回転軸線Zsまわりに試料48を回転させながらこの回転軸線Zsに略沿った方向の入射X線を試料48に透過させることにより、X線回折が測定される。好ましい測定方法では、貫通孔46を有する試料ホルダー34と、この試料ホルダー34が取り付けられた状態で回転軸線Zsまわりに回転しうる回転体25とが用いられる。この回転体25は、X線を通過させるためのX線通過孔32を有している。X線通過孔32は、上記回転軸線Zsを通過させるように上記回転体25を貫通している。試料ホルダー34の貫通孔46とX線通過孔32とが連通した連通孔が形成されるように試料ホルダー34が取り付けられている。試料48は、試料ホルダー34の貫通孔46の内側に配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過法によるX線回折測定方法等に関する。詳細には、本発明は、透過法によるX線回折方法及びこの方法に用いられうるX線回折測定器具並びに試料ホルダー等に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの分野において、物質の結晶構造の解析は重要である。例えば、医薬品の分野において、結晶構造の解析は極めて重要である。医薬品では、同一の化合物であっても、結晶構造が異なることにより、効能、品質等が大きく変化しうる。また、生産された製剤の結晶形が時間の経過とともに変化し、効能や品質が変化することがある。
【0003】
物質の結晶構造を解析するための手段として、X線回折が知られている。X線回折の方法として、集中法と透過法とが公知である。
【0004】
集中法は、透過法と比較して、試料の調整及び測定が容易であり、測定時間が短いという利点がある。集中法は、汎用性が高い。ただし、集中法は近似を含む方法であり、分解能が低い。集中法は、反射法とも称される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
透過法は、近似を含まないため、分解能が高い。しかし、透過法による測定は、多大な手間と時間とを必要とする。透過法では、通常、数時間から数十時間の測定時間が必要とされる。
【0006】
以下において、透過法による一般的なX線回折測定方法が説明される。図21は、透過法によるX線回折測定の様子を示す概略斜視図であり、図22は図21の側面図である。透過法では、キャピラリー2が用いられる。キャピラリーは、ガラス等よりなる細管であり、その外径は通常0.1mmから2mm程度である。この細いキャピラリー2に、粉体とされた試料が充填される。
【0007】
図23は、キャピラリー2の原形を示す斜視図である。使用前のキャピラリー2には、キャピラリー2よりも径の大きい基部4が設けられている。基部4も管状である。基部4の内周面とキャピラリー2の内周面とは連続している。基部4の開口6から試料が入れられる。次に、基部4に入れられた試料を、キャピラリー2へと移動させる。ただし、キャピラリー2の内径は極めて小さいため、キャピラリー2の内部に試料を充填していくのは時間と手間とを要する。試料である粉体は、キャピラリー2の内周面に付着しやすい。特に、試料が低分子の有機化合物等である場合、比重が軽く且つ静電気により帯電しやすいため、キャピラリー2の内周面に試料が付着しやすい。内周面に付着した試料により、粉体が底部まで移動しにくくなり、充填が妨げられる。また、静電気の帯電により試料が凝集しやすい。この凝集物は、キャピラリー2を詰まらせ、試料の充填を妨げる。キャピラリー2をタッピングして振動を与える等により、充填するための努力がなされる。ある程度充填ができたとしても、密度の高い状態で均一に充填することは極めて難しく、充填に失敗することも多い。特に、細いキャピラリー2に微量の試料を充填するのには、多大な時間と手間とが必要となり、極めて高度な熟練が要求される。また、充填ができた場合であっても、キャピラリー2の内周面に余分な試料が付着してしまうため、必要以上の試料が使用されることになる。これは、特にハイスループットスクリーニングのように、数mg程度しか試料が用意できない場合、大きな問題となる。
【0008】
キャピラリー2に試料が充填された後、基部4は切断されて除去される。図23の一点鎖線は切断箇所を示す。この切断工程において、キャピラリー2が割れることがある。キャピラリー2が割れれば、充填作業のやり直しが必要となる。
【0009】
図23が示すように、基部4が切断されたキャピラリー2の切断部分は、栓部材8により閉じられている。栓部材8として、例えばロウや専用のコンパウンド等が用いられる。
【0010】
次に、キャピラリー2が、X線回折測定装置のホルダーピン12に取り付けられる(図21参照)。ホルダーピン12には、キャピラリー2が挿入固定されうる挿入孔(図示されない)が設けられており、この挿入孔にキャピラリー2が挿入固定されている。このホルダーピン12は、図示されないゴニオヘッドに挿入固定されている。このゴニオヘッドは、モーターにより回転する。ゴニオヘッドを回転させることにより、キャピラリー2が回転する。ゴニオヘッドの回転軸線Z1が、図21において一点鎖線で示されている。
【0011】
次に、キャピラリー2を回転させながら、キャピラリー2にX線が照射される。本願の図において、X線は符号X1及び符号X2で示されている。符号X1は、試料に入射するX線(入射X線)である。符号X2は、試料を透過した後のX線(透過後X線)である。平行化されたX線が用いられる。照射されたX線は、キャピラリー2内の試料を透過する。この試料への透過により、X線回折が起こり、回折角2θにおけるピークが観測される。入射するX線の方向は、回転軸線Z1に対して垂直である。
【0012】
キャピラリー2の軸線と上記回転軸線Z1とが一致していない場合、軸ぶれが生じる。軸ぶれが発生すると、回転するキャピラリー2に振れが生じ、X線が試料からズレる。よって、正確な測定ができない。キャピラリー2の軸線と回転軸線Z1とを精度よく一致させることが必要とされる。
【0013】
ところが、キャピラリー2の軸線と回転軸線Z1とを精度よく一致させ、軸ズレを解消することは、容易ではない。軸ズレを発生しうる多くの要素が存在する。ホルダーピン12の軸線とキャピラリー2の軸線との間の軸ズレが生じうる。軸ズレは、ホルダーピン12とゴニオヘッドとの間でも生じうるし、キャピラリー2とホルダーピン12との間にも生じうる。
【0014】
軸ズレを解消するために、図示されないゴニオヘッドには、移動ステージが設けられている。この移動ステージは、ホルダーピン12の位置を、Y軸方向及びZ軸方向(図21参照)に移動しうる。更に、この移動ステージは、ホルダーピン12の軸線方向を所定の中心軸(2軸)まわりに回動しうる。この移動ステージを駆使して、軸ズレを解消する作業がなされる。この作業には、極めて高い精度が要求される。この作業は、顕微鏡を見ながら行われる。顕微鏡を見ながら移動ステージが微妙に調整される。この調整には熟練が必要である。この調整は、過度の労力と時間とを必要とする。
【0015】
以上のような工程を経ることから、前述したように、透過法の測定には数時間以上を要していた。また、軸ズレの完全な解消は困難であるから、微少な軸ズレを許容したまま測定がなされざるをえない。更には、キャピラリーの軸線は完全な直線ではないため、このことに起因する軸ズレが不可避的に生じうる。軸ズレは、測定精度を低下させる。
【0016】
本発明の目的は、透過法のX線回折測定を容易としうるX線回折測定方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るX線回折測定方法では、所定の回転軸線まわりに試料を回転させながらこの回転軸線に略沿った方向の入射X線を上記試料に透過させることにより、X線回折が測定される。
【0018】
好ましいX線回折測定方法では、貫通孔を有する試料ホルダーと、この試料ホルダーが取り付けられた状態で所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体とが用いられる。好ましくは、上記回転体は、X線を通過させるためのX線通過孔を有している。好ましくは、上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通している。好ましくは、上記試料ホルダーの貫通孔と上記X線通過孔とが連通した連通孔が形成されるように上記試料ホルダーが上記回転体に取り付けられる。好ましくは、上記試料ホルダーの貫通孔の内側に試料が配置される。このX線回折測定方法では、上記回転体及び上記試料を回転させながら上記連通孔にX線を通過させるとともに、このX線を上記試料に透過させることにより、X線回折が測定される。
【0019】
好ましくは、上記試料が板状又は膜状に延在しており、この延在方向が上記回転軸線に対して略垂直とされる。好ましくは、上記試料は成形されてなる固形物である。
【0020】
本発明に係るX線回折測定器具は、貫通孔を有する試料ホルダーと、この試料ホルダーが取り付けられた状態で所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体とを備えている。上記回転体が、X線を通過させるためのX線通過孔を有している。上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通している。上記試料ホルダーの貫通孔と上記X線通過孔とが連通した連通孔を形成するように、上記試料ホルダーが上記回転体に取り付け可能とされている。この連通孔を通過したX線が上記試料ホルダーの貫通孔の内側に配置された試料に照射可能とされている。このX線回折測定器具は、上記連通孔にX線を通過させながら上記回転体及び上記試料を回転させたとき、このX線が上記試料を透過するように構成されている。
【0021】
好ましくは、上記X線回折測定器具において、上記回転体と上記試料ホルダーとが磁力により着脱可能とされている。
【0022】
本発明に係る自動化用X線回折測定器具は、貫通孔を有する複数の試料ホルダーと、この試料ホルダーが取り付けられた状態で所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体と、ホルダー収容孔を複数有する測定補助具とを備えている。この自動化用X線回折測定器具において、上記ホルダー収容孔が貫通孔であり、複数のホルダー収容孔のそれぞれが、複数の試料ホルダーのそれぞれを収容可能であり、上記回転体が、X線を通過させるためのX線通過孔を有している。この自動化用X線回折測定器具において、上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通している。上記試料ホルダーの貫通孔と上記X線通過孔とが連通した連通孔を形成するように、上記試料ホルダーが上記回転体に取り付け可能とされている。この連通孔を通過したX線が上記試料ホルダーの貫通孔の内側に配置された試料に照射可能とされている。上記試料ホルダーは、上記ホルダー収容孔に収容された状態で回転可能とされている。この自動化用X線回折測定器具は、上記連通孔にX線を通過させながら上記回転体及び上記試料を回転させたとき、このX線が上記試料を透過するように構成されている。この自動化用X線回折測定器具では、上記回転体と上記試料ホルダーとが磁力により着脱可能とされている。
【0023】
本発明に係るX線回折測定用試料ホルダーは、貫通孔を有してなる孔部材を備えている。このX線回折測定用試料ホルダーは、上記貫通孔の内側に試料を保持しうる。
【0024】
好ましくは、上記X線回折測定用試料ホルダーは、X線を透過しうるフィルムを更に有している。このX線回折測定用試料ホルダーは、上記孔部材に取り付けられた上記フィルムが、上記貫通孔の内側に配置された上記試料を保持しうる。
【0025】
本発明に係る他のX線回折測定用試料ホルダーは、貫通孔を有してなる孔部材を複数備えている。上記孔部材は、互いに係合しうるように構成されている。このX線回折測定用試料ホルダーは、互いに係合し合う上記孔部材間に試料を保持しうる。
【0026】
好ましくは、上記X線回折測定用試料ホルダーは、上記試料を板状又は膜状に延在した状態で保持しうる。
【0027】
本発明に係るX線回折測定用回転装置は、所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体を備えている。上記回転体は、X線を通過させるためのX線通過孔を有している。このX線回折測定用回転装置では、上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通している。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るX線回折測定方法によれば、従来多大な手間と労力とが必要であった透過法による測定が容易になされうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係るX線回折測定器具19を示す斜視図であり、図2はX線回折測定器具19の正面図であり、図3はX線回折測定器具19の側面図であり、図4はX線回折測定器具19の断面図である。X線回折測定器具19は、X線回折測定用回転装置20と、X線回折測定用試料ホルダー34とを有している。X線回折測定用回転装置20は、ホルダー取付部22及び回転軸24を有している。更にX線回折測定用回転装置20は、回転軸24を回動可能に支持する支持部材26とハウジング28とを有している(図4参照)。支持部材26は、軸受である。支持部材26は、2カ所に設けられている。ハウジング28は、円筒状の部材である。支持部材26は、回転軸24とハウジング28との間に介在している。
【0031】
図4が示すように、回転軸24には、プーリー30が取り付けられている。後述されるように、プーリー30は、回転軸24を駆動するために設けられている。
【0032】
ホルダー取付部22は、回転軸24の一端部に設けられている。ホルダー取付部22は、環状である。ホルダー取付部22は、回転軸24と一体的である。回転軸24が回転すると、ホルダー取付部22が回転する。
【0033】
回転軸24は、円筒状である。回転軸24は、管状である。回転軸24には、その中心軸に沿って孔32が設けられている。孔32は、回転軸線Zsを通過させるように設けられている。換言すれば、回転軸線Zsは、回転軸24と交差しない。回転軸線Zsは、回転軸24の中空部に位置する。孔32は、回転軸24をその軸方向に貫通している。この孔32は貫通孔であるから、X線を通過させうる。この孔32は、X線を通過させるための孔であり、本願においてX線通過孔とも称される。ホルダー取付部22と回転軸24とにより、回転体25が構成されている。この回転体25は、試料ホルダー34が取り付けられた状態で回転軸線Zsまわりに回転しうる。回転軸線Zsは、回転体25と交差しない。回転軸線Zsは、回転体25の中空部に位置する。
【0034】
試料ホルダー34は、ホルダー取付部22の端面に取り付けられている。試料ホルダー34は、全体として円板状である。試料ホルダー34は、ホルダー取付部22に対して略同軸で取り付けられている。
【0035】
図5は、試料ホルダー34の正面図であり、図7は図5のVII−VII線に沿った断面図である。図6は、試料ホルダー34の分解図である。
【0036】
試料ホルダー34は、孔部材36と、フィルム37とを有する。孔部材36は、貫通孔を有する部材である。孔部材36は、金属製である。孔部材36は、環状体である。孔部材36は、外周面38と、内周面40と、第一の端面42と、第二の端面44とを有する。第一の端面42及び第二の端面44は、平面である。孔部材36には、貫通孔46が形成されている。なお、孔部材36の材質は、金属以外でもよく、特に限定されない。孔部材36の材質として、金属の他、樹脂やマグネットゴムが例示される。
【0037】
図7は、試料ホルダー34に試料48が装填された状態における断面図である。試料48は散点模様(ドット)で示されている。試料48は、貫通孔46に充填されている。試料48は、貫通孔46の内側に配置されている。貫通孔46の内側とは、貫通孔46の半径方向内側を意味する。
【0038】
フィルム37は、2枚設けられている。孔部材36及び試料48は、2枚のフィルム37で挟まれている。第一の端面42と第一のフィルム37とが接着されており、第二の端面44と第二のフィルム37とが接着されている。図7が示すように、フィルム37により試料48が貫通孔46内に保持されている。
【0039】
図7が示すように、試料48は、貫通孔46に充填されている。試料48は、円板状である。試料48は、粉末である。試料48は、板状又は膜状に延在している。この延在方向E1は、孔部材36の軸線に対して垂直である。この延在方向は、第一の端面42及び第二の端面44と平行である。なお、孔部材36の厚み及び試料48の厚みは、測定される試料48の特性や測定目的等により適宜設定されうる。なお、試料48の形態は限定されない。試料48の形態として、粉末の他、顆粒やペレットが例示される。従来のキャピラリーによる測定では、細いキャピラリーに試料を充填する必要があるため、試料の形態は細かい粉末に限定される。これに対して本発明では、試料の形態の自由度が高く、試料が顆粒やペレットであっても測定可能である。更に、後述するように、例えば錠剤をそのまま試料とすることも可能である。
【0040】
フィルム37は、X線を透過する。フィルム37の材質は、X線に対する活性が小さいものが好ましい。好ましいフィルム37の材質として、ポリイミド、ポリエステル等が挙げられる。X線に対する活性の低さ及び耐久性の観点から、好ましいポリイミドフィルムとして、カプトンフィルムが挙げられる。また、ポリエステルフィルムとして、PETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)等が好適である。フィルム37として、アルミ箔が用いられても良い。
【0041】
試料ホルダー34への試料48の装填は、容易である。この装填工程の一例としては、先ず、2枚のフィルム37のうちの1枚を孔部材36に貼り付ける。次に、貼り付けられたフィルム37が下側となるようにして孔部材36を水平面に置く。このとき、貫通孔46の底面がフィルム37となる。次に、試料を貫通孔46内に入れる。最後に、残りの1枚のフィルムを孔部材36に貼り付ける。貫通孔46は、開口径が広い。また、孔部材36は、軸方向長さが短い。換言すれば、貫通孔46は浅い。よって、貫通孔46内に試料を入れるのは極めて容易である。この容易性は、細いキャピラリーの内部に試料を入れる場合の困難性と対照的である。前述したように、キャピラリーの場合、試料は、適切な位置に至るまでに、長いキャピラリーの内部を経由しなければならない。この経由の課程で、無駄となる試料が発生する。このキャピラリーの場合と異なり、試料ホルダー34では、適切な位置に試料を直接入れることができる。よって、貫通孔46の大きさや深さを適宜設定することにより、ごく少量の試料であっても測定が可能である。
【0042】
図4が示すように、この試料48がホルダー取付部22に取り付けられている。試料ホルダー34の孔部材36は、磁性体である金属よりなる。一方、ホルダー取付部22は永久磁石を含んでいる。ホルダー取付部22と試料ホルダー34とは、磁力により着脱可能とされている。この着脱は、極めて容易である。なお、孔部材36が永久磁石であってもよい。
【0043】
図4が示すように、試料ホルダー34の貫通孔46とX線通過孔32とが連通した連通孔を形成するように、試料ホルダー34が取り付けられている。更に、貫通孔46とX線通過孔32とは互いに連続している。この結果、X線通過孔32の一端の開口が試料48で塞がれた状態とされている。なお、図4の実施形態では、X線通過孔32の内径と貫通孔46の内径とは同じとされているが、内径が異なっていても良い。即ち、X線通過孔32の内径が貫通孔46の内径より大きくてもよいし、X線通過孔32の内径が貫通孔46の内径より小さくてもよい。
【0044】
なお、「貫通孔46とX線通過孔32とが連通する」とは、一本の直線が貫通孔46とX線通過孔32とを同時に通過しうる位置関係で、貫通孔46とX線通過孔32とが配置されていることを意味する。よって「貫通孔46とX線通過孔32とが連通する」場合において、貫通孔46とX線通過孔32との間には隙間があってもよいし、貫通孔46とX線通過孔32との間に他の物体(フィルム等)が介在していてもよい。また、「貫通孔46とX線通過孔32とが連通する」場合において、貫通孔46の中心軸線とX線通過孔32の中心軸線とは一致していなくてもよいし、貫通孔46の径とX線通過孔32の径とが一致していなくてもよい。
【0045】
図8は、X線回折測定器具19が装着された回転駆動装置50の側面図である。回転駆動装置50は、基部52と、駆動部54と、駆動ベルト56と、X線回折測定用回転装置20を固定するための測定器具取付部58とを有している。駆動ベルト56は、例えばゴム製のベルトである。回転駆動装置50は、X線回折測定器具19を取付けた状態で自立しうる。
【0046】
駆動部54は、モータ60と、駆動プーリ62とを有している。駆動ベルト56は、駆動プーリ62と、X線回折測定用回転装置20のプーリー30との間に架け渡されている。モータ60は、図示されない電源に接続されている。モータ60が回転すると、モータ60の回転軸に取り付けられた駆動プーリ62が回転する。駆動プーリ62の回転は、駆動ベルト56によりプーリー30に伝達される。よって、駆動プーリ62の回転によりプーリー30が回転する。プーリー30が回転すると、回転軸24が回転し、ホルダー取付部22が回転する。これらの回転は、回転軸線Zsまわりの回転である。回転軸線Zsは、回転軸24の回転軸線である。回転軸線Zsは、ホルダー取付部22の回転軸線である。回転軸線Zsは、試料48の回転軸線である。回転軸線Zsは、ホルダー取付部22の中心軸線と略一致している。回転軸線Zsは、回転軸24の中心軸線と略一致している。
【0047】
図9は、X線回折測定器具19及び回転駆動装置50を用いてなされるX線回折測定の様子を示す図である。測定にあたっては、先ず、回転駆動装置50によりX線回折測定用回転装置20の回転軸24を回転させる。この回転により、ホルダー取付部22及び試料ホルダー34が回転し、試料48が回転する。次に、図示されないX線発生部から放射されたX線を、回転軸24の端部からX線通過孔32内に入射させる。このX線は、X線通過孔32を通過し、フィルム37を透過して、試料48に照射される。X線は、回折角2θで回折しつつ試料48を透過する。試料48を透過し、フィルム37を透過したX線が、図示されない検出器により検出される。測定中において、試料48等の回転は維持される。
【0048】
図21及び図22に記載されているように、従来の透過法によるX線回折測定では、キャピラリー2の回転軸線Z1と、X線の方向とは、互いに垂直である。この場合、前述したように、回転軸線Z1の位置や方向を調整するために多大な時間と労力とが必要である。更に、キャピラリー2の回転に振れが生じると、測定不能となったり、測定精度が低下したりする。
【0049】
これに対して、本実施形態では、回転軸線Zsまわりに試料48を回転させながらこの回転軸線Zsに略沿った方向の入射X線を試料48に透過させることにより、X線回折が測定される。試料48の延在方向は、回転軸線Zsに対して略垂直とされている。よって、試料48の延在方向E1(図4参照)は、照射されるX線の方向に対しても略垂直とされている。この実施形態によれば、試料48の回転軸線Zsと入射X線の方向とがずれていても、X線は回転する試料48に確実に且つ安定的に照射され続ける。また、試料48上におけるX線の入射位置と回転軸線Zsとがずれていても、X線は回転する試料48に確実に且つ安定的に照射され続ける。よって、本実施形態では、キャピラリー2を用いた従来法のように、キャピラリー2のアライメント(軸ズレ調整)に要する時間は不要である。また、試料ホルダー34への試料48の充填も極めて容易である。従来のキャピラリーによる測定の場合、試料の調整及びアライメントに数時間以上を要していた。これに対して本実施形態では、試料の調整は例えば数分程度で完了でき、且つ、アライメントが不要とされうる。
【0050】
このように、本実施形態によれば、試料の回転軸線ZsとX線の光軸とを厳密に一致させる必要がない。むしろ、回転軸線ZsとX線の光軸とは、厳密に一致していない方が好ましい場合もある。X線が試料の一カ所に集中的に照射されると、X線照射による結晶障害が生じ、測定の正確さが低下しうる。これに対して、X線の照射位置が回転軸線Zsとずれている場合、試料48に対するX線の照射位置Sxは、一カ所に集中することなく、周状に分散されうる(図5参照)。この照射位置の分散により、結晶障害が抑制され、測定の正確さが向上しうる。なお、試料は板状又は膜状に延在しているから、照射位置Sxにズレが生じた場合であっても、各照射位置における試料の厚さは略一定である。よって、照射位置Sxの分散による測定精度の低下は抑制されている。
【0051】
X線(入射X線)の光軸と回転軸線Zsとの角度差α(degree)は、0度であってもよいし0度を超えていてもよい。もちろん、必要以上に角度差αを設ける必要もなく、通常この角度差αは10度以下、好ましくは8度以下、より好ましくは5度以下とされる。この角度差αが許容されることは、回転軸線Zsと入射X線の光軸とを正確に調整する必要が無いことを意味する。
【0052】
回転軸線Zsと試料48との交差位置がC1と定義される。結晶障害を抑制する観点から、試料48におけるX線の照射位置と交差位置C1との離間距離βは、1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。ただし、必要以上に離間距離βが大きくされる必要もなく、また離間距離βが大きくなるほど多くの試料が必要となる。この観点から、離間距離βは5mm以下が好ましい。この離間距離βは、図5における照射位置Sxの半径と一致する。
【0053】
このように、本実施形態の測定方法では、X線の光軸と回転軸線Zsとを厳密に一致させる必要がない。更に、本実施形態の測定方法では、X線の照射位置が、試料の中心位置に調整される必要がない。この測定方法では、軸ズレが許容されうる上に、照射位置のズレも許容されうる。この測定方法では、測定時における厳格なアライメントが不要である。この測定方法では、測定が極めて容易であり、測定に要する時間が極めて短時間である。
【0054】
図4及び図5において両矢印M1で示されるのは、貫通孔46の内径(最小径)である。径M1は、過度な調整を必要とすることなくX線を通過させうる程度であればよい。X線を通過させやすくする観点から、径M1は、2mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましい。試料ホルダー34を小型化するとともに、試料48の必要量を低減する観点から、径M1は、30mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。
【0055】
図4において両矢印M2で示されるのは、X線通過孔32の内径(最小径)である。径M2は、過度な調整を必要とすることなくX線を通過させうる程度であればよい。X線を通過させやすくする観点から、径M2は、2mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましい。X線回折測定器具を小型化する観点から、径M2は、30mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。なお、図4の実施形態では、径M1と径M2とが一致しているが、径M1と径M2とが異なっていても良いことはいうまでもない。
【0056】
図7において両矢印M3で示されるのは、X線の入射方向に対して垂直な方向における試料48の径(最小径)である。径M3は、過度な調整を必要とすることなくX線を透過させうる程度であればよい。照射位置のズレに対する許容範囲を広げてX線を透過させやすくする観点から、径M3は、2mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましい。測定に必要な試料の量を抑える観点から、径M3は、30mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。
【0057】
試料ホルダー34の取付位置や取付方法は、特に限定されない。試料ホルダー34は、前述した磁力による取付の他、例えば、粘着材や両面テープ等による接着、周知の物理的取り付け機構等によっても取り付けられうる。物理的取り付け機構として、ネジ機構が例示されうる。
【0058】
図10は、第二実施形態に係るX線回折測定器具64を示す断面図である。
【0059】
X線回折測定器具64は、回転体68、回転体68を回動可能に支持する支持部材70、ハウジング72及び回転駆動部73を有している。支持部材70は、ベアリングである。支持部材70は、ハウジング72に対して回転体68を回動可能に支持する。
【0060】
回転体68は、ホルダー取付部74と、回転軸76とを有する。ホルダー取付部74は、回転体68の一端部に形成されている。ホルダー取付部74は、環状である。回転軸76は、円筒状である。ホルダー取付部74には、前述した試料ホルダー34が取り付けられている。
【0061】
回転軸76には、孔78が設けられている。孔78は、回転軸76の中心軸に沿って設けられている。孔78は、貫通孔である。孔78は、回転体68をその軸方向に貫通している。この孔78は貫通孔であるから、X線を通過させうる。この孔78は、X線通過孔である。
【0062】
回転駆動部73は、モータ80と、回転伝達輪81とを有する。回転伝達輪81は、例えばゴムローラである。回転伝達輪81は、モータ80の駆動軸82に取り付けられている。回転伝達輪81の外周面は、回転体68の外周面と圧接している。この圧接により、駆動軸82の回転は、回転伝達輪81により回転体68に伝達される。
【0063】
第二実施形態のX線回折測定器具64では、駆動ベルトではなく回転伝達輪81が用いられている。X線回折測定器具64では、小型化及び薄型化が達成されている。
【0064】
X線回折測定器具64では、X線通過孔78の軸方向長さW1が短い。よってX線回折測定器具64では、X線の照射方向の自由度が高い。図10が示すように、入射X線(符号X1)が回転体68の一端側(図10における左側)から照射された場合、透過後のX線(符号X2)がX線通過孔78を通過することとなる。透過後X線がX線通過孔78の中心軸線に対して傾斜するほど、透過後X線が回転体68に当たる不都合が生じやすい。しかし、上記長さW1が短くされることにより、透過後X線が回転体68に当たる不都合が抑制される。なお、X線回折測定器具64において、入射X線が回転体68の他端側(図10における右側)から照射されてもよいことは当然である。
【0065】
図8及び図10の実施形態は例示にすぎない。例えば、ハウジングは無くても良い。また、駆動ベルトや回転伝達輪81の代わりにギア等が用いられても良い。
【0066】
図11及び図12は、他の実施形態に係る試料ホルダー86の断面図である。図11は、分解図であり、図12は試料87を保持した状態である。図12の形態でX線回折測定に供される。試料ホルダー86は、2個の孔部材88と、2枚のフィルム90とを有する。孔部材88は、環状体である。孔部材88は、金属製である。孔部材88の形状は、前述した孔部材36と同様である。孔部材88は、いわゆるワッシャと同じ形状をなしている。2個の孔部材88は、同じものである。孔部材88には、貫通孔92が形成されている。なお、フィルム90同士の接着は、接着剤等によりなされうる。2個の孔部材88同士が係合し合う構成であってもよい。2個の孔部材88同士が磁力によりくっつき合う構成とされてもよい。
【0067】
図12が示すように、試料87は、2枚のフィルム90により挟まれつつ保持されている。更に、2枚のフィルム90は、2個の孔部材88により挟まれつつ保持されている。試料87は、貫通孔92の半径方向内側に位置している。2個の孔部材88は、略同軸とされている。その結果、2個の貫通孔92は互いに連通するように配置されている。第一の貫通孔92を通過したX線は、試料87を透過し、更に、第二の貫通孔92を通過する。よって、透過法によるX線回折が測定されうる。
【0068】
キャピラリーの場合と異なり、試料ホルダー86では、試料の配置位置に直接試料を入れることができる。また、試料は、2枚のフィルム90で挟まれつつ保持されているので、ごく少量の試料であっても、試料を測定可能な状態で配置することができる。本実施形態では、例えば0.1mg程度の微量な試料であっても測定が可能である。
【0069】
図13は、他の実施形態に係る試料ホルダー94の断面図である。図13の形態でX線回折測定に供される。試料ホルダー94は、1個の孔部材96からなる。孔部材96は、金属製である。孔部材96の形状は、前述した孔部材36と同様である。孔部材96は、いわゆるワッシャと同じ形状をなしている。孔部材96は、貫通孔98を有する。
【0070】
図13が示すように、試料100は、貫通孔98内に充填されている。試料100は、散点模様(ドット)により示されている。試料100は、貫通孔98内に保持されている。試料100は、貫通孔98のみにより保持されている。粉体の試料100は、貫通孔98により成形されてなる。この成形は、圧縮成形である。粉体の試料100は、貫通孔98内において押し固められてなる。本実施形態では、上記実施形態のようなフィルムが使用されていない。本実施形態では、X線が試料100に直接照射される。この場合、X線がフィルム等を透過しないので、測定精度がより一層向上しうる。
【0071】
図14は、他の実施形態に係る試料ホルダー102を示す斜視図である。図15及び図16は、試料が装填された状態における試料ホルダー102の断面図である。この試料ホルダー102は、複数の孔部材として、2個の孔部材(孔部材104及び孔部材106)を有する。孔部材104は、円筒状である。孔部材106は、円筒状である。孔部材104と孔部材106とは、互いに係合しうる。この係合は、ねじ結合である。即ち、図15が示すように、孔部材104と孔部材106とは、ねじ結合しうる。孔部材104の内周面に雌ねじ108が設けられており、孔部材106の外周面に雄ねじ110が設けられている。孔部材106は、孔部材104にねじ込まれつつ、孔部材106の内部に挿入される。
【0072】
孔部材104の軸方向一端部には、フランジ112が設けられている。孔部材104と孔部材106とがねじ結合した状態において、フランジ112と、孔部材106の一端面114とは、互いに対向する。この対向面間に、試料保持部116が挟持されている。試料保持部116として、例えば、前述した試料ホルダー34、試料ホルダー86又は試料ホルダー94が用いられうる。なお、図15の実施形態では、試料保持部116を保護するためのクッション118が用いられている。
【0073】
孔部材106を孔部材104に対してねじ込むことにより、フランジ112と端面114との間隔d1が調整される。間隔d1を調整することにより、適切な圧力により試料保持部116が保持されうる。
【0074】
X線回折が測定される際には、前述した試料ホルダー34等と同様に、試料ホルダー102が、X線回折測定用回転装置に装着され、回転される。そして、X線回折測定用回転装置のX線通過孔を通過してきたX線通過孔が、孔部材106の貫通孔120及び孔部材104の貫通孔122を通過して、試料保持部116に配置された試料に照射される。試料を透過したX線は、フランジ112の半径方向内側を通過して外部に至る。
【0075】
図16は、上記試料ホルダー102に、試料124を配置した状態の断面図である。試料124は、例えば薬の錠剤である。この試料124は、例えば成形されてなる固形物である。この成形は、例えば圧縮成形である。試料の成形方法は限定されない。図16の実施形態では、試料保持部116が用いられず、試料124が直接的に試料ホルダー102に保持されている。孔部材104及び孔部材106の寸法は、試料124の大きさに対応して設定されている。このように、試料ホルダー102は、薬の錠剤のような固形物を直接保持しうる。
【0076】
図17は、他の実施形態に係る試料ホルダー126を示す断面図である。図18は、試料が装填された状態における試料ホルダー126の断面図である。この試料ホルダー126は、複数の孔部材として、2個の孔部材(孔部材128及び孔部材130)を有する。孔部材128は、円筒状である。孔部材103は、円筒状である。孔部材128と孔部材130とは、互いに係合しうる。この係合は、凹部と凸部との係合(以下、凹凸係合ともいう)である。孔部材128の内周面には、周状の凸部132が形成されている。孔部材130の外周面には、周状の凹部(周溝)134が形成されている。周溝134は、孔部材130の軸方向の異なる位置に複数形成されている。
【0077】
孔部材128の軸方向一端部には、フランジ136が設けられている。フランジ136は、半径方向内側に向かって延びている。孔部材128と孔部材130とが凹凸係合した状態において、フランジ136と、孔部材130の一端面138とは、互いに対向する。この対向面間に、試料保持体140が挟持されている。試料保持体140として、例えば、前述した試料ホルダー34、試料ホルダー86又は試料ホルダー94が用いられうる。
【0078】
孔部材130の外径は、孔部材128に挿入されうるように設定される。また、凸部132と周溝134とが係合しうるように、孔部材130及び孔部材128の寸法が設定される。孔部材128と孔部材130との係合位置は、調整されうる。この係合位置の調整により、孔部材128に対する孔部材130の挿入長さが調整されうる。この挿入長さの調整により、フランジ136と端面138との間隔d1が調整される。複数の周溝134のうち、どの周溝134を凸部132と係合させるかによって、間隔d1が調整されうる。間隔d1を調整することにより、適切な圧力で試料保持体140が保持されうる。
【0079】
なお、孔部材130は、樹脂等のような弾性変形可能な材質よりなる。孔部材130を弾性変形させつつ孔部材128に挿入することにより、凸部132と係合する周溝134を変更することができる。
【0080】
X線回折が測定される際には、前述した試料ホルダー34等と同様に、試料ホルダー126が、X線回折測定用回転装置に装着され、回転される。そして、X線回折測定用回転装置のX線通過孔を通過してきたX線通過孔が、孔部材130の貫通孔142及び孔部材128の貫通孔144を通過して、試料保持体140に配置された試料に照射される。試料を透過したX線は、フランジ136の半径方向内側を通過して外部に至る。
【0081】
図18は、上記試料ホルダー126に、試料146を配置した状態の断面図である。試料146は、例えば薬の錠剤である。図18の実施形態では、試料保持体140が用いられず、試料146が直接的に試料ホルダー126に保持されている。孔部材128及び孔部材130の寸法は、試料146の大きさに対応して設定されている。このように、試料ホルダー126は、薬の錠剤のような固形物を直接保持しうる。
【0082】
以上のように、本実施形態のX線回折測定器具は、従来のキャピラリーによる測定とは対照的な多くの利点を有しうる。上記試料ホルダーでは、キャピラリーの場合と比較して、試料の装填が極めて容易である。そして、本発明では、キャピラリーによる測定の場合に多くの労力と時間とを要したアライメントの作業が不要とされうる。更に、キャピラリーの場合と異なり、試料ホルダーは、保持しうる試料の形態自由度が高い。試料の厚みは、試料ホルダーの形態及びスペーサー等の利用により容易に変更されうる。試料の厚みを変えることにより、分解能が調整されうる。試料ホルダーでは、例えば軟膏の試料や懸濁状態の試料であっても測定可能である。
【0083】
図19は、上記X線回折測定用試料ホルダーを用いてX線回折を測定するための測定補助具150の斜視図である。測定補助具150は、全体として平板状の部材である。測定補助具150は、複数のホルダー収容孔152を有する。複数のホルダー収容孔152は、規則的に配列されている。複数のホルダー収容孔152は、整列して配置されている。ホルダー収容孔152は、貫通孔である。
【0084】
ホルダー収容孔152には、試料ホルダーの脱落を防止するための係止部153が設けられている。係止部153は、ホルダー収容孔152の半径方向内側に突出している。係止部153の内径は、試料ホルダーの外径よりも小さい。係止部153は、ホルダー収容孔152の一方側(図19における奥側)に設けられている。一方、ホルダー収容孔152の他方側(図19における手前側)には、係止部153が設けられていない。ホルダー収容孔152の他方側は、試料ホルダーの挿入を許容しうる内径を有している。係止部153により、ホルダー収容孔152の一方側への試料ホルダーの脱落が防止される。係止部153により、測定補助具150を試料ホルダーごと持ち運ぶのが容易とされている。即ち、係止部153を下側にした状態で測定補助具150を持ち運ぶことにより、ホルダー収容孔152に収容された試料ホルダーは確実に保持されうる。
【0085】
測定補助具150は、前述した試料ホルダー126等によりX線回折を測定する際に用いられうる。測定補助具150は、多数の試料の測定を自動化するのに有用である。測定補助具150は、前述したような試料ホルダーと共に用いられる。試料ホルダー及び試料は、図19において図示されていない。測定補助具150と共に用いられる試料ホルダーの外形としては、円筒状であってその軸方向長さが比較的長いものが好ましい。即ち、上記試料ホルダー34や上記試料ホルダー86等よりも、上記試料ホルダー102や上記試料ホルダー126の方が好ましい。
【0086】
図20は、測定補助具150を含む自動化用X線回折測定器具155を示す図である。図20は、測定補助具150の上方から見た図である。自動化用X線回折測定器具155は、測定補助具150と、複数の試料ホルダーと、X線回折測定器具154とを有する。
【0087】
複数のホルダー収容孔152の最大内径は、試料ホルダーの外径よりも若干大きく設定される。測定の際には、先ず、複数のホルダー収容孔152のそれぞれに試料ホルダーが収容される。次に、複数のホルダー収容孔152のうち、所定の孔152(例えば、孔152a)の近傍に、X線回折測定用回転装置154がセッティングされる(ステップs1)。図20は、孔152aの近傍にX線回折測定用回転装置154がセッティングされた状態を示している。
【0088】
なお、図20の実施形態において、試料ホルダーHa〜Hdはホルダー収容孔152に完全に収容されているが、試料ホルダーHa〜Hdがホルダー収容孔152の一部のみを収容していてもよい。換言すれば、試料ホルダーHa〜Hdは、その一部がホルダー収容孔152から突出した状態でホルダー収容孔152に収容されていてもよい。
【0089】
次に、このX線回折測定用回転装置154に、ホルダー収容孔152aに配置されている試料ホルダーHaが装着される(ステップs2)。次に、X線回折測定用回転装置154により試料ホルダーHaを回転させながら、X線が試料Saに照射される(ステップs3)。ホルダー収容孔152は貫通孔であるから、X線を通過させうる。また、X線回折測定用回転装置154及び試料ホルダーHaは、X線を通過させるための貫通孔を有しているので、入射X線及び透過X線を妨げない。
【0090】
試料ホルダーHaに配置された試料Saの測定が終了すると、試料ホルダーHaがX線回折測定用回転装置154から外される(ステップs4)。測定済みの試料ホルダーHaはホルダー収容孔152aに残される。次に、図20において白抜き矢印で示されるように、測定補助具150が移動する(ステップs5)。この移動は、図示されない周知の自動化装置によりなされる。複数のホルダー収容孔152に配置された複数の試料ホルダーも測定補助具150と共に移動する。X線回折測定用回転装置154及び照射されるX線の位置は、固定されたままである。このステップs5では、測定補助具150は、測定されていない試料ホルダーを有するホルダー収容孔152(例えばホルダー収容孔152b)がX線回折測定用回転装置154の近傍となる位置まで移動する。次に、このX線回折測定用回転装置154に、ホルダー収容孔152bに配置されている試料ホルダーHbが装着される(ステップs6)。次に、X線回折測定用回転装置により試料ホルダーHbを回転させながら、X線が試料Sbに照射される(ステップs7)。試料ホルダーHbに配置された試料Sbの測定が終了すると、試料ホルダーHbがX線回折測定用回転装置から外され、測定済みの試料ホルダーHbはホルダー収容孔152bに残される(ステップs8)。以下、ステップs5からステップs8までが繰り返される。この繰り返しにより、複数のホルダー収容孔152に配置された試料が順次測定される。この測定では、多くの試料が短時間で測定されうる。この測定では、多くの試料の測定が自動化されうる。上記自動化用X線回折測定器具155と、測定補助具150を移動させる移動装置とにより、複数の試料を自動で測定しうる自動X線回折測定装置が構成されうる。
【0091】
上記ステップs3やステップs7の測定において、試料ホルダーは、ホルダー収容孔152から引き出された状態で回転されてもよいし、ホルダー収容孔152内にとどまっていてもよい。試料ホルダーの移動工程を抑制し、自動化の効率を高める観点から、上記ステップs3やステップs7の測定において、試料ホルダーは、ホルダー収容孔152内で回転されるのが好ましい。上記ステップs3やステップs7の測定において、試料ホルダーの貫通孔と、X線回折測定器具154のX線透過孔157と、ホルダー貫通孔とが、連通した連通孔を形成する。この連通孔にX線を通過させながら、上記ステップs3やステップs7の測定がなされる。試料ホルダーをホルダー収容孔152内で回転させる場合、試料ホルダーの外周面とホルダー収容孔152の内周面との接触により摩擦が生じうる。ホルダー収容孔152の内周面と試料ホルダーとの摩擦抵抗を低減する観点から、ホルダー収容孔152の内周面に、ローラー(ころ)が設けられてもよい。
【0092】
上記自動X線回折測定装置において、X線回折測定用回転装置154に対する試料ホルダーの着脱方法は、限定されない。好ましい着脱方法として、X線回折測定用回転装置154におけるホルダー取付部156の端面158を、測定補助具150の開口面160に近接又は接触させたまま測定補助具150を移動する方法が採用されうる。この方法においては、ホルダー取付部156と試料ホルダーとは、磁力により着脱可能としておくのが好ましい。この着脱方法によれば、所定のホルダー収容孔152の近傍にX線回折測定用回転装置154がセッティングされると、磁力により、試料ホルダーがホルダー取付部156に装着されうる。更に、測定終了後、測定補助具150をその開口面160に沿って移動させることにより、測定済みの試料ホルダーをX線回折測定用回転装置154から外すことができる。この着脱方法では、上記ステップs4と上記ステップs5とが同時になされる。この着脱方法により、自動X線回折測定装置が簡略化されうる。
【0093】
なお、X線の種類は限定されない。平衡性及び単色性が高く高輝度であることから、放射光のX線が用いられれば、より高分解能なX線回折図が得られうる。
【0094】
以上のように、本発明は、透過法によるX線回折測定において好適に用いられる。本発明は、X線以外の電磁波による測定にも適用されうる。X線以外の電磁波として、中性子線、紫外線、赤外線等が例示される。本発明は、透過法の回折測定だけでなく、反射法の回折測定にも適用されうる。本発明は、電磁波を試料に透過させる測定のみならず、電磁波を試料に反射させる測定にも応用されうる。本発明は、電磁波による回折、吸収又は反射を基にした測定の全てに適用されうる。本発明が適用可能な測定として、中性子回折、ラマン分光、IR(赤外吸収スペクトル)、UV(紫外線吸収スペクトル)等が例示される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、試料に電磁波を照射する測定のすべてに適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るX線回折測定器具の斜視図である。
【図2】図2は、図1のX線回折測定器具の正面図である。
【図3】図3は、図1のX線回折測定器具の側面図である。
【図4】図4は、図3の断面図である。
【図5】図5は、図1に記載された試料ホルダーの正面図である。
【図6】図6は、図5の試料ホルダーの分解断面図である。
【図7】図7は、図5の試料ホルダーの断面図である。
【図8】図8は、図1のX線回折測定器具が取り付けられた回転駆動装置の側面図である。
【図9】図9は、図8の装置を用いてX線回折が測定される様子を示す図である。
【図10】図10は、他の回転駆動装置及び他のX線回折測定器具を示す側面図である。
【図11】図11は、他の試料ホルダーを示す分解断面図である。
【図12】図12は、図11の試料ホルダーを示す断面図である。
【図13】図13は、他の試料ホルダーを示す断面図である。
【図14】図14は、他の試料ホルダーを示す斜視図である。
【図15】図15は、図14の試料ホルダーの断面図である。
【図16】図16は、図15とは異なる試料が配置された試料ホルダーの断面図である。
【図17】図17は、他の試料ホルダーの断面図である。
【図18】図18は、図17とは異なる試料が配置された試料ホルダーの断面図である。
【図19】図19は、測定補助具の斜視図である。
【図20】図20は、図19の測定補助具を用いた測定を説明するための図である。
【図21】図21は、従来のキャピラリーによる測定を説明するための図である。
【図22】図22は、図21の側面図である。
【図23】図23は、キャピラリーに試料が装填される工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0097】
19、64・・・X線回折測定器具
20、154・・・X線回折測定用回転装置
22、74、156・・・ホルダー取付部
24、76・・・回転軸
25、68・・・回転体
26、70・・・支持部材
28・・・ハウジング
30・・・プーリー
32、78・・・X線通過孔
34、86、94、102、126・・・試料ホルダー
36、88、96、104、106、128、130、・・・孔部材
37、90・・・フィルム
46、92・・・貫通孔
48、87、100・・・試料
50・・・回転駆動装置
54・・・駆動部
56・・・駆動ベルト
150・・・測定補助具
152・・・ホルダー収容孔
155・・・自動化用X線回折測定器具
Ha、Hb、Hc、Hd・・・試料ホルダー
X1、X2・・・X線
Zs・・・回転軸線
E1・・・試料の延在方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過法によるX線回折測定方法等に関する。詳細には、本発明は、透過法によるX線回折方法及びこの方法に用いられうるX線回折測定器具並びに試料ホルダー等に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの分野において、物質の結晶構造の解析は重要である。例えば、医薬品の分野において、結晶構造の解析は極めて重要である。医薬品では、同一の化合物であっても、結晶構造が異なることにより、効能、品質等が大きく変化しうる。また、生産された製剤の結晶形が時間の経過とともに変化し、効能や品質が変化することがある。
【0003】
物質の結晶構造を解析するための手段として、X線回折が知られている。X線回折の方法として、集中法と透過法とが公知である。
【0004】
集中法は、透過法と比較して、試料の調整及び測定が容易であり、測定時間が短いという利点がある。集中法は、汎用性が高い。ただし、集中法は近似を含む方法であり、分解能が低い。集中法は、反射法とも称される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
透過法は、近似を含まないため、分解能が高い。しかし、透過法による測定は、多大な手間と時間とを必要とする。透過法では、通常、数時間から数十時間の測定時間が必要とされる。
【0006】
以下において、透過法による一般的なX線回折測定方法が説明される。図21は、透過法によるX線回折測定の様子を示す概略斜視図であり、図22は図21の側面図である。透過法では、キャピラリー2が用いられる。キャピラリーは、ガラス等よりなる細管であり、その外径は通常0.1mmから2mm程度である。この細いキャピラリー2に、粉体とされた試料が充填される。
【0007】
図23は、キャピラリー2の原形を示す斜視図である。使用前のキャピラリー2には、キャピラリー2よりも径の大きい基部4が設けられている。基部4も管状である。基部4の内周面とキャピラリー2の内周面とは連続している。基部4の開口6から試料が入れられる。次に、基部4に入れられた試料を、キャピラリー2へと移動させる。ただし、キャピラリー2の内径は極めて小さいため、キャピラリー2の内部に試料を充填していくのは時間と手間とを要する。試料である粉体は、キャピラリー2の内周面に付着しやすい。特に、試料が低分子の有機化合物等である場合、比重が軽く且つ静電気により帯電しやすいため、キャピラリー2の内周面に試料が付着しやすい。内周面に付着した試料により、粉体が底部まで移動しにくくなり、充填が妨げられる。また、静電気の帯電により試料が凝集しやすい。この凝集物は、キャピラリー2を詰まらせ、試料の充填を妨げる。キャピラリー2をタッピングして振動を与える等により、充填するための努力がなされる。ある程度充填ができたとしても、密度の高い状態で均一に充填することは極めて難しく、充填に失敗することも多い。特に、細いキャピラリー2に微量の試料を充填するのには、多大な時間と手間とが必要となり、極めて高度な熟練が要求される。また、充填ができた場合であっても、キャピラリー2の内周面に余分な試料が付着してしまうため、必要以上の試料が使用されることになる。これは、特にハイスループットスクリーニングのように、数mg程度しか試料が用意できない場合、大きな問題となる。
【0008】
キャピラリー2に試料が充填された後、基部4は切断されて除去される。図23の一点鎖線は切断箇所を示す。この切断工程において、キャピラリー2が割れることがある。キャピラリー2が割れれば、充填作業のやり直しが必要となる。
【0009】
図23が示すように、基部4が切断されたキャピラリー2の切断部分は、栓部材8により閉じられている。栓部材8として、例えばロウや専用のコンパウンド等が用いられる。
【0010】
次に、キャピラリー2が、X線回折測定装置のホルダーピン12に取り付けられる(図21参照)。ホルダーピン12には、キャピラリー2が挿入固定されうる挿入孔(図示されない)が設けられており、この挿入孔にキャピラリー2が挿入固定されている。このホルダーピン12は、図示されないゴニオヘッドに挿入固定されている。このゴニオヘッドは、モーターにより回転する。ゴニオヘッドを回転させることにより、キャピラリー2が回転する。ゴニオヘッドの回転軸線Z1が、図21において一点鎖線で示されている。
【0011】
次に、キャピラリー2を回転させながら、キャピラリー2にX線が照射される。本願の図において、X線は符号X1及び符号X2で示されている。符号X1は、試料に入射するX線(入射X線)である。符号X2は、試料を透過した後のX線(透過後X線)である。平行化されたX線が用いられる。照射されたX線は、キャピラリー2内の試料を透過する。この試料への透過により、X線回折が起こり、回折角2θにおけるピークが観測される。入射するX線の方向は、回転軸線Z1に対して垂直である。
【0012】
キャピラリー2の軸線と上記回転軸線Z1とが一致していない場合、軸ぶれが生じる。軸ぶれが発生すると、回転するキャピラリー2に振れが生じ、X線が試料からズレる。よって、正確な測定ができない。キャピラリー2の軸線と回転軸線Z1とを精度よく一致させることが必要とされる。
【0013】
ところが、キャピラリー2の軸線と回転軸線Z1とを精度よく一致させ、軸ズレを解消することは、容易ではない。軸ズレを発生しうる多くの要素が存在する。ホルダーピン12の軸線とキャピラリー2の軸線との間の軸ズレが生じうる。軸ズレは、ホルダーピン12とゴニオヘッドとの間でも生じうるし、キャピラリー2とホルダーピン12との間にも生じうる。
【0014】
軸ズレを解消するために、図示されないゴニオヘッドには、移動ステージが設けられている。この移動ステージは、ホルダーピン12の位置を、Y軸方向及びZ軸方向(図21参照)に移動しうる。更に、この移動ステージは、ホルダーピン12の軸線方向を所定の中心軸(2軸)まわりに回動しうる。この移動ステージを駆使して、軸ズレを解消する作業がなされる。この作業には、極めて高い精度が要求される。この作業は、顕微鏡を見ながら行われる。顕微鏡を見ながら移動ステージが微妙に調整される。この調整には熟練が必要である。この調整は、過度の労力と時間とを必要とする。
【0015】
以上のような工程を経ることから、前述したように、透過法の測定には数時間以上を要していた。また、軸ズレの完全な解消は困難であるから、微少な軸ズレを許容したまま測定がなされざるをえない。更には、キャピラリーの軸線は完全な直線ではないため、このことに起因する軸ズレが不可避的に生じうる。軸ズレは、測定精度を低下させる。
【0016】
本発明の目的は、透過法のX線回折測定を容易としうるX線回折測定方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るX線回折測定方法では、所定の回転軸線まわりに試料を回転させながらこの回転軸線に略沿った方向の入射X線を上記試料に透過させることにより、X線回折が測定される。
【0018】
好ましいX線回折測定方法では、貫通孔を有する試料ホルダーと、この試料ホルダーが取り付けられた状態で所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体とが用いられる。好ましくは、上記回転体は、X線を通過させるためのX線通過孔を有している。好ましくは、上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通している。好ましくは、上記試料ホルダーの貫通孔と上記X線通過孔とが連通した連通孔が形成されるように上記試料ホルダーが上記回転体に取り付けられる。好ましくは、上記試料ホルダーの貫通孔の内側に試料が配置される。このX線回折測定方法では、上記回転体及び上記試料を回転させながら上記連通孔にX線を通過させるとともに、このX線を上記試料に透過させることにより、X線回折が測定される。
【0019】
好ましくは、上記試料が板状又は膜状に延在しており、この延在方向が上記回転軸線に対して略垂直とされる。好ましくは、上記試料は成形されてなる固形物である。
【0020】
本発明に係るX線回折測定器具は、貫通孔を有する試料ホルダーと、この試料ホルダーが取り付けられた状態で所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体とを備えている。上記回転体が、X線を通過させるためのX線通過孔を有している。上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通している。上記試料ホルダーの貫通孔と上記X線通過孔とが連通した連通孔を形成するように、上記試料ホルダーが上記回転体に取り付け可能とされている。この連通孔を通過したX線が上記試料ホルダーの貫通孔の内側に配置された試料に照射可能とされている。このX線回折測定器具は、上記連通孔にX線を通過させながら上記回転体及び上記試料を回転させたとき、このX線が上記試料を透過するように構成されている。
【0021】
好ましくは、上記X線回折測定器具において、上記回転体と上記試料ホルダーとが磁力により着脱可能とされている。
【0022】
本発明に係る自動化用X線回折測定器具は、貫通孔を有する複数の試料ホルダーと、この試料ホルダーが取り付けられた状態で所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体と、ホルダー収容孔を複数有する測定補助具とを備えている。この自動化用X線回折測定器具において、上記ホルダー収容孔が貫通孔であり、複数のホルダー収容孔のそれぞれが、複数の試料ホルダーのそれぞれを収容可能であり、上記回転体が、X線を通過させるためのX線通過孔を有している。この自動化用X線回折測定器具において、上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通している。上記試料ホルダーの貫通孔と上記X線通過孔とが連通した連通孔を形成するように、上記試料ホルダーが上記回転体に取り付け可能とされている。この連通孔を通過したX線が上記試料ホルダーの貫通孔の内側に配置された試料に照射可能とされている。上記試料ホルダーは、上記ホルダー収容孔に収容された状態で回転可能とされている。この自動化用X線回折測定器具は、上記連通孔にX線を通過させながら上記回転体及び上記試料を回転させたとき、このX線が上記試料を透過するように構成されている。この自動化用X線回折測定器具では、上記回転体と上記試料ホルダーとが磁力により着脱可能とされている。
【0023】
本発明に係るX線回折測定用試料ホルダーは、貫通孔を有してなる孔部材を備えている。このX線回折測定用試料ホルダーは、上記貫通孔の内側に試料を保持しうる。
【0024】
好ましくは、上記X線回折測定用試料ホルダーは、X線を透過しうるフィルムを更に有している。このX線回折測定用試料ホルダーは、上記孔部材に取り付けられた上記フィルムが、上記貫通孔の内側に配置された上記試料を保持しうる。
【0025】
本発明に係る他のX線回折測定用試料ホルダーは、貫通孔を有してなる孔部材を複数備えている。上記孔部材は、互いに係合しうるように構成されている。このX線回折測定用試料ホルダーは、互いに係合し合う上記孔部材間に試料を保持しうる。
【0026】
好ましくは、上記X線回折測定用試料ホルダーは、上記試料を板状又は膜状に延在した状態で保持しうる。
【0027】
本発明に係るX線回折測定用回転装置は、所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体を備えている。上記回転体は、X線を通過させるためのX線通過孔を有している。このX線回折測定用回転装置では、上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通している。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るX線回折測定方法によれば、従来多大な手間と労力とが必要であった透過法による測定が容易になされうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係るX線回折測定器具19を示す斜視図であり、図2はX線回折測定器具19の正面図であり、図3はX線回折測定器具19の側面図であり、図4はX線回折測定器具19の断面図である。X線回折測定器具19は、X線回折測定用回転装置20と、X線回折測定用試料ホルダー34とを有している。X線回折測定用回転装置20は、ホルダー取付部22及び回転軸24を有している。更にX線回折測定用回転装置20は、回転軸24を回動可能に支持する支持部材26とハウジング28とを有している(図4参照)。支持部材26は、軸受である。支持部材26は、2カ所に設けられている。ハウジング28は、円筒状の部材である。支持部材26は、回転軸24とハウジング28との間に介在している。
【0031】
図4が示すように、回転軸24には、プーリー30が取り付けられている。後述されるように、プーリー30は、回転軸24を駆動するために設けられている。
【0032】
ホルダー取付部22は、回転軸24の一端部に設けられている。ホルダー取付部22は、環状である。ホルダー取付部22は、回転軸24と一体的である。回転軸24が回転すると、ホルダー取付部22が回転する。
【0033】
回転軸24は、円筒状である。回転軸24は、管状である。回転軸24には、その中心軸に沿って孔32が設けられている。孔32は、回転軸線Zsを通過させるように設けられている。換言すれば、回転軸線Zsは、回転軸24と交差しない。回転軸線Zsは、回転軸24の中空部に位置する。孔32は、回転軸24をその軸方向に貫通している。この孔32は貫通孔であるから、X線を通過させうる。この孔32は、X線を通過させるための孔であり、本願においてX線通過孔とも称される。ホルダー取付部22と回転軸24とにより、回転体25が構成されている。この回転体25は、試料ホルダー34が取り付けられた状態で回転軸線Zsまわりに回転しうる。回転軸線Zsは、回転体25と交差しない。回転軸線Zsは、回転体25の中空部に位置する。
【0034】
試料ホルダー34は、ホルダー取付部22の端面に取り付けられている。試料ホルダー34は、全体として円板状である。試料ホルダー34は、ホルダー取付部22に対して略同軸で取り付けられている。
【0035】
図5は、試料ホルダー34の正面図であり、図7は図5のVII−VII線に沿った断面図である。図6は、試料ホルダー34の分解図である。
【0036】
試料ホルダー34は、孔部材36と、フィルム37とを有する。孔部材36は、貫通孔を有する部材である。孔部材36は、金属製である。孔部材36は、環状体である。孔部材36は、外周面38と、内周面40と、第一の端面42と、第二の端面44とを有する。第一の端面42及び第二の端面44は、平面である。孔部材36には、貫通孔46が形成されている。なお、孔部材36の材質は、金属以外でもよく、特に限定されない。孔部材36の材質として、金属の他、樹脂やマグネットゴムが例示される。
【0037】
図7は、試料ホルダー34に試料48が装填された状態における断面図である。試料48は散点模様(ドット)で示されている。試料48は、貫通孔46に充填されている。試料48は、貫通孔46の内側に配置されている。貫通孔46の内側とは、貫通孔46の半径方向内側を意味する。
【0038】
フィルム37は、2枚設けられている。孔部材36及び試料48は、2枚のフィルム37で挟まれている。第一の端面42と第一のフィルム37とが接着されており、第二の端面44と第二のフィルム37とが接着されている。図7が示すように、フィルム37により試料48が貫通孔46内に保持されている。
【0039】
図7が示すように、試料48は、貫通孔46に充填されている。試料48は、円板状である。試料48は、粉末である。試料48は、板状又は膜状に延在している。この延在方向E1は、孔部材36の軸線に対して垂直である。この延在方向は、第一の端面42及び第二の端面44と平行である。なお、孔部材36の厚み及び試料48の厚みは、測定される試料48の特性や測定目的等により適宜設定されうる。なお、試料48の形態は限定されない。試料48の形態として、粉末の他、顆粒やペレットが例示される。従来のキャピラリーによる測定では、細いキャピラリーに試料を充填する必要があるため、試料の形態は細かい粉末に限定される。これに対して本発明では、試料の形態の自由度が高く、試料が顆粒やペレットであっても測定可能である。更に、後述するように、例えば錠剤をそのまま試料とすることも可能である。
【0040】
フィルム37は、X線を透過する。フィルム37の材質は、X線に対する活性が小さいものが好ましい。好ましいフィルム37の材質として、ポリイミド、ポリエステル等が挙げられる。X線に対する活性の低さ及び耐久性の観点から、好ましいポリイミドフィルムとして、カプトンフィルムが挙げられる。また、ポリエステルフィルムとして、PETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)等が好適である。フィルム37として、アルミ箔が用いられても良い。
【0041】
試料ホルダー34への試料48の装填は、容易である。この装填工程の一例としては、先ず、2枚のフィルム37のうちの1枚を孔部材36に貼り付ける。次に、貼り付けられたフィルム37が下側となるようにして孔部材36を水平面に置く。このとき、貫通孔46の底面がフィルム37となる。次に、試料を貫通孔46内に入れる。最後に、残りの1枚のフィルムを孔部材36に貼り付ける。貫通孔46は、開口径が広い。また、孔部材36は、軸方向長さが短い。換言すれば、貫通孔46は浅い。よって、貫通孔46内に試料を入れるのは極めて容易である。この容易性は、細いキャピラリーの内部に試料を入れる場合の困難性と対照的である。前述したように、キャピラリーの場合、試料は、適切な位置に至るまでに、長いキャピラリーの内部を経由しなければならない。この経由の課程で、無駄となる試料が発生する。このキャピラリーの場合と異なり、試料ホルダー34では、適切な位置に試料を直接入れることができる。よって、貫通孔46の大きさや深さを適宜設定することにより、ごく少量の試料であっても測定が可能である。
【0042】
図4が示すように、この試料48がホルダー取付部22に取り付けられている。試料ホルダー34の孔部材36は、磁性体である金属よりなる。一方、ホルダー取付部22は永久磁石を含んでいる。ホルダー取付部22と試料ホルダー34とは、磁力により着脱可能とされている。この着脱は、極めて容易である。なお、孔部材36が永久磁石であってもよい。
【0043】
図4が示すように、試料ホルダー34の貫通孔46とX線通過孔32とが連通した連通孔を形成するように、試料ホルダー34が取り付けられている。更に、貫通孔46とX線通過孔32とは互いに連続している。この結果、X線通過孔32の一端の開口が試料48で塞がれた状態とされている。なお、図4の実施形態では、X線通過孔32の内径と貫通孔46の内径とは同じとされているが、内径が異なっていても良い。即ち、X線通過孔32の内径が貫通孔46の内径より大きくてもよいし、X線通過孔32の内径が貫通孔46の内径より小さくてもよい。
【0044】
なお、「貫通孔46とX線通過孔32とが連通する」とは、一本の直線が貫通孔46とX線通過孔32とを同時に通過しうる位置関係で、貫通孔46とX線通過孔32とが配置されていることを意味する。よって「貫通孔46とX線通過孔32とが連通する」場合において、貫通孔46とX線通過孔32との間には隙間があってもよいし、貫通孔46とX線通過孔32との間に他の物体(フィルム等)が介在していてもよい。また、「貫通孔46とX線通過孔32とが連通する」場合において、貫通孔46の中心軸線とX線通過孔32の中心軸線とは一致していなくてもよいし、貫通孔46の径とX線通過孔32の径とが一致していなくてもよい。
【0045】
図8は、X線回折測定器具19が装着された回転駆動装置50の側面図である。回転駆動装置50は、基部52と、駆動部54と、駆動ベルト56と、X線回折測定用回転装置20を固定するための測定器具取付部58とを有している。駆動ベルト56は、例えばゴム製のベルトである。回転駆動装置50は、X線回折測定器具19を取付けた状態で自立しうる。
【0046】
駆動部54は、モータ60と、駆動プーリ62とを有している。駆動ベルト56は、駆動プーリ62と、X線回折測定用回転装置20のプーリー30との間に架け渡されている。モータ60は、図示されない電源に接続されている。モータ60が回転すると、モータ60の回転軸に取り付けられた駆動プーリ62が回転する。駆動プーリ62の回転は、駆動ベルト56によりプーリー30に伝達される。よって、駆動プーリ62の回転によりプーリー30が回転する。プーリー30が回転すると、回転軸24が回転し、ホルダー取付部22が回転する。これらの回転は、回転軸線Zsまわりの回転である。回転軸線Zsは、回転軸24の回転軸線である。回転軸線Zsは、ホルダー取付部22の回転軸線である。回転軸線Zsは、試料48の回転軸線である。回転軸線Zsは、ホルダー取付部22の中心軸線と略一致している。回転軸線Zsは、回転軸24の中心軸線と略一致している。
【0047】
図9は、X線回折測定器具19及び回転駆動装置50を用いてなされるX線回折測定の様子を示す図である。測定にあたっては、先ず、回転駆動装置50によりX線回折測定用回転装置20の回転軸24を回転させる。この回転により、ホルダー取付部22及び試料ホルダー34が回転し、試料48が回転する。次に、図示されないX線発生部から放射されたX線を、回転軸24の端部からX線通過孔32内に入射させる。このX線は、X線通過孔32を通過し、フィルム37を透過して、試料48に照射される。X線は、回折角2θで回折しつつ試料48を透過する。試料48を透過し、フィルム37を透過したX線が、図示されない検出器により検出される。測定中において、試料48等の回転は維持される。
【0048】
図21及び図22に記載されているように、従来の透過法によるX線回折測定では、キャピラリー2の回転軸線Z1と、X線の方向とは、互いに垂直である。この場合、前述したように、回転軸線Z1の位置や方向を調整するために多大な時間と労力とが必要である。更に、キャピラリー2の回転に振れが生じると、測定不能となったり、測定精度が低下したりする。
【0049】
これに対して、本実施形態では、回転軸線Zsまわりに試料48を回転させながらこの回転軸線Zsに略沿った方向の入射X線を試料48に透過させることにより、X線回折が測定される。試料48の延在方向は、回転軸線Zsに対して略垂直とされている。よって、試料48の延在方向E1(図4参照)は、照射されるX線の方向に対しても略垂直とされている。この実施形態によれば、試料48の回転軸線Zsと入射X線の方向とがずれていても、X線は回転する試料48に確実に且つ安定的に照射され続ける。また、試料48上におけるX線の入射位置と回転軸線Zsとがずれていても、X線は回転する試料48に確実に且つ安定的に照射され続ける。よって、本実施形態では、キャピラリー2を用いた従来法のように、キャピラリー2のアライメント(軸ズレ調整)に要する時間は不要である。また、試料ホルダー34への試料48の充填も極めて容易である。従来のキャピラリーによる測定の場合、試料の調整及びアライメントに数時間以上を要していた。これに対して本実施形態では、試料の調整は例えば数分程度で完了でき、且つ、アライメントが不要とされうる。
【0050】
このように、本実施形態によれば、試料の回転軸線ZsとX線の光軸とを厳密に一致させる必要がない。むしろ、回転軸線ZsとX線の光軸とは、厳密に一致していない方が好ましい場合もある。X線が試料の一カ所に集中的に照射されると、X線照射による結晶障害が生じ、測定の正確さが低下しうる。これに対して、X線の照射位置が回転軸線Zsとずれている場合、試料48に対するX線の照射位置Sxは、一カ所に集中することなく、周状に分散されうる(図5参照)。この照射位置の分散により、結晶障害が抑制され、測定の正確さが向上しうる。なお、試料は板状又は膜状に延在しているから、照射位置Sxにズレが生じた場合であっても、各照射位置における試料の厚さは略一定である。よって、照射位置Sxの分散による測定精度の低下は抑制されている。
【0051】
X線(入射X線)の光軸と回転軸線Zsとの角度差α(degree)は、0度であってもよいし0度を超えていてもよい。もちろん、必要以上に角度差αを設ける必要もなく、通常この角度差αは10度以下、好ましくは8度以下、より好ましくは5度以下とされる。この角度差αが許容されることは、回転軸線Zsと入射X線の光軸とを正確に調整する必要が無いことを意味する。
【0052】
回転軸線Zsと試料48との交差位置がC1と定義される。結晶障害を抑制する観点から、試料48におけるX線の照射位置と交差位置C1との離間距離βは、1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。ただし、必要以上に離間距離βが大きくされる必要もなく、また離間距離βが大きくなるほど多くの試料が必要となる。この観点から、離間距離βは5mm以下が好ましい。この離間距離βは、図5における照射位置Sxの半径と一致する。
【0053】
このように、本実施形態の測定方法では、X線の光軸と回転軸線Zsとを厳密に一致させる必要がない。更に、本実施形態の測定方法では、X線の照射位置が、試料の中心位置に調整される必要がない。この測定方法では、軸ズレが許容されうる上に、照射位置のズレも許容されうる。この測定方法では、測定時における厳格なアライメントが不要である。この測定方法では、測定が極めて容易であり、測定に要する時間が極めて短時間である。
【0054】
図4及び図5において両矢印M1で示されるのは、貫通孔46の内径(最小径)である。径M1は、過度な調整を必要とすることなくX線を通過させうる程度であればよい。X線を通過させやすくする観点から、径M1は、2mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましい。試料ホルダー34を小型化するとともに、試料48の必要量を低減する観点から、径M1は、30mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。
【0055】
図4において両矢印M2で示されるのは、X線通過孔32の内径(最小径)である。径M2は、過度な調整を必要とすることなくX線を通過させうる程度であればよい。X線を通過させやすくする観点から、径M2は、2mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましい。X線回折測定器具を小型化する観点から、径M2は、30mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。なお、図4の実施形態では、径M1と径M2とが一致しているが、径M1と径M2とが異なっていても良いことはいうまでもない。
【0056】
図7において両矢印M3で示されるのは、X線の入射方向に対して垂直な方向における試料48の径(最小径)である。径M3は、過度な調整を必要とすることなくX線を透過させうる程度であればよい。照射位置のズレに対する許容範囲を広げてX線を透過させやすくする観点から、径M3は、2mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましい。測定に必要な試料の量を抑える観点から、径M3は、30mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。
【0057】
試料ホルダー34の取付位置や取付方法は、特に限定されない。試料ホルダー34は、前述した磁力による取付の他、例えば、粘着材や両面テープ等による接着、周知の物理的取り付け機構等によっても取り付けられうる。物理的取り付け機構として、ネジ機構が例示されうる。
【0058】
図10は、第二実施形態に係るX線回折測定器具64を示す断面図である。
【0059】
X線回折測定器具64は、回転体68、回転体68を回動可能に支持する支持部材70、ハウジング72及び回転駆動部73を有している。支持部材70は、ベアリングである。支持部材70は、ハウジング72に対して回転体68を回動可能に支持する。
【0060】
回転体68は、ホルダー取付部74と、回転軸76とを有する。ホルダー取付部74は、回転体68の一端部に形成されている。ホルダー取付部74は、環状である。回転軸76は、円筒状である。ホルダー取付部74には、前述した試料ホルダー34が取り付けられている。
【0061】
回転軸76には、孔78が設けられている。孔78は、回転軸76の中心軸に沿って設けられている。孔78は、貫通孔である。孔78は、回転体68をその軸方向に貫通している。この孔78は貫通孔であるから、X線を通過させうる。この孔78は、X線通過孔である。
【0062】
回転駆動部73は、モータ80と、回転伝達輪81とを有する。回転伝達輪81は、例えばゴムローラである。回転伝達輪81は、モータ80の駆動軸82に取り付けられている。回転伝達輪81の外周面は、回転体68の外周面と圧接している。この圧接により、駆動軸82の回転は、回転伝達輪81により回転体68に伝達される。
【0063】
第二実施形態のX線回折測定器具64では、駆動ベルトではなく回転伝達輪81が用いられている。X線回折測定器具64では、小型化及び薄型化が達成されている。
【0064】
X線回折測定器具64では、X線通過孔78の軸方向長さW1が短い。よってX線回折測定器具64では、X線の照射方向の自由度が高い。図10が示すように、入射X線(符号X1)が回転体68の一端側(図10における左側)から照射された場合、透過後のX線(符号X2)がX線通過孔78を通過することとなる。透過後X線がX線通過孔78の中心軸線に対して傾斜するほど、透過後X線が回転体68に当たる不都合が生じやすい。しかし、上記長さW1が短くされることにより、透過後X線が回転体68に当たる不都合が抑制される。なお、X線回折測定器具64において、入射X線が回転体68の他端側(図10における右側)から照射されてもよいことは当然である。
【0065】
図8及び図10の実施形態は例示にすぎない。例えば、ハウジングは無くても良い。また、駆動ベルトや回転伝達輪81の代わりにギア等が用いられても良い。
【0066】
図11及び図12は、他の実施形態に係る試料ホルダー86の断面図である。図11は、分解図であり、図12は試料87を保持した状態である。図12の形態でX線回折測定に供される。試料ホルダー86は、2個の孔部材88と、2枚のフィルム90とを有する。孔部材88は、環状体である。孔部材88は、金属製である。孔部材88の形状は、前述した孔部材36と同様である。孔部材88は、いわゆるワッシャと同じ形状をなしている。2個の孔部材88は、同じものである。孔部材88には、貫通孔92が形成されている。なお、フィルム90同士の接着は、接着剤等によりなされうる。2個の孔部材88同士が係合し合う構成であってもよい。2個の孔部材88同士が磁力によりくっつき合う構成とされてもよい。
【0067】
図12が示すように、試料87は、2枚のフィルム90により挟まれつつ保持されている。更に、2枚のフィルム90は、2個の孔部材88により挟まれつつ保持されている。試料87は、貫通孔92の半径方向内側に位置している。2個の孔部材88は、略同軸とされている。その結果、2個の貫通孔92は互いに連通するように配置されている。第一の貫通孔92を通過したX線は、試料87を透過し、更に、第二の貫通孔92を通過する。よって、透過法によるX線回折が測定されうる。
【0068】
キャピラリーの場合と異なり、試料ホルダー86では、試料の配置位置に直接試料を入れることができる。また、試料は、2枚のフィルム90で挟まれつつ保持されているので、ごく少量の試料であっても、試料を測定可能な状態で配置することができる。本実施形態では、例えば0.1mg程度の微量な試料であっても測定が可能である。
【0069】
図13は、他の実施形態に係る試料ホルダー94の断面図である。図13の形態でX線回折測定に供される。試料ホルダー94は、1個の孔部材96からなる。孔部材96は、金属製である。孔部材96の形状は、前述した孔部材36と同様である。孔部材96は、いわゆるワッシャと同じ形状をなしている。孔部材96は、貫通孔98を有する。
【0070】
図13が示すように、試料100は、貫通孔98内に充填されている。試料100は、散点模様(ドット)により示されている。試料100は、貫通孔98内に保持されている。試料100は、貫通孔98のみにより保持されている。粉体の試料100は、貫通孔98により成形されてなる。この成形は、圧縮成形である。粉体の試料100は、貫通孔98内において押し固められてなる。本実施形態では、上記実施形態のようなフィルムが使用されていない。本実施形態では、X線が試料100に直接照射される。この場合、X線がフィルム等を透過しないので、測定精度がより一層向上しうる。
【0071】
図14は、他の実施形態に係る試料ホルダー102を示す斜視図である。図15及び図16は、試料が装填された状態における試料ホルダー102の断面図である。この試料ホルダー102は、複数の孔部材として、2個の孔部材(孔部材104及び孔部材106)を有する。孔部材104は、円筒状である。孔部材106は、円筒状である。孔部材104と孔部材106とは、互いに係合しうる。この係合は、ねじ結合である。即ち、図15が示すように、孔部材104と孔部材106とは、ねじ結合しうる。孔部材104の内周面に雌ねじ108が設けられており、孔部材106の外周面に雄ねじ110が設けられている。孔部材106は、孔部材104にねじ込まれつつ、孔部材106の内部に挿入される。
【0072】
孔部材104の軸方向一端部には、フランジ112が設けられている。孔部材104と孔部材106とがねじ結合した状態において、フランジ112と、孔部材106の一端面114とは、互いに対向する。この対向面間に、試料保持部116が挟持されている。試料保持部116として、例えば、前述した試料ホルダー34、試料ホルダー86又は試料ホルダー94が用いられうる。なお、図15の実施形態では、試料保持部116を保護するためのクッション118が用いられている。
【0073】
孔部材106を孔部材104に対してねじ込むことにより、フランジ112と端面114との間隔d1が調整される。間隔d1を調整することにより、適切な圧力により試料保持部116が保持されうる。
【0074】
X線回折が測定される際には、前述した試料ホルダー34等と同様に、試料ホルダー102が、X線回折測定用回転装置に装着され、回転される。そして、X線回折測定用回転装置のX線通過孔を通過してきたX線通過孔が、孔部材106の貫通孔120及び孔部材104の貫通孔122を通過して、試料保持部116に配置された試料に照射される。試料を透過したX線は、フランジ112の半径方向内側を通過して外部に至る。
【0075】
図16は、上記試料ホルダー102に、試料124を配置した状態の断面図である。試料124は、例えば薬の錠剤である。この試料124は、例えば成形されてなる固形物である。この成形は、例えば圧縮成形である。試料の成形方法は限定されない。図16の実施形態では、試料保持部116が用いられず、試料124が直接的に試料ホルダー102に保持されている。孔部材104及び孔部材106の寸法は、試料124の大きさに対応して設定されている。このように、試料ホルダー102は、薬の錠剤のような固形物を直接保持しうる。
【0076】
図17は、他の実施形態に係る試料ホルダー126を示す断面図である。図18は、試料が装填された状態における試料ホルダー126の断面図である。この試料ホルダー126は、複数の孔部材として、2個の孔部材(孔部材128及び孔部材130)を有する。孔部材128は、円筒状である。孔部材103は、円筒状である。孔部材128と孔部材130とは、互いに係合しうる。この係合は、凹部と凸部との係合(以下、凹凸係合ともいう)である。孔部材128の内周面には、周状の凸部132が形成されている。孔部材130の外周面には、周状の凹部(周溝)134が形成されている。周溝134は、孔部材130の軸方向の異なる位置に複数形成されている。
【0077】
孔部材128の軸方向一端部には、フランジ136が設けられている。フランジ136は、半径方向内側に向かって延びている。孔部材128と孔部材130とが凹凸係合した状態において、フランジ136と、孔部材130の一端面138とは、互いに対向する。この対向面間に、試料保持体140が挟持されている。試料保持体140として、例えば、前述した試料ホルダー34、試料ホルダー86又は試料ホルダー94が用いられうる。
【0078】
孔部材130の外径は、孔部材128に挿入されうるように設定される。また、凸部132と周溝134とが係合しうるように、孔部材130及び孔部材128の寸法が設定される。孔部材128と孔部材130との係合位置は、調整されうる。この係合位置の調整により、孔部材128に対する孔部材130の挿入長さが調整されうる。この挿入長さの調整により、フランジ136と端面138との間隔d1が調整される。複数の周溝134のうち、どの周溝134を凸部132と係合させるかによって、間隔d1が調整されうる。間隔d1を調整することにより、適切な圧力で試料保持体140が保持されうる。
【0079】
なお、孔部材130は、樹脂等のような弾性変形可能な材質よりなる。孔部材130を弾性変形させつつ孔部材128に挿入することにより、凸部132と係合する周溝134を変更することができる。
【0080】
X線回折が測定される際には、前述した試料ホルダー34等と同様に、試料ホルダー126が、X線回折測定用回転装置に装着され、回転される。そして、X線回折測定用回転装置のX線通過孔を通過してきたX線通過孔が、孔部材130の貫通孔142及び孔部材128の貫通孔144を通過して、試料保持体140に配置された試料に照射される。試料を透過したX線は、フランジ136の半径方向内側を通過して外部に至る。
【0081】
図18は、上記試料ホルダー126に、試料146を配置した状態の断面図である。試料146は、例えば薬の錠剤である。図18の実施形態では、試料保持体140が用いられず、試料146が直接的に試料ホルダー126に保持されている。孔部材128及び孔部材130の寸法は、試料146の大きさに対応して設定されている。このように、試料ホルダー126は、薬の錠剤のような固形物を直接保持しうる。
【0082】
以上のように、本実施形態のX線回折測定器具は、従来のキャピラリーによる測定とは対照的な多くの利点を有しうる。上記試料ホルダーでは、キャピラリーの場合と比較して、試料の装填が極めて容易である。そして、本発明では、キャピラリーによる測定の場合に多くの労力と時間とを要したアライメントの作業が不要とされうる。更に、キャピラリーの場合と異なり、試料ホルダーは、保持しうる試料の形態自由度が高い。試料の厚みは、試料ホルダーの形態及びスペーサー等の利用により容易に変更されうる。試料の厚みを変えることにより、分解能が調整されうる。試料ホルダーでは、例えば軟膏の試料や懸濁状態の試料であっても測定可能である。
【0083】
図19は、上記X線回折測定用試料ホルダーを用いてX線回折を測定するための測定補助具150の斜視図である。測定補助具150は、全体として平板状の部材である。測定補助具150は、複数のホルダー収容孔152を有する。複数のホルダー収容孔152は、規則的に配列されている。複数のホルダー収容孔152は、整列して配置されている。ホルダー収容孔152は、貫通孔である。
【0084】
ホルダー収容孔152には、試料ホルダーの脱落を防止するための係止部153が設けられている。係止部153は、ホルダー収容孔152の半径方向内側に突出している。係止部153の内径は、試料ホルダーの外径よりも小さい。係止部153は、ホルダー収容孔152の一方側(図19における奥側)に設けられている。一方、ホルダー収容孔152の他方側(図19における手前側)には、係止部153が設けられていない。ホルダー収容孔152の他方側は、試料ホルダーの挿入を許容しうる内径を有している。係止部153により、ホルダー収容孔152の一方側への試料ホルダーの脱落が防止される。係止部153により、測定補助具150を試料ホルダーごと持ち運ぶのが容易とされている。即ち、係止部153を下側にした状態で測定補助具150を持ち運ぶことにより、ホルダー収容孔152に収容された試料ホルダーは確実に保持されうる。
【0085】
測定補助具150は、前述した試料ホルダー126等によりX線回折を測定する際に用いられうる。測定補助具150は、多数の試料の測定を自動化するのに有用である。測定補助具150は、前述したような試料ホルダーと共に用いられる。試料ホルダー及び試料は、図19において図示されていない。測定補助具150と共に用いられる試料ホルダーの外形としては、円筒状であってその軸方向長さが比較的長いものが好ましい。即ち、上記試料ホルダー34や上記試料ホルダー86等よりも、上記試料ホルダー102や上記試料ホルダー126の方が好ましい。
【0086】
図20は、測定補助具150を含む自動化用X線回折測定器具155を示す図である。図20は、測定補助具150の上方から見た図である。自動化用X線回折測定器具155は、測定補助具150と、複数の試料ホルダーと、X線回折測定器具154とを有する。
【0087】
複数のホルダー収容孔152の最大内径は、試料ホルダーの外径よりも若干大きく設定される。測定の際には、先ず、複数のホルダー収容孔152のそれぞれに試料ホルダーが収容される。次に、複数のホルダー収容孔152のうち、所定の孔152(例えば、孔152a)の近傍に、X線回折測定用回転装置154がセッティングされる(ステップs1)。図20は、孔152aの近傍にX線回折測定用回転装置154がセッティングされた状態を示している。
【0088】
なお、図20の実施形態において、試料ホルダーHa〜Hdはホルダー収容孔152に完全に収容されているが、試料ホルダーHa〜Hdがホルダー収容孔152の一部のみを収容していてもよい。換言すれば、試料ホルダーHa〜Hdは、その一部がホルダー収容孔152から突出した状態でホルダー収容孔152に収容されていてもよい。
【0089】
次に、このX線回折測定用回転装置154に、ホルダー収容孔152aに配置されている試料ホルダーHaが装着される(ステップs2)。次に、X線回折測定用回転装置154により試料ホルダーHaを回転させながら、X線が試料Saに照射される(ステップs3)。ホルダー収容孔152は貫通孔であるから、X線を通過させうる。また、X線回折測定用回転装置154及び試料ホルダーHaは、X線を通過させるための貫通孔を有しているので、入射X線及び透過X線を妨げない。
【0090】
試料ホルダーHaに配置された試料Saの測定が終了すると、試料ホルダーHaがX線回折測定用回転装置154から外される(ステップs4)。測定済みの試料ホルダーHaはホルダー収容孔152aに残される。次に、図20において白抜き矢印で示されるように、測定補助具150が移動する(ステップs5)。この移動は、図示されない周知の自動化装置によりなされる。複数のホルダー収容孔152に配置された複数の試料ホルダーも測定補助具150と共に移動する。X線回折測定用回転装置154及び照射されるX線の位置は、固定されたままである。このステップs5では、測定補助具150は、測定されていない試料ホルダーを有するホルダー収容孔152(例えばホルダー収容孔152b)がX線回折測定用回転装置154の近傍となる位置まで移動する。次に、このX線回折測定用回転装置154に、ホルダー収容孔152bに配置されている試料ホルダーHbが装着される(ステップs6)。次に、X線回折測定用回転装置により試料ホルダーHbを回転させながら、X線が試料Sbに照射される(ステップs7)。試料ホルダーHbに配置された試料Sbの測定が終了すると、試料ホルダーHbがX線回折測定用回転装置から外され、測定済みの試料ホルダーHbはホルダー収容孔152bに残される(ステップs8)。以下、ステップs5からステップs8までが繰り返される。この繰り返しにより、複数のホルダー収容孔152に配置された試料が順次測定される。この測定では、多くの試料が短時間で測定されうる。この測定では、多くの試料の測定が自動化されうる。上記自動化用X線回折測定器具155と、測定補助具150を移動させる移動装置とにより、複数の試料を自動で測定しうる自動X線回折測定装置が構成されうる。
【0091】
上記ステップs3やステップs7の測定において、試料ホルダーは、ホルダー収容孔152から引き出された状態で回転されてもよいし、ホルダー収容孔152内にとどまっていてもよい。試料ホルダーの移動工程を抑制し、自動化の効率を高める観点から、上記ステップs3やステップs7の測定において、試料ホルダーは、ホルダー収容孔152内で回転されるのが好ましい。上記ステップs3やステップs7の測定において、試料ホルダーの貫通孔と、X線回折測定器具154のX線透過孔157と、ホルダー貫通孔とが、連通した連通孔を形成する。この連通孔にX線を通過させながら、上記ステップs3やステップs7の測定がなされる。試料ホルダーをホルダー収容孔152内で回転させる場合、試料ホルダーの外周面とホルダー収容孔152の内周面との接触により摩擦が生じうる。ホルダー収容孔152の内周面と試料ホルダーとの摩擦抵抗を低減する観点から、ホルダー収容孔152の内周面に、ローラー(ころ)が設けられてもよい。
【0092】
上記自動X線回折測定装置において、X線回折測定用回転装置154に対する試料ホルダーの着脱方法は、限定されない。好ましい着脱方法として、X線回折測定用回転装置154におけるホルダー取付部156の端面158を、測定補助具150の開口面160に近接又は接触させたまま測定補助具150を移動する方法が採用されうる。この方法においては、ホルダー取付部156と試料ホルダーとは、磁力により着脱可能としておくのが好ましい。この着脱方法によれば、所定のホルダー収容孔152の近傍にX線回折測定用回転装置154がセッティングされると、磁力により、試料ホルダーがホルダー取付部156に装着されうる。更に、測定終了後、測定補助具150をその開口面160に沿って移動させることにより、測定済みの試料ホルダーをX線回折測定用回転装置154から外すことができる。この着脱方法では、上記ステップs4と上記ステップs5とが同時になされる。この着脱方法により、自動X線回折測定装置が簡略化されうる。
【0093】
なお、X線の種類は限定されない。平衡性及び単色性が高く高輝度であることから、放射光のX線が用いられれば、より高分解能なX線回折図が得られうる。
【0094】
以上のように、本発明は、透過法によるX線回折測定において好適に用いられる。本発明は、X線以外の電磁波による測定にも適用されうる。X線以外の電磁波として、中性子線、紫外線、赤外線等が例示される。本発明は、透過法の回折測定だけでなく、反射法の回折測定にも適用されうる。本発明は、電磁波を試料に透過させる測定のみならず、電磁波を試料に反射させる測定にも応用されうる。本発明は、電磁波による回折、吸収又は反射を基にした測定の全てに適用されうる。本発明が適用可能な測定として、中性子回折、ラマン分光、IR(赤外吸収スペクトル)、UV(紫外線吸収スペクトル)等が例示される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、試料に電磁波を照射する測定のすべてに適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るX線回折測定器具の斜視図である。
【図2】図2は、図1のX線回折測定器具の正面図である。
【図3】図3は、図1のX線回折測定器具の側面図である。
【図4】図4は、図3の断面図である。
【図5】図5は、図1に記載された試料ホルダーの正面図である。
【図6】図6は、図5の試料ホルダーの分解断面図である。
【図7】図7は、図5の試料ホルダーの断面図である。
【図8】図8は、図1のX線回折測定器具が取り付けられた回転駆動装置の側面図である。
【図9】図9は、図8の装置を用いてX線回折が測定される様子を示す図である。
【図10】図10は、他の回転駆動装置及び他のX線回折測定器具を示す側面図である。
【図11】図11は、他の試料ホルダーを示す分解断面図である。
【図12】図12は、図11の試料ホルダーを示す断面図である。
【図13】図13は、他の試料ホルダーを示す断面図である。
【図14】図14は、他の試料ホルダーを示す斜視図である。
【図15】図15は、図14の試料ホルダーの断面図である。
【図16】図16は、図15とは異なる試料が配置された試料ホルダーの断面図である。
【図17】図17は、他の試料ホルダーの断面図である。
【図18】図18は、図17とは異なる試料が配置された試料ホルダーの断面図である。
【図19】図19は、測定補助具の斜視図である。
【図20】図20は、図19の測定補助具を用いた測定を説明するための図である。
【図21】図21は、従来のキャピラリーによる測定を説明するための図である。
【図22】図22は、図21の側面図である。
【図23】図23は、キャピラリーに試料が装填される工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0097】
19、64・・・X線回折測定器具
20、154・・・X線回折測定用回転装置
22、74、156・・・ホルダー取付部
24、76・・・回転軸
25、68・・・回転体
26、70・・・支持部材
28・・・ハウジング
30・・・プーリー
32、78・・・X線通過孔
34、86、94、102、126・・・試料ホルダー
36、88、96、104、106、128、130、・・・孔部材
37、90・・・フィルム
46、92・・・貫通孔
48、87、100・・・試料
50・・・回転駆動装置
54・・・駆動部
56・・・駆動ベルト
150・・・測定補助具
152・・・ホルダー収容孔
155・・・自動化用X線回折測定器具
Ha、Hb、Hc、Hd・・・試料ホルダー
X1、X2・・・X線
Zs・・・回転軸線
E1・・・試料の延在方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転軸線まわりに試料を回転させながらこの回転軸線に略沿った方向の入射X線を上記試料に透過させることにより、X線回折が測定されるX線回折測定方法。
【請求項2】
貫通孔を有する試料ホルダーと、この試料ホルダーが取り付けられた状態で所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体とが用いられ、
上記回転体が、X線を通過させるためのX線通過孔を有しており、
上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通しており、
上記試料ホルダーの貫通孔と上記X線通過孔とが連通した連通孔が形成されるように上記試料ホルダーが上記回転体に取り付けられ、
上記試料ホルダーの貫通孔の内側に試料が配置され、
上記回転体及び上記試料を回転させながら上記連通孔にX線を通過させるとともに、このX線を上記試料に透過させることにより、X線回折が測定されるX線回折測定方法。
【請求項3】
上記試料が板状又は膜状に延在しており、この延在方向が上記回転軸線に対して略垂直である請求項2に記載のX線回折測定方法。
【請求項4】
上記試料が成形されてなる固形物である請求項2に記載のX線回折測定方法。
【請求項5】
貫通孔を有する試料ホルダーと、この試料ホルダーが取り付けられた状態で所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体とを備え、
上記回転体が、X線を通過させるためのX線通過孔を有しており、
上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通しており、
上記試料ホルダーの貫通孔と上記X線通過孔とが連通した連通孔を形成するように、上記試料ホルダーが上記回転体に取り付け可能とされ、
この連通孔を通過したX線が上記試料ホルダーの貫通孔の内側に配置された試料に照射可能とされており、
上記連通孔にX線を通過させながら上記回転体及び上記試料を回転させたとき、このX線が上記試料を透過するように構成されているX線回折測定器具。
【請求項6】
上記回転体と上記試料ホルダーとが磁力により着脱可能とされている請求項5に記載のX線回折測定器具。
【請求項7】
貫通孔を有する複数の試料ホルダーと、この試料ホルダーが取り付けられた状態で所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体と、ホルダー収容孔を複数有する測定補助具とを備え、
上記ホルダー収容孔が貫通孔であり、
複数のホルダー収容孔のそれぞれが、複数の試料ホルダーのそれぞれを収容可能であり、
上記回転体が、X線を通過させるためのX線通過孔を有しており、
上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通しており、
上記試料ホルダーの貫通孔と上記X線通過孔とが連通した連通孔を形成するように、上記試料ホルダーが上記回転体に取り付け可能とされ、
この連通孔を通過したX線が上記試料ホルダーの貫通孔の内側に配置された試料に照射可能とされ、
上記試料ホルダーが、上記ホルダー収容孔に収容された状態で回転可能とされ、
上記連通孔にX線を通過させながら上記回転体及び上記試料を回転させたとき、このX線が上記試料を透過するように構成されており、
上記回転体と上記試料ホルダーとが磁力により着脱可能とされている自動化用X線回折測定器具。
【請求項8】
貫通孔を有してなる孔部材を備え、
上記貫通孔の内側に試料を保持しうるX線回折測定用試料ホルダー。
【請求項9】
X線を透過しうるフィルムを更に有し、
上記孔部材に取り付けられた上記フィルムが、上記貫通孔の内側に配置された上記試料を保持しうる請求項8に記載のX線回折測定用試料ホルダー。
【請求項10】
貫通孔を有してなる孔部材を複数備え、
上記孔部材は、互いに係合しうるように構成され、
互いに係合し合う上記孔部材間に試料を保持しうるX線回折測定用試料ホルダー。
【請求項11】
上記試料を板状又は膜状に延在した状態で保持しうる請求項8から10のいずれかに記載のX線回折測定用試料ホルダー。
【請求項12】
所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体を備え、
上記回転体が、X線を通過させるためのX線通過孔を有しており、
上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通しているX線回折測定用回転装置。
【請求項1】
所定の回転軸線まわりに試料を回転させながらこの回転軸線に略沿った方向の入射X線を上記試料に透過させることにより、X線回折が測定されるX線回折測定方法。
【請求項2】
貫通孔を有する試料ホルダーと、この試料ホルダーが取り付けられた状態で所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体とが用いられ、
上記回転体が、X線を通過させるためのX線通過孔を有しており、
上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通しており、
上記試料ホルダーの貫通孔と上記X線通過孔とが連通した連通孔が形成されるように上記試料ホルダーが上記回転体に取り付けられ、
上記試料ホルダーの貫通孔の内側に試料が配置され、
上記回転体及び上記試料を回転させながら上記連通孔にX線を通過させるとともに、このX線を上記試料に透過させることにより、X線回折が測定されるX線回折測定方法。
【請求項3】
上記試料が板状又は膜状に延在しており、この延在方向が上記回転軸線に対して略垂直である請求項2に記載のX線回折測定方法。
【請求項4】
上記試料が成形されてなる固形物である請求項2に記載のX線回折測定方法。
【請求項5】
貫通孔を有する試料ホルダーと、この試料ホルダーが取り付けられた状態で所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体とを備え、
上記回転体が、X線を通過させるためのX線通過孔を有しており、
上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通しており、
上記試料ホルダーの貫通孔と上記X線通過孔とが連通した連通孔を形成するように、上記試料ホルダーが上記回転体に取り付け可能とされ、
この連通孔を通過したX線が上記試料ホルダーの貫通孔の内側に配置された試料に照射可能とされており、
上記連通孔にX線を通過させながら上記回転体及び上記試料を回転させたとき、このX線が上記試料を透過するように構成されているX線回折測定器具。
【請求項6】
上記回転体と上記試料ホルダーとが磁力により着脱可能とされている請求項5に記載のX線回折測定器具。
【請求項7】
貫通孔を有する複数の試料ホルダーと、この試料ホルダーが取り付けられた状態で所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体と、ホルダー収容孔を複数有する測定補助具とを備え、
上記ホルダー収容孔が貫通孔であり、
複数のホルダー収容孔のそれぞれが、複数の試料ホルダーのそれぞれを収容可能であり、
上記回転体が、X線を通過させるためのX線通過孔を有しており、
上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通しており、
上記試料ホルダーの貫通孔と上記X線通過孔とが連通した連通孔を形成するように、上記試料ホルダーが上記回転体に取り付け可能とされ、
この連通孔を通過したX線が上記試料ホルダーの貫通孔の内側に配置された試料に照射可能とされ、
上記試料ホルダーが、上記ホルダー収容孔に収容された状態で回転可能とされ、
上記連通孔にX線を通過させながら上記回転体及び上記試料を回転させたとき、このX線が上記試料を透過するように構成されており、
上記回転体と上記試料ホルダーとが磁力により着脱可能とされている自動化用X線回折測定器具。
【請求項8】
貫通孔を有してなる孔部材を備え、
上記貫通孔の内側に試料を保持しうるX線回折測定用試料ホルダー。
【請求項9】
X線を透過しうるフィルムを更に有し、
上記孔部材に取り付けられた上記フィルムが、上記貫通孔の内側に配置された上記試料を保持しうる請求項8に記載のX線回折測定用試料ホルダー。
【請求項10】
貫通孔を有してなる孔部材を複数備え、
上記孔部材は、互いに係合しうるように構成され、
互いに係合し合う上記孔部材間に試料を保持しうるX線回折測定用試料ホルダー。
【請求項11】
上記試料を板状又は膜状に延在した状態で保持しうる請求項8から10のいずれかに記載のX線回折測定用試料ホルダー。
【請求項12】
所定の回転軸線まわりに回転しうる回転体を備え、
上記回転体が、X線を通過させるためのX線通過孔を有しており、
上記X線通過孔が、上記回転軸線を通過させるように上記回転体を貫通しているX線回折測定用回転装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2008−298681(P2008−298681A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146978(P2007−146978)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(507180847)SAI株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(507180847)SAI株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]