説明

X線撮影システム及びその制御方法

【課題】X線源に絶えず微振動が発生している状況下において、鮮鋭度の高い画像を撮影することができるX線撮影システム及びその制御方法を提供する。
【解決手段】X線を被検体Pに曝射するX線源11と、被検体Pを透過したX線を検出するX線検出器12とを備え、X線源11には、X線源11の振動を検出する振動センサ17が設けられている。振動センサ17は、X線検出器12の受像部のXY方向に関する振動振幅A,Aを検出し、PC13に送信する。PC13内の撮影制御部13aは、振動振幅A,Aの合成量|A|を求めるとともに、この合成量|A|に対応したビニング数を決定し、X線源11の曝射終了後、決定したビニング数に基づいてX線検出器12から画像の読み出し(ビニング読み出し)を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線により被検体の撮影を行うX線撮影システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野等において、X線源から被検体にX線を曝射(照射)し、被検体を透過したX線をX線検出器により撮影するX線撮影システムが広く使用されている。X線による画像撮影時には、X線源がX線検出器に対して完全に静止していることが好ましい。しかし、現実には、X線源のX線検出器に対する振動を完全に抑制することは難しく、X線源の振動によりにX線源とX線検出器との位置関係が撮影中に変動し、この変動により、撮影画像にぼやけが生じて鮮鋭度が低下するといった問題がある。
【0003】
そこで、特許文献1では、X線源またはX線検出器に振動センサを設け、振動センサが規定値以上の振動量を検出した場合に、X線源によるX線の曝射を禁止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−245269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のX線撮影システムでは、X線源とX線検出器との間に絶えず微振動が生じている状況下で、この微振動の振動量より上記規定値を高く設定した場合には、X線の曝射の禁止状態が続き、いつまでも撮影を実行することができないという問題がある。一方、上記微振動の振動量より上記規定値を低く設定した場合には、この微振動による撮影画像の鮮鋭度の低下が避けられない。
【0006】
ところで、近年、在宅医療等の用途にて、可搬型のX線撮影システムが用いられている。可搬型のX線撮影システムでは、X線源は、小型かつ軽量であり、例えば組み立て式の保持具により、被検体の検査部位の鉛直上方に吊り下げて使用される。通常、このようなX線源の保持具は、安定性がなく防振性を有する構造ではないため、X線源に振動が生じやすい。さらに、可搬型のX線源は、X線出力が小さく、長い曝射時間を要することからも、振動による画像のぶれが懸念される。したがって、可搬型のX線撮影システムでは、上記問題の解決がより一層求められている。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、X線源に絶えず微振動が発生している状況下において、鮮鋭度の高い画像を撮影することができるX線撮影システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のX線撮影システムは、X線を被検体に曝射するX線源と、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線源の振動量を検出する振動検出手段と、前記振動検出手段により検出された振動量に基づいてビニング数を決定し、前記X線源による曝射終了後、決定したビニング数に基づいて前記X線検出器から画像の読み出しを行う撮影制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
なお、前記撮影制御手段は、前記振動量に基づいて決定したビニング数に応じて、前記X線源によるX線の曝射時間を決定することが好ましい。
【0010】
また、前記X線源による曝射開始の指示を入力する曝射指示入力手段を備え、前記撮影制御手段は、前記振動量が基準値より大きい場合に、前記曝射指示手段による曝射指示を無効として曝射を開始させないことが好ましい。
【0011】
また、前記撮影制御手段は、前記X線源による曝射中に前記振動量が基準値より大きくなった場合に、前記X線源による曝射を停止させ、前記X線検出器から画像の読み出しを行うことが好ましい。
【0012】
また、前記撮影制御手段は、曝射停止後、所定時間内に前記振動量が前記基準値以下となった場合に、前記X線源による曝射を再開させることが好ましい。
【0013】
また、前記曝射停止時に前記X線検出器から読み出された画像と、前記曝射の再開後に前記X線検出器から読み出される画像とを合成して1つの画像とする画像処理手段を備えることが好ましい。
【0014】
また、撮影部位を入力する撮影部位入力手段を備え、前記撮影制御手段は、前記撮影部位入力手段により入力された撮影部位に応じて、前記振動検出手段により検出される振動量に対するビニング数及び曝射時間の関係を変更することが好ましい。
【0015】
また、前記振動量は、前記X線源の振動の振幅であることが好ましい。
【0016】
また、前記X線源及び前記X線検出器は、可搬型であることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明のX線撮影システムの制御方法は、X線を被検体に曝射するX線源と、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線源の振動量を検出する振動検出手段とを備えたX線撮影システムの制御方法において、前記振動検出手段により検出された振動量に基づいてビニング数を決定し、前記X線源による曝射終了後、決定したビニング数に基づいて前記X線検出器から画像の読み出しを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、X線源の振動量に基づいてビニング数を決定し、X線源による曝射終了後、決定したビニング数に基づいてX線検出器から画像の読み出しを行うものであるため、X線源に絶えず微振動が発生している状況下において、鮮鋭度の高い画像を撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るX線撮影システムの概略斜視図である。
【図2】X線撮影システムの構成を示す概略側面図である。
【図3】X線検出器の構成を模式的に示す図である。
【図4】振動振幅に対するビニング数及び曝射時間の関係を規定するテーブルを示す図であり、(A)は撮影部位が胸部の場合、(B)は撮影部位が脚部の場合に用いられるテーブルを示す図である。
【図5】X線撮影システムの作用を示すフローチャートである。
【図6】電荷像、読み出し画像、X線画像を模式的に示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るX線撮影システムの作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1において、本発明の第1実施形態に係るX線撮影システム10は、X線管(図示せず)とX線管に管電圧を印加する高電圧発生器(図示せず)とによりX線を発生するX線源11と、X線源11から射出され、患者(被検体)Pを透過したX線を検出するX線検出器12と、X線源11及びX線検出器12の動作制御及び画像処理を行うためのノート型パーソナルコンピュータ(PC)13とから構成される。X線源11、X線検出器12、及びPC13は、いずれも可搬型であり、在宅診断を受ける患者の自宅や救急患者の現場等に持ち運び、その現場でX線撮影を行うことができる。
【0021】
X線源11は、組み立て式の保持具14に保持して使用される。保持具14は、床に立設され、上端がコネクタ14aにより接続された2組の支持脚14bと、2つのコネクタ14aの間に接続された横棒14cとによって構成されている。横棒14cの中央部には、X線源11を吊り下げるためのフック部材14dが設けられている。X線源11には、持ち運びのための把持部11aが取り付けられている。X線源11は、把持部11aをフック部材14dに掛着させることにより、懸垂した状態に保持される。
【0022】
X線源11は、保持具14に保持された状態で、鉛直下方向に向けてX線を曝射(照射)する。X線源11には、コリメータ装置(図示せず)が設けられており、X線管により発生されたX線は、該コリメータ装置により照射野が矩形状に規制されて射出される。X線検出器12は、X線を電気信号に変換して画像データを生成するフラットパネル型検出器(FPD)である。X線検出器12は、X線源11から射出されたX線を、矩形状の受像部12aで受けるように、X線源11の鉛直下方に、患者Pを介して対向配置される。例えば、患者Pは、胸部がX線検出器12の上に位置するように配置される。
【0023】
PC13は、ケーブル15,16を介して、X線源11及びX線検出器12にそれぞれ接続されている。図2に示すように、PC13には、X線源11の曝射動作及びX線検出器12の検出動作を同期して実行させる撮影制御部13aと、X線検出器12から出力された画像データを画像処理して表示用の画像データを生成する画像処理部13bとが、CPUとメモリ(図示せず)に記憶されたプログラムとの協働により構成されている。PC13は、キーボード等の操作部13cにより撮影条件(撮影部位など)の入力を受け付け、操作部13cにより入力された入力値に基づいてX線源11及びX線検出器12の制御を行う。また、PC13は、画像処理により生成された画像データに基づき、液晶表示装置からなる表示部13dにX線画像を表示させる。
【0024】
また、X線源11には、振動センサ17が組み込まれている。振動センサ17は、周知の加速度センサからなり、X線検出器12の受像部12aのXY方向について加速度及び周波数をそれぞれ検出することにより、X線源11の振動の振幅をXY方向についてそれぞれ求める。振幅Aは、加速度αと周波数ωとにより、A=α/ωと表される。振動センサ17は、この関係式に基づいてX方向への振動の振幅Aと、Y方向への振動の振幅Aをそれぞれ求める。振動センサ17は、逐次、振幅A,Aを計測して、PC13に送信する。詳しくは後述するが、PC13内の撮影制御部13aは、送信された振幅A,Aに基づいて、X線検出器12及びX線源11の動作を制御する。
【0025】
図3において、X線検出器12は、X線を電荷に変換して蓄積する複数の検出素子20がアクティブマトリクス基板上にXY方向に沿って2次元配列された受像部12aと、受像部12aからの電荷の読み出しタイミングを制御する走査制御部21と、受像部12aの各検出素子20に蓄積された電荷を読み出し、画像データに変換して記憶する信号変換部22と、画像データをPC13の画像処理部13bに送信する画像データ送信部23とから構成されている。受像部12aは、例えば、約43cm×43cmの矩形状であり、検出素子20の配列ピッチは、XY方向にそれぞれ約200μmである。
【0026】
走査制御部21と各検出素子20とは、検出素子20の行毎に走査線24によって接続されており、信号変換部22と各検出素子20とは、検出素子20の列毎に信号線25によって接続されている。なお、行はX方向、列はY方向に対応する。
【0027】
検出素子20としては、アモルファスセレン(a−Se)等の変換層でX線を入射線量に応じた電荷に直接変換し、変換された電荷を変換層の下部の電極に接続されたキャパシタに蓄積する直接変換型のものを採用することができる。各検出素子20には、TFTスイッチ(図示せず)が接続され、TFTスイッチのゲート電極が走査線24、ソース電極がキャパシタ、ドレイン電極が信号線25に接続されている。TFTスイッチが走査制御部21からの駆動パルスによってON状態になると、キャパシタに蓄積された電荷が信号線25に出力される。なお、検出素子20として、酸化ガドリニウム(Gd)やヨウ化セシウム(CsI)等の蛍光体(シンチレータ)でX線を一旦可視光に変換し、変換された可視光をフォトダイオードで電荷に変換して蓄積する間接変換型のものを採用することも可能である。
【0028】
走査制御部21は、シフトレジスタにより構成されており、撮影制御部13aからの制御に基づき、駆動パルスを順次に各走査線24に供給する。また、後述するビニングを行う際には、走査制御部21は、撮影制御部13aから供給されるビニング数(「2(行)×2(列)」、「3(行)×3(列)」など)のうちの行数を単位として、隣接する複数の走査線24に同時に駆動パルスを供給する。例えば、ビニング数が「2×2」の場合には、2行ずつ走査線24が駆動され、1つの信号線25に2つの検出素子20から同時に電荷が出力される。同一の信号線25に出力された各電荷は、信号線25上で加算(列加算)される。
【0029】
信号変換部22は、行加算回路22a、積分アンプ回路22b、A/D変換器22c、画像メモリ22dから構成されている。行加算回路22aは、撮影制御部13aから供給されるビニング数のうちの列数を単位として、隣接する複数の信号線25の電荷を加算し、加算した電荷をそれぞれ積分アンプ回路22bに入力する。例えば、ビニング数が「2×2」の場合には、信号線25の電荷が2列ずつ加算(行加算)される。なお、行加算回路22aは、ビニングを行わない場合には、各信号線25の電荷を加算せずにそれぞれ個別に積分アンプ回路22bに入力する。
【0030】
積分アンプ回路22bは、行加算回路22aから入力された電荷を積分して電圧信号(画像信号)に変換し、A/D変換器22cに入力する。A/D変換器22cは、入力された画像信号をデジタルの画像データに変換して画像メモリ22dに入力する。画像メモリ22dは、最大1フレーム分(検出素子20の総数分)の画像データを記憶する。
【0031】
このように、ビニング時には、走査制御部21と行加算回路22aとの協働により、各検出素子20により生成される複数の電荷が、「2×2」や「3×3」の正方領域を単位として加算される。このビニング処理により、画像メモリ22dに格納される画像データは実質的な画素数が少なくなるため解像度が低下するが、各画素の信号量が増大するためS/N比の向上とともに、画像データの鮮鋭度が向上する。なお、本実施形態では、ビニング数は、行及び列方向に同一であり、行及び列方向に対称なビニング処理を行う。
【0032】
また、PC13の画像処理部13bは、ビニングが行われた場合には、画像メモリ22dから送信された画像データ(ビニングにより解像度が低下した画像データ)に、スプライン補間等の補間処理を施すことにより、ビニングが行われない場合の解像度に等しい画像データを生成し、この画像データをX線画像として表示部13dに表示させる。
【0033】
PC13内のメモリには、図4(A),(B)に示すように、振動センサ17により検出されるX線源11の振動振幅A,Aの合成量|A|と、ビニング数及び曝射時間との関係を対応づけたテーブルT1,T2が記憶されている。テーブルT1,T2は、撮影制御部13aによるX線源11及びX線検出器12の制御時に一方が選択される。なお、合成量|A|は、次式(1)で表される量であり、撮影制御部13aは、振動振幅A,Aから逐次、合成量|A|を算出する。以下では、振動振幅A,Aの合成量|A|を、単に振動振幅|A|と称する。
【0034】
|A|=((A+(B))1/2 ・・・(1)
【0035】
テーブルT1は、撮影部位が胸部である場合に選択されるものであり、振動振幅|A|が0〜0.1mmの場合にビニング数を「1×1(ビニングなし)」、振動振幅|A|が0.1〜0.3mmの場合にビニング数を「2×2」、振動振幅|A|が0.3〜0.5mmの場合にビニング数を「3×3」とし、曝射時間を、振動振幅|A|に依らず一律に500msecとすることを規定している。なお、後述するように、振動振幅|A|が0.5mm(後述する基準振幅A)より大きい場合には、曝射を禁止するため、ビニング数及び曝射時間は規定されていない。
【0036】
一方、テーブルT2は、撮影部位が脚部である場合に選択されるものであり、振動振幅|A|が0〜0.1mmの場合にビニング数を「1×1(ビニングなし)」、曝射時間を400msecとし、振動振幅|A|が0.1〜0.5mmの場合にビニング数を「2×2」、曝射時間を100msecとすることを規定している。同様に、振動振幅|A|が0.5mm(後述する基準振幅A)より大きい場合には、曝射を禁止するため、ビニング数及び曝射時間は規定されていない。
【0037】
両テーブルT1,T2において、振動振幅|A|が0〜0.1mmの場合に、ビニング数を「1×1(ビニングなし)」としている。これは、振動の全幅(振幅の2倍)が配列ピッチ以内であれば、画像に振動によるぶれが現れないことに基づいて規定したものである。上限の0.1mmは、検出素子20の配列ピッチが約200μm(=0.2mm)であることに対応している。
【0038】
テーブルT1では、曝射時間をビニング数に依らず一定としている。これは、胸部撮影では、肺などの臓器を診断することが主目的であることから、画像の濃淡を重視する必要があるためであり、一定のX線曝射量を確保すること目的としている。
【0039】
これに対して、テーブルT2では、ビニング数に対応して曝射時間を変更している。これは、脚部撮影では、骨を診断することが主目的であることから、画像のコントラスト(空間的形状の鮮明度)を重視する必要があるためであり、ビニング数の増加に応じて曝射時間を短くすることで、振動による画像のブレをさらに抑制することを目的としている。具体的に、テーブルT2では、ビニング数(ビニングの行数と列数とを乗じた数)に反比例するように、曝射時間を設定している。また、テーブルT2では、空間的形状の鮮明度を重視するために、「2×2」を超えるビニング数は規定されていない。
【0040】
次に、以上のように構成されたX線撮影システム10の作用を、図5に示すフローチャートに沿って説明する。まず、撮影準備として、技師は、図1に示すように、保持具14を組み立てて、これにX線源11を保持させ、患者Pの撮影部位を介してX線源11に対向するようにX線検出器12を配置し、ケーブル15,16を介して、X線源11及びX線検出器12とPC13とを接続する。
【0041】
撮影準備が完了し、技師により、PC13の操作部13cから撮影部位(胸部または脚部)の入力が行われると(ステップS1:YES)、撮影制御部13aは、メモリに記憶されたテーブルT1,T2から入力された撮影部位に対応するものを選択する(ステップS2)。このステップS2では、X線源11の振動が大きい場合に曝射を禁止/停止する基準として、基準振幅Aを設定する。この基準振幅Aは、テーブルT1,T2のいずれが選択された場合においても0.5mmに設定される。また、ステップS2では、X線源11の管電圧と管電流とが撮影部位に対応した値に設定される。そして、撮影制御部13aは、ステップS2での各種設定が完了した後、振動センサ17にX線源11の振動検出を開始させる(ステップS3)。
【0042】
次いで、技師により、操作部13cから曝射開始の指示が入力されると(ステップS4:YES)、撮影制御部13aは、その時点で振動センサ17から入力される振幅A,Aに基づき、合成量を表す振幅|A|を算出し、この振幅|A|が基準振幅Aより大きいか否かを判定する(ステップS5)。振幅|A|が基準振幅Aより大きい場合には(ステップS5:YES)、振動が過大であるためビニング処理では鮮鋭化が不十分であり、良好なX線画像が得られないため、曝射開始の指示を無効として曝射を開始せず、「振動を低減して再度曝射指示を入力するように促すメッセージ」を表示部13dに表示させる(ステップS6)。
【0043】
一方、振幅|A|が基準振幅A以下の場合には(ステップS5:NO)、撮影制御部13aは、その振幅|A|に対応したビニング数及び曝射時間を、ステップS2で選択したテーブルに基づいて設定し(ステップS7)、X線源11にX線の曝射を開始させる(ステップS8)。振動センサ17による振動検出は、曝射中も継続して行われ、撮影制御部13aは、逐次、振幅|A|を算出し、振幅|A|が基準振幅Aより大きいか否かを判定する(ステップS9)。
【0044】
曝射中に振幅|A|が基準振幅Aを超えることなく(ステップS9:NO)、曝射開始からの積算時間(曝射積算時間)が、ステップS7で設定された曝射時間に達した場合には(ステップS10:YES)、撮影制御部13aは、X線源11による曝射を終了させる(ステップS11)。一方、曝射中に振幅|A|が基準振幅Aを超えた場合には(ステップS9:YES)、撮影制御部13aは、「振動の増大により曝射を終了することを知らせるメッセージ」を表示部13dに表示させ(ステップS12)、曝射を終了させる(ステップS11)。
【0045】
曝射終了とともに、撮影制御部13aは、ステップS7で設定されたビニング数に基づく、X線検出器12の電荷読み出し(ビニング読み出し)を制御し、その結果、画像メモリ22dに記憶された画像データを画像データ送信部23によりPC13へ出力させる(ステップS13)。そして、PC13に入力された画像データは、画像処理部13bにより補間処理等が施され、X線画像として表示部13dに表示される(ステップS14)。
【0046】
図6において、画像I1は、ステップS11で、曝射を終了した直後にX線検出器12の各検出素子20に蓄積された電荷像であり、X線源11の振動によるブレが生じていることを示している。画像I2は、ステップS13において「2×2」のビニング読み出しが行われた場合の読み出し画像であり、ビニングによりブレが解消され画像が鮮鋭化されることを示している。そして、画像I3は、補間処理により元の解像度に変換され、表示部13dに表示されたX線画像を示している。
【0047】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、曝射開始後、曝射中に振幅|A|が基準振幅Aを超えた場合には、その時点で曝射を終了してX線検出器12から画像データを読み出し、表示部13dに画像表示を行っている。このため、曝射開始直後に振幅|A|が基準振幅Aを超えた場合には、曝射時間が十分でないため、低輝度の不鮮明な画像が表示されることになる。そこで、第2実施形態として、曝射中に振幅|A|が基準振幅Aを超えた場合にも鮮明な画像が得ることを可能とする制御方法を示す。
【0048】
図7は、第2実施形態におけるX線撮影システムの制御方法を示すフローチャートであり、破線で囲った部分が第1実施形態と異なる。その他の部分については、第1実施形態と同一であるため、第1実施形態と同一の符号を付し、説明は省略する。
【0049】
ステップS8においてX線源11が曝射を開始した後、曝射中に振幅|A|が基準振幅Aを超えた場合には(ステップS9:YES)、撮影制御部13aは、曝射を停止させ(ステップS20)、その時点でX線検出器12に蓄積されている電荷を読み出し、その結果、画像メモリ22dに記憶された画像データをPC13へ出力させる(ステップS21)。PC13に入力された画像データは、メモリに一時的に記憶される。
【0050】
次いで、ステップS20で曝射を一時停止してからの経過時間が、所定の再開制限時間内であるか否かを判定し(ステップS22)、再開制限時間内であれば(ステップS22:NO)、振幅|A|が基準振幅Aより大きいか否かを判定する(ステップS23)。振幅|A|が基準振幅Aを超えたまま(ステップS23:YES)、再開制限時間が経過した場合には(ステップS22:YES)、撮影制御部13aは、「振動が原因で曝射を停止し、振動が収まらないまま再開制限時間を経過した旨」を表示部13dに表示させる(ステップS24)。この場合、ステップS21で、PC13内のメモリに記憶された画像データが補間処理等の後、X線画像として表示部13dに表示される(ステップS14)。
【0051】
一方、再開制限時間内に振幅|A|が基準振幅A以下となった場合には(ステップS23:NO)、撮影制御部13aは、X線源11にX線の曝射を再開させ(ステップS25)、ステップS9に戻る。この後、再び振幅|A|が基準振幅Aを超えた場合には、曝射が停止され(ステップS20)、曝射再開から曝射停止までの間にX線検出器12に蓄積された電荷を読み出し、その結果、画像メモリ22dに記憶される画像データを出力して、PC13内のメモリに記憶させる(ステップS21)。
【0052】
この後、撮影制御部13aは、上記と同様のステップを実行する。曝射停止と曝射再開が行われると、PC13内のメモリには、複数の画像データが記憶されることになる。この場合、画像処理部13bは、画像のエッジを合わせるように、複数の画像データを位置合わせして合成処理を行うことにより1つの画像データを生成し、この画像データをX線画像として表示部13dに表示させる。なお、上記の再開制限時間は、操作部13cからの入力により変更可能としてもよい。
【0053】
このように、曝射の中断と再開により得られた複数の画像データを合成することで、高輝度で鮮明なX線画像が表示される。なお、上記の画像合成は、画像に写り込んだマーカを基準として位置合わせを行うものであってもよい。このマーカは、所定の形状(例えば、画素サイズ程度の矩形状)に形成された鉛等の遮蔽板をX線検出器12のX線入射側に配置することで形成可能である。直接変換型のX線検出器12の場合には、変換層の上に遮蔽板を配置すればよく、間接変換型のX線検出器12の場合には、シンチレータ上またはシンチレータとフォトダイオードとの間に遮蔽板を配置すればよい。
【0054】
なお、上記第1及び第2実施形態では、振動センサ17によりX方向及びY方向の2方向の振動振幅A,Aを検出し、この振動振幅A,Aの合成量|A|に基づいて、ビニング数及び曝射時間の決定や曝射の禁止/停止の判定を行っているが、2方向の振動検出は必ずしも必要はなく、1方向のみとしてもよい。図1に示したX線源11の構成では、X線源11はY方向への揺動が生じやすいため、振動検出を1方向のみとする場合には、X方向とY方向のうち、Y方向の振動検出を行うことが好ましい。
【0055】
また、上記第1及び第2実施形態では、X方向及びY方向に対称的にビニングを行っているが、振動センサ17により検出された振動振幅A,Aに基づいて、X方向及びY方向に非対称にビニングを行うことも好ましい。例えば、A=0.05mm、A=0.2mmの場合には、ビニング数を「1×2」とする。
【0056】
また、上記第1及び第2実施形態では、振動振幅に対するビニング数及び曝射時間の関係を規定したテーブルとして、胸部用と脚部用のテーブルを例示しているが、これら以外に、腹部や頭部などの他の撮影部位用のテーブルを用いてもよいことは言うまでもない。各テーブルの規定値は、適宜変更してよい。
【0057】
また、上記第1及び第2実施形態では、X線検出器12内で電荷を加算することによりビニング(いわゆるハードウェア・ビニング)を行っているが、これに代えて、ビニングを行わずにデジタルの画像データを生成した後、PC13内での画像処理によりビニング(いわゆるソフトウェア・ビニング)を行うようにしてもよい。
【0058】
また、上記第1及び第2実施形態では、X線源11の振動振幅が基準値を上回った場合に、表示部13dにメッセージを表示することで、曝射を禁止/停止したことを技師に報知しているが、この報知は、PC13やX線源11からの音出力や、PC13やX線源11に設けたLEDの点灯によって行ってもよい。
【0059】
また、上記第1及び第2実施形態では、振動センサ17を加速度センサによって構成しているが、加速度センサに代えて、傾斜センサを用いてX線源11の振動振幅を検出することも可能である。この場合には、傾斜センサによりX線源11の最大傾斜角度を検出し、この最大傾斜角度とX線源11の揺動半径とから振動振幅を求めることができる。さらに、振動センサ17として圧電センサなどを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 X線撮影システム
11 X線源
12 X線検出器
12a 受像部
13a 撮影制御部
13b 画像処理部
13c 操作部
13d 表示部
14 保持具
17 振動センサ
20 検出素子
21 走査制御部
22 信号変換部
22a 行加算回路
24 走査線
25 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を被検体に曝射するX線源と、
前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線源の振動量を検出する振動検出手段と、
前記振動検出手段により検出された振動量に基づいてビニング数を決定し、前記X線源による曝射終了後、決定したビニング数に基づいて前記X線検出器から画像の読み出しを行う撮影制御手段と、
を備えたことを特徴とするX線撮影システム。
【請求項2】
前記撮影制御手段は、前記振動量に基づいて決定したビニング数に応じて、前記X線源によるX線の曝射時間を決定することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影システム。
【請求項3】
前記X線源による曝射開始の指示を入力する曝射指示入力手段を備え、
前記撮影制御手段は、前記振動量が基準値より大きい場合に、前記曝射指示手段による曝射指示を無効として曝射を開始させないことを特徴とする請求項1または2に記載のX線撮影システム。
【請求項4】
前記撮影制御手段は、前記X線源による曝射中に前記振動量が基準値より大きくなった場合に、前記X線源による曝射を停止させ、前記X線検出器から画像の読み出しを行うことを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載のX線撮影システム。
【請求項5】
前記撮影制御手段は、曝射停止後、所定時間内に前記振動量が前記基準値以下となった場合に、前記X線源による曝射を再開させることを特徴とする請求項4に記載のX線撮影システム。
【請求項6】
前記曝射停止時に前記X線検出器から読み出された画像と、前記曝射の再開後に前記X線検出器から読み出される画像とを合成して1つの画像とする画像処理手段を備えることを特徴とする請求項5に記載のX線撮影システム。
【請求項7】
撮影部位を入力する撮影部位入力手段を備え、
前記撮影制御手段は、前記撮影部位入力手段により入力された撮影部位に応じて、前記振動検出手段により検出される振動量に対するビニング数及び曝射時間の関係を変更することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影システム。
【請求項8】
前記振動量は、前記X線源の振動の振幅であることを特徴とする請求項1から7いずれか1項に記載のX線撮影システム。
【請求項9】
前記X線源及び前記X線検出器は、可搬型であることを特徴とする1から8いずれか1項に記載のX線撮影システム。
【請求項10】
X線を被検体に曝射するX線源と、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線源の振動量を検出する振動検出手段とを備えたX線撮影システムの制御方法において、
前記振動検出手段により検出された振動量に基づいてビニング数を決定し、前記X線源による曝射終了後、決定したビニング数に基づいて前記X線検出器から画像の読み出しを行うことを特徴とするX線撮影システムの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−56170(P2011−56170A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211811(P2009−211811)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】