説明

X線検査装置

【課題】直接変換方式のX線センサの使用を前提として、分極の問題を解消して検出性能の低下を回避し得る、X線検査装置を得る。
【解決手段】X線検査装置1は、X線照射器7と、直接変換方式のX線センサを有するX線ラインセンサ8と、物品12を搬送するベルトコンベア6と、X線ラインセンサ8へ印加するバイアス電圧を制御する制御部30と、バイアス電圧を継続して印加している継続印加時間を検出する計時手段35と、X線検査装置1の前段の処理装置25に対してベルトコンベア6への物品12の供給を停止させる停止制御部60とを備える。継続印加時間が所定の時間を超えたことを計時手段35が検出した場合、停止制御部60は、前段の処理装置25に対してベルトコンベア6への物品12の供給を一時的に停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品業界においては、食品への異物混入の有無を検査するためのX線検査装置に用いられるX線センサとして、間接変換方式のX線センサが広く使用されてきた。間接変換方式のX線センサでは、検査対象物を透過してきたX線はシンチレータによって可視光に変換され、シンチレータから発せられた可視光はフォトダイオードによって電気信号に変換される。
【0003】
ところが、間接変換方式のX線センサでは、シンチレータ内部での光の散乱等に起因して空間分解能が低下するため、異物の検出性能が低いという欠点があった。その一方で、食品の安全に対する消費者の要求により、食品向けのX線検査装置においても高い検出性能が求められるようになってきた。間接変換方式のX線センサにおいても、照射するX線量を多くすることで、検出性能を高めることは可能である。しかしながら、照射X線量を多くすると、シンチレータを透過してフォトダイオードに照射されるX線量も増大する。その結果、フォトダイオードの耐久性が低下し、部品交換の頻度が高くなるため、ユーザの経済的負担が大きくなってしまう。
【0004】
このような事情から、食品業界においても今後は、間接変換方式ではなく直接変換方式のX線センサの実用化が期待されている。直接変換方式のX線センサは、現在では主に医療分野でCT装置等に使用されており、テルル化カドミウム(CdTe)を用いた半導体センサ(CdTeセンサ)が知られている。例えば下記特許文献1に、CdTeセンサを用いたCT装置の一例が開示されている。また、例えば下記特許文献2に、CdTeセンサを用いた放射線検出方法の一例が開示されている。直接変換方式のX線センサは、シンチレータを備えておらず、検査対象物を透過してきたX線は、直接的に電気信号に変換される。直接変換方式のX線センサは、シンチレータによる光の散乱の影響がないために空間分解能が高く、しかもX線の変換効率も高いため、間接変換方式のX線センサと比べて、少ない照射X線量で高精細な画像を得ることができる。そのため、照射X線量を抑えることができるため、X線の照射に起因する半導体センサの耐久性の低下も抑制できる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−294844号公報
【特許文献2】特許第3151487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように食品業界においても直接変換方式のX線センサの実用化が期待されているが、食品業界で直接変換方式のX線センサを使用する場合、特有の問題がある。つまり、食品業界では、医療分野のCT装置等とは異なり、X線検査装置が長時間連続して使用されるという事情がある。食品工場によっては終日稼働される製造ラインもあり、そのような製造ラインに組み込まれたX線検査装置は、必然的に終日稼働されることになる。
【0007】
直接変換方式のX線センサが連続して長時間使用されると、分極(ポラリゼーション)の影響が大きくなる。分極が生じると、X線センサの感度が低下し、その結果、X線検査装置の検出性能も低下する。従って、食品業界において直接変換方式のX線センサを使用する場合には、長時間の連続稼働を想定しつつも、分極の問題を解消して検出性能の低下を回避する必要がある。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、直接変換方式のX線センサの使用を前提として、分極の問題を解消して検出性能の低下を回避し得る、X線検査装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係るX線検査装置は、検査対象である物品にX線を照射し、前記物品を透過してきたX線を検出することにより、前記物品に対する検査を実行するX線検査装置であって、X線照射部と、X線を直接的に電気信号に変換するタイプのX線センサを有するX線検出部と、前記物品が前記X線照射部と前記X線検出部との間のX線照射領域を通過するように、前記物品を搬送する搬送部と、前記X線センサへ印加するバイアス電圧を制御する第1の制御部と、前記バイアス電圧を継続して印加している継続印加時間を検出する時間検出部と、前記X線検査装置の前段の処理装置に対して前記搬送部への前記物品の供給を停止させる停止制御部とを備え、前記継続印加時間が所定の時間を超えたことを前記時間検出部が検出した場合、前記停止制御部は、前記前段の処理装置に対して前記搬送部への物品の供給を一時的に停止させることを特徴とする。
【0010】
第2の発明に係るX線検査装置は、第1の発明に係るX線検査装置において特に、前記継続印加時間が前記所定の時間を超えたことを前記時間検出部が検出した場合、前記第1の制御部は、前記X線センサへの実効的なバイアス電圧の印加を停止することを特徴とする。
【0011】
第3の発明に係るX線検査装置は、第2の発明に係るX線検査装置において特に、前記物品が前記搬送部上に存在しているか否かを検出する物品検出部をさらに備え、前記継続印加時間が前記所定の時間以下であっても、前記第1の制御部は、前記物品検出部からの検出信号に基づき、前記物品が前記搬送部上に存在していない期間内に、前記X線センサへの実効的なバイアス電圧の印加を停止することを特徴とする。
【0012】
第4の発明に係るX線検査装置は、第2の発明に係るX線検査装置において特に、前記X線照射部からのX線の照射を制御する第2の制御部をさらに備え、前記継続印加時間が前記所定の時間を超えたことを前記時間検出部が検出した場合、前記第2の制御部は、前記X線照射部からのX線の照射を停止することを特徴とする。
【0013】
第5の発明に係るX線検査装置は、第4の発明に係るX線検査装置において特に、前記物品が前記搬送部上に存在しているか否かを検出する物品検出部をさらに備え、前記継続印加時間が前記所定の時間以下であっても、前記第2の制御部は、前記物品検出部からの検出信号に基づき、前記物品が前記搬送部上に存在していない期間内に、前記X線照射部からのX線の照射を停止することを特徴とする。
【0014】
第6の発明に係るX線検査装置は、第1の発明に係るX線検査装置において特に、前記継続印加時間が前記所定の時間を超えたことを前記時間検出部が検出した場合に、前記X線センサへの実効的なバイアス電圧の印加を停止させる操作を行うべきことを作業者に報知する、報知手段をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
第7の発明に係るX線検査装置は、第6の発明に係るX線検査装置において特に、前記物品が前記搬送部上に存在しているか否かを検出する物品検出部をさらに備え、前記継続印加時間が前記所定の時間以下であっても、前記報知手段は、前記物品検出部からの検出信号に基づき、前記物品が前記搬送部上に存在していない期間内に、前記X線センサへの実効的なバイアス電圧の印加を停止させる操作を行うべきことを作業者に報知することを特徴とする。
【0016】
第8の発明に係るX線検査装置は、第6の発明に係るX線検査装置において特に、前記継続印加時間が前記所定の時間を超えたことを前記時間検出部が検出した場合、前記報知手段はさらに、前記X線照射部からのX線の照射を停止させる操作を行うべきことを作業者に報知することを特徴とする。
【0017】
第9の発明に係るX線検査装置は、第8の発明に係るX線検査装置において特に、前記物品が前記搬送部上に存在しているか否かを検出する物品検出部をさらに備え、前記継続印加時間が前記所定の時間以下であっても、前記報知手段は、前記物品検出部からの検出信号に基づき、前記物品が前記搬送部上に存在していない期間内に、前記X線照射部からのX線の照射を停止させる操作を行うべきことを作業者に報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1〜第9の発明に係るX線検査装置によれば、時間検出部は、バイアス電圧を継続して印加している継続印加時間を検出する。そして、継続印加時間が所定の時間を超えたことを時間検出部が検出した場合には、停止制御部によって、前段の処理装置から搬送部への物品の供給が一時的に停止される。従って、それまでの連続使用によってX線センサに分極が生じていたとしても、物品の供給が停止されている期間内にバイアス印加を停止することによって、X線センサの特性を初期特性に回復させることができるため、検出性能が低下することを回避できる。
【0019】
特に第2の発明に係るX線検査装置によれば、バイアス印加の停止が第1の制御部によって自動的に行われるため、分極状態からの回復動作を確実に実行することができる。
【0020】
特に第3の発明に係るX線検査装置によれば、物品が搬送部上に存在していない期間内にバイアス印加の停止動作を実行することにより、未検査物品の発生を回避できるとともに、停止制御部による物品供給の停止動作の実行頻度を抑制することが可能となる。
【0021】
特に第4の発明に係るX線検査装置によれば、X線照射部からのX線の照射を停止することにより、X線の照射に起因するX線源及びX線センサの劣化の進行を抑制することが可能となる。
【0022】
特に第5の発明に係るX線検査装置によれば、物品が搬送部上に存在していない期間内にX線照射の停止動作を実行することにより、未検査物品の発生を回避できる。
【0023】
特に第6の発明に係るX線検査装置によれば、作業者がバイアス印加の停止操作を行うことにより、X線センサを分極状態から回復させることができる。
【0024】
特に第7の発明に係るX線検査装置によれば、物品が搬送部上に存在していない期間内にバイアス印加の停止操作が行われることにより、未検査物品の発生を回避できるとともに、停止制御部による物品供給の停止動作の実行頻度を抑制することが可能となる。
【0025】
特に第8の発明に係るX線検査装置によれば、作業者がX線照射の停止操作を行うことにより、X線の照射に起因するX線源及びX線センサの劣化の進行を抑制することが可能となる。
【0026】
特に第9の発明に係るX線検査装置によれば、物品が搬送部上に存在していない期間内にX線照射の停止操作が行われることにより、未検査物品の発生を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に係るX線検査装置1の全体構成を模式的に示す正面図である。図1に示すように、X線検査装置1は、上部筐体2、シールドボックス3、及び下部筐体4を備えている。上部筐体2には、タッチパネル機能付きのモニタ(表示・入力部5)と、リセットスイッチ50と、スピーカ51とが設けられている。
【0029】
シールドボックス3は、X線が外部に漏洩することを防止する機能を有する。シールドボックス3内には、X線照射部7とX線検出部8とが配設されている。X線照射部7は、検査対象物である食品等の物品12に対してX線を照射する。X線検出部8は、X線照射部7から照射されて物品12を透過してきたX線を検出する。物品12内に異物が混入していると、その異物の混入箇所において、X線検出部8が検出するX線の強度が極端に低下する。これにより、異物の大きさや混入箇所を特定することができる。
【0030】
また、シールドボックス3内には、ベルトコンベア6が配設されている。ベルトコンベア6は、物品12がX線照射部7とX線検出部8との間のX線照射領域100(図2参照)を通過するように、物品12を搬送する。ベルトコンベア6の上流端部(即ち物品搬入口17付近のシールドボックス3の外部)には、X線検査装置1の上流の処理装置25からX線検査装置1に物品12が供給されたことを検知するためのフォトセンサ15が設けられている。つまり、フォトセンサ15は、物品12がベルトコンベア6の上流端に到達したことを検出することができる。シールドボックス3には、ベルトコンベア6の上流端近傍に物品搬入口17が、下流端近傍に物品搬出口18が、それぞれ設けられている。
【0031】
下部筐体4内には、X線検査装置1の動作制御やデータ処理を行うためのコンピュータ9が配設されている。
【0032】
ベルトコンベア6の上流側には、物品12を上流の処理装置25からX線検査装置1に搬入するためのベルトコンベア10が設けられている。ベルトコンベア6の下流側には、検査後の物品12をX線検査装置1から搬出するためのベルトコンベア11が設けられている。ベルトコンベア11には、例えば、X線検査装置1による検査結果に基づいて良品と不良品とを振り分けるための任意の振分機構20が配設されている。
【0033】
図2は、図1に示したシールドボックス3の内部構成を示す斜視図である。ベルトコンベア6の上方には、X線照射部7としてのX線照射器(以下「X線照射器7」とも称す)が配設されている。ベルトコンベア6の下方には、X線検出部8としてのX線ラインセンサ(以下「X線ラインセンサ8」とも称す)が配設されている。X線ラインセンサ8は、直線状に並設された複数のX線検出素子8aを備えている。複数のX線検出素子8aは、ベルトコンベア6の短辺方向、即ち、ベルトコンベア6による物品12の搬送方向に直交する方向に沿って並設されている。図2においてX線照射領域100として示すように、X線照射器7は、X線ラインセンサ8に向かって、扇形状にX線を照射する。
【0034】
X線検出素子8aは直接変換方式のX線センサであり、照射されたX線を、CdTe等から成るX線変換膜によって直接的に電気信号に変換する。直接変換方式のX線センサでは、バイアス電圧が印加されたX線変換膜にX線が照射されると、照射されたX線量に応じてX線変換膜内に電荷(電子−正孔対)が励起され、電流が流れる。その電流値が電流/電圧変換回路によって電圧値に変換されて、データとして出力される。
【0035】
図3は、X線ラインセンサ8へのバイアス印加回路を示す回路図である。電源40は、X線ラインセンサ8を動作させることが可能なバイアス電圧(以下「実効的なバイアス電圧」とも称する)を供給する。電源40とX線ラインセンサ8との間には、トランジスタ又は半導体リレー等から成るスイッチ31が接続されている。スイッチ31がONされている場合には、電源40からX線ラインセンサ8にバイアス電圧が印加され、一方、スイッチ31がOFFされている場合には、電源40からX線ラインセンサ8にバイアス電圧は印加されない。X線ラインセンサ8には、電流/電圧変換回路8Aが接続されている。電流/電圧変換回路8Aは、X線ラインセンサ8を流れた電流値を電圧値に変更して、データ(電圧信号)として出力する。電流/電圧変換回路8Aから出力されたデータはコンピュータ9に入力され、コンピュータ9によって物品12の画像が作成される。
【0036】
図4は、X線検査装置1の機能構成を示すブロック図である。コンピュータ9は、CPU21と、CPU21によって参照可能な、ROMやRAM等のメモリ22とを備えている。コンピュータ9には、X線照射器7、電流/電圧変換回路8A、表示・入力部5、フォトセンサ15、スイッチ31、スピーカ51、リセットスイッチ50、及び振分機構20が接続されている。
【0037】
ところで、直接変換方式のX線センサでは、バイアス電圧を連続して印加し続けることにより、分極が生じてX線センサの感度が低下することが知られている。以下では、分極が感度に及ぼす影響が顕著となる臨界の連続印加時間を限界時間Tmaxと称する。つまり、限界時間Tmax以上の時間、連続してX線ラインセンサ8にバイアス電圧を印加し続けることにより、分極の影響が大きくなってX線センサの感度が低下する。但し、現実的には限界時間Tmaxとして明確な臨界値が存在するわけではなく、X線検査装置又はX線センサの開発段階での実験又はシミュレーション等によって、X線センサの感度が低下し始めた時点(又は低下し始める直前の時点)での連続印加時間の値が、限界時間Tmaxとして設定される。
【0038】
製造ラインの稼働にあたって、物品12がX線検査装置1に供給されない休止期間が頻繁に存在すれば、各休止期間内にX線ラインセンサ8へのバイアス電圧の印加を停止することにより、X線ラインセンサ8を分極状態から回復させることができる。しかし、食品工場によっては終日連続稼働される製造ラインもあり、そのような製造ラインに組み込まれたX線検査装置1では、休止期間が存在しないため、分極状態からの回復動作を行うことができない。そこで、本実施の形態に係るX線検査装置1では、X線ラインセンサ8にバイアス電圧を継続して印加している時間が所定の時間を超えたことを自動的に検出し、その場合は前段の処理装置25に対してベルトコンベア6への物品12の供給を一時的に停止させる。そして、その停止期間内に、自動又は手動によってX線ラインセンサ8の分極状態からの回復動作を実行する。以下、具体的に説明する。
【0039】
<分極状態からの回復動作を自動で実行する場合>
図5は、分極状態からの回復動作に関連する構成を示すブロック図である。また、図6は、分極状態からの回復動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0040】
図5を参照して、制御部30及び停止制御部60は、図1に示したコンピュータ9の機能として実現される。制御部30には、フォトセンサ15から検出信号S1が入力される。また、制御部30には、設定されているベルトコンベア6の駆動速度に関する情報が、信号S2として入力されている。制御部30は、検出信号S1と信号S2とに基づいて、物品12がベルトコンベア6上に存在しているか否かを判定する。
【0041】
前段の処理装置25のベルトコンベア10からX線検査装置1のベルトコンベア6に物品12が供給された後、その物品12がベルトコンベア6から後段の振分機構20のベルトコンベア11に排出されるよりも前に、次の物品12がベルトコンベア6に供給された場合には、ベルトコンベア6上には物品12が連続して存在していることとなる。この場合、制御部30は、物品12がベルトコンベア6上に連続して存在していることを検出する。なお、制御部30は、物品12が排出されてから次の物品が供給されるまでの時間間隔が所定のしきい値(例えば数秒程度)未満である場合も、物品12がベルトコンベア6上に連続して存在していると判定しても良い。
【0042】
また、限界時間Tmaxに関する情報が図4に示したメモリ22に予め登録されており、制御部30は、メモリ22にアクセスすることで、限界時間Tmaxを参照することができる。
【0043】
また、制御部30には、タイムカウンタ等の計時手段35が接続されている。制御部30には、時間のカウント値が信号S3として計時手段35から入力される。
【0044】
制御部30は、信号S3に基づき、X線ラインセンサ8にバイアス電圧を継続して印加している時間(以下「継続印加時間」とも称する)をカウントする。そして、その継続印加時間が限界時間Tmax(又はTmaxも若干短い時間)を超えると、停止制御部60に対してハイレベル(以下「Hレベル」と称す)の停止命令信号S4を送出する(図6における時刻T1参照)。これにより、停止制御部60は、前段の処理装置25に対してX線検査装置1への物品12の供給を停止させる。
【0045】
また、制御部30は、時刻T1から時間Wが経過した後、ローレベル(以下「Lレベル」と称す)の信号S5をスイッチ31に入力することにより、スイッチ31をOFFする。これにより、X線ラインセンサ8へのバイアス電圧の印加が停止される。ここで、時間Wは、ベルトコンベア6上の全ての物品12を後段のベルトコンベア11に排出させるのに要する時間であり、ベルトコンベア6の駆動速度に応じて変化する。
【0046】
また、これとともに制御部30は、Lレベルの信号S6をX線照射器7に入力する。これにより、X線照射器7からのX線の照射が停止される。
【0047】
バイアス印加の停止により、X線ラインセンサ8の分極状態からの回復動作が行われる。分極状態からの回復動作が完了すると、制御部30は、停止制御部60に対してLレベルの停止命令信号S4を送出する(図6における時刻T2参照)。これにより、停止制御部60は、前段の処理装置25に対する供給停止を解除し、その結果、前段の処理装置25からX線検査装置1への物品12の供給が再開される。また、これとともに制御部30は、計時手段35のカウント値をリセットし、改めて継続印加時間のカウント動作を開始する。
【0048】
また、時刻T2において信号S4がHレベルからLレベルに遷移すると、制御部30は、直ちに信号S5,S6をLレベルからHレベルに遷移させる。これにより、X線ラインセンサ8へのバイアス電圧の印加が再開されるとともに、X線照射器7からのX線の照射も再開される。
【0049】
このように本実施の形態に係るX線検査装置1によれば、計時手段35によって、X線ラインセンサ8にバイアス電圧を継続して印加している継続印加時間が検出される。そして、継続印加時間が限界時間Tmaxを超えた場合には、停止制御部60によって、前段の処理装置25からベルトコンベア6への物品12の供給が一時的に停止される。従って、それまでの連続使用によってX線ラインセンサ8に分極が生じていたとしても、物品12の供給が停止されている期間内にバイアス印加を停止することによって、X線ラインセンサ8の特性を初期特性に回復させることができるため、検出性能が低下することを回避できる。
【0050】
また、バイアス印加の停止が自動的に行われるため、分極状態からの回復動作を確実に実行することができる。
【0051】
また、X線照射器7からのX線の照射を停止することにより、X線の照射に起因するX線源及びX線センサの劣化の進行を抑制することが可能となる。
【0052】
変形例として、制御部30は、継続印加時間が限界時間Tmax以下であっても、検出信号S1及び信号S2に基づき物品12がベルトコンベア6上に存在していない休止期間を検出すれば、その休止期間内にバイアス印加の停止動作及びX線照射の停止動作を実行しても良い。休止期間内にバイアス印加の停止動作を実行することにより、未検査物品の発生を回避できるとともに、停止制御部60による物品供給の停止動作の実行頻度を抑制することが可能となる。また、休止期間内にX線照射の停止動作を実行することにより、未検査物品の発生を回避できる。
【0053】
<分極状態からの回復動作を手動で実行する場合>
図7は、分極状態からの回復動作に関連する構成を示すブロック図である。以下、図5との相違点を中心に説明する。
【0054】
制御部30は、信号S3に基づき、継続印加時間をカウントする。そして、その継続印加時間が限界時間Tmax(又はTmaxも若干短い時間)を超えると、停止制御部60に対してHレベルの停止命令信号S4を送出する。これにより、停止制御部60は、前段の処理装置25に対してX線検査装置1への物品12の供給を停止させる。
【0055】
また、制御部30は、停止命令信号S4の送出とともに、報知手段70に向けて信号S9を出力する。報知手段70は、図1,4に示した表示・入力部5及びスピーカ51に相当する。信号S9を受けた表示・入力部5は、作業者に対してリセットスイッチ50の押下を促す文字メッセージを、表示画面に表示する。これとともに、作業者に対してリセットスイッチ50の押下を促す音声メッセージが、スピーカ51から出力される。
【0056】
作業者がリセットスイッチ50を押下すると、信号S8が制御部30に入力される。信号S8を受けた制御部30は、Lレベルの信号S5をスイッチ31に入力することにより、スイッチ31をOFFする。これにより、X線ラインセンサ8へのバイアス電圧の印加が停止される。また、これとともに制御部30は、Lレベルの信号S6をX線照射器7に入力する。これにより、X線照射器7からのX線の照射が停止される。
【0057】
バイアス印加の停止により、X線ラインセンサ8の分極状態からの回復動作が行われる。分極状態からの回復動作が完了すると、上記と同様に、前段の処理装置25からX線検査装置1への物品12の供給が再開され、X線ラインセンサ8へのバイアス電圧の印加が再開され、X線照射器7からのX線の照射が再開される。
【0058】
分極状態からの回復動作を手動で実行する場合であっても、自動で実行する場合と同様に、X線ラインセンサ8の検出性能が低下することを回避することができる。
【0059】
変形例として、制御部30は、継続印加時間が限界時間Tmax以下であっても、検出信号S1及び信号S2に基づき物品12がベルトコンベア6上に存在していない休止期間を検出すれば、その休止期間内に報知手段70に報知させることによって、リセットスイッチ50の押下操作(つまりバイアス印加の停止操作及びX線照射の停止操作)を作業者に実行させても良い。休止期間内にバイアス印加の停止操作を実行させることにより、未検査物品の発生を回避できるとともに、停止制御部60による物品供給の停止動作の実行頻度を抑制することが可能となる。また、休止期間内にX線照射の停止操作を実行させることにより、未検査物品の発生を回避できる。
【0060】
<変形例>
図8は、X線ラインセンサ8へのバイアス印加の停止動作を具体的に説明するための図である。スイッチ31は、端子71A〜71Cを有している。スイッチ31をONする場合には端子71Aと端子71Bとが接続され、スイッチ31をOFFする場合には端子71Aと端子71Cとが接続される。X線ラインセンサ8への実効的なバイアス電圧の印加を停止するということは、図8の(A)〜(D)においてスイッチ31をOFF状態に切り換えることを意味する。
【0061】
図8の(A)において、電源70Aは、電源30と同一極性の微小電圧(例えば0.1V)を供給しており、端子71Aと端子71Cとが接続されても、X線ラインセンサ8には十分なバイアス電圧が供給されないため、X線ラインセンサ8は動作しない。図8の(B)において、端子71Cは電気的にフローティングな状態であり、端子71Aと端子71Cとが接続されても、X線ラインセンサ8には十分なバイアス電圧が供給されないため、X線ラインセンサ8は動作しない。図8の(C)において、端子71CにはGND電位が供給されており、端子71Aと端子71Cとが接続されても、X線ラインセンサ8には十分なバイアス電圧が供給されないため、X線ラインセンサ8は動作しない。図8の(D)において、電源70Cは、電源30とは逆極性の微小電圧(例えば−0.1V)を供給しており、端子71Aと端子71Cとが接続されても、X線ラインセンサ8には十分なバイアス電圧が供給されないため、X線ラインセンサ8は動作しない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係るX線検査装置の全体構成を模式的に示す正面図である。
【図2】図1に示したシールドボックスの内部構成を示す斜視図である。
【図3】X線ラインセンサへのバイアス印加回路を示す回路図である。
【図4】X線検査装置の機能構成を示すブロック図である。
【図5】分極状態からの回復動作に関連する構成を示すブロック図である。
【図6】分極状態からの回復動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】分極状態からの回復動作に関連する構成を示すブロック図である。
【図8】X線ラインセンサへのバイアス印加の停止動作を具体的に説明するための図である。
【符号の説明】
【0063】
1 X線検査装置
5 表示・入力部
6 ベルトコンベア
7 X線照射器
8 X線ラインセンサ
12 物品
15 フォトセンサ
25 前段の処理装置
30 制御部
31 スイッチ
50 リセットスイッチ
51 スピーカ
60 停止制御部
100 X線照射領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象である物品にX線を照射し、前記物品を透過してきたX線を検出することにより、前記物品に対する検査を実行するX線検査装置であって、
X線照射部と、
X線を直接的に電気信号に変換するタイプのX線センサを有するX線検出部と、
前記物品が前記X線照射部と前記X線検出部との間のX線照射領域を通過するように、前記物品を搬送する搬送部と、
前記X線センサへ印加するバイアス電圧を制御する第1の制御部と、
前記バイアス電圧を継続して印加している継続印加時間を検出する時間検出部と、
前記X線検査装置の前段の処理装置に対して前記搬送部への前記物品の供給を停止させる停止制御部と
を備え、
前記継続印加時間が所定の時間を超えたことを前記時間検出部が検出した場合、前記停止制御部は、前記前段の処理装置に対して前記搬送部への物品の供給を一時的に停止させる、X線検査装置。
【請求項2】
前記継続印加時間が前記所定の時間を超えたことを前記時間検出部が検出した場合、前記第1の制御部は、前記X線センサへの実効的なバイアス電圧の印加を停止する、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記物品が前記搬送部上に存在しているか否かを検出する物品検出部をさらに備え、
前記継続印加時間が前記所定の時間以下であっても、前記第1の制御部は、前記物品検出部からの検出信号に基づき、前記物品が前記搬送部上に存在していない期間内に、前記X線センサへの実効的なバイアス電圧の印加を停止する、請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記X線照射部からのX線の照射を制御する第2の制御部をさらに備え、
前記継続印加時間が前記所定の時間を超えたことを前記時間検出部が検出した場合、前記第2の制御部は、前記X線照射部からのX線の照射を停止する、請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記物品が前記搬送部上に存在しているか否かを検出する物品検出部をさらに備え、
前記継続印加時間が前記所定の時間以下であっても、前記第2の制御部は、前記物品検出部からの検出信号に基づき、前記物品が前記搬送部上に存在していない期間内に、前記X線照射部からのX線の照射を停止する、請求項4に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記継続印加時間が前記所定の時間を超えたことを前記時間検出部が検出した場合に、前記X線センサへの実効的なバイアス電圧の印加を停止させる操作を行うべきことを作業者に報知する、報知手段をさらに備える、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記物品が前記搬送部上に存在しているか否かを検出する物品検出部をさらに備え、
前記継続印加時間が前記所定の時間以下であっても、前記報知手段は、前記物品検出部からの検出信号に基づき、前記物品が前記搬送部上に存在していない期間内に、前記X線センサへの実効的なバイアス電圧の印加を停止させる操作を行うべきことを作業者に報知する、請求項6に記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記継続印加時間が前記所定の時間を超えたことを前記時間検出部が検出した場合、前記報知手段はさらに、前記X線照射部からのX線の照射を停止させる操作を行うべきことを作業者に報知する、請求項6に記載のX線検査装置。
【請求項9】
前記物品が前記搬送部上に存在しているか否かを検出する物品検出部をさらに備え、
前記継続印加時間が前記所定の時間以下であっても、前記報知手段は、前記物品検出部からの検出信号に基づき、前記物品が前記搬送部上に存在していない期間内に、前記X線照射部からのX線の照射を停止させる操作を行うべきことを作業者に報知する、請求項8に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−192267(P2009−192267A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30997(P2008−30997)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】