説明

X線画像撮影装置、X線画像撮影方法およびプログラム

【課題】X線断層画像の3次元画像を得ることができるX線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】X線断層画像を再構成するX線画像撮影装置であって、関心領域を設定する領域設定手段と、X線源の各撮影位置に応じた複数のX線画像の投影データを取得する撮影制御手段と、複数のX線画像の投影データのうち、左目の視野に対応するX線源の撮影位置の、複数のX線画像の投影データから、関心領域を含む厚さの左目用のX線断層画像を再構成する第1画像再構成手段と、複数のX線画像の投影データのうち、右目の視野に対応するX線源の撮影位置の、複数のX線画像の投影データから、関心領域を含む厚さの右目用のX線断層画像を再構成する第2画像再構成手段と、左目用のX線断層画像と右目用のX線断層画像とから、3次元画像を生成する3次元画像生成手段と、3次元画像をステレオ視可能に表示する表示手段とを有することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トモシンセシス撮影により取得された複数枚のX線画像の投影データを用いて、被写体の任意高さの断面におけるX線断層画像を再構成し、3次元表示するX線画像撮影装置、X線画像撮影方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トモシンセシス撮影を行うX線画像撮影装置では、X線源を一方向に移動しつつ、異なる角度で被写体にX線を照射し、被写体に照射されたX線をフラットパネル型X線検出器(FPD)で検出することにより、1回の撮影操作で、被写体の、撮影角度の異なる複数枚のX線画像の投影データが取得される。そして、取得された複数枚のX線画像の投影データを用いて画像処理を行って、被写体の任意高さの断面におけるX線断層画像の再構成が行われる。
【0003】
以下、X線断層画像の再構成について説明する。
【0004】
図4(A)に示すように、トモシンセシス撮影時に、X線源が一方向に移動されて、位置S1,S2,S3から被写体30にX線が照射され、それぞれ、被写体30のX線画像(の投影データ)P1,P2,P3が得られるとする。
【0005】
ここで、図4(A)に示すように、被写体30の高さの異なる2つの位置に撮影対象物A,Bが存在する場合を考えてみる。各撮影位置S1,S2,S3において、X線源から照射されたX線は、被写体30を透過してFPDに入射される。その結果、各撮影位置S1,S2,S3に対応するX線画像P1,P2,P3において、2つの撮影対象物A,Bは、それぞれ異なる位置に投影される。
【0006】
例えば、X線画像P1の場合、X線源の位置S1が、X線源の移動方向に対して、撮影対象物A,Bよりも左側に位置するため、撮影対象物A,Bは、それぞれ、撮影対象物A,Bよりも右側にずれたP1A,P1Bの位置に投影される。同様に、X線画像P2の場合には、ほぼ直下のP2A,P2Bの位置に、X線画像P3の場合には、左側にずれたP3A,P3Bの位置に投影される。
【0007】
撮影対象物Aが存在する高さの断面におけるX線断層画像を再構成する場合、撮影対象物Aの投影位置P1A,P2A,P3Aが一致するように、例えば、同図(B)に示すように、X線画像P1を左へ、X線画像P3を右にシフトさせて合成する(シフト加算法)。これにより、撮影対象物Aが存在する高さの断面が強調されたX線断層画像が再構成される。また、撮影対象物Bが存在する高さの断面を含む、任意高さの断面におけるX線断層画像も同様にして再構成することができる。
【0008】
ところで、トモシンセシス撮影では、1回の撮影操作で複数枚のX線画像が撮影されるため、2枚の視線が異なるX線断層画像を再構成することができ、この2枚のX線断層画像を用いてステレオ視することが提案されている。
【0009】
例えば、特許文献1には、2つの異なるデータセットTr′およびTr″(トモシンセシス画像)を再生し、どちらもいくつか又は全てのオリジナルの投影Tp(撮影画像)から再構成され、Tr′およびTr″は、例えば、数度だけ異なる画像であり、このTr′およびTr″を用いてステレオ視することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−130487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、2次元画像での通常観察時に用いる断面スライス(断層画像)の組から構成されているデータセットTr′およびTr″から、ステレオ視するための3次元画像を生成するため、ステレオ視する断面が薄く十分な立体感を得る事ができない。また、通常のトモシンセシス撮影を前提としており、被写体の被曝線量が多くなる場合がある。
【0012】
つまり、図5に示すように、撮影台26上の被写体30における関心領域50を撮影したい場合、X線源24を撮影位置SからSまで移動させて、複数枚のX線画像の投影データをX線検出器(FPD)28で検出し、複数枚の薄いX線断層画像が組になったX線断層画像セット56が取得される。しかし、この薄いX線断層画像で3次元画像を生成しても、十分な立体感を得る事ができず、関心領域50の全体像を把握するためには、多くのX線断層画像を見る必要があった。
【0013】
また、通常のX線画像を用いた3次元表示(ステレオ視)では、立体感は得られるが関心領域(例えば、病変部)を邪魔する組織(例えば、骨等)の影響が大きい場合、診断が難しくなり見逃しや、さらなる精密検査(CT、MRI等)を行わなければならないことがあった。
【0014】
本発明の目的は、設定した関心領域を含む厚さでX線断層画像を再構成して3次元表示することで、X線画像の撮影枚数を減らして被曝線量の低減、撮影時間の短縮を図ることができ、かつ、十分な立体感が得られ、関心領域を邪魔する組織の影響が少ないX線断層画像の3次元画像を得ることができる、X線画像撮影装置、X線画像撮影方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、X線源を移動させて複数のX線画像を撮影し、X線断層画像を再構成するX線画像撮影装置であって、関心領域を設定する領域設定手段と、前記X線源の各撮影位置に応じた、前記複数のX線画像の投影データを取得する撮影制御手段と、前記複数のX線画像の投影データのうち、左目の視野に対応する前記X線源の撮影位置の、前記複数のX線画像の投影データから、前記関心領域を含む厚さの左目用の前記X線断層画像を再構成する第1画像再構成手段と、前記複数のX線画像の投影データのうち、右目の視野に対応する前記X線源の撮影位置の、前記複数のX線画像の投影データから、前記関心領域を含む厚さの右目用の前記X線断層画像を再構成する第2画像再構成手段と、前記左目用のX線断層画像と、前記右目用のX線断層画像とから、3次元画像を生成する3次元画像生成手段と、前記3次元画像をステレオ視可能に表示する表示手段と、を有することを特徴とするX線画像撮影装置を提供する。
【0016】
また、前記複数のX線画像の投影データは、それぞれ撮影された前記X線源の撮影位置情報を含むことが好ましい。
さらに、左目用および右目用の、それぞれの前記X線断層画像の再構成に用いる前記複数のX線画像の投影データは、左目用と右目用とで前記X線源の撮影位置が重複する前記X線画像の投影データを含むことが好ましい。
また、左目用および右目用の、それぞれの前記X線断層画像の再構成に用いる前記複数のX線画像の投影データは、左目用と右目用とで前記X線源の撮影位置が重複する前記X線画像の投影データを含まないことが好ましい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明は、X線源を移動させて複数のX線画像を撮影し、X線断層画像を再構成するX線画像撮影方法であって、関心領域を設定する領域設定ステップと、前記X線源の各撮影位置に応じた、前記複数のX線画像の投影データを取得する撮影制御ステップと、前記複数のX線画像の投影データのうち、左目の視野に対応する前記X線源の撮影位置の、前記複数のX線画像の投影データから、前記関心領域を含む厚さの左目用の前記X線断層画像を再構成する第1画像再構成ステップと、前記複数のX線画像の投影データのうち、右目の視野に対応する前記X線源の撮影位置の、前記複数のX線画像の投影データから、前記関心領域を含む厚さの右目用の前記X線断層画像を再構成する第2画像再構成ステップと、前記左目用のX線断層画像と、前記右目用のX線断層画像とから、3次元画像を生成する3次元画像生成ステップと、前記3次元画像をステレオ視可能に表示する表示ステップと、を有することを特徴とするX線画像撮影方法を提供する。
【0018】
さらに、上記課題を解決するために、本発明は、上記に記載のX線画像撮影方法の各ステップを手順としてコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、設定された関心領域を含む厚さで、X線断層画像を再構成し3次元表示することで、X線画像の撮影枚数を減らして被曝線量の低減、撮影時間の短縮を図ることができる。また、X線断層画像を従来より厚めに再構成し3次元表示するため、X線断層画像の枚数も減らすことで、確認する3次元画像(X線断層画像)の枚数を少なくすることができ、関心領域を邪魔する組織の影響を除きつつ、十分な立体感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るX線画像撮影装置の構成を示す一実施形態のブロック図である。
【図2】関心領域を含む厚さで再構成されるX線断層画像の一例を横から見たイメージを示す説明図である。
【図3】本発明に係るX線画像撮影装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図4】(A)および(B)は、トモシンセシス撮影によるX線断層画像の再構成時の様子を表す概念図である。
【図5】従来のX線断層画像の一例を横から見たイメージを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るX線画像撮影方法を実施する本発明に係るX線画像撮影装置を、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明に係るX線画像撮影装置の構成を表す一実施形態のブロック図である。
図1に示すX線画像撮影装置10は、人体等の被写体30をトモシンセシス撮影(X線撮影)して、被写体30の任意高さの断面におけるX線断層画像を再構成するものである。X線画像撮影装置10は、入力部12、制御部14、撮影部16、画像処理部18、表示部20、および出力部22によって構成されている。
【0023】
入力部12は、撮影開始の指示等を含む、各種の指示を入力するための部位であり、例えば、マウスやキーボード等を例示することができる。入力部12からは指示信号が出力され、制御部14に入力される。
【0024】
制御部14は、入力部12から入力される指示信号に従って、撮影部16における撮影操作ならびに関心領域の設定、画像処理部18における画像処理、表示部20における画面表示、および出力部22における出力処理を含む、X線画像撮影装置10の動作を制御する制御信号を出力する部位である。制御部14から出力される制御信号は、図示を省略しているが、撮影部16、画像処理部18、表示部20および出力部22の各部位に入力される。
【0025】
なお、関心領域は、撮影技師によって、表示部20に表示されたプレショット画像または前回撮影されたX線断層画像上で、入力部12のマウス等により入力されて設定され、また、X線断層画像の厚さが設定され、制御信号の一部である関心領域情報として出力される。つまり、入力部12、制御部14、および表示部20によって領域設定手段が構成される。
【0026】
撮影部16は、制御部14から入力される制御信号に従って、被写体30をトモシンセシス撮影する部位であり、X線源24と、X線源24の移動機構(図示省略)と、撮影台26と、フラットパネル型X線検出器(FPD)28とによって構成されている。
【0027】
X線源24は、X線管とコリメータを有し、撮影台26の上面に位置決めされる被写体30よりも所定間隔上方に離れた位置に配設されている。X線管から照射されたX線は、コリメータによって照射領域が制限される。
【0028】
FPD28は、X線の受光面を上向きにして撮影台26の下面に配設されている。FPD28は、被写体30を透過したX線を検出して光電変換し、撮影された被写体30のX線画像に対応するディジタル画像データ(投影データ)を出力する。FPD28は、放射線を電荷に直接変換する直接方式や、放射線を一旦光に変換し、変換された光をさらに電気信号に変換する間接方式等、各種方式のものが利用可能である。また、X線源24の移動方向に対してFPD28を移動可能に構成してもよい。
【0029】
トモシンセシス撮影を行う場合、移動機構の制御により、X線源24を一方向に移動しつつ、被写体30の方向にX線の照射角度を変えて、異なる撮影角度(一定の時間間隔)で被写体30にX線が照射される。X線源24から照射されたX線は、被写体30を透過してFPD28の受光面に入射され、FPD28により検出されて光電変換され、撮影された被写体30のX線画像に対応する投影データが取得される。
【0030】
本発明に係るトモシンセシス撮影の場合、1回の撮影操作により、被写体30の、通常の撮影(例えば、20〜80枚)に比べて少ない枚数の、撮影角度の異なる複数枚(例えば、10〜20枚)のX線画像が撮影され、FPD28からは、撮影された複数枚のX線画像に対応する投影データが順次出力される。
このように、制御部14と撮影部16とで撮影制御手段が構成される。
【0031】
続いて、画像処理部18は、制御部14から入力される制御信号に従って、撮影部16により取得された複数枚のX線画像の投影データを受け取り、これら複数枚のX線画像の投影データを用いて画像処理(補正処理、画像合成処理等を含む)を行って、被写体30の任意高さの断面における、左右の目用のそれぞれのX線断層画像を再構成する部位である。つまり、画像再構成手段である。画像処理部18は、記憶部32と、補正部34と、第1画像再構成部36と、第2画像再構成部38と、3次元画像生成部40とによって構成されている。
【0032】
記憶部32は、撮影部16により取得された、複数枚のX線画像の投影データを記憶する。
補正部34は、記憶部32に記憶された複数枚のX線画像の投影データについて、例えば、オフセット補正、残像補正、ゲイン補正、欠陥画素補正、段差補正、縦ムラ補正、横ムラ補正を含む各種の補正処理が行われる。なお、ここに例示したオフセット補正、残像補正、ゲイン補正、欠陥画素補正、段差補正、縦ムラ補正、横ムラ補正は、公知の補正処理であり、公知の手法を含む各種の手法で実施することができる。
【0033】
第1画像再構成部36は、補正部34による補正処理後の複数枚のX線画像の投影データのうち、左目の視野に対応するX線源24の撮影位置の、複数枚のX線画像の投影データを用いて画像合成処理を施すことによって、被写体30の関心領域を含む厚さの断面における左目用のX線断層画像が再構成される。
【0034】
第2画像再構成部38は、補正部34による補正処理後の複数枚のX線画像の投影データのうち、右目の視野に対応するX線源24の撮影位置の、複数枚のX線画像の投影データを用いて画像合成処理を施すことによって、被写体30の関心領域を含む厚さの断面における右目用のX線断層画像が再構成される。
【0035】
左右の目用のそれぞれのX線断層画像の再構成は、例えば、図2に示すX線源24の撮影位置S〜Sのうち、左目の視野に対応する撮影位置としてS〜Se−xのX線画像の投影データを用いて、左目用のX線断層画像が再構成される。また、右目の視野に対応する撮影位置としてS〜SのX線画像の投影データを用いて、右目用のX線断層画像が再構成される。ここで、左目用および右目用のX線断層画像の断面54は、図2に示すように、関心領域を邪魔する組織52を避けて、通常のX線断層画像の断面よりも厚く再構成される。
なお、上記の例では、左右の目用のそれぞれのX線断層画像の再構成に用いられるX線画像の投影データは中央部分で重複していたが、全体を左右半分ずつに分けて重複しないX線画像の投影データを用いて、左右の目用のそれぞれのX線断層画像が再構成されるようにしてもよい。
【0036】
3次元画像生成部40では、左右の目用のそれぞれのX線断層画像がセットとされ、3次元画像の表示に対応した表示手段で表示可能なデータに、X線断層画像のデータが加工され、3次元画像セットが出力される。例えば、左右の目用のX線断層画像のそれぞれに、左右どちらの目用のX線断層画像であるかの情報が付加された3次元画像セットとされる。
【0037】
画像処理部18は、ハードウェア(装置)で構成してもよいし、本発明に関わるX線画像処理方法の一部をコンピュータに実行させるためのプログラムによって構成することもできる。
【0038】
続いて、表示部20は、制御部14から入力される制御信号に従って、画像処理部18により再構成され3次元画像セットとされたX線断層画像等を3次元表示する部位である。3次元表示を実現するデバイスとしては、例えば、3次元表示に対応した液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等のようなフラットパネル型ディスプレイ、または、プロジェクターなどを例示することができる。
【0039】
また、3次元表示(ステレオ視)の方法としては、例えば、(1)左目用と右目用のX線断層画像に対して、それぞれ直交する直線偏光をかけて、偏光メガネを用いてステレオ視を行う方法、(2)左目用と右目用のX線断層画像を交互に表示して、表示手段と同期した液晶シャッターを備えたメガネを用いてステレオ視を行う方法、(3)左目用と右目用のX線断層画像に対して、それぞれ赤と青の光を重ねて表示し、左右に赤と青のカラーフィルタの付いたメガネを用いてステレオ視を行う方法、(4)レンチキュラーレンズを用いてステレオ視を行う方法などが挙げられる。
【0040】
また、出力部22は、制御部14から入力される制御信号に従って、画像処理部18により再構成されたX線断層画像の3次元画像セットを出力する部位であり、例えば、3次元画像をプリント出力するプリンタや、3次元画像セットのデータを各種の記録媒体に保存する記憶装置等を例示することができる。
【0041】
次に、本発明に係るX線画像撮影方法を実現する、本発明に係るX線画像撮影装置10の動作を説明する。
【0042】
図3は、本発明に係るX線画像撮影方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
撮影を開始する指示信号が入力部12から制御部14に入力されると、制御部14では撮影部位等の情報を基に、当該被写体の同じ撮影部位に対して前回撮影された3次元画像セットまたはX線断層画像(以下、過去の画像データという)の有無が判定される(ステップS10)。制御部14は、出力部22の1つである記憶装置に記憶された過去の画像データから、当該被写体の同じ撮影部位の過去の画像データを検索し、当該被写体の同じ撮影部位の過去の画像データがあれば、前回撮影された同じ撮影部位の過去の画像データを読み込む(ステップS10で“Y”)。
【0043】
制御部14は、当該被写体の同じ撮影部位の過去の画像データの検索の結果、当該被写体の同じ撮影部位の過去の画像データがなければ(ステップS10で“N”)、撮影部16に対して、関心領域の被写体における位置が判るような範囲(例えば、腹部全体等)の、プレショット画像を撮影するように制御信号を出力し、プレショット画像が撮影される(ステップS12)。
【0044】
プレショット画像または過去の画像は、表示部20に表示される。ここで、撮影技師により、プレショット画像または過去の画像上で関心領域が設定され、入力部12から関心領域情報が入力される(ステップS14)。
【0045】
制御部14では、関心領域情報に基づき、X線源24の撮影位置の制御情報が生成され、撮影部16では、撮影開始の指示に従って、移動機構の制御により、X線源24を一方向に移動しつつ、被写体30の方向にX線源24の照射角度を変えて、異なる照射角度でX線が被写体30に照射され、1回の撮影操作で撮影角度の異なる複数枚のX線画像が、撮影開始位置から順次撮影される(ステップS16)。そして、被写体30のX線画像の撮影が行われる度に、FPD28から、撮影されたX線画像に対応する投影データが出力される。なお、本実施例では過去の画像データ(トモシンセシス画像)またはプレショット画像を用いて、これから撮影する際に所望する領域を決定しているが、一般的なトモシンセシス撮影のように、撮影する医師や技師が目視等で撮影領域を決定してもよいことは言うまでもない。
【0046】
画像処理部18では、撮影部16により取得された、関心領域を含む複数枚のX線画像の投影データが記憶部32に記憶され、補正部34によりオフセット補正、および残像補正等の各種の補正処理が行われる。
第1画像再構成部36および第2画像再構成部38では、補正部34による補正処理後の、関心領域を含む複数枚のX線画像の投影データを用いて、左右の目の視野に対応するX線源24の撮影位置の、複数枚のX線画像の投影データから、それぞれ被写体30の関心領域を含む厚さの断面における、左右の目用のそれぞれのX線断層画像が再構成される。つまり、厚めのX線断層画像が1セット再構成される(ステップS18)。なお、再構成されるX線断層画像は1セットに限定されず、複数セットでもよい。
【0047】
左右の目用のそれぞれのX線断層画像は、3次元画像生成部40に入力される。3次元画像生成部40では、左右の目用のそれぞれのX線断層画像が1セットとされ、3次元画像の表示に対応した表示手段で表示可能なデータにX線断層画像のデータが加工され、3次元画像セットが出力される(ステップS20)。
【0048】
3次元画像生成部40から出力された3次元画像セット(左右の目用のそれぞれのX線断層画像)は表示部20に3次元表示される。なお、制御部14の制御により、X線断層画像の表示状態の情報が表示部20に表示されてもよい。
また、3次元画像生成部40から出力された3次元画像セット(左右の目用のそれぞれのX線断層画像)は出力部22に入力され、出力部22において、例えば、3次元画像がプリント出力され、3次元画像セットのデータが記録媒体に保存される(ステップS22)。
【0049】
このように、設定された関心領域を含む厚さで、X線断層画像を再構成し3次元表示することで、X線画像の撮影枚数を減らして被曝線量の低減、撮影時間の短縮を図ることができる。また、X線断層画像を従来より厚めに再構成し3次元表示するため、X線断層画像の枚数も減らすことで、確認する3次元画像(X線断層画像)の枚数を少なくすることができ、関心領域を邪魔する組織の影響を除きつつ、十分な立体感を得ることができる。
【0050】
また、関心領域(病変部)周辺のX線断層画像を用いることで、診断が行いやすい画像となり、見逃しや誤診を防止し、他のモダリティ(CT、MRI等)での精密検査を減らすことができる。さらに、病変部近傍の画像に注目して立体構造を把握することができる。
また、手術シミュレーション時に、2次元画像から医師が頭の中で組織の前後関係などの立体構造を、過去の経験から把握するのではなく、3次元画像によって組織の前後関係を把握することができるので、経験の浅い医師や、専門外の医師の見落としが減り、容易に手術シミュレーションをすることができる。
【0051】
以上、本発明のX線画像撮影装置、X線画像撮影方法およびプログラムについて詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 X線画像撮影装置
12 入力部
14 制御部
16 撮影部
18 画像処理部
20 表示部
22 出力部
24 X線源
26 撮影台
28 X線検出器(FPD)
30 被写体
32 記憶部
34 補正部
36 第1画像再構成部
38 第2画像再構成部
40 3次元画像生成部
50 関心領域
52 組織
54 断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源を移動させて複数のX線画像を撮影し、X線断層画像を再構成するX線画像撮影装置であって、
関心領域を設定する領域設定手段と、
前記X線源の各撮影位置に応じた、前記複数のX線画像の投影データを取得する撮影制御手段と、
前記複数のX線画像の投影データのうち、左目の視野に対応する前記X線源の撮影位置の、前記複数のX線画像の投影データから、前記関心領域を含む厚さの左目用の前記X線断層画像を再構成する第1画像再構成手段と、
前記複数のX線画像の投影データのうち、右目の視野に対応する前記X線源の撮影位置の、前記複数のX線画像の投影データから、前記関心領域を含む厚さの右目用の前記X線断層画像を再構成する第2画像再構成手段と、
前記左目用のX線断層画像と、前記右目用のX線断層画像とから、3次元画像を生成する3次元画像生成手段と、
前記3次元画像をステレオ視可能に表示する表示手段と、を有することを特徴とするX線画像撮影装置。
【請求項2】
前記複数のX線画像の投影データは、それぞれ撮影された前記X線源の撮影位置情報を含むことを特徴とする請求項1に記載のX線画像撮影装置。
【請求項3】
左目用および右目用の、それぞれの前記X線断層画像の再構成に用いる前記複数のX線画像の投影データは、左目用と右目用とで前記X線源の撮影位置が重複する前記X線画像の投影データを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のX線画像撮影装置。
【請求項4】
左目用および右目用の、それぞれの前記X線断層画像の再構成に用いる前記複数のX線画像の投影データは、左目用と右目用とで前記X線源の撮影位置が重複する前記X線画像の投影データを含まないことを特徴とする請求項1または2に記載のX線画像撮影装置。
【請求項5】
X線源を移動させて複数のX線画像を撮影し、X線断層画像を再構成するX線画像撮影方法であって、
関心領域を設定する領域設定ステップと、
前記X線源の各撮影位置に応じた、前記複数のX線画像の投影データを取得する撮影制御ステップと、
前記複数のX線画像の投影データのうち、左目の視野に対応する前記X線源の撮影位置の、前記複数のX線画像の投影データから、前記関心領域を含む厚さの左目用の前記X線断層画像を再構成する第1画像再構成ステップと、
前記複数のX線画像の投影データのうち、右目の視野に対応する前記X線源の撮影位置の、前記複数のX線画像の投影データから、前記関心領域を含む厚さの右目用の前記X線断層画像を再構成する第2画像再構成ステップと、
前記左目用のX線断層画像と、前記右目用のX線断層画像とから、3次元画像を生成する3次元画像生成ステップと、
前記3次元画像をステレオ視可能に表示する表示ステップと、を有することを特徴とするX線画像撮影方法。
【請求項6】
請求項5に記載のX線画像撮影方法の各ステップを手順としてコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−50605(P2012−50605A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194922(P2010−194922)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】