説明

X線管装置及びX線CT装置

【課題】被検体に照射するX線のオン/オフを高速で行えるX線管球装置を提供する。
【解決手段】電子ビームを出射する電子銃101と、制御信号を受けて電子銃101から出射された電子ビームを少なくとも2方向へ切り替えて送出させる偏向用電極102と、一方向の電子ビームを受けたときは所定の照射野に向けてX線を照射する第1反射面111と、他の方向の電子ビームを受けたときは所定の照射野と異なる方向に向けてX線を照射する第2反射面112と、を有するターゲット110と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のX線照射部を備えたX線管装置及びそれを使用したX線CT装置に関する。さらに詳しくは、複数のX線照射部からX線を交互に曝射させるX線管装置及びそれを使用したX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、被検体を間にして対向配置されたX線管球とX線検出器とを被検体の周囲に回転させて、被検体に向けてX線管球からX線を曝射し、該被検体を透過したX線をX線検出器で検出し、その検出したX線の量を基にデータを生成した投影データに対し再構成処理を行うことで被検体の断層像等のX線CT画像を得る装置である。例えば、X線管球とX線検出器とを360°、又は(180°+ファイン角)に回転させて投影データを収集し、360°分、又は(180°+ファイン角)分の投影データに基づいてX線CT画像を得る。このX線は数kHzである。
【0003】
さらに、心臓などの循環器を詳細に診断するために、1スキャンに要する時間(スキャン時間)を短縮したいとの要望がある。しかし、回転周期を早めることは、X線管球やX線検出器などの回転部分に過度の遠心力が加わることになる。そのため、回転周期を早めることで要望にこたえることは技術的に問題があり容易ではない。
【0004】
そこで、回転周期を早めることなく短時間に所望ビュー数の投影データを収集するために、複数のX線管球とX線検出器の組を用いた多管球型のX線CT装置が提案されている。また、多管球型のX線CT装置では、異なる組織(例えば、骨と血管など)のX線CT画像を一度に生成することが可能である。
【0005】
しかし、X線管球から曝射したX線が被検体の骨などで反射したX線が散乱することで散乱線が発生する。複数のX線管球を備えたX線CT装置では、複数のX線管球から連続的にX線を発生しているため、組となっているX線検出器だけでなく、他のX線検出器でも散乱線が検知されてしまい、相互に散乱線が影響しあうことになる。例えばX線管球及びX線検出器の組を2つ有するX線CT装置では、一方のX線管球から曝射されたX線の散乱線が他方のX線検出器で検出されることになる。このような、散乱線の検出はノイズとなり、X線CT画像の画質が低下するといった問題がある。
【0006】
このような、対になるX線管球以外のX線管球に起因する散乱線の影響を除去するため、X線の照射タイミングをX線管球ごとにずらしながらパルス状のX線を交互に曝射することで相互の影響を軽減することが行われている。
【0007】
従来、このパルス状のX線を交互に曝射させる1つの方法として、X線管球へ流れる電流(管電流)のオン/オフを行う技術(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。また他の方法として、直流的に曝射されるX線を機械的シャッターで、オン/オフする技術(数個の穴を開けた円盤をX線管球の前で回転させてX線のオン/オフを行うようなものも含む。)が提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−1211446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載の技術では、管電流のオン/オフを行うには必要な電流に達するまでの時間である立ち上がり時間、及び完全に電流を停止させるまでの時間である立下り時間が必要である。特に、曝射量が大きくなると、管電流が大きくなり、ジェネレータ及びX線管球のフィラメントのチャージアップ及びディスクチャージの応答性が悪くなり、X線CT装置に求められている上述したような数kHzのX線においてパルス状の高速でのX線の照射を行うことは困難である。
【0010】
また、数kHzのスピードで機械的なシャッターのオン/オフを実現することは困難であり、さらに、円盤を回転させてX線のオン/オフを行う技術では、2つの円盤を同じ回転数で回転させることは可能であっても、2管球システムのように交互に爆射するような場合、決まった角度ズレで回転同期させることは困難であるし、照射するX線の量が一定ではないため正確なX線CT画像の生成が困難になってしまう。
【0011】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、被検体に照射するX線のオン/オフを高速で行うことの可能なX線管装置、及びそのX線管装置を使用し散乱線によるノイズを軽減したX線CT装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のX線管装置は、電子ビームを出射する電子銃と、制御信号を受けて前記電子銃から出射された電子ビームを少なくとも2方向へ切り替えて送出させる偏向手段と、一方向の前記電子ビームを受けたときは所定の照射野に向けてX線を照射する第1の面と、他の方向の前記電子ビームを受けたときは前記所定の照射野と異なる方向に向けてX線を照射する第2の面と、を有するターゲットと、を備えることを特徴とするものである。
【0013】
請求項2に記載のX線管装置は、電子ビームを出射する電子銃と、制御信号を受けて前記電子銃から出射された電子ビームを少なくとも第1方向及び第2方向の2方向へ切り替えて送出させる偏向手段と、一方向の前記電子ビームを受けたときは所定の照射野に向けてX線を照射する第1の面と、他の方向の前記電子ビームを受けたときは前記所定の照射野と異なる方向に向けてX線を照射する第2の面と、を有するターゲットと、をそれぞれが備え、かつそれぞれ同一の被検体に対する異なる照射野に向けて照射可能に配置された第1X線照射手段及び第2X線照射手段と、前記第1X線照射手段と前記第2X線照射手段の2つの前記偏向手段において、一方の前記偏向手段に対して前記第1方向へ前記電子ビームを照射させている時に、他の前記偏向手段に対して前記第2方向に前記電子ビームを照射させる前記制御信号を送信する制御手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に記載のX線管装置は、電子ビームを出射する電子銃と、制御信号を受けて前記電子銃から出射された電子ビームを少なくとも第1方向及び第2方向の2方向へ切り替えて送出させる偏向手段と、一方向の前記電子ビームを受けたときは所定の照射野に向けてX線を照射する第1の面と、他の方向の前記電子ビームを受けたときは前記所定の照射野と異なる方向に向けてX線を照射する第2の面と、を有するターゲットと、をそれぞれが備え、かつそれぞれ同一の被検体に対する異なる照射野に向けて照射可能に配置されたn(2≦n)個のX線照射手段と、前記n個のX線照射手段の前記偏向手段において、k(1≦k≦n)番目の前記X線照射手段の前記偏向手段に対して前記第1方向へ前記電子ビームを送出させている時に、他の前記X線照射手段の前記偏向手段に対して前記第2方向へ前記電子ビームを送出させる制御であって、前記k番目の前記X線照射手段を1からnまで順次変更していく制御となる前記制御信号を送信する制御手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に記載のX線CT装置は、同一の被検体に対する異なる照射野に向けてX線を照射するn個のX線照射手段と、前記X線照射手段からのX線の照射を制御する制御手段と、前記被検体を透過したX線を検出する前記X線照射手段と対になるX線検出器と、前記検出したX線に基づくデータに対し再構成処理を行って画像データを生成する画像生成手段と、を備え、前記X線照射手段は、電子ビームを出射する電子銃と、制御信号を受けて前記電子銃から出射された前記電子ビームを少なくとも第1方向及び第2方向の2方向へ切り替えて送出させる偏向手段と、一方向の前記電子ビームを受けたときは所定の照射野に向けてX線を照射する第1の面と、他の方向の前記電子ビームを受けたときは前記所定の照射野と異なる方向に向けてX線を照射する第2の面と、を有するターゲットと、を備え、前記制御手段は、前記n個のX線照射手段の前記偏向手段において、k(1≦k≦n)番目の前記X線照射手段の前記偏向手段に対して前記第1方向へ前記電子ビームを送出させている時に、他の前記X線照射手段の前記偏向手段に対して前記第2方向へ前記電子ビームを送出させる制御であって、前記k番目の前記X線照射手段を1からnまで順次変更していく制御となる前記制御信号を送信する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載のX線管装置によると、電子銃から出射された電子ビームに対し、偏向手段に電圧を加えて該電子ビームの進路を切り換えることで、照射野へのX線の照射のオン/オフを電気的に切り替えることができる。これにより、応答性の素早いX線の照射のオン/オフを行うことにより、高速なX線のパルス状の照射を行うことが可能となる。
【0017】
請求項2及び請求項3に記載のX線管装置によると、照射野に向けてX線を照射するX線照射手段を素早く切り替えていくことができる。これにより、複数のX線照射手段から素早く交互にX線の照射を行うことが可能になる。
【0018】
請求項6に記載のX線CT装置によると、応答性の素早いX線照射手段のX線の照射のオン/オフを行うことで、複数のX線から交互にX線の照射を行ない、その照射されたX線を検出してX線CT画像を生成することができる。これにより、散乱線によるノイズを軽減したX線CT画像を生成することが可能となる。また、複数のX線照射手段により並行して画像を生成することができるため、高速な画像の生成や、同時に異なる組織を対象とした画像の生成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔第1の実施形態〕
以下、この発明の第1の実施形態に係るX線CT装置について図1〜図4を参照して説明する。図1は本実施形態に係るX線CT装置の機能を表すブロック図である。また、図2及び図3は、X線照射部100a及びX線照射部100bの内部構造の概略図である。さらに、図2はX線が照射野に向かうときの状態の図であり、図3はX線が照射野とは反対方向に向かうときの状態の図である。さらに、図4はX線検出器001a及びX線検出器001bの構成を表す概略図である。
【0020】
図1に示すように本実施形態に係るX線CT装置はX線照射部100a及びX線照射部100bという2つのX線照射部を有する。これら2つのX線照射部は同じ構成であるので以下では、それぞれのX線照射部を区別しない時は単に「X線照射部100」という。このX線照射部100が本発明における「X線照射手段」にあたる。このX線照射手段は一般的に「X線管球」とよばれることがある。さらに、本実施形態に係るX線CT装置はX線照射部100aと対になるX線検出器001a、及びX線照射部100bと対になるX線検出器001bという2つのX線検出器を有する。これら2つのX線検出器は同じ構成であるので以下では、それぞれのX線検出器を区別しない時には単に「X線検出器001」という。
【0021】
X線照射部100は、図2に示すように電子銃101、偏向用電極102、駆動部103、照射窓104、及びターゲット110、を有する。X線照射部100の内壁は銅で覆われている。これにより、X線照射部100の内壁に当たったX線は反射されずに吸収される。
【0022】
電子銃101は、インバータ、高圧トランス、及びフィラメントを有する。電子銃101は、フィラメントとターゲット110との間にインバータ及び高圧トランスで発生させた高電圧をかけ、フィラメントから飛び出した電子をターゲット110に衝突させることでX線を発生させる。電子銃101から発生し出射された電子ビームは図2の右側方向、すなわちターゲット110の第1表面111に向けて直進する。このとき、電子銃101から照射されるX線は偏向用電極102の間を通過する。
【0023】
偏向用電極102は、2枚の金属の板で構成されており、その2枚の金属の間を電子銃101から出射された電子ビームが通過するように配置されている。そして、偏向用電極102は、電圧が掛けられると、金属の板の一方が陽極に、他方が陰極になる。本実施形態では図2における上側が陽極、下側が陰極になる。以下では、偏向用電極102に電圧が掛けられている状態をオン、偏向用電極102に電圧がかかっていない状態をオフという。
【0024】
すなわち、偏向用電極102がオフのときには、電子銃101から出射された電子ビームは直進して第1表面111の方向に進み、偏向用電極102がオンのときには、電子銃101から出射された電子ビームは屈折して、第2表面112の方向へ進む。この様に偏向用電極102は、オン/オフにより電子銃101から出射された電子ビームを2つの方向に切り替えて送出する。この偏向用電極102が本発明における「偏向手段」にあたる。ここで、本実施形態では電極に電圧をかけて電場を発生することで電子ビームを偏向させているが、これは他の方法でもよく、例えばコイルを電子ビームの進行方向の横に配置し、該コイルに磁場をかけることで電子ビームを変更させるなどでもよい。
【0025】
このオン/オフは、偏向用電極102が後述する制御部002(図1参照)からの制御信号を受けることで行われる。オンになった偏向用電極102は、電極間を通過する電子ビームを陽極側に屈折させ、該電子ビームの進行方向を変更する。この進路を変更された電子ビームは、第2表面112の方向へ進む。本実施形態では、電子銃101からの電子ビームの進行方向が変更されることで、後述するターゲット110に電子ビームが当たる位置が図2における上下の方向に3mm移動する。ここで、本実施形態では、進行方向の変更に係る時間を短くするとともに、後述するターゲット110から照射されるX線の方向を大きく異ならせるためにターゲット110上での移動距離が3mmとなるように電子ビームの屈折角度を調整している。ただし、この屈折角度は小さければ小さいほどオンとオフの応答性がよくなるが、角度が大きいほど反射後の電子ビームの方向をコントロールしやすい。そこで、この屈折角度は、オン/オフの応答速度とターゲット110から照射されるX線の方向のコントロールしやすさを考慮して決定することが好ましい。ただし、オン/オフの応答速度があまりに遅い場合、後述する複数のX線照射部100によるパルス状のX線照射を用いた交互の曝射が困難となるため、ターゲット110上の移動距離は数ミリであることが好ましい。
【0026】
ターゲット110は「アノード」とも呼ばれ、銅やアルミなどで形成されている。ターゲット110は、図2に示すように円錐台状の上底面を凹ませた形状である。この円錐台状の形状が本発明における「円盤状」にあたる。さらに、ターゲット110における上底面の凹み部分は上底面の外周を頂上部として滑らかな斜面である第2表面112を有している。そして、ターゲット110の円錐台の外側面は上底面の外周を頂上部として滑らかな斜面である第1表面111を有している。この第1表面111が本発明における「第1の面」にあたる。また、第2表面112が本発明における「第2の面」にあたる。
【0027】
そして、ターゲット110は、電子銃101から電子ビームが出射される方向と、中心軸Aが平行になるように配置される。
【0028】
また、ターゲット110は、電子銃101から出射され直進してきた電子ビームが第1表面111に当たるように配置される。本実施形態では第1表面111の図2における下側の部分に当たり、図2に示すように第1表面111において発生するX線が図2おける下方向に照射するように配置される。そして、第1表面111で発生したX線は照射窓104に向かって進み、照射窓104を通過して被検体上の照射野に向かって照射される。
【0029】
また、ターゲット110は、電子銃101から出射され偏向用電極102によって屈折されてきた電子ビームが第2表面112に当たるように配置されている。すなわち本実施形態では第1表面111で電子ビームが当たる位置から、第2表面112に電子ビームが当たる位置まで3mmの距離となるように構成されている。そして、図3に示すように第2表面112から照射されるX線は第1表面111から照射されるX線が進む方向と略反対の方向に進む。また、第2表面112から照射されたX線はX線照射部100の中の構造物(例えば、電子銃101やターゲット110など)に当たらずにX線照射部100の内壁に到達する方向に進むよう第2表面112の角度が調整されている。
【0030】
さらに、ターゲット110は、中心軸Aを中心に回転する。この回転は、一か所に電子ビームが照射され続けると高熱によりターゲット110が溶解してしまうため、回転させて電子ビームが照射されるターゲット110の位置を変更させていき、ターゲット110の溶解を防ぐためのものである。
【0031】
駆動部103は、ターゲット110を、中心軸Aを中心として回転させる。この駆動部103が本発明における「駆動手段」にあたる。
【0032】
以上のように、第1表面111は進んできた電子ビームを受けて照射窓104の方向にX線を照射し、第2表面112は進んできた電子ビームを受けて照射窓104とは略反対方向で直接X線照射部100の内壁に当たる方向にX線を照射するように調整されている。これにより、偏向用電極102がオフのときは、電子銃101から出射された電子ビームが第1表面111にあたることでX線が発生し、該発生したX線が照射窓104を通過して照射野に照射される。また、偏向用電極102がオンのときは、電子銃101から照射された電子ビームが第2表面112にあたることでX線が発生し、該発生したX線がX線照射部100の内壁にあたり吸収される。したがって、偏向用電極102がオンのとき以外は、照射窓104から外へ向かうX線をほぼ遮断することができる。
【0033】
X線検出器001は、図4に示すように、シンチレータ401、フォトダイオード402、コンデンサ403、アース用スイッチ404、アンプ用スイッチ405、及びアンプ406を有している。
【0034】
シンチレータ401は、被検体を透過したX線を吸収して蛍光を発生する。フォトダイオード402は、シンチレータ401で発生した傾向を受信して電子に変換する。
【0035】
X線検出器001は、制御部002からの制御信号を受けて、アース用スイッチ404及びアンプ用スイッチ405のオン/オフを行う。
【0036】
アース用スイッチ404及びアンプ用スイッチ405がオフのときには、コンデンサ403はシンチレータ401で生成された電子を貯蔵する。アース用スイッチ404がオンでアンプ用スイッチ405がオフのときには、コンデンサ403に蓄えられた電気をアースに流す。アース用スイッチ404がオフでアンプ用スイッチ405がオンのときには、コンデンサ403に蓄えられた電気はアンプ406で増幅され、画像生成部003に出力される。このアース用スイッチ404及びアンプ用スイッチ405のオン/オフは制御部002により行われ、そのオン/オフのタイミングの詳細は後にまとめて説明する。
【0037】
制御部002は、X線照射部100a及びX線照射部100bにおける、電子銃101からの電子ビームの出射及び偏向用電極102のオン/オフ,並びにX線検出器001a及びX線検出器001bのX線の検出を制御する。この制御部002が本発明における「制御手段」にあたる。以下、それぞれの制御について図5を参照して詳細に説明する。ここで、図5は制御部002におけるタイミングパルスと偏向用電極102のオン/オフ及び各X線照射部100からのX線照射のオン/オフとの関係を表すタイミングチャートの図である。このタイミングチャートは横軸を時間に縦軸を電圧又はX線の照射量のレベルに採ったものである。図5(A)は制御部002におけるタイミング信号のグラフ、図5(B)はX線照射部100aの偏向用電極102の電圧を表したグラフ、図5(C)はX線照射部100aの照射野へのX線照射量を表したグラフ、図5(D)はX線照射部100bの偏向用電極102の電圧を表したグラフ、図5(E)はX線照射部100bの照射野へのX線照射量を表したグラフである。
【0038】
制御部002は、操作者から入力されたX線照射開始の命令を受信して電子銃101からの電子ビームの出射を開始させる。
【0039】
さらに、制御部002は、図5に示すタイミングパルス500を生成している。制御部002は、タイミングパルス500が7n+1回の立ち上がりの時にX線照射部100aの偏向用電極102をオフにする制御信号をX線照射部100aに送信する。さらに、制御部002は、タイミングパルス500が7n+5回の立ち上がりの時にX線照射部100aの偏向用電極102をオンにする制御信号をX線照射部100aに送信する。また、制御部002は、タイミングパルス500が7n+1の立下りの時にX線照射部100bの偏向用電極102をオンにする制御信号をX線照射部100bに送信する。さらに、制御部002は、タイミングパルス500が7n+4回の立下りの時にX線照射部100bの偏向用電極102をオンにする制御信号をX線照射部100bに送信する。
【0040】
制御部002からオンの制御信号を受信した偏向用電極102は電圧を電極間にかける。これにより、電子銃101から出射された電子ビームは屈折し第2表面112にあたってX線を発生し、該発生したX線はX線照射部100の内壁、すなわち照射野以外に当たる。この状態を以下では、「X線オフ」の状態という。波形510における区間512、及び波形530における区間531が偏向用電極102がオンになった状態の区間である。そして、偏向用電極102がオンになることで、X線オフの状態になる開始点が波形520上の点523、及び波形540上の点541である。このとき電子銃101から出射された電子ビームの進路が徐々に変わっていくために、波形520及び波形540の立下りのグラフは傾斜している。
【0041】
また、制御部002からオフの制御信号を受信した偏向用電極102は電極間にかけている電圧を停止させる。これにより、電子銃101から出射された電子ビームは直進し第1表面111にあたってX線を発生し、該発生したX線は照射窓104を通過して照射野に照射される。この状態を以下では、「X線オン」の状態という。波形510における区間511、及び波形530における区間532が偏向用電極102がオフになった状態の区間である。そして、偏向用電極102がオフになることで、X線オンの状態になる開始点が時刻t0で波形520上の点521、及び時刻t2で波形540上の点542である。このとき電子銃101から出射された電子ビームの進路は徐々に変わっていくために、波形520及び波形540の立ち上がりのグラフは傾斜している。そして、時刻tでの波形520上の点522、及び時刻tでの波形540上の点543で電子銃101から出射された電子ビームの進路の切り替えが終了し、X線は所定の照射野に向かって正確に照射される状態になる。
【0042】
以上のように制御することで、X線照射部100aの偏向用電極102がオフになり、X線照射部100aにおける電子銃101から出射された電子ビームの進行方向が第2表面112から第1表面111に向けて移動を時刻tで開始し(点521)、該移動が終了してX線照射部100aから照射されたX線が正確に照射野に照射されるようになるタイミング(点522)と、X線照射部100bの偏向用電極102がオンになり、X線照射部100aから照射されたX線が正確に照射野に照射される位置からずれ始めるタイミング(点541)とが、時刻tで一致する。同様に、X線照射部100bから照射されたX線が正確に照射野に照射されるようになるタイミング(点543)と、X線照射部100aの偏向用電極102がオンになり、X線照射部100aから照射されたX線が正確に照射野に照射される位置からずれ始めるタイミング(点523)とが、時刻tで一致する。これにより、被検体に連続してX線を照射することが可能となる。また、両方のX線照射部100からの同時照射を防止して、各X線照射部100から高速のパルス状のX線を極めて短い周期で交互に照射することができる。
【0043】
この、制御部002によるX線照射部100a及びX線照射部100bの偏向用電極102のオン/オフのタイミングは、それぞれの偏向用電極102がオフになっている時間が同一であり、さらに、一方の偏向用電極102がオンになるタイミングで他方の偏向用電極102による電子ビームの進行方向の切り替えが完了していれば、本実施形態以外でのタイミングでもよい。
【0044】
また、制御部002は、各X線照射部100からX線が正確に照射野に照射が行われるようになったタイミングで、X線検出器001へ、アース用スイッチ404及びアンプ用スイッチ405のオフの制御信号を送信する。これにより、コンデンサ403に電気のチャージが開始される。
【0045】
さらに、制御部002は、各X線照射部100からのX線が照射野からずれだすタイミングで、X線検出器001へ、アンプ用スイッチ405のオンの制御信号を送信する。これにより、コンデンサ403内に蓄えられた電気の読み出しが行われる。この読み出しは数十分の一秒単位といった瞬時に終了する。そのため、この読み出しを行っている間のノイズの影響は僅少であり無視できる。
【0046】
そして、制御部002は、コンデンサ403からの読み出しが終了したタイミングで、X線検出器001へ、アンプ用スイッチ405のオフの制御信号、及びアース用スイッチ404のオフの制御信号を送信する。これにより、この時点から次のX線照射部100からX線が正確に照射野に照射が行われるようになったタイミングまでの間にコンデンサ403に貯えられた電気はアースに流される、すなわちこの間に検出されたX線のデータは廃棄される。
【0047】
以上の制御部002によるX線検出器001の制御の流れを動きに沿って説明する。時刻t(点522)のタイミングで、X線検出器001aのコンデンサ403に電気のチャージが開始される。そして、時刻t(点523)のタイミングでX線検出器001aのコンデンサ403へのチャージが終了する。すなわち波形520における区間524の間にX線検出器001aのコンデンサ403へのチャージが行われる。また、X線検出器001aのコンデンサ403に電気のチャージが開始と同時に時刻t(点541)のタイミングで、X線検出器001bのコンデンサ403からの読み出しが開始され、読み出しが終了した後に送られてくるX線のデータの廃棄がなされる。そして、時刻t(点542)のタイミングで、X線検出器001bのコンデンサ403に電気のチャージが開始される。そして、波形540における区間544の間にX線検出器001bのコンデンサ403へのチャージが行われる。
【0048】
以上のように、X線照射部100の動作とX線検出器001の動作を同期させて制御することで、X線照射部100aからのX線のデータ及びX線照射部100bからのX線のデータを、ノイズを除去して極めて短い周期で交互に取得することができる。したがって、2つの異なるX線照射部100から被検体の異なる照射野に向けて照射されたX線データを同時に取得し、そのX線データを基に画像生成することが可能となる。
【0049】
画像生成部003は,X線検出器001a及びX線検出器001bから入力されたデータに対して、感度補正やX線強度補正などを施す。そして、画像生成部003は、前述の処理を施したデータを再構成し画像データを生成する。さらに、画像生成部003は、入力装置(不図示)にて入力された操作者の指示に従って、画像データに対して様々な画像処理を施す。例えば、画像生成部003は、ボリュームレンダリング処理やMPR処理などを施して3次元画像データやMPR画像データ(任意断面の画像データ)を生成して表示制御部004へ出力する。
【0050】
表示制御部004は、画像生成部003から入力された画像データに基づく画像を、液晶ディスプレイやCRTなどの表示部005に表示させる。
【0051】
次に、図6を参照して本実施形態に係るX線CT装置におけるX線の照射及び検出の流れを説明する。ここで、図6は本実施形態に係るX線CT装置におけるX線の照射及び検出の流れを表すフローチャートの図である。
【0052】
ステップS001:制御部002は、X線照射部100a及びX線照射部100bの双方の電子銃101からの電子ビームの出射を開始させる。
【0053】
ステップS002:制御部002は、自己が生成するタイミングパルスが7n+1(n=0,1,2・・・)の立ち上がりかを判断する。7n+1の立ち上がりであればステップS003に進む。7n+1の立ち上がりでなければステップS004に進む。
【0054】
ステップS003:X線照射部100aは、制御部002からの制御信号を受けて、偏向用電極102をオフにする。これにより、X線照射部100aはX線オンの状態になる。
【0055】
ステップS004:制御部002は、自己が生成するタイミングパルスが7n+1(n=0,1,2・・・)の立下りかを判断する。7n+1の立下りであればステップS005に進む。7n+1の立下りでなければステップS008に進む。
【0056】
ステップS005:X線照射部100bは、制御部002からの制御信号を受けて、偏向用電極102をオンにする。これにより、X線照射部100bはX線オフの状態になる。
【0057】
ステップS006:X線検出器001aは、制御部002からの制御信号を受けて、アース用スイッチ404を及びアンプ用スイッチ405をオフにする。これにより、X線検出器001aのコンデンサ403に電気がチャージされる。
【0058】
ステップS007:X線検出器001bは、アース用スイッチ404をオフにし、アンプ用スイッチ405をオフにする。これにより、X線検出器001bのコンデンサ403から読み出しが行われる。
【0059】
ステップS008:制御部002は、自己が生成するタイミングパルスが7n+4(n=0,1,2・・・)の立下りかを判断する。7n+4の立下りであればステップS009に進む。7n+4の立下りでなければステップS010に進む。
【0060】
ステップS009:X線照射部100bは、制御部002からの制御信号を受けて、偏向用電極102をオフにする。これにより、X線照射部100bはX線オンの状態になる。
【0061】
ステップS010:制御部002は、自己が生成するタイミングパルスが7n+5(n=0,1,2・・・)の立ち上がりかを判断する。7n+5の立ち上がりであればステップS011に進む。7n+5の立ち上がりでなければステップS014に進む。
【0062】
ステップS011:X線照射部100aは、制御部002からの制御信号を受けて、偏向用電極102をオンにする。これにより、X線照射部100aはX線オフの状態になる。
【0063】
ステップS012:X線検出器001bは、制御部002からの制御信号を受けて、アース用スイッチ404を及びアンプ用スイッチ405をオフにする。これにより、X線検出器001bのコンデンサ403に電気がチャージされる。
【0064】
ステップS013:X線検出器001aは、アース用スイッチ404をオフにし、アンプ用スイッチ405をオフにする。これにより、X線検出器001aのコンデンサ403から読み出しが行われる。
【0065】
ステップS014:制御部002は、X線検出器001aのコンデンサから読み出しが終了したかを確認する。終了している場合はステップS015に進む。終了していない場合はステップS016に進む。
【0066】
ステップS015:X線検出器001aは、制御部002からの制御信号を受けて、アース用スイッチ404をオンにし、アンプ用スイッチ405をオフにする。これにより、X線検出器001aで検出されるX線データは廃棄されることになる。
【0067】
ステップS016:制御部002は、X線検出器001bのコンデンサから読み出しが終了したかを確認する。終了している場合はステップS015に進む。終了していない場合はステップS016に進む。
【0068】
ステップS017:X線検出器001bは、制御部002からの制御信号を受けて、アース用スイッチ404をオンにし、アンプ用スイッチ405をオフにする。これにより、X線検出器001bで検出されるX線データは廃棄されることになる。
【0069】
ステップS018:制御部002は、X線の照射終了か否かを判断する。X線の照射終了の場合はステップS019に進む。X線の照射終了でない場合はステップS002に進む。
【0070】
ステップS018:制御部002は、X線照射部100a及びX線照射部100bの双方の電子銃101からの電子ビームの出射を停止させる。
【0071】
また、以上で説明した、2つのX線照射部及びその2つのX線照射部からのX線の照射を制御する制御部を有する装置が本発明におけるX線管装置にあたる。
【0072】
以上で説明したように、本実施形態に係るX線CT装置においては、2つのX線照射部から異なる照射野に向けて交互に極めて短い周期でパルス状のX線の照射を行い、そのX線の照射と同期させて該X線をそれぞれ別個に他方のX線の散乱線の影響なく検出することができる。これにより、散乱線の影響の少ない異なる2つの照射野におけるX線データを同時に取得することができ、その取得したX線データを基にノイズの少ない異なる2つの画像をほぼ同時に生成することが可能なる。したがって、本実施形態に係るX線CT装置は、同時に異なる組織を対象にしたノイズの少ないX線CT画像を生成することができ、また、1枚のX線CT画像を生成する時間を短縮することもでき、その場合の画像もノイズを軽減させた画像として生成することができる。
【0073】
また、本実施形態では、2つのX線照射部を有するX線CT装置で説明を行ったが、このX線照射部は2つ以上あってもよい。その場合、X線が照射野に照射されるX線照射部を順次変更していき他のX線照射部からはX線が外部に照射されないようにし、さらに、そのX線が照射野に照射されるX線照射部に対応するX線検出器のみでX線の検出を行うように制御する構成となる。
【0074】
〔第2の実施形態〕
以下、この発明の第2の実施形態に係るX線CT装置について説明する。本実施形態に係るX線CT装置は第1の実施形態に係るX線CT装置において、X線照射部の中の第1反射面と照射窓との間に、第1反射面で反射したX線以外の散乱線が照射窓に入り込まないように遮蔽部材を設けたものである。そこで、以下では該遮蔽部材について主に説明する。本実施形態に係るX線CT装置の機能構成も第1の実施形態と同様に図1のブロック図で表わされる。
【0075】
図7及び図8は、本実施形態に係るX線CT装置におけるX線照射部100の内部構造の概略図である。さらに、図7はX線が照射野に向かうときの状態の図であり、図8はX線が照射野とは反対方向に向かうときの状態の図である。
【0076】
図7及び図8に示すように、本実施形態に係るX線CT装置は、X線照射部100の内部に、電子銃101から出射された電子ビームが第1表面111にあたって発生したX線が照射窓104に向かう進路を覆うように遮蔽部材105が配置されている。遮蔽部材105は、鉛などのX線が透過しない金属で構成されている。
【0077】
偏向用電極102がオフの場合には、電子銃101で出射された電子ビームが第1表面111にあたりX線が発生する。そして、図7に示すように、第1表面111から照射されたX線は、遮蔽部材105で覆われた進路を進み、照射窓104を通過して照射野に照射される。このように、第1表面111から照射されたX線は照射野にさえぎられることなく照射窓104に進める。
【0078】
偏向用電極102がオンの場合には、電子銃101で出射された電子ビームが第2表面112にあたってX線が発生する。図8に示すように、第2表面112から照射されたX線は、X線照射部100の内壁に向かう。X線照射部100の内壁は銅などのX線を吸収する材質で形成されているため、内壁に当たったX線のほとんどはX線照射部100の内壁で吸収される。しかし、X線照射部100の内壁に当たったX線のうち少量は散乱線としてX線照射部100の内部で反射を繰り返す。そして、この散乱線は図8に示す矢印800の様に照射窓104に向けて進む場合もある。そのような場合、本実施形態に係るX線CT装置では、散乱線は遮蔽部材105にさえぎられることで遮蔽部材105の内部には侵入しない。したがって、散乱線が照射窓104を通過してX線照射部100の外部に漏れることが軽減できる。
【0079】
以上で説明したように、本実施形態にかかるX線CT装置では、偏向用電極102がオフの場合には、電子銃101から出射された電子ビームが第1表面111にあたることでX線が発生し、該発生したX線は照射窓104を通過して照射野に照射される。そして、偏向用電極102がオフの場合には、電子銃101から出射された電子ビームが第2表面112にあたることでX線が発生し、該発生したX線はX線照射部100の内壁で一部が反射し散乱線となるが、この散乱線を遮蔽部材105で反射させることでX線照射部100の外部に漏らさないようにする構成である。これにより、X線オンになっているX線照射部100から照射されたX線のみを対になるX線検出器001に検出させることができ、ノイズをより軽減した画像を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係るX線CT装置のブロック図
【図2】第1の実施形態に係るX線が照射野に向かうときの状態のX線照射部の内部構造の概略図
【図3】第1の実施形態に係るX線が照射野とは反対方向に向かうときの状態のX線照射部の内部構造の概略図
【図4】X線検出器の構成を表す概略図
【図5】制御部におけるタイミングパルスと偏向用電極のオン/オフ及び各X線照射部からのX線照射のオン/オフとの関係を表すタイミングチャートの図、(A)制御部002におけるタイミング信号のグラフ、(B)X線照射部100aの偏向用電極102の電圧を表したグラフ、(C)X線照射部100aの照射野へのX線照射量を表したグラフ、(D)X線照射部100bの偏向用電極102の電圧を表したグラフ、(E)X線照射部100bの照射野へのX線照射量を表したグラフ
【図6】第1の施形態に係るX線CT装置におけるX線の照射及び検出の流れを表すフローチャートの図
【図7】第2の実施形態に係るX線が照射野に向かうときの状態のX線照射部の内部構造の概略図
【図8】第2の実施形態に係るX線が照射野とは反対方向に向かうときの状態のX線照射部の内部構造の概略図
【符号の説明】
【0081】
001a、001b X線検出器
002 制御部
003 画像生成部
004 表示制御部
005 表示部
100a、100b X線照射部
101 電子銃
102 偏向用電極
103 駆動部
104 照射窓
110 ターゲット(アノード)
111 第1表面
112 第2表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを出射する電子銃と、
制御信号を受けて前記電子銃から出射された電子ビームを少なくとも2方向へ切り替えて送出させる偏向手段と、
一方向の前記電子ビームを受けたときは所定の照射野に向けてX線を照射する第1の面と、他の方向の前記電子ビームを受けたときは前記所定の照射野と異なる方向に向けてX線を照射する第2の面と、を有するターゲットと、
を備えることを特徴とするX線管装置。
【請求項2】
電子ビームを出射する電子銃と、制御信号を受けて前記電子銃から出射された電子ビームを少なくとも第1方向及び第2方向の2方向へ切り替えて送出させる偏向手段と、一方向の前記電子ビームを受けたときは所定の照射野に向けてX線を照射する第1の面と、他の方向の前記電子ビームを受けたときは前記所定の照射野と異なる方向に向けてX線を照射する第2の面と、を有するターゲットと、をそれぞれが備え、かつそれぞれ同一の被検体に対する異なる照射野に向けて照射可能に配置された第1X線照射手段及び第2X線照射手段と、
前記第1X線照射手段と前記第2X線照射手段の2つの前記偏向手段において、一方の前記偏向手段に対して前記第1方向へ前記電子ビームを照射させている時に、他の前記偏向手段に対して前記第2方向に前記電子ビームを照射させる前記制御信号を送信する制御手段と、
を備えることを特徴とするX線管装置。
【請求項3】
電子ビームを出射する電子銃と、制御信号を受けて前記電子銃から出射された電子ビームを少なくとも第1方向及び第2方向の2方向へ切り替えて送出させる偏向手段と、一方向の前記電子ビームを受けたときは所定の照射野に向けてX線を照射する第1の面と、他の方向の前記電子ビームを受けたときは前記所定の照射野と異なる方向に向けてX線を照射する第2の面と、を有するターゲットと、をそれぞれが備え、かつそれぞれ同一の被検体に対する異なる照射野に向けて照射可能に配置されたn(2≦n)個のX線照射手段と、
前記n個のX線照射手段の前記偏向手段において、k(1≦k≦n)番目の前記X線照射手段の前記偏向手段に対して前記第1方向へ前記電子ビームを送出させている時に、他の前記X線照射手段の前記偏向手段に対して前記第2方向へ前記電子ビームを送出させる制御であって、前記k番目の前記X線照射手段を1からnまで順次変更していく制御となる前記制御信号を送信する制御手段と、
を備えることを特徴とするX線管装置。
【請求項4】
前記ターゲットを回転させる駆動手段をさらに備え、
前記ターゲットは、
前記X線発生手段の対向する位置に配置され、中心軸で回転する円盤状で、X線管球側に上底面を向け、前記上底面の外周を頂上部とする前記中心軸とは反対側へ向けた第1の面を有し、かつ前記上底面部分が前記頂上部から前記中心軸側に向けた滑らかな傾斜面である第2の面を有して凹んでいる、
ことを特徴とする請求項1に記載のX線管装置。
【請求項5】
前記第1の面から照射されるX線の前記照射野に向かう進路に沿って配置され、前記第2の面から照射される前記X線の散乱線の前記照射野への侵入を抑制する遮蔽部材をさらに有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のX線管装置。
【請求項6】
同一の被検体に対する異なる照射野に向けてX線を照射するn個のX線照射手段と、
前記X線照射手段からのX線の照射を制御する制御手段と、
前記被検体を透過したX線を検出する前記X線照射手段と対になるX線検出器と、
前記検出したX線に基づくデータに対し再構成処理を行って画像データを生成する画像生成手段と、を備え、
前記X線照射手段は、
電子ビームを出射する電子銃と、制御信号を受けて前記電子銃から出射された前記電子ビームを少なくとも第1方向及び第2方向の2方向へ切り替えて送出させる偏向手段と、一方向の前記電子ビームを受けたときは所定の照射野に向けてX線を照射する第1の面と、他の方向の前記電子ビームを受けたときは前記所定の照射野と異なる方向に向けてX線を照射する第2の面と、を有するターゲットと、を備え、
前記制御手段は、
前記n個のX線照射手段の前記偏向手段において、k(1≦k≦n)番目の前記X線照射手段の前記偏向手段に対して前記第1方向へ前記電子ビームを送出させている時に、他の前記X線照射手段の前記偏向手段に対して前記第2方向へ前記電子ビームを送出させる制御であって、前記k番目の前記X線照射手段を1からnまで順次変更していく制御となる前記制御信号を送信する、
ことを特徴とするX線CT装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記X線照射手段が前記照射野にX線を照射している間にのみ前記対になるX線検出器がX線を検出するように制御することを特徴とする請求項6に記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−27340(P2010−27340A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186022(P2008−186022)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】