説明

X線透視検査装置

【課題】簡単な機構と制御で検査倍率を保ち、画像の明るさ変化の少ない透視角度可変のX線透視検査装置を提供する。
【解決手段】検査領域がX線のほぼ光軸上に位置すると共に、X線源と被検体テーブル13間距離を調整し、被検体21の検査倍率を設定するように、被検体テーブル13を平行移動させて位置設定するテーブル移動手段14と、X線の照射領域内において、X線検出器を被検体テーブルのテーブル面に対して傾斜した検出器移動方向に直線的に移動させて位置設定する検出器移動手段15と、固定したX線源に対してX線検出器を位置設定させるように検出器移動手段15を制御し、検査領域がX線のほぼ光軸上に位置するように被検体テーブルを位置設定させて検査領域のテーブル面法線から所定の傾斜角αで傾斜した方向の透過画像を検出させるようにテーブル移動手段14を制御させる機構制御手段16を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に対し、X線を透過させて被検体の内部を検査するX線透視検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品を実装した基板等の板状の被検体を検査するX線透視検査装置が利用されている。このような被検体を検査するX線透視検査装置では、基板等の被検体に対し、高倍率で、また、透視角度を変化させて透過画像を得られるようにした装置として、例えば、特許文献1あるいは特許文献2に記載された透視検査装置がある。
【0003】
図11は、特許文献1による従来のX線透視検査装置の概略構成図である。透過型のX線管101は、広角度のX線ビーム102を放射する。このX線ビーム102を二次元分解能のX線検出器103で検出して被検体105の透過画像を得る。さらに、X線ビーム102の範囲内で、X線検出器103を円弧状レール104上を摺動させることで、X線焦点Fを中心として回転させ、透視角度αを変更することができる。これにより、X線焦点と被検体105の距離FODを保ったまま透視角度を変えることができるので、被検体105を斜め方向から高倍率で観察することが可能となる。
【0004】
図12は、特許文献2による従来のX線透視検査装置の概略構成図である。このX線透視検査装置も図11に示すX線透視検査装置と同様に、X線管101が放射したX線ビーム102をX線検出器103で検出して被検体105の透過画像を得る。さらに、X線ビーム102の範囲内で、X線検出器103を水平方向の直線状レール107上を摺動させ、かつX線焦点Fに対向するよう首振り運動をさせ、透視角度αを変更する。これにより、X線焦点と被検体105の距離FODを保ったまま透視角度αを変えることができるので、被検体105を斜め方向から高倍率で観察することが可能となる。
【特許文献1】特開2003−222599号公報
【特許文献2】特開2001−153819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1記載のX線透視検査装置は、透視角度(傾斜角)αを大きくすると検査倍率が低下する問題がある。図11において、A点の検査倍率はFD/FAであるが、B点の検査倍率はFD’/FBで、cosαに比例して小さくなる。A点を視野に納めたまま、A点を同じ検査倍率で観察しようとすると、X線検出器の移動に同期して、被検体のA点をFを中心とする円弧上を追従させなければならず、被検体移動制御が複雑になる問題がある。また、X線検出器の移動についても、高価な円弧上レールを用いる必要があり、円弧に沿って移動させる機構も複雑化する問題がある。
【0006】
また、上述した特許文献2記載のX線透視検査装置は、透視角度αを大きくしても検査倍率が低下しない。図12において、A点の検査倍率はFD/FAで、B点の検査倍率はFD’/FBで、検査倍率は一定である。しかしながら、図12に示す特許文献2記載のX線透視検査装置では、αが大きくなるとX線検出器がX線管から遠くなるので透過画像が暗くなり、また、X線検出器の移動量が大きくなると装置が大型化する問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、簡単な機構と制御で検査倍率を保ち、画像の明るさ変化の少ない透視角度可変のX線透視検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を達成するため、請求項1記載の発明は、被検体テーブル上に載置された被検体にX線源からのX線を照射し、X線検出器によって、被検体の検査領域の透過画像を検出し、表示部に画像表示するX線透視検査装置であって、検査領域をX線のほぼ光軸上に位置すると共に、X線源と前記被検体テーブル間距離を調整して被検体の検査倍率を設定するように被検体テーブルを平行移動させて位置設定するテーブル移動手段と、X線の照射領域内において、X線検出器を被検体テーブルのテーブル面に対して傾斜した検出器移動方向に直線的に移動させて位置設定する検出器移動手段と、固定したX線源に対してX線検出器を位置設定するように検出器移動手段を制御し、検査領域がX線のほぼ光軸上に位置するように被検体テーブルを位置設定して検査領域のテーブル面法線から所定の傾斜角αで傾斜した方向の透過画像を検出するようにテーブル移動手段を制御する機構制御手段を有することを要旨とする。
【0009】
上記構成の本発明によれば、X線検出器を直線に沿って移動させるので、簡単な機構で被検体の透視角度(傾斜角α)を変更することができる。また、X線検出器の移動方向がテーブル面に対して傾斜した方向なので、装置が大型化することなく、また透視角度が大きい時の透過画像の明るさ低下の問題も少ない。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のX線透視検査装置において、機構制御手段は、被検体テーブルを検出器移動方向に位置設定するようにテーブル移動手段を制御することを要旨とする。
【0011】
上記構成の本発明によれば、X線検出器に直線移動させると共に、被検体テーブルに、検出器移動量に比例した簡単な直線移動をさせるだけで視野ずれがなく、検査倍率を保つことができ、任意の傾斜角αの透過画像を得ることができる。また、テーブル移動が直線でよいため、制御が容易になると共に追従精度を向上することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のX線透視検査装置において、被検体テーブルをテーブル面に沿って回転させて位置設定するテーブル回転手段を有し、X線検出器は、検査領域の任意の方位に傾斜した方向の透過画像を検出することを要旨とする。
【0013】
上記構成による本発明によれば、傾斜角αの傾斜方位を任意の方位に変更することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のX線透視検査装置において、テーブル移動手段は、検査領域を前記回転の回転軸上に平行移動させる移動と、回転軸上の検査領域を光軸上に移動させる移動とを可能とすることを要旨とする。
【0015】
上記構成による本発明によれば、被検体の任意の検査領域を回転軸上に合わせ、また、回転軸と一緒に検査領域を移動させて光軸上に合わせるので、任意の検査領域を視野に入れることができ、この検査領域は常に回転軸上および光軸上にあるので、これにより、テーブル回転手段により、いかなる傾斜角αにおいてもこの検査領域を中心に被検体を回転することが可能であり、検査領域が視野から外れることなく傾斜方位を変更することができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4記載のX線透視検査装置において、X線源とX線検出器とを固定し、テーブル移動手段に検査領域が回転軸と光軸の上に位置するよう被検体テーブルを位置設定して固定させた状態でテーブル回転手段に被検体テーブルを回転させてX線検出器に被検体の透過データを検出させるスキャン制御手段と、透過データを演算処理して、被検体の前記検査領域内の断層画像を形成する再構成手段とを有することを要旨とする。
【0017】
上記構成による本発明によれば、検査領域の傾斜角αを設定した後、被検体テーブルを回転させてこの検査領域の断層画像を得ることができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5いずれか1記載のX線透視検査装置において、X線検出器の移動に同期してX線検出器がX線源と対向するようにX線検出器を首振り運動させる首振り手段を有することを要旨とする。
【0019】
上記構成の本発明によれば、首振り手段により、移動時に常にX線検出器の検出面がX線源と対向するよう首振りするので、透過画像の歪が減少する効果がある。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6いずれか1記載のX線透視検査装置において、傾斜した方向の透過画像を表示部に画像表示する際、明るさが一定になるよう階調変換して表示させる階調変換手段を有することを特徴とする。
【0021】
上記構成の本発明によれば、傾斜角αを変化させたとき、X線の強度の方向依存性や、X線源とX線検出器間の距離が変化することによる透過画像の明るさ変化を補正して、一定に保つことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上、説明したように本発明によれば、簡単な機構および簡単な制御で検査倍率を保ち、画像の明るさ変化の少ない透視角度可変のX線透視検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を用いて本発明について説明する。
【0024】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るX線透視検査装置1の概念図である。図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るX線透視検査装置1は、X線管11、X線検出器12、被検体テーブル13、テーブル移動機構14、検出器移動機構15、機構制御部16および表示部17を有している。
【0025】
X線管11は、X線ビーム20を発生して、被検体21に照射させる。
X線検出器12は、X線管11のX線焦点Fから発生したX線ビーム20が被検体21を透過したX線を透過画像として2次元分解能で検出する。
【0026】
被検体テーブル13は、被検体21を載置する。また、テーブル面13aは、被検体テーブル13の被検体を載置する面である。
テーブル移動機構14は、被検体テーブル13をxt方向、yt方向、zt方向の直交3方向に平行移動(向きを変えずに移動)して位置を設定する。
【0027】
検出器移動機構15は、X線検出器12をテーブル面13aに対して傾斜(傾斜角β)した方向xdに移動させて位置を設定する。X線ビーム20内でX線検出器12を移動することで、傾斜角(透視角度)αを変えることができる。傾斜角αは、テーブル面13aの法線とX線光軸22(直線FD)のなす角度である。ここで、X線検出器12の移動方向xdの傾斜角βとして、例えば、30°程度が考えられる。この傾斜角βは30°には限られないが、通常、傾斜角αの最大αMAXの1/2程度あるいは1/2よりやや少ない角度である10°〜40°が望ましい。
【0028】
機構制御部16は、検出器移動機構15とテーブル移動機構14とを制御する。
表示部17は、X線検出器12で検出されたX線を透過データとした透過画像が表示される。
【0029】
次に、第1の実施の形態に係るX線透視検査装置1の作用を説明する。
図2は、第1の実施の形態に係るX線透視検査装置1の透過画像を得る際の設定の処理を説明するフローチャートである。
【0030】
まず、垂直透視を設定する(S11)。具体的に、操作者により機構制御部16に傾斜のリセット指示が入力されると、機構制御部16は、X線検出器12を移動させ、図1に示すように検出面12aの中心DがX線焦点Fの真下になるように設定する。この場合、X線検出器12で得られる被検体21の透過画像は、テーブル面13aに対する垂直方向からの透視となる。このような垂直方向からの透視を、垂直透視と称する。
【0031】
次に、ステップS11で検出面12aの中心DがX線焦点Fの真下になるように設定された状態で、被検体21の検査領域Aの位置を設定する(S12)。具体的に、操作者によりテーブル移動指令(xt方向およびyt方向の移動量の値)が機構制御部16に入力され、機構制御部16によってテーブル移動機構14が制御されて被検体テーブル13が移動することによって、被検体21の検査領域Aが光軸22(直線FD)上となるように設定される。テーブル移動指令は、表示部17に表示されるリアルタイム画像を観察しながら、操作者によって行われる。
【0032】
続いて、画像の拡大率(検査倍率M)を設定する(S13)。具体的に、操作者により(画像を観察しながら)、zt移動指令が機構制御部16に入力され、機構制御部16によってテーブル移動機構14が制御されて被検体テーブル13がzt方向に移動することによって、画像の拡大率(検査倍率M)が設定される。
【0033】
その後、機構制御部16で検査倍率Mが計算される(S14)。具体的に、操作者により、検査領域Aのテーブル面13aからの高さhが機構制御部16に入力されると、この高さhに基づいて機構制御部16は、検査倍率Mを計算する。検査倍率Mの計算には(式1)が用いられる。
【0034】
M=FD0/(FB0−h)・・・(1)
ここで、FD0はX線焦点Fから検出面12aの中心Dまでの距離(α=0°)であり、FB0はX線焦点Fから光軸22とテーブル面13aの交点Bまでの距離(α=0°)である。機構制御部16は、テーブル移動機構14および検出器移動機構15のエンコーダ出力から、D点と被検体テーブル13の現在位置が認識できる。従って、(式1)によって検査倍率Mを算出することができる。
【0035】
次に、X線検出器12を移動する(S15)。X線検出器12の移動は、傾斜角αを変化させる際に操作者によりX線検出器12の移動指令が機構制御部16に入力された場合に行なわれる。ここで機構制御部16に入力されるX線検出器12の移動指令は、xd方向の移動量Ldを含んでいる。したがって、機構制御部16によって、検出器移動機構15が制御されてX線検出器12を移動量Ldだけxd方向に移動させる。
【0036】
ステップS15でX線検出器12が移動されると、被検体テーブル13の移動量Ltを算出し(S16)、被検体テーブル13を算出した移動量Ltだけ移動させる(S17)。具体的にステップS16において機構制御部16は、ステップS15で利用した移動量LdおよびステップS14で算出した検査倍率Mを用いて(式2)により移動量Ltを算出する。
【0037】
Lt=Ld/M・・・(2)
被検体テーブル13の移動量Ltの移動は、テーブル移動機構14により、xt方向とzt方向の動きを合成してxd方向に移動させることにより行われる。xt方向とzt方向の合成は、xt方向にLt・cosβ動かし、zt方向にLt・sinβだけ動かせばよい。
【0038】
このように、検出器移動機構15によってX線検出器12をxd方向に移動量Ld移動させ、テーブル移動機構14により被検体テーブル13をxd方向にLt移動させることにより、あらゆる移動量Ldに対し、検査領域を光軸22上に保つことができ、また、検査倍率Mも一定に保つことができる。検査倍率Mが一定になることは、図1で三角形FAA’と三角形FDD’が相似になるため、あらゆるLdに対し、(式3)が成り立つことにより理解できる。
【0039】
FD’/FA’=FD/FA・・・(3)
上述した第1の実施の形態によれば、X線検出器に直線移動させると共に、被検体テーブルに検出器の移動量に比例した簡単な直線移動をさせることで、視野ずれすることなく、検査倍率を保つと共に、任意の傾斜角αの透過画像が得られる。すなわち、傾斜角αを変えても検査倍率が低下しない。また、検出器を一定速度で移動させるのと同期して、テーブル移動を直線、一定速度で移動させるだけで連続して視野ずれを補正でき、制御が容易になると共に追従精度を上げることができる。
【0040】
また、X線検出器を直線に沿って移動させるので機構が単純で安価である。
さらに、X線検出器の移動方向がテーブル面13aに対し傾斜した方向なので、装置が大型化することなく、また、αが大きい時の画像の明るさ低下も少ない利点がある。
【0041】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係るX線透視検査装置1aは、図1に示したX線透視検査装置1と比較して、テーブル回転機構18を追加した点で異なる。
図3は、本発明の第2の実施の形態に係るX線透視検査装置1aが図1に示した第1の実施の形態に係るX線透視検査装置1と異なる部分を説明する図である。図3に示すように、第2の実施の形態に係るX線透視検査装置1aは、図1に示したX線透視検査装置1と比較して、被検体テーブル13とテーブル移動機構14との間にテーブル回転機構18が配置されている点で異なる。
【0042】
テーブル回転機構18は、被検体テーブル13をテーブル面13aに沿って回転させる。この回転の動作は、他の動作と独立しているため、随時、同時に、また、連続的に行うことができる。
また、第2の実施の形態に係るX線透視検査装置1aのテーブル移動機構14は、被検体テーブル13をテーブル回転機構18による回転の回転軸23と共に平行移動させる。
なお、他の構成については、上述した第1の実施の形態に係るX線透視検査装置1と同一である為、説明を省略する。
【0043】
次に、第2の実施の形態に係るX線透視検査装置1aの作用を説明する。
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るX線透視検査装置1aの処理を説明するフローチャートである。また、図4に示すフローチャートにおいて、図2に示した点と同一の処理は同一のステップ番号を付している。
【0044】
まず、被検体21を被検体テーブル13に載置する(S21)。このとき、操作者によって、被検体21の検査領域Aの位置が回転軸23上にくるように載置される。ここで、操作者は、被検体テーブル13上の回転軸23を示す十字線等のマーク、あるいは、回転軸23に沿った投光や治具を用いて検査領域Aを回転軸23に合わせる。次に、操作者により傾斜のリセット指示が入力されると、機構制御部16は、傾斜角αを0°に設定し、さらに、回転軸23が光軸22に一致するように被検体テーブル13をxt方向に移動させる。ここで、機構制御部16によって移動された位置が基準位置である。なお、操作者による傾斜のリセット指示の入力と、被検体テーブル13の移動は、被検体21の載置の前に行なわれてもよい。
【0045】
続いて、画像の拡大率(検査倍率M)を設定する(S13)。具体的に、操作者により(画像を観察しながら)、zt移動指令が機構制御部16に入力され、被検体テーブル13がzt方向に移動されることによって、画像の拡大率(検査倍率M)が設定される。
【0046】
その後、検査倍率Mを計算する(S14)。ステップS14〜S17の処理については、第1の実施の形態で上述した図2の処理と同一である為説明を省略する。なお、第2の実施の形態のX線透視検査装置1aでは、ステップS17で被検体テーブル13を移動させるとき、機構制御部16は、回転軸23を被検体テーブル13と共に移動させる。これにより、検査領域(A点)は常に回転軸23上に保たれるので、テーブル回転機構18により、いかなる傾斜角αにおいても検査領域(A点)を中心に被検体を回転でき、検査領域(A点)が視野から外れることなく傾斜方位を変更することができる。
【0047】
上述した第2の実施の形態に係るX線透視検査装置によれば、第1の実施の形態に係るX線透視検査装置で得られる効果に加え、あらゆる傾斜角αにおいて、検査領域(A点)を中心に被検体を回転させることができ、検査領域(A点)が視野から外れることなく傾斜方位を変更することができる。
【0048】
[第3の実施の形態]
図5は、本発明の第3の実施の形態に係るX線透視検査装置3を示す概念図(正面図)である。第3の実施の形態に係るX線透視検査装置3は、X線管31、X線検出器32、被検体テーブル33、XY機構34、テーブル回転機構35、視野調整機構36、検出器移動機構37、直進フレーム38、表示部39、機構制御部40、X線制御部41を有している。
【0049】
X線管31は、透過型マイクロフォーカスX線管で、1μm程度の小さなX線焦点Fから広角度のX線ビーム51を発生する。
X線検出器32は、X線管31から発生して被検体52を透過したX線ビーム51を検出する。このX線検出器32は、検出面32aで2次元分解能でX線を検出するもので、X線I.I.(X線イメージインテンシファイア)とテレビカメラとを組み合わせたものや、FPD(フラットパネル型検出器)等を用いる。
被検体テーブル33は、被検体52が載置される。また、テーブル面33aは、被検体テーブル33の被検体52を載置する面である。
【0050】
検出器移動機構37は、X線検出器32を検出器傾動面53(紙面)内でテーブル面33aに対し傾斜(傾斜角β)したxd方向に移動させて位置設定する。X線検出器32は、検出器移動機構37により、xd方向に移動される直進フレーム38上に首振り可能に保持され、後述する首振り機構により、首振りされ、検出面32aが常にX線焦点Fを向くようにされる。検出器移動機構37は、直進フレーム38を摺動可能に直線状のレールで保持し、特許文献1に記載されるような、チェーン(あるいはベルト)で駆動するか、通常よく用いられるようにボールねじで駆動する。
検出器移動機構37は、X線ビーム51内でX線検出器32を移動させて、傾斜角αを変えるために使われる。傾斜角αは、テーブル面33aの法線とX線光軸55(X線焦点Fと検出面32aの中心Dを結ぶ直線FD)のなす角度である。
【0051】
テーブル回転機構35は、被検体テーブル33(及びXY機構34)をテーブル面33aに沿って回転させて、被検体52を回転位置決めする。ここで、テーブル回転機構35は、傾斜角(透視角度)αの傾斜方位を変更するのに使われる。この回転の動作は、他の動作と独立しているため、随時、同時に、また、連続的に行うことができる。
【0052】
XY機構34は、テーブル回転機構35の回転軸56に対して、被検体テーブル33を、テーブル面33aに沿ってX方向およびY方向の2方向に平行移動させて、被検体テーブル33上の被検体52の位置を設定する。ここで、XY機構34は、被検体52の所望の検査領域Aを回転軸56上に移動するために使われる。
【0053】
視野調整機構36は、被検体テーブル33(と、XY機構34及びテーブル回転機構35)を、回転軸56と共にテーブル面33aと直交する平面(検出器傾動面53(紙面))に沿ってxt方向およびzt方向の2方向に平行移動させて位置を設定する。ここで、視野調整機構36は、検査倍率の設定をするとともに、傾斜角αが変化したとき検査領域AがX線光軸55上からずれないようにする(視野ずれ補正)ために使われる。
以上で、XY機構34と視野調整機構36は、請求項のテーブル移動手段に相当する。
【0054】
表示部39は、X線検出器32で検出された透過画像を表示する。
機構制御部40は、XY機構34、テーブル回転機構35、視野調整機構36および検出器移動機構37を制御する。
X線制御部41は、X線管31を制御する。
【0055】
また、図5に示されていないが、第3の実施の形態に係るX線透視検査装置3は、X線管31、視野調整機構36および検出器移動機構37等を固定し、また、X線を遮蔽するための筐体等を構成要素とする。
【0056】
図6は、第3の実施の形態に係るX線透視検査装置3の検出器の首振り機構42を示す図であり、図6(a)は正面図、図6(b)はAA断面図である。首振り機構42は、シャフト421、ベアリング422、アーム423、ピン424を有している。また、アーム423は、溝423aを有している。
【0057】
シャフト421は、X線検出器32にその一端を固定されている。具体的に、シャフト421はシャフト軸421aが概略、検出面の中心Dを通るようにX線検出器32に固定される。
ベアリング422は、シャフト421を、シャフト軸421aが検出器傾動面53に直交し、直進フレーム38に対して回転可能に、直進フレーム38に保持する。
【0058】
アーム423は、シャフト421の他端に検出器傾動面53に沿って固定される。
ピン424は、アーム423に沿って摺動するようアームの溝423aに契合する。また、ピン424は、正面図(図5及び図6(a))で焦点Fの位置に略一致するよう図示してない装置の筐体に固定される。
【0059】
第3の実施の形態に係るX線透視検査装置3において、X線検出器32は、移動した時これに同期して、首振り機構42により、略D点を中心に、検出面32aが常にX線焦点Fの方向を向くように首振り運動をする。また、首振りの中心が略D点であるので、検出面中心Dの軌道54はxd方向の直線となる。
【0060】
次に、第3の実施の形態に係るX線透視検査装置3の作用を説明する。
図7は、本発明の第3の実施の形態に係るX線透視検査装置3の処理を説明するフローチャートである。
【0061】
まず、検査領域Aを設定する(S31)。具体的に、まず、操作者により傾斜のリセットが入力されると、機構制御部40は、X線検出器32を移動させ、図5に示すように、検出面32aの中心DをX線焦点Fの真下に設定(α=0°)し、垂直方向からの透視とする。このとき、機構制御部40は、視野調整機構36により、回転軸56をxt移動させ光軸55に一致させる(基準位置として記憶している)。この状態で、操作者が表示部39のリアルタイム画像を観察しながらテーブル移動指令(X方向の移動量,Y方向の移動量)を機構制御部40に入力することによって、XY機構34の移動により、被検体52の検査領域Aが光軸55上、すなわち回転軸56上に設定される。
【0062】
続いて、拡大率を設定する(S32)。具体的に、操作者によって、zt移動指令が入力され、被検体テーブル33がzt方向に移動することによって、拡大率が設定される。
【0063】
その後、検査倍率Mを計算する(S33)。具体的に、操作者により、検査領域Aのテーブル面33aからの高さhが機構制御部40に入力されると、機構制御部40は、検査倍率Mを計算する。検査倍率Mの計算には(式1)が用いられる。
【0064】
M=FD0/(FB0−h)・・・(1)
ここで、FD0はX線焦点Fから検出面32aの中心Dまでの距離(α=0°)であり、FB0はX線焦点Fから、光軸55とテーブル面33aの交点Bまでの距離(α=0°)である。機構制御部40は、テーブル回転機構35、視野調整機構36および検出器移動機構37のエンコーダ出力から、D点と被検体テーブル33の現在位置が認識できる。従って、(式1)によって検査倍率Mを算出することができる。
【0065】
次に、X線検出器32を移動する(S34)。検出器移動機構37によるX線検出器32の移動は、傾斜角αを変化させる際、操作者によりX線検出器32の移動指令が機構制御部40に入力された場合に行なわれる。ここで機構制御部40に入力されるX線検出器32の移動指令は、xd方向の移動量Ldを含んでいる。したがって、機構制御部40によって、検出器移動機構37が制御されてX線検出器32を移動量Ldだけxd方向に移動する。
【0066】
その後、被検体テーブル33の移動量Ltを算出し(S35)、被検体テーブル33を算出した移動量Ltだけ移動する(S36)。具体的にステップS35における移動量Ltの算出の処理において機構制御部40は、ステップS34で利用した移動量Ldおよび検査倍率Mを用いて(式2)により移動量Ltを算出する。
【0067】
Lt=Ld/M・・・(2)
被検体テーブル33の移動量Ltの移動は、視野調整機構36により、xt方向とzt方向の動きを合成されてxd方向に行われる。xt方向とzt方向の合成は、xt方向にLt・cosβ動かし、zt方向にLt・sinβだけ動かす合成である。
【0068】
このように、検出器移動機構37によってX線検出器32をxd方向に移動量Ld移動させ、視野調整機構36により被検体テーブル33をxd方向にLt移動させることにより、あらゆる移動量Ldに対し、検査領域を光軸55上に保つことができ、また、検査倍率Mも一定に保つことができる。検査倍率Mが一定になることは、図5で三角形FAA’と三角形FDD’が相似になるため、あらゆるLdに対し、(式3)が成り立つことにより理解できる。
【0069】
FD’/FA’=FD/FA・・・(3)
また、視野調整機構36は、被検体52と回転軸56とを共に移動させるので、検査領域Aは常に回転軸上にある。
【0070】
これにより、あらゆる移動量Ldに対し、検査領域Aが回転軸56上に保たれるので、テーブル回転機構35により、いかなる傾斜角αにおいても検査領域Aを中心に被検体を回転でき、検査領域Aが視野から外れることなく傾斜角(透視角度)αの傾斜方位を変更できる。
【0071】
上述した第3の実施の形態によれば、X線検出器に直線移動させると共に、被検体テーブルに、検出器移動量に比例した簡単な直線移動をさせるだけで視野ずれなく、検査倍率も保たれ、任意の傾斜角αの透過画像が得られる。すなわち、傾斜角αを変えても検査倍率が低下しない。また、検出器を一定速度で移動させるのと同期して、被検体テーブルを直線、一定速度移動させるだけで連続して視野ずれを補正でき、制御が容易になると共に追従精度を上げることができる。
【0072】
また、X線検出器を直線に沿って移動させるので機構が単純で安価である。
さらに、X線検出器の移動方向がテーブル面33aに対して傾斜した方向なので、装置が大型化することなく、傾斜角αが大きいときの画像の明るさ低下も少ない利点がある。
【0073】
また、被検体の任意の検査領域を回転軸上に合わせ、回転軸と一緒に検査領域を移動させて光軸上に合わせるので、任意の検査領域を視野に入れることができると共に、この検査領域は常に回転軸上及び光軸上にあるので、これによりテーブル回転機構により、いかなる傾斜角αにおいてもこの検査領域を中心に被検体を回転でき、検査領域が視野から外れることなく傾斜方位を変更できる。
さらに、X線検出器32に対して、首振り機構42があり、移動時に常に検出面32aがX線焦点Fと対向するよう首振りするので、画像の歪が減少する。
【0074】
[第4の実施の形態]
本発明の第4の実施の形態に係るX線透視検査装置3aは、図5に示したX線透視検査装置3と比較して、断層撮影の機能を追加した点で異なる。
図8は、本発明の第4の実施の形態に係るX線透視検査装置3aの構成を説明する図である。第4の実施の形態に係るX線透視検査装置3aは、図5に示した第3の実施の形態に係るX線透視検査装置3に加え、断層撮影の機能として、X線検出器32、機構制御部40およびX線制御部41に接続された断層撮影制御部60が追加される。したがって、図8に示す例では、断層撮影制御部60と、この断層撮影制御部60と接続されるX線検出器32、機構制御部40およびX線制御部41のみを示すが、第4の実施の形態に係るX線透視検査装置3aは、図5に示した各構成も備えている。
【0075】
断層撮影制御部60は、具体的に、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、各種インタフェース、ディスク、キーボード、マウス、プリンタ、ディスプレイ等を有し、通信回線を通じて外部と通信を行う通信機器を有する一般的なコンピュータである。断層撮影制御部60は、ソフトウェアの機能ブロックとしてスキャン制御部60aと再構成部60bを持つ。具体的には、このソフトウェアは、断層撮影制御部60のディスクに記憶されており、ディスクからメモリに読み込まれて起動されることで機能を発揮する。ソフトウェアとしてのスキャン制御部60aと再構成部60bは、CD等の記憶媒体に記憶することも、通信回線を利用して通信の対象とすることもできる。他方、スキャン制御部60aと再構成部60bは、ハードウェアで組んで実現することもできる。
【0076】
次に、第4の実施の形態に係るX線透視検査装置の作用を説明する。
図9は、本発明の第4の実施の形態に係るX線透視検査装置3aにおける断層撮影モードの処理を説明するフローチャートである。
【0077】
第4の実施の形態に係るX線透視検査装置3aは、透視モードと断層撮影モードを持つ。透視モードにおける作用は、上述した第3の実施の形態と同一である為、説明を省略する。断層撮影モードは、透視モードにおける処理から開始することができ、断層画像が得られると透視モードに戻る。透視モードにおいて、検査領域が所望の傾斜角αで斜め透視状態にあるとき、操作者が断層撮影の開始指令を断層撮影制御部60に入力すると、断層撮影制御部60は、断層撮影モードを開始する。
【0078】
断層撮影モードが開始されると、被検体テーブル33が回転開始する(S41)。具体的に、断層撮影モードが開始されると、スキャン制御部60aから機構制御部40に、一定回転速度の回転の制御指令が出力され、機構制御部40によりテーブル回転機構35が制御されて被検体テーブル33が連続回転を開始する。
ステップS42で、スキャン制御部60aは機構制御部40からの角度信号を待つ。角度信号は、テーブル回転機構35が発生するエンコーダパルスから作られ、例えば0.5°の、一定回転角ごとの信号である。
【0079】
角度信号の入力があると、スキャン制御部60aは、X線検出器32へ撮影指令を出力し、X線検出器32で検出された透過画像を取り込む(S43)。
【0080】
次に、ステップS44で、360°の撮影が終了したか否かを判定し、終了していない場合(ステップS44でNO)、ステップS42およびS43の処理を繰り返す。一方、360°の撮影が終了していた場合(S44でYES)、ステップS45で、回転している被検体テーブル33を回転開始時の位置に戻して停止させる。
【0081】
続いて、再構成部60bは、ステップS43で検出した360°方向からの透過画像から、被検体52の検査領域の断層画像を再構成する(S46)。
【0082】
このような傾斜した透過画像から断層画像を再構成する方法は、FeldkampのコーンビームCT再構成アルゴリズム(L.A. Feldkamp, L.C.Davis and J.W.Kress, Practical cone-beam algorithm, J.Opt.Soc.Am.A/Vol.1,No.6/June1984)等を用いて行う。
【0083】
図10を参照して、この断層画像を再構成する方法を簡単に説明する。まず、収集した多数の透過画像を対数変換して投影画像70とし、この投影画像70それぞれに空間フィルタ処理をする。空間フィルタ処理は、検出器傾動面53に沿った方向71にハイカット処理、直交方向72に高域強調処理(CTでいうRamachahandran & Lakshminarayanan フィルタ処理等)を行う。ここで、方向71へのハイカット処理は傾斜角αが大きいほどカットオフ周波数を大きくする。
【0084】
次にこれを、被検体52に固定したマトリックス73へ、X線焦点Fに向けて、三次元的に逆投影し、互いに積算することで断層画像を得る。
【0085】
逆投影は例えばM点のデータをP点に積算するように行われる。
【0086】
断層画像は1枚だけでなく、等間隔で並んだ多数枚を再構成して3次元画像を得ることもできる。通常、断層画像はテーブル面33aに沿った面で再構成するが、どの方向の面で再構成することも可能である。
【0087】
なお、断層画像の再構成の方法には、ART(Algebraic Reconstruction Technique)のような公知のアルゴリズムを用いてもよい。
【0088】
上述した第4の実施の形態によれば、上述した第3の実施の形態に記載の効果に加え、断層撮影モードの場合、透視モードで検査領域を位置設定し、傾斜角αを設定して、直ちにその検査領域の断層画像を得ることができる。
【0089】
また、再構成理論上は、傾斜角αが90°に近いほうが高品質となるが、被検体により、αが90°に近いとX線吸収が大きくなり画像劣化する。このため、傾斜角αの最適値は被検体により異なるが、第4の実施の形態によれば、透視画像を目視しながら吸収の度合いを確認して傾斜角αを最適に設定することができる。
【0090】
なお、X線透視検査装置の断層撮影モードの装置は、ラミノグラフ(または、ラミノグラフィ装置)と呼ばれるが、他の様々な名称も使用される。例えば、トモシンセンス装置、傾斜型CT、或いは単にCT、断層撮影装置等の名称も使用される。
【0091】
[第1の変形例]
上述した第1乃至第4の実施の形態によれば、検査倍率Mを固定して、視野ずれを起こさずに傾斜角αを変化させている。しかし、第1乃至第4の実施の形態において、逆に傾斜角αを固定し、視野ずれを起こさずに検査倍率Mを変化させることもできる。具体的には、被検体テーブル13のzt移動指令(検査倍率Mの変更指令)が入力されたとき、機構制御部16,40は、zt方向の移動量Δztだけ、移動先を求めるための始点であるA点およびFB0値を変更し、さらに、(式1)及び(式2)を用いて移動量Ltを再計算して移動先となる位置を求め、現在の位置から移動先となる位置まで被検体テーブル13,33を移動させればよい。計算結果として、このときの検査領域Aの動きは、傾斜角αによらずX線焦点Fに近づく動き、又は、遠ざかる動きとなる。
【0092】
また、第1乃至第4の実施の形態において、傾斜角αを固定して、視野ずれを起こさずに検査領域の高さhを変更することもできる。具体的には、高さhの変更入力があったとき、機構制御部16,40は、高さhの変化分だけ移動先を求めるための始点であるA点を変更し、さらに、(式1)及び(式2)を用いて移動量Ltを再計算して移動先となる位置を求め、現在の位置から移動先となる位置まで動かせばよい。結果として、このときの被検体テーブル13,33の動きは、高さhの変化分だけzt方向に移動する動きとなる。
【0093】
以上のように、Ld(傾斜角α)、zt(検査倍率)、h(検査領域の高さ)の変更は随時行うようにできる。
【0094】
[第2の変形例]
第1乃至第4の実施の形態において、移動量Ldの変更(傾斜角αの変更)、zt方向の移動(検査倍率Mの変更)、検査領域の高さhの変更は同時に行うこともできる。この場合は、zt方向、高さhの変化分から移動先を求めるための始点であるA点とFB0値を変更し、さらに、(式1)及び(式2)を用いて移動量Ltを再計算して移動先となる位置を求め、現在の位置から移動先となる位置まで動かせばよい。
【0095】
また、第1乃至第4の実施の形態において、移動量Ldの変更、zt方向の移動、高さhの連続的な変更に対し、逐次移動先を計算して移動させることで、検査領域Aを画像内(視野)に納めたまま、連続的に傾斜角α、検査倍率Mおよび検査領域の高さhを変更できる。
【0096】
[第3の変形例]
第1の実施の形態においては、被検体21内の検査領域Aを設定(変更)するためのxt方向、yt方向の移動の操作をα=0°の状態で行っているが、任意のαで行うことができる。
【0097】
また、第3及び第4の実施の形態においては、被検体52内の検査領域Aを設定(変更)するためのX方向、Y方向の移動の操作をα=0°の状態で行っているが、任意のαで行うことができる。
【0098】
[第4の変形例]
第1及び第2の実施の形態では、X線検出器12を平行移動(向きを変えずに移動)させている。しかし、第1及び第2の実施の形態において、X線検出器12に対して、首振り機構を追加して、移動時に常に検出面12aがX線焦点Fと対向するように、X線検出器12を首振りさせてもよい。これにより、画像の歪を減少させることができる。
【0099】
[第5の変形例]
第1乃至第4の実施の形態において、テーブル移動機構14のxt方向の移動軸をxd方向にとることができる。これによれば、傾斜角を変更するとき、被検体テーブルの移動がxt方向の1軸のみで済ませることができるとともに、追従精度を上げることができる。
【0100】
[その他の変形例]
本発明の第1乃至第4の実施の形態で、X線検出器で検出された透過データである透過画像は表示部に表示されるだけでなく、プリンタで印刷されたり、デジタルデータとして記録されたり、回線を通じて送信したりすることが可能である。
【0101】
本発明の第1乃至第4の実施の形態では、被検体テーブルの上方にX線管を配置しているが、下方にX線管を配置し、上方にX線検出器を配置してもよい。すなわち、上下を逆にしてもよい。また、X線透視検査装置の各構成は、どの方向に向けて設置してもよい。例えばテーブル面は水平、垂直、傾斜面でもよく、例えばxd方向を水平としてもよい。
【0102】
本発明の第1乃至第4の実施の形態で、X線焦点FとX線検出器との距離FD0を可変にする機能を追加してもよい。
【0103】
本発明の第1乃至第4の実施の形態では、傾斜角αを変化させたとき、透過画像の明るさは概略一定に保たれるが、厳密には多少変化する。これはX線ビームの強度に方向依存性があること、X線焦点とX線検出器間の距離が変化すること、また、被検体(および被検体テーブル)の透過長が変化すること等が原因である。そこで、X線検出器と表示部の間に明るさを変更する階調変換器等を設けると明るさを一定に保つことができる。この階調変換器は平均の明るさが一定になるように係数をきめて、画像にこの係数を掛けて明るさを調整する。これにより、より正確に明るさが保たれる。
【0104】
また、被検体の透過長による明るさ変化を調整しない場合は、被検体がない状態で各αに対し画像を収集して明るさ変化を求めて、この明るさの逆数を補正係数として記憶しておき、αごとにこの係数を掛けて明るさを調整する階調変換器を設けてもよい。
【0105】
本発明の第1乃至第4の実施の形態で検出器移動角度である傾斜角βを変更できる機構を追加してもよい。傾斜角αの最大値に合わせて検出器移動角度である傾斜角βを最適にすることができる。また、傾斜角αの大小に合わせて検出器移動角度である傾斜角βを変えることができる。
【0106】
本発明の第3及び第4の実施の形態で、検出器首振り機構は、他の機構でもよい。例えば、単にモータで回転するようにし、X線検出器の移動に同期してモータの回転量を制御するようにしてもよい。
【0107】
上記したように、本発明の実施の形態および変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るX線透視検査装置の概念図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るX線透視検査装置の処理を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るX線透視検査装置を説明する図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るX線透視検査装置の処理を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るX線透視検査装置の概念図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係るX線透視検査装置の検出器首振り機構を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るX線透視検査装置の処理を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係るX線透視検査装置を説明する図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係るX線透視検査装置の処理を説明するフローチャートである。
【図10】断層画像を再構成する方法を簡単に説明する図である。
【図11】従来のX線透視検査装置の概略構成図である。
【図12】従来のX線透視検査装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0109】
1…,1a,3,3a…X線透視検査装置
11,31…X線管
12,32…X線検出器
12a,32a…検出面
13,33…被検体テーブル
13a,33a…テーブル面
14…テーブル移動機構
15,37…検出器移動機構
16,40…機構制御部
17,39…表示部
18,35…テーブル回転機構
34…XY機構
36…視野調整機構
38…直進フレーム
41…X線制御部
42…首振り機構
421…シャフト
421a…シャフト軸
422…ベアリング
423…アーム
423a…溝
424…ピン
60…断層撮影制御部
60a…スキャン制御部
60b…再構成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体テーブル上に載置された被検体にX線源からのX線を照射し、X線検出器によって、前記被検体の検査領域の透過画像を検出し、表示部に画像表示するX線透視検査装置であって、
前記検査領域を前記X線のほぼ光軸上に位置すると共に、前記X線源と前記被検体テーブル間距離を調整して前記被検体の検査倍率を設定するように前記被検体テーブルを平行移動させて位置設定するテーブル移動手段と、
前記X線の照射領域内において、前記X線検出器を前記被検体テーブルのテーブル面に対して傾斜した検出器移動方向に直線的に移動させて位置設定する検出器移動手段と、
固定した前記X線源に対して前記X線検出器を位置設定するように前記検出器移動手段を制御し、前記検査領域が前記X線のほぼ光軸上に位置するように前記被検体テーブルを位置設定して前記検査領域のテーブル面法線から所定の傾斜角αで傾斜した方向の透過画像を検出するように前記テーブル移動手段を制御する機構制御手段を有することを特徴とするX線透視検査装置。
【請求項2】
請求項1記載のX線透視検査装置において、前記機構制御手段は、前記被検体テーブルを前記検出器移動方向に位置設定するように前記テーブル移動手段を制御することを特徴とするX線透視検査装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のX線透視検査装置において、
前記被検体テーブルを前記テーブル面に沿って回転させて位置設定するテーブル回転手段を有し、
前記X線検出器は、前記検査領域の任意の方位に傾斜した方向の透過画像を検出することを特徴とするX線透視検査装置。
【請求項4】
請求項3記載のX線透視検査装置において、
前記テーブル移動手段は、前記検査領域を前記回転の回転軸上に平行移動させる移動と、前記回転軸上の前記検査領域を前記光軸上に移動させる移動とを可能とすることを特徴とするX線透視検査装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載のX線透視検査装置において、
前記X線源と前記X線検出器とを固定し、
前記テーブル移動手段に前記検査領域が前記回転軸と前記光軸の上に位置するよう前記被検体テーブルを位置設定して固定させた状態で前記テーブル回転手段に前記被検体テーブルを回転させて前記X線検出器に前記被検体の透過データを検出させるスキャン制御手段と、
前記透過データを演算処理して、前記被検体の前記検査領域内の断層画像を形成する再構成手段とを有することを特徴とするX線透視検査装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1記載のX線透視検査装置において、
前記X線検出器の移動に同期して前記X線検出器が前記X線源と対向するように前記X線検出器を首振り運動させる首振り手段を有することを特徴とするX線透視検査装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1記載のX線透視検査装置において、
前記傾斜した方向の透過画像を前記表示部に画像表示する際、明るさが一定になるよう階調変換して表示させる階調変換手段を有することを特徴とするX線透視検査装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−163375(P2007−163375A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362168(P2005−362168)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】