説明

X線透視検査装置

【課題】被検体の目的位置を容易に透過画像の視野に入れることが可能なX線透視検査装置を提供する。
【解決手段】X線源1とX線検出器3の間に配置されたテーブル5面をxy方向に移動させる移動機構6と、テーブル5をX線源1とX線検出器3の方向に移動させる拡大率変更手段7と、所定の拡大率において複数の移動位置で得た透過画像から一つの合成透過画像を形成する画像合成手段11と、表示部9に表示された合成透過画像上で位置を指定する位置指定手段12と、指定された位置が透過画像に入るよう移動機構6を制御する移動制御手段13を備え、所定の最低拡大率で視野に入りきらない被検体4に対して全体を含む所望の範囲の合成透過画像を得、合成透過画像上で所望の位置を指定することで、容易にこの位置が視野に入る透過画像を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非破壊で被検体内を検査するX線透視検査装置に関し、特に電子部品が実装された基板にX線を照射してその内部を検査するX線透視検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品が実装された基板などの内部の状態を検査するX線透視検査装置は、X線を出射するX線管と、このX線管から出射されたX線を2次元の分解能で検出するX線検出器との間に電子部品が実装された基板である被検体を配置して、この被検体の透過画像を得るものである。
【0003】
このX線透視検査装置は、高分解能を得るためにX線の焦点が数μm程度のマイクロフォーカスX線管を用い、このX線焦点に被検体を近づけて狭い範囲の透過画像を十分な拡大率で撮影するようにしている。また、被検体をX線焦点から離し、拡大率を下げることで広い範囲の透過画像も得ることができるようにしている。
【特許文献1】特開平6−331571号公報
【特許文献2】特開2000−97881号公報
【特許文献3】特開2001−255286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のX線透視検査装置において、例えば基板にIC(半導体集積回路)を接合させるBGA(Ball Grid array:半田ボールの格子状配列)を検査する場合において、基板に多数個接合されたICの内、あらかじめ定めた目的とするICをX線透視検査装置のX線視野に順次収め、この収めたICを拡大撮影してBGAを目視検査し、BGAの中に疑われる半田ボールがあった場合、この半田ボールをさらに拡大して詳しく検査することを繰り返すが、視野を手動スイッチで移動させなければならないことや、1つのICから次のICへ、又1つの半田ボールから次の半田ボールへ移動するとき、一旦拡大率を下げる手動スイッチ操作を行う必要があるので操作が煩わしいという問題がある。
【0005】
すなわち、次のICに移動する場合、拡大率を一旦下げて視野を広げ、次の目的とするICを視野に入れてそのICへ移動させ、目的となるIC全体が収まる拡大率に再設定してこのICを検査する。また、次の半田ボールへ移動する場合も同様に、拡大率を一旦下げて次の半田ボールを視野に入れて、移動させ、再び拡大率を上げる、という操作を繰り返さなければならない。
【0006】
特に、通常、1枚の基板全体をひとつの透過画像に収めることができないため、ひとつの透過画像の範囲を超える移動は移動方向等の見当がつけ難く、ICを取り違えるという問題も生じていた。
【0007】
本発明は、被検体の目的位置を容易に透過画像の視野に入れることが可能なX線透視検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、X線源と、該X線源から発生し被検体を透過したX線を検出する2次元のX線検出器と、該X線検出器で得られた透過画像を表示する表示部を有するX線透視検査装置において、前記X線源と前記X線検出器の間に略平面状の被検体を位置決めしてその略平面に沿って被検体上の前記透過画像の視野を相対的に移動させる移動機構と、該X線源とX線検出器と被検体との間にX線の略透過方向の相対的移動を与え前記視野の大きさを変更する拡大率変更手段と、所定の拡大率において、複数の前記移動位置で得た透過画像から一つの合成透過画像を形成する画像合成手段と、前記表示部に表示された前記合成透過画像上で位置を指定する位置指定手段と、前記指定された位置が透過画像に入るよう前記移動機構を制御する移動制御手段とより成り、前記画像合成手段は前記合成透過画像に前記移動の履歴を重ねた前記合成透過画像を作成することを要旨とする。
【0009】
この構成により、所定の拡大率(最低拡大率)では視野に入りきらない被検体に対しても、全体を含む所望の範囲の合成透過画像が得られ、更にこの合成透過画像上の所望の位置を指定することで容易にこの位置が視野に入った(拡大)透過画像が得られる。また、指定を繰り返すことで、次々と所望の透過像が得られる。尚ここでX線源とは、X線ビームを出力するX線管のことであり、移動機構とはx、y機構を指す。また拡大率変更手段とは被検体をX線管に近づけたり遠ざけたりする移動が可能なz機構を指している。
【0010】
また、この構成により、合成透過画像に前記移動の履歴が重ねて表示させることができるので、検査の進行状態を良く把握することができ、更に記録として保存することもできる。
【0011】
請求項2の発明は、X線源と、該X線源から発生し被検体を透過したX線を検出する2次元のX線検出器と、該X線検出器で得られた透過画像を表示する表示部を有するX線透視検査装置において、前記X線源と前記X線検出器の間に略平面状の被検体を位置決めしてその略平面に沿って被検体上の前記透過画像の視野を相対的に移動させる移動機構と、該X線源とX線検出器と被検体との間にX線の略透過方向の相対的移動を与え前記視野の大きさを変更する拡大率変更手段と、格子図形を形成する画像合成手段と、前記表示部に表示された前記格子図形上で位置を指定する位置指定手段と、前記指定された位置が透過画像に入るよう前記移動機構を制御する移動制御手段とより成り、前記画像合成手段は前記格子図形に前記移動の履歴を重ねた前記格子図形を作成することを要旨とする。
【0012】
この構成により、(グラフ用紙のような)格子図形を表示させ、この上で位置指定を行なうことができるので、本装置においては合成透過画像用の撮影を省略することができる。
【0013】
上記目的を達成するため、請求項3記載の発明は、X線源と、該X線源から発生し被検体を透過したX線を検出する2次元のX線検出器と、該X線検出器で得られた透過画像を表示する表示部を有するX線透視検査装置において、前記X線源と前記X線検出器の間に略平面状の被検体を位置決めしてその略平面に沿って被検体上の前記透過画像の視野を相対的に移動させる移動機構と、該X線源とX線検出器と被検体との間にX線の略透過方向の相対的移動を与え前記視野の大きさを変更する拡大率変更手段と、前記被検体の図面あるいは写真を形成する画像合成手段と、前記表示部に表示された前記被検体の図面あるいは写真上で位置を指定する位置指定手段と、前記指定された位置が透過画像に入るよう前記移動機構を制御する移動制御手段とより成り、前記画像合成手段は前記被検体の図面あるいは写真に前記移動の履歴を重ねた前記被検体の図面あるいは写真を作成することを要旨とする。
【0014】
位置指定手段が処理できる形式の被検体の図面あるいは写真がある場合は、この構成により、被検体の図面あるいは写真を表示させ、この上で位置指定を行なうことができるので、合成透過画像用の撮影を省略することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被検体の目的位置を容易に透過画像の視野にいれることが可能なX線透視検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を適用した実施の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るX線透視検査装置の概略構成図である。図1に示すように、X線透視検査装置は、X線を放射するX線管1と、このX線管1に対向配置されるX線検出器3と、X線管1とX線検出器3の配置方向に対して垂直に配置される平面状のテーブル5と、このテーブル5を平面方向に移動させるxy機構6と、このテーブル5を平面方向に対して垂直な方向に移動させるz機構7と、これらxy機構6及びz機構7等を制御すると共に、X線検出器3で撮影された透過画像を処理するデータ処理部8と、データ処理部8で処理された画像を表示する表示部9とを少なくとも備えている。
【0018】
X線管1とX線検出器3は、それぞれフロアにより支持されており、X線焦点Fから発生したX線ビーム2が2次元分解能を有するX線検出器3で検出されるように配置されている。ここでX線管1には、数μmのX線焦点Fを備えたマイクロフォーカスX線管を用いる。またX線検出器3には、2次元分解能を有するX線I.Iとテレビカメラの組み合わせを用いるか、若しくはX線フラットパネルセンサを用いる。尚、X線検出器3で検出された透過画像はデータ処理部8に送られ、デジタル画像に変換された後に画像処理される。処理後の画像あるいは未処理のライブ画像(リアルタイム透過画像)は表示部9に表示される。
【0019】
被検体4(基板)は、テーブル5上に載置されており、X線ビーム2中に位置決めされる。この位置決めは、テーブル5に備えられているxy機構6及びz機構7により制御される。
【0020】
xy機構6は、テーブル5をテーブル面に沿って移動させ、被検体4を透過画像の視野14に対して移動させる機能を有している。
【0021】
z機構7は、テーブル5とxy機構6をX線ビーム2の放射方向(図1において上下方向に昇降する。)に移動させ、被検体4の撮影倍率(拡大率)を変更させる機能を有している。
【0022】
データ処理部8と表示部9は、通常の表示ディスプレイを含むコンピュータであり、CPU、メモリ、ディスク、インターフェース、キーボード、マウス等よりなると共に各種ソフトウエアを記憶している。
【0023】
操作者は、入力手段(図示せず)を介してデータ処理部8と表示部9に指令を出し、X線条件設定、X線のON/OFF、機構部手動操作、透過画像の観察、記録、画像処理などを行なう。具体的には、データ処理部8からの指令で機構制御部(図示せず)によりxy機構6とz機構7が制御され、同指令によりX線制御部(図示せず)によりX線管1の管電圧、管電流やX線ON/OFFが制御される。
【0024】
尚、データ処理部8はソフトウエアの機能ブロックとして、合成範囲入力部10、画像合成部11、位置指定部12、移動制御部13などを有している。
【0025】
次に、第1の実施の形態に係るX線透視検査装置の作用について説明する。
【0026】
透過画像撮影の一般的な作用としては、まず、テーブル5に被検体4を載せ、続いて、X線ビーム2の放射を開始し、被検体4を透過して投影された被検体4の透過画像をX線検出器3で検出し、これをデータ処理部8に送信する。データ処理部8では、検出された透過画像をデジタル画像に変換し、ライブ画像(リアルタイム透過画像)あるいは処理後の画像を表示部9に表示する。
【0027】
この透過画像の撮影において、1つの被検体に対して最初に被検体4の全体像を得るための「合成画像作成」を行い、続いてこの合成画像をもとに「移動と検査」を行い詳細な欠陥部の検査を行う。またX線透視検査装置を使用する前に、一度「較正」行なうことで「合成画像作成」時に用いる移動単位を求める。
【0028】
以下、「合成画像作成」、「移動と検査」及び「較正」の順に具体的な作用を説明する。尚、「合成画像作成」は、合成範囲入力部10と画像合成部11が行なう処理である。
【0029】
図2は、表示部9に表示される合成画像作成ウインドウの表示一例を示す図である。
【0030】
操作者は、入力手段を介してデータ処理部8に合成画像作成ウィンドウの表示命令を入力する。すると命令を受けたデータ処理部8は、表示部9に図2に示した合成画像作成ウィンドウを表示する。
【0031】
操作者は、表示された合成画像作成ウィンドウの入力指示に従い合成範囲を入力する。ここでウィンドウ内の「全エリア」を選択すると、テーブル5の全面が選択され、「指定エリア(サイズ)」を選択すると、縦サイズと横サイズが最低倍率(=最低拡大率)での視野の縦寸法と横寸法それぞれの整数倍で入力可能となる。縦寸法及び横寸法を入力するときは、入力表示部の三角印をマウス等を用いてクリックし、サイズ値(mm)を飛び飛びで変更させて決定する。これにより縦横の倍数n×mが決まる。
【0032】
次に、「開始」キーをクリックすると、この開始信号を受けた合成範囲入力部10は、z機構7に対して被検体4が最低倍率で撮影されるように被検体4とX線管1を最大限離すように指令を出し、自動的に被検体4が最低倍率で設定される。またこの設定が完了すると、X線管1からX線ビーム2が出力され、表示部9に被検体4のライブ画像が表示される。
【0033】
続いて操作者は、表示部9のライブ画像ウインドウに表示されているライブ画像を観察しながら視野14に被検体4の左上部分が丁度収まるようにxy方向に移動させながら始点設定を行なう。
【0034】
つまり、例えばキーボードの矢印キーを操作することで、この操作量に応じてテーブル5がxy移動しライブ画面上に移動状態が逐次表示されることを利用して、操作者が被検体4の左上部分がライブ画面に収まるように始点設定を行う。
【0035】
そして始点設定が終了すると「続行」キー(図示せず)をクリックして次画面へ進む。
【0036】
画像合成部11は、設定されたこの位置を始点(左上点)として、最低倍率での視野の縦寸法と横寸法を縦横それぞれの移動単位として規定し、n×mの行列をなす移動位置に順次移動を行ない、各位置で透過画像を撮影して、この撮影された各透過画像を間引き縮小して、縦横につなぎ合わせて合成透過画像を作成する。
【0037】
間引きの個数としては、nとmの大きい方を間引き数νとして、縦横ともν個に1個を残すように間引きすると元の画像を超えない最大の合成透過画像を作ることができるが、必ずしもこの通りにする必要はない。このようにして作成された合成透過画像は記憶用ディスク等に保存する。
【0038】
「移動と検査」の移動は、位置指定部12と移動制御部13が行なう処理である。
【0039】
図3は、表示部9に表示される合成画像ウインドウの表示一例を示す図である。
【0040】
図3に示すように、合成画像ウィンドウには合成透過画像20、「履歴表示/非表示」キー、「履歴クリア」キー及び「閉じる」キーが表示されている。
【0041】
操作者は、表示された合成画像ウィンドウ上で検査位置を入力する。具体的には、合成透過画像20上で(マウス等を操作して)カーソル21を移動させて、希望する位置を指定しダブルクリックする。これによりダブルクリックされた位置座標が移動制御部13に出力され、移動制御部13が、クリックされた位置座標をもとにxy機構6を制御して、指定された位置が視野14の中央に来るように移動させる。
【0042】
操作者は、このxy位置でz機構7を手動操作して拡大率を選び、ライブ画像ウィンドウに透過画像を表示させて検査を行なう。このとき合成画像ウィンドウとライブ画像ウィンドウは縮小して並列表示してもよいし、前後に重ねて必要な方を手前切替するようにしてもよい。尚、拡大率の変更、視野14の手動移動及びX線条件変更は別の手動操作ウィンドウあるいはキーボードあるいは別に設けた操作パネルから行うものとする。
【0043】
次に、合成画像ウィンドウに戻り、次に注目すべき位置を指定してダブルクリックする。すると、同じ拡大率のまま、指定の位置に画像が自動的に移動するので、ライブ画像ウィンドウに自動的にこの位置の透過画像が現れる。このように、合成透過画像20上で位置指定するだけで次々と検査することができる。
【0044】
合成透過画像20上には指定した位置の履歴と現在位置が、例えば+印や四角印で表示される。この履歴の表示は非表示に切替ることも可能であり、また履歴をクリアすることも可能である。尚、合成透過画像20は履歴も含めて記憶用ディスクに保存され、検査の記録としても用いることができる。
【0045】
「較正(キャリブレーション)」は、X線透視検査装置を使用する前に一度行っておく処理である。主にX線透視検査装置の製造時、又、X線光学に影響する修理・調整後や被検体4の厚みが変わったときなどに行なうが、定期的に行なってもよい。尚、「較正」はデータ処理部8中の較正部(図示せず)で行われる。
【0046】
この較正は、縦横それぞれの移動単位、すなわち最低倍率での視野の縦寸法と横寸法を求めて記憶する較正である。
【0047】
図4は、較正に用いる較正板の一例を示す図である。この較正板24は、プラスチック等の材質からなるベース板25の上に薄い銅板26,27を貼ったものである。この銅板26,27は直角二等辺三角形に切り抜かれたものであり、この三角形の銅板26,27の等しい2つの辺はベース板25の辺と約45°をなして接着されている。ベース板25の厚さは、テーブル5に載せたときに、銅板26,27の高さが被検体4の平均的な検査面高さと略同じになるような厚さにする。
【0048】
次に、この較正板24を用いた較正方法を説明する。
【0049】
まず、横方向の移動単位を求めるため、操作者は、較正板24をテーブル5に載せ、横方向較正ウィンドウを開く。
【0050】
図5は、表示部9に表示される横方向較正ウィンドウの表示一例を示す図である。図5に示すように、横方向較正ウィンドウには第1の画像28と第2の画像29、更に「開始」キー、「第1画像セット」キー、「第2画像セット」キー及び「閉じる」キーが表示されている。
【0051】
操作者は、表示されたウィンドウの「開始」キーをクリックする。すると、この開始信号を受けた画像処理部8は、z機構7に対して被検体4が最低倍率で撮影されるように較正板24とX線管1を最大限離すように指令を出し、これにより自動的に較正板24が最低倍率で設定される。この設定が完了すると、X線管1からX線ビーム2が出力され、第1の画像28に較正板24のライブ画像が表示される。
【0052】
次いで操作者は、第1の画像28(ライブ画像)を観察しながら較正板24の銅板(の像)27aの2辺が画面の右縁を横切るようにxy移動させ、「第1画像セット」キーをクリックする。すると第1の画像28が固定され、第2の画像29にライブ画像が表示される。
【0053】
つまり、「第1画像セット」キーをクリックすると、その瞬間に第1の画像28の更新が停止され、そのまま静止画像が第1の画像28に表示される。一方ライブ画像は、第2の画像29に移り、そのまま表示され続ける。
【0054】
次に操作者は、第2の画像29に表示されている銅板(の像)27bの2辺が第1の画像28とつながるようにxy移動させる。
【0055】
つまり、例えばキーボードの矢印キーを操作して、この操作量に応じて制御されるテーブル5をxy方向に移動させ、ライブ画面上に移動状態を確認しながら銅板27bの2辺が第1の画像28とつながるように調節を行う。
【0056】
図6は、第1の画像28に第2の画像29をつなぐためのxy移動方法を示す図である。まず、第1の画像28と第2の画像29に表示されている画像が図6(a)のようにずれている場合は、x方向のみ移動させ、次いで図6(b)のようにずれている場合はy方向のみ移動させて、図6(c)に示すように、画像の境界線で第1の画像28の銅板27aの輪郭と第2の画像29の銅板27bの輪郭とを一致させることで移動を完了する。
【0057】
この状態で「第2画像セット」キーをクリックする。これにより第2の画像29が固定されるとともに、第1の画像28と第2の画像29間の移動量が横方向移動単位として(式1)に基づいてデータ処理部8で計算され、結果がメモリに記憶される。
【0058】
横方向移動単位(ベクトル)=(x2−x1,y2−y1)……式(1)
ここでx1,y1とx2,y2は、それぞれ第1の画像28と第2の画像29の移動位置を示している。つまり画像の横方向は概略x方向に合わせてあるが、若干の誤差がある。式(1)のy成分はこの若干の誤差の補正に相当する。
【0059】
尚、縦方向の移動単位も同様に求められるが、容易に推察できるので記載は省略し、式のみ記載する。
【0060】
縦方向移動単位(ベクトル)=(x4−x3,y4−y3)……式(2)
ここで、第三画像の下隣を第四画像として、透過画像の境界を合わすものとし、それぞれの移動位置をx3,y3とx4,y4とする。
【0061】
従って、このような構成を有する本発明の第1の実施の形態に係るX線透視検査装置によれば、被検体4の目的位置を容易に透過画像の視野14に入れることが可能である。
【0062】
また「合成画像作成」では、指定エリアサイズ値(mm)の表示を飛び飛びで変更させて指定エリアを選択するので、容易に希望する範囲を超える縦横の倍数n×mを選択できる。
【0063】
更に始点位置も透過画像を確認しながら(例えば、希望する範囲の左上端が透過画像の左上端にくるように)設定することができるので、確実に希望する範囲が設定できる。
【0064】
また更に撮影は始点と縦横の倍数n,mが入力されて行われることで、画像合成は単純な間引き合成で作製されることから、データ処理部8で容易に画像合成を行なうことができる。
【0065】
また「移動と検査」において、最大視野を越える合成透過画像20で被検体の(希望する範囲の)全体像を見ることができ、この合成透過画像20上で位置指定するだけでこの位置まで容易に視野14を移動でき、更に詳細観察を行うことができる。
【0066】
また、移動先で拡大率を上げて観察を行っても合成透過画像20上で次の位置を指定するだけで同じ拡大率でその位置に移動することができる。
【0067】
更に、観察画像(ライブ画像)と合成透過画像20がそれぞれ別のウィンドウになっているので画像の切替や配置変更が容易である。
【0068】
また更に、合成透過画像20上に指定した位置の履歴と現在位置が表示されるので、どの位置を検査したのか一目でわかり、検査途中でも、検査済み位置と現在位置と次の検査位置が把握でき、検査のし忘れ位置や重複検査位置が生じにくくなる。
【0069】
また履歴を記録として残すことができるという利点がある。また更に履歴の表示と非表示を切替ることができるので、履歴が密になって合成透過画像20が見にくいときは非表示にできる。
【0070】
また、検査をやり直すときなど、履歴のクリアもできる。
【0071】
「較正」においては、境界が隣接する2画像の境界での透過画像がつながるように移動させることで移動単位を得ているので、つながりのよい合成透過画像20が作成できる。
【0072】
また、画像の縦横と機構のxy方向がずれていても移動単位を画像の縦横方向を基準に(x、yのベクトルとして)得ているので、移動を画像の縦横方向に合わせることができ、つながりのよい合成透過画像20が作成できる。
【0073】
また、機構のx方向とy方向が直交していなくても、同様に画像の縦横方向を基準に移動しているので、つながりのよい合成透過画像20が作成できる。
【0074】
また更に、2画像の境界で、境界線にそれぞれ略45°で交差し、互いに略直交する略直線の2つの模様がつながるように移動単位を求めているので、移動単位のxy方向精度が均質になり、xy方向とも精度よく求められ、これによりつながりのよい合成透過画像20が作成できる。
【0075】
(第1の実施の形態の変形)
第1の実施の形態は本発明の主旨にとって本質的でない多くの部分を含む。以下内容ごとに説明する。
【0076】
<動きの相対性>
拡大率変更は被検体4をX線ビーム2に沿った方向に移動させて行なっているが、これは本発明では本質的でなく、例えばX線管1やX線検出器3などを移動させて行なってもよい。また、視野14のxy移動も被検体4を移動させるかわりに、X線管1とX線検出器3にこれと等価な移動をさせてもよい。
【0077】
<合成範囲の入力形式>
合成範囲は始点をティーチング入力、縦横寸法を数値入力しているが、これは本質的でなく、始点も数値入力にしてもよいし、始点、終点ともティーチング入力にしてもよい。終点(右下点)をティーチング入力する場合、始点から所定移動単位で飛び飛びに移動させて終点を選択することになる。
【0078】
入力する合成範囲は1枚の視野サイズの縦横整数倍でなくてもよい。この場合、入力された合成範囲を包含するような整数倍の範囲を合成する。xy移動制御は、所定移動単位で縦と横に行列をなす移動位置に順次移動を行ない、各位置で透過画像を撮影しながら、縦と横それぞれ入力された合成範囲を超えたときに(その先の)移動を打ち切るようにして透過画像を撮影する。
【0079】
<合成範囲の自動設定>
被検体4全体が収まる範囲を自動検出して合成範囲とすることができる。このとき被検体4は長方形をしているものとする。そこで操作者は被検体4が確実に視野に入る位置に手動でxy方向移動させて、合成画像作成を開始させる。これにより画像合成部11はこの位置を起点に縦横それぞれ所定の移動単位の行列位置で画像撮影するが、まずは左方向へ進み、画像を撮影させ、この透過画像を処理することで被検体の縁を検出し、この位置を左限とする。そして起点に戻り、次いで右方向に進み、同様に右限を求める。同様にして、起点から上に進み上限を決め、更には下に進んで下限を決める。次に、各限で制限される行列位置の残り位置で透過画像を撮影し、各透過像を合成して合成透過像を作成する。被検体4の縁の検出は予め被検体4のない状態での画像を記憶しておき、これと撮影画像とを比較して、被検体4のない領域が存在するか否かを判定することで行なう。
【0080】
上述の合成範囲の自動設定では、合成用の透過画像を撮影しながら、その画像を用いて合成範囲を決定しているが、これに限らず、まず合成範囲の決定用の撮影を行ない、合成範囲を決定してからその範囲について合成用の透過画像の撮影を行なってもよい。
【0081】
また、合成範囲の自動設定は、被検体4が不定形の場合でも、例えば、縁を探しながら縁に沿って移動させる等の方法で行っても可能である。
【0082】
以上のことから合成範囲の自動設定により、合成範囲の入力を不要とすることができる。
【0083】
<画像合成>
合成画像作成は必ずしも最低倍率で行なう必要はない。つまり予め倍率を定めて、移動単位が較正されている拡大率ならば可能である。
【0084】
また合成画像作成には必ずしも撮影した1枚の透過画像の全面を用いる必要はなく、(画質が悪い)縁部分を捨てた切り貼り用の視野を用いてもよい。尚、この場合、本実施の形態でいう「最低倍率での視野の縦寸法と横寸法(縦横それぞれの移動単位)」は、この切り貼り用視野の寸法のことを指す。
【0085】
一方合成画像は間引き縮小させているが、加算平均で縮小させるようにしてもよい。
【0086】
また合成画像は間引き縮小させているが、間引きなしで縦横につなぎ合わせてもよい。この場合、ウィンドウ内に全部収まらなくなるが、スクロールさせて見るようにすることもできる。
【0087】
更に合成画像を作成した元画像を記憶しておけば、合成画像の部分拡大画像を画質を損なうことなく作成して表示することができる。また、この部分拡大画像上で位置指定することも可能である。
【0088】
また合成透過画像20の代わりに簡易的にグラフ用紙のような格子図形を用いることもできる。これにより撮影を省略することができる。またこれは被検体(基板)4に予め縦横の寸法線が入っているような場合に、有効に用いることができる。
【0089】
更にデータ処理装置8に入力できる形式の被検体4の設計図などがある場合、これを合成透過画像20の代わりに用いることができ、同様の効果をあげることができる。
【0090】
データ処理装置8に入力できる形式の被検体4の真上から撮影した写真があり、1画素あたりの寸法が既知であれば、これを合成透過画像20の代わりに用いることができ、同様の効果をあげることができる。
【0091】
<履歴>
履歴としては、指定位置だけでなく、指定位置へ移動後の手動操作による移動も(例えば軌跡として)履歴に含めることができる。大まかに位置指定で移動させ、細かくは手動操作で行なうような場合は履歴としては正確である。また、視野範囲の軌跡を面で半透明塗り潰し、あるいは着色するような履歴の残し方も可能である。
【0092】
<付加機能>
本実施の形態は色々な付加動作を与えることができる。例えば合成透過画像20上で位置指定するとき、拡大率も指定することができる。また四角形図形を用いて、位置と拡大率を同時に指定することもできる。この場合、この四角形が視野に収まるようにxy位置と拡大率が自動的に設定される。
【0093】
また、斜め透視機能を追加することもできる。例えば、X線ビーム2が被検体4の面に斜め入射になるようにX線検出器3(とX線管1)を傾斜させる機構と、傾斜方位を変更するための被検体を面内で回転させる回転機構を追加する。この場合、合成画像作成は傾斜と回転のない状態で行ない、検査時、傾斜・回転によって生じる指定位置からの視野ずれをすべて演算して補正するようにする。これにより合成透過画像上で位置指定するだけで、傾斜・回転を行なっていても、指定位置を視野に入れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るX線透視検査装置の概略構成図である。
【図2】合成画像作成ウインドウの表示一例を示す図である。
【図3】合成画像ウィンドウの表示一例を示す図である。
【図4】較正板の一例を示す図である。
【図5】横方向較正ウィンドウの表示一例を示す図である。
【図6】第1の画像に対して第2の画像をxy方向に移動して一致させる方法の具体的な図である。
【符号の説明】
【0095】
1 X線管
2 X線ビーム
3 X線検出器
4 被検体
5 テーブル
6 xy機構
7 z機構
8 データ処理部
9 表示部
10 合成範囲入力部
11 画像合成部
12 位置指定部
13 移動制御部
20 合成透過画像
21 カーソル
24 較正板
25 ベース板
26,27 銅板
28 第1の画像
29 第2の画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源と、該X線源から発生し被検体を透過したX線を検出する2次元のX線検出器と、該X線検出器で得られた透過画像を表示する表示部を有するX線透視検査装置において、
前記X線源と前記X線検出器の間に略平面状の被検体を位置決めしてその略平面に沿って被検体上の前記透過画像の視野を相対的に移動させる移動機構と、
該X線源とX線検出器と被検体との間にX線の略透過方向の相対的移動を与え前記視野の大きさを変更する拡大率変更手段と、
所定の拡大率において、複数の前記移動位置で得た透過画像から一つの合成透過画像を形成する画像合成手段と、
前記表示部に表示された前記合成透過画像上で位置を指定する位置指定手段と、
前記指定された位置が透過画像に入るよう前記移動機構を制御する移動制御手段とより成り、
前記画像合成手段は前記合成透過画像に前記移動の履歴を重ねた前記合成透過画像を作成することを特徴とするX線透視検査装置。
【請求項2】
X線源と、該X線源から発生し被検体を透過したX線を検出する2次元のX線検出器と、該X線検出器で得られた透過画像を表示する表示部を有するX線透視検査装置において、
前記X線源と前記X線検出器の間に略平面状の被検体を位置決めしてその略平面に沿って被検体上の前記透過画像の視野を相対的に移動させる移動機構と、
該X線源とX線検出器と被検体との間にX線の略透過方向の相対的移動を与え前記視野の大きさを変更する拡大率変更手段と、
格子図形を形成する画像合成手段と、
前記表示部に表示された前記格子図形上で位置を指定する位置指定手段と、
前記指定された位置が透過画像に入るよう前記移動機構を制御する移動制御手段とより成り、
前記画像合成手段は前記格子図形に前記移動の履歴を重ねた前記格子図形を作成することを特徴とするX線透視検査装置。
【請求項3】
X線源と、該X線源から発生し被検体を透過したX線を検出する2次元のX線検出器と、該X線検出器で得られた透過画像を表示する表示部を有するX線透視検査装置において、
前記X線源と前記X線検出器の間に略平面状の被検体を位置決めしてその略平面に沿って被検体上の前記透過画像の視野を相対的に移動させる移動機構と、
該X線源とX線検出器と被検体との間にX線の略透過方向の相対的移動を与え前記視野の大きさを変更する拡大率変更手段と、
前記被検体の図面あるいは写真を形成する画像合成手段と、
前記表示部に表示された前記被検体の図面あるいは写真上で位置を指定する位置指定手段と、
前記指定された位置が透過画像に入るよう前記移動機構を制御する移動制御手段とより成り、
前記画像合成手段は前記被検体の図面あるいは写真に前記移動の履歴を重ねた前記被検体の図面あるいは写真を作成することを特徴とするX線透視検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−32754(P2008−32754A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277639(P2007−277639)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【分割の表示】特願2002−329945(P2002−329945)の分割
【原出願日】平成14年11月13日(2002.11.13)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】