説明

Y−85および修飾LZ−210ゼオライト

ポリアルキル芳香族化合物をモノアルキル芳香族化合物、特にクメンおよびエチルベンゼンに変換するための、Y−85または修飾LZ−210ゼオライトを含む触媒が開示されている。クメンおよびエチルベンゼンの生産では、揮発性物質不含ベースで、ゼオライト80重量%およびアルミナ結合剤20重量%でできている開示された触媒は、以下の物理的特性:(1)X線回折(XRD)で測定して、好ましくは少なくとも50の、Y−85または修飾LZ−210ゼオライトの絶対強度、および(2)Y−85または修飾LZ−210ゼオライトのアルミニウムの好ましくは少なくとも60%の、Y−85または修飾LZ−210ゼオライトの骨格アルミニウムの、1つまたは複数を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリアルキル芳香族化合物、例えば、PIPBおよびPEBのクメンおよびエチルベンゼンへのアルキル交換における触媒として使用することができる、Y−85および修飾LZ−210ゼオライトが、その製造方法と共に本明細書に開示されている。
背景
以下の説明は、ポリイソプロピルベンゼン(PIPB)のベンゼンによるアルキル交換において、本明細書で開示されている触媒を使用して、クメンをもたらすことに具体的に言及するが、これはもっぱら説明の明確化および簡単化の目的で行われることを認識されたい。本出願のより広い範囲を強調するために多くの言及が本明細書になされる。
【0002】
クメンは、主要な商業製品であり、その主要な用途の1つは、空気酸化に続く、中間体ヒドロペルオキシドの酸触媒分解を介したフェノールおよびアセトンの供給源である。
汎用化学薬品としてフェノール、アセトンの双方が重要なために、クメンの調製がこれまで重視されており、文献にはその製造法が溢れている。クメンを調製する最も一般的で多分最も直接的な方法は、プロピレンによるベンゼンの、特に酸触媒を用いたアルキル化である。
【0003】
クメンを調製する他の一般的な方法は、ベンゼンのPIPB、特にジイソプロピルベンゼン(DIPB)およびトリイソプロピルベンゼン(TIPB)による、特に酸触媒を用いたアルキル交換である。商業的に実行可能な任意のアルキル交換法は、ポリアルキル化芳香族化合物の高変換率およびモノアルキル化生成物への高選択性という必要条件を満たさなければならない。
【0004】
ベンゼンとPIPBの反応のクメンを生じる支配的な配向は、プロピル基のマルコフニコフ付加に一致する。しかし、この反応の少量であるが非常に重要な量が、逆マルコフニコフ付加を介して起り、n−プロピルベンゼン(NPB)をもたらす。NPB形成の重要性は、これがクメンのフェノールおよびアセトンへの酸化を妨害することであり、そのため、酸化に使用されるクメンは、NPB含量に関して極めて純粋でなければならない。
【0005】
クメンおよびNPBは、従来の手段(例えば、蒸留)で分離することが困難であるので、PIPBによるベンゼンのアルキル交換を介するクメンの生成は、NPBの生成を最小量にして実施しなければならない。考慮に入れるべき1つの重大な要因は、このアルキル交換のために酸触媒を使用すると、温度の増加に伴ってNPB形成が増加することである。したがって、NPB形成を最小限に抑えるためには、このアルキル交換は、可能な限り低温で実施するべきである。
【0006】
DIPBおよびTIPBは、PIPBによるベンゼンのアルキル交換のための一般的供給原料であるだけでなく、クメンを形成する場合のプロピレンによるベンゼンのアルキル化の一般的な副生物でもあるので、アルキル交換は、より価値のない副生物の生成を最小限に抑え、さらなるクメンを生成するために、アルキル化と組み合わせて一般的に実施される。このような組合せ方法において、アルキル化およびアルキル交換の両方で製造されたクメンは、典型的には、単一生成物ストリーム中で回収される。NPBはアルキル化においても形成され、アルキル化でのNPBの形成量は、温度の増加に伴い増加するので、クメン生成物ストリームが相対的にNPBを含まないように、アルキル化およびアルキル交換の両方におけるNPBの生成を相互に対して管理しなければならない。
【0007】
必要なものは、許容されないNPBの形成を回避するのに十分低い温度において、許容される反応速度でアルキル交換に作用するのに十分な活性を有する、例えば、クメンまたはエチルベンゼンの生成のための最適なアルキル交換触媒である。Yゼオライトは、多くの他のゼオライトより実質的に大きい活性を示すことから、芳香族アルキル交換における触媒として厳密な調査を受けてきた。しかし、Yゼオライトは、NPBの形成を最小限に抑えるために望ましい低温で、許容できないほど低い速度でアルキル交換を起こすために、問題が存在する。
【0008】
したがって、Yゼオライトに基づく商業的方法を現実のものとするためには、触媒活性を増大させる、即ち、所与のより低い温度でクメンまたはエチルベンゼンの生成速度を増大させる必要がある。
開示の概要
前記の必要性を満たすために、0.2重量%未満の金属水素化成分を有する修飾Yゼオライトを含む触媒が開示されている。
【0009】
1つの修飾Yゼオライトは、ナトリウムYゼオライトを第1のアンモニウムイオン交換をすることによって調製されて、水不含ベースで、低ナトリウムYゼオライトの重量に対してNaO 3重量%未満のナトリウム含量を有し、第1の単位格子サイズを有する、ナトリウムカチオンを含む低ナトリウムYゼオライトを生じる。次に、この低ナトリウムYゼオライトを550℃(1022°F)〜850℃(1562°F)の範囲の温度で熱水的に水蒸気処理して、第1のバルクSi/Alモル比を有し、第1の単位格子サイズ未満の第2の単位格子サイズを有する、ナトリウムカチオンを含む水蒸気処理したYゼオライトを生成する。最後に、水蒸気処理したYゼオライトを、4未満のpH、好ましくは2〜4の範囲を有する、アンモニウムイオン水溶液の十分量と、水蒸気処理したYゼオライト中のナトリウムカチオンの少なくとも一部をアンモニウムイオンで交換するのに十分な時間接触させて、第1のバルクSi/Alモル比を超え、好ましくは6.5〜27の範囲の第2のバルクSi/Alモル比を有する修飾Yゼオライトを生成する。修飾Yゼオライトの単位格子サイズは、24.34〜24.58Åの範囲である。
【0010】
別の修飾Yゼオライトは、Y−74またはY−54ゼオライトなどの出発材料を、フルオロケイ酸塩水溶液で処理することによって調製されて、第1の単位格子サイズを有するLZ−210ゼオライトを生じる。その後、フルオロケイ酸塩処理試料を550℃(1022°F)〜850℃(1562°F)の範囲の温度で水蒸気処理にかけて、第1のバルクSi/Alモル比を有し、第1の単位格子サイズ未満の第2の単位格子サイズを有する、ナトリウムカチオンを含む水蒸気処理したLZ−210ゼオライトを生成する。最後に、水蒸気処理したLZ−210ゼオライトを、4未満のpHを有するアンモニウムイオン水溶液の十分量と、水蒸気処理したLZ−210ゼオライト中のナトリウムカチオンの少なくとも一部をアンモニウムイオンで交換するのに十分な時間接触させて、第1のバルクSi/Alモル比を超え、6.5〜20の範囲の第2のバルクSi/Alモル比を有する修飾LZ−210ゼオライトを生成する。修飾Yゼオライトの単位格子サイズは、24.34〜24.58Åの範囲である。次いで、酸抽出を実施して、余剰の骨格アルミニウムを除去することができる。Yゼオライトをフルオロケイ酸塩で処理する前、または後、あるいはその両方で、この触媒をアンモニウムイオン交換(複数可)にかけて、触媒のナトリウム含量を1重量%以下のNaO重量%に低下させ、同時に第1のバルクSi/A1モル比を維持してもよい。別の実施形態では、水蒸気処理ステップを経由することなく、フルオロケイ酸塩処理Yゼオライト(またはLZ−210ゼオライト)をより低いNaO含量までアンモニウム交換して、本開示に適した材料をさらに生成することができる。
【0011】
この開示された製造技術は、変化したSi/Al比および変化した単位格子サイズによって示されるように、余剰の骨格アルミニウム(およびルイス酸部位)の数および性質に影響を及ぼして、拡散特性を改良し、触媒活性を増大させ、NPBの形成を低下させる。
【0012】
1つの開示された触媒は、ゼオライトおよび結合剤を含み、(1)X線回折(XRD)で測定して少なくとも50の、修飾Yゼオライトの絶対強度、および(2)好ましくは少なくとも60%の、修飾Yゼオライトの骨格アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する。
【0013】
一例では、クメンの生産のための完成した触媒では、XRDで測定した場合の修飾Yゼオライトの絶対強度と、修飾Yゼオライト中のアルミニウムの骨格アルミニウム%との積が4200を超える。
【0014】
別の例では、エチルベンゼンの生産のための触媒では、XRDで測定した場合の修飾Yゼオライトの絶対強度と、修飾Yゼオライト中のアルミニウムの骨格アルミニウム%との積が4500を超える。
【0015】
本明細書に開示された方法のその他の実施形態は、詳細な説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】比較例1および5を対照とする、本開示の実施例2〜4および7により調製した触媒についての、温度(x軸、℃)に対するDIPB変換率(y軸、%)を示すグラフである。
【図2】比較例1および5を対照とする、本開示の実施例2〜4および7の触媒についての、DIPB変換率(x軸、%)に対する生成物中のNPB対クメンの比(y軸、重量ppm)を示すグラフである。
【図3】比較例1を対照とする、再生前(実施例7)および再生後(実施例9)の実施例3の触媒についての温度(x軸、℃)に対するDIPB変換率(y軸、%)を示すグラフである。
【図4】比較例1を対照とする、再生前(実施例7)および再生後(実施例9)の実施例3の触媒についてのDIPB変換率(x軸、%)に対する生成物中のNPB対クメンの比(y軸、重量ppm)を示すグラフである。
【図5】比較例1を対照とする、本開示の実施例2の触媒についての温度(x軸、℃)に対するDEB変換率(y軸、%)を示すグラフであって、これにより、開示された触媒は、プロピル以外のアルキル基でよく機能することを確証する。
【図6】比較例11を対照とする、本開示の実施例14〜16により調製した触媒についての温度(x軸、℃)に対するDIPB変換率(y軸、%)を示すグラフである。
【図7】比較例11を対照とする、本開示の実施例14〜16の触媒についてのDIPB変換率(x軸、%)に対する生成物中のNPB対クメンの比(y軸、重量ppm)を示すグラフである。
【図8】比較例11を対照とする、再生前および再生後(実施例9)の実施例14の触媒についての温度(x軸、℃)に対するDIPB変換率(y軸、%)を示すグラフである。
【図9】比較例11を対照とする、再生前および再生後(実施例19)の実施例14の触媒についてのDIPB変換率(x軸、%)に対する生成物中のNPB対クメンの比(y軸、重量ppm)を示すグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0017】
結晶性ゼオライト系モレキュラーシーブを含む改良された触媒を開示する。本明細書に開示された触媒に使用するためのモレキュラーシーブは、Y−85および修飾LZ−210ゼオライトなどのYゼオライトである。
【0018】
Y−85ゼオライト
まず、本開示のYゼオライトについて参照すると、US3,130,007(その全体を参照により本明細書に援用する)には、Y型ゼオライトが記載されている。本明細書に開示された触媒の調製に使用するのに適した修飾Yゼオライトは、Yゼオライトの骨格構造および組成物の有意の修飾をもたらす処理(通常、バルクSi/Alモル比の典型的には6.5を超える値への増加および/または単位格子サイズの減少)によってYゼオライトから一般に誘導される。しかし、Yゼオライト出発材料の本明細書に開示された方法で有用な修飾Yゼオライトへの変換において、得られた修飾Yゼオライトは、Yゼオライトに対する、‘007特許に記載された通りのまったく同じ粉末X線回折パターンを有さなくてもよいものと解釈される。この修飾Yゼオライトは、‘007特許のものと類似しているが、当業者であれば認識できるように、カチオン交換、焼成等のためにいくぶんかd−間隔シフトを伴う粉末X線回折パターンを有し得て、このことは、Yゼオライトを触媒的に活性で安定な形態に変換するために一般に必要である。
【0019】
本明細書に開示された修飾Yゼオライトは、24.34〜24.58Å、好ましくは24.36〜24.55Åの単位格子サイズを有する。この修飾Yゼオライトは、6.5〜23のバルクSi/Alモル比を有する。
【0020】
開示された触媒の修飾Yゼオライト成分の調製において、出発材料は、‘007特許に記載されたものなどのアルカリ金属(例えば、ナトリウム)の形態のYゼオライトであってもよい。アルカリ金属の形態のYゼオライトをアンモニウムイオン、または四級アンモニウムもしくはその他の窒素含有有機カチオンなどのアンモニウムイオン前駆体でイオン交換して、アルカリ金属含量を、アルカリ金属オキシド(例えば、NaO)として表して、乾燥ベースで、4重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2.5重量%未満に減少させる。本明細書で用いる場合、無水ベースまたは乾燥ベースによるゼオライトの重量とは、ゼオライトを900℃(1652°F)の温度におよそ2時間維持した後のゼオライトの重量を意味する。
【0021】
場合により、この出発ゼオライトはまた、希土類カチオンをREとしての希土類含量がゼオライト(無水ベースで)の0.1〜12.5重量%、好ましくは8.5〜12重量%を構成する程度まで含むか、または修飾手順のある段階においてイオン交換されて含んでもよい。希土類カチオンを導入するためのゼオライトのイオン交換容量が、開示された処理法の過程で低下することは、当業者には理解されよう。したがって、希土類カチオン交換が、例えば、調製法の最終ステップとして実施される場合、希土類カチオンの好ましい量ですら導入することは不可能であり得る。出発Yゼオライトの骨格Si/Al比は、3未満3〜6の範囲に入ることができるが、有利には4.8を超える。
【0022】
この最初のアンモニウムイオン交換を実施する方法は、決定的な要因ではなく、当技術分野で既知の手段によって実施してもよい。例えば、このような従来のアンモニウムイオン交換は、4を超えるpH値で実施される。15重量%硝酸アンモニウム水溶液による3段階の手順を、各段階で最初のゼオライトに対するアンモニウム塩の重量比が1であるような比率で使用することが有利である。このゼオライトおよびこの交換媒体の間の接触時間は、各段階について1時間であり、温度は85℃(185°F)である。このゼオライトを段階の間にゼオライト0.45kg(1ポンド)当たり水7.5l(2ガロン)で洗浄する。次に、交換したゼオライトを100℃(212°F)で乾燥させて、1000℃における強熱減量(LOI)を20重量%にする。希土類カチオンを使用する場合、ゼオライトのすでにアンモニウム交換した形態を希土類塩の水溶液と知られている方法で接触させることが好ましい。混合希土類クロライド塩をアンモニウム交換したYゼオライトの水性スラリーに85〜95℃の範囲の温度で添加して(ゼオライトの1g当たり0.386gRECl)、REとして一般に希土類8.5〜12重量%の範囲の希土類含量を有するゼオライト生成物を得る。
【0023】
アンモニウムイオン交換が完了した後、アンモニウム交換し、場合により希土類交換もしたYゼオライトの水蒸気処理を、少なくとも絶対圧13.79kPa(2psia)の水蒸気、好ましくは100%の水蒸気を含む水蒸気環境と、550〜850℃(1022〜1562°F)、または600〜750℃(1112〜1382°F)の温度で、単位格子サイズを24.60Å未満、好ましくは24.34〜24.58Åの範囲まで減少させるのに十分な時間接触させることによって実施する。100%の濃度の水蒸気および600〜725℃(1112〜1337°F)の範囲の温度を、1時間使用することができる。水蒸気処理ステップは、フルオロケイ酸塩処理材料で例示されるように、6.5以上のSi/Al比を有する出発Yゼオライトには必要ではないことに留意するべきである。なぜなら、より高いSi/Al比は、次の酸抽出処理、ならびに触媒調製および炭化水素変換の各プロセスに耐えるのに十分な安定性を付与するからである。
【0024】
低pHのアンモニウムイオン交換は、本明細書に開示された方法に使用される触媒の修飾Yゼオライト成分の調製の決定的な側面である。この交換は、イオン交換手順の少なくともある部分の間に、交換媒体のpHを4未満、好ましくは3未満に低下させること以外は、最初のアンモニウム交換の場合と同じように実施することができる。このpHの低下は、適当な無機酸または有機酸をアンモニウムイオン溶液に添加することによって容易に達成される。硝酸は、この目的にはとりわけ適している。好ましくは、不溶性アルミニウム塩を形成する酸は回避される。低pHアンモニウムイオン交換の実施において、交換媒体のpHとゼオライトに対する交換媒体の量の両方、およびゼオライトを交換媒体に接触させる時間が重要な要因である。この交換媒体が4未満のpHである限り、ゼオライト中でナトリウムカチオンが水素カチオンで交換され、さらに、少なくとも一部のアルミニウム(主に非骨格性および一部骨格性)が抽出されることが判明した。この方法の効率は、pHを丁度4未満にするのに必要なものより多くの酸を用いて、イオン交換媒体を酸性化することによって改良される。以下に説明するデータから明らかなように、交換媒体をより酸性にすると、ゼオライトから骨格および非骨格アルミニウムを抽出する傾向がより強くなる。この抽出手順は、6.5〜35のバルクSi/Al比を有するゼオライト生成物を生成するのに十分な程度まで実施する。他の実施形態では、バルクSi/Al比は、6.5〜23、より好ましくは6.5〜20である。
【0025】
本明細書に開示された方法の触媒に使用される全体的なシリカ対アルミナYが修飾されたYゼオライトを有する典型的なYゼオライトは、Y−85と称されるYゼオライトを含む。参照により本明細書に援用する、US5,013,699および5,207,892は、Y−85ゼオライトおよびその調製を説明しており、したがって、本明細書ではこれらを詳細に説明することは必要でない。
【0026】
図1〜5および以下の実施例に例示するように、開示された触媒は、触媒活性の増大、およびクメンの生産の場合、より少ないNPBの形成を提供する。ポリエチルベンゼンからエチルベンゼンの生産の場合(図5)、エチル基の内部異性化は重要ではなく、エチル基はプロピル基より少ないにもかかわらず、開示された触媒のその拡散特性は重要に思われる。
【0027】
開示された触媒は、金属水素化触媒成分を含んでいてもよいが、このような成分は必要条件ではない。この触媒の重量に対して、このような金属水素化触媒成分は、金属成分の個々の一酸化物として計算して、0.2重量%未満または0.1重量%未満の濃度で存在してもよく、またはこの触媒は、いずれの金属水素化触媒成分も欠いてもよい。存在する場合は、この金属水素化触媒成分は、酸化物、硫化物、ハロゲン化物等などの化合物として、または元素金属の状態で、最終触媒複合材料中に存在することができる。本明細書で用いる場合、「金属水素化触媒成分」という用語には、金属の様々な化合物の形態が含まれる。触媒的に活性な金属は、ゼオライト成分の内部吸着領域、即ち、細孔系中に、ゼオライト結晶の外部表面上に含まれるか、あるいは結合剤、希釈剤またはその他の成分(このようなものが使用される場合)に結合されているか担持されていることができる。この金属は、高度の分散状態がもたらされる任意の方法によって、全体的な組成物に付与し得る。適した方法の中には、含浸、吸着、カチオン交換、および激しい混合がある。この金属は、銅、銀、金、チタン、クロム、モリブデン、タングステン、レニウム、マンガン、亜鉛、バナジウム、またはIUPAC第8〜10族中の任意の元素、特に白金、パラジウム、ロジウム、コバルト、およびニッケルであることができる。金属の混合物を使用してもよい。
【0028】
この完成した触媒組成物は、有用な結合剤成分を10〜95重量%、好ましくは15〜50重量%の範囲の量で含んでいてもよい。この結合剤は、通常、無機酸化物またはその混合物である。アモルファスおよび結晶性の両方を使用することができる。適した結合剤の例には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、粘土、ジルコニア、シリカ−ジルコニアおよびシリカ−ボリアがある。アルミナは好ましい結合剤材料である。
【0029】
クメンの生産では、揮発性物質不含ベースで、ゼオライト80重量%およびアルミナ結合剤20重量%でできている完成した触媒は、以下の特性:(1)X線回折(XRD)で測定して、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも60の修飾Yゼオライトの絶対強度、および(2)修飾Yゼオライトのアルミニウムのうち、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%の修飾Yゼオライトの骨格アルミニウムの好ましくは一方、より好ましくは両方を有する。一例を挙げれば、クメンの生産のための完成した触媒では、XRDで測定した場合の修飾Yゼオライトの絶対強度と、修飾Yゼオライト中のアルミニウムの骨格アルミニウム%との積が4200を超える。エチルベンゼンの生産では、完成した触媒は、以下の特性:(1)X線回折(XRD)で測定して、好ましくは少なくとも65、より好ましくは少なくとも75の修飾Yゼオライトの絶対強度、および(2)修飾Yゼオライトのアルミニウムのうち、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%の、修飾Yゼオライトの骨格アルミニウムの好ましくは一方、より好ましくは両方を有する。一例を挙げれば、クメンの生産のための完成した触媒では、XRDで測定した場合の修飾Yゼオライトの絶対強度と、修飾Yゼオライト中のアルミニウムの骨格アルミニウム%との積が4500を超える。
【0030】
一実施形態では、本明細書に開示された方法は、実質的に無水である触媒を使用する。低pHのアンモニウムイオン交換の後、存在する水の実質的にすべてを除去する焼成ステップが、必ずしも行われるとは限らない。本明細書に記載の方法における触媒の性能は、水を除去することによって改良されることが判明した。高活性および低いNPBの形成を維持するために、このゼオライトがアルキル交換法に使用される前に、その含水量は比較的低くなければならないことが判明した。
【0031】
過剰な水は、活性部位の数を減少させ、該部位への拡散を制限する恐れがあるため、該部位は、アルキル交換を効率的に触媒しない。この問題に対処するために、触媒粒子に所望量の水を含有させるような該粒子の脱水を、芳香族基質またはアルキル交換性芳香族化合物を導入する前に、アルキル交換反応帯の温度を徐々に上げながら、該反応帯に導入し得る乾燥剤で、開始前に実施することもできる。この初期の加熱期間中、このゼオライトの含水量は、反応帯の温度におけるゼオライト、触媒、乾燥剤、反応帯中の含水量(もしあれば)の間の平衡によって決定される。この触媒のゼオライト部分は極めて親水性であり、水和のレベルは、乾燥剤が触媒上を通過する速度およびこの脱水ステップ中の温度を調整することによって制御される。この乾燥剤は、水を除去し、触媒に有害な影響を有さない、分子状窒素、空気、またはベンゼンなどの任意の薬品であってもよい。脱水ステップ中の温度は、25から500℃の間(77〜932°F)に維持される。この触媒の含水量は、強熱減量(LOI)を測定することによって計算され、これは通常、900℃(1652°F)で2時間加熱した後、重量減少を計算し、次いで、アンモニウムイオンのアンモニアへの分解に起因する重量減少量を減算することによって決定される。所望量を超える、即ち、触媒がプロセス開始中の任意の時間に含有すると見込まれる平衡水分量より多い水分を含む触媒は、開始中に一旦平衡が確立すると水を失うことになるので、脱水ステップを実施して触媒に平衡量以下の水分量を付与することは、望ましいこともあるが必要ではない。
【0032】
破壊強度およびアンモニウムイオン濃度などのこの触媒のいくつかの望ましい特性は、押し出した触媒粒子を焼成する時間および温度条件を制御することによって達成される。時には、より高温における焼成は、触媒中に必要とされる含水量を残存させ、別個の脱水ステップを実施することを不必要にする。したがって、本明細書で用いる場合の「脱水する」および「脱水」とは、焼成後の触媒に対する水を除去する独立のステップを意味するだけでなく、所望量の水を触媒粒子上に残存させるような条件下で実施される焼成ステップも包含する。
【0033】
上記の脱水手順は、開示された触媒を製造プラントで作製する実際の方法の一部である。しかし、この触媒を脱水するために、上記以外の手順を、この触媒を製造するときに製造プラント中で、あるいはまた他のときに製造プラントまたは他の場所で使用することができると理解される。例えば、この押し出した触媒粒子を、この触媒上に比較的高温で、水を少なく含むガス、例えば、乾燥分子状窒素または空気、あるいは乾燥芳香族基質(例えば、ベンゼン)または乾燥アルキル交換性芳香族化合物(例えば、DIPBもしくはTIPB)などの乾燥反応物をこの触媒が所望の含水量を含むまで通過させることによって、アルキル交換反応器中でin−situで脱水してもよい。in−situの脱水ステップにおいて、水を少なく含むガスまたは反応物は、典型的には、水を30重量ppm未満含み、接触は、25℃(77°F)〜500℃(932°F)の間の温度で行われる。一例を挙げれば、この触媒を250℃(482°F)の気相中の流動乾燥窒素と接触させる。この触媒を、例えば、130℃(266°F)〜260℃(500°F)、160℃(320°F)〜210℃(410°F)、180℃(356°F)〜200℃(392°F)、または150℃(302°F)〜180℃(356°F)の液相中の流動乾燥ベンゼンと接触させる。また、この触媒粒子を、所望の水量が脱着されるまで周囲のガスと接触するように、製造プラントあるいは他の場所で貯蔵してもよい。
【0034】
典型的には、アルキル交換反応器中に充填される触媒のLOIは、2〜4重量%の範囲である。この反応器に充填した後、好ましくは、アルキル交換反応を促進するために触媒を用いる前に、この触媒を脱水ステップにかけて、触媒の含水量を減少させてもよい。この触媒の窒素含量も好ましくは最小限に抑えられる。
【0035】
この開示された触媒は、アルキル交換性芳香族化合物のアルキル交換に有用である。本明細書に開示されたアルキル交換法は、供給原料として、芳香族基質と共にアルキル交換性炭化水素を好ましくは受け入れる。このアルキル交換法で有用なアルキル交換性炭化水素は、芳香族基質系分子を、芳香族基質の環構造の周囲にある1個または複数の水素原子を置換している1つまたは複数のアルキル化剤化合物と共に構成するものと特徴付けられる芳香族化合物からなる。
【0036】
このアルキル化剤化合物は、モノオレフィン、ジオレフィン、ポリオレフィン、アセチレン性炭化水素、およびまたアルキルハライド、アルコール、エーテル、エステルを含む多様な物質群から選択され、後者はアルキルスルフェート、アルキルホスフェートおよび様々なカルボン酸のエステルを含むことができる。好ましいオレフィン作用性化合物は、1分子当たり1つの二重結合を含むモノオレフィンを含むオレフィン系炭化水素である。この開示された方法においてオレフィン作用性化合物として使用することができるモノオレフィンは、通常、気体または通常、液体であり、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、ならびに高分子量の通常は液体のオレフィン、例えば、様々なペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、およびその混合物、ならびにさらにより高分子量の液体オレフィンが含まれ、後者には、プロピレン三量体、プロピレン四量体、プロピレン五量体等を含む、1分子当たり9〜18個の炭素原子を有する様々なオレフィンオリゴマーが含まれる。C〜C18ノルマルオレフィンを使用し得ると同様に、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセンなどのシクロオレフィンも利用し得るが、必ずしも同等の結果は得られない。このモノオレフィンは、少なくとも2個および14個以下の炭素原子を含むことが好ましい。より特に、モノオレフィンがプロピレンであることが好ましい。このアルキル化剤化合物は、好ましくはC〜C14脂肪族炭化水素であり、より好ましくはプロピレンである。
【0037】
このアルキル交換法への供給原料の一部として有用な芳香族基質は、ベンゼンおよび構造
【0038】
【化1】

【0039】
[式中、Rは、1〜14個の炭素原子を含む炭化水素であり、nは、1〜5の整数である]
を有する単環式アルキル置換ベンゼンを個別におよび混合して含む芳香族化合物の群から選択してもよい。言い換えれば、この供給原料の芳香族基質部分は、ベンゼン、1個〜5個のアルキル置換基を含むベンゼンおよびその混合物であってもよい。このような供給原料化合物の非限定的な例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)、クメン、n−プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、およびその混合物が含まれる。この芳香族基質がベンゼンであることが特に好ましい。
【0040】
この開示されたアルキル交換法は、いくつかの目的を有し得る。1つには、このアルキル交換反応帯の触媒は、ポリアルキル化芳香族化合物の環構造から、1つを超えるアルキル化剤化合物を取り外して、予めアルキル化されていなかった芳香族基質分子へアルキル化剤化合物を移動させ、それによって、この方法で生成される所望の芳香族化合物の量を増加させるために使用される。関連の目的では、このアルキル交換反応帯で実施される反応は、置換された芳香族化合物からすべてのアルキル化剤成分の除去を含み、そうすることで、芳香族基質をベンゼンに変換する。
【0041】
この供給原料混合物は、この反応帯に移動するアルキル交換性芳香族化合物および芳香族基質の重量に対して好ましくは20重量ppm未満、より好ましくは10重量ppm未満、さらに好ましくは2重量ppm未満の、混合供給原料中の水および酸素含有化合物濃度を有する。この供給原料混合物中のこのような低濃度を達成する方法は、本明細書に開示された方法にとっては決定的ではない。通常、アルキル交換性芳香族化合物を含む1つのストリームおよび芳香族基質を含む別のストリームが提供され、各ストリームは、個々のストリームを混合することによって形成される供給原料混合物が所望の濃度を有するような、水および酸素含有化合物前駆体の濃度を有する。水および酸素含有化合物は、乾燥、吸着、またはストリッピングなどの従来の方法によって、個々のストリームまたは供給原料混合物のいずれかから除去することができる。酸素含有化合物は、この供給原料混合物中の炭化水素の分子量または沸点の範囲内の分子量または沸点を有する、任意のアルコール、アルデヒド、エポキシド、ケトン、フェノールまたはエーテルであってもよい。
【0042】
ポリアルキル芳香族化合物を芳香族基質とアルキル交換するために、芳香族基質およびポリアルキル化芳香族化合物を1:1〜50:1、好ましくは1:1〜10:1の範囲のモル比で含む供給原料混合物を、60〜390℃(140〜734°F)、特に70〜200℃(158から392°F)の温度を含むアルキル交換条件で、開示された触媒を含むアルキル交換反応帯中に継続的にまたは断続的に導入する。本明細書で使用するのに適した圧力は、好ましくは、1気圧(101.3kPa(a))であるが、130気圧(13169kPa(a))を超えるべきではない。特に望ましい圧力の範囲は、10〜40気圧(1013〜4052kPa(a))である。ポリアルキル芳香族化合物供給速度および触媒の乾燥ベースでの総重量に基づき、0.1〜50時間−1、特に0.5〜5時間−1の重量毎時空間速度(WHSV)が望ましい。本明細書に開示された方法は、気相中で実施してもよいが、このアルキル交換反応帯で使用される温度および圧力の組合せは、このアルキル交換反応が実質的には液相で実施されるものであることが好ましいことに留意するべきである。モノアルキル芳香族化合物を製造するための液相アルキル交換法において、この触媒は継続的に反応物で洗浄され、これによって触媒上のコークス前駆体の蓄積を防止する。これは、前記触媒上の炭素形成量の減少をもたらし、この場合、触媒のサイクル寿命が、コークス形成および触媒の失活が大きな問題である気相アルキル交換法に比較して延長される。さらに、モノアルキル芳香族化合物の生産、特にクメンの生産への選択性が、本明細書の接触的液相アルキル交換反応では、接触的気相アルキル交換反応に比較してより高い。
【0043】
本明細書に開示された方法のためのアルキル交換条件には、通常、1:1〜25:1のアルキル基当たりの芳香環基のモル比が含まれる。このモル比は、1:1未満であってもよく、このモル比は0.75:1以下であってもよいものと考えられる。好ましくは、アルキルプロピル基当たり(または、クメンの生産ではプロピル基当たり)の芳香環基のモル比は、6:1未満である。
【0044】
アルキル交換条件において、この触媒粒子は、水をカール・フィッシャー滴定で測定して、典型的には4重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらにより好ましくは2重量%未満の量で含み、窒素を微量(CHN)(炭素−水素−窒素)分析で測定して、好ましくは0.05重量%未満の量で含む。
【0045】
周期律表の元素族への本明細書でのすべての言及は、CRC Handbook of Chemistry and Physics、ISBN 0−8493−0480−6、CRC Press、Boca Raton、Florida、U.S.A.、第80版、1999−2000と題する書籍の前表紙内側の元素周期律表についてのIUPAC「New Notation」の通りである。
【0046】
本明細書で用いる場合、アルキル基当たりの芳香環基のモル比は、以下の通り定義される。この比の分子は、規定された時間中に反応帯を通過する芳香環基のモル数である。芳香環基のモル数は、芳香環基がたまたま存在する化合物にかかわらず、すべての芳香環基の和である。例えば、クメンの生産において、ベンゼン1モル、クメン1モル、DIPB1モルおよびTIPB1モルはそれぞれ、芳香環基の和に芳香環基1モルを与える。エチルベンゼン(EB)の生産において、ベンゼン1モル、EB1モル、およびジエチルベンゼン(DEB)1モルはそれぞれ、芳香環基の和に芳香環基1モルを与える。この比の分母は、所望のモノアルキル化芳香族化合物上のアルキル基の炭素原子数と同じ炭素原子数を有するアルキル基のモル数であり、これは同じ規定された時間中に反応帯を通過する。アルキル基のモル数は、アルキルまたはアルケニル基がたまたま存在する化合物にかかわらず(ただし、パラフィンは含まれない)、所望のモノアルキル化芳香族上のアルキル基の炭素原子数と同じ炭素原子数を有するすべてのアルキルおよびアルケニル基の和である。したがって、プロピル基のモル数は、イソプロピル、n−プロピル、またはプロペニル基がたまたま存在する化合物にかかわらず(ただし、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタンなどのパラフィン、およびより高級なパラフィンは、プロピル基のモル数の計算から除外する)、すべてのイソプロピル、n−プロピル、およびプロペニル基の和である。例えば、プロピレン1モル、クメン1モル、およびNPB1モルはそれぞれ、プロピル基の和にプロピル基1モルを与え、一方、DIPB1モルはプロピル基2モルを与え、トリプロピルベンゼン1モルは、3個の基のイソプロピルおよびn−プロピル基の間の配分にかかわらず、プロピル基3モルを与える。エチレン1モルおよびEB1モルはそれぞれ、エチル基の和にエチル基1モルを与え、一方、DEB1モルはエチル基2モルを与え、トリエチルベンゼンはエチル基3モルを与える。エタンはゼロモルのエチル基を与える。
【0047】
本明細書で用いる場合、WHSVとは重量毎時空間速度を意味し、毎時重量流量を触媒重量で除算したものとして定義され、ここで、重量流量と触媒重量は同じ重量単位である。
【0048】
本明細書で用いる場合、DIPB変換率は、供給原料中のDIPBのモルと生成物中のDIPBのモルの差を、供給原料中のDIPBのモルで除算し、100を乗じたものとして定義される。
【0049】
表面積への本明細書でのすべての言及は、ASTM D4365−95、Standard Test Method for Determining Micropore Volume and Zeolite Area of a Catalyst、およびS.Brunauerらによる論文、J.Am.Chem.Soc.、60(2)、309〜319(1938)に記載された窒素吸着技術を用いたBET(Brunauer−Emmett−Teller)モデル法を用いて、0.03〜0.30の範囲の窒素分圧p/p0データポイントを用いて計算する。
【0050】
本明細書で言及するように、Yゼオライト材料の粉末X線回折(XRD)による絶対強度は、Yゼオライト材料の少数の選択されたXRDピーク強度の正規化された和を算出し、α−アルミナNBS 674a強度標準物質(これは、一次標準物質であり、米国商務省の機関、米国標準技術局(NIST)によって認証されている)の少数のXRDピーク強度の正規化された和によって除算することによって測定した。Yゼオライトの絶対強度は、この和の比率に100を乗じたものである:
絶対強度=(ゼオライト材料のピークの正規化された強度)×100/(α−アルミナ標準物質のピークの正規化された強度)
Yゼオライト材料およびα−アルミナ標準物質の走査パラメータを表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
本開示の目的では、非ゼオライト結合剤と混合して、乾燥ベースで、YゼオライトZ重量部と非ゼオライト結合剤(100−Z)重量部との混合物をもたらすYゼオライトの絶対強度は、式、A=C(100/Z)(式中、AはYゼオライトの絶対強度であり、Cは混合物の絶対強度である)を用いて、この混合物の絶対強度から計算することができる。例えば、YゼオライトをHNO解膠Pural SBアルミナと混合することにより、乾燥ベースで、ゼオライト80重量部とA1結合剤20重量部の混合物をもたらし、混合物の測定された絶対強度が60の場合、Yゼオライトの絶対強度は、(60)・(100/80)または75と計算される。
【0053】
本明細書で用いる場合、格子定数と称することもある、単位格子サイズは、プロファイルフィッティングを使用してフォージャサイトの(642)、(822)、(555)、(840)および(664)のピークならびにケイ素(111)のピークのXRDピーク位置を求めることにより、補正を行う方法を用いて計算した単位格子サイズを意味する。
【0054】
本明細書で用いる場合、ゼオライトのバルクSi/Alモル比は、このゼオライト中に存在するアルミニウムおよびケイ素(骨格および非骨格)の総計または全体的な量に基づいて決定されるアルミナに対するシリカ(A1に対するSiO)のモル比であり、全体的な、アルミナに対するシリカ(A1に対するSiO)のモル比として、本明細書で言及されることもある。このバルクSi/Alモル比は、通常存在するアルミニウムおよびケイ素のすべての形態を含む従来の化学的分析によって得られる。
【0055】
本明細書で用いる場合、骨格アルミニウムである、ゼオライトのアルミニウムの割合は、バルク組成物ならびにG.T.Kerr、A.W.Chester、およびD.H.Olson、Acta.Phys.Chem.、1978、24、169による論文、およびG.T.Kerr、Zeolites、1989、9、350による論文からの骨格アルミニウムに関するカール−デンプシーの式に基づき計算される。
【0056】
本明細書で用いる場合、乾燥ベースとは、900℃(1652°F)の温度の流動空気中で1時間乾燥させた後の重量に基づくことを意味する。
以下の実施例は、例示の目的で示されており、本開示の範囲を限定するものではない。
実施例1−比較例
Y−74ゼオライトの試料を15重量%NHNO水溶液中でスラリー化し、この溶液の温度を75℃(167°F)まで上げた。Y−74ゼオライトは、バルクSi/Al比およそ5.2、単位格子サイズおよそ24.53、およびナトリウム含量、NaOとして計算して、乾燥ベースでおよそ2.7重量%を有する安定化されたナトリウムYゼオライトである。Y−74ゼオライトは、バルクSi/Al比およそ4.9、単位格子サイズおよそ24.67、およびナトリウム含量がNaOとして計算して、乾燥ベースでおよそ9.4重量%を有するナトリウムYゼオライトを、US5,324,877のカラム4、47行〜カラム5、2行に記載された手順のステップ(1)および(2)に全体的に従うことにより、アンモニウム交換して、そのNaのおよそ75%を除去し、次いで、およそ600℃(1112°F)で水蒸気で脱アルミニウム化することによって調製される。Y−74ゼオライトは製造され、UOP LLC、Des Plaines、イリノイ州、米国から入手した。75℃(167°F)における1時間の接触後、このスラリーをろ過し、フィルターケークを過剰な量の加温脱イオン水で洗浄した。これらのNHイオン交換、ろ過、および水洗ステップをさらに2回反復し、得られたフィルターケークは、バルクSi/Al比5.2、ナトリウム含量がNaOとして計算して、乾燥ベースで0.13重量%、単位格子サイズ24.572Å、およびX線回折で測定した場合の絶対強度96を有していた。得られたフィルターケークを適当な水分濃度まで乾燥させ、HNO解膠Pural SBアルミナと混合して、乾燥ベースで、ゼオライト80重量部とA1結合剤20重量部の混合物を得て、次いで、直径1.59mm(1/16インチ)の円筒形押出物に押し出した。この押出物を乾燥させ、およそ600℃(1112°F)で1時間、流動空気中で焼成した。この触媒は、既存の技術の代表的なものである。この触媒は、単位格子サイズ24.494Å、XRD絶対強度61.1、および修飾Yゼオライト中のアルミニウムの百分率(%)として骨格アルミニウム57.2%を有していた。
実施例2
実施例1で使用したY−74ゼオライトの別の試料を、15重量%NHNO水溶液中でスラリー化した。このスラリーのpHを17重量%HNO溶液の十分量を添加することによって4から2に低下させた。その後、スラリー温度を75℃(167°F)まで加熱し、1時間維持した。75℃(167°F)における1時間の接触後、スラリーをろ過し、フィルターケークを過剰な量の加温脱イオン水で洗浄した。これらのNHイオン交換の存在下での酸抽出、ろ過、および水洗ステップをもう1度反復し、得られたフィルターケークはバルクSi/Al比11.5、ナトリウム含量、NaOとして測定して、乾燥ベースで0.01重量%未満、および単位格子サイズ24.47Åを有していた。得られたフィルターケークを適当な水分濃度まで乾燥させ、HNO解膠Pural SBアルミナと混合して、乾燥ベースで、ゼオライト80重量部とA1結合剤20重量部の混合物を得て、次いで、直径1.59mm(1/16インチ)の円筒形押出物に押し出した。この押出物を乾燥させ、およそ600℃(1112°F)で1時間、流動空気中で焼成した。この触媒の特性は、SiO、バルクおよび乾燥ベースで68.2重量%、A1O3、乾燥ベースで30.5重量%、ナトリウム、NaOとして計算して、乾燥ベースで0.04重量%、(NHO、乾燥ベースで0.03重量%、単位格子サイズ24.456Å、絶対XRD強度66.5、修飾Yゼオライト中のアルミニウムの百分率(%)として骨格アルミニウム92.2%、およびBET表面積708m/gであった。
実施例3
実施例1で使用したY−74ゼオライトの別の試料を15重量%NHNO水溶液中でスラリー化した。17重量%HNO溶液の十分量を30分間の時間にわたって添加して、余剰の骨格アルミニウムの一部を除去した。その後、スラリー温度を79℃(175°F)まで加熱し、90分間維持した。79℃(175°F)における90分間の接触後、このスラリーをろ過し、フィルターケークを22%硝酸アンモニウム溶液で洗浄し、続いて過剰量の加温脱イオン水による水洗を行った。実施例2とは異なり、硝酸アンモニウムの存在下での酸抽出は、二度目は反復しなかった。得られたフィルターケークは、バルクSi/Al比8.52、ナトリウム含量、NaOとして測定して、乾燥ベースで0.18重量%を有していた。得られたフィルターケークを実施例2に記載のように、乾燥させ、HNO解膠Pural SBアルミナと混合し、押し出し、乾燥させ、焼成した。この触媒の特性は、単位格子サイズ24.486Å、絶対XRD強度65.8、修飾Yゼオライト中のアルミニウムの百分率(%)として骨格アルミニウム81.1%およびBET表面積698m/gであった。
実施例4
実施例4において、実施例3に比較してHNOの33%の増加を使用した以外は、実施例3に記載された同じ手順に従った。実施例1で使用した同じ安定化されたY−74を15重量%NHNO水溶液中でスラリー化した。17重量%HNOの十分量を30分間にわたり添加して、余剰の骨格アルミニウムを除去した。その後、スラリー温度を79℃(175°F)まで加熱し、90分間維持した。79℃(175°F)における90分間の接触後、このスラリーをろ過し、フィルターケークを過剰量の加温脱イオン水で洗浄した。これらのNHイオン交換、ろ過、および水洗ステップは、実施例2とは異なり反復しなかった。得られたフィルターケークは、バルクSi/Al比10.10、ナトリウム含量、NaOとして測定して、乾燥ベースで0.16重量%を有していた。得られたフィルターケークを実施例2に記載のように、乾燥させ、HNO解膠Pural SBアルミナと混合し、押し出し、乾燥させ、および焼成した。この触媒の特性は、単位格子サイズ24.434Å、絶対XRD強度53.6、修飾Yゼオライト中のアルミニウムの百分率(%)として骨格アルミニウム74.9%およびBET表面積732m/gであった。
実施例5−比較例
実施例5において、実施例3に比較してHNOの52%の増加を使用した以外は、実施例3に記載された同じ手順に従った。実施例1で使用した同じ安定化されたY−74を15重量%NHNO水溶液中でスラリー化した。17重量%HNO溶液の十分量を30分間にわたり添加して、バルクSi/Al比を増加させた。その後、スラリー温度を79℃(175°F)まで加熱し、90分間維持した。79℃(175°F)における90分間の接触後、スラリーをろ過し、フィルターケークを過剰量の加温脱イオン水で洗浄した。実施例2とは異なり、これらのNHイオン交換、ろ過、および水洗ステップは反復しなかった。得られたフィルターケークは、バルクSi/Al比11.15、ナトリウム含量、NaOとして測定して、乾燥ベースで0.08重量%を有していた。得られたフィルターケークを適当な水分濃度まで乾燥させ、HNO解膠Pural SBアルミナと混合して、乾燥ベースで、ゼオライト80重量部とA1結合剤20重量部の混合物を得て、次いで、直径1.59mm(1/16インチ)の円筒形押出物に押し出した。この押出物を乾燥させ、およそ600℃(1112°F)で1時間、流動空気中で焼成した。この触媒の特性は、単位格子サイズ24.418Å、絶対XRD強度44.8、修飾Yゼオライト中のアルミニウムの百分率(%)として骨格アルミニウム75.2%およびBET表面積756m/gであった。
実施例6
実施例1で使用した同じ安定化されたY−74を15重量%NHNO水溶液中でスラリー化した。この実施例で使用したHNOの総量は、実施例5のものと同じである。しかし、実施例5に記載されたように酸抽出を単一ステップで実施する代わりに、酸抽出を、総HNO酸の85%を第1のステップで使用し、総量の酸の残る15%を第2のステップで使用する、2ステップで実施した。2つのそれぞれのステップにおける酸抽出手順/条件は、実施例5に記載されたものと同じであった。Y−74およびNHNO溶液から構成されているスラリーに17重量%HNOの溶液を添加した。その後、スラリー温度79℃(175°F)をまで加熱し、90分間維持した。79℃(175°F)における90分間の接触後、スラリーをろ過し、フィルターケークを過剰量の加温脱イオン水で洗浄した。NHの存在下における酸抽出(使用した総HNOの残る15%による)、ろ過、および水洗ステップを反復し、得られたフィルターケークは、バルクSi/Al比11.14、ナトリウム含量、NaOとして測定して、乾燥ベースで0.09重量%を有していた。得られたフィルターケークを適当な水分濃度まで乾燥させ、HNO解膠Pural SBアルミナと混合して、乾燥ベースで、ゼオライト80重量部とA1結合剤20重量部の混合物を得て、次いで、直径1.59mm(1/16インチ)の円筒形押出物に押し出した。この押出物を乾燥させ、およそ600℃(1112°F)で1時間、流動空気中で焼成した。この触媒の特性は、単位格子サイズ24.411Å、絶対XRD強度56.1、修飾Yゼオライト中のアルミニウムの百分率(%)として骨格アルミニウム72.5%およびBET表面積763m/gであった。
実施例7
実施例3で使用した同じ安定化されたY−74を18重量%硫酸アンモニウム溶液中でスラリー化した。この溶液に、17%硫酸溶液を30分にわたり添加した。次いで、このバッチを79℃(175°F)まで加熱し、90分間維持した。この熱源を除去し、次いでこのバッチを処理水でクエンチして、温度を62℃(143°F)まで下げ、ろ過した。次いで、このYゼオライト材料を6.4重量%硫酸アンモニウム溶液中に再スラリー化し、79℃(175°F)に1時間維持した。次いで、この材料をろ過し、水洗した。得られたフィルターケークは、バルクSi/Al比7.71、ナトリウム含量、NaOとして測定して、乾燥ベースで0.16重量%を有していた。得られたフィルターケークを実施例2に記載のように、乾燥させ、HNO解膠Pural SBアルミナと混合し、押し出し、乾燥させ、および焼成した。この触媒の特性は、単位格子サイズ24.489Å、絶対XRD強度65.3、および修飾Yゼオライト中のアルミニウムの百分率(%)として骨格アルミニウム75.7%であった。
【0057】
表2に、実施例1〜7で調製した触媒の特性を要約する。
【0058】
【表2】

【0059】
実施例8
実施例1〜5および7で調製された触媒を、ベンゼンおよびポリアルキル化ベンゼンを含む供給原料を用いてアルキル交換の性能に対する試験をした。この供給原料は、商業的アルキル交換設備から得られたポリアルキル化ベンゼンをベンゼンとブレンドすることによって調製した。調製された供給原料ブレンドは、プロピル基に対する芳香環基のモル比およそ2.3を有する典型的なアルキル交換供給原料組成物を表す。本明細書に開示された方法によって調製した触媒は、かなり低いまたは高い供給原料モル比を有する供給原料を処理する場合、同様の利点を提供することを示してきた。ガスクロマトグラフィーで測定したこの供給原料の組成を表3に要約する。この試験は、反応器圧力3447kPa(g)(500ポンド/平方インチ(g))、プロピル基に対する芳香環基のモル比2.3、およびDIPBのWHSV 0.8時間−1の条件下、一連の反応温度の範囲にわたり貫流方式の固定床反応器中で実施された。この反応器を各反応温度において実質的に定常状態が得られるようにさせておき、この生成物を分析のためにサンプリングした。この試験中、触媒失活は実質的に起らなかった。この供給原料を導入する前に、各触媒を10重量ppm未満の水を含む250℃(482°F)の流動窒素ストリームと、6時間接触させることによって乾燥手順にかけた。
【0060】
【表3】

【0061】
これらの実施例は、ポリアルキレートのクメンへのアルキル交換において、本明細書に開示された方法によって調製した触媒に起因する、高活性および生成物純度の利益を示す。
実施例9−再生
実施例7で調製した触媒の試料を前述の実施例8で記載されたように試験した。試験後、使用済み触媒をセラミックの皿に入れ、これをマッフル炉に収納した。流動空気をマッフル炉中を通過させながら、炉の温度を毎分1℃(1.8°F)の速度で70℃(158°F)から550℃(1022°F)まで上昇させ、550℃(1022°F)に6時間維持し、次いで、110℃(230°F)まで冷却した。再生後、この触媒を実施例8に記載されたように再度試験した。
【0062】
図3および4は、再生前(「実施例7」と標示された)および再生後(「実施例9」と標示された)の触媒に対する試験結果を示す。この結果は、再生前および再生後の触媒が、類似の活性および生成物純度を有し、両方が実施例1の触媒に対する曲線より良好であることを示し、したがって、良好な触媒再生性を示している。
実施例10
実施例1および2で調製した触媒の試料をポリエチルベンゼンのアルキル交換に関して評価した。各触媒をベンゼン63.6重量%とパラジエチルベンゼン(p−DEB)36.4重量%のブレンドからなる供給原料を用いて試験した。この触媒を反応器中に充填し、次いで、この触媒を10重量ppm未満の水を含む250℃(482°F)の流動窒素ストリームと6時間接触させることによって乾燥させた。各試験は、2時間−1のp−DEB WHSVにおいて、および170℃(338°F)〜230℃(446°F)の一連の反応温度にわたり実施された。この反応器を各反応温度における実質的に定常状態が得られるようにさせておき、この生成物を分析のためにサンプリングした。この試験中、触媒失活は実質的に起らなかった。図5は、両方の触媒に対する結果を提示する。この結果は、実施例2で調製された触媒は、実施例1で調製された触媒に対する曲線と同等または良好な活性および安定性を有し、商業的ポリエチルベンゼンアルキル交換操作に使用し得ることを示している。
【0063】
このデータの概要を図1〜5によって提供する。図1において、実施例2〜4および7に対するDIPB変換率は、実施例1および5に対して示した変換率(実施例1は線101で示される)よりかなり高い。図2において、NPB/クメン比は、実施例1(線201で示される)と比較して、実施例2〜4および7に対してより低い。図3において、DIPB変換率は、実施例1(図1の線101で示される)と比較して、実施例7の再生されていない触媒および実施例9の再生触媒に対してより高い。図4において、NPB/クメン比は、実施例1(図2の線201で示される)に比較して、実施例7および9のそれぞれ再生されていない触媒および再生触媒に対してより低い。図5において、実施例2は、実施例1(線501で示される)に比べて優れたDEB変換率を示す。比較例5で調製された触媒に対するより低い活性およびより劣る生成物純度は、厳しすぎる酸抽出条件に起因するものと考えられる。したがって、厳しい酸抽出条件は、Yゼオライトの結晶性を低下し得る。
【0064】
LZ−210
本明細書に開示された方法で使用することができるYゼオライトは、5未満の全体的なアルミナに対するシリカのモル比を有するYゼオライトを脱アルミニウム化することによって調製してもよく、US4,503,023、4,597,956、4,735,928および5,275,720に詳細に記載されている(これらを参照により本明細書に援用する)。この‘023特許は、制御された比率、温度、およびpH条件を用いて、Yゼオライトをフルオロケイ酸塩の水溶液と接触させることを含む、Yゼオライトを脱アルミニウム化するための別の手順を開示しており、これは、ケイ素により置換されないアルミニウム抽出を回避する。この‘023特許は、フルオロケイ酸塩が、アルミニウム抽出剤として、およびさらに、抽出したアルミニウムの代わりにYゼオライト構造中に挿入される、外部ケイ素の供給源としても使用されることを開示している。この塩は、一般式
(A)2/bSiF
[式中、Aは、価数「b」を有する、金属カチオンまたはH以外の非金属カチオンである]を有する。「A」で表されるカチオンは、アルキルアンモニウム、NH、Mg++、Li、Na、K、Ba++、Cd++、Cu++、H、Ca++、Cs、Fe++、Co++、Pb++、Mn++、Rb、Ag、Sr++、Ti、およびZn++である。
【0065】
この群のYゼオライトの好ましいメンバーは、LZ−210(‘023特許に記載されたゼオライト系アルミノシリケートモレキュラーシーブ)として知られている。この群のLZ−210ゼオライトおよびその他のゼオライトは、好都合なことには、Yゼオライト出発材料から調製される。一実施形態では、このLZ−210ゼオライトは、5.0〜11.0の全体的なアルミナに対するシリカのモル比を有する。この単位格子サイズは、24.38〜24.50Å、好ましくは24.40〜24.44Åの範囲である。本明細書に開示された方法および組成物で使用されるゼオライトのLZ−210クラスは、以下の式
(0.85〜1.1)M2/nO:A1:xSiO
[式中、「M」は、価数「n」を有するカチオンであり、「x」は、5.0〜11.0の値を有する]
の通り酸化物のモル比として表される組成物を有する。
【0066】
一般に、LZ−210ゼオライトは、フルオロケイ酸塩の水溶液、好ましくはアンモニウムヘキサフルオロシリケートの溶液を用いて、Y−タイプゼオライトを脱アルミニウム化することによって調製することができる。この脱アルミニウム化は、Yゼオライト、必ずしもそうとは限らないが、通常、アンモニウム交換したYゼオライトを酢酸アンモニウムの水溶液などの水性反応媒体中に入れ、フルオロケイ酸アンモニウムの水溶液を徐々に添加することによって実施することができる。反応を進行させておいた後、全体的なアルミナに対するシリカの増加したモル比を有するゼオライトが生じる。この増加の大きさは、少なくとも一部は、このゼオライトと接触させたフルオロケイ酸塩溶液の量および反応させておいた時間に依存する。通常、10から24時間の間の反応時間が、平衡に達するのに十分である。得られた固体生成物(従来のろ過技術によって水性反応媒体から分離することができる)は、LZ−210ゼオライトの形態である。場合により、この生成物を当技術分野で周知の方法によって、水蒸気焼成にかけてもよい。例えば、より高い結晶安定性を提供するために、この生成物を少なくとも1.4kPa(a)(0.2ポンド/平方インチ(a))の分圧の水蒸気と、482℃(900°F)から816℃(1500°F)の間の温度で1/4〜3時間接触させてもよい。場合により、この水蒸気焼成生成物を当技術分野で周知の方法によって、アンモニウム交換にかけてもよい。例えば、この生成物を水と共にスラリーにし、その後、スラリーにアンモニウム塩を添加してもよい。得られた混合物は、典型的には、数時間加熱し、ろ過し、水で洗浄する。LZ−210ゼオライトを水蒸気処理およびアンモニウム交換する方法は、US4,503,023、4,735,928、および5,275,720に記載されている。
【0067】
一実施形態では、このアンモニウム交換の後、Si/Al比を増加させるためにフルオロケイ酸塩水溶液で処理して、熱水安定性を高め、余剰の骨格アルミニウムを形成する傾向を低下させる。
【0068】
LZ−210ゼオライトの最終的低pHアンモニウムイオン交換(これは好ましい)は、イオン交換手順の少なくともいくつかの部分の間に、交換媒体のpHを4未満、好ましくは3未満に低下させること以外は、Yゼオライト(および/または、上で論じた通りのLZ−210ゼオライト)の最初のアンモニウム交換の場合と同じ方法で実施することができる。このpHの低下は、アンモニウムイオン溶液に適当な無機酸または有機酸を添加することによって容易に実現される。硝酸が、この目的には特に適している。好ましくは、不溶性アルミニウム塩を形成する酸を回避する。低pHアンモニウムイオン交換の実施において、交換媒体のpH、ゼオライトに対する交換媒体の量の両方、およびゼオライトと交換媒体との接触時間が、重要な要因である。交換媒体が4未満のpHである限り、ゼオライト中でナトリウムカチオンは、水素カチオンに代わって交換され、さらに、少なくとも一部のアルミニウム(主に非骨格および一部骨格の)が抽出されることが判明した。しかし、この方法の効率は、pHを丁度4未満に低下させるのに必要とされるものより多くの酸を用いてイオン交換媒体を酸性化することによって改良される。以下に説明するデータから明らかなように、交換媒体をより酸性にすると、ゼオライトから骨格および非骨格アルミニウムを抽出する傾向がより強くなる。この抽出手順を6.5〜27の範囲のバルクSi/Alモル比を有するゼオライト生成物を生成するのに十分な程度まで実施する。他の実施形態では、このバルクSi/Alモル比は、6.5〜23、さらにより好ましくは6.5〜20の範囲である。
【0069】
以下のLZ−210の実施例は、例示の目的のためのみに示すもので、本開示の範囲を限定するものではない。
実施例11−比較例
Y−74ゼオライトの試料を15重量%NHNO水溶液中でスラリー化し、この溶液温度を75℃(167°F)まで上げた。Y−74ゼオライトは、バルクSi/Al比およそ5.2、単位格子サイズおよそ24.53、およびナトリウム含量、NaOとして計算して、乾燥ベースでおよそ2.7重量%を有する安定化されたナトリウムYゼオライトである。Y−74ゼオライトは、バルクSi/Al比およそ4.9、単位格子サイズおよそ24.67、およびナトリウム含量、NaOとして計算して、乾燥ベースで9.4重量%を有するナトリウムYゼオライトから調製され、これをアンモニウム交換して、そのNaのおよそ75%を除去し、次いで、US5,324,877のカラム4、47行〜カラム5、2行に記載された手順のステップ(1)および(2)に全体的に従っておよそ600℃(1112°F)において水蒸気脱アルミニウム化する。Y−74ゼオライトは製造され、UOP LLC、Des Plaines、イリノイ州、米国から入手した。75℃(167°F)における1時間の接触後、このスラリーをろ過し、フィルターケークを過剰な量の加温脱イオン水で洗浄した。これらのNHイオン交換、ろ過、および水洗ステップをさらに2回反復し、得られたフィルターケークは、バルクSi/Al比5.2、ナトリウム含量、NaOとして計算して、乾燥ベースで0.13重量%、単位格子サイズ24.572Åおよび絶対強度、X線回折で測定して96を有していた。得られたフィルターケークを適当な水分濃度まで乾燥させ、HNO解膠Pural SBアルミナと混合して、乾燥ベースで、ゼオライト80重量部とA1結合剤20重量部の混合物を得て、次いで、直径1.59mm(1/16インチ)の円筒形押出物に押し出した。この押出物を乾燥させ、およそ600℃(1112°F)で1時間、流動空気中で焼成した。この触媒は、既存の技術の代表的なものである。この触媒は、単位格子サイズ24.494Å、XRD絶対強度61.1、および修飾Yゼオライト中のアルミニウムの百分率(%)として骨格アルミニウム57.2%を有していた。
実施例12
合成Y−54ゼオライトをアンモニウム交換し、次いで、US4,503,023に記載された手順に従って、フルオロケイ酸アンモニウムで処理した。Y−54ゼオライトは、バルクSi/Al比およそ4.9、単位格子サイズ24.67、およびナトリウム含量、NaOとして計算して、乾燥ベースで9.4重量%を有するナトリウムYゼオライトである。Y−54ゼオライトは製造され、UOP LLC、Des Plaines、イリノイ州、米国から入手した。得られたYゼオライト(これは、バルクSi/Alモル比6.5を有していた)を100%の水蒸気により600℃(1112°F)で1時間水蒸気処理し、次いでアンモニウム交換した。得られたフィルターケークを適当な水分濃度まで乾燥させ、HNO解膠Pural SBアルミナと混合して、乾燥ベースで、ゼオライト80重量部とA1結合剤20重量部の混合物を得て、次いで直径1.59mm(1/16インチ)の円筒形押出物に押し出した。この押出物を乾燥させ、およそ600℃(1112°F)で1時間、流動空気中で焼成した。得られた触媒は、単位格子サイズ24.426Å、絶対XRD強度81.6、および修飾Yゼオライト中のアルミニウムの百分率(%)として骨格アルミニウム63.2%を有していた。
実施例13
合成Y−54ゼオライトをアンモニウム交換し、次いで、US4,503,023に記載された手順に従って、フルオロケイ酸アンモニウムで処理した。得られたYゼオライト(これは、バルクSi/Alモル比9.0を有し、LZ−210(9)と称された)を100%の水蒸気により、600℃(1112°F)で1時間水蒸気処理した。水蒸気処理したLZ−210(9)228gおよびHO672gから構成されているスラリーをまず調製した。次いで、HO212gおよび50重量%(NH)NO667gから構成されているNHNO溶液を水蒸気処理したLZ−210(9)スラリーに添加した。次いで、得られた混合物を85℃(185°F)に上昇させ、次いで、15分間混合した。この混合物に、66重量%HNO5.7gを添加し、得られた混合物を継続的に撹拌しながら、85℃(185°F)に60分間維持した。酸抽出の最後に、混合物をろ過し、HO1000mlで洗浄し、次いで、100℃(212°F)で一晩乾燥させた。第2に、乾燥ケーク200gを50重量%(NH)NO667gおよびHO650gから構成されている溶液に添加し、これに66重量%HNO20gを添加した。得られたスラリーを60分間混合した。その後、この混合物をろ過し、HO1000mlで洗浄し、フィルターケークを100℃(212°F)において一晩オーブンで乾燥させた。得られたゼオライトは、バルクSi/Al比10.82およびNaO0.026重量%を有していた。このゼオライト粉末をHNO解膠Pural SBアルミナと混合して、乾燥ベースで、ゼオライト80重量部とA1結合剤20重量部の混合物を得て、水分を調整して、適正なドウテクスチャを得て、次いで、直径1.59mm(1/16インチ)の円筒形押出物に押し出した。この押出物を乾燥させ、およそ600℃(1112°F)で1時間、流動空気中で焼成した。得られた触媒は、単位格子サイズ24.430Å、絶対XRD強度78.4、骨格アルミニウム77.8%およびBET表面積661m/gを有していた。
実施例14
合成Y−54ゼオライトをアンモニウム交換し、次いで、US4,503,023に記載された手順に従ってフルオロケイ酸アンモニウムで処理した。得られたYゼオライト(これは、バルクSi/Alモル比9.0を有し、LZ−210(9)と称された)を100%の水蒸気で、600℃(1112°F)で1時間水蒸気処理した。水蒸気処理したLZ−210(9)の256gの量を22重量%NHNO1140gに添加した。このゼオライトスラリーに、17重量%HNO368gを30分間にわたり徐々に添加した。次いで、このスラリーを80℃(176°F)まで加熱し、80℃(176°F)で90分間維持した。酸抽出の最後に、このスラリーをHO1246gでクエンチし、ろ過し、22重量%NHNO1140gで洗浄し、HO1000mlで洗浄し、100℃(212°F)において一晩オーブンで乾燥させた。得られたゼオライトは、バルクSi/Al比14.38およびNaO0.047重量%を有していた。得られたゼオライト粉末をHNO解膠Pural SBアルミナと混合して、乾燥ベースで、ゼオライト80重量部とA1結合剤20重量部の混合物を得て、水分を調整して、適正なドウテクスチャを得て、次いで、直径1.59mm(1/16インチ)の円筒形押出物に押し出した。この押出物を乾燥させ、およそ600℃(1112°F)で1時間、流動空気中で焼成した。得られた触媒は、単位格子サイズ24.393Å、絶対XRD強度79.6、骨格アルミニウム81.8%、およびBET表面積749m/gを有していた。
実施例15
合成Y−54ゼオライトをアンモニウム交換し、次いで、US4,503,023に記載された手順に従ってフルオロケイ酸アンモニウムで処理した。得られたYゼオライト(これは、バルクSi/Alモル比12を有し、LZ−210(12)と称された)を100%の水蒸気で600℃(1112°F)において1時間水蒸気処理した。水蒸気処理したLZ−210(12)231gおよびHO668gから構成されているスラリーをまず調製した。次いで、HO212gおよび50重量%(NH)NO667gから構成されているNHNO溶液をこの水蒸気処理したLZ−210(12)スラリーに添加した。次いで、得られた混合物を85℃(185°F)に上昇させ、次いで、15分間混合した。この混合物に、66重量%HNO33.4gを添加し、得られた混合物を継続的に撹拌しながら85℃(185°F)に60分間維持した。酸抽出の最後に、この混合物をろ過し、ケークをHO1000mlで洗浄し、次いで、100℃(212°F)で一晩乾燥させた。第2に、乾燥ケーク200gを50%(NH)NO667gおよびHO650gから構成されている溶液に添加し、これに66重量%HNO10gを添加した。得られたスラリーを60分間混合した。その後、この混合物をろ過し、HO1000mlで洗浄し、フィルターケークを100℃(212°F)において一晩オーブンで乾燥させた。得られたゼオライトは、バルクSi/Al比17.24およびNaO0.01重量%を有していた。得られたゼオライト粉末をHNO解膠Pural SBアルミナと混合して、乾燥ベースで、ゼオライト80重量部とA1結合剤20重量部の混合物を得て、水分を調整して適正なドウテクスチャを得て、次いで、直径1.59mm(1/16インチ)の円筒形押出物に押し出した。この押出物を乾燥させ、およそ600℃(1112°F)で1時間、流動空気中で焼成した。得られた触媒は、単位格子サイズ24.391Å、絶対XRD強度81.2、骨格アルミニウム94.9%およびBET表面積677m/gを有していた。
実施例16
実施例15からのLZ−210(12)(水蒸気処理前)250gに、50%NHNO500gおよびHO625gから構成されているNHNO溶液を添加した。このスラリーを95℃(203°F)まで加熱し、その温度に2時間保持した。次いで、スラリーをろ過し、水洗した。次いで、このケークを同じ手順に従って二度目の、NHNO交換し、水洗した。このフィルターケークを100℃(212°F)において一晩オーブンで乾燥させた。得られたゼオライトは、バルクSi/Al比12.62およびNaO0.05重量%を有していた。この乾燥したゼオライトをHNO解膠Pural SBアルミナと混合して、乾燥ベースで、ゼオライト80重量部とA1結合剤20重量部の混合物を得て、水分を調整して、適当なドウテクスチャを得て、次いで、直径1.59mm(1/16インチ)の円筒形押出物に押し出した。この押出物を乾燥させ、およそ600℃(1112°F)において1時間流動空気中で焼成した。得られた触媒は、単位格子サイズ24.431Å、絶対XRD強度77.3、骨格アルミニウム89.2%およびBET表面積660m/gを有していた。
【0070】
表4に、実施例11〜16で調製した触媒の特性を要約する。
【0071】
【表4】

【0072】
実施例17
実施例11および14〜16で調製した触媒を、ベンゼンおよびポリアルキル化ベンゼンを含む供給原料を用いてアルキル交換性能の試験をした。この供給原料は、商業的アルキル交換設備から得られたポリアルキル化ベンゼンをベンゼンとブレンドすることによって調製した。ガスクロマトグラフィーで測定した供給原料の組成を上記の表2に要約する。この試験は、反応器圧力3447kPa(g)(500ポンド/平方インチ(g))、プロピル基に対する芳香環基のモル比2.3、およびDIPBのWHSV0.8時間−1の条件下、一連の反応温度にわたり貫流方式の固定床反応器中で実施された。この反応器を各反応温度において実質的に定常状態が得られるようにさせておき、この生成物を分析のためにサンプリングした。この試験中、触媒失活は実質的に起らなかった。この供給原料を導入する前に、各触媒を10重量ppm未満の水を含む250℃(482°F)の流動窒素ストリームと6時間接触させることによって乾燥手順にかけた。
【0073】
図6および7は、実施例11および14〜16で調製した触媒に対する試験結果を示す。図6において、実施例14〜16で調製した触媒は、実施例11に対する曲線601に比較して、より高活性(即ち、所与の温度においてより高いDIPB変換率)を示す。図7において、実施例14〜16で調製した触媒はまた、実施例1で調製した触媒に対する曲線701より、良好な生成物純度(即ち、所与のDIPB変換率においてより低いNPB/クメン)を示す。図6および7を参照すると、実施例16に対するデータは、水蒸気処理および酸抽出ステップを省略した場合でも、良好な性能を達成することができるので、両方のステップは、この触媒の調製において必要とされないことを示している。さらに図6および7を参照すると、実施例14のデータは、実施例15の2ステップ酸抽出の代わりにこの酸抽出条件がより厳しいにもかかわらず、単一ステップの水蒸気処理後酸抽出を用いて、優れた活性および同等の生成物純度が達成されることを示している。
実施例18
実施例16で調製した触媒の試料を前述の実施例17に記載されたように試験した。試験後、使用済み触媒をセラミック皿に入れ、これをマッフル炉中に収納した。流動空気をマッフル炉中を通過させながら、炉の温度を毎分1℃(1.8°F)の速度で70℃(158°F)から550℃(1022°F)まで上昇させ、550℃(1022°F)に6時間維持し、次いで、110℃(230°F)まで冷却した。この再生触媒は、単位格子サイズ24.439Å、絶対XRD強度72.5、骨格アルミニウム92.6%およびBET表面積660m/gを有していた。表4は、再生触媒の特性を要約する。再生後、この触媒を実施例17に記載されたように再度試験した。再生前および再生後の触媒は、類似の活性(即ち、所与の温度におけるDIPB変換率)および生成物純度(即ち、所与のDIPB変換率におけるNPB/クメン)を有し、したがって、良好な触媒再生性を示している。
実施例19
実施例14で調製した触媒の試料を実施例17に記載されたように試験した。試験後、使用済み触媒を実施例18に記載されたように再生した。再生後、この触媒を実施例17に記載されたように再度試験した。
【0074】
図8および9は、再生前(「実施例14」と表示した)および再生後(「実施例19」と標示した)の触媒に対する試験結果をグラフを使用して例示する。この結果は、再生前および再生後の触媒が、同等の活性(即ち、所与の温度におけるDIPB変換率)および生成物純度(即ち、所与のDIPB変換率におけるNPB/クメン)を有し、図8、9のそれぞれ実施例11の触媒に対する曲線601、701より共に良好であり、したがって、良好な触媒再生性を示すことを示している。
【0075】
上記の実施例は、本明細書に開示された方法によって調製した触媒に起因する、DIPBおよびTIPBなどのポリアルキレートのクメンへの、およびDEBのEBへのアルキル交換における高い活性および生成物純度の利益を示す。
【0076】
開示された触媒は、金属水素化触媒成分を含んでいてもよいが、このような成分は、必要条件ではない。この触媒の重量に対して、このような金属水素化触媒成分は、金属成分のそれぞれの一酸化物として計算して、0.2重量%未満または0.1重量%未満の濃度で存在してもよく、あるいはこの触媒は、いずれの金属水素化触媒成分も持っていなくてもよい。存在する場合は、この金属水素化触媒成分は、酸化物、硫化物、ハロゲン化物等の化合物として、または元素の金属状態で最終触媒複合材料中に存在してもよい。本明細書で用いる場合、「金属水素化触媒成分」という用語は、金属のこれらの様々な化合物の形態を含んでいる。この触媒的に活性な金属は、ゼオライト成分の内部吸着領域、即ち、細孔系中に、ゼオライト結晶の外部表面上に、あるいは結合剤、希釈剤またはその他の成分(こうしたものが使用される場合)に結合もしくは担持されて含まれていてもよい。この金属は、高分散状態を達成することになる任意の方法によって、全体的な組成物に付与することができる。適した方法の中には、含浸、吸着、カチオン交換、および激しい混合がある。この金属は、銅、銀、金、チタン、クロム、モリブデン、タングステン、レニウム、マンガン、亜鉛、バナジウム、またはIUPAC第8〜10族中の任意の元素、特に白金、パラジウム、ロジウム、コバルト、およびニッケルであることができる。金属の混合物を使用してもよい。
【0077】
完成した触媒組成物は、通例の結合剤成分を10〜95重量%、好ましくは15〜50重量%の範囲で含んでいてもよい。この結合剤は、通常、無機酸化物またはその混合物である。アモルファスおよび結晶性の両方を使用することができる。適した結合剤の例には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、粘土、ジルコニア、シリカ−ジルコニアおよびシリカ−ボリアがある。アルミナは好ましい結合剤材料である。
【0078】
クメンの生産では、揮発性物質不含ベースで、ゼオライト80重量%およびアルミナ結合剤20重量%でできている完成した触媒は、以下の物理的特性:(1)X線回折(XRD)で測定して、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも60の修飾Yゼオライトの絶対強度、および(2)修飾Yゼオライトのアルミニウムの好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%の、修飾Yゼオライトの骨格アルミニウムの好ましくは一方、より好ましくは両方を有する。一例を挙げれば、クメンの生産のための完成した触媒では、XRDで測定した場合の修飾Yゼオライトの絶対強度と、修飾Yゼオライト中のアルミニウムの骨格アルミニウム%との積が4200を超える。エチルベンゼンの生産では、完成した触媒は、以下の特性:(1)X線回折(XRD)で測定して、好ましくは少なくとも65、より好ましくは少なくとも75の修飾Yゼオライトの絶対強度、および(2)修飾Yゼオライトのアルミニウムの好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%の、修飾Yゼオライトの骨格アルミニウムの好ましくは一方、より好ましくは両方を有する。一例を挙げれば、クメンの生産のための完成した触媒では、XRDで測定した場合の修飾Yゼオライトの絶対強度と、修飾Yゼオライト中のアルミニウムの骨格アルミニウム%との積が4500を超える。
【0079】
いくつかの実施形態だけを説明してきたが、当業者であれば、上記の説明から代替物および修正が明らかであろう。上記およびその他の代替物は、等価物であり、本開示および添付した特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれるものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y−85または修飾LZ−210のゼオライトを含む触媒であって、触媒が、
揮発性物質不含ベースで、ゼオライト60〜90重量%を含み、残りのアルミナが、結合剤であり、
触媒が、X線回折(XRD)で測定して少なくとも50の絶対強度を有し、ゼオライトが、ゼオライトのバルクアルミニウム含量の少なくとも60%の骨格アルミニウム含量をさらに有する触媒。
【請求項2】
絶対強度と、整数百分率(%)として表される骨格アルミニウム含量との積が4200を超える、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
ゼオライトが、無水ベースで、ゼオライト重量に対して3重量%未満のNaO含量を有する、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
ゼオライトが、6.5〜27の範囲のバルクSi/Alモル比を有する、請求項1、2、または3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
ゼオライトが、少なくとも60の絶対強度を有する、請求項1、2、3、または4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
ゼオライトが、少なくとも70%の骨格アルミニウムを有する、請求項1、2、3、または4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
触媒が、2〜4重量%の範囲の900℃における強熱減量(LOI)を有する、請求項1、2、3、4、5、または6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
修飾ゼオライトが、24.58Å以下の単位格子サイズを有する、請求項1、2、3、4、5、6、または7のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項9】
(a)第1のゼオライトを水性イオン溶液で処理して、第1の単位格子サイズを有する第2のゼオライトを得るステップと;
(b)第2のゼオライトを550℃〜850℃の範囲の温度で熱水的に処理して、第1のバルクSi/Alモル比を有し、第1の単位格子サイズ未満の第2の単位格子サイズを有する第3のゼオライトを生成するステップと;
(c)第3のゼオライトを4未満のpHを有するアンモニウムイオン水溶液の十分量と、第3のゼオライトのナトリウムカチオンの少なくとも一部をアンモニウムイオンで交換するのに十分な時間接触させて、第1のバルクSi/Alモル比を超え、6.5〜27の範囲の第2のバルクSi/Alモル比を有するY−85または修飾LZ−210ゼオライトを生成するステップであって、Y−85または修飾LZ−210ゼオライトが、Y−85または修飾LZ−210ゼオライト中のすべてのアルミニウムの少なくとも60%を占める骨格アルミニウム含量、およびX線回折によって測定して少なくとも50の絶対強度をさらに有するステップと
を含むY−85または修飾LZ−210ゼオライト触媒を調製する方法。
【請求項10】
パート(a)のイオン水溶液が、フルオロケイ酸塩を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
パート(a)が、第1のゼオライト中のナトリウムをアンモニウムイオン交換して、水不含ベースで、第1のゼオライトの重量に対してそのナトリウム含量をNaO3重量%未満に低下させることをさらに含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
パート(c)の水溶液が、硝酸イオンおよび硫酸イオンからなる群から選択されるイオンを含む、請求項9、10、または11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
パート(c)における接触させるステップが、第3のゼオライトを4未満のpHを有する第1のアンモニウムイオン水溶液と接触させて、第1の混合物を形成させるステップと、第1の混合物をろ過して、フィルターケークを回収するステップと、フィルターケークを4未満のpHを有する第2のアンモニウムイオン溶液と接触させるステップとをさらに含む、請求項9、10、11、または12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
パート(b)における熱水処理するステップが、水蒸気処理を含む、請求項11、12、または13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
パート(c)の後、Y−85または修飾LZ−210ゼオライトが、30重量ppm未満の水の濃度を有する脱水剤と25〜500℃の範囲の温度で接触される、請求項11、12、13、または14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
芳香族化合物および芳香族基質を請求項1、2、3、4、5、6、7、または8のいずれか一項に記載の触媒と接触させるステップを含む、芳香族化合物のアルキル交換のための方法。
【請求項17】
芳香族化合物および芳香族基質を請求項9、10、11、12、13、14、または15のいずれか一項に記載の方法に従って作製した触媒と接触させるステップを含む、芳香族化合物のアルキル交換のための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−515568(P2010−515568A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545624(P2009−545624)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/050400
【国際公開番号】WO2008/088962
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】