説明

p38MAPキナーゼ阻害剤

本発明は、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ酵素、とりわけそれらのαおよびγキナーゼサブタイプの阻害剤(本明細書でp38 MAPキナーゼ阻害剤と称される)である、全部の立体異性体および互変異体性を包含する式(I)の化合物若しくはその製薬学的に許容できる塩、ならびに、製薬学的組合せ中を包含する治療、とりわけCOPDのような肺の炎症性疾患を包含する炎症性疾患の処置でのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ酵素、とりわけそのαおよびγキナーゼサブタイプの阻害剤(本明細書でp38 MAPキナーゼ阻害剤と称される)である化合物、ならびに製薬学的組合せ中を包含する治療、とりわけCOPDのような肺の炎症性疾患を包含する炎症性疾患の処置におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
それぞれ組織特異的発現パターンを表す4種のp38 MAPKアイソフォーム(それぞれα、β、γおよびδ)が同定されている。p38 MAPKαおよびβアイソフォームは身体全体で遍在性に発現され、そして多くの異なる細胞型で見出される。p38 MAPKαおよびβアイソフォームはある種の既知の小分子p38 MAPK阻害剤により阻害される。古い世代の化合物は、これらのアイソフォームの遍在性の発現パターンおよび該化合物のオフターゲット効果により高度に毒性であった。より最近の阻害剤は、p38 MAPKαおよびβアイソフォームに高度に選択的でありかつより広範な安全域を有するように改良されている。
【0003】
p38 MAPKγおよびδアイソフォームについてはより少なく既知である。これらのアイソフォームは(p38αおよびp38βアイソフォームと異なり)特定の組織/細胞で発現される。p38 MAPK−δアイソフォームは、膵、精巣、肺、小腸および腎でより多く発現される。それはまたマクロファージ中でも豊富であり(非特許文献1)、かつ、好中球、CD4+ T細胞および内皮細胞で検出可能である(非特許文献2、非特許文献3)。p38 MAPKγの発現についてはほとんど知られていないが、しかしそれは脳、骨格筋および心、ならびにリンパ球およびマクロファージ中でより多く発現されている(非特許文献2)。
【0004】
p38 MAPK−γおよび−δの選択的小分子阻害剤は現在利用可能でないが、しかし1種の既存化合物BIRB 796がパンアイソフォーム(pan−isoform)阻害活性を有することが既知である。p38γおよびp38δ阻害は、p38 MAPKαを阻害するのに必要とされるものより高濃度の該化合物で観察される(非特許文献4)。BIRB 796はまた、上流のキナーゼMKK6若しくはMKK4によるp38 MAPK若しくはJNKのリン酸化も減少した。Kumaは、MAPKへの阻害剤の結合により引き起こされるコンホメーション変化が、そのリン酸化部位および上流の活性化因子のドッキング部位の双方の構造に影響を及ぼし、従ってp38 MAPK若しくはJNKのリン酸化を減少させうる可能性を論じた。
【0005】
p38 MAPキナーゼは、ヒト疾患における慢性の持続性炎症、例えば重症の喘息およびCOPDの開始および維持に関与するシグナル伝達経路の多くで中枢的な役割を演じていると考えられている。現在、p38 MAPキナーゼが様々な炎症前サイトカインにより活性化されること、ならびにその活性化がさらなる炎症前サイトカインの動員および遊離をもたらすことを示す豊富な文献が存在する。事実、いくつかの臨床研究からのデータは、p38 MAPキナーゼ阻害剤で処置中の患者における疾患活動性の有益な変化を示している。例えば、非特許文献1は、ヒトPBMCからのTNFα(しかしIL−8でない)遊離に対するp38 MAPキナーゼ阻害剤の阻害効果を記述している。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の処置におけるp38 MAPキナーゼの阻害剤の使用が提案されている。p38 MAPKα/βに標的指向化される小分子阻害剤は、一般にコルチコステロイド非感受性であるCOPDを伴う患者から得た細胞および組織(非特許文献1)、ならびにin vivo動物モデル(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)で炎
症の多様なパラメータの低下において有効であることが判明している。Irusenらもまた、核中のグルココルチコイド受容体(GR)の結合親和性の低下を介するコルチコステロイド非感受性に対するp38 MAPK α/βの関与の可能性を示唆している(非特許文献8)。AMG548、BIRB 796、VX702、SCIO469およびSCIO323を包含する様々なp38 MAPキナーゼ阻害剤での臨床経験が非特許文献9に記述されている。
【0006】
COPDは、根底にある炎症が、吸入コルチコステロイドの抗炎症効果に対し実質的に抵抗性であることが報告されている状態である。結果、COPDの効果的な一処置戦略は、固有の抗炎症効果を有し、かつ、COPD患者からの肺組織の吸入コルチコステロイドに対する感受性を増大させることが可能であるの双方である介入を開発することであろう。Mercadoらの最近の刊行物(非特許文献10)は、p38γを発現停止させることがコルチコステロイドに対する感受性を回復させる可能性を有することを示している。従って、COPDおよび重症の喘息の処置のためのp38 MAPキナーゼ阻害剤の使用に対する「2方向の」利益が存在しうる。
【0007】
今や、喘息および/若しくはCOPDに苦しむ患者での悪化の開始における呼吸器ウイルス感染症の役割を関係させる実質的な多くのエビデンスが存在する。悪化は疾患症候学の制御を再確立するための治療強度の増大を必要とする。重症の場合、悪化はおそらく患者の入院、若しくはその最も極端な場合は死をもたらすであろう。悪化と一般に関連するウイルスは、ライノウイルス、インフルエンザおよびRSウイルスを包含する。これらのウイルスに対する細胞応答は、今や、ICAM1(細胞接着分子1)の上方制御およびサイトカインの遊離、ならびにウイルス粒子の複製を包含することが既知である。これらのウイルス応答に対するp38 MAPキナーゼ阻害剤の効果へのいくらかの研究が存在し、そして、いくつかの報告は保護効果がp38 MAPキナーゼ阻害剤で検出され得ることを示唆している。とりわけ、いくつかの報告は、IL−8のウイルス誘発性遊離の阻害が既知化合物SB203580でin vitroで達成され得ることを示唆している。前臨床in vivoモデルでライノウイルス誘発性炎症およびウイルス複製を低下させる剤の有効性の評価が大きな課題のままであることに注目すべきである。しかしながら、マウスにおけるインフルエンザおよびモルモットにおけるパラインフルエンザの十分に確立されたin vivoモデルが存在する。
【0008】
ヒトの慢性炎症性疾患の処置におけるp38 MAPキナーゼ阻害剤の利用性を妨害する主な障害物は、患者で観察される毒性であった。これは、上で具体的に挙げられた全部を包含する進行された該化合物の多くの臨床開発からの撤退をもたらすのに十分に重篤であった。
【0009】
改良された治療可能性を有する、とりわけ適切な治療用量でより有効であり、より長期間作用性であり、かつ/若しくはより少なく毒性である、p38 MAPキナーゼ阻害剤として治療上有用な新たな化合物を同定かつ開発する必要性が存続する。本発明の一目的は、良好な抗炎症可能性を示す、例えばある種のサブタイプ特異性を伴いp38 MAPキナーゼを阻害する化合物を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Smith,S.J.(2006)Br.J.Pharmacol.149:393−404
【非特許文献2】www.genecard.org
【非特許文献3】Karin,K.(1999)J.Immunol.
【非特許文献4】Kuma,Y.(2005)J.Biol.Chem.280:19472−19479
【非特許文献5】Underwood,D.C.ら(2000)279:895−902
【非特許文献6】Nath,P.ら(2006)Eur.J.Pharmacol.544:160−167
【非特許文献7】Medicherla S.ら(2008)J.Pharm.Exp.Ther.324:921−929
【非特許文献8】Irusen,E.ら(2002)J.Allergy Clin.Immunol.、109:649−657
【非特許文献9】Leeら(2005)Current Med.Chem.12,:2979−2994
【非特許文献10】Mercadoら(2007)American Thoracic Society Abstract A56
【発明の概要】
【0011】
[発明の要約]
本発明により、式(1)の化合物
【0012】
【化1】

【0013】
または、その全部の立体異性体および互変異性体を包含するその製薬学的に許容できる塩若しくは溶媒和物
が提供される。
【0014】
式(1)の化合物の系統名は、N−(4−(4−(3−(3−tert−ブチル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−イル)ウレイド)ナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−2−メトキシアセトアミドである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[発明の詳細な記述]
化合物(1)の塩の例は、限定されるものでないがHClおよびHBr塩のような強無機酸の酸付加塩、ならびにメタンスルホン酸塩のような強有機酸の付加塩を挙げることができる、全部の製薬学的に許容できる塩を包含する。
【0016】
本明細書で下で使用されるところの式(1)の化合物の定義は、文脈が別の方法で具体的に示さない限り、前記化合物の塩、溶媒和物および全部の互変異性体を包含することを意図している。溶媒和物の例は水和物を包含する。
【0017】
本明細書に提供される本発明は、式(1)の化合物のプロドラッグ、すなわちin vivoで分解しかつ/若しくは代謝されて式(1)の有効成分を提供する化合物にまで広がる。プロドラッグの一般的な例は、単純エステル、ならびに混合炭酸エステル、カルバメート、配糖体、エーテル、アセタールおよびケタールのような他のエステルを包含する

【0018】
本発明のさらなる一局面において、式(1)の化合物の1種若しくはそれ以上の代謝物、とりわけ式(1)の化合物の治療活性の1種若しくはそれ以上を保持する代謝物が提供される。本明細書で使用されるところの代謝物は、限定されるものでないが酸化代謝物および/若しくは例えばO−脱アルキル化から生成される代謝物を挙げることができる、式(1)の化合物の代謝からin vivoで産生される化合物である。
【0019】
本開示の化合物は、指定される原子が天然に存在する若しくは天然に存在しない同位元素であるものを包含する。一態様において、同位元素は安定同位元素である。従って、本開示の化合物は例えば重水素含有化合物などを包含する。
【0020】
本開示は、定義される本明細書の化合物の全部の多形の形態にもまた広がる。
【0021】
式(1)の化合物の製造経路の一例をスキーム1に下に示す:
【0022】
【化2】

【0023】
従って、式(1)の化合物は、式(8)の化合物:
【0024】
【化3】

【0025】
を式(A)の化合物:
【0026】
【化4】

【0027】
[ここでLGは脱離基、例えばクロロのようなハロゲンである]
と反応させることを含んでなる方法により製造し得る。
【0028】
該反応は、適しては塩基(例えばN,N−ジイソプロピルエチルアミン)の存在下で実施する。
【0029】
式(8)の化合物は、式(7)の化合物
【0030】
【化5】

【0031】
を式(6)の化合物:
【0032】
【化6】

【0033】
および式(B)の化合物:
【0034】
【化7】

【0035】
[ここでLGおよびLGはそれぞれ独立に脱離基を表す(例えば、LGがClCO−でありかつLGがClである。あるいは、LGおよびLGの双方が同一であることができ、例えばLGおよびLGが双方ともイミダゾリル若しくはクロロのようなハロゲンを表す)]
と反応させることにより製造し得る。
【0036】
該反応は、適しては、化学的に感受性の基に適切な保護基を使用して非プロトン性溶媒(例えばジクロロメタン)中で実施する。
【0037】
式(6)の化合物は、例えば均質なパラジウム触媒のような適する触媒の存在下での式(4a)の化合物:
【0038】
【化8】

【0039】
[ここでPは適するアミン保護基でありかつLGはクロロのような脱離基を表す]
の、式(C)の化合物
【0040】
【化9】

【0041】
との反応、次いでアミン保護基の除去により製造しうる。例えば、保護基がtert−ブ
トキシカルボニルである場合、それらの除去はジクロロメタン中TFAでの処理により達成し得る。
【0042】
式(4a)の化合物は、式(3a)の化合物:
【0043】
【化10】

【0044】
[ここでLGはクロロのような脱離基を表す]
を、例えば二炭酸ジ−tert−ブチルおよびDMAPを使用して保護することにより製造し得る。
【0045】
式(3a)の化合物は、式(2)の化合物:
【0046】
【化11】

【0047】
を、適切な反応条件下、例えばカリウムtert−ブトキシドおよびN−メチルピロリドン(1−メチルピロリジン−2−オン)のような強塩基の存在下で、式(3)の化合物に従って、式(D)の化合物:
【0048】
【化12】

【0049】
[ここでLGは脱離基例えば塩素のようなハロゲン原子を表す]
と反応させることにより製造し得る。
【0050】
式(1)の化合物は、スキーム2に表される方法によってもまた製造し得る。すなわち、
【0051】
【化13】

【0052】
従って、式(1)の化合物は、式(7)の化合物:
【0053】
【化14】

【0054】
を、例えば1,1−カルボニルジイミダゾールのような適するカップリング剤の存在下で、式(12)の化合物:
【0055】
【化15】

【0056】
と反応させることにより製造し得る。
【0057】
式(12)の化合物は、式(11)の化合物:
【0058】
【化16】

【0059】
の還元により製造し得る。
【0060】
該還元は、パラジウム炭素のような適する触媒上での水素化条件下で実施しうるか、若しくは、あるいは、酢酸中鉄粉のような適切な還元剤を使用して化学的に実施しうる。
【0061】
式(11)の化合物は、式(10)の化合物
【0062】
【化17】

【0063】
を、式(A)の化合物:
【0064】
【化18】

【0065】
[ここでLGは上で定義されたところの脱離基を表す]
と反応させることにより製造し得る。
【0066】
該反応は、N,N−ジイソプロピルエチルアミンのような適する非求核塩基の存在下で適する溶媒例えばジクロロメタン中で実施しうる。
【0067】
式(10)の化合物は、式(9)の化合物:
【0068】
【化19】

【0069】
を、例えば水素化ナトリウムのような塩基およびDMFのような適する溶媒の存在下で、式(E)の化合物:
【0070】
【化20】

【0071】
[ここで基NRはアミン若しくはその適して保護された誘導体である]
と反応させることにより製造し得る。NRが−NHでない場合、適する脱保護段階が、式(10)の化合物を提供するために包含されなければならないことが認識されるであろう。
【0072】
式(2)、(7)、(9)、(A)、(B)、(C)、(D)および(E)の化合物は、商業的に入手可能であるか、若しくは既知であるか、若しくは新規でありかつ慣習的方法により容易に製造し得るかのいずれかである。例えば、Regan,J.ら;J.Med.Chem.、2003、46、4676−4686、第WO00/043384号明細書、第WO2007/087448号明細書および第WO2007/089512号明細書を参照されたい。
【0073】
該方法が実施され得かつ/若しくは効率的であることを確実にするために、上述された反応の1種若しくはそれ以上の間に化学的に感受性の基を保護するための保護基を必要としうる。従って、所望の若しくは必要な場合は、中間体化合物を慣習的保護基の使用により保護しうる。保護基およびそれらの除去手段は、Theodora W.GreeneとPeter G.M.Wutsによる“Protective Groups in Organic Synthesis”、John Wiley & Sons Incにより刊行;第4版、2006、ISBN−10:0471697540に記述されている。
【0074】
本明細書に記述されるところの新規中間体は本発明の一局面を形成する。
【0075】
式(1)の化合物はp38 MAPキナーゼ阻害剤であり、かつ、一局面において、該化合物は疾患、例えばCOPDおよび/若しくは喘息の処置において有用である。
【0076】
驚くべきことに、該化合物は、BIRB796のような他の既知のp38 MAPキナーゼ阻害剤と比較して長い作用持続時間および/若しくは作用の持続性を有するようである。
【0077】
一態様において、式(1)の化合物はp38 MAPKαおよび/若しくはγサブタイプ阻害剤である。
【0078】
本明細書で使用されるところの作用の持続性は、標的(受容体のような)からの化合物の解離速度若しくは解離定数に関する。低い解離速度は持続性につながりうる。
【0079】
高い会合速度と組合せの低い解離速度は強力な治療実体を提供する傾向がある。
【0080】
式(1)の化合物はin vivoで強力でありうる。
【0081】
典型的に、今日までに開発された従来技術の化合物は経口投与に意図している。この戦略は、適切な薬物動態プロファイルによりそれらの作用持続時間を達成する化合物を最適化することを必要とする。これは、臨床上の利益を提供するために投与の後および間に確立かつ維持される十分な薬物濃度が存在することを確実にする。このアプローチの必然的な結果は、全部の身体組織、とりわけ肝および腸が、処置されている疾患によりそれらが悪影響を及ぼされようと及ぼされなかろうと、該薬物の治療的有効濃度に曝露されることがありそうであることである。
【0082】
代替の一戦略は、炎症を起こした器官に該薬物を直接投与する処置アプローチ(局所療法)を設計することである。このアプローチは全部の慢性炎症性疾患を処置するのに適しているわけではない一方、それは肺疾患(喘息、COPD)、皮膚疾患(アトピー性皮膚炎および乾癬)、鼻疾患(アレルギー性鼻炎)ならびに胃腸疾患(潰瘍性大腸炎)で広範囲に利用されている。
【0083】
局所療法において、有効性は、(i)該薬物が長期の作用持続期間を有しかつ適切な器官に保持されて全身毒性の危険性を最小限にすることを確実にすること、若しくは(ii)有効成分の所望の効果を持続するために利用可能である該薬物の「貯蔵所」を生成する製剤を製造することのいずれかにより達成し得る。アプローチ(i)は抗コリン作用薬チオトロピウム(Spiriva)により例示される。これは、COPDの処置として肺に局所投与され、かつ、その標的受容体に対する例外的高親和性を有して非常に遅いオフ速度(off rate)および必然的な長期の作用持続期間をもたらす。
【0084】
本開示の一局面において、式(1)の化合物は、とりわけ呼吸器疾患、例えばCOPDおよび/若しくは喘息のような慢性呼吸器疾患の処置のための肺への局所送達のような局所送達にとりわけ適する。
【0085】
一態様において、式(1)の化合物はコルチコステロイド処置計画に対し不応性となった患者をコルチコステロイドでの処置に対し感作するのに適する。
【0086】
式(1)の化合物は関節リウマチの処置にもまた有用でありうる。
【0087】
式(1)の化合物は、抗ウイルス特性、例えばピコルナウイルス、具体的にはライノウイルス、インフルエンザ若しくはRSウイルスへの(呼吸器上皮細胞のような)細胞の感染を予防する能力を有しうる。
【0088】
従って、該化合物は、とりわけ、ライノウイルス感染症、インフルエンザ若しくはRSウイルスのようなピコルナウイルス感染症の予防、処置若しくは改善に適する抗ウイルス薬であると考えられる。
【0089】
一態様において、式(1)の化合物は、ライノウイルス感染症、および、具体的には、とりわけin vivoでIL−8のようなサイトカインの遊離をもたらすウイルス感染症のようなウイルス感染症により誘発される炎症を低下させることが可能である。この活性は、例えば、本明細書の実施例に記述されるところのライノウイルス誘発性IL−8アッセイを使用してin vitroで試験しうる。
【0090】
一態様において、式(1)の化合物はとりわけin vivoでライノウイルスにより誘発されるICAM1発現を低下させることが可能である。ICAM1は細胞を感染させるのにいわゆる主溝(major groove)ライノウイルス血清型により使用される受容体機構である。この活性は例えば本明細書の実施例に記述される方法により測定しうる。
【0091】
上の特性が、うっ血性心不全、COPD、喘息、糖尿病、癌および/若しくは免疫抑制患者、例えば臓器移植後のような1種若しくはそれ以上の慢性の状態を伴う患者における悪化、とりわけウイルス性の悪化の処置および/若しくは予防における使用に、式(1)の化合物をとりわけ適するようにすることが期待される。
【0092】
とりわけ、式(1)の化合物は、COPD(慢性気管支炎および肺気腫を包含する)、喘息、小児喘息、嚢胞性線維症、サルコイドーシス、特発性肺線維症、アレルギー性鼻炎、鼻炎、副鼻腔炎、とりわけ喘息ならびにCOPD(慢性気管支炎および肺気腫を包含する)を包含する1種若しくはそれ以上の呼吸器障害の処置で有用でありうる。
【0093】
式(1)の化合物はまた、アレルギー性結膜炎、結膜炎、アレルギー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾癬、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ若しくは変形性関節症に二次的な炎症を起こした関節を包含する局所(topical)若しくは局所(local)治療により処置されうる1種若しくはそれ以上の状態の処置でも有用でありうる。
【0094】
式(1)の化合物は、関節リウマチ、膵炎、悪液質を包含するある種の他の状態の処置、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌、結腸直腸癌および悪性黒色腫を包含する腫瘍の増殖および転移の阻害で有用でありうることもまた期待される。
【0095】
式(1)の化合物は、患者の状態がコルチコステロイドに対し不応性になった場合にコルチコステロイドでの処置に対し患者の状態を再感作もまたしうる。
【0096】
さらに、本発明は、場合によっては1種若しくはそれ以上の製薬学的に許容できる希釈剤若しくは担体とともに本開示の化合物を含んでなる製薬学的組成物を提供する。
【0097】
希釈剤および担体は非経口、経口、局所、粘膜および直腸投与に適するものを包含しうる。
【0098】
上で挙げられたとおり、こうした組成物は、例えば、とりわけ液体溶液若しくは懸濁液の形態で非経口、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内若しくは動脈周囲投与のため;とりわけ錠剤若しくはカプセル剤の形態で経口投与のため;とりわけ散剤、点鼻薬若しくはエアゾル剤の形態で局所例えば肺若しくは鼻内投与、および経皮投与のため;例えば頬側、舌下若しくは膣粘膜への粘膜投与のため、ならびに例えば坐剤の形態で直腸投与のために製造しうる。
【0099】
該組成物は単位剤形で便宜的に投与することができ、また、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、ペンシルバニア州イーストン(1985)に記述され
るところの製薬学的技術分野で公知の方法のいずれによっても製造しうる。非経口投与のための製剤は、滅菌水若しくは生理的食塩水、プロピレングリコールのようなアルキレングリコール、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、植物起源の油、水素化ナフタレン(hydrogenated naphthalene)などを賦形剤として含有しうる。鼻投与のための製剤は固体であることができ、そして賦形剤、例えば乳糖若しくはデキストランを含有しうるか、または点鼻薬若しくは定量スプレー剤の形態での使用のために水性若しくは油性溶液であってもよい。頬側投与のためには、典型的な賦形剤は、糖、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルファ化デンプンなどを包含する。
【0100】
経口投与に適する組成物は1種若しくはそれ以上の生理学的に適合性の担体および/若しくは賦形剤を含むことができ、そして固体若しくは液体の形態であってよい。錠剤およびカプセル剤は、結合剤、例えば、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント若しくはポリビニルピロリドン;乳糖、ショ糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール若しくはグリシンのような増量剤;ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール若しくはシリカのような滑沢剤;およびラウリル硫酸ナトリウムのような界面活性剤とともに製造しうる。液体組成物は、懸濁化剤、例えばソルビトールシロップ、メチルセルロース、糖シロップ、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース若しくは可食脂肪;レシチン若しくはアラビアゴムのような乳化剤;アーモンド油、ココナッツ油のような植物油、タラ肝油若しくはラッカセイ油;ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)およびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)のような保存剤のような慣習的な添加物を含有しうる。液体組成物は、単位剤形を提供するために例えばゼラチン中に被包化しうる。
【0101】
固体の経口剤形は、錠剤、2片硬殻カプセル剤および軟質弾性ゼラチン(SEG)カプセル剤を包含する。
【0102】
乾燥殻製剤は、典型的に、約40%ないし60%濃度のゼラチン、約20%ないし30%濃度の可塑剤(グリセリン、ソルビトール若しくはプロピレングリコールのような)、および約30%ないし40%濃度の水から構成される。保存剤、色素、乳白剤および着香料のような他の材料もまた存在しうる。液体充填物質は、鉱物油、植物油、トリグリセリド、グリコール、多価アルコールおよび界面活性剤のようなベヒクル若しくはベヒクルの組合せに溶解、可溶化または(ミツロウ、硬化ヒマシ油若しくはポリエチレングリコール4000のような懸濁化剤で)分散された固体の薬物あるいは液体の薬物を含んでなる。
【0103】
適しては、式(I)の化合物は肺に局所投与される。これゆえに、われわれは、本発明により、場合によっては1種若しくはそれ以上の局所で許容できる希釈剤若しくは担体とともに本開示の化合物を含んでなる製薬学的組成物を提供する。肺への局所投与はエアゾル製剤の使用により達成しうる。エアゾル製剤は、典型的には、クロロフルオロカーボン(CFC)若しくはハイドロフルオロカーボン(HFC)のような適するエアゾル噴射剤に懸濁若しくは溶解された有効成分を含んでなる。適するCFC噴射剤は、トリクロロモノフルオロメタン(噴射剤11)、ジクロロテトラフルオロメタン(噴射剤114)およびジクロロジフルオロメタン(噴射剤12)を包含する。適するHFC噴射剤は、テトラフルオロエタン(HFC−134a)およびヘプタフルオロプロパン(HFC−227)を包含する。噴射剤は、典型的には総吸入組成物の40%ないし99.5%、例えば40%ないし90重量%を含んでなる。該製剤は、補助溶媒(例えばエタノール)および界面活性剤(例えばレシチン、ソルビタントリオレエートなど)を包含する賦形剤を含みうる。エアゾル製剤はキャニスター中に包装され、そして適する一用量が(例えば、Bespak、Valois、若しくは3Mにより供給されるところの)計量バルブによって送達される。
【0104】
肺への局所投与は、水性溶液若しくは懸濁液のような加圧されない製剤の使用によってもまた達成しうる。これはネブライザーによって投与しうる。肺への局所投与は乾燥粉末製剤の使用によってもまた達成しうる。乾燥粉末製剤は、典型的には1〜10ミクロンの動力学的粒径(MMAD)をもつ微粉形態の本開示の化合物を含有することができる。該製剤は、典型的には、通常大きな粒子径例えば100μm若しくはそれ以上のMMADの乳糖のような局所で許容できる希釈剤を含有することができる。乾燥粉末送達装置の例は、SPINHALER、DISKHALER、TURBOHALER、DISKUSおよびCLICKHALERを包含する。
【0105】
式(1)の化合物は治療活性を有する。さらなる一局面において、本発明は医薬品としての使用のための本開示の化合物を提供する。従って、さらなる一局面において、本発明は、上で挙げられた状態の1種若しくはそれ以上の処置での使用のための本明細書に記述されるところの化合物を提供する。
【0106】
さらなる一局面において、本発明は、上で挙げられた状態の1種若しくはそれ以上の処置のための医薬品の製造のための本明細書に記述されるところの化合物の使用を提供する。
【0107】
さらなる一局面において、本発明は、本開示の化合物若しくは該化合物を含んでなる製薬学的組成物の有効量を被験体に投与することを含んでなる、上で挙げられた状態の1種若しくはそれ以上の処置方法を提供する。
【0108】
「処置」という語は予防的ならびに治療的処置を包含することを意図している。
【0109】
本開示の化合物は、1種若しくはそれ以上の他の有効成分、例えば上で挙げられた状態を処置するのに適する有効成分とともに投与してもまたよい。例えば、呼吸器障害の処置のための可能な組合せは、ステロイド(例えばブデソニド、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル、フルチカゾンプロピオン酸エステル、モメタゾンフランカルボン酸エステル、フルチカゾンフランカルボン酸エステル)、βアゴニスト(例えばテルブタリン、サルブタモール、サルメテロール、ホルモテロール)、および/若しくはキサンチン(例えばテオフィリン)との組合せを包含する。他の適する有効成分は、チオトロピウムのような抗コリン薬、および限定されるものでないが例えばリン酸エステルとしてのザナミビル若しくはオセルタミビルを挙げることができる抗ウイルス薬を包含する。他の抗ウイルス薬はペラミビルおよびラニナミビルを包含する。
【0110】
式(1)の化合物の抗ウイルス特性に関して下で生成されるデータは、発明者が、他の抗ウイルス療法がCOPDおよび/若しくは喘息のような呼吸器疾患ならびに/または上で列挙される適応症の1種若しくはそれ以上を伴う患者の悪化の処置若しくは予防で有用であることができると考えることに導く。従って、一局面において、うっ血性心不全、糖尿病、癌のような慢性状態を伴う患者、若しくは免疫抑制患者、例えば臓器移植後の呼吸器ウイルス感染症の処置若しくは予防における、限定されるものでないがザナマビル(zanamavir)若しくはオセルタミビル(例えばオセルタミビルリン酸エステル)を挙げることができる抗ウイルス療法の使用が提供される。
【0111】
略語
AcOH 氷酢酸
Aq 水性
Ac アセチル
ATP アデノシン−5’−三リン酸
BALF 気管支肺胞洗浄液
Br broad
BSA ウシ血清アルブミン
CarCart(R) 触媒カートリッジ
CDI 1,1−カルボニル−ジイミダゾール
COPD 慢性閉塞性肺疾患
D 二重項
Pd(dba) トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム
DCM ジクロロメタン
DIAD アゾジカルボン酸ジイソプロピル
DIBAL−H 水素化ジイソブチルアルミニウム
DMAP N,N−ジメチルピリジン−4−アミン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
ELISA 酵素結合免疫吸着検定法
EtOAc 酢酸エチル
FCS ウシ胎児血清
FRET 蛍光共鳴エネルギー転移
HEPES 2−(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル)エ
タンスルホン酸
Hr 時間(1若しくは複数)
HRP ワサビペルオキシダーゼ
HRV ヒトライノウイルス
ICAM1 細胞接着分子1
IgG 免疫グロブリンG
IL−8 インターロイキン8
JNK c−Jun N末端キナーゼ
LPS リポ多糖
MAPK マイトジェンタンパク質活性化タンパク質キナーゼ
MAPKAP−K2 マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナー
ゼ2
MeOH メタノール
Min 分(1若しくは複数)
MTT 臭化3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−2,5−ジ
フェニルテトラゾリウム
NMP N−メチルピロリドン(1−メチルピロリジン−2−オン)
NSE 有意の効果なし
OD 光学密度
PBMC 末梢血単核細胞
PBS リン酸緩衝生理的食塩水
PMA ホルボールミリステートアセテート
PPh トリフェニルホスフィン
RSV RSウイルス
RT 室温
RP HPLC 逆相高速液体クロマトグラフィー
S 一重項
SCX 固体支持陽イオン交換
SDS ドデシル硫酸ナトリウム
SiO シリカゲル
T 三重項
TCID50 50%組織培養物感染用量
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TMB 3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン
TNFα 腫瘍壊死因子α
キサントホス 4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサ
ンテン
【実施例】
【0112】
一般的手順
全部の出発原料および溶媒は商業的供給源から得たか、若しくは文献の引用に従って製造したかのいずれかであった。水素化は、述べられた条件下でThales H−cubeフローリアクターで実施した。有機溶液は硫酸マグネシウムで慣例に乾燥した。SCXはSupelcoから購入しかつ使用前に1M水性HClで処理した。精製されるべき反応混合物を最初にMeOHで希釈し、そして数滴のAcOHで酸性にした。この溶液をSCXに直接負荷しかつMeOHで洗浄した。所望の物質をその後MeOH中1%NHで洗浄することにより溶出した。カラムクロマトグラフィーは、示される量を使用してSilicycle充填済みシリカ(230〜400メッシュ、40〜63μM)カートリッジで実施した。
【0113】
調製的逆相高速液体クロマトグラフィー:
Agilent ScalarカラムC18、5μm(21.2×50mm)、215および254nmでのUV検出を使用する、10minにわたる0.1%v/vギ酸を含有するHO−MeCN勾配で溶出する流速28mL/min。勾配情報:0.0〜0.5min:95%HO−5%MeCN;0.5〜7.0min;95%HO−5%MeCNから5%HO−95%MeCNまで傾斜;7.0〜7.9min:5%HO−95%MeCNで保持;7.9〜8.0min:95%HO−5%MeCNに戻す;8.0〜10.0min:95%HO−5%MeCNで保持。
【0114】
分析法
逆相高速液体クロマトグラフィー:
Agilent ScalarカラムC18、5μm(4.6×50mm)若しくはWaters XBridge C18、5μm(4.6×50mm)215および254nmでのUV検出を使用する、7minにわたる0.1%v/vギ酸を含有するHO−MeCN勾配で溶出する流速2.5mL/min。勾配情報:0.0〜0.1min:95%HO−5%MeCN;0.1〜5.0min:95%HO−5%MeCNから5%HO−95%MeCNまで傾斜;5.0〜5.5min:5%HO−95%MeCNで保持;5.5〜5.6min:5%HO−95%MeCNで保持、流速を3.5ml/minに増加;5.6〜6.6min:5%HO−95%MeCNで保持、流速3.5ml/min;6.6〜6.75min:95%HO−5%MeCNに戻す、流速3.5ml/min;6.75〜6.9min:95%HO−5%MeCNで保持、流速3.5ml/min;6.9〜7.0min:95%HO−5%MeCNで保持、流速を2.5ml/minに減少。
【0115】
H NMR分光法:
参照として残留非重水素化溶媒を使用するBruker Avance III 400MHz
【0116】
スキーム1の実験手順
4−(2−クロロピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−アミン(3)
【0117】
【化21】

【0118】
−20℃のNMP(40mL)中の2−クロロ−4−フルオロピリジン(1.261g、9.58mmol)および4−アミノ−1−ナフトール塩酸塩(2)(750mg、3.83mmol)の攪拌溶液にカリウムtert−ブトキシド(1.290g、11.50mmol)を添加した。該反応混合物をRTに温まらせた。2.5hr後に該反応混合物を水(100mL)で希釈しかつEtOAc(100mL、その後2×80mL)で抽出した。合わせた有機抽出液を塩水(150mL)で洗浄し、乾燥しかつ真空中で蒸発させた。粗生成物をMeOH中1%NH溶液で溶出するSCX捕捉および遊離にかけ、そして溶媒を真空中で除去して4−(2−クロロピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−アミン(3)(1.019g、92%)を褐色固形物:m/z 271(M+H)(ES)として生じた。
【0119】
4−(2−クロロピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−N,N−ジ−tert−ブチルカルバメート(4)
【0120】
【化22】

【0121】
0℃のTHF(30mL)中の4−(2−クロロピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−アミン(3)(1.019g、3.76mmol)の攪拌溶液にDMAP(0.034g、0.282mmol)およびその後二炭酸ジ−tert−ブチル(0.904g、4.14mmol)を添加した。該反応混合物を0℃で30min攪拌し、そしてその後RTに温まらせた。1.5hr後に該反応混合物を0℃に冷却し、そしてさらなる二炭酸ジ−tert−ブチル(0.904g、4.14mmol)を添加した。生じる混合物を0℃で15minおよびその後RTで攪拌した。16hr後に該反応混合物を水(40mL)で希釈しかつEtOAc(2×40mL)で抽出した。合わせた有機抽出液を塩水(75mL)で洗浄し、乾燥しかつ真空中で蒸発させた。粗物質をイソヘキサン中0ないし40%EtOAcで溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO;80g)により精製して4−(2−クロロピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−N,N−ジ−tert−ブチルカルバメート(4)(0.892g、48%)を紫色固形物:m/z 471(M+H)(ES)として生じた。
【0122】
tert−ブチル4−(4−(N,N−ジ−tert−ブチルカルバミル)ナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イルカルバメート(5)
【0123】
【化23】

【0124】
4−(2−クロロピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−N,N−ジ−tert−ブチルカルバメート(4)(0.892g、1.894mmol)、tert−ブチルカルバメート(0.666g、5.68mmol)、炭酸セシウム(0.926g、2.84mmol)、Pd(dba)(0.043g、0.047mmol)およびキサントホス(0.055g、0.095mmol)の混合物をTHF(10mL)に懸濁した。該反応混合物を窒素で徹底的にパージし、そしてその後還流で加熱した。15hr後に該混合物をRTに冷却し、水(35mL)で希釈しかつEtOAc(35mL、25mL)で抽出した。合わせた有機抽出液を塩水(50mL)で洗浄し、乾燥しかつ真空中で蒸発させた。粗物質をイソヘキサン中0ないし30%EtOAcで溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO;80g)により精製してtert−ブチル4−(4−(N,N−ジ−tert−ブチルカルバミル)ナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イルカルバメート(5)(289mg、28%)を白色固形物:m/z 552(M+H)(ES)として生じた。
【0125】
4−(4−アミノナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−アミン(6)
【0126】
【化24】

【0127】
0℃のDCM(8mL)中のtert−ブチル4−(4−(N,N−ジ−tert−ブチルカルバミル)ナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イルカルバメート(5)(289mg、0.524mmol)の攪拌溶液にTFA(4mL)を添加した。生じる混合物をRTにゆっくりと加温しつつ攪拌した。5hr後に揮発性物質を真空中で除去し、そして残渣をMeOH(5mL)に溶解しかつMeOH中1%NH溶液で溶出するSCX捕捉および遊離にかけた。溶媒を真空中で除去して、4−(4−アミノナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−アミン(6)(116mg、85%)を褐橙色油状物:m/z 252(M+H)(ES)として提供した。
【0128】
1−(4−(2−アミノピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−イル)−3−(3−tert−ブチル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−イル)尿素(8)
【0129】
【化25】

【0130】
NaHCOの飽和溶液(14mL)をDCM(20mL)中の5−アミノピラゾール(7)(0.206g、0.900mmol)の溶液に添加した。該混合物を活発に攪拌し、0℃に冷却しかつクロロギ酸トリクロロメチル(0.326mL、2.70mmol)を一部分で添加した。該反応混合物を0℃でさらなる80min活発に攪拌した。層を分離しかつ有機層を乾燥し、真空中で蒸発させ、そして生じる橙色油状物を高真空下で30minさらに乾燥した。単離されたイソシアネートをその後THF(6mL)に溶解しかつ窒素下0℃に保った。
【0131】
0℃のTHF(3mL)中の4−(4−アミノナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−アミン(6)(116mg、0.462mmol)およびDIPEA(241μl、1.385mmol)の攪拌溶液に、上で製造されたイソシアネート溶液のアリコート(2mL、0.300mmol)を添加した。生じる混合物をRTにゆっくりと加温しながら攪拌した。THF中のイソシアネート溶液の追加のアリコートを1.5hr後(1mL、0.150mmol)およびさらなる3.5hr後(0.5mL、0.075mmol)に該反応混合物に添加した。20hr後に水(30mL)を添加しそして該混合物をEtOAc(2×30mL)で抽出した。合わせた有機抽出液を塩水(50mL)で洗浄し、乾燥しかつ真空中で蒸発させた。粗物質をイソヘキサン中25ないし100%(EtOAc中5%MeOH)で溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO;12g)により精製して、1−(4−(2−アミノピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−イル)−3−(3−tert−ブチル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−イル)尿素(8)(127mg、49%)を褐色油状物:m/z 507(M+H)(ES)として提供した。
【0132】
N−(4−(4−(3−(3−tert−ブチル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−イル)ウレイド)ナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−2−メトキシアセトアミド(1)
【0133】
【化26】

【0134】
塩化メトキシアセチル(64.2μl、0.703mmol)をTHF(5mL)中の1−(4−(2−アミノピリジン−4−イルオキシ)ナフタレン−1−イル)−3−(3−tert−ブチル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−イル)尿素(8)(89mg、0.176mmol)およびDIPEA(153μl、0.878mmol)の混合物にゆっくりと添加した。該反応混合物を0℃でさらなる20min攪拌し、そしてその後RTに加温した。2.5hr後に該反応をMeOH中1%NHの溶液(3mL)の添加によりクエンチし、そして生じる混合物をさらなる45min攪拌した。揮発性物質を真空中で除去し、そして残渣をMeOH(5mL)およびAcOH(2mL)の混合物に溶解しかつMeOH中1%NH溶液で溶出するSCX捕捉および遊離にかけた。粗物質をイソヘキサン中0ないし60%(EtOAc中5%MeOH)で溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO;12g)により精製して、N−(4−(4−(3−(3−tert−ブチル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−イル)ウレイド)ナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−2−メトキシアセトアミド(1)(62mg、61%)を白色固形物:m/z 579(M+H)(ES)として生じた。H NMR(400MHz、DMSO−d)δ:1.29(9H、s)、2.40(3H、s)、3.31(3H、s)、3.99(2H、s)、6.41(1H、s)、6.70(1H、dd)、7.32−7.40(3H、m)、7.44−7.48(2H、m)、7.55−7.61(1H、m)、7.63−7.67(2H、m)、7.84(1H、dd)、7.97(1H、d)、8.09(1H、d)、8.19(1H、d)、8.79(1H、s)、9.13(1H、s)、10.02(1H、s)。
【0135】
スキーム2の実験手順
4−(4−ニトロナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−アミン(10)
【0136】
【化27】

【0137】
窒素下0℃のDMF(200mL)中の2−アミノピリジン−4−オール(23.0g、209mmol)の攪拌溶液に、NaH(鉱物油中60%分散系、9.21g、230mmol)を30分にわたり一部分ずつ添加した。該混合物をRTに加温しかつ1hr後に0℃に冷却し、そしてDMF(100mL)中の1−フルオロ−4−ニトロナフチレン(9)(40.0g、209mmol)の溶液を添加した。該反応混合物をRTに温まらせ、そして1.5hr後にそれを水(1L)で希釈しかつEtOAc(3×500mL)で抽出した。有機抽出液を合わせ、そして水(3×700mL)および塩水(500mL)で洗浄した。黄色沈殿物が分離し、これを濾過により収集しかつ水(500mL)で洗浄しそして真空中で一夜乾燥した。有機層を乾燥し(MgSO)、濾過しかつ真空中で蒸発させた。残渣をアセトニトリル(20mL)およびエーテル(200mL)の混合物とともに摩砕して赤色固形物を生じ、これをイソヘキサン(200mL)で洗浄した。摩砕からの上清液を真空中で蒸発させ、そして残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO、120g、イソヘキサン中30〜100%EtOAc、勾配溶出)により精製した。この生成物を前に単離された2種の固形物と合わせ、MeOH(500mL)に溶解しかつ真空中で蒸発させて、4−(4−ニトロナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−アミン(10)(40.1g、65%)を黄色固形物:m/z 282(M+H)(ES)として提供した。
【0138】
2−メトキシ−N−(4−(4−ニトロナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)アセトアミド(11)
【0139】
【化28】

【0140】
窒素下0℃のDCM(600mL)中の4−(4−ニトロナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−アミン(10)(40.0g、135mmol)およびDIPEA(48.1mL、270mmol)の攪拌溶液に塩化メトキシアセチル(18.53ml、203mmol)を一滴ずつ添加した。該混合物をRTに加温し、そして1hr後にアンモニアの溶液(100mL、MeOH中7M)を添加しかつ攪拌を30min継続し、その時間の間に沈殿物が生じた。該混合物を真空中で蒸発させ、そして水(1L)を残渣に添加して赤色懸濁液を提供した。黄色が持続するまで(約5mL)氷酢酸を一滴ずつ添加した。該固形物を濾過により収集しかつ水(300mL)で洗浄して、2−メトキシ−N−(4−(4−ニトロナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)アセトアミド(11)(44.1g、90%)を黄色固形物:m/z 354(M+H)(ES)として提供した。
【0141】
N−(4−(4−アミノナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−2−メトキシアセトアミド(12)
【0142】
【化29】

【0143】
酢酸(300mL)中の2−メトキシ−N−(4−(4−ニトロナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)アセトアミド(11)(44.0g、125mmol)および鉄粉(41.7g、747mmol)の攪拌懸濁液を45℃で加熱した。3hr後に該混合物をRTに冷却し、そして固体NaCO(200g)上にゆっくりとかつ慎重に注いだ。該混合物は活発に発泡した。該混合物を水(500mL)とEtOAc(500mL)の間で分配した。水層を固体NaCOでpH11に塩基性化し、そしてセライトのパッドで濾過した。水層およびセライトパッドをEtOAc(3×500mL)で抽出し、そして合わせた抽出液を飽和水性NaHCO溶液(500mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO)かつ真空中で蒸発させて、N−(4−(4−アミノナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−2−メトキシアセトアミド(12)(35.0g、78%)を紫色泡状物:m/z 324(M+H)(ES)として提供した。
【0144】
N−(4−(4−(3−(3−tert−ブチル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−イル)ウレイド)ナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−2−メトキシアセトアミド(1)
【0145】
【化30】

【0146】
RTの窒素下のDCM(250mL)中のCDI(28.8g、178mmol)の攪拌懸濁液に3−tert−ブチル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−アミン(7)(40.7g、178mmol)を1hrにわたり一部分ずつ添加した。1hr後に、生じる暗赤色溶液を、DCM(1L)中のN−(4−(4−アミノナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−2−メトキシアセトアミド(12)(35.5g、99mmol)の攪拌溶液に1hrにわたり一滴ずつ添加した。1hr後にMeOH(100mL)を添加し、そして該混合物をRTで16hr保った。該反応混合物を真空中で蒸発させ、そして残渣をDCM(500mL)に溶解しかつ水および飽和水性NaHCO溶液(500mL)で洗浄した。有機層を乾燥し(MgSO)、真空中で蒸発させかつ残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO、800g、DCM中2%MeOH、アイソクラチック溶出)により精製した。この生成物を酢酸エチル/ヘプタン(5:3 v/v混合物800mL)から再結晶して、N−(4−(4−(3−(3−tert−ブ
チル−1−p−トリル−1H−ピラゾル−5−イル)ウレイド)ナフタレン−1−イルオキシ)ピリジン−2−イル)−2−メトキシアセトアミド(1)(25.5g、45%)を白色粉末として提供した。実測値:C、68.41;H、5.93;N、14.36;C3334は、C、68.49;H、5.92;N、14.52%を必要とする。
【0147】
生物学的試験
in vitroアッセイを使用して確立された式(1)の化合物の特性の要約を下に提示する。式(1)の化合物はBIRB796に対するそのプロファイルの実質的差違を示した。双方の化合物はTHP−1細胞および分化U937細胞におけるLPS誘発性TNFα遊離の強力かつ効果的な阻害剤であった(表1)とは言え、BIRB796は、われわれが検討した6種の他の系、すなわち分化U937細胞におけるLPS誘発性IL−8遊離(BIRB796 最大阻害の31%;式(1)の化合物のIC50:7.9nM);痰マクロファージからのLPS誘発性IL−8遊離(表2);ヒト気管支上皮細胞株BEAS2B細胞におけるポリI:C誘発性ICAM1発現(BIRB796 10μg/mlで効果なし;式(1)の化合物のIC50:1.7nM)、BEAS2B細胞におけるライノウイルス誘発性ICAM1発現(表2);BEAS2B細胞におけるライノウイルス誘発性IL−8遊離(表2)およびMRC5細胞におけるライノウイルス複製において有意の効果なし(NSE)を示した。顕著に対照的に、式(1)の化合物は全6種の系で活性を示し、かつ、U937細胞におけるLPS誘発性TNFα遊離で示されたにおけるものに同等であったか若しくはそれを超えた効力のレベルを示した。
【0148】
【表1】

【0149】
【表2】

【0150】
これら2種の化合物のヒト胎児肺線維芽細胞MRC5細胞中でのライノウイルス複製を阻害する能力をさらに検討した。BIRB796は1.9μMまでの濃度範囲にわたりウイルス複製に対する効果を伴わなかったことが確立された。しかしながら、われわれは式(1)の化合物の濃度効果曲線を検討し、そして5.2nMという濃度がウイルス力価を1対数桁減少したことを見出した。
【0151】
これらのアッセイの説明は後に続くとおりである。すなわち、
【0152】
酵素阻害アッセイ
化合物の酵素阻害活性を、ドナーおよびアクセプター双方のフルオロフォア(Z−LYTE、Invitrogen Ltd.、英国ペーズリー)で標識した合成ペプチドを使用するFRETにより測定した。組換えリン酸化p38 MAPK γ(MAPK12:Millipore)をHEPES緩衝液で希釈し、所望の最終濃度の化合物と混合し、そして室温で2時間インキュベートした。FRETペプチド(2μM)およびATP(100μM)を次に酵素/化合物の混合物に添加しかつ1hrインキュベートした。発色試薬(プロテアーゼ)は蛍光マイクロプレートリーダー(Varioskan(R)Flash、ThermoFisher Scientific)での検出前に1時間添加した。部位特異的プロテアーゼはリン酸化されていないペプチドのみを切断しそしてFRETシグナルを除外する。各反応のリン酸化レベルを、フルオレセイン発光(アクセプター)に対するクマリン発光(ドナー)の比を使用して計算し、高い比は高リン酸化および低い比は低リン酸化レベルを示す。各反応の阻害パーセントを阻害されない対照に関して計算し、そして50%阻害濃度(IC50値)をその後濃度反応曲線から計算した。
【0153】
p38 MAPKα(MAPK14:Invitrogen)について、酵素活性を下流の分子MAPKAP−K2の活性化/リン酸化を測定することにより間接的に評価した。p38 MAPKαタンパク質を試験化合物とRTで2時間混合した。p38αの不活性標的MAPKAP−K2(Invitrogen)およびMAPKAP−K2のリン酸化標的であるFRETペプチド(2μM)ならびにATP(10μM)をその後該酵素/化合物の混合物に添加しかつ1時間インキュベートした。発色試薬をその後添加し、そして、蛍光による検出がアッセイプロトコルを終了する前1時間、該混合物をインキュベートした。
【0154】
U937細胞およびTHP−1細胞におけるLPS誘発性TNFα遊離:効力
ヒト単球細胞株U937細胞を、ホルボールミリステートアセテート(PMA;100ng/ml)との48ないし72hrのインキュベーションによりマクロファージ型細胞
に分化させた。適切な場合は、細胞を最終濃度の化合物と2hrプレインキュベートした。細胞をその後0.1μg/mlのLPS(大腸菌(E.Coli):O111:B4、Sigmaから)で4hr刺激し、そしてサンドイッチELISA(Duo−set、R&D systems)によるTNFα濃度の測定のため上清を収集した。TNFα産生の阻害を、ベヒクル対照との比較により各濃度の試験化合物で10μg/mlのBIRB796により達成されたもののパーセントとして計算した。相対50%有効濃度(R−EC50)を、結果として生じる濃度反応曲線から決定した。ヒト単球細胞株THP−1もまたこのアッセイに使用した。THP−1細胞を3μg/mlのLPS(大腸菌(E.Coli):O111:B4、Sigmaから)で4hr刺激し、そしてTNFα濃度の測定のため上清を収集した。50%阻害濃度(IC50)を、結果として生じる濃度反応曲線から決定した。
【0155】
U937細胞におけるLPS誘発性IL−8遊離:効力
ヒト単球細胞株U937細胞を、ホルボールミリステートアセテート(PMA;100ng/ml)との48ないし72時間のインキュベーションによりマクロファージ型細胞に分化させた。細胞を最終濃度の化合物と2hrプレインキュベートした。細胞をその後0.1μg/mlのLPS(大腸菌(E.Coli):O111:B4、Sigmaから)で4hr刺激し、そしてサンドイッチELISA(Duo−set、R&D systems)によるIL−8濃度の測定のため上清を収集した。IL−8産生の阻害をベヒクル対照との比較により各濃度の試験化合物で計算した。50%阻害濃度(IC50)を、結果として生じる濃度反応曲線から決定した。
【0156】
BEAS2B細胞におけるポリI:C誘発性ICAM−1誘導:効力
ポリI:C(1μg/ml)(Invivogen Ltd.、カリフォルニア州サンディエゴ)を、Oligofectamine(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)を用いてBEAS2B細胞(ヒト気管支上皮細胞、ATCC)にトランスフェクトした。細胞は最終濃度の化合物と2hrプレインキュベートした。細胞表面上のICAM1発現のレベルを細胞に基づくELISAにより測定した。簡潔には、ポリI:Cトランスフェクション後18hrに細胞をPBS中4%ホルムアルデヒドで固定した。0.1%アジ化ナトリウムおよび1%過酸化水素を添加することにより内因性ペルオキシダーゼをクエンチした後に、細胞を洗浄緩衝液(PBS中0.1%Tweeen:PBS−Tween)で洗浄した。ウェルをPBS−Tween中5%乳で1hrブロッキングした後、細胞を1%BSA PBS中抗ヒトICAM−1抗体(Cell Signaling Technology、マサチューセッツ州ダンバーズ)と4℃で一夜インキュベートした。細胞をPBS−Tweenで洗浄しかつ二次抗体(HRP結合抗ウサギIgG、Dako Ltd.、デンマーク・グロストルップ)とインキュベートした。ICAM−1シグナルを、基質を添加すること、および分光光度計を使用して655nmの参照波長を用い450nmでの吸光度を読み取ることにより検出した。細胞をその後PBS−Tweenで洗浄し、そして各ウェル中の総細胞数を、クリスタルバイオレット染色および1%SDS溶液による溶出後に595nmでの吸光度を読み取ることにより測定した。測定されたOD450−655読み取り値を、各ウェル中のOD595読み取り値で除算することにより細胞数について補正した。ICAM−1発現の阻害はベヒクル対照との比較により各濃度の試験化合物で計算した。50%阻害濃度(IC50)を、結果として生じる濃度反応曲線から決定した。
【0157】
痰マクロファージアッセイ
痰を健康志願者への3%(w/v)高張食塩水の噴霧溶液の吸入により誘導した。ジチオスレイトール(最終で0.02%)をその後添加し、そして痰がより少なく粘性になるまでボルテックスミキサーを使用して活発に混合した。遠心分離(1500rpmで10min)により生じられた細胞ペレットを10%FCS RPMI−1640に再懸濁し
、そして痰マクロファージを高結合プレート(CellBIND(R)、Corning
Limited.英国)での2hrのプレート接着により分離した。接着された細胞をRPMI−1640で洗浄しかつLPS(1μg/ml)で刺激した。4hrのインキュベーション後に、Duoset ELISA発色キット(R&D systems、ミネソタ州ミネアポリス)を使用するIL−8産生の測定のため上清を収集した。化合物はLPS刺激の2hr前に添加した。
【0158】
ライノウイルスに誘発されるIL−8およびICAM−1
ヒトライノウイルスRV16(HRV)をAmerican Type Culture Collection(バージニア州マナサス)から得た。ウイルスストックを、細胞の80%が細胞壊死性になるまでHela細胞をHRVに感染させることにより生成した。
【0159】
BEAS2B細胞を5MOI(5の感染多重度)のHRVに感染させ、そして吸収のため穏やかな振とうを伴い33℃で2hrインキュベートした。細胞をその後PBSで洗浄し、新鮮培地を添加し、そして細胞をさらなる72hrインキュベートした。Duoset ELISA発色キット(R&D systems、ミネソタ州ミネアポリス)を使用してIL−8濃度のアッセイのため上清を収集した。
【0160】
ICAM−1を発現する細胞表面のレベルを細胞に基づくELISAにより測定した。適切なインキュベーション後に細胞をPBS中4%ホルムアルデヒドで固定した。0.1%アジ化ナトリウムおよび1%過酸化水素を添加することにより内因性ペルオキシダーゼをクエンチした後に、ウェルを洗浄緩衝液(PBS中0.05%Tween:PBS−Tween)で洗浄した。ウェルをPBS−Tween中5%乳で1hrブロッキングした後、細胞を5%BSA PBS−Tween中抗ヒトICAM−1抗体(1:500)とともに一夜インキュベートした。ウェルをPBS−Tweenで洗浄しかつ二次抗体(HRP結合抗ウサギIgG、Dako Ltd.)とともにインキュベートした。ICAM−1シグナルを、基質を添加すること、および分光光度計を使用して655nmの参照波長を用いて450nmで読み取ることにより検出した。ウェルをその後PBS−Tweenで洗浄し、そして各ウェル中の総細胞数を、クリスタルバイオレット染色および1%SDS溶液による溶出後に595nmでの吸光度を読み取ることにより測定した。測定されたOD450−655読み取り値を、各ウェル中のOD595読み取り値で除算することにより細胞数について補正した。化合物を、HRV感染2hr前、および非感染HRVを洗い落とした感染2hr後に添加した。
【0161】
ライノウイルス力価アッセイ
MRC5細胞(ヒト肺線維芽細胞、ATCC)を1MOI(1.0の感染多重度)のHRVに感染させ、そして吸収のため穏やかな振とうを伴い33℃で1hrインキュベートした。細胞をその後PBSで洗浄し、新鮮培地を添加し、そして細胞をさらなる96hrインキュベートした。上清を収集し、そしてウイルス含有上清の10倍連続希釈を調製した。全部の滴定(titration)は、コンフルエントなHela細胞単層を連続希釈上清(10−1ないし10−5)に感染させること、および感染4日後にMTTアッセイにより細胞変性効果を評価することにより実施した。Hela細胞の50%を感染させるのに必要とされるウイルスの量をTCID50U/mLとして各処置で計算した。化合物は、HRV感染の24および2hr前、ならびに非感染HRVを洗い落とした感染1hr後に添加した。
【0162】
マウスにおけるLPS誘発性好中球蓄積
非絶食マウスに、LPS処置を開始する前の示された時点(2〜12hrの範囲内)にベヒクル若しくは試験物質いずれかを気管内経路により投与した。T=0でマウスを曝露
チャンバーに入れかつLPSに曝露した。LPS投与8時間後に動物を麻酔下にし、気管にカニューレ処置し、そして気管カテーテルを介して肺中に1mlのPBSを注入することおよび引き抜くことによりBALFを抽出した。BALFサンプル中の総白血球数および白血球百分率数はNeubaur血球計算器を使用して測定した。BALFサンプルのサイトスピンスメアを室温で200rpmで5分間の遠心分離により調製し、そしてDiffQuik染色系(Dade Behring)を使用して染色した。油浸顕微鏡検査を使用して細胞を計数した。化合物(1)でのマウスの処置は、LPS投与前2、8若しくは12hrに処置される場合にBALF中への好中球蓄積を阻害することが見出された(表3および4)。
【0163】
【表3】

【0164】
【表4】

【0165】
モルモットにおけるアレルゲン誘発性好酸球蓄積
Dunkin Hartleyモルモットを卵アルブミンで免疫した。6用量のベヒクル若しくは実施例8(1.5mg/ml)をエアゾルにより12時間ごとに投与し、最後の用量はアレルゲン投与(等級V、OVA;De Vibliss超音波ネブライザー2000を使用してエアゾル化した10μg/mL溶液、30minにわたる)の開始2hr前に投与した。2群の動物が6用量の実施例8を受領した一方、さらなる2群が6用量のベヒクルを受領した。OVA投与(上の群の詳細を参照されたい)の8若しくは24時間後に気管にカニューレ処置しかつBALFを抽出した。このための手順は気管カテーテルを介して肺中に5mlのPBSを吸引することを必要とした。BAL液サンプル中の総白血球数および白血球百分率数はNeubaur血球計算器を使用して測定した。BAL液サンプルのサイトピンスメアを200rpmで室温で5minの遠心分離により調製し、そしてDiffQuik染色系(Dade Behring)を使用して染色した。細胞は油浸顕微鏡検査を使用して盲検で(blind)計数した。
【0166】
化合物(1)でのモルモットの処置は、卵アルブミン投与後8および24時間で検討した場合にBALF中への好酸球蓄積を阻害することが見出された(表5)。
【0167】
【表5】

【0168】
たばこ煙モデル
A/Jマウス(雄性、5週齢)を、小動物向けのたばこ煙吸入実験装置(SIS−CS型;柴田科学株式会社、東京)を使用して、11日間1日あたり30min間たばこ煙(4%たばこ煙、圧縮空気で希釈)に曝露した。試験物質を、最後のたばこ煙曝露後3日間1日2回、鼻内に(50%DMSO/PBS中溶液35μl)かつ治療的に与えた。最終投与12時間後に動物を麻酔し、気管にカニューレ処置しかつ気管支肺胞洗浄液(BALF)を収集した。肺胞マクロファージおよび好中球の数を、抗マウスMOMA2抗体(マクロファージ)若しくは抗マウス7/4抗体(好中球)を使用するFACS分析(EPICS(R)ALTRA II、Beckman Coulter,Inc.、米国カリフォルニア州フラートン)により測定した。
【0169】
化合物(1)での処置の結果を図1(好中球)および図2(活性化肺胞マクロファージ)に示す。細胞数のデータは平均±SEMとして示す。この試験に使用したたばこ煙モデルはコルチコステロイド不応性の系として報告されており(Medicherla S.ら、(2008);J.Pharmacol.Exp.Ther.324(3):921−9)、そして、フルチカゾンプロピオン酸エステルが、LPS誘発性好中球蓄積の80%超の阻害を生じた同じ用量である50μg/mL(35μl、1日2回、鼻内)で気道への好中球若しくはマクロファージいずれの蓄積も阻害しなかったことが確認された。しかしながら、化合物(1)での処置は、好中球および活性化マクロファージ双方の数の顕著な用量依存性の減少をもたらすことが見出された。
【0170】
卵アルブミン投与/パラインフルエンザ感染モデル
雄性Dunkin−Hartleyモルモット(300〜350g、n=6/群)を、第2および6日に1ml生理的食塩水中100μgの卵アルブミン(OVA)+100mgのAl(OH)で感作した(i.p.)。パラインフルエンザウイルス(PIV−3;10感染単位)若しくはウイルスを含まない培地を第11および12日に鼻に注入した。動物を、第10〜15日から、噴霧される(i)1日あたり1.5mgの用量のフルチカゾンプロピオン酸エステル(初期の試験は、この用量のフルチカゾンプロピオン酸エステルがPIV3培地で処置した感作動物での卵アルブミン媒介性肺機能変化を阻害したことを確立した)若しくは(ii)化合物(1)(1日あたり0.15mg)若しくは(iii)上で示された用量のフルチカゾンプロピオン酸エステルおよび化合物(1)の組合せ若しくは(iv)ベヒクル(DMSO:エタノール:生理的食塩水、30:30:40%)いずれかで処置した。全動物に第15日に噴霧OVA(10μg/ml)を1hr投与し、そして比気道コンダクタンス(sGaw)の反復測定を、全身プレチスモグラフィーを使用して24hにわたり行った。OVA投与後のsGawの測定値をベースラインからの変化%としてプロットする。図3は単剤療法としての化合物1の効果を示す一方
、図4はフルチカゾンプロピオン酸エステルと組合せで投与される場合のその効果を示す。化合物(1)単独での処置は、卵アルブミン投与に対する初期(第1hr)の気管支括約筋応答に対する影響を生じないことが見出されたが、しかしその後の応答(処置後2〜12hr)を顕著に阻害した。フルチカゾンプロピオン酸エステルと共投与される場合、卵アルブミン投与により惹起される初期およびその後の双方の気管支括約筋応答が阻害された。
【0171】
要約
in vitroの生物学的研究は、式(1)の化合物が、抗炎症活性のin vitroモデル(分化U937細胞およびTHP−1細胞からのLPS誘発性TNFα遊離)における良好な有効性を伴う、p38 MAPキナーゼサブタイプαおよびγの強力な阻害剤であることを示す。加えて、式(1)の化合物は、ライノウイルス誘発性炎症およびライノウイルス複製の双方を阻害することが可能であるという驚くべき特性を示す。
【0172】
本明細および後に続く請求の範囲を通じて、文脈が別の方法で必要としない限り、「含んでなる(comprise)」という語、ならびに「含んでなる(comprises)」および「含んでなること(comprising)」のような変形は、述べられた整数、段階、整数の群若しくは段階の群の包含を意味しているが、しかしいかなる他の整数、段階、整数の群若しくは段階の群の除外も意味していないことが理解されるであろう。
【0173】
本明細書で言及される全部の特許および特許出願はそっくりそのまま引用することにより組み込まれる。
【0174】
本記述および請求の範囲が一部を形成する本出願は、いかなるその後の出願に関しても優先権の基礎として使用しうる。こうしたその後の出願の請求の範囲は、本明細書に記述されるいずれの特徴若しくは特徴の組合せにも向けることができる。それらは製品、組成物、方法若しくは使用の請求項の形態をとることができ、そして例としてかつ制限を伴わずに請求の範囲を包含しうる。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】BALF中の好中球蓄積(化合物(1))
【図2】BALF中のMOMA2マクロファージ蓄積(化合物(1))
【図3】OVA感作PIV3感染モルモットにおけるOVA曝露後のsGaw値の変化(化合物(1))
【図4】OVA感作PIV3感染モルモットにおけるOVA曝露後のsGaw値の変化(化合物(1))

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】

若しくは、その全部の立体異性体および互変異性体を包含するその製薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
1種若しくはそれ以上の製薬学的に許容できる希釈剤若しくは担体とともに請求項1に記載の化合物を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項3】
医薬品としての使用のための請求項1に記載の式(1)の化合物。
【請求項4】
COPD(慢性気管支炎および肺気腫を包含する)、喘息、小児喘息、嚢胞性線維症、サルコイドーシス、特発性肺線維症のような慢性呼吸器疾患患者における悪化の処置若しくは予防における使用のための請求項1に記載の式(1)の化合物若しくは請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
COPD(慢性気管支炎および肺気腫を包含する)、喘息、小児喘息、嚢胞性線維症、サルコイドーシス、特発性肺線維症、アレルギー性鼻炎、鼻炎、副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎、結膜炎、アレルギー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾癬、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ若しくは変形性関節症に二次的な炎症を起こした関節、関節リウマチ、膵炎、悪液質、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌、結腸直腸癌および悪性黒色腫を包含する腫瘍の増殖および転移の阻害から選択される状態の処置若しくは予防における使用のための請求項1に記載の式(1)の化合物若しくは請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
COPD(慢性気管支炎および肺気腫を包含する)、喘息、小児喘息、嚢胞性線維症、サルコイドーシス、特発性肺線維症、アレルギー性鼻炎、鼻炎、副鼻腔炎、肺高血圧症、アレルギー性結膜炎、結膜炎、アレルギー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾癬、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ若しくは変形性関節症に二次的な炎症を起こした関節、関節リウマチ、膵炎、悪液質、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌、結腸直腸癌および悪性黒色腫を包含する腫瘍の増殖および転移の阻害から選択される状態の処置若しくは予防のための医薬品の製造のための請求項1に記載の式(1)の化合物若しくは請求項2に記載の組成物の使用。
【請求項7】
有効量の請求項1に記載の式(1)の化合物若しくは請求項2に記載の製薬学的組成物を被験体に投与することを含んでなる、COPD(慢性気管支炎および肺気腫を包含する)、喘息、小児喘息、嚢胞性線維症、サルコイドーシス、特発性肺線維症、アレルギー性鼻炎、鼻炎、副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎、結膜炎、アレルギー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾癬、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ若しくは変形性関節症に二次的な炎症を起こした関節、関節リウマチ、膵炎、悪液質、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌、結腸直腸癌および悪性黒色腫を包含する腫瘍の増殖および転移の阻害から選択される状態の処置方法。
【請求項8】
うっ血性心不全、糖尿病、癌のような慢性状態を伴う患者、または免疫抑制患者例えば
臓器移植後での呼吸器ウイルス感染症の処置若しくは予防でのような使用のための請求項1に記載の式(1)の化合物若しくは請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
うっ血性心不全、糖尿病、癌のような慢性状態を伴う患者、または免疫抑制患者例えば臓器移植後での呼吸器ウイルス感染症の処置若しくは予防における使用のための、ザナマビル若しくはオセルタミビル(例えばオセルタミビルリン酸エステル)のような抗ウイルス療法と組合せの、請求項1に記載の式(1)の化合物若しくは請求項2に記載の組成物。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−522760(P2012−522760A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502808(P2012−502808)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050575
【国際公開番号】WO2010/112936
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(511079148)レスピバート・リミテツド (10)
【Fターム(参考)】