説明

ケミカルメカニカル研磨パッド

【課題】高い除去速度を有する、銅、絶縁体、バリヤ及びタングステンウェーハなどの半導体基材を研磨する研磨パッドを提供する。
【解決手段】研磨パッドは、硬化剤とイソシアネート末端ポリテトラメチレンエーテルグリコールとの、NCOに対するNH2の化学量論比が80〜97%であるポリウレタン反応生成物であるポリマーマトリックスと中空ポリマー粒子を含む。イソシアネート末端ポリテトラメチレンエーテルグリコールは8.75〜9.05重量%の未反応NCO範囲を有し、中空ポリマー粒子は、2〜50μmの平均直径と研磨パッドの成分の重量%bと密度bとして


(式中、密度aは60g/lに等しく、密度bは5g/l〜500g/lであり、重量%aは、3.25〜4.25重量%である)を有する。研磨パッドは、30〜60容量%の気孔率を有し、ポリマーマトリックス内のセル構造が、セル構造を包囲する連続ネットワークを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本明細書は、半導体基材を研磨又は平坦化するのに有用な研磨パッドに関する。半導体の製造は、一般に、いくつかのケミカルメカニカルポリッシング(CMP)工程を含む。各CMP工程において、研磨パッドが、研磨溶液、たとえば砥粒含有研磨スラリー又は無砥粒反応性液と組み合わさって、後続の層の受け入れに備えて平坦化する、又は平坦さを維持するようなやり方で余剰材料を除去する。これらの層の積み重ねが、集積回路を形成するようなやり方で組み合わさる。これらの半導体素子の製造は、作動速度を高め、漏れ電流を減らし、消費電力を減らす素子に対する要求のせいで、より複雑化し続けている。素子アーキテクチャの点では、これは、より微細な形状の幾何学配置及び増大した金属被覆層の数と言い換えることができる。これらのますます厳しくなる素子設計要求が、ますます小さなライン間隔及び対応するパターン密度の増大の採用をドライブさせている。素子のより小さなスケール及び増大した複雑さが、CMP消費材料、たとえば研磨パッド及び研磨溶液に対し、より大きな要求を招くに至った。加えて、集積回路の形体サイズが縮小するにつれ、CMP誘発欠陥、たとえばスクラッチがより大きな問題になる。さらに、集積回路の膜厚さの減少は、ウェーハ基材に対して許容しうるトポグラフィーを提供すると同時に欠陥率の改善を要求する。これらのトポグラフィー要求は、ますます厳格な平坦性、ラインディッシング及び小さな形状のアレイエロージョンとなる研磨仕様書を要求する。
【0002】
旧来、流込み成形ポリウレタン研磨パッドには、集積回路を製造するために使用される大部分の研磨処理のために機械的結着性及び耐薬品性が提供されてきた。たとえば、ポリウレタン研磨パッドは、引裂きに抵抗するのに十分な引張り強さ及び伸び、研磨中の摩耗問題を回避するための耐摩耗性ならびに強酸性及び強苛性アルカリ性の研磨溶液による腐食に抵抗するための安定性を有する。残念ながら、平坦化を改善する傾向を示す硬質の流込み成形ポリウレタン研磨パッドは、同時に、欠陥を増す傾向を示す。
【0003】
M. J. Kulpが、米国特許第7,169,030号で、高い引張り弾性率を有する一連のポリウレタン研磨パッドを開示している。これらの研磨パッドは、研磨パッドと研磨スラリーとのいくつかの組み合わせに関して優れた平坦化及び欠陥率を提供する。たとえば、これらの研磨パッドは、セリア含有研磨スラリーで、酸化ケイ素/窒化ケイ素を研磨する用途、たとえば直接的なシャロートレンチアイソレーション(STI)研磨用途の場合、優れた研磨性能を提供することができる。本明細書で、酸化ケイ素とは、半導体素子において絶縁体を形成するのに有用な酸化ケイ素、酸化ケイ素化合物及びドープされた酸化ケイ素配合物をいい、窒化ケイ素とは、半導体用途に有用な窒化ケイ素、窒化ケイ素化合物及びドープされた窒化ケイ素配合物をいう。残念ながら、これらのパッドは、今日及び将来の半導体ウェーハに含まれる多数の基材層に関してあらゆる研磨スラリーとで研磨性能を改善するだけの汎用性を有しない。さらには、半導体素子のコストが低下するにつれ、研磨性能におけるさらなる増強がなおも求められている。
【0004】
研磨パッドの除去速度の増大は、スループットを増すことで、半導体製造プラントの設備設置面積及び出費を減らすことができる。性能増強に対するこの要求のせいで、増強された性能で基材層を除去するための研磨パッドがなおも要望されている。たとえば、酸化物絶縁体除去速度は、層間絶縁膜(「ILD」)又は配線間絶縁膜(「IMD」)研磨において絶縁体を除去するのに重要である。使用されている絶縁体酸化物の具体的なタイプは、BPSG、テトラエチルオルトシリケートの分解、HDP(「高密度プラズマ」)及びSACVD(「減圧化学蒸着」)から形成されるTEOSを含む。許容可能な欠陥率性能及びウェーハ均一さと増大した除去速度を併せ持つ研磨パッドが今も求められている。特に、許容可能な平坦化及び欠陥率研磨性能と加速された酸化物除去速度を併せ持つ、ILD研磨に適した研磨パッドが要望されている。
【0005】
発明の記述
本発明は、銅、絶縁体、バリヤ及びタングステンの少なくとも一つを含むパターン付けされた半導体基材を研磨するのに適した研磨パッドであって、その研磨パッドがポリマーマトリックス及びポリマーマトリックス内の中空ポリマー粒子を含み、ポリマーマトリックスが、硬化剤とイソシアネート末端ポリテトラメチレンエーテルグリコールにおいて、NCOに対するNH2の化学量論比が80〜97%であるポリウレタン反応生成物であり、イソシアネート末端ポリテトラメチレンエーテルグリコールが8.75〜9.05重量%の未反応NCO範囲を有し、硬化剤が、イソシアネート末端ポリテトラメチレンエーテルグリコールを硬化させてポリマーマトリックスを形成する硬化剤アミンを含み、中空ポリマー粒子が、2〜50μmの平均直径ならびに研磨パッドを形成する成分の重量%b及び密度bとして以下のように
【0006】
【数1】

【0007】
(式中、
密度aは、60g/lの平均密度に等しく、
密度bは、5g/l〜500g/lの平均密度であり、
重量%aは、3.25〜4.25重量%である)
を有し、研磨パッドが30〜60容量%の気孔率を有し、ポリマーマトリックス内の閉じたセル構造が、閉じたセル構造を包囲する連続ネットワークを形成している研磨パッドを提供する。
【0008】
本発明のもう一つの実施態様は、銅、絶縁体、バリヤ及びタングステンの少なくとも一つを含むパターン付けされた半導体基材を研磨するのに適した研磨パッドであって、ポリマーマトリックス及びポリマーマトリックス内の中空ポリマー粒子を含み、ポリマーマトリックスが、硬化剤とイソシアネート末端ポリテトラメチレンエーテルグリコールにおいて、NCOに対するNH2の化学量論比が80〜90%であるポリウレタン反応生成物であり、イソシアネート末端ポリテトラメチレンエーテルグリコールが8.75〜9.05重量%の未反応NCO範囲を有し、硬化剤が、イソシアネート末端ポリテトラメチレンエーテルグリコールを硬化させてポリマーマトリックスを形成する硬化剤アミンを含み、中空ポリマー粒子が、2〜50μmの平均直径ならびに研磨パッドを形成する成分の重量%b及び密度bとして以下のように
【0009】
【数2】

【0010】
(式中、
密度aは、60g/lの平均密度に等しく、
密度bは、10g/l〜300g/lの平均密度であり、
重量%aは、3.25〜3.6重量%である)
を有し、研磨パッドが35〜55容量%の気孔率を有し、ポリマーマトリックス内の閉じたセル構造が、閉じたセル構造を包囲する連続ネットワークを形成している研磨パッドを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のパッドの研磨面の250倍研磨後走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明のパッドの研磨面の500倍研磨後走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】シリカ含有研磨スラリーで研磨した後の高いケイ素濃度を示す、図1及び2の研磨パッドの、図2と同じ領域の500倍EDS画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本発明は、半導体、光学及び磁性基材の少なくとも一つを平坦化するのに適した、ポリマーマトリックスを含む研磨パッドを提供する。研磨パッドは、層間絶縁膜(ILD)用途におけるようにILD絶縁材料を研磨し、平坦化するのに特に適しているが、銅又はタングステンのような金属を研磨するために使用することもできる。パッドは、従来のパッドを上回る増大した除去速度を提供する(特に研磨の最初の30秒間に)。研磨の早期部分におけるパッドの加速された応答が、指定量の材料をウェーハ表面から除去するのに必要な研磨時間を短縮することにより、ウェーハスループットの増大を可能にする。
【0013】
ヒュームドシリカを用いるILD研磨の場合、除去速度は30秒で3750Å/分を超えることができる。さらには、本発明は、同じ研磨試験においてIC1010(商標)ポリウレタン研磨パッドによって30秒で得られる除去速度よりも少なくとも10%高い除去速度を提供することができる(IC1010は、Rohm and Haas社又はその系列会社の商標である)。有利には、シリカ含有砥粒を用いてTEOSシートウェーハを研磨する場合の本発明の研磨パッドの30秒での除去速度は、シリカ含有砥粒を用いてTEOSシートウェーハを研磨する場合のIC1000研磨パッドの30秒及び60秒での除去速度以上である。IC1000(商標)は、内容物から作られた部品に熱可塑性を付与する傾向にある脂肪族イソシアネートを含むため、TEOS除去速度を研磨時間に関して高めることができる(IC1000は、Rohm and Haas社又はその系列会社の商標である)。IC1000研磨パッドの熱可塑性は、除去速度における何らかの最大値が生じるまで除去速度の増大とともに研磨パッドとウェーハとの接触の増大を促進すると思われる。パッド/ウェーハ接触面積をさらに高いレベルまで増すことは、局所的アスペリティ/ウェーハ接触圧が低下するにつれ、除去速度を低下させると思われる。同様に、脂肪族イソシアネートを含まない配合物は、架橋度又は分子量が低下するにつれ、より高い熱可塑性を有し、ウェーハ研磨時間に関して除去速度のさらなる増大を示すことができる。しかし、本発明のパッドは、研磨加工の非常に早い時期でパッド/ウェーハ接触を最大化するのに十分なレベルの気孔率を有し、比較的高いレベルの架橋性が、研磨加工を促進するのに十分な局所的剛性をパッドに提供すると思われる。
【0014】
除去速度は砥粒含量とともに増すことができるが、砥粒レベルから独立した、1C1010研磨パッドの除去速度を上回る改善は、研磨性能における重要な進歩を表す。たとえば、これは、低い欠陥率で除去速度を増大することを容易にし、スラリーコストを下げることができる。除去速度に加えて、ウェーハスケールの不均一さが重要な研磨性能考慮要素を表す。一般に、研磨されたウェーハの均一さが良好に研磨されたダイの最大数を得るために重要であるため、ウェーハスケールの不均一さは6%未満であるべきである。
【0015】
本明細書に関して、「ポリウレタン」とは、二官能又は多官能イソシアネートから誘導される生成物、たとえばポリエーテルウレア、ポリイソシアヌレート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンウレア、それらのコポリマー及びそれらの混合物である。流込み成形ポリウレタン研磨パッドが、半導体、光学及び磁性基材を平坦化するのに適している。パッドの具体的な研磨性は、一部には、プレポリマーポリオールと多官能イソシアネートとのプレポリマー反応生成物から生じる。研磨パッドを形成するためには、プレポリマー生成物を、硬化剤ポリアミン、硬化剤ポリオール、硬化剤アルコールアミン及びそれらの混合物を含む群から選択される硬化剤で硬化させる。プレポリマー反応生成物中の未反応NCOに対する硬化剤の比を制御すると、研磨中の多孔性パッドの欠陥率性能を改善することができることがわかった。
【0016】
ウレタン製造は、多官能芳香族イソシアネート及びプレポリマーポリオールからのイソシアネート末端ウレタンプレポリマーの調製を含む。プレポリマーポリオールはポリテトラメチレンエーテルグリコール[PTMEG]である。例示的な多官能芳香族イソシアネートとしては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びそれらの混合物がある。多官能芳香族イソシアネートは、脂肪族イソシアネート、たとえば4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びシクロヘキサンジイソシアネートを20重量%未満しか含有しない。多官能芳香族イソシアネートは、脂肪族イソシアネートを、好ましくは15重量%未満、より好ましくは12重量%未満しか含有しない。
【0017】
一般に、プレポリマー反応生成物を、硬化剤アミン、たとえばポリアミン又はポリアミン含有混合物とで反応又は硬化させる。たとえば、ポリアミンをアルコールアミン又はモノアミンと混合することが可能である。本明細書に関して、ポリアミンは、ジアミン及び他の多官能アミンを含む。例示的な硬化剤ポリアミンとしては、芳香族ジアミン又はポリアミン、たとえば4,4′−メチレン−ビス−o−クロロアニリン[MBCA]、4,4′−メチレン−ビス−(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)[MCDEA]、ジメチルチオトルエンジアミン、トリメチレングリコールジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシドジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシドモノ−p−アミノベンゾエート、ポリプロピレンオキシドジ−p−アミノベンゾエート、ポリプロピレンオキシドモノ−p−アミノベンゾエート、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4′−メチレン−ビス−アニリン、ジエチルトルエンジアミン、5−tert−ブチル−2,4−及び3−tert−ブチル−2,6−トルエンジアミン、5−tert−アミル−2,4−及び3−tert−アミル−2,6−トルエンジアミンならびにクロロトルエンジアミンがある。MBCA添加が好ましい硬化剤アミンを表す。場合によっては、プレポリマーの使用を回避させる単一混合工程で研磨パッド用のウレタンポリマーを製造することも可能である。
【0018】
研磨パッドを製造するために使用されるポリマーの成分は、好ましくは、得られるパッドモホロジーが安定性であり、容易に再現可能であるように選択される。たとえば、4,4′−メチレン−ビス−o−クロロアニリン[MBCA]をジイソシアネートと混合してポリウレタンポリマーを形成する場合、モノアミン、ジアミン及びトリアミンのレベルを制御することがしばしば有利である。モノ、ジ及びトリアミンの割合の制御は、化学比及び得られるポリマー分子量を一貫した範囲内に維持することに貢献する。加えて、一貫した製造のためには、酸化防止剤のような添加物及び水のような不純物を制御することがしばしば重要である。たとえば、水はイソシアネートと反応して気体二酸化炭素を形成するため、水の濃度を制御すると、ポリマーマトリックス中に気孔を形成する二酸化炭素気泡の濃度に影響を加えることができる。外来性の水とのイソシアネート反応はまた、連鎖延長剤との反応に利用可能なイソシアネートを減らし、したがって、化学量論比ならびに架橋のレベル(過剰なイソシアネート基がある場合)及び得られるポリマー分子量を変化させる。
【0019】
ポリウレタンポリマー材料は、好ましくは、トルエンジイソシアネートとポリテトラメチレンエーテルグリコール及び芳香族ジアミンとのプレポリマー反応生成物から形成される。もっとも好ましくは、芳香族ジアミンは、4,4′−メチレン−ビス−o−クロロアニリン又は4,4′−メチレン−ビス−(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)である。好ましくは、未反応プレポリマー%NCOの範囲は8.75〜9.05である。この未反応NCO範囲の適当なプレポリマーの具体的な例は、Chemtura製のAdiprene(登録商標)プレポリマーLF750Dである。加えて、LF750Dは、遊離2,4及び2,6TDIモノマーをそれぞれ0.1重量%未満しか有さず、従来のプレポリマーよりも一貫したプレポリマー分子量分布を有する低遊離イソシアネートプレポリマーを代表する。この「低遊離」プレポリマーが、改善されたプレポリマー分子量一貫性及び低遊離イソシアネートモノマーとともに、より規則的なポリマー構造を促進し、改善された研磨パッド一貫性に貢献する。重量%未反応NCOを制御することに加えて、硬化剤及びプレポリマー反応生成物は、一般に、未反応NCOに対するOH又はNH2の化学量論比80〜97%、好ましくは80〜90%を有し、もっとも好ましくは、未反応NCOに対するOH又はNH2の化学量論比83〜87%を有する。この化学量論比は、原料の化学量論レベルを提供することによって直接的に達成することもできるし、意図的に又は外来性水分への暴露によってNCOの一部を水と反応させることによって間接的に達成することもできる。
【0020】
研磨パッドがポリウレタン材料であるならば、完成した研磨パッドは、好ましくは、0.4〜0.8g/cm3の密度を有する。もっとも好ましくは、完成したポリウレタン研磨パッドは0.5〜0.75g/cm3の密度を有する。トータルのパッド配合に基づいて3.25〜4.25重量%、好ましくは3.25〜3.6重量%の公称20μm気孔又は中空ポリマー粒子の添加密度(流込み成形前)が、所望の密度を優れた研磨結果とともに生じさせることができる。特に、中空ポリマー粒子は、ポリマーマトリックス中でランダムな気孔分布を提供する。特に、研磨パッドは閉じたセル構造を有し、ポリマーマトリックスが、その独立気泡構造を包囲する連続ネットワークを形成する。この高い気孔率にもかかわらず、研磨パッドは、一般に、44〜54のショアーD硬さを有する。本明細書に関して、ショアーD試験は、試験前にパッド試料を50%の相対湿度に25℃で5日間配置することによってコンディショニングし、ASTM D2240に概説される方法を使用して硬さ試験の繰返し精度を改善することを含む。
【0021】
中空ポリマー粒子は、2〜50μmの重量平均直径を有する。本明細書に関して、重量平均直径は、流込み成形前の中空ポリマー粒子の直径を表し、粒子は、球形又は非球形であることができる。もっとも好ましくは、中空ポリマー粒子は球形である。好ましくは、中空ポリマー粒子は、2〜40μmの重量平均直径を有する。もっとも好ましくは、中空ポリマー粒子は、10〜30μmの重量平均直径を有する。これらの中空ポリマー粒子は、一般に、1リットルあたり60グラムの平均密度を有する。本明細書に関して、中空ポリマー粒子の平均密度は、1リットル容量内の中空粒子の最密非圧壊密度を表す。35〜50μmの平均直径を有する中空粒子は、気孔が少なめであり、壁材料が少なめであるため、一般に、1リットルあたり平均42グラムの低めの密度を有する。異なるサイズ及びタイプの中空粒子は、1サイズの中空ポリマー粒子の質量を得て、それらの密度で割って気孔の容積を決定することにより、等量の気孔容積で加えることができる。そして、この容積に他の気孔の密度を掛けてそのサイズ及びタイプの中空ポリマー粒子の質量を決定すると、等量の気孔容積を出すことができる。たとえば、20μm中空ポリマー粒子3重量%を1リットルあたり60グラムの密度で有する配合物は、以下の式によって示すように、42μm中空ポリマー粒子2.1重量%を1リットルあたり40グラムの密度で有する配合物に等しいであろう。
【0022】
【数3】

【0023】
本発明の研磨パッドを形成する場合、密度aは、60g/lの平均密度に等しく、密度bは、5g/l〜500g/lの平均密度であり、重量%aは、3.25〜4.25重量%である。好ましくは、密度bは、10g/l〜150g/lの平均密度であり、重量%aは、3.25〜3.6重量%である。
【0024】
膨張した中空ポリマー粒子の重量平均直径の公称範囲は15〜90μmである。さらには、高い気孔率と小さな孔径との組み合わせが、欠陥率を下げる際に特別な利点を有することができる。しかし、気孔率レベルが高くなりすぎるならば、研磨パッドは機械的結着性及び強度を失う。たとえば、研磨層の30〜60容量%を構成する重量平均直径2〜50μmの中空ポリマー粒子を加えることは、欠陥率の低下を促進する。さらには、気孔率を35〜55容量%、具体的には35〜50容量%に維持すると、除去速度の増大を促進することができる。本明細書に関して、容量%気孔率は、1)気孔なしのポリマーの公称密度から配合物の計測密度を引いて、配合物1cm3から「失われた」ポリマーの質量を決定したのち、2)「失われた」ポリマーの質量を気孔なしのポリマーの公称密度で割って、配合物1cm3から失われたポリマーの体積を決定し、それに100を掛けて気孔容量%値に変換することによって決定される気孔の容量%を表す。あるいはまた、配合物中の気孔の容量%又は容量%気孔率は、1)配合物100g中の中空ポリマー粒子の質量を100gから引いて、配合物100g中のポリマーマトリックスの質量を決定し、2)ポリマーマトリックスの質量をポリマーの公称密度で割って、配合物100g中のポリマーの体積を決定し、3)配合物100g中の中空ポリマー粒子の質量を公称中空ポリマー粒子密度で割って、配合物1cm3中の中空ポリマー粒子の体積を決定し、4)配合物100g中のポリマーの体積を配合物100g中の中空粒子又は気孔の体積に足して、配合物100gの体積を決定したのち、5)配合物100g中の中空粒子又は気孔の体積を配合物100gの全体積で割り、それに100を掛けて配合物中の気孔の容量%又は気孔率を出すことによって決定することもできる。これら二つの方法は、容量%気孔率又は気孔に関して類似した値を出すが、第二の方法は、処理中のパラメータ、たとえば反応の発熱が中空ポリマー粒子又は微小球をその公称「膨張体積」を超えるまで膨張させるおそれがある第一の方法よりも低い容量%気孔又は気孔率の値を示す。ある特定の気孔又は気孔率レベルの場合、孔径の減少は研磨速度を高める傾向にあるため、流込み成形中の発熱を制御して、すでに膨張した中空ポリマー粒子又は微小球のさらなる膨張を防ぐことが重要である。たとえば、室温の型への流込み、ケーク高さの制限、プレポリマー温度の低下、硬化剤アミン温度の低下、NCOの減少及び遊離TDIモノマーの制限が、すべて、反応するイソシアネートによって生じる発熱を減らすことに貢献する。
【0025】
大部分の従来の多孔性研磨パッドと同様に、研磨パッドコンディショニング、たとえばダイアモンドディスクコンディショニングが、除去速度を高め、ウェーハスケール不均一差を改善するように作用する。コンディショニングは、周期的に、たとえば各ウェーハ加工ののち30秒間又は連続的に働くことができるが、連続的なコンディショニングが、除去速度制御の改善のための定常状態研磨条件を確立する利点を提供する。コンディショニングは一般に、研磨パッドの除去速度を高め、一般には研磨パッド表面の摩耗に伴う除去速度の低下を防ぐ。特に、砥粒コンディショニングは、研磨中にヒュームドシリカ粒子を閉じ込めることができる粗面を形成する。図1〜図3は、シリカ粒子が、粗面中、研磨パッドの気孔に隣接して蓄積することができることを示す。研磨パッド中へのシリカ粒子のこの蓄積が、高い除去速度に貢献することにより、研磨パッドの効率を高めると思われる。コンディショニングに加えて、溝及び穿孔が、スラリーの分散、研磨不均一さ、研磨くず掃去及び基材除去速度にさらなる恩恵を提供することができる。
【実施例】
【0026】
ウレタンプレポリマーとしての様々な量のイソシアネートと、4,4′−メチレン−ビス−o−クロロアニリン[MBCA]とを、本発明の実施例の場合、プレポリマーについては49℃で、MBCAについては115℃で混合することにより、ポリマーパッド材料を調製した(比較例は、プレポリマーについては43〜63℃を含むものであった)。特に、ある種のトルエンジイソシアネート[TDI]が、ポリテトラメチレンエーテルグリコール[PTMEG]プレポリマーとで、様々な性質を研磨パッドに付与した。このウレタン/多官能アミン混合物を、プレポリマーを連鎖延長剤と混合する前又は後で、中空のポリマー微小球(AkzoNobel製のEXPANCEL(登録商標)551DE20d60又は551DE40d42)と混合した。中空のポリマー微小球を多官能アミンを加える前に60rpmでプレポリマーと混合したのち、混合物を4500rpmで混合したか、中空のポリマー微小球を混合ヘッド中3600rpmでウレタン/多官能アミン混合物に添加した。微小球は、5〜200μmの範囲で15〜50μmの重量平均直径を有するものであった。最終混合物を型に移し、約15分間ゲル化させた。
【0027】
次いで、型を硬化オーブンに入れ、以下のサイクルで硬化させた。30分かけて周囲温度から104℃の設定温度まで逓増させ、104℃で15時間30分間保持し、設定温度を21℃に下げた状態で2時間。比較例F〜Kは、100℃で約8時間のより短い硬化サイクルを使用した。次いで、室温で成形品を薄いシートに「スカイビング」し、マクロチャネル又は溝を表面に機械加工した。より高温でのスカイビングが表面粗さ及びシート厚さ均一さを改善することができる。表に示すように、試料1〜2が本発明の研磨パッドを表し、試料A〜Zが比較例を表す。
【0028】
【表1−1】


【表1−2】

【0029】
実施例研磨パッドは、Applied Materials社のMirra(登録商標)研磨機上、93rpmのプラテン回転速度、87rpmのウェーハキャリヤヘッド回転速度及び5psiのダウンフォースを使用して、TEOSシートウェーハを研磨することで試験された。研磨スラリーは、DI水との1:1混合物として使用されるILD3225であり、150ml/minの速度で研磨パッド表面に供給した。Diagrid(登録商標)AD3BG150855コンディショニングディスクを使用して、インサイチューコンディショニング加工によって研磨パッドをダイアモンドコンディショニングした。TEOSシートウェーハを30秒間又は60秒間研磨し、実施例パッドを用いた各試験はまた、ベースラインとしてIC1010パッドで研磨されたウェーハを含むものであった。IC1010に対する30秒研磨速度は、研磨時間を減らすことに対しては標準的研磨パッドを上回る最大の効果を及ぼすため、最大に重視した。研磨結果を以下、表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
これらのデータは、3.36重量%の中空ポリマー微小球の添加量が除去速度における予想外の増大を提供したということを示す。特に、試料1及び2は、30秒及び60秒で優れた除去速度を示した。試料1及び2の30秒での除去速度は、研磨パッドが、より高スループットの研磨を支援する短縮された研磨加工の比較的早い部分で高い除去速度を有することを示す。3.01(同じプレポリマーの場合には2.94)又は3.66重量%以上の比較例は、より低い30秒での除去速度及びより低い全体除去速度となった。加えて、図1〜3は、研磨パッド表面がヒュームドシリカを研磨に有利な場所に閉じ込めることが明らかであることを示す。ヒュームドシリカに対するこの親和性が研磨性能の増強に貢献することが明らかである。
【0032】
【表3】

【0033】
表3は、中空ポリマー微小球がパッド配合物1cm3あたり100万個を超える微小球添加レベルを達成するということを示す。
【0034】
以下、表4は、プレポリマー%NCOを示し、実施例配合物で使用されたプレポリマーから作られた、充填材又は気孔を有しないMBCA硬化エラストマーの機械的強度性を、ASTM D412の方法を使用する試験によって比較する。
【0035】
示される引張り性はASTM D1566−08Aで定義されている。加えて、表4は、プレポリマー製造者によって報告されている、MBCAで硬化させたプレポリマーの公称密度を示す。
【0036】
【表4】

【0037】
表4は、充填材濃度に加えて、研磨パッドの機械的性質が研磨性能に影響を及ぼすことが明らかであることを示す。具体的には、LF600Dを用いた比較例Rのポリマーは、ヒュームドシリカ研磨の場合の高い除去速度に関して、その100%モジュラヌによって明確に示されるように、剛性が不十分であることが明らかであり、Royalcast(登録商標)2505準プレポリマーを用いて作られた比較例F〜Kのポリマーは、ヒュームドシリカ研磨における高い除去速度に関して、剛性が過度に高いことが明らかである。Royalcast 2505から成形されたポリウレタン材料は非常に脆く、伸び率100%に達する前に破断した。
【0038】
要するに、研磨パッドは、銅、絶縁体、バリヤ及びタングステンウェーハを研磨するのに効果的である。特に、研磨パッドは、ILD研磨、特にヒュームドシリカを用いたILD研磨用途に有用である。研磨パッドは、30秒で高い除去速度を提供する効率的な研磨までの急激な逓増を有する。本発明の研磨パッドの30秒及び60秒での除去速度は、IC1000研磨パッドの30秒及び60秒での除去速度を超えることができる。本発明のパッドのこの急速な研磨応答は、従来の多孔性研磨パッドに比較して高いウェーハスループットを促進する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅、絶縁体、バリヤ及びタングステンの少なくとも一つを含むパターン付けされた半導体基材を研磨するのに適した研磨パッドであって、その研磨パッドがポリマーマトリックス及び前記ポリマーマトリックス内の中空ポリマー粒子を含み、前記ポリマーマトリックスが、硬化剤とイソシアネート末端ポリテトラメチレンエーテルグリコールにおいて、NCOに対するNH2の化学量論比が80〜97%であるポリウレタン反応生成物であり、前記イソシアネート末端ポリテトラメチレンエーテルグリコールが8.75〜9.05重量%の未反応NCO範囲を有し、前記硬化剤が、前記イソシアネート末端ポリテトラメチレンエーテルグリコールを硬化させて前記ポリマーマトリックスを形成する硬化剤アミンを含み、前記中空ポリマー粒子が、2〜50μmの平均直径ならびに前記研磨パッドを形成する成分の重量%b及び密度bとして以下のように
【数4】


(式中、
密度aは、60g/lの平均密度に等しく、
密度bは、5g/l〜500g/lの平均密度であり、
重量%aは、3.25〜4.25重量%である)
を有し、前記研磨パッドが30〜60容量%の気孔率を有し、前記ポリマーマトリックス内の閉じたセル構造が、前記閉じたセル構造を包囲する連続ネットワークを形成している研磨パッド。
【請求項2】
前記連続ネットワークが、砥粒でコンディショニングされる粗面を形成し、前記粗面が、研磨中にヒュームドシリカ粒子を閉じ込めることができる、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
44〜54のショアーD硬さを有する、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項4】
35〜55容量%の気孔率を有する、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記中空ポリマー粒子が10〜30μmの平均直径を有する、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項6】
銅、絶縁体、バリヤ及びタングステンの少なくとも一つを含むパターン付けされた半導体基材を研磨するのに適した研磨パッドであって、ポリマーマトリックス及び前記ポリマーマトリックス内の中空ポリマー粒子を含み、前記ポリマーマトリックスが、硬化剤とイソシアネート末端ポリテトラメチレンエーテルグリコールにおいて、NCOに対するNH2の化学量論比が80〜90%であるポリウレタン反応生成物であり、前記イソシアネート末端ポリテトラメチレンエーテルグルリコールが8.75〜9.05重量%の未反応NCO範囲を有し、前記硬化剤が、前記イソシアネート末端ポリテトラメチレンエーテルグリコールを硬化させて前記ポリマーマトリックスを形成する硬化剤アミンを含み、前記中空ポリマー粒子が、2〜50μmの平均直径ならびに前記研磨パッドを形成する成分の重量%b及び密度bとして以下のように
【数5】


(式中、
密度aは、60g/lの平均密度に等しく、
密度bは、10g/l〜300g/lの平均密度であり、
重量%aは、3.25〜3.6重量%である)
を有し、前記研磨パッドが35〜55容量%の気孔率を有し、前記ポリマーマトリックス内の閉じたセル構造が、前記閉じたセル構造を包囲する連続ネットワークを形成している研磨パッド。
【請求項7】
前記連続ネットワークが、砥粒でコンディショニングされる粗面を形成し、前記粗面が、研磨中にヒュームドシリカ粒子を閉じ込めることができる、請求項6記載の研磨パッド。
【請求項8】
44〜54のショアーD硬さを有する、請求項6記載の研磨パッド。
【請求項9】
35〜50容量%の気孔率を有する、請求項6記載の研磨パッド。
【請求項10】
前記中空ポリマー粒子が10〜30μmの平均直径を有する、請求項6記載の研磨パッド。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−41056(P2010−41056A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−182027(P2009−182027)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(504089426)ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】