説明

α−ケトカルボニルカルパイン阻害剤

本発明は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィーおよび他の筋ジストロフィーを含む神経変性疾患および神経筋疾患の治療のための新規α-ケトカルボニルカルパイン阻害剤に関する。廃用性萎縮および全身の筋肉の衰弱もまた治療することができる。目の疾患、特に白内障も同様に治療することができる。一般に、カルパインの上昇したレベルが関与する全ての状態を治療することができる。本発明の化合物はまた、他のチオールプロテアーゼ、例えば、カテプシンB、カテプシンII、カテプシンL、パパインなどを阻害する可能性がある。プロテアソームとしても公知の多触媒性プロテアーゼもまた阻害される可能性があり、そのため、癌、乾癬および再狭窄などの細胞増殖性疾患を治療するために化合物を使用することができる。本発明の化合物はまた、フリーラジカルを介する酸化的ストレスによる細胞損傷の阻害剤であり、酸化的ストレスの上昇したレベルが関与するミトコンドリア障害および神経変性疾患を治療するために使用することができる。さらに、本発明の化合物はユートロフィンの発現を誘導し、これはデュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジストロフィーの治療にとって有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)および他の筋ジストロフィーを含む神経変性疾患および神経筋疾患の治療のための新規α-ケトカルボニルカルパイン阻害剤に関する。廃用性萎縮および全身の筋肉の衰弱もまた治療することができる。心臓、腎臓、または中枢神経系の虚血、ならびに白内障および目の他の疾患も同様に治療することができる。一般に、カルパインの上昇したレベルが関与する全ての状態を治療することができる。
【0002】
新規カルパイン阻害剤はまた、他のチオールプロテアーゼ、例えばカテプシンB、カテプシンH、カテプシンLおよびパパインもまた、阻害する可能性がある。プロテアソームとしても公知の多触媒性プロテアーゼ(MCP)もまた、本発明の化合物により阻害される可能性がある。本発明の化合物を使用して、MCPの上昇した活性と関連する疾患、例えば、筋ジストロフィー、廃用性萎縮、神経筋疾患、心臓悪液質、癌悪液質、乾癬、再狭窄、および癌を治療することができる。一般に、MCPの活性が関与する全ての状態を治療することができる。
【0003】
驚いたことに、本発明の化合物はまた、フリーラジカルを介する酸化的ストレスによる細胞損傷の阻害剤であり、酸化的ストレスの上昇したレベルが関与するミトコンドリア障害および神経変性疾患を治療するために使用することができる。
【0004】
驚いたことに、本発明の化合物はまた、ユートロフィンの発現を強力に誘発し、ユートロフィンの上昇したレベルが有益な治療効果を有する障害および疾患、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)およびベッカー型筋ジストロフィー(BMD)を治療するために使用することができる。
【0005】
本発明の化合物を含む薬学的組成物も提供する。
【背景技術】
【0006】
発明の背景
脳を含む神経組織は、カルパインIおよびカルパインIIと呼ばれる少なくとも2つのカルシウム刺激プロテアーゼを含む、様々なプロテアーゼを有することが知られている。カルパインは様々な組織および細胞中に存在するカルシウム依存性システインプロテアーゼであり、触媒機構においてシステイン残基を使用する。カルパインはカルシウムの上昇した濃度により活性化され、マイクロモル濃度のカルシウムイオンにより活性化されるカルパインIまたはμ-カルパインと、ミリモル濃度のカルシウムイオンにより活性化されるカルパインIIまたはm-カルパインとに識別される(P. Johnson, Int. J. Biochem., 1990, 22(8), 811-22を参照されたい)。カルパインの過剰な活性化により、神経細胞内カルシウムの増加により誘発される虚血または傷害と病理学的神経変性の間で分子リンクが提供される。上昇したカルシウムレベルを制御されないままにしておくと、神経細胞に重篤な構造障害が起きる可能性がある。最近の研究から、カルパインの活性化は、多くの型の神経変性疾患における最終的な共通経路を示す可能性があることが示唆されている。そのため、カルパインの阻害は、これらの疾患の治療において魅力的な治療アプローチである。カルパインは、タンパク質キナーゼCなどの調節タンパク質、MAP2およびスペクトリンなどの細胞骨格タンパク質、および筋タンパク質の切断、リウマチ様関節炎におけるタンパク質分解、血小板の活性化と関連するタンパク質、神経ペプチド代謝、有糸分裂におけるタンパク質およびM.J. Barrett et al., Life Sci., 1991, 48, 1659-69およびK.K. Wang et al., Trends in Pharmacol. Sci., 1994, 15, 412-419に列挙されている他のものを含む様々な生理的過程において重要な役割を果たす。例えば下記の、様々な病態生理学的過程においてカルパインの上昇したレベルが測定されている:心臓(例えば、心筋梗塞)、腎臓または中枢神経系(例えば脳卒中)の虚血、炎症、筋ジストロフィー、中枢神経系に対する損傷(例えば、外傷)、アルツハイマー病、など(上記、K.K. Wangを参照されたい)。これらの疾患は、上昇した、持続性の細胞内カルシウムレベルと関連すると推定され、この上昇したカルシウムレベルにより、カルシウム依存性過程が過活性化され、もはや生理学的制御に支配されなくなる。対応する様式で、カルパインの過活性化はまた、病態生理学的過程を引き起こすことがある。これらの疾患の例は、心筋虚血、脳虚血、筋ジストロフィー、脳卒中、アルツハイマー病、または外傷性脳損傷である。カルパイン阻害剤の他の可能な用途は、K.K. Wang, Trends in Pharmacol. Sci, 1994, 15, 412-419に列挙されている。チオールプロテアーゼ、例えばカルパインまたはカテプシンは、骨格筋の崩壊、すなわち、筋肉疾患、例えば筋ジストロフィーまたは筋萎縮症において見られるような筋線維タンパク質の分解によるZ線の消失における初期過程に関与する(Taisha, Metabolism, 1988, 25, 183)。さらに、E-64-d、チオールプロテアーゼ阻害剤は、ハムスターにおける実験筋ジストロフィーにおいて延命効果を有することが報告されている(Journal of Pharmacobiodynamics, 1987, 10, 678)。したがって、そのようなチオールプロテアーゼ阻害剤は、例えば、筋ジストロフィーまたは筋萎縮症の治療のための治療薬として有用であると期待される。
【0007】
カルパインによる必須水晶体タンパク質のカルシウム媒介タンパク質分解のレベルの増加はまた、いくつかの形態の目の白内障の重要な一因であると考えられている(S. Biwas et al., Trends in Mol. Med., 2004)。したがって、カルパイン阻害剤は白内障および目の疾患の治療のための治療薬として有用であると期待される。
【0008】
真核細胞は常に、細胞タンパク質を分解し、置換している。これにより、細胞は、異常高次構造を有するタンパク質およびペプチドを選択的にかつ迅速に除去し、調節ペプチドのレベルを調節することにより代謝経路を制御し、飢餓時のように、必要な時にエネルギーのためのアミノ酸を提供することができる。Goldberg, A.L. & St. John, A.C., Annu. Rev. Biochem., 1976, 45, 747-803を参照されたい。哺乳類の細胞機構では、タンパク質分解のための複数の経路が可能である。これらの経路のいくつかでは、アデノシン三リン酸(「ATP」)の形態でのエネルギーの入力が必要であると考えられる。上記Goldberg & St. Johnを参照されたい。多触媒性プロテアーゼ(MCP、典型的には「多触媒性プロテイナーゼ」、「プロテアソーム」、「多触媒性プロテイナーゼ複合体」、「多触媒性エンドペプチダーゼ複合体」、「20Sプロテアソーム」および「インゲンシン(ingensin)」とも呼ばれる)は、タンパク質のペプチドおよびアミノ酸への分解のための少なくとも2つの細胞経路において重要な役割を果たす大分子量(700kD)真核非リソソームプロテイナーゼ複合体である。Orlowski, M., Biochemistry, 1990, 9(45), 10289-10297を参照されたい。複合体は少なくとも3つの異なる型の加水分解活性を有する:(1)ペプチド結合が塩基性アミノ酸のカルボキシル側で切断するトリプシン様活性;(2)ペプチド結合が疎水性アミノ酸のカルボキシル側で切断するキモトリプシン様活性;および(3)ペプチド結合がグルタミン酸のカルボキシル側で切断する活性。Rivett, A.J., J. Biol. Chem., 1989, 264(21),12215-12219およびOrlowski、上記を参照されたい。MCPが関与するタンパク質加水分解の1つの経路にはまた、ポリペプチド「ユビキチン」が関与する。Hershko, A. & Crechanovh, A., Annu. Rev. Biochem., 1982, 51, 335-364を参照されたい。MCP、ATPおよびユビキチンを必要とするこの経路は、線維芽細胞の増殖および網状赤血球の成熟における非常に異常なタンパク質、一定の短命な正常タンパク質なおよびタンパク質のバルクの分解に関係すると考えられる。Driscoll, J. and Goldberg,, A.L., Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A., 1989, 86, 787-791を参照されたい。この経路により分解されるタンパク質は、ATP依存様式で、それらのリシンアミノ基を介してユビキチンに共有結合される。ユビキチンコンジュゲートタンパク質はその後、タンパク質分解コアとしてMCPを含むATP依存性プロテアーゼ複合体、26Sプロテアソームにより小さなペプチドまで分解される。Goldberg, A.L. & Rock, K.L., Nature, 1992, 357, 375-379。MCPおよびATPを必要とするが、ユビキチンは必要としない第2のタンパク質分解経路についても記述されている。上記Driscoll, J. & Goldberg, A.L.を参照されたい。この過程では、MCPはATP依存様式でタンパク質を加水分解する。上記Goldberg, A.L., & Rock, K.L.を参照されたい。この過程は、骨格筋において観察されている。上記Driscoll & Goldbergを参照されたい。しかしながら、筋肉では、MCPは別のプロテアーゼ、マルチパイン(multipain)と相乗的に機能し、このように筋肉タンパク質の分解が促進されることが示唆されている。Goldberg & Rock,上記を参照されたい。MCPはタンパク質分解機構により機能し、この場合、求核活性部位はN末端トレオニン残基のヒドロキシル基であることが報告されている。このように、MCPはトレオニンプロテアーゼの第1の公知の例である。Seemuller et al., Science, 1995, 268, 579-582;Goldberg, A.L., Science, 1995, 268, 522-523を参照されたい。細胞タンパク質合成および分解経路の相対活性により、タンパク質が蓄積または喪失されるかが決定される。タンパク質量の異常な喪失は、筋ジストロフィー、廃用性萎縮、神経筋疾患、心臓悪液質および癌悪液質などのいくつかの疾患状態と関連する。したがって、そのようなMCP阻害剤は、これらの疾患の治療のための治療薬として有用であると予測される。
【0009】
サイクリンは真核生物における細胞周期制御に関与するタンパク質である。サイクリンはおそらく、タンパク質キナーゼの活性を調節することにより作用し、細胞周期の特定の段階でのそれらのプログラムされた分解が1つの段階から次の段階への移行で必要とされる。修飾ユビキチンを使用した実験(Glotzer et al., Nature, 1991, 349, 132;Hershko et al., J. Biol. Chem., 1991, 266, 376)により、ユビキチン化/タンパク質分解経路がサイクリン分解に関与することが立証された。したがって、この経路を阻害する化合物は細胞周期停止を引き起こし、癌、乾癬、再狭窄、および他の細胞増殖疾患の治療において有用である。
【0010】
細胞レベルでは、上昇した酸化的ストレスにより細胞損傷およびミトコンドリア疾患、例えば、Schapira and Griggs (eds) 1999 Muscle Diseases, Butterworth-Heinemannにおいて要約されている、キーンズ・セイアー症候群、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作(MELAS)、赤色ぼろ線維ミオクローヌス癲癇(MERRF)、レーバー遺伝性視神経萎縮(LHON)、リー症候群、ニューロパチー・運動失調・網膜色素変性症(NARP)および進行性外眼筋麻痺(PEO)に至る。
【0011】
フリーラジカルにより誘発される細胞損傷もまた、一定の神経変性疾患に関係する。そのような疾患のための例としては、変性運動失調、例えばフリードライヒ運動失調症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびアルツハイマー病が挙げられる(Beal M.F., Howell N., Bodis-Wollner I. (eds), 1997, Mitochondria and free radicals in neurodegenerative diseases, Wiley-Liss)。
【0012】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)およびベッカー型筋ジストロフィー(BMD)の両方ともが、ジストロフィン遺伝子の突然変異により引き起こされる。ジストロフィン遺伝子は2700kbpで構成され、X染色体上に存在する(Xp21.2, gene bankアクセッション番号:M18533)。14kbpの長さのmRNA転写物は主に骨格筋、心筋および平滑筋において発現され、脳での発現は制限される。成熟ジストロフィンタンパク質は〜427kDaの分子量を有し、スペクトリンスーパーファミリータンパク質に属する(Brown S.C., Lucy J.A.(eds), "Dystrophin", Cambridge University Press, 1997)。DMDの根底にある突然変異ではジストロフィンタンパク質の欠如がもたらされるが、より軽度のBMD表現型は、異常な、多くの場合トランケートされた、残存機能性を有するタンパク質の形態の発現がもたらされる突然変異の結果である。スペクトリンスーパーファミリータンパク質では、ジストロフィンはユートロフィン(gene bankアクセッション番号:X69086)、ジストロフィン関連タンパク質-2(gene bankアクセッション番号:NM001939)およびジストロブレビン(gene bankアクセッション番号:ジストロブレビンα:BC005300、ジストロブレビンβ:BT009805)に密接に関連する。ユートロフィンは第6染色体上にコードされ、〜395kDaユートロフィンタンパク質は、筋細胞を含む様々な組織において普遍的に発現される。ユートロフィンタンパク質のN末端部分はジストロフィンタンパク質のN末端部分と80%同一であり、同様の親和性でアクチンに結合する。さらに、ユートロフィンのC末端領域はまた、β-ジストログリカン、α-ジストロブレビンおよびシントロフィンに結合する。ユートロフィンは胚発生中に筋細胞表面全体で発現され、後胚期の発生中にジストロフィンにより置き換えられる。成体の筋肉では、ユートロフィンタンパク質は神経筋接合部に限定される。このように、ジストロフィンとユートロフィンの間には配列および構造の類似性の他に、どちらのタンパク質も一定の細胞機能を共有する。その結果、ユートロフィンの上方制御により、DMDおよびBMD患者における進行性の筋喪失が寛解され、この荒廃的な疾患に対し治療の選択が提供されることが提案されている(WO96/34101)。したがって、ユートロフィンの発現を誘発する化合物はDMDおよびBMDの治療において有用である(Tinsley, J.M., Potter, A.C., et al., Nature, 1996, 384, 349;Yang, L., Lochmuller, H., et al., Gene Ther.;1998, 5, 369;Gilbert、R., Nalbantoglu, J., et al., Hum. Gene Ther. 1999, 10, 1299)。
【0013】
カルパイン阻害剤は文献において記述されている。しかしながら、これらは主に不可逆阻害剤またはペプチド阻害剤のいずれかである。一般に、不可逆阻害剤はアルキル化物質であり、生物中で非選択的に反応し、または不安定であるという欠点がある。このように、これらの阻害剤はしばしば望ましくない副作用、例えば、毒性を有し、そのため、用途が限られており、または不安定である。不可逆阻害剤の例はE-64エポキシド(E.B. McGowan et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 1989, 158, 432-435)、α-ハロケトン(H. Angliker et al., J. Med. Chem., 1992, 35, 216-220)およびジスルフィド(R. Matsueda et al., Chem. Lett., 1990, 191-194)である。
【0014】
システインプロテアーゼ、例えば、カルパインの多くの公知の不可逆阻害剤はペプチドアルデヒド、特にジペプチドまたはトリペプチドアルデヒド、例えばZ-Val-Phe-H(MDL 28170)(S. Mehdi, Trends in Biol. Sci., 1991, 16, 150-153)であり、これらは非常に代謝不活性化を受けやすい。
【0015】
本発明の目的は、公知のカルパイン阻害剤に比べ、筋細胞で選択的に作用する新規α-ケトカルボニルカルパイン阻害剤を提供することである。
【0016】
さらに、本発明のカルパイン阻害剤は、他の有益な特性、例えばプロテアソーム(MCP)阻害活性および/または酸化的ストレスによる損傷からの筋細胞の保護および/またはユートロフィン発現の誘発の独特な組み合わせを有する可能性がある。そのような特性は、筋ジストロフィーおよび筋萎縮症の治療に対し好都合である。
【発明の開示】
【0017】
発明の概要
本発明は、式(I)の新規α-ケトカルボニルカルパイン阻害剤ならびにそれらの互変異性体および異性体、ならびに適当であれば生理学的に許容される塩に関する。

【0018】
これらのα-ケトカルボニル化合物はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)および他の筋ジストロフィーを含む神経変性疾患および神経筋疾患の治療に有効である。廃用性萎縮および全身の筋肉の衰弱もまた治療することができる。心臓、腎臓、または中枢神経系の虚血、ならびに白内障および目の他の疾患も同様に治療することができる。一般に、カルパインの上昇したレベルが関与する全ての状態を治療することができる。
【0019】
本発明の化合物は、他のチオールプロテアーゼ、例えばカテプシンB、カテプシンH、カテプシンLおよびパパインもまた、阻害する可能性がある。プロテアソームとしても公知の多触媒性プロテアーゼ(MCP)もまた、阻害される可能性があり、筋ジストロフィーの治療に有益である。プロテアソーム阻害剤はまた、癌、乾癬、再狭窄、および他の細胞増殖性疾患を治療するために使用することができる。
【0020】
驚いたことに、本発明の化合物はまた、フリーラジカルを介する酸化的ストレスによる細胞損傷の阻害剤であり、酸化的ストレスの上昇したレベルが関与するミトコンドリア障害および神経変性疾患を治療するために使用することができる。
【0021】
驚いたことに、本発明の化合物はまた、ユートロフィンの発現を強力に誘発し、ユートロフィンの上昇したレベルが有益な治療効果を有する障害および疾患、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)およびベッカー型筋ジストロフィー(BMD)を治療するために使用することができる。
【0022】
本発明はまた、本発明の化合物および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物に関する。
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は式(I)の新規α-ケトカルボニルカルパイン阻害剤ならびにそれらの互変異性体および異性体、ならびに適当であれば生理学的に許容される塩に関する:

式中、変数は下記意味を有し、
R1
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
-アルキレン-シクロアルキル、
アリール、
-アルキレン-アリール、
-SO2-アルキル、
-SO2-アリール、
-アルキレン-SO2-アリール、
-アルキレン-SO2-アルキル、
ヘテロシクリルまたは
-アルキレン-ヘテロシクリル;
-CH2CO-X-H、
-CH2CO-X-直鎖アルキル、
-CH2CO-X-分枝鎖アルキル、
-CH2CO-X-シクロアルキル、
-CH2CO-X-アルキレン-シクロアルキル、
-CH2CO-X-アリール、
-CH2CO-X-アルキレン-アリール、
-CH2CO-X-ヘテロシクリル、
-CH2CO-X-アルキレン-ヘテロシクリルまたは
-CH2CO-アリールを示し;
XはOまたはNHを示し;
R2
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
-アルキレン-シクロアルキル、
アリールまたは
-アルキレン-アリールを示し;
R3
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキルまたは
-アルキレン-シクロアルキルを示し;
R4
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
-アルキレン-シクロアルキル、
アリール、
-アルキレン-アリールまたは
-アルケニレン-アリールを示し;
ここで、nは0〜6の整数、すなわち、1、2、3、4、5または6を示す。
【0024】
本発明では、式(I)に結合している置換基は下記のように規定される。
【0025】
アルキル基は下記で規定されるように、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基またはシクロアルキルである。
【0026】
直鎖アルキル基は-(CH2)xCH3基を意味し、ここで、xは0または1もしくはそれ以上の整数である。好ましくは、xは0または1〜9の整数、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8または9であり、すなわち、直鎖アルキル基は1〜10個の炭素原子を有する。より好ましくは、xは0または1〜6の整数、すなわち、1、2、3、4、5または6である。直鎖アルキル基の例はメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニルおよびn-デシルである。
【0027】
分枝鎖アルキル基は少なくとも1つの二級または三級炭素原子を含む。例えば、分枝鎖アルキル基は1つ、2つまたは3つの二級または三級炭素原子を含む。本発明では、分枝鎖アルキル基は好ましくは少なくとも3つの炭素原子、より好ましくは3〜10個、すなわち、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子、より好ましくは3〜6個の炭素原子、すなわち、3、4、5または6個の炭素原子を有する。これらの例は、イソプロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル(ネオペンチル)、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、3-エチルブチル、1-n-プロピルプロピル、2-n-プロピルプロピル、1-イソ-プロピルプロピル、2-イソ-プロピルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチルおよび4-メチルペンチルである。
【0028】
本発明では、シクロアルキル基は好ましくは3〜8個の炭素原子、すなわち、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有する。それらの例はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルである。より好ましくは、シクロアルキル基は3〜6個の炭素原子を有し、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルである。
【0029】
本発明では、直鎖もしくは分枝鎖アルキル基または直鎖もしくは分枝鎖シクロアルキル基は、F、Cl、BrおよびIからなる群より選択される少なくとも1つのハロゲン原子により置換されてもよく、なかでもFが好ましい。好ましくは該直鎖もしくは分枝鎖アルキル基またはシクロアルキル基の1〜5個の水素原子はハロゲン原子により置換されている。好ましハロアルキル基としては、-CF3、-CH2CF3および-CF2CF3が挙げられる。
【0030】
本発明では、アルコキシ基は-O-アルキル基であり、ここでアルキルは上記で規定した通りである。
【0031】
本発明では、アルキルアミノ基は-NH-アルキル基であり、ここでアルキルは上記で規定した通りである。
【0032】
本発明では、ジアルキルアミノ基は-N(アルキル)2基であり、ここでアルキルは上記で規定した通りであり、2つのアルキル基は同じかまたは異なっていてもよい。
【0033】
本発明では、アシル基は-CO-アルキル基であり、ここでアルキルは上記で規定した通りである。
【0034】
アルキル-O-CO-基、アルキル-O-CO-NH-基およびアルキル-S-基において、アルキルは上記で規定した通りである。
【0035】
アルキレン部分は直鎖または分子鎖基であってもよい。該アルキレン部分は好ましくは1〜6個、すなわち、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する。それらの例としては、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン、n-へキシレン、メチルメチレン、エチルメチレン、1-メチルエチレン、2-メチルエチレン、1-エチルエチレン、プロピルメチレン、2-エチルエチレン、1-メチルプロピレン、2-メチルプロピレン、3-メチルプロピレン、1-エチルプロピレン、2-エチルプロピレン、3-エチルプロピレン、1,1-ジメチルプロピレン、1,2-ジメチルプロピレン、2,2-ジメチルプロピレン、1,1-ジメチルブチレン、1,2-ジメチルブチレン、1,3-ジメチルブチレン、2,2-ジメチルブチレン、2,3-ジメチルブチレン、3,3-ジメチルブチレン、1-エチルブチレン、2-エチルブチレン、3-エチルブチレン、4-エチルブチレン、1-n-プロピルプロピレン、2-n-プロピルプロピレン、1-イソ-プロピルプロピレン、2-イソ-プロピルプロピレン、1-メチルペンチレン、2-メチルペンチレン、3-メチルペンチレン、4-メチルペンチレンおよび5-メチルペンチレンが挙げられる。より好ましくは、該アルキレン部分は1〜4個の炭素原子を有し、例えば、メチレン、エチレン、n-プロピレン、1-メチルエチレンおよび2-メチルエチレンである。
【0036】
本発明では、シクロアルキレン基は好ましくは3〜8個の炭素原子、すなわち、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有する。それらの例としては、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロへキシレン、シクロへプチレンおよびシクロオクチレンが挙げられる。より好ましくは、シクロアルキレン基は3〜6個の炭素原子を有し、例えば、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、およびシクロへキシレンである。シクロアルキレン基では、2つの結合位は同じかまたは隣接炭素原子であってもよく、または1つ、2つもしくは3つの炭素原子が2つの結合位間に存在する。好ましいシクロアルキレン基では、2つの結合位は同じ炭素原子であり、または1つもしくは2つの炭素原子が2つの結合位間に存在する。
【0037】
アルケニレン基は好ましくは2〜8個の炭素原子、より好ましくは2〜4個の原子、および少なくとも1つの二重結合、好ましくは1つまたは2つの二重結合、より好ましくは1つの二重結合を有する直鎖または分枝アルケニレン部分である。それらの例はビニレン、アリレン、メタリレン、ブテン-2-イレン、ブテン-3-イレン、ペンテン-2-イレン、ペンテン-3-イレン、ペンテン-4-イレン、3-メチル-ブト-3-エニレン、2-メチル-ブト-3-エニレン、1-メチル-ブト-3-エニレン、ヘキセニレンまたはヘプテニレンである。
【0038】
アリール基は、炭素環または複素環芳香族単環または多環部分である。炭素環芳香族単環または多環部分は好ましくは、少なくとも6つの炭素原子、より好ましくは6〜20個の炭素原子を有する。それらの例は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フルオレニル、インデニルおよびフェナントリルであり、その中でもフェニルおよびナフチルが好ましい。フェニルはとりわけ好ましい。複素環芳香族単環部分は好ましくは炭素原子および少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、1つ、2つまたは3つの、N、Oおよび/またはSなどのヘテロ原子を含む5または6員環である。それらの例はチエニル、ピリジル、フラニル、ピロリル、チオフェニル、チアゾリルおよびオキサゾリルであり、その中でもチエニルおよびピリジルが好ましい。複素環芳香族多環部分は好ましくは6〜20個の炭素原子とそれらに結合した少なくとも1つのヘテロ環とを有する芳香族部分である。それらの例は、ベンゾチエニル、ナフトチエニル、ベンゾフラニル、クロメニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、キナキサリニル、シノリニルおよびキナゾリニルである。
【0039】
アリール基は1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの置換基を有してもよく、これは同じでもまたは異なっていてもよい。該置換基の例は上記で規定したような直鎖または分枝鎖アルキル基、ハロゲン原子、例えば、F、Cl、BrまたはI、ヒドロキシ基、アルキル部分が上記で規定した通りであるアルキルオキシ基、フルオロアルキル基、すなわち、1〜(2x+3)個の水素原子がフルオロ原子により置換されている上記で規定した通りのアルキル基、とりわけ、トリフルオロメチル、-COOH基、アルキル基が上記で規定した通りである-COO-アルキル基および-CONH-アルキル基、ニトロ基、ならびにシアノ基である。
【0040】
アリーレン基は、分子の2つの基に結合した炭素環または複素環芳香族単環または多環部分である。単環アリーレン基では、2つの結合位は隣接する炭素原子にあってもよく、または1つもしくは2つの炭素原子が2つの結合位間に存在する。好ましい単環アリーレン基では、1つまたは2つの炭素原子が2つの結合位間に存在する。多環アリーレン基では、2つの結合位は同じ環にあってもまたは異なる環にあってもよい。さらに、2つの結合位は隣接する炭素原子にあってもよく、または1つもしくはそれ以上の炭素原子が2つの結合位の間に存在する。好ましい多環アリーレン基では、1つまたはそれ以上の炭素原子が2つの結合位間に存在する。炭素環芳香族単環または多環部分は好ましくは、少なくとも6つの炭素原子、より好ましくは6〜20個の炭素原子を有する。それらの例はフェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、テトラヒドロナフチレン、フルオレニレン、インデニレンおよびフェナントリレンであり、この中でもフェニレンおよびナフチレンが好ましい。フェニレンがとりわけ好ましい。複素環芳香族単環部分は好ましくは、炭素原子および少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、1つ、2つまたは3つの、N、Oおよび/またはSなどのヘテロ原子を含む5または6員環である。それらの例はチエニレン、ピリジレン、フラニレン、ピロリレン、チオフェニレン、チアゾリレンおよびオキサゾリレンであり、その中でもチエニレンおよびピリジレンが好ましい。複素環芳香族多環部分は好ましくは、6〜20個の炭素原子とそれらに結合した少なくとも1つの複素環とを有する芳香族部分である。それらの例は、ベンゾチエニレン、ナフトチエニレン、ベンゾフラニレン、クロメニレン、インドリレン、イソインドリレン、インダゾリレン、キノリレン、イソキノリレン、フタラジニレン、キナキサリニレン、シノリニレンおよびキナゾリニレンである。
【0041】
アリーレン基は1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの置換基を有してもよく、それらは同じでもまたは異なっていてもよい。該置換基の例は上記で規定したような直鎖または分枝鎖アルキル基、ハロゲン原子、例えば、F、Cl、BrまたはI、アルキル部分が上記で規定した通りであるアルキルオキシ基、フルオロアルキル基、すなわち、1〜(2x+3)個の水素原子がフルオロ原子により置換されている上記で規定した通りのアルキル基、とりわけ、トリフルオロメチルである。
【0042】
ヘテロシクリル基は炭素原子および少なくとも1つのヘテロ原子、例えば1つ、2つまたは3つの、N、Oおよび/またはSなどのヘテロ原子を含む飽和または不飽和非芳香族環である。これらの例はモルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニルおよびイミダゾリニルである。
【0043】
式(I)では、R1は水素であってもよい。
【0044】
式(I)では、R1は上記で規定したような直鎖アルキル基であってもよい。より好ましい直鎖アルキル基では、xは0または1〜3の整数であり、すなわち、R1の直鎖アルキル基は、好ましくはメチル、エチル、n-プロピルおよびn-ブチルから選択される。とりわけ好ましくは、直鎖アルキル基はエチルである。
【0045】
式(I)では、R1は上記で規定したような分枝鎖アルキル基であってもよい。より好ましい分枝鎖アルキル基は、3つまたは4つの炭素原子を有し、それらの例はイソプロピル、sec-ブチルおよびtert-ブチルである。とりわけ好ましくは、分枝鎖アルキル基はイソプロピルである。
【0046】
式(I)では、R1は上記で規定したようなシクロアルキル基であってもよい。より好ましいシクロアルキル基はシクロプロピルである。
【0047】
式(I)では、R1は-アルキレン-シクロアルキル基であってもよい。その中で、アルキレン部分およびシクロアルキル基は上記で規定した通りである。
【0048】
式(I)では、R1は上記で規定したようなアリール基であってもよい。より好ましいアリール基は単環または二環アリールである。とりわけ好ましくは、アリール基はフェニルまたはピリジルである。
【0049】
式(I)では、R1は上記で規定したような-アルキレン-アリール基であってもよい。この中で、アルキレン部分およびアリール基は上記で規定した通りである。より好ましくは、アルキレン部分は1〜4個の炭素原子を含む。アルキレン部分に結合したより好ましいアリール基は単環または二環アリールである。とりわけ好ましくは、アリール基はフェニルまたはピリジルである。
【0050】
式(I)では、R1はSO2-アルキル基であってもよく、ここでアルキルは上記で規定した通りである。
【0051】
式(I)では、R1はSO2-アリール基であってもよく、ここでアリールは上記で規定した通りである。
【0052】
式(I)では、R1は-アルキレン-SO2-アリール基であってもよく、ここでアルキレンおよびアリールは上記で規定した通りである。より好ましくは、アルキレン部分は1〜4個の炭素原子を含む。SO2-部分に結合したより好ましいアリール基は単環または二環アリールである。とりわけ好ましくは、アリール基はフェニルまたはピリジルである。
【0053】
式(I)では、R1は-アルキレン-SO2-アルキル基であってもよく、ここでアルキレンおよびアルキルは上記で規定した通りである。より好ましくは、アルキレン部分は1〜4個の炭素原子を含む。
【0054】
式(I)では、R1は上記で規定したようなヘテロシクリル基であってもよい。
【0055】
式(I)では、R1は-アルキレン-ヘテロシクリル基であってもよく、ここでアルキレン部分およびヘテロシクリル基は上記で規定した通りである。より好ましくはアルキレン部分は1〜4個の炭素原子を含む。アルキレン部分に結合したより好ましいヘテロシクリル基は単環ヘテロシクリルである。とりわけ好ましくは、ヘテロシクリル基はモルホリニルである。
【0056】
式(I)では、R1は-CH2COOHまたは-CH2CONH2であってもよい。
【0057】
式(I)では、R1は-CH2CO-X-直鎖アルキル基であってもよい。この中で、直鎖アルキル基は上記で規定した通りである。より好ましい直鎖アルキル基では、xは0または1〜3の整数であり、すなわち、R1の直鎖アルキル基は好ましくはメチル、エチル、n-プロピルおよびn-ブチルから選択される。
【0058】
式(I)では、R1は-CH2CO-X-分枝鎖アルキル基であってもよい。この中で、分枝鎖アルキル基は上記で規定した通りである。より好ましい分枝鎖アルキル基は、3つまたは4つの炭素原子を有し、それらの例はイソプロピル、sec-ブチル、およびtert-ブチルである。とりわけ好ましくは、分枝鎖アルキル基はイソプロピルである。
【0059】
式(I)では、R1は-CH2CO-X-シクロアルキル基であってもよい。この中で、シクロアルキル基は上記で規定した通りである。
【0060】
式(I)では、R1は-CH2CO-X-アルキレン-シクロアルキル基であってもよい。この中で、アルキレン部分およびシクロアルキル基は上記で規定した通りである。
【0061】
式(I)では、R1は-CH2CO-X-アリール基であってもよい。この中で、アリール基は上記で規定した通りである。より好ましいアリール基は単環または二環アリールである。とりわけ好ましくは、アリール基はフェニルまたはピリジルである。
【0062】
式(I)では、R1は-CH2CO-X-アルキレン-アリール基であってもよい。この中で、アルキレン部分およびアリール基は上記で規定した通りである。より好ましくは、アルキレン部分は1〜4個の炭素原子を含む。アルキレン部分に結合したより好ましいアリール基は単環または二環アリールである。とりわけ好ましくは、アリール基はフェニルまたはピリジルである。
【0063】
式(I)では、R1は-CH2CO-X-ヘテロシクリル基であってもよい。この中で、ヘテロシクリル基は上記で規定した通りである。
【0064】
式(I)では、R1は-CH2CO-X-アルキレン-ヘテロシクリル基であってもよく、ここで、アルキレン部分およびヘテロシクリル基は上記で規定した通りである。より好ましくは、アルキレン部分は1〜4個の炭素原子を含む。アルキレン部分に結合したより好ましいヘテロシクリル基は単環ヘテロシクリルである。とりわけ好ましくは、ヘテロシクリル基はモルホリニルである。
【0065】
式(I)では、R1は-CH2CO-アリール基であってもよい。この中で、アリール基は上記で規定した通りである。より好ましいアリール基は単環または二環アリールである。とりわけ好ましくは、アリール基はフェニルまたはピリジルである。
【0066】
好ましくは、R1は水素、直鎖アルキル、分枝鎖アルキル、シクロアルキル、-アルキレン-アリール、および-アルキレン-ヘテロシクリル、-CH2CO-X-直鎖アルキル、-CH2COOHおよび-CH2CONH2からなる群より選択される。より好ましくは、R1は水素、直鎖アルキルまたはシクロアルキルである。最も好ましくは、R1はエチルである。
【0067】
式(I)では、R2は上記で規定したような直鎖アルキル基であってもよい。
【0068】
式(I)では、R2は上記で規定したような分枝鎖アルキル基であってもよい。より好ましくは、分枝鎖アルキル基は3つまたは4つの炭素原子を有し、それらの例はイソプロピル、sec-ブチル、および1-メチル-プロピルである。とりわけ好ましくは、sec-ブチルである。
【0069】
式(I)では、R2は上記で規定したようなアリール基であってもよい。より好ましいアリール基は、1つまたは2つの置換基を有する、置換されてもよいフェニル基である。好ましい置換基は、ハロゲン原子、とりわけFおよび/またはClおよび/またはBr、アルキル基、とりわけメチル、アルキルオキシ基、とりわけメトキシまたはエトキシ、フルオロアルキル基、例えばトリフルオロメチル、ならびにニトロおよびシアノ基からなる群より選択される。
【0070】
式(I)では、R2は-アルキレン-アリール基であってもよい。この中で、アルキレン部分およびアリール基は上記で規定した通りである。より好ましくは、アルキレン部分はメチレン基である。アルキレン部分に結合したより好ましいアリール基は、1つまたは2つの置換基を有する、置換されてもよいフェニル基である。好ましい置換基は、ハロゲン原子、とりわけFおよび/またはClおよび/またはBr、アルキル基、とりわけメチル、アルキルオキシ基、とりわけメトキシまたはエトキシ、フルオロアルキル基、例えばトリフルオロメチル、ならびにニトロおよびシアノ基からなる群より選択される。とりわけ好ましい置換基はF、Cl、Br、メチル、およびメトキシである。
【0071】
好ましくは、R2は置換または非置換ベンジル基である。より好ましくは、R2は、ハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基およびアルキルオキシ基からなる群より選択される1つまたは2つの置換基を有する、置換ベンジル基である。最も好ましくは、R2はF、Cl、Br、メチルおよびメトキシからなる群より選択される1つまたは2つの置換基を有する置換ベンジル基である。
【0072】
式(I)では、R3は上記で規定したような直鎖アルキル基であってもよい。
【0073】
式(I)では、R3は上記で規定したような分枝鎖アルキル基であってもよい。より好ましくは、分枝鎖アルキル基は3つまたは4つの炭素原子を有し、それらの例はイソプロピル、sec-ブチル、および1-メチル-プロピルである。とりわけ好ましくは、イソプロピルおよびsec-ブチルである。
【0074】
式(I)では、R3は上記で規定したようなシクロアルキル基であってもよい。好ましいシクロアルキル基はシクロプロピルである。
【0075】
式(I)では、R3は-アルキレン-シクロアルキル基であってもよい。この中で、アルキレン部分およびシクロアルキル基は上記で規定した通りである。好ましいアルキレン部分はメチレン基である。好ましいシクロアルキル基はシクロプロピルである。
【0076】
好ましくは、R3は上記で規定したような分枝鎖アルキル基、シクロアルキル基、または-アルキレン-シクロアルキルである。より好ましくは、R3は上記で規定したような分枝鎖アルキル基である。最も好ましくは、R3はイソプロピルまたはsec-ブチルである。
【0077】
式(I)では、R4は上記で規定したような直鎖アルキル基であってもよい。
【0078】
式(I)では、R4は上記で規定したような分枝鎖アルキル基であってもよい。より好ましくは、分枝鎖アルキル基は3つまたは4つの炭素原子を有し、それらの例はイソプロピル、sec-ブチルおよび1-メチル-プロピルである。とりわけ好ましいのはsec-ブチルである。
【0079】
式(I)では、R4は上記で規定したようなシクロアルキル基であってもよい。好ましいシクロアルキル基はシクロプロピルである。
【0080】
式(I)では、R4は上記で規定したようなアリール基であってもよい。より好ましいアリール基は、1つまたは2つの置換基を有する置換されてもよいフェニル基である。好ましい置換基は、ハロゲン原子、とりわけFおよび/またはClおよび/またはBr、アルキル基、とりわけメチル、アルキルオキシ基、とりわけメトキシまたはエトキシ、フルオロアルキル基、例えばトリフルオロメチル、ならびにニトロおよびシアノ基からなる群より選択される。
【0081】
式(I)では、R4は-アルキレン-シクロアルキル基であってもよい。この中で、アルキレン部分およびアリール基は上記で規定した通りである。より好ましくは、アルキレン部分はメチレン基である。より好ましいシクロアルキル基は5〜7員環である。とりわけ好ましくはシクロヘキシルである。
【0082】
式(I)では、R4は-アルキレン-アリール基であってもよい。この中で、アルキレン部分およびアリール基は上記で規定した通りである。より好ましくは、アルキレン部分はメチレンまたはエチレン基である。アルキレン部分に結合したより好ましいアリール基は、1つまたは2つの置換基を有する置換されてもよいフェニル基、またはナフチルもしくはピリジル基である。好ましい置換基は、ハロゲン原子、とりわけFおよび/またはClおよび/またはBr、アルキル基、とりわけメチル、アルキルオキシ基、とりわけメトキシまたはエトキシ、フルオロアルキル基、例えばトリフルオロメチル、ならびにニトロおよびシアノ基からなる群より選択される。とりわけ好ましい置換基はF、Cl、Br、メチル、およびメトキシである。
【0083】
式(I)では、R4は-アルケニレン-アリール基であってもよい。この中で、アルケニレン部分およびアリール基は上記で規定した通りである。より好ましくは、アルケニレン部分はビニレンまたはアリレン基である。アルケニレン部分に結合したより好ましいアリール基は、1つまたは2つの置換基を有する置換されてもよいフェニル基、またはナフチルもしくはピリジル基である。好ましい置換基は、ハロゲン原子、とりわけFおよび/またはClおよび/またはBr、アルキル基、とりわけメチル、アルキルオキシ基、とりわけメトキシまたはエトキシ、フルオロアルキル基、例えばトリフルオロメチル、ならびにニトロおよびシアノ基からなる群より選択される。とりわけ好ましい置換基はF、Cl、Br、メチル、およびメトキシである。
【0084】
好ましくは、R4は置換もしくは非置換ベンジルもしくはエチルフェニル基、またはメチルナフチル基である。
【0085】
式(I)では、nは上記で規定した通りである。より好ましくは、nは1〜4の整数である。とりわけ好ましくは、nは1または3である。
【0086】
好ましくは、nは1〜4の整数である。より好ましくは、nは1または3である。
【0087】
構造式(I)の化合物は有効なカルパイン阻害剤であり、他のチオールプロテアーゼ、例えばカテプシンB、カテプシンH、カテプシンLまたはパパインを阻害する可能性もある。プロテアソームとしても公知の多触媒性プロテアーゼ(MCP)もまた阻害される可能性がある。式(I)の化合物はカルパイン阻害剤として特に有効であり、そのため、カルパインの阻害に応答性である障害、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)および、廃用性萎縮および全身の筋肉の衰弱のような他の筋ジストロフィーを含む神経変性疾患および神経筋疾患ならびにカルパインが関与する他の疾患、例えば、心臓、腎臓、または中枢神経系の虚血、白内障および目の他の疾患の治療および/または予防に有用である。
【0088】
光学異性体-ジアステレオマー-幾何異性体-互変異性体
構造式(I)の化合物は1つまたは複数の不斉中心を含み、ラセミ体およびラセミ混合物、単一鏡像異性体、ジアステレオマー混合物および個々のジアステレオマーとして現れることがある。本発明は、構造式(I)の化合物のそのような異性体全てを含むものとする。
【0089】
本明細書において記述した化合物のいくつかは、ケト-エノール互変異性体などの互変異性体として存在する可能性がある。個々の互変異性体およびそれらの混合物は構造式(I)の化合物内に含まれる。
【0090】
構造式(I)の化合物は、例えば、適した溶媒、例えばメタノールもしくは酢酸エチルまたはそれらの混合物からの分別結晶により、または光学活性固定相を用いるキラルクロマトグラフィーにより、個々のジアステレオマーに分割してもよい。絶対構造化学は、必要なら、公知の絶対配置の不斉中心を含む試薬を用いて誘導体化した結晶生成物または結晶中間体のX線結晶学により決定してもよい。
【0091】
また、一般式(I)の化合物の任意の立体異性体は、光学的に純粋な材料または絶対配置が公知の試薬を用いる立体特異的合成により得てもよい。
【0092】

「薬学的に許容される塩」という用語は、無機または有機塩基および無機または有機酸を含む薬学的に許容される非毒性塩基または酸から調製される塩を示す。無機塩基に由来する塩としては、例えば、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(manganic、manganous)、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛塩が挙げられる。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウム塩である。薬学的に許容される有機非毒性塩基に由来する塩としては、一級、二級および三級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチル-アミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチル-モルホリン、N-エチル-ピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびトロメタミンの塩が挙げられる。
【0093】
本発明の化合物が塩基性である場合、塩は、無機および有機酸を含む薬学的に許容される非毒性酸から調製してもよい。そのような酸としては、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、粘液酸、硝酸、パルノイック(parnoic)酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸およびトリフルオロ酢酸が挙げられる。クエン酸、フマル酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸が特に好ましい。
【0094】
本明細書で使用されるように、式(I)の化合物に言及する場合、薬学的に許容される塩も含まれることは理解されるであろう。
【0095】
有用性
式(I)の化合物はカルパイン阻害剤であり、そのようなものとして、カルパインの阻害に応答性である疾患、障害または状態、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)および他の筋ジストロフィーを含む神経変性疾患および神経筋疾患を治療、制御または予防するための薬剤の調製に対し有用である。筋ジストロフィーなどの神経筋疾患としては、ジストロフィノパチー(dystrophinopathy)およびサルコグリカノパチー(sarcoglycanopathy)、肢帯型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、末梢性および他のミオパチー、筋緊張症候群、イオンチャネル疾患、悪性高体温症、代謝性ミオパチー、遺伝性心筋症、先天性筋無力症候群、脊髄性筋萎縮症、遺伝性運動失調症、遺伝性運動感覚性ニューロパチー、遺伝性対麻痺およびNeuromuscular Disorders, 2003, 13, 97-108において規定されているような他の神経筋障害が挙げられる。廃用性萎縮および全身の筋肉の衰弱もまた治療することができる。一般に、例えば、心臓(心筋梗塞)、腎臓、または中枢神経系(脳卒中)の虚血、炎症、筋ジストロフィー、目の白内障および目の他の疾患、中枢神経系損傷(例えば、外傷)ならびにアルツハイマー病を含むカルパインの上昇したレベルが関与する全ての状態は治療することができる。
【0096】
式(I)の化合物は、他のチオールプロテアーゼ、例えばカテプシンB、カテプシンH、カテプシンLおよびパパインもまた、阻害する可能性がある。プロテアソームとしても公知の多触媒性プロテアーゼ(MCP)もまた、本発明の化合物により阻害される可能性があり、そのようなものとして、本発明の化合物は、MCPの阻害に応答性である疾患、障害、または状態、例えば、筋ジストロフィー、廃用性萎縮症、神経筋疾患、心臓悪液質、および癌悪液質を治療、制御または予防するための薬剤の調製に有用である。癌、乾癬、再狭窄、および他の細胞増殖性疾患もまた治療することができる。
【0097】
驚いたことに、式(I)の化合物はまた、フリーラジカルを介する酸化的ストレスによる細胞損傷の阻害剤であり、そのようなものとして、酸化的ストレスの上昇したレベルが関与するミトコンドリア障害および神経変性疾患を治療するための薬剤の調製に有用である。
【0098】
ミトコンドリア障害としては、Schapira and Griggs (eds) 1999 Muscle Diseases, Butterworth-Heinemannにおいて要約されている、キーンズ・セイアー症候群、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作(MELAS)、赤色ぼろ線維ミオクローヌス癲癇(MERRF)、レーバー遺伝性視神経萎縮(LHON)、リー症候群、ニューロパチー・運動失調・網膜色素変性症(NARP)および進行性外眼筋麻痺(PEO)が挙げられる。フリーラジカルが関与する神経変性疾患としては、変性運動失調、例えばフリードライヒ運動失調症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびアルツハイマー病が挙げられる(Beal M.F., Howell N., Bodis-Wollner I. (eds), 1997, Mitochondria and free radicals in neurodegenerative diseases, Wiley-Liss)。
【0099】
驚いたことに、式(I)の化合物はまた、ユートロフィンの発現を強力に誘発し、そのようなものとして、ユートロフィンの上昇したレベルが有益な治療効果を有する疾患、障害または状態、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)およびベッカー型筋ジストロフィー(BMD)を治療するための薬剤を調製するのに有用である。
【0100】
投与および用量範囲
哺乳類、とりわけヒトに有効量の本発明の化合物を提供するには、任意の適した投与経路を使用してもよい。例えば、経口、直腸、局所、非経口、眼内、肺または鼻内内投与を使用してもよい。投与形態としては、例えば、錠剤、トローチ、分散物、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏およびエアロゾルが挙げられる。好ましくは、式(I)の化合物は経口、非経口または局所投与される。
【0101】
使用する活性成分の有効用量は、使用する特別な化合物、投与様式、治療状態および治療状態の重篤度により変動してもよい。そのような用量は当業者により容易に確認される可能性がある。
【0102】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)および他の筋ジストロフィーを治療する場合、一般に、本発明の化合物を、約0.001mg〜約100mg/kgの体重の1日投与量で、好ましくは1日につき、単回投与でもしくは2〜6の分割投与で、または持続放出形態で投与すると、満足のいく結果が得られる。70kgの成人のヒトの場合、1日の総投与量は一般に約0.07mg〜約3500mgである。この投与計画を調整して、最適治療応答を提供してもよい。
【0103】
心臓(例えば、心筋梗塞)、腎臓または中枢神経系(例えば、脳卒中)の虚血を治療する場合、一般に、本発明の化合物を、約0.001mg〜約100mg/kgの体重の1日投与量で、好ましくは1日につき、単回投与でもしくは2〜6の分割投与で、または持続放出形態で投与すると、満足のいく結果が得られる。70kgの成人のヒトの場合、1日の総投与量は一般に約0.07mg〜約3500mgである。この投与計画を調整して、最適治療応答を提供してもよい。
【0104】
癌、乾癬、再狭窄、および他の細胞増殖性疾患を治療する場合、一般に、本発明の化合物を、約0.001mg〜約100mg/kgの体重の1日投与量で、好ましくは1日につき、単回投与でもしくは2〜6の分割投与で、または持続放出形態で投与すると、満足のいく結果が得られる。70kgの成人のヒトの場合、1日の総投与量は一般に約0.07mg〜約3500mgである。この投与計画を調整して、最適治療応答を提供してもよい。
【0105】
酸化的ストレスが原因であるミトコンドリア障害および神経変性疾患を治療する場合、一般に、本発明の化合物を、約0.001mg〜約100mg/kgの体重の1日投与量で、好ましくは1日につき、単回投与でもしくは2〜6の分割投与で、または持続放出形態で投与すると、満足のいく結果が得られる。70kgの成人のヒトの場合、1日の総投与量は一般に約0.07mg〜約3500mgである。この投与計画を調整して、最適治療応答を提供してもよい。
【0106】
製剤化
式(I)の化合物は好ましくは、投与前に剤形に製剤化される。したがって、本発明はまた、式(I)の化合物および適した薬学的担体を有する薬学的組成物を含む。
【0107】
本発明の薬学的組成物は、周知のおよび容易に入手可能な成分を用いて公知の手順により調製される。本発明の製剤を製造する場合、活性成分(式(I)の化合物)を通常、担体と混合し、または担体により希釈し、または担体内に封入するが、これはカプセル、サシェ、紙または他の容器の形態としてもよい。担体が希釈剤として作用する場合、担体は固体、半固体または液体材料であってもよく、活性成分に対するビヒクル、賦形剤または媒質として作用する。このように、組成物は錠剤、ピル、粉末、ロゼンジ、サシェ(sachet)、カシェ(cachet)、エリキシル、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル(固体として、または液体媒質中)、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、坐薬、抗菌注射溶液および抗菌パッケージ粉末の形態とすることができる。
【0108】
適した担体、賦形剤および希釈剤のいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギナート、トラガカントゴム、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水シロップ、メチルセルロース、メチルおよびプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱物油が挙げられる。製剤はさらに、潤滑剤、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、保存剤、甘味剤および/または香味剤を含むことができる。本発明の組成物は、患者に投与後、活性成分の速放性、持続性または遅延放出が提供されるように製剤化されてもよい。
【0109】
発明の化合物の調製
本発明の式(I)の化合物は、適当な材料を使用して、下記スキームおよび実施例の手順に従い調製することができ、さらに、下記特定の実施例により例示される。さらに、本明細書で記述した手順を当技術分野における通常の技術と組み合わせて使用することにより、本発明の別の化合物を容易に調製することができる。しかしながら、実施例で示した化合物は、本発明と考えられる唯一の属を形成するものと考えるべきではない。実施例により、さらに、本発明の化合物の調製のための詳細を説明する。当業者であれば、下記調製手順の条件および過程の公知のバリエーションを使用してこれらの化合物を調製することができることを容易に理解するであろう。本化合物は一般に、薬学的に許容されるそれらの塩、例えば本明細書で前に記述されたものの形態で一般に単離される。単離された塩に対応する遊離アミン塩基は、適した塩基、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム水溶液により中和させることにより、および遊離したアミン遊離塩基を有機溶媒中に抽出し、続いて蒸発させることにより、生成させることができる。このように単離したアミン遊離塩基はさらに、有機溶媒に溶解し、続いて適当な酸を添加し、その後、蒸発、沈殿、または結晶化することにより別の薬学的に許容される塩に変換することができる。温度は全て摂氏である。
【0110】
本発明の式(I)の化合物の調製について説明する場合、「T部分」、「アミノ酸(AA)部分」および「ジペプチド部分」という用語を下記で使用する。この部分の概念を下記に示す。

【0111】
本発明の化合物の調製は逐次合成経路を介して実施すると好都合である場合がある。当業者であれば、一般に、式(I)の3つの部分はアミド結合により結合することを認識するであろう。そのため、当業者は、標準ペプチドカップリング反応条件を介して3つの部分を結合させる多くの経路および方法を容易に想定することができる。
【0112】
「標準ペプチドカップリング反応条件」という句は、酸活性化剤、例えばEDC、ジシクロヘキシルカルボジイミド、およびベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートを用いて、DMFなどの不活性溶媒中、HOBtなどの触媒の存在下、カルボン酸をアミンとカップリングさせることを意味する。所望の反応を促進し、望ましくない反応を最小に抑えるために、アミンおよびカルボン酸に対し保護基を使用することはよく実証されている。存在する場合がある保護基を除去するのに必要な条件は、Greene, et al., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc., New York, NY 1991において見いだすことができる。
【0113】
Z、BocおよびFmocのような保護基が合成において広く使用され、それらの除去条件は当業者に周知である。例えば、Z基の除去は、貴金属またはその酸化物、例えば活性炭素担持パラジウムの存在下、エタノールなどのプロトン溶媒中での、水素による触媒水素化により達成することができる。他の反応の可能性のある官能性が存在することにより触媒水素化が禁忌である場合、Zの除去はまた、臭化水素を含む酢酸溶液により処理、またはTFAおよびジメチルスルフィドの混合物による処理により達成することができる。Boc保護基の除去は、塩化メチレン、メタノールまたは酢酸エチルなどの溶媒中、強酸、例えばTFAまたはHClまたは塩化水素ガスにより実施される。Fmoc保護基は、DMFなどの適した溶媒に溶解したピペリジンにより除去することができる。
【0114】
必要なジペプチド部分は、R1-イソニトリル、適当に保護されたR2-アミノアルデヒドおよび適当に保護されたR3-アミノ酸から、Passerini反応(T.D. Owens et al., Tet. Lett., 2001, 42, 6271;L. Banfi et al., Tet. Lett., 2002, 43, 4067)により、その後、N-脱保護およびアシル移動(これにより対応するジペプチジルα-ヒドロキシ-アミドが得られる)により都合よく調製することができる。R1、R2およびR3基は式(I)に対して上記で規定した通りである。反応はCH2Cl2などの不活性溶媒中、室温で実施される。ジペプチド部分上のα-ケトアミド官能性は、CH2Cl2などの不活性溶媒中、0℃または室温で、典型的にはDess-Martin酸化(S.Chatterjee et al., J. Med. Chem., 1997, 40, 3820)を用いて組み込まれる。酸化は、当業者であれば容易に認識されるように、ペプチドカップリング反応を用いて式(I)の化合物を完全に組み立てた後、または3つの部分、T、AAおよびジペプチドを結合させる順序の任意の好都合な中間体段階のいずれかで実施することができる。
【0115】
式(I)の化合物は、ジアステレオマー混合物として存在する場合、適した溶媒、例えば、メタノール、酢酸エチルまたはそれらの混合物からの分別結晶により鏡像異性体のジアステレオマー対に分離させてもよい。このように得られた鏡像異性体の対は、従来の手段により、光学活性な酸を分割剤として使用することにより個々の立体異性体に分離させてもよい。また、式(I)の化合物の任意の鏡像異性体は、光学的に純粋な開始材料または公知の配置の試薬を用い、立体特異的合成により得てもよい。
【0116】
上記説明ならびに下記スキーム、調製および実施例において、様々な試薬記号および略語は下記意味を有する:
1-Nal:1-ナフチルアラニン
2-Nal:2-ナフチルアラニン
Boc:t-ブトキシカルボニル
DIEA:ジイソプロピルエチルアミン
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
EDC:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドヒドロクロリド
Et:エチル
EtOAc:酢酸エチル
Fmoc:9-フルオレニルメチル-カルバメート
HBTU:ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HOAc:酢酸
HOAt:1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール
HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
h:時間
Homephe:ホモフェニルアラニン
Leu:ロイシン
Me:メチル
NMM:N-メチルモルホリン
Phe:フェニルアラニン
Py:ピリジル
PyBOP:ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
TFA:トリフルオロ酢酸
TEA:トリエチルアミン
Val:バリン
Z:ベンジルオキシカルボニル
【0117】
反応スキーム1:式(I)の化合物に対するカップリング技術

適当なジペプチド部分(例えば、H2N-Val-Phe(4-Cl)-ヒドロキシ-エチルアミド)を、HBTU/HOBtの存在下、AA部分(例えば、Boc-Phe-OH)に結合させ、その後、Boc脱保護する。結合AA-ジペプチドヒドロキシ-エチルアミド化合物をその後、適当なT部分(例えば、リポ酸)に結合させ、続いて、Dess-Martin酸化を実施し対応するα-ケトアミド化合物とする。
【0118】
一般に、ペプチド結合反応が完了した後、反応混合物は適当な有機溶媒、例えば、EtOAc、CH2Cl2またはEt2Oで希釈することができ、その後、水溶液、例えば、水、HCl、NaHSO4、重炭酸塩、NaH2PO4、リン酸緩衝液(pH7)、塩水または任意のこれらの組み合わせで洗浄する。反応混合物を濃縮し、その後、適当な有機溶媒と水溶液との間で分配させることができる。反応混合物を濃縮し、水性ワークアップ無しでクロマトグラフィーにかけることができる。
【0119】
Boc、Z、FmocおよびCF3COなどの保護基はH2/Pd-C、TFA/DCM、HCl/EtOAc、HCl/ドキサン、HClを含むMeOH/Et2O、NH3/MeOHまたはTBAF中、カチオン捕捉剤、例えばチオアニソール、エタンチオールおよびジメチルスルフィド(DMS)を用いて、またはそれら無しで脱保護することができる。脱保護したアミンを得られた塩として使用することができ、またはDCMに溶解し、重炭酸水溶液またはNaOH水溶液で洗浄することにより遊離塩基化させる。脱保護したアミンはまた、イオン交換クロマトグラフィーにより遊離塩基化することもできる。
【0120】
式(I)の化合物の組立に対するより詳細な手順は、本発明の実施例を有するセクションで記述する。
【0121】
反応スキーム2:Passerini反応を使用する「ジペプチド部分」の調製

Pは前述したようなアミノ保護基であり;および、R1〜R3は式(I)に対し上記で規定した通りである。
【0122】
一般に、本発明のジペプチド部分は、公知の化学転換により、市販の開始材料から調製してもよい。本発明の化合物のジペプチド部分の調製を上記反応スキームにおいて示す。
【0123】
反応スキーム2に示されるように、本発明の化合物の「ジペプチド部分」は、有機溶媒、例えばCH2Cl2中、適した温度での、Boc-保護アミノアルデヒド1、イソニトリル2および適当に保護したアミノ酸3の間の3成分反応(Passerini反応)により調製することができる。適当な溶媒、例えばCH2Cl2中、TFAを用いてBoc基を脱保護した後、適した溶媒、例えばCH2Cl2中、適した塩基、例えばEt3NまたはDIEAを用いて、塩基誘導アシル移動を実施するとジペプチド部分4が得られる。ジペプチド部分調製のより詳細な例を下記で記述する。
【0124】
適当に官能化されたAA部分は市販されている。
【0125】
適当に官能化されたT部分は市販されている。
【0126】
下記は本発明の詳細な実施例を記述したものである。
【0127】
実施例1に対する合成スキーム:

【0128】
実施例1

DMSO 2.5mlおよびCH2Cl2 15mlに溶解した中間体1d)347mgの溶液を氷中で冷却した。Dess-Martin試薬287mgを添加し、混合物を室温で4時間撹拌した。CH2Cl2を添加し、混合物を1M Na2S2O3、飽和NaHCO3、およびH2Oで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、真空で蒸発させた。粗生成物を熱Et2O中に倍散させることにより精製し、濾過し、冷Et2Oで洗浄した。最後に、これを真空、40℃で一晩中乾燥させ、実施例1を白色固体の形態で得た。
Rf=0.75(CH2Cl2/MeOH 9:1);Mp. 236-238℃
【0129】
必要とされる中間体は下記のように合成することができる。
中間体1a):

無水CH2Cl2 14mlに溶解したBoc-p-クロロ-フェニルアラニナル1.00gの溶液に、エチルイソシアニド0.39ml、続いてBoc-バリン0.76gを添加し、混合物を室温で18時間撹拌した。得られた溶液を蒸発乾燥させ、残渣をCH2Cl2 14mlに再溶解した。TFA 5mlを添加し、反応物を室温で2時間撹拌した。揮発物質を真空で蒸発させ、残渣を真空で乾燥させた。得られた黄色油をCH2Cl2 14mlに溶解し、Et3N 10mlを添加し、反応物を室温で一晩中撹拌した。その後、反応混合物を真空で蒸発乾燥させ、残渣を1N NaOHとEtOAcとの間で分配させた。有機層を1N NaOH、H2Oおよび塩水で洗浄した。水層をEtOAcで逆抽出し、有機層を合わせ、Na2SO4上で乾燥させ、真空で蒸発させた。粗生成物をEt2Oに懸濁させ、濾過し、冷Et2Oで洗浄し、真空で乾燥させ、中間体1a)を白色固体として得た。
Rf=0.27(CH2Cl2/MeOH 9:1);Mp. 187-190℃
【0130】
中間体1b):

DMF 12mlに溶解したBoc-Phe-OH 540mgおよびHOBt 363mgの溶液に、HBTU 768mg、続いてDIEA 0.705mlを添加し、混合物を室温で10分間撹拌した。その後、中間体1a) 600mgを添加し、反応物を室温で一晩中撹拌した。得られた溶液をEtOAcで希釈し、1N HCl(3×)、2N K2CO3(3×)、H2O、および塩水で洗浄した。有機層を無水MgSO4で乾燥させ、真空で蒸発させた。粗生成物を熱Et2Oで倍散させ、濾過し、冷Et2Oで洗浄し、真空で乾燥させ、中間体1b)を白色固体として得た。
Rf=0.53(CH2Cl2/MeOH 9:1);Mp. 245-246℃
【0131】
中間体1c):

MeOH 3mlに溶解した中間体1b) 1000mgの溶液に、4M HClのジオキサン溶液18mlを添加し、透明溶液を室温で120分間撹拌した。その後、反応混合物をEt2O 54mlで希釈し、冷蔵庫内で60分間冷却した。沈殿した生成物を濾過し、Et2Oで洗浄し、真空、40℃で一晩中乾燥させ、中間体1c)を白色固体として得た。
Rf=0.43(CH2Cl2/MeOH 9:1)
【0132】
中間体1d):

DMF 8mlに溶解した5-(2-チエニル)ペンタン酸123mgおよびHOBt 135mgの氷冷溶液に、HBTU 252mg、続いてDIEA 0.232mlを添加し、混合物を氷浴中で10分間撹拌した。その後、中間体1c) 300mgを添加し、反応物を室温で一晩中撹拌した。得られた溶液をEtOAcで希釈し、1N HCl(3×)、2N K2CO3(3×)、H2O、および塩水で洗浄した。有機層を無水MgSO4で乾燥させ、真空で蒸発させた。粗生成物を熱Et2Oで倍散させ、濾過し、冷Et2Oで洗浄し、真空で乾燥させ、中間体1d)を白色固体として得た。
Rf=0.59(CH2Cl2/MeOH 9:1);Mp. 255-258℃
【0133】
下記実施例の化合物は同様に調製することができる。



























































【0134】
生物アッセイ法
式(I)のα-ケトカルボニルカルパイン阻害剤の阻害効果を、文献では慣例の酵素試験を使用して決定し、酵素活性の50%が阻害される阻害剤の濃度(=IC50)を効力の測定値として決定した。Ki値もまた、いくつかの場合において決定した。これらの基準を使用して、化合物(I)のカルパインI、カルパインIIおよびカテプシンBに対する阻害効果を測定した。
【0135】
酵素カルパイン阻害アッセイ法
カルパイン阻害剤の阻害特性を、100mMイミダゾールpH7.5、5mM L-システイン-HCl、5mM CaCl2、DMSO 2.5μlに溶解した250μMのカルパイン蛍光発生基質Suc-Leu-Tyr-AMC(Sigma)(Sasaki et al., J. Biol. Chem., 1984, 259, 12489-12949)およびヒトμ-カルパイン(Calbiochem)0.5μgを含む100μlの緩衝液中で試験する。DMSO 1μlに溶解した阻害剤を反応緩衝液に添加する。切断産物7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC)の蛍光を、SPECTRAmax GEMINI XS(Molecular Device)蛍光光度計において、λex=360nmおよびλem=440nmで、30℃、30分中、30秒の間隔で、96-ウエルプレート(Greiner)で追跡する。異なる阻害剤濃度での初期反応速度を阻害剤濃度に対してプロットし、グラフからIC50値を決定する。
【0136】
C2C12筋芽細胞でのカルパイン阻害アッセイ法
このアッセイ法は、物質の細胞カルパイン阻害能力をモニターすることを目的とする。C2C12筋芽細胞を、96-ウエルプレートで、増殖培地(DMEM、20%ウシ胎児血清)中、集密に達するまで増殖させる。その後、増殖培地を融合培地(DMEM、5%ウマ血清)と置換する。24時間後、融合培地をDMSO 1μlに溶解した試験物質を含む融合培地で置換する。37℃で2時間インキュベーションした後、細胞にカルパイン蛍光発生基質Suc-Leu-Tyr-AMCを、下記を含む反応緩衝液50μl中400μMで、20分間、室温で添加する:135mM NaCl;5mM KCl;4mM CaCl2;1mM MgCl2;10mMグルコース;10mM HEPES pH7.5。細胞カルパインを活性化するのに必要なカルシウム流入を、20μMカルシウムイオノフォアBr-A-23187(Molecular Probes)を含む反応緩衝液50μlを添加することにより引き起こす。切断産物AMCの蛍光を、60分の間、37℃、1分間隔で上記のように測定する。IC50値を上記のように決定する。酵素カルパイン阻害アッセイ法において決定したIC50をC2C12筋芽細胞カルパイン阻害アッセイ法において決定したIC50と比較すると、細胞取込または物質の膜透過性が評価できる。
【0137】
C2C12筋芽細胞におけるスペクトリン分解アッセイ法
カルパインは広範囲のタンパク質基質を切断するが、細胞骨格タンパク質が特にカルパイン切断を受けやすいと考えられる。特に、細胞骨格タンパク質α-スペクトリンのカルパイン特異的分解産物(BDP)の蓄積を使用して、多くの生理学的および病理学的状態の細胞および組織におけるカルパイン活性がモニターされてきた。このように、カルパイン活性化は、細胞骨格タンパク質α-スペクトリンのタンパク質分解をアッセイすることにより測定することができ、α-スペクトリンはカルパインにより切断されると大きな(150kDa)、特徴的で安定な分解産物を生成する(A.S. Harris, D.E. Croall, & J.S. Morrow, The calmodulin-binding site in alpha-fodrin is near the calcium-dependent protease-I cleavage site, J. Biol. Chem., 1988, 263(30), 15754-15761. Moon, R.T. & A.P. MaMahon, Generation of diversity in nonerythroid spectrins. Multiple polypeptides are predicted by sequence analysis of cDNA encompassing the coding region of human nonerythroid alpha-spectrin, J. Biol. Chem., 1990, 265(8), 4427-4433. P.W. Vanderklish & B.A. Bahr, The pathogenic activation of calpain: a marker and mediator of cellular toxicity and diseases states, Int. J. Exp. Pathol., 2000, 81(5), 323-339)。スペクトリン分解アッセイ法は、蛍光発生基質を省略することを除き、上記C2C12筋芽細胞カルパイン阻害アッセイ法と同じ条件下で実施する。カルシウムイオノフォアと60分インキュベートした後、80mM Tris-HCl pH6.8;5mM EGTA;2% SDSを含む溶解緩衝液50μlに細胞を溶解させる。その後、溶解物を、ウエスタンブロットでモノクローナル抗体mAb1622(Chemicon)を用いプローブする。デンシトメトリーにより、150kDaカルパイン特異的BDPの、無傷の240kDa α-スペクトリンバンドに対する比率を測定することにより、カルパインの活性化を決定する。
【0138】
カテプシンBアッセイ法
S. Hasnain et al., J. Biol. Chem., 1993, 268, 235-240の方法と同様の方法によりカテプシンBの阻害を決定した。
【0139】
阻害剤およびDMSO(最終濃度:100μM〜0.01μM)から調製した阻害剤溶液2μLを、カテプシンB 88μL(ヒト肝臓カテプシンB(Calbiochem)を希釈して500μM緩衝液中5単位としたもの)に添加する。この混合物を室温(25℃)で60分間プレインキュベートし、その後、10mM Z-Arg-Arg-pNA(10%DMSOを含む緩衝液に溶解)10μLを添加することにより反応を開始させる。反応を405nmで、30分間、マイクロタイタープレート読み取り装置で追跡する。その後、最大勾配からIC50を決定する。
【0140】
20Sプロテアソームアッセイ法
400μM蛍光発生基質Suc-Leu-Leu-Val-Tyr-AMC(Bachem)を含む反応緩衝液25μlを、白色マイクロタイタープレートのウエル毎に分配させる。DMSO 0.5μlに溶解させた試験化合物を添加する。反応を開始させるために、酵素(20Sプロテアソーム、ウサギ、Calbiochem)35ngを含む反応緩衝液25μlを添加する。蛍光の増加(360nmで励起;440nmで発光)を30分にわたり、30℃、30''で測定する。その後、勾配からIC50を決定する。
【0141】
BSOアッセイ法
初代線維芽細胞を、フリードライヒ運動失調症(FRDA)と分子診断されたドナーから、およびミトコンドリア障害のない対照ドナーから誘導した。細胞株は、Coriell Cell Repositories(Camden, NJ:それぞれ、カタログ番号GM04078、GM08402およびGM08399)から入手した。全ての細胞型は、PCRに基づく方法により、少なくとも400〜500反復のイントロンGAA三塩基反復長に対し、分子レベルで診断した。実験は、文献に記述されているように実施した(M.L. Jauslin et al., Human Mol. Genet., 2002, 11, 3055-3063):細胞をマイクロタイタープレートに、10%(v/v)ウシ胎児血清(PAA Laboratories, Linz, Austria)、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(PAA Laboratories, Linz, Austria)、10μg/mlインスリン(Sigma, Buchs, Switzerland)、10ng/ml EGF(Sigma, Buchs, Switzerland)、10ng/ml bFGF(PreproTech、Rocky Hill, NJ)および2mMグルタミン(Sigma, Buchs, Switzerland)が補充された、フェノールレッド(Bioconcept, Allschwil, Switzerland)を有さない25%(v/v)M199EBSおよび64%(v/v)MEM EBSを含む増殖培地100μlあたり4000細胞の密度で播種した。細胞を様々な試験化合物の存在下、24時間インキュベートし、その後、L-ブチオニン-(S,R)-スルホキシミン(BSO)を最終濃度1mMとなるように添加した。BSO-処理対照において毒性の最初の兆候が現れた後(典型的には16〜48時間後)、細胞生存率を測定した。細胞を60分間、室温で、1.2μMカルセインAMおよび4μMエチジウムホモダイマー(Live/Dead assay, Molecular Probes, Eugene, OR)を有するPBS中で染色した。蛍光強度をGemini Spectramax XS分光蛍光光度計(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)により、それぞれ、485nmおよび525nmの励起波長および発光波長を用いて測定した。
【0142】
ヒト筋管におけるユートロフィン発現アッセイ法
I. Courdier-Fruh et al., Neuromuscular Disord., 2002, 12, S95-S104の方法に類似する方法により、ユートロフィン誘導を決定した。
【0143】
初代ヒト筋細胞培養物を、デュシェンヌ患者から、整形外科処置中に得た筋肉生検(Association Francaise contre les Myopathiesにより提供)より調製した。標準プロトコルに従い培養物を調製し、維持した。ヒトDMD筋管におけるユートロフィン発現の誘導を、分化培地中に添加した50nMまたは500nMの試験化合物でアッセイした。インキュベーション5〜6日後、細胞に基づくELISAにより、ユートロフィンのアミノ末端部分に対するマウスモノクローナル抗体(NCL-DRP2、Novocastra Laboratories)を用い、正規化ユートロフィンタンパク質レベルを決定する。較正のために、製造者の推薦に従い、比色分析CellTiter96(登録商標)AQ One Solution Reagent Proliferation Assay(Promega)を用い、各ウエルにおける総デヒドロゲナーゼ酵素活性の吸光度測定により細胞密度および分化を決定した。その後、細胞を固定し、洗浄し、0.5%(v/v)Triton X-100により透過性とし、標準手順により非特異的抗体結合部位をブロックした。ユートロフィンタンパク質レベルを、検出のためにQuantaBlu(商標) Fluorogenic Peroxidase Substrate Kit(Piece)を使用し、ユートロフィン特異的一次抗体および適したペルオキシダーゼ結合二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用い免疫学的に決定した。蛍光測定はマルチラベルカウンタ(Wallac)を用い、λex=355nmおよびλem=460nmで実施した。このシグナルの第1の読み取り値を任意の単位で示す。較正のために、各ウエルの相対ユートロフィンタンパク質量を示す任意の単位を、対応する細胞-タイター吸光度値で割り、細胞密度に対し較正した。実験間の比較のために、各ウエル中のユートロフィンタンパク質量に対する細胞-タイター較正読み取り値を、溶媒処理対照培養物(100%に設定)の%で示した。すなわち、データはDMSO溶媒と比較した%ユートロフィンタンパク質レベルである(N=4)。
【0144】
本発明の選択した実施例に対する生物学的データは下記の通りである。

【0145】
C2C12筋芽細胞におけるカルパイン阻害アッセイ法でIC50が1μMまたはそれ以下である実施例は一般に、C2C12筋芽細胞において10μMの試験濃度でスペクトリン分解の完全阻害を示した。
【0146】
インビボ実験
mdxマウスは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する確立した動物モデルである(Bulfield G., Siller W.G., Wight P.A., Moore K.J., X chromosome-linked muscular dystrophy (mdx) in the mouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 1984, 81(4), 1189-1192)。選択した化合物を、下記手順に従い、mdxマウスの長期処置において試験した。
【0147】
マウス系統:
C57BL/10scsnおよびC57BL/10scsn mdxマウス系統をJackson Laboratory(ME, USA)で購入し、室内で飼育した。雄マウスは3または7週齢で、CO2窒息により屠殺した。
【0148】
処置:
化合物を50% PEG、50%生理食塩水に溶解し、腹腔内投与により適用した。
【0149】
組織診断:
前脛骨筋(TA)、四頭筋(Quad)、および横隔膜筋(Dia)を収集し、トラガカントゴム(Sigma-Aldrich, Germany)を用いてコルク支持体上に載置した。試料を溶融イソペンタン中で即座に凍結させ、-80℃で保存した。筋肉の中腹領域の12μmの厚さの凍結切片を調製した。染色のために、切片を空気乾燥し、4%PFAを含むPBS中で5分間固定し、3度PBSで洗浄し、一晩中4℃で、膜結合および細胞外エピトープを染色するための2μg/mlのAlexa Fluor(商標)488コンジュゲートコムギ胚芽凝集素(WGA-Alexa, Molecular Probes, Eugen, OR, USA)および核を染色するための1μg/mlの4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI;Molecular Probes)を含むPBS中でインキュベートした。
【0150】
画像収集および分析:
蛍光顕微鏡(Vanox S, Olympus, Tokyo, Japan)に連結したデジタルカメラ(ColorView II, Soft Imaging System, Munster, Germany)を用いて両方のラベルの蛍光顕微鏡画像を取得した。これらの2つの染色を組み合わせて複合画像とすること、いくつかの画像をまとめて筋肉断面全体の完全な画像とすること、およびさらに半自動化分析を、画像解析プログラムAnalySIS(Soft Imaging System)を用いて実施した。各断面の1200〜2900筋線維の画像分析を3つの工程で実施した:1)筋線維境界の決定;2)筋線維サイズの決定、および3)中心核(centralized nuclei)を含む筋線維のパーセンテージの決定。筋線維サイズの決定のために6つの異なる幾何学的パラメータについて試験した:(a)「最小フェレット(minimal feret)」(筋線維の対向する縁での平行接線の最小距離)、(b)「面積」、(c)「最小内径(筋線維の中心を通る最小直径)」、(d)「最小直径(ステップ幅1°の0°〜179°の範囲の角度に対する筋線維の最小直径)」、(e)「最小外径(外側境界から外側境界までの筋線維を通る最小直径)」、および(f)「周囲」。筋線維サイズの分散係数は下記のように規定する:分散係数=(筋線維サイズの標準偏差/断面の筋線維サイズの平均)*1000。異なる分散係数値の統計分析では、Mann-Whitney U試験を使用した。
【0151】
本発明の選択した実施例は、mdxマウスモデルにおいて、20mg/kgで1日おきに、3週齢マウスおよび4週間の処置期間を使用すると、活性であった(N=5〜10)。
【0152】
20mg/kg、1日おきの実施例1により、筋線維サイズの分散係数が、溶媒のみを受けた対照mdxマウス(N=15)に比べ、TAでは26%(p<0.01;N=9)およびDiaでは26%(p<0.005;N=10)減少した。中心核の割合は、溶媒のみを受けた対照mdxマウス(N=20)に比べ、TAでは17%(p<0.005;N=9)減少した。
【0153】
化合物の顕著な副作用は、この長期処置では観察されなかった。
【0154】
20mg/kg、1日おきの実施例520により、溶媒のみを受けた対照mdxマウス(N=15)に比べ、Diaでは40%(p<0.000005;N=10)、およびQuadでは31%(p=0.01;N=6)、筋線維サイズの分散係数が減少した。中心核の割合は、溶媒のみを受けた対照mdxマウス(N=20)に比べ、それぞれ、Diaでは26%(p<0.05;N=10)、およびTAでは13%(p<0.05;N=11)減少した。
【0155】
化合物の顕著な副作用は、この長期処置では観察されなかった。
【0156】
これとは対照的に、強力な標準カルパイン阻害剤MDL-28170はこの実験で弱い活性を示しただけであった。
【0157】
上記で示した実験から明らかなように、一般に、本発明の化合物は、MDL-28170などの標準カルパイン阻害剤に比べ、C2C12筋細胞において著しく改善された活性を示す。選択した実施例では、細胞アッセイ法における改善は1000倍を超え、酵素カルパインI阻害アッセイ法での活性はMDL-28170の活性に匹敵する。
【0158】
これにより、本発明の化合物は、公知の標準化合物MDL-28170に比べ、強力なカルパイン阻害活性を保持したまま、著しく増強した筋細胞膜透過性を有することが証明される。この改善された細胞透過により、本発明の化合物は、作用部位が筋組織である、筋ジストロフィーおよび筋萎縮症などの疾患の治療に特に有用となる。
【0159】
生物学的結果(上記を参照されたい)により示されるように、強力なカルパイン阻害活性を示す他に、本発明の選択した実施例はまた、プロテアソーム(MCP)の強力な阻害剤であり、および/または筋細胞を、酸化的ストレスによる損傷から効果的に保護し、および/またはユートロフィンの発現を誘導する。そのような追加の有益な特性は、筋ジストロフィーおよび筋萎縮症などの一定の筋肉疾患を治療するのに好都合である。
【0160】
MDL-28170などのペプチドアルデヒドクラスの公知のカルパイン阻害剤とは対照的に、本発明の化合物は必要な代謝安定性および物理化学特性を有し、インビボでの適用の成功が可能になる。したがって、本発明の選択した化合物は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのマウスモデルにおいて長期処置に対し強力な活性を示し、一方、この動物モデルにおける標準カルパイン阻害アルデヒド、例えばMDL-28170の活性は弱かった。
【0161】
薬学的組成物の例
本発明の経口用組成物の特定の態様として、実施例1の化合物80mgを、十分な微粉化ラクトースと共に製剤化し、サイズ0ハードゼラチンカプセルを満たす総量580〜590mgを提供する。
【0162】
本発明についてある好ましい態様を参照して記述し、説明してきたが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱せずに、様々な変更、改変および置換が可能であることは理解されるであろう。例えば、上記で設定した好ましい用量以外の有効量が、観察された特定の薬理学的応答の結果、適用可能な場合があり、その量は選択した特別な活性化合物により、ならびに使用した製剤の型および投与様式から変動する可能性があり、結果におけるそのような予測される変動または差は本発明の目的および実施に従い意図される。そのため、本発明は下記特許請求の範囲によってのみ制限され、そのような特許請求の範囲は合理的な限り広く解釈すべであるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物:

式中、
R1
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
-アルキレン-シクロアルキル、
アリール、
-アルキレン-アリール、
-SO2-アルキル、
-SO2-アリール、
-アルキレン-SO2-アリール、
-アルキレン-SO2-アルキル、
ヘテロシクリルまたは
-アルキレン-ヘテロシクリル;
-CH2CO-X-H、
-CH2CO-X-直鎖アルキル、
-CH2CO-X-分枝鎖アルキル、
-CH2CO-X-シクロアルキル、
-CH2CO-X-アルキレン-シクロアルキル、
-CH2CO-X-アリール、
-CH2CO-X-アルキレン-アリール、
-CH2CO-X-ヘテロシクリル、
-CH2CO-X-アルキレン-ヘテロシクリルまたは
-CH2CO-アリールを示し;
XはOまたはNHを示し;
R2
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
-アルキレン-シクロアルキル、
アリールまたは
-アルキレン-アリールを示し;
R3
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキルまたは
-アルキレン-シクロアルキルを示し;
R4
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
-アルキレン-シクロアルキル、
アリール、
-アルキレン-アリールまたは
-アルケニレン-アリールを示し;
ここで、nは0〜6の整数、すなわち、1、2、3、4、5、または6を示す。
【請求項2】
R1が水素、直鎖アルキル、分枝鎖アルキル、シクロアルキル、-アルキレン-アリール、-アルキレン-ヘテロシクリル、-CH2CO-X-直鎖アルキル、-CH2COOH、および-CH2CONH2からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R2が置換または非置換ベンジル基である、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
R3が分枝鎖アルキル基、シクロアルキル基または-アルキレン-シクロアルキル基である、請求項1〜3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
R4が置換もしくは非置換ベンジル基または置換もしくは非置換エチルフェニル基である、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
R4がメチルナフチル基である、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
nが1、2、3、または4である、請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
n=1またはn=3である、請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
薬剤として使用するための請求項1〜8のいずれか一項記載の化合物。
【請求項10】
カルパインIおよび他のチオールプロテアーゼの阻害に応答性である障害、疾患、または状態の治療または予防のための薬剤を調製するための、請求項1〜8のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項11】
カテプシンB、カテプシンH、カテプシンL、またはパパインの阻害に応答性である障害、疾患、または状態の治療または予防のための薬剤を調製するための請求項10記載の使用。
【請求項12】
多触媒性プロテアーゼ(MCP)の阻害に応答性である障害、疾患、または状態の治療または予防のための薬剤を調製するための請求項10記載の使用。
【請求項13】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療または予防のための薬剤を調製するための請求項10記載の使用。
【請求項14】
ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)の治療または予防のための薬剤を調製するための請求項10記載の使用。
【請求項15】
神経筋疾患の治療または予防のための薬剤を調製するための請求項10記載の使用。
【請求項16】
ジストロフィノパチー(dystrophinopathy)およびサルコグリカノパチー(sarcoglycanopathy)、肢帯型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、末梢性および他のミオパチー、筋緊張症候群、イオンチャネル疾患、悪性高体温症、代謝性ミオパチー、遺伝性心筋症、先天性筋無力症候群、脊髄性筋萎縮症、遺伝性運動失調症、遺伝性運動感覚性ニューロパチー、ならびに遺伝性対麻痺を含む、筋ジストロフィーの治療または予防のための薬剤を調製するための請求項15記載の使用。
【請求項17】
廃用性萎縮および全身の筋肉の衰弱の治療または予防のための薬剤を調製するための請求項10記載の使用。
【請求項18】
心臓、腎臓、または中枢神経系の虚血、炎症、筋ジストロフィー、中枢神経系の損傷およびアルツハイマー病の治療または予防のための薬剤を調製するための請求項10記載の使用。
【請求項19】
目の白内障および目の他の疾患の治療または予防のための薬剤を調製するための請求項10記載の使用。
【請求項20】
癌の治療のための薬剤を調製するための請求項12記載の使用。
【請求項21】
乾癬、および再狭窄、および他の細胞増殖性疾患の治療のための薬剤を調製するための請求項12記載の使用。
【請求項22】
酸化的ストレスの上昇したレベルが関与するミトコンドリア障害および神経変性疾患の治療または予防のための薬剤を調製するための、請求項1〜8のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項23】
キーンズ・セイアー症候群、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作(MELAS)、赤色ぼろ線維ミオクローヌス癲癇(MERRF)、レーバー遺伝性視神経萎縮(LHON)、リー症候群、ニューロパチー・運動失調・網膜色素変性症(NARP)、および進行性外眼筋麻痺(PEO)を含むミトコンドリア障害の治療のための薬剤を調製するための請求項22記載の使用。
【請求項24】
変性運動失調、例えばフリードライヒ運動失調症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびアルツハイマー病を含む、フリーラジカルが関与する神経変性疾患の治療のための薬剤を調製するための請求項22記載の使用。
【請求項25】
ユートロフィン発現の誘導に応答性である障害、疾患、または状態の治療または予防のための薬剤を調製するための、請求項1〜8のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項26】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療または予防のための薬剤を調製するための請求項25記載の使用。
【請求項27】
ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)の治療または予防のための薬剤を調製するための請求項25記載の使用。
【請求項28】
請求項1〜8のいずれか一項記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。

【公表番号】特表2008−510756(P2008−510756A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528720(P2007−528720)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009064
【国際公開番号】WO2006/021409
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(505336024)サンセラ ファーマシューティカルズ (シュバイツ) アーゲー (21)
【Fターム(参考)】