説明

βアミロイド生成の阻害剤

βアミロイドの生成と関係がある状態の治療に有用な新規なスルホンアミド化合物について記載し、その調製経路についても記載する。このスルホンアミド化合物は以下の構造であり、R〜Rについては本明細書で規定している。こうした化合物および/またはこうした化合物のプロドラッグと、生理的に適合性のある担体とを含有する医薬組成物も提供される。こうした化合物は、βアミロイド生成の阻害、ならびにアルツハイマー病、アミロイド血管症、脳アミロイド血管症、全身性アミロイドーシス、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血、封入体筋炎、軽度認知障害(MCI)、およびダウン症候群の治療に特に有用である。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病による影響の治療において有用な、βアミロイド生成の阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、高齢者における最も一般的な形の認知症(記憶喪失)である。脳中に認められるADの主な異常な病変は、斑および脈管症の形のβアミロイドタンパク質の細胞外沈着、および凝集した過剰リン酸化タウタンパク質の細胞内神経原線維濃縮体からなる。証拠が示すところによると、脳におけるβアミロイドレベルの上昇は、タウ病理より先に起こるばかりでなく、認知機能低下とも相互に関係がある。研究では、βアミロイドのADにおける原因としての役割をさらに示唆するものとして、凝集したβアミロイドが、細胞培養物中のニューロンに対して毒性であることが示されている。
【0003】
βアミロイドタンパク質は、39〜42アミノ酸のペプチドから主に構成され、アミロイド前駆タンパク質(APP)と呼ばれるより大きい前駆体タンパク質から、βセクレターゼおよびγセクレターゼというプロテアーゼの連続した作用によって生成される。稀ではあるが、早期発症ADの症例は、βアミロイドタンパク質全体またはそのより凝集傾向の42アミノ酸のアイソフォームの過剰生成をもたらす、APPの遺伝子突然変異のためであるとされている。さらに、ダウン症候群患者は、APPをコードする遺伝子を含んでいる余分の染色体を有する。このような個体は、βアミロイドレベルが上昇しており、晩年にADを発症する。
【0004】
βアミロイド生成のフェニルスルホンアミドおよび複素環スルホンアミド阻害剤が記載されている。米国特許第6,878,742号、第6,610,734号、および第7,166,622号、ならびに米国特許出願公開第2005/0196813号および第2005/0171180号を参照されたい。βアミロイド生成の、含フルオロおよび含トリフルオロアルキル複素環スルホンアミドおよびフェニルスルホンアミド阻害剤も記載されている。米国特許出願公開第2004/0198778号および第2007/0249722号を参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
βアミロイド生成の阻害およびアルツハイマー病の症状の治療において有用な化合物および組成物が引き続き求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、R〜Rが本明細書で規定される式(I)の化合物について述べる。
【0007】
【化1】

【0008】
別の態様では、このような化合物を含有する医薬組成物について述べるが、このような組成物は、生理的に適合性のある担体を含有する。
【0009】
別の態様では、本明細書に記載の化合物のプロドラッグを含有する医薬組成物について述べるが、このような組成物は、生理的に適合性のある担体を含有する。
【0010】
さらに別の態様では、対象においてβアミロイド生成を阻害する方法について述べるが、この方法は、本明細書に記載の化合物の送達を包含する。
【0011】
さらにまた別の態様では、対象におけるアルツハイマー病、アミロイド血管症、脳アミロイド血管症、全身性アミロイドーシス、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血、封入体筋炎、軽度認知障害(MCI)、およびダウン症候群の治療方法について述べるが、この方法は、本明細書に記載の化合物の対象への投与を包含する。
【0012】
別の態様では、薬剤キットについて述べる。このキットは、本明細書に記載の医薬組成物を含む容器を有する。
【0013】
さらに別の態様では、式(I)の化合物の調製方法について述べる。
【0014】
【化2】

【0015】
本発明の他の態様および利点は、以下の発明の詳細な説明から容易に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本明細書に記載のとおりに調製した5−クロロ−N−[(1S*,2S*)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミドのサンプルの粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
式(I)の1,2アミノアルコールの、含ハロアルキルアリールスルホンアミドまたはヘテロアリールスルホンアミド誘導体が提供される。このような化合物は、APPからのβアミロイドタンパク質生成の阻害剤であり、したがって、βアミロイドレベルの増大と関連付けられる生理的状態(たとえばAD、ダウン症候群)の治療に有用である。このような化合物は、βアミロイドタンパク質レベルを低下させ、アルツハイマー病、軽度認知障害、ダウン症候群などの疾患に感受性があるかまたは罹患している患者において有用である。このような化合物を投与した結果としてβアミロイドタンパク質レベルがより低くなれば、そうした患者の脳において有毒なβアミロイド凝集物が減少するはずである。
【0018】
式(I)の化合物は、次の構造
【0019】
【化3】

[式中、Rは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールであり、Rは、ハロアルキルまたは置換ハロアルキルであり、Rは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールである]または薬学的に許容できるその塩、プロドラッグ、互変異性体、もしくは代謝産物である。
【0020】
一実施形態では、Rは、アリールまたは置換アリールである。別の実施形態では、Rは、6〜14員の不飽和炭素環または6〜14員の置換された不飽和炭素環である。一例では、Rは、次の構造である。
【0021】
【化4】

[式中、R、R、R10、R11およびR12は、H、ハロゲン、C〜Cアルコキシ、置換C〜Cアルコキシ、NO、C〜Cアルキル、置換C〜Cアルキル、CN、C〜Cアルキルカルボニル、置換C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cアルキルカルボキシ、置換C〜Cアルキルカルボキシ、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CONH(置換C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、CON(置換C〜Cアルキル)、S(C〜Cアルキル)、S(置換C〜Cアルキル)、SO(C〜Cアルキル)、SO(置換C〜Cアルキル)、SO(C〜Cアルキル)、SO(置換C〜Cアルキル)、NHSO(C〜Cアルキル)、およびNHSO(置換C〜Cアルキル)の中からそれぞれ独立に選択され、またはRとR、RとR10、R11とR12、もしくはR10とR11が縮合して、(i)3〜8個の炭素原子を含んでいる飽和した環、(ii)5〜8個の炭素原子を含んでいる不飽和の環、または(iii)環の主鎖にO、NおよびSの中から選択される1〜3個のヘテロ原子を含んでいる複素環を形成しており、環(i)〜(iii)は、C〜Cアルキル、置換C〜Cアルキル、ハロゲン、またはCNを含めた1〜3個の置換基で置換されていてもよい。]Rは、フェニルまたは置換フェニルであることが望ましい。Rは、ハロゲン化されたフェニルであることがより望ましい。Rは、4−クロロフェニルであることがより一層望ましい。
【0022】
別の実施形態では、Rは、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリール、たとえば、その主鎖に0〜1個のOもしくはS原子および0〜4個のN原子を有する不飽和の5員または6員環であり、その環は、環の主鎖に少なくとも1個のヘテロ原子を有する。一例では、Rは、次の構造である。
【0023】
【化5】

[式中、R13は、H、ハロゲン、およびCFの中から選択され、W、YおよびZは、C、CR14、およびNの中からそれぞれ独立に選択され、W、YまたはZの少なくとも1つはCであり、Xは、O、S、SO、およびNR15の中から選択され、R14は、H、ハロゲン、C〜Cアルキル、および置換C〜Cアルキルの中から選択され、R15は、H、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、SO(C〜Cアルキル)、SO(置換C〜Cアルキル)、SOアリール、SO置換アリール、CO(C〜Cアルキル)、CO(置換C〜Cアルキル)、COアリール、およびCO置換アリールの中から選択される。]Rは、チオフェンまたは置換チオフェンであることが望ましい。Rは、ハロゲン化チオフェンであることがより望ましい。Rは、2−クロロ−チオフェン−5−イルであることがより一層望ましい。
【0024】
上で規定したとおり、本明細書では、この化合物は、Rがハロアルキルまたは置換ハロアルキルを含む必要がある。用語「ハロアルキル」は、本明細書では、アルキル基に結合した少なくとも1個のハロゲンを含んでいる、以下で定義するようなアルキルを指し、すなわち、ハロゲンは、アルキル基の少なくとも1個の炭素原子に結合していてよい。一実施形態では、ハロアルキルは、アルキル鎖の少なくとも1個の炭素原子上に1、2または3個のハロゲン原子を含み、たとえば、CHF、CFH、およびCFである。別の実施形態では、アルキル鎖の炭素原子の1個または複数がハロゲン化されていてもよい。さらに別の実施形態では、ハロアルキルには、1個または複数のフッ素原子で置換されているアルキルが含まれる。別の実施形態では、Rは−(CHX’CHX’であり、mおよびnは、m+n=2であるという条件で、それぞれ独立に0〜2であり、pおよびqは、p+q=3であるという条件で、それぞれ独立に0〜3であり、zは0〜12であり、X’はハロゲンであり、但し、nおよびqは同時に0にはならない。zは0〜5であることが望ましい。RはCFであることがより望ましい。
【0025】
別の実施形態では、Rは−(CH(RX’CH(RX’であり、y、mおよびnは、y+m+n=2であるという条件で、それぞれ独立に0〜2であり、o、pおよびqは、o+p+q=3であるという条件で、それぞれ独立に0〜3であり、zは0〜12であり、X’はハロゲンであり、但し、nおよびqは同時に0にはならず、Rは、ハロゲン、CN、OH、NO、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜Cアルケニル、置換C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜C置換アルキニル、アミノ、アリール、置換アリール、複素環、置換複素環、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C〜Cアルコキシ、アリールオキシ、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cアルキルカルボキシ、またはアリールチオである。Rは、(C〜Cアルキル)CFであることが望ましい。
【0026】
別の実施形態では、Rは、アリールまたは置換アリールである。Rは、フェニルまたは置換フェニルであることが望ましい。Rは、1個または複数のハロゲン原子で置換されているフェニルであることがより望ましい。Rは、3,5−ジフルオロ−フェニル、4−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、または4−クロロフェニルであることがより一層望ましい。
【0027】
一実施形態では、Rが置換フェニルまたは置換チオフェンであり、RがCFであり、Rがフェニル、または1個または複数のハロゲン原子で置換されているフェニルであり、但し、スルホンアミド窒素原子に結合している炭素原子はS立体配置を有し、またRおよびRに結合している炭素原子はR立体配置を有する、式(I)の化合物が提供される。
【0028】
この化合物は、1個または複数の不斉炭素原子を含んでいる場合もあり、化合物の一部は、1つまたは複数の不斉(キラル)中心を含んでいる場合もあるので、光学異性体およびジアステレオ異性体を生じさせることがある。したがって、化合物は、このような光学異性体およびジアステレオ異性体;ならびにラセミ体の立体異性体、および鏡像異性体に関して純粋な分割された立体異性体、ならびにRおよびS立体異性体の他の混合物、ならびに薬学的に許容できるその塩、水和物、およびプロドラッグを包含する。こうしたジアステレオ異性体は、当業者に知られている技術を使用して分離することができる。ジアステレオ異性体は、キラルな分取液体クロマトグラフィーを使用して分離することが最も好都合である。一実施形態では、本明細書に記載の化合物は、RおよびRに結合している炭素原子の箇所でR立体配置を有する。別の実施形態では、この化合物は、スルホンアミド窒素原子を有する炭素のところでS立体配置を有する。別の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、RおよびRに結合している炭素原子ではR立体配置、スルホンアミド窒素原子を有する炭素ではS立体配置を有する。
【0029】
この化合物は、描かれている構造の生物活性を特徴とする、本明細書で示す構造の互変異性体形態を包含する場合もある。さらに、この化合物は、薬学的にまたは生理学的に許容できる酸、塩基、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の誘導体である塩の形で使用することもできる。
【0030】
薬学的に許容できる塩は、たとえば、酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、フタル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、および同様に知られている許容できる酸を含めて、有機および無機の酸から生成することができる。
【0031】
薬学的に許容できる塩は、無機塩基、望ましくは、たとえばナトリウム、リチウム、またはカリウムを含めて、アルカリ金属水酸化物などのアルカリ金属塩から生成することもできる。無機塩基の例としては、限定するものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、および水酸化マグネシウムが挙げられる。薬学的に許容できる塩は、アンモニウム塩、すなわち、モノ、ジ、およびトリメチルアンモニウム、モノ、ジ、およびトリエチルアンモニウム、モノ、ジ、およびトリプロピルアンモニウム(イソおよびノルマル)、エチルジメチルアンモニウム、ベンジルジメチルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、ジベンジルアンモニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピロリジニウム、ピペラジニウム、1−メチルピペリジニウム、4−エチルモルホリニウム、1−イソプロピルピロリジニウム、1,4−ジメチルピペラジニウム、1−n−ブチルピペリジニウム、2−メチルピペリジニウム、1−エチル−2−メチルピペリジニウム、モノ、ジ、およびトリエタノールアンモニウム、エチルジエタノールアンモニウム、n−ブチルモノエタノールアンモニウム、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアンモニウム、フェニルモノエタノールアンモニウム、ジエタノールアミン、エチレンジアミンなどの有機塩基から生成することもできる。一実施形態では、塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、およびこれらの混合物の中から選択される。
【0032】
これらの塩ならびに他の化合物は、その形態で投与されるとin vivoで活性部分に変換し得るエステル、カルバマート、および他の従来の「プロドラッグ」形態の形にすることができる。一実施形態では、プロドラッグはエステルである。別の実施形態では、プロドラッグはカルバマートである。たとえば、参照により援用される、B.TestaおよびJ.Caldwell、「Prodrugs Revisited:The“Ad Hoc”Approach as a Complement to Ligand Design」、Medicinal Research Reviews、第16巻(3):233〜241頁、John Wiley&Sons編(1996年)を参照されたい。
【0033】
本明細書で論述する化合物は、化合物が細胞または対象によって処理されて生成した特有の産物である「代謝産物」も包含する。代謝産物は、in vivoで生成されたものであることが望ましい。
【0034】
用語「アルキル」は、本明細書では、直鎖および分枝鎖両方の飽和脂肪族炭化水素基を指すのに使用する。一実施形態では、アルキル基は、1から約10個の炭素原子を有する(すなわち、C、C、C、C、C、C、C、C、CまたはC10)。別の実施形態では、アルキル基は、1から約6個の炭素原子を有する(すなわち、C、C、C、C、CまたはC)。別の実施形態では、アルキル基は、1から約4個の炭素原子を有する(すなわち、C、C、CまたはC)。
【0035】
用語「アルケニル」は、本明細書では、1つまたは複数の炭素−炭素二重結合を有する直鎖および分枝鎖両方のアルキル基を指すのに使用する。一実施形態では、アルケニル基は、2から約10個の炭素原子を含んでいる(すなわち、C、C、C、C、C、C、C、CまたはC10)。別の実施形態では、アルケニル基は、1または2個の炭素−炭素二重結合、および2から約6個の炭素原子を有する(すなわち、C、C、C、CまたはC)。
【0036】
用語「アルキニル」は、本明細書では、1つまたは複数の炭素−炭素三重結合を有する直鎖および分枝鎖両方のアルキル基を指すのに使用する。一実施形態では、アルキニル基は、2から約10個の炭素原子を有する(すなわち、C、C、C、C、C、C、C、CまたはC10)。別の実施形態では、アルキニル基は、1または2個の炭素−炭素三重結合、および2から約6個の炭素原子を含んでいる(すなわち、C、C、C、CまたはC)。
【0037】
用語「シクロアルキル」は、本明細書では、環式の飽和脂肪族炭化水素基を指すのに使用する。シクロアルキルという用語には、単環、または縮合して多環式の環構造を形成している2個以上の環を含めることができる。そのためシクロアルキル基には、1から約5個の環を有する環系を含めることができる。一実施形態では、シクロアルキル基は、3から約14個の炭素原子を有する(すなわち、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13またはC14)。別の実施形態では、シクロアルキル基は、3から約6個の炭素原子を有する(すなわち、C、C、CまたはC)。
【0038】
用語「置換アルキル」、「置換アルケニル」、「置換アルキニル」、および「置換シクロアルキル」は、限定するものではないが、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、アミノ、アリール、複素環、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシ、アルキルアミノ、およびアリールチオを含めた1個または複数の置換基を有するアルキル、アルケニル、アルキニル、およびシクロアルキル基をそれぞれ指す。
【0039】
用語「置換ハロアルキル」は、限定するものではないが、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、アミノ、アリール、複素環、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシ、アルキルアミノ、およびアリールチオなどの1個または複数の置換基をアルキル部分上に有するハロアルキルを指す。
【0040】
用語「アリールチオ」とは、本明細書では、結合点が硫黄原子を介しており、アリール基は上述のように置換されていてよいS(アリール)基を指す。
【0041】
用語「アルコキシ」とは、本明細書では、結合点が酸素原子を介しており、アルキル基は上述のように置換されていてよいO(アルキル)基を指す。
【0042】
用語「アリールオキシ」とは、本明細書では、結合点が酸素原子を介しており、アリール基は上述のように置換されていてよいO(アリール)基を指す。
【0043】
用語「アルキルカルボニル」とは、本明細書では、結合点が炭素原子を介しており、カルボニル部分およびアルキル基は上述のように置換されていてよいC(O)(アルキル)基を指す。
【0044】
用語「アルキルカルボキシ」とは、本明細書では、結合点がカルボキシ部分の炭素原子を介しており、アルキル基は上述のように置換されていてよいC(O)O(アルキル)基を指す。
【0045】
用語「アルキルアミノ」とは、本明細書では、結合点が窒素原子を介しており、アルキル基は上述のように置換されていてよい第二級および第三級両方のアミンを指す。アルキル基は、同じでも異なるものでもよい。
【0046】
用語「ハロゲン」とは、本明細書では、Cl、Br、F、またはI基を指す。
【0047】
用語「アリール」とは、本明細書では、たとえば炭素原子約5〜20個の芳香族炭素環系を指し、単環、または縮合もしくは結合した環の少なくとも一部分が共役芳香族系を形成している縮合もしくは結合した不飽和多環をこれに含めることができる。そのためアリール基には、1から約5個の環を有する環系を含めることができる。アリール基としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、テトラヒドロナフチル、フェナントリル、インデン、ベンゾナフチル、およびフルオレニルが挙げられるがこれに限らない。
【0048】
用語「置換アリール」とは、ハロゲン、CN、OH、NO、アミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、C〜Cペルフルオロアルキル、C〜Cペルフルオロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシ、−C(NH)=N−OH、−SO−(C〜C10アルキル)、−SO−(C〜C10置換アルキル)、−O−CHアリール、アルキルアミノ、アリールチオ、アリール、またはヘテロアリールなどの、置換されていてよい1個または複数の置換基で置換されているアリール基を指す。置換アリール基は、1から約4個の置換基で置換されていることが望ましい。
【0049】
用語「複素環」または「複素環式」とは、本明細書では、安定な飽和または部分的に不飽和の単環式または多環式の3〜20員複素環を指すのに区別なく使用する場合がある。複素環式の環は、その主鎖に、炭素原子と、窒素、酸素、および硫黄原子などの1個または複数のヘテロ原子とを有する。一実施形態では、複素環式の環は、環の主鎖に1から約4個のヘテロ原子を有する。複素環式の環が環の主鎖に窒素または硫黄原子を含んでいるとき、窒素または硫黄原子は酸化されていてもよい。さらに、複素環式の環が窒素原子を含んでいるとき、窒素原子は、H、C〜Cアルキル、置換C〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)、SO(C〜Cアルキル)、SO(置換C〜Cアルキル)、SOアリール、SO置換アリール、CO(C〜Cアルキル)、CO(置換C〜Cアルキル)、COアリール、またはCO置換アリールで置換されていてもよい。複素環式の環は、その結果として生じる複素環式の環構造が化学的に安定であるという前提で、ヘテロ原子または炭素原子のどちらを介して結合していてもよい。複素環式の環が多環式の環であるとき、2、3、4または5個の環を含んでいてよい。
【0050】
様々な複素環基が当業界で知られており、限定するものではないが、含酸素環、含窒素環、含硫黄環、混合ヘテロ原子を含んでいる環、ヘテロ原子を含んでいる縮合環、およびこれらの組合せが挙げられる。複素環基の例としては、限定するものではないが、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、2−オキソピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、ピラニル、ピロニル、ジオキシニル、ピペラジニル、ジチオリル、オキサチオリル、ジオキサゾリル、オキサチアゾリル、オキサジニル、オキサチアジニル、ベンゾピラニル、ベンゾオキサジニル、およびキサンテニルが挙げられる。
【0051】
用語「ヘテロアリール」とは、本明細書では、ヘテロ原子を含んでいる安定な単環式または多環式の5〜20員芳香族環を指す。ヘテロアリール環は、その主鎖に、炭素原子と、窒素、酸素、および硫黄原子などの1個または複数のヘテロ原子とを有する。一実施形態では、ヘテロアリール環は、環の主鎖に1個から約4個のヘテロ原子を含んでいる。ヘテロアリール環が環の主鎖に窒素または硫黄原子を含んでいるとき、窒素または硫黄原子は、酸化されていてもよい。さらに、ヘテロアリール環が窒素原子を含んでいるとき、窒素原子は、H、C〜Cアルキル、置換C〜Cアルキル、CO(C〜Cアルキル)、SO(C〜Cアルキル)、SO(置換C〜Cアルキル)、SOアリール、SO置換アリール、CO(C〜Cアルキル)、CO(置換C〜Cアルキル)、COアリール、またはCO置換アリールで置換されていてもよい。ヘテロアリール環は、その結果として生じる複素環式の環構造が化学的に安定であるという前提で、ヘテロ原子または炭素原子のどちらを介して結合していてもよい。ヘテロアリール環が、ヘテロ原子を含んでいる多環式の環であるとき、2、3、4または5個の環を含んでいてよい。
【0052】
様々なヘテロアリール基が当業界で知られており、限定するものではないが、含酸素環、含窒素環、含硫黄環、混合ヘテロ原子を含んでいる環、ヘテロ原子を含んでいる縮合環、およびこれらの組合せが挙げられる。ヘテロアリール基の例としては、限定するものではないが、フリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、アゼピニル、チエニル、ジチオリル、オキサチオリル、オキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、オキサトリアゾリル、オキセピニル、チエピニル、ジアゼピニル、ベンゾフラニル、チオナプテン(thionapthene)、インドリル、ベンズアゾリル、プリンジニル(purindinyl)、ピラノピロリル、イソインダゾリル、インドキサジニル、ベンゾオキサゾリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾジアゾニル、ナプチルリジニル(napthylridinyl)、ベンゾチエニル、ピリドピリジニル、アクリジニル、カルバゾリル、およびプリニル環が挙げられる。
【0053】
用語「置換複素環」および「置換ヘテロアリール」とは、本明細書では、ハロゲン、CN、OH、NO、アミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、C〜Cペルフルオロアルキル、C〜Cペルフルオロアルコキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシ、−C(NH)=N−OH、−SO−(C〜C10アルキル)、−SO−(C〜C10置換アルキル)、−O−CHアリール、アルキルアミノ、アリールチオ、アリール、またはヘテロアリールなどの、置換されていてもよい1個または複数の置換基を有する複素環またはヘテロアリール基を指す。置換複素環基または置換ヘテロアリール基は、1、2、3または4個の置換基を有してよい。
【0054】
式(I)の化合物は、以下で例示する記述およびスキームに従って調製することができる。
【0055】
化合物の合成
式(I)の化合物は、有機合成の技術者によく知られている技術および試薬を使用して、いくつかの経路によって調製することができる。したがって、この化合物は、以下で記載する方法、ならびに有機合成技術で知られている合成法またはそれらの方法の変形形態を使用して、当業者の手で調製することができる。
【0056】
スキーム1で概略を述べる方法において、式(I)の化合物は、まず、ハロゲン化アセトフェノン、第1の塩基、およびホスホノ酢酸トリアルキルを反応させて、α,β−不飽和エステルを生成することにより調製できる。一例では、ハロゲン化アセトフェノンは、RC(O)R(化合物A)(RおよびRについては上で規定している)である。別の例では、ハロゲン化アセトフェノンは、化合物A1(Rについては上で規定している)である。
【0057】
【化6】

【0058】
α,β−不飽和エステルの調製に利用する第1の塩基は、当業者の手で選択することができる。利用することのできる塩基の例としては、参照により援用されるW.S.Wadsworth、Organic Reactions第25巻:73〜253頁(1977年)に記載されている塩基が挙げられる。通常、第1の塩基は、水素化ナトリウムまたはテトラメチルグアニジンである。ホスホノ酢酸トリアルキルは、(RO)P(O)CHCO(RはC〜Cアルキルまたは置換アルキルであり、Rは、C〜Cアルキル、置換C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、置換C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、置換C〜Cアルキニル、フェニル、または置換フェニルである)であることが望ましい。一実施形態では、Rはベンジルまたは置換ベンジルである。反応は通常、限定するものではないがテトラヒドロフランなどの溶媒中で実施する。しかし、他の溶媒を利用することもでき、上で引用しており参照により援用されるWadsworthに記載の溶媒が挙げられる。そうすることによって、α,β−不飽和エステルB(R、RおよびRについては上で規定している)を調製する。
【0059】
【化7】

【0060】
別の例では、α,β−不飽和エステルB1(RおよびRについては上で規定している)を調製する。
【0061】
【化8】

【0062】
次いで、限定するものではないが接触水素化などの、当業者に知られている技術を使用して、α,β−不飽和エステルを飽和エステルに還元する。一実施形態では、金属触媒の存在下で水素ガスを使用して水素化を実施する。様々な金属触媒を利用することができ、参照により援用されるS.Nishimura、「Handbook of Heterogeneous Hydrogenation for Organic Synthesis」、Wiley−Interscience:ニューヨーク、2001年、93〜94頁に記載の金属触媒が挙げられる。一例では、飽和エステルC(R、RおよびRについては上で規定している)を還元によって調製する。
【0063】
【化9】

【0064】
別の例では、飽和エステルC1(RおよびRについては上で規定している)が還元によって調製される。
【0065】
【化10】

【0066】
次いで、飽和エステルをエノラートに変換する。通常、エノラートへの変換は、アルカリ金属(M)アミド塩基、アルカリ金属水素化物、またはアルカリ金属アルコキシドを使用して実施する。アルカリ金属アミド塩基は、リチウムアミド塩基であることが望ましい。一実施形態では、リチウムアミド塩基は、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムジシクロヘキシルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジメチルアミド、またはリチウムビス(トリメチルシリル)アミドである。別の実施形態では、アルカリ金属水素化物は、特に、水素化ナトリウムまたは水素化カリウムである。別の実施形態では、アルカリ金属アルコキシドは、特にカリウムt−ブトキシドである。エノラートへの変換は、不活性溶媒の存在下で実施する。用語「不活性」溶媒とは、本明細書では、反応混合物中で任意の化学試薬と反応しない、またはその妨げとならない任意の有機溶媒を指す。エノラートの調製で使用するそのような不活性溶媒は、当業者の手で選択することができ、限定するものではないが、特に、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、グリム、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、またはジオキサンが挙げられる。一例では、エノラートは、化合物D(R、RおよびRについては上で規定しており、Mは、リチウムアミド塩基から転移したアルカリ金属イオンである)である。
【0067】
【化11】

【0068】
別の例では、エノラートは、化合物D1(RおよびRについては上で規定しており、Mは、リチウムアミド塩基から転移したアルカリ金属イオンである)である。
【0069】
【化12】

【0070】
次いでエノラートをアジド−エステルE(R、RおよびRについては上で規定している)に変換する。アジド−エステルは通常、当業者の手で容易に選択することのできるアジド転移剤を使用して調製する。様々なアジド転移剤を当業者の手で選択することができ、参照により援用されるD.A.EvansおよびT.C.Britton、J.Am.Chem.Soc.第109巻:6881〜6883頁、1987年に記載のものが挙げられる。一実施形態では、アジド転移剤は、トリイソプロピルベンゼンスルホニルアジドである。
【0071】
【化13】

【0072】
別の例では、アジド−エステルE1(RおよびRは上で規定している)を調製する。
【0073】
【化14】

【0074】
次いで、アジド−エステルを還元して、アミノエステルF(R、RおよびRについては上で規定している)とする。還元は、当業者に知られている技術および試薬を使用して実施することができる。一実施形態では、接触水素化を使用して還元を実施する。還元での使用に適する試薬は、当業者の手で選択することができ、参照により援用されるR.Larock、「Comprehensive Organic Transformations」、Wiley−VCH:ニューヨーク、1999年、815〜820頁に記載の試薬が挙げられる。通常、接触水素化は、水素ガスおよび上述のような金属触媒を使用して実施する。
【0075】
【化15】

【0076】
別の例では、還元してアミノエステルF1(RおよびRは上で規定している)を生成する。
【0077】
【化16】

【0078】
次いで、このアミノエステルをスルホニル化してスルホンアミドエステルにする。一実施形態では、スルホニル化は、特に、塩化スルホニルまたはスルホン酸無水物を使用して実施する。別の実施形態では、スルホニル化は、参照によりその全体が援用される米国特許第6,610,734号、第6,878,742号、および第7,166,622号、ならびに米国特許出願公開第2004/0198778号に記載のとおりに実施する。一実施形態では、スルホニル化は、以下のもの(R〜R13、W、X、YおよびZについては上で規定しており、LGは脱離基である)などのスルホニル化剤を使用して実施する。用語「脱離基」は、本明細書では、第1の化学物質と第2の化学物質が反応して第1の化学物質からはずれた化学的部分を指す。スルホニル化剤からはずすことのできる脱離基の例として、特に、塩素やフッ素などのハロゲン原子、またはスルホナート(たとえばメシラート、トシラート、トリフラート)が挙げられる。
【0079】
【化17】

【0080】
一例では、スルホンアミドエステルは、化合物G(R〜RおよびRについては上で規定している)である。
【0081】
【化18】

【0082】
別の例では、スルホンアミドエステル化合物G1(R、RおよびRについては上で規定している)を調製する。
【0083】
【化19】

【0084】
次いで、当業者に知られている技術を使用し、スルホンアミドエステルを還元して、式(I)の化合物にする。還元は、参照により援用されるR.Larock、「Comprehensive Organic Transformations」、Wiley−VCH:ニューヨーク、1999年、1117〜1120頁に記載の変換および試薬を使用して実施することができる。スルホンアミドエステルは、水素化ホウ素リチウムを使用して還元することが望ましい。
【0085】
【化20】

【0086】
本明細書に記載の化合物の調製方法の例をスキーム2で述べる。この例では、トリフルオロメチルアセトフェノンA1を、水素化ナトリウムの存在下、THF中でホスホノ酢酸トリアルキルと反応させて、化合物B1を得る。接触水素化によって、エステルC1が得られる。このエステルを、THF中でリチウムジイソプロピルアミドを使用してエノラートに変換する。このエノラートをトリイソプロピルベンゼンスルホニルアジドと反応させて、アジドE1を得る。アジドE1のアジド基を接触水素化によって還元して、アミンF1を生成する。塩基および溶媒の存在下、塩化スルホニルを使用してアミンF1をスルホニル化すると、スルホンアミドG1が得られる。次いで、THF中で水素化ホウ素リチウムを使用し、スルホンアミドG1のエステル基を還元して化合物(I)とする。得られるアルコールの混合物は、キラルな分取液体クロマトグラフィーによって分離するのが最も好都合である。
【0087】
【化21】

【0088】
式(I)の化合物の別の調製方法は、スキーム3に示すものであり、最初にα,β−不飽和エステルのα,β−不飽和カルボン酸への加水分解を含む。一例では、α,β−不飽和エステルは化合物Bである。別の例では、α,β−不飽和エステルB1を加水分解する。加水分解は、参照により援用されるR.Larock、「Comprehensive Organic Transformations」、Wiley−VCH:ニューヨーク、1999年、1959〜1968頁に記載の試薬および条件を使用して実施することができる。一実施形態では、加水分解は、当業者の手で容易に選択することのできる塩基の存在下で実施する。通常、加水分解は水の存在下で実施する。一例では、加水分解から調製されるα,β−不飽和カルボン酸は化合物H(RおよびRについては上で規定している)である。
【0089】
【化22】

【0090】
別の例では、α,β−不飽和カルボン酸H1(Rについては上で規定している)を調製する。
【0091】
【化23】

【0092】
次いで、参照により援用されるA.Beckwith、「The Chemistry of Amides」、J.Zabicky編、Interscience Publishers:ニューヨーク、1970年、91頁に記載の試薬および条件などの、当業者に知られている技術を使用して、α,β−不飽和カルボン酸を混合無水物に変換する。通常、変換は、R16COX’’(R16はC〜Cアルキルまたは置換C〜Cアルキルであり、X’’はF、Cl、Br、Iまたはカルボキシラートである)を使用して実施する。一実施形態では、カルボキシラートは、限定するものではないが、トリメチルアセタート、イソバレラート、またはジフェニルアセタートである。一例では、R16COX’’は、塩化トリメチルアセチル、塩化イソバレロイル、または塩化ジフェニルアセチルなどの塩化アシルである。変換は、第2の塩基の存在下で実施することが望ましい。様々な第2の塩基を当業者の手で選択することができ、限定するものではないが、特に、トリエチルアミンなどの第三級アミンが挙げられる。一例では、混合無水物は、化合物J(R、RおよびR16については上で規定している)である。
【0093】
【化24】

【0094】
別の例では、混合無水物J1(RおよびR16については上で規定している)を調製する。
【0095】
【化25】

【0096】
次いで、混合無水物を、キラル補助基を含んでいる求核剤と反応させる。表現「キラル補助基を含んでいる求核剤」は、本明細書では、キラル補助基を含んでいる化学化合物を指す。キラル補助基を含んでいる求核剤は、第2の化学化合物と反応し、第2の化学化合物中の1個または複数の置換基でキラリティーを形成させることが望ましい。キラル補助基を含んでいる求核剤は、別個の試薬として加えてもよいし、または混合無水物との反応直前にその場で生成してもよい。混合無水物は、キラル補助基を含んでいる様々な求核剤で処理することができる。一実施形態では、キラル補助基を含んでいる求核剤は、含オキサゾリジノン化学化合物または含イミダゾリジノン化合物である。別の実施形態では、キラル補助基を含んでいる求核剤は、以下のものの中から選択される。
【0097】
【化26】

【0098】
別の実施形態では、キラル補助基を含んでいる求核剤は、リチウム(S)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オンである。
【0099】
【化27】

【0100】
一例では、キラル補助基を含んでいる求核剤と混合無水物との反応によって、化合物K(RおよびRについては上で規定している)が得られる。
【0101】
【化28】

【0102】
別の例では、キラル補助基を含んでいる求核剤と混合無水物との反応によって、化合物K1(RおよびRについては上で規定している)が得られる。
【0103】
【化29】

【0104】
別の例では、混合無水物を、キラル補助基を含んでいる求核剤と反応させて、化合物K2(Rについては上で規定している)を調製する。
【0105】
【化30】

【0106】
次いで、キラル補助基を含んでいる化合物を、限定するものではないが、接触水素化などの、当業者に知られている技術を使用して還元する。還元は、上で引用しており参照により本明細書に援用されるS.Nishimuraのものなどの、当業者に知られている試薬および条件を使用して実施することができる。還元は、水素ガスおよび金属触媒を使用して実施することが望ましい。一例では、化合物L(RおよびRについては上で規定している)を生成する。
【0107】
【化31】

【0108】
別の例では、化合物L1(RおよびRについては上で規定している)を生成する。
【0109】
【化32】

【0110】
別の例では、還元した後に化合物L2(Rについては上で規定している)を調製する。
【0111】
【化33】

【0112】
次いで、還元した化合物を塩基と反応させるが、塩基は、特に、カリウムヘキサメチルジシラジド、およびLDAなどのリチウムアミド塩基を含めて、当業者の手で容易に選択することができる。他の適切な塩基は、上で引用しており参照により援用されるD.A.Evansに記載の塩基から選択することができる。反応は、特に、THF、ジエチルエーテル、グリム、メチルt−ブチルエーテル、ジオキサンなどの不活性溶媒中で実施することが望ましい。このステップにおいて有用な追加の溶媒は、上で引用しており参照により援用されるD.A.Evansで提示されているとおりに、当業者の手で選択することができる。それから生成される化合物を、次いで、通常はアジド転移剤を使用してアジドイミドに変換する。当業者ならば、限定するものではないが、トリイソプロピルベンゼンスルホニルアジドを含めて、適切なアジド転移剤を容易に選択することができるはずである。上で引用しており参照により援用されるD.A.Evansらに列挙されているものを含めて、他の適切なアジド転移剤を利用することもできる。アジドイミドを生成する反応は、酸によるクエンチングを使用して終了することが望ましい。当業者ならば、反応を失活させるのに適する試薬を容易に選択することができるはずである。適切な試薬としては、限定するものではないが、酢酸などの水性の酸、または上で引用しており参照により援用されるD.A.Evansに記載のものを挙げることができる。
【0113】
アジドイミドは通常、主に2種のジアステレオ異性体として調製される。実際、アジド基を有する炭素の立体中心は、アジ化基質中のキラル補助基の選択によって大部分が制御される。詳細には、(S)−ベンジルオキサゾリジノンの使用では、アジドを有する炭素は主に(S)配置を生じた。一例では、アジドイミドM(RおよびRについては上で規定している)を調製する。
【0114】
【化34】

【0115】
別の例では、アジドイミドM1(RおよびRについては上で規定している)を調製する。
【0116】
【化35】

【0117】
別の例では、アジドイミド化合物M2(Rについては上で規定している)を調製する。
【0118】
【化36】

【0119】
次いで、S.Nishimura、「Handbook of Heterogeneous Hydrogenation for Organic Synthesis」、Wiley−Interscience:ニューヨーク、2001年、377〜379頁に記載の変換および試薬などの、当業界で知られている還元技術を使用し、アジドイミドを還元してアミノ−イミド塩とする。還元は通常、特に、接触水素化によって実施する。一実施形態では、水素化は、水素ガスおよび金属触媒を使用して実施する。還元は、プロトン供給源の存在下でも実施する。用語「プロトン供給源」とは、本明細書では、アミン基をそれ自身でプロトン化するか、または溶媒との反応によって、アミン基をプロトン化することのできる物質を生じるかのいずれかによって、望ましくない副反応を防止することのできる化学化合物を指す。一実施形態では、プロトン供給源は、特に、塩酸などの無機酸、または塩化プロピオニルなどのハロゲン化アシルである。塩酸または塩化プロピオニルの存在下で還元を実施することが望ましい。一例では、還元から調製されるアミノ−イミドは、化合物N(RおよびRについては上で規定しており、Xは、有機カルボン酸または無機酸に由来する対イオンである)である。一実施形態では、Xは、Cl、Br、I、Fなどのハロゲン、メシラート、トシラート、トリフラートなどのスルホナートである。
【0120】
【化37】

【0121】
別の例では、アミノ−イミドは、化合物N1(R、RおよびXについては上で規定している)である。
【0122】
【化38】

【0123】
別の例では、アミノ−イミドは、化合物N2(RおよびXについては上で規定している)。
【0124】
【化39】

【0125】
別の例では、アミノ−イミドは、化合物N3(Rについては上で規定している)。
【0126】
【化40】

【0127】
次いで、アミノ−イミドをスルホニル化して、スルホンアミド−イミドを生成する。スルホニル化は通常、上述のように当業界で知られている技術を使用して実施する。一実施形態では、スルホニル化は、塩化スルホニルまたはスルホン酸無水物を使用して実施する。一例では、スルホンアミド−イミドP(R〜Rについては上で規定している)を調製する。
【0128】
【化41】

【0129】
別の例では、スルホンアミド−イミドP1(R〜Rについては上で規定している)を調製する。
【0130】
【化42】

【0131】
別の例では、スルホンアミド−イミドP2(RおよびRについては上で規定している)を調製する。
【0132】
【化43】

【0133】
次いで、THFなどの適切な溶媒中で、限定するものではないが、水素化ホウ素リチウム、水素化リチウムアルミニウム、または水素化ジイソブチルアルミニウムを含めて、当業者に知られている技術および試薬を使用し、スルホンアミド−イミドを還元して式(I)の化合物にする。しかし、還元剤および溶媒の選択は、当業者の能力の範囲内である。
【0134】
【化44】

【0135】
式(I)の化合物を調製する別の例は、スキーム4に示すものであり、エステルB1を加水分解してカルボン酸H1を得ることを含む。この酸を、トリエチルアミンおよびTHF存在下で塩化トリメチルアセチルと反応させて、混合無水物に変換する。次いで、混合無水物を、キラルな非ラセミオキサゾリジノンのリチウムアニオンで処理して、アシルオキサゾリジノンK2を得る。K2のオレフィン部分を接触水素化によって還元すると、還元されたオキサゾリジノンL2が得られる。L2をTHF中にてカリウムヘキサメチルジシラジドで処理した後、トリイソプロピルベンゼンスルホニルアジドと反応させ、次いで酢酸で失活させると、アジドM2が主に2種のジアステレオ異性体の混合物として得られる。アジドM2を上述のように還元すると、アミンN2が得られ、これをスルホニル化して、スルホンアミドP2を得ることができる。THF中で水素化ホウ素リチウムを使用して、アシルオキサゾリジノンを還元すると、化合物(I)が得られる。得られるアルコールの混合物は、キラルな分取液体クロマトグラフィーによって最も好都合に分離することができる。
【0136】
【化45】

【0137】
式(I)の化合物への別の経路をスキーム5に示す。この方法では、当業者に知られている技術を使用して、まずハロゲン化アセトフェノンをα,β−不飽和カルボン酸Hに変換する。一実施形態では、このステップで調製されるα,β−不飽和カルボン酸は、化合物H1(Rについては上で規定している)でよい。
【0138】
【化46】

【0139】
反応は、J.R.Johnson、Organic Reactions、第1巻:210頁(1942年)で提示されている試薬および条件を使用して実施することが望ましい。一実施形態では、酢酸ナトリウムおよび無水酢酸を使用して、ハロゲン化アセトフェノンをα,β−不飽和カルボン酸に変換する。一例では、ハロゲン化アセトフェノンは化合物Aである。別の例では、ハロゲン化アセトフェノンは化合物A1である。
【0140】
次いで、参照により援用されるS.Nishimura、「Handbook of Heterogeneous Hydrogenation for Organic Synthesis」、Wiley−Interscience:ニューヨーク、2001年、93〜94頁で提示されているものなどの当業界の技術を使用し、α,β−不飽和カルボン酸を水素化して飽和カルボン酸とする。一実施形態では、水素化は接触水素化である。接触水素化は、水素ガスおよびパラジウム/炭素を使用して実施することが望ましい。一例では、カルボン酸は、化合物R(RおよびRについては上で規定している)である。
【0141】
【化47】

【0142】
別の例では、カルボン酸は、化合物R1(Rについては上で規定している)である。
【0143】
【化48】

【0144】
次いで、当業界および上述の技術を使用して、カルボン酸を混合無水物に変換する。変換は、上で引用しており参照により援用されるA.Beckwithで提示されている試薬および条件を使用して実施することができる。変換は通常、上述のようにR16COX’’(R16およびX’’については本明細書で規定している)を使用して実施する。R16COX’’は塩化アシルであることが望ましい。一例では、塩化アシルは、塩化トリメチルアセチル、塩化イソバレロイル、または塩化ジフェニルアセチルである。変換は、上述のように第2の塩基の存在下で実施することが望ましい。第2の塩基は、限定するものではないが、トリエチルアミンなどの第三級の塩基を含めて、当業者の手で選択することができる。一例では、混合無水物は、化合物S(R、RおよびR16については上で規定している)である。
【0145】
【化49】

【0146】
別の例では、混合無水物は、化合物S1(RおよびR16については上で規定している)である。
【0147】
【化50】

【0148】
次いで、混合無水物を、上で規定したように、キラル補助基を含んでいる求核剤と反応させる。キラル補助基を含んでいる求核剤は、オキサゾリジノンまたはイミダゾリジノンであることが望ましい。一実施形態では、キラル補助基を含んでいる求核剤は、リチウム(S)−4−フェニルオキサゾリジン−2−オンである。別の実施形態では、キラル補助基を含んでいる求核剤は、リチウム(S)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オンである。
【0149】
一例では、混合無水物Sとキラル補助基を含んでいる求核剤との反応から、化合物Lを調製する。別の例では、混合無水物とキラル補助基を含んでいる求核剤との反応から、化合物L1を調製する。別の例では、混合無水物とキラル補助基を含んでいる求核剤との反応から、化合物L2を調製する。
【0150】
次いで、上で論述した試薬および条件を使用して、この化合物を塩基と反応させた後、アジド−イミドに変換する。この変換は通常、上で引用しており参照により援用されるD.A.Evansに記載のものなどのアジド転移剤を使用して実施する。一実施形態では、アジド転移剤は、トリイソプロピルベンゼンスルホニルアジドである。一例では、アジド−イミドMを調製する。別の例では、アジド−イミドM1を調製する。別の例では、アジド−イミドM2を調製する。
【0151】
次いで、当業界で知られている技術、具体的には上述の技術を使用し、アジド−イミドを還元して、アミノ−イミド塩とする。一例では、アミノ−イミドは化合物Nである。別の例では、アミノ−イミドは化合物N1である。別の例では、アミノ−イミドは化合物N2である。別の例では、アミノ−イミドは化合物N3である。
【0152】
次いで、上述の技術および試薬を使用し、アミノ−イミドをスルホニル化して、スルホンアミド−イミドとする。望ましくは、塩化スルホニルまたはスルホン酸無水物を使用してスルホニル化を実施する。一例では、スルホンアミド−イミドは化合物Pである。別の例では、スルホンアミド−イミドは化合物P1である。別の例では、スルホンアミド−イミドは化合物P2である。
【0153】
次いで、上述のように当業者に知られている技術を使用し、スルホンアミド−イミドを還元して、式(I)の化合物とする。
【0154】
【化51】

【0155】
一例では、オキサゾリジノンL2およびアジドM2への代替経路は、スキーム6に示すものである。トリフルオロメチルケトンA1を、α,β−不飽和カルボン酸H1に変換し、これを水素化して、飽和カルボン酸R1を得る。酸R1のオキサゾリジノンL2への変換を実施する。立体異性体L2を、クロマトグラフィーによって分離し、次いでアジドM2の単一の異性体に変換する。
【0156】
【化52】

【0157】
式(I)の化合物のさらに別の調製方法をスキーム7に記載する。この方法では、参照により本明細書に援用されるEnders,D.ら、Synthesis(2005年)、306〜310頁の手順を使用して、ハロゲン化アセトフェノン、イソシアノ酢酸アルキル、および塩基を反応させる。イソシアノ酢酸アルキルは、CNCHCO17であり、R17はC〜Cアルキルまたは置換C〜Cアルキルであることが望ましい。一例では、ハロゲン化アセトフェノンは化合物Aである。別の例では、ハロゲン化アセトフェノンはA1である。
【0158】
そうすることによって、化合物T(R、RおよびR17については上で規定している)を調製する。
【0159】
【化53】

【0160】
別の例では、化合物T1(RおよびR17については上で規定している)を調製する。
【0161】
【化54】

【0162】
次いで、参照により援用されるR.Larock、「Comprehensive Organic Transformations」、Wiley−VCH:ニューヨーク、1999年、20〜23頁および1117〜1120頁で提示されている試薬および条件を使用して、この化合物を還元する。一実施形態では、メタノール中で水素化ホウ素ナトリウムを使用して還元を実施し、次いで水素化ホウ素リチウムと反応させて、化合物U(RおよびRについては上で規定している)を得る。
【0163】
【化55】

【0164】
別の例では、水素化ホウ素ナトリウムによる還元および水素化ホウ素リチウムとの反応から、化合物U1を調製する。
【0165】
【化56】

【0166】
次のステップは、アミンを得るための酸による加水分解を含む。当業者ならば、加水分解での使用に適する酸を容易に選択することができるはずである。一実施形態では、酸は塩酸である。しかし、加水分解は、参照により援用されるA.Beckwith、「The Chemistry of Amides」、J.Zabicky編、Interscience Publishers:ニューヨーク、1970年、816〜833頁で論述されている加水分解試薬および条件を利用して、当業者によって実施することができる。通常、アミンは、2種のジアステレオ異性体のラセミ混合物として存在する。一例では、アミンは、化合物V(RおよびRについては本明細書で規定している)である。
【0167】
【化57】

【0168】
別の例では、アミンは化合物V1(Rについては本明細書で規定している)である。
【0169】
【化58】

【0170】
次いで、限定するものではないが、塩化スルホニルまたはスルホン酸無水物などの、上述の技術および試薬を使用し、アミンをスルホニル化して、式(I)の化合物を得る。
【0171】
【化59】

【0172】
一例(スキーム8)では、その方法は、Enders,D.ら、Synthesis(2005年)、306〜310頁の方法を使用し、トリフルオロメチルアセトフェノンA1をイソシアノ酢酸アルキルと反応させて、四置換オレフィンT1を得ることを含む。メタノール中にて水素化ホウ素ナトリウムで処理することにより、T1のオレフィン基を還元する。次いで、粗製材料をTHF中にて水素化ホウ素リチウムで処理して、アルコールU1を2種のジアステレオ異性体のラセミ混合物として生成する(合計4異性体)。ホルムアミド基の酸加水分解によって、対応するアミン異性体が得られ、これをスルホニル化して、キラルな分取液体クロマトグラフィーによる分離後に化合物(I)を得る。
【0173】
【化60】

【0174】
スキーム3に記載の方法の変形形態である式Iの化合物の別の調製方法は、スキーム9に示すものである。この方法では、上述の試薬および技術を使用して、α,β−不飽和エステルをα,β−不飽和カルボン酸に加水分解する。一例では、α,β−不飽和エステルは化合物Bである。別の例では、α,β−不飽和エステルは化合物B1である。
【0175】
α,β−不飽和エステルの加水分解は、条件および試薬については上で論述および提示しており、それによってα,β−不飽和カルボン酸が得られる。一例では、α,β−不飽和カルボン酸は化合物Hである。別の例では、α,β−不飽和カルボン酸は化合物H1である。
【0176】
次いで、上述のように、また上で引用しており参照により援用されるA.Beckwith、「The Chemistry of Amides」、J.Zabicky編、Interscience Publishers:ニューヨーク、1970年、91頁に列挙されているように、当業者に知られている技術および試薬を使用し、カルボン酸を混合無水物に変換する。変換は通常、R16COX’’(R16およびX’’については上で規定している)を使用して実施する。R16COX’’は塩化アシルであることが望ましい。一例では、塩化アシルは、特に、塩化トリメチルアセチル、塩化イソバレロイル、または塩化ジフェニルアセチルである。変換は、当業者の手で容易に選択することのできる第2の塩基の存在下で実施することが望ましい。一実施形態では、第2の塩基は、特に、トリエチルアミンなどの第三級アミン塩基である。一例では、混合無水物は化合物Jである。別の例では、混合無水物J1を調製する。
【0177】
次いで、混合無水物を、上で詳細に論述したように、キラル補助基を含んでいる求核剤と反応させる。一実施形態では、キラル補助基を含んでいる求核剤は、オキサゾリジノンである。別の実施形態では、キラル補助基を含んでいる求核剤は、リチウム(S)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オンである。
【0178】
一例では、化合物Kを調製する。別の例では、化合物K1を調製する。別の例では、化合物K2を調製する。
【0179】
次いで、限定するものではないが、接触水素化などの、当業者に知られている技術を使用して、この化合物を還元することができる。水素化は、参照により援用されるGhosh,A.K.およびLiu,W.J.Org.Chem.第60巻:6198〜6201頁(1995年)で提示されている試薬および条件を使用して実施することが望ましい。一例では、Pd−Cを使用して水素化を実施する。別の例では、還元によって化合物Lが得られる。別の例では、還元によって化合物L1が得られる。さらに別の例では、還元によって化合物L2が得られる。
【0180】
次いで、この化合物を塩基と反応させるが、塩基は、当業者の手で容易に選択することができ、上で引用しており参照により援用されるD.A.Evansに記載のものでよい。このステップでの使用に適する塩基として、限定するものではないが、カリウムヘキサメチルジシラジドが挙げられる。塩基と反応させた後、アジド転移剤を使用して生成物をアジド−イミドに変換する。当業者ならば、上で引用しており参照により援用されるD.A.Evansに記載のものを含めて、適切なアジド転移剤を容易に選択できるはずである。一実施形態では、アジド転移剤はトリイソプロピルベンゼンスルホニルアジドである。一例では、アジド−イミドは化合物Mである。別の例では、アジド−イミドは化合物M1である。別の例では、アジド−イミドは化合物M2である。
【0181】
次いで、ペンダントカルボニル基の還元によってアジド−イミドをアジド−アルコールに還元して、アジド−アルコールを得る。還元は通常、当業者の手で容易に選択することのできる還元剤を使用して実施する。一例では、還元剤は水素化ホウ素リチウムである。一例では、アジド−アルコールは、化合物X(RおよびRについては上で規定している)である。
【0182】
【化61】

【0183】
別の例では、アジド−アルコールは、化合物X1(Rについては上で規定している)である。
【0184】
【化62】

【0185】
次いで、当業者に知られている技術を使用し、アジド−アルコールを還元してアミノ−アルコールにする。還元は、参照により援用されるS.Nishimura、「Handbook of Heterogeneous Hydrogenation for Organic Synthesis」、Wiley−Interscience:ニューヨーク、2001年、377〜379頁で提示されている試薬および条件を使用して、接触水素化によって実施することが望ましい。一実施形態では、水素化は、水素ガスおよび金属触媒を使用して実施する。一例では、アミノ−アルコールは、化合物Y(RおよびRについては上で規定している)である。
【0186】
【化63】

【0187】
別の例では、アミノ−アルコールは、化合物Y1(Rについては上で規定している)である。
【0188】
【化64】

【0189】
最後に、当業界で知られている技術および試薬を使用し、アミノ−アルコールを上述のようにスルホニル化して、式(I)の化合物を得る。アミノ−アルコールは、塩化スルホニルまたはスルホン酸無水物を使用してスルホニル化することが望ましい。
【0190】
【化65】

【0191】
さらにまた別の例において、式(I)の化合物の一調製方法は、スキーム10に提示するものであり、アジドM1のオキサゾリジノン基のペンダントカルボニルを水素化ホウ素リチウムで還元して、アジドアルコールX1を得ることを含む。X1のアジド基の還元によって、アミノアルコールY1が得られる。次いで、アミノアルコールY1を直接スルホンアミド化合物(I)に変換してもよいし、またはアミンをスルホニル化する前に、当業者に知られている適切なヒドロキシル保護基を用いてもよい。次いで、化合物(I)を、(直接、または適切なヒドロキシル保護基を除去後)キラルな分取液体クロマトグラフィーによる分離によって単離することができる。
【0192】
【化66】

【0193】
記載した方法を使用して調製した化合物の分析
当業者に知られているX線結晶学技術を使用して、本明細書に記載の5−クロロ−N−[(1S,2S)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミドの粉末XRDパターンを取得した。図1を参照されたい。一実施形態では、5−クロロ−N−[(1S,2S)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミドのXRDパターンは、1本の大きいピークおよび数本のより小さいピークを含んでいる。5−クロロ−N−[(1S,2S)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミドのXRDは、2θ=約6.4°±0.3°にピークを含む。5−クロロ−N−[(1S,2S)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミドのXRDは、2θ=約14.8°±0.3°、16.1°±0.3°、18.3°±0.3°、19.1°±0.3°、19.5°±0.3°、22.1°±0.3°、22.6°±0.3°、または24.3°±0.3°にも様々な強度で1本または複数のピークを含むものでよい。当業者ならば、粉末X線回折パターンのピーク強度は様々でよいことが容易にわかるであろう。一実施形態では、粉末X線回折パターンの1本または複数のピークの強度は、特に結晶外形、結晶サイズにより様々でよい。
【0194】
化合物の使用方法
式(I)の化合物は、βアミロイド生成の阻害剤である。プロテアーゼ特異的アッセイを使用する予備調査では、典型的な式(I)の化合物が、プロテアーゼ活性に関して特異的な阻害を示すことがわかっている。したがって、この化合物は、βアミロイドレベルのモジュレーションが治療利益となる様々な状態の治療および予防に有用である。そのような状態には、特に、たとえば、アミロイド脈管症、脳アミロイド血管症、全身性アミロイドーシス、アルツハイマー病(AD)、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血、封入体筋炎、ダウン症候群、軽度認知障害(MCI)が含まれる。化合物は、症状、または状態の進行を緩和するのに十分な量で投与することが望ましい。
【0195】
さらに、式(I)の化合物は、異常なβアミロイドレベルと関連付けられる状態の診断に有用な試薬の作製において利用することもできる。たとえば、式(I)の化合物を使用して、様々な診断アッセイにおいて有用となる抗体を作製することができる。モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、および合成抗体、またはこれらの断片の作製方法は、当業者によく知られている。たとえば、E.MarkおよびPadlin、「Humanization of Monoclonal Antibodies」、第4章、The Handbook of Experimental Pharmacology、第113巻、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、Springer−Verlag(1994年6月);KohlerおよびMilsteinならびにその既知の多くの変更形態;国際公開第86/01533号;英国特許出願公開第2188638A号;Amitら、Science、第233巻:747〜753頁(1986年);Queenら、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA、第86巻:10029〜10033頁(1989年);国際公開第90/07861号;Riechmannら、Nature、第332巻:323〜327頁(1988年);ならびにHuseら、Science、第246巻:1275〜1281頁(1988年)を参照されたい。これらの文献を参照により援用する。別法として、式(I)の化合物それ自体をそのような診断アッセイで使用することもできる。選択した試薬(たとえば抗体または式(I)の化合物)にかかわらず、たとえば放射性免疫測定法および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を含めた適切な診断形式が当業者によく知られており、限定するものでない。
【0196】
また、βアミロイド生成の阻害剤を検出する細胞、無細胞、およびin vivoのスクリーニング方法が当業界で知られている。そのようなアッセイとして、特に放射性免疫測定法および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を挙げることができる。たとえば、P.D.Mehta,ら、Techniques in Diagnostic Pathology、第2巻、Bullockら編、Academic Press、ボストン、99〜112頁(1991年)、国際公開第98/22493号、欧州特許第0652009号、米国特許第5,703,129号および第5,593,846号を参照されたい。これらの文献を参照により援用する。適切なin vitroまたはin vivoスクリーニングアッセイの選択は、限定するものでない。
【0197】
一実施形態では、対象においてβアミロイド生成を阻害する方法が提供され、式(I)の化合物または式(I)の化合物を含有する医薬組成物を対象に送達することを含む。
【0198】
医薬組成物および製剤
1種または複数の式Iの化合物、式Iの化合物のプロドラッグ、またはその組合せを含有する医薬組成物も提供される。
【0199】
本明細書に記載の化合物は、化合物を選択した目的の特定の状態を考慮して、任意の望ましい経路によって対象に投与することができる。「対象」とは、βアミロイドレベルをモジュレートすることが望ましい状態の1つまたは複数を抱えている、またはそのリスクがあると認められている任意の適切なヒトを意味する。したがって、式(I)の化合物は、いくつかのヒトの状態の治療および/または予防に有用である。本明細書では、「予防」は、その状態のリスクがあると確認されているが、そうとはまだ診断されていない対象、および/またはその任意の症状をまだ示していない対象における症状の予防を包含する。
【0200】
こうした化合物は、任意の適切な送達経路、たとえば、特に、経口、注射、吸入(経口、鼻腔内、および気管内を含める)、経皮、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、脳内、硬膜外、気管内、直腸、経膣経路によって送達または投与することができる。化合物は、経口的に、吸入によって、または適切な非経口経路によって送達することが最も望ましい。当業界で知られているように、直腸および経膣の送達は、坐剤によるものでよい。化合物は、生理的に適合性のある従来の医薬担体と組み合わせて製剤することができる。場合により、式(I)の化合物の1種または複数を、他の活性薬剤と混合してもよい。
【0201】
生理的に適合性のある適切な担体は、当業者の手で容易に選択することができる。たとえば、適切な固体担体としては、特に、着香剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁化剤、充填剤、滑剤、圧縮助剤、結合剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としても働き得る1種または複数の物質が挙げられる。粉末では、担体は、細かくした固体を細かくした活性成分と混和したものである。錠剤では、活性成分を、必要な圧縮特性を有する担体と適切な割合で混合し、所望の形状およびサイズに成形する。粉末および錠剤は、活性成分を99%まで含有することが好ましい。適切な固体担体としては、たとえば、リン酸カルシウムまたはリン酸二カルシウム(dicalcium phosphate)、ステアリン酸マグネシウム、タルク、デンプン、糖(たとえば、ラクトースおよびスクロースを含める)、セルロース(たとえば、微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含める)、ポリビニルピロリジン、低融点ろう、イオン交換樹脂、ならびにカオリンが挙げられる。
【0202】
液体担体は、溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ、およびエリキシルの調製で使用することができる。活性成分は、水、有機溶媒、両方の混合物などの薬学的に許容できる液体担体、または薬学的に許容できる油または脂に溶解または懸濁させることができる。液体担体は、他の適切な薬学的な添加剤、たとえば、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、懸濁化剤、増粘剤、粘度調整剤、安定剤、または浸透性調整剤を含有してもよい。経口および非経口投与用の液体担体の適切な例として、水(特に、上記のような添加剤、たとえばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を含有するもの)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、たとえばグリコールを含める)およびその誘導体、ならびに油(たとえば、分留ヤシ油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、およびゴマ油)が挙げられる。非経口投与では、担体は、オレイン酸エチルやミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルでよい。無菌の液体担体は、無菌の液体中に使用して、非経口投与用の組成物を生成する。
【0203】
場合により、医薬組成物の調製で習慣的に用いられる添加剤を組成物中に含めることもできる。そうした成分としては、たとえば、甘味剤または他の着香剤、着色剤、保存剤、および抗酸化剤、たとえば、ビタミンE、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、およびブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
【0204】
無菌の溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、たとえば、筋肉内、腹腔内、または皮下注射によって利用することができる。無菌溶液は、静脈内投与することもできる。経口投与は、液体または固体組成物の形でしてよい。
【0205】
吸入剤としての使用向けに調製するとき、医薬組成物は、式(I)の化合物と、噴霧スプレーポンプ、または吸入用乾燥粉末による送達に適する薬学的な媒体を使用して、流体の単位用量として調製することが適当である。エアロゾルとしての使用では、化合物は、必要または望ましい場合には、共溶媒や湿潤剤などの通常の成分と共に、ガス状または液化性の噴射剤、たとえばジクロロジフルオロメタン、二酸化炭素、窒素、プロパンなどと合わせて加圧エアロゾル容器用に製剤し、そうした容器に詰める。たとえば、経口または鼻腔内吸入用の計量された用量の、1回、2回、またはより多い作動での送達も提供される。用量を1または2回の作動で送達することが適当である。しかし、他の適切な送達方法も容易に決定することができる。
【0206】
医薬組成物は、たとえば錠剤またはカプセル剤としての単位剤形にすることが好ましい。そのような剤形では、組成物が、適量の活性成分を含有する単位用量に小分けされており、単位剤形は、包装された組成物、たとえば、投与単位の粉末、バイアル、アンプル、充填済シリンジ、または液体を含有する小袋でよい。単位剤形は、たとえば、カプセル剤または錠剤それ自体でもよいし、または包装形態にした適切な数のそのような任意の組成物でもよい。
【0207】
本明細書に記載するとおり、式(I)の化合物の治療または予防に有益な量は、疾患、たとえばADの症状を緩和する量、または症状の発現もしくはより重篤な症状の発現を予防する化合物の量である。化合物の有益な量は、その製剤および送達経路に応じて様々となり得る。たとえば、生物学的に等価な量の薬物を送達するために、化合物が注射または吸入用に製剤されているときより多い量を経口的に送達することができる。個々の用量(すなわち1単位あたり)の化合物は、約1μg/kg〜約10g/kgの範囲にあることが適当である。しかし、ある実施形態では、そうした用量は、たとえば、約1μg/kg〜約200mg/kg、より好ましくは10μg/kg〜約10mg/kg、最も好ましくは約100μg/kg〜約1mg/kgのより少ない範囲から選択することができる。これらの量は毎日提供することが望ましい。しかし、特定の認知障害または他の状態の治療または予防において使用する投与量は、診療医の主観で決定することができる。関与する変動要素として、特定の認知障害、患者のサイズ、年齢、および応答パターンが挙げられる。たとえば、本明細書に記載の化合物の活性プロフィールおよび効力に基づき、出発用量を1日約130〜約300mgとし、1日量を1日約1000mgに徐々に増加させるものが、ヒトにおける所望の投与量レベルとなり得る。
【0208】
別法として、患者が毎日薬物を服用する必要性を回避するために、持続送達デバイスの使用が望ましい場合もある。「持続送達」とは、活性薬剤、すなわち式Iの化合物の放出を、送達環境に置かれるまで遅らせてから、後に薬剤を持続放出することであると定義される。当業者には、適切な持続送達デバイスが知られている。適切な持続送達デバイスの例として、たとえば、ヒドロゲル(米国特許第5,266,325号、第4,959,217号、および第5,292,515号);特にAlza(米国特許第4,295,987号および第5,273,752号)またはMerck(欧州特許第314,206号)に記載のものなどの浸透圧ポンプ;エチレンメタクリレート(EMA)やエチレンビニルアセテート(EVA)などの疎水性膜材料;生物吸収性高分子系(たとえば、国際公開第98/44964号、BioxidおよびCellomeda;米国特許第5,756,127号および米国特許第5,854,388号を参照されたい)が挙げられ、他の生物吸収性移植デバイスは、たとえば、ポリエステル、ポリ無水物、または乳酸/グリコール酸共重合体から構成されていると記載されており(たとえば米国特許第5,817,343号(Alkermes Inc.)を参照されたい)、これらの文書すべてを参照により援用する。化合物は、このような持続送達デバイスで使用するために、本明細書に記載のとおりに製剤することができる。
【0209】
別の態様では、生成物を送達するための薬剤キットが提供される。キットは、所望の送達経路用に製剤された化合物を擁する包装または容器を含んでいることが適当である。たとえば、そのキットが吸入による投与用に設計されたものであれば、エアロゾルまたは噴霧送達用に製剤された式(I)の化合物を吸入による所定の用量で含有する懸濁液を含んでいてよい。キットは、投与についての説明書および活性薬剤に関する挿入物を含んでいることが適当である。場合により、キットは、生成物の循環レベルをモニターすることについての説明書と、たとえば試薬、ウェルプレート、容器、マーカー、またはラベルを含めた、そのようなアッセイを実施するための材料とをさらに含んでいてもよい。このようなキットは、所望の適応症の治療に適する形で簡単に包装される。たとえば、キットは、スプレーポンプまたは他の送達装置の使用説明書も含んでいてよい。
【0210】
そのようなキットに適する他の構成要素は、所望の適応症および送達経路を考慮して、当業者に容易に明らかとなろう。用量は、所定の長さの時期の間、毎日、毎週、もしくは毎月、または処方されたとおりに繰り返すことができる。
【0211】
以下の実施例は、式(I)の化合物およびその合成方法の実例である。これらの化合物を製造するための本明細書に記載の特定の条件が、本発明の範囲から逸脱することなく様々となり得ることは、当業者には容易に理解されよう。他の式Iの化合物、ならびに他のその塩、水和物、および/またはプロドラッグが本発明の範囲内にあることもさらに理解されよう。
【実施例】
【0212】
(実施例1〜5)
5−クロロ−N−[3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(1)
5−クロロ−N−[(1R,2S)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(3)
5−クロロ−N−[(1S,2R)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(4)
【0213】
【化67】

ステップ1:メチル−4,4,4−トリフルオロ−3−フェニルブト−2−エノアート
NaH(3.29g、82.2mmol、60%鉱油中分散液)の無水THF(400mL)懸濁液を0℃に冷却したものに、ホスホノ酢酸トリメチル(15.0g、13.3mL、82.2mmol)のTHF(25mL)溶液を滴下した。反応混合物を0℃で0.5時間撹拌し、その後冷却浴を取り外した。反応液を室温で1時間撹拌し、次いでトリフルオロアセトフェノン(13.06g、75mmol、10.5mL)をゆっくりと加えた。反応混合物を室温で4時間撹拌し、飽和炭酸水素ナトリウム中に注ぎ、水性混合物をEtOAcで分配した。有機層を分離し、水層をEtOAcで抽出した。有機層を合わせてブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、6mol%の出発ホスホン酸エステルが混入したE/Z異性体の混合物として18.15gの油状物を得た。この材料を次のステップでそのまま使用した。1H NMR 500 MHz (ジメチルスルホキシド(DMSO)-d6): δ 3.50 (s, 3 H), 6.84
(d, 0.8 H, J = 1.16 Hz), 6.90 (s, 0.2 H), 7.23-7.25 (m, 1 H), 7.39-7.46 (m, 4
H).
【0214】
ステップ2:4,4,4−トリフルオロ−3−フェニルブタン酸メチル
ステップ1からのエステル(2.3g、10mmol)のMeOH(200mL)溶液を、20%Pd(OH)/C(500mg)を用いて1気圧の水素で1時間水素化した。反応混合物をCELITE(登録商標)試薬で濾過した。濾液を真空中で濃縮して、灰色の油状物を得た。SiOでのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン(5/95))にかけると、1.89gの表題化合物(81%)が無色の油状物として得られた。1H NMR 500 MHz (DMSO-d6): δ 2.96-3.08 (m, 2 H), 3.49 (s, 1 H), 4.00-4.06 (m, 1 H), 7.30-7.39
(m, 5 H). MS (+ESI): m/z 233 [M+H]+.
【0215】
ステップ3:メチル−2−アジド−4,4,4−トリフルオロ−3−フェニルブタノアート
−78℃に冷却した、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)(3.83mL、6.9mmol、1.8Mのヘプタン/THF/エチルベンゼン)のTHF(10mL)溶液を、予冷した(−78℃)4,4,4−トリフルオロ−3−フェニルブタン酸メチル(1.4g、6.0mmol)のTHF(9mL)溶液にカニューレから加えた。反応混合物を−78℃で0.5時間撹拌し、その後トリシルアジド(2.54g、8.22mmol)をTHF(9mL)に溶かした−78℃の溶液をカニューレから迅速に加えた。3分後、反応混合物にAcOH(2.53mmol、152mg、139μL)を加えた。冷却浴を取り外し、反応混合物を室温で終夜撹拌した。反応混合物を飽和NaClで希釈し、混合物を30秒間撹拌した。混合物をCHClで抽出した。有機層を合わせてNaSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、黄色の油状物を得た。SiOでのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン(5/95))にかけると、表題化合物(569mg、35%)がジアステレオ異性体の9:1混合物として得られた。1H NMR 500 MHz (DMSO-d6): δ 3.54 (s, 0.3 H), 3.64 (s, 2.7 H), 4.29-4.33 (m, 1 H), 4.91 (d, J =
7.54 Hz, 0.9 H), 5.22 (d, J = 5.80 Hz, 0.1 H), 7.33-7.37 (m, 3 H), 7.43-7.45
(m, 2 H).
【0216】
ステップ4:2−アミノ−4,4,4,−トリフルオロ−3−フェニル−酪酸メチルエステル
メチル−2−アジド−4,4,4−トリフルオロ−3−フェニルブタノアート(516mg、1.89mmol)のEtOAc(15mL)溶液を10%Pd/C(125mg)を用いて1気圧で水素化した。1.5時間後、反応混合物をCELITE(登録商標)試薬で濾過した。濾液を真空中で濃縮して、無色から淡黄色の油状物400mgを得た。この材料をSiOでのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン勾配)によって精製して、表題化合物を無色の油状物として得た。1H NMR 500 MHz (DMSO-d6): δ 1.20 (s, 0.2 H), 1.72 (s, 1.8 H), 3.37 (s, 0.3 H), 3.59 (s, 2.7 H),
3.84-3.89 (m, 1 H), 4.00 (m, 1 H), 7.30-7.38 (m, 5 H); MS (+ESI): m/z 248 [M+H]+.
【0217】
ステップ5:2−(5−クロロ−チオフェン−2−スルホニルアミノ)−4,4,4,−トリフルオロ−3−フェニル−酪酸メチルエステル
ステップ4からの2−アミノ−4,4,4,−トリフルオロ−3−フェニル−酪酸メチルエステル(200mg、0.81mmol)をジクロロメタン(DCM、5mL)に溶かした冷却(0℃)溶液に、塩化5−クロロ−2−チエニルスルホニル(193mg、0.89mmol)を加えた。次いで、反応混合物にピリジン(1.5当量、1.21mmol、96mg、109μL)を加えた。反応混合物を一晩かけて室温に温めた。反応混合物をCHClで希釈し、水で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、黄色の油状物を得た。SiOでのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン勾配)にかけると、表題化合物(268mg、77%)がジアステレオ異性体の8.4:1混合物として得られた。1H NMR 500 MHz (DMSO-d6): δ 3.06 (s, 0.36 H), 3.50 (s, 2.64 H), 3.93-3.98 (m, 1 H), 4.40-4.45
(m, 1 H), 7.10 (d, J = 4.03 Hz, 0.88 H), 7.17 (d, J = 4.15 Hz, 0.12 H),
7.24-7.34 (m, 5.88 H), 7.38 (d, J = 4.15 Hz, 0.12 H), 9.02 (d, J = 9.15 Hz,
0.88 H), 9.36 (d, J = 9.15 Hz, 0.12 H). MS (-ESI): m/z 426 [M-H]-.
【0218】
ステップ6:5−クロロ−N−[3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(1)
2−(5−クロロ−チオフェン−2−スルホニルアミノ)−4,4,4,−トリフルオロ−3−フェニル−酪酸メチルエステル(161mg、0.377mmol)の無水THF(1.5mL)溶液に、LiBH(THF中2.0M、0.754mmol、377μL)を加えた。反応混合物を室温で終夜撹拌した。気泡がそれ以上現れなくなるまで、2N HClを慎重に加えた。真空中で溶媒を除去し、残渣に水(2mL)を加えた。溶液をEtOAcで抽出した。有機抽出物を合わせてNaSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、白色固体を得た。SiOでのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン勾配)にかけると、表題化合物(116mg、77%)がジアステレオ異性体の9:1混合物として得られた。1H NMR 500 MHz (DMSO-d6): δ 2.86-2.97 (m, 2 H), 3.79-3.87 (m, 2 H), 4.66 (t, J = 9.64 Hz, 0.1
H), 5.07 (t, J = 2.92 Hz, 0.9 H), 7.15 (d, J = 2.32 Hz, 1 H), 7.28-7.37 (m, 5.9
H), 7.46 (d, J = 4.02 Hz, 0.1 H), 7.80 (d, J = 9.03 Hz, 0.9 H), 8.35 (d, J =
8.81 Hz, 0.1 H). 補正1H
NMR 500 MHz (DMSO-d6): δ 2.86-2.97 (m, 2 H),
3.79-3.87 (m, 2 H), 5.07 (t, J = 2.92 Hz, 1 H), 7.15 (d, J = 2.32 Hz, 1 H),
7.28-7.37 (m, 6 H), 7.80 (d, J = 9.03 Hz, 1 H). MS (-ESI): m/z 398 [M-H]-.
【0219】
ステップ7:5−クロロ−N−[(1R,2S)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(3)
5−クロロ−N−[(1S,2R)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(4)の調製
ステップ6からの5−クロロ−N−[3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミドの一部をヘキサン/EtOから再結晶化して、5−クロロ−N−[(1R*,2R*)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミドおよび5−クロロ−N−[(1S*,2S*)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミドを、主要なジアステレオ異性体(これらはそれ以上精製しなかった)として得た。母液を蒸発にかけ、材料をヘキサン/EtOから再結晶化した。この材料をSiOでのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン(25/75))によって精製して、微量なジアステレオ異性体としての5−クロロ−N−[(1R*,2S*)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミドおよび5−クロロ−N−[(1S,2R)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミドを、主要なジアステレオ異性体を5%含有するオフホワイトの固体として得た。このサンプルをキラル高速液体クロマトグラフ(HPLC、CHIRALCEL(登録商標)ADカラム、2×25cm、70%のヘキサン中EtOH)にかけて、表題化合物である白色固体としての5−クロロ−N−[(1S,2R)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(4)、および5−クロロ−N−[(1R,2S)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(3)を得た。
(3) MS (-ESI): m/z 398 [M-H]-.
(4) MS (-ESI): m/z 398 [M-H]-.
【0220】
5−クロロ−N−[(1R*,2R*)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(2)および5−クロロ−N−[(1S*,2S*)−3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシメチル−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(5)の調製
表題化合物は、以下で記載する実施例8方法Bステップ1〜3の方法を使用し、1−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノンの代わりに2,2,2−トリフルオロアセトフェノンを用いて調製した。生成物をラセミ体として単離し、キラル分取HPLCによってその各鏡像異性体に分離した。
(2) MS (-ESI): m/z 398 [M-H]-.
(5) MS (-ESI): m/z 397.9 [M-H]-.
CHIRALPREP(登録商標)LC条件:VARIAN(登録商標)分取LC、CHIRALPAK(登録商標)AD−Hカラム(25×4.6mm)、移動相 15%のエタノールヘキサン溶液、流速 1.0mL/分。
保持時間:(2)6.783分(面積50.14%)、(5)7.577分(面積47.52%)。
【0221】
*これらの異性体に任意に割り当てた絶対立体配置
5−クロロ−N−[(1S,2R)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(4)の絶対立体配置は、この物質の単結晶X線分析から割り当てた。5−クロロ−N−[(1R,2S)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(3)の絶対立体配置は、2種の物質が鏡像異性体であったので、4から導いた。
【0222】
(実施例6)
4−クロロ−N−[(1S,2R)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]ベンゼンスルホンアミド(6)
【0223】
【化68】

ステップ1:4,4,4−トリフルオロ−3−フェニル−ブト−2−エン酸
4,4,4−トリフルオロ−3−フェニルブト−2−エン酸は、2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエタノン、無水酢酸、および酢酸ナトリウムから、Sevenardの方法(Tetrahedron Letters、第44巻、2003年、7119頁)によって、E:Zオレフィンの5:1混合物として調製した。
【0224】
ステップ2:4,4,4−トリフルオロ−3−フェニルブタン酸
4,4,4−トリフルオロ−3−フェニルブト−2−エン酸(6.05g、28mmol)の溶液をエタノール(200mL)に溶解させ、10%Pd/C(0.5g)を用いて1気圧で水素化した。24時間後、溶液を濾過して、表題化合物(6g)を固体として得た。1H NMR (CDCl3): δ 8.64 (brs, 1 H), 3.86, (m, 1 H), 3.04, (dd, 1 H, J = 11, 4.9 Hz),
2.90 (dd, 1 H, J = 11, 7.6 Hz).
【0225】
ステップ3:(4S)−4−ベンジル−(3S)−3−(4,4,4−トリフルオロ−3−フェニルブタノイル)オキサゾリジン−2−オン
4,4,4−トリフルオロ−3−フェニルブタン酸(1g、6.4mmol)のTHF(30mL)溶液を窒素中で0℃に冷却し、これにトリエチルアミン(0.95mL、6.7mmol)を加えた後、塩化ピバロイル(0.76mL、6.5mmol)を加えた。混合物を2時間撹拌し、次いで−78℃に冷却した。
【0226】
(S)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オン(1.13g、6.3mmol)のTHF(20mL)溶液を窒素中で−78℃に冷却した。この溶液に、n−BuLi(4mL、ヘキサン中1.6M)を加えた。アニオンを30分間撹拌し、上述の混合無水物の溶液にカニューレから加えた。溶液を30分間撹拌し、次いで室温に温めた。1M NaHSO(5mL)で反応を失活させた。溶媒を真空中で除去し、残渣をEtOAcと炭酸水素ナトリウム飽和水溶液とに分配した。有機層を除去し、水層をEtOAcで洗浄した。有機層をプールし、飽和ブライン溶液で1回抽出し、MgSOで乾燥させた。溶媒を除去すると、2.5gの油状物が得られた。EtOAc/ヘキサンの勾配溶離を使用するシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけると、単一のジアステレオ異性体(ピーク1)520mg、およびジアステレオ異性体混合物(36:64)720mgが得られた。ピーク1のデータ:1H NMR (CDCl3): δ 7.30 (m, 8 H), 7.14 (d, 2 H, J = 6.6 Hz), 4.50 (m, 1 H), 3.73 (dd,
1 H, J = 9.7, 20 Hz), 4.10 (m, 3 H), 3.55 (dd, 1 H, J = 5.0, 20 Hz), 3.20 (dd,
1 H, J = 3.4, 14 Hz), 2.68 (dd, 1 H, J = 9.7, 14 Hz).
【0227】
ステップ4:(S)−3−((2S,3R)−2−アジド−4,4,4−トリフルオロ−3−フェニル−ブチリル)−4−ベンジル−オキサゾリジン−2−オン
ステップ3で上記のように得たオキサゾリジノン(ピーク1、0.520g、1.3mmol)のTHF(5mL)溶液を窒素中で−78℃に冷却した。これに、カリウムヘキサメチルジシリルアミドの溶液(トルエン中0.5M)(3.4mL、1.7mmol)を加えた。反応液を−78℃で1時間撹拌した。トリシルアジド(0.385g、1.93mmol)のTHF(6mL)溶液を調製し、−78℃に冷却した。この溶液をカニューレからアニオン溶液に加えた。3分後、酢酸(0.45mL)を加え、反応液を終夜撹拌し、室温に温めた。溶媒を真空中で除去し、反応液をCHCl(40mL)および飽和ブライン(40mL)で希釈した。層を分離し、水層をCHClで抽出した。有機層をプールし、MgSOで乾燥させ、濾過し、真空中で蒸発にかけて、860mgの油状物を得た。EtOAc/ヘキサンの勾配溶離を使用するシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけると、331mgの表題化合物が油状物として得られた。この材料を次のステップでそのまま使用した。1H NMR (CDCl3): δ 5.85 (d, 1 H, J = 10.9 Hz).
【0228】
ステップ5:(S)−3−((2S,3R)−2−アミノ−4,4,4−トリフルオロ−3−フェニル−ブチリル)−4−ベンジル−オキサゾリジン−2−オン塩酸塩
ステップ4に記載のアジド(0.330g、0.7mmol)をEtOH(30mL)に溶解させた、1NのHClジエチルエーテル溶液(2mL)を含有する溶液を、10%Pd/Cを用いて1気圧で終夜水素化した。サンプルを濾過し、溶媒を除去すると、265mgの表題化合物が得られた。1H NMR (CDCl3): δ 5.72 (d, 1 H, J = 8.6 Hz).
【0229】
ステップ6:N−(S)−[1−((S)−4−ベンジル−2−オキソ−オキサゾリジン−3−カルボニル)−(R)−3,3,3−トリフルオロ−2−フェニル−プロピル]−4−クロロベンゼンスルホンアミド
(S)−3−((2S,3R)−2−アミノ−4,4,4−トリフルオロ−3−フェニル−ブチリル)−4−ベンジル−オキサゾリジン−2−オン塩酸塩(265mg、0.61mmol)のCHCl(20mL)溶液を0℃に冷却した。塩化4−クロロ−フェニルスルホニル(0.193g、0.9mmol)のCHCl(2mL)溶液をジメチルアミノピリジン(DMAP、151mg、1.6mmol)で処理した。この溶液を15分間撹拌し、次いでアミン塩酸塩の溶液に加えた。溶液を終夜撹拌し、室温に温めた。反応が不完全であったので、DMAP(50mg)および塩化スルホニル(50mg)を加え、反応液を室温で24時間撹拌した。反応混合物をCHCl(50mL)で希釈し、2N HCl(50mL)、次いでブライン(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮して固体(360mg)とした。EtOAc/ヘキサンの勾配溶離を使用するシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけると、表題化合物が固体(293mg)として得られ、これを次のステップでそのまま使用した。
【0230】
ステップ7:4−クロロ−N−[(1S,2R)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]ベンゼンスルホンアミド
ステップ6からのスルホンアミド(101mg、0.17mmol)のEtO/THF(2.0mL、(1:1))溶液を水(5μL)で処理し、0℃に冷却した。これにLiBH溶液(100μL、THF中2M)を加えた。反応液を16時間撹拌し、1N HCl(0.5mL)で失活させ、EtOAc(10mL)で希釈した。有機層を分離し、水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。EtOAc/ヘキサンの勾配溶離を使用するシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけると、表題化合物が白色固体(49mg)として得られた。サンプルを酢酸エチル/ヘキサンから再結晶化した。融点129〜131℃。MS (-ESI): m/z 392.0 [M-H]-.
【0231】
(実施例7〜8)
5−クロロ−N−[(1S*,2S*)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミドおよび5−クロロ−N−[(1R*,2R*)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(7)(方法B)
ならびに
5−クロロ−N−[(1S*,2R*)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(8)(以下の方法AまたはB)
【0232】
【化69】

方法A:
ステップ1:E/Z3−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−4,4,4−トリフルオロ−ブト−2−エン酸メチルエステル
1−(3,5−ジフルオロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン(1.0g、4.8mmol)をCHCl(5mL)に加えた。トリメチルホスホノアセタート(0.87g、4.8mmol)を加え、混合物を0℃に冷却した。テトラメチルグアニジン(0.72mL、5.7mmol)をシリンジで滴下した。混合物がゆっくりと室温になるようにし、22時間撹拌した。反応混合物を、CHCl(40mL)を含有する分液漏斗に注いだ。有機相を蒸留水(3×)、ブラインで洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。溶液を濾過し、溶媒を濃縮して未精製の油状物とし、これを、CHClを溶離液として使用するフラッシュクロマトグラフィーにかけた。これによって、所望の生成物が黄色の油状物(1.13g、89%、E/Z異性体の混合物)として得られた。
【0233】
ステップ2:E/Z−3−(3,5−ジフルオロフェニル)−4,4,4−トリフルオロブト−2−エン酸
上記のように得たE/Z3−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−4,4,4−トリフルオロ−ブト−2−エン酸メチルエステル(1.04g、3.90mmol)をMeOH(8mL)に溶解させた。KCO(2.6g、19mmol)を加えた後、蒸留水(8mL)を加えた。混合物を16時間激しく撹拌した。MeOHを蒸発にかけ、濃HClを使用して水性残渣をpH=2に酸性化した。酸水溶液相をEtOAc(3×)で抽出した。有機層を合わせてNaSOで乾燥させた。有機相を濾過し、濃縮すると、オフホワイトの結晶固体(0.935g、95%)が生成物として生成した。この生成物は、EおよびZ異性体(60/40)の混合物であった。
【0234】
ステップ3:4−(S)−ベンジル−3−[3−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−4,4,4−トリフルオロ−ブト−2−エノイル]オキサゾリジン−2−オン
E/Z−3−(3,5−ジフルオロフェニル)−4,4,4−トリフルオロブト−2−エン酸(0.90g、3.6mmol)のTHF(8mL)溶液を−78℃に冷却した。トリエチルアミン(0.52mL、3.7mmol)および塩化トリメチルアセチル(0.46mL、3.7mmol)をこの順にシリンジで加えた。ドライアイス/アセトン浴を氷浴と交換し、反応液を0℃で2時間撹拌し、次いで反応液を−78℃に冷却し直した。
【0235】
別個のフラスコにおいて、上記反応と同時に実施したが、(S)−(−)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン(0.63g、3.6mmol)をTHF(7mL)に溶解させ、−78℃に冷却し、次いでn−ブチル−リチウム(ヘキサン中1.6M、2.2mL、3.6mmol)をシリンジで加えた。反応液を2時間撹拌した。2時間が経過する頃に、この第2の反応液をシリンジに取り、第1の反応液に加え、撹拌を−78℃で1時間続けた。次いで、ドライアイス/アセトン浴を除去し、混合物を室温で16時間撹拌した。
【0236】
次いで反応混合物を0℃に冷却し、蒸留水(10mL)を(最初は慎重に)加えた後、EtOAc(50mL)で希釈および抽出した。水相を除去し、1N HCl(2×20mL)、飽和NaHCO溶液、蒸留水、およびブラインを使用して有機相を順次抽出した。有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、所望の中間体(1.41g、96%)を得た。MS (+ESI): m/z 412.7 [M+H]+.
【0237】
ステップ4:4−(S)−ベンジル−3−[3−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−4,4,4−トリフルオロ−ブチリル]オキサゾリジン−2−オン
標準の水素化ボトルに、EtOAc(25mL)に溶解させた4−(S)−ベンジル−3−[3−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−4,4,4−トリフルオロ−ブト−2−エノイル]オキサゾリジン−2−オン(1.03g、2.50mmol)および10%パラジウム担持炭素触媒(114mg)を装入した。ボトルをParr水素化処理装置(hydrogenator)に取り付け、16時間振盪した。混合物をCELITE(登録商標)パッドで濾過し、試薬および溶媒を蒸発にかけて、生成物をオフホワイトの固体(1.0g、96%)として得た。MS (+ESI): m/z 414 [M+H]+.
【0238】
ステップ5:(4S)−3−(2−(S)−アジド−3−(3,5−ジフルオロフェニル)−4,4,4−トリフルオロブタノイル)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オン
基質の4−(S)−ベンジル−3−[3−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−4,4,4−トリフルオロ−ブチリル]オキサゾリジン−2−オン(0.10g、0.24mmol)をTHF(2mL)に溶解させ、−78℃に冷却した。カリウムヘキサメチルジシラジド0.5Mトルエン溶液(0.52mL、0.26mmol)を含有するシリンジをドライアイスで冷却し、その内容物をこの混合物に滴下した。溶液を1時間撹拌した。2,4,6−トリシルアジド(0.082g、0.265mmol)をTHF(2mL)に溶解させたものを、ドライアイスで冷却したシリンジで混合物に直ちに加えた。混合物を3分間撹拌し、次いで酢酸(HOAc、0.066g、1.11mmol)を全部一度に加えた。混合物が室温になるようにし、3日間撹拌した。反応液をEtOAc(20mL)で希釈し、次いで飽和ブライン(2×)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して未精製の油状物とし、これを、ヘキサン:EtOAc 4:1を溶離液として使用するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにかけた。これによって生成物が油状物(0.053g、49%)として得られた。MS (+ESI): m/z 454 [M]+.
【0239】
ステップ6:(4S)−3−(2−(S)−アミノ−3−(3,5−ジフルオロフェニル)−4,4,4−トリフルオロブタノイル)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オン塩酸塩
標準の水素化ボトルに10%パラジウム担持炭素触媒(0.006g)を装入し、MeOH(3mL)に溶解させた(4S)−3−(2−(S)−アジド−3−(3,5−ジフルオロフェニル)−4,4,4−トリフルオロブタノイル)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オン(0.038g、0.083mmol)を加えた。次いで、MeOH(2mL)に溶解させた塩化プロピオニル(0.015g、0.167mmol)を加えた。ボトルをParr水素化処理装置に取り付け、16時間振盪した。混合物をCELITE(登録商標)試薬のパッドで濾過し、溶媒を蒸発にかけて、生成物を淡黄色の固体として得、これを次の手順でそれ以上精製せずに使用した。
【0240】
ステップ7:N−(S)−(1−((S)−4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−3−(3,5−ジフルオロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−1−オキソブタン−2−イル)−5−クロロ−チオフェン−2−スルホンアミド
塩化5−クロロ−チオフェン−2−スルホニル(0.028g、0.130mmol)およびジメチルアミノピリジン(0.018g、0.143mmol)をCHCl(0.5mL)に混ぜた混合物に、(4S)−3−(2−(S)−アミノ−3−(3,5−ジフルオロフェニル)−4,4,4−トリフルオロブタノイル)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オン塩酸塩(0.028g、0.065mmol)を、CHCl(0.5mL)に溶かした溶液として加えた。混合物を24時間撹拌した。反応液をCHCl(10mL)で希釈し、蒸留水(2x)で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO)、濾過し、蒸発にかけて未精製の油状物とし、これを、ヘキサン:酢酸エチル(EtOAc)4:1を溶離液として使用するフラッシュクロマトグラフィーにかけた。これによって、所望の中間体が油状物(0.020g、51%)として得られた。MS (+ESI): m/z 609 [M+H]+.
【0241】
ステップ8:5−クロロ−N−[(1S*、2R*)−2(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]−チオフェン−2−スルホンアミド(8)
基質のN−(S)−(1−((S)−4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−3−(3,5−ジフルオロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−1−オキソブタン−2−イル)−5−クロロ−チオフェン−2−スルホンアミド(0.0195g、0.032mmol)を無水THF(0.3mL)に溶解させたものに、窒素雰囲気中でLiBH(THF中2M、0.032mL、0.064mmol)をシリンジによって加えた。混合物を16時間撹拌した。気体放出が止むまで2N HCl溶液(3〜4滴)を慎重に加えて、反応を失活させた。混合物をEtOAc(10mL)および蒸留水(2mL)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAcで再び洗浄した。有機層を合わせてMgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、未精製の油状物を生成し、これを、EtOAc/ヘキサンの勾配溶離を使用するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー、次いでキラル分取HPLC(実施例5の方法を使用する)によって分離して、所望の生成物を油状物(0.002g)として収率14%で得た。MS (-ESI): m/z 434 [M-H]-.
【0242】
方法B:
ステップ1:3−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ホルミルアミノ−ブト−2−エン酸エチルエステル
(Enders,D.ら.、Synthesis(2005年)、306〜310頁を参照されたい)
カリウムt−ブトキシド(95%、0.811g、6.86mmol)を無水THF(5mL)に懸濁させた。懸濁液を−78℃に冷却した。次いで、イソシアノ酢酸エチル(純度95%、0.79mL、6.86mmol)をTHF(1.5mL)に溶解させた溶液を滴下した。滴下後、混合物を−78℃で30分間撹拌した。次いで、1−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノン(1.441g、6.86mmol)をTHF(2mL)に溶解させた溶液を混合物に滴下し、反応液を−78℃で1時間撹拌した。冷却浴を取り外し、混合物を室温で2時間温めた。1N HCl(6.9mL)を加え、混合物を室温で30分間撹拌した。THF層をデカントし、確保しておき、水相をCHClで2回抽出した。有機相を合わせて乾燥させ(NaSO)、蒸発にかけた。粗製材料を、EtOAc/CHClを勾配溶離(0〜3%のEtOAc)で使用するシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけて、表題オレフィンを単一の(Z)異性体(1.749g、5.41mmol、79%)として得た。
【0243】
ステップ2:N−[2−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシメチル−プロピル]−ホルムアミド
3−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ホルミルアミノ−ブト−2−エン酸エチルエステル(1.740g、5.39mmol)をMeOH(11mL)に溶解させた。水素化ホウ素ナトリウム(0.611g、16.2mmol)を少量ずつ加え、次いで混合物を室温で2時間撹拌した。溶媒を蒸発にかけ、残渣を無水THF(7mL)に溶かした。次いで、水素化ホウ素リチウム(THF中2M、6.73mL、13.5mmol)をシリンジでゆっくりと加え、混合物を室温で2.5時間撹拌した。泡立ちが静まるまで、2N HClで反応を慎重に失活させた。少量の水およびジエチルエーテルを加えて、懸濁液の流動性を保つ助けとした。次いで混合物をCHCl(2×)およびEtOAc(1×)で抽出した。(注:後続の作業では、酢酸エチル抽出とCHCl抽出の順番を変えて、若干の乳濁液の問題を回避した。)有機抽出物を合わせて乾燥させ(MgSO)、蒸発にかけた。粗製材料を、MeOH/CHClを勾配溶離(1〜5%のMeOH)で使用するシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけて、表題化合物をジアステレオ異性体の混合物(約1.75:1の比、0.834g、2.95mmol、55%)として得た。
【0244】
ステップ3:5−クロロ−N−[(1S*,2R*)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド
上記のように得たN−[2−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシメチル−プロピル]−ホルムアミドのジアステレオ異性体混合物(0.812g、2.87mmol)を3N HCl/MeOH(20mL)に溶解させ、溶液を室温で4.5時間撹拌した。溶液のpHを約25%のNaOHで約10に調整し、混合物をCHClで3回抽出した(2回目および3回目の抽出前に水相を「塩析させた」)。有機相を合わせて乾燥させ(MgSO)、蒸発にかけて、想定していた未精製のアミン(705mg)を得た。
【0245】
塩化5−クロロチオフェン−2−スルホニル(388μL、3.01mmol)をCHCl(2.1mL)に溶解させ、4−ジメチルアミノピリジン(0.372g、3.16mmol)を加えた。混合物を5分間撹拌し、上記アミン(705mg)をCHCl(2mL)に溶解させたものを加えた。混合物を室温で終夜撹拌した。混合物をCHClで希釈し、2N HCl(2×)、水、次いでブラインで洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO)、蒸発にかけて、生成物の未精製の混合物を得た。材料を、EtOAc/CHClの勾配溶離(5〜20%のEtOAc)を使用するシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけて、2種のジアステレオ異性体のラセミ混合物(約1.75:1の比、794mg、1.83mmol、64%)を得た。この材料を、キラルな分取HPLCによってさらに精製して、5−クロロ−N−[(1S*,2S*)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミドおよび5−クロロ−N−[(1R*,2R*)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(7)(0.359g、0.825mmol、30%)と共に、5−クロロ−N−[(1S*,2R*)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(8)(0.119g、0.274mmol、10%)を得た。(7) MS (-ESI): m/z 434 [M-H]-. (8) MS (-ESI): m/z 434
[M-H]-. CHIRALPREP(登録商標)LC条件:VARIAN(登録商標)分取LC、CHIRALCEL(登録商標)ADカラム(5×50cm)、移動相 15%のエタノールヘキサン溶液、流速 100mL/分。キラル分析用LC分析:Chiralcel(登録商標)AD−Hカラム。
【0246】
*8の絶対立体配置は、単結晶X線分析によって確認した。
【0247】
方法C:
化合物8(1.32g、異性体の混合物)を方法Bに従って調製し、続いて以下の条件を使用して精製した。すなわち、Varian(商標)分取LC、Chiralcel(登録商標)ADカラム(2×25cm)、移動相 10%のエタノールヘキサン溶液、流速 22mL/分。キラル分析用LC分析:Chiralcel(登録商標)AD−Hカラム。そうして得た化合物8(0.360g)は、合計不純物を約5パーセント含んでいた。上記材料のサンプル(0.230g)を以下の条件を使用してさらに精製した。すなわち、Varian(商標)分取LC、Primesphere(登録商標)C18カラム(5×25cm)、移動相 10mM酢酸アンモニウム中57%のアセトニトリル、流速 85mL/分。これによって、化学純度およびキラル純度が99.9%である0.190gの化合物8が得られた。
【0248】
(実施例9〜10)
5−クロロ−N−[(1S*,2R*)−3,3,3−トリフルオロ−2−(4−フルオロフェニル)−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(9)
および
5−クロロ−N−[(1S*,2S*)−3,3,3−トリフルオロ−2−(4−フルオロフェニル)−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(10)
【0249】
【化70】

ステップ1:4,4,4−トリフルオロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−ブト−2−エン酸t−ブチルエステル
4’−フルオロ−2,2,2−トリフルオロアセトフェノン(10g、52mmol)および(ジメトキシ−ホスファニルオキシ)−酢酸t−ブチルエステル(11.6g、52.4mmol)をCHCl(50mL)に溶かした溶液を、室温にてテトラメチルグアニジン(6.3g、52.4mmol)で48時間かけて処理した。溶液を1N HClで抽出し、次いでブラインで洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、オレフィン異性体の1:1混合物である油状物(14.6g、96%)を得た。1H NMR (CDCl3): δ 6.51 (d, 0.5 H, J = 1.4 Hz), 6.22 (s, 0.5 H), 1.5 (s, 4.5 H), 1.23
(s, 4.5 H).
【0250】
ステップ2:4,4,4−トリフルオロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−ブト−2−エン酸
硫酸(2.45g、25mmol)をCHCl(90mL)に溶かした、十分に撹拌した0℃の溶液に、4,4,4−トリフルオロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−ブト−2−エン酸t−ブチルエステル(14.6g、50.3mmol)の溶液を加えた。溶液を4時間かけて室温に温め、撹拌を18時間続けた。この溶液をNaOH溶液(40mL、2.5N)で慎重に処理した。層を分離し、有機層を追加のNaOH(40mL、2.5N)で洗浄した。水層をプールし、pHを濃HClで1に調整した。水性の混合物をジエチルエーテル(2×50mL)で抽出した。有機層をプールし、10% NaSO(1×25mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。これによって、9.13gの生成物がオレフィンの混合物として得られた。1H NMR (CDCl3): δ 10.68 (s, 1 H), 6.58 (s, 0.5 H), 6.29 (s, 0.5 H).
【0251】
ステップ3:(S)−4−ベンジル−3−[4,4,4−トリフルオロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−ブト−2−エノイル]−オキサゾリジン−2−オン
4,4,4−トリフルオロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−ブト−2−エン酸(8.47g、36.2mmol)のTHF(200mL)溶液を−78℃に冷却した。これに、トリエチルアミン(5.8mL、40.9mmol)を加えた後、塩化ピバロイル(4.60mL、37.1mmol)を加えた。この溶液を−78℃で30分間撹拌し、次いで1時間かけて室温に温めた。次いで溶液を−78℃に冷却し直した。
【0252】
(S)−4−ベンジル−オキサゾリジノン(7.04g、39.7mmol)およびトリフェニルメタン(25mg)のTHF(200mL)溶液を−78℃に冷却した。これに、溶液が赤色になるまでn−BuLi(ヘキサン中1.64M)(約25mL)を加えた。この溶液を−78℃で30分間撹拌し、次いでこの冷混合無水物にアニオン溶液を加えた。混合物を終夜撹拌し、室温に温めた。溶液を冷却し直し、NaSOの飽和水溶液で失活させ、室温に温めた。有機溶媒を真空中で除去し、材料をEtOAcと水とに分配した。層を分離し、水層をEtOAcで2回抽出した。プールした有機層を、1N HCl、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、次いで飽和ブラインで洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、橙色の油状物15.6gを得た。この材料を、EtOAc/ヘキサンの勾配溶離を使用するシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけて、表題化合物を白色固体として得た。MS (APPI): m/z 394 [M+H]+.
【0253】
ステップ4:(S)−4−ベンジル−3−[4,4,4−トリフルオロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−ブチリル]−オキサゾリジン−2−オン
A(S)−4−ベンジル−3−[4,4,4−トリフルオロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−ブト−2−エノイル]−オキサゾリジン−2−オン(720mg、1.8mmol)のEtOH(50mL)溶液を、10%Pd/C(72mg)を用いて1気圧で16時間かけて水素化した。サンプルをCELITE(登録商標)試薬で濾過し、CELITE(登録商標)試薬をEtOH(2×25mL)ですすいだ。真空中で溶媒を除去して、表題化合物670mgを油状物として得、これを静置すると凝固した。この混合物を次のステップでそのまま使用した。1H NMR (CDCl3): δ 3.87 (dd, 0.5 H), 3.67 (dd, 0.5 H), 3.55 (dd, 0.5 H), 3.44 (dd, 0.5
H).
【0254】
ステップ5:3−[(S)−2−アジド−4,4,4−トリフルオロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−ブチリル]−(S)−4−ベンジル−オキサゾリジン−2−オン
(S)−4−ベンジル−3−[4,4,4−トリフルオロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−ブチリル]−オキサゾリジン−2−オン(670mg、1.69mmol)のTHF(25mL)溶液をN中で−78℃に冷却した。これに、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドの溶液(3.5mL、0.5Mのトルエン溶液)を加えた。この混合物を−78℃で45分間撹拌した。トリシルアジド(410mg、2.0mmol)のTHF(3mL)溶液を調製し、−78℃に冷却した。アニオン溶液に、この溶液をカニューレから加えた。3分後、反応をHOAc(0.57mL、10mmol)で失活させた。反応液を3時間かけて室温に温めた。溶媒を真空中で除去し、残渣をEtOAcとブラインとに分配した。水層をEtOAcで抽出し、有機層をプールし、MgSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、0.95gの油状物を得た。EtOAc/ヘキサンの勾配溶離を使用するシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけると、480mgの表題化合物が油状物として得られた。
【0255】
ステップ6:(S)−2−アジド−4,4,4−トリフルオロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−ブタン−1オール
3−[(S)−2−アジド−4,4,4−トリフルオロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−ブチリル]−(S)−4−ベンジル−オキサゾリジン−2−オン(480mg、1.1mmol)のTHF(50mL)溶液を水(0.2mL)で処理し、次いで0℃に冷却した。この溶液に、LiBH(1.5mL、THF中2M)を加えた。反応液を終夜撹拌し、一晩かけて室温に温めた。反応液を1N HCl(2mL)で失活させた。溶媒を除去し、残渣をEtOAcと水とに分配した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した後、ブラインで洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して油状物とした。油状物を、EtOAc/ヘキサンの勾配溶離を使用するシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけて、表題化合物220mgを油状物として得た。この材料を次のステップでそのまま使用した。
【0256】
ステップ7:(S)−2−アミノ−4,4,4−トリフルオロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−ブタン−1オール塩酸塩
(S)−2−アジド−4,4,4−トリフルオロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−ブタン−1オール(200mg、0.8mmol)の溶液をMeOH(10mL)およびHClエタノール溶液(1mL、1.25M)に溶解させた。この混合物を、10%Pd/C(25mg)を用いて1気圧で24時間かけて水素化した。溶液をCELITE(登録商標)試薬で濾過し、真空中で溶媒を除去して、塩をガラスとして得た。この材料をそれ以上精製せずに使用した。
【0257】
ステップ8:5−クロロ−N−[(1S*,2R*)−3,3,3−トリフルオロ−2−(4−フルオロフェニル)−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(9)および5−クロロ−N−[(1S*,2S*)−3,3,3−トリフルオロ−2−(4−フルオロフェニル)−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(10)
(S)−2−アミノ−4,4,4−トリフルオロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−ブタン−1オール塩酸塩(200mg、0.73mmol)のCHCl(15mL)溶液を、1−メチル−モルホリン(0.4mL、3.6mmol)、次いでクロロトリメチルシラン(0.12mL、1.5mmol)で処理した。反応液を15分間撹拌し、0℃に冷却し、5−クロロ−チオフェン−2−スルホニル塩化物(0.180g、0.83mmol)で処理した。反応液を撹拌し、一晩かけて室温に温めた。反応液をEtOAc(25mL)で希釈し、2N HCl(10mL)で10分間かけて処理した。水層をEtOAc(25mL)で抽出し、有機層をプールし、MgSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮し、EtOAc/ヘキサンの勾配溶離を使用するシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけて、生成物(50mg)を油状物として得た。後続のCHIRALCEL(登録商標)AD−Hカラムでのクロマトグラフィーにかけると、24mgの1S,2R異性体(9)が非晶質固体として得られ、さらに18mgの1S,2S異性体(10)も得られた。(9) MS (-ESI): m/z 415.9 [M-H]-. HRMS: C14H12ClF4NO3S2
- H+の計算値, 415.9805; 実測値(ESI, [M-H]-), 415.9816. (10) MS (-ESI): m/z 415.9 [M-H]-.
HRMS: C14H12ClF4NO3S2 -
H+の計算値, 415.9805; 実測値(ESI, [M-H]-), 415.9804. 9の絶対立体配置は、実施例4の化合物から類推して割り当てた。実施例4のX線データおよびNMRデータを使用して、生物学的なデータと一致している活性のある立体異性体を指定した。10の絶対立体配置は、9のジアステレオ異性体である化合物に基づき割り当てた。
【0258】
(実施例11〜12)
5−クロロ−N−[(1S*,2S*)−3,3,3−トリフルオロ−2−(3−フルオロフェニル)−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(11)
および
5−クロロ−N−[(1S*,2R*)−3,3,3−トリフルオロ−2−(3−フルオロフェニル)−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(12)
【0259】
【化71】

これらの化合物は、市販の2,2,2−トリフルオロ−1−(3−フルオロ−フェニル)−エタノンから、方法Bを使用する実施例8の化合物とちょうど同じような方法で調製した。収率:ステップ1、66%;ステップ2、47%;ステップ3、1回目のクロマトグラフィー(シリカゲル)、53%の4異性体の混合物;ステップ3、2回目のクロマトグラフィー(キラル分取LC)、6%の11および7%の12。(11) MS (-ESI): m/z 416 [M-H]-. HRMS: C14H12ClF4NO3S2
- H+の計算値, 415.9805; 実測値 (ESI, [M-H]-), 415.9820. (12) MS (-ESI): m/z 416 [M-H]-.
HRMS: C14H12ClF4NO3S2 -
H+の計算値, 415.9805; 実測値 (ESI, [M-H]-), 415.9822. 11および12の絶対立体配置は、実施例4の化合物から類推して割り当てた。詳細には、実施例4のX線データおよびNMRデータを使用して、生物学的データと一致した活性のある立体異性体を指定した。11および12の絶対立体配置は、任意に割り当てたが、生物活性の傾向による裏付けがなされている。
【0260】
(実施例13〜14)
5−クロロ−N−[(1S*,2R*)−2−(4−クロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(13)
および
5−クロロ−N−[(1S*,2S*)−2−(4−クロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド(14)
【0261】
【化72】

この化合物は、市販の1−(4−クロロ−フェニル)−2,2,2−トリフルオロ−エタノンから、方法Bを使用する実施例8の化合物とちょうど同じような方法で調製した。しかし、有機相を蒸発させてステップ3の粗生成物混合物を得ると、沈殿が生成した。沈殿を収集し、実施例8方法Bステップ3に従って、母液をシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけた。所望の生成物の全異性体を含有するクロマトグラフィー画分から得られた材料を、蒸発ステップからの沈殿と合わせ、次いで(実施例8方法Bの方法を使用する)キラル分取HPLCにかけて、表題化合物を得た。収率:ステップ1、69%;ステップ2、46%;ステップ3、1回目のクロマトグラフィー(シリカゲル)および沈殿、73%;ステップ3、2回目のクロマトグラフィー(キラル分取HPLC)、7%の13。7%の14を得るのに、3回目のキラル分取LC分離が必要であった。MS (-ESI): m/z 432 [M-H]-. 13の絶対立体配置は、実施例4の化合物から類推して割り当てた。実施例4のX線データおよびNMRデータを使用して、生物学的データと一致した活性のある立体異性体を指定した。14の絶対立体配置は、任意に割り当てたが、生物活性の傾向による裏付けがなされている。
【0262】
(実施例15)
5−クロロ−N−[(1S,2S)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミドの分析
実施例8方法Cに記載のとおりに調製した5−クロロ−N−[(1S,2S)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミドのサンプルを、粉末X線回折を使用して分析した。
【0263】
以下のパラメータを有するD8 ADVANCE(登録商標)粉末X線回折計(Bruker)を使用して、X線回折データを取得し、X線回折パターンを得た。図1を参照されたい。
【0264】
電圧:40kV、
電流:40.0mA、
走査範囲(2θ):5〜35°、
走査ステップサイズ:0.01°、
合計走査時間:33分、
検出器:VANTEC(商標)検出器、および
散乱防止スリット:1mm。
【0265】
(実施例16)
最も多く存在する形のβアミロイドであるAβ40およびAβ42のAPP(アミロイド前駆タンパク質)からの発生を低下させる化合物の活性を、ヒトアミロイド前駆タンパク質(APP)レポーター構築物であるhAPP−REPNL751を安定して発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞からの、馴化培地の電気化学発光(ECL)アッセイで測定した(Sughir,R.ら、J.Biolog.Chem(1992年)第267巻:25602〜25608頁)。Aβペプチドが、ヒトAPP導入遺伝子を保有する細胞によって細胞培養培地に高レベルで分泌され、この生成をモジュレートする能力があるか化合物を試験した。馴化培地中のAβペプチドを、サンドイッチイムノアッセイによって、MSD ECL検出システムを用いて定量化した。細胞代謝は、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム分子内塩(MTS)キット(Owen試薬の生体内還元性によって細胞のミトコンドリア活性を測定する)を使用して測定した。このアッセイは、以下のプロトコールからなる。
【0266】
A.Aβ低下アッセイ
1.hAPP−REPNL751CHO細胞を96ウェルプレートに播種し、集密度が約60〜70%になるまでインキュベートした。
2.培地を除去し、細胞を洗浄し、新鮮な無血清培地(Ultraculture)を細胞にのせた。
3.化合物を希釈し、次いで細胞培地に加えた。
4.細胞を化合物と共に、指示された時間インキュベートした。
5.ストレプトアビジンでコートしたMeso Scale Discover(MSD)プレート(MSD標準MULTI−ARRAY(登録商標)96プレート、カタログ番号P11SA−1)をTTBS(トリス緩衝生理食塩水、TWEEN(登録商標)20試薬)で3回洗浄した。
6.20μLの馴化培地を細胞から取り出し、TTBSで予洗したMSDプレートに加えた。
7.合成Aβ40およびAβ42の検量線希釈液を調製し、MSDプレートに加えた。
8.1%MSD Blocker A中に試薬混合物を調製した(適切な濃度のビオチン標識6E10抗体、Aβ40、Aβ42の検出抗体、およびMSDルテニウム標識タグ抗体)。
9.20μLの試薬混合物をサンプルプレートに分配した。
10.プレートを振盪しながら4℃で終夜インキュベートした。
11.プレートをTTBSで3回洗浄した。
12.ウェルあたり150μLの読取り用緩衝液を加えた(MSD(登録商標)Read Buffer T、カタログ番号R92TC−2、蒸留水で1倍にしたもの)。
13.プレートを2時間以内にMSD(登録商標)プレートリーダーで読み取った。
【0267】
B.MTSアッセイ
1.細胞を96ウェルプレートに播種し、集密度が約60〜70%になるまでインキュベートした。
2.培地を除去し、細胞を洗浄し、新鮮な無血清培地(Ultraculture)を細胞にのせた。
3.化合物を希釈し、次いで細胞培地に加えた。
4.細胞を化合物と共に、指示された時間インキュベートした。
5.ロボットを使用し、細胞から馴化培地を取り出し、TTBSで予洗したMSD(登録商標)プレート(上記#6を参照されたい)に移した。
6.細胞をリン酸緩衝溶液(PBS)中で2回洗浄し、MTS溶液を細胞上に播いた。1時間後、それをプレートリーダーによって560nmで読み取って、代謝活性を求めた。
【0268】
C.結果の分析
アッセイは、検量線の回帰係数、妥当なシグナルノイズ比、検量線範囲内にあるサンプルシグナルなどを含めた、特定の性能判定基準に基づき可否を決定した。詳細なパラメータは、アッセイの実施前に各組織型について確立し、完全な分析手順に含めた。
【0269】
両方のアッセイ(MTSおよびMSD(登録商標)ELISA)からのプレートデータをMicrosoft EXCEL(登録商標)スプレッドシートに移して、毒性、および化合物によって引き起こされた阻害があるかを判定した。Aβの検量線は、重み1/yのLSW(商標)ツールバーヒルスロープモデル42(ヒルスロープ、すなわち、a〜d;y=(a−d)/(1+(x/c)^b)+dを有する一般のシグモイド曲線)を使用して作成した。阻害データは、上述のように作成した検量線を利用して(たとえば、検量線を利用して生の値から絶対Aβ値を逆算する)、生の値を絶対Aβ値に翻訳/変換した後、LSW(商標)ツールバーヒルスロープモデル68(HillスロープおよびBmax〜0;y=Bmax*(1−(x^n/(K^n+x^n)))を有するリガンド−受容体結合/シグモイド)を使用して、媒体処理したウェルのAβ値(値はすべてバックグラウンドを差し引いてある)の平均に対するパーセントとして示した。アッセイ性能を検証するための内蔵されている制御装置をチェックして、アミロイドがアッセイの線形の検出範囲内にあること、細胞の発現が正しいこと、およびMSDそれ自体が品質管理(QC)基準に従って機能していたことを確認した。
【0270】
D.応答の測定
阻害%>50%をこのアッセイの陽性応答または興味深い結果とみなすことができる。EC50測定を実施した。
【0271】
E.βアミロイドアッセイ基準化合物
5−クロロ−N−[(1S,2R)−2−エチル−4,4,4−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)ブチル]チオフェン−2−スルホンアミド(EC50Aβ40=6nM、EC50Aβ42=5nM、国際公開第2004/092155号、データは示さない)。これらのデータは、実施例15を使用して作成した。
【0272】
(2S)−2−ヒドロキシ−3−メチル−N−((1S)−1−メチル−2−{[(1S)−3−メチル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン−1−イル]アミノ}−2−オキソエチル)ブタンアミド(EC50Aβ40=109nM、EC50Aβ42=79nM、国際公開第2002/47671号、データは示さない)。これらのデータは、実施例15を使用して作成した。
【0273】
γ−セクレターゼ酵素を標的とすることによりβアミロイド合成を低下させる化合物の懸念は、この酵素がAPP以外の他の基質、特にNotch基質の切断にも関与することである。Notch切断の阻害は、T細胞分化の不全および消化管の病変を含めて、いくつもの副作用を引き起こすことがわかっている。したがって、胃腸の副作用を回避するために、Notchに優先してAPPを切断する選択性が要望される。Notchの切断における化合物の活性は、全細胞Notch機能アッセイで測定することができる。これは、化合物がNotchのS3(γセクレターゼ様)プロセシングに影響を及ぼすかを判定するアッセイである。このアッセイでは、レポーター遺伝子のトランス活性化の低下によって明らかになるS3切断活性阻害の測定が可能になる。詳細には、常時活性型のNotch(細胞外ドメインの欠失を有する)が、γ−セクレターゼによって切断されると、Notch細胞内ドメイン(NICD)を放出し、これが、HESプロモーターによって統御される可溶性アルカリホスファターゼ(SEAP)遺伝子をトランス活性化する。そこで、SEAPトランス活性化を発光アッセイによって検出する。このアッセイは、以下のプロトコールからなる。
【0274】
材料および方法
(i)材料:P8H6誘導性安定発現株は、Tetリプレッサー、Notch(pZX1)、およびHES1−SEAP(pZX2)レポーター構築物を安定して発現するT−REX(商標)CHO−K1由来のものとした。Wallac 1450 Victor(商標)発光カウンターを使用して、発光シグナルを測定した。他のすべての材料および試薬は、入手可能な最高品質のものとし、すべて市販品として供給されたものであった。
【0275】
(ii)構築物の説明
pZX1:pcDNA5/TOベクターのHindIII/XhoI部位でクローン化された、細胞外ドメインが除去されているマウスNotch1:細菌ではアンピシリン抵抗性、細胞ではハイグロマイシン抵抗性。
pZX2:pcDNA3.1のNotI/ApaI部位でクローン化され、CMVプロモーターが欠失している、マウスHES1プロモーターとレポーター遺伝子SEAP。
【0276】
(iii)手順
1.10%のFBS(低テトラサイクリン)、2mMのL−グルタミン、1mg/mLのハイグロマイシン、1mg/mLのGENETICIN(登録商標)抗生物質、10μg/mLのブラストサイジン、および1%のペニシリン−ストレプトマイシンを含有し、最終誘導濃度0.2μg/mLでドキシサイクリンを補充したHam’s F12完全増殖培地においてP8H6細胞を増殖させた。細胞を96ウェル組織培養プレートに8000/ウェルで播種した。
【0277】
2.試験化合物の入った0.2%DMSO/25mM HEPES緩衝液を、20μM、6.7μM、2.2μM、741nM、247nM、82nM、27nM、9nM、および3nMの最終作用濃度で希釈した。次いで、希釈した化合物を、96ウェル組織培養プレートのP8H6細胞に加えた。媒体サンプルについては、同体積の0.2%DMSO/25mM HEPES緩衝液を加えた。
【0278】
3.細胞を37℃、5%COで48時間インキュベートした。
【0279】
4.ClontechのGREATESCAPE(商標)SEAP化学発光検出キットを製造者の説明書に従って使用して、馴化培地中のSEAPレベルを評価した。簡潔に述べると、15μLの馴化培地を45μLの希釈緩衝液と混合し、65℃で45分間インキュベートした。冷却した後、アッセイ緩衝液を加え、サンプルをCSPD(登録商標)基質と共にインキュベートした。
【0280】
5.Wallac 1450 VICTOR(商標)発光カウンターで発光を測定した。
【0281】
結果の分析
EC50は、Notchによって誘導されたSEAPレベルを最大応答の50%に減少させることが推定される化合物濃度とした。所与のアッセイからのEC50は、以下の判定基準を満たした場合にのみ、平均に使用することができる。
1.60%を超えるNotch活性%を示すより少ないアッセイ用量が存在する(より少ない用量を考慮外にする)。
2.30%より少ないNotch活性%を示し、最大阻害に到達する、より多いアッセイ用量が存在する(たとえば、所与の化合物が、いくつかの用量にわたり80%阻害(Notch活性%は約20%)を実現することができ、したがって20%が最大阻害とみなされることになる)(より多い用量を考慮外にする)。
【0282】
データをMicrosoft EXCEL(登録商標)形式で分析した。EC50は、B0〜nsbモデル(モデル59)のシグモイド阻害を使用して、LSWによって算出した。各アッセイプレートは、基準化合物5−クロロ−N−[(1S,2R)−2−エチル−4,4,4−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)ブチル]チオフェン−2−スルホンアミドの用量反応曲線を含んでいた。この化合物については、国際公開第2004/092155号で論述されている。以下のデータは、その広報に示されていない。アッセイプレートを受け入れるには、この基準化合物のEC50が、150〜350nMの範囲内に含まれなければならない。
【0283】
F.Notchアッセイ基準化合物
5−クロロ−N−[(1S,2R)−2−エチル−4,4,4−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)ブチル]チオフェン−2−スルホンアミド(EC50=225nM)。
(2S)−2−ヒドロキシ−3−メチル−N−((1S)−1−メチル−2−{[(1S)−3−メチル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンズアゼピン−1−イル]アミノ}−2−オキソエチル)ブタンアミド(EC50=68nM)。この化合物は、国際公開第2002/47671号で論述されているが、このデータは示されていない。
【0284】
式(I)の化合物のβアミロイド阻害活性は、MSD ECLアッセイを使用して測定した。Notchプロセシングの阻害は、安定なトランスフェクションレポーターアッセイを使用して測定した。以下の表1を参照されたい。
【0285】
【表1】

【0286】
本明細書で引用したすべての公報は、参照により本明細書に援用される。本発明を特定の実施形態に即して説明してきたが、本発明の真意から逸脱することなく変更がなされてもよいことは理解されよう。そのような変更は、添付の請求項の範囲内に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造の化合物
【化1】

[式中、
は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールであり、
は、ハロアルキルまたは置換ハロアルキルであり、
は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールである]
または薬学的に許容できるその塩、プロドラッグ、互変異性体、もしくは代謝産物。
【請求項2】
が、6〜14員不飽和炭素環または置換6〜14員不飽和炭素環である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、以下の構造である、請求項1または2に記載の化合物。
【化2】

[式中、
、R、R10、R11およびR12は、H、ハロゲン、C〜Cアルコキシ、置換C〜Cアルコキシ、NO、C〜Cアルキル、置換C〜Cアルキル、CN、C〜Cアルキルカルボニル、置換C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cアルキルカルボキシ、置換C〜Cアルキルカルボキシ、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CONH(置換C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、CON(置換C〜Cアルキル)、S(C〜Cアルキル)、S(置換C〜Cアルキル)、SO(C〜Cアルキル)、SO(置換C〜Cアルキル)、SO(C〜Cアルキル)、SO(置換C〜Cアルキル)、NHSO(C〜Cアルキル)、およびNHSO(置換C〜Cアルキル)からなる群からそれぞれ独立に選択され、または
とR、またはRとR10、またはR11とR12、またはR10とR11の1つまたは複数が縮合して、
(i)3〜8個の炭素原子を含んでいる飽和した環、
(ii)5〜8個の炭素原子を含んでいる不飽和の環、または
(iii)環の主鎖にO、NおよびSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含んでいる複素環式の環
を形成しており、環(i)〜(iii)は、C〜Cアルキル、置換C〜Cアルキル、ハロゲン、またはCNを含めた1〜3個の置換基で置換されていてもよい。]
【請求項4】
がフェニルまたは置換フェニルである、請求項1から3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
がハロゲン化フェニルである、請求項1から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
が4−クロロフェニルである、請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
が、その主鎖に0〜1個のOまたはS原子と0〜4個のN原子を有する不飽和の5または6員環であり、前記環は、前記環の主鎖に少なくとも1個のヘテロ原子を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
が、以下の構造である、請求項7に記載の化合物。
【化3】

[式中、
13は、H、ハロゲン、およびCFからなる群から選択され、
W、YおよびZは、C、CR14、およびNからなる群からそれぞれ独立に選択され、W、YまたはZの少なくとも1つはCであり、
Xは、O、S、SO、およびNR15からなる群から選択され、
14は、H、ハロゲン、C〜Cアルキル、および置換C〜Cアルキルからなる群から選択され、
15は、H、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、SO(C〜Cアルキル)、SO(置換C〜Cアルキル)、SOアリール、SO置換アリール、CO(C〜Cアルキル)、CO(置換C〜Cアルキル)、COアリール、およびCO置換アリールからなる群から選択される。]
【請求項9】
がチオフェンまたは置換チオフェンである、請求項7または8に記載の化合物。
【請求項10】
がハロゲン化チオフェンである、請求項7から9のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
が2−クロロ−チオフェン−5−イルである、請求項7から10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
スルホンアミド窒素原子を有する炭素の箇所でS立体配置を有する、請求項1から11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
が−(CHX’CHX’であり、
mおよびnは、m+n=2であるという条件で、それぞれ独立に0〜2であり、
pおよびqは、p+q=3であるという条件で、それぞれ独立に0〜3であり、
zは0〜12であり、
X’はハロゲンであり、
但し、nとqは同時に0にならない、請求項1から12のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
がCFである、請求項1から13のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
zが0〜5である、請求項1から14のいずれかに記載の化合物。
【請求項16】
が−(CH(RX’CH(RX’であり、
y、mおよびnは、y+m+n=2という条件で、それぞれ独立に0〜2であり、
o、pおよびqは、o+p+q=3という条件で、それぞれ独立に0〜3であり、
zは0〜12であり、
但し、nとqは同時に0にならず、
X’はハロゲンであり、
は、ハロゲン、CN、OH、NO、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜Cアルケニル、置換C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜C置換アルキニル、アミノ、アリール、置換アリール、複素環、置換複素環、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C〜Cアルコキシ、アリールオキシ、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cアルキルカルボキシ、およびアリールチオである、請求項1から12のいずれかに記載の化合物。
【請求項17】
が、少なくとも1個のフッ素原子を含む、前記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項18】
が(C〜Cアルキル)CFである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
がアリールまたは置換アリールである、請求項1から18のいずれかに記載の化合物。
【請求項20】
がフェニルまたは置換フェニルである、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
が、1個または複数のハロゲン原子で置換されているフェニルである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
が3,5−ジフルオロ−フェニル、4−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、または4−クロロフェニルである、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
およびRに結合している炭素原子のところでR立体配置を有する、請求項1から22のいずれかに記載の化合物。
【請求項24】
およびRに結合している炭素原子のところでS立体配置を有する、請求項1から22のいずれかに記載の化合物。
【請求項25】
が置換フェニルまたは置換チオフェンであり、
がCFであり、
がフェニル、または1個または複数のハロゲン原子で置換されているフェニルであり、
但し、スルホンアミド窒素原子に結合している炭素原子はS立体配置を有し、
またRおよびRに結合している炭素原子はR立体配置を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
5−クロロ−N−[2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
2θ=約6.4°±0.3°にピークを含むX線回折ピークパターンを有する、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
X線回折ピークパターンが、2θ=約14.8°±0.3°、16.1°±0.3°、18.3°±0.3°、19.1°±0.3°、19.5°±0.3°、22.1°±0.3°、22.6°±0.3°、または24.3°±0.3°に1本または複数のピークをさらに含む、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
5−クロロ−N−[3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミド、5−クロロ−N−[(1S,2R)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミド、5−クロロ−N−[(1S,2S)−3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシメチル−2−フェニルプロピル]チオフェン−2−スルホンアミド、4−クロロ−N−[(1S,2R)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)−2−フェニルプロピル]ベンゼンスルホンアミド、5−クロロ−N−[(1S,2S)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド、5−クロロ−N−[(1R,2R)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド、5−クロロ−N−[(1S,2R)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド、5−クロロ−N−[(1S,2R)−3,3,3−トリフルオロ−2−(4−フルオロフェニル)−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド、5−クロロ−N−[(1S,2S)−3,3,3−トリフルオロ−2−(4−フルオロフェニル)−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド、5−クロロ−N−[(1S,2S)−3,3,3−トリフルオロ−2−(3−フルオロフェニル)−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド、5−クロロ−N−[(1S,2R)−3,3,3−トリフルオロ−2−(3−フルオロフェニル)−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド、5−クロロ−N−[(1S,2R)−2−(4−クロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド、5−クロロ−N−[(1S,2S)−2−(4−クロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]チオフェン−2−スルホンアミド、または薬学的に許容できるこれらの塩、プロドラッグ、互変異性体、もしくは代謝産物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項30】
薬学的に許容できる塩が塩基の塩である、請求項1から29のいずれかに記載の化合物。
【請求項31】
前記塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
請求項1から31のいずれかに記載の化合物と、生理的に適合性のある担体とを含む医薬組成物。
【請求項33】
請求項1から31のいずれかに記載の化合物のプロドラッグと、生理的に適合性のある担体とを含む医薬組成物。
【請求項34】
対象においてβアミロイド生成を阻害する方法であって、請求項1から31のいずれかに記載の化合物、または請求項32または33に記載の医薬組成物を送達することを含む方法。
【請求項35】
前記化合物を、経口的に、注射によって、吸入によって、経皮的に、また坐剤として送達する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
対象において、アルツハイマー病、アミロイド血管症、脳アミロイド血管症、全身性アミロイドーシス、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血、封入体筋炎、軽度認知障害(MCI)、およびダウン症候群からなる群から選択される疾患を治療する方法であって、前記対象に、請求項1から31のいずれかに記載の化合物、または請求項32または33に記載の組成物を、前記疾患の症状または進行を緩和するのに十分な量で投与することを含む方法。
【請求項37】
請求項32または33に記載の医薬組成物を含む容器を含む薬剤キット。
【請求項38】
請求項1から29のいずれかに記載の化合物の調製方法であって、(1)、すなわち
1(a)ハロゲン化アセトフェノン、第1の塩基、およびホスホノ酢酸トリアルキルを反応させて、α,β−不飽和エステルを生成するステップ、
1(b)前記α,β−不飽和エステルを還元して、飽和エステルとするステップ、
1(c)前記飽和エステルをエノラートに変換するステップ、
1(d)前記エノラートをアジド−エステルに変換するステップ、
1(e)前記アジド−エステルを還元して、アミノ−エステルとするステップ、
1(f)前記アミノ−エステルをスルホニル化して、スルホンアミド−エステルとするステップ、および
1(g)前記スルホンアミド−エステルを還元するステップ
を含み、または前記方法は(2)、すなわち
2(a)α,β−不飽和エステルを加水分解して、α,β−不飽和カルボン酸とするステップ、
2(b)前記α,β−不飽和カルボン酸を混合無水物に変換するステップ、
2(c)前記混合無水物を、キラル補助基を含む求核剤と反応させるステップ、
2(d)ステップ(c)の生成物を還元するステップ、
2(e)ステップ(d)の生成物を塩基と反応させるステップ、
2(f)ステップ(e)の生成物をアジド−イミドに変換するステップ、
2(g)前記アジド−イミドをアミノ−イミドに還元するステップ、
2(h)前記アミノ−イミドをスルホニル化して、スルホンアミド−イミドとするステップ、および
2(i)前記スルホンアミド−イミドを還元するステップ
を含み、または前記方法は(3)、すなわち
3(a)ハロゲン化アセトフェノンをα,β−不飽和カルボン酸に変換するステップ、
3(b)前記α,β−不飽和カルボン酸を水素化して、飽和カルボン酸とするステップ、
3(c)前記カルボン酸を混合無水物に変換するステップ、
3(d)前記混合無水物を、キラル補助基を含む求核剤と反応させるステップ、
3(e)ステップ(d)の生成物を塩基と反応させるステップ、
3(f)ステップ(e)の生成物をアジド−イミドに変換するステップ、
3(g)前記アジド−イミドをアミノ−イミドに還元するステップ、
3(h)前記アミノ−イミドをスルホニル化して、スルホンアミド−イミドとするステップ、および
3(i)前記スルホンアミド−イミドを還元するステップ
を含み、または前記方法は(4)、すなわち
4(a)ハロゲン化アセトフェノン、イソシアノ酢酸アルキル、および塩基を反応させるステップ、
4(b)ステップ(a)の生成物をメタノール中にて水素化ホウ素ナトリウムで還元するステップ、
4(c)ステップ(b)の生成物を水素化ホウ素リチウムと反応させるステップ、
4(d)ステップ(c)の生成物を酸で加水分解して、アミンとするステップ、および
4(e)前記アミンをスルホニル化するステップ
を含み、または前記方法は(5)、すなわち
5(a)α−β−不飽和エステルを加水分解して、α,β−不飽和カルボン酸とするステップ、
5(b)前記カルボン酸を混合無水物に変換するステップ、
5(c)前記混合無水物を、キラル補助基を含む求核剤と反応させるステップ、
5(d)ステップ(c)の生成物を還元するステップ、
5(e)ステップ(d)の生成物を塩基と反応させるステップ、
5(f)ステップ(e)の生成物をアジド−イミドに変換するステップ、
5(g)前記アジド−イミドを還元して、アジド−アルコールとするステップ、
5(h)前記アジド−アルコールを還元して、アミノ−アルコールとするステップ、および
5(i)前記アミノ−アルコールをスルホニル化するステップ
を含む方法。
【請求項39】
ステップ1(a)において、前記ホスホノ酢酸トリアルキルが(RO)P(O)CHCOであり、RがC〜Cアルキルおよび置換アルキルであり、RがC〜Cアルキル、置換C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、置換C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜C置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ステップ1(c)において、リチウムアミド塩基を使用して反応を実施する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記リチウムアミド塩基がリチウムジイソプロピルアミドである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ステップ1(a)において、前記第1の塩基が水素化ナトリウムまたはテトラメチルグアニジンである、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
ステップ1(e)において、前記アジド−エステルを接触水素化によって還元する、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
ステップ1(g)において、水素化ホウ素リチウムを使用して前記スルホンアミド−エステルを還元する、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
ステップ2(d)を接触水素化によって実施する、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
ステップ2(g)において、前記アジド−イミドを接触水素化によって還元する、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
ステップ1(g)またはステップ2(i)において、水素化ホウ素リチウムを使用して前記スルホンアミド−イミドまたはスルホンアミド−エステルを還元する、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
酢酸ナトリウムおよび無水酢酸を使用してステップ3(a)を実施する、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
ステップ1(b)またはステップ3(b)を接触水素化によって実施する、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
ステップ4(a)において、前記イソシアノ酢酸アルキルがCNCHCO17であり、R17がC〜Cアルキルまたは置換C〜Cアルキルである、請求項38に記載の方法。
【請求項51】
ステップ4(d)において、前記アミンが2種のジアステレオ異性体のラセミ混合物として存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項52】
ステップ5(g)において、水素化ホウ素リチウムを使用して前記アジド−アルコールを調製する、請求項38に記載の方法。
【請求項53】
ステップ5(h)において、接触水素化を使用して前記アミノ−アルコールを調製する、請求項38に記載の方法。
【請求項54】
ステップ1(d)、2(f)、3(f)、または5(f)のいずれかにおいて、アジド転移剤を使用して前記アジド−エステルまたはアジド−イミドを調製する、請求項38に記載の方法。
【請求項55】
前記アジド転移剤がトリイソプロピルベンゼンスルホニルアジドである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
ステップ1(f)、ステップ2(g)、ステップ3(g)、ステップ4(e)、またはステップ5(i)において、塩化スルホニルまたはスルホン酸無水物を使用して前記スルホニル化を実施する、請求項38に記載の方法。
【請求項57】
キラル分取液体クロマトグラフィーを使用して式(I)の化合物を単離する、請求項38から56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
ステップ2(b)またはステップ5(b)において、塩化トリメチルアセチルおよびトリエチルアミンを使用して前記混合無水物を調製する、請求項38に記載の方法。
【請求項59】
ステップ2(c)またはステップ3(d)において、キラル補助基を含む前記求核剤がオキサゾリジノンである、請求項38に記載の方法。
【請求項60】
前記オキサゾリジノンが次式
【化4】

である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
ステップ5(d)を接触水素化によって実施する、請求項38に記載の方法。
【請求項62】
ステップ2(e)、3(e)、または5(e)のいずれかにおいて、前記塩基がカリウムヘキサメチルジシラジドである、請求項38に記載の方法。
【請求項63】
ステップ2(b)において、前記混合無水物が以下の構造である、請求項38に記載の方法。
【化5】

[式中、R16は、C〜Cアルキルまたは置換C〜Cアルキルである。]
【請求項64】
ステップ3(c)において、前記混合無水物が以下の構造である、請求項38に記載の方法。
【化6】

[式中、R16は、C〜Cアルキルまたは置換C〜Cアルキルである。]
【請求項65】
式(1)の化合物において、Rがトリフルオロメチルである、請求項38から66のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
請求項1から31のいずれかに記載の化合物、または請求項32または33に記載の医薬組成物の、医薬の調製での使用。
【請求項67】
対象においてβアミロイド生成を阻害する医薬を調製する際の、請求項1から31のいずれかに記載の化合物、または請求項32または33に記載の医薬組成物の使用。
【請求項68】
対象において、アルツハイマー病、アミロイド血管症、脳アミロイド血管症、全身性アミロイドーシス、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血、封入体筋炎、軽度認知障害(MCI)、およびダウン症候群からなる群から選択される疾患を治療する医薬を調製する際の、請求項1から31のいずれかに記載の化合物、または請求項32または33に記載の医薬組成物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−533723(P2010−533723A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517095(P2010−517095)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/069942
【国際公開番号】WO2009/012205
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】