説明

がん免疫抑制解除剤、がん免疫治療用組成物及びがん免疫治療方法

【課題】がん免疫抑制状態を克服できる薬剤の提供と、この薬剤を用いたがん免疫治療用組成物及びがん免疫治療方法の提供。
【解決手段】ベツリンを有効成分として含有する、がん免疫抑制解除剤。TGF−βにより抑制された細胞傷害活性を回復させるため、またはPGE2により抑制された細胞傷害活性を回復させるために用いられる。がん免疫治療剤と一緒に用いることができる。このがん免疫抑制解除剤を投与する、NK細胞またはT細胞活性を、それを要する患者において増強する方法。がん免疫抑制解除に有効量のベツリン、がん免疫治療剤および薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤を含むがん免疫治療用組成物。がん免疫治療剤は、免疫細胞、ワクチン、免疫調節剤、生体応答調節剤、抗体、遺伝子から選択される少なくとも1種である。がんを罹患した患者、がんを罹患した可能性がある患者、またはがんを罹患した疑いがある患者に、この組成物を投与する、がん免疫治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん免疫抑制解除剤、がん免疫治療用組成物、及びこのがん免疫抑制解除剤またはがん免疫治療用組成物を用いるがん免疫治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんの免疫療法は、近年、精力的に研究が進められ、臨床応用されつつあるが、血液がんに対する抗体医薬を除いて、これまでのところ十分な治療成績は得られていない。この主な原因の一つとして、担がん状態で認められるT細胞やnatural killer (NK)細胞の抗腫瘍活性の低下が指摘されている。このことから、より有効ながん免疫療法を確立するためには、この免疫抑制機構を解明し、克服することが重要であると考えられている。
【0003】
これまでの多くの研究から、この免疫抑制に関与する因子としては、Transforming growth factor (TGF)-βやprostaglandin E2 (PGE2)などが明らかにされている。このうち、TGF-βは、T細胞の増殖抑制やNK細胞の細胞傷害活性の阻害、また、制御性T細胞の誘導によるT細胞やNK細胞の活性制御など、抗腫瘍免疫応答の抑制において最も重要な因子として機能している。一方、PGE2はNK細胞の細胞傷害活性を抑制すると共に、細胞性免疫から液性免疫への移行を促進させることで抗腫瘍免疫応答の抑制に関与している。
【0004】
これらのことから、TGF-βについては、抗TGF-β中和抗体の開発(特許文献1)やTGF-βのシグナル伝達系に対する阻害剤の開発(非特許文献1)が盛んになされている。しかしながら、現在までに医薬品として認可されたものはなく、さらに有効性の高い薬剤の開発が望まれている。一方、PGE2については、シクロオキシゲナーゼの阻害に基づくその産生抑制については報告(非特許文献2)がなされているが、PGE2の免疫抑制作用を指標とした阻害剤の研究開発については、発明者が知る限りにおいて報告がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−500947号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Targeting the transforming growth factor-beta signaling pathway in human cancer. Nagaraj NS, Datta PK. Expert Opin Investig Drugs. 2010 Jan;19(1):77-91.
【非特許文献2】The search for new COX-2 inhibitors: a review of 2002-2008 patents.Ramalho TC, Rocha MV, da Cunha EF, Freitas MP.Expert Opin Ther Pat. 2009 Sep;19(9):1193-228.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
がんの免疫療法は、手術、放射線、抗がん剤療法につぐ第4の治療法として期待され、研究開発、臨床応用が進められている。しかし、前述のように、これまでの臨床成績では、十分な有効性が得られるまでには至っていない。この主な原因の一つは、担がん状態で認められる抗腫瘍免疫応答の減弱のためであると考えられている。したがって、がんの免疫療法において、十分に満足できる治療効果を得るためには、がん免疫抑制状態を克服できる薬剤の研究開発は不可欠である。
【0008】
そこで本発明の目的は、がん免疫抑制状態を克服できる薬剤の提供と、この薬剤を用いたがん免疫治療用組成物及びがん免疫治療方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記目的を達成するために、種々の化合物の中から、最も重要な免疫抑制因子であるTGF-βの抑制作用を解除できるだけでなく、PGE2の抑制作用をも阻止できる活性を有する化合物をスクリーニングした。その結果、ベツリンが、TGF-βの抑制作用を解除でき、かつPGE2の抑制作用をも阻止できる活性を有することを見出して本発明を完成させた。
【0010】
本発明は以下のとおりである。
[1]
ベツリンを有効成分として含有する、がん免疫抑制解除剤。
[2]
TGF−βにより抑制された細胞傷害活性を回復させるために用いられる[1]に記載のがん免疫抑制解除剤。
[3]
PGE2により抑制された細胞傷害活性を回復させるために用いられる[1]に記載のがん免疫抑制解除剤。
[4]
がん免疫治療剤と一緒に用いるための[1]〜[3]のいずれかに記載のがん免疫抑制解除剤。
[5]
がん免疫治療剤が、免疫細胞、ワクチン、免疫調節剤、生体応答調節剤、抗体、遺伝子から選択される少なくとも1種である[4]に記載のがん免疫抑制解除剤。
[6]
がん免疫抑制解除に有効量のベツリン、がん免疫治療剤および薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤を含むがん免疫治療用組成物。
[7]
前記がん免疫治療剤が、免疫細胞、ワクチン、免疫調節剤、生体応答調節剤、抗体、遺伝子から選択される少なくとも1種である、[6]に記載の組成物。
[8]
前記免疫細胞が、活性化させた腫瘍組織浸潤リンパ球、またはがん特異的抗原ペプチド若しくは破壊したがん細胞とともに培養し、かつ当該がんに対する免疫誘導能力を増強させた樹状細胞から選択される、[7]に記載の組成物。
[9]
前記ワクチンは、がん細胞そのものを破壊したもの、がん細胞を増殖しないように処理した細胞、またはがん特異的抗原ペプチドから選択される、[7]に記載の組成物。
[10]
前記免疫調節剤が、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−18、IL−21、IL−33、TNF−α、TNF−β、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、またはToll様受容体のアゴニストから選択される、[7]に記載の組成物。
[11]
前記生体応答調節剤が、BCG、OK-432、PSK、レンチナン、べスタチン、シゾフィラン、レバミゾール、和漢薬、または漢方薬から選択される、[7]に記載の組成物。
[12]
前記抗体が、癌細胞で発現する癌細胞表面分子に対するモノクローナル抗体であって、抗体依存性細胞傷害性活性よりがん細胞を死滅させることができる抗体の中から選択される、[7]に記載の組成物。
[13]
前記遺伝子が、腫瘍組織浸潤リンパ球への導入により当該細胞を活性化させることができるIL-2などの遺伝子、癌細胞への導入によりその翻訳産物が各種免疫細胞を活性化させることができるIL-2などの遺伝子、あるいはがん特異的抗原の遺伝子であって、がん患者の体内への接種によりその抗原に対する抗原特異的免疫反応を惹起できる遺伝子の中から選択される、[7]に記載の組成物。
[14]
NK細胞またはT細胞活性を、それを要する患者において増強する方法であって、前記患者に[1]〜[5]のいずれかに記載のがん免疫抑制解除剤を投与する、方法。
[15]
がんを罹患した患者、がんを罹患した可能性がある患者、またはがんを罹患した疑いがある患者に、[6]〜[13]に記載の組成物を投与することを含む、がん免疫治療方法。
[16]
前記がんを罹患した患者が癌、別の増殖性障害、感染性疾患または免疫障害を患っている、[15]に記載の方法。
[17]
前記患者が扁平上皮癌、白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、慢性または急性骨髄性白血病、前骨髄球性白血病、線維肉腫、横紋筋肉腫; 黒色腫、精上皮腫、奇形癌種、神経芽細胞腫、神経膠腫、星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、神経鞘腫;線維肉腫、横紋筋肉腫(rhabdomyosarcoma)、骨肉腫、黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、奇形癌種、膀胱、乳、直腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、頚部、甲状腺もしくは皮膚の他の癌腫、リンパ球系統の他の造血器腫瘍、骨髄系統の他の造血器腫瘍、間葉起源の他の腫瘍、中枢または末梢神経系の他の腫瘍、または間葉起源の他の腫瘍を患っている、[16]に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、がん免疫抑制状態を克服できる薬剤と、この薬剤を用いたがん免疫治療用組成物及びがん免疫治療方法を提供できる。本発明で用いるベツリンは、安全性が既に確認されている化合物であり、かつ最も重要な免疫抑制因子であるTGF-βの抑制作用を解除できるだけでなく、PGE2の抑制作用をも阻止できる活性を有する化合物であることから、極めて高い有用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】TGF-β(A)およびPGE2(B)の抑制作用に対するベツリンの効果を示す。
【図2】TGF-βにより抑制された各種免疫賦活剤の細胞傷害活性に対するベツリンの有効性 を示す。
【図3】TGF-βの抑制作用に対するベツリン関連化合物の効果を示す。
【図4】細胞傷害活性に対するベツリンの効果を示す。
【図5】がん転移巣の形成抑制に対するベツリンの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<がん免疫抑制解除剤>
本発明は、ベツリンを有効成分として含有する、がん免疫抑制解除剤に関する。本発明のがん免疫抑制解除剤は、TGF−βにより抑制された細胞傷害活性を除去するために用いられるばかりではなく、PGE2により抑制された細胞傷害活性を除去するためにも用いることができる。
【0014】
実施例においても詳述するが、ベツリンはTGF-βおよびPGE2の細胞傷害抑制活性に対する解除作用を有する。この解除作用は、以下の実験により明らかになった。免疫賦活剤であるPoly(I:C)(30μg/ml)により亢進した細胞傷害活性は、TGF-β(0.5ng/ml)により強く抑制されたが、予めベツリン(2.5-10μM)を添加しておくことで抑制作用は濃度に依存して解除され、10μMではほぼ完全に解除された。また、Poly(I:C)以外の免疫賦活剤として、Pam3CSK4(1μg/ml)、Lipid A(0.1μg/ml)、Loxoribine(0.1mM)、あるいはCpG B(0.1μM)を用いた場合においても、ベツリンはTGF-β(0.5ng/ml)により強く抑制された細胞傷害活性をほぼ完全に解除した。さらに、ベツリンはPGE2 (2.5ng/ml)による細胞傷害活性の抑制に対しても同様の解除効果を示した。
【0015】
ベツリンは天然由来のルパン骨格を特徴とするトリテルペンの一種であり、白樺の樹皮に比較的多く含まれる成分の1つであり、市販されている。ベツリンの安全性は既に確立されており、ラットへの腹腔内投与あるいは犬への皮下投与では、最大300mg/kgの用量での28日間の繰り返し投与においても毒性は認められないことが報告されている(A preliminary pharmacokinetic study of betulin, the main pentacyclic triterpene from extract of outer bark of birch (Betulae alba cortex). Jager S, Laszczyk MN, Scheffler A. Molecules. 2008 Dec 18;13(12):3224-35.)。また、培養細胞を用いた研究においては、ベツリンは癌化した細胞に比較して正常の細胞には細胞毒性が低いこと(Betulin elicits anti-cancer effects in tumour primary cultures and cell lines in vitro. Rzeski W, Stepulak A, Szymanski M, Juszczak M, Grabarska A, Sifringer M, Kaczor J, Kandefer-Szerszen M. Basic Clin Pharmacol Toxicol. 2009 Dec;105(6):425-32. Epub 2009 Oct 12.)、さらに、カルシウム、カドミウム、あるいはエタノールによる肝細胞毒性に対して保護効果を有することも示されている(Protection of betulin against cadmium-induced apoptosis in hepatoma cells. Oh SH, Choi JE, Lim SC. Toxicology. 2006 Mar 1;220(1):1-12. Epub 2006 Jan 24.;Protective effects of triterpene compounds against the cytotoxicity of cadmium in HepG2 cells. Miura N, Matsumoto Y, Miyairi S, Nishiyama S, Naganuma A. Mol Pharmacol. 1999 Dec;56(6):1324-8.;Protective effects of betulin and betulinic acid against ethanol-induced cytotoxicity in HepG2 cells. Szuster-Ciesielska A, Kandefer-Szerszen M. Pharmacol Rep. 2005 Sep-Oct;57(5):588-95.)。
【0016】
本発明者らは、約700種類の化合物について、上記TGF-βおよびPGE2の細胞傷害抑制活性に対する解除作用を有する化合物をスクリーニングした。その結果、ベツリンが、TGF-βおよびPGE2の両方の細胞傷害抑制活性に対する解除作用を有する化合物であること見出した。
【0017】
さらに、本発明者らは、ベツリン(17位がヒドロキシメチル基)と化学構造が極めて類似した、ベツリン酸(17位がカルボキシル基)、ルペオール(17位がメチル基)、およびベツリンジアセテート(3および28位が酢酸エステル化)についても比較検討した。その結果、ベツリンのみが有効性を示した。
【0018】
本発明のベツリンを有効成分として含有するがん免疫抑制解除剤は、がん免疫治療薬と一緒に用いると、ベツリンが有するTGF-βおよびPGE2の細胞傷害抑制活性に対する解除作用のために、がん免疫治療薬が本来有する抗腫瘍活性が、TGF-βおよびPGE2の細胞傷害抑制活性に邪魔されることなく発揮され、優れた治療効果が得られることが期待できる。がん免疫治療薬は、例えば、患者自身の免疫細胞、ワクチン、免疫調節剤、生体応答調節剤、抗体、遺伝子から選択される少なくとも1種であることができる。
【0019】
<がん免疫治療用組成物>
本発明は、がん免疫抑制解除に有効量のベツリン、がん免疫治療剤および薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤を含むがん免疫治療用組成物に関する。
【0020】
前記がん免疫治療薬は、例えば、免疫細胞、ワクチン、免疫調節剤、生体応答調節剤、抗体、遺伝子から選択される少なくとも1種であることができる。
【0021】
前記免疫細胞は、患者自身の免疫細胞であって、例えば、体外においてインターロイキン2(IL-2)などにより活性化させた患者自身の腫瘍組織浸潤リンパ球、体外においてがん特異的抗原ペプチドあるいは破壊した患者自身のがん細胞とともに培養し、当該がんに対する免疫誘導能力を増強させた患者自身の樹状細胞から選択される。
【0022】
前記ワクチンは、例えば、がん患者のがん細胞そのものを破壊したものや増殖しないように処理した細胞、あるいはがん特異的抗原ペプチドから選択される。
【0023】
前記免疫調節剤は、例えば、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−18、IL−21、IL−33、TNF−α、TNF−β、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、またはToll様受容体のアゴニストから選択される。
【0024】
前記生体応答調節剤は、例えば、BCG、OK-432、PSK、レンチナン、べスタチン、シゾフィラン、レバミゾール、和漢薬、または漢方薬から選択される。
【0025】
前記抗体は、例えば、癌細胞で発現する癌細胞表面分子に対するモノクローナル抗体であって、抗体依存性細胞傷害性活性よりがん細胞を死滅させることができる抗体の中から選択される。
【0026】
前記遺伝子は、例えば、腫瘍組織浸潤リンパ球への導入により当該細胞を活性化させることができるIL-2などの遺伝子、癌細胞への導入によりその翻訳産物が各種免疫細胞を活性化させることができるIL-2などの遺伝子、あるいはがん特異的抗原の遺伝子であって、がん患者の体内への接種によりその抗原に対する抗原特異的免疫反応を惹起できる遺伝子の中から選択される。
【0027】
これらの組成物に使用され得る薬学的に許容可能なキャリアとして、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン− ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の組成物は、経口的、非経口的、吸入スプレーにより、局所的、直腸内、経鼻的、頬側的、膣内にまたはインプラントされたリザーバを介して投与することができる。本明細書で使用する「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注入または輸注技術を含む。好ましくは、組成物は、経口的、腹腔内または静脈内に投与される。
【0029】
本発明の組成物は、カプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液を含むがこれらに限定されない任意の経口的な許容可能な剤形で経口的に投与することができる。経口使用のための錠剤の場合、一般に使用されるキャリアとして、乳糖およびトウモロコシデンプンが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤もまた、典型的に添加される。カプセル形態の経口投与のための有用な希釈剤として、乳糖および乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。経口用途に水性懸濁液が必要な場合、有効成分は乳化および懸濁剤と組み合わせられる。所望であれば、所定の甘味、風味付け、または着色剤もまた添加することができる。
【0030】
あるいは、本発明の組成物は、直腸内投与のための坐剤の形態で投与することもできる。これらは、薬剤と、室温では固体であるが直腸温度では液体であり、従って、直腸内では融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤とを混合することによって調製することができる。そのような材料として、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0031】
本発明の組成物は、特に、処置の標的が眼、皮膚、もしくは下部腸管の疾患を含む局所投与によって容易にアクセス可能な領域または器官を含む場合、局所的に投与することができる。適切な局所処方は、これらの領域または器官のそれぞれについて容易に調製される。
【0032】
下部腸管のための局所適用は、直腸用坐剤処方(上記を参照のこと)または適切な浣腸処方で行うことができる。局所用経皮パッチも使用することができる。
【0033】
局所適用のために、組成物は、1つもしくはそれ以上のキャリアに懸濁または溶解された有効成分を含有する適切な軟膏において処方してもよい。本発明の化合物の局所投与のためのキャリアとして、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、組成物は、1つもしくはそれ以上の薬学的に許容されたキャリアに懸濁または溶解された有効成分を含有する適切なローションまたはクリームにおいて処方することができる。適切なキャリアとして、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベイト60(polysorbate60)、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
眼科用途のために、組成物を、等張性、pH調整した滅菌食塩水中の微粉化懸濁液、または好ましくは、等張性、pH調整した食塩水中の溶液として、塩化ベンジルアルコニウムのような保存剤を伴うもしくは伴わずに、処方してもよい。あるいは、眼科用途として、組成物を、ワセリン(petrolatum)のような軟膏において処方してもよい。
【0035】
本発明の処方物はまた、経鼻エアゾルまたは吸入によって投与してもよい。そのような組成物は、薬学的処方の分野に周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールもしくは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティーを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化もしくは分散剤を用いる食塩水中の溶液として調製してもよい。
【0036】
本発明のがん免疫抑制解除剤及びがん免疫治療用組成物についての投与レジメン(即ち、処方および/または用量および/または投与プロトコル)は適宜選択できる。例えば、本発明のがん免疫抑制解除剤及びがん免疫治療用組成物の投与のためのスケジュールおよび用量は、患者の年齢、体重、性別、疾患の相違、症状の程度、投与経路などを考慮して、個々の場合に応じて適宜決定されるが、例えば、100mg(10mL)または500mg(50mL)の単回使用のバイアルのいずれかにおいて10mg/mLの濃度で供給することができる。生成物は、等張化剤、pH調整剤、および可溶化剤として、一般的に用いられるものであれば制限はないが、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、およびポリソルベイト(polysorbate)80を用いて、注射用滅菌水により静脈内投与のために処方される。pHは3〜8に調整される。本発明の薬学的組成物におけるベツリンのための例示的に適切な用量範囲は、約10mg/m2〜500mg/m2、好ましくは約20mg/m2〜300mg/m2であり得る。これを1日1回または数回に分けて投与する。しかし、これらのスケジュールは例示的であること、至適スケジュールおよびレジメンは、臨床治験において決定されなければならない。24時間、48時間、72時間または1週間もしくは1箇月間、NK細胞、T細胞、またはその他免疫治療薬の薬効発現に関わるあらゆる免疫細胞を飽和する本発明の薬学的組成物におけるベツリンの注入の量およびスケジュールは、適宜決定される。それ故、前記の好適な用量範囲、処方およびスケジュールはいかなる意味でも本発明を限定する意図を示すものではない。
【0037】
例えば、多くの治療剤が癌の処置のために利用可能である。本発明のベツリン含有組成物および方法は、特定の疾患、特定の腫瘍、癌疾患、または患者が示す他の疾患もしくは他の障害の処置において一般に用いられる他の任意の方法と併用してもよい。特定の治療アプローチが、患者の状態自体に有害であることが知られておらず、本発明の薬学的組成物におけるベツリンの活性を有意に妨げない限り、本発明との併用が考慮される。
【0038】
固形腫瘍の処置に関連して、本発明の薬学的組成物は、手術、放射線療法、化学療法などのような古典的なアプローチと組み合わせて使用してもよい。従って、本発明は、本発明の薬学的組成物が手術または放射性処置と同時、前、または後に使用されるか; あるいは従来の化学療法、放射線治療剤もしくは抗血管新生剤または標的化された免疫毒素もしくはコアギュリガンド(coaguligand)と共に、前または後に患者に投与される併用療法を提供する。
【0039】
1つもしくはそれ以上の薬剤を、治療レジメンにおいて本発明のベツリン含有組成物と組み合わせて使用する場合、組み合わされた結果が、それぞれの処置を個別に行う場合に観察される効果の相加を求める要件は存在しない。少なくとも相加的効果は一般に所望されるが、単回治療のうちの1つを超える増加した抗癌効果は、有益であり得る。また、併用処置が相乗効果を示すことを求める特定の要件は存在しないが、このことは間違いなく可能であり、有利である。
【0040】
併用抗癌治療を実践するためには、患者に本発明のベツリン含有組成物を、患者内において併用抗癌作用が生じる有効な様式で、別の抗癌剤と併用して、簡単に投与する。従って、薬剤は、腫瘍の脈管構造内においてそれらが組み合わされた形で存在し、腫瘍環境においてそれらが組み合わされて作用するのに有効な量ならびに有効な期間、提供される。この目的を達成するために、本発明のベツリン含有組成物および抗癌剤は、単一の組み合わされた組成物、または異なる投与経路を使用する2つの異なる組成物としてのいずれか一方で、患者に同時に投与することができる。
【0041】
あるいは、本発明のベツリン含有組成物の投与は、例えば、数分〜数週間および数箇月の範囲の間隔で、抗癌剤処置の前、または後に行うことができる。抗癌剤および本発明のベツリン含有組成物におけるベツリンは、癌に対し、有利に組み合わされた効果を発揮することが確実にされる。
【0042】
状況により、処置の期間の顕著に延長することさえ所望され得、ここで、数日間(2、3、4、5、6もしくは7)、数週間(1、2、3、4、5、6、7もしくは8) または数箇月(1、2、3、4、5、6、7もしくは8)が、抗癌剤または抗癌処置のそれぞれの投与と本発明のベツリン含有組成物の投与との間に経過する。これは、抗癌処置が実質的に腫瘍を破壊する(手術または化学療法のように) ことを目的とし、本発明のベツリン含有組成物の投与が微小転移または腫瘍の再成長を防止することを目的とする環境において有利である。
【0043】
本発明のベツリンに基づく組成物または抗癌剤のいずれかの1回を超える投与を利用することも想定される。これらの薬剤は、1日もしくは1週間おき、または本発明のベツリン含有組成物による処置のサイクルの後、抗癌剤療法のサイクルが続く形で、交換可能に投与することができる。いずれにせよ、併用療法を使用して腫瘍の抑制を達成するためには、必要なことは、投与時間にかかわらず、抗腫瘍効果を発揮するのに十分な組み合わされた量で両方の薬剤を送達することだけである。
【0044】
手術について、任意の外科的介入は、本発明と組み合わせて実践することができる。放射線療法に関して、γ線照射、X線、UV照射、マイクロ波および電子放射などのように、癌細胞内で局所的にDNA損傷を誘発する任意の機構が考慮される。放射性同位元素の癌細胞への指令された送達もまた考慮され、これは、標的化抗体または他の標的化手段とあわせて使用され得る。
【0045】
<NK細胞またはT細胞活性増強方法>
本発明は、NK細胞またはT細胞活性を、それを要する患者において増強する方法であって、前記患者に上記本発明のがん免疫抑制解除剤を投与する、方法に関する。
【0046】
NK細胞またはT細胞活性増強を要する患者は疾患もしくは障害を有する任意の患者であり得、ここで、そのような増強は、治療効果を促進、増進、および/または誘導し得る( あるいは例えば、臨床治験によって決定され得るように、疾患もしくは障害および患者と実質的に類似の特徴を伴う患者の少なくとも実質的な割合において、そのような効果を促進、増進、および/または誘導し得る)。
【0047】
さらに本発明は、がんを罹患した患者、がんを罹患した可能性がある患者、またはがんを罹患した疑いがある患者に、上記本発明のがん免疫治療用組成物を投与することを含む、がん免疫治療方法を包含する。そのような処置を要する患者は、例えば、癌、別の増殖性障害、感染性疾患または免疫障害を患い得る。好ましくは、前記方法は、免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管新生剤、アポトーシス誘導剤から選択される適切なさらなる治療剤を前記患者に投与するさらなる段階を含んでなり、ここで、前記のさらなる治療剤は、前記ベツリンと共に単回投与形態として、または個別の投与形態として、前記患者に投与される。ベツリンおよびさらなる治療剤の投与は、集合的に、NK細胞またはT細胞活性の増強を含んでなる患者において治療応答を検出可能な程度で誘導、促進、および/または増進するのに十分である。個別に投与される場合、ベツリンおよびさらなる治療剤は、患者に対して検出可能な併用治療有益性が認められる(例えば、投与時期、回数などに関する) 条件下で投与されることが好ましい。
【0048】
前記患者は、例えば、扁平上皮癌、白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、慢性または急性骨髄性白血病、前骨髄球性白血病、線維肉腫、横紋筋肉腫; 黒色腫、精上皮腫、奇形癌種、神経芽細胞腫、神経膠腫、星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、神経鞘腫; 線維肉腫、横紋筋肉腫(rhabdomyosarcoma)、骨肉腫、黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、奇形癌種、膀胱、乳、直腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、頚部、甲状腺もしくは皮膚の他の癌腫、リンパ球系統の他の造血器腫瘍、骨髄系統の他の造血器腫瘍、間葉起源の他の腫瘍、中枢または末梢神経系の他の腫瘍、または間葉起源の他の腫瘍を患っている者であることができる。
【実施例】
【0049】
以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。但し、以下の実施例は、例示を目的とするもので、本発明がこれらの実施例に限定される意図ではない。
【0050】
実施例1
〈実験方法〉
エフェクター細胞には、BALB/cマウス(7-8週令、雌)の脾臓から調製した脾細胞を用い、標的細胞にはNK細胞に感受性のあるマウスYAC-1細胞を用いた。脾細胞を96ウェルプレート(丸底)に1×106コ/0.1mlの細胞密度で播種し、試料(終濃度、2.5-10μM)を添加して0.5時間処置後、Poly(I:C)(終濃度、30ng/ml)あるいはPam3CSK4(終濃度、1μg/ml)、Lipid A(終濃度、0.1μg/ml)、Loxoribine(終濃度、0.1mM)、CpG B(終濃度、0.1μM)および、TGF-β(終濃度、0.5ng/ml)またはPGE2(終濃度、2.5ng/ml)を添加して、さらに約20時間処置した。その後、これら化合物を洗浄除去し、蛍光物質(Calcein-AM)を取り込ませたYAC-1細胞(1×104コ/0.1ml)と共培養(37℃、5%CO2)した。4時間後、プレートを遠心(250×g、10 min)して浮遊物を沈殿除去した後、上清100μlを採取し、蛍光強度を測定した(励起波長、485/20;蛍光波長、528/20)。得られた蛍光強度をもとに、細胞傷害活性を次式により算出した。
【0051】

【0052】
〈結果〉
脾細胞の細胞傷害活性は、Poly(I:C)の処置により約5-6倍に上昇したが、TGF-βの添加により、コントロール程度にまで抑制された。一方、予めベツリンで処置しておいた場合には、TGF-βの抑制作用は濃度に依存して解除され、10μMではほぼ完全に解除された。同様の結果は、PGE2の抑制作用に対しても認められた(図1)。
【0053】
また、Poly(I:C)以外の免疫賦活剤として、Pam3CSK4(1μg/ml)、Lipid A(0.1μg/ml)、Loxoribine(0.1mM)、あるいはCpG B(0.1μM)を用いた場合においても、ベツリンはTGF-β(0.5ng/ml)により強く抑制された細胞傷害活性を濃度に依存して解除し、10μMではほぼ完全に解除した(図2)。
【0054】
ベツリン(17位がヒドロキシメチル基)と化学構造が極めて類似した、ベツリン酸(17位がカルボキシル基)、ルペオール(17位がメチル基)、およびベツリンジアセテート (3および28位が酢酸エステル化)について、TGF-βの抑制作用に対する有効性をベツリンと比較検討した(図3)。その結果、これら3つの化合物には有効性は全く認められなかった。このことから、ベツリンの17位のヒドロキシメチル基が薬効の発現に重要であることが示唆された。
【0055】
実施例2
(方法)
BALB/cマウス(7週令、雌、2匹/群)の腹腔内にベツリン10nmolを3回投与後、TGF-β(1μg)を腹腔内に投与した。さらに、Poly(I:C)10μgを腹腔内に投与し、4時間後に脾臓を摘出して細胞を調製し細胞傷害活性を測定した。細胞傷害活性の測定は、実施例1と同様にして行った。
【0056】
(結果)
結果を図4に示す。脾臓細胞の細胞傷害活性は、Poly(I:C)の投与によりコントロール群に比較して約1.5倍に亢進したが、TGF-βの投与により、ほぼコントロールレベルにまで低下した。一方、ベツリンを投与した群ではTGF-βの抑制作用は解除され、細胞傷害活性はPoly(I:C)単独投与群と同レベルにまで回復した。このことから、ベツリンはマウス個体レベルにおいてもTGF-βの抑制作用を解除できることが明らかとなった。
【0057】
実施例3
(方法)
BALB/cマウス(7週令、雌、12匹/群)の尾静脈内よりマウス結腸がん細胞株(colon26-L5細胞)を5×104個接種し、肺に転移巣を形成させた。ベツリンはマウス当たり90nmolの用量でがん接種3日前から2日後まで1日1回、腹腔内に投与した。コントロールには溶媒を同様にして投与した。13日目に解剖し、肺に形成された転移結節の数を実体顕微鏡下で計数した。
【0058】
(結果)
結果を図5に示す。がん転移巣の形成はPoly(I:C)の投与により抑制されたが、コントロールに比較して抑制率は約30%であった。一方、ベツリンを併用投与することによりがん転移巣の形成は有意に抑制され抑制率は約50%に達した。これらのことから、ベツリンは、がんの転移巣の形成に対する免疫療法の抑制効果を増強できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明はがん免疫治療薬の分野に有用である。本発明のがん免疫抑制解除剤の有効成分であるベツリンは、TGF-βやPGE2に特異的な阻害剤よりも有用性が高いことが期待される。従って、今後、がん免疫療法の効果を増強させる補助薬としての開発が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベツリンを有効成分として含有する、がん免疫抑制解除剤。
【請求項2】
TGF−βにより抑制された細胞傷害活性を回復させるために用いられる請求項1に記載のがん免疫抑制解除剤。
【請求項3】
PGE2により抑制された細胞傷害活性を回復させるために用いられる請求項1に記載のがん免疫抑制解除剤。
【請求項4】
がん免疫治療剤と一緒に用いるための請求項1〜3のいずれかに記載のがん免疫抑制解除剤。
【請求項5】
がん免疫治療剤が、免疫細胞、ワクチン、免疫調節剤、生体応答調節剤、抗体、遺伝子から選択される少なくとも1種である請求項4に記載のがん免疫抑制解除剤。
【請求項6】
がん免疫抑制解除に有効量のベツリン、がん免疫治療剤および薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤を含むがん免疫治療用組成物。
【請求項7】
前記がん免疫治療剤が、免疫細胞、ワクチン、免疫調節剤、生体応答調節剤、抗体、遺伝子から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記免疫細胞が、活性化させた腫瘍組織浸潤リンパ球、またはがん特異的抗原ペプチド若しくは破壊したがん細胞とともに培養し、かつ当該がんに対する免疫誘導能力を増強させた樹状細胞から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ワクチンは、がん細胞そのものを破壊したもの、がん細胞を増殖しないように処理した細胞、またはがん特異的抗原ペプチドから選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記免疫調節剤が、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−18、IL−21、IL−33、TNF−α、TNF−β、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、またはToll様受容体のアゴニストから選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記生体応答調節剤が、BCG、OK-432、PSK、レンチナン、べスタチン、シゾフィラン、レバミゾール、和漢薬、または漢方薬から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗体が、癌細胞で発現する癌細胞表面分子に対するモノクローナル抗体であって、抗体依存性細胞傷害性活性よりがん細胞を死滅させることができる抗体の中から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
前記遺伝子が、腫瘍組織浸潤リンパ球への導入により当該細胞を活性化させることができるIL-2などの遺伝子、癌細胞への導入によりその翻訳産物が各種免疫細胞を活性化させることができるIL-2などの遺伝子、あるいはがん特異的抗原の遺伝子であって、がん患者の体内への接種によりその抗原に対する抗原特異的免疫反応を惹起できる遺伝子の中から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
NK細胞またはT細胞活性を、それを要する患者において増強する方法であって、前記患者に請求項1〜5のいずれかに記載のがん免疫抑制解除剤を投与する、方法。
【請求項15】
がんを罹患した患者、がんを罹患した可能性がある患者、またはがんを罹患した疑いがある患者に、請求項6〜13に記載の組成物を投与することを含む、がん免疫治療方法。
【請求項16】
前記がんを罹患した患者が癌、別の増殖性障害、感染性疾患または免疫障害を患っている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が扁平上皮癌、白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、慢性または急性骨髄性白血病、前骨髄球性白血病、線維肉腫、横紋筋肉腫; 黒色腫、精上皮腫、奇形癌種、神経芽細胞腫、神経膠腫、星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、神経鞘腫; 線維肉腫、横紋筋肉腫(rhabdomyosarcoma)、骨肉腫、黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、奇形癌種、膀胱、乳、直腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、頚部、甲状腺もしくは皮膚の他の癌腫、リンパ球系統の他の造血器腫瘍、骨髄系統の他の造血器腫瘍、間葉起源の他の腫瘍、中枢または末梢神経系の他の腫瘍、または間葉起源の他の腫瘍を患っている、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−225538(P2011−225538A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66087(P2011−66087)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000236920)富山県 (197)
【Fターム(参考)】