説明

さく孔機の操作指示装置

【課題】 複雑で高価な自動制御機器が不要で、必要に応じてオペレータが適切な判断とさく孔操作を行えるようにする。
【解決手段】 油圧クローラドリル1の打撃機構13、ダンパ17、回転機構9、及びフラッシング機構14の作動状況を検出する打撃圧力センサ31、ダンパ圧力センサ33、回転圧力センサ34、35、送り圧力センサ36、37、及びフラッシング圧力センサ38と、検出された作動状況の重要度を判断し、重要度に応じて段階的なオペレータへの操作案内情報をモニタ50、スピーカ52、外部表示灯53に出力するコンピュータ50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さく孔機の作動部の作動状況を検出し、検出された作動状況の重要度を判断し、作動状況の重要度に応じて段階的な操作案内情報をオペレータに伝え、注意を喚起することにより、オペレータの作業負担を軽減するさく孔機の操作案内装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木、鉱山、採石等の現場でさく孔作業に使用されるクローラドリル、アンカードリル、ジャンボ、ダウンザホール等のさく孔機は、さく岩機からロッド先端に取付けたビットに打撃と回転を伝達し、さく岩機に送りを与えてさく孔する。
さく孔作業においては、さく孔対象の岩質が作業の能率や安全性についての重要な要素であり、オペレータは、さく孔機の各作動部の作動状況をオペレータキャビンに設けられている各種圧力計等の計器の表示とさく孔機の挙動とさく孔音などから総合的に視覚や聴覚で把握してさく孔中にさく孔対象の岩質を判断し、岩質に合わせてさく孔機の各作動部の作動条件を調整しながらさく孔を行う。
【0003】
ところが、このようなさく孔作業は、常時さく孔機の作動状況を監視して調整を行う必要があるので、オペレータの疲労が大きくなる。
そこで、さく孔機の各作動部の作動状況を検出する検出手段と、検出手段の検出データを所定の基準値と比較して岩質を判別する判別手段を備えた岩質測定装置(特許文献1参照)や、さく孔機の各作動部の作動状況を検出する検出手段と、所要のさく孔データを記憶し検出手段からの検出データと記憶されたさく孔データに基づいてさく孔機の作動を制御する自動制御装置と、入力画面から自動制御装置へのデータ入力が可能な表示入力装置を備えた自動さく孔機(特許文献2参照)などが開発されている。
【0004】
しかしながら、さく孔機の自動制御を行うためには、複雑な制御機器を必要とし、製品価格が極めて高価となる。また、複雑な制御機器を多数使用するため製品の信頼性の低下が避けられない。
しかも、多種多様な岩質が対象となるさく孔作業においては、あらゆる状況において常に最適な制御が自動さく孔機によって行われるとは限らない。自動制御装置によるプログラム制御では、プログラムによって規定された動作は正確に且つ迅速に行われるが、データが記憶されていない想定外の岩質に遭遇すると、正常に作動できなくなるので、多種多様な岩質のさく孔においては、結局人間の判断に委ねざるを得ない場合がある。
【0005】
自動さく孔機には、運転席近くにさく孔状況表示手段を備え、さく孔状況を表示させることにより、さく孔作業の進捗状況を監視することができるものもあるが、従来の単純なさく孔状況表示では、複雑なさく孔作業の状況を確実にオペレータに伝えることができず、オペレータは適切に対処できない。また、さく孔口元の点検等のためオペレータが運転席から離れた場合には、全く情報伝達ができなくなる。
【特許文献1】特開平07−063000号公報
【特許文献2】特開平10−306676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、さく孔機における上記問題を解決するものであって、複雑で高価な自動制御機器が不要であり、必要に応じてオペレータが適切な判断とさく孔操作を行えるようにするさく孔機の操作案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のさく孔機の操作案内装置は、さく孔機の各作動部の作動状況を検出する作動検出手段と、検出された作動状況の重要度を判断し、重要度に応じて段階的なオペレータへの操作案内情報を出力する状況判断手段とを備えることにより上記課題を解決している。
この操作案内装置では、作動検出手段でさく孔機の各作動部の作動状況を検出し、状況判断手段が検出された作動状況の重要度を判断し、重要度に応じて段階的なオペレータへの操作案内情報を出力する。
【0008】
操作案内情報の出力は、モニタ上での文字や画像の表示、スピーカからの音声メッセージ、表示灯による点滅等の表示手段により、視覚や聴覚を介してオペレータへ確実に伝達される。情報の表示手段には、オペレータキャビンに既設の圧力計等の計器や警告灯を利用することができる。
段階的な操作案内情報が提供されるので、オペレータは、表示手段により操作案内情報を確認することでさく孔状況を的確に把握でき、危険回避作業が必要な場合や、すぐに作業を中止しなければならないような場合には、注意を喚起されて所要の操作を行う。それ以外の場合は、特に細かい監視や調整を行う必要はない。
【0009】
従って、実際のさく孔機の操作は自動制御でなくオペレータ自身で行うが、オペレータの疲労は大幅に軽減される。
なお、想定外の状況に遭遇し、状況判断手段が操作すべき指示について単一の判断をしにくい場合には、複数の操作案内情報を出力して最終的な判断をオペレータに委ねることができ、自動制御による不都合を回避できる。
着座検出手段がオペレータの運転席への着座の有無を検出し、オペレータが運転席から離れたとき、操作案内情報を外部伝達手段で運転席外に伝達できるので、さく孔口元の点検等のためオペレータが運転席から離れた場合でも、容易にさく孔状況を把握できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のさく孔機の操作案内装置は、複雑で高価な自動制御機器が不要で製品価格の上昇を抑えることができ、アクセサリー類の耐久性も向上する。センサーと電子機器だけで構成でき既存の圧力計等の機器を利用できるので、既存のさく孔機にも簡単に付加搭載することが可能である。
また、必要に応じてオペレータが適切な判断とさく孔操作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の実施の一形態であるさく孔機の操作案内装置の構成図、図2は操作案内装置を備えた油圧クローラドリルの斜視図である。
ここで、油圧クローラドリル1は、トラックフレーム2を備えた走行台車5上に旋回起伏可能にブーム8が設けられており、ブーム8の先端部にはさく岩機10を搭載したガイドシェル11がチルト及びスイング可能に支持されている。さく岩機10にはシャンクロッド3が挿着されている。このシャンクロッド3には所定長のロッドがスリーブで接続され、このロッドの先端にはビットが取付けられる。
【0012】
さく岩機10は、打撃機構13とダンパ17と回転機構9とフラッシング機構14とを備えており、ガイドシェル11に設けられたフィードモータ12で送りが与えられ前後に移動可能になっていて、シャンクロッド3からロッドを介してビットに打撃と回転とを伝達して岩石にさく孔する。またフラッシング機構14はロッドに圧縮空気を供給して、繰粉を排出させる。ガイドシェル11の先端部には、さく孔口元を覆うダストポット18が設けられており、このダストポット18はダストコレクタ(図示略)に接続されていて、排出された繰粉を捕集する。
【0013】
走行台車5上には、打撃機構13、ダンパ17、回転機構9、及びフィードモータ12に圧油を供給するための油圧ポンプ15と、フラッシング機構14に圧縮空気を供給するためのコンプレッサ16とが設置されている。
油圧ポンプ15から、コントロールバルブ4を介して、打撃機構13に打撃管路21と戻り管路22が接続され、ダンパ17にダンパ管路23が接続され、回転機構9に正転管路24と逆転管路25が接続され、フィードモータ12には前進管路26と後進管路27が接続されている。また、コンプレッサ16とフラッシング機構14との間には、フラッシング管路28が接続されている。
【0014】
油圧クローラドリル1の作動部である打撃機構13、ダンパ17、回転機構9、フィードモータ12、及びフラッシング機構14の作動状況を検出する作動検出手段として、打撃管路21に打撃圧力センサ31、ダンパ管路23にダンパ圧力センサ33、正転管路24と逆転管路25に回転圧力センサ34、35、前進管路26と後進管路27に送り圧力センサ36、37、フラッシング管路28にはフラッシング圧力センサ38が設けられている。また、打撃管路21に打撃流量センサ41、正転管路24に回転流量センサ44、前進管路26に送り流量センサ46、フラッシング管路28にフラッシング流量センサ48が設けられている。
【0015】
なお、オペレータキャビン6内の運転席7には、オペレータの運転席7への着座の有無を検出する着座検出手段として着座センサ49が設けられている。
さらに、オペレータキャビン6には、状況判断手段としてコンピュータ50と、モニタ51、スピーカ52、及び3色(緑、黄、赤)の外部表示灯53が設けられている。
打撃圧力センサ31、ダンパ圧力センサ33、回転圧力センサ34、35、送り圧力センサ36、37、フラッシング圧力センサ38、打撃流量センサ41、回転流量センサ44、送り流量センサ46、フラッシング流量センサ48、及び着座センサ49で検出された各作動部の作動状況と着座の有無の情報は、コンピュータ50に送られる。
【0016】
コンピュータ50では、予め記憶された判断基準に従って、作動状況の重要度を判断し、重要度に応じて段階的なオペレータへの操作案内情報をモニタ51、スピーカ52及び外部表示灯53に送る。
作動状況の重要度は、少なくとも4以上の段階に分類し、重要度に応じて操作案内情報の表現を変える。
重要度の段階の分類の一例を表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
表1の例では、順調に作動している状況を重要度1、特に操作の必要は無いが、注意が必要な状況を重要度2、何等かの危険回避作業が必要な状況を重要度3、すぐに作業を中止すべき状況を重要度4としている。
重要度1では、モニタ51には通常の背景画面(例えば熱帯魚等)を表示し、スピーカ52からはBGM又はラジオ番組を流し、外部表示灯53には緑色を点灯する。
【0019】
重要度2では、モニタ51には背景画面はそのままで圧力計等の既存計器を確認するよう注意を促す静止文字と静止画像の表示、あるいは各種センサの状況の表示を行い、スピーカ52からはチャイムの後に注意が必要である旨の音声案内を行い、外部表示灯53には黄色を点灯する。
重要度3では、モニタ51には背景を単一色にして危険状態を示す静止文字と動画画像の表示、あるいは各種センサの状況を拡大して示す等の強調表示を行い、スピーカ52からはブザーの後に危険状態である旨の音声案内を行い、外部表示灯53には赤色を点灯する。
重要度4では、モニタ51には背景を単一色にして危険状態を示す静止文字と静止画像を点滅表示し、スピーカ52からは断続ブザーで警報し、外部表示灯53は全灯を点滅させる。
重要度の段階を分類する基準の一例を表2に示す。
【0020】
【表2】

【0021】
ここでは、フラッシング圧力については、0.4MPa以上では重要度1、0.25MPa以上0.4MPa未満では重要度2、0.1MPa以上0.25MPa未満では重要度3、0.1MPa未満では重要度4と判断する。
また、回転圧力については、5MPa未満では重要度1、5MPa以上7MPa未満では重要度2、7MPa以上10MPa未満では重要度3、10MPa以上では重要度4と判断する。
【0022】
フィード速度については、1cm/s以上2cm/s未満では重要度1、0.5cm/s以上1cm/s未満、又は2cm/s以上2.5cm/s未満では重要度2、0.3cm/s以上0.5cm/s未満又は2.5cm/s以上3.5cm/s未満では重要度3、0.3cm/s未満、又は3.5cm/s以上では重要度4と判断する。なお、フィード速度は、送り流量センサ46で検出された流量情報に基づいてコンピュータ50で求められる。
【0023】
打撃圧については、12MPa以上17MPa未満では重要度1、10MPa以上12MPa未満、又は17MPa以上では重要度3、10MPa未満では重要度4と判断する。
これらの組み合わせによる重要度の加算も行うことができる。
センサの種類や数量、重要度の段階の分類や操作案内情報の表現の方法は上記に限定されるものではなく、機械の特性や作業の内容に応じて種々選択される。
【0024】
操作案内情報の出力は、モニタ51上での文字や画像の表示、スピーカ52からの音声メッセージ、外部表示灯53の点滅等により、オペレータへ確実に伝達される。
段階的な操作案内情報が提供されるので、オペレータは、さく孔状況を的確に把握でき、危険回避作業が必要な場合や、すぐに作業を中止しなければならないような場合には、注意を喚起されて所要の操作を行う。それ以外の場合は、特に細かい監視や調整を行う必要はない。
【0025】
従って、実際の油圧クローラドリル1のさく孔操作は自動制御でなくオペレータ自身で行うが、オペレータの疲労は大幅に軽減される。
なお、想定外の状況に遭遇し、情報判断出力手段が操作すべき指示について単一の判断をしにくい場合には、複数の操作案内情報を出力して最終的な判断をオペレータに委ねる。
【0026】
さく孔作業では、さく孔口元の点検等のため、オペレータが運転席7から離れオペレータキャビン6外へ出ることがある。オペレータが運転席7から離れたときには、外部伝達手段となるスピーカ52と外部表示灯53によって、操作案内情報をオペレータキャビン6外に伝達するので、オペレータは運転席7から離れてオペレータキャビン6外へ出た場合でも、容易にさく孔状況を把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の一形態を示すさく孔機の操作案内装置の構成図である。
【図2】操作案内装置を備えた油圧クローラドリルの斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 油圧クローラドリル
2 トラックフレーム
3 シャンクロッド
4 コントロールバルブ
5 走行台車
6 オペレータキャビン
7 運転席
8 ブーム
9 回転機構
10 さく岩機
11 ガイドシェル
12 フィードモータ
13 打撃機構
14 フラッシング機構
15 油圧ポンプ
16 コンプレッサ
17 ダンパ
21 打撃管路
22 戻り管路
23 ダンパ管路
24 正転管路
25 逆転管路
26 前進管路
27 後進管路
50 コンピュータ
51 モニタ
52 スピーカ
53 外部表示灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
さく孔機の各作動部の作動状況を検出する作動検出手段と、検出された作動状況の重要度を判断し、重要度に応じて段階的なオペレータへの操作案内情報を出力する状況判断手段とを備えたことを特徴とするさく孔機の操作案内装置。
【請求項2】
オペレータの運転席への着座の有無を検出する着座検出手段と、オペレータが運転席から離れたとき、操作案内情報を運転席外に伝達可能な外部伝達手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載のさく孔機の操作案内装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−177104(P2006−177104A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373609(P2004−373609)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】