説明

ねじロッドがスライド移動する装置。

【課題】ワーク部をスライドさせる装置のエアシリンダや油圧シリンダ等は、多大な設置場所に複雑な機械要素、電気設備等が必要であり、充分な簡素化を必要としていた。
【解決手段】ねじロッドに中空軸モータ及びその両側にねじナットを装着させ、中空軸モータの回転に伴い連結された緩衝部を介し、片方を主動側、他方を従動側とするねじナットが等しく回転する事で、回転規制されたねじロッドがスライドする。又、ねじロッドを固定すればモータ部をスライドさせる事も可能。緩衝部を要する為、温度変位等で各部に変化が生じた場合も、ギアの噛合せに存在する隙間や軸方向の微移動によりズレや誤差を吸収しスムーズな伝達を可能とする。従って本発明は、設置場所の省略や機械要素等の簡素化を実現させ、従来のシリンダの代用として半導体製造装置や省力化機械、航空機等の輸送機器の主要なアクチュエータとして組込む事で、装置の付加価値を飛躍的に伸ばせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中空軸のモータにねじロッドを通し、モータの回転運動に伴いねじロッドがスライド移動する装置、又は、ねじロッドを固定してモータ部をスライド移動させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワーク部をスライド移動させる装置としては、エアシリンダや油圧シリンダ、そして特許文献1のような、ボールねじにスプラインナット、ねじナットを装着させ、モータによりボールねじがスライド移動する装置等が用いられている。
【特許文献1】特開平05−180299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、エアシリンダや油圧シリンダでは、バルブや配管等の多大な設置スペースや、複雑な機械要素及び電気設備が必要という問題があった。又特許文献1のモータによるスライド装置は、スプラインナットのボールはスプライン溝を軸方向へ移動するが、ねじのリードが狭まれば、ねじ溝とスプライン溝の交差する箇所が多くなり、ボールが移動する転動面がその分小さくなる為、スライドする際にスムーズに走行出来なくなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上述の問題を解決するもので、モータの回転運動に伴い、ねじナットを介して、ねじロッドがスライド移動する装置である。
【0005】
中空モータにねじロッドを通し、中空モータの軸端部とねじナットAを連結させる。
【0006】
ブレーキ、エンコーダをモータの固定側と連結させ、ブレーキの回転盤をねじナットAと連結させる。
【0007】
(ねじナットAの他方に位置する)中空モータ軸端部と中空軸を重ね合わせ、2個のキーを取り付け、中空モータ軸端部と中空軸を連結させる。
【0008】
中空軸とフランジを連結させ、フランジとギアA(内歯)を連結させる。
【0009】
ねじナットBとギアB(外歯)を連結させて、ギアA(内歯)とギアB(外歯)を噛み合わせて設置する。
【0010】
従って、中空モータ軸部の回転により、モータ軸端部に連結させるねじナットAが回転、又中空軸に連結されるフランジに連なるギアA(内歯)も回転する。ギアA(内歯)の回転に伴い噛み合わせているギアB(外歯)も回転運動を起こし、連結しているねじナットBも等しく回転する。以上の装置により、モータの回転に伴い、ねじナットAとBが等しく回転運動を起こし、回転を固定されたねじロッドがスライド移動する。(以上図1〜図4参照)
【0011】
又ねじロッドの先端部は、周方向に2箇所の面を削ぎ、軸方向に対し直角にピンを通す。ピンはねじロッドの軸中心より止めねじにて固定されている。通したピンの両端部をハウジングに固定し、ハウジングはサポートにより固定される。この時、サポートの長穴を用いてハウジングの両端を固定する。さらに右、左ねじを備える調整ねじにより、ハウジングとブラケットをねじロッドとワーク部の組立寸法に調整する。(ブラケットは、サポートとワーク部を連結する。)以上の装置により、ねじロッドとワーク部を連結させている。(図5参照)
【発明の効果】
【0012】
キーを取り付ける事により、モータの軸端部と中空軸が連結しており、その結果モータの回転運動に伴いギアA(内歯)を回転させる事が出来る。
【0013】
ギアA(内歯)とギアB(外歯)を噛み合わせる事により、ねじナットBが回転する機構である為、モータあるいはねじロッドの軸端部の温度変位等により、ねじロッドのねじ溝やリードの間隔に変化が生じた際でも、ギアの噛み合わせに存在する隙間によりズレや誤差を吸収し、ねじロッドの変位に影響する事なくスムーズな伝達を可能とする。
【0014】
又ねじロッドは、モータ自体の回転以外でも手動でスライドさせる事も可能で、ワーク部にねじロッドを連結させる場合に伴う位置調整等も容易に行う事が出来る。
【0015】
さらに、ねじロッドの軸端部の両側を固定すれば、モータをスライド移動させる事も可能となる為、より広い用途で使用する事が出来る。
【0016】
0011の連結金具のサポートに長穴を用いて、右、左ねじを備える調整ねじにより、ブラケット側とねじロッド側は軸方向へ移動する事が出来る。従って、ねじロッド先端部とワーク部間の距離を調整する事が可能となる。
【0017】
以上の装置により、従来のシリンダ装置より大幅に設置スペースが省略され、制御面においても機械要素及び電気設備を簡素化した機構となり、これまで使用されてきたシリンダの代用として、様々な場面で本発明装置を使用する事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明の形態を図1〜図5に基づき説明する。
【0019】
図1は本発明の全体図である。1に2を通し、1の軸端部と5を連結させる。7、8を1の固定側と連結させ、7の回転盤を5と連結させる。(5と他方に位置する)1の軸端部と11を重ね合わせ、2個の12を取り付け1の軸端部と11を連結させる。11と15を連結させ、15と16を連結させる。17と18を連結させて、16と17を噛み合わせて設置する。従って1の回転に伴い、1の軸端部に連結させる5が回転、又11に連結される15に連なる16も回転する。16の回転に伴い噛み合わせている17も回転し、連結している18も等しく回転する。以上の装置により1の回転に伴い2はスライド移動する。
【0020】
図2はA−A断面図である。重ね合った1の軸端部と11を、2個の12を周の位置に取り付け連結させる事により、1の回転運動に伴い16を回転させる事が出来る。
【0021】
図3はB−B断面図である。11と連結される16に17を噛み合わせて設置している。16と17を噛み合わせる事により18が回転する機構である為、1や2の軸端部の温度変位等により、2のねじ溝やリードの間隔に変化が生じた際でも、16、17の噛み合わせに存在する隙間によりズレや誤差を吸収し、各部の変位に影響する事なくスムーズなスライド移動を可能とする。
【0022】
図4は16、17の噛み合わせ箇所の詳細図である。図で示すように、回転運動の際にズレや誤差を吸収出来る空間(隙間、アソビ)を保つ事で、スムーズな伝達が可能となり、作動時の誤差による騒音や、過負荷による破損等も防いでいる。
【0023】
図5はロッド先端に備える金具詳細図である。2の先端部は、周方向に2箇所の面を削ぎ、軸方向に対し直角方向に通した20を介して、2と21を連結する。(20は2の軸中心より25で固定されている。)21は22、24により固定される。この時長穴を用いて21の両端を固定する。さらに右、左ねじを備える23により、21と22、24を連結させる。(24は、22とワーク部を連結させている。)以上の装置により、2とワーク部を連結させている。22、24の長穴は、23の各々のねじにより、22を軸方向へ移動させる事が出来る。従って、2の先端部とワーク部間の距離を調整する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ユニット全体図
【図2】A−A断面図
【図3】B−B断面図
【図4】C詳細図
【図5】ロッド先端金具詳細図
【符号の説明】
【0025】
1.中空モータ
2.ねじロッド
4.ブレーキ
5.ねじナットA
8.エンコーダ
11.中空軸
12.キー
15.フランジ
16.ギアA(内歯)
17.ギアB(外歯)
18.ねじナットB
20.ピン
21.ハウジング
22.サポート
23.調整ねじ
24.ブラケット
25.止めねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空軸のモータにねじロッドを通し、モータの回転に伴い、モータ軸端部に連結されるねじナットが回転、さらに他方のモータ軸端部に連結される緩衝(噛み合わせ)機構を介し、ねじナットも回転する事により、ねじロッドがスライド移動する機構。
【請求項2】
請求項1の装置において、1箇所以上のキーを用いてモータ軸端部と緩衝機構に連なる中空軸を連結させる機構。
【請求項3】
請求項1の装置において、ブレーキとエンコーダを備える機構。
【請求項4】
請求項1の装置に有するねじロッドの先端部において、周方向に面を削ぎ、軸方向に対し直角にピン穴、さらに軸中心にネジ穴を要する構造。
【請求項5】
請求項1の装置に有するねじロッドと、ワーク部を連結させる装置において、ねじロッド先端部とワーク部間の距離を右ねじと左ねじにより調整出来る機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−14025(P2009−14025A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173705(P2007−173705)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(303068028)
【Fターム(参考)】