説明

はんだ付け検査方法、およびはんだ付け検査機ならびに基板検査システム

【課題】はんだ印刷検査の際の画像では状態を判別しにくい箇所の特徴を精度良く推定し、この推定結果を反映した判定処理により、はんだ付け状態の検査精度を高める。
【解決手段】はんだ印刷検査機10は基板上のランドのクリームはんだの体積を計測して検査を行い、計測値を含む検査結果情報を検査データ管理装置102に送信する。はんだ付け検査機30は、リフロー後基板の画像から検査対象のはんだ付け部位の特徴データを検出すると共に、管理データ管理装置102との通信により、検査対象のはんだ付け部位に対応する箇所に対してはんだ印刷検査機10で計測されたクリームはんだの体積を取得する。そしてこの体積を用いて、部品の近傍であって特徴データを計測しにくい箇所の特徴を推定し、その推定結果を特徴データに補完してリフロー後はんだのぬれ上がり高さを算出し、高さの良・不良を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装基板の生産のために実施される複数の工程のうちのリフロー工程までを終了した基板を対象にした外観検査により、基板に実装された各種部品のはんだ付け状態の適否を判別する方法、およびこの方法が適用されたはんだ付け検査機ならびに検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装基板は、一般に、クリームはんだの印刷工程、部品実装工程、およびリフロー工程の各工程により生産される。近年の生産ラインには、これらの工程毎に検査機を配備し、各検査機による検査結果を情報処理装置に集積して、同一対象毎に突き合わせて確認できるようにした基板検査システムが導入されたラインがある(たとえば、特許文献1を参照。)。
【0003】
リフロー工程後のはんだ付け部位の検査に関しては、はんだの鏡面反射性を利用して、検査対象の基板を斜め上方から照明しながら当該基板をほぼ真上から撮像し、生成された画像中の反射光像のパターンを解析する検査機が広く用いられている。たとえば、特許文献2には、赤、緑、青の各色彩光をそれぞれ入射角の範囲が異なる方向から基板に照射することにより、これらの照明光に対応する色彩の分布パターンによりはんだの傾斜状態が表された画像を生成し、この色彩の分布パターンに基づきはんだのフィレットの形状の適否を判別することが記載されている。
【0004】
さらに特許文献3には、上記特許文献2に記載のはんだ付け検査機では、画像中の部品の近傍で傾斜が急になった箇所や平坦に近い箇所からの反射光をカメラに導くのが困難である点に着目した改良発明が記載されている。具体的に特許文献3に記載された発明では、各色彩による照明光に加え、カメラの光軸に沿う方向から基板に赤外光を照射して、この赤外光に対する反射光像を含む画像を生成する。画像中のはんだ付け部位に対応する検査領域では、各色彩光に対応する色領域と赤外光に対応する領域(赤外領域)を抽出すると共に、部品の近傍位置でいずれの照明光に対する反射光像も生成されなかったために暗領域となった箇所を抽出する。そして、各領域が並ぶ方向に沿って領域間の境界位置を抽出し、これらの境界位置に各照明光に対応する領域が表す傾斜角度の範囲の境界の角度をあてはめることによって、フィレットの傾斜状態を表す近似曲線を特定する。さらに、この近似曲線を積分することにより、はんだのぬれ上がり高さを求めて、この高さの適否を判定する。
【0005】
はんだ印刷工程後の検査にも、同様に、基板をほぼ真上から撮像して2次元の画像処理を行うことにより、基板上の各ランドにおけるクリームはんだの面積や印刷位置などを計測する検査機が用いられる。また位相シフト法により検査対象部位の三次元形状や体積を求める検査機もある(たとえば特許文献4を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3966336号公報
【特許文献2】特許第3599023号公報
【特許文献3】特開2010−71844号公報
【特許文献4】特開2010−91569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リフロー工程後の従来の検査は、リフロー工程より前の各工程で適切な処理が実施されたことを前提として実施される。しかし、実際には、はんだ印刷工程でのクリームはんだの印刷量や印刷位置、部品の実装位置などにばらつきや経時変化があり、そのばらつきや変化によって、フィレットの傾斜状態が変動する。
【0008】
以下、図10〜図13を用いて上記の問題を説明する。各図は、チップ部品301の片側の電極に対するリフロー工程後のはんだのフィレットの形状が、リフロー工程前の状態によってばらつくことを示す模式図である。各図において、300はランドであり、301は部品の本体であり、302はランド300に対応する部品電極である(ランド300に対応しない側の部品電極は図示していない。)。また、303はリフロー前のクリームはんだであり、304はリフロー工程により溶融した後に固化したはんだ(以下、「リフロー後はんだ」という。)である。
【0009】
図10は、はんだ印刷工程においてランド300に印刷されたクリームはんだ304の量とリフロー後はんだのフィレットとの関係を対比させて示す。この図10に示すように、一般に、クリームはんだ303の量が増えるにつれてリフロー後はんだ304のフィレットの傾きは急になり、クリームはんだ303の量が減るにつれてリフロー後はんだ304のフィレットの傾きは緩やかになる。
【0010】
つぎに図11は、部品301の実装位置がリフロー後はんだ304の形状に与える影響を示す。この図に示す3例では、クリームはんだ303の印刷量は同量であるが、ランド300に対する部品301の位置が異なるために、部品301の電極302からランド300の外側の端縁までの部分(以下、この部分を「ランド突き出し部」という。)の幅にばらつきが生じている。各例に示すように、一般に、ランド突き出し部の幅が狭くなるほどリフロー後はんだ304のフィレットの傾きは急になり、ランド突き出し部の幅が広くなるほどリフロー後はんだ304のフィレットの傾きは緩やかになる。
【0011】
つぎに図12および図13は、ランド300に対するクリームはんだ303の印刷範囲の違いがフィレットの形状に与える影響を示す。図12に示す例では、クリームはんだ303の体積は同様であるが、上段の例ではクリームはんだ303がランド300のほぼ全体に広がって印刷されて、ランド突き出し部に対応するクリームはんだ303の量が相対的に少なくなったために、比較的緩やかなフィレットが形成されている。これに対し、下段の例のクリームはんだ303はランド突き出し部となる箇所に偏って印刷されたため、形成されたフィレットの傾きは上の例よりも急になっている。
【0012】
図13の例でも、クリームはんだ303の体積は同様であるが、上段の例ではクリームはんだ303がランド300のほぼ全体に広がって印刷されたために、図12の上段の例と同様に比較的緩やかなフィレットが形成されている。これに対し、下段の例のクリームはんだ303は、ランド300の中央部に偏って印刷され、ランド突き出し部のはんだと部品電極302の下方のはんだとの量があまり変わらない状態になったため、部品301も上段の例よりも高めの位置に配置される。この結果、リフロー工程では、部品301とランド300との間の空間へとはんだが流動する現象が生じ、ランド突き出し部で溶けたはんだの一部が部品電極302の下方に引き込まれる。また、はんだ突き出し部に残ったはんだも部品301の方へと引っ張られて、短く、傾きが急なフィレットが形成されている。
【0013】
上記の各例に示すように、リフロー後はんだ304のフィレットの形状は、クリームはんだ303の印刷状態や部品301の状態によって大きく変動する。しかし、一般的な外観検査では、はんだ付け部位を斜め上方から照明しつつ、基板の面を正面視するように設置されたカメラに入るはんだ付け部位からの反射光を撮像する方法により検査用の画像を生成するため、部品の近傍にある急な傾きのはんだの反射光像を得るのが困難である。このため、はんだ付け部位のフィレットの形状を正確に認識できないおそれがある。
【0014】
また図11の下段の例や図13の下段の例のように、部品電極302とランド300とのリフロー後はんだ304を介した接続に特段の問題がない場合でも、フィレットの幅が短く急峻な場合には、そのフィレットの殆どが反射光像が生じない暗領域として画像に現れるため、従来の検査基準では不良と判定される可能性がある。
【0015】
本発明は上記の問題に着目し、リフロー工程後の基板の画像では状態を判別しにくい箇所の特徴を精度良く推定し、この推定結果を反映してはんだ付け状態を判定を行うことにより、はんだ付け状態の検査の精度を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、部品実装基板の生産のために実施される複数の工程のうちのリフロー工程までを終了した基板の面に向けてカメラを配置し、このカメラにより生成された基板の画像を用いて当該基板上の部品のはんだ付け状態を検査する方法に適用される。
本発明による検査方法では、リフロー工程より前に実施される複数の工程のうちの少なくとも一工程において基板に付加された構成を次の工程を開始する前に計測することを前提として、検査対象のはんだ付け部位のうちカメラによる画像では状態を判別しにくい箇所の特徴に関して、リフロー工程より前の計測処理で当該はんだ付け部位に対応する箇所に対して得られる計測値との因果関係をあらかじめ特定して、その関係を示す因果関係情報を登録する。そして、リフロー工程後の検査の対象となるはんだ付け部位に対し、以下の第1〜第4のステップを実行する。
【0017】
第1ステップでは、画像中の検査対象のはんだ付け部位を含む範囲を処理してはんだの形状を表す特徴データを取得する。
第2ステップでは、当該はんだ付け部位に対応する箇所に対するリフロー工程より前の計測処理で得られた計測値を取得する。
第3ステップでは、当該はんだ付け部位に関して登録されている因果関係情報と第2ステップで取得した計測値とを用いて、当該はんだ付け部位のうち画像では状態を判別しにくい箇所の特徴を推定する。
第4ステップでは、第1ステップで取得した特徴データに第3ステップでの推定結果を補完して、はんだ付け部位の良・不良を判定する。
【0018】
上記の方法によれば、検査対象のはんだ付け部位のうち、照明光に対する反射光像を生成できなかったために画像中では暗領域となった箇所や、部品により隠れて認識できない箇所などを対象に、因果関係情報を登録して、これらの箇所に第3ステップを適用することにより、その特徴を推定することができる。よって、第4ステップにおいて、画像処理により取得した特徴データに上記の推定処理の結果を補完することによって、はんだ付け部位の形状の認識精度を高めることが可能になり、検査の精度も高められる。
【0019】
なお、因果関係情報は、相当数のサンプルを用いた統計処理により、リフロー工程より前の計測処理の対象部位の状態と検査対象のはんだ付け部位の状態との関係を特定することによって作成することができる。サンプル数が多いほど因果関係情報の信頼度が高くなり、第3ステップでの推定の精度を高めることができる。因果関係情報は、たとえば、リフロー工程より前の計測処理により得られる計測値と第3ステップでの推定処理の対象となる部位の特徴を示すデータとを対応づけたテーブルとして、または両者の関係を表す関数として、登録される。また複数のパラメータの計測値を使用する場合には、これらの計測値の組み合わせから特徴データを導出するルールを定義したプログラムを、因果関係情報として登録してもよい。
【0020】
上記の検査方法の好ましい実施形態では、リフロー工程より前の工程における計測処理として、はんだ印刷工程において基板の各ランドに印刷されたクリームはんだに対する計測を実施する。この実施形態によれば、クリームはんだの印刷量や印刷位置などによってリフロー後はんだの形状に違いが生じる場合でも、画像では状態を判別しにくい箇所の特徴を高い確度で推定してはんだ付け部位の良・不良を判定することが可能になる。
【0021】
上記の検査方法の他の好ましい実施形態では、リフロー工程より前の工程における計測処理として、はんだ印刷工程において基板の各ランドに印刷されたクリームはんだに対する計測処理と、部品実装工程において基板に実装された部品に対する計測処理とを実施することを前提として、これらの計測処理による計測値の組み合わせと、検査対象のはんだ付け部位のうちカメラによる画像では状態を判別しにくい箇所の特徴との因果関係を示す因果関係情報を登録する。
【0022】
この実施形態によれば、クリームはんだの印刷状態のほか、部品の実装状態に基づいて、画像では状態を判別しにくい箇所の特徴を精度良く推定することが可能になる。たとえば、クリームはんだの体積の計測値が同様であっても、部品の位置、大きさ、高さなどが異なる場合には、推定結果を異なるものにすることができる。
【0023】
基板のランドに印刷されたクリームはんだに対する計測処理としては、たとえば、クリームはんだの体積、面積、高さ、印刷位置、印刷範囲のうちの少なくとも1つを計測することができる。また、基板に実装された部品に対する計測処理としては、たとえば、部品の位置、大きさ、ランドとの位置関係、高さのうちの少なくとも1つを計測することができる(部品の大きさを計測するのは、同一機能の部品でもメーカによって大きさがばらつく可能性があるからである。)。
【0024】
上記の検査方法の他の好ましい実施形態では、第1ステップにおいて、画像中のはんだ付け部位の部品の近傍位置において、特徴データを取得すべきであるのに取得できていない箇所を抽出し、この領域の特徴を第3ステップにおいて推定する。
この実施形態によれば、部品の近傍にあって、傾斜が急であるために画像中に検査に必要な特徴が現れていない箇所の特徴を推定し、この推定結果を補完することにより、はんだのフィレットの形状を精度良く認識することができる。
【0025】
つぎに、本発明によるはんだ付け検査機は、部品実装基板の生産のために実施される複数の工程のうちのリフロー工程までを終了した基板を対象に、この基板の面に向けて配置されたカメラにより当該基板を撮像し、生成された画像中の部品のはんだ付け状態を検査するもので、以下の記憶手段、画像処理手段、計測値入力手段、推定手段、判定手段を具備する。
【0026】
記憶手段には、リフロー工程より前の工程のうちの少なくとも一工程において基板に付加された構成を次の工程を開始する前に計測することを前提として、検査対象のはんだ付け部位のうちカメラによる画像では状態を判別しにくい箇所の特徴に関して、リフロー工程より前の計測処理で当該はんだ付け部位に対応する箇所に対して得られる計測値との因果関係を特定する処理を行った結果に基づき設定された因果関係情報が、登録される。
【0027】
画像処理手段は、画像中の検査対象のはんだ付け部位を含む範囲を処理して、はんだの形状を表す特徴データを取得する。計測値入力手段は、検査対象のはんだ付け部位に対応する箇所に対するリフロー工程より前の計測処理で得られた計測値を入力する。
推定手段は、検査対象のはんだ付け部位について、当該部位に関して記憶手段に登録されている因果関係情報と計測値入力手段が入力した計測値とを用いて、当該はんだ付け部位のうち画像では状態を判別しにくい箇所の特徴を推定する。
判定手段は、画像処理手段が取得した特徴データに推定手段による推定結果を補完してはんだ付け部位の良・不良を判定する。
【0028】
上記の構成によれば、前出の検査方法を実行して、精度の良い検査をすることが可能になる。なお、リフロー工程より前の計測処理による計測値は、たとえばリフロー工程より前の工程に設置された検査機またはこの検査機から出力された検査結果情報を保持する情報処理装置との通信により取得することができる。
【0029】
本発明の一実施形態にかかるはんだ付け検査機は、検査対象の基板に対し、入射角度がそれぞれ異なる複数の方向から光を照射する照明装置と、この照明装置による照明下で前記カメラを作動させることにより、検査用の画像を生成する撮像制御手段とをさらに具備する。
【0030】
さらに、この実施形態では、記憶手段には、前記検査対象のはんだ付け部位のうち、部品の近傍位置であって画像では照明装置からの光による反射光像が得られないために暗領域となる箇所の傾斜角度と、はんだ印刷工程においてランドに印刷されたクリームはんだに対する計測処理により得られる計測値との因果関係を示す因果関係情報が登録される。画像処理手段は、画像中の検査対象のはんだ付け部位を含む範囲から照明光に対応する反射光像が現れている領域を照明光の方向毎に抽出すると共に、画像中の部品の近傍に生じている暗領域を抽出する。推定手段は、検査対象のはんだ付け部位に関して記憶手段に登録されている因果関係情報と計測値入力手段が入力した計測値とを用いて、暗領域に対応する箇所の傾斜角度を推定する。判定手段は、暗領域に推定手段により推定された傾斜角度を補完すると共に、各方向からの照明光に対応する反射光像にそれぞれ対応する照明光の入射角度から割り出されるはんだの傾斜角度を適用し、これらの傾斜角度を用いてはんだ付け部位のフィレットのぬれ上がりの適否を判定する。
なお、照明装置は、たとえば、複数の色彩光を入射角度がそれぞれ異なる方向から同時に照射するように構成される。または、各方向からの光を順に切り替えて照射するように構成することもできる。
【0031】
上記の実施形態によれば、入射角度がそれぞれ異なる複数の方向からの光による照明下で撮像を行って、生成された画像中のはんだ付け部位に生じる反射光像にそれぞれ対応する照明光の入射角度から割り出される傾斜角度を適用してはんだのフィレットの形状を認識する場合に、画像中の部品の近傍に反射光像が生じることなく暗領域となった箇所があっても、その箇所の傾斜角度を精度良く推定することができる。よってこの推定された傾斜角度を補完することにより、はんだ付け部位のフィレットのほぼ全体の形状を認識して、そのぬれ上がり高さを精度良く判定することができる。
【0032】
本発明の他の実施形態にかかるはんだ印刷検査機は、検査対象の基板に対し、縞状のパターン画像を投影するための投影装置と、投影装置に前記パターン画像を縞の並びに沿ってパターンを周期的に移動させながら投影させると共に、毎回の投影のタイミングに合わせてカメラを作動させる撮像制御手段とを、さらに具備する。
【0033】
さらにこの実施形態においては、記憶手段には、検査対象のはんだ付け部位のうち、部品の近傍位置であってパターン画像の反射光像が得られない箇所の高さと、はんだ印刷工程においてランドに印刷されたクリームはんだに対する計測処理により得られた計測値との因果関係を示す因果関係情報が登録される。画像処理手段は、パターン画像の一周期分の投影が行われる間の撮像で生成された複数の画像を用いて、検査対象のはんだ付け部位を含む範囲内の画素毎に、一周期分の投影の間にその画素に生じた明るさの変化の位相に基づき当該画素に対応する高さを計測する。さらに、この計測結果に基づきはんだのフィレットの高さを表す画素群を抽出すると共に、部品の近傍位置において明るさの変化が得られなかったために高さを計測できなかった画素群を抽出する。推定手段は、検査対象のはんだ付け部位に関して記憶手段に登録されている因果関係情報と計測値入力手段が入力した計測値とを用いて、高さが計測できなかった画素群の高さを推定する。
判定手段は、高さが計測できなかった画素群に推定手段により推定された高さを補完し、この画素群とはんだのフィレットの高さを表す画素群における各高さの値を用いてはんだ付け部位のフィレットのぬれ上がりの適否を判定する。
【0034】
上記の実施形態のはんだ印刷機は、位相シフト法の手法に基づき、はんだ付け部位の表面に縞状のパターン画像を、毎回パターンを動かしながら投影すると共に、毎時の投影に合わせて撮像を行い、画素単位での明るさの変化の位相からフィレットの各点における高さデータを求めるものである。フィレットのうち部品の近傍の傾斜が急な箇所に関しては、その箇所に投影されたパターン画像の反射光像を生成することは困難であるため、高さを計測できないおそれがあるが、この実施形態によれば、リフロー工程前の計測処理により得た計測値を用いて高さを計測できなかった箇所の高さを推定することができる。よって、この推定結果を補完することによりはんだ付け部位のフィレット全体の高さデータを得て、フィレットのぬれ上がり状態を精度良く判定することが可能になる。
【0035】
本発明によるシステムは、部品実装基板の生産のために実施される複数の工程のうちのリフロー工程に配備されてリフロー工程後の基板を検査する検査機と、リフロー工程より前の少なくとも一工程に配備されて当該工程後の基板を検査する検査機と、各検査機から通信により検査結果情報を取り込んで、検査機毎の検査結果情報を基板別および検査対象部位別に読出可能に管理する情報管理装置とを具備する。
リフロー工程の検査機は、検査対象の基板の面に向けて配置されるカメラと、このカメラにより生成された画像中の検査対象のはんだ付け部位を含む範囲を処理して、はんだの形状を表す特徴データを取得する画像処理手段とを具備する。
【0036】
情報管理装置は、リフロー工程の検査機の検査対象のはんだ付け部位のうちカメラによる画像では状態を判別しにくい箇所の特徴に関して、リフロー工程より前の工程の検査機の当該はんだ付け部位に対応する箇所に対する計測処理により得られる計測値との因果関係を特定する処理を行った結果に基づき設定された因果関係情報が登録される記憶手段;検査対象のはんだ付け部位に対応する箇所に対するリフロー工程より前の工程の検査機による計測処理で得られた計測値を入力する計測値入力手段;検査対象のはんだ付け部位について、当該部位に関して記憶手段に登録されている因果関係情報と計測値入力手段が入力した計測値とを用いて、当該はんだ付け部位のうち画像では状態を判別しにくい箇所の特徴を推定する推定手段;および推定手段による推定結果をリフロー工程の検査機に送信する送信手段の各手段を具備する。
リフロー工程の検査機は、画像処理手段が取得した特徴データに情報管理装置から送信された推定結果を補完して、はんだ付け部位の良・不良を判定する判定手段を、さらに具備する。
【0037】
上記構成のシステムによれば、検査対象のはんだ付け部位のうち画像からは状態を判別しにくい箇所の特徴を、リフロー工程より前の検査機が検査対象のはんだ付け部位に対して行った計測結果に基づき推定する処理を、情報管理装置が分担するので、はんだ付け検査機の演算負担を削減して高精度の検査を実施することができる。また、はんだ付け検査機での検査が開始されるより前に、情報管理装置での推定処理を実施することができるので、はんだ付け検査にかかる時間を短縮することが可能になる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、検査対象のはんだ付け部位のうち、画像では状態を判別しにくい箇所の特徴を、リフロー工程前のクリームはんだの状態や部品の状態に基づいて推定し、画像処理により取得した特徴データに上記の推定処理により推定した特徴データを補完してはんだ付け部位の良・不良を判定するので、はんだ付け部位に対する検査の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】基板検査システムの構成を部品実装基板の生産ラインの全体構成に対応づけて示す図である。
【図2】はんだ付け検査機の構成を示すブロック図である。
【図3】はんだ印刷検査機の構成を示すブロック図である。
【図4】はんだ付け検査に関わる装置間における情報の流れを示す図である。
【図5】一例としての推定用テーブルの構成を模式的に示す図、およびテーブル中の各グループの関係を示す図である。
【図6】リフロー後はんだのぬれ上がり高さを計測する方法を説明する図である。
【図7】はんだ付け検査機における検査の手順を示すフローチャートである。
【図8】位相シフト法に基づきはんだ付け部位の三次元形状を復元する場合の検査の手順を示すフローチャートである。
【図9】検査データ管理装置において推定処理を行う場合の各装置間の情報の流れを示す図である。
【図10】クリームはんだの量の違いがフィレットの形状に及ぼす影響を示す図である。
【図11】部品の実装位置に伴うランドの突き出し部の幅の違いがフィレットの形状に及ぼす影響を示す図である。
【図12】クリームはんだの印刷の偏りがフィレットの形状に及ぼす影響を示す図である。
【図13】クリームはんだの印刷の偏りがフィレットの形状に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、基板検査システムの一実施形態の構成を部品実装基板の生産ラインの全体構成に対応づけて示す。
図示の生産ラインには、はんだ印刷工程、部品実装工程、およびリフロー工程が含まれる。はんだ印刷工程には、基板上の各ランドにクリームはんだを塗布するはんだ印刷装置11やこの装置11による処理結果を検査するはんだ印刷検査機10が設けられる。部品実装工程には、はんだ印刷後の基板に部品を実装するマウンタ21や部品の実装状態を検査する部品検査機20が設けられる。リフロー工程には、部品実装後の基板のクリームはんだを溶かすリフロー炉31やリフロー後の基板を検査するはんだ付け検査機30が設けられる。基板は、図中の太矢印に示す流れに沿って各装置に順に送り込まれて処理され、これにより所定の規格に応じた部品実装基板が完成する。
【0041】
各工程の検査機10,20,30は、それぞれLAN回線100を介して相互に接続される。LAN回線100には、さらに検査プログラム管理装置101および検査データ管理装置102が接続されている。検査プログラム管理装置101には、検査機10,20,30毎に、あらかじめ定められた検査基準に基づく検査を実行するための検査プログラムを部品の種毎のライブラリデータとしてまとめたデータベースが登録されている。
【0042】
検査データ管理装置102には、各検査機10,20,30から送信された検査結果情報が保存される。この検査結果情報には、検査対象部位毎の良否の判定結果やその判定のために実施された計測結果が含まれている。検査結果情報は、検査機10,20,30毎に、また基板別および基板上の個々の部品別に読み出すことができるように構成される。たとえば、検査機の識別コードを最上位として、基板の識別コード、実装部品の識別コード、検査領域の識別コードの順に、階層化された構成の情報として、組み立てることができる。
【0043】
なお、検査プログラム管理装置101と検査データ管理装置102とは必ずしも別体にする必要はなく、1つのコンピュータに各管理装置101,102の機能を持たせてもよい。反対に、各管理装置101,102を複数のコンピュータにより構成することも可能である。
【0044】
各検査機10,20,30では、検査に先立ち、検査対象基板の構成を示すデータ(たとえばCADデータ)を入力し、この入力データに示される各部品の部品種情報に適したライブラリデータを検査プログラム管理装置101から取り込んで、各部品の位置情報とライブラリデータとを紐付ける処理を実施する。これにより各検査機10,20,30に検査対象基板の検査に必要な環境が設定される。なお、ライブラリデータに基づくプログラムの内容は、適宜、ユーザによる設定操作に応じて変更することができる。
【0045】
図2は、はんだ付け検査機30の構成を示す。
この実施例のはんだ付け検査機30は、制御処理部1,カメラ2,照明装置3,基板ステージ4などを有する。基板ステージ4は、検査対象の基板Sを水平な姿勢で支持しながら、この基板Sを各辺に沿う方向に移動させる。カメラ2は、カラー画像を生成するもので、基板ステージ4の上方に、光軸をほぼ鉛直方向に向けた状態(ステージ4上の基板Sを正面視する状態)で配備される。照明装置3は、カメラ2と基板ステージ4との間に配備される。
【0046】
照明装置3には、赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ発する環状光源3R,3G,3Bが含まれる。各光源3R,3G,3Bは、それぞれの中心部をカメラ2の光軸に位置合わせした状態で配置される。また、各光源3R,3G,3Bは互いに異なる大きさの径を有し、最も径の小さい赤色光源3Rが一番上に配置され、最も径の大きい青色光源3Bが一番下に配置され、これらの間に緑色光源3Gが配置される。この配置により、基板Sに対する入射角度の範囲は色彩毎に異なるものになり、カメラ2により、リフロー後はんだの傾斜面の傾斜状態を、各色彩光に対応する三色の色彩の分布パターンにより表した画像を生成することが可能になる。具体的には、三色の中で入射角度範囲が最も小さい赤色光により生じる赤色領域は緩やかな傾斜を示し、三色の中で入射角度が最も大きい青色光により生じる青色領域はかなり急な傾斜を示す。また、赤色光と青色光との間の範囲から照射される緑色光により生じる緑色領域は、赤色領域および青色領域が示す角度範囲の間の角度範囲を示す。
【0047】
制御処理部1には、コンピュータによる制御部110、画像入力部111、撮像制御部112、照明制御部113、ステージ制御部114、メモリ115、ハードディスク装置116、通信用インターフェース117、入力部118、表示部119などが含まれる。制御部110は、撮像制御部112、照明制御部113、ステージ制御部114を介して、カメラ2、照明装置3、基板ステージ4の動作を制御する。カメラ2により生成された画像は、画像入力部111においてディジタル変換された後に、制御部110に入力される。
【0048】
メモリ115には、上記の制御に関するプログラムが保存されるほか、処理対象の画像データや演算結果などが一時的に保存される。ハードディスク装置116には、検査プログラム管理装置101から提供されたライブラリデータに基づく検査プログラム群、検査の過程で得た計測データおよび検査結果、検査に使用された画像などが保存される。
【0049】
通信用インターフェース117は、前出のLAN回線100を介して他の装置と通信を行うためのものである。入力部118は、検査の開始や終了を指定する操作や種々の設定データの入力に用いられる。表示部119は、検査結果や検査に用いられた画像を表示するためのものである。
【0050】
つぎに図3は、はんだ印刷検査機10の構成を示す。なお、この図3では、図2に対応する構成を、図2と同じ符号にAを付けた符号により示す。
このはんだ印刷検査機10は、位相シフト法の原理に基づき基板Sのランドに印刷されたクリームはんだの高さを計測するもので、制御処理部1A,カメラ2A,照明装置3A,基板ステージ4Aのほか、縞状のパターン画像を基板に投影するためのプロジェクタ5を有する。また、この検査機10の照明装置3Aは、白色光を発する環状光源3Mにより構成される。制御処理部1Aには、はんだ付け検査機30の制御処理部1と同様の構成のに加え、プロジェクタ制御部120が設けられる。
【0051】
部品検査機20に関しては、はんだ付け検査機30とほぼ同じ構成を有するので、図示を省略する。ただし、部品検査機10では、照明装置3の光源を白色光源にしてもよい。
部品検査機20では、検査対象の基板Sの画像から基板上の部品を検出し、その位置や傾きなどを計測して、その計測結果に基づき部品の実装状態の適否を判定する。
【0052】
また部品検査機20として、図3に示したはんだ印刷検査機10と同様の構成の装置を使用することもできる。この場合には、部品の実装位置や姿勢の検査に加えて、部品および部品電極の高さや垂直方向に対する部品の傾きなどを検査することもできる。
【0053】
上記3種類の検査機10,20,30のうち、はんだ印刷検査機10と部品検査機20とは、中間工程における検査を行うものであるが、これらで不良と判定されても、その後の工程の処理によって品質が改善される場合もある。したがって、多くの現場では、はんだ印刷検査機10や部品検査機20で不良と判定された基板をラインから取り除かずに後段に流すことを許容している。
【0054】
一方、最終のリフロー工程に置かれるはんだ付け検査機30では、不良を見逃さないように厳密な判定を行う必要がある。しかし、図2に示したはんだ付け検査機30の光学系の構成によれば、最も入射角度の大きい青色光により表される傾斜角度範囲より急な傾斜面は、その傾斜角度を示す反射光像を得ることができないために暗領域となり、リフロー後はんだのフィレットの全形状を認識するのが困難になる。特に、部品の近傍位置の暗領域が大きい部品や、フィレットが短く傾斜が急であるためにはんだ付け部位に色彩の分布が殆ど生じない部品では、実際のはんだ付け状態が良好であっても、画像処理の結果のみによる判定では、不良という判定をせざるを得なくなる。
【0055】
そこでこの実施例では、はんだ付け検査機30で検査を行う際には、検査対象のはんだ付け部位に対応する箇所に対して他の検査機10,20が実施した計測処理の結果を読み込んで、その計測値に基づきはんだ付け部位の暗領域の傾斜角度を推定するようにしている。この推定処理のために、はんだ印刷検査機30のメモリ115またはハードディスク装置116には、あらかじめ部品種毎に相当数のサンプルを用いて導出された推定用テーブルが登録されている。この推定用テーブルは前出の部品種毎のライブラリデータに含まれて、検査プログラム管理装置101から提供されたものである。
【0056】
図4は、はんだ印刷検査機10による計測結果を利用して上記の推定処理を行う場合を例として、はんだ付検査に関わる装置間の関係を情報の流れと共に示す。この例では、はんだ付け検査機30およびはんだ印刷検査機10のほか、検査プログラム管理装置101および検査データ管理装置102がはんだ付け検査に関与する。
【0057】
検査プログラム管理装置101は、各検査機10,30に、それぞれの機種に応じた検査プログラムを提供する。これらのプログラムは、部品種毎に、その部品種に属する部品の検査基準に基づき作成され、ライブラリデータとして検査プログラム管理装置101に登録されていたものである。具体的にこの例では、はんだ印刷検査機10には、ランドに印刷されたクリームはんだの体積の検査を実施するための検査プログラムが提供され(図4の(a))、はんだ付け検査機30には、はんだ付け部位のリフロー後はんだのぬれ上がり高さの検査を実施するためのプログラムが提供される(図4の(b))。さらに、はんだ付け検査機30には、ぬれ上がり高さを計測する際の推定処理で用いられる推定用テーブルが提供される(図4(c))。
【0058】
はんだ印刷検査機10は、提供された検査プログラムに基づき、検査対象の基板Sの各ランドに印刷されたクリームはんだの体積を計測して、計測値の良・不良を判定する。そして、ランド毎の計測値を含む検査結果情報を検査データ管理装置102に送信する(図4の(d))。検査データ管理装置102は、上記の検査結果情報を、基板別ならびに部品別の読み出しが可能な形式で蓄積する。
【0059】
はんだ付け検査機30も、提供された検査プログラムに基づき、検査対象の基板Sの各ランドにおけるリフロー後はんだのぬれ上がり高さを計測して、計測値の良・不良を判定し、計測値を含む検査結果情報を検査データ管理装置102に送信する(図4の(e))。ただし、はんだ付け検査機30の計測処理では、処理対象の画像から赤,緑,青の各色領域や部品を検出するほか、部品の近傍に位置する暗領域を検出し、この暗領域に対応する箇所の傾斜角度を推定する。そして、この推定結果を暗領域に補完すると共に、各色領域に、それぞれ対応する色彩光の入射角度から割り出される傾斜角度を適用し、暗領域を含む各領域の分布状態と各領域に対応する傾斜角度との関係から、リフロー後はんだのぬれ上がり高さを計測する。
【0060】
暗領域に対する推定処理では、検査データ管理装置102にアクセスして、検査対象の基板Sの処理中のはんだ付け部位に対応するランドをはんだ印刷検査機10が検査したときに求めたクリームはんだの体積を読み込む(図4の(f))。また、自装置での部品やランドの検出結果に基づきランド突き出し部の幅(部品の端縁からランドの外側の端縁までの距離。以下、「ランド突き出し幅」という。)を求めた上で、このランド突き出し幅と検査データ管理装置102から得たクリームはんだの体積とにより推定用テーブルを照合することにより、暗領域に対応する箇所の傾斜角度を推定する。
【0061】
図5(1)は、はんだ付け検査機30に登録される推定用テーブルの構成を示す模式図である。この推定用テーブルは、部品種毎に相当数のサンプルを用いた統計処理により作成されて、検査プログラムと共にライブラリデータに格納される。図5(1)の例の推定用テーブルでは、部品の近傍の傾斜面が青色領域に対応する角度範囲より急峻になったフィレットを対象に、それぞれの部品近傍の傾斜角度を5つのグループg1〜g5に分類して、グループg1〜g5毎に、そのグループに属するサンプルにおけるクリームはんだの体積とランド突き出し幅との値の組み合わせの分布を示したものである。言い換えれば、クリームはんだの体積とランド突き出し幅との各値の組み合わせによりこの推定用テーブルを参照することにより、この組み合わせにより生じるフィレットの部品近傍の傾斜角度がグループg1〜g5のいずれに含まれるかを知ることができる。
【0062】
なお、図5(2)に示すように、各グループg1〜g5には、それぞれ所定幅の角度範囲が含まれ、グループg1に属する角度が最も大きく、以下グループg2,g3,g4,g5の順に角度が小さくなる。
【0063】
上記の推定用テーブルの作成に用いられるサンプルは、実物の基板から得たデータに基づくものであるが、これに限定されるものではない。たとえば流体シミュレーションの手法により、様々な体積のクリームはんだから得られるフィレット形状を求め、このフィレットのうち画像において暗領域となり得る範囲の傾斜角度を計測することにより、多数のサンプルを得ることもできる。
【0064】
以下、図4に示した検査プログラムにより各検査機10,30において実施される検査の具体的な内容を説明する。
まず、はんだ印刷検査機10における検査であるが、はんだ印刷検査機10では、位相シフト法の原理に基づく三次元計測をベースとする処理により、クリームはんだの体積を算出する。三次元計測では、縞状のパターン画像を、縞を所定量ずつ動かしながらプロジェクタ5から基板Sに投影する処理を、複数回の投影を1サイクルとして実行すると共に、毎回の投影のタイミングに合わせてカメラ2Aによる撮像を行う。1サイクル分の投影および撮像が完了すると、各回の撮像により得た画像中の検査領域(ランド毎に設定される。)内の各画素を1つずつ対象として、毎回の撮像における輝度の変化を検出し、この変化を一周期分の正弦波として、正弦波の位相を求める。さらに、処理対象の画素につき算出された位相やパターン画像の投影面およびカメラ2Aとあらかじめ定めた基準面(たとえば基板に対応する高さの面)との関係に基づく三角測量を適用して、基準面から処理対象の画素に対応する点までの距離を算出する。この距離は、処理対象の画素に対応する点の高さを示すことになる。
【0065】
また、上記の処理とは別に、はんだ印刷検査機10では、照明部3の白色照明下での撮像を行って、生成された画像中の検査領域からクリームはんだの色彩を検出する。そしてこのはんだの色彩が検出された画素に対して算出された高さデータを積分することによりクリームはんだの体積を求める。
【0066】
上記の方法によりクリームはんだの体積が算出されると、はんだ印刷検査機10では、この体積を検査領域毎に登録されている標準値と比較することにより、「適正」「はんだ過多」「はんだ過少」の3グループのいずれかに分類する。ただし、「はんだ過多」や「はんだ過少」と判定されたクリームはんだが搭載された基板も、後工程へと流される。
【0067】
つぎに、はんだ付け検査機30における検査のための計測処理について説明する。
この実施例のはんだ付け検査機30では、赤、緑、青の各色彩光をそれぞれ入射角度の異なる方向から基板Sに照射するので、リフロー後はんだの傾斜面に照射された各色彩光の正反射光のうちカメラ2に入射した光によって、リフロー後はんだの傾斜状態を赤、緑、青の各色彩の分布パターンにより表した画像を生成することができる。画像中の各色領域は、それぞれ対応する照明光の入射角度とほぼ同じ傾斜角度を表現する。この実施例では、各色領域と傾斜角度範囲との関係と暗領域につき推定された傾斜角度とを用いて、図6に示す方法によりリフロー後はんだのぬれ上がり高さを計測する。なお、この実施例では、赤色領域が示す傾斜角度範囲を8〜15度とし、緑色領域が示す傾斜角度範囲を15〜25度とし、青色領域が示す傾斜角度範囲を25〜38度とする。
【0068】
図6では、チップ部品200を例に、このチップ部品200の電極201とランド203とを接続するリフロー後はんだのフィレット202を示す模式図と、このフィレット202を撮像して得られる画像の模式図とを上下に対応づけている。画像の模式図では、各色領域をそれぞれ異なる塗りパターンにより示す。
【0069】
この実施例では、画像中の部品200の全体を含む範囲に部品用の検査領域(図示せず。)を設定して部品200を検出すると共に、ランド203毎に検査領域Fを設定して、その検査領域F内の赤領域、緑領域、青領域を検出する。図6に示すような形状のフィレットの画像では、一般に、画像中のランド202の外側端縁に近い場所から部品電極201に向かう方向に沿って、赤、緑、青の順に色彩が分布する。また部品200に近い場所に、青領域で表すことができる範囲を超える急峻な傾斜面を表す暗領域が生じることがある。
【0070】
上記の画像の特徴を利用して、この実施例では、検査領域F内において暗領域を含む4つの色領域が分布する方向を見つけて、この方向に沿って計測ラインLを設定し、この計測ラインLにおいて、各色領域の境界に位置する点A2,A3,A4、および赤領域の外側の端縁との交点A1を抽出する。さらに部品の検出結果に基づき、計測ラインLと部品電極201の端縁との交点A5(暗領域の端点)を抽出する。
【0071】
抽出された点のうち点A5を除く各点には、その点に対応する傾斜角度をあてはめる。各色領域が示す傾斜角度にはそれぞれある程度の幅があるが、隣り合う色領域間の境界位置は、それぞれの色領域が示す傾斜角度範囲の境界値付近の角度を示すと考えられる。よって、この実施例では、先に例示した傾斜角度範囲に基づき、点A1に8度を、点A2に15度を、点A3に25度を、点A4に38度を、それぞれあてはめる。
【0072】
さらに、この実施例では、点A5からランドの外側端縁までの距離を、ランド突き出し幅として求める。そして、このランド突き出し幅の計測値とあらかじめ検査データ管理装置102から読み込んだクリームはんだの体積(現在処理中のはんだ付け部位に対応するランドに対してはんだ印刷検査機10で計測されたもの)との組み合わせにより図5(1)に示した推定用テーブルを照合し、この組み合わせに適合する角度θxを特定する(たとえば、クリームはんだの体積とランド突き出し幅との組み合わせに対応するグループが示す角度範囲の中の中間値、または角度範囲の下限値をθxとする。)。そしてこの角度θxを点A5にあてはめる。
【0073】
この後は、図6の右手のグラフに示すように、各点A1〜A5の座標と各点A1〜A5にあてはめた角度との関係から、計測ラインLに沿う傾斜角度の変化を表す近似曲線Mを導出する。さらに、この近似曲線Mの点A1から点A5までの範囲に含まれる各点を積分することによって、点A5に対応するはんだの高さを算出し、これをリフロー後はんだのぬれ上がり高さとする。
【0074】
各色領域が示す傾斜角度にはそれぞれ所定大きさの幅があるが、色領域の間の境界位置に関しては、信頼度の高い傾斜角度が得られるので、各点A1〜A4の座標と傾斜角度との関係から求めた近似曲線は、計測ラインに沿う傾斜の変化を適切に表現していると考えられる。また、傾斜状態を計測できない暗領域について、サンプルデータから作成された推定用テーブルを、クリームはんだの体積およびランド突き出し幅の実測データにより照合することにより、およその傾斜角度を推定することができるので、この推定結果を補完することにより、フィレット全体のぬれ上がり高さを求めることができる。
よって、リフロー工程前のクリームはんだの体積やランド突き出し幅にばらつきがあるために、同種の基板の同一部位におけるフィレットの形状にばらつきが生じる場合でも、それぞれのフィレットに対する計測誤差を従来よりも小さくすることが可能になる。
【0075】
なお、部品によっては、リフロー後はんだのフィレットが短く、かつ急峻であるために、画像中に赤や緑の色領域が殆ど現れないことがあるが、このような場合にも、青領域の傾斜角度範囲と暗領域につき推定された傾斜角度とを用いて、上記と同様の計測処理を実施することができる。
【0076】
また、推定用テーブルから推定する傾斜角度は特定の値に限らず、複数の角度を導出して、角度毎に上記の計測処理を実施してもよい。たとえば、クリームはんだの体積とランド突き出し幅との組み合わせに対応するグループが示す角度範囲の上限の角度と下限の角度とをそれぞれ用いて上記の計測を実行することで、リフロー後はんだのぬれ上がり高さが取り得る値の数値範囲を求めてもよい。
【0077】
また上記のはんだ付け検査機30では、赤、緑、青の各色彩光をそれぞれ入射角度が異なる方向から同時に照射して撮像し、生成された画像から各色領域を抽出して図6に示した演算を実施したが、これに限らず、各方向に対応する光源を順に点灯して点灯の都度撮像を行う方式の検査機を使用してもよい。この場合には、毎回の撮像により生成された画像中のはんだ付け部位から輝度の高い領域を抽出し、これらの領域の関係に基づいて図6と同様の処理を実施することになる。
【0078】
また上記では、はんだ印刷検査機10で求めたクリームはんだの体積を推定処理に用いる例を説明したが、推定に用いられる前工程の計測パラメータはこれに限定されるものではない。たとえば、ランドに対するクリームはんだの相対位置または印刷範囲や、クリームはんだの高さの平均値などを用いた推定処理を行うことができる。
【0079】
また、上記の実施例では、ランド突き出し幅をはんだ付け印刷機30で計測するとしたが、部品検査機20による計測処理の結果を用いてランド突き出し幅を求めてもよい。たとえば、部品電極の上部まではんだがぬれ上がる可能性がある部品に対しては、リフロー工程より前の部品の状態に基づきランド突き出し幅を求めてもよい。
【0080】
また、部品検査機20として三次元計測の機能を有する検査機を用いれば、部品や部品電極の高さを用いた推定処理を行うことも可能である。たとえば、クリームはんだの体積と部品電極の高さとに基づき、リフロー工程で部品電極とランドとの間に流れ込んだはんだの量を推定し、その推定結果に基づき、ぬれ上がり高さの計測値を補正してもよい。
【0081】
図7は、上記のはんだ付け検査に関する概略手順を示す。なお、ここでは説明を簡単にするため、1枚の基板による処理のみを示すと共に、この基板に対する撮像回数を1回とし、部品毎に処理されるはんだ付け部位が1つであるものとする。また、はんだ付け検査では、図6に示した方法によりリフロー後はんだのぬれ上がり高さを計測するが、暗領域に対応する角度θxを推定する処理に用いられる他工程の計測パラメータは、クリームはんだの体積に限らず、任意の種類の計測パラメータが用いられるものとする。
【0082】
まず検査対象の基板Sを撮像し(ステップS1)、部品毎に下記のループLP1を実施する。以下、ループLP1内の処理を説明する。
【0083】
ステップS2では、登録されている設定データに基づき、画像中の検査対象の部品および対応するランドを包含する範囲に検出用の領域を設定し、この領域からランドおよび部品を検出する。ランドの検出は、輝度の高い画素群を抽出する方法により行われ、部品の検出は、部品の登録されている色彩を抽出する方法により行われる。
【0084】
つぎにステップS3では、ステップS2での検出結果に基づき、ランドおよび部品電極を含む範囲に図6に示した検査領域Fを設定し、ランドの突き出し幅を計測する。ステップS4では、検査領域Fから各色領域および暗領域を検出する。
【0085】
ステップS5では、各領域の検出結果に基づき計測ラインLを設定し、このライン上で各領域間の端点(点A2,A3,A4)および両側の領域の端点(点A1,A5)の座標を計測する。なお、検出されている色領域が少ない場合には、それに合わせて、計測対象の点を調整する。
【0086】
ステップS6では、検査データ管理装置102にアクセスして、処理中の部品に対応する箇所に対して他の検査機10,20で行われた計測データ(推定処理に用いるパラメータの計測値)を読み込む。ステップS7では、ステップS6で読み込んだ計測データを用いて暗領域に対応する傾斜角度θxを推定する。
【0087】
ステップS8では、ステップS5で計測された各座標に、それぞれ対応する傾斜角度を適用して図6に示した曲線Mを求め、さらにこれを積分することによりリフロー後はんだのぬれ上がり高さを算出する。ステップS9では、この高さを判定基準値と照合することにより、はんだ付け部位の良・不良を判定する。
【0088】
以下、検査対象の部品毎に上記のループLP1を実施する。なお、実際には、殆どの部品は複数のはんだ付け部位を有するので、はんだ付け部位の数分、ループLP1が実行される。
【0089】
全ての部品に対する処理が終了すると、これらに対する判定結果を統合して基板全体の良・不良を判定し、検査データ管理装置102などに検査結果情報を出力する。この検査結果情報には、全体の判定結果のほか、毎時のループLP1における判定結果や計測結果を含むことができる。
【0090】
なお、上記の実施例の検査では、リフロー後はんだのぬれ上がり状態を判別するためにぬれ上がり高さを求めたが、これに限らず、図6に示した曲線Mを所定の判定基準に基づき解析して、フィレットの傾斜の変化が適切であるかどうかを判断してもよい。
【0091】
つぎに、はんだ付け検査機30の構成は上記に示したものに限らず、図3に示したはんだ印刷検査機10と同様の構成の検査機を使用してもよい。この場合のはんだ付け検査では、位相シフト法の原理に基づきリフロー後はんだの各点の高さデータを求めた後に、各画素の座標と高さデータとを対応づけてリフロー後はんだの三次元形状を復元し、その適否を判別することができる。ただし、この構成の検査機でも、縞状パターンが基板の斜め上方向から投影されるため、リフロー後はんだのフィレットの傾斜が急な箇所では、投影パターンに対する反射光をカメラ2Aに入射させることができず、高さデータを算出できないという問題がある。
【0092】
上記の点に鑑み、図8に示す実施例では、位相シフト法による検査機をはんだ付け検査で使用する場合に、部品の近傍であって、投影パターンの反射光像が得られなかったために高さを計測できなかった箇所を対象に、他の工程の検査機で得られた計測データに基づいて高さを推定するようにしている。
【0093】
以下、図8を参照して、この実施例の検査の手順を説明する。なお、この例でも、先の図7の例と同様に、1枚の基板に対する処理手順のみを示し、各部品のはんだ付け部位も1つに限定する。
【0094】
まずステップS21において、縞状パターンの投影処理および撮像を複数回行うことにより、三次元計測用の画像を生成する。次にステップS22では、照明装置2Aによる白色照明下での撮像を行うことにより、外観計測用の画像を生成する。
【0095】
この後は、検査対象の部品毎にループLP2を実行する。
まずループLP2の最初のステップS23では、ステップS2で得た外観計測用画像を用いてランドおよび部品を検出する。検出の方法は図7のステップS2と概ね同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0096】
つぎに、ステップS24では、ステップS23で検出したランドおよび部品の一部を含む範囲に検査領域を設定する。カメラ2Aが共通であるので、この検査領域は、三次元計測画像にも適用することができる。
【0097】
よって、次のステップS25では、三次元計測用画像に上記の検査領域を適用し、当該領域内の画素毎に、位相シフト法に基づく三次元計測を実施して、高さデータを算出する。この処理は、はんだ付け検査機10のクリームはんだの高さを求めるものと同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0098】
つぎにステップS26では、ステップS23で検出したランドや部品の範囲と三次元計測結果とを照合することによって、部品に対応する高さデータを有する画素群とリフロー後はんだに対応する高さデータを有する画素群とを特定する。
【0099】
ステップS27では、部品の近傍であって、明るさの位相変化が検出されなかったために高さデータを算出できなかった画素群を抽出し、これらの画素群を含む範囲を未計測領域として特定する。そして、検査データ管理装置102から、検査対象の部品に対する他の検査機の計測処理により得られた計測データを読み込み(ステップS28)、読み込んだ計測データにより推定用テーブルを照合して未計測領域の高さデータを推定する(ステップS29)。これにより、部品の近傍の急な傾斜面の高さデータを取得することができる。なお、この推定処理では、他の工程の検査機による計測データに自装置での計測結果を加味した推定を行ってもよい。たとえば、ステップS26で特定されたリフロー後はんだに対応する高さデータを有する画素群を用いて、これらの画素群に対応するはんだの体積やフィレットの傾斜に近似する曲線を求め、これらの結果と他の工程の検査機による計測データとを用いた推定処理を行ってもよい。
【0100】
ステップS30では、リフロー後はんだに対応する高さデータを有する画素群および未計測領域の画素群のそれぞれの画素における高さデータを用いて、リフロー後はんだのフィレットの三次元形状を復元する。ステップS31では、復元された三次元形状に対して、種々の計測処理を実施する。たとえば、体積、フィレットの傾斜面の角度変化、フィレットの長さや幅、リフロー後はんだの周囲長などを算出することができる。
ステップS32では、各計測値を用いてはんだ付け部位の良・不良を判定する。
【0101】
以下、同様に、検査対象の部品に順にループLP2の処理を実行する。最後にステップS33において、基板全体の良・不良を判定して、判定結果を出力する。
【0102】
上記の処理によれば、通常の三次元計測のみでは取得できない傾斜が急な箇所の高さデータを取得して、フィレット全体の三次元形状を精度良く復元することができるので、検査の精度を大幅に高めることができる。
【0103】
上記図7および図8の例では、いずれも、他の工程での検査機10,20による計測データを検査データ管理装置102から読み込むとしているが、これに限らず、計測を実施した検査機10,20から直接計測データの提供を受けるようにしてもよい。
【0104】
また、各実施例では、画像処理では直接計測できない箇所の特徴と他の工程での計測データとの因果関係を示す情報として、テーブル形式の情報を登録したが、これに限らず、両者の因果関係を示す関数を導出して、これを登録してもよい。また、推定用テーブルを登録する場合でも、部品の近傍の計測が困難な箇所の特徴を直接導き出すものに限らず、フィレット全体の特徴を導き出す構成の推定用テーブルを登録してもよい。この場合には推定処理において、たとえば、検査対象のはんだ付け部位に対応する箇所に対する他の工程での計測処理の結果に基づき、推定用テーブルからフィレットの全体の形状データの候補を複数とおり抽出し、これらの中から、はんだ付け検査機30での実測データが示す形状に最も近いものを選択してもよい。
【0105】
つぎに、推定処理を行う装置は、はんだ付け検査機30に限らず、たとえば、検査データ管理装置102において、検査機10,20から受信した計測データを用いて推定処理を実行し、その推定結果をはんだ付け検査機30に提供してもよい。このようにすれば、はんだ付け検査機30における演算負荷を削減することができる。また、はんだ付け検査に先立って推定処理を実施すれば、検査の効率を高めて、タクトタイムを削減することが可能になる。
【0106】
図9は、検査データ管理装置102により推定処理を実施する場合を例に、各装置間での情報の流れを示す。なお、この例では、はんだ付け検査機10は図2および図3のいずれの構成を適用しても良いものとし、はんだ付け検査の内容や推定処理に用いられる計測データを特定せずに説明する。
【0107】
検査プログラム管理装置101は、各検査機10,20,30に、それぞれの機種に応じて検査プログラムを提供する(図9の(イ)(ロ)(ハ))。これらのプログラムは、部品種毎に、その部品種に属する部品の検査基準に基づき作成され、ライブラリデータとして検査プログラム管理装置101に登録されたものである。各検査機10,20,30は、検査対象の基板の設計データに基づき、検査プログラム管理装置101から必要な部品種のライブラリデータを読み込み、これらを部品の位置情報と紐付けた状態に編集して使用する。
【0108】
はんだ印刷検査機10および部品検査機20は、それぞれ提供された検査プログラムに基づき、検査対象部位毎に検査領域を設定して所定のパラメータを対象にした計測処理を実施し、計測値の良・不良を判定する。そして、検査領域毎の計測データを含む検査結果情報を検査データ管理装置102に送信する(図9の(ニ))。
【0109】
検査データ管理装置102はこれらの送信情報を、検査機別、および基板別ならびに部品別に読み出すことができる形式で蓄積する。また検査データ管理装置102には、あらかじめ検査プログラム管理装置101から部品種毎の推定用テーブルや推定処理用のプログラムが提供されている(図9の(ホ))。検査データ管理装置102は、これらのテーブルやプログラムと、はんだ印刷検査機10および部品検査機20からの検査結果情報とに基づき、これらの検査機10,20での検査が終了した基板を対象に、その基板上の部品毎に、はんだ付け検査のための計測処理に必要となる特徴データ(部品の近傍の傾斜角度、高さデータなど)を推定する。
【0110】
一方、はんだ付け検査機30は、検査プログラム管理装置101から提供された検査プログラムに基づき、検査対象のはんだ付け部位の画像を処理して、検査に必要な特徴データを取得すると共に、検査データ管理装置102にアクセスして、処理中のはんだ付け部位に関して検査データ管理装置102が推定した特徴データの提供を受ける(図9の(ヘ))。そして、この特徴データと自装置で取得した特徴データとに基づき最終的な計測処理を実行し、その計測値を判定基準値と比較することにより、はんだ付け部位の良・不良を判定する。そして、この判定結果や判定に用いられた計測データをまとめた検査結果情報を検査データ管理装置102に送信する(図9の(ト))。
【0111】
なお、上述した各実施例では、はんだ付け部位のうち部品の近傍にあって、計測をするのに必要な特徴が現れていない箇所を推定処理の対象としたが、これに限らず、特徴は現れているが不鮮明である箇所も含めて推定処理を行っても良い。また、部品とランドとの間のはんだなど、リフロー工程後の基板の画像に現れる可能性が全くない箇所を推定の対象としてもよい。たとえば、はんだ付け検査機10で計測されたクリームはんだの体積とはんだ付け検査機30で計測されたリフロー後はんだの体積との関係に基づき、部品の下のリフロー後はんだの量を推定することが、一例として考えられる。
【符号の説明】
【0112】
S 基板
1 制御処理部
2 カメラ
3 照明部
4 基板ステージ
10 はんだ印刷検査機
11 はんだ印刷装置
20 部品検査機
21 マウンタ
30 はんだ付け検査機
31 リフロー炉
102 検査データ管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装基板の生産のために実施される複数の工程のうちのリフロー工程までを終了した基板の面に向けてカメラを配置し、このカメラにより生成された前記基板の画像を用いて当該基板上の部品のはんだ付け状態を検査する方法であって、
前記リフロー工程より前に実施される複数の工程のうちの少なくとも一工程において基板に付加された構成を次の工程を開始する前に計測することを前提として、検査対象のはんだ付け部位のうち前記カメラによる画像では状態を判別しにくい箇所の特徴に関して、前記リフロー工程より前の計測処理で当該はんだ付け部位に対応する箇所に対して得られる計測値との因果関係をあらかじめ特定して、その関係を示す因果関係情報を登録し、
前記リフロー工程後の検査の対象となるはんだ付け部位に対し、前記画像中の当該はんだ付け部位を含む範囲を処理してはんだの形状を表す特徴データを取得する第1ステップと、当該はんだ付け部位に対応する箇所に対するリフロー工程より前の計測処理で得られた計測値を取得する第2ステップと、当該はんだ付け部位に関して登録されている因果関係情報と前記第2ステップで取得した計測値とを用いて、当該はんだ付け部位のうち画像では状態を判別しにくい箇所の特徴を推定する第3ステップと、前記第1ステップで取得した特徴データに第3ステップでの推定結果を補完して、前記はんだ付け部位の良・不良を判定する第4ステップとを実行することを、特徴とするはんだ付け検査方法。
【請求項2】
前記リフロー工程より前の工程における計測処理として、はんだ印刷工程において基板の各ランドに印刷されたクリームはんだに対する計測を実施する、請求項1に記載されたはんだ付け検査方法。
【請求項3】
前記リフロー工程より前の工程における計測処理として、はんだ印刷工程において基板の各ランドに印刷されたクリームはんだに対する計測処理と、部品実装工程において基板に実装された部品に対する計測処理とを実施することを前提として、これらの計測処理による計測値の組み合わせと、前記検査対象のはんだ付け部位のうち前記カメラによる画像では状態を判別しにくい箇所の特徴との因果関係を示す因果関係情報を登録する、請求項1に記載されたはんだ付け検査方法。
【請求項4】
前記基板のランドに印刷されたクリームはんだに対する計測処理として、当該クリームはんだの体積、面積、高さ、印刷位置、印刷範囲のうちの少なくとも1つを計測する、請求項2または3に記載されたはんだ付け検査方法。
【請求項5】
前記基板に実装された部品に対する計測処理として、当該部品の位置、大きさ、ランドとの位置関係、高さのうちの少なくとも1つを計測する、請求項3に記載されたはんだ付け検査方法。
【請求項6】
前記第1ステップにおいて、前記画像中のはんだ付け部位の部品の近傍位置において、前記特徴データを取得すべきであるのに取得できていない領域を抽出し、この領域の特徴を前記第3ステップにおいて推定する、請求項1に記載されたはんだ付け検査方法。
【請求項7】
部品実装基板の生産のために実施される複数の工程のうちのリフロー工程までを終了した基板を対象に、この基板の面に向けて配置されたカメラにより当該基板を撮像し、生成された画像中の部品のはんだ付け状態を検査する検査機であって、
前記リフロー工程より前に実施される複数の工程のうちの少なくとも一工程において基板に付加された構成を次の工程を開始する前に計測することを前提として、検査対象のはんだ付け部位のうち前記カメラによる画像では状態を判別しにくい箇所の特徴に関して、前記リフロー工程より前の計測処理で当該はんだ付け部位に対応する箇所に対して得られる計測値との因果関係を特定する処理を行った結果に基づき設定された因果関係情報が、登録される記憶手段と、
前記画像中の検査対象のはんだ付け部位を含む範囲を処理して、はんだの形状を表す特徴データを取得する画像処理手段と、
前記検査対象のはんだ付け部位に対応する箇所に対するリフロー工程より前の計測処理で得られた計測値を入力する計測値入力手段と、
前記検査対象のはんだ付け部位について、当該部位に関して記憶手段に登録されている因果関係情報と前記計測値入力手段が入力した計測値とを用いて、当該はんだ付け部位のうち前記画像では状態を判別しにくい箇所の特徴を推定する推定手段と、
前記画像処理手段が取得した特徴データに推定手段による推定結果を補完して、前記はんだ付け部位の良・不良を判定する判定手段とを、
具備するはんだ付け検査機。
【請求項8】
請求項7に記載されたはんだ付け検査機において、
検査対象の基板に対し、入射角度がそれぞれ異なる複数の方向から光を照射する照明装置と、この照明装置による照明下で前記カメラを作動させることにより、検査用の画像を生成する撮像制御手段とを、さらに具備し、
前記記憶手段には、前記検査対象のはんだ付け部位のうち、部品の近傍位置であって画像では前記照明装置からの光による反射光像が得られないために暗領域となる箇所の傾斜角度と、はんだ印刷工程においてランドに印刷されたクリームはんだに対する計測処理により得られる計測値との因果関係を示す因果関係情報が登録され、
前記画像処理手段は、画像中の検査対象のはんだ付け部位を含む範囲から照明光に対応する反射光像が現れている領域を照明光の方向毎に抽出すると共に、画像中の部品の近傍に生じている暗領域を抽出し、
前記推定手段は、前記検査対象のはんだ付け部位に関して記憶手段に登録されている因果関係情報と前記計測値入力手段が入力した計測値とを用いて、前記暗領域に対応する箇所の傾斜角度を推定し、
前記判定手段は、前記暗領域に前記推定手段により推定された傾斜角度を補完すると共に、各方向からの照明光に対応する反射光像にそれぞれ対応する照明光の入射角度から割り出されるはんだの傾斜角度を適用し、これらの傾斜角度を用いてはんだ付け部位のフィレットのぬれ上がりの適否を判定する、はんだ付け検査機。
【請求項9】
請求項7に記載されたはんだ付け検査機において、
検査対象の基板に対し、縞状のパターン画像を投影するための投影装置と、投影装置に前記パターン画像を縞の並びに沿ってパターンを周期的に移動させながら投影させると共に、毎回の投影のタイミングに合わせて前記カメラを作動させる撮像制御手段とを、さらに具備し、
前記記憶手段には、前記検査対象のはんだ付け部位のうち、部品の近傍位置であって前記パターン画像の反射光像が得られない箇所の高さと、前記はんだ印刷工程においてランドに印刷されたクリームはんだに対する計測処理により得られた計測値との因果関係を示す因果関係情報が登録され、
前記画像処理手段は、前記パターン画像の一周期分の投影が行われる間の撮像で生成された複数の画像を用いて検査対象のはんだ付け部位を含む範囲内の画素毎に、前記一周期分の投影の間にその画素に生じた明るさの変化の位相に基づき当該画素に対応する高さを計測し、この計測結果に基づきはんだのフィレットの高さを表す画素群を抽出すると共に、部品の近傍位置において前記明るさの変化が得られなかったために高さを計測できなかった画素群を抽出し、
前記推定手段は、前記検査対象のはんだ付け部位に関して記憶手段に登録されている因果関係情報と前記計測値入力手段が入力した計測値とを用いて、前記高さが計測できなかった画素群の高さを推定し、
前記判定手段は、前記高さが計測できなかった画素群に前記推定手段により推定された高さを補完し、この画素群と前記はんだのフィレットの高さを表す画素群とにおける各高さの値を用いてはんだ付け部位のフィレットのぬれ上がりの適否を判定する、はんだ付け検査機。
【請求項10】
部品実装基板の生産のために実施される複数の工程のうちのリフロー工程に配備されてリフロー工程後の基板を検査する検査機と、リフロー工程より前の少なくとも一工程に配備されて当該工程後の基板を検査する検査機と、各検査機から通信により検査結果情報を取り込んで、検査機毎の検査結果情報を基板別および検査対象部位別に読出可能に管理する情報管理装置とを具備し、
前記リフロー工程の検査機は、検査対象の基板の面に向けて配置されるカメラと、このカメラにより生成された画像中の検査対象のはんだ付け部位を含む範囲を処理して、はんだの形状を表す特徴データを取得する画像処理手段とを具備し、
前記情報管理装置は、
前記リフロー工程の検査機の検査対象のはんだ付け部位のうち前記カメラによる画像では状態を判別しにくい箇所の特徴に関して、前記リフロー工程より前の工程の検査機の当該はんだ付け部位に対応する箇所に対する計測処理により得られる計測値との因果関係を特定する処理を行った結果に基づき設定された因果関係情報が、登録される記憶手段と、
前記検査対象のはんだ付け部位に対応する箇所に対するリフロー工程より前の工程の検査機による計測処理で得られた計測値を入力する計測値入力手段と、
前記検査対象のはんだ付け部位について、当該部位に関して記憶手段に登録されている因果関係情報と前記計測値入力手段が入力した計測値とを用いて、当該はんだ付け部位のうち前記画像では状態を判別しにくい箇所の特徴を推定する推定手段と、
推定手段による推定結果をリフロー工程の検査機に送信する送信手段とを具備し、
前記リフロー工程の検査機は、前記画像処理手段が取得した特徴データに前記情報管理装置から送信された推定結果を補完して、前記はんだ付け部位の良・不良を判定する判定手段を、さらに具備する基板検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−145484(P2012−145484A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4770(P2011−4770)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】