説明

はんだ印刷用メタルマスクとその印刷方法

【課題】本発明は上記のような実情に鑑みてなされたものであり、凹凸基板のはんだ印刷において、メタルマスクを取り外す工程で基板凹部にダレるはんだを抑制して、ダレによるはんだショート不良を防止するはんだ印刷用メタルマスクとその印刷方法を提供する。
【解決手段】開口穴間に凸部を備えるメタルマスクであって、
前記凸部の側壁面と、前記凸部の側壁面と連続平面上にある前記開口穴の側壁面と、の表面あらさは、前記開口穴の他の側壁面の表面あらさと異なるメタルマスクである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板にはんだ印刷を行うためのメタルマスクに係り、特に凹凸構造を有するプリント基板へのはんだ印刷の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板(以下基板)実装分野において、部品実装表面が凹凸構造の基板が、カメラレンズまわりの部品や車載用途などに使用され始めている。その基板の実装方法の一つに、基板凹部のくぼみ中の電極へクリームはんだ印刷する際、凸部の付いたメタルマスクを用いて印刷する方法がある。
【0003】
図5は従来の凹凸基板56へのクリームはんだ57の印刷方法を示した例である。通常は、ステップS51で凹凸基板56上にメタルマスク51をセットし、ステップS52でクリームはんだ57を印刷し、ステップS53ではメタルマスク51を取り外す。
【0004】
このような工程に用いて凹凸基板56の凹部58にはんだを付着させる場合のメタルマスク51の構造は、通常の印刷のための開口穴59と凹部58への印刷のための凸部53を有した開口穴52を備えている。そして、凸部53のマスク開口穴52は面積が大きい開口穴側壁面と小さい開口穴側壁面を備えている。
【0005】
先行技術として、特許文献1によれば導電性ペーストの転写用の開口穴が形成されたメタルマスクに間歇電解研磨処理を施してなるメタルマスクを使用している。そして、電子部品を高密度に搭載するためのはんだ端子を、クリームはんだをスクリーン印刷で形成する際に、高精細なパターンを高密度、且つ高速に印刷しても、クリームはんだの滲み、版離れの不良や開口穴からのクリームはんだの抜け性の不良に起因するはんだ端子の割れ、抜け、欠け等の欠陥が発生せず、且つ繰り返し印刷してもはんだ端子に欠陥は発生しない提案がされている。
【0006】
また、特許文献2によれば配線パターンのクリームはんだ印刷用の開口穴が設けられたメタルマスクに、間歇電解研磨処理を施した後、該メタルマスク原板の少なくとも開口穴壁面をフッ素樹脂微粒子を含有する金属メッキ皮膜で被覆する。電子部品を高密度に搭載するためのはんだ端子を、クリームはんだをスクリーン印刷で形成する際に、高精細なパターンを高密度、且つ高速に印刷しても、版離れの不良や開口穴からのクリームはんだの抜け性の不良に起因するはんだ端子の割れ、抜け、欠け等の欠陥が発生せず、且つ繰り返し印刷してもはんだ端子に欠陥は発生しない提案がされている。
【0007】
特許文献3によれば、メタルマスクの開口穴の内壁面に、ペルフルオロ(4−ビニルオキシ−1−ブテン)重合物からなるフッ素系樹脂をトリス(パーフルオロブチル)アミンからなる希釈液に溶解した撥水処理剤で、コーティング膜6を形成する。これにより、メタルマスクの開口穴の内壁面とペーストとの滑りが大きくなり、該内壁面と該ペーストとのズリ応力が小さくなって、該開口穴に充填されたペーストの版抜け性が良好になり、被印刷体へのペーストの印刷品質を向上させることができる。 ペーストに対する版抜け性及び撥水性が良好な開口穴側壁面を有するメタルマスク及びその製造方法が提案されている。
【0008】
特許文献4では、メタルマスクの開口穴の内面に、樹脂入り金属の皮膜を設け、はんだ付け不良となる原因を有効に除去でき、印刷品質を向上できると共に、安価にできるメタルマスクが提案されている。
【0009】
特許文献5によれば、はんだペーストの印刷性が優れていて、ファインピッチ回路へのはんだペースト印刷時に用いて有用なメタルマスクが提供されている。 このメタルマスクは、はんだペースト印刷用の開口穴が穿設されているメタルマスク本体の少なくとも開口の壁面が、フッ素系樹脂の微粒子を分散する金属めっき薄膜で被覆されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1〜5の提案は、開口側壁面すべての面を均一で滑らかなあらさにさせる方法であり、今回のような基板凹部側壁にもはんだ印刷する場合、特定箇所のはんだダレ量を抑制することができない。つまり、ステップS53においてメタルマスク51を取り外す場合、基板凹部側壁面に印刷されたクリームはんだ57は、基板表面部よりも高くはんだを堆積させるため、ダレ量が自然と多くなる。そのため、多量にダレた場合、凹部58反対側のはんだ印刷箇所からのダレと相まって接触(ショート)を起こし、良好なはんだ付けができないという問題がある。
【特許文献1】特開2005-305725号公報
【特許文献2】特開2005-170038号公報
【特許文献3】特開2001-301353号公報
【特許文献4】特開平08-244373号公報
【特許文献5】特開平06-115045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたものであり、凹凸基板のはんだ印刷において、メタルマスクを取り外す工程で基板凹部にダレるはんだを抑制して、ダレによるはんだショート不良を防止するはんだ印刷用メタルマスクとその印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の態様のひとつである開口穴間に凸部を備えるメタルマスクであって、前記凸部の側壁面と、前記凸部の側壁面と連続平面上にある前記開口穴の側壁面と、の表面あらさは、前記開口穴の他の側壁面の表面あらさと異なる構成である。
【0013】
好ましくは、前記凸部の側壁面と、前記凸部の側壁面と連続平面上にある前記開口穴の側壁面と、の表面あらさは、前記凸部が挿入される凹凸基板の凹部の深さにより変更してもよい。
【0014】
本発明の他の態様である開口穴間に凸部を備えるメタルマスクのはんだ印刷方法であって、前記凸部の側壁面と、前記凸部の側壁面と連続平面上にある前記開口穴の側壁面と、の表面あらさが、前記開口穴の他の側壁面の表面あらさと異なるメタルマスクを凹凸基板にセットするステップと、前記メタルマスクにはんだを塗布してはんだ印刷をするステップと、前記メタルマスクを基板から取り外すステップと、を行うことを特徴とする。
【0015】
このように、連続開口穴側壁面のあらさが異なるメタルマスクを、凹凸基板へのクリームはんだ印刷に用いる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、凸部の側壁面と、凸部の側壁面と連続平面上にある開口穴の側壁面と、の表面あらさが、開口穴の他の側壁面の表面あらさと異なるメタルマスクを用いてクリームはんだ印刷することで、基板凹部内のはんだのダレを抑制するはんだ印刷が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細を説明する。
(実施例1)
図1はメタルマスクの構造を示す図である。図2はメタルマスク1凸部の構造を示す斜視図である。
【0018】
メタルマスク1は、開口穴2と9、凸部3を備えている。開口穴2の側壁面4の表面あらさは、側壁面の面積の大きさによって調整する。
前記メタルマスク凸部3が挿入される凹凸基板の凹部の深さにより調節する。開口穴9は、基板表面にはんだ印刷する場合の開口穴である。凸部3は開口穴2に挟まれるように配設され、凸部3の側壁面とつながる開口穴2の側壁面から構成される側壁面4を備える。
【0019】
面積の大きい側壁面4は面積の小さい側壁面5と表面あらさ(摩擦)をかえるように、局所的な熱加工を行い融解、蒸散することにより側壁面を加工する。
例えば、開口穴2と9、凸部3をレーザにより形成する場合に、レーザの種類を使い分けることにより側壁面の表面あらさをかえる。
【0020】
通常のYAGレーザやKrFエキシマレーザなどを用いて微細加工をおこなう。レーザは特に限定するものではない。また、加工精度はレーザ光をレンズによりワーク表面に集束した場合のスポット径に依存するので、光学理論により、集束スポット径は集束レンズの焦点距離とレーザ光の波長に比例する。よって、波長が短いほど、また焦点距離が短いほど、集束スポット径は小さくなり、微細加工が可能となる。
【0021】
上記のようにすることで、メタルマスク1の開口穴2と9の側壁面に間歇研磨処理もフッ素皮膜、樹脂入り金属皮膜などの被服をしなくても、レーザ加工のみで行うことができる。また、メタルマスクの製造工数が削減される。
【0022】
また、熱加工レーザや光化学加工+熱加工だけでなく、メタルマスク1の開口穴の加工は、機械加工(ドリル)、フォトプロセスを用いて行い、その後レーザにより開口穴の側壁面を再加工してあらさをかえてもよい。さらに、間歇研磨処理後、フッ素皮膜で被服した後でレーザにより開口穴1の側壁面を再加工してあらさをかえてもよい。また、開口穴2と9や凸部3の先端のエッジ部分のエッジを強調する加工をしてもよい。
【0023】
また、側壁面4の表面あらさは凹凸基板6の凹部の深さにより調整する。深い場合には、側壁面4の表面あらさを、浅いときよりもあらくすることで、ダレを抑制することができる。
【0024】
(実施例2)
図3は凸部の側壁面の表面あらさが異なるメタルマスクを用いてクリームはんだを印刷する工程(ステップ)を示した図である。
【0025】
ステップS1では、メタルマスク1(連続開口側壁面あらさが異なる)を印刷するプリント基板6にセットする。本例では、凸部3のはんだ付着面(側壁面4)は、他の開口穴2の側壁面5に比べあらく加工してある。
【0026】
ステップS2では、クリームはんだ7を印刷する。
ステップS3では、メタルマスク1を取り外す。
図3に示すようにメタルマスク1を取り外す際、はんだが矢印Aの示す方向に凸部3の側壁面により掻きあげられることではんだのダレを抑えることができる。つまり、凸部3の側壁面4の表面加工を他の面(側壁面5)に比べあらくしている分クリームはんだが掻きあげられる。図4に示す距離Dを確保することができる。
【0027】
また、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】メタルマスクの構造を示す図である。
【図2】メタルマスクの構造を示す斜視図である。(メタルマスク凸部付きの面視)
【図3】凸部の側壁面のあらさが異なるメタルマスクを用いてクリームはんだを印刷する工程を示した図である。
【図4】メタルマスクを取り外す際のクリームはんだの状態を示した図である。
【図5】従来の凹凸基板へのクリームはんだの印刷方法を示した図である。
【符号の説明】
【0029】
1 メタルマスク、
2 開口穴(メタルマスク凸部の側壁面と連続平面の開口穴側壁面を有する)、
3 凸部、4 側壁面(面積大)、5 側壁面(面積小)、6 凹凸基板
7 クリームはんだ、8 基板凹部、9 開口穴(通常)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口穴間に凸部を備えるメタルマスクであって、
前記凸部の側壁面と、前記凸部の側壁面と連続平面上にある前記開口穴の側壁面と、の表面あらさは、前記開口穴の他の側壁面の表面あらさと異なることを特徴とするメタルマスク。
【請求項2】
前記凸部の側壁面と、前記凸部の側壁面と連続平面上にある前記開口穴の側壁面と、の表面あらさは、前記凸部が挿入される凹凸基板の凹部の深さにより変更することを特徴とする請求項1に記載のメタルマスク。
【請求項3】
開口穴間に凸部を備えるメタルマスクのはんだ印刷方法であって、
前記凸部の側壁面と、前記凸部の側壁面と連続平面上にある前記開口穴の側壁面と、の表面あらさが、前記開口穴の他の側壁面の表面あらさと異なるメタルマスクを凹凸基板にセットするステップと、
前記メタルマスクにはんだを塗布してはんだ印刷をするステップと、
前記メタルマスクを基板から取り外すステップと、
を行うことを特徴とする、はんだ印刷方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−117989(P2008−117989A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301124(P2006−301124)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】