説明

めっき樹脂成形体

【課題】 めっきの密着強度の高いめっき樹脂成形体の提供。
【解決手段】 樹脂成形体の表面に形成された金属めっき層を有するめっき樹脂成形体であり、金属めっき層形成前の樹脂成形体が、表面に親水性ポリマー層を有し、かつクロム及び/又はマンガンを含む酸によりエッチング処理されていないものであるめっき樹脂成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき強度が高いめっき樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を軽量化する目的から、自動車部品としてABS樹脂やポリアミド樹脂等の樹脂成形体が使用されており、この樹脂成形体に高級感や美感を付与するため、銅、ニッケル等のめっきが施されている。
【0003】
従来、ABS樹脂等の成形体にめっきを施す場合、樹脂成形体とめっき層との密着強度を高めるため、脱脂工程の後に樹脂成形体を粗面化するエッチング工程が必須である。例えば、ABS樹脂成形体やポリプロピレン成形体をめっきする場合、脱脂処理の後に、クロム酸浴(三酸化クロム及び硫酸の混液)を用い、65〜70℃、10〜15分でエッチング処理する必要があり、廃水には有毒な6価のクロム酸イオンが含まれる。このため、6価のクロム酸イオンを3価のイオンに還元した後に中和沈殿させる処理が必須となり、廃水処理時の問題がある。
【0004】
このように現場での作業時の安全性や廃水による環境への影響を考慮すると、クロム酸浴を使用したエッチング処理をしないことが望ましいが、その場合には、ABS樹脂等から得られる成形体へのめっき層の密着強度を高めることができないという問題がある。
【0005】
特許文献1〜3の発明は、このような従来技術の問題を解決し、クロム酸浴を使用したエッチング処理を不要としたにも拘わらず、高い密着強度を有する金属めっき層を有するめっき樹脂成形体が得られたものである。
【特許文献1】特開2003−82138号公報
【特許文献2】特開2003−166067号公報
【特許文献3】特開2004−2996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、樹脂成形体とめっき層の密着強度が高く、外観も美しいめっき樹脂成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、課題の解決手段として、樹脂成形体の表面に形成された金属めっき層を有するめっき樹脂成形体であり、
金属めっき層形成前の樹脂成形体が、表面に親水性ポリマー層を有し、かつクロム及び/又はマンガンを含む酸によりエッチング処理されていないものであるめっき樹脂成形体を提供する。
【0008】
このように表面に親水性ポリマー層を有する樹脂成形体を用いることにより、後述するとおり、膨潤を含むメカニズムにより、めっき強度が高められる。
【0009】
本発明は、課題の他の解決手段として、金属めっき層形成前の樹脂成形体が、疎水性樹脂成形体の表面に化学的手段により親水性ポリマー層が形成されたものである、請求項1記載のめっき樹脂成形体を提供する。
【0010】
本発明は、課題の他の解決手段として、金属めっき層形成前の樹脂成形体が、疎水性樹脂成形体と官能基を有するモノマーを反応させた後、更に前記官能基と反応可能な基と親水基を有するモノマーを反応させて親水性ポリマー層が形成されたものである、請求項1又は2記載のめっき樹脂成形体を提供する。
【0011】
本発明は、課題の他の解決手段として、金属めっき層形成前の樹脂成形体が、疎水性樹脂成形体に親水性ポリマー液が塗布乾燥されたものである、請求項1記載のめっき樹脂成形体を提供する。
【0012】
本発明は、課題の他の解決手段として、金属めっき層形成前の樹脂成形体が、疎水性樹脂成形体の表面を溶媒で溶解させた後、前記溶媒に溶解する親水性ポリマー液が塗布乾燥されたものである、請求項1又は4記載のめっき樹脂成形体を提供する。
【0013】
本発明は、課題の他の解決手段として、樹脂成形体と金属めっき層との密着強度(JIS H8630)の最高値が10kPa以上である請求項1〜6のいずれかに記載のめっき樹脂成形体を提供する。
【0014】
本発明は、課題の他の解決手段として、自動車部品用途である請求項1〜7のいずれかに記載のめっき樹脂成形体を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のめっき樹脂成形体は、樹脂成形体と金属めっき層との密着強度が高く、美しい外観を有しており、クロム酸エッチング等の処理を不要とし、簡単な製造工程により得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<樹脂成形体>
本発明のめっき樹脂成形体は、金属めっき層形成前の樹脂成形体の表面に親水性ポリマー層を有し、かつクロム及び/又はマンガンを含む酸によりエッチング処理されていないものであるが、前記樹脂成形体の製造法は、化学的手段と物理的手段を主とする方法に大別できる。
【0017】
(1)化学的手段を適用して樹脂成形体を製造する方法
本発明のめっき樹脂成形体を製造する際に用いる樹脂成形体は、疎水性樹脂からなり、疎水性樹脂成形体の表面に化学的手段により親水性ポリマー層が形成されたものである。
【0018】
まず、疎水性樹脂を用い、射出成形等の公知の方法により、所望形状に成形した疎水性樹脂成形体を得る。
【0019】
次に、所望形状の疎水性樹脂成形体(官能基を有している)と、前記疎水性樹脂が有する官能基(以下「樹脂官能基」という)と反応できる官能基を有する開始剤(以下、この官能基を「開始剤官能基」という)を反応させ、樹脂成形体表面に開始剤を導入する。
【0020】
例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレンからなる樹脂成形体にイソシアネート基を有する開始剤を反応させることで、疎水性樹脂成形体の表面に開始剤を導入する。
【0021】
次に、開始剤を導入した疎水性樹脂成形体に対して、リビングラジカル重合触媒を用いて親水基を有するモノマーを反応させ、親水性ポリマー層を形成する。
【0022】
前記モノマーとしては、二重結合と共に、−COOH、−O−、−OH、−NH2、−NHCONH2、−(OCH2CH2)n−、−SO3H、−SO3M、−OSO3H、−OSO3M、−COOM、−NR3X(M:アルカリ金属又は−NH4,Rはアルキル基,Xはハロゲン原子)等の親水基を有するものを挙げることができる。
【0023】
このようにして、表面に親水性ポリマー層を有する疎水性樹脂成形体を得ることができ、この疎水性樹脂成形体を用いて、クロム及び/又はマンガンを含む酸によるエッチング処理をしないでめっき樹脂成形体を得る。
【0024】
(2)化学的手段以外の方法を適用して樹脂成形体を製造する方法
(2-1)疎水性樹脂成形体(上記の樹脂官能基は不要である。)に親水性ポリマーを塗布し、乾燥することにより、疎水性樹脂成形体に親水性ポリマー層を形成する方法。
【0025】
(2-2)疎水性樹脂成形体(上記の樹脂官能基は不要である。)の表面を溶媒で溶解させた後、前記溶媒に溶解する親水性ポリマー液を塗布し、乾燥することにより、疎水性樹脂成形体に親水性ポリマー層を形成する方法。
【0026】
まず、所望形状に成形した疎水性樹脂成形体の表面に、前記疎水性樹脂を溶解することができる溶媒を塗布等して、表面部分を溶解させる。
【0027】
次に、表面部分が溶解した状態の疎水性樹脂成形体に親水性ポリマー液を塗布したのち、乾燥して親水性ポリマー層を形成する。このとき、親水性ポリマーは、疎水性樹脂を溶解させた溶媒に溶解するものを選択使用する。
【0028】
疎水性樹脂成形体と親水性ポリマー層の形状及び厚みは特に制限されないが、同一形状で、疎水性樹脂成形体の厚み(T1)が大きく、親水性ポリマー層の厚み(T2)が薄い方が好ましく、T2が500nm以下、好ましくは100nm以下であることが好ましい。
【0029】
このようにして、表面に親水性樹脂成形体(親水性ポリマー層)を有する疎水性樹脂成形体を得ることができ、この疎水性樹脂成形体を用いて、クロム及び/又はマンガンを含む酸によるエッチング処理をしないでめっき樹脂成形体を得る。
【0030】
樹脂成形体の製造に用いる疎水性樹脂は、23℃水中下、24hr後の吸水率(ISO62)が0.6%未満のものが好ましい。このような飽和吸水率を満たすものとしては、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、液晶ポリマー、ポリフエニレンサルファイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等を挙げることができる。
【0031】
オレフィン系樹脂は、炭素数2〜8のモノオレフィンを主たる単量体成分とする重合体であり、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン−1、これらの変性物等から選ばれる1種以上を挙げることができ、これらの中でもポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンが好ましい。
【0032】
スチレン系樹脂は、スチレン及びα置換、核置換スチレン等のスチレン誘導体の重合体を挙げることができる。また、これら単量体を主として、これらとアクリロニトリル、アクリル酸並びにメタクリル酸のようなビニル化合物及び/又はブタジエン、イソプレンのような共役ジエン化合物の単量体から構成される共重合体も含まれる。例えばポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、スチレン−メタクリレート共重合体(MS樹脂)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS樹脂)等を挙げることができる。
【0033】
また、ポリスチレン系樹脂として、ポリアミド系樹脂との相溶性や反応性をあげるためのカルボキシル基含有不飽和化合物が共重合されているスチレン系共重合体を含んでもよい。カルボキシル基含有不飽和化合物が共重合されているスチレン系共重合体は、ゴム質重合体の存在下に、カルボキシル基含有不飽和化合物及び必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体を重合してなる共重合体である。
【0034】
成分を具体的に例示すると、
1)カルボキシル基含有不飽和化合物を共重合したゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニルモノマーを必須成分とする単量体あるいは芳香族ビニルとカルボキシル基含有不飽和化合物とを必須成分とする単量体を重合して得られたグラフト重合体、
2)ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニルとカルボキシル基含有不飽和化合物とを必須成分とする単量体を共重合して得られたグラフト共重合体、
3)カルボキシル基含有不飽和化合物が共重合されていないゴム強化スチレン系樹脂とカルボキシル基含有不飽和化合物と芳香族ビニルとを必須成分とする単量体の共重合体との混合物、
4)上記1)、2)とカルボキシル基含有不飽和化合物と芳香族ビニルとを必須とする共重合体との混合物、
5)上記1)〜4)と芳香族ビニルを必須成分とする共重合体との混合物がある。
【0035】
上記1)〜5)において、芳香族ビニルとしてはスチレンが好ましく、また芳香族ビニルと共重合する単量体としてはアクリロニトリルが好ましい。カルボキシル基含有不飽和化合物は、スチレン系樹脂中、好ましくは0.1〜8質量%であり、より好ましくは0.2〜7質量%である。
【0036】
疎水性樹脂として2種以上の樹脂を組み合わせることもでき、その場合には、必要に応じて公知の相溶化剤を配合することができる。
【0037】
樹脂成形体の製造に用いる親水性ポリマーは、23℃水中下、24hr後の吸水率(ISO62)が0.6%以上のものが好ましい。このような飽和吸水率を満たすものとしては、ポリアミド系樹脂、アクリル酸塩系樹脂、セルロース系樹脂、ビニールアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂等が好ましく、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂がより好ましく、ポリアミド系樹脂が特に好ましい。
【0038】
ポリアミド系樹脂は、ジアミンとジカルボン酸とから形成されるポリアミド樹脂及びそれらの共重合体である。
【0039】
例えば、ナイロン66、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカナミド(ナイロン6・12)、ポリドデカメチレンドデカナミド(ナイロン1212)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)及びこれらの混合物や共重合体;ナイロン6/66、6T成分が50モル%以下であるナイロン66/6T(6T:ポリヘキサメチレンテレフタラミド)、6I成分が50モル%以下であるナイロン66/6I(6I:ポリヘキサメチレンイソフタラミド)、ナイロン6T/6I/66、ナイロン6T/6I/610等の共重合体;ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリ(2−メチルペンタメチレン)テレフタルアミド(ナイロンM5T)、ポリ(2−メチルペンタメチレン)イソフタルアミド(ナイロンM5I)、ナイロン6T/6I、ナイロン6T/M5T等の共重合体が挙げられ、そのほかアモルファスナイロンのような共重合ナイロンでもよく、アモルファスナイロンとしてはテレフタル酸とトリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合物等を挙げることができる。
【0040】
更に、環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物及びこれらの成分からなる共重合体、具体的には、ナイロン6、ポリ−ω−ウンデカナミド(ナイロン11)、ポリ−ω−ドデカナミド(ナイロン12)等の脂肪族ポリアミド樹脂及びこれらの共重合体、ジアミン、ジカルボン酸とからなるポリアミドとの共重合体、具体的にはナイロン6T/6、ナイロン6T/11、ナイロン6T/12、ナイロン6T/6I/12、ナイロン6T/6I/610/12等及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0041】
ポリアミド系樹脂としては、上記の中でもPA(ナイロン)6、PA(ナイロン)66、PA(ナイロン)6/66が好ましい。
【0042】
親水性樹脂として2種以上の樹脂を組み合わせることもでき、その場合には、必要に応じて公知の相溶化剤を配合することができる。
【0043】
なお、疎水性樹脂及び親水性樹脂には、めっき樹脂成形体の用途に応じて、機械的強度等を付与するため、公知の各種添加剤を配合することができる。
【0044】
<めっき樹脂成形体>
上記した樹脂成形体を用い、特許文献1〜3と同じ方法を適用して、めっき樹脂成形体を製造することができる。
【0045】
本発明のめっき樹脂成形体は、樹脂成形体と金属めっき層との密着強度(JIS H8630)は、好ましくは最高値が10kPa以上、より好ましくは最高値が50kPa以上、更に好ましくは最高値が100kPa以上、特に好ましくは最高値が150kPa以上である。
【0046】
このような強固な金属めっき層が形成される機構は、下記のとおりであると推測される。上記した樹脂成形体に対して、酸等による接触処理をした際、親水性ポリマー層が膨潤して膨潤層が形成される。そして、この膨潤層に触媒成分が浸透して行き、この触媒成分を核として、めっき金属が核に付着・成長して、ネットワーク状の立体構造を形成する。このようにして膨潤層内部からめっきが成長して行く結果、樹脂成形体表面に高い密着強度を有する金属めっき層が形成されるものと考えられる。
【0047】
従来、めっき層の密着強度を高めるためには、高濃度の酸又は塩基を用いたエッチング処理により、樹脂成形体の表面を粗くすることが望ましいとされていたものであるが、本発明では、粗面化処理をすることなく、金属めっき層の密着強度を高めることができるものであり、作業時の安全性も高められ、廃液処理も容易になるという効果も合わせて得ることができる。
【0048】
本発明のめっき樹脂成形体は、各種用途に適用することができるが、特にエンブレム、ホイールキャップ、内装部品、外装部品等の自動車部品用途として適している。
【実施例】
【0049】
実施例1
<樹脂成形体の製造>
(開始剤の導入)
乾燥させた1%無水マレイン酸変性ポリプロピレンの射出成形片2.60gに、不活性ガス雰囲気下で、乾燥トルエン15mLと4−(クロロスルホニル)フェニルイソシアネート0.10gを添加して攪拌した後、80℃に加温して2時間反応させた。反応後、成形片を取り出し、トルエンで洗浄した後、減圧乾燥した。
【0050】
(グラフトポリマーの合成)
開始剤を導入した成形片1.37gに、不活性ガス雰囲気下で、乾燥トルエン15mLと、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート3.56gと、リビングラジカル重合触媒〔公知の銅系触媒又はルテニウム系触媒)を添加して十分に攪拌した後、80℃に加温して24時間反応させた。反応後、成形片を取り出し、トルエンで洗浄した後に減圧乾燥して、目的とする親水性ポリマー層を有する2種類の樹脂成形体(成形体1:銅系触媒を用いたもの,成形体2:ルテニウム系触媒を用いたもの)を得た。2種類の樹脂成形体を用いて、以下の方法によりめっき樹脂成形体を得た。
【0051】
<めっき樹脂成形体の製造>
i)脱脂工程:試験片を、エースクリンA−220(奥野製薬工業(株)製)50g/L水溶液(液温50℃)に20分浸漬した。
【0052】
ii)酸による接触処理工程:試験片を、35質量%塩酸50mL/L(液温25℃)中に5分間浸漬した。
【0053】
iii)触媒付与工程:試験片を、35質量%塩酸200mL/Lと、キャタリストC(奥野製薬工業(株)製)40ml/L水溶液との混合水溶液(液温25℃)中に3分間浸漬した。
【0054】
iv)第1活性化工程:試験片を、98質量%硫酸60mL/L水溶液(液温40℃)中に3分間浸漬した。
【0055】
v)第2活性化工程:試験片を、水酸化ナトリウム15g/L水溶液(液温40℃)中に2分間浸漬した。
【0056】
vi)ニッケルの無電解めっき工程:試験片を、化学ニッケルHR−TA(奥野製薬工業(株)製)150mL/Lと、化学ニッケルHR−TB(奥野製薬工業(株)製)150ml/Lの混合水溶液(液温40℃)に5分間浸漬した。
【0057】
vii)酸活性化工程:試験片を、トップサン(奥野製薬工業(株)製)100g/L水溶液(液温25℃)に1分間浸漬した。
【0058】
viii)銅の電気めっき工程:試験片を、下記組成のめっき浴(液温25℃)に浸漬して、120分間電気めっきを行った。
(めっき浴の組成)
硫酸銅(CuSO4・5H2O)200g/L
硫酸(98%)50g/L
塩素イオン(Cl-)5mL/L、
トップルチナ2000MU(奥野製薬工業(株)製)5ml/L
トップルチナ2000A(奥野製薬工業(株)製)0.5ml/L
実施例で得られためっき樹脂成形体を用い、JIS H8630附属書6に記載された密着試験方法により、樹脂成形体と金属めっき層との密着強度(最高値)を測定した。その結果、密着強度は成形体1が42kPa、成形体2が68kPaであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形体の表面に形成された金属めっき層を有するめっき樹脂成形体であり、
金属めっき層形成前の樹脂成形体が、表面に親水性ポリマー層を有し、かつクロム及び/又はマンガンを含む酸によりエッチング処理されていないものであるめっき樹脂成形体。
【請求項2】
金属めっき層形成前の樹脂成形体が、疎水性樹脂成形体の表面に化学的手段により親水ポリマー層が形成されたものである、請求項1記載のめっき樹脂成形体。
【請求項3】
金属めっき層形成前の樹脂成形体が、疎水性樹脂成形体と官能基を有するモノマーを反応させた後、更に前記官能基と反応可能な基と親水基を有するモノマーを反応させて親水性ポリマー層が形成されたものである、請求項1又は2記載のめっき樹脂成形体。
【請求項4】
金属めっき層形成前の樹脂成形体が、疎水性樹脂成形体に親水性ポリマー液が塗布乾燥されたものである、請求項1記載のめっき樹脂成形体。
【請求項5】
金属めっき層形成前の樹脂成形体が、疎水性樹脂成形体の表面を溶媒で溶解させた後、前記溶媒に溶解する親水性ポリマー液が塗布乾燥されたものである、請求項1又は4記載のめっき樹脂成形体。
【請求項6】
樹脂成形体と金属めっき層との密着強度(JIS H8630)の最高値が10kPa以上である請求項1〜5のいずれかに記載のめっき樹脂成形体。
【請求項7】
自動車部品用途である請求項1〜6のいずれかに記載のめっき樹脂成形体。


【公開番号】特開2006−265673(P2006−265673A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−87887(P2005−87887)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】