説明

アイドルストップ制御装置

【課題】多様な乗員に対応した車内快適性を確保しつつ、燃費性能の悪化を抑制することができるアイドルストップ制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、アイドルストップ許可条件が成立したら車両用エンジンを停止するアイドルストップ実行部と、アイドルストップ実行中にアイドルストップ解除条件が成立したらエンジンを始動するアイドルストップ解除部と、を備える。またアイドルストップ解除条件が成立する前に乗員がアイドルストップを中止する意思を示したらエンジンを始動するアイドルストップ中止部も備える。さらに車内環境の快適性を判定する空調条件の判定基準値を、アイドルストップ中止部が実行されたときの空調状態に基づいて変更する空調判定基準値変更部を備える。そして空調条件は少なくともアイドルストップ許可条件又はアイドルストップ解除条件に含まれることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アイドルストップ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両停止時又は低車速での減速走行時にエンジンを停止する、いわゆるアイドルストップが普及しつつある。通常の車両は、エアコンディショナー(以下「エアコン」と略す)用のコンプレッサーがエンジンによって駆動されるので、アイドルストップ制御によってエンジンが停止するとエアコンコンプレッサーも作動しなくなる。すると車内温度が上昇し、乗員が不快に感じることがある。
【0003】
そこで特許文献1では、吹き出し空気温度が、乗員自らダイヤル操作で設定した温度よりも高いときには、冷房制御を優先するために、アイドルストップを強制的に解除してエアコンコンプレッサーを始動する。すなわち特許文献1では、乗員の冷房温度の好みに応じて、アイドルストップ中の空調を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−240459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述した従来制御では、アイドルストップ解除条件を、乗員自らが手動で設定するので、ひとたび設定された冷房優先制御が通常制御に戻されることなく継続してしまうことがある。このようになっては、アイドルストップを実施する機会が減り、燃費性能が悪化する。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、多様な乗員に対応した車内快適性を確保しつつ、燃費性能の悪化を抑制することができるアイドルストップ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
本発明は、動力の一部でエアコンコンプレッサーを駆動する車両用エンジンのアイドルストップを制御する装置である。そしてアイドルストップ許可条件が成立したらエンジンのアイドル運転を停止するアイドルストップ実行部と、アイドルストップ実行中にアイドルストップ解除条件が成立したらアイドルストップを解除してエンジンを始動するアイドルストップ解除部と、を備える。またアイドルストップ実行中であって前記アイドルストップ解除条件が成立する前に乗員がアイドルストップを中止する意思を示したらアイドルストップを中止してエンジンを始動するアイドルストップ中止部も備える。さらに車内環境の快適性を判定する空調条件の判定基準値を、前記アイドルストップ中止部が実行されたときの空調状態に基づいて変更する空調判定基準値変更部を備える。そして前記空調条件は少なくとも前記アイドルストップ許可条件又は前記アイドルストップ解除条件に含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乗員によってアイドルストップが中止されたときの空調状態を空調条件に反映できるので、多様な乗員の好みに対応したアイドルストップ許可条件又はアイドルストップ解除条件が得られる。このため乗員が自らアイドルストップを中止する機会がなくなり、過度の冷房要求によるアイドルストップ時間の短縮やアイドルストップ回数の低下を防止できる。そして多様な乗員に対応した車内快適性を確保しつつ、アイドルストップ時間を可能な限り確保して燃費性能の悪化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では図面等を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明によるアイドルストップ制御装置100を使用する全体システムの一例を示す図である。
【0011】
アイドルストップ制御装置100は、車両に搭載されたエンジン1と、空調装置2と、コントローラー3と、アイドルストップ中止スイッチ4と、車室内温度センサー5と、車室内温度設定ダイヤル6と、エアコンスイッチ7と、を備える。
【0012】
エンジン1は直列4気筒エンジンである。エンジン1は、どのような気筒列でもよい。エンジン1のクランク軸1aは片端にクランクプーリー1bが取り付けられる。クランクプーリー1b及び空調装置2のコンプレッサー21にベルト10が架けられる。
【0013】
空調装置2は、コンプレッサー21と、コンデンサー22と、冷却ファン23と、膨張弁24と、空調ダクト25と、ブロアファン26と、エバポレーター27と、エバポレーター温度センサー28と、を備える。
【0014】
コンプレッサー21は、回転軸21aの一端部に設けられたコンプレッサープーリー21bを介して、ベルト10でエンジン1のクランクプーリー1bと連係される。回転軸21aとコンプレッサープーリー21bとの間には、電磁クラッチ11が介装される。電磁クラッチ11を締結すると、コンプレッサー21の回転軸21aがエンジン1のクランク軸1aに同期して回転する。これにより、コンプレッサー21は冷媒ガスを吸入・圧縮し、高温・高圧になった冷媒ガスをコンデンサー22へ吐出する。
【0015】
コンプレッサー21は、例えば冷媒ガスの吐出量が変更可能な、斜板形の可変容量コンプレッサーである。コンプレッサー21には圧力制御弁(図示せず)が設けられており、コントローラー3が圧力制御弁に設けられた電磁コイルへの通電量を制御することで、内部の斜板角度が変更され、冷媒ガスの吐出量が変更される。コンプレッサー21を駆動するのに必要なエンジンの動力は、冷媒ガスの吐出量が大きくなるほど大きくなる。
【0016】
コンデンサー22は、コンプレッサー21から送り込まれてきた高温・高圧の冷媒ガスを冷却して液化する。コンデンサー22は、ラジエーター(図示せず)の前面に設けられ、走行風によって冷却される。
【0017】
冷却ファン23は、ラジエーターの後方に設けられる。冷却ファン23は、バッテリー(図示せず)からの電力によって、車両停車時や低速走行時などに駆動されて強制的に空気を吸い込み、ラジエーターの放熱効率を高める。また、コンデンサー22に当たる風量が不足しているときにも駆動されて強制的に空気を吸い込み、コンデンサー22の冷却効率を高める。
【0018】
膨張弁24は、コンデンサー22で液化された液冷媒を、減圧・膨張させて低温・低圧の液冷媒にする。膨張弁24は、エバポレーター27の内部を低圧にする関所の働きをする。
【0019】
空調ダクト25は、一方の開口端に外気又は内気を導入する空気取入口25aを備え、他方の開口端に車室内に連通する吹き出し口25bを備える。空調ダクト25の内部には、ブロワファン26と、エバポレーター27と、エバポレーター温度センサー28と、が設けられる。
【0020】
ブロワファン26は、バッテリーからの電力によって駆動される。ブロワファン26は、空気取込口25aから吸入した空気をエバポレーター27の周囲に吹き付ける。
【0021】
エバポレーター27は、ブロワファン26によって吹き付けられてエバポレーター27の周囲を通過する空気から熱を奪って、冷たい空気にする。エバポレーター27の内部では、膨張弁34で低温・低圧になった液冷媒が奪った熱によって急激に蒸発する。そしてエバポレーター27の出口付近では完全な気体の冷媒ガスになる。エバポレーター27によって冷たくなった空気は、吹き出し口25bへと流れ、車室内を冷房する。
【0022】
エバポレーター温度センサー28は、エバポレーター27の出口付近に設けられる。エバポレーター温度センサー28は、エバポレーター27の温度を検出する。
【0023】
コントローラー3は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピューターで構成される。
【0024】
コントローラー3には、エバポレーター温度センサー28、アイドルストップ中止スイッチ4、車室内温度センサー5、車室内温度設定ダイヤル6、エアコンスイッチ7などからの信号が入力される。また、コントローラー3は、車室内が設定された温度になるように、エバポレーター27の温度を指標にして空調装置2をフィードバック制御する。
【0025】
アイドルストップ中止スイッチ4は、車室内に設けられる。アイドルストップ中止スイッチ4は、乗員がアイドルストップ実行中に何らかの理由でアイドルストップを中止したい場合に乗員の意思に基づいて押される。アイドルストップ中止スイッチ4は、独立して設けられるスイッチでも、アイドルストップ中にエアコンスイッチ7を押すことで代用してもよい。アイドルストップ中止スイッチ4が一度押されたら、イグニッションキーがオフにされてエンジン1が停止するまでアイドルストップは禁止される。
【0026】
車室内温度センサー5は、車室内に設けられる。車室内温度センサー5は、車室内の温度が実際に何度であるかを検出して、コントローラー3に送信する。
【0027】
車室内温度設定ダイヤル6は、車室内の例えばエアコン操作パネル(図示せず)に設けられる。車室内温度設定ダイヤル6は、乗員によって車室内の目標温度がダイヤル設定される。この目標温度は、エアコンの設定温度としてコントローラー3に送信される。
【0028】
エアコンスイッチ7は、車室内のエアコン操作パネルに設けられる。エアコンスイッチ7が乗員によってONにされると、コントローラー3はエアコンの設定温度になるように電磁クラッチ11を締結してコンプレッサー21を駆動する。
【0029】
以下では具体的なアイドルストップ制御ロジックについてフローチャートに沿って説明する。
【0030】
図2は、本発明によるアイドルストップ制御装置100の動作を説明するフローチャートでる。なおアイドルストップ制御装置100(コントローラー3)は、この処理を微少時間(たとえば10msec)サイクルで繰り返し実行する。ところで、後述するアイドルストップ許可または解除を行う基準となる空調条件には、アイドルストップ許可エバポレーター温度Ta、アイドルストップ解除エバポレーター温度Tb、アイドルストップ許可室温差ΔRa及びアイドルストップ解除室温差ΔRbが所定の範囲内、すなわち、判定基準値(閾値)に対して所定の側にあることなどが含まれるが、詳細は後述する。
【0031】
ステップS1において、コントローラー3はアイドルストップ許可条件のうち一般条件が成立したか否かを判定する。一般条件とは、車速がゼロであること、バッテリー状態やエンジン水温が所定状態であること、ブレーキペダルが踏まれていること、などである。一般条件が成立した場合は、コントローラー3はステップS2に処理を移行する。一般条件が成立していない場合は、コントローラー3は処理を抜ける。
【0032】
ステップS2において、コントローラー3はアイドルストップ許可条件のうち空調条件が成立したか否かを判定する。ここでいう空調条件とは、エバポレーター27の温度T(以下、エバポ温度T)がアイドルストップ許可エバポ温度Taよりも低く、かつエアコンの設定温度と車室内温度との室温差ΔR(以下、室温差ΔR)がアイドルストップ許可室温差ΔRaよりも小さい、ことである。空調条件が成立した場合は、コントローラー3はステップS3に処理を移行する。空調条件が成立していない場合は、コントローラー3は処理を抜ける。
【0033】
ステップS3において、コントローラー3はアイドルストップ禁止フラグが1にセットされているか否かを判定する。アイドルストップ禁止フラグが1にセットされているとき、アイドルストップが禁止される。アイドルストップ禁止フラグが1にセットされている場合は、コントローラー3は処理を抜ける。アイドルストップ禁止フラグが1にセットされていない場合は、コントローラー3はステップS4に処理を移行する。
【0034】
ステップS4において、コントローラー3はエンジン1を停止する。すなわちアイドルストップが実行される。
【0035】
ステップS5において、コントローラー3はアイドルストップ中止スイッチ4が押されたか否かを判定する。アイドルストップ中止スイッチ4が押されていない場合は、コントローラー3はステップS6に処理を移行する。アイドルストップ中止スイッチ4が押された場合は、コントローラー3はステップS7に処理を移行する。
【0036】
ステップS6において、コントローラー3はアイドルストップ解除条件が成立したか否かを判定する。アイドルストップ解除条件とは、アクセルペダルが踏まれるといった発進動作が確認されること、バッテリー状態やエンジン水温が許可範囲から外れること、などである。またアイドルストップ解除条件には空調条件として、エバポ温度Tがアイドルストップ解除エバポ温度Tbよりも高くなった、又は室温差ΔRがアイドルストップ解除室温差ΔRbよりも大きくなった、ことが含まれる。これらのアイドルストップ解除条件のうち、どれかひとつでも満たせばアイドルストップ解除条件が成立する。アイドルストップ解除条件が成立した場合は、コントローラー3はステップS8に処理を移行する。アイドルストップ解除条件が成立していない場合は、コントローラー3は処理を抜ける。
【0037】
ステップS7において、コントローラー3はアイドルストップ空調条件の判定基準値下降変更処理を実行する。ここでいう空調条件の判定基準値とは、アイドルストップ許可エバポ温度Ta、アイドルストップ解除エバポ温度Tb、アイドルストップ許可室温差ΔRa及びアイドルストップ解除室温差ΔRbに対して設けられた所定値(閾値)である。ステップS7においては、車内環境の快適性を高める、すなわち冷房能力を高めるために、これらの判定基準値を下げる処理を行うものである。処理の詳細は後述する。
【0038】
ステップS8において、コントローラー3はアイドルストップ空調条件の判定基準値上昇変更処理をする。処理の詳細は後述する。
【0039】
ステップS9において、コントローラー3はエンジン1を再始動する。すなわちアイドルストップが乗員によって中止される。
【0040】
ステップS10において、コントローラー3はエンジン1を再始動する。すなわちアイドルストップが解除される。
【0041】
ステップS11において、コントローラー3はアイドルストップを禁止する。コントローラー3はアイドルストップ禁止フラグをゼロから1にセットする。アイドルストップ禁止フラグの情報は、イグニッションキーがオフになるまで保持される。
【0042】
次に図3を参照して、ステップS7におけるアイドルストップ空調条件の判定基準値下降変更処理について詳細を説明する。図3は、アイドルストップ空調条件の判定基準値下降変更処理を説明するフローチャートである。
【0043】
ステップS701において、コントローラー3はアイドルストップ解除連続回数Nをゼロにする。アイドルストップ解除連続回数とは、アイドルストップ中止スイッチ4ではなくアイドルストップ解除条件の成立によるアイドルストップ解除が連続して続いた回数である。アイドルストップ解除連続回数Nは、コントローラー3に記憶され、イグニッションキーがオフされてもリセットされない。
【0044】
ステップS702において、コントローラー3はアイドルストップ中止スイッチが押されたときのエバポ温度Tと、室温差ΔRと、アイドルストップが実行されてからアイドルストップ中止スイッチ4が押されるまでのアイドルストップ時間sと、を検出する。
【0045】
ステップS703において、コントローラー3はアイドルストップ時間sが所定時間s1よりも短いか否かを判定する。アイドルストップ時間sが所定時間s1よりも短い場合は、コントローラー3はステップS705に処理を移行する。アイドルストップ時間sが所定時間s1以上である場合は、コントローラー3はステップS704に処理を移行する。
【0046】
ステップS704において、コントローラー3はアイドルストップ時間sが所定時間s2よりも長いか否かを判定する。ここで所定時間s2は所定時間s1よりも長い。アイドルストップ時間sが所定時間s2よりも長い場合は、コントローラー3はステップS709に処理を移行する。アイドルストップ時間sが所定時間s2以下である場合は、コントローラー3は処理を抜ける。
【0047】
ステップS705において、コントローラー3はエバポ温度Tがアイドルストップ許可温度範囲内(Ta1<T<Ta2)であるか否かを判定する。アイドルストップ許可温度範囲は、予め多様な乗員が不快に感じる温度を集計して、ばらつきを考慮して設定した温度範囲である。エバポ温度Tがアイドルストップ許可温度範囲内であれば乗員は空調状態を不快に感じてアイドルストップ中止スイッチ4を押したと判断する。エバポ温度Tがアイドルストップ許可温度範囲内である場合は、コントローラー3はステップS706に処理を移行する。エバポ温度Tがアイドルストップ許可温度範囲外である場合は、コントローラー3はステップS707に処理を移行する。
【0048】
ステップS706において、コントローラー3はアイドルストップ許可エバポ温度TaをδTadだけ下げた値に変更する。
【0049】
ステップS707において、コントローラー3は室温差ΔRがアイドルストップ許可室温差範囲内(ΔRa1<ΔR<ΔRa2)であるか否かを判定する。アイドルストップ許可室温差範囲は、予め多様な乗員が不快に感じる室温差を集計して、ばらつきを考慮して設定した室温差範囲である。室温差ΔRがアイドルストップ許可室温差範囲内であれば乗員は空調状態を不快に感じてアイドルストップ中止スイッチ4を押したと判断する。室温差ΔRがアイドルストップ許可室温差範囲内である場合は、コントローラー3はステップS708に処理を移行する。室温差ΔRがアイドルストップ許可室温差範囲外である場合は、コントローラー3は処理を抜ける。
【0050】
ステップS708において、コントローラー3はアイドルストップ許可室温差ΔRaをδRadだけ下げた値に変更する。
【0051】
ステップS709において、コントローラー3はエバポ温度Tがアイドルストップ解除温度範囲内(Tb1<T<Tb2)であるか否かを判定する。アイドルストップ解除温度範囲は、予め多様な乗員が不快に感じる温度を集計して、ばらつきを考慮して設定した温度範囲である。エバポ温度Tがアイドルストップ解除温度範囲内であれば乗員は空調状態を不快に感じてアイドルストップ中止スイッチ4を押したと判断する。エバポ温度Tがアイドルストップ解除温度範囲内である場合は、コントローラー3はステップS710に処理を移行する。エバポ温度Tがアイドルストップ解除温度範囲外である場合は、コントローラー3はステップS711に処理を移行する。
【0052】
ステップS710において、コントローラー3はアイドルストップ解除エバポ温度Tbを、エバポ温度TからδTbdだけ下げた値に変更する。
【0053】
ステップS711において、コントローラー3は室温差ΔRがアイドルストップ解除室温差範囲内(ΔRb1<ΔR<ΔRb2)であるか否かを判定する。アイドルストップ解除室温差範囲は、予め多様な乗員が不快に感じる室温差を集計して、ばらつきを考慮して設定した室温差範囲である。室温差ΔRがアイドルストップ解除室温差範囲内であれば乗員は空調状態を不快に感じてアイドルストップ中止スイッチ4を押したと判断する。室温差ΔRがアイドルストップ解除室温差範囲内である場合は、コントローラー3はステップS712に処理を移行する。室温差ΔRがアイドルストップ解除室温差範囲外である場合は、コントローラー3は処理を抜ける。
【0054】
ステップS712において、コントローラー3はアイドルストップ解除室温差ΔRbを、室温差ΔRからδRbdだけ下げた値に変更する。
【0055】
本実施形態では、アイドルストップ時間sが所定時間s1以上s2以下の場合は、コントローラー3は判定基準値を変更せず、処理を抜ける。アイドルストップが実行されてから所定時間s1以上s2以内にアイドルストップが中止された場合は、アイドルストップ許可側又はアイドルストップ解除側のどちらの空調条件の判定基準値を変更すればよいか判断し難いためである。必ずどちらかの判定基準値を変更するのであれば、s1とs2とを一致させればよい。
【0056】
続いて図4を参照して、ステップS8におけるアイドルストップ空調条件の判定基準値上昇変更処理について詳細を説明する。図4は、アイドルストップ空調条件の判定基準値上昇変更処理を説明するフローチャートである。
【0057】
ステップS801において、コントローラー3はアイドルストップ解除連続回数Nのカウントを1回上乗せする。
【0058】
ステップS802において、コントローラー3はアイドルストップ解除連続回数Nが所定回数No以上であるか否かを判定する。アイドルストップ解除連続回数Nが所定回数No以上である場合は、コントローラー3はステップS803に処理を移行する。アイドルストップ解除連続回数Nが所定回数Noに満たない場合は、コントローラー3は処理を抜ける。
【0059】
ステップS803において、コントローラー3はアイドルストップ許可エバポ温度Taが上限値Ta2よりも小さいか否かを判定する。アイドルストップ許可エバポ温度Taが上限値Ta2よりも小さい場合は、コントローラー3はステップS804に処理を移行する。アイドルストップ許可エバポ温度Taが上限値Ta2以上である場合は、コントローラー3はステップS805に処理を移行する。
【0060】
ステップS804において、コントローラー3はアイドルストップ許可エバポ温度TaをδTauだけ上げた値に変更する。
【0061】
ステップS805において、コントローラー3はアイドルストップ解除エバポ温度Tbが上限値Tb2よりも小さいか否かを判定する。アイドルストップ解除エバポ温度Tbが上限値Tb2よりも小さい場合は、コントローラー3はステップS806に処理を移行する。アイドルストップ解除エバポ温度Tbが上限値Tb2以上である場合は、コントローラー3はステップS807に処理を移行する。
【0062】
ステップS806において、コントローラー3はアイドルストップ解除エバポ温度TbをδTbuだけ上げた値に変更する。
【0063】
ステップS807において、コントローラー3はアイドルストップ許可室温差ΔRaが上限値ΔRa2よりも小さいか否かを判定する。アイドルストップ許可室温差ΔRaが上限値ΔRa2よりも小さい場合は、コントローラー3はステップS808に処理を移行する。アイドルストップ許可室温差ΔRaが上限値ΔRa2以上である場合は、コントローラー3はステップS809に処理を移行する。
【0064】
ステップS808において、コントローラー3はアイドルストップ許可室温差ΔRaをδΔRauだけ上げた値に変更する。
【0065】
ステップS809において、コントローラー3はアイドルストップ解除室温差ΔRbが上限値ΔRb2よりも小さいか否かを判定する。アイドルストップ解除室温差ΔRbが上限値ΔRb2よりも小さい場合は、コントローラー3はステップS810に処理を移行する。アイドルストップ解除室温差ΔRbが上限値ΔRb2以上である場合は、コントローラー3はステップS811に処理を移行する。
【0066】
ステップS810において、コントローラー3はアイドルストップ解除室温差ΔRbをδΔRbuだけ上げた値に変更する。
【0067】
ステップS811において、コントローラー3は4つの判定基準値のうち1つでも値を変更したか否かを判定する。判定基準値を変更した場合は、コントローラー3はステップS812に処理を移行する。判定基準値を変更していない場合は、コントローラー3は処理を抜ける。
【0068】
ステップS812において、コントローラー3はアイドルストップ解除連続回数Nのカウントをリセットしてゼロにする。
【0069】
次に図5から図7を参照して、各判定基準値変更処理を実行するアイドルストップ制御装置の動作について説明する。フローチャートとの対応を明確にするため、フローチャートのステップ番号を併記して説明する。
【0070】
図5は、判定基準値下降変更処理(S7)でアイドルストップ許可条件の判定基準値を変更する場合(S705〜S708)のアイドルストップ制御装置100の動作について説明するタイムチャートである。
【0071】
時刻t1までコンプレッサー21は駆動していないので、エバポ温度T及び室温差ΔRが上昇する(図5(B)(C))。そこで時刻t1でコンプレッサー21が駆動する(図5(D))。そしてエバポ温度T及び室温差ΔRは徐々に下降する。このとき車両は一定速度で走行している(図5(A))。
【0072】
時刻t2で車両は減速し始める(図5(A))。
【0073】
時刻t3でコンプレッサー21が停止する(図5(D))。これはエバポ温度Tが十分に低くなって、室温差ΔRも小さくなったためである。時刻t3以降はコンプレッサー21が駆動しないので、エバポ温度T及び室温差ΔRが徐々に上昇する(図5(B)(C))。
【0074】
時刻t4で再びコンプレッサー21が駆動する(図5(D))。これはエバポ温度Tが高くなって、室温差ΔRも大きくなったためである。時刻t4以降はコンプレッサー21が駆動するので、エバポ温度T及び室温差ΔRが徐々に下降する。このとき車両は減速状態なので、エンジン1の回転速度が下がっている。コンプレッサー21の回転速度はエンジン1の回転速度と同期する。このためエバポ温度T及び室温差ΔRの下降ペースは、車両が一定速度で走行するとき(時刻t1〜時刻t3)よりも遅くなる(図5(B)(C))。
【0075】
時刻t5で車速がゼロとなって車両が停止する(図5(A),S1でYes)。このときのエバポ温度Tはアイドルストップ許可エバポ温度Taより低く、室温差ΔRもアイドルストップ許可室温差ΔRaよりも小さい(図5(B)(C),S2でYes)。またアイドルストップは禁止されていない(図5(F),S3でNo)。よって時刻t5でコントローラー3は、エンジン1を停止してアイドルストップを実行する(S4)。エンジン1が停止するので、コンプレッサー21も停止する(図5(D))。時刻t5以降は空調装置2が作動しないので、エバポ温度T及び室温差ΔRが徐々に上昇する(図5(B)(C))。時刻t5から時刻6までコントローラー3は、S1→S2→S3→S4→S5→S6でNoとなる処理を繰り返す。
【0076】
時刻t6で乗員がアイドルストップ中止スイッチ4を押す(図5(E),S5でYes)。これによりエンジン1が再始動してコンプレッサー21も駆動する(図5(D),S9)。このときアイドルストップ時間s(時刻t5〜時刻t6)は、所定時間s1よりも短い(S703でYes)。そして時刻t6におけるエバポ温度Tはアイドルストップ許可温度範囲内である(図5(B),S705でYes)。また時刻t6における室温差ΔRはアイドルストップ許可室温差範囲内である(図5(C),S707でYes)。よって乗員が車室内の空調を不快に感じたためにアイドルストップ中止スイッチ4を押したと判断する。さらにアイドルストップ時間sが短いので、時刻t5でアイドルストップを許可したのが早すぎて乗員にとって空調が快適になっていなかったと判断する。
【0077】
このため次回以降のアイドルストップ許可条件に使用されるエバポレーター27のアイドルストップ許可エバポ温度Ta(new)は、現在のアイドルストップ許可エバポ温度TaよりもδTadだけ下げられる(S706)。またアイドルストップ許可室温差ΔRa(new)は、現在のアイドルストップ許可室温差ΔRaよりもδΔRadだけ下げられる(S708)。そしてアイドルストップ中止スイッチ4が押された後は、アイドルストップが禁止される(図5(F),S11)。
【0078】
ここで次回以降のアイドルストップ許可エバポ温度Ta(new)は、時刻t6におけるエバポ温度TからδTadだけ下げた値としてもよい。アイドルストップ許可室温差ΔR(new)についても同様である。なお本実施形態のアイドルストップ許可条件では、乗員に対応した車内快適性と燃費性能とのバランスから燃費性能を優先して、時刻t6における値(T,ΔR)ではなく現在の判定基準値(Ta,ΔRa)をベースに判定基準値を変更する。
【0079】
図6は、判定基準値下降変更処理(S7)でアイドルストップ解除条件の判定基準値を変更する場合(S709〜S712)のアイドルストップ制御装置100の動作について説明するタイムチャートである。時刻t1から時刻t6までは前述した図5における動作と同じであるため説明を省略する。
【0080】
時刻t6で乗員がアイドルストップ中止スイッチ4を押す(図6(E),S5でYes)。これによりエンジン1が再始動してコンプレッサー21も駆動される(図5(D),S9)。このときアイドルストップ時間s(時刻t5〜時刻t6)は、所定時間s2よりも長い(S704でYes)。そして時刻t6におけるエバポ温度Tはアイドルストップ解除温度範囲内である(図6(B),S709でYes)。また時刻t6における室温差ΔRはアイドルストップ解除室温差範囲内である(図6(C),S711でYes)。よって乗員が車室内の空調を不快に感じたためにアイドルストップ中止スイッチ4を押したと判断する。さらにアイドルストップ時間sが長いので、アイドルストップ解除条件の成立が遅すぎて乗員にとって空調が快適でなくなったと判断する。すなわち時刻t6で車室内の空調が乗員にとって耐えられない状態となったのである。
【0081】
このため次回以降のアイドルストップ解除条件に使用されるエバポレーター27のアイドルストップ解除エバポ温度Tb(new)は、時刻t6におけるエバポ温度TからδTbdだけ下げた値に変更される(S710)。またアイドルストップ解除室温差ΔRb(new)は、時刻t6における室温差ΔRからδΔRbdだけ下げた値に変更される(S712)。そしてアイドルストップ中止スイッチ4が押された後は、アイドルストップが禁止される(図6(F),S11)。
【0082】
図7は、判定基準値上昇変更処理(S8)を実行する場合のアイドルストップ制御装置100の動作について説明するタイムチャートである。時刻t1から時刻t6までは前述した図5における動作と同じであるため説明を省略する。
【0083】
時刻t6で乗員がアクセルペダルを踏んで再び車両が加速を始める(図7(A),S6でYes)。エンジン1が再始動して(S10)、コンプレッサー21も駆動する(図7(D))。このときのエバポ温度Tはアイドルストップ解除エバポ温度Tbより低く、室温差ΔRもアイドルストップ解除室温差ΔRbよりも小さい(図7(B)(C))。なおアイドルストップ解除条件の成立によりアイドルストップが解除された回数がN−1回連続して続いたとする。しかしアイドルストップ解除連続回数N−1は所定回数Noには達していないので、コントローラー3はS8においてS801→S802でNoとなって処理を抜ける。
【0084】
時刻t7で車両は一定速度で走行する。そして時刻t9から時刻t11まで車両は減速する(図7(A))。この間の時刻t8でコンプレッサー21が一旦停止され、時刻t10で再びコンプレッサー21が駆動する。これはエバポ温度T及び室温差ΔRの変動によるもので、詳細は図5における説明と同様なので省略する。
【0085】
時刻t11で車速がゼロとなって車両が停止する(図7(A),S1でYes)。このときのエバポ温度Tはアイドルストップ許可エバポ温度Taより低く、室温差ΔRもアイドルストップ許可室温差ΔRaよりも小さい(図7(B)(C),S2でYes)。またアイドルストップは禁止されていない(図7(F),S3でNo)。よって時刻t11でコントローラー3は、エンジン1を停止してアイドルストップを実行する(S4)。エンジン1が停止するので、コンプレッサー21も停止する(図7(D))。時刻t11以降はコンプレッサー21が駆動しないので、エバポ温度T及び室温差ΔRが徐々に上昇する(図7(B)(C))。時刻t11から時刻t12までコントローラー3は、S1→S2→S3→S4→S5→S6でNoとなる処理を繰り返す。
【0086】
時刻t12で乗員がアクセルペダルを踏んで再び車両が加速を始める(図7(A),S6でYes)。エンジン1が再始動して(S10)、コンプレッサー21も駆動する(図7(D))。このときのエバポ温度Tはアイドルストップ解除エバポ温度Tbより低く、室温差ΔRもアイドルストップ解除室温差ΔRbよりも小さい(図7(B)(C))。これでアイドルストップ解除条件の成立によりアイドルストップが解除された回数がN−1回に1回足されてN回連続して続いたことになる(S801)。そしてアイドルストップ解除連続回数Nが所定回数Noに達する(S802でYes)。これにより現在のアイドルストップ許可/解除条件の空調条件が、アイドルストップ実行中に車室内の快適性を維持できていることがわかる。
【0087】
そして現在のエバポレーター27のアイドルストップ許可エバポ温度Taが上限値Ta2より小さいので、新しいアイドルストップ許可エバポ温度Ta(new)を現在のアイドルストップ許可エバポ温度TaからδTauだけ上げた値に変更する(S803でYes→S804)。同様に現在のアイドルストップ解除エバポ温度Tbが上限値Tb2より小さいので、新しいアイドルストップ解除エバポ温度Tb(new)を現在のアイドルストップ解除エバポ温度TbからδTbuだけ上げた値に変更する(S805でYes→S806)。また現在のアイドルストップ許可室温差ΔRaが上限値ΔRa2よりも小さいので、新しいアイドルストップ許可室温差ΔRa(new)を現在のアイドルストップ許可室温差ΔRaからδΔRauだけ上げた値に変更する(S807でYes→S808)。同様に現在のアイドルストップ解除室温差ΔRbも上限値ΔRb2よりも小さいので、新しいアイドルストップ解除室温差ΔRb(new)を現在のアイドルストップ解除室温差ΔRbからδΔRbuだけ上げた値に変更する(S809でYes→S810)。
【0088】
本実施形態によれば、動力の一部でコンプレッサー21を駆動するエンジン1のアイドルストップを制御する装置において、アイドルストップ実行中に乗員がアイドルストップを中止することができる。これによりアイドルストップの実行によりエンジン1が停止してコンプレッサー21も停止してしまっても、乗員は車内環境を不快に感じたらアイドルストップを中止してコンプレッサー21を駆動させることが可能である。このためアイドルストップ実行中でも乗員の車内快適性を優先して得ることができる。
【0089】
さらに少なくともアイドルストップ許可条件又はアイドルストップ解除条件に車内環境の快適性を判定する空調条件を含める。そして空調条件の判定基準値を、乗員によってアイドルストップが中止されたときの空調状態に基づいて変更する。アイドルストップを中止したときの空調状態は乗員によって多様である。これを空調条件に反映するので、多様な乗員に対応したアイドルストップ許可条件又はアイドルストップ解除条件となる。これによりアイドルストップ制御に任せても最低限の快適性が得られる。そして乗員がアイドルストップを中止する機会がなくなるので、過度の冷房要求によるアイドルストップ時間の短縮やアイドルストップ回数の低下を防止できる。このように多様な乗員に対応した車内快適性を確保しつつ、アイドルストップ時間を可能な限り確保して燃費性能の悪化を抑制することができる。
【0090】
また乗員がアイドルストップを中止した場合に、空調条件の判定基準値を下げるように変更する。これによってアイドルストップ許可条件又はアイドルストップ解除条件は、乗員がアイドルストップを中止する前に成立するようになる。このため乗員が快適性を得た状態でアイドルストップを実行できる。
【0091】
また乗員がコンプレッサー21の駆動を目的としてアイドルストップを中止した場合に、空調条件の判定基準値を変更する。アイドルストップ実行中に車室内温度が上昇して乗員が不快に感じた場合に限定することで、乗員が求める快適性に対応した空調条件の判定基準値にすることができる。
【0092】
そして乗員がアイドルストップを中止したときの空調状態を表す指数が所定範囲内である場合に、コンコンプレッサー21の駆動を目的としてアイドルストップが中止されたと判断する。すなわち多様な乗員が求める快適性のばらつき範囲内で空調条件の判定基準値を変更する。車内環境の快適性以外の要件で乗員がアイドルストップを中止したときの空調状態は考慮されないので、判定基準値の誤変更を回避することができる。このため車内快適性が確保された中で、アイドルストップを実行できる。
【0093】
さらにアイドルストップが実行されてから所定時間s1内に乗員によってアイドルストップが中止された場合は、アイドルストップ許可側の空調条件の判定基準値を下げるように変更する。すなわちアイドルストップを実行するには車内環境の快適性を満足しておらず、アイドルストップの実行(許可)が早すぎたと判断してアイドルストップ許可条件の判定基準値を下げる。これにより乗員が車内環境の快適性を得た状態でアイドルストップを開始できる。なお本実施形態ではアイドルストップが中止されたときの空調状態を表す指数をベースにするのではなく、このときの判定基準値をベースに判定基準値を下げるように変更する。これにより乗員に対応した車内快適性を確保しつつも燃費性能を優先したアイドルストップを実行できる。
【0094】
またアイドルストップが実行されてから所定時間s2経過後に乗員によってアイドルストップが中止された場合は、アイドルストップ解除側の空調条件の判定基準値を下げるように変更する。すなわちアイドルストップの終了(解除)が遅すぎて車内環境の快適性を維持できなくなったと判断してアイドルストップ解除条件の判定基準値を下げる。これにより乗員が車内環境の快適性を得ているうちにアイドルストップを終了できる。なお乗員によってアイドルストップが中止されたときが、乗員が車内環境に耐えられなくなったときであるので、本実施形態ではアイドルストップが中止されたときの空調状態を表す指数をベースに判定基準値を下げるように変更する。より確実に乗員がアイドルストップを中止する機会をなくすことができる。
【0095】
またアイドルストップが乗員によるアイドルストップ中止ではなくアイドルストップ解除条件の成立により終了することが連続して所定回数に達した場合は、アイドルストップ実行中において乗員は十分に快適性を得ている、すなわち冷房能力を落としても問題ないと判断してアイドルストップ許可条件及びアイドルストップ解除条件の判定基準値を上げる。これにより次のアイドルストップ時間が長くなるので、車内快適性を確保しつつ、燃費性能を向上させることができる。
【0096】
そして空調条件の判定基準値は、上限値が設けられている。乗員によるアイドルストップの中止がないからといって、むやみに空調条件の判定基準値を上げると、車内快適性と燃費性能とのバランスが崩れる。判定基準値の上限値を多様な乗員が求める快適性のばらつき範囲内にすることで、車内快適性と燃費性能とのバランスを保つことができる。
【0097】
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれることが明白である。
【0098】
例えば、実施形態では空調条件としてエバポレーターの温度と、車室内の設定温度と実温度との室温差と、を両方とも考慮したが、どちらか片方でもよい。また空調条件には、前述の要件以外にもエアコンの吹き出し口温度、車室内空気温度、風量などを考慮してもよい。またアイドルストップ制御に限らず、車両の減速時にエンジンを停止させるコーストストップ制御にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明によるアイドルストップ制御装置を使用する全体システムの一例
【図2】本発明によるアイドルストップ制御装置の動作を説明するフローチャート
【図3】アイドルストップ空調条件の判定基準値下降変更処理を説明するフローチャート
【図4】アイドルストップ空調条件の判定基準値上昇変更処理を説明するフローチャート
【図5】判定基準値下降変更処理でアイドルストップ許可条件の判定基準値を変更する場合のアイドルストップ制御装置の動作について説明するタイムチャート
【図6】判定基準値下降変更処理でアイドルストップ解除条件の判定基準値を変更する場合のアイドルストップ制御装置の動作について説明するタイムチャート
【図7】判定基準値上昇変更処理を実行する場合のアイドルストップ制御装置の動作について説明するタイムチャート
【符号の説明】
【0100】
1 エンジン
3 コントローラー
4 アイドルストップ中止スイッチ
21 コンプレッサー
100 アイドルストップ制御装置
S4 アイドルストップ実行部
S7,S8 空調判定基準値変更部
S9 アイドルストップ中止部
S10 アイドルストップ解除部
S702 アイドルストップ時間測定部
S705,S707,S709,S711 エアコンコンプレッサー駆動要求判定部
S801 解除回数記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力の一部でエアコンコンプレッサーを駆動する車両用エンジンのアイドルストップを制御する装置であって、
アイドルストップ許可条件が成立したらエンジンのアイドル運転を停止するアイドルストップ実行部と、
アイドルストップ実行中にアイドルストップ解除条件が成立したらアイドルストップを解除してエンジンを始動するアイドルストップ解除部と、
アイドルストップ実行中であって前記アイドルストップ解除条件が成立する前に乗員がアイドルストップを中止する意思を示したらアイドルストップを中止してエンジンを始動するアイドルストップ中止部と、
少なくとも前記アイドルストップ許可条件又は前記アイドルストップ解除条件に含まれ、車内環境の快適性を判定する空調条件の判定基準値を、前記アイドルストップ中止部が実行されたときの空調状態に基づいて変更する空調判定基準値変更部と、
を備えるアイドルストップ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアイドルストップ制御装置において、
前記空調条件は、エバポレーター温度、またはエアコンの設定温度と車室内温度との室温差であり、
前記空調判定基準値変更部は、前記アイドルストップ中止部が実行されたときに、前記判定基準値である、前記エバポレーター温度の所定値、または前記室温差の所定値を、下げるように変更する、
ことを特徴とするアイドルストップ制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアイドルストップ制御装置において、
前記空調判定基準値変更部は、前記アイドルストップ中止部が実行されたときの空調状態を表す指数が所定範囲内である場合に、前記空調条件の判定基準値を下げるように変更する、
ことを特徴とするアイドルストップ制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のアイドルストップ制御装置において、
アイドルストップが開始されてから前記アイドルストップ中止部が実行されるまでのアイドルストップ時間を測定するアイドルストップ時間測定部を備え、
前記空調判定基準値変更部は、前記アイドルストップ時間が所定時間よりも短いときに、前記アイドルストップ許可条件の判定基準値を下げるように変更する、
ことを特徴とするアイドルストップ制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のアイドルストップ制御装置において、
アイドルストップが開始されてから前記アイドルストップ中止部が実行されるまでのアイドルストップ時間を測定するアイドルストップ時間測定部を備え、
前記空調判定基準値変更部は、前記アイドルストップ時間が所定時間よりも長いときに、前記アイドルストップ解除条件の判定基準値を下げるように変更する、
ことを特徴とするアイドルストップ制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のアイドルストップ制御装置において、
前記アイドルストップ解除部が連続して実行された回数を記憶する解除回数記憶部を備え、
前記空調判定基準値変更部は、前記解除回数記憶部で記憶された回数が所定回数を超えるときに、前記空調条件の判定基準値を上げるように変更する、
ことを特徴とするアイドルストップ制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のアイドルストップ制御装置において、
前記空調条件の判定基準値は、上限値が設けられている、
ことを特徴とするアイドルストップ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−219026(P2011−219026A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92293(P2010−92293)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】