説明

アキュムレーションコンベヤ

【課題】簡易な構成で、搬送物間の距離を好適に縮小して、アキュムレーション効率及び搬送効率を向上させる。
【解決手段】アキュムレーションコンベヤ10は、ゾーンZごとに設けられ、該ゾーンZを構成するキャリヤローラ18を回転駆動するモータ20と、ゾーンZごとに設けられ、搬送物Pの通過を検知するセンサ22と、センサ22により検知された隣り合う2つの搬送物の検知情報に基づいて、搬送物の間の距離に関する距離情報を推定し、その推定された距離情報が所定範囲内の場合に、上流側後方の搬送物が搬送されているゾーンZの搬送速度が、ゾーンZの下流側に隣接するゾーンZの搬送速度に対して相対的に速くなるように、ゾーンZのモータ20又はゾーンZのモータ20への制御入力を切り替える制御手段26と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキュムレーションコンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の搬送方向に沿って多数設けられたローラの回転又は停止によって、ローラ上の物品の搬送又は停止を行うことのできるアキュムレーションコンベヤが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
アキュムレーションコンベヤは、複数台のコンベヤが連結して配置される。1台のコンベヤ上は複数のゾーンに分割され、各ゾーンには、ケース等の搬送物を検知するセンサ、及びゾーン内のコンベヤ(ローラ)を駆動させるためのモータ(またはモータ内蔵ローラ)が配置される。各ゾーンのローラとモータとは、無端ベルトで掛け渡されることで、ほぼ同期して回転する。
【0004】
従来のアキュムレーションコンベヤは、上流から流れてきた搬送物が、あるゾーンに入ったことを当該ゾーン内のセンサが検知したとき、下流ゾーンに搬送物がない、または、下流ゾーンの搬送物が発進している等の状況から、搬送物を下流に流すか否かを判断し、モータの起動又は停止制御を行う。この結果、滞留時には1ゾーンに1つの搬送物のみ載置されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−302221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載される従来のアキュムレーションコンベヤでは、上述のとおり1ゾーンに1つの搬送物しか載置できないため、搬送物間のギャップが大きく開くことがあり、一定長さ当たりのアキューム(滞留)量が少なくなってしまう。また、搬送物のサイズに応じて最適なゾーン長さが変わるため、大小様々な長さの搬送物を搬送する場合には、ゾーンピッチを最大搬送物の最適長さに合わせると、小さい搬送物の間のギャップが必要以上に大きくなりすぎてしまう。このため、アキュムレーション効率や搬送効率が低いという問題があった。
【0007】
また、アキュムレーションコンベヤの下流側に高速ソータがあるような場合、コンベヤ上に滞留させた複数の搬送物を高速で排出することが必要となるが、搬送物間にギャップがあると、払い出しに時間を要し、払い出し能力が低下する。
【0008】
さらに、従来のアキュムレーションコンベヤは、ゾーン単位で搬送物の滞留を制御するため、かつまた、1つのゾーンに1つの搬送物しか載置できないため、1つの搬送物ごとに1個のセンサ、1台のモータ(またはモータ内蔵ローラ)、センサ及びモータをコントロールする制御手段が必要となり、搬送物単位で考えた場合、高コストなコンベヤとなる。
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決し、簡易な構成で、搬送物間の距離を縮小して、アキュムレーション効率及び搬送効率を向上させることができるアキュムレーションコンベヤを提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るアキュムレーションコンベヤは、搬送路を形成すべく互いに平行に併設された複数本のキャリヤローラ(18)の回転を複数のゾーン(Z)ごとに制御することにより、搬送物(C)の搬送又は停止を行うアキュムレーションコンベヤ(10)において、ゾーン(Z)ごとに設けられ、該ゾーン(Z)を構成するキャリヤローラ(18)を回転駆動する駆動手段(20)と、ゾーン(Z)ごとに設けられ、搬送物(C)の通過を検知する検知手段(22)と、先行する搬送物(C)に後続の搬送物(C)を接近させるべく、検知手段(22)からの検知情報に基づいて駆動手段(20)を制御し、ゾーン(Z)の搬送速度を切り換える制御手段(26)とを備えることを特徴としている。
【0011】
特に、制御手段(26)をゾーン(Z)ごとに設けることが好ましい。この場合、各ゾーン(Zn)における制御手段(26)は、当該ゾーン(Zn)、その上流に隣接するゾーン(Zn−1)及びその下流に隣接するゾーン(Zn+1)のそれぞれに設けられた検知手段(22n−1,22n,22n+1)からの検知情報に基づき、当該ゾーン(Zn)における前記駆動手段(20n)を制御するとよい。
【0012】
また、各ゾーン(Zn)における制御手段は、当該ゾーン(Zn)及びその下流に隣接するゾーン(Zn+1)のそれぞれに設けられた検知手段(22n,22n+1)からの検知情報に基づき、当該ゾーン(Zn)上の搬送物(C)と、その下流に隣接するゾーン(Zn+1)上の搬送物(C)との間の距離に関する距離情報を推定し、前記推定された距離情報が所定範囲内である場合に、当該ゾーン(Zn)の搬送速度を速くするよう当該ゾーン(Zn)の駆動手段(20n)を制御することができる。
【0013】
或いは、各ゾーン(Zn)における前記制御手段は、当該ゾーン(Zn)及びその上流に隣接するゾーン(Zn−1)のそれぞれに設けられた検知手段(22n,22n−1)からの検知情報に基づき、当該ゾーン(Zn)上の搬送物(C)と、その上流に隣接するゾーン(Zn−1)上の搬送物(C)との間の距離に関する距離情報を推定し、推定された距離情報が所定範囲内の場合に、当該ゾーン(Zn)の搬送速度を遅くするよう当該ゾーン(Zn)の駆動手段(20n)を制御するようにしてもよい。
【0014】
更に、制御手段(Zn)は1つのみであり、ネットワーク回路を介して各ゾーン(Z)における駆動手段(20)及び検出手段(22)に接続し、これによって各ゾーン(Z)における駆動手段(20)及び検出手段(22)を前述と同様に制御することもできる。
【0015】
このような構成とすることで、上流側の搬送物の搬送速度が下流側の搬送物の搬送速度に対して相対的に速くなるため、上流側搬送物を下流側搬送物へ近接させることができ、搬送物間の距離を好適に縮小することができる。搬送物間の距離を最小化することで、1ゾーンに複数の搬送物を載置することが可能となるため、一定長さ(例えば1ゾーン)当たりの搬送物の滞留量を多くすることができ、アキュムレーション効率が向上する。さらに、複数の搬送物を密集させて一纏まりで搬送することが可能となり、一定長さ当たりの搬送量を増やすことができ、搬送効率が向上する。また、このような制御を実現するためには、第1のゾーンの駆動手段又は第2のゾーンの駆動手段への制御入力を単純に切り替えるだけでよいので、従来の速度フィードバック制御等の複雑な制御が不要であり、このため駆動手段の応答速度等、構成要素の仕様上の制約もない。この結果、簡易な構成で、搬送物間の距離を好適に縮小して、アキュムレーション効率及び搬送効率を向上させることができる。
【0016】
また、搬送物間の距離(ギャップ)を極めて小さくすることができるため、アキュムレーションコンベヤの下流側に高速ソータがあるような場合でも、コンベヤ上に滞留させた複数の搬送物を高速でソータに排出することが可能となり、ソータによる払い出し時間を最小化することが可能となる。さらに、従来のアキュムレーションコンベヤのように1ゾーンに1つの搬送物を滞留させるという概念がなくなるため、1ゾーンの長さを搬送物の大きさに依存することなく自由に設定することが可能となり、例えば1ゾーンの長さを大きくとることで、コンベヤ全体のモータ、センサ、及び制御手段の数を減らすことが可能となり、この結果、コストを低減させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るアキュムレーションコンベヤによると、簡易な構成で、搬送物間の距離を好適に縮小して、アキュムレーション効率及び搬送効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るアキュムレーションコンベヤの基本的な構成を示す概略図である。
【図2】本発明のアキュムレーションコンベヤにおけるコントローラの構成を示す概略図である。
【図3】図2に示したコントローラの制御入力切替部により実行される処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明のアキュムレーションコンベヤの作用について説明する概略図である。
【図5】本発明のアキュムレーションコンベヤの作用について説明する概略図である。
【図6】本発明のアキュムレーションコンベヤの作用について説明する概略図である。
【図7】本発明のアキュムレーションコンベヤの作用について説明する概略図である。
【図8】本発明のアキュムレーションコンベヤに統合コントローラを適用した構成を示す概略図である。
【図9】本発明のアキュムレーションコンベヤに統合コントローラを適用した構成の別の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を付することとする。
【0020】
まず、図1を参照して、本発明に係るアキュムレーションコンベヤ10の基本的な構成について説明する。図1に示すように、アキュムレーションコンベヤ10は、水平方向に平行に配置された一対のコンベヤフレーム12(図1では一方のみ図示。他方は奥側に配置されている)、両コンベヤフレーム12の下部間に連結された支持フレーム14、および両コンベヤフレーム12の下部間で、かつコンベヤフレーム12の長さ方向における複数箇所に連結された脚部材16等により構成される。
【0021】
コンベヤフレーム12間には、その長さ方向に沿って多数本のキャリヤローラ(以下「ローラ」と称する)18が回転自在に設けられている。これらのローラ18により搬送路が形成される。搬送路は、その搬送方向において複数のゾーンZ(図1では5つのゾーン)に分けられる。各ゾーンZの長さは、取り扱う搬送物の最大と最小の長さ等を考慮して適宜定められる。
【0022】
各ゾーンZごとに、支持フレーム14に取り付けられたモータ(駆動手段)20が配設されている。モータ20の回転軸は、例えばこのモータ20に隣接する2本の駆動ローラ18aに無端ベルトを介して連結されている。さらに、他のローラ18は、隣り合う一対のローラごとに無端ベルトで連結され、駆動ローラ18aと隣接するローラ18も無端ベルトで連結されている。すなわち、各ゾーンZにおいて、モータ20が駆動することにより、ローラ18のすべてが連動して回転駆動し、搬送路上を搬送物が移動することとなる。
【0023】
なお、モータ20は、例えば応答性のよいブラシレスDCモータが好ましいが、ブラシレスDCモータより応答性が劣る他の種類のモータを適用することも可能である。
【0024】
また、本発明によるアキュムレーションコンベヤ10は、搬送物がローラ18上を滑ることや、ローラ18間に挟まったり、落下したりすることを防ぐために、各ゾーンZ全体に無端状のベルトを取り付けたベルトコンベヤ型となっている。このような目的で用いられるベルトコンベヤにおいては、そのベルトはウレタンやゴム等の高摩擦・高弾性の材料から構成することが好適である。また、コストや取り扱いの面から、芯体を有しないベルトが有効である。
【0025】
各ゾーンZにはセンサ(検知手段)22が設けられており、搬送物の通過を検知する。センサ22としては光電式のものが好ましいが、その他の型式であってもよい。センサ22の位置は、ゾーンZの下流に近い側が好ましく、より詳細には、搬送物がセンサ20を通過したときに、搬送物の少なくとも一部が下流側ゾーンのコンベヤに載っているように、ゾーンの下流側端部から最小搬送物の半分程度の距離をとるのが好ましい。
【0026】
なお、アキュムレーションコンベヤ10の上流側端部にさらにセンサ22aが設けられており、このセンサ22aにより、上流側コンベヤ24から送出された搬送物の通過を検知することにより、搬送物がアキュムレーションコンベヤ10に進入したことを検知することができる。
【0027】
また、各ゾーンZには、当該ゾーンZにおけるモータ20を駆動制御するコントローラ(制御手段)26が設けられている。コントローラ26は、モータ20に対して正逆駆動、増減速駆動、速度調整等の制御が行えるように構成されている。また、コントローラ26は、センサ22から取得するセンサ情報、上流側及び下流側のコントローラ26から取得する隣接のゾーンZのモータ駆動状態等の情報に基づいて、当該ゾーンZのモータ20の制御を行う。さらに、各ゾーンZに設けられたコントローラ26は、隣接するゾーンZのコントローラ26と通信可能に接続されており、これにより例えば上流側ゾーン及び下流側ゾーンとの間で情報の送受信を行うことが可能となっている。
【0028】
次に、図2〜図7を参照して本発明のアキュムレーションコンベヤ10の動作について説明する。なお、図2〜図7及び以下の説明において、符号Z等に添字を適宜添付しているが、この添字は最上流側のものを「1」とした場合のゾーンの位置等を表すものである。つまり、任意のゾーンZnと隣接する上流側のゾーンはZn−1と表され、以降Zn−2、Zn−3・・・と表される。また、ゾーンZnと隣接する下流側のゾーンはZn+1と表され、以降Zn+2、Zn+3・・・と表される。さらに、任意のゾーンZnに含まれる構成要素の符号には添字nが付される。以降の説明で特に添字が付されない場合には、全てのゾーン(Z1、Z2、…、Zn−1、Zn、Zn+1…)を指すものとする。
【0029】
前述したように、各ゾーンZにはコントローラ26が設けられているが、より詳細に述べるならば、このコントローラ26は、中央演算処理装置CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、当該ゾーンZのセンサ22や隣接する上流及び下流のコントローラ26からの情報を受け取り、また当該ゾーンZのモータ20のドライブへの制御指令信号や隣接する上流及び下流のコントローラ26に当該コントローラ26からの情報を発する入出力装置(I/O)等を有するコンピュータとして構成されるのが一般的である。
【0030】
また、このコントローラ26は、機能的には、距離推定部、在荷検知部、及び制御入力切替部から構成されているものと考えることができる。これらの機能部は、CPU、RAM等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUが、入出力装置を動作させるとともに、RAM、ROM及び補助記憶装置におけるデータの読み出し及び書き込みを行い、演算処理を行うことで実現される。
【0031】
距離推定部は、センサ22により検知された隣り合う2つの搬送物の通過タイミングに基づいて、これらの隣り合う2つの搬送物の間の距離に関する情報を推定する。具体的には、図2に示すゾーンZnにおけるコントローラ26nの距離推定部の場合、自ゾーンZnのセンサ22nから、センサ22nにより検知された搬送物が通過したタイミング(時刻、カウンタ値など)を示すセンサ情報(検知情報)を取得し、この情報に基づいて搬送物間の距離を算出する。そして、距離推定部は、算出した搬送物間の距離に関する距離情報を、同コントローラ26nにおける制御入力切替部に送信する。また、この距離推定部は、センサ22nにより検知された情報を下流ゾーンZn+1のコントローラ26n+1の在荷検知部に送信する。
【0032】
在荷検知部は、自ゾーンZnに搬送物が在荷しているか否かを検知する。具体的には、図2に示すゾーンZnにおけるコントローラ26nの在荷検知部の場合、上流側に隣接するゾーンZn−1のセンサ22n−1から、上流ゾーンZn−1のコントローラ26n−1を介して、センサ22n−1により検知された搬送物が通過したタイミング(時刻、カウンタ値など)を示すセンサ情報を取得すると、所定時間経過後に自ゾーンZnにこの搬送物が移動され、自ゾーンが在荷となったものと判定する。さらに、一旦在荷と判定すると、例えば自ゾーンZnのモータ20nの運転状態に応じた所定時間が経過するまで在荷中と判定する。
【0033】
また、在荷検知部は、自ゾーンZnに搬送物が在荷している否かを示す「在荷情報」を制御入力切替部に送信すると共に、この在荷情報を、「下流在荷情報」として上流側コントローラ26n−1へ送信し、また「上流在荷情報」として下流側コントローラ26n+1へ送信する。
【0034】
制御入力切替部は、自ゾーンZnのモータ20nへ出力する制御指令(制御入力)を切り替える。具体的には、図2に示すゾーンZnにおけるコントローラ26nの制御入力切替部の場合、距離推定部による距離情報、在荷検知部による在荷情報、上流ゾーンZn−1のコントローラ26n−1から受信する上流在荷情報、及び下流ゾーンZn+1のコントローラ26n+1から受信する下流在荷情報・下流運転情報に基づき、自ゾーンZnのモータ20nへ出力する制御指令を切り替える。本実施形態では、制御入力切替部は、「停止」、「通常速度運転」および「高速運転」の三段階に制御指令を切り替える。
【0035】
また、制御入力切替部は、自ゾーンZnのモータ20nへ出力する制御指令の情報を「下流運転情報」として上流側コントローラ26n−1へ送信する。
【0036】
次に図3を参照して、コントローラ26のCPUの処理について、特に、機能的に述べるならばコントローラ26における制御入力切替部による制御指令の切替処理について、より詳細に説明する。図3は、ゾーンZnのコントローラ26nのCPUにより実行される処理を示すフローチャートである。アキュムレーションコンベヤ10の各コントローラ26は、図1に示すアキュムレーションコンベヤ10の最上流に設けられたセンサ22aが搬送物の通過を検知したことを契機として、このフローをスタートさせる。また、各モータ20の制御指令は、「停止」が初期状態である。つまり、フロー開始時には、アキュムレーションコンベヤ10の全体にわたり運転が停止されている。
【0037】
まず、CPUにより求められた在荷情報(別言するならば在荷検知部による在荷情報)を参照して、自ゾーンZnに搬送物が在荷しているか否かを確認する(S101)。自ゾーンZnに搬送物が在荷していない場合にはステップS102に移行する。在荷している場合には、ステップS105に移行する。
【0038】
次に、上流側コントローラ26n−1から受信した上流在荷情報を参照して、上流ゾーンZn−1に搬送物が在荷しているか否かを確認する(S102)。上流ゾーンZn−1に搬送物が在荷していない場合には、自ゾーンZnのモータ20nへの運転信号を「停止」とする(S103)。上流ゾーンに在荷している場合には、自ゾーンZnのモータ20nへの制御指令を「通常速度運転」とする(S104)。これによって、各ゾーンZは通常速度で順次運転を開始する。
【0039】
ステップS101において自ゾーンZnに搬送物の在荷を確認した場合には、下流側コントローラ26n+1から受信した下流在荷情報を参照して、下流ゾーンZn+1に搬送物が在荷しているか否かを確認する(S105)。下流ゾーンZn+1に搬送物が在荷している場合には、ステップS106に移行する。在荷していない場合には、自ゾーンZnのモータ20nへの制御指令を「通常速度運転」に維持する(S104)。
【0040】
ステップS105において下流ゾーンZn+1に搬送物の在荷を確認した場合には、下流側コントローラ26n+1から受信した下流運転信号を参照して、下流ゾーンZn+1が停止中か否かを確認する(S106)。下流ゾーンZn+1が停止中の場合には、ステップS107に移行し、停止中ではない(通常運転または高速運転中)の場合、ステップS108に移行する。
【0041】
ステップS106において下流ゾーンZn+1が停止中であることを確認した場合には、自ゾーンZnに在荷している搬送物が、ゾーン先端、すなわち自ゾーンZnの最下流に到達しているか否かが確認される(S107)。具体的には、自ゾーンZnのセンサ22nが搬送物を検知すると、搬送物がゾーン先端に到達しているものと判定する。搬送物が自ゾーン先端に到達している場合には、自ゾーンZnのモータ20nへの制御指令を「停止」とする(S103)。到達していない場合には、自ゾーンZnのモータ20nへの制御指令を「通常速度運転」とする(S104)。
【0042】
ステップS106において下流ゾーンZn+1が停止中ではなく、通常運転または高速運転中であることを確認した場合には、さらに下流運転信号を参照して、下流ゾーンZn+1が高速運転中か否かを確認する(S108)。下流ゾーンZn+1が高速運転中の場合には、自ゾーンZnのモータ20nへの制御指令も「高速運転」とする(S110)。下流ゾーンZn+1が高速運転中ではない場合(すなわち通常運転中の場合)、ステップS109に移行する。
【0043】
ステップS108において下流ゾーンZn+1が高速運転中ではないことを確認した場合には、隣り合う2つの搬送物間の距離情報に基づき、搬送物間距離が所定範囲内か否かを確認する(S109)。具体的には、距離情報を搬送物間の距離GAPに換算して考える。後続の搬送物を加速して先の搬送物に密着させる必要のない最低間隔をLminとし、後続の搬送物を加速させても先の搬送物に追いつけないと判断できる最高間隔(例えば1ゾーン分の距離)をLmaxとする。このとき、Lmin<GAP<Lmaxの条件を満たす場合に、搬送物間距離が所定範囲内であると判定する。なお、搬送物間距離GAPに最小値Lminを設けるのは、搬送物がほとんど密着してきたときに上流側の搬送物の加速を続けると、下流側の搬送物を押し続けて破損させることを回避するためである。搬送物間距離が所定範囲内である場合には、自ゾーンZnのモータ20nへの制御指令を「高速運転」とする(S110)。搬送物間距離が所定範囲外である場合には、自ゾーンZnのモータ20nへの制御指令を「通常速度運転」とする(S104)。
【0044】
そして、ステップS103、S104又はS110において自ゾーンZnのモータ20nへの制御指令を「停止」「通常速度運転」または「高速運転」に切り替えた後には、例えば外部からの動作終了指令の受信有無に基づき、アキュムレーションコンベヤ10の運転を終了するか否かを判定する(S111)。運転終了しない場合には、再びステップS101に戻り、処理を繰り返す。運転終了する場合には、処理を終了する。
【0045】
コントローラ26nのCPUがこのような処理を実行することにより、アキュムレーションコンベヤ10は、例示として示した図4〜図7のように動作する。
【0046】
まず、図4に示すように、自ゾーンZnとその上流ゾーンZn−1にそれぞれ搬送物C1,C2があり、下流ゾーンZn+1に搬送物がないと、ゾーンZn−1,Znは通常速度で運転され、また、下流ゾーンZn+1も通常運転を開始する。これにより、搬送物C1,C2は一定の距離L1を保ちながら下流へと搬送されていく。
【0047】
次に、搬送物C1が下流ゾーンZn+1に乗り移ると、下流ゾーンZn+1上で搬送物C1は通常速度で搬送されていく。一方、搬送物C2が自ゾーンZnに入ると、自ゾーンZnのコントローラ26nは図3のステップS101からステップS105,S106,S108を経てステップS110に進んで、自ゾーンZnを高速運転とする。これによって、自ゾーンZn上の搬送物C2は高速で進み、通常速度の搬送物C1に接近する(図5参照)。
【0048】
このようにして先頭の搬送物C1が通常速度で搬送される間、後続の搬送物C2は高速で進んでいき、やがて搬送物C2が、図6に示すように、搬送物C2が搬送物C1に接近していく。なお、この際、搬送物C2が高速となると、その後続の搬送物C3も搬送物C2の距離が所定範囲内であれば、搬送物C2との間の距離が大きくならないように、高速運転に切り替わることは容易に理解されよう(ステップS106,S108,S109,S110)。そして、搬送物C1,C2間が所定の最低間隔Lmin未満となったならば、搬送物C2の搬送速度を通常速度に戻し、搬送物C1と搬送物C2とを密着状態のまま、通常速度で搬送していく(ステップS108.S109,S104)。
【0049】
以上を繰り返していくうちに後続の搬送物C3,C4,C5も搬送物C1,C2と密着状態となるが、後続の搬送物C6が搬送物C5から所定の最大距離Lmaxを越えている場合には、図7に示すような形で複数の搬送物群C1〜C5,C6〜C11が形成される。なお、図7に示すように、先頭の搬送物群C1〜C5と持続の搬送物群C6〜C11が分離していても、先頭の搬送物群C1〜C5がアキュムレーションコンベヤ10の最下流で待機状態にあれば、持続の搬送物群C6〜C11は先頭の搬送物群C1〜C5に接近し、これらの搬送物C1〜C11が一体となることは容易に理解されよう。
【0050】
以上を要約するならば、コントローラ26は、次のような搬送物の搬送制御を行うことができる。
(1)自ゾーンZn及び下流ゾーンZn+1に搬送物が在荷しており、下流ゾーンZn+1が通常速度運転中の場合、搬送物間距離GAPが所定範囲(Lmin<GAP<Lmax)ならば、自ゾーンZnを高速運転に切り替えて搬送物間距離を詰める。
(2)自ゾーンZn及び下流ゾーンZn+1に搬送物が在荷しており、下流ゾーンZn+1が高速運転中の場合、自ゾーンZnも高速運転に切り替えて搬送物間距離が開くのを回避する。つまり、アキュムレーションコンベヤ10において、あるゾーンが高速運転に切り替わると、このゾーンより上流側で連続して搬送物が在荷しているゾーンの全てが高速運転に切り替わり、後続する搬送物が相互の距離を保持しながら、ある2つの隣接する搬送物間の距離を好適に詰めることができる。
【0051】
以上に説明したように、本実施形態に係るアキュムレーションコンベヤ10では、搬送物間の距離を最小化することで、1ゾーンに複数の搬送物を載置することが可能となるため、一定長さ(例えば1ゾーン)当たりの搬送物の滞留量を多くすることができ、アキュムレーション効率が向上する。さらに、複数の搬送物を密集させて一纏まりで搬送することが可能となり、一定長さ当たりの搬送量を増やすことができ、搬送効率が向上する。また、このような制御を実現するためには、ゾーンZnのモータ20nへの制御入力を単純に切り替えるだけでよいので、従来の速度フィードバック制御などの複雑な制御が不要であり、このためモータ20nの応答速度など、構成要素の仕様上の制約もない。この結果、簡易な構成で、搬送物間の距離を好適に縮小して、アキュムレーション効率及び搬送効率を向上させることができる。
【0052】
また、搬送物間の距離を極めて小さくすることができるため、アキュムレーションコンベヤ10の下流側に高速ソータがあるような場合でも、コンベヤ10上に滞留させた複数の搬送物を高速でソータに排出することが可能となり、ソータによる払い出し時間を最小化することが可能となる。さらに、従来のアキュムレーションコンベヤのように1ゾーンZに1つの搬送物を滞留させるという概念がなくなるため、1ゾーンZの長さを搬送物Cの大きさに依存することなく自由に設定することが可能となり、例えば1ゾーンZの長さを大きくとることで、コンベヤ10全体のモータ20、センサ22、及びコントローラ26の数を減らすことが可能となり、この結果、コストを低減させることができる。
【0053】
なお、上記のコントローラ26のハードウェア構成については、コントローラ26の内部にモータ20のドライバを含んだものとすることができる。
【0054】
また、コントローラ26をゾーンZごとに設けずに、CANopenやイーサネット(登録商標)等のネットワーク回路を用いた技術により、1個の統合コントローラによって上記と同様な制御を行うことも可能である。
【0055】
図8がその一例であり、各ゾーンZのモータ20とセンサ22には、ゾーンZごとに設けられた通信モジュール(子局)28が接続されており、これらの通信モジュール28は、統合コントローラ30の通信モジュール(親局)32に接続されている。統合コートローラ30は基本的には上述したコントローラ26と同様にCPU、RAM、ROM、入出力装置から構成されるものであり、各ゾーンZのモータ20及びセンサ22に対する制御ロジックも同様であるが、各通信モジュール32からの情報を受け取り、その情報を統合コントローラ30の1カ所で演算処理した後、各通信モジュール32に発する点で異なっている。
【0056】
また、図9もネットワーク技術を利用したものであるが、これはネットワーク層を2層としたものであり、統合コントローラ30に対する情報信号・制御信号が、複数(図示実施形態では4つ)のゾーンZごとに設けられた1つの通信モジュール34を介して、各ゾーンZのモータ20及びセンサ22に対して送受信されるよう構成されている。このような構成においても、ゾーンZごとにコントローラ26を設けた上記実施形態と同様な制御を行うことが可能である。
【0057】
以上、本発明に係るアキュムレーションコンベヤ10について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、コントローラ26の制御入力切替部が切り替える制御入力の種類は、上述のように通常モード(通常速度運転)及び高速モード(高速運転)だけではなく、通常モード(通常速度運転)及び減速モード(低速運転)としてもよい。この場合は、上流センサの検知情報に基づいて自ゾーンを減速することとなる。また、距離推定部により算出された隣り合う2つの搬送物の間の距離情報の大きさに応じて多段階として、より一層効率よく搬送物間の距離を縮小するよう構成することも考えられる。なお、自ゾーンの減速段階の一つとして、停止させることも一選択枝である。
【0058】
また、上記実施形態においては、駆動手段であるモータ20とキャリヤローラ11は別体として配置し、無端ベルトにより連動させる方式で説明したが、キャリヤローラの1本にモータを組み込んだローラ(モータ内蔵ローラ)を使用することも可能である。
【0059】
更に、アキュムレーションコンベヤ10は、キャリヤローラ11に巻き掛けるベルト14を設けず、キャリヤローラ11の回転駆動により搬送物を搬送するローラコンベヤ型でもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…アキュムレーションコンベヤ、18…キャリヤローラ、20…モータ(駆動手段)、22…センサ(検知手段)、26…コントローラ(制御手段)、28…通信モジュール(子局)、30…統合コントローラ、32…通信モジュール(親局)、34…通信モジュール、C…搬送物、Z…ゾーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路を形成すべく互いに平行に併設された複数本のキャリヤローラ(18)の回転を複数のゾーン(Z)ごとに制御することにより、搬送物(C)の搬送又は停止を行うアキュムレーションコンベヤ(10)において、
前記ゾーン(Z)ごとに設けられ、該ゾーン(Z)を構成するキャリヤローラ(18)を回転駆動する駆動手段(20)と、
前記ゾーン(Z)ごとに設けられ、前記搬送物(C)の通過を検知する検知手段(22)と、
先行する搬送物(C)に後続の搬送物(C)を接近させるべく、前記検知手段(22)からの検知情報に基づいて前記駆動手段(20)を制御し、前記ゾーン(Z)の搬送速度を切り換える制御手段(26)と
を備えることを特徴とするアキュムレーションコンベヤ。
【請求項2】
前記制御手段(26)は前記ゾーン(Z)ごとに設けられており、
各ゾーン(Zn)における前記制御手段(26)は、当該ゾーン(Zn)、その上流に隣接するゾーン(Zn−1)及びその下流に隣接するゾーン(Zn+1)のそれぞれに設けられた前記検知手段(22n−1,22n,22n+1)からの検知情報に基づき、当該ゾーン(Zn)における前記駆動手段(20n)を制御することを特徴とする請求項1に記載のアキュムレーションコンベヤ。
【請求項3】
前記各ゾーン(Zn)における前記制御手段は、当該ゾーン(Zn)及びその下流に隣接するゾーン(Zn+1)のそれぞれに設けられた前記検知手段(22n,22n+1)からの検知情報に基づき、当該ゾーン(Zn)上の搬送物(C)と、その下流に隣接するゾーン(Zn+1)上の搬送物(C)との間の距離に関する距離情報を推定し、前記推定された距離情報が所定範囲内の場合に、当該ゾーン(Zn)の搬送速度を速くするよう当該ゾーン(Zn)の駆動手段(20n)を制御することを特徴とする、請求項2に記載のアキュムレーションコンベヤ。
【請求項4】
前記各ゾーン(Zn)における前記制御手段は、当該ゾーン(Zn)及びその上流に隣接するゾーン(Zn−11)のそれぞれに設けられた前記検知手段(22n,22n−1)からの検知情報に基づき、当該ゾーン(Zn)上の搬送物(C)と、その上流に隣接するゾーン(Zn−1)上の搬送物(C)との間の距離に関する距離情報を推定し、前記推定された距離情報が所定範囲内の場合に、当該ゾーン(Zn)の搬送速度を遅くするよう当該ゾーン(Zn)の駆動手段(20n)を制御することを特徴とする、請求項2に記載のアキュムレーションコンベヤ。
【請求項5】
前記制御手段は1つのみであり、ネットワーク回路を介して各ゾーン(Z)における前記駆動手段(20)及び前記検出手段(22)に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のアキュムレーションコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−140362(P2011−140362A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−622(P2010−622)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(502380361)トーヨーカネツソリューションズ株式会社 (50)
【Fターム(参考)】