説明

アクセルペダル構造

【課題】過負荷に対する強度確保とアクセルペダルの全開位置のバラツキの発生抑制とを両立させることができるアクセルペダル構造を得る。
【解決手段】アクセルペダル10を回転軸20回りに揺動可能に支持する軸部ハウジング16は、支軸18回りに回転可能にペダルサポート14に軸支されている。軸部ハウジング16のストッパ受け32とペダルサポート14との間には、ペダルパッド24に過負荷が付与された場合に、軸部ハウジング16を初期位置復帰方向へ押圧付勢する差動スプリング36が配設されている。従って、過負荷作用時には、軸部ハウジング16が支軸18回りに回転してペダルパッド24の裏面側部分24Aをダッシュパネル12に当接させることにより、ダッシュパネル12への荷重負担が下がる。従って、補強が不要になり、又ストッパ34がアクセルペダル10の回転軸20に近い設定されているため、製造誤差等による全開位置のバラツキも生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダルサポートに支持された軸部ハウジング内の回転軸に揺動可能に軸支されたアクセルペダル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図3には、従来のアクセルペダル構造が示されている。以下、この図を用いて、従来のアクセルペダル構造について簡単に説明する。
【0003】
この図に示されるように、ダッシュパネル102の所定位置には、図示しないボルト及びナット(締結線を一点鎖線で示す)によってペダルサポート100が固定されている。ペダルサポート100には、軸部ハウジング104が支持されている。この軸部ハウジング104内に配置された回転軸106に、アクセルペダル108の基端部が揺動可能に軸支されている。また、回転軸106にはアクセルペダル108と一体に回動するストッパ110が軸支されており、更にストッパ110に隣接する位置には回転角センサ112が軸支されている。また、アクセルペダル108のペダルパッド114と反対側にはスプリング支持部116が一体に形成されており、かかるスプリング支持部116と軸部ハウジング104の内周面との間にリターンスプリング118が介在されている。
【0004】
上記構成によれば、ドライバがアクセルペダル108を踏んでいない場合には、リターンスプリング118の不勢力によってアクセルペダル108は回転軸106回りに反時計方向へ揺動して二点鎖線図示位置に保持されている。この状態から乗員がアクセルペダル108のペダルパッド114を踏み込み、ストッパ110がストッパ受け120に当接した状態(実線図示状態)がアクセルペダル108の全開(フルストローク)状態である。
【0005】
なお、類似技術としては、下記特許文献1に開示された技術がある。
【特許文献1】特開2003−39970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のアクセルペダル構造の場合、アクセルペダル108のペダルパッド114にフルストローク以上に踏み込もうとする過負荷が加わった場合に、その過負荷はストッパ110の当接相手であるストッパ受け120に入力されるため、強度確保上の問題が生じる。
【0007】
すなわち、ペダルパッド114(力点)から回転軸106(支点)までの距離(モーメントアーム長)に対し、ストッパ受け120(作用点)から回転軸106(支点)までの距離(モーメントアーム長)が相対的に短いために、ストッパ受け120の配設位置ひいてはペダルサポート100の締結部に相対的に大きな荷重が作用する。このため、この部分の強度確保が容易ではないという問題がある。
【0008】
この問題に対し、ストッパ110を回転軸106の近傍ではなくペダルパッド114付近に設定することが対策として考えられるが、その場合、以下の新たな問題が生じる。
【0009】
すなわち、アクセルペダル108やダッシュパネル102等の部品や部材の製造誤差(バラツキ)の影響で、アクセルペダル108の回転軸106に取り付けられた回転角センサ112によって検出されるアクセルペダル108の全開位置のバラツキが大きくなり、フルストローク時のアクセルペダル108の回転位置が車両ごとに異なってしまう可能性があり好ましくない。
【0010】
本発明は上記事実を考慮し、過負荷に対する強度確保とアクセルペダルの全開位置のバラツキの発生抑制とを両立させることができるアクセルペダル構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の本発明に係るアクセルペダル構造は、ボディーパネルに固定されたペダルサポートに支持された軸部ハウジングと、この軸部ハウジング内に配置された回転軸に基端部側が揺動可能に軸支されると共に基端部と反対側の端部にペダル踏面を備えたアクセルペダルと、回転軸回りに揺動したアクセルペダルがペダル初期位置へ復帰するようにアクセルペダルを回転軸回りに付勢する第1の付勢手段と、この第1の付勢手段の不勢力に抗してアクセルペダルが回転軸回りに踏み込まれた際にアクセルペダルのペダルストロークを全開位置で規制する規制手段と、を含んで構成されたアクセルペダル構造であって、前記軸部ハウジングはペダルサポートに回転可能に支持されていると共に、前記規制手段によってアクセルペダルのペダルストロークが規制されるまでは軸部ハウジングに付勢力を作用させず、全開位置を越えるペダルストロークとなる過負荷がペダル踏面に付与されてアクセルペダルが全開位置まで揺動し規制手段によってペダルストロークが規制された場合に軸部ハウジングにハウジング初期位置復帰方向への付勢力を作用させながら軸部ハウジングを回転させることによりペダル踏面の裏面側をボディーパネルに当接させる第2の付勢手段を備えている、ことを特徴としている。
【0012】
請求項2記載の本発明に係るアクセルペダル構造は、請求項1記載の発明において、前記軸部ハウジングは、前記第2の付勢手段が作動する際には前記回転軸回りに回転する、ことを特徴としている。
【0013】
請求項1記載の本発明によれば、ドライバがアクセルペダルを踏み込む前は、第1の付勢手段の付勢力によって、アクセルペダルのペダル踏面はペダル初期位置に保持されている。この状態から第1の付勢手段の付勢力に抗して、ドライバがアクセルペダルを踏み込むと、ペダルストロークが増加していく。ドライバがアクセルペダルをフルストロークさせると(即ち、ドライバがアクセルペダルのペダル踏面を全開位置まで踏み込むと)、規制手段によってアクセルペダルのペダルストロークが規制される。すなわち、ペダル初期位置から全開位置までは、アクセルペダルの通常の作動範囲(揺動範囲)であり、このときには第1の付勢手段の付勢力のみが作用し、ペダル踏面への踏力が解除されると、第1の付勢手段によってアクセルペダルがペダル初期位置へ復帰する。
【0014】
ところで、時にドライバがアクセルペダルのペダル踏面に全開位置を越えるペダルストロークとなる過負荷を付与することがある(即ち、ドライバがアクセルペダルのペダル踏面を踏み込み過ぎる(オーバーストロークさせる)ことがある)。
【0015】
しかし本発明では、軸部ハウジングをペダルサポートに回転可能に支持させると共に軸部ハウジングにハウジング初期位置復帰方向への付勢力を作用させる第2の付勢手段を設けたので、前記の如く、ドライバによってペダル踏面に過負荷が付与され、規制手段によるペダルストロークの規制がなされると、今度は第1の付勢手段ではなく第2の付勢手段が付勢力を蓄積させつつ、軸部ハウジングを回転させることにより、アクセルペダルのペダル踏面の裏面側をボディーパネルに当接させる。
【0016】
その結果、荷重入力点(力点)から回転軸(支点)までの距離とボディーパネル当接点(作用点)から回転軸(支点)までの距離のオフセット(ギャップ)が少なくなり、ボディーパネルに過大な荷重が入力されるのを抑制することができる。また、ボディーパネルへの荷重伝達経路も、規制手段側からボディーパネルへ入力される経路の他に、ペダル踏面の裏面側からボディーパネルへ入力される経路が新たに追加されるので、過負荷荷重をボディーパネルに分散して伝達することができる。よって、特別な補強をボディーパネルに施す必要がなくなる。
【0017】
また、ペダル踏面の裏面側をボディーパネルに当接させるのは過負荷作用時のみであり、通常のペダル操作に対しては規制手段によってアクセルペダルのペダルストロークを規制する構成であるため、予め規制手段をペダル踏面付近に設定する構成に比し、アクセルペダルやボディーパネル等の製造誤差がアクセルペダルの全開位置に悪影響として及び、アクセルペダルの全開位置にバラツキが生じるおそれもない。
【0018】
請求項2記載の本発明によれば、軸部ハウジングは第2の付勢手段が作動する際に軸部ハウジング内に配置された回転軸回りに回転するため、例えば回転軸とは異なる支点を中心として軸部ハウジングが回転する構成に比し、部品点数が少なくて済む。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係るアクセルペダル構造は、ボディーパネルに固定されたペダルサポートに支持された軸部ハウジングと、この軸部ハウジング内に配置された回転軸に基端部側が揺動可能に軸支されると共に基端部と反対側の端部にペダル踏面を備えたアクセルペダルと、回転軸回りに揺動したアクセルペダルがペダル初期位置へ復帰するようにアクセルペダルを回転軸回りに付勢する第1の付勢手段と、この第1の付勢手段の不勢力に抗してアクセルペダルが回転軸回りに踏み込まれた際にアクセルペダルのペダルストロークを全開位置で規制する規制手段と、を含んで構成されたアクセルペダル構造において、軸部ハウジングをペダルサポートに回転可能に支持させると共に、規制手段によってアクセルペダルのペダルストロークが規制されるまでは軸部ハウジングに付勢力を作用させず、全開位置を越えるペダルストロークとなる過負荷がペダル踏面に付与されてアクセルペダルが全開位置まで揺動し規制手段によってペダルストロークが規制された場合に軸部ハウジングにハウジング初期位置復帰方向への付勢力を作用させながら軸部ハウジングを回転させることによりペダル踏面の裏面側をボディーパネルに当接させる第2の付勢手段を設けたので、過負荷作用時にボディーパネルへの入力荷重自体を下げることができかつ荷重分散機能を発揮させることができる。その結果、本発明は、過負荷に対する強度確保とアクセルペダルの全開位置のバラツキの発生抑制とを両立させることができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項2記載の本発明に係るアクセルペダル構造は、請求項1記載の発明において、軸部ハウジングを、第2の付勢手段が作動する際に軸部ハウジング内に配置された回転軸回りに回転させる構成としたので、部品点数が少なくて済み、その結果、請求項1記載の効果を低コストで実現することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
以下、図1を用いて、本発明に係るアクセルペダル構造の第1実施形態について説明する。なお、この図において付記した矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示している。
【0022】
図1には、本実施形態に係るアクセルペダル10の組付状態の側面図が示されている。この図に示されるように、ボディーパネルとしてのダッシュパネル12の所定位置には、アクセルペダル10の取付座となるペダルサポート14が図示しないボルト及びナット(締結具)で固定されている。
【0023】
ペダルサポート14には、内部が空洞とされ片面が側壁とされた軸部ハウジング16が支軸18回りに回転可能に支持されている。この軸部ハウジング16内には車両幅方向を軸方向とする回転軸20が配置されており、かかる回転軸20にアクセルペダル10のペダルアーム22の基端部22Aが揺動可能に軸支されている。
【0024】
アクセルペダル10のペダルアーム22の基端部22Aと反対側の端部には、ペダル踏面としてのペダルパッド24が設けられており、このペダルパッド24にドライバの踏力が付与される。
【0025】
また、アクセルペダル10のペダルアーム22における基端部22Aの先端側には、略半径方向へ突出するスプリング支持部26が一体に形成されている。このスプリング支持部26と軸部ハウジング16の内周面との間には、第1の付勢手段としてのリターンスプリング(圧縮コイルスプリング)28が介装されている。従って、リターンスプリング28はスプリング支持部26を車両前方側、即ちアクセルペダル10のペダルパッド24がペダル初期位置(従来技術の説明で用いた図3の二点鎖線図示位置)へ復帰するように回転軸20回りに反時計方向へ押圧付勢している。
【0026】
さらに、上記回転軸20には、アクセルペダル10と一体に回転する回転角センサ30が軸支されている。従って、アクセルペダル10が回転軸20回りに揺動すると、それに伴って回転角センサ30が一体に回転軸20回りに回転し、その結果、回転軸20を基準としたアクセルペダル10の回転角を検出するようになっている。すなわち、本実施形態のアクセルペダル10は、電子アクセルを構成するものである。
【0027】
また、上述した軸部ハウジング16の下縁側の側壁16Aは、ダッシュパネル12のパネル面に沿って略車両下方側へ延出された後、車両後方下側へ斜めに延びて、再びダッシュパネル12に対して平行に略車両下方側へ延出されている。そして、この側壁16Aの下端部側の車両後方側の面に、側面視で凸形状の規制手段としてのストッパ受け32が一体に膨出されている。これに対応して、アクセルペダル10のペダルアーム22の基端部22A側にも、回転軸20に比較的近い位置に側面視で凸形状の規制手段としてのストッパ34が一体に形成されている。アクセルペダル10がフルストロークされると(全開位置まで踏み込まれると)、アクセルペダル10のストッパ34が軸部ハウジング26側のストッパ受け32に面接触状態で当接するようになっている。
【0028】
さらに、上述した軸部ハウジング16の側壁16Aにおけるストッパ受け32の反対側の面(車両前方側の面)には、第2の付勢手段としての差動スプリング(圧縮コイルスプリング)36の一端部が配置されている。なお、差動スプリング36の一端部は、軸部ハウジング16を支軸18回りに回転させない程度に当該ストッパ受け32の反対側の面に軽く接触している程度に配置されるのが好ましいが、非接触でも近接していれば差し支えない。差動スプリング36の他端部は、ペダルサポート14の一部でありかつダッシュパネル12に当接状態で配置されているスプリング受け38に当接係止されている。
【0029】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0030】
ドライバがアクセルペダル10のペダルパッド24を踏み込む前は、リターンスプリング28の付勢力によって、アクセルペダル10のペダルパッド24はペダル初期位置に保持されている。この状態からリターンスプリング28の付勢力に抗して、ドライバがアクセルペダル10のペダルパッド24を踏み込むと、ペダルストロークが増加していく。ドライバがアクセルペダル10をフルストロークさせると(即ち、ドライバがアクセルペダル10のペダルパッド24を図1の実線図示位置で示される全開位置まで踏み込むと)、アクセルペダル10のストッパ34が軸部ハウジング16のストッパ受け32に当接し、アクセルペダル10のペダルストロークが規制される。すなわち、ペダル初期位置から全開位置までは、アクセルペダル10の通常の作動範囲(揺動範囲)であり、このときにはリターンスプリング28の付勢力のみが作用し(効いており)、ペダルパッド24に付与された踏力が解除されると、リターンスプリング28によってアクセルペダル10のペダルパッド24がペダル初期位置へ復帰する。
【0031】
ところで、時にドライバがアクセルペダル10のペダルパッド24に全開位置を越えるペダルストロークとなる過負荷を付与することがある(即ち、ドライバがアクセルペダル10のペダルパッド24を踏み込み過ぎる(オーバーストロークさせる)ことがある)。
【0032】
しかし本実施形態に係るアクセルペダル構造では、軸部ハウジング16をペダルサポート14に支軸18回りに回転可能に支持させると共に、軸部ハウジング16にハウジング初期位置復帰方向への付勢力を作用させる差動スプリング36を設けたので、前記の如く、ドライバによってペダルパッド24に過負荷が付与され、ストッパ34がストッパ受け32に当接しペダルストロークの規制がなされると、今度はリターンスプリング28ではなく差動スプリング36が圧縮されつつ(即ち、付勢力を蓄積させつつ)、軸部ハウジング16を支軸18回りに回転させる。これにより、アクセルペダル10の全体が実線図示位置から二点鎖線図示位置へと回転し、アクセルペダル10のペダルパッド24の裏面側部分24Aをダッシュパネル12に当接させる。
【0033】
その結果、ペダルパッド24への荷重入力点(力点)から回転軸20(支点)までの距離とペダルパッド24の裏面側部分24Aのダッシュパネル12への当接点(作用点)から回転軸20(支点)までの距離のオフセット(ギャップ)が少なくなり、ダッシュパネル12に過大な荷重が入力されるのを抑制することができる。また、ダッシュパネル12への荷重伝達経路も、ストッパ34及びストッパ受け32を介したペダルサポート14側の締結部からダッシュパネル12へ入力される経路の他に、ペダルパッド24の裏面側部分24Aからダッシュパネル12へ入力される経路が新たに追加されるので、過負荷荷重をダッシュパネル12に分散して伝達することができる。よって、特別な補強をダッシュパネル12等に施す必要がなくなる。換言すれば、特別な補強を施さなくても、過負荷に対する強度を確保することができる。
【0034】
また、ペダルパッド24の裏面側部分24Aをダッシュパネル12に当接させるのは過負荷作用時のみであり、通常のペダル操作に対してはストッパ34とストッパ受け32によってアクセルペダル10のペダルストロークを規制する構成であるため、予め規制手段をペダルパッド24付近に設定する構成に比し、アクセルペダル10やダッシュパネル12等の製造誤差がアクセルペダル10の全開位置(図1の実線図示位置)に悪影響として及び、アクセルペダル10の全開位置にバラツキが生じるおそれもない。従って、車両ごとに回転角センサ30によって検出されるアクセルペダル10の全開位置が微妙に異なるといった不具合も生じない。
【0035】
以上を総括すると、本実施形態に係るアクセルペダル構造によれば、過負荷に対する強度確保とアクセルペダル10の全開位置のバラツキの発生抑制とを両立させることができる。
【0036】
〔第2実施形態〕
次に、図2を用いて、本発明に係るアクセルペダル構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0037】
図2に示されるように、この第2実施形態では、差動スプリング50としてトーションスプリングを用いた点、及び、それに伴って過負荷作用時に軸部ハウジング16が(第1実施形態のようにペダルサポート14に設定された支軸18ではなく、)元々ある回転軸20回りに回転する点に特徴がある。
【0038】
より具体的に説明すると、ペダルサポート52は、ダッシュパネル12への取付座となる底壁部52Aと、この底壁部52Aの側縁から立設された側壁52Bと、によって構成されている。側壁52Bの略中央部には回転軸20が立設されている他、スプリング係止孔54が形成されている。
【0039】
一方、軸部ハウジング16には前述した第1実施形態における支軸18が通される円孔等は設けられておらず、その替わりにスプリング係止孔56が上端角部に形成されている。そして、ペダルサポート14側のスプリング係止孔54にトーションスプリングで構成された第2の付勢手段としての差動スプリング50の一端部が挿入係止され、軸部ハウジング16側のスプリング係止孔56に差動スプリング50の他端部が挿入係止されている。従って、差動スプリング50はペダルサポート52の側壁16Aと軸部ハウジング16との間に介装される構成である。
【0040】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0041】
差動スプリング50の機能は前述した第1実施形態の差動スプリング36と基本的には同じであるので、以下では概要のみを説明する。
【0042】
ドライバがアクセルペダル10のペダルパッド24を踏み込む前は、リターンスプリング28の付勢力によって、アクセルペダル10のペダルパッド24はペダル初期位置に保持されている。この状態からリターンスプリング28の付勢力に抗して、ドライバがアクセルペダル10のペダルパッド24を踏み込むと、ペダルストロークが増加していく。ドライバがアクセルペダル10をフルストロークさせると(即ち、ドライバがアクセルペダル10のペダルパッド24を全開位置まで踏み込むと)、アクセルペダル10のストッパ34が軸部ハウジング16のストッパ受け32に当接し、アクセルペダル10のペダルストロークが規制される。すなわち、ペダル初期位置から全開位置までは、アクセルペダル10の通常の作動範囲(揺動範囲)であり、このときにはリターンスプリング28の付勢力のみが作用し(効いており)、ペダルパッド24に付与された踏力が解除されると、リターンスプリング28によってアクセルペダル10のペダルパッド24がペダル初期位置へ復帰する。
【0043】
一方、ドライバによってペダルパッド24に過負荷が付与され、ストッパ34がストッパ受け32に当接しペダルストロークの規制がなされると、今度はリターンスプリング28ではなく差動スプリング50の他端部が巻き込まれていきながら(即ち、差動スプリング50が縮径されることで付勢力を蓄積させつつ)、軸部ハウジング16を回転軸20回りに車両前方側へ回転させる。これにより、アクセルペダル10の全体が車両前方下側(側面視で回転軸20回りに時計方向)へと回転し、アクセルペダル10のペダルパッド24の裏面側部分24Aがダッシュパネル12に当接される。
【0044】
その結果、ペダルパッド24への荷重入力点(力点)から回転軸20(支点)までの距離とペダルパッド24の裏面側部分24Aのダッシュパネル12への当接点(作用点)から回転軸20(支点)までの距離のオフセット(ギャップ)が少なくなり、ダッシュパネル12に過大な荷重が入力されるのを抑制することができる。また、ダッシュパネル12への荷重伝達経路も、ストッパ34及びストッパ受け32を介したペダルサポート14側の締結部からダッシュパネル12へ入力される経路の他に、ペダルパッド24の裏面側部分24Aからダッシュパネル12へ入力される経路が新たに追加されるので、過負荷荷重をダッシュパネル12に分散して伝達することができる。よって、特別な補強をダッシュパネル12等に施す必要がなくなる。換言すれば、特別な補強を施さなくても、過負荷に対する強度を確保することができる。
【0045】
また、ペダルパッド24の裏面側部分24Aをダッシュパネル12に当接させるのは過負荷作用時のみであり、通常のペダル操作に対してはストッパ34とストッパ受け32によってアクセルペダル10のペダルストロークを規制する構成であるため、予め規制手段をペダルパッド24付近に設定する構成に比し、アクセルペダル10やダッシュパネル12等の製造誤差がアクセルペダル10の全開位置に悪影響として及び、アクセルペダル10の全開位置にバラツキが生じるおそれもない。従って、車両ごとに回転角センサ30によって検出されるアクセルペダル10の全開位置が微妙に異なるといった不具合も生じない。
【0046】
以上を総括すると、本実施形態に係るアクセルペダル構造によっても、前述した第1実施形態と同様に、過負荷に対する強度確保とアクセルペダル10の全開位置のバラツキの発生抑制とを両立させることができる。
【0047】
また、本実施形態に係るアクセルペダル構造では、第1実施形態と異なり、軸部ハウジング16を支軸18回りに回転させる構成ではなく、回転軸20回りに軸部ハウジング16を回転させる構成であるため、第1実施形態に比べて部品点数が少なくて済む。その結果、本実施形態によれば、前記効果を低コストで実現することができる。また、設置スペース的にも省スペース化を図ることができる。
【0048】
〔本実施形態の補足説明〕
なお、上述した各実施形態に係るアクセルペダル構造では、電子アクセルを対象として説明したが、これに限らず、電子アクセルではないケーブル牽引式のアクセルペダルに対して本発明を適用してもよい。
【0049】
また、上述した第1実施形態に係るアクセルペダル構造では、第2の付勢手段として圧縮コイルスプリングから成る差動スプリング36を用い、第2実施形態に係るアクセルペダル構造では、トーションスプリングから成る差動スプリング50を用いたが、これらの差動機構における「差動」の意味するところは、所謂差動ギヤ等で使用される「差動」とはニュアンスが異なっており、第1の付勢手段であるリターンスプリング28が効いている範囲(ペダルストローク)では付勢力を軸部ハウジング16に作用させず(仮に付勢力を作用させたとしても、軸部ハウジング16が回転しない程度)、全開位置に達した後、なおもアクセルペダル10が踏み込まれるような過負荷が作用した際には、第1の付勢手段であるリターンスプリング28に替わって、差動スプリング36、50のみが付勢力を蓄積し軸部ハウジング16を元の初期位置に復帰させる方向への付勢力を蓄積することで、軸部ハウジング16を支軸18又は回転軸20回りに回転させてペダルパッド24の裏面側部分24Aをダッシュパネル12に当接させる、そういう動きをする付勢手段というニュアンスで「差動」という言葉を使用している。
【0050】
さらに、上述した各実施形態に係るアクセルペダル構造では、第2の付勢手段として差動スプリング36、50を使用したが、これに限らず、所定硬度の樹脂部材等の弾性体を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1実施形態に係るアクセルペダル構造の全体構成を示す側面図である。
【図2】第2実施形態に係るアクセルペダル構造の全体構成を示す分解斜視図である。
【図3】従来例に係るアクセルペダル構造の全体構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0052】
10 アクセルペダル
12 ダッシュパネル(ボディーパネル)
14 ペダルサポート
16 軸部ハウジング
18 支軸
20 回転軸
24 ペダルパッド(ペダル踏面)
24A 裏面側部分
28 リターンスプリング(第1の付勢手段)
32 ストッパ受け(規制手段)
34 ストッパ(規制手段)
36 差動スプリング(第2の付勢手段)
50 差動スプリング(第2の付勢手段)
52 ペダルサポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディーパネルに固定されたペダルサポートに支持された軸部ハウジングと、
この軸部ハウジング内に配置された回転軸に基端部側が揺動可能に軸支されると共に基端部と反対側の端部にペダル踏面を備えたアクセルペダルと、
回転軸回りに揺動したアクセルペダルがペダル初期位置へ復帰するようにアクセルペダルを回転軸回りに付勢する第1の付勢手段と、
この第1の付勢手段の不勢力に抗してアクセルペダルが回転軸回りに踏み込まれた際にアクセルペダルのペダルストロークを全開位置で規制する規制手段と、
を含んで構成されたアクセルペダル構造であって、
前記軸部ハウジングはペダルサポートに回転可能に支持されていると共に、
前記規制手段によってアクセルペダルのペダルストロークが規制されるまでは軸部ハウジングに付勢力を作用させず、全開位置を越えるペダルストロークとなる過負荷がペダル踏面に付与されてアクセルペダルが全開位置まで揺動し規制手段によってペダルストロークが規制された場合に軸部ハウジングにハウジング初期位置復帰方向への付勢力を作用させながら軸部ハウジングを回転させることによりペダル踏面の裏面側をボディーパネルに当接させる第2の付勢手段を備えている、
ことを特徴とするアクセルペダル構造。
【請求項2】
前記軸部ハウジングは、前記第2の付勢手段が作動する際には前記回転軸回りに回転する、
ことを特徴とする請求項1記載のアクセルペダル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−188091(P2006−188091A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381939(P2004−381939)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】