説明

アクチュエータ、駆動装置、および撮像装置

【課題】熱膨張率の相違を利用した湾曲によって駆動力を生じる応答性が良好なアクチュエータ、ならびに該アクチュエータを用いた駆動装置および撮像装置を提供する。
【解決手段】アクチュエータは、第1層と、該第1層よりも大きな熱膨張率を持つ第2層と、第1および第2層よりも大きな熱伝導率を持つ第3層とを含む複数層が積層されるとともに、加熱に応じて変形する可動部を備える。また、該アクチュエータは、第3層と一体的に構成されるか、または第3層と接触するように構成され、且つ第1および第2層よりも大きな熱伝導率を持つ熱伝導部を含む放熱領域を有するとともに、可動部が固定される固定部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ、ならびに該アクチュエータを用いた駆動装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等に搭載されるマイクロカメラユニット(MCU)については、小型化および薄型化が要求される。従来、このようなMCUにおいて、レンズを移動させることで所謂オートフォーカス(AF)制御を行うためのアクチュエータとしては、ボイスコイルモータ(VCM)が主流となっている。しかし、VCMを用いて更なるMCUの薄型化を図ることは難しい。
【0003】
そこで、アクチュエータの小型化を実現するために、いわゆるバイメタルを用いたアクチュエータを採用することが考えられる。このバイメタルは、熱に応じて駆動するため、消費電力が大きく、応答性が低いといった面から、アクチュエータに対する採用が見送られてきた。ところが、MCUの小型化によって、消費電力および応答性に係るデメリットが緩和される傾向にあり、バイメタルを用いたアクチュエータが採用されたカメラモジュールが提案されている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−193248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バイメタルでは、2層を構成する素材の熱膨張率の差が大きいほど、大きな変位が得られる。そして、熱膨張率の差を大きくするための素材の組合せとしては、例えば、相対的に熱膨張率が高い20Ni−6Mn−Feと、相対的に熱膨張率が低い36Ni−Feとの組合せが挙げられる。
【0006】
しかしながら、これらバイメタルに適した素材については、熱伝導率が低いため、バイメタルにおいて、加熱に応じて一旦上昇した温度が簡単には下がらず、冷却時における応答速度の低下を招く。従って、MCUの光学レンズを移動させる際に、一方向に移動させた光学レンズを逆方向に移動させるためには、ある程度長い時間を要する。その結果、AF制御を短時間で行うことができない。また、AF制御を行う際には、光学レンズを合焦位置に停止させるために、サーボ制御が行われるが、バイメタルの冷却時の応答性の低さから、光学レンズの位置を所望の位置に短時間で停止させることが難しい。
【0007】
そして、このようなバイメタルの冷却時における応答性の改善については、上記特許文献1の技術では全く考慮されていない。なお、このような問題は、熱膨張率の相違を利用した湾曲によって駆動力を生じるアクチュエータ一般に共通する。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、熱膨張率の相違を利用した湾曲によって駆動力を生じる応答性が良好なアクチュエータ、ならびに該アクチュエータを用いた駆動装置および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1の態様に係るアクチュエータは、第1層と、該第1層よりも大きな熱膨張率を持つ第2層と、第1および第2層よりも大きな熱伝導率を持つ第3層とを含む複数層が積層されるとともに、加熱に応じて変形する可動部を備える。また、前記アクチュエータは、前記第3層と一体的に構成されるか、または前記第3層と接触するように構成され、且つ前記第1および第2層よりも大きな熱伝導率を持つ熱伝導部を含む放熱領域を有するとともに、前記可動部が固定される固定部を備える。
【0010】
第2の態様に係るアクチュエータは、第1の態様に係るアクチュエータであって、前記第3層が、前記第1層と前記第2層との間に設けられる。
【0011】
第3の態様に係るアクチュエータは、第1または第2の態様に係るアクチュエータであって、前記放熱領域が、前記可動部の第1熱容量よりも大きな第2熱容量を有する。
【0012】
第4の態様に係るアクチュエータは、第3の態様に係るアクチュエータであって、前記放熱領域が、前記可動部の第1表面積よりも大きな第2表面積を有する。
【0013】
第5の態様に係るアクチュエータは、第1から第4の何れか1つの態様に係るアクチュエータであって、前記第3層が、銅、ニッケル、およびアルミニウムのうちの少なくとも1つの素材によって構成される。
【0014】
第6の態様に係るアクチュエータは、第1から第5の何れか1つの態様に係るアクチュエータであって、前記熱伝導部が、銅、ニッケル、およびアルミニウムのうちの少なくとも1つの素材によって構成される。
【0015】
第7の態様に係るアクチュエータは、第1から第6の何れか1つの態様に係るアクチュエータであって、前記複数層が、パターンニングされたヒータ層を更に含む。
【0016】
第8の態様に係る駆動装置は、第1から第7の何れか1つの態様に係るアクチュエータと、前記放熱領域に対して接合される隣接層と、前記アクチュエータによって移動される対象である移動対象物とを備える。
【0017】
第9の態様に係る駆動装置は、第1から第7の何れか1つの態様に係るアクチュエータと、前記可動部の変形によって移動される対象である移動対象物とを備える。
【0018】
第10の態様に係る撮像装置は、第1から第7の何れか1つの態様に係るアクチュエータと、撮像素子と、被写体からの光を前記撮像素子まで導く光学系とを備え、前記撮像素子および前記光学系のうちの少なくとも一方が、前記可動部の変形によって移動される。
【発明の効果】
【0019】
第1から第7の何れの態様に係るアクチュエータによっても、熱伝導率が大きな第3層から熱伝導部への熱伝導により、可動部の冷却速度が高められるため、熱膨張率の相違を利用した湾曲によって駆動力を生じる応答性が良好なアクチュエータを提供することができる。
【0020】
第2の態様に係るアクチュエータによれば、可動部が変形可能な量を確保しつつ、可動部の冷却速度を高めることができる。
【0021】
第3および第4の何れの態様に係るアクチュエータによっても、可動部の冷却速度をより高めることができる。
【0022】
第8の態様に係る駆動装置によれば、隣接層を介した放熱により、可動部の冷却速度を高めることができる。
【0023】
第9の態様に係る駆動装置によれば、熱伝導率が大きな第3層から熱伝導部への熱伝導により、可動部の冷却速度が高められるため、熱膨張率の相違を利用した湾曲によって駆動力を生じる応答性が良好なアクチュエータを用いた駆動装置を提供することができる。
【0024】
第10の態様に係る撮像装置によれば、熱伝導率が大きな第3層から熱伝導部への熱伝導により、可動部の冷却速度が高められるため、熱膨張率の相違を利用した湾曲によって駆動力を生じる応答性が良好なアクチュエータを用いた撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係るカメラモジュールを搭載した携帯電話機の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る第1の筐体に着目した断面模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るカメラモジュールの断面模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るカメラモジュールを側方から見た外観図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るカメラモジュールを側方から見た外観図である。
【図6】レンズ群の断面模式図である。
【図7】レンズ群の断面模式図である。
【図8】第1レンズ構成層を下方から見た外観図である。
【図9】第2レンズ構成層を上方から見た外観図である。
【図10】スペーサ層の形状を説明するための図である。
【図11】レンズ位置調整層を上方から見た外観図である。
【図12】レンズ位置調整層の断面模式図である。
【図13】アクチュエータ層を上方から見た外観図である。
【図14】アクチュエータ層を側方から見た外観図である。
【図15】アクチュエータ層の層構造を説明するための図である。
【図16】アクチュエータ層を構成する高熱膨張層の形状を示す図である。
【図17】アクチュエータ層を構成する熱伝導層の形状を示す図である。
【図18】アクチュエータ層を構成する低熱膨張層の形状を示す図である。
【図19】アクチュエータ層を構成する絶縁層の形状を示す図である。
【図20】アクチュエータ層を構成するヒータ層の形状を示す図である。
【図21】アクチュエータ層の詳細な構成を示す上面外観図である。
【図22】可動部の動作例を説明するための図である。
【図23】可動部の動作例を説明するための図である。
【図24】第2平行ばねを下方から見た外観図である。
【図25】レンズ群に装着された第2平行ばねを示す図である。
【図26】第1平行ばねを下方から見た外観図である。
【図27】レンズ群に装着された第1平行ばねを示す図である。
【図28】カメラモジュールの製造工程を示すフローチャートである。
【図29】準備されたシート等を積層させて接合する様子を模式的に示す図である。
【図30】自然冷却によるレンズ位置の経時的な変化を示す図である。
【図31】本発明の一変形例に係る撮像素子を移動させる態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
<(1)携帯電話機の概略構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るカメラモジュール500を搭載した携帯電話機100の概略構成を示す模式図である。なお、図1および図1以降の図では方位関係を明確化するために、XYZの相互に直交する3軸が適宜付されている。
【0028】
図1で示されるように、携帯電話機100は、折り畳み式の携帯電話機として構成され、第1の筐体200と、第2の筐体300と、ヒンジ部400とを有する。第1の筐体200および第2の筐体300は、それぞれ板状の略直方体の形状を有し、各種電子部材を格納する筐体としての役割を有する。具体的には、第1の筐体200は、カメラモジュール500および表示ディスプレイを有し、第2の筐体300は、携帯電話機100を電気的に制御する制御部とボタン等の操作部材とを有する。なお、ヒンジ部400は、第1の筐体200と第2の筐体300とを回動可能に接続する。このため、携帯電話機100は、折り畳み可能となっている。
【0029】
また、第1の筐体200には、電流供給ドライバ600、電気抵抗検出部700、およびコントラスト検出部800が搭載されている。電流供給ドライバ600は、カメラモジュール500のヒータ層155(図20)への電流の供給を制御する。電気抵抗検出部700は、ヒータ層155における電気抵抗を検出する。コントラスト検出部800は、カメラモジュール500の撮像素子181(図3)で得られる画像信号についてコントラストを検出する。また、第2の筐体300には、携帯電話機100の全体の動作を統括制御する回路基板上に合焦制御部310が搭載されている。合焦制御部310は、電気抵抗検出部700およびコントラスト検出部800からの信号の入力に応じて、電流供給ドライバ600を介したヒータ層155への電流の供給量を制御することで、カメラモジュール500の合焦状態を調整するAF制御を実行する。
【0030】
図2は、携帯電話機100のうちの第1の筐体200に着目した断面模式図である。図1および図2で示されるように、カメラモジュール500は、XY断面のサイズが約5mm四方であり、厚さ(Z方向の奥行き)が約3mm程度である小型の撮像装置、所謂マイクロカメラユニット(MCU)となっている。
【0031】
以下、カメラモジュール500の構成、カメラモジュール500の製造工程、カメラモジュール500におけるAF制御、およびカメラモジュール500における応答性について順次説明する。
【0032】
<(2)カメラモジュールの構成>
図3は、カメラモジュール500の断面模式図であり、図3の矢印AR1の示す方向が+Z方向に対応する。なお、図3以降の図面においても、方位関係の明確化のために、+Z方向に対応する方向を示す矢印AR1が適宜付されている。また、図4および図5は、カメラモジュール500を側方から見た側面図である。
【0033】
図3で示されるように、カメラモジュール500は、撮影光学系としてのレンズ群20が移動可能に設けられている光学ユニットKBと、被写体像に関する撮影画像を取得する撮像部PBとを有している。
【0034】
撮像部PBは、例えば、COMSセンサまたはCCDセンサ等の撮像素子181を有する撮像素子層18と、カバーガラス層17とが+Z方向にこの順序で積層された構成を有する。なお、カバーガラス層17が、赤外線(IR)をカットするフィルタ層を含むようにしても良い。
【0035】
光学ユニットKBは、蓋層10、第1枠層11、第1平行ばね(上層平行ばね)12、第2枠層13、第2平行ばね(下層平行ばね)14、アクチュエータ層15、レンズ位置調整層16、およびレンズ群20を備える。蓋層10、第1枠層11、第1平行ばね12、第2枠層13、第2平行ばね14、アクチュエータ層15、レンズ位置調整層16、およびレンズ群20は、いずれもウエハ状態(ウエハレベルで)製作される。これらの製作工程については後述する。
【0036】
光学ユニットKBでは、レンズ位置調整層16、アクチュエータ層15、第2平行ばね14、第2枠層13、第1平行ばね12、第1枠層11、および蓋層10が+Z方向にこの順序で積層され、第2平行ばね14と第1平行ばね12との間にレンズ群20が保持される。そして、第1平行ばね12と第2平行ばね14とアクチュエータ層15とが互いに協働することで、レンズ群20をZ軸に沿った方向に移動させる。
【0037】
カメラモジュール500では、蓋層10、第1および第2枠層11,13、レンズ位置調整層16、カバーガラス層17、および撮像素子層18が、レンズ群20に対する固定部となる。また、カメラモジュール500および光学ユニットKBは、ウエハ状態(ウエハレベルで)製作され、その4つの側面(図4および図5のZ軸に平行な側面)が、ダイシングによって形成された切断面となっている。そして、この切断面では、光学ユニットKBおよび撮像部PBを構成する複数層の積層構造が露出している。
【0038】
ここで、レンズ群20は、固定部に結合された第1および第2平行ばね12,14によって支持される。より詳細には、レンズ群20の−Z側(撮像素子181が配置される側)におけるアクチュエータ層15と該レンズ群20との間には、第2平行ばね14が介挿される。また、レンズ群20の+Z側(蓋層10が配置される側)における第1枠層11と該レンズ群20との間には、第1平行ばね12が介挿される。つまり、レンズ群20は、第1平行ばね12と第2平行ばね14とによって挟まれている。ここでは、第1および第2平行ばね12,14によってレンズ群20が挟持されるため、レンズ群20の移動に拘わらず、レンズ群20の姿勢が保持され、レンズ群20の光軸が略一定に保持される。
【0039】
また、第1および第2平行ばね12,14は、移動対象物であるレンズ群20が+Z方向に移動する際に、レンズ群20の移動方向(すなわち+Z方向)とは反対方向の力を、該レンズ群20に対して付与する。なお、レンズ群20が−Z方向に移動する際には、第1および第2平行ばね12,14がレンズ群20に対して付与する力の方向は、レンズ群20の移動方向(すなわち−Z方向)と一致する。
【0040】
更に、レンズ群20が+Z方向に移動していない非駆動状態(例えば駆動前の静止状態)では、第1および第2平行ばね12,14の弾性力によってレンズ群20がレンズ位置調整層16の突起部162の上端面に対して押し付けられ、レンズ群20がレンズ位置調整層16によっても支持される。そして、この非駆動状態では、レンズ群20がZ軸に沿って変位可能な範囲(変位可能範囲)の最も−Z側の所定位置に配置されて静止する。
【0041】
なお、この所定位置は、例えば、撮像素子181において多数の画素回路が配列されている+Z側の面(以下「撮像面」とも称する)上に光学ユニットKBの焦点が配置されるような位置に設定される。ここで言う光学ユニットKBの焦点とは、+Z側から平行光線を光学ユニットKBに入射したときに、該光学ユニットKBから射出される光線が一点に集まる点のことを言う。
【0042】
また、上述したように、非駆動状態では、レンズ群20は、第1および第2平行ばね12,14の弾性力によってレンズ位置調整層16に対して押し付けられるため、カメラモジュール500に対して強い衝撃が付与されても、レンズ群20の姿勢が保持される。
【0043】
アクチュエータとしてのアクチュエータ層15は、+Z方向への駆動変位を発生させる可動部15a,15b(図13)を有し、レンズ群20の−Z側に配置されている。可動部15a,15bは、レンズ群20の−Z側に突出した第1突起部201と接触し、可動部15a,15bで生じる駆動変位は、第1突起部201を介してレンズ群20に伝達される。つまり、アクチュエータ層15は、移動対象物であるレンズ群20を所定方向(ここでは、+Z方向)に移動させる。なお、可動部15a,15bにおける+Z方向への駆動変位が小さくなっていく場面では、第1および第2平行ばね12,14の弾性力によって、レンズ群20が所定方向とは反対方向(−Z方向)に移動する。
【0044】
側面配線21は、カメラモジュール500の4つの側面のうちの1つの側面に配設される薄型の導電部材である。側面配線21は、図4および図5で示されるように、撮像素子層18を介して、ヒータ層155(図20)と、電流供給ドライバ600および電気抵抗検出部700とを電気的に接続する。なお、側面配線21と第2平行ばね14とが短絡しないように、第2平行ばね14と側面配線21との間に絶縁部14epが設けられる。
【0045】
上述したように、カメラモジュール500では、移動対象物であるレンズ群20が、該レンズ群20を介して互いに対向する位置に配置された第1および第2平行ばね12,14と結合され、該第1および第2平行ばね12,14がレンズ群20に垂直な方向(+Z方向)に弾性変形しつつ、レンズ群20の姿勢を保持する。そして、レンズ群20は、アクチュエータ層15の可動部15a,15bから駆動力を受けて、その位置をZ軸に沿って変位させる。従って、カメラモジュール500に設けられた光学ユニットKBは、レンズ群20を該レンズ群20の光軸方向(+Z方向)に変位させることができ、レンズ群20を変位させる駆動装置としてカメラモジュール500を機能させる。
【0046】
<(2-1)レンズ群について>
レンズ群20は、ガラス基板を基材としてウエハレベルで作製され、例えば、2枚以上のレンズを重ね合わせて成形される。本実施形態では、2枚の光学レンズを重ね合わせてレンズ群20が構成される場合について例示する。なお、本実施形態では、レンズ群20は、被写体からの光を撮像素子181に導く撮像レンズとして機能する。
【0047】
図6および図7は、レンズ群20の断面模式図であり、矢印AR2の示す方向が+Z方向に対応する。図8は、レンズ群20を下方(−Z側)から見たレンズ群20の下面外観図であり、図9は、レンズ群20を上方(+Z側)から見たレンズ群20の上面外観図である。
【0048】
図6および図7で示されるように、レンズ群20は、第1レンズG1を有する第1レンズ構成層LY1と、第2レンズG2を有する第2レンズ構成層LY2と、スペーサ層RBとを備える。そして、第1レンズ構成層LY1と第2レンズ構成層LY2とが、スペーサ層RBを介して結合される。ここでは、第1および第2レンズ構成層LY1,LY2の非レンズ部の外縁が略正方形の形状を有する。
【0049】
また、図6から図8で示されるように、第1レンズG1を有する第1レンズ構成層LY1の一方主面(ここでは、−Z側)には、レンズとして機能しない非レンズ部に第1突起部201が設けられる。更に、図6,図7および図9で示されるように、第2レンズG2を有する第2レンズ構成層LY2の一方主面(ここでは、+Z側)には、レンズとして機能しない非レンズ部に第2突起部202が設けられる。
【0050】
また、図10は、スペーサ層RBの形状に着目して、スペーサ層RBを上方(+Z側)から見た図である。図10で示されるように、スペーサ層RBは、第1および第2レンズ構成層LY1,LY2の非レンズ部の外縁に沿って設けられ、XY断面の外縁および内縁の形状が矩形である環状の構成を有する。そして、レンズ群20の光軸が、Z軸に沿った方向に設定される。
【0051】
<(2-2)各機能層について>
以下では、カメラモジュール500を構成する各機能層の詳細について説明する。なお、各機能層については、−Z側の面を一主面と称し、+Z側の面を他主面と称する。
【0052】
<(2-2-1)撮像素子層>
図3で示されるように、撮像素子層18は、光学ユニットKBを通過した被写体からの光を受光して、被写体の像に関する画像信号を生成する撮像素子181、その周辺回路、および撮像素子181を囲む外周部を備える部材である。また、撮像素子181は、多数の画素回路が配列されて構成される。なお、撮像素子層18の一主面(−Z側の面)には、リフロー方式によるはんだ付けを行うためのはんだボールHBが設けられている。また、ここでは図示を省略しているが、撮像素子層18の一主面には、撮像素子181に対する信号の付与、および該撮像素子181からの信号の読み出しを行う配線を接続するための各種端子が設けられる。
【0053】
なお、電流供給ドライバ600、電気抵抗検出部700、およびコントラスト検出部800が、撮像素子層18に形成され、側面配線21が、ダイシングによって切断されたカメラモジュール500の側面にパターンニングされることで、電流供給ドライバ600および電気抵抗検出部700が、アクチュエータ層15に対して電気的に接続されても良い。更に、アクチュエータ層15の動作を制御する合焦制御部310が、撮像素子層18に形成されても良い。また、電流供給ドライバ600、電気抵抗検出部700、およびコントラスト検出部800が、例えば、第2の筐体300の回路基板上に設けられ、リフロー方式によるはんだ付けによって、コントラスト検出部800が、撮像素子層18に対して電気的に接続されるとともに、撮像素子層18を介して、電流供給ドライバ600および電気抵抗検出部700が、アクチュエータ層15に対して電気的に接続されても良い。
【0054】
<(2-2-2)カバーガラス層>
図3で示されるように、カバーガラス層17は、略平板状であり且つXY断面が略正方形の形状を有し、透明なガラス等によって構成される。このカバーガラス層17は、撮像素子層18の他主面(+Z側の面)に対して接合され、撮像素子181を保護する機能を有する。なお、カバーガラス層17が撮像素子層18上に接合された状態で撮像素子基板178を構成する。
【0055】
<(2-2-3)レンズ位置調整層>
レンズ位置調整層16は、樹脂材料を用いて構成されるとともに、撮像素子181とレンズ群20との間に配設され、且つ撮像素子181とレンズ群20との距離を調整する部材である。具体的には、レンズ位置調整層16は、非駆動状態におけるレンズ群20の位置(初期位置)を規定する。なお、レンズ位置調整層16は、例えば、樹脂をエッチングする手法等を用いて生成される。
【0056】
図11は、レンズ位置調整層16を上方(+Z側)から見たレンズ位置調整層16の上面図である。図11は、レンズ位置調整層16の切断面XII−XIIにて矢印方向に見たレンズ位置調整層16の断面図である。図11および図12で示されるように、レンズ位置調整層16は、枠体161と突起部162とを備える。
【0057】
枠体161は、レンズ位置調整層16の外周部分を構成する略矩形の環状の部分であり、XY平面に略平行な板状の形状を有する。そして、枠体161は、Z軸に沿った方向に貫通する孔(貫通孔)16Hを形成し、枠体161を構成する+Y側の板状の部材および−Y側の板状の部材は、各板状の部分の下部から貫通孔16H側に出っ張った部分(凸部)161Tをそれぞれ有する。また、枠体161の一主面は、隣接するカバーガラス層17に対して接合され、枠体161の他主面は、隣接するアクチュエータ層15(詳細には、アクチュエータ層15の枠体15f(図13))と接合される。
【0058】
突起部162は、枠体161に設けられる凸部161Tの内縁近傍において上方(+Z方向)に向けて立設される。この突起部162は、XZ平面に略平行で且つ略長方形の盤面を有する板状の部分であり、突起部162の長手方向がX軸に略平行な方向とされ、突起部162の短手方向がZ軸に略平行な方向とされている。そして、突起部162の+Z側の端面は、レンズ群20が当接することで、該レンズ群20を初期位置に配置する機能を有する。
【0059】
また、図11では、撮像素子181を構成する複数の画素回路が配列される領域(画素配列領域)、すなわち撮像素子181の前面(撮像面)の外縁が破線で示されている。図11で示されるように、撮像面は、(短辺の長さ):(長辺の長さ):(対角線の長さ)=3:4:5の関係が成立するように構成される。そして、突起部162は、被写体からレンズ群20を介して撮像素子181の画素配列領域に至る光路を、該画素配列領域の幅が最も狭い方向において挟む位置に配設されている。つまり、撮影への悪影響、および装置の大型化を招かないように、突起部162が設置される。
【0060】
<(2-2-4)アクチュエータ層>
図13は、アクチュエータ層15を上方(+Z側)から見た該アクチュエータ層15の上面図である。図14は、アクチュエータ層15を側方から見た該アクチュエータ層15の側面図である。図15は、アクチュエータ層15の層構造を概略的に示す図である。図16から図20は、アクチュエータ層15を構成する各層の構成を示す図である。
【0061】
図13で示されるように、アクチュエータ層15は、外周部を構成する枠体15fと、枠体15fの内側の中空部分に対して枠体15fから突設される2枚の板状の可動部15aおよび15bとを備える。つまり、可動部15a,15bが固定部としての枠体15fに対して固定される。そして、枠体15fの一主面は、隣接するレンズ位置調整層16(具体的には、枠体161)に対して接合され、枠体15fの他主面は、隣接する第2平行ばね14(具体的には、固定枠体141(図24))と接合される。
【0062】
また、図15で示されるように、アクチュエータ層15は、高熱膨張層151(図16)、熱伝導層152(図17)、低熱膨張層153(図18)、絶縁層154(図19)、およびヒータ層155(図20)が、−Z側から+Z側に向けてこの順番に積層されて構成される。すなわち、可動部15a,15bでは、いわゆるバイメタル(Bi-metallic strip)が採用されている。なお、ここでは、図示を省略するが、ヒータ層155と第2平行ばね14との短絡を防止する目的で、ヒータ層155の上面(+Z側の面)に絶縁膜が形成されることが好ましい。
【0063】
高熱膨張層151は、図16で示されるように、枠体15fを構成する枠部151fと、枠部151fの内側の中空部分に対して枠部151fから突設される2枚の板状の突設部151a,151bを備える。ここでは、突設部151aが可動部15aを構成するとともに、突設部151bが可動部15bを構成する。また、高熱膨張層151は、低熱膨張層153を構成する素材よりも大きな熱膨張率を持つ素材によって構成される。この高熱膨張層151を構成する素材としては、例えば、熱膨張率が20×10-6/℃である鉄・ニッケル・マンガン合金、熱膨張率が30×10-6/℃であるマンガン・銅・ニッケル合金、熱膨張率が18×10-6/℃である鉄・ニッケル・クロム合金、および熱膨張率が18×10-6/℃である鉄・モリブデン・ニッケル合金のうちの何れか1つの素材であれば良い。但し、これらの素材の熱伝導率は、比較的低く、例えば、鉄・ニッケル・マンガン合金の熱伝導率は、約8.8W・m-1・K-1である。
【0064】
熱伝導層152は、図17で示されるように、高熱膨張層151と同様に、枠体15fを構成する枠部152fと、枠部152fの内側の中空部分に対して枠部152fから突設される2枚の板状の突設部152a,152bを備える。また、熱伝導層152は、高熱膨張層151および低熱膨張層153を構成する素材よりも大きな熱伝導率を持つ素材によって構成される。この熱伝導層152を構成する素材としては、例えば、熱伝導率が105.5W・m-1・K-1である銅および銅合金、熱伝導率が204W・m-1・K-1であるアルミニウム、ならびに熱伝導率が90W・m-1・K-1であるニッケルのうちの何れか1つの素材であれば良い。
【0065】
低熱膨張層153は、図18で示されるように、高熱膨張層151と同様に、枠体15fを構成する枠部153fと、枠部153fの内側の中空部分に対して枠部153fから突設される2枚の板状の突設部153a,153bを備える。ここでは、突設部153aが可動部15aを構成するとともに、突設部153bが可動部15bを構成する。この低熱膨張層153を構成する素材としては、例えば、熱膨張率が1.1×10-6/℃である鉄・ニッケル合金が採用されることが好ましい。但し、この素材の熱伝導率は、比較的低く、約8.8W・m-1・K-1である。
【0066】
絶縁層154は、図19で示されるように、高熱膨張層151と同様に、枠体15fを構成する枠部154fと、枠部154fの内側の中空部分に対して枠部154fから突設される2つの突設部154a,154bを備える。ここでは、突設部154aが可動部15aを構成するとともに、突設部154bが可動部15bを構成する。そして、絶縁層154は、シリカ(二酸化珪素)等の絶縁体によって構成される。
【0067】
ヒータ層155は、絶縁層154上にパターンニングされ、白金等の抵抗率が高い導電性を有する金属等によって構成される。そして、図20で示されるように、ヒータ層155では、配線部1551、ヒータ部155b、配線部1552、ヒータ部155a、および配線部1553がこの順番で延設され、順次に電気的に接続される。そして、配線部1551,1552,1553が、枠体15fを構成し、ヒータ部155aが、可動部15aを構成し、ヒータ部155bが、可動部15bを構成する。
【0068】
また、配線部1551,1552,1553は、ヒータ部155a,155bと比較して、幅が広く、電気抵抗が低くなるように構成される。従って、ヒータ層155の一端(ここでは、配線部1551の−Y側の端面)と他端(ここでは、配線部1553の−Y側の端面)との間に電圧が印加されると、電気抵抗が高いヒータ部155a,155bが、自身のジュール熱によって発熱する。つまり、発熱部としてのヒータ部155a,155bが電流の供給に応じて発熱する。なお、配線部1551,1552,1553については、低消費電力化の観点から言えば、金や銅等の抵抗率が低い導電性を有する金属等によって構成されることが望ましい。
【0069】
このアクチュエータ層15については、まず、該アクチュエータ層15に相当するチップが所定配列で形成されるシート(アクチュエータ層シート)が生成され、その後、該アクチュエータ層シートが、後述するダイシング工程によってアクチュエータ層15の形に分割される。アクチュエータ層シートについては、例えば、次の様な工程で製作される。まず、高熱膨張層151の素材の板と、熱伝導層152の素材の板と、低熱膨張層153の素材の板とが、この順番で重ねられた状態で圧接または圧延されることで、3層構造の薄板が作成される。次に、該3層構造の薄板が所定の形状にカットされ、カット後の薄板(3層薄板)上に、プラズマCVD等によって絶縁層154に対応するシリコン酸化膜が成膜される。その次に、シリコン酸化膜上において、(i)フォトリソグラフィ技術による所望のパターンのレジスト膜の形成、(ii)蒸着(またはスパッタリング)等による金属膜(白金、銅、金等)の生成、および(iii)リフトオフ法等による不要な部分(レジスト膜等)の除去、が適宜順次に実行されることで、ヒータ層155に対応する配線パターンが形成される。なお、ヒータ層155に対応する配線パターンについては、スクリーン印刷等によって形成されても良い。そして、最後に、エッチングまたはプレス等によって、各アクチュエータ層15のチップに対応する可動部15a,15bの形状、すなわち中空部分が形成される。
【0070】
図21は、アクチュエータ層15を上方(+Z側)から見た該アクチュエータ層15の詳細な構成を示す上面図である。図21で示されるように、アクチュエータ層15の他主面(+Z側の面)には、ヒータ層155が形成される。詳細には、ヒータ部155aが、可動部15aのうちの枠体15fに固定される一端部(固定端)から、該可動部15aの他端部(自由端)FT近傍にかけて延設されるとともに、自由端FT近傍で折り返されて、自由端FT近傍から固定端にかけて延設される。同様に、ヒータ部155bが、可動部15bのうちの枠体15fに固定される一端部(固定端)から、該可動部15bの他端部(自由端)FT近傍にかけて延設されるとともに、自由端FT近傍で折り返されて、自由端FTから固定端にかけて延設される。また、ヒータ層155の一端(具体的には、配線部1551の−Y側の端面)と他端(配線部1553の−Y側の端面)が、ダイシング工程において、カメラモジュール500の側面に露出する。この露出するヒータ層155の一端および他端に対しては、側面配線21(図3から図5)が設けられることで、該側面配線21を介して電圧および電流が供給される。
【0071】
図22および図23は、ヒータ部155a,155bの発熱に応じて可動部15a,15bが変形する態様を示す模式図である。なお、可動部15a,15bの変形の態様は、それぞれ同様であるから、図22および図23では、可動部15aの変形の態様が一例として示されており、ここでは、可動部15aの変形の態様を例にとって説明する。
【0072】
図22で示されるように、ヒータ部155aが発熱していない状態では、可動部15aが平坦な形状を有する。これに対して、図23で示されるように、ヒータ部155aに対する通電に応答した発熱により、高熱膨張層151の突設部151aが、低熱膨張層153の突設部153aよりも大きく膨張する。ここでは、ヒータ部155aの発熱による熱量が、突設部153aから周辺の雰囲気および枠体15fに対して放出される熱量を上回ることで、可動部15aの温度が上昇する。なお、可動部15aの厚みを30〜50μm程度と非常に薄くしておくと、可動部15aの温度が比較的短時間で上昇する。そして、可動部15aの温度が上昇すると、突設部151aと突設部153aとの間の膨張の違いによって、可動部15aが反るような変形を生じて、自由端FTの上方(+Z方向)への変位が発生する。
【0073】
一方、ヒータ部155aに対する通電が停止されると、可動部15aの熱が熱伝導層152の存在によって枠体15fに急速に伝わり、枠体15fからの放熱によって、可動部15aが急速に冷却される。このとき、自由端FTの上方(+Z方向)への変位が低減されていき、図22で示されるように、可動部15aが平坦な形状に戻る。
【0074】
このようなアクチュエータ層15では、熱伝導層152が、可動部15a,15bを構成する突設部152a,152bと、枠体15fを構成する熱伝導部としての枠部152fとが一体的に構成されている。このため、ヒータ部155a,155bの発熱によって可動部15a,15bが加熱されている状態から、ヒータ部155a,155bの発熱が終了されると、可動部15a,15bの熱が熱伝導層152を介して枠体15fに迅速に伝わる。このとき、可動部15a,15bの表面からだけでなく、枠体15fの表面からも放熱される。そして、枠体15fは、アクチュエータ層15とそれぞれ隣接する機能層(隣接層)である第2平行ばね14およびレンズ位置調整層16と接合される。このため、枠体15fおよび隣接層を介した放熱が促進され、可動部15a,15bの冷却速度が高まる。つまり、枠体15fが、可動部15a,15bの冷却を促進するために熱を放散させる領域(放熱領域)として働く。
【0075】
なお、放熱領域における放熱を促進して、可動部15a,15bの冷却速度をより高めるためには、可動部15a,15bの熱が放熱領域に十分吸収されるように、可動部15a,15bの熱容量よりも、枠体15fの熱容量の方が大きくなるように設定されることが好ましい。すなわち、可動部15a,15bの体積よりも、放熱領域としての枠体15fの体積の方が大きくなるように設定されることが好ましい。そして、ここでは、可動部15a,15bおよび枠体15fの厚みが一定であるから、可動部15a,15bの表面積よりも、枠体15fの表面積の方が大きくなるように設定されることが好ましい。
【0076】
また、アクチュエータ層15では、高熱膨張層151と低熱膨張層153との間に熱伝導層152が設けられる。このため、高熱膨張層151と低熱膨張層153の熱が、熱伝導層152に対して容易に伝達され、可動部15a,15bの冷却が促進される。更に、このような熱伝導層152の存在により、高熱膨張層151と低熱膨張層153との間隔が確保されることで、突設部151aと突設部153aとの間の膨張の違いによる可動部15a,15bの反りが促進される。すなわち、少ない加熱で自由端FTの変位を大きくすることが可能となる。したがって、高熱膨張層151と低熱膨張層153との間に熱伝導層152が設けられることで、可動部15a,15bの変形可能な量が確保されつつ、可動部15a,15bの冷却速度が高められる。
【0077】
更に、アクチュエータ層15については、加熱速度と冷却速度と消費電力とを総合的に判断すると、高熱膨張層151の厚みと熱伝導層152の厚みと低熱膨張層153の厚みとが、2:1:2の関係を有するような形態が好ましい。
【0078】
<(2-2-5)第2平行ばね>
図24は、第2平行ばね14を下方(−Z方向)から見た該第2平行ばね14の下面外観図である。図25は、レンズ群20に接合された第2平行ばね14を示す図である。図24で示されるように、第2平行ばね14は、固定枠体141と、弾性部142とを有する弾性部材であり、ばね機構を形成する層(弾性層)となっている。なお、第2平行ばね14の素材としては、例えば、SUS系の金属材料またはりん青銅等が採用される。
【0079】
固定枠体141は、第2平行ばね14の外周部を構成し、隣接するアクチュエータ層15の枠体15fと接合される。ここで、アクチュエータ層15のヒータ層155と、第2平行ばね14との間隔は、通常は、10um程度しかない。このため、ヒータ層155に電圧および電流を供給する側面配線21を、例えば、印刷などによって撮像素子層18からアクチュエータ層15にわたって単に設けると、側面配線21が、固定枠体141にまでかかってしまう。つまり、側面配線21と第2平行ばね14とが短絡してしまう。
【0080】
そこで、この短絡を防ぐ目的で、第2平行ばね14の固定枠体141の4隅の近傍の外縁に窪んだ切り欠き部143が設けられる。この切り欠き部143には、第2枠層13と第2平行ばね14とが接合される際、および第2平行ばね14とアクチュエータ層15とが接合される際に、接合に用いられるエポキシ系の樹脂等の接着剤が充填されることで、絶縁部14ep(図3から図5)が形成される。この絶縁部14epの存在により、側面配線21と第2平行ばね14とが接触することによる不要な短絡が防止される。
【0081】
弾性部142は、固定枠体141との接続部PG1と、レンズ群20との接合部PG2とを有し、接続部PG1と接合部PG2とが板状部材EBで繋がれる。そして、図25で示されるように、第2平行ばね14は、弾性部142に設けられる接合部PG2においてレンズ群20と接合される。ここでは、第1突起部201は、第2平行ばね14の固定枠体141と板状部材EBとの隙間を通って、アクチュエータ層15の自由端FTと当接する。つまり、第2平行ばね14は、レンズ群20の第1突起部201と接触しないような形状を有する。
【0082】
そして、レンズ群20が固定枠体141に対して+Z方向に移動されるにつれて、接続部PG1と接合部PG2とのZ方向の位置がずれ、板状部材EBは曲げ変形(たわみ変形)を生じて湾曲する。つまり、第2平行ばね14は、板状部材EBの弾性変形によって、レンズ群20の光軸方向(±Z方向)に弾性変形可能であり、ばね機構として機能する。
【0083】
なお、第2平行ばね14は、SUS系の金属材料またはりん青銅等を用いて作製される。例えば、SUS系の金属材料で第2平行ばね14が作製される場合は、フォトリソグラフィ技術により、平行ばねの形状のレジストが金属材料上にパターンニングされ、塩化鉄系のエッチング液に浸してウエットエッチングが行われることで、平行ばねのパターンが形成される。
【0084】
<(2-2-6)第2枠層>
図3で示されるように、第2枠層13は、XY断面の外縁および内縁がそれぞれ略矩形状であるリング状の部材であり、Z軸に沿って貫通する中空部分を形成する。第2枠層13は、中空部分にレンズ群20が配置されることで、該レンズ群20を側方から囲む。なお、第2枠層13を構成する素材としては、樹脂やガラス等が挙げられ、第2枠層13は、金属金型を用いたいわゆるプレス法や射出成型法等によって製作される。そして、第2枠層13の−Z側に位置する下端面(一主面)は、隣接する第2平行ばね14の固定枠体141と接合される。また、第2枠層の+Z側に位置する上端面(他主面)は、隣接する第1平行ばね12(詳細には、第1平行ばね12の固定枠体121(図26))と接合される。
【0085】
<(2-2-7)第1平行ばね>
図26は、第1平行ばね12を下方(−Z方向)から見た該第1平行ばね12の下面外観図である。図26で示されるように、第1平行ばね12は、切り欠き部143が設けられていないことを除いて、第2平行ばね14と同様の構成および機能を有する弾性部材であり、固定枠体121と弾性部122とを備える。そして、固定枠体121の一主面は、隣接する第2枠層13の他主面と接合され、固定枠体121の他主面は、隣接する第1枠層11(詳細には、第1枠層11の−Z側の下端面)と接合される。
【0086】
図27は、レンズ群20に接合された第1平行ばね12を示す図である。図27で示されるように、弾性部122に設けられた接合部PG2は、レンズ群20の突起部202の+Z側の上端面と接合される。このため、固定枠体121に対してレンズ群20が+Z方向に相対的に移動されると、板状部材EBにおいて弾性変形が発生し、第1平行ばね12が、ばね機構として機能する。
【0087】
<(2-2-8)第1枠層>
図3で示されるように、第1枠層11は、第2枠層13と同様に、XY断面の外縁および内縁がそれぞれ略矩形状であるリング状の部材であり、Z軸に沿って貫通する中空部分を形成する。第1枠層11の中空部分は、レンズ群20が+Z方向に移動される際に、弾性変形する板状部材EBおよび突起部202が移動可能な空間となる。なお、第1枠層11は、第2枠層13と同様な素材および製作方法によって形成される。そして、第1枠層11の−Z側に位置する下端面(一主面)は、隣接する第1平行ばね12の固定枠体121と接合される。また、第1枠層の+Z側に位置する上端面(他端面)は、隣接する蓋層10(詳細には、蓋層の外周部近傍)と接合される。
【0088】
<(2-2-9)蓋層>
図3で示されるように、蓋層10は、XY断面の外縁が略正方形であるとともに、略中央にZ軸に平行な方向に貫通する孔(貫通孔)10Hを有し、XY平面に略平行な盤面を有する板状の部材である。貫通孔10Hは、被写体からの光をレンズ群20を介して撮像素子181に導くための孔であり、この蓋層10は、平板状の樹脂材料をプレス加工する手法、あるいは樹脂材料をパターニングした後にエッチングする手法によって、貫通孔10Hが形成されて製作される。
【0089】
なお、図3では、図示が省略されているが、蓋層10の貫通孔10Hからカメラモジュール500の内部にゴミ等が侵入しないように、蓋層10の上面(他主面)側には、適宜ガラス等で構成される透明な保護層が設けられる。
【0090】
<(3)カメラモジュールにおけるAF制御>
図1で示されるように、第1の筐体200には、電流供給ドライバ600、電気抵抗検出部700、およびコントラスト検出部800が搭載されるとともに、第2の筐体300には、合焦制御部310が搭載される。電気抵抗検出部700は、ヒータ層155の電気抵抗を検出し、該電気抵抗を示す信号を合焦制御部310に対して出力する。合焦制御部310は、ヒータ層155の電気抵抗に基づいて、可動部15a,15bの変形(具体的には、自由端FTの変位)を検出する。この自由端FTの変位の検出については、ヒータ層155(具体的には、ヒータ部155a,155b)における形状と電気抵抗との関係が一義的に決まることが利用されて実行される。そして、合焦制御部310は、自由端FTの変位を検出しつつ、電流供給ドライバ600を介してヒータ層155に供給する電流を制御することで、可動部15a,15bの変形量、すなわち自由端FTの変位を制御する。このとき、自由端FTによる第1突起部201の押し上げにより、レンズ群20が+Z方向に移動されることで、レンズ群20と撮像素子181との離隔距離が変更されて、光学ユニットKBの焦点の位置が変更される。
【0091】
また、コントラスト検出部800は、撮像素子181で得られる画像信号について、コントラストを検出する。例えば、隣接画素間の階調値の差分を画像全体について積算した数値が、コントラストを示す評価値として検出される。このコントラストを示す評価値を示す信号は、合焦制御部310に対して出力される。
【0092】
AF制御を行う際には、合焦制御部310の制御により、まず、レンズ群20と撮像素子181との離隔距離が予め設定された多段階の離隔距離に順次に設定され、各離隔距離に設定される状態で撮像素子181によって画像信号が取得される。換言すれば、レンズ群20の+Z方向への繰り出し位置が、予め設定された多段階の位置に設定されるとともに、各繰り出し位置にレンズ群20が配置される時点において撮像素子181によって画像信号が取得される。なお、このとき、合焦制御部310が、電気抵抗検出部700で検出されるヒータ層155の電気抵抗をモニタリングしつつ、電流供給ドライバ600を介したヒータ層155への電流の供給を制御することで、レンズ群20の繰り出し位置が変更される。
【0093】
次に、合焦制御部310が、コントラスト検出部800によって各繰り出し位置について検出されたコントラストを示す評価値に基づいて、コントラストを示す評価値が最大となる繰り出し位置を検出する。このコントラストを示す評価値が最大となる繰り出し位置にレンズ群20が配置されている状態が、被写体に合焦している状態に相当する。そして、合焦制御部310の制御により、レンズ群20がコントラストを示す評価値が最大となる繰り出し位置まで移動されることで、カメラモジュール500における被写体に対する合焦が実現される。すなわち、AF制御が実現される。
【0094】
ここで、アクチュエータ層15で採用されているバイメタルは、温度に比例した自由端FTの変位を生じようとする。従って、何らの工夫もなされていなければ、環境温度の変化に応答して、自由端FTが変位してしまう。例えば、携帯電話機等では、一般的に、−20〜+70℃程度の温度範囲(使用環境温度範囲)で使用されることが想定される。このため、このような使用環境温度範囲で、意図しない変位が自由端FTに生じると、レンズ群20が勝手に移動してしまい、所望の位置に該レンズ群20を停止させることができない。しかしながら、上述したように、非駆動状態では、レンズ群20は、第1および第2平行ばね12,14の弾性力によってレンズ位置調整層16に対して押し付けられるため、使用環境温度範囲内では、自由端FTが、第1および第2平行ばね12,14の弾性力に抗して変位しないように設計される。なお、このような工夫の他に、使用環境温度範囲内で自由端FTが変位する際には、自由端FTが第1突起部201とは接触しないように、可動部15a,15bが空振りする空隙を自由端FTと第1突起部201との間に設けても良い。
【0095】
<(4)カメラモジュールの製造工程>
ここで、カメラモジュール500の製造工程について簡単に説明する。図28は、カメラモジュール500の製造工程を示すフローチャートである。図28で示されるように、(工程A)レンズ群20の生成(ステップSP1)、(工程B)シートの準備(ステップSP2)、(工程C)組み立て治具の準備(ステップSP3)、(工程D)シートの第1の接合(ステップSP4)、(工程E)レンズ群20の取り付け(ステップSP5)、(工程F)シートの第2の接合(ステップSP6)、(工程G)撮像素子基板178の取り付け(ステップSP7)、および(工程H)ダイシング(ステップSP8)が順次に行われて、カメラモジュール500が製造される。
【0096】
<(4-1)レンズ群の生成(工程A)>
ステップSP1では、レンズ群20が生成される。ここでは、まず、多数のレンズ群20がマトリックス状に配列されたウエハ(以下「レンズ群ウエハ」とも称する)が製作され、ダイシングにより、多数のレンズ群20が個片化されて、多数のレンズ群20が製作される。レンズ群ウエハは、多数の第1レンズ構成層LY1が配列されたウエハ(第1レンズ構成層ウエハ)と、多数のスペーサ層RBが配列されたウエハ(スペーサ層ウエハ)と、多数の第2レンズ構成層LY2が配列されたウエハ(第2レンズ構成層ウエハ)とが積層されて、相互に接合されることで製作される。
【0097】
<(4-2)シートの準備(工程B)>
ステップSP2では、カメラモジュール500を構成する各機能層に係るシートが、層ごとに形成される。なお、ここでは、ウエハレベルの円盤状のシートが準備される。機能層ごとのシートには、該機能層に係る部材に相当するチップがマトリクス状に所定配列で多数形成される。具体的には、ステップSP2では、蓋層10、第1枠層11、第1平行ばね12、第2枠層13、第2平行ばね14、アクチュエータ層15、およびレンズ位置調整層16といった各機能層に係るチップがそれぞれ所定配列で多数形成された各シートU10〜U16、ならびにカバーガラス層17と撮像素子層18とが接合されて形成される撮像素子基板178に係るチップを含むシート(撮像素子基板シート)U178がそれぞれ準備される。つまり、8枚のシートU10〜16,U178が準備される。
【0098】
<(4-3)組み立て治具の準備(工程C)>
ステップSP3では、組み立て治具が準備される。この組み立て治具は、平板状の基台上に略同一の形状を有する多数の突起部が所定配列で設けられて構成される。なお、組み立て治具には、2カ所以上の所定の箇所に位置合わせのためのアライメントマークが形成される。また、突起部の上面は、平板状の基台の主面に対して略平行となるように構成される。なお、該上面上で各カメラモジュール500に相当するユニットが製作される。
【0099】
<(4-4)シートの第1の接合(工程D)>
ステップSP4では、準備された8枚のシートU10〜16,U178のうちの3枚のシートU11〜U13が接合される。ここでは、第1枠層シートU11、第1平行ばねシートU12、および第2枠層シートU13について、各シートU11〜U13に含まれる各チップが互いに積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。そして、各シートU11〜U13が接着剤等を用いて接合される。
【0100】
図29は、ステップS4で3枚のシートU11〜U13が積層されて接合される様子、ステップS5でレンズ群20が取り付けられる様子、ステップS6で4枚のシートU10,U14〜U16が積層されて接合される様子、およびステップSP7で撮像素子基板シートU178が接合される様子を合わせて模式的に示す図である。
【0101】
<(4-5)レンズ群の取り付け(工程E)>
ステップSP5では、ステップSP4で製作されたユニットの各第2枠層13の中空部分に、ステップSP1で生成されたレンズ群20が、所定のマウンターによって取り付けられる。つまり、格子状の形状を有する第2枠層シートU13の各空隙に、レンズ群20がそれぞれ挿入される。ここでは、レンズ群20が接合部PG2に対して押し付けられつつ、第2突起部202の端面が、接合部PG2の一主面側に対して接合される。なお、この接合手法としては、紫外線の照射によって硬化する接着剤(紫外線硬化接着剤)を用いて接合する手法等が挙げられる。
【0102】
<(4-6)シートの第2の接合(工程F)>
ステップSP6では、ステップSP2で準備された8枚のシートU10〜16,U178のうちの4枚のシートU10,U14〜U16が接合される。具体的には、ステップSP6では、ステップSP5までに生成されたユニットの一主面側に対して、第2平行ばねシートU14、およびアクチュエータ層シートU15に含まれる各チップが、第2枠層シートU13に含まれる各チップに対してそれぞれ積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。そして、各シートU14,U15が順次に接着剤等を用いて接合される。
【0103】
また、第1枠層シートU11の他主面側に対して、蓋層シートU10に含まれる各チップが、第1枠層シートU11に含まれる各チップに対してそれぞれ積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。そして、この状態で、第1枠層シートU11の他主面側に対して、蓋層シートU10が接着剤等を用いて接合される。
【0104】
更に、アクチュエータ層シートU15の一主面側に対して、レンズ位置調整層シートU16に含まれる各チップが、アクチュエータ層シートU15に含まれる各チップに対してそれぞれ積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。そして、この状態で、アクチュエータ層シートU15の一主面側に対して、レンズ位置調整層シートU16が接着剤等を用いて接合される。
【0105】
<(4-7)撮像素子基板の取り付け(工程G)>
ステップSP7では、ステップSP6までにレンズ位置調整層16が接合されて形成されたユニットのレンズ位置調整層16の枠体161に対して、撮像素子基板178の外周部が接合されるように、レンズ位置調整層シートU16の一主面に対して、撮像素子基板シートU178の他主面が接合される。
【0106】
<(4-8)ダイシング(工程H)>
ステップSP8では、多数のレンズ群20がそれぞれ挿入され、8つのシートU10〜U16,U178が積層されて形成された積層部材が、ダイシングテープ等で保護された後、ダイシング装置によってチップ毎に切り離される。このとき、多数のカメラモジュール500が完成される。なお、このダイシング工程の途中で、側面配線21が形成される。具体的には、一方向に沿ったダイシングが行われた時点で、各カメラモジュール500の側面に相当する切断面において、各ヒータ層155が露出する。このため、切断面に側面配線21を形成するための導電材料が塗布され、その後、他方向に沿ったダイシングが行われることで、多数のカメラモジュール500が完成される。
【0107】
<(5)カメラモジュールの応答性>
図30は、カメラモジュール500の応答性、具体的には、バイメタルの自然冷却時における時間経過とレンズ群20の位置の変化との関係についての測定結果を例示する図である。図30では、横軸に時間経過が示されるとともに、縦軸にレンズ群20の繰り出し位置(レンズ位置)が示されている。そして、図30では、本実施形態に係る熱伝導層152が設けられるカメラモジュール500についての測定結果が黒塗りの四角のプロットと太線とで示され、比較例として、熱伝導層152が設けられていないカメラモジュールについての測定結果が黒塗りの丸いプロットと破線とで示されている。
【0108】
詳細には、ここでは、本実施形態に係るカメラモジュール500については、高熱膨張層151の厚みと熱伝導層152の厚みと低熱膨張層153の厚みとが、2:1:2の関係を有するとともに、該3層の厚みが合計で約30μmとなるように設定された。一方、比較例に係るカメラモジュールについては、高熱膨張層の厚みと低熱膨張層の厚みとが、1:1の関係を有するとともに、該2層の厚みが合計で約30μmとなるように設定された。つまり、本実施形態および比較例ともに、バイメタルの厚みが一定となるように設定された。
【0109】
また、ここでは、レンズ群20がレンズ位置調整層16に押し付けられている所定位置を基準として、該レンズ群20が+Z方向に約200μm繰り出された位置に配置されている状態から、ヒータ層155への通電加熱が停止されることでバイメタルが自然冷却されてレンズ群20がレンズ位置調整層16に当接する状態までに至る時間経過とレンズ群20の繰り出し位置との関係が測定された。
【0110】
図30で示されるように、比較例に係るカメラモジュールでは、レンズ群20が−Z方向に200μm移動されるのに約1秒の時間を要したのに対して、本実施形態に係るカメラモジュール500では、レンズ群20が−Z方向に200μm移動されるのに約0.5秒の時間を要した。すなわち、熱伝導層152の存在により、バイメタルの冷却時におけるレンズ群20の移動速度が、約2倍にまで高められたことが分かった。
【0111】
以上のように、本発明の一実施形態に係るカメラモジュール500を搭載した携帯電話機100では、熱伝導率が大きな突設部152a,152bから熱伝導部としての枠部152fへの熱伝導により、可動部15a,15bの冷却速度が高められる。このため、熱膨張率の相違を利用した湾曲によって駆動力を生じる応答性が良好なアクチュエータを提供することができる。また、アクチュエータ層15のうちの隣接する層と接合される固定部としての枠体15fを放熱領域とすることで、放熱を目的とした別部材を設けることなく、可動部15a,15bの冷却速度を高めることができる。したがって、空間を有効利用した構成となり、小型でありながらも高性能のアクチュエータが実現される。
【0112】
<(6)変形例>
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0113】
◎例えば、上記一実施形態では、熱伝導層152が、高熱膨張層151と低熱膨張層153との間に配置されたが、これに限られない。例えば、高熱膨張層151と低熱膨張層153との間に絶縁層が設けられ、熱伝導層152が、高熱膨張層151のうちの低熱膨張層153が設けられる側でない一主面側に設けられたり、低熱膨張層153のうちの高熱膨張層151が設けられる側でない他主面側に設けられても良い。すなわち、高熱膨張層と低熱膨張層と熱伝導層とが積層される順番に拘わらず、可動部が、高熱膨張層と低熱膨張層と熱伝導層とを含む複数層が積層されて構成されれば良い。
【0114】
◎また、上記一実施形態では、熱伝導層152において、突設部152a,152bと、枠部152fとが同じ素材で一体的に構成されたが、これに限られない。例えば、突設部152a,152bと、枠部152fとが異なる素材を用いて構成され、突設部152a,152bと、枠部152fとが相互に接触することで、上記一実施形態に係る熱伝導層152と同様な機能が実現されても良い。なお、このような構成を採用する場合には、枠部152fを構成する素材が、高熱膨張層151および低熱膨張層153を構成する素材よりも大きな熱伝導率を有していれば良い。
【0115】
◎また、上記一実施形態では、アクチュエータ層15にヒータ層155が設けられたが、これに限られない。例えば、アクチュエータ層15にヒータ層155が設けられず、例えば、アクチュエータ層15と近接する他の層にヒータ層が設けられても良い。
【0116】
◎また、上記一実施形態では、レンズ群20の移動を規制する部材として、板状の第1および第2平行ばね12,14が採用されたが、これに限られない。例えば、つる巻き状のばね等を含む各種弾性部材が採用されても良い。
【0117】
◎また、上記一実施形態では、可動部15a,15bによって移動される対象物(移動対象物)が、光学系としてのレンズ群20であったが、これに限られない。例えば、撮像素子等のその他の部材を移動対象物としても良い。例えば、被写体からの光を撮像素子に導く光学系にあたるレンズ群20Aを固定し、上記一実施形態においてレンズ群20を移動させるための構成と同様な構成によって撮像素子層をZ方向に移動させても良い。
【0118】
図31は、レンズ群20Aを固定して、該レンズ群20Aの光軸Axに沿った方向に撮像素子層18Aを前後に移動させる一態様の概念図を例示する図である。図31では、撮像素子層18Aを光軸Axに沿って前後に移動させる撮像部PBAが描かれている。このような構成では、アクチュエータ層の動作に応じて撮像素子層18Aが光軸Axに沿って前後に移動されて、レンズ群20Aと撮像素子層18Aとの距離が変更されることで、AF制御が実現される。このように、可動部15a,15bの曲げ変形に応じて撮像素子および光学系のうちの少なくとも一方が移動されれば、AF制御が実現される。そして、何れの構成であっても、上記一実施形態と同様に、熱伝導率が大きな突設部152a,152bから熱伝導部としての枠部152fへの熱伝導により、可動部15a,15bの冷却速度が高められる。このため、熱膨張率の相違を利用した湾曲によって駆動力を生じる応答性が良好なアクチュエータを用いた撮像装置が実現されることになる。
【0119】
また、アクチュエータによって移動される対象物(移動対象物)は、光学系や撮像素子等といった撮像装置を構成する要素に限られない。例えば、移動対象物は、光ピックアップレンズの対物レンズ等といったその他のものであっても良い。すなわち、本発明は、アクチュエータと、該アクチュエータの曲げ変形に応じて移動対象物が移動される駆動装置一般に適用することができる。そして、このような駆動装置では、上記一実施形態と同様に、熱伝導率が大きな突設部152a,152bから熱伝導部としての枠部152fへの熱伝導により、可動部15a,15bの冷却速度が高められる。このため、熱膨張率の相違を利用した湾曲によって駆動力を生じる応答性が良好なアクチュエータを用いた駆動装置が実現されることになる。
【0120】
◎また、上記一実施形態では、携帯電話機100にカメラモジュール500が搭載されたが、該カメラモジュール500と同様な構成をコンパクトタイプのデジタルカメラに搭載しても良い。
【0121】
◎また、上記一実施形態では、2本の可動部15a,15bが設けられたが、これに限られず、可動部は、1本でも良いし、3本以上であっても良い。
【0122】
◎また、上記一実施形態では、可動部15a,15bが、その一端が枠体15fに対して固定された、いわゆる片持ち梁の構成を有していたが、これに限られない。例えば、可動部の両端が枠体に対して固定された、いわゆる両持ち梁の構成を有するものも考えられる。
【0123】
◎なお、上記一実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0124】
12 第1平行ばね
14 第2平行ばね
15 アクチュエータ層
15a,15b 可動部
15f 枠体
16 レンズ位置調整層
18,18A 撮像素子層
20,20A レンズ群
21 側面配線
100 携帯電話機
151 高熱膨張層
151a,151b,152a,152b,153a,153b,154a,154b,155a,155b 突設部
151f,152f,153f,154f,155f 枠部
152 熱伝導層
153 低熱膨張層
154 絶縁層
155 ヒータ層
1551,1552,1553 配線部
155a,155b ヒータ部
181 撮像素子
500 カメラモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層と、該第1層よりも大きな熱膨張率を持つ第2層と、前記第1および第2層よりも大きな熱伝導率を持つ第3層とを含む複数層が積層されるとともに、加熱に応じて変形する可動部と、
前記第3層と一体的に構成されるか、または前記第3層と接触するように構成され、且つ前記第1および第2層よりも大きな熱伝導率を持つ熱伝導部を含む放熱領域を有するとともに、前記可動部が固定される固定部と、
を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータであって、
前記第3層が、
前記第1層と前記第2層との間に設けられることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアクチュエータであって、
前記放熱領域が、
前記可動部の第1熱容量よりも大きな第2熱容量を有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項3に記載のアクチュエータであって、
前記放熱領域が、
前記可動部の第1表面積よりも大きな第2表面積を有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1つの請求項に記載のアクチュエータであって、
前記第3層が、
銅、ニッケル、およびアルミニウムのうちの少なくとも1つの素材によって構成されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1つの請求項に記載のアクチュエータであって、
前記熱伝導部が、
銅、ニッケル、およびアルミニウムのうちの少なくとも1つの素材によって構成されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1つの請求項に記載のアクチュエータであって、
前記複数層が、
パターンニングされたヒータ層を更に含むことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか1つの請求項に記載のアクチュエータと、
前記放熱領域に対して接合される隣接層と、
前記アクチュエータによって移動される対象である移動対象物と、
を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項9】
請求項1から請求項7の何れか1つの請求項に記載のアクチュエータと、
前記可動部の変形によって移動される対象である移動対象物と、
を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項10】
請求項1から請求項7の何れか1つの請求項に記載のアクチュエータと、
撮像素子と、
被写体からの光を前記撮像素子まで導く光学系と、
を備え、
前記撮像素子および前記光学系のうちの少なくとも一方が、前記可動部の変形によって移動されることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2010−250039(P2010−250039A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98672(P2009−98672)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】