説明

アクチュエータの高低速制御装置

【課題】アクチュエータが低速制御モード中に、切換スイッチを間違えて切り換えたりして、高速制御モードに切り換らないようにする。
【解決手段】パイロットポンプ5からのパイロット圧を電磁切換弁9とは別に作動速度制御弁6へ導くサブパイロット経路10を設ける。作動速度制御弁6は、通常の高速制御位置のときは、サブパイロット経路10とタンク3との間を連通させてサブパイロット経路10からの第2のパイロット圧を解放し、電磁切換弁9からの第1のパイロット圧が第1のパイロット室11に導入されると、弁体を高速制御位置から低速制御位置へ切り換える。そして、低速制御位置のとき、サブパイロット経路10とタンク3との間を遮断し、電磁切換弁9からの第1のパイロット圧がなくなっても、サブパイロット経路10からの第2のパイロット圧により弁体を低速制御位置に維持する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力流体で作動するアクチュエータの作動速度を高速と低速に切り換え制御するアクチュエータの高低速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば油圧ショベル等の建設機械においては、ショベル等を旋回させるアクチュエータである旋回モータを高速と低速に切り換えるため、旋回モータへ供給される流量が高速時には相対的に大で、低速時には相対的に小となるように制御される。
【0003】
このような制御を行う従来技術として、例えば特許文献1および特許文献2に記載されたような油圧回路が知られている。
これらの油圧回路では、旋回モータへの供給流量を相対的に大小切り換え制御することにより、旋回モータを高速制御モードから低速制御モードへ、またはその逆へ切り換える流量制御弁と、この流量制御弁をパイロット圧により切り換え作動させる電磁切換弁と、この電磁切換弁を切り換え操作する切換スイッチとを備えている。
そして、流量制御弁は、通常は高速制御位置を保持するが、切換スイッチにより電磁切換弁を切り換えると、この電磁切換弁からのパイロット圧により流量制御弁が低速制御位置に切り換えられるようにしている。
【特許文献1】実開平5−22656号公報
【特許文献2】特開平5−79060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来技術では、旋回モータを低速制御モードで旋回中に、例えば切換スイッチを間違えて切り換えたり、切換スイッチが不用意に切り換わったり、電磁切換弁自体にトラブルが生じたりして、電磁切換弁を経由して導かれるパイロット圧が作用しなくなると、流量制御弁が低速制御位置からノーマル状態である高速制御位置に戻ってしまい、低速制御モードで旋回モータを制御しているときに、突然に高速制御モードに切り換わってしまう。特に旋回モータは、その慣性モーメントが大きいため、突然に、高速制御モードに切り換わると大きな危険をともなう。
【0005】
また、特許文献1記載の従来技術の場合、低速時に速度調整を行うには、流量制御弁のスプールを交換する必要があった。
【0006】
一方、特許文献2記載の従来技術の場合には、調整スイッチにて調整する電磁比例減圧弁を設け、この電磁比例減圧弁を介してパイロット圧を流量制御弁に作用させることにより、低速時の速度調整が可能になっている。
【0007】
しかし、電磁比例減圧弁にてパイロット圧を減圧調整する間接的な方法では、操作者がレバーの操作を加減しなければならないために、流量制御弁へ供給されるポンプ圧油の流量を微妙に調整できなく、したがって、低速時の速度の微調整は難しい。
【0008】
この発明の第1の目的は、アクチュエータが低速制御モードで作動中に、切換スイッチを間違えて切り換えたり、切換スイッチが不用意に切り換わったり、電磁切換弁自体にトラブルが生じたりして、電磁切換弁を経由して導かれるパイロット圧が作用しなくなっても、アクチュエータを低速制御モードに維持できるアクチュエータの高低速制御装置を提供することである。
第2の目的は、低速制御モード時の速度微調整を簡単な回路構成で実現できるアクチュエータの高低速制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、図1に示すように、メインポンプ1と、アクチュエータ2の作動方向を制御するためにメインポンプ1からの圧力流体を、通路20を通じてアクチュエータ2に導くとともに、アクチュエータ2からの戻り流体をタンク通路21を通じてタンク3に導く方向切換弁4と、パイロットポンプ5と、このパイロットポンプ5からのパイロット圧により通常の高速制御位置から低速制御位置へ切り換え、高速制御位置のときは、メインポンプ1からの圧力流体を方向切換弁4へ導き、低速制御位置のときは、メインポンプ1からの圧力流体を方向切換弁4とタンク3とに分流させる作動速度制御弁6と、切換スイッチ7と、この切換スイッチ7によりソレノイド8をオン・オフされてパイロットポンプ5からのパイロット圧を作動速度制御弁6に導いたり、タンク3に導いたりする電磁切換弁9とを備えたアクチュエータの高低速制御装置において、上記第1の目的を達成するため、次のような構成を付加したことが特徴である。
すなわち、電磁切換弁9を経由せずパイロット圧を作動速度制御弁6へ導くサブパイロット経路10を設け、作動速度制御弁6は、高速制御位置のときは、サブパイロット経路10とタンク3とを連通させる一方、低速制御位置のときは、サブパイロット経路10とタンク3との連通を遮断してサブパイロット経路10からのパイロット圧により当該作動速度制御弁を低速制御位置に維持する構成にした。
【0010】
第2の発明は、その作動速度制御弁6が、電磁切換弁9からのパイロット圧を第1のパイロット室11に作用させて高速制御位置から低速制御位置へ切り換え、また、サブパイロット経路10からのパイロット圧は、第2のパイロット室12に作用して弁体を低速制御位置に維持する構成にした。
【0011】
第3の発明は、方向切換弁4が中立位置にあるときは、サブパイロット経路10をタンク3と連通させる一方、上記方向切換弁が切換位置にあるときは、サブパイロット経路11とタンク3との連通を遮断する構成にした。
【0012】
第4の発明は、作動速度制御弁6に、低速制御位置のときにメインポンプ1から方向切換弁4とタンク3とに分流される圧力流体の分流量を決定するオリフィス13・14を設けたものである。
【0013】
第5の発明は、作動速度制御弁6が低速制御位置にあるとき、メインポンプ1からの圧力流体をタンク3へ分流させる第1および第2のタンク分流路15・16を設け、そのうちの一方のタンク分流路15には固定オリフィス14を設け、他方のタンク分流路16には可変オリフィス17を設けたものである。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によると、作動速度制御弁は、切換スイッチにて電磁切換弁を切り換えることにより、この電磁切換弁からのパイロット圧にて従来と同様に通常の高速制御位置から低速制御位置へ切り換えることができるのに加え、低速制御位置のときに電磁切換弁を経由して導かれるパイロット圧が作用しなくなった場合にも、電磁切換弁とは別経路からのパイロット圧にて、電磁切換弁とは無関係に低速制御位置に維持できる。
したがって、アクチュエータが低速制御モードで作動中に、切換スイッチを間違えて切り換えたり、切換スイッチが不用意に切り換わったり、電磁切換弁自体にトラブルが生じたりして、電磁切換弁を経由して導かれるパイロット圧が導入されなくても、アクチュエータが高速制御モードに戻らないので、安全である。
【0015】
第2の発明によると、作動速度制御弁を低速制御位置に維持するためのパイロット圧を、高速制御位置から低速制御位置へ切り換えるためのパイロット圧とは別のパイロット室に導入するだけで良いので、作動速度制御弁の複雑化を避けることができる。
【0016】
第3の発明によると、方向切換弁にてアクチュエータの作動方向を選択してアクチュエータを低速制御モードで作動させているときだけ、上記のような作動速度制御弁の低速制御位置の維持機能が働き、方向切換弁を中立位置にしてアクチュエータを停止させると、その維持機能が解除されるので、方向切換弁を中立位置に戻すことにより、作動速度制御弁を原状復帰させることができる。
【0017】
第4の発明によると、低速制御するためにメインポンプからの圧力流体を方向切換弁とタンクとに分流するにあたり、その分流量を、作動速度制御弁内に設けたオリフィスにより作動速度制御弁自体で設定できる。
【0018】
第5の発明によると、作動速度制御弁が低速制御位置のときにメインポンプからの圧力流体をタンクへ分流させるにあたり、第1および第2の2つのタンク分流路に分け、そのうちの一方では固定オリフィスで絞り、他方では可変オリフィスで絞るので、低速時の速度をこの可変オリフィスで簡単に微調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に、この発明による高低速制御装置を油圧ショベルに適用した実施形態の油圧回路図を示す。
この例では、ショベルを旋回させるアクチュエータである旋回モータ2のほかに、排土用のアクチュエータ18と、ユーザにおいて任意に使用できるようにするアタッチメント用のアクチュエータ19も制御するものである。
また、最上流のアクチュエータ18を制御する方向切換弁22は、通路25を介してメインポンプ1に直接連通する一方、旋回モータ2およびアクチュエータ19を制御する方向制御弁4,23は、通路20および作動速度制御弁6を介してメインポンプ1に連通している。
【0020】
作動速度制御弁6は、その一端にスプリング26のばね力を作用させるとともに、このスプリング26とは反対端には第1のパイロット室11と第2のパイロット室12とを設けている。
そして、第1のパイロット室11にはパイロットピストン27を組み込むとともに、このパイロットピストン27にパイロット圧が作用したとき、作動速度制御弁6が低速制御位置(b)に切り換る構成にしている。そして、この第1のパイロット室11はそのパイロット圧ポート28を電磁切換弁9に接続している。
【0021】
上記電磁切換弁9は、切換スイッチ7をオフにしたとき、ソレノイド8が非励磁の状態を保つ。このようにソレノイド8が非励磁状態にあるときには、電磁切換弁9が図示のノーマル位置を保持するとともに、上記第1のパイロット室11をタンク3に連通させる。したがって、作動速度制御弁6は、スプリング26のばね力の作用で高速制御位置(a)を保持する。
【0022】
作動速度制御弁6が上記高速制御位置(a)にあるときには、メインポンプ1に連通した入力ポート29と、通路20に連通した出力ポート24とが全開状態で連通するとともに、上記一方のタンク分流通路15および他方のタンク分流通路16は閉じられる。また、この状態では、上記サブパイロット経路10に連通するパイロット圧逃がし通路33が開いて、サブパイロット経路10がタンク3に連通する。
【0023】
なお、上記サブパイロット経路10には、パイロットポンプ5とは別のパイロットポンプPpを接続するとともに、このサブパイロット経路10を方向切換弁4にも接続している。そして、方向切換弁4が図示の中立位置にあるとき、上記サブパイロット経路10を、パイロット圧逃がし通路34およびタンク通路21を介してタンク3に連通させ、方向切換弁4が中立位置以外の左右いずれかに切り換えられたときには、方向切換弁4を経由した上記タンク3との連通が遮断される構成にしている。
【0024】
上記のようにした作動速度制御弁6が高速制御位置(a)を保持しているときは、メインポンプ1から作動速度制御弁6の入力ポート29に導入された流体の全量が通路20に導かれることになる。このように作動速度制御弁6に導かれた流体の全量が通路20に導かれるので、旋回モータ2は高速制御モードで制御されることになる。
【0025】
一方、切換スイッチ7をオンにすると、ソレノイド8が励磁して電磁切換弁9が上記の状態から切換位置に切り換えられる。このように電磁切換弁9が切換位置に切り換えられると、パイロットポンプ5が第1のパイロット室11に連通し、その吐出流体がパイロット室11に導かれる。
したがって、パイロットポンプ5の吐出圧の作用で、パイロットピストン27が移動し、作動速度制御弁6をスプリング26に抗して切り換える。つまり、作動速度制御弁6を高速制御位置(a)から低速制御位置(b)に切り換える。
【0026】
上記のように作動速度制御弁6が低速制御位置(b)に切り換れば、入力ポート29は、出力ポート24、タンク分流路15,16のそれぞれと連通する。そして、上記入力ポート29と出力ポート24とはオリフィス13を介して連通し、入力ポート29とタンク分流路15とはオリフィス14を介して連通する。また、入力ポート29とタンク分流路16とは全開状態で連通するが、このタンク分流路16には可変オリフィス17を設けている。
さらに、上記低速制御位置(b)においては、パイロット逃がし通路33が閉じられる構成にしている。
【0027】
上記のように作動速度制御弁6が低速制御位置(b)にあれば、その入力ポート29に導かれた流体の一部は、出力ポート24から通路20に供給され、他の一部はタンク3に導かれることになる。このように入力ポート29に導かれた流体が通路20とタンク3とに分流されるので、通路20から旋回モータ2に供給される流量が相対的に少なくなり、旋回モータ2は低速制御モードで制御されることになる。
なお、上記のように通路20とタンク3との間の分流比は、オリフィス13,14および可変オリフィス17の開度に応じて決まるものである。ただし、上記可変オリフィス17は、上記分流比を微調整するために用いるものである。
【0028】
さらに、上記低速制御モードで旋回モータ2を作動させているときに、例えば切換スイッチ7を誤ってオフにしたり、切換スイッチ7が不用意にオフになったりして、電磁切換弁9がノーマル位置に切り換っても、作動速度制御弁6が高速制御位置(a)に戻らないようにしている。
【0029】
すなわち、上記したように作動速度制御弁6が低速制御位置(b)にあるときには、パイロット圧逃がし通路33が閉じられる。また、上記のように旋回モータ2を作動させているということは、方向切換弁4が中立位置以外の位置に切り換えられていることになるので、方向切換弁4を介してサブパイロット経路10とタンク3とが連通するパイロット圧逃がし通路34は閉鎖される。
【0030】
したがって、パイロットポンプPpからのパイロット圧が、作動速度制御弁6の第2のパイロット室12に作用する。このようにサブパイロット経路10からパイロット圧が第2のパイロット室12に作用するので、たとえ、第1のパイロット室11に圧力が作用しなくても、作動速度制御弁6は上記低速制御位置(b)を保つことになる。
上記のように第1のパイロット室11に圧力が作用しなくても、作動速度制御弁6は上記低速制御位置(b)を保つので、切換スイッチ7を不用意にオフにしても、作動速度制御弁6が高速制御位置に切り換ったりしない。
【0031】
上記の状態で方向切換弁4を中立位置に戻せば、サブパイロット経路10が、パイロット圧逃がし通路34を介してタンク通路21に連通するので、第2のパイロット室12もタンク圧になる。したがって、切換スイッチ7を不用意にオフして、作動速度制御弁6が低速制御位置(b)を保ったままであっても、上記のように方向切換弁4を中立位置に戻すことによって、作動速度制御弁6を高速制御位置(a)に復帰させることができる。
なお、符号35はリリーフ弁で、作動速度制御弁6に付設されている。
【0032】
次に、上記のような作用をする作動速度制御弁6の具体例について説明する。
図2に示すように弁本体36には、スプール37を摺動自在に組み込むとともに、このスプール37の一端にスプリング26を作用させている。また、このスプール37の他端を第2のパイロット室12に臨ませているが、この第2のパイロット室12は、パイロットピストン27を介して第1のパイロット室11と区画されている。
【0033】
上記のようにした第1のパイロット室11はパイロット圧ポート28を介して上記電磁切換弁9に連通し、第2のパイロット室12はスプール37に形成したパイロット圧ポート32および弁本体36に形成したサブパイロット経路10を介してパイロットポンプPpに連通している。
【0034】
なお、上記第2のパイロット室12は、スプール37が図2に示すノーマル位置すなわち高速制御位置(a)にあるとき、すき間40およびノッチ41からなるパイロット圧逃がし通路33を介してタンク通路21に連通している。つまり、上記第2のパイロット室12を構成する穴径はスプール37の外径よりも大きくしている。そして、第2のパイロット室12に臨ませるスプール37の端部に隣接して上記ノッチ41を形成し、スプール37が図2に示す高速制御位置(a)にあるとき、上記すき間40とノッチ41とが隣接して連通する構成にしている。
【0035】
このようにしたパイロット圧逃がし通路33は、スプール37がスプリング26に抗して移動したとき、ノッチ41がすき間40から離れて、それらの連通が遮断されるようにしている。つまり、スプール37が上記のように高速制御位置(a)にあるときには、パイロット圧逃がし通路33は第2のパイロット室12を介してタンク通路21に連通するが、スプール37がスプリング26に抗して移動したときには、このパイロット圧逃がし通路33が閉じられる構成にしている。
【0036】
そして、第1,2のパイロット室11,12にパイロット圧が作用していないノーマル位置である高速制御位置(a)にあるときには、スプール37はスプリング26のばね力で押されて、パイロットピストン27とともに図面右側位置を保つとともに、入力ポート29が、スプール37に形成した第1環状凹部39aを介して流出ポート24、通路47およびタンクポート30に連通している。ただし、タンクポート30はタンク通路21に対して閉じた状態を維持する。また、タンクポート31は、入力ポート29に対して閉じた状態を維持する。
また、このときには、第2のパイロット室12は、上記パイロット圧逃がし通路33を介してタンク通路21に連通している。
【0037】
上記の状態から第1のパイロット室11にパイロット圧が導かれると、パイロットピストン27とともにスプール37がスプリング26のばね力に抗して移動し、作動速度制御弁6が図3に示す低速制御位置(b)に切り換る。このように当該作動速度制御弁6が、低速制御位置(b)に切り換ると、入力ポート29と出力ポート24とは、上記第1環状凹部39aに隣接して設けたノッチからなるオリフィス13を介して連通する。また、このとき入力ポート24は弁本体36に形成した通路47、スプール37に形成したノッチからなるオリフィス14およびこのオリフィス14に隣接する第3環状凹部39cを介してタンク通路21に連通する。
【0038】
また、上記のように作動速度制御弁6が、低速制御位置(b)に切り換えられた状態では、図3に示すように、すき間40とノッチ41とが切り離され、それらすき間40とノッチ41から構成されるパイロット逃がし通路33が閉じた状態を維持する。
【0039】
そして、上記の状態で方向切換弁4を図示の中立位置から左右いずれかに切り換えれば、サブパイロット経路10とタンク通路21との連通が完全に遮断されるので、パイロットポンプPpの吐出圧がサブパイロット経路10を経由して第2のパイロット室12に導かれる。
したがって、上記の状態では、第1,2のパイロット室11,12のそれぞれにパイロット圧が導かれることになる。
【0040】
作動速度制御弁6が、上記のように低速制御位置(b)に切り換えられれば、入力ポート29から流入した流体が、出力ポート24およびタンクポート30,31に分流されるので、旋回モータ2に供給される流量が相対的に少なくなり、当該旋回モータ2は低速制御モードで制御されることになる。
【0041】
上記の状態で、もし、切換スイッチ7を不用意にオフにして、第1のパイロット室11がタンク3に連通したとしても、第2のパイロット室12にはサブパイロット経路10のパイロット圧が導入されているので、スプール37は図4に示すように低速制御位置(b)を保ったままとなる。
したがって、この場合には、旋回モータ2は低速制御モードのままで制御される。
そして、方向切換弁4を中立位置に復帰させると、サブパイロット経路10がタンク通路21に連通するので、第2のパイロット室12の圧力もほぼタンク圧になり、スプール37は図2に示した原位置に復帰する。
【0042】
なお、図中符号42,44はポートであるが、それらは図示していないプラグでふさがれるものである。また、符号43はタンクポート、45はリリーフ弁35を装着するためのポートである。
さらに、上記タンク分流通路16は、図5に示すように弁本体36に設けた可変オリフィス17を経由してタンク通路21に連通するが、この可変オリフィス17を構成するニードル46を操作することによって、当該可変オリフィス17の開度を微調整できるようにしている。
【0043】
図6は他の実施形態を示すもので、この実施形態は、図1に示した回路と同一のメイン回路mcにアタッチメント系のバルブ群を備えたアタッチメント回路acを接続したものである。そこで、図1と同一のメイン回路mcについては、図1と同一符号を用いて、メイン回路mcとアタッチメント回路acとの接続状況を以下に説明する。
上記メイン回路mcは、メインポンプ1に接続した通路25を設けているが、この通路25は、方向切換弁4,22,23が中立位置にあるときに開放される中立流路48に接続している。
【0044】
一方、上記アタッチメント回路acは、アタッチメント用のアクチュエータを制御する方向切換弁49〜51を設けている。そして、このアタッチメント回路acには、上記中立流路48に接続したキャリーオーバー流路52を備えている。このキャリーオーバー流路52は、上記各方向切換弁49〜51を中立位置に保っているときタンクに連通するが、それら方向切換弁49〜51のいずれかを切り換えたとき、タンクとの連通が遮断されるとともに、切り換えられた最上流の方向切換弁49〜51のアクチュエータポートに連通する。
【0045】
したがって、メイン回路mcの方向切換弁4,22,23を中立位置に保っていれば、メインポンプ1の吐出流体がキャリーオーバー流路52に導かれるとともに、いずれかの方向切換弁49〜51を切り換えたときには、メインポンプ1の吐出流体が、切り換えられた最上流の方向切換弁49〜51に設けたアクチュエータポートを介して所定のアクチュエータに供給されることになる。
【0046】
さらに、上記アタッチメント回路acには、パラレル流路53を設けているが、このパラレル流路53は、メイン回路mcの方向切換弁4,23をパラレルに連通する通路20に接続している。したがって、メインポンプ1の吐出流体は、通路20を介して上記パラレル流路53に導かれるとともに、このパラレル流路53を介して切り換えられた各方向切換弁49〜51のアクチュエータポートに連通する構成にしている。
【0047】
なお、上記各実施形態は、この発明を油圧ショベルの旋回モータに適用した場合であるが、この発明は、圧力流体で作動される各種のアクチュアータについて広範囲に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】一の実施形態の油圧回路図である。
【図2】作動速度制御弁の具体例を示すもので、この作動速度制御弁が高速制御位置に設定されている通常状態の断面図である。
【図3】同じく低速制御位置に切り換えられた状態の断面図である。
【図4】同じく低速制御位置に維持されている状態の断面図である。
【図5】可変オリフィスの部分を示す断面図である。
【図6】他の実施形態の油圧回路図である。
【符号の説明】
【0049】
1 メインポンプ
2 アクチュエータ
3 タンク
4 方向制御弁
5 パイロットポンプ
6 作動速度制御弁
7 切換スイッチ
8 ソレノイド
9 電磁切換弁
10 サブパイロット経路
11 第1のパイロット室
12 第2のパイロット室
13 オリフィス
14 オリフィス
17 可変オリフィス
20 通路
21 タンク通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインポンプと、アクチュエータの作動方向を制御するためにメインポンプからの圧力流体をアクチュエータに導くとともにアクチュエータからの戻り流体をタンクに導く方向切換弁と、パイロットポンプと、このパイロットポンプからのパイロット圧により通常の高速制御位置から低速制御位置へ切り換わり、高速制御位置のときは、上記メインポンプからの圧力流体を上記方向切換弁へ導き、低速制御位置のときは、メインポンプからの圧力流体を方向切換弁とタンクとに分流させる作動速度制御弁と、切換スイッチと、この切換スイッチによりソレノイドをオン・オフして上記パイロットポンプからのパイロット圧を上記作動速度制御弁に導いたり、タンクに導いたりする電磁切換弁とを備えたアクチュエータの高低速制御装置において、上記電磁切換弁を経由する経路とは別にパイロット圧を上記作動速度制御弁へ導くサブパイロット経路を設け、上記作動速度制御弁は、高速制御位置のときは、サブパイロット経路をタンクに連通させる一方、低速制御位置のときは、サブパイロット経路とタンクとの連通を遮断するとともに、サブパイロット経路から導かれたパイロット圧の作用で、低速制御位置に維持する構成としたアクチュエータの高低速制御装置。
【請求項2】
上記作動速度制御弁は、上記電磁切換弁からのパイロット圧を第1のパイロット室に導入して弁体を高速制御位置から低速制御位置へ切り換え、また、上記サブパイロット経路からのパイロット圧は、第2のパイロット室に導入して弁体を低速制御位置に維持する構成とした請求項1記載のアクチュエータの高低速制御装置。
【請求項3】
上記方向切換弁は、それが中立位置にあるときは、上記サブパイロット経路をタンクに連通させる一方、アクチュエータを作動させる切換位置にあるときは、サブパイロット経路とタンクとの連通を遮断する構成とした請求項1または2記載のアクチュエータの高低速制御装置。
【請求項4】
上記作動速度制御弁には、低速制御位置のときにメインポンプから方向切換弁とタンクとに分流される圧力流体の分流量を決定するオリフィスを設けた請求項1ないし3のいずれかに記載のアクチュエータの高低速制御装置。
【請求項5】
上記作動速度制御弁が低速制御位置のときにメインポンプからの圧力流体をタンクへ分流させる第1および第2のタンク分流路を設け、そのうちの一方には固定オリフィス、他方には可変オリフィスを設けた請求項4記載のアクチュエータの高低速制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−38337(P2010−38337A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205195(P2008−205195)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000155609)株式会社柳沢精機製作所 (18)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】