説明

アクチュエータ装置、試験装置、およびアクチュエータ制御方法

【課題】アクチュエータの位置を正確に制御するアクチュエータ装置。
【解決手段】制御信号に応じて動作するアクチュエータと、アクチュエータを動作させる場合において、アクチュエータの温度を基準温度とする制御信号を供給する制御部と、を備えるアクチュエータ装置、試験装置、およびアクチュエータ制御方法を提供する。アクチュエータの温度を検出する温度検出部を更に備え、温度検出部は、アクチュエータの温度を検出し、制御部は、温度検出部が検出した温度に応じてアクチュエータに供給する制御信号の大きさを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ装置、試験装置、およびアクチュエータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度駆動方式のアクチュエータは、ヒータの温度を直接制御するのではなく、ヒータの駆動電力を制御していた(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2003−281988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、アクチュエータの温度は周囲温度およびアクチュエータへの電力印加来歴等に依存することから、ヒータの駆動電力とアクチュエータの温度の対応関係が一定にならない場合がある。したがって、電力制御でアクチュエータの位置を制御する場合、アクチュエータの位置を正確に制御できない問題があった。また、この問題は、アクチュエータの位置が温度に敏感な場合、温度駆動方式のアクチュエータに限らず生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、制御信号に応じて動作するアクチュエータと、アクチュエータを動作させる場合において、アクチュエータの温度を基準温度とする制御信号を供給する制御部と、を備えるアクチュエータ装置、試験装置、およびアクチュエータ制御方法を提供する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施形態に係るアクチュエータ装置100の構成例を示す。
【図2】本実施形態に係るアクチュエータ装置100の動作フローを示す。
【図3】本実施形態に係るアクチュエータ装置100の変形例を示す。
【図4】本実施形態に係る試験装置410の構成例を被試験デバイス400と共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係るアクチュエータ装置100の構成例を示す。アクチュエータ装置100は、アクチュエータ110の温度を検出して、検出した温度に応じた制御信号でアクチュエータ110を制御する。アクチュエータ装置100は、アクチュエータ110と、制御部120と、電源部130とを備える。
【0009】
アクチュエータ110は、制御信号に応じて動作する。アクチュエータ110は、入力されたエネルギーを物理運動量に変換するアクチュエータであってよい。アクチュエータ110は、静電引力によって可動する静電アクチュエータ、圧電材料に電圧を印加して可動させる圧電アクチュエータ、磁力を用いて可動させる電磁アクチュエータ、または熱膨張によって可動させる熱型アクチュエータであってよい。本実施例におけるアクチュエータ110は、第1の接点10と第2の接点20との間を電気的に接続または切断するスイッチとして機能する熱型アクチュエータである。アクチュエータ110は、温度検出部112と、第1の電気配線114と、第2の電気配線115と、ヒータ部117と、カンチレバー部119とを有する。
【0010】
温度検出部112は、アクチュエータ110の温度を検出する。温度検出部112は、測温抵抗体、熱電対、サーミスタ等といった、カンチレバー部119に接触した接触式温度検出器によって温度を検出してよい。これに代えて、温度検出部112は、カンチレバー部119の近傍に備わり、カンチレバー部119が設けられた閉空間内の温度を検出してもよい。
【0011】
これに代えて、温度検出部112は、ヒータ配線に流れる電流を検出して、検出した電流値を温度に換算してもよい。これに代えて温度検出部112は、アクチュエータ110が放射する赤外線エネルギーを赤外線センサーで受けて温度に換算する、非接触式温度検出器によって温度を検出してもよい。
【0012】
第1の電気配線114および第2の電気配線115は、電気信号を伝送する。第1の電気配線114および第2の電気配線115は、電気配線にそれぞれ接続された第2の接点20をそれぞれ含む。例えば、第1の電気配線114および第2の電気配線115は、アクチュエータ110が駆動してON状態になった場合に、第1の接点10と第2の接点20が電気的に接続されて第1の電気配線114と第2の電気配線115が導通状態となって電気信号を伝送する。
【0013】
これに代えて、第1の電気配線114および第2の電気配線115は、アクチュエータ110の駆動が停止してOFF状態になった場合に、第1の接点10と第2の接点20が電気的に接続されて第1の電気配線114と第2の電気配線115が導通状態となって電気信号を伝送してもよい。第1の電気配線114および第2の電気配線115は、第2の接点20の表面上に、保護膜がそれぞれ形成されてよい。
【0014】
ヒータ部117は、制御部120の制御信号に応じて熱を発生させる。ヒータ部117部の材質は白金を含む。これに代えて、ヒータ部117は、Ni−Cr合金等を含む電気抵抗の大きい発熱線であってよい。アクチュエータ110は、ヒータ部117が発生する熱によって動作する。
【0015】
カンチレバー部119は、第1の接点10を含む。カンチレバー部119は、ヒータ部117によって発生した熱で動作して第1の接点10と第2の接点20とを電気的に接続させ、第1の電気配線114と第2の電気配線115とを導通させる。これに代えてカンチレバー部119は、ヒータ部117によって発生した熱で動作して第1の接点10と第2の接点20とを離間させ、初期状態において導通していた第1の電気配線114と第2の電気配線115との電気的接続を遮断させてもよい。
【0016】
制御部120は、アクチュエータ110を動作させる場合において、アクチュエータ110の温度を基準温度とする制御信号を供給する。制御部120は、電圧値または電流値を用いた制御信号を電源部130に供給する。制御部120は、一例として、初期状態においてアクチュエータ110のON/OFFの駆動電圧を5V/0Vとした場合、電圧振幅5Vは保ったまま、アクチュエータ110の温度に応じてON電圧およびOFF電圧を変更した制御信号を電源部130に供給する。
【0017】
また、制御部120は、温度検出部112が検出した温度に応じてアクチュエータ110に供給する制御信号の大きさを制御する。制御部120は、一例として、初期状態においてアクチュエータ110のON/OFFの駆動電圧を5V/0Vとした場合、アクチュエータ110の温度に応じてON電圧および/またはOFF電圧を変更した制御信号を電源部130に供給する。
【0018】
これに代えて、温度検出部112は、駆動していない状態におけるアクチュエータ110の温度を検出し、制御部120は、検出した温度に応じて制御信号の値を決める。制御部120は、一例として、初期状態においてアクチュエータ110のON/OFFの駆動電圧を5V/0Vとした場合、OFF電圧の0Vは保ったまま、アクチュエータ110の温度に応じてON電圧を変更した制御信号を電源部130に供給する。また、制御部120は、検出した温度に応じた制御信号を電源部130に供給して、外部からの指示信号に応じたアクチュエータのON/OFFを切り換えてよい。
【0019】
電源部130は、ヒータ部117に駆動電力を供給する。電源部130は、制御部120の制御信号に応じて、ヒータ部117に駆動電圧または駆動電流を供給する。
【0020】
図2は、本実施形態に係るアクチュエータ装置100の動作フローを示す。アクチュエータ装置100は、温度検出部112によりアクチュエータ110の温度を検出する(S200)。本実施例において、温度を検出する時点でのアクチュエータ110は、駆動している状態で第1の接点10と第2の接点20とが接触してON状態となり、駆動が停止すると、第1の接点10と第2の接点20とが離間してOFF状態となる例を説明する。
【0021】
アクチュエータ装置100は、温度検出部112の温度検出結果に基づき、制御信号を決定する(S210)。アクチュエータ110は、動作状況および周囲温度等によって温度が変化する。例えば、室温相当の基準温度におけるアクチュエータ110をON状態に保ってヒータ部117の熱を発生させ続けた場合、または基準温度よりも高い周囲温度でアクチュエータ110を動作させる場合、アクチュエータ110の温度は、基準温度よりも上昇する。ここで、アクチュエータ110をOFFにすると、基準温度よりも高くなった分、第1の接点10と第2の接点20の間隔は基準温度の間隔に比べて狭くなる。
【0022】
この場合、制御部120が基準温度と同じ制御信号でアクチュエータ110をON状態にすると、第1の接点10と第2の接点20は、基準温度に比べて大きな接圧で接触するので、ON/OFFを繰り返すと接点は摩耗する。そこで制御部120は、アクチュエータ110の温度上昇に応じて、温度上昇による接圧を抑えるべく基準温度で流す電流よりも低い電流をヒータ部117に供給することで、アクチュエータ110の温度が上昇しても第1の接点10と第2の接点20とを略同一の接圧で接触させることができる。
【0023】
また、例えば、室温相当の基準温度よりも低い周囲温度でアクチュエータ110を動作させる場合、アクチュエータ110の温度は、基準温度よりも下降する。ここで、アクチュエータ110をOFFにすると、基準温度よりも低くなった分、第1の接点10と第2の接点20の間隔は基準温度の間隔に比べて広くなる。
【0024】
この場合、制御部120が基準温度と同じ制御信号でアクチュエータ110をON状態にすると、第1の接点10と第2の接点20は、基準温度に比べて小さな接圧で接触するので、電気的な接続が不安定になる。そこで制御部120は、アクチュエータ110の温度下降に応じて、温度下降による接圧低下を補うべく基準温度で流す電流よりも高い電流をヒータ部117に供給することで、アクチュエータ110の温度が低下しても第1の接点10と第2の接点20とを略同一の接圧で接触させて安定な電気的接続を保つことができる。
【0025】
例えば、制御部120は、アクチュエータ110の温度の上昇を検出したことに応じて、電圧振幅を保ったまま、オフセット電圧を減じる。また、制御部120は、アクチュエータ110の温度の下降を検出したことに応じて、電圧振幅を保ったまま、オフセット電圧を増加させてよい。
【0026】
これに代えて、制御部120は、アクチュエータ110の温度の上昇を検出したことに応じて、ON電圧を減じてよい。ここで、制御部120は、アクチュエータ110の温度の上昇を検出したことに応じて、OFF電圧も減じてよい。これによって、アクチュエータ110の温度上昇が顕著な場合、第1の接点10と第2の接点20が接触しないように離間させることができる。
【0027】
また、制御部120は、アクチュエータ110の温度の下降を検出したことに応じて、ON電圧を増加させてよい。ここで、制御部120は、アクチュエータ110の温度の下降を検出したことに応じて、OFF電圧も増加させてよい。これによって、アクチュエータ110の温度下降が顕著な場合、カンチレバー部119を予め定められた範囲内で可動させることができ、カンチレバー部119の変形による負担を軽減させることができる。
【0028】
制御部120は、決定した制御信号に基づいてアクチュエータ110を制御する(S220)。制御部120は、外部からの指示信号に応じてアクチュエータ110のON/OFFを制御してよい。アクチュエータ装置100は、アクチュエータ110をON状態にする場合、制御部120を介してアクチュエータ110の温度に応じたON電圧の出力を電源部130に供給する(S230)。電源部130は、受け取った制御信号に応じた電圧または電流をヒータ部117に供給する。
【0029】
同様にアクチュエータ装置100は、アクチュエータ110をOFF状態にする場合、制御部120を介してアクチュエータ110の温度に応じたOFF電圧の出力を電源部130に供給する(S240)。電源部130は、受け取った制御信号に応じた電圧または電流をヒータ部117に供給する。
【0030】
アクチュエータ装置100は、アクチュエータ110の制御が終了するまでステップS200からステップS230またはステップS240までの動作を繰り返す(S250)。以上の本実施例に係るアクチュエータ装置100は、アクチュエータ110の温度に応じた制御信号を用いてアクチュエータ110を駆動させることで、カンチレバー部119の位置を正確に制御して温度の変化があっても一定の接圧で接点を接触させることができる。
【0031】
以上の実施例において、アクチュエータ装置100は、アクチュエータ110が駆動しているかどうかに関わらず、アクチュエータ110の温度を検出する例について説明した。これに代えて、アクチュエータ装置100は、駆動していない状態におけるアクチュエータ110の温度を検出して、検出した温度に応じて制御信号の値を決めてよい。また、アクチュエータ装置100は、駆動している状態におけるアクチュエータ110の温度を検出して、検出した温度に応じて制御信号の値を決めてもよい。アクチュエータ装置100は、アクチュエータ110が同じ状態にある場合の温度を検出することで、以前の状態からの温度変化をより正確に比較することができる。
【0032】
以上の実施例において、アクチュエータ装置100は、アクチュエータ110内に温度検出部112を有する例を説明したが、これに代えて、温度検出部112は、ヒータ部117に流れる電流値を測定して、ヒータ部117の温度に応じて流れる電流の温度係数からアクチュエータ110の温度を検出してもよい。温度検出部112は、電源部130に内蔵された電流モニタであってよい。アクチュエータ装置100は、ヒータ部117が一定の温度係数を持つ金属である場合、ヒータ部117に流れる電流値を測定することでヒータ部117およびカンチレバー部119の温度を検出することができる。
【0033】
以上の実施例において、制御部120は、アクチュエータ110をONまたはOFFの状態に制御する制御信号を決定する例を説明した。ここで、制御部120は、アクチュエータ110の駆動を開始する制御信号の立ち上がりを基準値よりも高くして基準値の制御信号と比較してアクチュエータの温度を上昇させ、その後に駆動しているアクチュエータの温度を検出して、検出した温度に応じて制御信号の値を決めてよい。これによってアクチュエータ装置100は、アクチュエータ110のONの状態に切り替わる立ち上がり時間を制御信号に応じて速くすることができる。
【0034】
また、制御部120は、アクチュエータ110の駆動を停止する制御信号の立ち下がりを駆動していない状態の基準値よりも低くして基準値の制御信号と比較してアクチュエータの温度を下降させ、その後に駆動していないアクチュエータの温度を検出して、検出した温度に応じて制御信号の値を決めてよい。これによってアクチュエータ装置100は、アクチュエータ110のOFFの状態に切り替わる立ち下がり時間を制御信号に応じて速くすることができる。
【0035】
図3は、本実施形態に係るアクチュエータ装置100の変形例を示す。本変形例のアクチュエータ装置100において、図1に示された本実施形態に係るアクチュエータ装置100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。アクチュエータ装置100は、外部温度検出部310と、温度調節部320とを備える。
【0036】
外部温度検出部310は、アクチュエータ110の外部温度を検出する。制御部120は、外部温度検出部310が検出した温度に応じてアクチュエータ110の駆動を停止する制御信号の値を決める。アクチュエータ110の温度は、アクチュエータ装置100が設置される場所の温度によって大きく変化する。これによって、アクチュエータ装置100は、アクチュエータ装置100の設置される環境に応じてアクチュエータ110の位置を制御することができる。
【0037】
温度調節部320は、アクチュエータ110の温度を制御する。温度調節部320は、アクチュエータ110を冷却するクーラー装置であってよく、これに代えて温度調節部320は、アクチュエータ110を冷却および加熱する、クーラー装置とヒータ装置の組み合わせであってよい。これに代えて、温度調節部320は、ペルチエ素子等の加熱と冷却を変転できる素子を有してもよい。
【0038】
アクチュエータ装置100は、アクチュエータ110の次の駆動開始の立ち上がり時間に応じて温度調節部320によるアクチュエータ110の温度を決める。アクチュエータ装置100は、アクチュエータ110の温度およびアクチュエータ110の外部温度を、温度検出部112および外部温度検出部310によって検出することができる。したがって、アクチュエータ装置100は、アクチュエータ110がOFFの状態の第1の接点10と第2の接点20との離間された距離を、アクチュエータ110の温度およびアクチュエータ110の外部温度から検出することができる。ここでアクチュエータ装置100は、予め第1の接点10と第2の接点20との離間された距離、アクチュエータ110の温度およびアクチュエータ110の外部温度を検出して記憶してもよい。
【0039】
そしてアクチュエータ装置100は、一例として、アクチュエータ110の次の駆動開始の立ち上がり時間を現在の立ち上がり時間よりも速くしたい場合、第1の接点10と第2の接点20との離間された距離を近づけるように温度調節部320によってアクチュエータ110の温度を加熱する。これによってアクチュエータ装置100は、アクチュエータ110をON状態にする場合のカンチレバー部119の移動距離を縮めることができ、駆動開始の立ち上がり時間を早くすることができる。
【0040】
これに代えて、アクチュエータ装置100は、アクチュエータ110の次の駆動開始の立ち上がり時間に応じてヒータ部117によるアクチュエータ110の温度を決めてもよい。第1の接点10と第2の接点20との離間された距離は、ヒータ部117によるアクチュエータ110の温度によっても変えられるので、駆動開始の立ち上がり時間をヒータ部117でも調整することができる。
【0041】
また、アクチュエータ装置100は、アクチュエータ110を複数有し、温度調節部320は複数のアクチュエータ110を一定の温度に保ち、制御部120は、複数の温度検出部112が検出した温度に応じて複数のアクチュエータ110に供給する制御信号の大きさをそれぞれ制御する。これによって、アクチュエータ装置100は、複数のアクチュエータ110の位置をそれぞれ正確に制御することができる。
【0042】
また、アクチュエータ装置100は、温度調節部320によって複数のアクチュエータ110を一定の温度に保つので、制御信号の大きさを大きく変化させることなく決めることができる。温度調節部320は、アクチュエータ110の温度を一定の温度に保つことで、第1の接点10と第2の接点20との離間された距離を予め定められた一定の範囲に保つことができる場合、制御部120は、一定の大きさの制御信号を供給してアクチュエータ110のON/OFFを切り換えてよい。
【0043】
以上の実施例において、アクチュエータ装置100は、スイッチとして機能する熱型アクチュエータを例として説明した。これに代えて、アクチュエータ装置100は、入力されたエネルギーを物理運動量に変換するアクチュエータであってよい。アクチュエータ装置100は、熱型アクチュエータでなくても周囲温度によってアクチュエータの位置が変化する。
【0044】
また、例えば、センサ、プローブ、位置決め装置等、スイッチ以外の機能を有するアクチュエータ装置100においても、周囲温度によってアクチュエータの位置が変化する場合は、誤差等として悪影響を及ぼす。したがって、このようなアクチュエータ装置100においても、アクチュエータ110の温度を検出して、検出した温度に応じた制御信号でアクチュエータ110を制御することでアクチュエータ110の位置を正確に制御することができ、周囲温度の影響を低下させることができる。
【0045】
図4は、本実施形態に係る試験装置410の構成例を被試験デバイス400と共に示す。試験装置410は、アナログ回路、デジタル回路、アナログ/デジタル混載回路、メモリ、およびシステム・オン・チップ(SOC)等の少なくとも1つの被試験デバイス400を試験する。試験装置410は、被試験デバイス400を試験するための試験パターンに基づく試験信号を被試験デバイス400に入力して、試験信号に応じて被試験デバイス400が出力する出力信号に基づいて被試験デバイス400の良否を判定する。
【0046】
試験装置410は、試験部420と、信号入出力部430とを備える。試験部420は、被試験デバイス400との間で電気信号を授受して被試験デバイス400を試験する。試験部420は、試験信号発生部423と、期待値比較部426とを有する。
【0047】
試験信号発生部423は、被試験デバイス400へ供給する複数の試験信号を発生する。試験信号発生部423は、試験信号に応じて被試験デバイス400が出力する応答信号の期待値を生成してよい。試験信号発生部423は、信号入出力部430を介して複数の被試験デバイス400に接続されて、複数の被試験デバイス400を試験してよい。
【0048】
期待値比較部426は、信号入出力部430が受信した受信データ値を期待値と比較する。期待値比較部426は、期待値を試験信号発生部423から受信してよい。試験装置410は、期待値比較部426の比較結果に基づき、被試験デバイス400の良否を判定してよい。
【0049】
信号入出力部430は、1以上の被試験デバイス400に接続され、試験装置410と被試験デバイス400との試験信号をやり取りする。信号入出力部430は、複数の被試験デバイス400を搭載するパフォーマンスボードであってよい。信号入出力部430は、アクチュエータ装置100を有する。
【0050】
アクチュエータ装置100は、試験部420および被試験デバイス400の間に設けられ、試験部420および被試験デバイス400の間を電気的に接続または切断する。試験装置410は、本実施形態に係るアクチュエータ装置100によって電気的な接続または切断を実行してよい。これによって試験装置410は、アクチュエータの位置を正確に制御して、温度が変化しても略同一の接圧でON/OFF動作できるアクチュエータ装置100を用いて試験を実行することができる。即ち、試験装置410は、低損失かつ長寿命で、電気信号の伝送およびスイッチングを実行することができる。
【0051】
本実施例において、信号入出力部430は1つの被試験デバイス400に接続され、アクチュエータ装置100は、1つの被試験デバイス400の入力信号ラインおよび出力信号ラインにそれぞれ1つ設けられる例を説明した。これに代えて信号入出力部430は、複数の被試験デバイス400に接続され、アクチュエータ装置100は、複数の被試験デバイス400の入力信号ラインおよび出力信号ラインのそれぞれに1つ設けられてよい。また、信号入出力部430から1つの被試験デバイス400へ接続される信号入出力ラインが1つの場合、1つの入出力ラインに1つのアクチュエータ装置100が設けられてよい。
【0052】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0053】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0054】
10 第1の接点、20 第2の接点、100 アクチュエータ装置、110 アクチュエータ、112 温度検出部、114 第1の電気配線、115 第2の電気配線、117 ヒータ部、119 カンチレバー部、120 制御部、130 電源部、310 外部温度検出部、320 温度調節部、400 被試験デバイス、410 試験装置、420 試験部、423 試験信号発生部、426 期待値比較部、430 信号入出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号に応じて動作するアクチュエータと、
前記アクチュエータを動作させる場合において、前記アクチュエータの温度を基準温度とする制御信号を供給する制御部と、
を備えるアクチュエータ装置。
【請求項2】
前記アクチュエータの温度を検出する温度検出部を更に備え、
前記制御部は、前記温度検出部が検出した温度に応じて前記アクチュエータに供給する制御信号の大きさを制御する請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項3】
前記温度検出部は、駆動していない状態における前記アクチュエータの温度を検出し、
前記制御部は、検出した温度に応じて制御信号の値を決める請求項2に記載のアクチュエータ装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記制御部の制御信号に応じて熱を発生させるヒータ部を更に有し、前記ヒータ部が発生する熱によって動作する熱型アクチュエータである請求項2または3に記載のアクチュエータ装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、
第1の接点を含むカンチレバー部と
電気信号を伝送する第1および第2の電気配線と、
前記第1および第2の電気配線にそれぞれ接続された第2の接点と、
を更に有し、
前記カンチレバー部は、前記ヒータ部によって発生した熱で動作して前記第1の接点と前記第2の接点とを電気的に接続させ、前記第1の電気配線と前記第2の電気配線とを導通させる請求項4に記載のアクチュエータ装置。
【請求項6】
前記ヒータ部の材質は白金を含む請求項4または5に記載のアクチュエータ装置。
【請求項7】
前記温度検出部は、前記ヒータ部に流れる電流値を測定して、前記ヒータ部の温度に応じて流れる電流の温度係数から前記アクチュエータの温度を検出する請求項4から6のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【請求項8】
前記温度検出部は、測温抵抗体である請求項2から6のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【請求項9】
前記温度検出部は、熱電対である請求項2から6のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【請求項10】
前記アクチュエータ装置は、前記アクチュエータの外部温度を検出する外部温度検出部を更に備え、前記制御部は、前記外部温度検出部が検出した温度に応じて前記アクチュエータの駆動を停止する制御信号の値を決める請求項1から9のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記アクチュエータの駆動を開始する制御信号の立ち上がりを基準値よりも高くして基準値の制御信号と比較して前記アクチュエータの温度を上昇させ、その後に駆動している前記アクチュエータの温度を検出して、検出した温度に応じて制御信号の値を決める請求項1から10のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記アクチュエータの駆動を停止する制御信号の立ち下がりを駆動していない状態の基準値よりも低くして基準値の制御信号と比較して前記アクチュエータの温度を下降させ、その後に駆動していない前記アクチュエータの温度を検出して、検出した温度に応じて制御信号の値を決める請求項1から11のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【請求項13】
前記アクチュエータ装置は、前記アクチュエータの温度を制御する温度調節部を更に備える請求項2から12のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【請求項14】
前記アクチュエータ装置は、前記アクチュエータの次の駆動開始の立ち上がり時間に応じて前記温度調節部による前記アクチュエータの温度を決める請求項13に記載のアクチュエータ装置。
【請求項15】
前記アクチュエータ装置は、前記アクチュエータを複数有し、前記温度調節部は複数の前記アクチュエータを一定の温度に保ち、前記制御部は、複数の前記温度検出部が検出した温度に応じて複数の前記アクチュエータに供給する制御信号の大きさをそれぞれ制御する請求項13または14に記載のアクチュエータ装置。
【請求項16】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスとの間で電気信号を授受して前記被試験デバイスを試験する試験部と、
前記試験部および前記被試験デバイスの間に設けられ、前記試験部および前記被試験デバイスの間を電気的に接続または切断する請求項1から15のいずれかに記載のアクチュエータ装置と、
を備える試験装置。
【請求項17】
アクチュエータを制御信号に応じて動作させる動作段階と、
前記アクチュエータの温度を検出する温度検出段階と、
駆動している前記アクチュエータの温度を基準温度とする制御信号を供給する制御段階と
を備えるアクチュエータ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−253623(P2011−253623A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124661(P2010−124661)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】