説明

アクチュエータ

【課題】待ち機構にかかる負荷を分散し、アクチュエータ全体を小型化できるアクチュエータを提供する。
【解決手段】電動モータ3と、電動モータ3の回転を減速して出力軸72に伝達する減速機構4と、減速機構4内に設けられた第一待ち機構60、および第二待ち機構70とを備え、第一待ち機構60は、回転軸12からの回転が入力される入力プレートの回転がスプリングを介して出力プレートに伝達され、第二待ち機構70は、出力プレートからの回転が入力されるヘリカルギヤの回転がトーションスプリング104を介してスプリングリテーナに伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、自動車の2輪駆動と4輪駆動との切り換え、またはニュートラルポジションとドライブポジションとの切り換え等を行う駆動切り換え装置に用いるアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、4輪駆動車のトランスファに電動モータの駆動によりシフトフォークをストロークさせるアクチュエータを設け、室内からのスイッチ操作により2輪/4輪駆動状態を切り換える駆動切り換え装置が知られている。
アクチュエータは減速機構であるウォーム減速機を備えており、このウォーム減速機が電動モータの回転軸と連係している。ウォーム減速機のウォームホイールには、ラック・ピニオンのピニオンが連結されている。
【0003】
ピニオンに噛合されているラックには、シフトフォークをストロークさせるためのフォークシャフトが連結されている。すなわち、電動モータの回転運動をウォーム減速機、ラック・ピニオンで構成される減速機構を介して往復運動に変換し、フォークシャフトによってシフトフォークをストロークさせるようになっている。
シフトフォークがストロークするとドライブトレイン上に設けられたスプライン歯を有するスリーブやドグクラッチが変位する。すると、駆動軸と従動軸の連結/解除が行われ、これによって、2輪/4輪駆動状態を切り換えが行われる。
【0004】
また、アクチュエータには、減速機構内に待ち機構が設けられている。すなわち、ウォーム減速機とピニオンとの間に待ち機構が配設されている。この待ち機構は、駆動軸と従動軸のスプライン歯の位相の不一致が理由でスリーブやドグクラッチが変位不能となり、シフトフォークがロックした場合に反力(弾力)を蓄えるものであって、スパイラルスプリングを備えている。
【0005】
そして、シフトフォークがロックした際、スパイラルスプリングが撓んで弾性変形することで電動モータの回転力をシフトフォークをストロークさせるための付勢力として蓄積するようになっている。このため、再びスリーブやドグクラッチが変位可能になったとき、シフトフォークに過大推力が作用することなく、スパイラルスプリングの復元力によってシフトフォークをストロークさせることができ、駆動軸と従動軸の連結/解除をスムーズに行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−38091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、待ち機構を構成するスパイラルスプリングにかかる負荷が大きくなる。すなわち、スパイラルスプリングのバネ定数をシフトフォークをストローク可能な大きさに設定する必要がある。このため、スパイラルスプリングが大型化し、これに伴い電動モータも必要以上のトルクが必要となる。この結果、アクチュエータ全体が大型化してしまうという課題がある。
【0007】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、待ち機構にかかる負荷を分散し、アクチュエータ全体を小型化できるアクチュエータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、電動モータと、前記電動モータの回転を減速して出力軸に伝達する減速機構と、前記減速機構内に設けられ、前記出力軸が拘束された際にその拘束が解除されるまで回転力を蓄積して待つ第一待ち機構、および第二待ち機構とを備え、前記第一待ち機構は、前記回転軸からの回転が入力される第一入力プレートと、前記第一入力プレートからの回転を前記第二待ち機構へと出力する第一出力プレートと、前記第一入力プレートと前記第一出力プレートとの間に配置される第一スプリングとを有し、前記第一入力プレートの回転が前記第一スプリングを介して前記第一出力プレートに伝達され、前記第二待ち機構は、前記第一出力プレートからの回転が入力される第二入力プレートと、前記第二入力プレートからの回転を前記出力軸へと出力する第二出力プレートと、前記第二入力プレートと前記第二出力プレートとの間に配置される第二スプリングとを有し、前記第二入力プレートの回転が前記第二スプリングを介して前記第二出力プレートに伝達されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した発明は、前記第一待ち機構の前記第一入力プレートに前記回転軸に連係される歯車を一体成形すると共に、前記第一出力プレートにウォーム軸を固定し、前記第二待ち機構の前記第二入力プレートに前記ウォーム軸に噛合うホイールギヤを一体成形したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、待ち機構を第一待ち機構と第二待ち機構の2つで構成することで、各待ち機構にかかる負荷を分散させることができる。このため、第一待ち機構における第一スプリングのバネ定数と、第二待ち機構における第二スプリングのバネ定数を共に小さく設定することができ、各スプリングサイズを小さくすることができる。これに伴い、電動モータの必要トルクも小さく設定することができ、結果的にアクチュエータ全体を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、アクチュエータ1は、例えば、4輪車の駆動を2輪駆動と4輪駆動とに切替える駆動切替え装置用として用いられるものであって、ケーシング2内に電動モータ3と減速機構4とを備え、これら電動モータ3と減速機構4とをクラッチ機構5を介して連結している。
ケーシング2は一方が開口された箱状に形成されたものであって、電動モータ3を収納する電動モータ収納部6と、減速機構4を収納する減速機構収納部7とを有している。ケーシング2の外周縁には、ケーシング2の開口部を閉塞する蓋体2a(図3参照)を固定するときに使用されるボルト孔8が7箇所突設されている。
【0012】
電動モータ3は、ヨーク9内にアーマチュア10を回転自在に配置した所謂DCブラシ付モータである。ヨーク9は、筒部91と、この筒部91の一方の開口部を閉塞するエンド部(底部)92とで構成されている。
筒部91の内周面には周方向に分割された瓦状の永久磁石11が等間隔に、かつ隣り合う磁極が互いに逆になるように固定されている。
アーマチュア10は、回転軸12に固定されたアーマチュアコア13と、アーマチュアコア13に巻装されたアーマチュアコイル14と、アーマチュアコア13に隣接して設けられたコンミテータ15とで構成されている。
【0013】
回転軸12の一端は、ヨーク9のエンド部92に突出形成されたボス17に圧入固定された軸受け74によって回転自在に支持されている。
アーマチュアコア13は、平面視略T字型のティース(不図示)が周方向に沿って等間隔に放射状に形成されており、ここにエナメル被覆の巻線21が巻装されて複数のアーマチュアコイル14が形成されている。
【0014】
コンミテータ15は、回転軸12の他端側に外嵌固定されている。このコンミテータ15は、アーマチュアコイル14に流れる電流の向きを切替える、所謂整流を行うためのものであって、コンミテータ15の外周面には、導電材で形成されたセグメント22が取り付けられている。
【0015】
セグメント22は軸方向に長い板状の金属片からなり、互いに絶縁された状態で周方向に沿って等間隔に並列に固定されている。各セグメント22のアーマチュアコア13側の端部には、外径側に折り返す形で折り曲げられたライザ23が一体形成されている。このライザ23に、アーマチュアコイル14の巻き始め端部と巻き終わり端部となる巻線21が掛け回わされている。巻線21はヒュージングによりライザ23に固定されており、これによりセグメント22とこれに対応するアーマチュアコイル14とが電気的に接続される。
【0016】
ヨーク9の筒部91には、この筒部91の他方の開口部を閉塞する有底筒状のカバー24が設けられている。カバー24は、このエンド部(底部)24aが電動モータ3とは反対側を向くように配置されている。そして、カバー24の開口部と筒部91の他方の開口部との間に、これらを仕切る隔壁部93が設けられている。
【0017】
カバー24の内側には不図示のホルダステーが取り付けられており、ここにコンミテータ15に摺接するブラシ(不図示)が設けられている。
また、カバー24のエンド部24a(底部)には、径方向中央に共有軸受け26が設けられている。この共有軸受け26は、回転軸12の他端とクラッチ機構5の一端とを共に回転自在に支持するための滑り軸受けであって、筒状の軸受け本体27とこの軸受け本体27のクラッチ機構5側端に一体形成されたフランジ部28とで構成されている。
【0018】
クラッチ機構5は、電動モータ3の駆動に基づいた回転軸12の回転力を減速機構4へ伝達する一方、外力による回転力が減速機構4を介して回転軸12に作用し、これによって回転軸12が逆転してしまうのを防止する、所謂ツーウェイクラッチである。
ここで、ツーウェイクラッチとは、ワンウェイクラッチが一方向(正回転、または逆回転の何れか一方)だけの駆動力を伝達するものであるのに対し、1つのクラッチで両方向(正/逆回転)に駆動力を伝達することができるものである。つまり、クラッチ機構5は、回転軸12の正/逆回転の両方の回転力を減速機構4へ伝達する一方、減速機構4からの回転力は正/逆回転の何れも回転軸12へは伝達されないようになっている。
【0019】
このようなクラッチ機構5は、有底筒状のケーシング51に内嵌された筒状のハウジング29と、このハウジング29の内側に回転軸12連結されクラッチ機構5の一端側に配置された駆動側回転体31と、この駆動側回転体31と相対回転不能、かつ軸方向に移動可能に連結された従動側回転体32とを備え、これら駆動側回転体31、および従動側回転体32と、ハウジング29との間に有底筒状のハブ回転体30を介装してある。
【0020】
ハウジング29の電動モータ3側端には、内周面に段差により拡径された拡径部29aが形成され、ここに共有軸受け26のフランジ部28を受け入れることができるようになっている。
駆動側回転体31は、略円柱状に形成されたものであって、電動モータ3側に回転軸12の他端が挿通可能な連結孔33が形成されている。ここで、回転軸12の他端には、平面取りが1箇所施されている一方、連結孔33は回転軸12の他端の断面形状に対応するように形成されている。これによって、駆動側回転体31と回転軸12とが相対回転不能、かつ軸方向に移動可能になっている。
【0021】
また、駆動側回転体31の電動モータ3側端には、外周面に段差により縮径された縮径部34が形成されており、ここを共有軸受け26が回転自在に支持するようになっている。
さらに、駆動側回転体31の電動モータ3とは反対側端に段差により形成された縮径部35には、従動側回転体32が外嵌されている。駆動側回転体31の縮径部35には、平面取りが1箇所施されている一方、縮径部35を受け入れる従動側回転体32の連結孔36は縮径部35に対応するように形成されている。これによって、両者31,32は相対回転不能、かつ軸方向に移動可能になっている。
【0022】
駆動側回転体31、および従動側回転体32は、互いに重ね合わさった状態で有底筒状のハブ回転体30内に収納されている。つまり、駆動側回転体31、および従動側回転体32と、ハウジング29との間にハブ回転体30が介装された状態になっている。
ハブ回転体30は、この開口部が電動モータ3側となるように設けられている。ハブ回転体30とハウジング29との間には、コイルスプリング52が設けられている。このコイルスプリング52は、それぞれ駆動側回転体31、および従動側回転体32の回転駆動に応じて径方向内側に向かって縮径変形したり、径方向外側に向かって拡径変形したりするようになっている。
【0023】
すなわち、クラッチ機構5は、まず駆動側回転体31が駆動した場合、駆動側回転体31が駆動することでコイルスプリング52が縮径変形し、これがハブ回転体30を介して駆動側回転体31と従動側回転体32を一体化させて両者が共回りする。このため、駆動側回転体31から従動側回転体32に回転力が伝達される。
これに対し、ハブ回転体30が駆動側回転体31よりも先に駆動するような場合には、従動側回転体32が駆動することでコイルスプリング52が拡径変形し、コイルスプリング52とハウジング29との間に摩擦抵抗力が生じる。これによって、従動側回転体32の回転が規制されるので、ハブ回転体30から駆動側回転体31への回転力の伝達が防止される。
【0024】
ハブ回転体30のエンド部30a(底部)には、軸方向外側に向かって突出するボス部37が形成され、ここに減速機構4を構成する第一ピニオン38が圧入固定されている。
減速機構4は、第一ピニオン38、ウォーム軸45、第一待ち機構60、および第二待ち機構70で構成されており、それぞれケーシング2の減速機構収納部7に収納されている。
第一ピニオン38は筒状に形成されたものであって、基端側に形成された連結部40と、先端側に形成された歯部41とが一体成形されている。
【0025】
連結部40は、ハブ回転体30と第一ピニオン38とを一体化するためのものであって、連結部40の孔にハブ回転体30に形成されたボス部37が圧入される。
また、連結部40は、ハウジング29の電動モータ3とは反対側端に設けられた軸受け39に回転自在に支持されている。すなわち、第一ピニオン38の連結部40に圧入されているハブ回転体30は、軸受け39に第一ピニオン38を介して回転自在に支持された状態になっている。
【0026】
ここで、歯部41のピッチ円径PCは連結部40の直径よりも小さく設定されている。
このようにすることで、歯部41のピッチ円径PCが連結部40の直径よりも大きく設定されている場合と比較して第一ピニオン38に作用する駆動モーメントを小さくすることができる。このため、第一ピニオン38の連結部40のみに軸受け39を設ける、つまり、第一ピニオン38を片持ちで支持することが可能になる。
【0027】
図1、図2に示すように、第一ピニオン38の歯部41には、第一待ち機構60が噛合されている。
第一待ち機構60は、第一ピニオン38の歯部41に噛合う外歯歯車61と、外歯歯車61と一体成形されている入力プレート62と、入力プレート62に対して対向配置された出力プレート63と、入力プレート62と出力プレート63との間に配設されたスプリング64とで構成されている。
【0028】
外歯歯車61は略円筒状に形成されており、この一方の面を閉塞するようにして略円盤状の入力プレート62が一体成形されている。入力プレート62の径方向中央には、軸方向内側に向かって突出するボス部65が形成されている。このボス部65には、ウォーム軸45の一端側を挿通するための挿通孔66が形成されている。
ウォーム軸45は、軸方向中央に歯部45aを有していると共に、両端に軸受け部45b,45bを有しており、軸受け部45b,45bがケーシング2に回転自在に支持された状態になっている。
【0029】
出力プレート63は略円盤状に形成されたものであって、外歯歯車61の他方の面を閉塞するように設けられている。出力プレート63の外径は外歯歯車61の内径E2に略一致すると共に、外歯歯車61の内周面と摺動可能な大きさに設定されている。出力プレート63の径方向中央には、軸方向外側に向かって突出するボス部67が形成されている。このボス部67には、ウォーム軸45の一端側を圧入固定するための孔68が形成されている。したがって、ウォーム軸45と出力プレート63とは一体化されており、互いに共回りするようになっている。
【0030】
スプリング64は、バネ用線材を螺旋状に巻回して形成された所謂コイルスプリングである。スプリング64の外径E1は外歯歯車61の内径E2よりもやや小さく設定されており、これによって、スプリング64は外歯歯車61の径方向内側に内装された状態になっている。
【0031】
ここで、スプリング64には、両端末部に径方向内側に屈曲するフック部(不図示)が形成されている。一方、入力プレート62には、スプリング64のフック部と係合可能な係合部58が軸方向内側に向かって突設されていると共に、出力プレート63にもスプリング64のフック部と係合可能な係合部59が軸方向内側に向かって突設されている。また、出力プレート63の係合部59は、入力プレート62の係合部58よりも径方向内側、つまり、入力プレート62の回動軌跡よりも内側に配設されている。これにより、各プレート62,63がウォーム軸45を中心に回動しても各係合部58,59が干渉することがない。
【0032】
すなわち、電動モータ3の回転軸12の回転力がクラッチ機構5、および第一ピニオン38を介して第一待ち機構60の入力プレート62に伝達され、さらに、入力プレート62からスプリング64を介して出力プレート63に伝達されることになる。
また、スプリング64は、出力プレート63がロックして回転不能になったとき、弾性変形することで入力プレート62の回転力を出力プレート63を回転させるための付勢力として蓄積する役割も有している。
【0033】
図1、図3に示すように、出力プレート63と一体化されたウォーム軸45には、第二待ち機構70を構成するヘリカルギヤ71が噛合されている。
第二待ち機構70は、出力軸72を有している。出力軸72の一端側は、減速機構収納部7のボス部73に圧入固定されている軸受け74で回転自在に支持されている。
また、出力軸72の一端は、ボス部73に形成された挿通孔75から外方に向かって突出している。
【0034】
この出力軸72のボス部73から突出した部位には、段差により縮径された縮径部76が形成されている。この他に、ボス部73には、平面視略円環状のオイルシール77が設けられている。オイルシール77は、ボス部73の挿通孔75からの内部への塵埃の侵入を防止するためのものであって、出力軸72と摺動可能になっている。
【0035】
出力軸72の縮径部76は、ラック・ピニオンのピニオン78が外嵌されている。また、縮径部76には、止め輪79が設けられており、この止め輪79と縮径部76の段差部とによって、ピニオン78の軸線方向への移動が規制されるようになっている。さらに、縮径部76は平面取りが施された平面取り部80を有しており、断面略D字状になっている(Dカット)。ピニオン78の挿通孔81も縮径部76の断面形状に対応するように平面視D字状になっており、これによって、ピニオン78の出力軸72に対する周方向への回転移動が規制されるようになっている。
【0036】
なお、ピニオン78には不図示のラックが噛合されるようになっている。ラックには、シフトフォークをストロークさせるためのフォークシャフト(不図示)が連結されている。このフォークシャフトは、不図示のドライブトレイン上に設けられスプライン歯を有するスリーブやドグクラッチを変位させるためのものであって、このスリーブやドグクラッチを変位させることで4輪車の駆動を2輪駆動と4輪駆動とに切り換えることができるようになっている。
【0037】
一方、出力軸72の他端側には段差により縮径された縮径部82が形成されている。縮径部82は、ケーシング2の開口部を閉塞する蓋体2aの内面に設けられた軸受け57に回転自在に支持されている。縮径部82の軸受け57よりも軸方向内側には、ヘリカルギヤ71が出力軸72に対して回転自在に軸支されている。
ヘリカルギヤ71は、有底筒状に形成されたギヤ本体83を有している。ギヤ本体83のエンド部83aには、径方向中央に外方に向かって突出する筒部84が形成されている。この筒部84は、出力軸72の縮径部82に外嵌される部分である。
ヘリカルギヤ71のギヤ本体83の周壁87には、外周面側にウォーム軸45に噛合される歯部87aが軸線方向に対して斜めに刻設されている。また、ギヤ本体83の周壁87には、先端側の平面87bから減速機構収納部7のエンド部7aに向かって突出する、断面略弧状の第一バネ係止部88が形成されている。
【0038】
また、ギヤ本体83のエンド部83aには、ヘリカルギヤ71の回転位置を検出するための接点85が設けられている。この接点85は、後述する位置検出用基板86に対して摺動可能になっている。
位置検出用基板86は蓋体2aのヘリカルギヤ71に対応する部位に設けられている。この位置検出用基板86は、ヘリカルギヤ71の回転位置を認識するためのものであって、所定のパターン(不図示)が形成されている。このパターンとヘリカルギヤ71に設けられた接点85とが互いに接触することによって、外部の制御機器(不図示)に信号が出力されたり電流が供給されたりされ、ヘリカルギヤ71の回転位置を認識できるようになっている。
【0039】
出力軸72の第一バネ係止部88の先端側、つまり、減速機構収納部7のエンド部7a寄りには、スプリングリテーナ89が外嵌固定されている。スプリングリテーナ89は、略円盤状のリテーナ本体100を有している。リテーナ本体100の径方向中央には、筒部101が軸方向に貫通するように形成され、ここに出力軸72が圧入されるようになっている。
【0040】
リテーナ本体100のヘリカルギヤ71と対向する平面100aには、径方向外側寄りに周方向に沿って平面視略弧状の凹部102が形成されている。この凹部102には、軸方向に沿って突出する第二バネ係止部103がリテーナ本体100と一体形成されている。すなわち、スプリングリテーナ89のヘリカルギヤ71と対向する平面100aと、ヘリカルギヤ71の周壁87における先端側の平面87b、つまり、スプリングリテーナ89と対向する面には、それぞれ第二バネ係止部103、第一バネ係止部88が一体成形されている。
【0041】
第二バネ係止部103は断面略弧状に形成されたものであり、この第二バネ係止部103と凹部102は、ヘリカルギヤ71に形成されている第一バネ係止部88の回動軌跡よりも外側に配置された状態になっている。すなわち、第一バネ係止部88は、第二バネ係止部103よりも径方向内側を回動することになる。なお、ヘリカルギヤ71のギヤ本体83の外径は、スプリングリテーナ89のリテーナ本体100の外径よりも小さく設定されている。
【0042】
ヘリカルギヤ71とスプリングリテーナ89との間には、トーションスプリング104が設けられている。このトーションスプリング104は、ヘリカルギヤ71からの回転力をスプリングリテーナ89を介して出力軸72に伝達する役割を有すると共に、シフトフォーク(不図示)がロックして出力軸72が回転不能になったとき、弾性変形することでヘリカルギヤ71の回転力をシフトフォークをストロークさせるための付勢力として蓄積する役割を有している。
【0043】
トーションスプリング104の内径は、スプリングリテーナ89の第二バネ係止部103の回動軌跡よりも大きく設定されている。すなわち、第二待ち機構70は、出力軸72を中心として、径方向外側に向かって第一バネ係止部88、第二バネ係止部103、トーションスプリング104の順で配置された状態になっている。
トーションスプリング104の両端末部には、径方向内側に向かって屈曲するフック部(不図示)が形成されている。フック部は、出力軸72を中心にして互いに点対称位置に配置された状態になっている。したがって、第一バネ係止部88、および第二バネ係止部103は、周方向で各フック部の間に配置された状態となり、それぞれフック部と係合可能になっている。
【0044】
次に、この実施形態の第一待ち機構60、および第二待ち機構70の作用について説明する。ここで、第一待ち機構60、および第二待ち機構70は、それぞれ同じ動作によって同じ役割を有する。すなわち、第一待ち機構60の入力プレート62は、第二待ち機構70のヘリカルギヤ71に対応している。第一待ち機構60の出力プレート63は、第二待ち機構70のスプリングリテーナ89に対応している。第一待ち機構60のスプリング64は、第二待ち機構70のトーションスプリング104に対応している。第一待ち機構60の出力プレート63に圧入固定されているウォーム軸45は、第二待ち機構70の出力軸72に対応している。
したがって、ここでは第二待ち機構70の作用についてのみ説明し、第一待ち機構60の作用についての説明を省略する。
【0045】
図1、図3に示すように、例えば、駆動切り換え装置により2輪駆動が選択され、スリーブやドグクラッチの変位、およびシフトフォークのストロークが完了しているとき、電動モータ3には通電が行われず、ヘリカルギヤ71の第一バネ係止部88は、トーションスプリング104の両端末部に形成されたフック部(不図示)のうちの一方に当接した状態になっている。また、スプリングリテーナ89の第二バネ係止部103は、トーションスプリング104の他方のフック部に当接した状態になっている。
【0046】
次に、駆動切り換え装置により2輪駆動から4輪駆動に切り換える場合、電動モータ3が通電されて回転軸12が回転し始める。すると、回転軸12の回転運動が減速機構4を介してヘリカルギヤ71に伝達され、ヘリカルギヤ71の第一バネ係止部88が回動し始める。
そして、ヘリカルギヤ71の第一バネ係止部88が回動し続けると、第一バネ係止部88がトーションスプリング104の他方のフック部に当接し、トーションスプリング104がヘリカルギヤ71と共回りし始める。
【0047】
続いて、トーションスプリング104を介してヘリカルギヤ71とスプリングリテーナ89とが一体となって回動し始める。すると、スプリングリテーナ89が外嵌固定されている出力軸72も共回りするので、ピニオン78、ラック(不図示)、およびシフトフォーク(不図示)を介してスリーブやドグクラッチが変位し始める。
【0048】
ここで、駆動切り換え装置の駆動軸と従動軸のスプライン歯の位相が一致している場合にあっては、シフトフォークがスムーズにストロークし続け、スリーブやドグクラッチの変位を完了させる。そして、4輪車の駆動軸と従動軸とがスリーブやドグクラッチを介して連結され、4輪駆動への切り換えが終了する。
しかしながら、駆動軸と従動軸のスプライン歯の位相が不一致の場合にあっては、スリーブやドグクラッチが変位不能となり、シフトフォークがロックしてしまう。
【0049】
このとき、スプリングリテーナ89、つまり、第二バネ係止部103が停止した状態となる一方、ヘリカルギヤ71、つまり、第一バネ係止部88は回動を続ける。このため、第一バネ係止部88がトーションスプリング104のフック部を回動方向に沿って押圧し続ける。そして、トーションスプリング104が弾性変形し、電動モータ3の回転力をシフトフォークをストロークさせるための付勢力として蓄積する。
ここで、第一待ち機構60においても同様の作用が生じる。すなわち、シフトフォークがロックすることによって、出力プレート63が停止した状態となる一方、入力プレート62は回動を続ける。そして、スプリング64が弾性変形し、電動モータ3の回転力をシフトフォークをストロークさせるための付勢力として蓄積する。
【0050】
続いて、駆動軸と従動軸のスプライン歯の位相が一致し、スリーブやドグクラッチが変位可能になったとき、トーションスプリング104(スプリング64)に復元力が作用する。このため、トーションスプリング104(スプリング64)が無負荷状態に復元される。すると、この復元力によって、スリーブやドグクラッチが変位して駆動軸と従動軸とが連結され、4輪駆動への切り換えが終了する。なお、各待ち機構60,70は、4輪駆動から2輪駆動に切換える場合においても2輪駆動から4輪駆動に切換える場合と同様に機能してスリーブやドグクラッチを変位させるので、4輪駆動から2輪駆動に切換える場合の説明を省略する。
【0051】
したがって、上述の実施形態によれば、アクチュエータ1に第一待ち機構60と第二待ち機構70の2つの待ち機構を設けることで、各待ち機構60,70にかかる負担を分散させることができる。このため、第一待ち機構60におけるスプリング64のバネ定数と、第二待ち機構70におけるトーションスプリング104のバネ定数を共に小さく設定することができ、各スプリング64,104のサイズを小さくすることができる。これに伴い、電動モータ3の必要トルクも小さく設定することができ、結果的にアクチュエータ1全体を小型化することができる。
【0052】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
また、上述の実施形態では、アクチュエータ1は、例えば、4輪車の駆動を2輪駆動と4輪駆動とに切り換える駆動切り換え装置用として用いられる場合について説明したが、これに限られるものではなく、アクチュエータ1をニュートラルポジションとドライブポジションとの切り換え等を行う駆動切り換え装置に用いてもよい。
【0053】
さらに、上述の実施形態では、第二待ち機構70において、ウォーム軸45に、ヘリカルギヤ71が噛合されている場合について説明したが、これに限られるものではなく、ヘリカルギヤ71に代わってウォームホイールを用いてもよい。
そして、上述の実施形態では、第二待ち機構70において、第二バネ係止部103を第一バネ係止部88の回動軌跡よりも外側に配置し、出力軸72を中心として、径方向外側に向かって第一バネ係止部88、第二バネ係止部103、トーションスプリング104の順で配置された状態になっている場合について説明したが、これに限られるものではなく、第一バネ係止部88を第二バネ係止部103の回動軌跡よりも外側に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態におけるアクチュエータの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態における第一待ち機構の断面図である。
【図3】図1のA−A線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 アクチュエータ
3 電動モータ
4 減速機構
12 回転軸
45 ウォーム軸
60 第一待ち機構
61 外歯歯車(歯車)
62 入力プレート(第一入力プレート)
63 出力プレート(第一出力プレート)
64 スプリング(第一スプリング)
70 第二待ち機構
71 ヘリカルギヤ(ホイールギヤ)
72 出力軸
83 ギヤ本体
83a エンド部(第二入力プレート)
89 スプリングリテーナ(第二出力プレート)
104 トーションスプリング(第二スプリング)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータの回転を減速して出力軸に伝達する減速機構と、
前記減速機構内に設けられ、前記出力軸が拘束された際にその拘束が解除されるまで回転力を蓄積して待つ第一待ち機構、および第二待ち機構とを備え、
前記第一待ち機構は、
前記回転軸からの回転が入力される第一入力プレートと、
前記第一入力プレートからの回転を前記第二待ち機構へと出力する第一出力プレートと、
前記第一入力プレートと前記第一出力プレートとの間に配置される第一スプリングとを有し、
前記第一入力プレートの回転が前記第一スプリングを介して前記第一出力プレートに伝達され、
前記第二待ち機構は、
前記第一出力プレートからの回転が入力される第二入力プレートと、
前記第二入力プレートからの回転を前記出力軸へと出力する第二出力プレートと、
前記第二入力プレートと前記第二出力プレートとの間に配置される第二スプリングとを有し、
前記第二入力プレートの回転が前記第二スプリングを介して前記第二出力プレートに伝達されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記第一待ち機構の前記第一入力プレートに前記回転軸に連係される歯車を一体成形すると共に、前記第一出力プレートにウォーム軸を固定し、
前記第二待ち機構の前記第二入力プレートに前記ウォーム軸に噛合うホイールギヤを一体成形したことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−228805(P2009−228805A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75417(P2008−75417)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】