説明

アクティブマウント装置及びそれを搭載した車両

【課題】
振動発生体からの振動変位をアクティブ制御し、伝達力を低減するアクティブマウント装置において、ベローズを保護して、耐久性を上げたアクティブマウント装置とそれを搭載した車両を提供する。
【解決手段】
アクティブマウント装置1は、ハウジング(主液室)11と内部が連通し、液体で満たされたベローズ12と、ハウジング11に、ハウジング11とベローズ12との連通部13を摺動するプランジャ21を含む減衰装置20、アキュムレータ30及び制御システム40を備え、
ベローズ12の外側に、少なくとも1つのラバーマウント(変形抑制部材)14を配設し、ラバーマウント14の一端側をハウジング11と支持体(エンジン2又は車体3)のいずれか1つと接合すると共に、他端側を自由にして、ベローズ12の変位を許容する変位許容空間18を設けて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックのエンジンなどの内燃機関を基台に固定し、内燃機関などの振動発生体の振動を低減するアクティブマウント装置において、許容できない変動変位を起こす振動や、変位方向以外の方向からの振動に対する耐久性を向上したアクティブマウント装置とそれを搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エンジンなどの内燃機関を基台に固定するエンジンマウント装置は、エンジン本体の姿勢が変化したりしないようにエンジンを車両基台に支持するものである。エンジンのアイドル時から全力走行時にわたる広いエンジン回転数域で発生するエンジンの振動が車体側へ伝達されることを防ぐと同時に、エンジンを回転させることにより発生するトルクや路面からエンジンへ伝達される振動を低減させる働きを持っている。
【0003】
これらエンジンマウント装置の中に、アクティブマウント装置がある(例えば特許文献1参照)。このアクティブマウント装置はラバーマウントを介して内燃機関を支持し、液体が封入されたマウント内部にプランジャとアクチュエータを備える。内燃機関からアクティブマウント装置に振動が伝わり、封入された液体に振動が伝わり、その振動を感知し、アクチュエータを作動させ、プランジャを摺動させることによって、液体に伝わった振動を打ち消す。
【0004】
しかし、従来のアクティブマウント装置には、エンジンなどの内燃機関の固有振動数よりもやや高周波で比較的レベルの高い振動に対しては、防振領域内であるが、充分に振動を低減しにくいという問題があった。また、マウントを直立に近い姿勢で使用しないとオリフィスに液が流れないため、傾斜状態では使用できないという問題もあった。さらに、外形が大きくなるという、車載上の問題もあった。
【0005】
そこで、本発明の発明者らはそれらの問題点を比較的簡単な構造で解決するアクティブマウント装置を提案した(例えば特許文献2参照)。このアクティブマウント装置を図9に示す。アクティブマウント装置1Xは、エンジン(振動発生体)2を車体(基台)3に防振支持している。このアクティブマウント装置1Xは、ハウジング(主液室)11、ベローズ12、減衰装置20、アキュムレータ30及び制御システム40を備える。ハウジング11とベローズ12とは連通部13を介して内部にオイルOLを満たして連通している。減衰装置20はプランジャ21と、永久磁石22a、22b、電磁コイル23a、23bとからなるボイスコイルモータ(アクチュエータ)を備える。アキュムレータ30は、オイル室31、気体室32、及びダイヤフラム33を備える。制御システム40は、位置検出センサ41、位置検出用ピストン42、力センサ43、サーボアンプ44、コントローラ装置(制御装置)45及びそれら各装置を繋ぐ信号線を備える。ハウジング11の一端を、力センサ43を介して車体と接合し、ベローズ12の一端を、接合部材14Xを介してエンジン2と接合する。
【0006】
このアクティブマウント装置1Xの連通部13はプランジャ21との間に隙間を設け、ハウジング11とベローズ12との圧力を性的に釣り合わせてエンジン2の重量が、プランジャ21にかからないようにしている。
【0007】
ここで図中の横方向をX、ベローズの変位方向である上下方向をYとする。プランジャ21をベローズ12の変位方向をYに移動可能に設け、このプランジャ21を有する減衰装置20は、電磁コイル23a、23bに通電すると、永久磁石22a、22bと電磁コ
イル23a、23bとの間に電磁力が働き、この電磁力により電磁コイル23a、23bとプランジャ21が上下方向Yに移動する。プランジャ21の移動量及び移動方向は、電磁コイル23a、23bへの電流及び通電方向を変更することで制御できる。
【0008】
アキュムレータ30は、エンジン2の重量はベローズ21内のオイルOL、及びオイル室31を介してダイヤフラム33へ伝わるので、この気体室32内にはエンジン2の重量を支持できるだけの圧力の気体が封入されている。このアキュムレータ30は減衰装置20が動き易くするために用いているため、脈動吸収用である。
【0009】
このアクティブマウント装置1Xの動作を説明する。エンジン2の起振力による振動変位は、接合部材14Xから、ベローズ12へと伝わる。このとき、ベローズ12内で油圧振幅が発生し、それによる力が、主液室11を介して、車体3に伝達する。その伝達力を力センサ43で検出し、その信号をコントローラ装置45に入力し、伝達力が0に近づくようにコントローラ装置45で計算された出力信号をサーボアンプ44に入力する。一方で、位置検出用ピストン42の位置を検出し、検出した位置データをサーボアンプ44に送る。それらの信号を基にサーボアンプ44が減衰装置20を動作させて、プランジャ21の位置を連通部13に保持して、伝達力を低減する。
【0010】
上記のような制御が行われない場合は、エンジン2からの起振力がアクティブマウント装置1Xの上部に加わるとき、内部の油圧が変動し、主液室11を介して車体3へ力が伝達する。但し、ベローズ12のバネ定数は低いため、エンジン2の起振力は、ベローズではなくオイルOLを介して伝達する。一方で、上記の制御が行われる場合はプランジャ21と一体となったボイスコイルモータが、位置検出センサ41のフィードバック信号を使って、ベローズ12と主液室11の連通部13にプランジャ21が位置するようにフィードバック制御を行う。この状態において、ベローズ12の油圧変動をキャンセルし、伝達力が低減するように、アクティブ制御で、ボイスコイルモータを上下方向に制御する。
【0011】
しかしながら、トラックなどの大型車両はディーゼルエンジンを搭載しているためエンジントルク変動も大きく、また、長距離仕様により、車体からの振動も大きい。そのため、アクティブマウント装置にはあらゆる方向(上下方向、左右方向及び前後方向)から大荷重や衝撃が加わる。よって、提案したアクティブマウント装置のベローズを大荷重や衝撃から保護して、耐久性に優れるアクティブマウント装置が必要である。
【0012】
そこで、ベローズにかかる力を逃がすように液体圧力が過大に変化すると弁装置を用いて液体を逃がす装置(例えば特許文献3参照)ある。しかし、この装置は装置が複雑化するという問題がある。また、ベローズをばね体で覆った装置(例えば特許文献4参照)もある。このばね体はベローズを用いた減衰装置よりも大きな変位に対応するが、それよりも大きな衝撃などではばね体が損傷してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5―99263号公報
【特許文献2】特開2003−240045号公報(特許第4147783号)
【特許文献3】特開平5−99262号公報
【特許文献4】特開平5−99265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、アクティブマウント装置に備えたベローズを、ベローズの許容範囲外の変動変位から保護すると共に、ベロー
ズの変位方向以外の方向からの変動変位からも保護することができるため、振動を低減すると共に、高い耐久性を実現することができるアクティブマウント装置とそれを搭載した車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を解決するための本発明のアクティブマウント装置は、主液室と、前記主液室と内部が連通し、液体で満たされたベローズとを備えると共に、前記主液室に、前記主液室と前記ベローズとの連通部を摺動するプランジャと、前記プランジャを摺動可能にするアクチュエータとを備え、支持体である振動発生体又は基台の一方に前記ベローズの一端を、他方に前記主液室の一端を接合して、前記振動発生体を前記基台に支持するアクティブマウント装置において、前記ベローズの外側に、少なくとも1つの変形抑制部材を配設し、前記変形抑制部材の一端側を前記主液室と前記支持体のいずれか1つと接合すると共に、他端側を自由にして、前記ベローズの変位を許容する変位許容空間を設けて構成される。
【0016】
この構成によれば、ベローズの周囲にベローズよりも剛性の高い変形抑制部材を設けることで、ベローズが変位方向の力で許容できないような大荷重や衝撃による振動を変形抑制部材が受止めるため、それらの振動によって発生する変動変位から、ベローズを保護することができる。また、ベローズの変位方向以外の方向からの振動なども、変形抑制部材で力を受けとめるように構成しているため、強度的にベローズを保護することができる。この変形抑制部材はベローズと同様の円筒状に形成しベローズの周側面を覆うよう設けることや、板状や棒状に形成してベローズの外周に複数設けることができる。
【0017】
さらに、本発明の発明者が提案した従来のアクティブマウント装置の防振動作を妨げないように、ベローズの変位を許容する変位許容空間を設けたため、その許容された変位によってベローズ内で発生した油圧変動をアクティブにアクチュエータを制御することにより、振動を低減することができる。
【0018】
また、上記のアクティブマウント装置は、前記ベローズの一端に案内部材を設け、前記案内部材を前記ベローズの変位方向への変位では前記変形抑制部材と接触しないように、また、前記ベローズの変位方向以外の方向からの変位では外側面で前記変形抑制部材と接触し、その変位を軽減するように配設して構成される。
【0019】
この構成によれば、案内部材が変形抑制部材の内側に設けたベローズに振動発生体からの振動を伝達することができる。この案内部材はベローズの変位方向以外の方向からの振動による変動変位で力がかかるときに、案内部材の外側面と変形抑制部材とが圧接して、ベローズにかかる力を軽減することができる。
【0020】
加えて、上記のアクティブマウント装置は、前記主液室との間に前記変位許容空間を形成した前記変形抑制部材を備え、前記ベローズと前記主液室との前記連通部を前記案内部材で形成し、前記案内部材の外側面で、前記変形抑制部材と接触するように構成される。この構成によれば、上記と同様の作用効果を得ることができることに加えて、ベローズの一端と変形抑制部材の変位許容空間を形成しない側の端部とを同じ部材上に接合することができる。そのため、上記のアクティブマウント装置に比べて部品点数を少なくすることができる。
【0021】
さらに、上記のアクティブマウント装置は、前記案内部材の外側面にローラガイドを設けて構成される。
【0022】
案内部材と変形抑制部材とが接触すると、ベローズの上下方向の動きを拘束してしまう
。そこで、この構成によれば、案内部材と変形抑制部材との上下方向の接触力が小さくなるためアクティブ制御の性能がさらに発生しやすくすることができる。また、案内部材の上下運動の直動性が向上するため、より円滑にベローズに振動発生体又は基台からの振動を伝えることができる。加えて、ベローズの変位方向に対して斜め方向の変位をローラガイドがベローズの変位方向に変換することができ、より振動発生体からの振動を抑制することができる。
【0023】
上記の問題を解決するための車両は、内燃機関を防振保持するように、上記に記載のアクティブマウント装置を搭載して構成する。この構成によれば、内燃機関からの振動を低減すると共に、大荷重や衝撃に対して、耐久性が高い車両を提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アクティブマウント装置に備えたベローズを、ベローズの許容範囲外の変動変位から保護すると共に、ベローズの変位方向以外の方向からの変動変位からも保護することができるため、振動を低減すると共に、高い耐久性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態のアクティブマウント装置を示した断面図である。
【図2】図1のベローズの変位方向に大きな振動が加わった様子を示した断面図である。
【図3】図1のベローズの変位方向以外の方向から振動が加わった様子を示した断面図である。
【図4】本発明に係る第2の実施の形態のアクティブマウント装置を示した断面図である。
【図5】本発明に係る第3の実施の形態のアクティブマウント装置を示した断面図である。
【図6】本発明に係る第4の実施の形態のアクティブマウント装置を示した断面図である。
【図7】本発明に係る第5の実施の形態のアクティブマウント装置を示した断面図である。
【図8】本発明に係る第6の実施の形態のアクティブマウント装置を示した断面図である。
【図9】従来のアクティブマウント装置を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施の形態のアクティブマウント装置とそれを搭載した車両について、図面を参照しながら説明する。なお、図9に示した従来のアクティブマウント装置1Xと同一の構成及び動作については同一の符号を用いて、その説明を省略する。
【0027】
最初に本発明に係る第1の実施の形態のアクティブマウント装置1について、図1を参照しながら説明する。アクティブマウント装置1はエンジン(振動発生体)2と車体(基台)3との間に配設される。このアクティブマウント装置1は図9の構成に限らない。例えば、ベローズ12は、比較的軟らかく(ばね定数が低い)固有振動数よりもやや高周波で比較的レベルの高い振動に対しても、充分に追随して大きく伸縮させることができればよく、材質などは問わない。また、減衰装置20はプランジャ21を動作させることができればよく、ボイスコイルモータに限定せず、ピエゾアクチュエータなどでもよい。加えて、アキュムレータ30も脈動吸収用で、減衰装置20が動き易くできればよい。このプランジャ21とベローズ12と連通部13の形状は円状に限らずに、多角形状でもよい。さらに制御システム40についても、連通部13にプランジャ21が位置するようにフィ
ードバック制御を行うことができれば、力センサ43の代わりベローズ12内の圧力を検出するセンサを用いてもよい。
【0028】
このアクティブマウント装置1は、図9の構成に加えて、図1に示すように、ラバーマウント(変形抑制部材)14、ガイド(案内部材)15、第1固定プレート16及び第2固定プレート17を備える。また、ラバーマウントの一端と第2固定プレート17との間に変位許容空間18と、ガイド15の外周の面である外側面19を備える。
【0029】
ラバーマウント14をベローズ12よりも剛性の高い部材、好ましくは熱硬化性エラストマーである天然ゴムや合成ゴムからなる弾性体で形成する。このラバーマウント14の形状は円筒状に形成したベローズ12と同様に円筒状に形成され、ベローズ12の外周と接触せずに覆い、ベローズ12を保護している。また、ラバーマウント14を板状や棒状に形成し、ベローズ12の外周に複数個設置し、ベローズ12を保護することもできる。加えて、ラバーマウント14を、ベローズ12を完全に覆うように形成する場合は、ベローズ12の形状に合わせて形成する。ラバーマウント14は上記の構成に限らず、Y方向の大荷重や衝撃などの大きな振動に対して、それによるラバーマウント14の変位が出来るだけベローズ12に伝わらないような剛性を持つ部材であればよい。
【0030】
ガイド15をラバーマウント14とY方向の変位では接触しないように構成する。例えばラバーマウント14を円筒状に形成した場合は、ベローズ12の形状とも合わせて円筒状に形成する。材質を特に限定しないが、好ましくはラバーマウント14と同様に弾性体で形成するとよい。弾性体で形成することで、X方向の変位のときに、ガイド15の外側面19とラバーマウント14とが接触した際に、その変位を互いに吸収することができ、振動を抑制することができる。
【0031】
第1固定プレート16は、自身を介してラバーマウント14とハウジング11とを固定している。このとき第1固定プレート16とラバーマウント14とを加硫接着する。第1固定プレートとハウジング11との固定方法は第1固定プレート16の材質により様々であるが、加硫接着やボルトによる締結などの方法を用いることができる。第2固定プレート17も同様に、自身を介してエンジン2とガイド15とを固定する。
【0032】
変位許容空間18はラバーマウント14を第1固定プレートでハウジング11に固定したときに、固定された端部の反対側の端部と第2固定プレート17との間にできる隙間である。この変位許容空間18の隙間の幅は、ベローズ12がY方向に変位できる最大変位量以下に設定する。好ましくは、ベローズ12が固有振動数よりもやや高周波の比較的レベルの高い振動まで対応ができる変位量に対応する幅に設定する。(より好ましくは、ベローズ12の容積に対して約60%〜約150%の量で変位するように、例えばベローズ12の容積を100ccとすると2cm〜4cmの値の幅に設定する。)
ラバーマウント14とガイド15との間にも、ガイド15がY方向で変位するときに、ガイド15の外側面19がラバーマウント14と接触しない程度の隙間を設ける。
【0033】
次に、上記のアクティブマウント装置1の動作を説明する。エンジン2からの加振により、アクティブマウント装置1にはY方向からの変位が加わる。前述した通り、この変位に対して、アクティブマウント装置は減衰装置20をアクティブに制御することで振動を低減する。
【0034】
始めに、Y方向からアクティブマウント装置1にベローズ12が許容できない変動変位量の振動が加わった場合を、図2を参照しながら説明する。エンジン2からY方向へ大きな力が加わり、ガイド15と第2固定プレート17がY方向の下方に変位する。この力はベローズ12が許容することができない変位量のため、仮にラバーマウント14が無い場
合はベローズ12が極小まで縮み、ベローズ12が破損してしまう。しかし、本発明ではその大きな力をラバーマウント14が受止め、ベローズ12が変位する量を抑制する。
【0035】
この動作によれば、弾性体で形成したラバーマウント14はその変動変位を吸収することができるため、ベローズ12が許容することができない、つまりアクティブに制御することができない大きな振動をラバーマウント14で低減すると共に、ベローズ12をその大きな振動から保護することができる。
【0036】
次に、X方向からアクティブマウント装置1へ振動が加わった場合を、図3を参照しながら説明する。エンジン2からX方向に振動が加わり、ガイド15と第2固定プレート17がX方向の右方に変位する。ベローズ12はY方向のみに変位するものであり、Y方向以外に変位させようとすると破損してしまう。しかし、本発明ではその振動によって、ガイド15の外側面19とラバーマウント14とが接触して、その振動をラバーマウント14で低減することができる。また、X方向の左方に車体3から振動が加わった場合も同様にその振動を低減することができる。この動作は前後方向(図面の表裏方向)の振動にも同様に作用する。
【0037】
この動作によれば、ベローズ12の変位方向(Y方向)以外の方向(X方向や図面の表裏方向など)からの振動を、ガイド15の外側面19とラバーマウント14とが接触することで、低減すると共に、ベローズ12をその振動から保護することができる。
【0038】
これらの動作によって、ベローズ12の変位方向であるY方向にベローズ12が許容することができない振動や、変位方向以外の方向の振動からベローズ12を保護することができるため、アクティブマウント装置1の耐久性を向上することができる。加えて、それらの振動をラバーマウント14で低減するため、アクティブマウント装置1が対応することができる振動の幅を大きくすることができる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施の形態のアクティブマウント装置50について図4を参照しながら説明する。減衰装置20、アキュムレータ30及び制御システム40は上記のアクティブマウント装置1と構成及び動作が同様のため、説明を省略する。
【0040】
アクティブマウント装置50は、ハウジング(主液室)51、ベローズ52、連通部53、ラバーマウント(変形抑制部材)54、ガイド(案内部材)55及び固定プレート56を備える。また、ラバーマウント54の一端部とハウジング51との間に変位許容空間57と、ガイド55の外周である外側面58とを備える。
【0041】
ガイド55をベローズ52と同様の形状に形成し、ガイド55を介してハウジング51とベローズ52とを接合する。連通部53はガイド55の近傍を示す。固定プレート56には、ベローズ52とラバーマウント55とを接合する。固定プレート56とラバーマウント55とを加硫接着により接合する。
【0042】
上記のアクティブマウント装置50の動作を説明する。エンジン2から加振されると、固定プレート56がY方向の下方に変位する。そして、ベローズ52内部で油圧変動が起こり、その油圧変動を減衰装置20のアクティブ制御によって低減する。Y方向の大きな振動に対しては、前述と同様にラバーマウント55で受止めることで、振動を低減すると共に、ベローズ52を保護する。ベローズ52の変位方向以外の方向の振動に対しては、ガイド55の外側面57とラバーマウント54とが接触することで、その振動からベローズ52を保護する。
【0043】
上記の動作によれば、前述と同様の作用効果を得ることができることに加えて、第1の
実施の形態のアクティブマウント装置1と比べると、固定プレートの数を固定プレート55の1枚とすることができ、部品点数を減らすことができる。
【0044】
次に、本発明の第3の実施の形態のアクティブマウント装置60について図5を参照しながら説明する。これまで説明したアクティブマウント装置1のガイド15の外側面19にローラガイド61を設ける。このローラガイド61は一面を外側面19に固定し、もう一面をラバーマウント14に固定する。そして、内部に設けたボールやローラなどの転動によって、ガイド15をY方向の上下に直動させることができる。
【0045】
ラバーマウント14とガイド15の外側面19とが圧接すると、ベローズ12の上下方向の動きを拘束してしまう。そこで、上記の構成によれば、ラバーマウント14とガイド15の外側面19との上下方向の接触力が小さくなるためより、アクティブ制御の性能が発生しやすくできる。また、ベローズ12の変位方向であるY方向に対して、傾きをもった方向(図面の斜め方向)からの振動をアクティブマウント装置60が受けると、その斜め方向の振動をY方向の振動に分解し、アクティブに制御することができるので、より振動を低減することができる。その他の構成は及びその動作は前述と同様であるため、第2の実施の形態にも適用することができる。
【0046】
次に、本発明の第4の実施の形態のアクティブマウント装置70について図6を参照しながら説明する。上記で説明したアクティブマウント装置1は、エンジン2と車体3との間にハウジング11とベローズ12とが直列に配置されていたが、このアクティブマウント装置70は、ハウジング71とベローズ72を油圧変動がL字になるように配置する。L字に配置することによって、アクティブマウント装置70の高さを低くすることができる。そのため、エンジン2と車体3との間隔を狭めることができ、エンジン2を含めた配置スペースを小さくすることができる。ハウジング71とベローズ72の配置がL字型になるだけで、その他の構成は同じになり、その動作も同様であるため、第2及び第3の実施の形態にも適用することができる。
【0047】
次に、本発明の第5の実施の形態のアクティブマウント装置80について図7を参照しながら説明する。なおアキュムレータについては図示していないが、実際は上記の構成同様に設けてある。アクティブマウント装置80を傾斜した車体3に配置し、ハウジング81を角型断面で形成する。ベローズ12の変位方向の面を車体3と接合していた変わりに、ベローズ12の変位方向と直交する方向の面を車体3と接合する。また、ハウジング11の一側面にボール、ローラ等を用いたスライド機構82を介してL字型に形成されたスライド部材83を移動自在に取り付ける。このスライド部材83の一端には、ベローズ12に加振するガイド15を固着する。
【0048】
エンジン2による振動変位により、スライド機構82によってスライド部材83が図面の斜め方向にスライドし、アクティブマウント装置80に振動変位を加える。振動変位が加わったアクティブマウント装置80の動作は前述した動作と同様である。
【0049】
この動作によれば、前述と同様の作用効果を得ることができることに加えて、このアクティブマウント装置80を対にして対称に配置することにより、ハウジング81によってエンジン2の重量を支えることができ、重いエンジン2を支持してもアクティブマウント装置80にはエンジン2の重量が入力されない。一方、スライド部材83がスライド自在とされているので、アクティブマウント装置80にはエンジン2からの起振力のみが入力されるので、アクティブマウント装置80を小型化することができる。加えて、この構成は、第2〜第4の実施の形態にも適用することができる。
【0050】
次に、本発明の第6の実施の形態のアクティブマウント装置90について図8を参照し
ながら説明する。第2固定プレート17にラバーマウント用ガイド91を設ける。第2固定プレート17とラバーマウント用ガイド91とは一体に形成してもよい。また、ラバーマウント用ガイド91とラバーマウント14との間にはベローズ12の変位方向である、Y方向の変動変位するときに両者が接触しないように隙間を設ける。一方、隙間を設けずにローラガイドを設けてもよい。
【0051】
図8の構成によれば、ラバーマウント14の直動性を高めることができる。また、ベローズ12の変位方向以外の方向からの変動変位に対して、ガイド15の外側面とラバーマウント14の内側面とが接触すると共に、ラバーマウント用ガイド91とラバーマウント14の外側面とも接触するため、よりその変動変位を抑制することができる。そのため、ベローズ12の保護性が高まり、耐久性を上げることができる。加えて、この構成は第2〜第5の実施の形態にも適用することができる。
【0052】
上記のアクティブマウント装置1、50、60、70、80及び90を搭載し、エンジン2を防振支持された車両は、エンジン2の振動を低減すると共に、振動に対する耐久性を上げることができる。
【0053】
また、上記のアクティブマウント装置1、50、60、70、80及び90はエンジン2などの内燃機関を支持することに限らず、振動を発生する振動発生体を、振動発生体を支持する基台に固定するマウント装置すべてに適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のアクティブマウント装置は、ベローズを大きな振動や変位方向以外の方向からの振動から保護し、振動を低減すると共に、高い耐久性を実現することができるため、特に筒内圧力が高くエンジントルク変動も大きいディーゼルエンジンを搭載したトラックなどの車両に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1、50、60、70、80、90 アクティブマウント装置
11、51、71、81 ハウジング(主液室)
12、52 ベローズ
13、53 連通部
14、54 ラバーマウント(変形抑制部材)
15、55 ガイド(案内部材)
16 第1固定プレート
17 第2固定プレート
18、28 変位許容空間
19 外側面
20 減衰装置
30 アキュムレータ
40 制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主液室と、前記主液室と内部が連通し、液体で満たされたベローズとを備えると共に、前記主液室に、前記主液室と前記ベローズとの連通部を摺動するプランジャと、前記プランジャを摺動可能にするアクチュエータとを備え、支持体である振動発生体又は基台の一方に前記ベローズの一端を、他方に前記主液室の一端を接合して、前記振動発生体を前記基台に支持したアクティブマウント装置において、
前記ベローズの外側に、少なくとも1つの変形抑制部材を配設し、前記変形抑制部材の一端側を前記主液室と前記支持体のいずれか1つと接合すると共に、他端側を自由にして、前記ベローズの変位を許容する変位許容空間を設けることを特徴とするアクティブマウント装置。
【請求項2】
前記ベローズの一端に案内部材を設け、前記案内部材を前記ベローズの変位方向への変位では前記変形抑制部材と接触しないように、また、前記ベローズの変位方向以外の方向からの変位では外側面で前記変形抑制部材と接触し、その変位を軽減するように配設することを特徴とする請求項1に記載のアクティブマウント装置。
【請求項3】
前記主液室との間に前記変位許容空間を形成した前記変形抑制部材を備え、前記ベローズと前記主液室との前記連通部を前記案内部材で形成し、前記案内部材の外側面で、前記変形抑制部材と接触するように構成することを特徴とする請求項2に記載のアクティブマウント装置。
【請求項4】
前記案内部材の外側面にローラガイドを設けた請求項2又は3に記載のアクティブマウント装置。
【請求項5】
内燃機関を車体に防振支持する請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクティブマウント装置を搭載することを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−251634(P2012−251634A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126197(P2011−126197)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】