説明

アクティブ駆動型有機EL表示装置

【課題】有機EL素子の下部電極と、TFTのドレイン領域との間を容易に電気接続することができるアクティブ駆動型有機EL表示装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】有機EL素子と、TFTと、を具備したアクティブ駆動型有機EL表示装置において、有機EL素子の下部電極と、TFTとの間に、非結晶性導電酸化物からなる電気接続部材を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アクティブ駆動型有機EL表示装置(以下、有機EL表示装置と称する場合がある。)、およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、発光制御用の薄膜トランジスタ(以下、TFTと称する場合がある。)を備えたアクティブ駆動型有機EL表示装置、およびその製造方法に関する。
なお、本願明細書の特許請求の範囲等に記載している「EL」は、「エレクトロルミネッセンス」を省略表記したものである。
【背景技術】
【0002】
従来、陽極層および陰極層の間に有機発光層を挟持して構成した有機EL素子を、XYマトリックス状に配置した電極構造により駆動させる単純駆動型アクティブ駆動型有機EL表示装置が知られており、例えば、特許文献1や、特許文献2に開示されている。
このような単純駆動型有機EL表示装置では、いわゆる線順次駆動を行うので、走査線数が数百本ある場合には、要求される瞬間輝度が、観察輝度の数百倍となり、結果として、以下のような問題が生じていた。
(1)駆動電圧が、直流定常電圧の場合の2〜3倍以上と高くなるため、発光効率が低下したり、消費電力が大きくなる。
(2)瞬間的に流れる電流量が数百倍となるため、有機発光層が劣化しやすい。
(3)(2)と同様に、電流量が非常に大きいため、電極配線における電圧降下が大きくなる。
【0003】
そのため、単純駆動型有機EL表示装置の有する問題点を解決すべく、薄膜トランジスタ(TFT,thin film transistor)を備えて、有機EL素子を駆動させる各種のアクティブ駆動型有機EL表示装置が提案されている。
このようなアクティブ駆動型有機EL表示装置の構造例を図18に示すが、単純駆動型有機EL表示装置と比較して、駆動電圧が大幅に低電圧化し、発光効率が向上し、しかも、消費電力が低減できる等の効果を得ることができる。
しかしながら、このようなアクティブ駆動型有機EL表示装置204においても、有機EL素子202と、TFT200との間を電気接続しようとしても、接続信頼性や耐湿性等に乏しいという問題が見られた。
例えば、電気接続部材として、アルミニウムやクロム等の金属薄膜を用いて電気接続することが提案されているが、有機EL素子202の透明電極209と、電気接続部材との間で容易に剥離したり、あるいは、周囲の水分により電気接続部材が腐食したり、さらには、マイグレーションが生じてリーク電流が発生するなどの問題が見られた。なお、図18上、透明電極209と、電気接続部材とを一体的に表示してある。
【0004】
また、特許文献3や、特許文献4には、図19に示すように、有機EL素子126と、TFT137とを具備するとともに、これらの部材126、137を電気接続するための複合材料からなる電気接続部材128を有するアクティブ駆動型有機EL表示装置100が開示されている。
すなわち、複合材料からなる電気接続部材128として、下層150の低抵抗材料からなる金属薄膜と、上層151の耐食性に優れた窒化チタン薄膜とから構成された電気接続部材128が開示されており、アルミニウム/窒化チタン、タングステン/窒化チタン、またはモリブテン/窒化チタン等からなるバリアメタルが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−37385号公報
【特許文献2】特開平3−233891号公報
【特許文献3】特開平8−330600号公報
【特許文献4】特開平10−254383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3や、特許文献4に開示された電気接続部材128は、下層150の金属薄膜と、上層151の窒化チタン薄膜とを正確に重ね合わせて形成しなければならず、エッチング精度が乏しくなったり、製造工程数が多くなるなどの製造上の問題が見られた。
また、電気接続部材128として、金属薄膜および窒化チタン薄膜からなるバリアメタルを用いたとしても、当該バリアメタルの、有機EL素子126の透明電極122に対する接続信頼性が、未だ乏しいという問題も見られた。
【0007】
そこで、本発明の発明者らは上記問題を鋭意検討したところ、有機EL素子と、TFTとの間の電気接続部材を、特定の酸化物から構成することにより、上述した問題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、有機EL素子とTFTとの間の電気接続部材を非結晶性導電酸化物から構成することにより、製造が容易であり、しかも有機EL素子の透明電極との接続信頼性に優れたアクティブ駆動型有機EL表示装置、およびこのようなアクティブ駆動型有機EL表示装置が効率的に得られる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上部電極および下部電極の間に有機発光媒体を挟持して構成した有機EL素子と、当該有機EL素子の発光制御用のTFTと、を具備したアクティブ駆動型有機EL表示装置であり、有機EL素子と、薄膜トランジスタとの間に、非結晶性導電酸化物からなる電気接続部材を設けたアクティブ駆動型有機EL表示装置が提供される。
このように有機EL表示装置を構成することにより、非結晶性導電酸化物が有する良好な耐湿性や耐熱性の特性を生かして、有機EL素子と、TFTとの間で、良好な接続信頼性を得ることができる。
また、非結晶性導電酸化物は、エッチング特性に優れるとともに、有機酸等を用いてもエッチングが可能であることから、高精細の電気接続部材を容易に設けることができる。
【0009】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL表示装置を構成するにあたり、上部電極および下部電極のいずれか一方の電極が、インジウム亜鉛酸化物(IZO)あるいはインジウムスズ酸化物(ITO)から構成してあることが好ましい。
このように構成すると、上部電極あるいは下部電極と、非結晶性導電酸化物、例えば、インジウム亜鉛酸化物(IZO)からなる電気接続部材との電気接続性がより良好となる。
【0010】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL表示装置を構成するにあたり、非結晶性導電酸化物の比抵抗を1×10-3Ω・cm以下の値とすることが好ましい。
このように構成すると、電気接続部材に使用可能な構成材料の種類が過度に制限されることもなく、また、抵抗損失も少なくなる。
【0011】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL表示装置を構成するにあたり、非結晶性導電酸化物が、ドーパントを含むことが好ましい。
このように構成することにより、電気接続部材の導電率の調整がより容易になる。
【0012】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL表示装置を構成するにあたり、上部電極および下部電極あるいは陰極層のいずれか一方と、電気接続部材とが、非結晶性導電酸化物、例えば、インジウム亜鉛酸化物(IZO)により一体的に形成してあることが好ましい。
このように構成すると、より優れた電気接続性が得られ、しかも形成が容易となるばかりか、電気接続箇所の数を減少することができる。
【0013】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL表示装置を構成するにあたり、電気接続部材の少なくとも一部に、メタライズ部が設けてあることが好ましい。
このように構成すると、有機EL素子、およびTFTにおけるそれぞれの電気接続部材での接続抵抗を、より低抵抗化することができる。
【0014】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL表示装置を構成するにあたり、電気接続部材の厚さを0.01〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成すると電気接続部材での抵抗損失を少なくできるとともに、所定の耐久性や均一な成膜性を得ることができる。
【0015】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL表示装置を構成するにあたり、有機EL素子のEL発光側に、蛍光媒体およびカラーフィルタ、あるいはいずれか一方の色変換媒体を有することが好ましい。
このように構成することにより、外部に取り出した発光をカラーフィルター又は蛍光媒体で色変換して、フルカラー表示を行うことができる。
【0016】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL表示装置を構成するにあたり、色変換媒体が、支持基板内に埋設してあることが好ましい。
このように構成すると、色変換媒体の固定が容易となるばかりか、TFTの接続箇所と、有機EL素子との接続箇所との段差を少なくすることができるため、より優れた電気接続性を得ることができる。
【0017】
また、本発明の別の態様は、上部電極および下部電極の間に有機発光媒体を挟持して構成した有機EL素子と、この有機EL素子の発光制御用のTFTと、これらの有機EL素子およびTFTの間を電気接続するための電気接続部材と、を具備したアクティブ駆動型有機EL表示装置の製造方法であり、
TFTを形成する工程と、
非結晶性導電酸化物からなる電気接続部材を形成する工程と、
有機EL素子を形成する工程と、
を含むことを特徴としている。
このように実施すると、有機EL表示装置において、良好な接続信頼性を有し、かつ、精度に優れた電気接続部材を形成することができる。
【0018】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、下部電極と、電気接続部材とを、非結晶性導電酸化物を用いて一体的に形成することが好ましい。
このように実施すると、電気接続部材を容易かつ短時間で形成することができるとともに、電気接続箇所を減少させることができる。
【0019】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、電気接続部材を、スパッタリング法により形成することが好ましい。
このように実施することにより、非結晶性導電酸化物からなる電気接続部材を容易かつ精度良く形成することができる。
【0020】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、電気接続部材を、ゾル−ゲル法により形成することが好ましい。
このように実施することにより、非結晶性導電酸化物からなる電気接続部材を塗布および比較的低温加熱により容易に形成することができる。
【0021】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、電気接続部材を、有機酸によりエッチングして形成することが好ましい。
このように実施することにより、TFTや有機EL素子の一部にAlやCrを使用している場合であっても、当該AlやCrを侵すことなく、非結晶性導電酸化物のみをエッチングすることができる。
【0022】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、電気接続部材の少なくとも一部を、メタライズ化する工程を含むことが好ましい。
このように実施することにより、電気接続箇所でのさらなる低抵抗化や、優れた接続信頼性を有するアクティブ駆動型有機EL表示装置を効率的に得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のアクティブ駆動型有機EL表示装置によれば、電気接続部材を非結晶性導電酸化物から構成することにより、有機EL素子の下部電極と、TFTのドレイン領域との間を容易に、しかも高い接続信頼性で電気接続することが可能になった。
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL表示装置の製造方法によれば、このようなアクティブ駆動型有機EL表示装置を効率的に得ることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態におけるアクティブ駆動型有機EL表示装置の断面図である。
【図2】下部電極の構造例を示す図である。
【図3】薄膜トランジスタ(TFT)の構造を説明するために供する図である。
【図4】TFTを含む電気スイッチ接続構造を示す回路図である。
【図5】TFTを含む電気スイッチ接続構造を示す平面透視図である。
【図6】インジウム亜鉛酸化物(IZO)のX線回折チャートの一例を示す図である。
【図7】電気接続部材の変形例(ビアホール)を示す図である。
【図8】電気接続部材の変形例(メタライズ)を示す図である。
【図9】第2の実施形態におけるアクティブ駆動型有機EL表示装置の断面図である。
【図10】斜行部材を説明するために供する図である。
【図11】第3の実施形態におけるアクティブ駆動型有機EL表示装置の断面図である。
【図12】TFTの位置調節層を説明するために供する図である。
【図13】TFTの形成工程の一部を示す図である。
【図14】第4の実施形態におけるアクティブ駆動型有機EL表示装置の製造工程図である(その1)。
【図15】第4の実施形態におけるアクティブ駆動型有機EL表示装置の製造工程図である(その2)。
【図16】電気接続部材の変形例(一体成形)を示す図である。
【図17】電気接続部材のエッチング工程を示す図である。
【図18】従来のアクティブ駆動型有機EL表示装置の断面図である(その1)。
【図19】従来のアクティブ駆動型有機EL表示装置の断面図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、参照する図面は、この発明が理解できる程度に各構成成分の大きさ、形状および配置関係を概略的に示してあるに過ぎない。したがって、この発明は図示例にのみ限定されるものではない。また、図面では、断面を表すハッチングを省略する場合がある。
【0026】
[第1の実施形態]
第1の実施形態の有機EL表示装置は、図1に示すように、
支持基板10と、
この支持基板10上の電気絶縁膜12(ゲート絶縁膜を兼ねる。)に埋設されたTFT14と、
このTFT14上に形成された層間絶縁膜(平坦化膜)13と、
この層間絶縁膜13上に形成された有機EL素子26と、
この有機EL素子26の発光面側に設けられた色変換媒体60と、
さらに、これらのTFT14および有機EL素子26を電気接続するための非結晶性導電酸化物からなる電気接続部材28と、
を備えた有機EL表示装置30である。
以下、第1の実施形態において、図1等を適宜参照しながら、その構成要素等について説明する。
【0027】
1.支持基板
有機EL表示装置における支持基板(以下、基板と称する場合がある。)は、有機EL素子や、TFT等を支持するための部材であり、そのため機械的強度や、寸法安定性に優れていることが好ましい。
このような基板としては、具体的には、ガラス板、金属板、セラミックス板、あるいはプラスチック板(ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等)等を挙げることができる。
【0028】
また、これらの材料からなる基板は、有機EL表示装置内への水分の侵入を避けるために、さらに無機膜を形成したり、フッ素樹脂を塗布することにより、防湿処理や疎水性処理を施してあることが好ましい。
特に、有機発光媒体への水分の侵入を避けるために、基板における含水率およびガス透過係数を小さくすることが好ましい。具体的に、支持基板の含水率を0.0001重量%以下の値およびガス透過係数を1×10-13cc・cm/cm2・sec.cmHg以下の値とすることがそれぞれ好ましい。
なお、第1の実施形態では、基板と反対側、すなわち、上部電極側からEL発光を取り出すため、基板は必ずしも透明性を有する必要はない。
【0029】
2.有機EL素子
(1)有機発光媒体
有機発光媒体は、電子と正孔とが再結合して、EL発光が可能な有機発光層を含む媒体と定義することができる。かかる有機発光媒体は、例えば、下部電極上に、以下の各層を積層して構成することができる。
[1]有機発光層
[2]正孔注入層/有機発光層
[3]有機発光層/電子注入層
[4]正孔注入層/有機発光層/電子注入層
[5]有機半導体層/有機発光層
[6]有機半導体層/電子障壁層/有機発光層
[7]正孔注入層/有機発光層/付着改善層
これらの中で、[4]の構成が、より高い発光輝度が得られ、耐久性にも優れていることから通常好ましく用いられる。
【0030】
a.構成材料
有機発光媒体における発光材料としては、例えば、p−クオーターフェニル誘導体、p−クィンクフェニル誘導体、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、金属キレート化オキシノイド化合物、オキサジアゾール系化合物、スチリルベンゼン系化合物、ジスチリルピラジン誘導体、ブタジエン系化合物、ナフタルイミド化合物、ペリレン誘導体、アルダジン誘導体、ピラジリン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピロロピロール誘導体、スチリルアミン誘導体、クマリン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、8−キノリノール誘導体を配位子とする金属錯体、ポリフェニル系化合物等の1種単独または2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0031】
また、これらの有機発光材料のうち、芳香族ジメチリディン系化合物としての、4,4´−ビス(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル(DTBPBBiと略記する。)や、4,4´−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBiと略記する。)、およびこれらの誘導体がより好ましい。
さらに、ジスチリルアリーレン骨格等を有する有機発光材料をホスト材料とし、当該ホスト材料に、ドーパントとしての青色から赤色までの強い蛍光色素、例えばクマリン系材料、あるいはホストと同様の蛍光色素をドープした材料を併用することも好適である。より具体的には、ホスト材料として、上述したDPVBi等を用い、ドーパントとして、N,N−ジフェニルアミノベンゼン(DPAVBと略記する。)等を用いることが好ましい。
【0032】
b.厚さ
また、有機発光媒体の厚さについては特に制限はないが、例えば、厚さを5nm〜5μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、有機発光媒体の厚さが5nm未満となると、発光輝度や耐久性が低下する場合があり、一方、有機発光媒体の厚さが5μmを超えると、印加電圧の値が高くなる場合があるためである。
したがって、有機発光媒体の厚さを10nm〜3μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20nm〜1μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0033】
(2)電極
以下、上部電極および下部電極について説明する。ただし、有機EL素子の構成に対応して、これらの上部電極および下部電極が、陽極層および陰極層に該当したり、あるいは、陰極層および陽極層に該当する場合がある。
【0034】
a.下部電極
下部電極は、有機EL表示装置の構成に応じて陽極層あるいは陰極層に該当するが、例えば、陽極層に該当する場合には、仕事関数の大きい(例えば、4.0eV以上)金属、合金、電気電導性化合物またはこれらの混合物を使用することが好ましい。具体的に、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、ヨウ化銅(CuI)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、金、白金、パラジウム等の電極材料を単独で使用するか、あるいはこれらの電極材料を2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
これらの電極材料を使用することにより、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法、CVD法(Chemical Vapor Deposition)、MOCVD法(Metal Oxide Chemical Vapor Deposition)、プラズマCVD法(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)等の乾燥状態での成膜が可能な方法を用いて、均一な厚さを有する下部電極を形成することができる。
なお、下部電極側からEL発光を取り出す場合には、当該下部電極を透明電極とする必要がある。その場合、例えば、ITO、IZO、CuIn、SnO,ZnO等の透明導電性材料を使用して、EL発光の透過率を70%以上の値とすることが好ましい。
【0035】
また、下部電極の膜厚も特に制限されるものではないが、例えば、10〜1000nmの範囲内の値とするのが好ましく、10〜200nmの範囲内の値とするのがより好ましい。
この理由は、下部電極の膜厚をこのような範囲内の値とすることにより、例えば、導電性があり、かつ、70%以上のEL発光の透過率を得ることができるためである。
【0036】
b.上部電極
一方、上部電極についても、有機EL表示装置の構成に対応して陽極層あるいは陰極層に該当するが、例えば、陰極層に該当する場合には、陽極層と比較して、仕事関数の小さい(例えば、4.0eV未満)金属、合金、電気電導性化合物またはこれらの混合物あるいは含有物を使用することが好ましい。
具体的には、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、セシウム、マグネシウム、リチウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウム−リチウム合金、インジウム、希土類金属、これらの金属と有機発光媒体材料との混合物、およびこれらの金属と電子注入層材料との混合物等からなる電極材料を単独で使用するか、あるいはこれらの電極材料を2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0037】
また、上部電極の膜厚についても、特に制限されるものではないが、具体的に10〜1,000nmの範囲内の値とするのが好ましく、10〜200nmの範囲内の値とするのがより好ましい。
この理由は、上部電極の膜厚をこのような範囲内の値とすることにより、導電性があり、かつ、10%以上のEL発光の透過率を得ることができ、より好ましくは70%以上のEL発光の透過率を得ることができるためである。
【0038】
c.構造1
また、下部電極22の構造を、図2(a)、および(b)に示すように、先端部29を分岐させたり、穴開き円形としたり、あるいは、図2(c)、および(d)に示すように、先端部29に垂直方向の窪みや、凹凸構造を設けることが好ましい。
このように構成すると、下部電極に対する電気接続部材28の密着性を向上させることができるとともに、電気接続部材の接触面積が大きくなり、接続抵抗を有効に低下させることができる。
なお、図2(a)〜(d)において、電気接続部材の接続位置が理解可能なように、点線で電気接続部材28を示してある。また、この接続構造は、この場合の逆の構造、すなわち、図2において、電気接続部材の先端を実線部分とし、下部電極を点線で示す部分としてもよい。
その他、図示はしないが、下部電極と、電気接続部材との間の接続抵抗をさらに低下するために、下部電極の一部にメタライズ部やバンプを設けることも好ましい。
【0039】
d.構造2
一方、上部電極20は、図1に示すように、透明性導電材料からなる主電極16と、低抵抗材料からなる補助電極18とから構成することが好ましい。
このように構成することにより、上部電極20側からEL発光を取り出した場合であっても、補助電極18により上部電極20の面抵抗を低下させることができる。また、上部電極20側からEL発光を取り出すことができるため、TFTを設けた場合であっても開口率を大きくすることができる。
さらには、このように構成することにより、TFTの配置が容易になるため、有機発光媒体に流れる電流密度が低減でき、結果として、有機発光媒体の寿命を著しく伸ばすことができる。
【0040】
(3)層間絶縁膜
第1の実施形態の有機EL表示装置における層間絶縁膜は、有機EL素子およびTFTの近傍または周辺に存在し、主に、蛍光媒体またはカラーフィルタの凹凸を平坦化して、有機EL素子の下部電極を形成する際の平坦化された下地として使用される。また、層間絶縁膜は、高精細な配線材料を形成するための電気絶縁、有機EL素子の下部電極と上部電極との間の電気絶縁(短絡防止)、TFTの電気絶縁や機械的保護、さらには、TFTと有機EL素子との間の電気絶縁等を目的として用いられる。
したがって、第1の実施形態において、層間絶縁膜は、必要に応じて、平坦化膜、電気絶縁膜、隔壁、スぺーサー、斜行部材等の名称で呼ぶ場合があり、本発明では、いずれをも包含するものである。
【0041】
a.構成材料
層間絶縁膜に用いられる構成材料としては、通常、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、環状ポリオレフィン、ノボラック樹脂、ポリケイ皮酸ビニル、環化ゴム、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0042】
また、層間絶縁膜を無機酸化物から構成する場合、好ましい無機酸化物として、酸化ケイ素(SiO2またはSiOx)、酸化アルミニウム(Al23またはAlOx)酸化チタン(TiO2)、酸化イットリウム(Y23またはYOx)、酸化ゲルマニウム(GeO2またはGeOx)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgOまたはMgOx)、酸化カルシウム(CaO)、ほう酸(B23)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化鉛(PbO)、ジルコニア(ZrO2)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化リチウム(Li2O)、酸化カリウム(K2O)等を挙げることができる。なお、無機酸化物を表す構造式中のxは、1〜3の範囲内の値である。
また、特に耐熱性が要求される場合には、これらの層間絶縁膜の構成材料のうち、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド、環状ポリオレフィン、エポキシ樹脂、無機酸化物を使用することが好ましい。
なお、これらの層間絶縁膜は、感光性基を導入してフォトリソグラフィー法で所望のパターンに加工するか、印刷手法にて所望のパターンに形成することが好ましい。
【0043】
b.層間絶縁膜の厚さ等
層間絶縁膜の厚さは、表示の精細度、有機EL素子と組み合わせられる蛍光媒体またはカラーフィルタの凹凸にもよるが、好ましくは10nm〜1mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、蛍光媒体またはカラーフィルタの凹凸を十分に平坦化できるとともに、高精細表示の視野角依存性を低減することができるためである。
したがって、層間絶縁膜の厚さを100nm〜100μmの範囲内の値とすることがより好ましく、100nm〜10μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0044】
c.形成方法
層間絶縁膜の形成方法は特に制限されるものではないが、例えば、スピンコート法、キャスト法、スクリーン印刷法等の方法を用いて成膜するか、あるいは、スパッタリング法、蒸着法、化学蒸着法(CVD法)、イオンプレーティング法等の方法で成膜することが好ましい。
【0045】
3.薄膜トランジスタ(TFT)
(1)構成
第1の実施形態における有機EL表示装置の実施形態(変形例を含む。)は、図1および図3〜図5に示すように、基板10上に、少なくとも一つのTFT14と、このTFT14により駆動される有機EL素子26とを有している。
また、このTFT14と、有機EL素子26の下部電極22との間には、平坦化された層間絶縁膜13が配設してあり、かつTFT14のドレイン47と、有機EL素子26の下部電極22とが、層間絶縁膜13に設けられた非結晶性導電無機酸化物からなるコンタクトホール54を介して電気的に接続されている。
【0046】
また、図4の回路図が示すように、TFT14には、XYマトリックス状に配設された複数(n本、nは、例えば1〜1、000の範囲内の値)の走査電極線(Yj〜Yj+n)50と信号電極線(Xi〜Xi+n)51が電気接続されており、さらに、この信号電極線51に対して平行に設けられた共通電極線(Ci〜Ci+n)52が、TFT14に電気接続してある。
そして、これらの電極線50、51、52が、TFT14に電気接続されており、コンデンサー57とともに、有機EL素子26を駆動させるための電気スイッチを構成していることが好ましい。すなわち、かかる電気スイッチは、走査電極線50および信号電極線51等に電気接続されているとともに、例えば、1個以上の第1のトランジスタ(以下、Tr1と称する場合がある。)55と、第2のトランジスタ(以下、Tr2と称する場合がある。)56と、コンデンサー57とから構成してあることが好ましい。
なお、第1のトランジスタ55は、発光画素を選択する機能を有し、第2のトランジスタ56は、有機EL素子を駆動する機能を有していることが好ましい。
【0047】
また、図3に示すように、第1のトランジスタ(Tr1)55および第2のトランジスタ(Tr2)56の活性層44は、n型にドーピングされた半導体領域45、47、およびドーピングされていない半導体領域46から構成されており、n+/i/n+と表すことができる。
そして、n型にドーピングされた半導体領域が、それぞれソース45およびドレイン47となり、ドーピングされていない半導体領域の上方にゲート酸化膜12を介して設けられたゲート43とともに、全体として、トランジスタ55、56を構成することになる。
【0048】
なお、活性層44において、n型にドーピングされた半導体領域45、47を、n型の代わりにp型にドーピングして、p+/i/p+とした構成であっても良い。また、第1のトランジスタ(Tr1)55および第2のトランジスタ(Tr2)56の活性層44は、ポリシリコン等の無機半導体や、チオフェンオリゴマー、ポリ(p−フェニレンビニレン)等の有機半導体から構成してあることが好ましい。特に、ポリシリコンは、アモルファスSi(α−Si)に比べて、通電に対し充分な安定性を示すことから、好ましい材料である。
【0049】
(2)駆動方法
次ぎに、TFTによる有機EL素子の駆動方法につき説明する。
TFTは、図4に示す回路図のように、第1のトランジスタ(Tr1)55および第2のトランジスタ(Tr2)56を含んでいるととともに、電気スイッチを構成していることが好ましい。
すなわち、このように電気スイッチを構成することにより、XYマトリックスの電極を介して走査信号パルスおよび信号パルスを入力し、スイッチ動作を行わせることにより、有機EL素子26を駆動させることができる。
より具体的に言えば、電気スイッチにより、有機EL素子26を発光させたり、あるいは発光を停止させることにより、画像表示を行うことが可能である。
【0050】
このように電気スイッチによって有機EL素子26を駆動させるに際し、走査電極線(ゲート線と称する場合がある。)(Yj〜Yj+n)50を介して伝達される走査パルスと、信号電極線(Xi〜Xi+n)51を介して伝達される走査パルスによって、所望の第1のトランジスタ(Tr1)55が選択され、共通電極線(Ci〜Ci+n)52と第1のトランジスタ(Tr1)55のソース45との間に形成してあるコンデンサー57に所定の電荷が充電されることになる。
これにより第2のトランジスタ(Tr2)56のゲート電圧が一定値となり、第2のトランジスタ(Tr2)56はON状態となる。そして、このON状態において、次にゲートパルスが伝達されるまでゲート電圧がホールドされるため、第2のトランジスタ(Tr2)56のドレイン47に接続されている有機EL素子26の下部電極22に電流を供給しつづけることになる。
したがって、供給された電流により、有機EL素子26を駆動することが可能になり、有機EL素子26の駆動電圧を大幅に低下させるとともに、発光効率が向上し、しかも、消費電力を低減することができるようになる。
【0051】
4.電気接続部材
(1)構成材料
a.種類1
第1の実施形態では、電気接続部材を非結晶性導電酸化物から構成することを特徴としている。
すなわち、緻密な非結晶性導電酸化物が有する優れた耐湿性や、耐熱性等の特性をいかして、有機EL素子と、TFTとの間の良好な電気接続を得ることができる。
また、非結晶性導電酸化物が有する優れたエッチング特性をいかして、優れた精度を有する電気接続部材を容易に形成することができる。
【0052】
また、第1の実施形態では、電気接続部材の構成材料の結晶構造をアモルファス(非結晶)とすることが必要である。
この理由は、かかる構成材料を非結晶とすることにより、エッチング特性が飛躍的に向上し、高精細な電極ピッチを形成することができるためである。
ただし、電気接続部材の構成材料の全体量を100重量%としたときに、一部結晶構造を含むことも可能であるが、その場合であっても結晶構造の含有量を3重量%以下の値とすることが好ましく、1重量%以下の値とすることがより好ましく、0.5重量%以下の値とすることがさらに好ましい。
また、電気接続部材の構成材料における非結晶性は、後述する真空蒸着法やスパッタリング法の条件(ターゲットの種類を含む。)、あるいは、添加するドーパントの種類や添加量を調整することにより、容易に制御することができる。そして、かかる構成材料の非結晶性は、X線回折構造を測定することにより確認することができる。
例えば、図6に、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のX線回折チャート例を示すが、このように2θが5°〜60°において結晶ピークが観察されないことから、電気接続部材の構成材料が非結晶であることが確認できる。
【0053】
b.種類2
また、好ましい非結晶性導電酸化物の具体例としては、インジウム亜鉛酸化物(IZO)やインジウムスズ酸化物(ITO)等が挙げられる。これらのうち、特に幅広い焼結温度、例えば100〜700℃の焼結温度において、非結晶性とすることができるとともに、得られた薄膜の耐湿性が優れていることから、インジウム亜鉛酸化物であることが好ましい。
また、このような非結晶性導電酸化物をゾル−ゲル法で作製する場合には、酢酸インジウム、酢酸亜鉛等のカルボン酸塩、塩化インジウム、塩化亜鉛等の塩化物、インジウムエトキシド、亜鉛エトキシド等のアルコキシ化合物を原料化合物とすることが好ましい。
なお、これらの非結晶性導電酸化物の原料化合物において、優れた保存安定性を得るとともに、より均一な薄膜が得られることから、アルカノールアミン等の有機溶媒を使用することが好ましい。
【0054】
c.種類3
また、非結晶性導電酸化物が、インジウム亜鉛酸化物(IZO)であり、インジウムのモル比をIn/(In+Zn)で表した場合に、当該モル比を0.5〜0.95の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるインジウムのモル比が、0.5未満となると透明性や導電率が低下する場合があるためであり、一方、かかるインジウムのモル比が、0.95を超えると、結晶しやすくなる場合があるためである。
したがって、かかるインジウムのモル比(In/(In+Zn))を0.75〜0.90の範囲内の値とすることがより好ましく、0.8〜0.90の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかるインジウムのモル比は、ICP分析(Inductively Coupled Plasma)により、測定することができる。
【0055】
d.種類4
また、非結晶性導電酸化物中に、ドーパントを含むことが好ましい。このようにドーパントを含むことにより、非結晶性導電酸化物の導電率の調整がより容易となる。
ここで、好ましいドーパントとしては、Sn、Sb、Ga、Ge等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
なお、このようなドーパントは、スパッタ法の場合には、予めスパッタリングターゲットに混合して、そのスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングすることが好ましく、一方、ゾル−ゲル法の場合にはゾル状態で均一に添加することができることから、ジメトキシスズ、トリメトキシアンチモン、トリエトキシガリウム、テトラメトキシゲルマニウム等のアルコキシ化合物や、塩化スズ、塩化アンチモン、塩化ガリウム、塩化ゲルマニウム等の塩化物として添加することが好ましい。
【0056】
また、ドーパントの添加量を、全体量に対して、0.1〜50重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるドーパントの添加量が0.1重量%未満となると、添加効果が発現しない場合があるためであり、一方、かかるドーパントの添加量が50重量%を超えると、耐熱性や耐湿性が低下する場合があるためである。
したがって、ドーパントの添加量を、全体量に対して、1〜30重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜20重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0057】
e.比抵抗
また、電気接続部材における構成材料の比抵抗を1×10-3Ω・cm以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる比抵抗が1×10-3Ω・cmを超えると、抵抗損失が過度に大きくなり、TFTのスイッチ動作に支障を来す場合があるためである。
したがって、電気接続部材における構成材料の比抵抗を5×10-4Ω・cm以下の値とすることがより好ましく、1×10-4Ω・cm以下の値とすることがさらに好ましい。
【0058】
f.面抵抗
また、電気接続部材の面抵抗を0.01〜100Ω/□の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる面抵抗が0.01Ω/□未満となると、使用可能な構成材料の種類が過度に制限される場合があるとともに、ITOやIZO等からなる下部電極(透明電極)との電気接続性が低下する場合があるためである。一方、かかる面抵抗が100Ω/□を超えると、抵抗損失が過度に大きくなり、TFTのスイッチ動作に支障を来す場合があるためである。
したがって、電気接続部材の面抵抗を0.1〜20Ω/□の範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜10Ω/□の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0059】
(2)構成2
また、図7に示すように、電気接続部材が、層間絶縁膜13内に形成したビアホール40であることも好ましい。
このように電気接続部材がビアホールであれば、接触面積を大きくすることができるため、良好な電気接続性が得られるためである。
また、ビアホールの口径を0.1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、ビアホールの口径が0.1μm未満となると、形成するのが困難となったり、接続信頼性が低下する場合があるためである。一方、ビアホールの口径が100μmを超えると、逆に形成するのが困難となったり、隣接するビアホール間でショートが発生しやすくなる場合があるためである。
なお、このようなビアホールは、例えば、フォトエッチング法や、機械的切削により形成することが好ましい。
【0060】
(3)構成3
また、図8に示すように、電気接続部材28を非結晶性導電酸化物から構成するとともに、当該電気接続部材28の一部または全面にメタライズ部31および35が設けてあることが好ましい。
このように構成すると、電気接続部材28と、有機EL素子26の下部電極22との間、およびTFT14との間におけるそれぞれの電気接続箇所での接続抵抗を、より低抵抗化することができる。
ここで、メタライズ部31および35は同一の形成材料から構成されていてもよく、あるいは、それぞれが異なる形成材料から構成されていてもよい。また、メタライズ部の好ましい形成材料としては、例えば、アルミニウム、白金、金、銀、銅、ニッケル、クロム、タンタル、タングステン、TiN、TaN等の1種単独または2種以上の組み合わせが挙げられる。これらの金属であれば、接続端部での接続抵抗を、確実に低抵抗化することができるためである。
また、特にメタライズ部31ではアルミニウムを、またメタライズ部35ではクロムやタングステンをそれぞれ用いて形成することが好ましい。このように構成すると、上部電極側でも、下部電極側でも、接続端部での接続抵抗をより低抗化することができるとともに、上部電極側の耐腐食性も向上させることができる。
さらに、メタライズ部の形成方法についても特に制限されるものではないが、例えば、メッキ法、蒸着法、あるいは、スパッタリング法を採ることが好ましい。
【0061】
なお、メタライズ部の厚さは、電気接続箇所での接続抵抗の値を考慮して定めることが好ましいが、具体的に、0.01〜50μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、メタライズ部の厚さが0.01μm未満の値となると、電気接続箇所での接続抵抗の値が低下しない場合があるためであり、一方、50μmを超えると、メタライズ部の形成に時間がかかる場合があるためである。
したがって、メタライズ部の厚さを0.01〜30μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.03〜10μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0062】
(4)構成4
また、図1に示すように、電気接続部材28の厚さを0.01〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、電気接続部材の厚さが0.01μm未満となると、耐久性が乏しくなったり、抵抗損失が著しく大きくなる場合があるためであり、一方、かかる厚さが100μmを超えると、形成するのに過度に時間がかかったり、脆くなる場合があるためである。
したがって、電気接続部材の厚さを0.01〜80μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.03〜50μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0063】
5.色変換媒体
色変換媒体としては、カラーフィルタや、EL発光とは異なる色を発光するための蛍光膜があるが、これらの組合わせも含むものである。
【0064】
(1)カラーフィルタ
a.構成
カラーフィルタは、光を分解またはカットして色調整またはコントラストを向上するために設けられ、色素のみからなる色素層、または色素をバインダー樹脂中に溶解または分散させて構成した層状物として構成される。
また、カラーフィルタの構成として、青色、緑色、赤色の色素を含むことが好適である。このようなカラーフィルタと、白色発光の有機EL素子とを組み合わせることにより、青色、緑色、赤色の光の三原色が得られ、フルカラー表示が可能であるためである。
なお、カラーフィルタは、蛍光媒体と同様に、印刷法や、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることが好ましい
【0065】
b.厚さ
カラーフィルタの厚さは、有機EL素子の発光を十分に受光(吸収)するとともに、色変換機能を妨げるものでなければ、特に制限されるものではないが、例えば、10nm〜1mmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5μm〜1mmの範囲内の値とすることがより好ましく、1μm〜100μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、カラーフィルタの厚さが5μm以上の値になると、その上に設けてある下部電極の高さ位置が高くなって、当該下部電極と、TFTとの電気接続の信頼性が低下することが判明している。したがって、本発明の傾斜した電気接続部材は、カラーフィルタの厚さが5μm以上の値の場合に、その効果をより発揮することができると言える。
【0066】
(2)蛍光媒体
a.構成
アクティブ駆動型有機EL表示装置における蛍光媒体は、有機EL素子の発光を吸収して、より長波長の蛍光を発光する機能を有しており、平面的に分離配置された層状物として構成されている。各蛍光媒体は、有機EL素子の発光領域、例えば下部電極と上部電極との交差部分の位置に対応して配置してあることが好ましい。
このように構成することにより、下部電極と上部電極との交差部分における有機発光層が発光した場合に、その光を各蛍光媒体が受光して、異なる色(波長)の発光を外部に取り出すことが可能になる。特に、有機EL素子が青色発光するとともに、蛍光媒体によって、緑色、赤色発光に変換可能な構成とすると、一つの有機EL素子であっても、青色、緑色、赤色の光の三原色が得られ、フルカラー表示が可能であることから好適である。
【0067】
また、各蛍光媒体間に、有機EL素子の発光及び各蛍光媒体からの光を遮断して、コントラストを向上させ、視野角依存性を低減するための遮光層(ブラックマトリックス)を配置することも好ましい。
なお、蛍光媒体は、外光によるコントラストの低下を防止するため、上述したカラーフィルタと組み合せて構成してもよい。
【0068】
b.形成方法
蛍光媒体が、主に蛍光色素からなる場合は、所望の蛍光媒体のパターンが得られるマスクを介して、真空蒸着またはスパッタリング法で成膜することが好ましい。
一方、蛍光媒体が、蛍光色素と樹脂からなる場合は、蛍光色素と樹脂と適当な溶剤とを混合、分散または可溶化させて液状物とし、当該液状物を、スピンコート、ロールコート、キャスト法等の方法で成膜し、その後、フォトリソグラフィー法で所望の蛍光媒体のパターンにパターニングしたり、スクリーン印刷等の方法で所望のパターンにパターニングして、蛍光媒体を形成するのが好ましい。
【0069】
c.厚さ
蛍光媒体の厚さは、有機EL素子の発光を十分に受光(吸収)するとともに、蛍光の発生機能を妨げるものでなければ、特に制限されるものではないが、例えば、10nm〜1mmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5μm〜1mmの範囲内の値とすることがより好ましく、1μm〜100μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、蛍光媒体の厚さが5μm以上の値になると、下部電極と、TFTとの電気接続の信頼性が低下することは、カラーフィルタの場合と同様である。したがって、本発明の傾斜した電気接続部材は、蛍光媒体を設けた場合であっても、その厚さが5μm以上の場合に、その効果をより発揮することができると言える。
【0070】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の有機EL表示装置は、図9に示すように、
支持基板10と、
この支持基板10上に形成されたTFT14および色変換媒体60と、
この色変換媒体60の側端61に設けられた斜面62上に形成された非結晶性導電酸化物からなる電気接続部材28と、
色変換媒体60上に形成された有機EL素子26と、
を備えたアクティブ駆動型有機EL表示装置34である。
このように電気接続部材28を色変換媒体60の斜面に沿って設けることにより、電気接続部材28が色変換媒体60の熱膨張等に追随しやすくなるので、TFT14と有機EL素子26との間で、より優れた接続信頼性を得ることができる。
以下、第2の実施形態において、図9および図10を適宜参照しながら、特徴点について説明する。
【0071】
(1)構成1
図9に示すように、電気接続部材28を傾斜させて設けることが好ましい。このように構成すると、電気接続部材28の形成が容易となり、しかも、有機EL素子26と、TFT14との間で、電気接続部材28がバネ的な動作をするため、良好な接続信頼性を得ることができる。
また、電気接続部材28を傾斜させる場合に、図9に示す電気接続部材28の傾斜角度(θ)を10°〜80°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる傾斜角度が80°を超えると、電気接続部材の形成が困難となる場合があるためであり、一方、かかる傾斜角度が10°未満となると、開口率が低下する場合があるためである。
したがって、電気接続部材の傾斜角度を20°〜70°の範囲内の値とすることがより好ましく、30°〜60°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0072】
(2)構成2
また、図9に示すように、色変換媒体60自体の側端61を斜面62としてあるとともに、当該斜面62に沿って、電気接続部材28が設けてあることが好ましい。
このように構成すると、色変換媒体60の側端61を電気接続部材28の支持部として利用することができ、傾斜した電気接続部材28を容易に設けることができる。
また、このように構成すると、色変換媒体60が加熱されて熱膨張した場合であっても、電気接続部材28が容易に追随することができるので、優れた接続信頼性を得ることができる。例えば、色変換媒体60の側端61を傾斜角度10°〜80°の斜面62としておき、スパッタリング法等を用いて、金属薄膜を積層するだけで、傾斜した電気接続部材28を容易に設けることができる。
【0073】
(3)構成3
また、図10に示すように、電気絶縁性材料を用いて、色変換媒体60の側端61に斜行部材63を設けることも好ましい。
このように斜行部材63を設けることにより、色変換媒体60が熱膨張等した場合であっても、当該斜行部材63が緩衝材となって、電気接続部材28を介して、優れた接続信頼性を得ることができる。なお、この斜行部材は、色変換媒体上の平坦化膜として形成してもよい。
また、斜行部材63の構成材料としては、層間絶縁膜と同様の電気絶縁性材料を使用することが好ましい。したがって、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化チタン(TiO2)等を使用することが好ましい。
なお、斜行部材63の形態についても一部に斜面が設けてあれば特に制限されるものではないが、概ね三角形であることが好ましい。
【0074】
[第3の実施形態]
第3の実施形態の有機EL表示装置は、図11に示すように、
支持基板10と、
この上に形成されたTFT14および色変換媒体60と、
この色変換媒体60上に形成された有機EL素子26と、
このTFT14および有機EL素子26の下部電極22を電気接続するための非結晶性導電酸化物からなる電気接続部材28と、
有機EL素子26の周囲を覆う封止部材58と、
を備えたアクティブ駆動型有機EL表示装置36である。
そして、第3の実施形態では、色変換媒体60の一部を層間絶縁膜12内に埋設してあることを特徴としている。
以下、第3の実施形態において、図11を適宜参照しながら、特徴点について説明する。
【0075】
(1)埋設構造
有機EL表示装置36において、色変換媒体60の一部または全部を、層間絶縁膜12内、または支持基板10内に埋設することが好ましい。
このように構成することにより、特別な固定手段を用いることなく、色変換媒体を強固に固定することができるとともに、その上に形成する下部電極22の位置を低下させることができる。
したがって、色変換媒体の取り扱いが容易になるばかりか、TFTにおける電気接続箇所(ドレイン電極)の位置と、下部電極における電気接続箇所の位置との段差を小さくすることができる。
よって、電気接続部材の長さを短くすることができ、電気接続部材における電気接続が容易になるばかりか、抵抗損失を小さくすることができることから、有機EL素子の駆動が良好となる。
【0076】
また、色変換媒体をどの程度埋設するかは、TFTと、下部電極との間の電気接続の容易性や接続信頼性を考慮して定めることが好ましいが、具体的に、色変換媒体の埋設量を0.1〜5μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる埋設量が0.1μm未満になると、厚手の色変換媒体においては、電気接続部材28の長さがほとんど短縮されない場合があるためであり、一方、かかる埋設量が5μmを超えると、色変換媒体を埋設するのが困難となる場合があるためである。
したがって、かかる埋設量を0.2〜4μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.3〜3μmの範囲内の値とすることがよりさらに好ましい。
なお、色変換媒体を支持基板内に埋設する方法についても特に制限されるものではないが、例えば、支持基板の該当箇所を切削することによって、色変換媒体の一部を埋設することが好ましい。
【0077】
(2)位置調節層
また、第3の実施形態において、図12に示すように、TFTの位置調節層33を設けることも好ましい。
このように構成することにより、位置調節層33の厚さを変えるだけで、その上に形成するTFT14における接続箇所の位置を高くすることができる。したがって、TFT14における電気接続箇所(ドレイン電極)の位置と、下部電極22における電気接続箇所の位置との段差を小さくすることができ、電気接続部材28の長さを短くしたり、電気接続部材28における抵抗損失を小さくすることができる。
【0078】
また、位置調節層の厚さは、TFTと、下部電極との間の電気接続の容易性や接続信頼性を考慮して定めることが好ましいが、具体的に、位置調節層の厚さを0.1〜5μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、位置調節層の厚さが0.1μm未満になると、厚手の色変換媒体においては、電気接続部材28の長さがほとんど短縮されない場合があるためであり、一方、かかる位置調節層の厚さが5μmを超えると、形成するのが困難となる場合があるためである。
したがって、位置調節層の厚さを0.2〜4μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.3〜3μmの範囲内の値とすることがよりさらに好ましい。
【0079】
また、位置調節層の構成材料についても、特に制限されるものではないが、層間絶縁膜と同様の電気絶縁性材料を使用することが好ましい。したがって、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化チタン(TiO2)等を使用することが好ましい。
なお、位置調節層の形成方法についても特に制限されるものではないが、例えば、蒸着法や光硬化性樹脂を用いた光硬化法を用いて形成することが好ましい。
【0080】
(3)封止用部材
有機EL表示装置における封止用部材は、内部への水分侵入を防止するために当該アクティブ駆動型有機EL表示装置の周囲に設けるか、さらには、このように設けた封止用部材と、有機EL表示装置との間に、公知の封止媒体、例えば、乾燥剤、ドライガス、フッ化炭化水素等の不活性液体を封入することが好ましい。また、かかる封止用部材は、蛍光媒体や、カラーフィルターを上部電極の外部に設ける場合の、支持基板としても使用することができる。
このような封止用部材としては、支持基板と同種の材料、例えば、ガラス板を用いることができる。また、封止用部材の形態についても、特に制限されるものでなく、例えば、板状やキャップ状とすることが好ましい。そして、例えば、板状とした場合、その厚さを、0.01〜5mmの範囲内の値とすることが好ましい。
さらに、封止用部材は、有機EL表示装置の所定場所に溝等を設けておき、それに圧入して固定することも好ましいし、あるいは、光硬化型の接着剤等を用いて、有機EL表示装置の所定場所に固定することも好ましい。
【0081】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、図1に示す第1の実施形態の有機EL表示装置30の製造方法であって、具体的に、支持基板10上に、電気絶縁膜12に埋設されたTFT14と、上部電極20および下部電極22の間に有機発光媒体24を含んでなる有機EL素子26と、これらのTFT14と有機EL素子26とを電気接続するための電気接続部材28と、を備えたアクティブ駆動型有機EL表示装置30の製造方法である。
そして、第4の実施形態では、図13、図14、および図15に示すように、TFT14を形成する工程と、非結晶性導電酸化物からなる電気接続部材28を形成する工程と、有機EL素子26を形成する工程と、を含むことを特徴としている。
以下、第4実施形態において、図13、図14および図15等を適宜参照しながら、その特徴部分等について説明する。
【0082】
(1)薄膜トランジスタ(TFT)の形成工程
TFTの形成工程(アクティブマトリックス基板の作製工程)について、図13(a)〜(i)を参照しながら、説明する。
【0083】
a.活性層の形成
まず、図13(a)に示すように、支持基板10上に、減圧CVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition,LPCVD)等の手法により、α−Si層70を積層する。
この時、α−Si層70の厚さを、40〜200nmの範囲内の値とすることが好ましい。また、用いられる基板10は、水晶のような結晶材料が好ましいが、より好ましくは、低膨張ガラスである。なお、低膨張ガラス基板を用いる場合には、製造工程全体において、溶融したり、歪みが発生するのを回避し、さらには、能動領域内にドーパントの外側拡散(out-diffusion)を回避するために低温プロセス温度、例えば、1,000℃以下、より好ましくは600℃以下で実施するのが好ましい。
【0084】
次いで、図13(b)に示すように、KrF(248nm)レーザーなどのエキシマーレーザーをα−Si層70に照射して、アニール結晶化を行い、ポリシリコンとする(SID´96、Digest of technical papers p17〜28参照)。
このエキシマレーザーを用いたアニーリング条件として、基板温度を100〜300℃の範囲内の値、およびエキシマレーザー光のエネルギー量を100〜300mJ/cm2の範囲内の値とするのが好ましい。
【0085】
次いで、図13(c)に示すように、アニール処理して結晶化されたポリシリコンを、フォトリソグラフィによりアイランド状にパターン化する。なお、エッチングガスとしては、優れた解像度が得られることからCF4ガスを用いることが好ましい。
次いで、図13(d)に示すように、得られたアイランド化ポリシリコン71および基板10の表面に、絶縁ゲート材料72を化学蒸着(CVD)等により積層して、ゲート酸化物絶縁層72とする。
このゲート酸化物絶縁層72は、好ましくはプラズマ増強CVD(PECVD)、または減圧CVD(LPCVD)のような化学蒸着(CVD)が適用可能なように二酸化シリコンから構成することが好ましい。
また、ゲート酸化物絶縁層72の厚さを、100〜200nmの範囲内の値とするのが好ましい。
さらに、基板温度としては250〜400℃が好ましく、さらに高品質の絶縁ゲート材料を得るためには、アニールを300〜600℃で、1〜3時間程度施すのが好ましい。
【0086】
次いで、図13(e)に示すように、ゲート電極73を、蒸着またはスパッタリングで成膜して形成する。なお、ゲート電極73の好ましい構成材料としては、TaN等が挙げられ、その厚さを、200〜500nmの範囲内の値とするのが好ましい。
次いで、図13(f)〜(h)に示すように、ゲート電極73をパターニングするとともに、陽極酸化を行う。また、Alゲートを使用するときは、図13(f)〜(h)に示すように、電気絶縁するために陽極酸化を2回にわたり行うのが好ましい。なお、陽極酸化の詳細に関しては、特公平8−15120号公報に詳細に開示されている。
次いで、図13(i)に示すように、イオンドーピング(イオン注入)により、n+またはp+のドーピング領域を形成し、活性層を形成して、ソースおよびドレインとする。なお、イオンドーピングを有効に行うことができるように、イオンドーピング中に、窒素ガスを導入するとともに、300℃、3時間程度の条件で加熱処理をすることが好ましい。
【0087】
一方、ゲート電極73として、α−シリコンから形成されたポリシリコンを用いることも好ましい。すなわち、ポリシリコンゲート電極73を、ゲート絶縁層上に形成した後、砒素等のn型ドーパントをイオンインプラントし、さらにその後に、ソース領域とドレイン領域を、それぞれポリシリコン領域内に形成可能なように、ポリシリコンアイランド上にフォトリソグラフィすることによりパターン化して形成することができる。
なお、ポリシリコンからなるゲート電極73は、コンデンサーの底部電極として供することができる。
【0088】
b.信号電極線および走査電極線の形成
次に、図示はしないが、得られた活性層上に電気絶縁層、例えばSiO層をECRCVD法(Electron Cyclotron Resonance Chemical Vapor Deposition)により設けた後、信号電極線および走査電極線(配線電極と称する場合もある。)等の形成および連結をする。具体的に、信号電極線および走査電極線の形成、およびコンデンサーの上部電極の形成、第2のトランジスタ(Tr2)56のソースと走査電極線との連結、第1のトランジスタ(Tr1)55のソースと信号電極線との連結等を行う。
その際、Al合金、Al、Cr、W、Moなどの金属線を、フォトリソグラフィ法により形成するとともに、第1のトランジスタ(Tr1)55および第2のトランジスタ(Tr2)56のドレイン、ソースなどのコンタクトは、これらの表面側に設けた電気絶縁層の開口部を傾斜した状態で設けておき、蒸着法等を用いて形成することが好ましい。
【0089】
c.層間絶縁膜の形成
次の段階では、二酸化シリコン(SiO2)、チッ化シリコン、ポリイミドなどで構成される層間絶縁膜を、活性層およびその上の電気絶縁層全体にわたり適用する。
なお、二酸化シリコンからなる絶縁膜は、PECVD法により、例えばTEOS(テトラエトキシシラン)ガスを供給して、基板温度250〜400℃の条件で得ることができる。
また、層間絶縁膜は、ECRCVD法により、基板温度を100〜300℃の範囲内の温度条件としても得ることができる。
ただし、これらの無機絶縁膜では平坦化するのに、一般に時間がかかるため、有機物からなる層間絶縁膜を形成することがより好ましい。
【0090】
(2)電気接続部材の形成工程
a.形成方法1
また、非結晶性導電酸化物からなる電気接続部材の形成方法として、真空蒸着法およびスパッタリング法あるいはいずれか一方の薄膜形成法を採用することが好ましい。
このような薄膜形成方法を使用することにより、電気接続部材を傾斜させて形成した場合であっても、均一な厚さを有する電気接続部材を容易に得ることができるためである。
また、このようにして形成した薄膜からなる電気接続部材は、耐久性に優れており、加熱したり、振動等を与えても優れた接続信頼性が得られるためである。
なお、真空蒸着法およびスパッタリング法条件については、特に制限されるものではないが、例えば、IZOを用いて、DCスパッタリング法により電気接続部材を形成する場合、スパッタガス圧を0.1〜5Paの範囲内の値とし、電力を0.1〜10W/cm2の範囲内の値とし、成膜速度を5〜100nm/分の範囲内の値とし、およびスパッタ面の温度を50〜200℃の範囲内の値とすることが好ましい。
【0091】
b.形成方法2
また、図16に示すように、非結晶性導電酸化物からなる電気接続部材28と、下部電極22とを一体的に形成することが好ましい。図16上、電気接続部材28と、下部電極22との間に繋ぎ目が無いのはこのことを示している。
このように製造することにより、電気接続箇所の数を減少することができるばかりか、さらに良好な接続信頼性を有する電気接続部材となる。
なお、電気接続部材と下部電極とを一体的に形成するには、スパッタリング法を採用することが好ましいが、無機酸化物を用いて、後述するゾル−ゲル法を採用することも好ましい。
【0092】
c.形成方法3
また、非結晶性導電酸化物からなる電気接続部材を、いわゆるゾル−ゲル法により形成することも好ましい。具体的には、例えば、非結晶性導電酸化物原料溶液を塗布したのち、加熱することによりゲル化させて、電気接続部材の構成材料とするものである。次いで、フォトリソグラフィ法を用いて、パターニングすることにより、電気接続部材とするものである。
このようにゾル−ゲル法を用いることにより、特殊な形成装置を必要とすることなく、所定位置に原料溶液を塗布して、加熱(焼結)および還元するだけで非結晶性導電酸化物からなる電気接続部材を容易に形成することができる。また、焼結温度や還元温度が比較的低温であるため、他の構成部品に熱損傷を与えることが少なくなる。したがって、電気接続部材を形成する前に、有機EL素子を形成することも可能となる。
【0093】
また、ゲル化させるための加熱(焼結)条件についても特に制限されるものではないが、例えば、100〜700℃、5分〜20時間の加熱条件とすることが好ましく、250〜500℃、5分〜20時間の加熱条件とすることがより好ましい。
この理由は、加熱温度が100℃未満となると、ゲル化が不十分となる場合があるためであり、一方、加熱温度が700℃を超えると、結晶部分が形成しやすくなるためである。
さらに、還元条件についても特に制限されるものではないが、例えば、水素、窒素、アルゴン等の還元ガスを用いて、100〜700℃、5分〜20時間の加熱条件とすることが好ましく、250〜500℃、5分〜20時間の加熱条件とすることがより好ましい。
【0094】
d.形成方法4
また、電気接続部材を形成する際に、図8に示すように、電気接続部材28の一部にメタライズ部31および35を設ける工程を含むことが好ましい。この例では、電気接続部材28のTFT14側と、上部電極22側に、それぞれメタライズ部31および35が設けてある。
このように構成すると、有機EL素子の下部電極、およびTFTにおけるそれぞれの電気接続箇所での接続抵抗を、より低抵抗化することができる。
また、メタライズ部の形成方法については、特に制限されるものではないが、例えば、メッキ法、蒸着法、スパッタリング法を採ることが好ましい。
なお、メタライズ部の構成については、第1の実施形態と同様の内容とすることができる。
【0095】
e.形成方法5
また、非結晶性導電酸化物からなる電気接続部材を、有機酸によりエッチングして、パターニングすることが好ましい。具体的には、図17(a)〜(g)に示すように、フォトリソグラフィ法を用い、非結晶性導電酸化物28に対してレジスト膜80を形成した後、フォトマスク82を介して、露光81、現像して、結晶性導電酸化物の一部28´を露出させた後、有機酸によりエッチングすることにより、パターニングして、電気接続部材28を形成することができる。
このように有機酸により電気接続部材28をエッチングすることにより、TFTや有機EL素子の一部にAlやCr等の金属材料を使用している場合であっても、これらの金属材料を侵すことなく、非結晶性導電酸化物のみをエッチングすることができる。よって、電気接続部材28を精度良く形成することができるとともに、金属マイグレーション等を容易に防止することができる。
なお、電気接続部材を非結晶性導電酸化物から構成した場合であっても、エッチング速度を高めるために、有機酸以外に、リン酸系のエッチャントや、塩酸系エッチャントを使用することも好ましい。
【0096】
ここで、好ましい有機酸としては、蓚酸、酢酸、クエン酸等が挙げられるが、特に非結晶性導電酸化物に対するエッチング精度が優れていることから、蓚酸、および酢酸を使用することが好ましく、さらに好ましいのは蓚酸である。
また、有機酸を水やアルコール系溶媒、あるいは他の極性溶媒等に溶解させた上で、エッチング液として使用することが好ましい。このように溶媒を使用することにより、非結晶性導電酸化物に対するエッチング精度をさらに向上させることができる。
その場合、有機酸濃度を0.1〜50重量%の範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、有機酸濃度が0.1重量%未満となると、非結晶性導電酸化物に対するエッチング速度が著しく低下する場合があるためであり、一方、有機酸濃度が50重量%を超えると、AlやCr等の金属材料を腐食させる場合があるためである。
したがって、有機酸濃度を1〜20重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、2〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0097】
また、エッチング温度についても特に制限されるものではないが、20〜100℃の範囲内の温度とすることが好ましい。この理由は、エッチング温度が20℃未満となると、非結晶性導電酸化物に対するエッチング速度が著しく低下する場合があるためであり、一方、エッチング温度が100℃を超えると、AlやCr等の金属材料を腐食させる場合があるためである。
したがって、エッチング温度を20〜80℃の範囲内の温度とすることがより好ましく、20〜40℃の範囲内の温度とすることがさらに好ましい。
【0098】
(3)有機EL素子の形成工程
図14および図15に示すように、TFT14や、層間絶縁膜(斜行部材)63を形成した後、色変換媒体60や、下部電極(陽極)22、有機発光媒体24(有機発光層、正孔注入層、電子注入層等)を順次に形成し、さらに上部電極(陰極)20を形成することにより、有機EL素子を作製することができる。
ここで、色変換媒体60については、真空蒸着法、スパッタリング法、スピンコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、ミセル電解法等の方法を用いて形成することが好ましい。
また、下部電極22や上部電極20については、真空蒸着法や、スパッタリング法等の乾燥状態での成膜が可能な方法を用いて形成することが好ましい。
さらに、有機発光媒体24については、真空蒸着法、スパッタリング法、スピンコート法、ラングミュアーブロジェット法(LB法、Langumuir-Blodgett法)、インクジェット法、ミセル電解法等の方法を用いて形成することが好ましい。
【0099】
(4)封止工程等
さらに、封止工程については、有機EL素子を形成し、TFTと電気接続後、封止部材で、これらの周囲を覆うようにして固定することが好ましい。
また、封止部材と、有機EL素子等との間に、封止ガスをさらに封入することが好ましい。
さらに、封止した後に、有機発光媒体や、層間絶縁膜や、ゲート絶縁膜等に含まれる水分が、有機EL素子におけるダークスポット等の発生を誘発する場合があるため、これらの有機材料の含水率を0.05重量%以下の値とすることが好ましい。
なお、有機EL素子に直流電圧を印加する場合、透明電極を+、電極を−の極性にして、5〜40Vの電圧を印加すると、発光が観測できるので、封止工程前に駆動させて、有機EL素子の成膜の良し悪しを判断することも好ましい。
【符号の説明】
【0100】
10 支持基板
12 層間絶縁膜(ゲート酸化膜)
13 層間絶縁膜(平坦化膜)
14 薄膜トランジスタ(TFT)
16 主電極
17 電気絶縁体
18 補助電極
20 上部電極
22 下部電極
24 有機発光媒体
26 有機EL素子
28 電気接続部材
29 先端部
30,32,34,36 アクティブ駆動型有機EL表示装置
31,35 メタライズ部
40 ビアホール
43 ゲート
44 活性層
45 ソース
46 ゲート
47 ドレイン
50 走査電極線
51 信号電極線
52 共通電極線
54 コンタクトホール
55 第1のトランジスタ
56 第2のトランジスタ
57 コンデンサー
58 封止部材
60 色変換媒体
61 側端
62 斜面
63 斜行部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極および下部電極の間に有機発光媒体を挟持して構成した有機EL素子と、当該有機EL素子の発光制御用の薄膜トランジスタと、を具備したアクティブ駆動型有機EL表示装置において、
有機EL素子の下部電極を形成する際の平坦化された下地として平坦化膜が設けてあり、
前記有機EL素子と前記薄膜トランジスタとの間で、該平坦化膜の側端の斜面上に非結晶性導電酸化物からなる電気接続部材を設けたこと、を特徴とするアクティブ駆動型有機EL表示装置。
【請求項2】
前記非結晶性導電酸化物が、インジウム亜鉛酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のアクティブ駆動型有機EL表示装置。
【請求項3】
前記非結晶性導電酸化物の比抵抗を1×10−3Ω・cm以下の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載のアクティブ駆動型有機EL表示装置。
【請求項4】
前記非結晶性導電酸化物が、ドーパントを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL表示装置。
【請求項5】
前記上部電極および下部電極、あるいはいずれか一方の電極を、インジウム亜鉛酸化物あるいはインジウムスズ酸化物から構成してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL表示装置。
【請求項6】
前記下部電極と、前記電気接続部材とが、非結晶性導電酸化物を用いて一体的に形成してあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL表示装置。
【請求項7】
前記電気接続部材の一部に、メタライズ部が設けてあることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL表示装置。
【請求項8】
前記電気接続部材の厚さを0.01〜100μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL表示装置。
【請求項9】
前記有機EL素子における発光面側に、蛍光媒体およびカラーフィルタ、あるいはいずれか一方の色変換媒体が設けてあることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL表示装置。
【請求項10】
前記色変換媒体が、前記有機EL素子と薄膜トランジスタを支持する支持基板内に埋設してあることを特徴とする請求項9に記載のアクティブ駆動型有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−186755(P2010−186755A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113121(P2010−113121)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【分割の表示】特願2000−61505(P2000−61505)の分割
【原出願日】平成12年3月7日(2000.3.7)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】