説明

アザ芳香族化合物の配向メタル化のためのアルキル金属試薬の使用

(トリメチルシリルメチル)リチウムなどの置換アルキル金属試薬にアザ芳香族化合物および/または窒素複素環化合物を反応させて、官能基化アザ芳香族化合物および官能基化窒素複素環化合物を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、以下の米国特許出願:2003年4月7日に提出された米国仮出願第60/460,994号および2004年4月6日に提出され、出願番号がまだ割り当てられていない米国特許出願「Using Alkylmetal Reagents for Directed Metalation of Azaaromatics」の利益を請求し、引用することによりその全体を組み入れている。
【0002】
発明の分野
本発明は、化学化合物のメタル化に関し、さらに一般的にはアザ芳香族化合物のメタル化および化学化合物のメタル化に使用される組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
官能基化アザ芳香族化合物、例えばピリジン、キノリン、およびピリミジンは、生物活性化合物の基礎構造として使用できる。例えば官能基化アザ芳香族化合物は、製薬業界において、例えば中枢神経系障害の処置において有用である。
【0004】
官能基化アザ芳香族化合物を作成する伝統的な方法および手順は、メタル化技法を利用する。アザ芳香族化合物は、リチウムアミドなどの塩基を使用して、アザ芳香族化合物の脱プロトン化によってメタル化することができる。リチウムアミド、例えばリチウムジイソプロピルアミド(LDA)およびリチウムテトラメチルピペリジドがアザ芳香族化合物を脱プロトン化するのに使用されてきたが、リチウムアミドはアザ芳香族化合物を完全に脱プロトン化するために十分に強力な塩基でないことが多い。さらに、リチウムアミドを用いた脱プロトン化によって生成された官能基化アザ芳香族化合物の収率は適度の傾向にある。他のアルキルリチウム試薬、例えばn−ブチルリチウムの使用も、アルキルリチウム、例えばn−BuLiまたはtert−BuLiがアザ芳香族化合物のイミン官能基を求核的に攻撃する傾向にあるため、望ましくなかった。一部の場合には、触媒量の第2級アミンが存在するアルキルリチウムは、アザ芳香族化合物を効果的に脱プロトン化できる。この「触媒メタル化」技法は、適度な収率を生じる。適度な収率は、炭素−窒素二重結合へのアルキルリチウムの競合付加があるために生じ得る。代案として、アザ芳香族化合物の官能基化反応のために、より強い塩基の使用が提案および試験された。例えばリチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(LiTMP)およびメシチルリチウム(MesLi)などの強塩基および貧求核試薬を使用して、アザ芳香族化合物を官能基化してきた。しかしながら官能基化アザ芳香族化合物を大量に製造するための業界慣行におけるLiTMPおよびMesLiの使用は、反応物が直ちに入手できず、それらがしばしば非常に低い温度を必要とするために、および/または生成工程が大規模商用製造工程に容易には適合できないために、限度がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって拡張可能であり、高い収率を生じるアザ芳香族化合物のメタル化を促進する方法が望ましい。さらにアザ芳香族化合物および他の化学化合物のメタル化を促進するための方法、工程、および化合物も望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は一般に窒素含有6員環、ピリジン、キノリン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、プテリジン、フタラジン、トリアジン、テトラジンなどのアザ芳香族化合物の脱プロトン化に関する。一部の実施形態により、アザ芳香族化合物の直接脱プロトン化は、アザ芳香族化合物に置換アルキル金属試薬を反応させることによって実施できる。反応は、触媒を添加して、または添加せずに発生させることができる。各種の実施形態において、官能基化アザ芳香族化合物を生成するために、置換アルキル金属試薬、例えば(トリメチルシリルメチル)リチウム(TMSMLi)を化学量論的量でアザ芳香族化合物と反応させて、求電子物質と反応できるリチオ化アザ芳香族化合物を生成する。
【0007】
本発明の他の実施形態において、置換アルキル金属試薬の溶解度および貯蔵安定性は、貯蔵混合物中にエーテルを包含させることによって改良される。一部の実施形態によれば、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を、(トリメチルシリルメチル)リチウム組成物に添加して、(トリメチルシリルメチル)リチウム組成物の安定性を改良することができる。
【0008】
アザ芳香族化合物を脱プロトン化するための置換アルキル金属試薬の使用は、収率を改善し、他の脱プロトン化工程では実現されていない直接脱プロトン化工程への拡張性を与える。
【0009】
本発明は、添付図面と併せて読むと、本発明の以下の説明からより容易に解明することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明はここで、本発明の一部の実施形態が示されている添付図面を参照して以下でさらに完全に説明する。しかしながら本発明は、多くの異なる形態で具現でき、本明細書で述べる実施形態に制限されるものとして解釈すべきではない。
【0011】
本発明の実施形態により、アザ芳香族化合物の脱プロトン化を促進するための化合物および/または試薬が提供される。一部の実施形態において、アザ芳香族化合物の直接脱プロトン化を促進するためのアルキル金属試薬が提供される。本発明の他の実施形態において、アルキル金属試薬を使用して、アザ芳香族化合物以外の化学化合物の脱プロトン化を促進できる。
【0012】
本発明の各種の実施形態において、置換アルキル金属試薬をアザ芳香族化合物の直接脱プロトン化に使用できる。置換アルキル金属試薬の脱プロトン化剤としての使用は、アザ芳香族化合物のイミン官能基への求核攻撃を最小限に抑える。直接脱プロトン化およびアザ芳香族化合物への最小限にされた求核攻撃は、脱プロトン化反応の収率の改善および簡略化された精製スキームをもたらす。
【0013】
本発明の実施形態により、置換アルキル金属試薬によって脱プロトン化されるアザ芳香族化合物の例は、窒素含有6員環系、例えばピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、キノキサリン、オキサジン、チアジン、プリン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、プテリジン、フタラジン、トリアジン、テトラジンなどを含む。例えば4−メトキシピリジン、2−フルオロピリジン、2−メトキシピリジン、および3−メトキシピリジンは、本発明の実施形態に従って脱プロトン化できる。本発明の実施形態に従って、他のアザ芳香族化合物も置換アルキル金属試薬によって脱プロトン化され得る。
【0014】
本発明の実施形態で使用されるアルキル金属試薬は、阻害メチル金属試薬および/または置換メチル金属試薬を含んでもよい。例えば本発明の各種の実施形態に従って、(トリメチルシリルメチル)リチウムは置換アルキル金属試薬として使用され、アザ芳香族化合物と反応する。アザ芳香族化合物を直接脱プロトン化するための(トリメチルシリルメチル)リチウムの使用は、アザ芳香族化合物のイミン官能基への求核攻撃を最小限に抑える。さらに、反応では(トリメチルシリルメチル)リチウムの化学量論的量のみが必要であり、収率の改善および簡単な精製スキームがもたらされる。
【0015】
本発明の実施形態で用いられる置換アルキル金属試薬は好ましくは、優れた安定性を示す。一部の置換メチル金属試薬、例えば(トリメチルシリルメチル)リチウムは、組成物における金属水素化物の1,2−脱離の可能性がないため優れた安定性を示す。組成物における金属水素化物の脱離の減少によって、組成物が調製され、単離され、より長期間に渡って貯蔵される。
【0016】
本発明の実施形態による反応スキームを図1に示す。図1に示すように、メトキシピリジンは、アルキル金属試薬(トリメチルシリルメチル)リチウムを使用して脱プロトン化される。本発明の実施形態により、4−メトキシピリジンは(トリメチルシリルメチル)リチウムと反応し、次にN−ホルミルピペリジンと反応して、4−メトキシ−3−ピリジンカルボキサルデヒド(MPC)を生成することができる。反応は、テトラヒドロフラン(THF)の存在下で約−20℃以下の温度にて実施される。HCONR2も反応混合物に添加され、ここでRはアルキル基、例えばジメチルホルムアミドまたは1−ホルミルピペリジンである。得られた4−メトキシ−3−ピリジンカルボキサルデヒドは、反応混合物から直接結晶化し、収率は使用した温度に応じて、約60パーセント〜約100パーセントMPCである。例えば図1の反応スキームにおいて、60パーセント収率は−10℃にて達成され、100パーセント収率は−30℃にて達成された。収率は約−20℃以下の温度ではより高いが、より高い温度、例えば約−12℃以上でもなお許容される。配向オルトメタル化基(directed ortho metallating group)の存在は、芳香環での脱プロトン化に典型的な選択性を与える。同様に、芳香環の側鎖がメタル化される側面リチオ化も、これらの塩基によって可能である。
【0017】
本発明の他の実施形態は、ピリジンおよび窒素複素環を官能基化するために他の置換アルキル金属試薬およびメチルリチウム、例えばネオペンチルリチウムを使用することを含む。しかしながら(トリメチルシリルメチル)リチウムの使用は、炭化水素溶媒においてはるかに高い溶解度を有するため(14%対5%)、ネオペンチルリチウムより好ましくなり得る。他のベータ−置換アルキル金属、アルキルリチウムおよび/または置換メチル金属試薬も本発明の実施形態で使用することができる。例えばビス−(トリメチルシリル)メチルリチウム、トリス−(トリメチルシリル)メチルリチウムおよびイソブチルリチウムがアザ芳香族化合物の官能基化に使用することができる。本発明の実施形態は、アザ芳香族化合物の脱プロトン化のために一般式:R3W−CH2−Mの化合物の使用も含み、式中、Rはアルキル、アリール、またはSiであり、Wは炭素、Si、またはSnであり、そしてMはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マンガン、亜鉛、およびマグネシウムからなる群より選択される1つ以上の金属である。
【0018】
本発明のアルキル金属試薬による使用アザ芳香族化合物への求核攻撃は検出されていない。さらにアルキル金属試薬の化学量論的量のみが必要である。本発明の実施形態の方法および工程は、所望の生成物の優れた収率を与えている。加えて、工程および方法は容易に拡張可能であり、本発明の実施形態に商業実用化をもたらす。
【0019】
本発明の他の実施形態は、置換アルキル金属試薬組成物の生成、特に貯蔵安定性置換アルキル金属試薬組成物の生成を包含する。例えば本発明の一部の実施形態により、(トリメチルシリルメチル)リチウムは、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)のモル当量と混合されて、(トリメチルシリルメチル)リチウムの溶解度を向上させ、組成物の貯蔵および取扱安定性を改善する。
【0020】
通例、(トリメチルシリルメチル)リチウムなどの置換アルキル金属試薬は、貯蔵および取扱のためにヘキサンと混合される。約5℃における組成物中で、(トリメチルシリルメチル)リチウムの約8重量パーセントまでのヘキサンの、(トリメチルシリルメチル)リチウム組成物への添加は、(トリメチルシリルメチル)リチウム組成物に安定性を与える。(トリメチルシリルメチル)リチウムの約8重量パーセントを超えるヘキサンと(トリメチルシリルメチル)リチウムとの混合物は、5℃にて自燃性であり、自然発火する傾向がある。従ってヘキサンと混合したトリメチルシリルメチルリチウム組成物は、5℃以下で使用する場合には、約8重量%を超えてはならない。
【0021】
本発明の他の実施形態により、アルキルメチル試薬混合物は、アルキルメチル試薬混合物へのエーテルの添加により、貯蔵および取扱に関して安定化することができる。例えば置換アルキル金属試薬、例えば(トリメチルシリルメチル)リチウムは、置換アルキル金属試薬に対して約0.5モル当量対約3モル当量、または約0.5モル当量対約1.5モル当量の量のエーテル添加によって、貯蔵および取扱に関して安定化される。本発明の実施形態によって使用できるエーテルは、これに限定されるわけではないが、メチルtert−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジオキサン、ジグリム、トリグリム、テトラグリムおよびメチルテトラヒドロフランを含む。
【0022】
本発明の実施形態により、組成物の安定性を改善するために、メチルtert−ブチルエーテルが(トリメチルシリルメチル)リチウム組成物に添加される。(トリメチルシリルメチル)リチウム組成物への1モル当量以上のメチルtert−ブチルエーテルの添加によって、(トリメチルシリルメチル)リチウムの増加した量が組成物混合物に添加することができる。例えば約25重量パーセントの(トリメチルシリルメチル)リチウムを有する、ヘキサンと(トリメチルシリルメチル)リチウムとの混合物は、メチルtert−ブチルエーテルを混合物に添加して、5℃以下にて、生成、使用、および貯蔵できる。メチルtert−ブチルエーテルの添加は、混合物の溶解度も上昇させる。
【0023】
本発明の実施形態により、メチルtert−ブチルエーテルが、(トリメチルシリルメチル)リチウム組成物または(トリメチルシリルメチル)リチウムとヘキサンとの混合物に添加される。メチルtert−ブチルエーテルは好ましくは、(トリメチルシリルメチル)リチウムの生成後に(トリメチルシリルメチル)リチウム混合物に添加され、そして好ましくは1モル当量で添加される。しかしながら本発明の他の実施形態において、メチルtert−ブチルエーテルは、(トリメチルシリルメチル)リチウムの約0.5モル当量〜約3モル当量の量で添加される。
【0024】
本発明の各種の実施形態は、医薬品の製造に使用される薬剤または化学化合物の製造、例えばMPCの製造に使用することができる。官能基化アザ芳香族化合物は、生物活性化合物の基礎構造としてよく使用される。例えばピリジンベースの製薬中間体、例えばハロ−およびメトキシピリジンは、官能基化ピリジンの配向オルトリチオ化によって生成することができる。しかしながら製薬業界におけるピリジンベース中間体の使用は、製造レベルによって制限される。従来、一部のピリジンベース医薬品の製造レベルは、低い収率を有するベンチスケール量に限定されていた。低い収率と、反応の商業生産レベルへの拡張の困難さとにより、そのような化合物のコストは上昇している。本発明の各種の実施形態を使用すると、本発明の実施形態の工程および方法が容易に拡張できるため、収量は上昇し、製造レベルは改善され得る。
【0025】
改善された収量および生産の向上は、多数の実施例によって説明できる。例えば、本発明の実施形態を使用する4−メトキシ−3−ピリジンカルボキサルデヒドの生成は、より高温にてより高い収率を生じる。LDAと、アザ芳香族化合物を官能基化する伝統的な方法とを使用する2−メトキシ−3−ピリジンボロン酸の生成は、13パーセントの収率を生じるのに対して、本発明の実施形態は、そのような反応に約68パーセントの収率を生じる。加えて2−フルオロ−3−ピリジンカルボキサルデヒドの生成は、PhLiおよびLDAを使用して60パーセントの収率にて報告されているのに対して、本発明の実施形態は約90パーセントの収率を達成する。
【0026】
[実施例]
最適化されていないが、本発明の特定の実施形態を説明する実施例は、以下の通りである。
【実施例1】
【0027】
(トリメチルシリルメチル)リチウムを使用するアゾ芳香族の脱プロトン化
(トリメチルシリルメチル)リチウム(106mL、ヘキサン中12.8重量パーセント)の溶液を250mL 3口丸底フラスコに注入し、−40℃に冷却した。4−メトキシピリジン(10.0g)のテトラヒドロフラン(THF)(111mL)溶液を−30℃未満にて1時間に渡って添加した。リチオ化は約1.5時間後に完了した。1−ホルミルピペリジン(10.6g)を−35℃にて5分間に渡って添加した。1.5時間後、反応混合物は、酢酸(15mL)および水(35mL)で反応停止させた。水層を分離し、EtOAc 25mL×4で洗浄した。全ての有機層を合せ、MgSO4上で乾燥させて、真空中で濃縮させると、冷却時に結晶化する黄色油16.0gが残った。ヘキサン30mL/イソプロピルアルコール1mLでの粉砕後、この物質はGCarea%により純度96.5%であった(13.02g、収率99%、アッセイ用に補正)。IPA/ヘキサン(1:3)からの再結晶により、所望の生成物を薄黄色結晶として収率83%で得た。
【実施例2】
【0028】
(トリメチルシリルメチル)リチウムを使用するアゾ芳香族の脱プロトン化
(トリメチルシリルメチル)リチウム(22mL、ヘキサン中13.8重量パーセント)の溶液を100mL 3口丸底フラスコに注入し、−50℃に冷却した。2−フルオロピリジン(2.0g)、THF(25mL)およびジイソプロピルアミン(0.13mL)の溶液を−50℃未満にて1分間で添加した。3時間後、1−ホルミルピペリジン(2.4g)を−50℃未満にて1分間で添加した。混合物を室温まで加温して、一晩攪拌した。反応混合物は、酢酸(3mL)および水(7mL)で反応停止させた。水層を分離し、MTBE 25mL×3で洗浄した。全ての有機層を合せ、MgSO4上で乾燥させて、真空中で濃縮させると、褐色油3.79gが残った。この油をシリカゲルによってクロマトグラフにかけ、ヘキサン中の15% EtOAcで溶出させて、純度92.4%の2−フルオロ−3−ピリジンカルボキサルデヒド2.24g(収率90%、アッセイ用に補正)を得た。
【実施例3】
【0029】
(トリメチルシリルメチル)リチウムを使用するアゾ芳香族の脱プロトン化
THF(223mL)中の2−メトキシピリジン(23.2g)およびジイソプロピルアミン(1.35mL)の混合物を−20℃にて(トリメチルシリルメチル)リチウム(218mL、ヘキサン中13.8重量パーセント)に添加した。リチオ化は7時間後に84%完了した。トリ−イソプロピルボラート(40.8g)を−20℃にて40分間に渡って添加した。混合物を周囲温度にて一晩攪拌した。5パーセントのNaOH(水溶液、225mL)を添加した。水層を除去して、10%HCl(水溶液)を添加することによりpH5にした。生じた白色沈殿を濾過により単離した。乾燥後、2−メトキシピリジン−3−ボロン酸22.23gを得た(収率68%)。
【実施例4】
【0030】
(トリメチルシリルメチル)リチウムを使用するアゾ芳香族の脱プロトン化
乾燥した50mL 3口丸底フラスコに(トリメチルシリルメチル)リチウム(20.9mL、12.7重量パーセント)注入し、−20℃に冷却した。テトラヒドロフラン(15mL)をフラスコに添加し、次いで3−メトキシピリジン(2.0g)を添加した。1時間後、クロロトリメチルシラン(2.6mL)をフラスコに添加した。混合物を周囲温度まで一晩加温した。混合物を真空中で濃縮し、5パーセントのNaHCO3(10mL)およびメチルtert−ブチルエーテル(15mL)で分配した。メチルtert−ブチルエーテル層を合せ、MgSO4上で乾燥させ、濃縮して、オレンジ色液体2.61グラムを得た。生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、3−メトキシ−4−トリメチルシリルピリジン1.76グラムを得た(収率53%)。生成物の構造をガスクロマトグラフィーおよび質量分析法(181に等しい分子量)ならびに1H NMR(0.3ppm,s,9H);(3.9ppm,s,3H);(7.2ppm,m,1H);および(8.2ppm,m,2H)によって確認した。
【実施例5】
【0031】
メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を使用する(トリメチルシリルメチル)リチウムの安定化
3000mLのモートン・クレーブフラスコ(Morton Cleve flask)を125℃にて一晩、オーブン焼成した。フラスコに熱いまま、ドライアイス凝縮器、機械式スターラー、熱電対、およびクレイセンアダプタ(Claisen adapter)を取付けた。装置をアルゴンのパージの下で冷却させた。FMC,Inc.が製造したリチウム金属粉末(70.0グラム/10.1モル)をヘキサン900mLと共にフラスコに添加した。次に溶液を還流温度、約68.0℃まで加熱した。還流したら熱源を小さくして、クロロメチルトリメチルシラン(531.41グラム/4.202モル)を滴加した。工程の供給ステップの間、還流を続けた。供給の終了時に、溶液を還流下で0.5時間に渡って攪拌した。還流が収まったら、溶液を約20℃まで冷却させた。メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)1モル当量(1.0当量/4.20モル)を15分間に渡って溶液に滴加した。MTBE供給の間に、溶液温度の12.8℃の上昇を伴う発熱が認められた。MTBE添加が完了したら、溶液を約25℃まで徐々に冷却し、次に濾過した。
【0032】
得られた生成物は、規定度HCl 0.4946=27.45パーセントのHCL 8.8mLを有するサンプル1.50グラムを含んでいた。室温での7日間に渡る貯蔵の後、貯蔵容器では圧力差が認められず、サンプルには分解の徴候がなかった。次にサンプルを5℃の冷環境に数日間さらした。冷貯蔵中に結晶の生成は生じなかった。サンプルは自燃性についてさらに試験を行い、(トリメチルシリルメチル)リチウムが27.45重量パーセントで自燃性であることが見出された。
【実施例6】
【0033】
比較例
テトラヒドロフラン(THF)を使用する(トリメチルシリルメチル)リチウムの安定化の試行
1000mL モートン・クレーブフラスコを125℃にて一晩、オーブン焼成した。フラスコに熱いまま、ドライアイス凝縮器、機械式スターラー、熱電対、およびクレイセンアダプタを取付けた。装置をアルゴンのパージの下で冷却させた。FMC,Inc.が製造したリチウム金属粉末(8.0グラム/1.153モル)をヘキサン145mLと共にフラスコに添加した。溶液を還流温度、約68.0℃まで加熱した。還流したら熱源を小さくして、クロロメチルトリメチルシラン(68グラム/0.554モル)をフラスコに滴加した。工程の供給ステップの間、還流を続けた。供給の終了時に、溶液を還流下で1.5時間に渡って攪拌した。還流が収まったら、溶液を約20℃まで冷却させ、その後、テトラヒドロフラン(THF)1モル当量(1.0当量/1.153モル)を15分間に渡って溶液に滴加した。THF供給の間に発熱が認められ、温度の25℃の上昇が認められた。THF添加が完了したら、溶液を約25℃まで徐々に冷却し、次に濾過した。
【0034】
得られた生成物は、規定度HCl 0.4946=18.91パーセントのHCl 7.8mLを有するサンプル1.93グラムを含んでいた。サンプルを室温にて7日間貯蔵した。サンプルは大量の圧力を発生し、白色固体の生成と共にやや曇った。サンプルから目に見えるオフガス発生が認められた。第2の総塩基計算は、16.78パーセントを示し、これは第1の総塩基計算からの著しい減少であった。1ヵ月後、サンプル溶液はほぼ赤色に変化し、サンプルは追加の沈殿を含んでいた。
【実施例7】
【0035】
比較例
MTBE中での(トリメチルシリルメチル)リチウムの生成
500mL モートン・クレーブフラスコを125℃にて一晩、オーブン焼成した。フラスコに熱いまま、ドライアイス凝縮器、機械式スターラー、熱電対、およびクレイセンアダプタを取付けた。装置をアルゴンのパージの下で冷却させた。FMC,Inc.が製造したリチウム金属粉末(5.30グラム/0.764モル)をMTBE 115mLと共にフラスコに添加した。次に溶液を還流温度、約56.0℃まで加熱した。還流したら熱源を小さくして、クロロメチルトリメチルシラン(44.97グラム/0.367モル)をフラスコに滴加した。工程の供給ステップの間、還流を続けた。供給ステップの間、MTBEがヘキサン浴を用いても、温度制御に関して何らかの問題を引き起こしていることが認められた。供給の終了時に、溶液はなお非常に発熱しており、反応後の1時点で最高温度89.5℃に達した。溶液を室温に冷却し、サンプルを濾過した。濾過工程は低速であり、洗浄を含んでいた。サンプルは、25重量パーセントにて明らかに溶解性ではなかった。サンプル中の白色固体の存在は認められなかった。濾過中に濾過助剤を使用した。一晩の貯蔵の後、サンプルは曇り、粘性に見えた。
【0036】
総塩基計算を得る試行を行い、結果は、(トリメチルシリルメチル)リチウムの重量パーセントが1.0パーセント未満であることを示した。ガスクロマトグラフィーは、サンプルが主に1,2−ビス(トリメチルシリル)エタンであることを示した。
【0037】
本発明の特定の実施形態がこのように述べられたが、その多数の外見上の変更が前記請求項の精神または範囲から逸脱せずに可能であるので、添付請求項によって定義された本発明は、上の説明で述べた特定の詳細事項によって限定されないと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態による反応スキームを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アザ芳香族化合物に置換アルキル金属試薬を反応させるステップを含む、アザ芳香族化合物を脱プロトン化するための方法。
【請求項2】
アザ芳香族化合物が窒素含有6員環を含む化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アザ芳香族化合物が、窒素含有6員環系、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、キノキサリン、オキサジン、チアジン、プリン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、プテリジン、フタラジン、トリアジン、テトラジン、4−メトキシピリジン、2−フルオロピリジン、2−メトキシピリジン、および3−メトキシピリジンからなる群より選択される化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
置換アルキル金属試薬が(トリメチルシリルメチル)リチウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
置換アルキル金属試薬が(トリメチルシリルメチル)リチウム、ネオペンチルリチウム、ビス−(トリメチルシリル)メチルリチウム、トリス−(トリメチルシリル)メチルリチウム、およびイソブチルリチウムからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
置換アルキル金属試薬が式:R3W−CH2−Mを有する化合物を含み、式中、Rがアルキル基、アリール基、およびSiからなる群より選択され、Wが炭素、Si、およびSnからなる群より選択され、Mがリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マンガン、亜鉛、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1つの金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
Mがリチウムである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アザ芳香族化合物に置換アルキル金属試薬をテトラヒドロフラン中で反応させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
HCNOR2(式中、Rはアルキル基である)の存在下で、アザ芳香族化合物に置換アルキル金属試薬を反応させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
RがN,N−ジメチルホルムアミドおよび1−ホルミルピペリジンからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
テトラヒドロフランおよびHCONR2(式中、Rはアルキル基である)の存在下で、4−メトキシピリジンに(トリメチルシリルメチル)リチウムを反応させるステップを含む、4−メトキシ−3−ピリジンカルボキサルデヒドを生成する方法。
【請求項12】
アザ芳香族化合物と、置換アルキル金属試薬とを含む、アザ芳香族化合物を脱プロトン化するための反応混合物。
【請求項13】
アザ芳香族化合物が窒素含有6員環を含む化合物である、請求項12に記載の反応混合物。
【請求項14】
アザ芳香族化合物が、窒素含有6員環系、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、キノキサリン、オキサジン、チアジン、プリン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、プテリジン、フタラジン、トリアジン、テトラジン、4−メトキシピリジン、2−フルオロピリジン、2−メトキシピリジン、および3−メトキシピリジンからなる群より選択される化合物を含む、請求項12に記載の反応混合物。
【請求項15】
置換アルキル金属試薬が(トリメチルシリルメチル)リチウムである、請求項12に記載の反応混合物。
【請求項16】
置換アルキル金属試薬が(トリメチルシリルメチル)リチウム、ネオペンチルリチウム、ビス−(トリメチルシリル)メチルリチウム、トリス−(トリメチルシリル)メチルリチウム、およびイソブチルリチウムからなる群より選択される、請求項12に記載の反応混合物。
【請求項17】
置換アルキル金属試薬が式:R3W−CH2−Mを有する化合物を含み、式中、Rがアルキル基、アリール基、およびSiからなる群より選択され、Wが炭素、Si、およびSnからなる群より選択され、Mがリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マンガン、亜鉛、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1つの金属である、請求項12に記載の反応混合物。
【請求項18】
Mがリチウムである、請求項17に記載の反応混合物。
【請求項19】
さらにテトラヒドロフランを含む、請求項12に記載の反応混合物。
【請求項20】
HCONR2(式中、Rはアルキルである)をさらに含む、請求項12に記載の反応混合物。
【請求項21】
アザ芳香族化合物が4−メトキシピリジンであり、置換アルキル金属試薬が(トリメチルシリルメチル)リチウムである、請求項12に記載の反応混合物。
【請求項22】
置換アルキル金属試薬にエーテルを混合するステップを含む、置換アルキル金属試薬を安定化させるための方法。
【請求項23】
置換アルキル金属試薬が(トリメチルシリルメチル)リチウムである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
置換アルキル金属試薬が(トリメチルシリルメチル)リチウム、ネオペンチルリチウム、ビス−(トリメチルシリル)メチルリチウム、トリス−(トリメチルシリル)メチルリチウム、およびイソブチルリチウムからなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
置換アルキル金属試薬が式:R3W−CH2−Mを有する化合物を含み、式中、Rがアルキル基、アリール基、およびSiからなる群より選択され、Wが炭素、Si、およびSnからなる群より選択され、Mがリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マンガン、亜鉛、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1つの金属である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
Mがリチウムである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
エーテルがメチルtert−ブチルエーテルである、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
エーテルがメチルtert−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジオキサン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、およびメチルテトラヒドロフランからなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
エーテルが置換アルキル金属試薬と約0.5対約3のモル当量比で混合される、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
エーテルが置換アルキル金属試薬と約0.5対約1.5のモル当量比で混合される、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
エーテルが置換アルキル金属試薬と1モル当量で混合される、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
置換アルキル金属試薬が混合物の25重量パーセント以下を占める、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
置換アルキル金属試薬が混合物の20重量パーセント以下を占める、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
置換アルキル金属試薬と、エーテルとを含む、安定化アルキル金属試薬混合物。
【請求項35】
置換アルキル金属試薬が(トリメチルシリルメチル)リチウムである、請求項34に記載の安定化アルキル金属試薬混合物。
【請求項36】
置換アルキル金属試薬が(トリメチルシリルメチル)リチウム、ネオペンチルリチウム、ビス−(トリメチルシリル)メチルリチウム、トリス−(トリメチルシリル)メチルリチウム、およびイソブチルリチウムからなる群より選択される、請求項34に記載の安定化アルキル金属試薬混合物。
【請求項37】
置換アルキル金属試薬が式:R3W−CH2−Mを有する化合物を含み、式中、Rがアルキル基、アリール基、およびSiからなる群より選択され、Wが炭素、Si、およびSnからなる群より選択され、Mがリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マンガン、亜鉛、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1つの金属である、請求項34に記載の安定化アルキル金属試薬混合物。
【請求項38】
Mがリチウムである、請求項37に記載の安定化アルキル金属試薬混合物。
【請求項39】
エーテルがメチルtert−ブチルエーテルである、請求項34に記載の安定化アルキル金属試薬混合物。
【請求項40】
エーテルがメチルtert−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジオキサン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、およびメチルテトラヒドロフランからなる群より選択される、請求項34に記載の安定化アルキル金属試薬混合物。
【請求項41】
エーテルが置換アルキル金属試薬と約0.5対約3のモル当量比で混合される、請求項34に記載の安定化アルキル金属試薬混合物。
【請求項42】
エーテルが置換アルキル金属試薬と約0.5対約1.5のモル当量比で混合される、請求項34に記載の安定化アルキル金属試薬混合物。
【請求項43】
エーテルが置換アルキル金属試薬と1モル当量で混合される、請求項34に記載の安定化アルキル金属試薬混合物。
【請求項44】
置換アルキル金属試薬が混合物の25重量パーセント以下を占める、請求項34に記載の安定化アルキル金属試薬混合物。
【請求項45】
置換アルキル金属試薬が混合物の20重量パーセント以下を占める、請求項34に記載の安定化アルキル金属試薬混合物。

【図1】
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【公表番号】特表2006−524694(P2006−524694A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510079(P2006−510079)
【出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/011661
【国際公開番号】WO2004/092125
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(598076270)エフエムシー・コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】