説明

アシルアミノ酸亜鉛塩から成る炎症抑制剤

【課題】使用感の良い、炎症抑制剤を提供する。
【解決手段】アシルアミノ酸酸亜鉛塩を含有することを特徴とする皮膚の炎症抑制剤を提供し、更に、当該炎症抑制剤を含有することを特徴とする化粧料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炎症性疾患又は、炎症に起因する皮膚の損傷や疾病を予防し、遅延させ、改善し若しくは治療するのに有用な炎症抑制剤、又はこのような炎症抑制剤を有効成分として含有する化粧料および皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚炎症を引き起こす要因としては、細菌やウイルスのような感染性物質、アレルギー反応を生じさせる抗原性物質、組織の損傷を引き起こす刺激因子、皮膚ガンを誘引し、皮膚老化を促進する紫外線などがある。これらの要因により、皮膚はさまざまな損傷を受けるため、その原因になっている過度の炎症反応を抑えることは、皮膚損傷の軽減につながる。
【0003】
近年、皮膚炎症の作用機序に関する研究が進んできたが、その要因として、例えばIL-1αやTNF-αといった炎症性サイトカインや、コラゲナーゼ等の細胞外マトリクス分解酵素の関与が明らかになってきた。このようなサイトカインや細胞外マトリクス分解酵素の発現は、NF-κBやAP-1といった転写調節因子によって遺伝子レベルで制御されている。例えば、太陽光に含まれる紫外線が皮膚にあたると、皮膚細胞のNF-κBやAP-1が活性化され、それが皮膚の老化促進の原因であることが報告されている(例えば、非特許文献1)。従って、これらの炎症性因子を抑制できれば、さまざまな要因で起こる皮膚障害を軽減できることが期待できる。
【0004】
皮膚損傷の原因となる炎症性因子を抑制する物質として、様々なものが報告されている。例えば、N−アセチル−L−システインのような抗酸化物質が、表皮細胞のNF-κBやAP-1活性化を抑制することが示されている(例えば、非特許文献2、3)。しかしながら、その有効濃度は10mM〜30mMで効果の程度が不十分、あるいは細胞に対する毒性が強いなどの問題があった。N−アセチル−L−システインの他には、レチノイン酸によるAP-1活性化ならびに細胞外マトリクス分解酵素発現の抑制が報告されている(例えば、非特許文献1)。しかしながら、レチノイン酸には刺激性や皮膚剥離などの副作用があり、それらの使用には制限がある。一方、皮膚炎症による傷害として、紫外線による皮膚傷害が挙げられるが、この皮膚障害は、アミノ酸の亜鉛塩や脂肪酸の亜鉛塩による皮膚の内因性抗酸化物質であるメタロチオネイン誘導により、抑制されることが知られている(例えば、特許文献1、2)。しかし、これらの化合物はその効果は不十分であり、紫外線による炎症の大きな要因であるAP-1などの遺伝子転写因子の活性化を抑制することも報告されていない。また、亜鉛関連物質である酸化亜鉛がおむつかぶれを抑制することが報告されているが(例えば、非特許文献4)、その効果は不十分であり、紫外線による炎症の大きな要因であるAP-1などの遺伝子転写因子の活性化を抑制することも報告されていない。一方、酢酸亜鉛が、血管内被細胞を亜鉛欠乏下で培養した際に上昇するAP-1活性を抑制することにより動脈硬化を防止する可能性があることが報告されているが(非特許文献5)、皮膚炎症を抑制するか否かは不明である。
【特許文献1】国際公開パンフレットWO00/44341
【特許文献2】国際公開パンフレットWO93/14748
【非特許文献1】Nature、379巻、335〜339頁、1996年
【非特許文献2】Free Rad. Biol. Med. 26巻 174-183頁
【非特許文献3】FEBS Letters, 384巻、92〜96頁、1996年
【非特許文献4】Eur. Acad. Dermatol. Veneol. 15(Suppl.1) 5-11頁、2001年
【非特許文献5】J Am. Clloge Nutrt. 16(5) 411-417頁、1997年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の背景技術をもとに、本発明の目的は、細胞外マトリクス分解酵素の遺伝子転写因子の活性化を抑制することにより、皮膚の炎症性障害を予防し、改善しまたは治療する炎症抑制成分を有効性分として含有する化粧料または皮膚外用剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(I)で表されるアシルアミノ酸の亜鉛塩が細胞外マトリクス分解酵素の遺伝子転写因子の活性化を抑制することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を少なくとも含むものである。本発明は、下記一般式(I)で表されるアシルアミノ酸の亜鉛塩から選ばれる一種または二種以上を有効性成分として含有することを特徴とする炎症抑制剤に関する。
【0008】
【化1】

【0009】
上記一般式(I)中、R1は炭素原子数2〜22のアシル基、R2は水素原子又は炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基を、R3はアミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、アスパラギン、グルタミン、セリン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン若しくはヒスチジンの側鎖又は水素原子を表し、nは0又は1の整数を表す。
【0010】
本発明の別の態様は、前記炎症抑制剤を含有することを特徴とする、炎症性疾患の予防若しくは治療剤に関する。また、本発明は、前記炎症抑制剤からなることを特徴とする化粧料添加剤又は皮膚外用剤に関する。更なる本発明の別の態様は、前記炎症抑制剤の一種又は二種以上を有効成分として含有する皮膚外用剤を皮膚に塗布することを特徴とする皮膚疾患を予防、遅延、改善又は治療する方法に関し、皮膚疾患は紫外線により促進される皮膚の加齢による変化あるいは皮膚の美容上好ましくない変化であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、化粧料等に好適に使用可能な、炎症抑制剤が得られる。
【0012】
以下、本発明の詳細を説明する。
まず、本発明に係わる化合物の具体例を説明する。一般式(I)で表されるアシルアミノ酸において、R1としては、例えば、アセチル基、プロピオイル基、イソプロピオル基、n−ブチロイル基、イソブチロイル基、sec−ブチロイル基、tert−ブチロイル基、n−アミロイル基、sec−アミロイル基、tert−アミロイル基、イソアミロイル基、n−ヘキシロイル基、シクロヘキシロイル基、n−ヘプタノイル基、n−オクタノイル基、2−エチルヘキシロイル基、ノニオイル基、イソノニオイル基、デカノイル基、イソデカノイル基、ウンデカノイル基、ラウロイル基、トリデカノイル基、イソトリデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、イソパルミトイル基、ステアロイル基、イソステアロイル基、オレオイル基、ドコサノイル基、ココイル基等を挙げることができる。中でも使用感や効果の観点から、n−オクタノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、ココイル基等が好ましく、更にラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ココイル基がとりわけ好ましい。R2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、sec−アミル基、tert−アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基又は水素原子等を挙げることができる。中でも使用感や効果の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、水素原子が好ましく、とりわけ好ましくはメチル基、水素原子である。R3としては、アミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、アスパラギン、グルタミン、セリン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン若しくはヒスチジンの側鎖又は水素原子等を挙げることができる。中でも、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジンの側鎖又は水素原子が好ましく、更に、グルタミン酸、ヒスチジンの側鎖又は水素原子がとりわけ好ましい。アミノ酸部分の立体構造については、L体、D体、DL体のいずれでもよいが、好ましくはL体である。
【0013】
ここに、好ましい置換基の組み合わせとしては、R1がn−オクタノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、ココイル基のとき、R2がメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、水素原子、R3がバリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジンの側鎖又は水素原子であり、とりわけ好ましくはR1がラウロイル基、R2が水素原子、R3がグルタミン酸、ヒスチジンの側鎖又は水素原子等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
本発明の炎症抑制剤は、経口又は非経口投与とすることができるが、皮膚表面への塗布による投与が好ましい。炎症性皮膚疾患、炎症性皮膚損傷の予防や改善の有効成分として、上記一般式(I)で表されるアシルアミノ酸の亜鉛塩、あるいは上記の有機酸の亜鉛塩を化粧料や皮膚外用剤に配合する場合は、その配合量を0.01%〜10重量%、好ましくは、0.1%〜5重量%とすることができる。0.01重量%未満の配合では炎症抑制能が十分発揮されず、また10%を超える配合量では皮膚に対してきしみ感が生じるなど使用感に問題があり、いずれも好ましくない。上記一般式(I)で表されるアシルアミノ酸の亜鉛塩を化粧料や皮膚外用剤に配合するとき、これらの成分以外に、一般に化粧料あるいは皮膚外用剤として使用される成分や賦形剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で添加することができる。
【0015】
一般に化粧料あるいは皮膚外用剤に使用されている成分としては、抗酸化剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、美白剤、細胞賦活剤、保湿剤、金属キレート剤、油性原料、界面活性剤、溶剤、高分子物質、粉体物質、色素類、香料、経皮吸収促進剤及びステロイドホルモン等を挙げることができる。
【0016】
抗酸化剤としては、例えば、レチノール、デヒドロレチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、レチナール、レチノイン酸、ビタミンA油等のビタミンA類及びそれ等の誘導体、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、クリプトキサンチン、アスタキサンチン、フコキサンチン等のカロテノイド類及びその誘導体、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサール−5−リン酸エステル、ピリドキサミン等のビタミンB類及びそれ等の誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸リン酸マグネシウム等のビタミンC類及びそれ等の誘導体、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、1,25−ジヒドロキシ−コレカルシフェロール等のビタミンD類及びそれ等の誘導体、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェノール等のビタミンE類及びそれ等の誘導体、トロロックス及びその誘導体、ジヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、α−リポ酸、デヒドロリポ酸、グルタチオン及びそれ等の誘導体、尿酸、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム等のエリソルビン酸類及びそれ等の誘導体、没食子酸、没食子酸プロピル等の没食子酸誘導体、ルチン、α−グリコシル−ルチン等のルチン誘導体、トリプトファン及びその誘導体、ヒスチジン及びその誘導体、N−アセチルシステイン、N−アセチルホモシステイン、N−オクタノイルシステイン、N−アセチルシステインメチルエステル等のシステイン誘導体、WO/0021925記載のN,N’−ジアセチルシスチンジメチルエステル、N,N’−ジオクタノイルシスチンジメチルエステル、N,N’−ジオクタノイルホモシスチンジメチルエステル等のシスチン誘導体、カルノシン及びその誘導体、ホモカルノシン及びその誘導体、アンセリン及びその誘導体、カルシニン及びその誘導体、ヒスチジン及び/又はトリプトファン及び/又はヒスタミンを含むジペプチド又はトリペプチド誘導体、フラバノン、フラボン、アントシアニン、アントシアニジン、フラボノール、クエルセチン、ケルシトリン、ミリセチン、フィセチン、ハマメリタンニン、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等のフラボノイド類、タンニン酸、コーヒー酸、フェルラ酸、プロトカテク酸、カルコン、オリザノール、カルノソール、セサモール、セサミン、セサモリン、ジンゲロン、クルクミン、テトラヒドロクルクミン、クロバミド、デオキシクロバミド、ショウガオール、カプサイシン、バニリルアミド、エラグ酸、ブロムフェノール、フラボグラシン、メラノイジン、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンヌクレオチド、ユビキノン、ユビキノール、マンニトール、ビリルビン、コレステロール、エブセレン、セレノメチオニン、セルロプラスミン、トランスフェリン、ラクトフェリン、アルブミン、ビリルビン、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、メタロチオネイン、O−ホスホノ−ピリドキシリデンローダミン、及び米国特許第5,594,012記載のN−(2−ヒドロキシベンジル)アミノ酸及びその誘導体、及びN−(4−ピリドキシルメチレン)アミノ酸及びその誘導体等を挙げることができる。
【0017】
抗炎症剤としては、例えば、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アラントイン、グアイアズレン、レゾルシン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメサゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルドキシコルチド、クロベタゾン、クロベタゾール及びこれ等ステロイド類のエステル、ケタール、アセタールおよびヘミアセタール誘導体、フルフェナム酸、ブフェキサマク、ナプロキセン、フルビプロフェン、フェンブフェン、テノキシカム、ピロキシカム、メフェナム酸、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール等のサリチル酸誘導体、D−パンテノールおよびそれ等の誘導体、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸メチルエステル、グリチルリチン酸ジカリウム等のグリチルリチン酸類及びその誘導体、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸ステアリル、ステアリン酸グリチルレチニル等のグリチルレチン酸誘導体、コンドロイチン硫酸、ε−アミノカプロン酸、ジクロフェナクナトリウム、トラネキサム酸、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェラルミン、イクタモール、γ−オリザノール、チアントール、銅クロロフィンナトリウム、アシタバ抽出物、アルニカ抽出物、アロエ抽出物、イブキトラノオ抽出物、ウコン抽出物、オトギリソウ抽出物、カミツレ抽出物、カンゾウ抽出物、キンギンカ抽出物、クレソン抽出物、コンフリー抽出物、ゴカヒ抽出物、サルビア抽出物、シコン抽出物、シソ抽出物、シラカバ抽出物、茶抽出物、トウキ抽出液、トウキンセンカ抽出物、ニワトコ抽出物、ホオウ抽出物、ムクロジ抽出物、ヨモギ抽出物、ユーカリ抽出物、レンゲソウ抽出物、酸化亜鉛等を挙げることができる。
【0018】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸ナトリウム、パラメトキシケイ皮酸カリウム、パラメトキシケイ皮酸−2−エトキシエチル、パラメトキシハイドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩、ジパラメトキシケイ皮酸−モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、メトキシケイ皮酸オクチル、ジイソプロピルケイ皮酸メチル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン硫酸ナトリウム、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸ナトリウム、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸ブチル、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラアミノ安息香酸アミル等の安息香酸系紫外線吸収剤、サリチル酸−2−エチルヘキシル、サリチル酸トリエタノールアミン、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸アミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸イソプロピルベンジル、サリチル酸ミリスチル、サリチル酸カリウム等のサリチル酸系紫外線吸収剤、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、4−メトキシジベンゾイルメタン、4−tert−ブチル−4’−ヒドロキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル等のウロカニン酸系紫外線吸収剤、メンチル−O−アミノベンゾエート、2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、3−(4−メチルベンジリデン)カンフル、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、アントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、アントラニル酸メンチル、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]−1,3,5−トリアジン、3,3’−(1,4−フェニレンジメチリジン)ビス(7,7−ジメチル−2−オキソ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−メタンスルホン酸)(Mexoryl SX)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛等を挙げることができる。
【0019】
美白剤としては、例えば、チロシナーゼ阻害薬、エンドセリン拮抗薬、α−MSH阻害薬、グラブリジン、グラブレン、リクイリチン、イソリクイリチン、エラグ酸及びその誘導体、コウジ酸及びその誘導体、アルブチン等のハイドロキノン及びその誘導体、システイン及びその誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸リン酸マグネシウム等のビタミンC類及びそれ等の誘導体、グルタチオン及びその誘導体、レゾルシン及びその誘導体、ネオアガロビオース、アガロースオリゴサッカライド、アスパラガス抽出物、アルテア抽出物、イブキトラノオ抽出物、インチンコウ抽出物、エンドウ豆抽出物、エイジツ抽出物、オウゴン抽出物、オノニス抽出物、海藻抽出物、火棘抽出物、カンゾウ抽出物、キイチゴ抽出物、クジン抽出物、黒砂糖抽出物、ケイケットウ抽出物、ゴカヒ抽出物、小麦胚芽抽出物、サイシン抽出物、サンザシ抽出物、サンペンズ抽出物、シャクヤク抽出物、シラユリ抽出物、センプクカ抽出物、ソウハクヒ抽出物、大豆抽出物、胎盤抽出物、タラノキ抽出物、茶抽出物、トウキ抽出物、糖蜜抽出物、ノイバラ抽出物、ビャクレン抽出物、ブドウ種子抽出物、ブナノキ抽出物、フローデマニータ抽出物、ホップ抽出物、マイカイカ抽出物、モッカ抽出物、ユキノシタ抽出物、ヨクイニン抽出物、羅漢果抽出物等を挙げることができる。
【0020】
細胞賦活剤としては、例えば、デオキシリボ核酸、アデニル酸、リボ核酸、サイクリックAMP、サイクリックGMP、フラビンアデニンヌクレオチド、グアニン、アデニン、シトシン、チミン、キサンチン、カフェイン、テオフェリン等の核酸関連物質及びそれ等の誘導体、レチノール、デヒドロレチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、レチナール、レチノイン酸、ビタミンA油等のビタミンA類及びそれ等の誘導体、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、クリプトキサンチン、アスタキサンチン、フコキサンチン等のカロテノイド類及びそれ等の誘導体、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサール−5−リン酸エステル、ピリドキサミン等のビタミンB類及びそれ等の誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸リン酸マグネシウム等のビタミンC類及びそれ等の誘導体、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、1,25−ジヒドロキシ−コレカルシフェロール等のビタミンD類及びそれ等の誘導体、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェノール等のビタミンE類及びそれ等の誘導体、トロロックス及びその誘導体、ヒノキチオール、セファランチン、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸及びそれ等の誘導体、グリコール酸、コハク酸、乳酸、サリチル酸から選ばれる有機酸およびそれ等の誘導体、エストラジオール及びその誘導体、シルクプロテイン及びその分解物又はそれ等の誘導体、ヘモグロビン又はその分解物、ラクトフェリン又はその分解物、ローヤルゼリー、胎盤抽出物、幼牛血液抽出液、血清除蛋白抽出物、脾臓抽出物、卵成分、鶏冠抽出物、貝殻抽出物、貝肉抽出物、軟体動物抽出物、魚肉抽出物等の動物由来の抽出物、発酵代謝産物等の微生物由来の抽出物、アスパラガス抽出物、アンズ抽出物、イチョウ抽出物、オウバク抽出物、オオムギ抽出物、オタネニンジン抽出物、オレンジ抽出物、キウイ抽出物、キュウリ抽出物、シイタケ抽出物、スギナ抽出物、センブリ抽出物、タイソウ抽出物、トウガラシ抽出物、トウキンセンカ抽出物、ニンジン抽出物、ニンニク抽出物、ブクリョウ抽出物、ブドウ種子抽出物、ブナの芽抽出物、モモ抽出物、ユーカリ抽出物、霊芝抽出物、レタス抽出物、レモン抽出物、ローズマリー抽出物等の植物抽出物等を挙げることができる。
【0021】
保湿剤としては、例えば、ムコ多糖類、タンパク質又は蛋白質分解物及びそれ等の誘導体、大豆又は卵由来のリン脂質、糖脂質、セラミド、ムチン、ハチミツ、エリスリトール、マルトース、マルチトール、キシリトール、キシロース、ペンタエリスリトール、フルクトース、デキストリン等の糖類及びそれ等の誘導体、ヒアルロン酸等の酸性多糖類、尿素、アスパラギン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、イソロイシン、オルニチン、グルタミン、グリシン、グルタミン酸、システイン、シスチン、シトルリン、スレオニン、セリン、チロシン、トリプトファン、テアニン、バリン、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、ピロリドンカルボン酸、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、リジン等のアミノ酸及びそれ等の誘導体、D−パンテノール、ホエイプロテイン、アシタバ抽出物、アボカド抽出物、アーモンド抽出物、アルテア抽出物、アルニカ抽出物、アロエ抽出物、イチゴ抽出物、イナゴマメ抽出物、イネ抽出物、インチンコウ抽出物、ウイキョウ抽出物、ウコン抽出物、ウスベニアオイ抽出物、エゴマ油、オウゴン抽出物、オウレン抽出物、オドリコソウ抽出物、オトギリソウ抽出物、オノニス抽出物、オリーブ油、海藻抽出物、カカオ脂、カミツレ抽出物、カラスムギ抽出物、ガルシニアカンボジア抽出物、カンゾウ抽出物、キイチゴ抽出物、キズタ抽出物、キンギンカ抽出物、クチナシ抽出物、クマザサ抽出物、グレープフルーツ抽出物、クジン抽出物、クレソン抽出物、ゲンチアナ抽出物、ゲンノショウコ抽出物、ゴボウ抽出物、コボタンヅル抽出物、ゴマ抽出物、コムギ抽出物、コンフリー抽出物、サイシン抽出物、サボテン抽出物、サボンソウ抽出物、サルビア抽出物、サンザシ抽出物、シア脂、シソ抽出物、ジオウ抽出物、シモツケ抽出物、シャクヤク抽出物、ショウガ抽出物、シラカバ抽出物、ゼニアオイ抽出物、センキュウ抽出物、ソウハクヒ抽出物、大豆抽出物、タチジャコウソウ抽出物、茶抽出物、ツバキ抽出物、トウキ抽出物、トウモロコシ抽出物、冬虫夏草抽出物、ドクダミ抽出物、トルメンチラ抽出物、ハウチマメ抽出物、バクモンドウ抽出物、パセリ抽出物、ハッカ抽出物、ミドリハッカ抽出物、セイヨウハッカ抽出物、ハマメリス抽出物、バラ抽出物、ヒノキ抽出物、ヒマワリ抽出物、ブドウ抽出物、ブッチャーズブルーム抽出物、プルーン抽出物、ヘチマ抽出物、ボダイジュ抽出物、ボタン抽出物、ホップ抽出物、ホホバ油、ボラージ油、マカデミアナッツ抽出物、マツ抽出物、マルメロ抽出物、マロニエ抽出物、ムクロジ抽出物、ムラサキ抽出物、メドウホーム油、メリッサ抽出物、ヤグルマソウ抽出物、ユキノシタ抽出物、ユズ抽出物、ユリ抽出物、ヨクイニン抽出物、ライム抽出物、羅漢果抽出物、ラベンダー抽出物リンゴ抽出物、リンドウ抽出物、レンゲソウ抽出物、ワレモコウ抽出物、アルカリ単純温泉水、深層水等を挙げることができる。
【0022】
金属キレート剤としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、サリチル酸、酒石酸、グルコン酸、フィチン酸及びそれ等の誘導体、エチレンジアミン四酢酸及びその誘導体、ジエチレントリアミン五酢酸及びその誘導体、N−カルボキシメチル−アスパラギン酸及びその誘導体、N−カルボキシメチル−グルタミン酸及びその誘導体、N,N−ビス(カルボキシメチル)−アスパラギン酸及びその誘導体、N,N−ビス(カルボキシメチル)−グルタミン酸及びその誘導体、N,N−ビス(コハク酸)−エチレンジアミン及びその誘導体及び、デスフェリオキサミン、O−フェナントロリン、トランスフェリン、フェリチン、ラクトフェリン、コーヒー酸、マルトール、プルプロガリン、ピロガロール、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0023】
油性原料としては、例えば、動植物油等の油脂類、ラノリン等のロウ類、パラフィン等の炭化水素類、セタノール等の高級アルコール類、ステアリン酸等の高級脂肪酸類、ステロール類、レシチン等のリン脂質類、ミリスチン酸等の合成エステル類、金属石鹸類、シリコーン油、ペルフルオロポリマー類、ペルフルオロポリエーテル類等を挙げることができる。
【0024】
界面活性剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、乳化剤、可溶化剤等を挙げることができる。
【0025】
溶剤としては、例えば、エタノール等の低級アルコール類、エーテル類、グリセリン類、液状非イオン界面活性剤類、液状油性原料類、その他の有機溶剤、水等を挙げることができる。
【0026】
高分子物質としては、例えば、ポリアスパラギン酸、ε−ポリリジン、γ−ポリグルタミン酸等のポリアミノ酸及びその誘導体、コラーゲン、エラスチン等の天然高分子化合物、部分脱アセチル化キチン等の半合成高分子化合物、カルボキシメチルセルロース等の合成高分子化合物等を挙げることができる。
【0027】
粉末物質としては、例えば、タルク等の無機顔料、合成マイカ等の機能性顔料、微粒子複合粉体(ハイブリッドファインパウダー)、二酸化チタン被覆雲母等の真珠光沢顔料、ホトクロミック顔料、ナイロンパウダー等の高分子粉体、N−ε−ラウロイルリジン等の有機粉体等を挙げることができる。
【0028】
色素類としては、例えば、法定タール色素第一類、法定タール色素第二類、法定タール色素第三類、染毛剤、天然色素、鉱物性色素等を挙げることができる。
【0029】
香料としては、例えば、ジャコウ等の動物性香料、ジャスミン油等の植物性香料、α−アミルシンナムアルデヒド等の合成香料、調合香料等を挙げることができる。
【0030】
経皮吸収促進剤としては、例えば、尿素、2−ピロリドン、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−メントール、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチン酸イソプロピル、酢酸n−ヘキシル、オレイン酸等を挙げることができる。
【0031】
ステロイドホルモンとしては、21−アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニソン、クロベタソル、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチカゾル、デフラザコルト、デソニド、ジフロラソン、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、エノキソロン、フルアザコルト、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロンアセテート、フルプレドニデンアセテート、フルプレドニソロン、フルランドレノリド、ホルモコルタル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ハロプレドノンアセテート、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンホスフェート、ヒドロコルチゾン−21−ナトリウムスクシネート、ヒドロコルチゾンテルブテート、マジイプレドン、メドリゾン、メプレドニソン、メチルプレドニソロン、モメタゾンフロエート、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニソロン−21−ジエチルアミノアセテート、プレドノソロンナトリウムホスフェート、プレドノソロンナトリウムスクシネート、プレドノソロンナトリウム−21−m−スルホベンゾエート、プレドニソロン−21−ステアロイルグリコレート、プレドニソロンテルブテート、プレドノソロン−21−トリメチルアセテート、プレドノソン、プレドニバル、プレドニリデン、プレドニリデン−21−ジエチルアミノアセテート、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンヘキサセトニド、及びフルチカゾン等を挙げることができる。
【0032】
上記アシルアミノ酸亜鉛塩を含有する化粧料あるいは皮膚外用剤の剤型には特に制限はなく、溶液状、ペースト状、ゲル状、固体状、粉末状等任意の剤型をとることができる。また、本発明の化粧料或いは皮膚外用剤は、オイル、ローション、クリーム、乳液、ゲル、シャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、エナメル、ファンデーション、リップスティック、おしろい、パック、軟膏、錠剤、注射液、顆粒、カプセル、香水、パウダー、オーデコロン、歯磨、石鹸、エアゾル、クレンジングフォーム等の他、皮膚老化防止改善剤、皮膚炎症防止改善剤、浴用剤、養毛剤、皮膚美容液、日焼け防止剤、色素性乾皮症・日光蕁麻疹等の光線過敏症の防止改善剤、光アレルギーの防止改善剤、光免疫抑制の防止改善剤あるいは、外傷・あかぎれ・ひびわれ等による肌荒れの防止改善剤、消毒剤、抗菌剤、殺虫剤、害虫駆除剤、角質溶解剤、表皮剥離剤、ニキビの防止改善剤、角化症・乾皮症・魚鱗癬・乾癬等の各種皮膚疾患の防止改善剤等に用いることができる。
【0033】
更に化粧料または皮膚外用剤におけるその他の常用成分を、上記成分アシルアミノ酸亜鉛塩または有機酸亜鉛塩を含有する化粧料あるいは皮膚外用剤に本発明の効果を阻害しない範囲で添加することができる。化粧料または皮膚外用剤におけるその他の常用成分としては、防腐剤、褪色防止剤、緩衝剤、にきび用薬剤、ふけ・かゆみ防止剤、制汗防臭剤、熱傷用薬剤、抗ダニ・シラミ剤、角質軟化剤、乾皮症用薬剤、抗ウイルス剤、ホルモン類、ビタミン類、アミノ酸・ペプチド類、タンパク質類、収れん剤、清涼・刺激剤、動植物由来成分、抗生物質、抗真菌剤、育毛剤等を挙げることができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例(合成例、試験例および配合例)により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、これらの実施例において、配合量は重量%で表した。
【0035】
合成例1 ラウロイル−L−グルタミン酸亜鉛塩、ラウロイルグリシン亜鉛塩、ラウロイル−L−ヒスチジン亜鉛塩の合成
ラウロイル−L−グルタミン酸亜鉛塩は以下の方法にて合成した。常法により合成したラウロイル−L−グルタミン酸250mg(0.76mmole)を10mlのエチルアルコールに溶解し、これとは別に1%の酢酸亜鉛(和光純薬)エタノール溶液を調製した。この1%酢酸亜鉛18.4ml(酢酸亜鉛 0.84mmole, ラウロイル−L−グルタミン酸に対して1.1当量)を、先に調製したラウロイル−L−グルタミン酸エタノール溶液10mlに加え、生成した沈殿をろ別した。得られた沈殿を水、エタノール、アセトンで洗浄後減圧乾燥し、ラウロイル−L−グルタミン酸亜鉛塩200mgを得た。ラウロイルグリシン亜鉛塩、ラウロイル−L−ヒスチジン亜鉛塩はそれぞれ常法に従い合成したラウロイルアミノ酸と酢酸亜鉛を上記と同様に反応することにより合成した。これらは文献未収載の新規化合物である。これらの化合物の元素分析測定結果を下記表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
試験例1 紫外線によるAP-1活性化に対するアシルアミノ酸亜鉛塩の作用
培養プレート内でコンフルエントに達したヒト真皮繊維芽細胞に損傷を与えない濃度範囲で被験化合物を添加して18時間経過後、培養液をフェノールレッド不含培地に置換した。デルマレイM−DMR−80(東芝医療用品社製)を用いて細胞に紫外線(UVA:20J/cm2)を照射した。4〜5時間経過後、細胞を回収し、常法により核蛋白質を抽出した。得られた核蛋白質についてゲルシフトアッセイ法により活性化されたAP-1を検出した。バイオイメージングアナライザーBAS2000(富士フィルム社製)を用いて、AP-1バンドの放射活性値を測定することにより、AP-1の定量を行った。
被験化合物のAP-1活性化抑制率は次式により算出した。
AP-1活性化抑制率(%) = 1−(A1−A3)/(A2−A3) x 100
A1:被験化合物添加時のAP-1バンドの放射活性値
A2:被験化合物未添加時のAP-1バンドの放射活性値
A3:被験化合物未添加で紫外線照射も行わなかった時のAP-1バンドの放射活性
【0038】
本発明に係わる被験化合物と比較化合物の結果を下記表2に示す。被験物質であるラウロイルアミノ酸の亜鉛塩は、皮膚のメタロチオネインを誘導することによる紫外線防御作用が知られているグリシン、L−グルタミン酸のようなアミノ酸の亜鉛塩(例えば、WO−9314748)やラウリン酸のような脂肪酸の亜鉛塩(例えば、WO−0044341)に比べ高い抑制率を示した。これらの結果は本発明に係わる化合物は既知のアミノ酸亜鉛や脂肪酸亜鉛にはない、高い炎症抑制作用を有することを示している。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
次に本発明の炎症抑制剤を使用した種々の製剤の配合例1〜13を示す。
配合例1クリーム
ラウロイルグルタミン酸亜鉛塩 0.5%
ステアリン酸 2.0
ポリオキシエチレン(25)セチルエーテル 3.0
モノステアリン酸グリセリル 2.0
オクチルドデカノール 10.0
セタノール 6.0
還元ラノリン 4.0
スクワラン 9.0
1,3−ブチレングリコール 6.0
ポリエチレングリコール (1500) 4.0
防腐剤 適量
香料 適量
酸化防止剤 適量
精製水 適量
【0042】
配合例2 乳液
ラウロイルグリシン亜鉛塩 1.0%
セスキオレイン酸ソルビタン 2.0
ポリオキシエチレンオレオイルエーテル 2.5
ステアリルアルコール 0.5
硬化パーム油 3.0
流動パラフィン 35.0
ジプロピレングリコール 6.0
ポリエチレングリコール(400) 4.0
カルボキシビニルポリマー(1%水溶液) 15.0
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残部
【0043】
配合例3 ジェル
ラウロイルヒスチジン亜鉛塩 0.5%
流動パラフィン 12.0
トリ(2−エチルヘキサン酸)グリセリル 50.0
ソルビット 10.0
ポリエチレングリコール(400) 5.0
アシルメチルタウリン 5.0
ポリオキシエチレン(20)イソセチルエーテル 10.0
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残部
【0044】
配合例4 美容液
ラウロイルグルタミン酸亜鉛塩 1.0%
p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル 5.0
3,3‘−(1,4−フェニレンジメチリヂン)
ビス(7,7−ジメチル−2−オキソ−
ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−1−メタンスルフォン酸) 4.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.0
モノステアリン酸グリセリン 2.0
ステアリン酸 3.0
セタノール 1.0
ラノリン 3.0
流動パラフィン 5.0
ステアリン酸2−エチルヘキシル 3.0
1,3−ブチレングリコール 6.0
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残部
【0045】
配合例5 化粧水
ラウロイルグルタミン酸亜鉛塩 0.2%
グリセリン 3.0
ソルビトール 2.0
ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル 1.0
エタノール 15.0
パラフェノールスルフォン酸亜鉛 0.2
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残部
【0046】
配合例6 化粧水
ラウロイルグリシン亜鉛塩 0.1%
クエン酸 1.0
尿素 4.0
乳酸 2.0
グリセリン 2.0
ベタイン 2.0
ヒアルロン酸 0.1
エタノール 15.0
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるアシルアミノ酸誘導体の亜鉛塩の1又は2種以上を含有することを特徴とする炎症抑制剤。
【化1】

上記一般式(I)中、R1は炭素原子数2〜22のアシル基、R2は水素原子又は炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基を、R3はアミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、アスパラギン、グルタミン、セリン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン若しくはヒスチジンの側鎖又は水素原子を表し、nは0又は1の整数を表す。
【請求項2】
下記一般式(II)で表されるアシルアミノ酸の亜鉛塩の1又は2種以上を含有することを特徴とする炎症抑制剤。
【化2】

上記一般式(II)中、R4は炭素原子数2〜22のアシル基、R5はアミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、アスパラギン、グルタミン、セリン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン若しくはヒスチジンの側鎖又は水素原子を表す。
【請求項3】
下記一般式(II)で表されるアシルアミノ酸の亜鉛塩の1又は2種以上を含有することを特徴とする炎症抑制剤。
【化3】

上記一般式(II)中、R4がオクタノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル又はココイル基、R5がアミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、アスパラギン、グルタミン、セリン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン若しくはヒスチジンの側鎖又は水素原子を表す。
【請求項4】
下記一般式(II)で表されるアシルアミノ酸の亜鉛塩の1又は2種以上を含有することを特徴とする炎症抑制剤。
【化4】

上記一般式(II)中、R4がオクタノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル又はココイル基、R5がアミノ酸であるグルタミン酸若しくはヒスチジンの側鎖又は水素原子を表す。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の炎症抑制剤を含有してなることを特徴とする皮膚炎症性疾患の予防または治療剤。
【請求項6】
皮膚炎症性疾患が紫外線誘起疾患であることを特徴とする請求項5に記載の予防または治療剤。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の炎症抑制剤を含有してなることを特徴とする化粧料添加剤。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の炎症抑制剤を含有してなることを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の炎症抑制剤から選ばれる一種または二種以上を有効成分として含有する化粧料または皮膚外用剤を皮膚に塗布することを特徴とする紫外線により促進される皮膚の加齢による変化あるいは皮膚の美容上好ましくない変化を予防し、遅延させ、改善しまたは治療するための方法。

【公開番号】特開2007−261946(P2007−261946A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180880(P2004−180880)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】