アシルスルホンアミドの多形体
本願は、単剤療法又は併用療法によるHIV介在疾患、AIDS又はARCの治療及び予防のための、製造、取扱い及び処方を容易にする、改良された安定性及び物理的特性を有する、2−[4−ブロモ−3−(3−クロロ−5−シアノ−フェノキシ)−2−フルオロ−フェニル]−N−(2−クロロ−4−プロピオニルスルファモイル−フェニル)−アセトアミドナトリウム塩(Ib):の新規な多形結晶型を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単剤療法又は併用療法によるHIV介在疾患、AIDS又はARCの治療及び予防のための、製造、取扱い及び処方を容易にする、改良された安定性及び物理的特性を有する、2−[4−ブロモ−3−(3−クロロ−5−シアノ−フェノキシ)−2−フルオロ−フェニル]−N−(2−クロロ−4−プロピオニルスルファモイル−フェニル)−アセトアミドナトリウム塩の新規な多形結晶型に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルスHIVは、免疫系、特にCD4+T細胞の破壊を特徴とし、日和見感染への感受性を伴う疾患である、後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因病原体である。HIV感染は、また、持続性全身性リンパ節腫大、発熱及び体重減少などの症状を特徴とする症候群の前駆AIDS関連症候群(ARC)にも関係している。
【0003】
他のレトロウイルスと同様に、HIVのゲノムは、gag及びgag−polとして知られているタンパク質前駆体をコードしており、これがウイルスプロテアーゼにより処理されることで、プロテアーゼ、逆転写酵素(RT)、エンドヌクレアーゼ/インテグラーゼ及びウイルスコアの成熟構造タンパク質を生成する。この過程を遮断すると、通常の感染性ウイルスの産生が阻害される。ウイルスがコードする酵素を阻害することによるHIVの制御に多大な労力が注がれてきた。
【0004】
現在、利用可能な化学療法は2つの重要なウイルス酵素(HIVプロテアーゼ及びHIV逆転写酵素)を標的としている(J. S. G. Montaner et al. Antiretroviral therapy: 'the state of the art', Biomed & Pharmacother. 1999 53:63- 72; R. W. Shafer and D. A. Vuitton, Highly active retroviral therapy (HAART) for the treatment of infection with human immunodeficiency virus type, Biomed. & Pharmacother.1999 53 :73-86; E. De Clercq, New Developments in Anti-HIV Chemotherap. Curr. Med. Chem. 2001 8:1543-1572)。RTI阻害剤の一般的な二つのクラス、すなわちヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)及び非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤が確認されている。
【0005】
NRTIは、典型的には、ウイルスRTと相互作用する前にリン酸化されなければらなない2’,3’−ジデオキシヌクレオシド(ddN)類縁体である。その対応する三リン酸は、ウイルスRTの拮抗阻害剤又は代替基質として機能する。ヌクレオシド類縁体は、核酸に組み込まれた後、鎖伸長プロセスを終結させる。HIV逆転写酵素はDNA編集能力を有し、そのDNA編集能力は、耐性株がヌクレオシド類縁体を開裂し鎖伸長を続けることで、阻害を克服できるようにする。これまで臨床的に使用されてきたNRTIには、ジドブジン(AZT)、ジダノシン(ddI)、ザルシタビン(ddC)、スタブジン(d4T)、ラミブジン(3TC)及びテノホビル(PMPA)がある。
【0006】
NNRTIは、1989年に初めて発見された。NNRTIは、アロステリック阻害剤であり、HIV逆転写酵素の非基質結合部位に可逆的に結合することにより、活性部位の形状を改変させたり、ポリメラーゼ活性を阻害したりする(R. W. Buckheit, Jr., Non-nucleoside reverse transcriptase inhibitors: perspectives for novel therapeutic compounds and strategies for treatment of HIV infection, Expert Opin. Investig. Drugs 200110(8)1423-1442; E. De Clercq The role of non-nucleoside reverse transcriptase inhibitors (NNRTIs) in the therapy of HIV infection, Antiviral Res. 1998 38:153-179; E. De Clercq New Developments in Anti-HIV Chemotherapy, Current medicinal Chem. 2001 8(13):1543-1572; G. Moyle, The Emerging Roles of Non-Nucleoside Reverse Transcriptase Inhibitors in Antiviral Therapy, Drugs 2001 61 (1):19-26)。実験室で、30種を超えるNNRTIが同定され構造的に分類されているが、わずか3種類の化合物(エファビレンツ、ネビラピン及びデラビルジン)のみがHIV治療において承認されている。
【0007】
当初、有望なクラスの化合物と見られていたが、in vitro及びin vivo研究から、NNRTIは薬剤耐性HIV株及びクラス特異的な毒性の出現に対する障壁が低いことが間もなく明らかとなった。薬剤耐性はしばしば、RTの単一点突然変異のみから生じる。NRTI、PI及びNNRTIとの併用療法により、多くの事例で、ウイルス量を劇的に低下させ、病気の進行を遅らせたが、重大な治療上の課題が未だ残っている(R. M. Gulick, Eur. Soc. Clin. Microbiol. and Inf. Dis. 2003 9(3):186-193)。多剤併用療法は、全ての患者に有効であるという訳ではなく、潜在的に重篤な有害反応がたびたび生じることがあり、急速に複製するHIVウイルスは野生型プロテアーゼ及び逆転写酵素の薬剤耐性突然変異体を巧みに作り出すことが分かった。HIVの野生型および一般的な耐性株に対する活性を有するより安全な薬剤が必要とされている。
【0008】
式Ib:
【化1】
【0009】
の化合物である2−[4−ブロモ−3−(3−クロロ−5−シアノ−フェノキシ)−2−フルオロ−フェニル]−N−(2−クロロ−4−プロピオニルスルファモイル−フェニル)−アセトアミドナトリウム塩が、その調製方法、及びHIV逆転写酵素の阻害剤としての活性と共に米国特許第7,166,738号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
酸性及び塩基性化合物の塩は、親化合物の物理的特性を改変または改良することができる。しかし、各剤形における親化合物の挙動に対して塩の種類が及ぼす影響を予測する信頼性の高い方法がないので、これらの塩形成物質は、医薬化学者により経験的に同定されなければならない。
【0011】
多形性は、任意の元素または化合物が二個以上の異なる結晶型として結晶化することができる能力である。様々な塩の多形型が、しばしば、薬学的に有用な化合物の中に発見されている。溶解度、融点、密度、硬度、結晶形状及び安定性などの物理的特性は、同一化合物でも、多形型が異なると大きく異なり得る。
【0012】
多形型は、散乱技術、例えば、粉末X線回折パターンによって、分光法、例えば、赤外線、13C核磁気共鳴分光法によって、及び熱的手法、例えば、示差走査熱量測定又は示差熱分析法によって特徴付けられる。多形体は、当該技術分野で公知の方法に従って測定した粉末X線回折パターンにより特徴付けるのが最も良い。これらの技術についての考察は、J. Haleblian, J. Pharm. Sci. 1975 64:1269-1288, and J. Haleblain and W. McCrone, J. Pharm. Sci. 1969 58:911-929を参照されたい。多形体における異なるバッチの粉末X線回折パターンのピーク強度はわずかに異なるが、ピーク及びその関連するピーク位置は、特定の多形型に特徴的なものである。
【0013】
解決すべき課題は、以下の適切な塩及び/又は多形体を同定することである。(i)製造過程で適切な物理化学的安定性を有し、(ii)効率的に調製、精製、及び回収され、(ii)薬学的に許容し得る溶媒に許容し得る溶解性を示し、(iii)操作性(例えば、流動性及び粒子サイズ)、及び化合物の物理化学的特性の低下又は変化が無視できる程度に製剤化することが容易であり、(iv)製剤化において許容可能な物理化学的安定性を示す。更に、治療上有効な投与量を生むために、処方し、投与しなければならない物質の量を最小限にするために、得られる物質が高モルパーセントの活性成分を含むように、モル重量に対して占める割合が低い塩が非常に望ましい。これらの、しばしば相反する要件が、適切な塩の同定を困難で重要な課題としており、これは、薬剤開発を本格的に進める前に、熟練した医薬科学者が解決すべき課題である。
【0014】
本発明は、2−[4−ブロモ−3−(3−クロロ−5−シアノ−フェノキシ)−2−フルオロ−フェニル]−N−(2−クロロ−4−プロピオニルスルファモイル−フェニル)−アセトアミドナトリウム塩(Ib):
【化2】
【0015】
の9種の多形結晶型(I〜IX)、多形結晶型I〜IXの調製方法、多形型I〜IXを含有する医薬組成物、及び多形型I〜IXを使用したHIV関連疾患の処置方法に関する。
【0016】
本願は、式Ib:
【化3】
【0017】
で表される化合物の結晶型を提供する。
【0018】
本願は、更に、化合物(Ib)をTHF、水及びnBuAcから結晶化することを含む、上記式Ibで表される化合物の結晶型の多形体の調製方法を提供する。
【0019】
本願は、更に、上記方法に従って調製した式Ibで表される化合物の多形結晶型を提供する。
【0020】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(I型)を提供する:
【0021】
【表1】
【0022】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(II型)を提供する:
【0023】
【表2】
【0024】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(III型)を提供する:
【0025】
【表3】
【0026】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(IV型)提供する:
【0027】
【表4】
【0028】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(V型)を提供する:
【0029】
【表5】
【0030】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(VI型)を提供する:
【0031】
【表6】
【0032】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(VII型)を提供する:
【0033】
【表7】
【0034】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(VIII型)を提供する:
【0035】
【表8】
【0036】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(IX型)を提供する:
【0037】
【表9】
【0038】
本願は、更に、化合物(Ib)をTHF/水/n−ブタノール/酢酸n−ブチル、THF/nBuAc、ブタノン、又はメチルイソブチルケトンから結晶化することを含む、多形結晶型(III型)の調製方法を提供する。
【0039】
本願は、更に、化合物(Ib)をTHF/水/酢酸ブチル、アセトニトリル、アセトニトリル/水、又はイソプロパノール/水から結晶化することを含む、多形結晶型(VIII型)の調製方法を提供する。
【0040】
本願は、更に、化合物(Ib)をアセトニトリルから結晶化することを含む、多形結晶型(IX型)の調製方法を提供する。
【0041】
本願は、更に、治療有効量の化合物Ibの多形型I〜IXのいずれか一個を、それを必要とする患者に投与することを含む、HIVに関連した疾患の処置方法を提供する。
【0042】
本願は、更に、免疫系調節薬又は抗ウイルス性化合物を投与することを更に含む、上記方法を提供する。
【0043】
本願は、更に、化合物Ibの多形型I〜IXのいずれか一個を、少なくとも一個の薬学的に許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤との混合物として含む、医薬組成物を提供する。
【0044】
本願は、更に、治療有効量の非晶質状態の化合物Ibを、それを必要とする患者に投与することを含む、HIVに関連する疾患の処置方法を提供する。
【0045】
本願は、更に、免疫系調節薬又は抗ウイルス性化合物を投与することを更に含む、上記方法を提供する。
【0046】
本願は、更に、非晶質状態の化合物Ibを、少なくとも一個の薬学的に許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤との混合物として含む、医薬組成物を提供する。
【0047】
当業者は、添付の図面を参照することによって本発明の多数の特徴及び利点を明確に理解できるだろう:
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、Ibの多形型I型の粉末X線回折パターンを示す。
【図2a】図2aは、Ibの多形型II型の粉末X線回折パターンを示す。
【図2b】図2bは、Ibの多形型II型の示差走査熱量測定(DSC)トレース及び熱重量分析(TGA)トレースを示す。
【図3a】図3aは、Ibの多形型III型の粉末X線回折パターンを示す。
【図3b】図3bは、Ibの多形型III型の示差走査熱量測定(DSC)トレース及び熱重量分析(TGA)トレースを示す。
【図4】図4は、Ibの多形型IV型の粉末X線回折パターンを示す。
【図5】図5は、Ibの多形型V型の粉末X線回折パターンを示す。
【図6】図6は、Ibの多形型VI型の粉末X線回折パターンを示す。
【図7】図7は、Ibの多形型VII型の粉末X線回折パターンを示す。
【図8a】図8aは、Ibの多形型VIII型の粉末X線回折パターンを示す。VIII型の回折データを本明細書の表8に示す。
【図8b】図8bは、Ibの多形型VIII型の示差走査熱量測定(DSC)トレース及び熱重量分析(TGA)トレースを示す。
【図9a】図9aは、Ibの多形型IX型の粉末X線回折を示す。
【図9b】図9bは、Ibの多形型IX型の示差走査熱量測定(DSC)トレース及び熱重量分析(TGA)トレースを示す。
【図10】図10は、非晶質状態のIbの粉末X線回折を示す。
【図11】図11は、Ibの結晶性多形体I〜IX型及び非晶質状態のIbの相互変換スキームを示す。
【0049】
新規な2−[4−ブロモ−3−(3−クロロ−5−シアノ−フェノキシ)−2−フルオロ−フェニル]−N−(2−クロロ−4−プロピオニルスルファモイル−フェニル)−アセトアミドナトリウム塩(Ib)の結晶型は、化合物の製造及び処方を容易にする優れた化学及び物理的特性を有することを確認した。本発明の実施態様において、式Ib:
【化4】
【0050】
で表される化合物の結晶型が提供される。
【0051】
本発明の別の実施態様において、提供される。
【0052】
I型の粉末X線回折を図1に示し、数値を表Iに示す。
【0053】
【表10】
【0054】
II型の粉末X線回折を図2aに示し、数値を表IIに示す。
【0055】
【表11】
【0056】
III型の粉末X線回折を図3aに示し、数値を表IIIに示す。
【0057】
【表12】
【0058】
IV型の粉末X線回折を図4に示し、数値を表IVに示す。
【0059】
【表13】
【0060】
V型の粉末X線回折を図5に示し、数値を表Vに示す。
【0061】
【表14】
【0062】
VI型の粉末X線回折を図6に示し、数値を表VIに示す。
【0063】
【表15】
【0064】
VII型の粉末X線回折を図7に示し、数値を表VIIに示す。
【0065】
【表16】
【0066】
VIII型の粉末X線回折を図8aに示し、数値を表VIIIに示す。
【0067】
【表17】
【0068】
IX型の粉末X線回折を図9示し、数値を表IXに示す。
【0069】
【表18】
【0070】
熱重量分析(TGA)を、図2b、3b、8b、及び9bのそれぞれに示すように、II、III、VIII、及びIX型について実施し、温度を変化に伴う試料の質量変化を記録する。物理化学的安定性は、それぞれ図2b、3b、8b、及び9bにおいて、測定DSCサーモグラムで示される。
【0071】
定義
本明細書で使用される、語句「a」又は「an」の実体は、その実体の一個以上を指し、例えば、「a」化合物は、一個以上の化合物又は少なくとも一個の化合物を指す。そのようなものとして、用語「a」(又は「an」)、「一個以上の」、及び「少なくとも一個の」は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0072】
語句「本明細書の前記で定義される」は、本発明の概要で最初になされた定義を指す。
【0073】
用語「非晶質状態」及び「非晶質物質」は、本明細書で互換的に使用され、非晶質状態の式Ibの化合物を指す。
【0074】
本明細書で使用される、用語「場合による」又は「場合により」は、後に記載される事象又は状況が、起こる必要がないが、起こってもよいことを意味し、本明細書が、その事象又は状況が起こる場合、及び起こらない場合を含むことを意味する。例えば、「場合により置換された」は、その部分が水素又は置換基であってもよいことを意味する。
【0075】
本明細書で使用される、用語「溶媒和物」は、本発明の化合物又はその塩を意味し、更に、非共有結合性の分子間の力で結合している化学量論量又は非化学量論量の溶媒を含む。溶媒は、ヒトへごく微量投与するために、揮発性で、非毒性で、及び/又は許容可能であることが好ましい。
【0076】
本明細書で使用される、用語「水和物」は、本発明の化合物又はその塩を意味し、更に、非共有結合性の分子間の力で結合している化学量論量又は非化学量論量の水を含む。
【0077】
本明細書で使用される、用語「感受性の低下」は、同じ実験系で、野生型ウイルスが示す感受性と比較して、特定ウイルス単離物の約10倍以上の感受性変化を指す。
【0078】
本明細書で使用される、用語「ヌクレオシド及びヌクレオチド逆転写酵素阻害剤」(「NRTI」)は、ヌクレオシド及びヌクレオチド並びにその類縁体を意味し、これは、HIV−1逆転写酵素、すなわちウイルスゲノムHIV−1RNAのプロウイルスHIV−1DNAへの変換を触媒する酵素の活性を阻害する。
【0079】
典型的に適切なNRTIには、以下のものが挙げられる:ジドブジン(AZT)(RETROVIR(商品名)で入手可能)、ジダノシン(ddl)(VIDEX(商品名)で入手可能)、ザルシタビン(ddC)(HIVID(商品名)で入手可能)、スタブジン(d4T)(ZERIT(登録商標)で入手可能)、ラミブジン(3TC)(EPIVIR(商品名)で入手可能)、WO96/30025に開示のアバカビル(1592U89)(ZIAGEN(登録商標)で入手可能)、アデホビルジピボキシル[ビス(POM)−PMEA](PREVON(商品名)で入手可能)、ロブカビル(BMS−180194)(EP-0358154及びEP-0736533に開示のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、Bristol-Myers Squibbにより開発中)、BCH−10652(逆転写酵素阻害剤、BCH−10618及びBCH−10619のラセミ混合物の形態、Biochem Pharmaにより開発中)、エムトリシタビン[(−)−FTC](エモリ―大学からライセンス提供、米国特許第5,814,639号、Triangle Pharmaceuticalsにより開発中)、β−L−FD4(β−L−D4Cとも呼ばれ、β−L−2’,3’−ジクレオキシ−5−フルオロ−シチデンと命名、エール大学がVion Pharmaceuticalsにライセンス提供)、DAPD(プリンヌクレオシド、(−)−β−D−2,6−ジアミノ−プリンジオキソラン、EP-0656778に開示、Triangle Pharmaceuticalsにライセンス提供)、及びロデノシン(FddA)(9−(2,3−ジデオキシ−2−フルオロ−β−D−トレオ−ペントフラノシル)アデニン、酸安定性プリン型逆転写酵素阻害剤、NIHで発見され、U.S. Bioscience Incにより開発中)。
【0080】
本明細書で使用される、語句「免疫系調節薬又は抗ウイルス性化合物」は、HIV−1感染の処置に有用な任意の化合物又は薬剤を指す。
【0081】
本明細書で使用される、用語「非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤」(「NNRTI」)は、HIV−1逆転写酵素の活性を阻害する非ヌクレオシドを意味する。
【0082】
典型的に適切なNNRTIには、以下のものが挙げられる:ネビラピン(BI−RG−587)(VIRAMUNE(商品名)で入手可能)、デラビラジン(BHAP、U−90152)(RESCRIPTOR(商品名)で入手可能)、エファビレンツ(DMP−266)(WO94/03440に開示のベンゾオキサジン−2−オン、SUSTIVA(商品名)で入手可能)、PNU−142721(フロピリジン−チオ−ピリミド)、AG−1549(前Shionogi #S-1153)、5−(3,5−ジクロロフェニル)−チオ−4−イソプロピル−1−(4−ピリジル)メチル−1H−イミダゾール−2−イルメチルカルボネート(WO96/10019に開示)、MKC−442(1−(エトキシ−メチル)−5−(1−メチルエチル)−6−(フェニルメチル)−(2,4(1H,3H)−ピリミジンジオン)、及び(+)−カラノリドA(NSC−675451)及びB、クマリン誘導体(米国特許第5,489,697号に開示)。
【0083】
本明細書で使用される、用語「プロテアーゼ阻害剤」(「PI」)は、HIV−1プロテアーゼ、すなわちウイルス性ポリタンパク質前駆体(例えば、ウイルスGAG及びGAG Polポリタンパク質)をタンパク質分解切断して、感染性HIV−1に存在する個々の機能性タンパク質にするのに必要な酵素の阻害剤を意味する。HIVプロテアーゼ阻害剤には、擬ペプチド構造、高分子量(7600ダルトン)及び実質的なペプチド特性を有する化合物、例えば、CRIXIVANが挙げられ、非ペプチドプロテアーゼ阻害剤には、例えばVIRACEPTが挙げられる。
【0084】
典型的に適切なPIには、以下のものが挙げられる:サキナビル(INVIRASE(商品名)で硬質ゲルカプセルとして入手可能、FORTOVASE(商品名)で軟質ゲルカプセルとして入手可能)、リトナビル(ABT−538)(NORVIR(商品名)で入手可能)、インジナビル(MK−639)(CRIXIVAN(商品名)で入手可能)、ネルフナビル(AG−1343)(VIRACEPTで入手可能)、アンプレナビル(141W94)(非ペプチドプロテアーゼ阻害剤、AGENERASE(商品名))、ラシナビル(BMS−234475、Novartis, Basel, Switzerland (CGP-61755)により最初に発見)、DMP−450(環状尿素、Dupontにより発見)、BMS−2322623(アザペプチド、Bristol-Myers Squibbにより第2世代HIV−1PIとして開発中)、ABT−378、AG−1549(経口活性イミダゾールカルバメート)。
【0085】
他の抗ウイルス剤には、ヒドロキシウレア、リバビリン、IL−2、IL−12、ペンタフシド及びYissum Project No.11607が挙げられる。T細胞活性化関連酵素であるリボヌクレオシド三リン酸還元酵素阻害剤ヒドロキシウレア(Droxia)は、ジダノシンの活性化に相乗効果を有することが示され、スタブジンと共に研究されている。IL−2は、Ajinomoto(EP-0142268)、Takeda(EP-0176299)、及びChiron(米国特許第RE33,653、4,530,787、4,569,790、4,604,377、4,748,234、4,752,585、及び4,949,314号)により開示されており、PROLEUKIN(アルデスロイキン)(商品名)で凍結乾燥粉末として入手可能(水で再構成、希釈して、静脈内(IV)注射又は皮下(sc)投与用)である。約1〜約2000万1U/日の投与量でのscが好ましく、約1500万1U/日の投与量でのscがより好ましい。IL−12は、WO96/25171に開示されており、約0.5マイクログラム/kg/日〜約10マイクログラム/kg/日の投与量で使用でき、scが好ましい。36アミノ酸合成ペプチドのペンタフシド(DP−178、T−20)は、米国特許第5,464,933号に開示されており、FUZEON(商品名)で入手可能である。ペンタフシドは、HIV−1が標的膜へ結合するのを阻害することにより作用する。ペンタフシド(3〜100mg/日)は、三剤併用療法では効果が見られないHIV−1陽性患者に対し、持続sc注入で又はエファビレンツ及び2個のPIとの併用注入で投与され、100mg/日で使用するのが好ましい。Yissum Project No. 11607は、HIV−1Vifタンパク質に基づく合成タンパク質である。リバビリン(1−β−D−リボフラノシル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド)は、米国特許第4,211,771号に記載されている。
【0086】
本明細書で使用される、用語「抗HIV−1療法」は、ヒトでの単独又は多剤併用療法特に、HAART三剤併用及び四剤併用療法の一部分として、HIV−1感染の処置に有用とされる任意の抗HIV−1薬剤を意味する。周知の典型的に適切な抗HIV−1療法には、多剤併用療法、例えば、(i)二個のNRTI、一個のPI、第二のPI、一個のNNRTIから選択される、少なくとも三個の抗HIV−1薬剤、及び(ii)NNRTI及びPIから選択される、少なくとも二個の抗HIV−1薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。典型的に適切なHAART−多剤併用療法には、(a)三剤併用療法、例えば、二個のNRTI及び一個のPI、又は(b)二個のNRTI及び一個のNNRTI、並びに(c)四剤併用療法、二個のNRTI、一個のPI及び第二のPI又は一個のNNRTIが挙げられる。未投薬患者の処置においては、抗HIV−1処置は、三剤併用療法で始めるのが好ましく、PIに不耐容である場合を除いて、二個のNRTI及び一個のPIを使用することが好ましい。服薬順守が最も重要である。CD4+及びHIV−1−RNA血漿レベルは、3〜6ヶ月毎に監視すべきである。ウイルス量がプラトーとなった場合、第四の薬剤、例えば、一個のPI又は一個のNNRTIを添加してもよい。
【0087】
共通の略語には、以下のものが挙げられる:アセチル(Ac)、酢酸(HOAc)、アゾ−ビス−イソブチリルニトリル(AIBN)、1−N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、大気圧(Atm)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBN又はBBN)、メチル(Me)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、アセトニトリル(MeCN)、ジ−tert−ブチルピロカルボネート又はboc無水物(BOC2O)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)、ベンジル(Bn)、m−クロロ過安息香酸(MCPBA)、ブチル(Bu)、酢酸n−ブチル(nBuAc)、n−ブタノール(nBuOH)、メタノール(MeOH)、ベンジルオキシカルボニル(cbz又はZ)、融点(mp)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、MeSO2−(メシル又はMs)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、質量スペクトル(ms)、三フッ化ジエチルアミノ硫黄(DAST)、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、ジベンジリデンアセトン(Dba)、N−カルボキシ無水物(NCA)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、N−メチルピロリドン(NMP)、1,2−ジクロロエタン(DCE)、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、二クロム酸ピリジニウム(PDC)、ジクロロメタン(DCM)、プロピル(Pr)、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、フェニル(Ph)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)、ポンド/平方インチ(psi)、ジエチルイソプロピルアミン(DEIPA)、ピリジン(pyr)、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)、室温(rt又はRT)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、tert−ブチルジメチルシリル又はt−BuMe2Si(TBDMS)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、トリエチルアミン(Et3N又はTEA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トリフレート又はCF3SO2−(Tf)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トリフルオロ酢酸(TFA)、1,1’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−2,6−ジオン(TMHD)、1,1’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、酢酸エチル(EtOAc)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル(Et2O)、トリメチルシリル又はMe3Si(TMS)、エチル(Et)、p−トルエンスルホン酸一水和物(TsOH又はpTsOH)、リチウムヘキサメチルジシラザン(LiHMDS)、4−Me−C6H4SO2−又はトシル(Ts)、イソプロピル(i−Pr)、N−ウレタン−N−カルボキシ無水物(UNCA)、エタノール(EtOH)。接頭辞のノルマル(n)、イソ(i−)、第二級(sec−)、第三級(tert−)及びネオ(neo)を含む慣用的命名法は、アルキル部位で使用される場合、慣習的な意味を有する(J. Rigaudy and D. P. Klesney, Nomenclature in Organic Chemistry, IUPAC 1979 Pergamon Press, Oxford.)。
【0088】
実施例
本発明及び本発明の範囲に包含される代表的な多形体の例を、以下の実施例に記載する。以下の調製例に記載の多形体は、当業者が、本発明をより明確に理解すること及び実施することを可能にするために与えられる。それらは、本発明の範囲を限定するものではなく、その例示的及び代表的であるものに過ぎない。
【0089】
一般的に、本願で使用される命名法は、IUPAC体系的命名法を作成するBeilstein Instituteのコンピューターシステム、AUTONOM(商標)v.4.0に基づいている。描かれた構造及びその構造に与えられた名称に相違がある場合、描かれた構造が優先されるものとする。更に、構造又は構造の一部分の立体化学が、例えば、太線又は点線で示されていない場合は、構造又は構造の一部分は、その立体異性体の全てを包含すると解釈する。
【0090】
本発明の塩及び多形体は、以下に示し記載する具体的な合成反応スキームに示す様々な方法により調製される。
【0091】
化合物I:
【化5】
【0092】
は、米国特許第7,166,738号に従って調製した。ここで該特許の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
これらの塩及びその多形体を調製する際に使用する出発物質及び試薬は、一般的に、Aldrich Chemical Co.,などから市販品として入手可能であり、又は当業者に公知の方法(以下の参考文献に記載の方法)により調製する:Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis; Wiley & Sons: New York, Volumes 1-21; R. C. LaRock, Comprehensive Organic Transformations, 2nd edition Wiley-VCH, New York 1999; Comprehensive Organic Synthesis, B. Trost and I. Fleming (Eds.) vol. 1-9 Pergamon, Oxford, 1991; Comprehensive Heterocyclic Chemistry, A. R. Katritzky and C. W. Rees (Eds) Pergamon, Oxford 1984, vol. 1-9; Comprehensive Heterocyclic Chemistry II, A. R. Katritzky and C. W. Rees (Eds) Pergamon, Oxford 1996, vol. 1-11; and Organic Reactions, Wiley & Sons: New York, 1991, Volumes 1-40。
【0094】
処方及び投与
式Iの化合物の製剤は製剤分野で公知の方法により調製することができる。下記実施例(以下に示す)は、当業者が本発明をより明確に理解し実施するために提供する。それらは、本発明の範囲を限定するものではなく、その例示的及び代表的であるものに過ぎないと考えるべきである。
【0095】
本発明の多形塩は、様々な経口及び非経口投与剤形で投与することができる。経口投与剤形は、錠剤、コーティング剤、糖衣剤、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤、シロップ剤、又は懸濁剤とすることができる。非経口投与には、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、又は腹腔内投与が含まれる。更に、本発明の塩は、経皮的(浸透促進剤を含んでもよい)、口腔、経鼻、及び坐剤経路で投与することができる。塩はまた、吸入により投与することもできる。
【0096】
本発明の化合物は、多種多様な経口投与剤形及び担体で処方することができる。経口投与は、錠剤、コーティング剤、糖衣剤、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤、シロップ剤、又は懸濁剤の投与剤形とすることができる。本発明の化合物は、とりわけ、連続(静脈点滴)局所非経口、筋肉内、静脈内、皮下、経皮的(浸透促進剤を含んでもよい)、口腔、経鼻、吸入、及び坐剤を介した投与などの他の投与経路により投与した場合に有効である。好ましい投与方法は、一般的に疾患の程度及び活性成分に対する患者の反応に従って調節可能な従来の一日投与量計画を用いた経口投与である。
【0097】
本発明の化合物(一個又は複数)、並びにその薬学的に有用な塩は、一個以上の従来の賦形剤、担体、又は希釈剤と一緒に、医薬組成物及び単位投与剤形の形態にすることができる。医薬組成物及び単位投与剤形は、追加の活性化合物又は活性成分を加えた、又は加えないで、従来成分を従来の配合で含むことができ、そして、単位投与剤形は、使用される目的の一日投与量範囲に相当する任意の適切有効量の活性成分を含むことができる。医薬組成物は、錠剤若しくは充填カプセル剤などの固体製剤、半固体製剤、粉末製剤、徐放性製剤として、又は液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、若しくは充填カプセル剤などの経口用液体製剤として、又は、直腸若しくは膣内投与用の坐剤の形態で、又は、非経口用の無菌注射剤の形態で使用できる。典型的な製剤は、活性化合物又は化合物の約5%〜約95%(w/w)を含有する。用語「製剤」又は「投与剤形」は、活性化合物の固体及び液体製剤の両方を含有することを意図とし、当業者には、活性成分が、標的器官又は組織、並びに所望の投与用量及び薬物動態パラメーターに応じて、種々の製剤で存在することができることが明らかであろう。
【0098】
本明細書で使用される、用語「賦形剤」は、一般的に、安全で非毒性な生物学的にも別の面でも望ましい医薬組成物を調製するの上で有用な化合物を指し、獣医用及びヒトの医薬的使用に許容される賦形剤を含有する。本明細書で使用される、用語「賦形剤」は、一個及び二個以上のそのような賦形剤の両方を含有する。
【0099】
語句、化合物の「薬学的に許容し得る塩」は、薬学的に許容し得て、そして親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。そのような塩には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸から形成される酸付加塩、若しくは酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸など有機酸から形成される酸付加塩、又は(2)親化合物の酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、若しくはアルミニウムイオンで置換された、又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなど有機塩基が配位したときに形成される塩が挙げられる。N−アシルスルホンアミドは、酸性プロトンを有しており、それが取り除かれて有機又は無機陽イオンとの塩を形成することができる。
【0100】
好ましい薬学的に許容し得る塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、及びマグネシウムから形成される塩である。薬学的に許容し得る塩についての記載は全て、その溶媒付加形態(溶媒和物)又は同じ酸付加塩の本明細書に定義したような結晶型(多形体)を含有することを理解すべきである。
【0101】
固体形態の製剤には、粉剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、及び分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、また、希釈剤、香味剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤、又は封入材料としても作用することができる一個以上の物質であってもよい。粉剤の場合、担体は、一般的に微粉化活性成分と混合された微粉化固体である。錠剤の場合、活性成分は、一般的に必要な結合能を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。適切な担体には、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ロウ、ココアバターなどが挙げられるが、これらに限定されない。固体形態の製剤は、活性成分の他に、着色剤、香味剤、安定化剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有していてもよい。
【0102】
液体製剤は、また経口投与に適しており、液体製剤には、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤、水性懸濁剤が挙げられる。これらは、使用直前に液体形態の製剤に変換することを目的とする固体形態の製剤を含む。乳剤は、溶液で、例えば、水性プロピレングリコール溶液で調製することができ、又は、レシチン、ソルビタンオレイン酸モノエステル、又はアラビアゴムなどの乳化剤を含有していてもよい。水性液剤は、活性成分を水に溶解し、適切な着色剤、香味剤、安定化剤、及び増粘剤を添加して調製することができる。水性懸濁剤は、微粉化活性成分を、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び他の周知の懸濁剤などの粘性材料と一緒に水に分散させて調製することができる。
【0103】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射、例えばボーラス注入又は持続注入)用に処方して、アンプル、プレフィルドシリンジ、少量注入の単位用量形態で、又は防腐剤と共に複数回用量容器に入れてもよい。組成物は、油性又は水性ビヒクル、例えば、水性ポリエチレングリコール溶液で懸濁剤、液剤、又は乳剤のような形態にしてもよい。油性又は非水性担体、希釈剤、液剤又はビヒクルの例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、及び注入用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)があり、防腐剤、湿潤剤、乳化剤又は懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの処方剤を含有してもよい。あるいは、活性成分は、滅菌固体の無菌的単離又は溶液の凍結乾燥から得られる粉末形態であってよく、使用前に適切なビヒクル(例えば、無菌のパイロジェンフリー水)で再構成される。
【0104】
本発明の化合物は、上皮への局所投与用に、軟膏、クリーム剤又はローション剤として、又は経皮パッチとして処方することができる。軟膏及びクリーム剤は、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を添加して、水性又は油性基剤で処方できる。ローション剤は、水性又は油性基剤で処方でき、また、一般的に一個以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、又は着色剤を含んでいる。口腔において、局所投与に適切な処方には、香料基剤(通常、スクロース及びアラビアゴム又はトラガカント)に活性剤を含むトローチ剤、ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアラビアゴムなどの不活性基材に活性成分を含む芳香錠、並びに適当な液体担体に活性成分を含む洗口剤が挙げられる。
【0105】
本発明の化合物は、坐剤投与用に処方することができる。脂肪酸グリセリドの混合物又はココアバターなどの低融点ロウを最初に溶融して、活性成分を例えば、攪拌により均一に分散する。次に、溶融した均一混合物を適当なサイズの鋳型に注ぎ、冷却して、固化する。
【0106】
本発明の化合物は、膣内投与用に処方することができる。活性成分に加えて、当該技術分野で適切であると知られている担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレーを処方することができる。
【0107】
本発明の化合物は、経鼻投与用に処方することができる。液剤又は懸濁剤を従来の手段、例えば、スポイト、ピペット又はスプレーにより鼻腔に直接使用する。処方は、単用量又は多用量形態で提供される。スポイト又はピペットの後者の場合では、適切で所定量の液剤又は懸濁剤を患者が投与することにより達成できる。スプレーの場合では、定量噴霧式スプレーポンプを用いて達成できる。
【0108】
本発明の化合物は、特に、呼吸器への鼻腔内投与を含むエアロゾル投与用に処方することができる。一般的に、化合物は、例えば5ミクロン以下のオーダーの小さい粒径を有する。そのような粒径は、当該技術分野で公知の手段、例えば、微粒化することにより得ることができる。活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、若しくはジクロロテトラフルオロエタン、又は二酸化炭素又は他の適切な気体などの適切な噴霧剤と共に圧縮パックで提供される。エアロゾルは、便宜上、レシチンなどの界面活性剤を含有していてもよい。薬剤の用量は、定量バルブによって制御できる。あるいは、活性成分は、乾燥粉末、例えば、ラクトース、デンプン、デンプン誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリジン(PVP)などの適切な粉末基剤と化合物の粉末混合物の形態で提供することができる。粉末担体は、鼻腔においてゲルを形成する。粉末組成物は単位用量形態であってもよく、例えば、ゼラチンのカプセル又はカートリッジ又はブリスター包装で、粉末を吸入器により投与することができる。
【0109】
所望であれば、製剤は、活性成分の徐放又は制御放出投与用に適した腸溶コーティングを用いて調製することができる。例えば、本発明の化合物は、経皮的又は皮下的な薬物送達デバイスに処方することができる。化合物の徐放が必要である場合、そして患者が処置計画に従うことが極めて重要である場合、これらの送達システムは有利である。経皮的な送達システムでは、しばしば化合物を皮膚接着性固体の支持体に結合させる。対象化合物を、浸透促進剤、例えば、アゾン(1−ドデシルアザ−シクロヘプタン−2−オン)と組み合わせることもできる。徐放送達システムは、外科的処置又は注射により、皮下層へ皮下挿入される。皮下インプラントは、脂溶性の膜、例えば、シリコーンゴム、又は生分解性高分子、例えば、ポリ乳酸に化合物を封入する。
【0110】
薬学的な担体、希釈剤及び賦形剤を一緒に含む、適切な処方が、 Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by E. W. Martin, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvania に記載されている。熟練の製剤科学者は、本発明の組成物を不安定にすることなく、又はそれらの治療活性を損なうことなく、本明細書の教示の範囲内で処方を変更して、特定の投与経路用の多数の処方を提供することができる。
【0111】
本化合物を水又は他のビヒクルにより溶解させるための修飾は、例えば、当該技術分野で公知の小規模な修飾(塩形成、エステル化など)をすることで容易に達成することができる。また、患者が最大限の有益効果を得るように、本発明化合物の薬物動態を管理するために投与経路及び特定の化合物の投与計画を変更することは、当該技術分野の従来技術において周知である。
【0112】
本明細書で使用される、用語「治療有効量」は、個々の疾患の症状を軽減するのに必要な量を意味する。用量は、各特定の事例において、個々の要件に対して調整される。用量は、多くの要因、例えば、処置する疾患の重症度、患者の年齢及び一般的な健康状態、患者の処置に用いられる他の医薬、投与経路及び形態、並びに担当の医者の選好及び経験などに応じて、広い範囲内で変更できる。経口投与において、単剤療法及び/又は併用療法では、約0.01〜約100mg/kg体重/日の一日用量が適切である。一日用量は、約0.1〜約500mg/kg体重/日が好ましく、より好ましくは、0.1〜約100mg/kg体重/日、更に好ましくは、1.0〜約10mg/kg体重/日である。したがって、70kgのヒトでは、投与用量は、約7mg〜0.7g/日の範囲である。一日用量は、単回用量又は分割用量(典型的には1〜5回の用量/日)で投与できる。一般的に、処置は化合物の最適用量より少ない用量から開始する。その後、個々の患者に最適な効果が得られるまで、用量を少量ずつ増やしていく。本明細書に記載の疾患を処置する当業者は、必要以上の実験をすることなく、個人の知識、経験、及び本願の開示を頼りに対象の疾患及び患者について本発明の化合物の治療有効量を確認することができる。
【0113】
本発明の実施態様において、活性化合物又は塩は、他の抗ウイルス剤、例えば、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、他の非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤又はHIVプロテアーゼ阻害剤と併用して投与することができる。活性化合物、その誘導体又は塩を他の抗ウイルス剤と併用して投与すると、活性を親化合物より増加させることができる。処置が併用療法の場合、その投与はヌクレオシド誘導体の投与と同時に又は順に実施できる。したがって、本明細書で使用される、「同時投与」は、同時に又は異なった時間において薬剤を投与することを含む。同時に二個以上の薬剤を投与することは、二個以上の活性成分を含む単一製剤、又は単一活性剤と共に二個以上の投与剤形の実質的な同時投与により行うことができる。
【0114】
本明細書において、処置とは、今ある症状を治療するだけでなく予防にまで及ぶこととし、そして動物の処置がヒト及び他の動物の処置を含むものであることを理解されたい。更に、本明細書で使用される、HIV感染の処置はまた、HIV感染に伴う又は媒介される疾患又は症状、又はその臨床的症状の治療及び予防を含む。
【0115】
医薬製剤は単位投与剤形が好ましい。そのような投与剤形では、製剤は適当量の活性成分を含有する単位用量に分けられる。単位投与剤形は、包装製剤であってよく、その包装は、包装された、錠剤、カプセル剤、及びバイアル又はアンプル中の粉剤などの製剤を異なる量含有するものである。また、単位投与剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、又はトローチ剤それ自体、又はこれらのいずれかを適当数包装した形態であってもよい。
【0116】
多形型の調製
実施例1. 化合物IのNa塩、2−[4−ブロモ−3−(3−クロロ−5−シアノ−フェノキシ)−2−フルオロ−フェニル]−N−(2−クロロ−4−プロピオニルスルファモイル−フェニル)−アセトアミドナトリウム塩(Ib):
【0117】
【化6】
【0118】
THF800mL中、化合物I81gを加熱還流し、トルエン1Lを加え、溶媒500mLを留去して、そしてトルエン1.2Lを加え、溶媒を計2L留去することで、結晶性生成物を得て、濾過、トルエンで洗浄、減圧下で溶媒を除去して結晶性化合物Iを得た。その後、実施例1の結晶性化合物I40.6gをTHF600mL及び1M NaOH60mLに、次にH2O500mLに溶解し、1M NaOHを追加してpHを8.05にした。
【0119】
実施例2. 化合物I(Ib)のNa塩
化合物IをMeOHから再結晶した。MeOHから再結晶した化合物I24gをTHF80mLに溶解し、1M NaOH20mLを加えた後、H2O60mLで希釈し、pH8になるまで1M NaOHを加えた。溶液を濾過し、減圧下でTHFを除去してゲルを得て、nBuOAc200mLを加えた後、溶媒を減圧下で除去することで濃密なゲルを得た。THF10mLを加えて半溶液を得て、結晶が生じ始めるまで減圧下で60℃に加熱し、その後減圧下で80℃に加熱して、冷却し、nBuOAc100mLを加えた後、生成物を濾別、nBuOAcで洗浄して、減圧下で加熱しながら溶媒を除去することで化合物Iのナトリウム塩21.6gを得た。
【0120】
実施例3. 化合物I(Ib)のNa塩の多形体II
5Lフラスコ中、化合物I284.4gを蒸留THF2Lに溶解して、1M NaOHをゆっくり加えてpHを7.98に調整し、H2O2Lを加えた。その後、溶液を46℃に加熱し、THFを減圧下で除去した後、溶液を濾過し、H2O2Lを加えて再度濾過して4℃に冷却すると第一の懸濁液が得られた。実施例1の化合物Iのナトリウム塩20.9g及び実施例2の化合物Iのナトリウム塩21.6gの両方を、第一の懸濁液に加えTHF4Lを添加すると均一な溶液になり、その後濾過した。次に、大部分のTHFを減圧下で除去し、前もって濾過したnBuOH3Lを加えて、減圧下55℃にて溶媒を5L減少させた。次に、前もって濾過したnBuOAc1Lを加え、その後、減圧下で同じ容量減少させた。次に、前もって濾過したnBuOAc3Lを加え、溶液を80℃に加熱し、減圧下で溶媒を1L減少させ、溶液を60℃に冷却し、前もって濾過したnBuOAc1Lを加えた。その後、溶液を82℃に加熱し結晶性生成物を得て、これを濾別しnBuOAcで洗浄し、減圧下70℃にて1日、80℃にて1日、そして90℃にて3日かけ溶媒を除去することで生成物307gを得た。
【0121】
実施例4. 化合物I(Ib)のNa塩
MeOHから再結晶した化合物I250gをTHF1.5Lに溶解し、1M NaOH(H2O中)250mLを、次にH2O1Lを加えた。1M NaOH(H2O中)150mLを加え、溶液をpH8.00にした。次に、混合物を濾過し、H2Oが蒸留し始めるまで減圧下で濃縮した。その後、nBuOHを加え、溶液をH2Oの蒸留が止まるまで減圧下で再度濃縮した。次に、nBuOAcを加え、溶媒を減圧下で濃縮し、60℃にて溶液が濁るまで添加と除去を繰り返した。次に、混合物を一晩攪拌し結晶を得て、これを濾別してnBuOAcで洗浄し、減圧下、80℃その後100℃にて乾燥することで化合物I(Ib)のNa塩205gを得た。
【0122】
実施例5. 化合物IのNa塩の結晶型
I型:(未乾燥試料):
I型(水和物/溶媒和物)は、THF/水/n−ブタノール/酢酸n−ブチル溶媒系で再結晶して調製することができる。
【0123】
II型:
II型(水和物/溶媒和物)は、I型を加熱/乾燥して調製することができる。また、III型をMeOHに懸濁してII型を生成することもできる。
【0124】
III型:
III型(無水)は、THF/水/n−ブタノール/酢酸n−ブチル溶媒系、又はTHF/nBuOAcで再結晶して調製することができる。また、II型又はIV型をブタノンに懸濁してIII型を調製することもできる。II型をメチルイソブチルケトンに懸濁してもIII型が得られるだろう。
【0125】
IV型:
IV型(水和物/溶媒和物)は、II型をペンタノールに懸濁して調製することができる。
【0126】
V型: V型(水和物/溶媒和物)は、II型をTHFに懸濁して調製することができる。
【0127】
VI型:
VI型(水和物/溶媒和物)は、II型をエタノール、イソプロパノール、70%IPA/30%H2O、酢酸イソプロピル、アセトン、又はヘプタンに懸濁して調製することができる。また、III型を70%IPA/30%H2Oに懸濁してVI型を調製することもできる。
【0128】
VII型:
VII型(水和物/溶媒和物)は、II型をペンタンに懸濁して調製することができる。
【0129】
VIII型:
VIII型(無水)は、THF/水/酢酸ブチルで再結晶して調製することができる。また、III型をアセトニトリル、イソプロパノール/水、及びアセトニトリル/水溶媒系に懸濁して調製することもできる。また、II型をアセトニトリルに懸濁してVIII型を生成することもできる。
【0130】
IX型:
IX型(無水)は、昇温で、VIII型をアセトニトリルに懸濁して調製することができる。
【0131】
非晶質物質:
非晶質状態のIbは、VIII型を〜6mg/mLの薬物濃度でt−ブタノール82%/水18%に溶解して調製することができる。この溶液を、一晩(〜18時間)凍結乾燥して非晶質物質を得た。非晶質物質は、25C/60RHでは少なくとも一週間安定であるが、40C/75RHでは不安定となる。
【0132】
実施例6. 結晶多形体I〜IX型及び非晶質状態のIbの相互変換スキームを図13に詳述する。
【0133】
実施例7. スケールアップ方法
III型のNa塩4.5kgをTHF約45Lに溶解し、周囲温度にて、HClで処理しpH1にした。混合物をポリッシュ濾過し(polish filtred)、清澄にした後、ポット温度108℃にして常圧蒸留を行い、THFを同量のトルエンで置換して遊離酸を結晶化した。混合物を冷却し、固体を濾過した。湿ったケーキをDMF約6kg及びIPA20kgの混合物に溶解した。この溶媒混合物約4Lを、80℃で、この物質約1kgに溶解することができた。完全に溶けたら、温度を維持しながら水(約9kg)をゆっくり加えた。10℃に冷却したところ、遊離酸がこの混合物から結晶化し、これを濾過、IPAで洗浄後、真空オーブンに移し乾燥した。
【0134】
次に、THF(約5〜10L/kg)に遊離酸を溶解させて、塩を再形成し、2当量の2−エチル−ヘキサン酸Na(可溶性のナトリウム塩)で処理した。この溶液を濾過し、次にポット温度127℃にして常圧蒸留を行い、THFを酢酸ブチルで置換して結晶化した。このポット温度になったら、容器を密封し、約45分間135℃に加熱した。混合物を周囲温度に冷却し、濾過、酢酸ブチルで洗浄して、真空オーブンで乾燥した。この物質(VIII型)のPXRDは、前記で得たIII型のバッチと一致しなかった。
【0135】
実施例8. 化合物IのNa塩のVIII型の再結晶法
化合物IのNa塩100グラムを、水100mL及びイソプロパノール100mLの混合物に還流して溶解させた。次に、熱い溶液にVIII型の種晶を加え、IPA(3.75L)で希釈、冷却して5℃で濾過することにより再結晶してVIII型を収率約90%、純度約99%(HPLC)で得た。
【0136】
実施例9. 粉末X線回折パターン
多形結晶試料の粉末X線回折パターンを、封止された銅Kα1照射源を備えたScintagX1粉末X線回折計で測定した。試料について、4及び2ミクロン入射ビームスリット幅、0.5及び0.2ミクロンの回析ビームスリット幅を、3°/分の速度で2o〜40°(2θ)で走査した。
【0137】
実施例10. 熱化学解析
DSCサーモグラムは、熱分析(TA)装置から2920 Modulated DSCを使用して得た。加熱速度は、10℃/分でありランを通して窒素パージし続けた。
【0138】
熱重量分析(TGA)は、Hi-Res2950TGA(TA装置)を使用して実施した。試料を10℃/分の速度で30℃〜280℃に加熱し、各ランを通して窒素フローを維持した。
【0139】
実施例11. 医薬組成物
いくつかの経路で投与するため、対象化合物の医薬組成物を本実施例に記載するように調製することができる。
【0140】
経口投与用組成物(A)
【表19】
【0141】
成分を混合し、各約100mg含有するようにカプセルに分注した。一個のカプセルはおおよそ全一日用量に相当する。
【0142】
経口投与用組成物(B)
【表20】
【0143】
成分を混合し、メタノールなどの溶媒を用いて粒状にした。次に、製剤を乾燥し、適当な錠剤機を用いて錠剤(活性化合物約20mgを含有する)にした。
【0144】
経口投与組成物(C)
【表21】
【0145】
成分を混合し、経口投与用に懸濁剤を形成した。
【0146】
非経口製剤(D)
【表22】
【0147】
活性成分を注射用水の一部に溶解する。次に十分量の塩化ナトリウムを攪拌しながら加え、等張溶液にする。残りの注射用水で溶液の濃度を合わせ、0.2ミクロンのメンブレンフィルターで濾過し無菌条件下で包装する。
【0148】
坐剤製剤(E)
【表23】
【0149】
成分を一緒に溶融し、蒸気浴で混合した後、鋳型に注ぎ総重量2.5gにする。
【0150】
局所製剤(F)
【表24】
【0151】
水以外の全ての成分を混合し、攪拌しながら約60℃に加熱する。次に、約60℃で十分な量の水を激しく攪拌しながら加え、成分を乳化した後、水を適量加え約100gにした。
【0152】
これまでの記載又は以下の特許請求の範囲に開示される特徴は、開示された機能を遂行するための特定の形態又は用語、あるいは、開示された結果を達成するための方法またはプロセスを表しおり、必要に応じて、そのような特徴を個々に、又は任意に組み合わせて、その種々の形態で本発明を実現するために使用することができる。
【0153】
上記の発明を明確にし理解することを目的に、説明及び例を挙げて詳細に記載する。当業者にとって、添付の請求項の範囲内で変更及び改変を実施できることは明らかであろう。従って、これまでの記載は例示的であって、限定するものではないことを意図したものであることを理解されたい。従って、本発明の範囲は、これまでの記載に関して決定されるものではなく、以下の添付の請求の範囲を当該請求項の均等物の全範囲と合わせて決定されるものとする。
【0154】
本願に引用される全ての特許、特許出願及び出版物は、あたかも、各々個別の特許、特許出願又は出版物がそれぞれあらゆる目的において示されるかのように同程度に、ここにその全体が参照により組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、単剤療法又は併用療法によるHIV介在疾患、AIDS又はARCの治療及び予防のための、製造、取扱い及び処方を容易にする、改良された安定性及び物理的特性を有する、2−[4−ブロモ−3−(3−クロロ−5−シアノ−フェノキシ)−2−フルオロ−フェニル]−N−(2−クロロ−4−プロピオニルスルファモイル−フェニル)−アセトアミドナトリウム塩の新規な多形結晶型に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルスHIVは、免疫系、特にCD4+T細胞の破壊を特徴とし、日和見感染への感受性を伴う疾患である、後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因病原体である。HIV感染は、また、持続性全身性リンパ節腫大、発熱及び体重減少などの症状を特徴とする症候群の前駆AIDS関連症候群(ARC)にも関係している。
【0003】
他のレトロウイルスと同様に、HIVのゲノムは、gag及びgag−polとして知られているタンパク質前駆体をコードしており、これがウイルスプロテアーゼにより処理されることで、プロテアーゼ、逆転写酵素(RT)、エンドヌクレアーゼ/インテグラーゼ及びウイルスコアの成熟構造タンパク質を生成する。この過程を遮断すると、通常の感染性ウイルスの産生が阻害される。ウイルスがコードする酵素を阻害することによるHIVの制御に多大な労力が注がれてきた。
【0004】
現在、利用可能な化学療法は2つの重要なウイルス酵素(HIVプロテアーゼ及びHIV逆転写酵素)を標的としている(J. S. G. Montaner et al. Antiretroviral therapy: 'the state of the art', Biomed & Pharmacother. 1999 53:63- 72; R. W. Shafer and D. A. Vuitton, Highly active retroviral therapy (HAART) for the treatment of infection with human immunodeficiency virus type, Biomed. & Pharmacother.1999 53 :73-86; E. De Clercq, New Developments in Anti-HIV Chemotherap. Curr. Med. Chem. 2001 8:1543-1572)。RTI阻害剤の一般的な二つのクラス、すなわちヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)及び非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤が確認されている。
【0005】
NRTIは、典型的には、ウイルスRTと相互作用する前にリン酸化されなければらなない2’,3’−ジデオキシヌクレオシド(ddN)類縁体である。その対応する三リン酸は、ウイルスRTの拮抗阻害剤又は代替基質として機能する。ヌクレオシド類縁体は、核酸に組み込まれた後、鎖伸長プロセスを終結させる。HIV逆転写酵素はDNA編集能力を有し、そのDNA編集能力は、耐性株がヌクレオシド類縁体を開裂し鎖伸長を続けることで、阻害を克服できるようにする。これまで臨床的に使用されてきたNRTIには、ジドブジン(AZT)、ジダノシン(ddI)、ザルシタビン(ddC)、スタブジン(d4T)、ラミブジン(3TC)及びテノホビル(PMPA)がある。
【0006】
NNRTIは、1989年に初めて発見された。NNRTIは、アロステリック阻害剤であり、HIV逆転写酵素の非基質結合部位に可逆的に結合することにより、活性部位の形状を改変させたり、ポリメラーゼ活性を阻害したりする(R. W. Buckheit, Jr., Non-nucleoside reverse transcriptase inhibitors: perspectives for novel therapeutic compounds and strategies for treatment of HIV infection, Expert Opin. Investig. Drugs 200110(8)1423-1442; E. De Clercq The role of non-nucleoside reverse transcriptase inhibitors (NNRTIs) in the therapy of HIV infection, Antiviral Res. 1998 38:153-179; E. De Clercq New Developments in Anti-HIV Chemotherapy, Current medicinal Chem. 2001 8(13):1543-1572; G. Moyle, The Emerging Roles of Non-Nucleoside Reverse Transcriptase Inhibitors in Antiviral Therapy, Drugs 2001 61 (1):19-26)。実験室で、30種を超えるNNRTIが同定され構造的に分類されているが、わずか3種類の化合物(エファビレンツ、ネビラピン及びデラビルジン)のみがHIV治療において承認されている。
【0007】
当初、有望なクラスの化合物と見られていたが、in vitro及びin vivo研究から、NNRTIは薬剤耐性HIV株及びクラス特異的な毒性の出現に対する障壁が低いことが間もなく明らかとなった。薬剤耐性はしばしば、RTの単一点突然変異のみから生じる。NRTI、PI及びNNRTIとの併用療法により、多くの事例で、ウイルス量を劇的に低下させ、病気の進行を遅らせたが、重大な治療上の課題が未だ残っている(R. M. Gulick, Eur. Soc. Clin. Microbiol. and Inf. Dis. 2003 9(3):186-193)。多剤併用療法は、全ての患者に有効であるという訳ではなく、潜在的に重篤な有害反応がたびたび生じることがあり、急速に複製するHIVウイルスは野生型プロテアーゼ及び逆転写酵素の薬剤耐性突然変異体を巧みに作り出すことが分かった。HIVの野生型および一般的な耐性株に対する活性を有するより安全な薬剤が必要とされている。
【0008】
式Ib:
【化1】
【0009】
の化合物である2−[4−ブロモ−3−(3−クロロ−5−シアノ−フェノキシ)−2−フルオロ−フェニル]−N−(2−クロロ−4−プロピオニルスルファモイル−フェニル)−アセトアミドナトリウム塩が、その調製方法、及びHIV逆転写酵素の阻害剤としての活性と共に米国特許第7,166,738号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
酸性及び塩基性化合物の塩は、親化合物の物理的特性を改変または改良することができる。しかし、各剤形における親化合物の挙動に対して塩の種類が及ぼす影響を予測する信頼性の高い方法がないので、これらの塩形成物質は、医薬化学者により経験的に同定されなければならない。
【0011】
多形性は、任意の元素または化合物が二個以上の異なる結晶型として結晶化することができる能力である。様々な塩の多形型が、しばしば、薬学的に有用な化合物の中に発見されている。溶解度、融点、密度、硬度、結晶形状及び安定性などの物理的特性は、同一化合物でも、多形型が異なると大きく異なり得る。
【0012】
多形型は、散乱技術、例えば、粉末X線回折パターンによって、分光法、例えば、赤外線、13C核磁気共鳴分光法によって、及び熱的手法、例えば、示差走査熱量測定又は示差熱分析法によって特徴付けられる。多形体は、当該技術分野で公知の方法に従って測定した粉末X線回折パターンにより特徴付けるのが最も良い。これらの技術についての考察は、J. Haleblian, J. Pharm. Sci. 1975 64:1269-1288, and J. Haleblain and W. McCrone, J. Pharm. Sci. 1969 58:911-929を参照されたい。多形体における異なるバッチの粉末X線回折パターンのピーク強度はわずかに異なるが、ピーク及びその関連するピーク位置は、特定の多形型に特徴的なものである。
【0013】
解決すべき課題は、以下の適切な塩及び/又は多形体を同定することである。(i)製造過程で適切な物理化学的安定性を有し、(ii)効率的に調製、精製、及び回収され、(ii)薬学的に許容し得る溶媒に許容し得る溶解性を示し、(iii)操作性(例えば、流動性及び粒子サイズ)、及び化合物の物理化学的特性の低下又は変化が無視できる程度に製剤化することが容易であり、(iv)製剤化において許容可能な物理化学的安定性を示す。更に、治療上有効な投与量を生むために、処方し、投与しなければならない物質の量を最小限にするために、得られる物質が高モルパーセントの活性成分を含むように、モル重量に対して占める割合が低い塩が非常に望ましい。これらの、しばしば相反する要件が、適切な塩の同定を困難で重要な課題としており、これは、薬剤開発を本格的に進める前に、熟練した医薬科学者が解決すべき課題である。
【0014】
本発明は、2−[4−ブロモ−3−(3−クロロ−5−シアノ−フェノキシ)−2−フルオロ−フェニル]−N−(2−クロロ−4−プロピオニルスルファモイル−フェニル)−アセトアミドナトリウム塩(Ib):
【化2】
【0015】
の9種の多形結晶型(I〜IX)、多形結晶型I〜IXの調製方法、多形型I〜IXを含有する医薬組成物、及び多形型I〜IXを使用したHIV関連疾患の処置方法に関する。
【0016】
本願は、式Ib:
【化3】
【0017】
で表される化合物の結晶型を提供する。
【0018】
本願は、更に、化合物(Ib)をTHF、水及びnBuAcから結晶化することを含む、上記式Ibで表される化合物の結晶型の多形体の調製方法を提供する。
【0019】
本願は、更に、上記方法に従って調製した式Ibで表される化合物の多形結晶型を提供する。
【0020】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(I型)を提供する:
【0021】
【表1】
【0022】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(II型)を提供する:
【0023】
【表2】
【0024】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(III型)を提供する:
【0025】
【表3】
【0026】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(IV型)提供する:
【0027】
【表4】
【0028】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(V型)を提供する:
【0029】
【表5】
【0030】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(VI型)を提供する:
【0031】
【表6】
【0032】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(VII型)を提供する:
【0033】
【表7】
【0034】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(VIII型)を提供する:
【0035】
【表8】
【0036】
本願は、更に、本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す式Ibで表される化合物の多形結晶型(IX型)を提供する:
【0037】
【表9】
【0038】
本願は、更に、化合物(Ib)をTHF/水/n−ブタノール/酢酸n−ブチル、THF/nBuAc、ブタノン、又はメチルイソブチルケトンから結晶化することを含む、多形結晶型(III型)の調製方法を提供する。
【0039】
本願は、更に、化合物(Ib)をTHF/水/酢酸ブチル、アセトニトリル、アセトニトリル/水、又はイソプロパノール/水から結晶化することを含む、多形結晶型(VIII型)の調製方法を提供する。
【0040】
本願は、更に、化合物(Ib)をアセトニトリルから結晶化することを含む、多形結晶型(IX型)の調製方法を提供する。
【0041】
本願は、更に、治療有効量の化合物Ibの多形型I〜IXのいずれか一個を、それを必要とする患者に投与することを含む、HIVに関連した疾患の処置方法を提供する。
【0042】
本願は、更に、免疫系調節薬又は抗ウイルス性化合物を投与することを更に含む、上記方法を提供する。
【0043】
本願は、更に、化合物Ibの多形型I〜IXのいずれか一個を、少なくとも一個の薬学的に許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤との混合物として含む、医薬組成物を提供する。
【0044】
本願は、更に、治療有効量の非晶質状態の化合物Ibを、それを必要とする患者に投与することを含む、HIVに関連する疾患の処置方法を提供する。
【0045】
本願は、更に、免疫系調節薬又は抗ウイルス性化合物を投与することを更に含む、上記方法を提供する。
【0046】
本願は、更に、非晶質状態の化合物Ibを、少なくとも一個の薬学的に許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤との混合物として含む、医薬組成物を提供する。
【0047】
当業者は、添付の図面を参照することによって本発明の多数の特徴及び利点を明確に理解できるだろう:
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、Ibの多形型I型の粉末X線回折パターンを示す。
【図2a】図2aは、Ibの多形型II型の粉末X線回折パターンを示す。
【図2b】図2bは、Ibの多形型II型の示差走査熱量測定(DSC)トレース及び熱重量分析(TGA)トレースを示す。
【図3a】図3aは、Ibの多形型III型の粉末X線回折パターンを示す。
【図3b】図3bは、Ibの多形型III型の示差走査熱量測定(DSC)トレース及び熱重量分析(TGA)トレースを示す。
【図4】図4は、Ibの多形型IV型の粉末X線回折パターンを示す。
【図5】図5は、Ibの多形型V型の粉末X線回折パターンを示す。
【図6】図6は、Ibの多形型VI型の粉末X線回折パターンを示す。
【図7】図7は、Ibの多形型VII型の粉末X線回折パターンを示す。
【図8a】図8aは、Ibの多形型VIII型の粉末X線回折パターンを示す。VIII型の回折データを本明細書の表8に示す。
【図8b】図8bは、Ibの多形型VIII型の示差走査熱量測定(DSC)トレース及び熱重量分析(TGA)トレースを示す。
【図9a】図9aは、Ibの多形型IX型の粉末X線回折を示す。
【図9b】図9bは、Ibの多形型IX型の示差走査熱量測定(DSC)トレース及び熱重量分析(TGA)トレースを示す。
【図10】図10は、非晶質状態のIbの粉末X線回折を示す。
【図11】図11は、Ibの結晶性多形体I〜IX型及び非晶質状態のIbの相互変換スキームを示す。
【0049】
新規な2−[4−ブロモ−3−(3−クロロ−5−シアノ−フェノキシ)−2−フルオロ−フェニル]−N−(2−クロロ−4−プロピオニルスルファモイル−フェニル)−アセトアミドナトリウム塩(Ib)の結晶型は、化合物の製造及び処方を容易にする優れた化学及び物理的特性を有することを確認した。本発明の実施態様において、式Ib:
【化4】
【0050】
で表される化合物の結晶型が提供される。
【0051】
本発明の別の実施態様において、提供される。
【0052】
I型の粉末X線回折を図1に示し、数値を表Iに示す。
【0053】
【表10】
【0054】
II型の粉末X線回折を図2aに示し、数値を表IIに示す。
【0055】
【表11】
【0056】
III型の粉末X線回折を図3aに示し、数値を表IIIに示す。
【0057】
【表12】
【0058】
IV型の粉末X線回折を図4に示し、数値を表IVに示す。
【0059】
【表13】
【0060】
V型の粉末X線回折を図5に示し、数値を表Vに示す。
【0061】
【表14】
【0062】
VI型の粉末X線回折を図6に示し、数値を表VIに示す。
【0063】
【表15】
【0064】
VII型の粉末X線回折を図7に示し、数値を表VIIに示す。
【0065】
【表16】
【0066】
VIII型の粉末X線回折を図8aに示し、数値を表VIIIに示す。
【0067】
【表17】
【0068】
IX型の粉末X線回折を図9示し、数値を表IXに示す。
【0069】
【表18】
【0070】
熱重量分析(TGA)を、図2b、3b、8b、及び9bのそれぞれに示すように、II、III、VIII、及びIX型について実施し、温度を変化に伴う試料の質量変化を記録する。物理化学的安定性は、それぞれ図2b、3b、8b、及び9bにおいて、測定DSCサーモグラムで示される。
【0071】
定義
本明細書で使用される、語句「a」又は「an」の実体は、その実体の一個以上を指し、例えば、「a」化合物は、一個以上の化合物又は少なくとも一個の化合物を指す。そのようなものとして、用語「a」(又は「an」)、「一個以上の」、及び「少なくとも一個の」は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0072】
語句「本明細書の前記で定義される」は、本発明の概要で最初になされた定義を指す。
【0073】
用語「非晶質状態」及び「非晶質物質」は、本明細書で互換的に使用され、非晶質状態の式Ibの化合物を指す。
【0074】
本明細書で使用される、用語「場合による」又は「場合により」は、後に記載される事象又は状況が、起こる必要がないが、起こってもよいことを意味し、本明細書が、その事象又は状況が起こる場合、及び起こらない場合を含むことを意味する。例えば、「場合により置換された」は、その部分が水素又は置換基であってもよいことを意味する。
【0075】
本明細書で使用される、用語「溶媒和物」は、本発明の化合物又はその塩を意味し、更に、非共有結合性の分子間の力で結合している化学量論量又は非化学量論量の溶媒を含む。溶媒は、ヒトへごく微量投与するために、揮発性で、非毒性で、及び/又は許容可能であることが好ましい。
【0076】
本明細書で使用される、用語「水和物」は、本発明の化合物又はその塩を意味し、更に、非共有結合性の分子間の力で結合している化学量論量又は非化学量論量の水を含む。
【0077】
本明細書で使用される、用語「感受性の低下」は、同じ実験系で、野生型ウイルスが示す感受性と比較して、特定ウイルス単離物の約10倍以上の感受性変化を指す。
【0078】
本明細書で使用される、用語「ヌクレオシド及びヌクレオチド逆転写酵素阻害剤」(「NRTI」)は、ヌクレオシド及びヌクレオチド並びにその類縁体を意味し、これは、HIV−1逆転写酵素、すなわちウイルスゲノムHIV−1RNAのプロウイルスHIV−1DNAへの変換を触媒する酵素の活性を阻害する。
【0079】
典型的に適切なNRTIには、以下のものが挙げられる:ジドブジン(AZT)(RETROVIR(商品名)で入手可能)、ジダノシン(ddl)(VIDEX(商品名)で入手可能)、ザルシタビン(ddC)(HIVID(商品名)で入手可能)、スタブジン(d4T)(ZERIT(登録商標)で入手可能)、ラミブジン(3TC)(EPIVIR(商品名)で入手可能)、WO96/30025に開示のアバカビル(1592U89)(ZIAGEN(登録商標)で入手可能)、アデホビルジピボキシル[ビス(POM)−PMEA](PREVON(商品名)で入手可能)、ロブカビル(BMS−180194)(EP-0358154及びEP-0736533に開示のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、Bristol-Myers Squibbにより開発中)、BCH−10652(逆転写酵素阻害剤、BCH−10618及びBCH−10619のラセミ混合物の形態、Biochem Pharmaにより開発中)、エムトリシタビン[(−)−FTC](エモリ―大学からライセンス提供、米国特許第5,814,639号、Triangle Pharmaceuticalsにより開発中)、β−L−FD4(β−L−D4Cとも呼ばれ、β−L−2’,3’−ジクレオキシ−5−フルオロ−シチデンと命名、エール大学がVion Pharmaceuticalsにライセンス提供)、DAPD(プリンヌクレオシド、(−)−β−D−2,6−ジアミノ−プリンジオキソラン、EP-0656778に開示、Triangle Pharmaceuticalsにライセンス提供)、及びロデノシン(FddA)(9−(2,3−ジデオキシ−2−フルオロ−β−D−トレオ−ペントフラノシル)アデニン、酸安定性プリン型逆転写酵素阻害剤、NIHで発見され、U.S. Bioscience Incにより開発中)。
【0080】
本明細書で使用される、語句「免疫系調節薬又は抗ウイルス性化合物」は、HIV−1感染の処置に有用な任意の化合物又は薬剤を指す。
【0081】
本明細書で使用される、用語「非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤」(「NNRTI」)は、HIV−1逆転写酵素の活性を阻害する非ヌクレオシドを意味する。
【0082】
典型的に適切なNNRTIには、以下のものが挙げられる:ネビラピン(BI−RG−587)(VIRAMUNE(商品名)で入手可能)、デラビラジン(BHAP、U−90152)(RESCRIPTOR(商品名)で入手可能)、エファビレンツ(DMP−266)(WO94/03440に開示のベンゾオキサジン−2−オン、SUSTIVA(商品名)で入手可能)、PNU−142721(フロピリジン−チオ−ピリミド)、AG−1549(前Shionogi #S-1153)、5−(3,5−ジクロロフェニル)−チオ−4−イソプロピル−1−(4−ピリジル)メチル−1H−イミダゾール−2−イルメチルカルボネート(WO96/10019に開示)、MKC−442(1−(エトキシ−メチル)−5−(1−メチルエチル)−6−(フェニルメチル)−(2,4(1H,3H)−ピリミジンジオン)、及び(+)−カラノリドA(NSC−675451)及びB、クマリン誘導体(米国特許第5,489,697号に開示)。
【0083】
本明細書で使用される、用語「プロテアーゼ阻害剤」(「PI」)は、HIV−1プロテアーゼ、すなわちウイルス性ポリタンパク質前駆体(例えば、ウイルスGAG及びGAG Polポリタンパク質)をタンパク質分解切断して、感染性HIV−1に存在する個々の機能性タンパク質にするのに必要な酵素の阻害剤を意味する。HIVプロテアーゼ阻害剤には、擬ペプチド構造、高分子量(7600ダルトン)及び実質的なペプチド特性を有する化合物、例えば、CRIXIVANが挙げられ、非ペプチドプロテアーゼ阻害剤には、例えばVIRACEPTが挙げられる。
【0084】
典型的に適切なPIには、以下のものが挙げられる:サキナビル(INVIRASE(商品名)で硬質ゲルカプセルとして入手可能、FORTOVASE(商品名)で軟質ゲルカプセルとして入手可能)、リトナビル(ABT−538)(NORVIR(商品名)で入手可能)、インジナビル(MK−639)(CRIXIVAN(商品名)で入手可能)、ネルフナビル(AG−1343)(VIRACEPTで入手可能)、アンプレナビル(141W94)(非ペプチドプロテアーゼ阻害剤、AGENERASE(商品名))、ラシナビル(BMS−234475、Novartis, Basel, Switzerland (CGP-61755)により最初に発見)、DMP−450(環状尿素、Dupontにより発見)、BMS−2322623(アザペプチド、Bristol-Myers Squibbにより第2世代HIV−1PIとして開発中)、ABT−378、AG−1549(経口活性イミダゾールカルバメート)。
【0085】
他の抗ウイルス剤には、ヒドロキシウレア、リバビリン、IL−2、IL−12、ペンタフシド及びYissum Project No.11607が挙げられる。T細胞活性化関連酵素であるリボヌクレオシド三リン酸還元酵素阻害剤ヒドロキシウレア(Droxia)は、ジダノシンの活性化に相乗効果を有することが示され、スタブジンと共に研究されている。IL−2は、Ajinomoto(EP-0142268)、Takeda(EP-0176299)、及びChiron(米国特許第RE33,653、4,530,787、4,569,790、4,604,377、4,748,234、4,752,585、及び4,949,314号)により開示されており、PROLEUKIN(アルデスロイキン)(商品名)で凍結乾燥粉末として入手可能(水で再構成、希釈して、静脈内(IV)注射又は皮下(sc)投与用)である。約1〜約2000万1U/日の投与量でのscが好ましく、約1500万1U/日の投与量でのscがより好ましい。IL−12は、WO96/25171に開示されており、約0.5マイクログラム/kg/日〜約10マイクログラム/kg/日の投与量で使用でき、scが好ましい。36アミノ酸合成ペプチドのペンタフシド(DP−178、T−20)は、米国特許第5,464,933号に開示されており、FUZEON(商品名)で入手可能である。ペンタフシドは、HIV−1が標的膜へ結合するのを阻害することにより作用する。ペンタフシド(3〜100mg/日)は、三剤併用療法では効果が見られないHIV−1陽性患者に対し、持続sc注入で又はエファビレンツ及び2個のPIとの併用注入で投与され、100mg/日で使用するのが好ましい。Yissum Project No. 11607は、HIV−1Vifタンパク質に基づく合成タンパク質である。リバビリン(1−β−D−リボフラノシル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド)は、米国特許第4,211,771号に記載されている。
【0086】
本明細書で使用される、用語「抗HIV−1療法」は、ヒトでの単独又は多剤併用療法特に、HAART三剤併用及び四剤併用療法の一部分として、HIV−1感染の処置に有用とされる任意の抗HIV−1薬剤を意味する。周知の典型的に適切な抗HIV−1療法には、多剤併用療法、例えば、(i)二個のNRTI、一個のPI、第二のPI、一個のNNRTIから選択される、少なくとも三個の抗HIV−1薬剤、及び(ii)NNRTI及びPIから選択される、少なくとも二個の抗HIV−1薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。典型的に適切なHAART−多剤併用療法には、(a)三剤併用療法、例えば、二個のNRTI及び一個のPI、又は(b)二個のNRTI及び一個のNNRTI、並びに(c)四剤併用療法、二個のNRTI、一個のPI及び第二のPI又は一個のNNRTIが挙げられる。未投薬患者の処置においては、抗HIV−1処置は、三剤併用療法で始めるのが好ましく、PIに不耐容である場合を除いて、二個のNRTI及び一個のPIを使用することが好ましい。服薬順守が最も重要である。CD4+及びHIV−1−RNA血漿レベルは、3〜6ヶ月毎に監視すべきである。ウイルス量がプラトーとなった場合、第四の薬剤、例えば、一個のPI又は一個のNNRTIを添加してもよい。
【0087】
共通の略語には、以下のものが挙げられる:アセチル(Ac)、酢酸(HOAc)、アゾ−ビス−イソブチリルニトリル(AIBN)、1−N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、大気圧(Atm)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBN又はBBN)、メチル(Me)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、アセトニトリル(MeCN)、ジ−tert−ブチルピロカルボネート又はboc無水物(BOC2O)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)、ベンジル(Bn)、m−クロロ過安息香酸(MCPBA)、ブチル(Bu)、酢酸n−ブチル(nBuAc)、n−ブタノール(nBuOH)、メタノール(MeOH)、ベンジルオキシカルボニル(cbz又はZ)、融点(mp)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、MeSO2−(メシル又はMs)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、質量スペクトル(ms)、三フッ化ジエチルアミノ硫黄(DAST)、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、ジベンジリデンアセトン(Dba)、N−カルボキシ無水物(NCA)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、N−メチルピロリドン(NMP)、1,2−ジクロロエタン(DCE)、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、二クロム酸ピリジニウム(PDC)、ジクロロメタン(DCM)、プロピル(Pr)、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、フェニル(Ph)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)、ポンド/平方インチ(psi)、ジエチルイソプロピルアミン(DEIPA)、ピリジン(pyr)、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)、室温(rt又はRT)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、tert−ブチルジメチルシリル又はt−BuMe2Si(TBDMS)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、トリエチルアミン(Et3N又はTEA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トリフレート又はCF3SO2−(Tf)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トリフルオロ酢酸(TFA)、1,1’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−2,6−ジオン(TMHD)、1,1’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、酢酸エチル(EtOAc)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル(Et2O)、トリメチルシリル又はMe3Si(TMS)、エチル(Et)、p−トルエンスルホン酸一水和物(TsOH又はpTsOH)、リチウムヘキサメチルジシラザン(LiHMDS)、4−Me−C6H4SO2−又はトシル(Ts)、イソプロピル(i−Pr)、N−ウレタン−N−カルボキシ無水物(UNCA)、エタノール(EtOH)。接頭辞のノルマル(n)、イソ(i−)、第二級(sec−)、第三級(tert−)及びネオ(neo)を含む慣用的命名法は、アルキル部位で使用される場合、慣習的な意味を有する(J. Rigaudy and D. P. Klesney, Nomenclature in Organic Chemistry, IUPAC 1979 Pergamon Press, Oxford.)。
【0088】
実施例
本発明及び本発明の範囲に包含される代表的な多形体の例を、以下の実施例に記載する。以下の調製例に記載の多形体は、当業者が、本発明をより明確に理解すること及び実施することを可能にするために与えられる。それらは、本発明の範囲を限定するものではなく、その例示的及び代表的であるものに過ぎない。
【0089】
一般的に、本願で使用される命名法は、IUPAC体系的命名法を作成するBeilstein Instituteのコンピューターシステム、AUTONOM(商標)v.4.0に基づいている。描かれた構造及びその構造に与えられた名称に相違がある場合、描かれた構造が優先されるものとする。更に、構造又は構造の一部分の立体化学が、例えば、太線又は点線で示されていない場合は、構造又は構造の一部分は、その立体異性体の全てを包含すると解釈する。
【0090】
本発明の塩及び多形体は、以下に示し記載する具体的な合成反応スキームに示す様々な方法により調製される。
【0091】
化合物I:
【化5】
【0092】
は、米国特許第7,166,738号に従って調製した。ここで該特許の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
これらの塩及びその多形体を調製する際に使用する出発物質及び試薬は、一般的に、Aldrich Chemical Co.,などから市販品として入手可能であり、又は当業者に公知の方法(以下の参考文献に記載の方法)により調製する:Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis; Wiley & Sons: New York, Volumes 1-21; R. C. LaRock, Comprehensive Organic Transformations, 2nd edition Wiley-VCH, New York 1999; Comprehensive Organic Synthesis, B. Trost and I. Fleming (Eds.) vol. 1-9 Pergamon, Oxford, 1991; Comprehensive Heterocyclic Chemistry, A. R. Katritzky and C. W. Rees (Eds) Pergamon, Oxford 1984, vol. 1-9; Comprehensive Heterocyclic Chemistry II, A. R. Katritzky and C. W. Rees (Eds) Pergamon, Oxford 1996, vol. 1-11; and Organic Reactions, Wiley & Sons: New York, 1991, Volumes 1-40。
【0094】
処方及び投与
式Iの化合物の製剤は製剤分野で公知の方法により調製することができる。下記実施例(以下に示す)は、当業者が本発明をより明確に理解し実施するために提供する。それらは、本発明の範囲を限定するものではなく、その例示的及び代表的であるものに過ぎないと考えるべきである。
【0095】
本発明の多形塩は、様々な経口及び非経口投与剤形で投与することができる。経口投与剤形は、錠剤、コーティング剤、糖衣剤、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤、シロップ剤、又は懸濁剤とすることができる。非経口投与には、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、又は腹腔内投与が含まれる。更に、本発明の塩は、経皮的(浸透促進剤を含んでもよい)、口腔、経鼻、及び坐剤経路で投与することができる。塩はまた、吸入により投与することもできる。
【0096】
本発明の化合物は、多種多様な経口投与剤形及び担体で処方することができる。経口投与は、錠剤、コーティング剤、糖衣剤、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤、シロップ剤、又は懸濁剤の投与剤形とすることができる。本発明の化合物は、とりわけ、連続(静脈点滴)局所非経口、筋肉内、静脈内、皮下、経皮的(浸透促進剤を含んでもよい)、口腔、経鼻、吸入、及び坐剤を介した投与などの他の投与経路により投与した場合に有効である。好ましい投与方法は、一般的に疾患の程度及び活性成分に対する患者の反応に従って調節可能な従来の一日投与量計画を用いた経口投与である。
【0097】
本発明の化合物(一個又は複数)、並びにその薬学的に有用な塩は、一個以上の従来の賦形剤、担体、又は希釈剤と一緒に、医薬組成物及び単位投与剤形の形態にすることができる。医薬組成物及び単位投与剤形は、追加の活性化合物又は活性成分を加えた、又は加えないで、従来成分を従来の配合で含むことができ、そして、単位投与剤形は、使用される目的の一日投与量範囲に相当する任意の適切有効量の活性成分を含むことができる。医薬組成物は、錠剤若しくは充填カプセル剤などの固体製剤、半固体製剤、粉末製剤、徐放性製剤として、又は液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、若しくは充填カプセル剤などの経口用液体製剤として、又は、直腸若しくは膣内投与用の坐剤の形態で、又は、非経口用の無菌注射剤の形態で使用できる。典型的な製剤は、活性化合物又は化合物の約5%〜約95%(w/w)を含有する。用語「製剤」又は「投与剤形」は、活性化合物の固体及び液体製剤の両方を含有することを意図とし、当業者には、活性成分が、標的器官又は組織、並びに所望の投与用量及び薬物動態パラメーターに応じて、種々の製剤で存在することができることが明らかであろう。
【0098】
本明細書で使用される、用語「賦形剤」は、一般的に、安全で非毒性な生物学的にも別の面でも望ましい医薬組成物を調製するの上で有用な化合物を指し、獣医用及びヒトの医薬的使用に許容される賦形剤を含有する。本明細書で使用される、用語「賦形剤」は、一個及び二個以上のそのような賦形剤の両方を含有する。
【0099】
語句、化合物の「薬学的に許容し得る塩」は、薬学的に許容し得て、そして親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。そのような塩には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸から形成される酸付加塩、若しくは酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸など有機酸から形成される酸付加塩、又は(2)親化合物の酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、若しくはアルミニウムイオンで置換された、又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなど有機塩基が配位したときに形成される塩が挙げられる。N−アシルスルホンアミドは、酸性プロトンを有しており、それが取り除かれて有機又は無機陽イオンとの塩を形成することができる。
【0100】
好ましい薬学的に許容し得る塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、及びマグネシウムから形成される塩である。薬学的に許容し得る塩についての記載は全て、その溶媒付加形態(溶媒和物)又は同じ酸付加塩の本明細書に定義したような結晶型(多形体)を含有することを理解すべきである。
【0101】
固体形態の製剤には、粉剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、及び分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、また、希釈剤、香味剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤、又は封入材料としても作用することができる一個以上の物質であってもよい。粉剤の場合、担体は、一般的に微粉化活性成分と混合された微粉化固体である。錠剤の場合、活性成分は、一般的に必要な結合能を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。適切な担体には、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ロウ、ココアバターなどが挙げられるが、これらに限定されない。固体形態の製剤は、活性成分の他に、着色剤、香味剤、安定化剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有していてもよい。
【0102】
液体製剤は、また経口投与に適しており、液体製剤には、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤、水性懸濁剤が挙げられる。これらは、使用直前に液体形態の製剤に変換することを目的とする固体形態の製剤を含む。乳剤は、溶液で、例えば、水性プロピレングリコール溶液で調製することができ、又は、レシチン、ソルビタンオレイン酸モノエステル、又はアラビアゴムなどの乳化剤を含有していてもよい。水性液剤は、活性成分を水に溶解し、適切な着色剤、香味剤、安定化剤、及び増粘剤を添加して調製することができる。水性懸濁剤は、微粉化活性成分を、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び他の周知の懸濁剤などの粘性材料と一緒に水に分散させて調製することができる。
【0103】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射、例えばボーラス注入又は持続注入)用に処方して、アンプル、プレフィルドシリンジ、少量注入の単位用量形態で、又は防腐剤と共に複数回用量容器に入れてもよい。組成物は、油性又は水性ビヒクル、例えば、水性ポリエチレングリコール溶液で懸濁剤、液剤、又は乳剤のような形態にしてもよい。油性又は非水性担体、希釈剤、液剤又はビヒクルの例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、及び注入用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)があり、防腐剤、湿潤剤、乳化剤又は懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの処方剤を含有してもよい。あるいは、活性成分は、滅菌固体の無菌的単離又は溶液の凍結乾燥から得られる粉末形態であってよく、使用前に適切なビヒクル(例えば、無菌のパイロジェンフリー水)で再構成される。
【0104】
本発明の化合物は、上皮への局所投与用に、軟膏、クリーム剤又はローション剤として、又は経皮パッチとして処方することができる。軟膏及びクリーム剤は、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を添加して、水性又は油性基剤で処方できる。ローション剤は、水性又は油性基剤で処方でき、また、一般的に一個以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、又は着色剤を含んでいる。口腔において、局所投与に適切な処方には、香料基剤(通常、スクロース及びアラビアゴム又はトラガカント)に活性剤を含むトローチ剤、ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアラビアゴムなどの不活性基材に活性成分を含む芳香錠、並びに適当な液体担体に活性成分を含む洗口剤が挙げられる。
【0105】
本発明の化合物は、坐剤投与用に処方することができる。脂肪酸グリセリドの混合物又はココアバターなどの低融点ロウを最初に溶融して、活性成分を例えば、攪拌により均一に分散する。次に、溶融した均一混合物を適当なサイズの鋳型に注ぎ、冷却して、固化する。
【0106】
本発明の化合物は、膣内投与用に処方することができる。活性成分に加えて、当該技術分野で適切であると知られている担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレーを処方することができる。
【0107】
本発明の化合物は、経鼻投与用に処方することができる。液剤又は懸濁剤を従来の手段、例えば、スポイト、ピペット又はスプレーにより鼻腔に直接使用する。処方は、単用量又は多用量形態で提供される。スポイト又はピペットの後者の場合では、適切で所定量の液剤又は懸濁剤を患者が投与することにより達成できる。スプレーの場合では、定量噴霧式スプレーポンプを用いて達成できる。
【0108】
本発明の化合物は、特に、呼吸器への鼻腔内投与を含むエアロゾル投与用に処方することができる。一般的に、化合物は、例えば5ミクロン以下のオーダーの小さい粒径を有する。そのような粒径は、当該技術分野で公知の手段、例えば、微粒化することにより得ることができる。活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、若しくはジクロロテトラフルオロエタン、又は二酸化炭素又は他の適切な気体などの適切な噴霧剤と共に圧縮パックで提供される。エアロゾルは、便宜上、レシチンなどの界面活性剤を含有していてもよい。薬剤の用量は、定量バルブによって制御できる。あるいは、活性成分は、乾燥粉末、例えば、ラクトース、デンプン、デンプン誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリジン(PVP)などの適切な粉末基剤と化合物の粉末混合物の形態で提供することができる。粉末担体は、鼻腔においてゲルを形成する。粉末組成物は単位用量形態であってもよく、例えば、ゼラチンのカプセル又はカートリッジ又はブリスター包装で、粉末を吸入器により投与することができる。
【0109】
所望であれば、製剤は、活性成分の徐放又は制御放出投与用に適した腸溶コーティングを用いて調製することができる。例えば、本発明の化合物は、経皮的又は皮下的な薬物送達デバイスに処方することができる。化合物の徐放が必要である場合、そして患者が処置計画に従うことが極めて重要である場合、これらの送達システムは有利である。経皮的な送達システムでは、しばしば化合物を皮膚接着性固体の支持体に結合させる。対象化合物を、浸透促進剤、例えば、アゾン(1−ドデシルアザ−シクロヘプタン−2−オン)と組み合わせることもできる。徐放送達システムは、外科的処置又は注射により、皮下層へ皮下挿入される。皮下インプラントは、脂溶性の膜、例えば、シリコーンゴム、又は生分解性高分子、例えば、ポリ乳酸に化合物を封入する。
【0110】
薬学的な担体、希釈剤及び賦形剤を一緒に含む、適切な処方が、 Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by E. W. Martin, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvania に記載されている。熟練の製剤科学者は、本発明の組成物を不安定にすることなく、又はそれらの治療活性を損なうことなく、本明細書の教示の範囲内で処方を変更して、特定の投与経路用の多数の処方を提供することができる。
【0111】
本化合物を水又は他のビヒクルにより溶解させるための修飾は、例えば、当該技術分野で公知の小規模な修飾(塩形成、エステル化など)をすることで容易に達成することができる。また、患者が最大限の有益効果を得るように、本発明化合物の薬物動態を管理するために投与経路及び特定の化合物の投与計画を変更することは、当該技術分野の従来技術において周知である。
【0112】
本明細書で使用される、用語「治療有効量」は、個々の疾患の症状を軽減するのに必要な量を意味する。用量は、各特定の事例において、個々の要件に対して調整される。用量は、多くの要因、例えば、処置する疾患の重症度、患者の年齢及び一般的な健康状態、患者の処置に用いられる他の医薬、投与経路及び形態、並びに担当の医者の選好及び経験などに応じて、広い範囲内で変更できる。経口投与において、単剤療法及び/又は併用療法では、約0.01〜約100mg/kg体重/日の一日用量が適切である。一日用量は、約0.1〜約500mg/kg体重/日が好ましく、より好ましくは、0.1〜約100mg/kg体重/日、更に好ましくは、1.0〜約10mg/kg体重/日である。したがって、70kgのヒトでは、投与用量は、約7mg〜0.7g/日の範囲である。一日用量は、単回用量又は分割用量(典型的には1〜5回の用量/日)で投与できる。一般的に、処置は化合物の最適用量より少ない用量から開始する。その後、個々の患者に最適な効果が得られるまで、用量を少量ずつ増やしていく。本明細書に記載の疾患を処置する当業者は、必要以上の実験をすることなく、個人の知識、経験、及び本願の開示を頼りに対象の疾患及び患者について本発明の化合物の治療有効量を確認することができる。
【0113】
本発明の実施態様において、活性化合物又は塩は、他の抗ウイルス剤、例えば、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、他の非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤又はHIVプロテアーゼ阻害剤と併用して投与することができる。活性化合物、その誘導体又は塩を他の抗ウイルス剤と併用して投与すると、活性を親化合物より増加させることができる。処置が併用療法の場合、その投与はヌクレオシド誘導体の投与と同時に又は順に実施できる。したがって、本明細書で使用される、「同時投与」は、同時に又は異なった時間において薬剤を投与することを含む。同時に二個以上の薬剤を投与することは、二個以上の活性成分を含む単一製剤、又は単一活性剤と共に二個以上の投与剤形の実質的な同時投与により行うことができる。
【0114】
本明細書において、処置とは、今ある症状を治療するだけでなく予防にまで及ぶこととし、そして動物の処置がヒト及び他の動物の処置を含むものであることを理解されたい。更に、本明細書で使用される、HIV感染の処置はまた、HIV感染に伴う又は媒介される疾患又は症状、又はその臨床的症状の治療及び予防を含む。
【0115】
医薬製剤は単位投与剤形が好ましい。そのような投与剤形では、製剤は適当量の活性成分を含有する単位用量に分けられる。単位投与剤形は、包装製剤であってよく、その包装は、包装された、錠剤、カプセル剤、及びバイアル又はアンプル中の粉剤などの製剤を異なる量含有するものである。また、単位投与剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、又はトローチ剤それ自体、又はこれらのいずれかを適当数包装した形態であってもよい。
【0116】
多形型の調製
実施例1. 化合物IのNa塩、2−[4−ブロモ−3−(3−クロロ−5−シアノ−フェノキシ)−2−フルオロ−フェニル]−N−(2−クロロ−4−プロピオニルスルファモイル−フェニル)−アセトアミドナトリウム塩(Ib):
【0117】
【化6】
【0118】
THF800mL中、化合物I81gを加熱還流し、トルエン1Lを加え、溶媒500mLを留去して、そしてトルエン1.2Lを加え、溶媒を計2L留去することで、結晶性生成物を得て、濾過、トルエンで洗浄、減圧下で溶媒を除去して結晶性化合物Iを得た。その後、実施例1の結晶性化合物I40.6gをTHF600mL及び1M NaOH60mLに、次にH2O500mLに溶解し、1M NaOHを追加してpHを8.05にした。
【0119】
実施例2. 化合物I(Ib)のNa塩
化合物IをMeOHから再結晶した。MeOHから再結晶した化合物I24gをTHF80mLに溶解し、1M NaOH20mLを加えた後、H2O60mLで希釈し、pH8になるまで1M NaOHを加えた。溶液を濾過し、減圧下でTHFを除去してゲルを得て、nBuOAc200mLを加えた後、溶媒を減圧下で除去することで濃密なゲルを得た。THF10mLを加えて半溶液を得て、結晶が生じ始めるまで減圧下で60℃に加熱し、その後減圧下で80℃に加熱して、冷却し、nBuOAc100mLを加えた後、生成物を濾別、nBuOAcで洗浄して、減圧下で加熱しながら溶媒を除去することで化合物Iのナトリウム塩21.6gを得た。
【0120】
実施例3. 化合物I(Ib)のNa塩の多形体II
5Lフラスコ中、化合物I284.4gを蒸留THF2Lに溶解して、1M NaOHをゆっくり加えてpHを7.98に調整し、H2O2Lを加えた。その後、溶液を46℃に加熱し、THFを減圧下で除去した後、溶液を濾過し、H2O2Lを加えて再度濾過して4℃に冷却すると第一の懸濁液が得られた。実施例1の化合物Iのナトリウム塩20.9g及び実施例2の化合物Iのナトリウム塩21.6gの両方を、第一の懸濁液に加えTHF4Lを添加すると均一な溶液になり、その後濾過した。次に、大部分のTHFを減圧下で除去し、前もって濾過したnBuOH3Lを加えて、減圧下55℃にて溶媒を5L減少させた。次に、前もって濾過したnBuOAc1Lを加え、その後、減圧下で同じ容量減少させた。次に、前もって濾過したnBuOAc3Lを加え、溶液を80℃に加熱し、減圧下で溶媒を1L減少させ、溶液を60℃に冷却し、前もって濾過したnBuOAc1Lを加えた。その後、溶液を82℃に加熱し結晶性生成物を得て、これを濾別しnBuOAcで洗浄し、減圧下70℃にて1日、80℃にて1日、そして90℃にて3日かけ溶媒を除去することで生成物307gを得た。
【0121】
実施例4. 化合物I(Ib)のNa塩
MeOHから再結晶した化合物I250gをTHF1.5Lに溶解し、1M NaOH(H2O中)250mLを、次にH2O1Lを加えた。1M NaOH(H2O中)150mLを加え、溶液をpH8.00にした。次に、混合物を濾過し、H2Oが蒸留し始めるまで減圧下で濃縮した。その後、nBuOHを加え、溶液をH2Oの蒸留が止まるまで減圧下で再度濃縮した。次に、nBuOAcを加え、溶媒を減圧下で濃縮し、60℃にて溶液が濁るまで添加と除去を繰り返した。次に、混合物を一晩攪拌し結晶を得て、これを濾別してnBuOAcで洗浄し、減圧下、80℃その後100℃にて乾燥することで化合物I(Ib)のNa塩205gを得た。
【0122】
実施例5. 化合物IのNa塩の結晶型
I型:(未乾燥試料):
I型(水和物/溶媒和物)は、THF/水/n−ブタノール/酢酸n−ブチル溶媒系で再結晶して調製することができる。
【0123】
II型:
II型(水和物/溶媒和物)は、I型を加熱/乾燥して調製することができる。また、III型をMeOHに懸濁してII型を生成することもできる。
【0124】
III型:
III型(無水)は、THF/水/n−ブタノール/酢酸n−ブチル溶媒系、又はTHF/nBuOAcで再結晶して調製することができる。また、II型又はIV型をブタノンに懸濁してIII型を調製することもできる。II型をメチルイソブチルケトンに懸濁してもIII型が得られるだろう。
【0125】
IV型:
IV型(水和物/溶媒和物)は、II型をペンタノールに懸濁して調製することができる。
【0126】
V型: V型(水和物/溶媒和物)は、II型をTHFに懸濁して調製することができる。
【0127】
VI型:
VI型(水和物/溶媒和物)は、II型をエタノール、イソプロパノール、70%IPA/30%H2O、酢酸イソプロピル、アセトン、又はヘプタンに懸濁して調製することができる。また、III型を70%IPA/30%H2Oに懸濁してVI型を調製することもできる。
【0128】
VII型:
VII型(水和物/溶媒和物)は、II型をペンタンに懸濁して調製することができる。
【0129】
VIII型:
VIII型(無水)は、THF/水/酢酸ブチルで再結晶して調製することができる。また、III型をアセトニトリル、イソプロパノール/水、及びアセトニトリル/水溶媒系に懸濁して調製することもできる。また、II型をアセトニトリルに懸濁してVIII型を生成することもできる。
【0130】
IX型:
IX型(無水)は、昇温で、VIII型をアセトニトリルに懸濁して調製することができる。
【0131】
非晶質物質:
非晶質状態のIbは、VIII型を〜6mg/mLの薬物濃度でt−ブタノール82%/水18%に溶解して調製することができる。この溶液を、一晩(〜18時間)凍結乾燥して非晶質物質を得た。非晶質物質は、25C/60RHでは少なくとも一週間安定であるが、40C/75RHでは不安定となる。
【0132】
実施例6. 結晶多形体I〜IX型及び非晶質状態のIbの相互変換スキームを図13に詳述する。
【0133】
実施例7. スケールアップ方法
III型のNa塩4.5kgをTHF約45Lに溶解し、周囲温度にて、HClで処理しpH1にした。混合物をポリッシュ濾過し(polish filtred)、清澄にした後、ポット温度108℃にして常圧蒸留を行い、THFを同量のトルエンで置換して遊離酸を結晶化した。混合物を冷却し、固体を濾過した。湿ったケーキをDMF約6kg及びIPA20kgの混合物に溶解した。この溶媒混合物約4Lを、80℃で、この物質約1kgに溶解することができた。完全に溶けたら、温度を維持しながら水(約9kg)をゆっくり加えた。10℃に冷却したところ、遊離酸がこの混合物から結晶化し、これを濾過、IPAで洗浄後、真空オーブンに移し乾燥した。
【0134】
次に、THF(約5〜10L/kg)に遊離酸を溶解させて、塩を再形成し、2当量の2−エチル−ヘキサン酸Na(可溶性のナトリウム塩)で処理した。この溶液を濾過し、次にポット温度127℃にして常圧蒸留を行い、THFを酢酸ブチルで置換して結晶化した。このポット温度になったら、容器を密封し、約45分間135℃に加熱した。混合物を周囲温度に冷却し、濾過、酢酸ブチルで洗浄して、真空オーブンで乾燥した。この物質(VIII型)のPXRDは、前記で得たIII型のバッチと一致しなかった。
【0135】
実施例8. 化合物IのNa塩のVIII型の再結晶法
化合物IのNa塩100グラムを、水100mL及びイソプロパノール100mLの混合物に還流して溶解させた。次に、熱い溶液にVIII型の種晶を加え、IPA(3.75L)で希釈、冷却して5℃で濾過することにより再結晶してVIII型を収率約90%、純度約99%(HPLC)で得た。
【0136】
実施例9. 粉末X線回折パターン
多形結晶試料の粉末X線回折パターンを、封止された銅Kα1照射源を備えたScintagX1粉末X線回折計で測定した。試料について、4及び2ミクロン入射ビームスリット幅、0.5及び0.2ミクロンの回析ビームスリット幅を、3°/分の速度で2o〜40°(2θ)で走査した。
【0137】
実施例10. 熱化学解析
DSCサーモグラムは、熱分析(TA)装置から2920 Modulated DSCを使用して得た。加熱速度は、10℃/分でありランを通して窒素パージし続けた。
【0138】
熱重量分析(TGA)は、Hi-Res2950TGA(TA装置)を使用して実施した。試料を10℃/分の速度で30℃〜280℃に加熱し、各ランを通して窒素フローを維持した。
【0139】
実施例11. 医薬組成物
いくつかの経路で投与するため、対象化合物の医薬組成物を本実施例に記載するように調製することができる。
【0140】
経口投与用組成物(A)
【表19】
【0141】
成分を混合し、各約100mg含有するようにカプセルに分注した。一個のカプセルはおおよそ全一日用量に相当する。
【0142】
経口投与用組成物(B)
【表20】
【0143】
成分を混合し、メタノールなどの溶媒を用いて粒状にした。次に、製剤を乾燥し、適当な錠剤機を用いて錠剤(活性化合物約20mgを含有する)にした。
【0144】
経口投与組成物(C)
【表21】
【0145】
成分を混合し、経口投与用に懸濁剤を形成した。
【0146】
非経口製剤(D)
【表22】
【0147】
活性成分を注射用水の一部に溶解する。次に十分量の塩化ナトリウムを攪拌しながら加え、等張溶液にする。残りの注射用水で溶液の濃度を合わせ、0.2ミクロンのメンブレンフィルターで濾過し無菌条件下で包装する。
【0148】
坐剤製剤(E)
【表23】
【0149】
成分を一緒に溶融し、蒸気浴で混合した後、鋳型に注ぎ総重量2.5gにする。
【0150】
局所製剤(F)
【表24】
【0151】
水以外の全ての成分を混合し、攪拌しながら約60℃に加熱する。次に、約60℃で十分な量の水を激しく攪拌しながら加え、成分を乳化した後、水を適量加え約100gにした。
【0152】
これまでの記載又は以下の特許請求の範囲に開示される特徴は、開示された機能を遂行するための特定の形態又は用語、あるいは、開示された結果を達成するための方法またはプロセスを表しおり、必要に応じて、そのような特徴を個々に、又は任意に組み合わせて、その種々の形態で本発明を実現するために使用することができる。
【0153】
上記の発明を明確にし理解することを目的に、説明及び例を挙げて詳細に記載する。当業者にとって、添付の請求項の範囲内で変更及び改変を実施できることは明らかであろう。従って、これまでの記載は例示的であって、限定するものではないことを意図したものであることを理解されたい。従って、本発明の範囲は、これまでの記載に関して決定されるものではなく、以下の添付の請求の範囲を当該請求項の均等物の全範囲と合わせて決定されるものとする。
【0154】
本願に引用される全ての特許、特許出願及び出版物は、あたかも、各々個別の特許、特許出願又は出版物がそれぞれあらゆる目的において示されるかのように同程度に、ここにその全体が参照により組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ib:
【化7】
で表される化合物の結晶型。
【請求項2】
化合物(Ib)をTHF、水、及びnBuAcから結晶化することを含む、請求項1に記載の結晶型多形体の調製方法。
【請求項3】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(I型):
【表25】
【請求項4】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(II型):
【表26】
【請求項5】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(III型):
【表27】
【請求項6】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(IV型):
【表28】
【請求項7】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(V型):
【表29】
【請求項8】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(VI型):
【表30】
【請求項9】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(VII型):
【表31】
【請求項10】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(VIII型):
【表32】
【請求項11】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(IX型):
【表33】
【請求項12】
化合物(Ib)をTHF/水/n−ブタノール/酢酸n−ブチル、THF/nBuAc、ブタノン、又はメチルイソブチルケトンから結晶化することを含む、請求項5に記載の多形結晶型(III型)の調製方法。
【請求項13】
化合物(Ib)をTHF/水/酢酸ブチル、アセトニトリル、アセトニトリル/水、又はイソプロパノール/水から結晶化することを含む、請求項10に記載の多形結晶型(VIII型)の調製方法。
【請求項14】
化合物(Ib)をアセトニトリルから結晶化することを含む、請求項11に記載の多形結晶型(IX型)の調製方法。
【請求項15】
請求項2の方法に従って調製される式Ibで表される化合物の多形結晶型。
【請求項16】
HIVに関連した疾患の治療及び/又は予防的処置用の医薬を調製するための請求項3〜11に記載の多形結晶型及び非晶質状態のIbのいずれか一個の使用。
【請求項17】
請求項3〜11に記載の多形結晶型のいずれか一個を、少なくとも一個の薬学的に許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤との混合物で含む医薬組成物。
【請求項18】
非晶質状態のIbを、少なくとも一個の薬学的に許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤との混合物で含む医薬組成物。
【請求項1】
式Ib:
【化7】
で表される化合物の結晶型。
【請求項2】
化合物(Ib)をTHF、水、及びnBuAcから結晶化することを含む、請求項1に記載の結晶型多形体の調製方法。
【請求項3】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(I型):
【表25】
【請求項4】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(II型):
【表26】
【請求項5】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(III型):
【表27】
【請求項6】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(IV型):
【表28】
【請求項7】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(V型):
【表29】
【請求項8】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(VI型):
【表30】
【請求項9】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(VII型):
【表31】
【請求項10】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(VIII型):
【表32】
【請求項11】
本質的に以下に示されるようなD間隔を有する粉末X線回折トレースを示す、請求項1に記載の化合物の多形結晶型(IX型):
【表33】
【請求項12】
化合物(Ib)をTHF/水/n−ブタノール/酢酸n−ブチル、THF/nBuAc、ブタノン、又はメチルイソブチルケトンから結晶化することを含む、請求項5に記載の多形結晶型(III型)の調製方法。
【請求項13】
化合物(Ib)をTHF/水/酢酸ブチル、アセトニトリル、アセトニトリル/水、又はイソプロパノール/水から結晶化することを含む、請求項10に記載の多形結晶型(VIII型)の調製方法。
【請求項14】
化合物(Ib)をアセトニトリルから結晶化することを含む、請求項11に記載の多形結晶型(IX型)の調製方法。
【請求項15】
請求項2の方法に従って調製される式Ibで表される化合物の多形結晶型。
【請求項16】
HIVに関連した疾患の治療及び/又は予防的処置用の医薬を調製するための請求項3〜11に記載の多形結晶型及び非晶質状態のIbのいずれか一個の使用。
【請求項17】
請求項3〜11に記載の多形結晶型のいずれか一個を、少なくとも一個の薬学的に許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤との混合物で含む医薬組成物。
【請求項18】
非晶質状態のIbを、少なくとも一個の薬学的に許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤との混合物で含む医薬組成物。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−502075(P2012−502075A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526458(P2011−526458)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061185
【国際公開番号】WO2010/028968
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061185
【国際公開番号】WO2010/028968
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
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