説明

アセトアセチル化ポリビニルポリマーおよび該ポリマーから製造された硬化性コーティング組成物

本発明は、ポリビニルブチラールなどのポリビニルポリマーから得られたアセトアセチル化ポリビニルポリマーを含有する硬化性コーティング組成物に関する。これらのコーティング組成物は、自動車OEM用途および塗り変えコーティング用途におけるウォッシュプライマーとして用いるために特に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、自動車用途において用いるために適するコーティング組成物に関し、より詳しくは、従来のウォッシュプライマーと比べてコーティング粘着性および硬度が改善されたウォッシュプライマーに関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国仮特許出願第60/456,476号(2002年3月21日出願)からの35U.S.C.§119に基づく優先権を主張する。この特許出願は、完全に記載されたかのように本明細書に引用して援用する。
【背景技術】
【0003】
コーティング用途、特に自動車OEM(相手先ブランド供給業者)または塗り変え多層系において、コーティング組成物の多層は自動車ボディなどの金属基材上に付けられる。典型的には、露出金属表面はウォッシュプライマー、次にベースコーティング組成物からのコーティングで被覆され、ベースコーティング組成物からのコーティングはクリアコーティング組成物で更に被覆される。必要ならば、プライマー組成物からのコーティングは、ベースコーティング組成物の被着の前にウォッシュプライマーコーティング上に付けることが可能である。ウォッシュプライマーから生じるコーティングの接着強度および耐腐食性は多層系の全体的な一体性のために重要である。従来のウォッシュプライマーは、イソプロピルアルコールに溶解させたポリビニルブチラールを典型的に含むコーティング組成物である。従来のウォッシュプライマーはクロム酸亜鉛などの腐食防止剤、および下にある露出金属基材表面へのプライマーの粘着性を改善するために金属表面をエッチングする燐酸などの定着剤も典型的に含むコーティング組成物である。ウォッシュプライマーの層は、約7.6マイクロメートル(0.3ミル)〜31マイクロメートル(1.2ミル)の典型的な膜厚にペイントスプレーガンを用いるなどにより典型的には従来通り付けられ、OEM用途において約25.4マイクロメートル(1ミル)〜50.8マイクロメートル(2ミル)および塗り変え用途において127マイクロメートル(5ミル)までの膜厚に典型的に付けられるプライマーとは異なる。典型的には、従来のプライマーコーティング組成物のコーティングは、ベースコーティングおよびクリアコーティングなどの追加のコーティングを付ける前にウォッシュプライマーコーティング上に付けられる。
【0004】
こうした従来のウォッシュプライマーに付随する主要な問題の1つは、毒性であるとともに環境に悪影響を及ぼすクロム酸亜鉛などの従来の腐食防止剤の存在である。従って、クロム酸塩含有従来型ウォッシュプライマーによってもたらされる耐腐食性に等しいか、またはその耐腐食性を改善する無クロム酸塩ウォッシュプライマーを製造しようとする試みがなされてきた。
【0005】
こうした従来のウォッシュプライマーに付随する他の問題は、自動車コーティング系によって典型的に経験されるチッピング処置に供される時に従来のウォッシュプライマーから生じるコーティングの裂ける傾向である。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,221,494号明細書
【特許文献2】米国特許第5,286,782号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の無クロム酸塩コーティング組成物は環境に優しいのみでなく従来のウォッシュプライマーと比べて改善されたチップ抵抗も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、架橋性成分と架橋成分を含む硬化性組成物であって、前記架橋性成分が
(a)式
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、(m)は約1.5モル%〜約85モル%の範囲であり、(n)は約0モル%〜約20.5モル%の範囲であり、(p)は約12モル%〜約87モル%の範囲であり、(q)は約1モル%〜約88モル%の範囲であり、(m)、(n)、(p)および(q)の合計は100であり、R1およびR2は独立してH、置換または非置換C1〜C12アルキル、置換または非置換C6〜C14アリール、置換または非置換C7〜C22アラルキル、置換または非置換C6〜C14アルカリール、置換、非置換C4〜C14カルボシクリルあるいはそれらの組み合わせであり、前記置換基は独立してC1〜C12アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルの誘導体、スルホニル、スルホニルの誘導体、シアノおよびハロからなる群から選択される)
を有するアセトアセチル化ポリビニルポリマー、
(b)式
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、(m)は約1.5モル%〜約85モル%の範囲であり、(n)は約0モル%〜約20.5モル%の範囲であり、(p)は約12モル%〜約87モル%の範囲であり、(q)は約1モル%〜約88モル%の範囲であり、(x)は約0.5モル%〜約6モル%の範囲であり、(m)、(n)、(p)、(q)および(x)の合計は100であり、R1およびR2は独立してH、置換または非置換C1〜C12アルキル、置換または非置換C6〜C14アリール、置換または非置換C7〜C22アラルキル、置換または非置換C6〜C14アルカリール、置換、非置換C4〜C14カルボシクリルあるいはそれらの組み合わせであり、ZはHまたは−COOHであり、Yは−COOH、ハロ、非置換フェニルまたはそれらの組み合わせであり、前記置換基は独立してC1〜C12アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルの誘導体、スルホニル、スルホニルの誘導体、シアノおよびハロからなる群から選択される)
を有するアセトアセチル化ポリビニルポリマー、
(c)それらの組み合わせ
を含み、
前記架橋成分がポリアミン、ポリケチミン、ポリエポキシド、ポリイソシアネート、メラミン、C1〜C12アルキルジアルデヒド、C1〜C12アルキルポリ(メタ)アクリレートまたはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする硬化性組成物に関する。
【0013】
本発明は、基材上に多層系を作る方法であって、
(i)硬化性コーティング組成物の架橋性成分と架橋成分を混合してポットミックスを形成する工程であって、前記架橋性成分が
(a)式
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、(m)は約1.5モル%〜約85モル%の範囲であり、(n)は約0モル%〜約20.5モル%の範囲であり、(p)は約12モル%〜約87モル%の範囲であり、(q)は約1モル%〜約88モル%の範囲であり、(m)、(n)、(p)および(q)の合計は100であり、R1およびR2は独立してH、置換または非置換C1〜C12アルキル、置換または非置換C6〜C14アリール、置換または非置換C7〜C22アラルキル、置換または非置換C6〜C14アルカリール、置換、非置換C4〜C14カルボシクリルあるいはそれらの組み合わせであり、前記置換基は独立してC1〜C12アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルの誘導体、スルホニル、スルホニルの誘導体、シアノおよびハロからなる群から選択される)
を有するアセトアセチル化ポリビニルポリマー、
(b)式
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、(m)は約1.5モル%〜85モル%の範囲であり、(n)は約0モル%〜20.5モル%の範囲であり、(p)は約12モル%〜約87モル%の範囲であり、(q)は約1モル%〜約88モル%の範囲であり、(x)は0.5モル%〜6モル%の範囲であり、(m)、(n)、(p)、(q)および(x)の合計は100であり、R1およびR2は独立してH、置換または非置換C1〜C12アルキル、置換または非置換C6〜C14アリール、置換または非置換C7〜C22アラルキル、置換または非置換C6〜C14アルカリール、置換、非置換C4〜C14カルボシクリルあるいはそれらの組み合わせであり、ZはHまたは−COOHであり、Yは−COOH、ハロ、非置換フェニルまたはそれらの組み合わせであり、前記置換基は独立してC1〜C12アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルの誘導体、スルホニル、スルホニルの誘導体、シアノおよびハロからなる群から選択される)
を有するアセトアセチル化ポリビニルポリマー、
(c)それらの組み合わせ
を含み、
前記架橋成分がポリアミン、ポリケチミン、ポリエポキシド、ポリイソシアネート、メラミン、C1〜C12アルキルジアルデヒド、C1〜C12アルキルポリ(メタ)アクリレートまたはそれらの組み合わせを含む工程と、
(ii)基材上にポットミックス層を付ける工程と、
(iii)前記ポットミックス層上にベースコーティング組成物の層を付ける工程と、
(iv)ベースコーティング組成物の前記層上にクリアコーティング組成物の層を付けて、前記基材上に多層系を形成する工程と、
(v)周囲条件下または高い硬化温度下で前記多層系を硬化させて、前記基材上に多層系を形成する工程と
を含むことを特徴とする方法にも関連する。
【0018】
本発明は、アセトアセチル化ポリビニルポリマーを製造する方法であって、
(i)(a)式
【0019】
【化5】

【0020】
(式中、(m)は約1.5モル%〜約85モル%の範囲であり、(n)は約0モル%〜約20.5モル%の範囲であり、(o)は約13モル%〜約98.5モル%の範囲であり、(m)、(n)および(o)の合計は100であり、R1およびR2は独立してH、置換または非置換C1〜C12アルキル、置換または非置換C6〜C14アリール、置換または非置換C7〜C22アラルキル、置換または非置換C6〜C14アルカリール、置換、非置換C4〜C14カルボシクリルあるいはそれらの組み合わせであり、前記置換基は独立してC1〜C12アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルの誘導体、スルホニル、スルホニルの誘導体、シアノおよびハロからなる群から選択される)
を有するポリビニルポリマー、
(b)式
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、(m)は約1.5モル%〜約85モル%の範囲であり、(n)は約0モル%〜約20.5モル%の範囲であり、(o)は約13モル%〜約98.5モル%の範囲であり、(x)は約0.5モル%〜約6モル%の範囲であり、(m)、(n)、(o)および(x)の合計は100であり、R1およびR2は独立してH、置換または非置換C1〜C12アルキル、置換または非置換C6〜C14アリール、置換または非置換C7〜C22アラルキル、置換または非置換C6〜C14アルカリール、置換、非置換C4〜C14カルボシクリルあるいはそれらの組み合わせであり、ZはHまたは−COOHであり、Yは−COOH、ハロ、非置換フェニルまたはそれらの組み合わせであり、前記置換基は独立してC1〜C12アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルの誘導体、スルホニル、スルホニルの誘導体、シアノおよびハロからなる群から選択される)
を有するポリビニルポリマー、または
(c)それらの組み合わせ
を1種または複数の溶媒中に溶解させて、溶液を形成する工程と、
(ii)前記溶液をC1〜C12アルキルアセトアセテートに接触させて、前記アセトアセチル化ポリビニルポリマーを製造する工程と
を含む工程による方法に更に関連する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本明細書で用いられる時、「2パックコーティング組成物」は別個の容器に貯蔵された2種の成分を有する硬化性コーティング組成物を意味する。2種の成分を含む容器は、典型的には、コーティング組成物の成分の保存寿命を長くするために密封される。成分は使用の直前に混合してポットミックスを形成し、ポットミックスは、典型的には数分(15分〜45分)から数時間(4時間〜8時間)の範囲の限定的なポットライフを有する。ポットミックスは、自動車ボディなどの基材表面上に所望の厚さの層として付けられる。被着後、層は周囲温度または高温で乾き硬化して、改善された粘着性およびチップ抵抗などの所望のコーティング特性を有するコーティングを基材表面上に形成する。
【0024】
「低VOCコーティング組成物」は、コーティング組成物リットル当たり0.1キログラム(1.0ポンド/ガロン)〜0.72キログラム(6.0ポンド/ガロン)の範囲内、好ましくは0.3キログラム(2.6ポンド/ガロン)〜0.6キログラム(5.0ポンド/ガロン)、より好ましくは0.34キログラム(2.8ポンド/ガロン)〜0.53キログラム(4.4ポンド/ガロン)の溶媒を含むコーティング組成物を意味する。すべてのVOCはASTM D3960で規定された手順下で決定される。
【0025】
「高固形物組成物」は、30%を上回る、好ましくは35〜90%の範囲内、より好ましくは40〜80%の範囲内の固形物成分を有するコーティング組成物を意味する。重量%のすべては組成物の全重量を基準にしている。
【0026】
「GPC重量平均分子量」は、カリフォルニア州パロアルトのヒューレット・パッカード(Hewlett−Packard(Palo Alto,California))によって供給される高性能液体クロマトグラフ(HPLC)などのゲル透過クロマトグラフィを用いることにより測定された重量平均分子量を意味する。別段の指定がない限り、液相としてテトラヒドロフランを用い、ポリスチレン標準を用いた。
【0027】
℃で測定される「Tg」(ガラス転移温度)はDSC(示差走査熱分析)によって決定される。
【0028】
「(メタ)アクリレート」はアクリレートとメタクリレートを意味する。
【0029】
「ポリマー固形物」または「組成物固形物」は乾燥状態のポリマーまたは組成物を意味する。
【0030】
「架橋性成分」は、ポリマーの主鎖、ポリマーの主鎖からの側鎖に配置された、またはポリマーの主鎖上で末端に配置された、あるいはそれらの組み合わせで配置された官能基を有する化合物、ポリマーまたはコポリマーを含む成分を意味する。
【0031】
「架橋成分」は、ポリマーの主鎖、ポリマーの主鎖からの側鎖に配置された、またはポリマーの主鎖上で末端に配置された、あるいはそれらの組み合わせで配置された基を有する化合物、ポリマーまたはコポリマーを含む成分であって、これらの基が(硬化工程中に)架橋性成分上の基と架橋して、架橋済み構造の形態を取ったコーティングをもたらすことが可能である成分を意味する。
【0032】
「周囲硬化条件」は、吹き付け領域内に存在する12℃〜45℃(55°F〜110°F)の温度範囲および15%〜90%の湿度範囲として定義される。
【0033】
(アセトアセチル化ポリビニルポリマー)
本発明のアセトアセチル化ポリビニルポリマーを製造するために適するポリビニルポリマーは以下の式(I)によって表される。
【0034】
【化7】

【0035】
式中、(m)は約1.5モル%〜約85モル%、好ましくは約36モル%〜約68モル%、より好ましくは約40モル%〜約64モル%の範囲であり、(n)は約0モル%〜約20.5モル%、好ましくは約1モル%〜約6モル%、より好ましくは約2モル%〜約4モル%の範囲であり、(o)は約13モル%〜約98.3モル%であり、好ましくは約32モル%〜約63モル%、より好ましくは約34モル%〜約55モル%の範囲である。前述したすべてのモル%は、100である(m)、(n)および(o)の合計を基準にしている。前述した基、(m)、(n)および(o)が典型的にはポリマー主鎖上でランダムに分配されていることに留意されたい。R1およびR2は独立してH、置換または非置換C1〜C12アルキル、置換または非置換C6〜C14アリール、置換または非置換C7〜C22アラルキル、置換または非置換C6〜C14アルカリール、置換、非置換C4〜C14カルボシクリルあるいはそれらの組み合わせであり、前記置換基は独立してC1〜C12アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルの誘導体、スルホニル、スルホニルの誘導体、シアノおよびハロからなる群から選択される。R1について前述したものの例の幾つかには、プロピル、フェニルおよびアルキル置換フェニル(好ましくは、トリルおよびキシリル)が挙げられる。R2について前述したものの例の幾つかには、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよびフェニルが挙げられる。プロピルとしてR1をメチルとしてR2を有するポリビニルブチラールは、より好ましい。
【0036】
プロピルとしてR1をメチルとしてR2を有するより好ましいポリビニルポリマーは、「モウィタル(Mowital)」(登録商標)という商標でノースカロライナ州シャーロットのクラリアント・コーポレーション(Clariant Corporation(Charlotte,North Carolina))などの多くの供給業者によって微粒子易流動性粉末の形で典型的に供給されている。本発明において用いるために適するポリビニルブチラールの幾つかの例には、「モウィタル(Mowital)」(登録商標)B20H[(m)49〜55モル%、(n)1〜5モル%および(o)40〜46モル%]、B30T[(m)41〜46モル%、(n)1〜5モル%および(o)49〜55モル%]およびB30H[(m)50〜55モル%、(n)1〜5モル%および(o)40〜46モル%]が挙げられる。
【0037】
本発明において用いるために適するポリビニルポリマーは、酢酸ビニルと以下のコモノマーの1種または複数とのコポリマーが挙げられる。
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸、好ましくはマレイン酸;
無水マレイン酸などの酸無水物モノマー;
アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル含有モノマー、好ましくはグリシジル(メタ)アクリレート;
塩化ビニル、テトラフルオロエチレン、弗化ビニルおよび臭化ビニルなどのハロゲン含有モノマー、好ましくは塩化ビニル;
2〜C12アルキレン、好ましくは、エチレンおよびプロピレン;
ならびにホスフェート誘導体、好ましくは、ビニルホスフェートおよびビニルジホスフェート。
【0038】
酢酸ビニルと前述したコモノマーの1種または複数の両方を含む前述したポリマーは、ポリマー中の酢酸ビニル基のビニルアルコール基への加水分解、次に、燐酸または塩酸などの触媒の存在下でのアセトアルデヒド、プロパンアルデヒド、ブチルアルデヒドまたはそれらの組み合わせなどの1種または複数のアルデヒドとの反応によって従来通り調製して、以下の式(II)のポリビニルポリマーを製造する。
【0039】
【化8】

【0040】
式中、R1、R2、(m)、(n)および(o)は上の式(I)で記載されたものと同じであり、ZはHまたは−COOHであり、Yは−COOH、ハロ、非置換フェニルまたはそれらの組み合わせであり、(x)は、約0.5モル%〜約6モル%、好ましくは約1モル%〜約5モル%、より好ましくは約2モル%〜約4モル%の範囲であり、(m)、(n)、(o)および(x)の合計は100である。
【0041】
前述した式(I)、(II)またはそれらの組み合わせのポリビニルポリマーの主鎖上の(m)基、(n)基およびヒドロキシル(o)基の割合を調節することにより、得られたポリビニルポリマーの物理的特性および化学的特性を制御することが可能である。重合度も得られたポリビニルポリマーの熱的特性および機械的特性に影響を及ぼすことが可能である。従って、得られたポリビニルポリマーからの耐光性、靱性、弾性および耐水性などのコーティングの特性を適切に調節することが可能である。
【0042】
しかし、ウォッシュプライマー組成物として用いられる時のポリビニルポリマーコーティングは、基材への望ましいとは言えない粘着性またはチップ抵抗を有する傾向がある。裂けることによるポリビニルブチラール膜破壊を減らすとともにコーティング粘着性を改善しようとする試みがなされてきた。例えば、ポリビニルブチラールは、コーティングの特性を改善するために、フェノール樹脂、エポキシド、メラミン、イソシアネートまたはジアルデヒドなどの従来の架橋剤と合わせて用いられてきた。しかし、こうした架橋済み系の硬化は、典型的には高い焼付温度で行われる。同等のコーティング特性を有する室温硬化性ポリビニルポリマーを用いることが依然として必要とされている。
【0043】
本発明の出願人らは、アセトアセテート官能基を有するポリビニルポリマーを提供することにより、得られたアセトアセチル化ポリビニルポリマーが所望のチップ抵抗および粘着性を有するのみでなく、こうした変性ポリビニルポリマーを周囲条件下でまたは高い硬化温度で様々な従来の架橋成分により架橋できることを意外にも発見した。
【0044】
アセトアセチル化ポリビニルポリマー中のアセトアセテート基の存在が、アセトアセチル化ポリビニルポリマーから生じる、より良好なコート内強度(裂けに対する抵抗)を有するコーティングを提供し、コーティングをより寸法安定性にすることにより、そして金属表面とキレート化させる官能基を提供することにより金属への粘着性を維持するのを助け、コーティングの透過性を一般に下げることが高い焼付温度に頼らずに考えられる。
【0045】
本発明のアセトアセチル化ポリビニルポリマーは、式(I)のポリビニルポリマー主鎖上のヒドロキシエチルエニル(o)基の約10モル%〜約90モル%、好ましくは約15モル%〜約55モル%、より好ましくは約25モル%〜約50モル%のアセトアセテート基による置換から生じる。本発明の得られたアセトアセチル化ポリビニルポリマーは以下の式(III)を有する。
【0046】
【化9】

【0047】
式中、(p)は約12モル%〜約87モル%、好ましくは約5モル%〜約45モル%、より好ましくは約7モル%〜約35モル%の範囲であり、(q)は約1モル%〜約88モル%、好ましくは約5モル%〜約40モル%、より好ましくは約10モル%〜約30モル%の範囲である。すべての前述したモル%は、100である(m)、(n)、(p)および(q)の合計を基準にしている。
【0048】
あるいは、本発明のアセトアセチル化ポリビニルポリマーは、式(II)のポリビニルポリマー主鎖上のヒドロキシエチルエニル(o)基の約10モル%〜約90モル%、好ましくは約15モル%〜約55モル%、より好ましくは約25モル%〜約50モル%のアセトアセテート基による置換から生じることも可能である。本発明の得られたアセトアセチル化ポリビニルポリマーは以下の式(IV)を有する。
【0049】
【化10】

【0050】
式中、式(IV)のアセトアセチル化ポリビニルのすべての官能基およびモル%は、上の式(I)、(II)および(III)に記載されたものである。式(III)と(IV)のアセトアセチル化ポリビニルポリマーの組み合わせも使用できることは言うまでもない。
【0051】
式(III)または(IV)のアセトアセチル化ポリビニルポリマーのGPC重量平均分子量は、約10,000〜約300,000、好ましくは約20,000〜約200,000、より好ましくは約30,000〜約120,000の範囲である。アセトアセチル化ポリビニルポリマーのTgは、DSCによって決定した時、約0℃〜約150℃、好ましくは約20〜約90℃、より好ましくは約40℃〜約60℃の範囲である。
【0052】
本発明のアセトアセチル化ポリビニルポリマーは、式(I)または(II)の前述したポリビニルポリマーをC1〜C12アルキルアセトアセテート、好ましくはt−ブチルアセトアセテートに接触させて、前記ポリビニルポリマー上のヒドロキシルの約10モル%〜約90モル%をアセトアセテート基に転化することにより製造される。前述した接触工程は、約75℃〜約135℃、好ましくは約80℃〜約125℃、より好ましくは約90℃〜約120℃の範囲の温度で好ましく行われる。当業者が高圧または好ましくは大気圧で前述した反応を行うことができることを理解されたい。反応温度に応じて、反応時間は2分〜15時間の範囲であることが可能である。適するプロセスは酢酸ブチル、n−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルアミルケトンまたはそれらの組み合わせなどの溶媒中に、ポリビニルポリマーを最初に溶解させ、その後、ポリビニルポリマー溶液をC1〜C12アルキルアセトアセテートに接触させる溶液プロセスである。得られたアセトアセチル化ポリビニルポリマーは、易流動性粉末に分離することが可能であるか、または上述した溶媒中の溶液として貯蔵することが可能である。
【0053】
本発明のアセトアセチル化ポリビニルポリマーは、押出製品およびスタンプ製品、成形フロアパネル、断熱ボード、金属基材上のラッカープライマー、腐食防止ペンキ、印刷インキ、一時結合剤および接着剤を製造する際に用いることが可能である。アセトアセチル化ポリビニルポリマーのクリア押出膜は、自動車ウィンドシールド中で用いられるガラスパネルなどのガラスパネルに貼り合わせて、耐破砕性ガラスを製造することが可能である。
【0054】
(硬化性コーティング組成物)
本発明は架橋性成分および架橋成分を含む硬化性コーティング組成物にも関連する。これらの成分は、架橋成分中の架橋剤上の架橋基が早期架橋を防止するために遮断される1つの容器に包装する(1パック組成物)ことが可能であるか、または成分は2個の別の容器に包装(2パック組成物)される。
【0055】
(架橋性成分)
架橋性成分は、先に記載した溶媒中に可溶化された本発明のアセトアセチル化ポリビニルポリマーを含む。アセトアセチル化ポリビニルポリマーは乾燥粉末の形で提供してもよい。本発明において用いられるアセトアセチル化ポリビニルポリマーの量は、典型的には約3重量%〜約100重量%、好ましくは約35重量%〜約70重量%、より好ましくは約40重量%〜約45重量%の範囲である。すべての重量%は架橋性成分と架橋成分の固形物の全重量を基準にしている。
【0056】
架橋性成分は、架橋性成分および架橋成分の固形物の全重量を基準にして約0.1重量%〜50重量%の約1,000〜30,000のGPC重量平均分子量を有するアクリルポリマーを更に含有することが可能である。分子量は、標準としてポリメチルメタクリレートを用いるゲル透過クロマトグラフィによって測定される。
【0057】
典型的には、アクリルポリマーは、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレートを含むアクリルエステルモノマー;アクリルアミドまたは置換アクリルアミド;スチレンまたはアルキル置換スチレン;ブタジエン;エチレン;酢酸ビニル;「バーサティック(Versatic)」酸(C9、C10およびC11鎖長を有する第三モノカルボン酸、そのビニルエステルは、「ビニルバーサテン(vinyl versataten)」としても知られている)のビニルエステルまたは他のビニルエステル;例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドンなどのビニルモノマー;例えば、N,N’−ジメチルアミノ(メタ)アクリレートなどのアミノモノマー;クロロプレンおよびアクリロニトリルまたはメタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウムおよびホスホエチルメタクリレートなどの群の1種または複数のモノマーから調製される。
【0058】
好ましくは、アクリルポリマーは、約20〜30重量%のメチルメタクリレート、20〜30重量%のイソボルニルメタクリレート、5〜10重量%のヒドロキシエチルアクリレート、25〜40重量%のアセトアセトキシエチルメタクリレート、10〜20重量%のn−ブチルアクリレートのモノマー混合物から重合される。すべての重量%は、モノマー固形物の全重量を基準にしている。アクリルポリマーは、好ましくは約3,000〜35,000の重量平均分子量を有する。アクリルポリマーは、モノマー混合物、従来の溶媒、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)またはペルオキシアセテートなどの重合開始剤を約70℃〜175℃に約1〜12時間にわたり加熱する溶液重合によって調製することが可能である。
【0059】
本発明のコーティング組成物の架橋性成分は、架橋性成分と架橋成分の固形物の全重量を基準にして約0.01〜40重量%のポリエステルポリマーであって、脂肪族または芳香族ジカルボン酸、少なくとも3個の反応性ヒドロキシル基を有するポリオール、ジオール、芳香族または脂肪族環式酸無水物および環式アルコールのエステル化生成物であるポリエステルポリマーも含有することが可能である。1種の好ましいポリエステルは、アジピン酸、トリメチロールプロパン、ヘキサンジオール、無水ヘキサヒドロフタル酸およびシクロヘキサンジメチロールのエステル化生成物である。
【0060】
架橋性成分は、任意に、架橋性成分および架橋成分の重量を基準にして0.1%〜50%の範囲内の変性用樹脂、例えば、周知された非水性分散液(NAD)を含有してもよい。すべての%は組成物固形物の全重量を基準にしている。
【0061】
非水性分散液型ポリマーは、ポリマー分散安定剤および有機溶媒の存在下で少なくとも1種のビニルモノマーを分散重合することにより調製される。ポリマー分散安定剤は、非水性分散液の分野で一般に用いられる既知の安定剤のいずれであってもよい。
【0062】
本発明の架橋性成分は、米国特許公報(特許文献1)に含まれた反応性オリゴマーおよび必要ならば非脂環式(直鎖または芳香族)オリゴマーとブレンドすることも可能である。この特許は本明細書に引用して援用する。こうした非脂環式オリゴマーは、無水コハク酸または無水フタル酸あるいはそれらの混合物などの非脂環式酸無水物を用いることにより製造することが可能である。米国特許公報(特許文献2)に記載されたカプロラクトンオリゴマーも用いることが可能である。この特許は本明細書に引用して援用する。
【0063】
(架橋成分)
硬化性コーティング組成物は、10〜60重量%の範囲内、好ましくは15〜55重量%の範囲内、最も好ましくは20〜40重量%の範囲内の架橋成分を含む。すべての重量%は、架橋性成分と架橋成分の固形物の全重量を基準にしている。
【0064】
架橋成分は、ポリアミン、ポリケチミン、ポリエポキシド、ポリイソシアネート、メラミン、C1〜C12アルキルジアルデヒド、C1〜C12アルキルポリ(メタ)アクリレートまたはそれらの組み合わせを含む。ポリアミン、ポリケチミンまたはそれらの組み合わせは好ましく、ポリケチミンは、より好ましい。ポリアミンとポリケチミンの組み合わせとして用いる時、ポリアミン対ポリケチミンの重量部による比は、1:100〜100:1の範囲内、好ましくは1:50〜50:1の範囲内、より好ましくは1:20〜20:1の範囲内である。
【0065】
活性化比は、アセトアセチル化ポリビニルポリマー中のアセトアセトキシ基約0.7モル〜約4.0モル、好ましくは約1モル〜約3モル対架橋成分中の架橋基1モルの範囲である。
【0066】
ポリアミンは、ポリメチルメタクリレート標準を用いるゲル透過クロマトグラフィによって測定して少なくとも100の重量平均分子量を有する。GPC重量平均分子量は、典型的には約100〜約100,000、好ましくは約200〜約50,000、より好ましくは約300〜約10,000の範囲である。
【0067】
ポリアミンは、分子当たり平均で少なくとも2個の第一アミン官能基を有する。ポリアミンはポリアミン分子当たり平均で好ましくは約2個〜約25個、より好ましくは約2個〜約6個の範囲内の第一アミン官能基を有し、2個〜200個、好ましくは6個〜100個、より好ましくは8個〜50個の炭素原子を有する。これらのアミン官能基は、側鎖官能基として、またはポリマー鎖の主鎖中に配置された官能基としてのいずれかで存在してもよい。側鎖アミン官能基は好ましい。
【0068】
本発明において用いるために適する代表的なポリアミンの例には、脂肪族または脂環式アミンまたはそれらの組み合わせが挙げられる。脂肪族ポリアミンは好ましい。
【0069】
適するポリアミンの例には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン、ドデカメチレンジアミン、4,9−ジオキサドデカン−1,12−ジアミン、7−メチル−4,10−ジオキサトリデカン−1,13−ジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジイミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ニトリルトリス(エタンアミン)、ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、3−アミノ−1−(メチルアミノ)プロパン、3−アミノ−1−(シクロヘキシルアミノ)プロパンおよびN−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミンが挙げられる。エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミンおよび1,2−ジアミノシクロヘキサンは好ましい。
【0070】
適する他のポリアミンには、式H2N−(R2n−NH−(R1n−NH2のポリアミンが挙げられる。式中、R1基およびR2基は同じかまたは異なることが可能であり、2〜6個、好ましくは2〜4個の炭素原子を含むアルキレン基を表し、nは1〜6の範囲内、好ましくは1〜3の範囲内の独立して選択された数値である。アルキレン基は、エーテル酸素原子を含むシクロアルキレン基またはアルキレン基である。ポリアルキレン基を含む代表的なポリアミンの例には、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミンおよびジブチレントリアミンが挙げられる。これらのポリアミンがイソホロンジアミンのように脂環式の性質のものであるとともに5〜15個の炭素原子を含むこと、より特に、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンおよびビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパンのようにα−アルキル基を含むことが好ましい。
【0071】
適するポリエポキシドの幾つかには、分子中に少なくとも2個のオキシラン基を含むポリエポキシド、すなわち
【0072】
【化11】

【0073】
式中、nは少なくとも2であり、R1は水素またはメチルであり、R2は、広くは、炭素、水素、酸素および任意に窒素、硫黄またはその両方から典型的に構成された有機系分子またはポリマーを表す。ヒドロキシル置換基もハロゲンおよびエーテル基と同様に存在してよい。エポキシド当量は、一般には約100〜約1500、好ましくは約100〜約1200、より好ましくは約150〜約600の範囲である。これらのポリエポキシドは、脂肪族、芳香族、環式、非環式、脂環式またはヘテロ環式のエポキシドであるとして広く分類することが可能である。
【0074】
本発明において用いるために有用なポリエポキシドのもう一つの群はエポキシノボラック樹脂を含む。これらの樹脂は、アルデヒドと一価または多価フェノールの縮合生成物とエピハロヒドリンを反応させることにより調製される。一つの例は、エピクロルヒドリンとフェノールホルムアルデヒド縮合物の反応生成物である。
【0075】
ポリエポキシドのもう一つの特に好ましい群は、例えば二価フェノールなどの多価芳香族ヒドロキシ化合物のポリグリシジルエーテルである。フェノールは、例えば、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(2−ヒドロキシナフェニル)メタン、1,5−ヒドロキシナフタレンおよび4,4’−イソプロピリデンジフェノール、すなわちビスフェノールAのように少なくとも二価でなければならない。好ましくは、ビスフェノールAが用いられる。可能な多くのポリエポキシドの内、主として用いられる1種はエピクロルヒドリンである。但し、エピブロモヒドリンもかなり有用である。本明細書で特に有用なポリグリシジルエーテルは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリの存在下でエピクロロヒドリンとビスフェノールAの反応によって得られる。商標「エポン(EPON)」でシェル・ケミカル・カンパニー(Shell Chemical Company)によって販売されているエポキシ樹脂のシリーズは本明細書において特に有用である。
【0076】
有用なポリエポキシドのもう一つの群は、エピハロヒドリン、好ましくはエピクロロヒドリンと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセロールおよびトリメチロールプロパンなどの多価アルコールとの反応から誘導されたポリグリシジルエーテルである。
【0077】
ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテルであるポリエポキシドも有用である。これらの材料は、エピクロロヒドリンなどのエポキシ化合物と、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびリノール酸二量体などの脂肪族または芳香族のポリカルボン酸との反応によって製造される。
【0078】
ポリエポキシドのなおもう一つの群は、オレフィン系不飽和脂環式材料のエポキシ化から誘導される。これらの中には、当業界で公知の脂環式エーテルおよびエステルがある。
【0079】
ポリエポキシドの混合物も本明細書において有用であることを理解されたい。ポリエポキシドの好ましいエポキシ当量は、87〜6000の範囲内、より特に120〜1000の範囲内である。適するポリエポキシドには、オキシアルキレン基を含むポリエポキシド、すなわち
【0080】
【化12】

【0081】
式中、Rは水素またはC1〜C6アルキルであり、mは1〜4の範囲の整数であり、nは2〜50の範囲の整数である。ポリエポキシド中のオキシアルキレン基の割合は多くのファクターに応じて異なる。そのファクターの中には、オキシアルキレン基のサイズおよびポリエポキシドの性質がある。
【0082】
適するポリイソシアネートの例には、1,2−プロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、オメガ,オメガ−ジプロピルエーテルジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4−メチル−1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、トランス−ビニリデンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチル−ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,3−ビス(1−イソシアナト1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシレンジイソシアネート、1,5−ジメチル−2,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,5−ジメチル−2,4−ビス(2−イソシアナトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、4,4’−ジイソシアナトジフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジイソシアナトジフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジイソシアナトジフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアナトジフェニル、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、ジイソシアナトナフタレン、イソシアヌレート構造単位を有するポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートとエチレングリコールなどのジオールの2分子の付加体、ヘキサメチレンジイソシアネート3分子と水1分子の付加体(商標「デスモジュール(Desmodur)」(登録商標)Nでペンシルバニア州ピッツバーグのバイエル・コーポレーション(Bayer Corporation(Pittsburg,Pa))から入手できる)、トルメチロールプロパン1分子とトルエンジイソシアネート3分子の付加体(商標「デスモジュール(Desmodur)」(登録商標)Lでバイエル・コーポレーション(Bayer Corporation)から入手できる)、トリメチロールプロパン1分子とイソホロンジイソシアネート3分子の付加体、1,3,5−トリイソシアナトベンゼンおよび2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの化合物、ならびにペンタエリトリトール1分子とトルエンジイソシアネート4分子の付加体などの、エチレン性不飽和であっても、またはエチレン性不飽和でなくてもよい脂肪族、脂環式または芳香族のジ−、トリ−またはテトラ−イソシアネートが挙げられる。
【0083】
本発明において用いるために適するメラミンには、モノマーまたはポリマーのメラミン−ホルムアルデヒド樹脂(メラミン)またはそれらの組み合わせが挙げられる。コーティング組成物は、0.1%〜40%の範囲内、好ましくは15%〜35%の範囲内、最も好ましくは20%〜30%の範囲内のメラミンを含むことが可能である。%は組成物固形物の全重量を基準にしている。モノマーメラミンは、トリアジン核当たり平均で3個以上のメチロール基であって、メタノール、n−ブタノールまたはイソブタノールなどのC1〜C5一価アルコールでエーテル化されたメチロール基を含み、約2まで、好ましくは約1.1〜約1.8の範囲内の平均縮合度を有するとともに約50重量%以上の単核化学種の割合を有する低分子量メラミンを含む。それに反して、ポリマーメラミンは1.9を上回る平均縮合度を有する。こうした幾つかの適するモノマーメラミンには、メチル化メラミン、ブチル化メラミン、イソブチル化メラミンおよびそれらの混合物などのアルキル化メラミンが挙げられる。これらの適するモノマーメラミンの多くは商業的に供給されている。例えば、ニュージャージー州ウェスト・パターソンのサイテック・インダストリーズ(Cytec Industries Inc.(West Patterson,New Jersey))は、「サイメル(Cymel)」(登録商標)301(重合度1.5、メチル95%およびメチロール5%)、「サイメル(Cymel)」(登録商標)350(重合度1.6、メチル84%およびメチロール16%)、303、325、327および370を供給し、それらはすべてモノマーメラミンである。適するポリマーメラミンには、ミズーリ州セントルイスのソルチア(Solutia Inc.(St.Louis,Missouri))によって供給されている「レジメン(Resimene)」(登録商標)BMP5503(分子量690、多分散性1.98、ブチル56%、アミノ44%)として知られている高アミノ(部分アルキル化、−N,−H)メラミン、またはニュージャージー州ウェスト・パターソンのサイテック・インダストリーズ(Cytec Industries Inc.(West Patterson,New Jersey))によって提供される「サイメル(Cymel)」(登録商標)1158が挙げられる。サイテック・インダストリーズ(Cytec Industries Inc.)は、固形物80%の「サイメル(Cymel)」(登録商標)1130(重合度2.5)、「サイメル(Cymel)」(登録商標)1133(メチル48%、メチロール4%およびブチル48%)も供給しており、その両方ともポリマーメラミンである。
【0084】
適する架橋成分の幾つかには、ミズーリ州セントルイスのソルチア(Solutia Inc.(St.Louis,Missouri))によって供給されているメチル化ウレアホルムアルデヒド「レジメン(Resimene)」(登録商標)980およびブチル化ウレアホルムアルデヒドU−6329などのウレアホルムアルデヒドポリマーが挙げられる。
【0085】
適するC1〜C12アルキルジアルデヒドの幾つかには、グルタルジアルデヒド、グリオキサールおよび1,3,5−トリオキサンが挙げられる。
【0086】
適するC1〜C12アルキルポリ(メタ)アクリレートの幾つかには、エチレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0087】
アセトアセテート基のエステルカルボニルとエノール形態との間のキレート化を通してアセトアセチル化ポリビニルポリマーと合わせて架橋するために金属イオン塩も用いることが可能である。このキレート化は、金属基材へのアセトアセチル化ポリビニルポリマーの粘着性を改善することが可能である。金属イオン化合物は、Cu、Co、Fe、Mn、Sn、V、Mg、Ba、Al、Ca、Sr、Nb、Y、Znおよびそれらの組み合わせからなる群から選択することが可能である。例には、酢酸銅、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、あるいは他の脂肪族または芳香族の有機酸塩が挙げられる。
【0088】
適する他のポリアミンには、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンおよびイソホロンジアミンなどの第一ポリアミンまたは第二ポリアミンと前述した多官能性エポキシ、ポリイソシアネート、メラミンまたはそれらの組み合わせとの反応生成物が挙げられる。
【0089】
本発明において用いるために適するポリケチミンは、18個以下の炭素原子、好ましくは3〜10個の炭素原子を有するケトンなどの遮断剤で前述したポリアミン上のアミノ基を遮断することにより得られる。本発明のコーティング組成物中で用いるために適するポリケチミンは、100〜100,000の範囲内の重量平均分子量を有する。
【0090】
ポリアミンは、好ましくは以下の式によって表されるケトンにより遮断される。
【0091】
【化13】

【0092】
式中、RおよびR’は、1〜12個の間の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を有する独立して選択されたアルキル基である。脂肪族ケトンまたは脂環式ケトンは好ましく、炭素原子数3〜8の脂肪族ケトンまたは脂環式ケトンは、より好ましい。
【0093】
本発明のコーティング組成物中で用いるために適するポリアミンには、
I.ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパンに基づくジグリシジルエーテルのアミンの付加体、
II.アミンとジメチルマレエートの付加体、
III.分子当たり少なくとも2個のアクリレート基を有するとともに約100〜50,000の重量分子量を有するポリアクリレートから調製されたアミンの付加体、
IV.アミンとポリイソシアネートの付加体または
V.それらの組み合わせ
が挙げられる。
【0094】
アミノ基のために適する遮断剤の例には、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソブチルアルデヒド、ヒドロキシブチルアルデヒド、ペンタノン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、ヒドロキシシトロネラル、イソホロンおよびデカノンが挙げられる。
【0095】
選択された架橋成分のタイプに応じて、様々な触媒を用いることが可能である。例えば、ポリイソシアネートを用いる時、ジブチル錫ジラウレートおよびジブチル錫ジアセテートを含む錫化合物、トリエチレンジアミンなどの第三アミンを用いることが可能である。これらの触媒は、単独でまたは酢酸などのカルボン酸と合わせて用いることが可能である。
【0096】
メラミンを架橋成分中で用いる時、硬化した後に成分の架橋を強化するために、以下の触媒の1種または複数を用いることが可能である。コーティング組成物は、一般には0.1%〜5%の範囲内、好ましくは0.1〜2%の範囲内、より好ましくは0.5〜2%の範囲内、最も好ましくは0.5%〜1.2%の範囲内の触媒を含む。%は組成物固形物の全重量を基準にして重量%である。幾つかの適する触媒には、芳香族スルホン酸、例えばドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸およびジノニルナフタレンスルホン酸などの従来の酸触媒が挙げられる。酸のすべては遮断されていないか、またはジメチルオキサゾリジンおよび2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、n,n−ジメチルエタノールアミンまたはそれらの組み合わせなどのアミンで遮断されている。使用できる他の酸触媒は燐酸などの強酸、より特にフェニル酸ホスフェートであり、それは遮断されてなくてもよいか、またはアミンで遮断されていてもよい。
【0097】
ポリアミンまたはポリケチミンを架橋成分中で用いる時、硬化した後に成分の架橋を強化するために、以下の触媒の1種または複数を用いることが可能である。一般には約0.001%〜約5%の範囲内、好ましくは0.005%〜2%の範囲内、より好ましくは0.01%〜1%の範囲内の触媒が用いられる。すべては架橋性成分と架橋成分の固形物の全重量を基準にして重量%である。適する触媒の幾つかには、水ならびに酢酸、安息香酸およびサリチル酸などのカルボン酸が挙げられる。
【0098】
必要ならば、コーティング組成物は、2重量%〜10重量%の範囲内、好ましくは3重量%〜8重量%の範囲内、より好ましくは3.5重量%〜6重量%のテトラオキシクロム酸亜鉛を含むことが可能である。すべての重量範囲はコーティング組成物の重量を基準にしている。テトラオキシクロム酸亜鉛をコーティング組成物の架橋性成分または架橋成分のいずれかに含めることが可能である。好ましくは、テトラオキシクロム酸亜鉛は架橋性成分に含まれる。商標J−1345「ベーシック(Basic)」クロム酸亜鉛でメリーランド州ベルツビルのロックウッド・ケミカルズ(Rockwood Chemicals(Beltsville,Maryland))によって供給されるテトラオキシクロム酸亜鉛を本発明において用いることが可能である。
【0099】
必要ならば、コーティング組成物は、0.1〜6重量%の範囲内、好ましくは0.5〜4.0重量%の範囲内、より好ましくは0.8〜3重量%の燐酸を含むことが可能である。すべての重量%はコーティング組成物の重量を基準にして重量による。2パックコーティング組成物中で用いる時、燐酸は架橋性成分および架橋成分から離して保たれ、燐酸は使用の直前に架橋性成分および架橋成分と混合される。「ホスホリックアシッド(Phosphoric Acid)」NF85%という商品名でニュージャージー州クランベリーのローディア(Rhodia(Cranbury,New Jersey))によって供給される燐酸を本発明において用いることが可能である。
【0100】
本発明のコーティング組成物は、顔料、安定剤、レオロジー調整剤、流動剤、強化剤および充填剤などの従来の添加剤も含有することが可能である。こうした追加の添加剤の選択は、コーティング組成物の意図した用途に応じて明らかに異なるであろう。前述した添加剤は、コーティング組成物の意図した用途に応じて架橋性成分または架橋成分あるいはその両方のいずれかに添加してもよい。
【0101】
使用中、コーティング組成物を2パックコーティング組成物として包装する時、コーティング組成物の架橋性成分および架橋成分は使用の直前に混合されて、ポットミックスを形成する。ポットミックスは典型的には10分〜24時間の範囲の限定的なポットライフを有する。ポットミックス層は、典型的には、吹き付け、静電吹き付け、ロール被覆、ディッピングまたはブラシ掛けなどの従来の技術によって基材に付けられる。その後、ポットミックス層は、10分〜4時間の範囲内、好ましくは30分〜60分の範囲内で周囲条件下で硬化して、所望のコーティング特性を有するコーティングを基材上に形成する。実際の硬化時間が付けられた層の厚さ、用いられる架橋化学成分のタイプおよび乾燥速度を促進するために被覆済み基材上で空気を連続的に流すのを助けるファンなどの適するあらゆる乾燥装置の有無に応じて異なることは言うまでもない。一般に、自動車ボディなどの金属基材上に付けられた6マイクロメートル〜25マイクロメートルの範囲内の厚さを有するウォッシュプライマー層は、一切の適する乾燥装置の存在しない状態で周囲条件下で10〜60分後に硬化し、一般に、自動車ボディなどの金属基材上に付けられた25マイクロメートル〜300マイクロメートルの範囲内の厚さを有するプライマー層は、一切の適する乾燥装置の存在しない状態で周囲条件下で2時間〜4時間後に硬化する。必要ならば、被覆済み基材の約60℃の温度での約30分にわたる焼付は硬化速度を更に促進することが可能である。前述した焼付工程はOEM(相手先ブランド供給業者)条件下で特に有用である。
【0102】
コーティング組成物を1パック組成物として包装する時、コーティング組成物の層は先に記載された方式と似た方式で付けられる。しかし、架橋成分中の架橋基が遮断されているので、層は、典型的には、架橋基が架橋性成分中に提供された架橋性基と架橋できるように架橋基を脱遮断するために焼付硬化温度に供される。典型的な焼付工程は、60℃〜200℃の範囲、好ましくは80℃〜160℃の範囲の焼付温度で約10〜60分にわたり行われる。
【0103】
架橋性成分および架橋成分を合わせて混合できるとともに、易流動性粉末の形で従来通り製造できることも考慮されている。架橋成分中の架橋基は、好ましくは、架橋性成分中の架橋性基との早期架橋を防止するために遮断されるであろう。粉末状の上述したコーティング組成物は流動床を通して基材上に従来通り付けることが可能である。
【0104】
あるいは、粉末の水性スラリーを用いることが可能であり、その後、それを基材上に従来通り付けることが可能である。その後、粉末の被着済み層は、典型的には、架橋基が架橋性成分中に提供された架橋性基と架橋できるように架橋基を脱遮断するために焼付硬化温度に供するとともに基材上にコーティングを形成することが可能である。
【0105】
本発明は、本発明のコーティング組成物をウォッシュプライマーとして含む多層系、好ましくは多層自動車OEMまたは塗り変えを製造する方法にも関連する。こうした方法において、本発明の組成物の層は先に記載された工程を用いることにより露出金属基材上に付けてウォッシュプライマーコーティングをもたらす。その後、ウォッシュプライマーコーティングの後に、顔料を入れることが可能である従来のベースコーティング組成物のコーティングを従来通り付け、その後、従来のクリアコーティング組成物のコーティングを従来通り付ける。必要ならば、従来のプライマーコーティング組成物からの追加のコーティングをベースコート組成物の層の被着の前にウォッシュプライマーコーティング上に付けることが可能である。
【0106】
アセトアセテート官能基の導入およびポリマーの架橋によって特性が改善されるので、典型的には10,000〜50,000の範囲のより低い分子量のアセトアセチル化ポリビニルポリマーを使用できることを本出願人らが意外にも発見したことは注目されるべきである。結果として、アセトアセチル化ポリビニルポリマーの溶解度は改善され、粘度は低下し、従って、コーティング組成物のVOC(揮発性有機分)を下げて、従来の吹き付け塗布などの塗布の容易さに悪影響を及ぼさずに低VOCコーティング組成物を製造することが可能である。
【0107】
本発明のコーティング組成物は、コイル被覆、接着剤およびシーラントなどの工業コーティングにおいて用いるためにも適する。本発明のコーティング組成物を以下の物品上に適切に付けることが可能である。
【0108】
セルロースまたは非セルロースの織布または不織布;シューズ、ブーツ、サンダル、スニーカー、グローブ、ハットおよび室内装飾用品などのレザー商品または非レザー商品;スニーカー、ランニングシューズ、ローラーブレードシューズなどの種々のスポーツおよび運動競技関連フットウェア;サッカーーシューズ;ゴルフクラブ、ボール、ティー、スキー、ジェットスキー、ウェットバイク、スノーモービル、スケート、ホッケーリンク表面、ホッケーパックおよびホッケースティック、ボーリング場レーン、ボーリングピンおよびボールなどのスポーツおよびレクリエーション装置;果物見本およびドライフラワー;ファイバーオプティックス;瓶、飲料ケース、食品バッグおよびボックスなどの包装材料;フィンガーネイルおよびフィンガーネイル見本;安全眼鏡、安全ガラスおよびアイウェア眼鏡;ビニル表面上の耐可塑剤移行性コーティング;ローンファーニチャを含むファーニチャ、屋根および屋根タイル;表面模様付きソフト感触壁装材;「ナーフ(Nerf)」(登録商標)ボールなどの玩具;照明器具および電球;電話、ページャおよびファックス装置などの通信装置;クレジットカード;カバンおよびアタッシュケース;タッチスクリーンテレビチューブ、ブラウン管およびレーダスクリーン、液晶表示装置およびフラットパネル表示装置;ミラー;滑り止めフローリング;音吸収音響壁、天井およびシート、音響装置;艇体、ブイ、突堤、船のデッキ、帆布などの海洋関連表面;コンピュータ、複写機、コンピュータプリンタなどのオフィス装置;ピアノ、ギター、オルガンなどの楽器;模造装身具;および明るい金属表面。
【0109】
本発明の組成物からのコーティングは、長持ちする性質のおかげで、反射道路マーキングを含む道路表面上の耐久性長寿命交通マーキングとして用いてもよい。
【実施例】
【0110】
以下の実施例で報告されたデータを作るために以下の試験手順を用いた。
【0111】
(ペルソ硬度)
コネチカット州ウィリングフォードのビック・マリンクロット(Byk−Mallinckrodt(Wallingford,Connecticut))によって供給されるペルソ硬度試験器モデル番号5854(ASTM D4366)を用いて膜強度を測定した。
【0112】
(フィッシャー硬度)
「フィッシャースコープ(Fisherscope)」(登録商標)硬度試験器(測定はニュートン/平方ミリメートルであった)を用いて硬度を測定した。
【0113】
(分子量)
アクリルポリマーの分子量は、1047A RI検出器付き「ヒューレット・パッカード(Hewlett Packard)」1090高性能液体クロマトグラフィ(High Performance Liquid Chromatography)上のサイズ排除クロマトグラフィにより測定した。分子量の測定のために、移動相としてテトラヒドロフランおよび既知分子量のポリスチレン標準を用いるウォーターズ(Waters Inc.)製の「ミクロスチラゲル(Microstyragel)」カラムを用いた。
【0114】
(固形物測定)
ポリマー溶液の不揮発分は、下降ドラフトオーブン内のポリマーサンプルの溶媒を110℃で除去することにより測定した。ポリマー溶液の既知量をトリクレシルホスフェートおよびアセトンと混合し、110±10℃で維持された下降ドラフトオーブン内に1時間にわたり入れた。固形物重量%を計算するために残留物の重量を用いた。
【0115】
13C NMR(モル%の決定))
アセトアセチル化ポリビニルポリマーサンプル上のアセトアセテート基のモル%は、10mm広帯域プローブが装着された「ブルカ(Bruker)」DRX−400NMRスペクトロメータを通して決定した。ポリマーサンプルを50℃で真空乾燥させ、約5〜10重量%で重水素化メタノールに溶解させ、30秒の緩和遅延および90°のフリップパルスを用いて約34℃でスペクトロメータを通過させて、定量化を確実にした。
【0116】
酸素原子間のブチラール環中のアセトアセテートカルボニル対炭素の比から、そして参考文献からポリマー主鎖中のビニルアルコール対ブチラールのモル比を知って、アセトアセテート基によって置換されたビニルアルコールのモル%を計算した。
【0117】
(粘着性試験)
被覆されたパネルの乾燥粘着性、湿り粘着性および回復粘着性を試験した。乾燥粘着性については、クロスカットおよびグリッドハッチをパネル上に作り、テープを付け、そして除去した。その後、パネルに2つの評点を与えた。第1の評点は除去されたコーティングの量に基づいて目視尺度0〜10からであった。0は全面的破損であり、10はコーティングが全く除去されないであった。第2の評点は上述したように起きた破損点であった。その後、パネルをASTM D−1735−02に準拠して維持された湿度キャビネット内に4日にわたり入れた。パネルを湿度キャビネットから取り出し、湿り粘着性を1時間以内に測定した。その後、パネルを25℃および相対湿度50%で24時間にわたり貯蔵し、その後、再試験して回復粘着性を測定した。
【0118】
(実施例1)
攪拌機、凝縮器、蒸留ヘッドが装着され、窒素雰囲気下にあるガラス反応器内で、クラリアント・コーポレーション(Clariant Corporation)によって供給された200部の「モウィタル(Mowital)」(登録商標)B20H(約35,000〜45,000のGPC重量平均分子量)ポリビニルブチラールを606部のn−メチルピロリドンに添加した。溶液を190℃に加熱して一切の低沸点溶媒を除去した。その後、溶液を140℃と145℃の間に冷却し、68.2部のt−ブチルアセトアセテートを数分にわたって添加した。バッチをその温度で30分にわたり保持し、その後、約195℃に加熱して、t−ブタノール副生物を除去し、上の式(III)(式中、(p)は32であり、(q)は11である)のアセトアセチル化ポリビニルブチラールを生じさせた。ポリマーを冷水(150gのポリマー溶液への0.473リットル(1ピント)の水)中への沈殿によって単離し、濾過し、真空下で45℃で乾燥させた。
【0119】
(実施例2)
攪拌機、凝縮器、蒸留ヘッドが装着され、窒素雰囲気下にあるガラス反応器内で、マサチューセッツ州スプリングフィールドのソルチア(Solutia Inc.(Springfield,Massachusetts))によって供給された300部の「ブットバール(Butvar)」(登録商標)B90(約90,000のGPC重量平均分子量)ポリビニルブチラールを2000部のn−メチルピロリドンに添加した。溶液を190℃に加熱して一切の低沸点溶媒を除去した。その後、溶液を140℃と145℃の間に冷却し、102.3部のt−ブチルアセトアセテートを数分にわたって添加した。バッチをその温度で30分にわたり保持し、その後、約195℃に加熱して、t−ブタノール副生物を除去し、上の式(III)(式中、(p)は35であり、(q)は8である)のアセトアセチル化ポリビニルブチラールを生じさせた。ポリマーを冷水(150gのポリマー溶液への0.473リットル(1ピント)の水)中への沈殿によって単離し、濾過し、真空下で45℃で乾燥させた。
【0120】
(実施例3)
攪拌機、凝縮器、蒸留ヘッドが装着され、窒素雰囲気下にあるガラス反応器内で、クラリアント・コーポレーション(Clariant Corporation)によって供給された300部の「モウィタル(Mowital)」(登録商標)B30T(約55,000のGPC重量平均分子量)ポリビニルブチラールを909部のn−メチルピロリドンに添加した。溶液を130℃と135℃の間に加熱し、137.3部のt−ブチルアセトアセテートを数分にわたって添加した。バッチをその温度で3時間にわたり保持し、その後、冷却して、上の式(III)(式中、(p)は39であり、(q)は12である)のアセトアセチル化ポリビニルブチラールを生じさせた。ポリマーを冷水(150gのポリマー溶液への0.473リットル(1ピント)の水)中への沈殿によって単離し、濾過し、冷水で洗浄し、濾過し、最初に室温で1日にわたり真空下で、その後、45℃で次の日にわたり、そして80℃でその次の日にわたり乾燥させた。
【0121】
(実施例4)
攪拌機、凝縮器、蒸留ヘッドが装着され、窒素雰囲気下にあるガラス反応器内で、クラリアント・コーポレーション(Clariant Corporation)によって供給された250部の「モウィタル(Mowital)」(登録商標)B30H(約60,000のGPC重量平均分子量)ポリビニルブチラールを1667部のn−メチルピロリドンに添加した。溶液を190℃に加熱して一切の低沸点溶媒を除去した。その後、溶液を140℃と145℃の間に冷却し、85.3部のt−ブチルアセトアセテートを数分にわたって添加した。バッチをその温度で30分にわたり保持し、その後、約195℃に加熱して、t−ブタノール副生物を除去し、その後、冷却して、上の式(III)(式中、(p)は37であり、(q)は6である)のアセトアセチル化ポリビニルブチラールを生じさせた。ポリマーを冷水(150gのポリマー溶液への0.473リットル(1ピント)の水)中への沈殿によって単離し、濾過し、冷水で洗浄し、濾過し、室温で一晩、その後、真空下で60℃で約7時間にわたり乾燥させた。
【0122】
(実施例5)
攪拌機、凝縮器、蒸留ヘッドが装着され、窒素雰囲気下にあるガラス反応器内で、ミシガン州アドリアンのワッカー・ポリマー・システム(Wacker Polymer System(Adrian,Michigan))によって供給された50部の「ピオロフォーム(Pioloform)」(登録商標)LL145(約95,000〜100,000のGPC重量平均分子量)ポリビニルブチラールを333部のn−メチルピロリドンに添加した。溶液を190℃に加熱して一切の低沸点溶媒を除去した。その後、溶液を140℃と145℃の間に冷却し、17.1部のt−ブチルアセトアセテートを数分にわたって添加した。バッチをその温度で30分にわたり保持し、その後、約195℃に加熱して、t−ブタノール副生物を除去し、その後、冷却して、上の式(III)(式中、(p)は33であり、(q)は10である)のアセトアセチル化ポリビニルブチラールを生じさせた。ポリマーを冷水(150gのポリマー溶液への0.473リットル(1ピント)の水)中への沈殿によって単離し、濾過し、冷水で洗浄し、濾過し、室温で一晩、その後、真空下で60℃で約7時間にわたり乾燥させた。
【0123】
(実施例6)
攪拌機、凝縮器、蒸留ヘッドが装着され、窒素雰囲気下にあるガラス反応器内で、クラリアント・コーポレーション(Clariant Corporation)によって供給された50部の「モウィタル(Mowital)」(登録商標)B60H(約95,000のGPC重量平均分子量)ポリビニルブチラールを300部のn−メチルピロリドンに添加した。溶液を190℃に加熱して一切の低沸点溶媒を除去した。その後、溶液を140℃と145℃の間に冷却し、17.1部のt−ブチルアセトアセテートを数分にわたって添加した。バッチをその温度で30分にわたり保持し、その後、約195℃に加熱して、t−ブタノール副生物を除去し、その後、冷却して、上の式(III)(式中、(p)は35であり、(q)は7である)のアセトアセチル化ポリビニルブチラールを生じさせた。ポリマーを冷水(150gのポリマー溶液への0.473リットル(1ピント)の水)中への沈殿によって単離し、濾過し、冷水で洗浄し、濾過し、室温で一晩、その後、真空下で60℃で約7時間にわたり乾燥させた。
【0124】
(実施例7)
攪拌機、凝縮器、蒸留ヘッドが装着され、窒素雰囲気下にあるガラス反応器内で、ワッカー・ポリマー・システム(Wacker Polymer System)によって供給された1500部の「ピオロフォーム(Pioloform)」(登録商標)LL4150(約35,000のGPC重量平均分子量)ポリビニルブチラールを1500部のメチルプロピルケトンに添加した。溶液を75℃に加熱し、202部のt−ブチルアセトアセテートを数分にわたって添加した。バッチを75℃で3時間にわたり保持し、その後、約100℃に約2.5時間にわたり加熱して、t−ブタノール副生物を除去した。その後、バッチを冷却して、上の式(III)(式中、(p)は26であり、(q)は10であった)のアセトアセチル化ポリビニルブチラールを生じさせた。
【0125】
(実施例8)
攪拌機、凝縮器、蒸留ヘッドが装着され、窒素雰囲気下にあるガラス反応器内で、ワッカー・ポリマー・システム(Wacker Polymer System)によって供給された1000部の「ピオロフォーム(Pioloform)」(登録商標)LL4150(約35,000のGPC重量平均分子量)ポリビニルブチラールを1000部のメチルプロピルケトンに添加した。溶液を75℃に加熱し、377部のt−ブチルアセトアセテートを数分にわたって添加した。バッチを75℃で3時間にわたり保持し、その後、約2.5時間にわたり約100℃に加熱してt−ブタノール副生物を除去した。その後、バッチを冷却して、上の式(III)(式中、(p)は8であり、(q)は28であった)のアセトアセチル化ポリビニルブチラールを生じさせた。
【0126】
(実施例9)
攪拌機、凝縮器が装着され、窒素雰囲気下にあるガラス反応器内で、ワッカー・ポリマー・システム(Wacker Polymer System)によって供給された500部の「ピオロフォーム(Pioloform)」(登録商標)LL4150(約35,000のGPC重量平均分子量)ポリビニルブチラールを611部のメチルエチルケトンに添加した。溶液を75℃に加熱し、80.8部のt−ブチルアセトアセテートを数分にわたって添加した。バッチを75℃で3時間にわたり保持し、その後、冷却して、上の式(III)(式中、(p)は28であり、(q)は8であった)のアセトアセチル化ポリビニルブチラールを生じさせた。ポリマーを冷水(150gのポリマー溶液への0.473リットル(1ピント)の水)中への沈殿によって単離し、濾過し、冷水で洗浄し、濾過し、室温で真空下で約7時間にわたり、そして約55℃で真空下で約7時間にわたり乾燥させた。
【0127】
(実施例10)
攪拌機、凝縮器、蒸留ヘッドが装着され、窒素雰囲気下にあるガラス反応器内で、ワッカー・ポリマー・システム(Wacker Polymer System)によって供給された500部の「ピオロフォーム(Pioloform)」(登録商標)LL4150(約35,000のGPC重量平均分子量)ポリビニルブチラールを611部のn−メチルピロリドンに添加した。溶液を130℃に加熱し、255.9部のt−ブチルアセトアセテートを数分にわたって添加した。バッチを130℃で3時間にわたり保持し、その後、冷却して、上の式(III)(式中、(p)は9であり、(q)は27であった)のアセトアセチル化ポリビニルブチラールを生じさせた。ポリマーを冷水(150gのポリマー溶液への0.473リットル(1ピント)の水)中への沈殿によって単離し、濾過し、冷水で洗浄し、濾過し、室温で真空下で約7時間にわたり、そして約55℃で真空下で約7時間にわたり乾燥させた。
【0128】
(実施例11)
攪拌機、凝縮器、蒸留ヘッドが装着され、窒素雰囲気下にあるガラス反応器内で、ワッカー・ポリマー・システム(Wacker Polymer System)によって供給された1000部の「ピオロフォーム(Pioloform)」(登録商標)LL4150(約35,000のGPC重量平均分子量)ポリビニルブチラールを1000部のn−ブチルアセテートに添加した。溶液を75℃に加熱し、161.6部のt−ブチルアセトアセテートを数分にわたって添加した。バッチを75℃で3時間にわたり保持し、その後、約2.5時間にわたり約115℃に加熱してt−ブタノール副生物を除去した。その後、バッチを冷却して、上の式(III)(式中、(p)は23であり、(q)は13であった)のアセトアセチル化ポリビニルブチラールを生じさせた。
【0129】
(実施例12)
攪拌機、凝縮器、蒸留ヘッドが装着され、窒素雰囲気下にあるガラス反応器内で、ワッカー・ポリマー・システム(Wacker Polymer System)によって供給された1000部の「ピオロフォーム(Pioloform)」(登録商標)LL4150(約35,000のGPC重量平均分子量)ポリビニルブチラールを1000部のn−ブチルアセテートに添加した。溶液を75℃に加熱し、377部のt−ブチルアセトアセテートを数分にわたって添加した。バッチを75℃で3時間にわたり保持し、その後、約2.5時間にわたり約115℃に加熱してt−ブタノール副生物を除去した。その後、バッチを冷却して、上の式(III)(式中、(p)は7であり、(q)は29であった)のアセトアセチル化ポリビニルブチラールを生じさせた。
【0130】
(コーティング組成物)
以下の表1に記載された成分を逐次添加することにより3種のプライマー組成物(コーティング実施例)および1種の比較プライマー組成物(比較コーティング実施例1)を製造した。
【0131】
【表1】

【0132】
上の表1に記載されたコーティング組成物のプライマーの架橋性成分と架橋成分を混合して、ポットミックスを形成し、その層をドローダウンバーにより乾燥膜厚さ1.5〜2ミル(38〜59マイクロメートル)まで電着スチール試験パネル上に付けた。以下の表2で明記された時間まで層を25℃および相対湿度50%で乾燥させた。その後、硬化したコーティングの硬度を指示された時間で試験し、その結果を以下の表2に示している。Tgも上述した条件下で30日にわたり放置して硬化させた膜上で測定した。
【0133】
【表2】

【0134】
本発明のプライマー組成物が硬化済み膜のTgを実質的に上げずに高まったコーティング硬度を提供することが表2から容易に分かる。
【0135】
以下の表3に示した実施例は、本発明のアセトアセチル化ポリビニルポリマーに対比して非変性ポリビニルポリマーのコーティング特性を比較するために表3の成分を逐次添加することにより調製した。固形物30%を提供するように以下のすべての組成物を調節した。
【0136】
【表3】

【0137】
表3に記載されたコーティング組成物のウォッシュプライマーの架橋性成分と架橋成分を混合して、ポットミックスを形成し、その層をドローダウンバーにより乾燥膜厚さ1.5〜2ミル(38〜59マイクロメートル)まで電着スチール試験パネル上に付けた。その後、表4で明記された時間にわたり層を25℃および相対湿度50%で乾燥させた。その後、硬化したコーティングの硬度を試験し、その結果を以下の表4に示している。Tgも上述した条件下で30日にわたり放置して硬化させた膜上で測定した。
【0138】
【表4】

【0139】
表4から次のことが分かる。
1.架橋性成分および架橋成分を含有するコーティング組成物から生じたコーティングは高いコーティングTgおよび硬度を示した(コーティング実施例6と比較したコーティング実施例7、8およびコーティング実施例4と比較したコーティング実施例5)
2.経時的にコーティングの硬度も高まった。それは望ましい。
【0140】
表3に示した組成物からのコーティングの幾つかの種々の試験パネルへの粘着性を試験した。比較組成物実施例3(比較例3)は「ブットバール(Butvar)」(登録商標)B90ポリビニルブチラールであった。結果を以下の表5に示している。
【0141】
【表5】

【0142】
種々のタイプの基材上で本発明のコーティング組成物を適切に使用できることが表5から分かる。アセトアセチル化ポリビニルブチラールのみを含有する本発明のコーティング組成物(コーティング実施例4)がたとえアルミニウム基材上で最適とは言えない粘着性を有していたとしても、架橋された時の同じアセトアセチル化ポリビニルブチラール(コーティング実施例5)はアルミニウム基材への劇的に改善された粘着性を有していた。アセトアセチル化ポリビニルブチラール樹脂が亜鉛メッキ鋼への最適とは言えない湿り粘着性(コーティング実施例5)を有したとしても、回復した粘着性は非常に良好であった。商用ウォッシュプライマー中で一般に用いられる比較コーティング3は、亜鉛メッキ鋼および冷間圧延鋼への劣った粘着性によって証明されるように本発明のポリマーと比べた時に劣ったコーティング特性を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性成分と架橋成分を含む硬化性組成物であって、前記架橋性成分が
(a)式
【化1】

(式中、(m)は約1.5モル%〜約85モル%の範囲であり、(n)は約0モル%〜約20.5モル%の範囲であり、(p)は約12モル%〜約87モル%の範囲であり、(q)は約1モル%〜約88モル%の範囲であり、(m)、(n)、(p)および(q)の合計は100であり、R1およびR2は独立してH、置換または非置換C1〜C12アルキル、置換または非置換C6〜C14アリール、置換または非置換C7〜C22アラルキル、置換または非置換C6〜C14アルカリール、置換、非置換C4〜C14カルボシクリルあるいはそれらの組み合わせであり、前記置換基は独立してC1〜C12アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルの誘導体、スルホニル、スルホニルの誘導体、シアノおよびハロからなる群から選択される)
を有するアセトアセチル化ポリビニルポリマー、
(b)式
【化2】

(式中、(m)は約1.5モル%〜約85モル%の範囲であり、(n)は約0モル%〜約20.5モル%の範囲であり、(p)は約12モル%〜約87モル%の範囲であり、(q)は約1モル%〜約88モル%の範囲であり、(x)は約0.5モル%〜約6モル%の範囲であり、(m)、(n)、(p)、(q)および(x)の合計は100であり、R1およびR2は独立してH、置換または非置換C1〜C12アルキル、置換または非置換C6〜C14アリール、置換または非置換C7〜C22アラルキル、置換または非置換C6〜C14アルカリール、置換、非置換C4〜C14カルボシクリルあるいはそれらの組み合わせであり、ZはHまたは−COOHであり、Yは−COOH、ハロ、非置換フェニルまたはそれらの組み合わせであり、前記置換基は独立してC1〜C12アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルの誘導体、スルホニル、スルホニルの誘導体、シアノおよびハロからなる群から選択される)
を有するアセトアセチル化ポリビニルポリマー、
(c)それらの組み合わせ
を含み、
前記架橋成分がポリアミン、ポリケチミン、ポリエポキシド、ポリイソシアネート、メラミン、C1〜C12アルキルジアルデヒド、C1〜C12アルキルポリ(メタ)アクリレートまたはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記アセトアセチル化ポリビニルポリマーにおいて前記R1がプロピルであり、前記R2がメチルであることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記アセトアセチル化ポリビニルポリマーのGPC重量平均分子量が約20,000〜約300,000の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記アセトアセチル化ポリビニルポリマーのTgが約40℃〜約60℃の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記アセトアセチル化ポリビニルポリマーが1種または複数の溶媒中に可溶化されることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記架橋成分がポリアミン、ポリケチミンまたはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記組成物のVOCが前記組成物リットル当たり0.1〜0.72キログラムの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の硬化性コーティング組成物であって、
前記アセトアセチル化ポリビニルポリマーが
(i)(a)式
【化3】

(式中、(m)は約1.5モル%〜約85モル%の範囲であり、(n)は約0モル%〜約20.5モル%の範囲であり、(o)は約13モル%〜約98.5モル%の範囲であり、(m)、(n)および(o)の合計は100であり、R1およびR2は独立してH、置換または非置換C1〜C12アルキル、置換または非置換C6〜C14アリール、置換または非置換C7〜C22アラルキル、置換または非置換C6〜C14アルカリール、置換、非置換C4〜C14カルボシクリルあるいはそれらの組み合わせであり、前記置換基は独立してC1〜C12アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルの誘導体、スルホニル、スルホニルの誘導体、シアノおよびハロからなる群から選択される)
を有するポリビニルポリマー、
(b)式
【化4】

(式中、(m)は約1.5モル%〜約85モル%の範囲であり、(n)は約0モル%〜約20.5モル%の範囲であり、(o)は約13モル%〜約98.5モル%の範囲であり、(x)は約0.5モル%〜約6モル%の範囲であり、(m)、(n)、(o)および(x)の合計は100であり、R1およびR2は独立してH、置換または非置換C1〜C12アルキル、置換または非置換C6〜C14アリール、置換または非置換C7〜C22アラルキル、置換または非置換C6〜C14アルカリール、置換、非置換C4〜C14カルボシクリルあるいはそれらの組み合わせであり、ZはHまたは−COOHであり、Yは−COOH、ハロ、非置換フェニルまたはそれらの組み合わせであり、前記置換基は独立してC1〜C12アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルの誘導体、スルホニル、スルホニルの誘導体、シアノおよびハロからなる群から選択される)
を有するポリビニルポリマー、または
(c)それらの組み合わせ
を1種または複数の溶媒中に溶解させて、溶液を形成する工程と、
(ii)前記溶液をC1〜C12アルキルアセトアセテートに接触させて、前記アセトアセチル化ポリビニルポリマーを製造する工程と
を含む工程によって製造されることを特徴とする組成物。
【請求項9】
前記R1がプロピルであり、前記R2がメチルであることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
自動車塗り変え組成物またはOEMウォッシュプライマー組成物として配合されることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
基材上にコーティングを作る方法であって、
(i)硬化性コーティング組成物の架橋性成分と架橋成分を混合してポットミックスを形成する工程であって、前記架橋性成分が
(a)式
【化5】

(式中、(m)は約1.5モル%〜約85モル%の範囲であり、(n)は約0モル%〜約20.5モル%の範囲であり、(p)は約12モル%〜約87モル%の範囲であり、(q)は約1モル%〜約88モル%の範囲であり、(m)、(n)、(p)および(q)の合計は100であり、R1およびR2は独立してH、置換または非置換C1〜C12アルキル、置換または非置換C6〜C14アリール、置換または非置換C7〜C22アラルキル、置換または非置換C6〜C14アルカリール、置換、非置換C4〜C14カルボシクリルあるいはそれらの組み合わせであり、前記置換基は独立してC1〜C12アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルの誘導体、スルホニル、スルホニルの誘導体、シアノおよびハロからなる群から選択される)
を有するアセトアセチル化ポリビニルポリマー、
(b)式
【化6】

(式中、(m)は約1.5モル%〜約85モル%の範囲であり、(n)は約0モル%〜約20.5モル%の範囲であり、(p)は約12モル%〜約87モル%の範囲であり、(q)は約1モル%〜約88モル%の範囲であり、(x)は約0.5モル%〜約6モル%の範囲であり、(m)、(n)、(p)、(q)および(x)の合計は100であり、R1およびR2は独立してH、置換または非置換C1〜C12アルキル、置換または非置換C6〜C14アリール、置換または非置換C7〜C22アラルキル、置換または非置換C6〜C14アルカリール、置換、非置換C4〜C14カルボシクリルあるいはそれらの組み合わせであり、ZはHまたは−COOHであり、Yは−COOH、ハロ、非置換フェニルまたはそれらの組み合わせであり、前記置換基は独立してC1〜C12アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルの誘導体、スルホニル、スルホニルの誘導体、シアノおよびハロからなる群から選択される)
を有するアセトアセチル化ポリビニルポリマー、
(c)それらの組み合わせ
を含み、
前記架橋成分がポリアミン、ポリケチミン、ポリエポキシド、ポリイソシアネート、メラミン、C1〜C12アルキルジアルデヒド、C1〜C12アルキルポリ(メタ)アクリレートまたはそれらの組み合わせを含む工程と、
(ii)基材上にポットミックス層を付ける工程と、
(iii)周囲条件下または高い硬化温度下で前記ポットミックス層を硬化させて、前記基材上にコーティングを形成する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記R1がプロピルであり、前記R2がメチルであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記硬化工程の前に前記ポットミックス層上にベースコーティング組成物の層を付ける工程を更に含むことを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記硬化工程の前にベースコーティング組成物の前記層上にクリアコーティング組成物の層を付ける工程を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記硬化工程の前に前記ポットミックス層を乾燥させる工程を更に含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記コーティング組成物がウォッシュプライマー組成物であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記基材が自動車ボディであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
基材上に多層系を作る方法であって、
(i)硬化性コーティング組成物の架橋性成分と架橋成分を混合してポットミックスを形成する工程であって、前記架橋性成分が
(a)式
【化7】

(式中、(m)は約1.5モル%〜約85モル%の範囲であり、(n)は約0モル%〜約20.5モル%の範囲であり、(p)は約12モル%〜約87モル%の範囲であり、(q)は約1モル%〜約88モル%の範囲であり、(m)、(n)、(p)および(q)の合計は100であり、R1およびR2は独立してH、置換または非置換C1〜C12アルキル、置換または非置換C6〜C14アリール、置換または非置換C7〜C22アラルキル、置換または非置換C6〜C14アルカリール、置換、非置換C4〜C14カルボシクリルあるいはそれらの組み合わせであり、前記置換基は独立してC1〜C12アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルの誘導体、スルホニル、スルホニルの誘導体、シアノおよびハロからなる群から選択される)
を有するアセトアセチル化ポリビニルポリマー、
(b)式
【化8】

(式中、(m)は約1.5モル%〜約85モル%の範囲であり、(n)は約0モル%〜約20.5モル%の範囲であり、(p)は約12モル%〜約87モル%の範囲であり、(q)は約1モル%〜約88モル%の範囲であり、(x)は約0.5モル%〜約6モル%の範囲であり、(m)、(n)、(p)、(q)および(x)の合計は100であり、R1およびR2は独立してH、置換または非置換C1〜C12アルキル、置換または非置換C6〜C14アリール、置換または非置換C7〜C22アラルキル、置換または非置換C6〜C14アルカリール、置換、非置換C4〜C14カルボシクリルあるいはそれらの組み合わせであり、ZはHまたは−COOHであり、Yは−COOH、ハロ、非置換フェニルまたはそれらの組み合わせであり、前記置換基は独立してC1〜C12アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシルの誘導体、スルホニル、スルホニルの誘導体、シアノおよびハロからなる群から選択される)
を有するアセトアセチル化ポリビニルポリマー、
(c)それらの組み合わせ
を含み、
前記架橋成分がポリアミン、ポリケチミン、ポリエポキシド、ポリイソシアネート、メラミン、C1〜C12アルキルジアルデヒド、C1〜C12アルキルポリ(メタ)アクリレートまたはそれらの組み合わせを含む工程と、
(ii)基材上にポットミックス層を付ける工程と、
(iii)前記ポットミックス層上にベースコーティング組成物の層を付ける工程と、
(iv)ベースコーティング組成物の前記層上にクリアコーティング組成物の層を付けて、前記基材上に多層系を形成する工程と、
(v)周囲条件下または高い硬化温度下で前記多層系を硬化させて、前記基材上に多層系を形成する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記コーティング組成物をプライマー組成物として配合することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ベースコーティング組成物の前記層を付ける前記工程の前に前記ポットミックス層上にプライマーの層を付ける工程を更に含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記コーティング組成物をウォッシュプライマー組成物として配合することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記基材が自動車ボディであることを特徴とする請求項18、19または20のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2006−523754(P2006−523754A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507383(P2006−507383)
【出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/008483
【国際公開番号】WO2004/085535
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】