説明

アセナピンを調製するための方法、および前記方法で使用される中間生成物

本発明は、アセナピン、即ちトランス−5−クロロ−2−メチル−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロールを調製する新規方法、ならびに前記方法で使用するための新規中間生成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランス−5−クロロ−2−メチル−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロールを調製する新規方法、ならびに前記方法で使用するための新規中間生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、アセナピンとして知られるトランス−5−クロロ−2−メチル−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]−ピロールは、CNS抑制作用を有し、抗ヒスタミン作用および抗セロトニン作用を有する化合物である(van den Burgへの米国特許第4145434号)。アセナピンの薬理的特性、反応速度および代謝、ならびにヒト志願者および統合失調症患者における最初の安全性および効能の研究が概説されている(De Boerら、Drugs of the Future、18(12)、1117−1123頁、1993)。Org5222として知られる、アセナピンのマレイン酸塩は、広範囲で、強力なセロトニン、ノルアドレナリン、およびドーパミンの拮抗剤であることが立証されている。
【0003】
【化1】

【0004】
アセナピンは、潜在的な抗精神病活性を示し、鬱病の治療に有用であると考えられる(国際公開WO99/32108参照)。アセナピンマレイン酸塩の舌下投与および口腔投与用に適している医薬製剤は、国際公開WO95/23600(Akzo Nobel N.V.)に記載されている。アセナピンマレイン酸塩は、現在、臨床研究のテーマであり、製剤原料の大量合成が必要とされている。
【0005】
アセナピン調製用の一般的な手順は、米国特許第4145434号に開示されている。医薬物質であるOrg5222の物理化学的特性は、報告されている(Funkeら、Arzneim.−Forsch/Drug.Res.、40、536−539頁、1990)。Org5222および放射性同位体で標識されたこの誘導体を調製するためのさらなる合成方法も、記載されている(Vaderら、J.Labelled Comp.Radiopharm.、34、845−869頁、1994)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4145434号
【特許文献2】国際公開WO99/32108
【特許文献3】国際公開WO95/23600
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】De Boerら、Drugs of the Future、18(12)、1117−1123頁、1993
【非特許文献2】Funkeら、Arzneim.−Forsch/Drug.Res.、40、536−539頁、1990
【非特許文献3】Vaderら、J.Labelled Comp.Radiopharm.、34、845−869頁、1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
工業規模で確実に実施できる、アセナピン調製のための合成手法への要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、トランス−5−クロロ−2−メチル−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロール(式I)
【0010】
【化2】

を調製するための方法であり、式II
【0011】
【化3】

のE−スチルベン誘導体をアゾメチンイリドと反応することにより、式III
【0012】
【化4】

のトランス−ピロリジン誘導体を得ることを特徴とする方法を提供する。
【0013】
式IIおよび式IIIにおいて、
はF、BrまたはIであり、
およびRは異なっており、それぞれがHおよびClから選択され、
はHまたはヒドロキシ保護基である。保護基が存在する場合は、続いてこれを除去して、分子内閉環をもたらす条件下で処理することにより、式Iの化合物を産生する。
【0014】
式IIの規定において、Rは、式IIIのトランス−ピロリジン誘導体を導く反応条件下で安定であるヒドロキシ保護基でよい。このような保護基の例は、テトラヒドロピラニル基、シリル保護基またはアシル基である。さらなる例は、当技術分野で知られている。例えば、Wuts,P.G.M.およびGreene,T.W.:Protective Groups in Organic Synthesis、Third Edition、Wiley、New York、1999を参照されたい。好ましい保護基はアシル基であり、特にアセチル基である。
【0015】
本開示全体において、例えば、化合物(I)および(III)の式に示されるような、1組の太線および点線の楔状結合を有する構造式で表される化合物は、「トランス」ジアステレオマーを示す。それぞれの化合物は、楔状結合により示される絶対立体化学配置を有する、または逆の絶対配置を有する単一の鏡像異性体として、若しくは楔状結合により示される相対立体化学配置を有する鏡像異性体の混合物(例えば、ラセミ体)として存在してよい。
【0016】
本発明の方法の第1反応ステップにおいて、式IIのE−スチルベン誘導体が、インシチュで生成したアゾメチンイリドと[3+2]双極子環状付加反応で反応することにより、式IIIのトランス−ピロリジン誘導体を得る。反応は、すべての結合を同時に生成する、協奏的な様式で進行すると考えられる。この結果、立体化学が生成物で保持される。反応を、E−スチルベン誘導体を用いて開始した場合、トランスピロリジン環だけが形成される。本発明の方法における双極子付加ステップの立体選択性は、本方法の良好な全収率に関して大きな利点を示す。
【0017】
下記の双極子構造
【0018】
【化5】

により示される、必要とされるアゾメチンイリドは、例えば、トリメチルアミン−N−オキシド二水和物(TMNO.2HO)またはトリメチルアミン−N−オキシド無水物(TMNO)とリチウムジイソプロピルアミド(LDA)またはリチウムテトラメチルピペリジドからインシチュで生成できる。双極子付加反応は、テトラヒドロフラン等の非プロトン性溶媒中で、LDAを式IIのE−スチルベンおよびTMNOの混合物に添加することにより実施できる。反応温度を好ましくは30℃以下に制御し、トリメチルアミン−N−オキシドの溶解をもたらすために、好ましくは、LDAをゆっくりと添加する。
【0019】
式IIにおいてRがBrまたはIの場合、TMNOを用いた双極子付加は、式IIIのピロリジンを良好な収率と純度で生成した。式IIIの得られたピロリジン誘導体は、直接n−ペンタン/酢酸エチル混合物またはエタノール/水混合物から結晶化できると実証された。
【0020】
好ましい方法では、必要なアゾメチンイリドは、トリフルオロ酢酸またはフッ化セシウムを用いた活性化によって、N−メトキシメチル−N−トリメチルシリルメチル−N−メチルアミン(式3、下記)からインシチュで生成する(Hosomi,A.ら、Chem.Lett.、1117−1120頁、1984)。
【0021】
新規アミノメチルエーテル(3)は、(クロロメチル)トリメチルシラン(1)によるメチルアミンのアルキル化により第2アミン(2)を産生し、これをメタノール溶液中でホルムアルデヒドを用いて引き続き処理して調製できる。
【0022】
【化6】

【0023】
試薬(3)の使用により、多数の利点が得られる。例えば、アミノメチルエーテル試薬は、より少量の溶媒で使用できるので、本発明の方法は、より多い処理量で実施できる。さらに、アゾメチンイリドを生成する方法は、トリメチルアミン−N−オキシドを使用する方法に比較して発熱がはるかに少ないので、試薬(3)の使用は、より安全な合成の方法を提供する。加えて、試薬(3)は、Z−スチルベン誘導体と認められる程度には反応しないので、この合成はより多量のZ異性体を許容できる。
【0024】
好ましい実施形態では、双極子付加反応は、Rが保護基を表す式IIのスチルベン誘導体を使用して実施される。アセチル基等の保護基は、親電子芳香族置換反応に対してヒドロキシ−フェニル基を不活性化する。この置換反応は、式IIのピロリジンを誘導する双極子付加反応と競合する可能性がある。この結果、副生成物の発生を最小限に抑えることができる。
【0025】
この方法の第2ステップにおいて、式IIIA
【0026】
【化7】

のトランス−ピロリジン誘導体は分子内閉環反応をもたらす条件下で処理され、トランス−5−クロロ−2−メチル−2,3,3a,12b−テトラヒドロ−1H−ジベンゾ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5−c]ピロール(アセナピン、式I)を生成する。
【0027】
アセナピンの7員環のオキセピン環を形成する分子内閉環反応は、ウルマン(Ullmann)型反応、即ち、式IIIAの化合物を、溶媒中高温で、塩基の存在下、銅(I)塩または銅(II)塩と共に、銅(0)粉末で処理することにより実施できる(Ma,D.、Cai,Q.、Organic Letters、5、3799−3802頁、2003;Buck,E.ら、Organic Letters、4、1623−1626頁、202;Sawyer,J.S.、Tetrahedron、5045−5065頁、2002)。N,N−ジメチルグリシン、N−メチルグリシン、2、2、4、4−テトラメチル−3、5−ヘプタンジオン(TMHD)または8−ヒドロキシキノリン等の添加物は、銅イオンの溶解性を向上するために使用できる。適切な塩基として、CsCO、KCO、ピリジン、NaOH、KOHまたはCsFが挙げられる。有用な銅源として、Cu粉末、CuI、CuBr、CuCl、Cu(CO)、(炭酸銅(II))、Cu(OAc)(酢酸銅(II))、Cu(OTf)(トリフルオロメタンスルホン酸銅(II))、CuOまたはCuSOが挙げられる。
【0028】
式IIIAの化合物をアセナピンに完全に変換するための適切な条件は、約24時間、還流ジオキサン内で、CuCl(0.25当量)、N,N−ジメチルグリシン(0.25当量)およびCsCO(1.1当量)を使用することである。約80から110℃の間の温度において、工業規模でウルマン環化反応に使用するための溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)、ピリジン、ジオキサン、トルエン、キシレン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、2−メチルテトラヒドロフラン等である。
【0029】
工業規模のウルマン環化反応のための好ましい反応条件は、ジメチルアセトアミド、またはこれとトルエンとの混合物を溶媒系として使用して、CsCO、NaOH、KOHまたはKCOを塩基として使用し、塩化銅(I)と組み合わせたジメチルグリシンを触媒として使用することである。
【0030】
本発明の特に有用な実施形態は、式I
【0031】
【化8】

のアセナピン、またはこの塩の調製のための方法であり、(E)−2−(2−ブロモスチリル)−4−クロロフェニルアセテート
【0032】
【化9】

を、トリフルオロ酢酸で補助して、N−メトキシメチル−N−トリメチルシリルメチル−N−メチルアミンからインシチュで生成したアゾメチンイリドと、トルエン等の不活性溶媒中で反応することにより、トランス−N−メチル−4−(2−ブロモフェニル)−3−(2−アセトキシ−5−クロロフェニル)−ピロリジン
【0033】
【化10】

を得る。
【0034】
ピロリジン誘導体は、アルカリ水溶液等の塩基性条件下で処理されて、アセチル基が取り去られる。分子内閉環をもたらすウルマン条件下、銅(I)塩で補助する、脱保護ピロリジン誘導体の後続処理により、アセナピンが得られる。アセナピンは、場合により、薬学的に許容可能な塩に変換してもよい。
【0035】
本発明の別の態様により、式III
【0036】
【化11】

の新規トランス−ピロリジン誘導体が得られる。式中、RはF、Br、またはIであり、RおよびRは異なっており、それぞれHおよびClから選択され、式中、RはHまたは上記で規定したようなヒドロキシ保護基、あるいはこの塩である。
【0037】
本発明のさらに別の態様により、式II
【0038】
【化12】

の新規E−スチルベン誘導体が得られる。式中、RはF、Br、またはIであり、RおよびRは異なっており、それぞれHおよびClから選択され、式中、RはHまたは上記で規定したようなヒドロキシ保護基である。これらのスチルベン誘導体は、薬学的に活性な式Iの化合物、即ちアセナピンを工業的に生産する中間体として有用である。
【0039】
式IIのE−スチルベン誘導体は、例えば、ウィッティヒ(Wittig)反応を使用して調製できる。このウィッティヒ反応では、クロロホルム、テトラヒドロフランまたはこれらとエタノールの混合物等の溶媒を還流しながら、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、DABCO、カリウムtert−ブトキシド、またはナトリウムエトキシド等の当量の塩基の存在下にて、下記の式IVのトリフェニルホスホニウムハロゲニドが、式VIの適切なサリチル酸アルデヒドと反応する。式中、R、RおよびRはそれぞれ上記の式IIおよびIIIに関して規定した通りである。ウィッティヒ反応は、通常E異性体とZ異性体の混合物を生じ、最良の比率は約70:30となる。純粋なE異性体(式II)を、クロマトグラフィーによって単離できる。
【0040】
【化13】

【0041】
式IVのトリフェニルホスホニウムハロゲニドは、トルエン溶液を還流しながら、式Vの化合物をトリフェニルホスフィンで処理することにより調製できる。式中、RはF、BrまたはIであり、RはHまたはClであり、また、Xはハロゲン、好ましくはClまたはBrを表す。
【0042】
式IIのE−スチルベン誘導体を合成する好ましい方法では、下記の式VIIを有するホスホネートエステル誘導体を使用する。ホスホネートエステル誘導体は、無溶媒またはトルエン等の溶媒を使用して、式Vの化合物を等モル量のトリエチルホスファイトと共に加熱することにより調製できる(Davidsen,S.K.;Philips,G.W.;Martin,S.F.、Organic Syntheses、Coll.Vol.8、451頁(1993);Vol.65、119頁)。
【0043】
【化14】

【0044】
続く、ウィッティヒ−ホーナー(Wittig−Horner)反応(T.Kawasakiら、J.Org.Chem.、66、1200−1204頁、2001;Tet.Lett.、43、2449頁、2001)では、式VIIのホスホネートエステルが、テトラヒドロフラン等の溶媒中で、カリウムtert−ブトキシド、ブチルリチウム、水素化ナトリウムまたはナトリウムメトキシド等の塩基で処理され、中間体である安定化されたホスホネート陰イオンを生成し、この陰イオンが、式VIのサリチルアルデヒド誘導体と反応することにより、選択的に式IIのE−スチルベンを産生する。
【0045】
式Iのアセナピンおよび式IIIのトランス−ピロリジン誘導体の適切な塩としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の有機塩基との組合せから得られる塩が挙げられる。適切な酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、燐酸および硫酸等の鉱酸、または、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、グリコール酸、コハク酸、プロピオン酸、酢酸およびメタンスルホン酸等の有機酸との処理から得ることができる。式Iのアセナピンの好ましい酸付加塩は、マレイン酸塩、即ちOrg5222である。
【0046】
本発明を、以下の実施例によって説明する。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0047】
以下の例は、説明的なものであり、制限されるものではなく、本発明の特定の実施形態を表す。下記の各例では、化合物であるアセナピン(式I)およびこの前駆体である式IIIのトランス−ピロリジン誘導体は、ラセミ体であり、それらの構造式中に使用されている、太線同士の楔状結合または太線および点線の楔状結合の各対は、相対立体化学配置を示す。
【0048】
一般的方法:
NMRスペクトルはBruker DPX 400で記録された。化学シフトは、百万分の一単位(ppm)で報告される。H−NMRの化学シフトは、TMSを内部標準として参照する(略号s シングレット、d ダブレット、t トリプレット、dd ダブルダブレット、m マルチプレット)。
【0049】
質量スペクトルは、PE SCIEX API 165で記録された。GCクロマトグラムは、Restek RTXカラムを備えたAgilent HP6890Nガスクロマトグラフを使用して得られた。HPLCクロマトグラムは、Agilent HP1100液体クロマトグラフを使用して得られた。
【実施例1】
【0050】
【化15】

【0051】
A:(2−ブロモ−ベンジル)−ホスホン酸ジエチルエステル
2−ブロモベンジルブロミド(1048g、4.2mol)を、60℃の水浴中で融解して、キシレン(734ml)に溶解した。この溶液を80℃に加熱した。次に、トリエチルホスファイト(766ml、4.46mol)を、3等分して反応混合物に60分で添加した。混合物を、110℃で一晩中攪拌した。反応混合物を、400mlのキシレンで、2回共蒸発させた。キシレンを真空下、60℃で除去した。生成物を、60℃の真空乾燥機内で乾燥し、さらに精製することなく使用した。
H−NMR:(CDCl):1.33(6H,t,2×CH);3.43(1H,s,CH−a);3.54(1H,s,CH−b);4.12(4H,q,2×CHO);7.17(1H,m,ArH);7.34(1H,m,ArH);7.55(1H,m,ArH)、7.62(1H,m,ArH)
31P−NMR:(CDCl):23.81
質量分析:M+1=307および309(Br同位体)実測値
【0052】
B:トランス−2−ブロモ−5’−クロロ−2’−ヒドロキシスチルベン
5−クロロサリチルアルデヒド(188g、1.2mol)を、窒素雰囲気下で(2−ブロモ−ベンジル)−ホスホン酸ジエチルエステル(369g、1.2mol)のテトラヒドロフラン(1500ml)溶液に添加した。温度を33℃に保ちながら、カリウムtert−ブトキシド(300g、2.68mol)のテトラヒドロフラン(3000ml)溶液を添加した。反応完了後、水(1800ml)を、続いて4N HCl(450ml)を添加した。有機層を、炭酸ナトリウム溶液(500ml)および飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層を50℃の減圧下で蒸発させることにより、トランス−2−ブロモ−5’−クロロ−2’−ヒドロキシスチルベンを得た(301.9g、92%)。
【0053】
【化16】

H−NMR(CDCl):6.70(1H,d,H−7);7.12(1H,d,H−6);7.15(1H,t,H−2またはH−3);7.21(1H,d H−9);7.35(1H,t,H−2またはH−3);7.46(1H,d,H−8,);7.52(1H,d,H−5);7.58および7.68(2×2H,2×d,H−1およびH−4)
【0054】
C:トランス−N−メチル−2−(2−ブロモフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)−ピロリジン
トランス−2−ブロモ−5’−クロロ−2’−ヒドロキシスチルベン(81g、261mmol)のテトラヒドロフラン(570ml)溶液に、トリメチルアミン−N−オキシド二水和物(43.4g、390mmol)を、室温で添加した。次に、ヘプタン/THF中のリチウムジイソプロピルアミド(2M、1070ml、2140mmol)を、40℃未満の温度に維持しながら、1時間の間に添加した。反応完了後、水(120ml)を添加した。溶媒を蒸発させて少量にした後、酢酸エチル(250ml)を添加した。18%塩酸(約250ml)を用いてpHを調節してpH8にして、酢酸エチル(250ml)を添加した。有機層を分離して、水層を酢酸エチル(2×120ml)で再度抽出した。合わせた有機層を、水(325ml)および食塩水で洗浄して、乾燥し(MgSO)、次に真空下で蒸発させた。得られた油状物をエタノール/水(1/1、v/v)から結晶化することにより、表題のピロリジン(62.0g、79%)を得た。HPLCによる純度は99% a/aである。
【0055】
【化17】

H−NMR(MeOD):2.50(3H,s,CH)、2.52+3.09+3.10+3.45(4×1H,t,dd,t,t,Ha−5,Hb−5,Ha−6,Hb−6)、3.62+4.14(2×1H,2×m,H4+H7)、6.72(1H,d,H−1)、6.94(1H,d,H−3)、6.98(1H,d,H−2)、7.10+7.35(2×1H,2×t,H−10+H−9)、7.52+7.58(2×1H,2×d,H−8+H−11)。
【0056】
D+E:アセナピンマレイン酸塩;Org5222
【0057】
【化18】

【0058】
方法1:
トランス−N−メチル−2−(2−ブロモフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)−ピロリジン(103g、280.8mmol)およびジオキサン(520ml)の混合物に、窒素雰囲気下で、炭酸セシウム(109.79g、1.2当量)、N、Nジメチルグリシン(7.2グラム、0.25当量)およびヨウ化銅(13.36g、0.25当量)を添加した。混合物を加熱し還流して、還流温度で68時間攪拌し、次にダイカライトでろ過した。ダイカライトをジオキサン(3×50ml)で洗浄した。ジオキサンを蒸発させ、その際に残渣をエタノール(1000ml)に溶解した。攪拌下で、臭化水素酸水溶液(48%、31.5ml)を、エタノール溶液に添加した。この懸濁液を16時間攪拌した。結晶状アセナピン臭化水素塩を集めて、真空下で乾燥した。生成物を水(500ml)中で攪拌し、その際に水酸化ナトリウム水溶液(2N)を添加して、pHを8に調節した。水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を水(200ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥して、蒸発させた。残渣をエタノール(50ml)に溶解した。この溶液に、マレイン酸(16.6グラム、142.6mmol)のエタノール(20ml)および水(6ml)溶液を添加した。混合物を一晩中攪拌した。エタノール(20ml)を濃密塊に添加し、懸濁液をさらに1時間攪拌した。アセナピンマレイン酸塩を集めて、40℃の真空下で乾燥することにより、44g(39%)を産生した。HPLCによる純度は99.8% a/aである。
【0059】
H−NMR(CDCl):2.58(3H,s,1−N−CH);3.14(2H,m,H−3およびH−4);3.21および3.62(m,2×2H,2×H−2および2×H−5);6,24(2H,s,マレイン酸のビニル性H’)、7.01−7.36(7H,m,芳香族 H’)。
【0060】
ESI_MSMS:実測フラグメントのm/z 44、166、194、201、215、220、229は次の通り:[C2H6N]+、[C12H6O]+.、[C14H10O]+.、[C12H6ClO]+、[C13H8ClO]+、[C16H12O]+.、[C14H10ClO]
融点:140℃。
【0061】
方法2
炭酸カリウム(6.24g、45.0mmol)および銅粉末(0.96g、15.1mmol)をジメチルアセトアミド(25ml)中に懸濁した。温度を140℃にして、懸濁液内に窒素を30分間導入した。次に、トランス−N−メチル−2−(2−ブロモフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)−ピロリジン(15g、40.9mmol)を添加して、反応混合物を29時間攪拌した。懸濁液をダイカライトでろ過して、溶媒を蒸発させた。残渣をトルエン(100ml)に溶解して、アンモニア(50ml)および水(50ml)で2回洗浄した。トルエン層を硫酸マグネシウムで乾燥して、蒸発させた。残渣をエタノール(18.2ml)に溶解し、その際にマレイン酸(4.83g、41.4mmol)のエタノール(5.2ml)および水(1.82ml)溶液を攪拌下で添加した。16時間攪拌後、アセナピンマレイン酸塩の結晶を集めて、40℃の真空下で乾燥することにより、8.9g(54%)を産生した。HPLCによる純度は99.9% a/aである。
【0062】
H−NMR(CDCl):2.58(3H,s,1−N−CH);3.14(2H,m,H−3およびH−4);3.21および3.62(m,2×2H,2×H−2および2×H−5);6,24(2H,s,マレイン酸のビニル性H’)、7.01−7.36(7H,m,芳香族 H’)。
【0063】
ESI_MSMS;実測フラグメントのm/z 44、166、194、201、215、220、229は次の通り:[C2H6N]+、[C12H6O]+.、[C14H10O]+.、[C12H6ClO]+、[C13H8ClO]+、[C16H12O]+.、[C14H10ClO]。
融点:140℃。
【0064】
方法3
トランス−N−メチル−2−(2−ブロモフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)−ピロリジン(10g、27.3mmol)のメタノール(100ml)溶液に、KOH(1.68g、29.9mmol)を添加した。得られた透明な溶液を、40℃で15分間攪拌した。溶媒を蒸発させて、トルエン(73ml)およびDMA(18ml)を、続いてCuCl(1.00g、10mmol)、ジメチルグリシン(2.20g、21.3mmol)および炭酸カリウム(3.77g、27.3mmol)を添加した。4時間還流した後、溶媒を真空下で除去した。反応混合物を、トルエン(55ml)に溶解して、5%アンモニア溶液(3×55ml)で抽出した。トルエン層を硫酸マグネシウムで乾燥して、蒸発させた。残渣を2−プロパノール(10ml)に溶解し、その際にマレイン酸(3.48g、30.0mmol)の2−プロパノール(68ml)および水(1.82ml)溶液を攪拌下で添加した。16時間攪拌した後、アセナピンマレイン酸塩の結晶を集めて、40℃の真空下で乾燥することにより、6.0グラム(55%)を産生した。HPLCによる純度は99% a/aである。
【0065】
H−NMR(CDCl):2.58(3H,s,1−N−CH);3.14(2H,m,H−3およびH−4);3.21および3.62(m,2×2H,2×H−2および2×H−5);6,24(2H,s,マレイン酸のビニル性H’)、7.01−7.36(7H,m,芳香族 H’)。
【0066】
ESI_MSMS:実測フラグメントのm/z 44、166、194、201、215、220、229は次の通り:[C2H6N]+、[C12H6O]+.、[C14H10O]+.、[C12H6ClO]+、[C13H8ClO]+、[C16H12O]+.、[C14H10ClO]。
【0067】
融点:140℃。
【実施例2】
【0068】
【化19】

【0069】
A:(2−ヨード−2−ベンジル)−ホスホン酸ジエチルエステル
トリエチルホスファイト(約66.6ml、純度94%、約396.8mmol)および2−ヨードベンジルクロリド1(100g、400mmol、使用前に融解)を、250mlの丸底フラスコ内で、キシレン(65ml)と混合した。攪拌しながら24時間の、透明な溶液を加熱して還流した。反応をGCおよびH−NMR(CDCl)で追跡した。4.74ppmの2H、s、CHIの消えかかったプロトン共鳴、および新たな3.47ppmの2H、d、CHPO(OEt)は反応の進行を示した。
【0070】
H−NMR(CDCl):1.33(6H,t,2×CH);3.47(2H,d,CHPO(OEt));4.12(q,4H,2×CHO);6.99(1H,m,ArH);7.35(1H,m,ArH);7.54(1H,m,ArH)、7.89(1H,m,ArH)。
【0071】
質量分析:M+1=355(Cl同位体実測値)、M−1=355(Cl同位体実測値)。
【0072】
B:トランス−2−ヨード−5’−クロロ−2’−ヒドロキシスチルベン
粗製の(2−ヨード−2−ベンジル)−ホスホン酸ジエチルエステルの生成溶液を室温に冷却し、次に5−クロロサリチルアルデヒド(62.14g、396.8mmol、1.0当量)のTHF(1000ml)溶液に添加した。溶液を、氷浴で約0℃に冷却した。KOtBu(97.2g、868mmol、2.19当量)を分割して、5分かけて添加し、オレンジ色のほぼ透明な溶液を得た。追加のTHF(100ml)を添加した。さらに10分間攪拌した後、氷浴を取り去り、室温に加温しながら反応混合物を攪拌した。1時間後、水(250ml)を添加して、透明なオレンジ色の溶液を得た。酢酸エチル(400ml)を、続いてNaCl飽和水溶液(100ml)を添加した。有機相を分離して、真空下で濃縮することにより、155g(>100%)の油状物を得た。次に、2N HCl(水溶液、250ml)を、続いて酢酸エチル(250ml)を添加した。有機相を分離して、NaSOで乾燥し、真空下で蒸発させることにより、127gの固体を得た。次に、この固体をn−ヘプタン(500ml)中、室温で15分間攪拌した。ベージュ色の固体をガラスフィルターでろ過して、n−ヘプタン(50ml)で洗浄し、真空下、ロータリーエバポレーターで乾燥した。表題のスチルベンの収量は111グラム(79%)であった。生成物を、さらに精製することなく使用した。
【0073】
【化20】

質量分析:M+1=356(Cl異性体実測値)。
H−NMR(CDCl):6.8.1(1H,d,H−7);7.05(1H,d,H−6);7,18(1H,t,H−2またはH−3);7.22(1H,d H−9);7.34(1H,t,H−2またはH−3);7.42(1H,d,H−8,);7.60(1H,d,H−5);7.52および7.98(2×2H,2×d,H−1およびH−4)
【0074】
C:トランス−N−メチル−2−(2−ヨードフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)−ピロリジン
トランス−2−ヨード−5’−クロロ−2’−ヒドロキシスチルベン(56.1グラム、157.6mmol)およびトリメチルアミンN−オキシド二水和物(52.55g、472.8mmol)の混合物を、室温で攪拌しながらTHF(570ml)に溶解した。すべてのトリメチルアミンN−オキシド二水和物が溶解したわけではなかった。混合物を、氷浴で0℃まで冷却した。次に、約4℃に冷却したLDA溶液(577.5ml、ヘプタン/THF/エチルベンゼン中で1.8M、1.04mol)を、滴下漏斗を用いて25分かけて滴下して添加した。内部温度は約20−26℃に上がった。添加が完了した後、得られたオレンジ色/黄色の溶液の温度は10分以内に約8℃に下がった。サンプルを取り出して、若干量の水で反応を停止し、LCで分析したところ、>90%の環状付加物を示した。氷浴を取り去り、室温まで暖めながら、反応混合物をさらに4時間攪拌した。水(140ml)を添加して、混合物を室温で一晩中攪拌した。次に、2N HCl(200ml)を、続いて酢酸エチル(500ml)を添加した。有機層を分離した。依然としてわずかに塩基性(pH指示紙)である水層を、再度酢酸エチル(100ml)で抽出した。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥した。真空下で蒸発させることにより、油状物を得た。ジエチルエーテル(100ml)を添加することにより、溶液を得た。攪拌しながら、このエーテル溶液へn−ペンタン(300ml)を添加することにより、黄色の沈殿物を得た。ガラスフィルターでろ過して、n−ペンタン(2×25ml)で洗浄することにより、真空下で乾燥後、72%の収率で、純粋な環状付加物(46.5g、112.6mmol、LC>95%純度)の黄色固体を得た。融点:123.1℃(開始)、126.9℃(ピーク)。ろ過液を合わせて、真空下で蒸発させることにより、NMR分析によると多数の生成物を含有する、23グラムの油状物を得た。酢酸エチルで溶離する、シリカゲルクロマトグラフィーによる精製により、2回目の生成物(17g、41.1mmol、26%)を得た。全収率は約98%であった。
【0075】
【化21】

質量分析:M+1=414(Cl異性体実測値)、M−1=412(Cl異性体実測値)、
H−NMR(CDCl):2.60(3H,s,CH)、2.30+2.96+3.77+3.42(4×1H,t,dd,t,t,Ha−5,Hb−5,Ha−6,Hb−6)、3.22(2H,m,H4+H7)、6.82(1H,d,H−1)、6.92(1H,d,H−3)、7.02(1H,d,H−2)、7.32+7.15(2×1H,2×t,H−10+H−9)、7.51+7.85(2×1H,2×d,H−8+H−11)。
【0076】
D:アセナピン
【0077】
【化22】

【0078】
方法1
N,N−ジメチルアセトアミド(DMA、350ml)中のトランス−N−メチル−2−(2−ヨードフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)−ピロリジン(46.5g、112.6mmol)および炭酸セシウム(100グラム、306.9mmol)の混合物を、攪拌しながら140℃に加熱した(内部温度)。2時間後、少量サンプルのNMR分析ではアセナピンは観測されず、出発物質のみが存在した。次に、再度炭酸セシウム(98g)を添加して(全量で607.7mmolのCsCOを使用)、混合物を一晩中(16時間)加熱した。NMR分析によると、出発物質とアセナピンの混合物が得られた。生成物を、クロマトグラフィーにより精製した。H−NMR(CDCl)は完全に一致した。
【0079】
方法2
NMP(250ml)中のトランス−N−メチル−2−(2−ブロモフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)−ピロリジン(27g、65.4mmol)、炭酸セシウム(42.7グラム、131mmol)、Cul(4.98g、26.2mmol)およびTMHD(2.39g、13.1mmol、20mol%)の混合物を、160℃に加熱した(内部温度)。1時間後に反応は完了した。次に、4時間後に混合物を、Kugelrohr装置を用いて真空下で濃縮して、大部分のNMPを除去した。H−NMR(CDCl)は完全に一致した。
【実施例3】
【0080】
【化23】

【0081】
A+B:トランス−2−アセトキシ−2’−ブロモ−5’−クロロスチルベン
2−ブロモ−5−クロロ−ベンジルブロミド(462g、1625mmol)を、トリエチルホスファイト(297g、1769mmol)中で、115℃、2時間加熱した。混合物を冷却した。テトラヒドロフラン(4610ml)中のサリチルアルデヒド(216g、1769mmol)に、−10℃でKOtBu(495g、4411mmol)を分割して添加した。上記の混合物を、−10℃で添加した。反応混合物を2時間攪拌して、次に無水酢酸(461g、4516mmol)を添加した。15分間攪拌した後、塩化水素(2900ml、1N、2900mmol)を添加した。層を分離して、有機層を食塩水(2L)で洗浄した。有機層を真空下で濃縮した。生成物を、20℃から−10℃でエタノール(4250ml)から結晶化した。生成物をろ過により単離して、真空下で24時間乾燥した。表題のスチルベンの収量514.8g(90%)。HPLCによる純度は>99.5% a/aである。
H−NMR(CDCl):2.39(3H,s,CH)、7.03(1H,d,J=16Hz,オレフィン H)、7.10(2H,m,H3+H4)、7.30+7.35(2×1H,t,t,H2+H3)、7.39(1H,d,J=16Hz,オレフィン H)、7.49+7.56+7.68(3×1H,d,d,d,H4’+H3’+H6’)
融点:134−135℃:
質量:M+1=351および353(Br同位体)実測値。
【0082】
C:トランス−N−メチル−2−(2−ヒドロキシフェニル)−3−(2−ブロモ−5−クロロフェニル)−ピロリジン
トランス−2−アセトキシ−2’−ブロモ−5’−クロロスチルベン(1189g、3381mmol)を、33℃でトルエン(5350ml)およびトリフルオロ酢酸(10.42ml、165mmol)に溶解した。N−メトキシメチル−N−トリメチルシリル−N−メチルアミン(670g、4153mmol)を1時間かけて添加した。有機層を、真空下で油状物に濃縮した。この油状物を、30℃でメタノール(4160ml)中に溶解した。水(900ml)中の水酸化カリウム(209g、3725mmol)を添加した。30分後、3N HCl(約200ml)でpHを8−9に調節した。混合物を30分間攪拌して、ろ過した。生成物を真空下で24時間乾燥することにより、表題のピロリジンを1188グラム(96%)産生した。HPLCによる純度は>99.0% a/aである。
H−NMR:(CDCl)2.25(1H,t,H1a)、2.53(3H,s,CH)、2.86+3.25+3.31+3.67+4.05(5×1H,t,d,m,t,m,H1b+H4a+H3+H4b+H2)、6.62+6.82+6.92+7.08+7.12+7.35+7.42(7×1H,t,d,d,t,t,d,d,芳香族プロトン)。
融点:167℃。
質量:M+1 366および368(Br異性体)実測値。
【0083】
D+E:アセナピンマレイン酸塩
方法1
250mLの丸底フラスコ中で、N,N−ジメチルアセトアミド(22ml)中のトランス−N−メチル−2−(2−ヒドロキシフェニル)−3−(2−ブロモ−5−クロロフェニル)−ピロリジン(10.0g、27.3mmol)、炭酸セシウム(11.0g、33.8mmol)、塩化銅(I)(1.0グラム、10.10mmol)およびN,N−ジメチルグリシン(2.2g、21.33mmol)は、褐色の懸濁液を与えた。スラリーを窒素で脱気して、50℃に加熱した。トルエン(88ml)を添加し、スラリーを111℃まで12−14時間加熱した。反応が完了したとき(HPLCで観察)、混合物を20℃に冷却した。90mlの3Nアンモニアを添加して、混合物を15分間攪拌した。水層を廃棄した。有機層を2×60mlの3Nアンモニアで洗浄した。トルエン層を、ECOSORB GL−793ポリマー状カーボン(1.0グラム)と共に30分間攪拌して、次にろ過した。トルエンを、真空蒸留で除去した。2−プロパノール(10.0ml)を添加して、真空蒸留し、溶媒を除去すると、アセナピンが黄色の油状物として残った。マレイン酸(3.5g、30.2mmol)を、45−50℃で2−プロパノール(55ml)に溶解した。この溶液を、45−50℃で黄色の油状物に添加した。溶液を3時間かけて10℃に冷却して、10℃に2時間維持した。固体をろ過して、低温の(0−5℃)40mlの2−プロパノールで洗浄した。固体を40℃で乾燥することで、白色固体を得た。重量:8.8グラム。粗製生成物を55−60℃でアセトン(51.5ml)に溶解して、次にゆっくりとn−ヘプタン(17.5ml)を添加することにより、アセナピンマレイン酸塩を再結晶した。種結晶を添加して、混合物を1時間攪拌した。さらに、温度を55−60℃に維持しながら、n−ヘプタン(43ml)を1時間かけて添加した。混合物を、この温度で1時間攪拌して、次に6時間かけて10℃に冷却した。10℃で少なくとも1時間攪拌した後、生成物をろ過により単離して、5−15℃に冷却したアセトンとn−ヘプタンの1:1混合物(9ml)で洗浄した。次に、この物質を60℃の真空オーブンで乾燥した。アセナピンマレイン酸塩(斜方晶結晶形態)の収量8.8g(88%)。HPLCによる純度99.0%
H−NMR:(CDCl)3.07(3h,s,CH)、3.94(6H,br s,ピロリジンプロトン)、6.27(2H,s,マレイン酸プロトン)、7.00−7.26(7H,m,芳香族プロトン)。
融点:140−141℃。
【0084】
方法2
トランス−N−メチル−2−(2−ヒドロキシフェニル)−3−(2−ブロモ−5−クロロフェニル)−ピロリジン(5g、13.6mmol)、粉末状CsCO(0.8g、2.5mmol)、粉末状炭酸カリウム(5.4g、29mmol)、CuCl(0.5g、5mmol)、N,N−ジメチルグリシン(1.1g、10.6mmol)およびN,N−ジメチルアセトアミド(11mL)を、250mlフラスコに投入した。スラリーを窒素で脱気して、50℃に加熱した。反応混合物に、脱気したトルエン(44mL)および水(1.5mL)を添加して、次に得られたスラリーを110−112℃に5−10時間加熱した。反応物を室温に冷却して、3Nアンモニア水(45mL)を添加して、15分間攪拌した。層を分離して、有機層を3Nアンモニア水(2×30mL)で洗浄する(2×30ml)。トルエンを、70から80℃の真空下で除去することで、油状物を生成する。上記のように、塩を2−プロパノール中で作製する。
【0085】
方法3
トランス−N−メチル−2−(2−ヒドロキシフェニル)−3−(2−ブロモ−5−クロロフェニル)−ピロリジン(10g、27.2mmol)、CuCl(1.0g、10.2mmol)、炭酸カリウム(7.52g、54.4mmol)、N,N−ジメチルグリシン(2.2g、21.3mmol)および22mLのN,N−ジメチルアセトアミド(22ml)を、500mLフラスコに投入した。スラリーを窒素で20分間脱気して、50℃に加熱した。脱気したトルエン(90mL)を、続いて2−メチルテトラヒドロフラン(10mL)を添加した。混合物を、激しく攪拌しながら、110−115℃に4−5時間加熱した。反応混合物を20℃に冷却した。水酸化アンモニウム(3N、90mL)を添加した。混合物をセライトを通してろ過した。メチルTHF(20mL)をろ過液に添加した。有機層を、水酸化アンモニウム(3N、60mL)でさらに2回洗浄した。トルエンを、70−80℃の真空蒸留で除去することにより、油状物を得た。上記のように、塩を2−プロパノール中で作製する。
【0086】
方法4
トランス−N−メチル−2−(2−ヒドロキシフェニル)−3−(2−ブロモ−5−クロロフェニル)−ピロリジン(10g、27.3mmol)、CuCl(1.0g、10.1mmol)、炭酸カリウム(7.52g、54.4mmol)、N,N−ジメチルグリシン(2.2g、21.3mmol)およびジメチルホルムアミド(50mL)を、500mLフラスコに投入した。混合物を110−115℃で3−4時間加熱した。出発物質が2%未満になるまで、反応をHPLCで観察した。反応混合物を20℃に冷却した。トルエン(50mL)を、続いて3N NHOH水溶液(90mL)を添加して、20分間攪拌した。層を分離した。水層をトルエン(3×50mL)で洗浄した。合わせた有機層を3N NHOH(3×60mL)で洗浄した。トルエンを70−80℃の真空蒸留で除去することにより、油状物を得た。上記のように、塩を2−プロパノール中で作製する。
【実施例4】
【0087】
【化24】

【0088】
A:メチル−トリメチルシラニルメチル−アミン
加圧フラスコ(500ml)に、クロロメチルトリメチルシラン(100ml、716mmol)および40%メチルアミン水溶液(373ml、4.29mol)を投入した。反応物を85℃に6時間加熱すると、反応物は690mbar未満になった。反応物を20℃に冷却して、層を分離した。水層を5℃に冷却して、固体の水酸化カリウム(34g、0.607mol)を添加した。水層を、1:1のペンタン:t−ブチルメチルエーテル(200ml)で洗浄した。合わせた有機物を、真空下で約半分の量まで濃縮した。生成物を95−100℃で蒸留することにより、38グラム(50%)のメチル−トリメチルシラニルメチル−アミン(生成物は10%mol/molのMTBEを含有している。)を産生した。
H−NMR:(CDCl)0.00(9H,s,Si(Me))、0.61(1H,s,NH)、1.99(2H,s,CH)、2.42(3H,2,NMe)。
質量:M+1 118 実測値。
【0089】
B:N−メトキシメチル−N−トリメチルシリル−N−メチルアミン
冷却した(0℃)ホルムアルデヒド(水中に37%、8.5グラム)の溶液に、ゆっくりとメチル−トリメチルシラニルメチル−アミン(205g、175mmol)の溶液を添加した。反応混合物の温度は5℃未満であった。メタノール(14ml)を、続いて炭酸カリウム(12g)を添加した。1時間攪拌後、層を分離した。有機層に炭酸カリウム(2グラム)を添加して、有機物を2時間攪拌した。炭酸カリウムをろ過により除去して、生成物を45℃、20mbarで蒸留した。
H−NMR:(CDCl)0.00(9H,s,SiMe)、2.00(2H,s,CHSi)、2.30(3H,s,MeN)、3.25(3H,s,OMe)、3.88(2H,s,CHO)。
質量:M+1 162 実測値。
【実施例5】
【0090】
【化25】

【0091】
A+B:トランス−2−ブロモ−2’−アセトキシ−5’−クロロスチルベン
2−ブロモベンジルブロミド(25g、0.100mol)およびトルエン(25ml)を100℃に加熱した。次に、温度を116℃未満に保ちながら、トリエチルホスファイト(19.3ml、0.108mol)を30分かけて添加した。トルエンを蒸留しながら、混合物を115℃で2時間攪拌した。混合物を室温に冷却して、THF(37.5ml)で希釈した。KOtBu(30.5グラム、0.250mol)をTHF(176ml)に溶解して、−10℃に冷却した。(2−ブロモ−ベンジル)−ホスホン酸ジエチルエステル溶液を、5℃で添加した。次に、THF(62ml)中のクロロサリチルアルデヒド(17.2g、0.110mol)を、5℃で添加した。混合物を、−5℃から0℃で1時間攪拌した。反応が完了したとき、無水酢酸(28.3ml、0.301mol)を添加して、温度を20℃に昇温させた。反応は1時間で完了して、混合物を5℃に冷却した。次に、250mlの1N HClを素早く添加した。有機層を200mlのNaCl飽和溶液で洗浄した。有機層を、50℃の減圧下で蒸発させることにより、表題のスチルベンを25.8グラム(73%)産生した。
【0092】
【化26】

H−NMR(CDCl):2.38(3H,s,H−11);6.87(1H,d,H−9)、7.19+7.34(2×1H,2×t,H−2+H−3)、7.26(1H,d,H−6)、7.46(1H,d,H−8)、7.60(2H,dd,H−1+H−4)、7.68(1H,d,H−5)。
【0093】
C:トランス−N−メチル−2−(2−ブロモフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)−ピロリジン
トランス−2−ブロモ−2’−アセトキシ−5’−クロロスチルベン(26g、73mmol)を、33℃でトルエン(91ml)中でスラリー化した。トリフルオロ酢酸(200マイクロリットル)を添加した。N−メトキシメチル−N−トリメチルシリル−N−メチルアミン(14.5g、89.7mmol)を、90分かけて反応混合物に添加した。添加後、反応物を水(25ml)で洗浄した。真空蒸留により、トルエンを除去した。エタノール(30ml)を添加して、減圧下で除去した。油状物をメタノール(90ml)に溶解した。水酸化カリウム(25mlの水中に5グラム)を添加した。生成物は直ちに沈殿し始めた。30分後、3N HCl(8ml)でpHを8−9に調節した。水(10ml)を添加して、10℃未満に冷却した。ろ過して、1:1のメタノール:水で洗浄した。真空下で26.0g(96%収率)に乾燥した。HPLCによる純度は98% a/aである。
H−NMR(MeOD):2.50(3H,s,CH)、2.52+3.09+3.10+3.45(4×1H,t,dd,t,t,Ha−5,Hb−5,Ha−6,Hb−6)、3.62+4.14(2×1H,2×m,H4+H7)、6.72(1H,d,H−1)、6.94(1H,d,H−3)、6.98(1H,d,H−2)、7.10+7.35(2×1H,2×t,H−10+H−9)、7.52+7.58(2×1H,2×d,H−8+H−11)。
【0094】
D+E:アセナピン
実施例1または3のステップD+Eを参照されたい。
【実施例6】
【0095】
【化27】

【0096】
A:5−クロロ−2−フルオロ−ベンジルブロミド
5−クロロ−2−フルオロ−トルエン(100g、692mmol)を、20℃で酢酸エチル(300ml)に溶解した。この溶液に、N−ブロモスクシンイミド(147.7g、830mmol)およびジベンゾイルペルオキシド(2g、8.25mmol)を添加した。混合物を、80℃で3時間攪拌した。ヘプタン(300ml)を添加して、溶液を0℃に冷却すると、スクシンイミドが沈殿する。ろ過およびヘプタンによる洗浄後、残渣を水(1500ml)で洗浄した。ろ過液を真空下で濃縮して乾燥することにより、162グラムの粗製5−クロロ−2−フルオロ−ベンジルブロミドを産生した。粗製生成物(141グラム)の精製を99℃、33mbarでの真空蒸留により実施して、この5−クロロ−2−フルオロ−ベンジルブロミド(99グラム、75%)。GCによる純度は87.1% a/aである。
H−NMR(CDCl):4.44(2H,d,CH)、7.01(1H,t,H3)、7.26(1H,m,H4)、7.38(1H,m,H6)
【0097】
B:(5−クロロ−2−フルオロ−ベンジル)−ホスホン酸ジエチルエステル
5−クロロ−2−フルオロ−ベンジルブロミド(630g、GCによる純度72% a/a、2.42mol)を100℃に加熱して、トリエチルホスファイト(403g、2.42mol)をゆっくりと1時間45分で添加した。混合物を、100℃で2時間攪拌して、エチルブロミドがNMRで検出できなくなるまでゆっくりとTHF(350ml)を添加して留去した。粗製の(5−クロロ−2−フルオロ−ベンジル)−ホスホン酸ジエチルエステルを単離するために、反応混合物を室温に冷却することにより、681グラム(100%)を産生した。
【0098】
C:トランス−5−クロロ−2−フルオロ−2’−ヒドロキシスチルベン
【0099】
【化28】

【0100】
カリウムtert−ブトキシド(1088g、9.69mol)のテトラヒドロフラン溶液(7l)に、0℃、17分で、テトラヒドロフラン(3l)中の未精製の(5−クロロ−2−フルオロ−ベンジル)−ホスホン酸ジエチルエステル(680g、2.42mmol)を添加した。この反応混合物に、サリチルアルデヒド(325g、2.66mol)のテトラヒドロフラン(3l)溶液を1時間かけて添加した。0℃で3時間攪拌した後、反応は完了した。0℃でHCl(2M、3l)を添加して、酸性溶液を得た(pH=4.5)。20℃で、有機相を単離して、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して減圧下で濃縮した。ヘプタン(2×700ml)と同時蒸発することにより、粗製のトランス−5−クロロ−2−フルオロ−2’−ヒドロキシスチルベンを得た。この粗製物を、7.5L中のMTBE(6.5L)およびNaOH(238g)を添加することにより精製した。3.5時間攪拌した後に、有機層をHCl(1M、5L)で、続いて飽和NaCl溶液(4L)で洗浄した。減圧下で濃縮することで、トランス−5−クロロ−2−フルオロ−2’−ヒドロキシスチルベン(460グラム、69%)を得る。GCによる純度は84% a/aである。
H−NMR(CDCl):6.79(1H,dd,H1)、6.95(1H,m,H3)、6.99(1H,dd,H7)、7.15(1H,m,H6)、7.17(1H,m,H2)、7.21(1H,d,H8)、7.44(1H,d,H9)、7.54(1H,dd,H4)、7.61(1H,dd,H5)
質量分析:[M+C=289および291[M+C=277および279、[M+H]=249および251、(Cl同位体実測値)、および[MH−HCl]=213。
【0101】
D:トランス−N−メチル−2−(2−フェノール)−3−(2−フロオロ−5−クロロフェニル)−プリロリジン
【0102】
【化29】

【0103】
トリメチルアミン−N−オキシド二水和物を使用する方法1
トランス−5−クロロ−2−フルオロ−2’−ヒドロキシスチルベン(451グラム、1.81mol)のテトラヒドロフラン(2.5L)溶液に、5℃でトリメチルアミン−N−オキシド二水和物(272.9g、2.45mol)を添加した。次に、温度を5℃に維持しながら、シクロヘキサン中のリチウムジイソプロピルアミド(2M、3.6l、3.62mol)を1時間の間に添加した。反応が完了した後、−10℃、30分で飽和NHCl(1.8l)を添加した。有機溶媒を蒸発させて、pH10の得られた混合物を、酢酸エチル(2l)で抽出した。減圧下で濃縮することにより、粗製のトランス−N−メチル−2−(2−フェノール)−3−(2−フロオロ−5−クロロフェニル)−プリロリジンを得た。この粗製物を80℃でエタノール/水(855mL、3/7 v/v)に溶解して、0℃まで徐冷し、トランス−N−メチル−2−(2−フェノール)−3−(2−フロオロ−5−クロロフェニル)−ピロリジンを再結晶した。結晶を単離して、減圧下で乾燥した後、表題のピロリジン(207グラム、40%)を得た。GCによる純度は98.2% a/a。
H−NMR(CDCl):2.44(1H,m,H5)、2.54(1H,s,CH)、2.90(1H,t,H6)、3.19(1H,d,H6)、3.33(1H,m,H7)、3.56(1H,m,H5)、3.61(1H,m,H4)、6.65(1H,m,H10)、6.79(1H,dd,H11)、6.90(1H,dd,H8)、6.98(1H,m,H1)、7.12(1H,m,H9)、7.17(1H,dd,H3)、7.18(1H,m,H2)
【0104】
トリメチルアミン−N−オキシド無水物を用いる方法2
トルエンを用いた水の同時蒸発により、トリメチルアミン−N−オキシド無水物を、トリメチルアミン−N−オキシド二水和物からインシチュで調製した。トランス−5−クロロ−2−フルオロ−2’−ヒドロキシスチルベン(80g、320mmol)のテトラヒドロフラン溶液(440ml)に、トリメチルアミン−N−オキシド無水物(48g、640mmol)を5℃で添加した。次に、シクロヘキサン中のリチウムジイソプロピルアミド(1.5M、853ml、1.28mol)を、温度を5℃に維持しながら、5h30時間の間に添加した。反応の完了後、飽和したNHCl(320ml)を、−10℃、30分で添加した。有機溶媒を蒸発させて、得られたpH10の混合物を酢酸エチル(355ml)で抽出した。減圧下で濃縮することにより、粗製のトランス−N−メチル−2−(2−フェノール)−3−(2−フロオロ−5−クロロフェニル)−プリロリジンを得た。この粗製物を80℃でエタノール/水(855mL、3/7 v/v)に溶解して、0℃まで徐冷し、トランス−N−メチル−2−(2−フェノール)−3−(2−フロオロ−5−クロロフェニル)−プリロリジンを再結晶した。結晶を単離して、減圧下で乾燥した後、表題のピロリジン(90.2g、92%)を得た。GCによる純度、93.5% a/a。
H−NMR(CDCl):2.44(1H,m,H5)、2.53(1H,s,CH3)、2.90(1H,t,H6)、3.19(1H,d,H6)、3.34(1H,m,H7)、3.56(1H,m,H5)、3.61(1H,m,H4)、6.64(1H,m,H10)、6.79(1H,dd,H11)、6.90(1H,dd,H8)、6.98(1H,m,H1)、7.12(1H,m,H9)、7.17(1H,dd,H3)、7.18(1H,m,H2)
質量分析:[M+C=346および348、[M+C=334および336、[M+H]=306および308(Cl同位体実測値)。
【0105】
EおよびF アセナピンマレイン酸塩
【0106】
【化30】

【0107】
N−メチルピロリドン(2l)中のトランス−N−メチル−2−(2−フェノール)−3−(2−フロオロ−5−クロロフェニル)−プリロリジン(205g、0.67mol)および水酸化カリウム(44g、0.78mol)の混合物を、窒素下で150℃、6時間加熱した。反応の完了後、混合物を20℃に冷却した。水(7.2l)を添加して、酢酸エチル(2×3l)で抽出した。有機層を水および飽和NaClで洗浄して、減圧下で濃縮することにより、粗製のアセナピンを187グラムの収量で得た。HBr塩として結晶化することにより、精製を実施した。粗製のアセナピンをアセトン(930ml)中に溶解した。ゆっくりと水(77ml)中の47%HBrを添加した。懸濁液を36℃に加熱して、透明な溶液を得た。冷却後、ろ過および50℃の真空下で乾燥して、アセナピン臭化物塩を143グラムの収率(58%)で単離した。GCによる純度は94.8%である。Org5222を得るために、臭化物塩(134グラム、0.36mol)を、水(700ml)の28%アンモニア水溶液で中和した。遊離塩基を酢酸エチル(2×500ml)で抽出して、有機層を飽和NaClで洗浄した。減圧下で濃縮することにより、遊離塩基として、104グラムのアセナピンを産生した。遊離塩基をエタノール(208ml)に溶解して、60℃に加熱した。マレイン酸(46.5グラム、0.40mol)を添加して、混合物を−15℃で2時間攪拌すると、マレイン酸塩が沈殿する。結晶をろ過により集めて、エタノール(208ml)およびジイソプロピルエーテル(208ml)で洗浄した。所望の多形体を得るために、単離された結晶を55℃でエタノール(180ml)および水(20ml)に溶解した。温度を20℃に下げて、所望の多形を48時間かけてゆっくりと沈殿させた。結晶をろ過して、エタノール(100ml)で洗浄し、40℃の減圧下で乾燥した。収量92グラム(36%)。HPLCによる純度、99.8% a/a。
H−NMR(MeOD):3.14(3H,s,CH)、3.79+4.08(2×2H,2×m,H2+H5)、3.93(2H,m,H4+H7)、6.24(2H,s,マレイン酸のビニル性H’)、7.35−7.13(7H,m,芳香族 H’)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのアセナピン、
【化31】

または薬学的に許容可能なアセナピンの塩を調製する方法であって、式II
【化32】

のE−スチルベン誘導体をアゾメチンイリドと反応することにより、式III
【化33】

のトランス−ピロリジン誘導体を取得し、
式IIIのトランス−ピロリジン誘導体から、保護基が存在する場合は、これを除去し、続いて、分子内閉環反応をもたらす条件下で処理することにより式Iの化合物を産生し、ならびに場合により式Iの化合物を薬学的に許容可能な該化合物の塩に変換する
(式中、RはF、BrまたはIであり、
およびRは異なっており、それぞれHおよびClから選択され、ならびに
はHまたはヒドロキシ保護基である。)
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
がBrまたはIである、請求項1の方法。
【請求項3】
がBrであり、RがHであり、ならびにRがClである、請求項2の方法。
【請求項4】
アゾメチンイリドが、トリメチルアミン−N−オキシドまたはN−メトキシメチル−N−トリメチルシリルメチル−N−メチルアミンからインシチュで生成される、請求項1から3のいずれか一項の方法。
【請求項5】
アゾメチンイリドが、リチウムジイソプロピルアミドまたはリチウムテトラメチルピペリジドと組み合わせたトリメチルアミン−N−オキシドからインシチュで生成される、請求項4のいずれか一項の方法。
【請求項6】
アゾメチンイリドが、トリフルオロ酢酸の補助により、N−メトキシメチル−N−トリメチルシリルメチル−N−メチルアミンから生成される、請求項4または5の方法。
【請求項7】
式I
【化34】

の化合物、または薬学的に許容可能な該化合物の塩を調製する方法であって、(E)−2−(2−ブロモスチリル)−4−クロロフェニルアセテート
【化35】

を、トリフルオロ酢酸の補助で、N−メトキシメチル−N−トリメチルシリルメチル−N−メチルアミンからインシチュで生成したアゾメチンイリドと不活性溶媒中で反応することにより、トランス−N−メチル−2−ブロモフェニル−3−(2−アセトキシ−5−クロロフェニル)−ピロリジン
【化36】

を取得し、
該ピロリジン誘導体を処理してアセチル基を除去し、続いて、銅(I)塩の補助で分子内閉環反応をもたらすウルマン条件下で処理することにより式Iの化合物を取得し、ならびに場合により式Iの化合物を薬学的に許容可能な該化合物の塩に変換する方法。
【請求項8】
式IIIA
【化37】

のトランス−ピロリジン誘導体、
またはトランス−ピロリジン誘導体の塩
(式中、RはF、BrまたはIであり、ならびに
およびRは異なっており、それぞれHおよびClから選択される。)。
【請求項9】
トランス−N−メチル−2−ブロモフェニル−3−(2−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)−ピロリジンである、請求項8のトランス−ピロリジン誘導体。
【請求項10】
式II
【化38】

のE−スチルベン誘導体
(式中RはF、BrまたはIであり、
およびRは異なっており、それぞれHおよびClから選択され、ならびに
はHまたはヒドロキシ保護基である。)。
【請求項11】
化合物N−メトキシメチル−N−トリメチルシリルメチル−N−メチルアミン。

【公表番号】特表2010−503611(P2010−503611A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517030(P2009−517030)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005876
【国際公開番号】WO2008/003460
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(398057282)ナームローゼ・フエンノートチヤツプ・オルガノン (93)
【Fターム(参考)】