説明

アダプタ及びアダプタ付きシリンジ

【課題】容易に成形でき、且つ、径の小さいシリンジへの組み立てが簡単なアダプタ及びアダプタ付きシリンジを提供する。
【解決手段】アダプタ1は、筒体31と、接続体32と、シリンジ本体側接合部35とを備えている。筒体31は、シリンジ2のシリンジ本体11を内包する。接続体32は、筒体31の一端に筒体31と同軸に設けられ、シリンジ2に設けられたノズル部15の周囲を囲むロック筒36と、ロック筒36の内面に形成されたロック用ねじ部37とを有している。シリンジ本体側接合部35は、筒体31の内面に設けられており、シリンジ本体11に接合される。そして、接続体32におけるロック筒36の外径は、筒体31の外径と略等しくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用具に設けられたメスコネクタにシリンジを接続するためのアダプタ及びそのアダプタを用いたアダプタ付きシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、シリンジ、注射針、カテーテル、輸液セット等の各種医療用器具を互いに接続して使用することがある。この接続の方法には、例えば、一方の医療用器具の端部に設けられたメスコネクタの内腔部に、他方の医療用器具の端部に設けられたオスコネクタのテーパ部を嵌合させる方法がある。
【0003】
また、メスコネクタの中には、その外周面にネジ溝(メス側螺合部)が形成されたものがある。このようなメスコネクタに接続されるオスコネクタを備えた医療用器具としては、例えば、特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された医療用器具のオスコネクタには、メスコネクタのネジ溝に螺合するネジ山(オス側螺合部)が形成された接続部材(ロックアダプタ)が設けられている。
【0004】
一方、医療用器具のうちのシリンジには、径の小さい(細い)ものがある(例えば、非特許文献1参照)。このような径の小さいシリンジは、小容量であり、例えば1mL程度の薬剤を投与する場合に用いられる。そして、径の小さい小容量のシリンジにおいても、医療用器具の端部に設けられたメスコネクタに接続させて使用することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平2−193号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】2007−2008テルモ製品案内、テルモ株式会社、2008年1月、p41−42
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、メスコネクタのネジ溝に螺合するロックアダプタを、径の小さいシリンジの先端部に設けると、ロックアダプタの径がシリンジの外径よりも大きくなる。そのため、ロックアダプタを備えたシリンジの組み立て時における目盛りの印刷が煩雑で困難なものになるとう問題があった。そのため、シリンジの肉厚を厚くして、シリンジの外径とロックアダプタの外径とを略等しくすることも考えられるが、肉厚の厚いシリンジの成形は困難である。
【0008】
本発明は、上述の点に鑑み、容易に成形でき、且つ、径の小さいシリンジへの組み立てが簡単なアダプタ及びアダプタ付きシリンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のアダプタは、筒体と、接続体と、シリンジ本体側接合部とを備えている。
筒体は、シリンジのシリンジ本体を内包する。
接続体は、筒体の一端に筒体と同軸に設けられ、シリンジに設けられたノズル部の周囲を囲むロック筒と、ロック筒の内面に形成されたロック用ねじ部とを有している。
シリンジ本体側接合部は、筒体の内面に設けられており、シリンジ本体に接合される。
そして、接続体におけるロック筒の外径は、筒体の外径と略等しくなっている。
【0010】
また、本発明のアダプタ付きシリンジは、シリンジと、このシリンジに取り付けられたアダプタとを備えている。
シリンジは、筒状のシリンジ本体と、シリンジ本体の一端に設けられたノズル部を有している。
また、アダプタは、筒体と、接続体と、シリンジ本体側接合部とを備えている。
筒体は、シリンジのシリンジ本体を内包する。
接続体は、筒体の一端に筒体と同軸に設けられ、シリンジに設けられたノズル部の周囲を囲むロック筒と、ロック筒の内面に形成されたロック用ねじ部とを有している。
シリンジ本体側接合部は、筒体の内面に設けられており、シリンジ本体に接合される。
そして、接続体におけるロック筒の外径は、筒体の外径と略等しくなっている。
【0011】
上記構成のアダプタ及びアダプタ付きシリンジでは、アダプタの筒体にシリンジのシリンジ本体が挿入される。このアダプタにおける筒体の外径は、ロック用ねじ部が形成されたロック筒の外径と略等しいため、容易にアダプタを成形することができる。
また、シリンジをアダプタの筒体に挿入し、シリンジ本体側接合部とシリンジ本体を接合するだけで簡単にアダプタ付きシリンジを組み立てることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記構成のアダプタ及びアダプタ付きシリンジよれば、容易に成形でき、且つ、径の小さいシリンジであっても簡単に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のアダプタ付きシリンジの第1の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】本発明のアダプタ付きシリンジの第1の実施の形態をシリンジとアダプタに分解した分解斜視図である。
【図3】本発明のアダプタ付きシリンジの第1の実施の形態の断面図である。
【図4】本発明のアダプタ付きシリンジの第1の実施の形態に係るシリンジ本体側接合部を示す断面図である。
【図5】本発明のアダプタ付きシリンジの第1の実施の形態に係るフランジ側接合部を示す断面図である。
【図6】本発明のアダプタ付きシリンジの第2の実施の形態を示す斜視図である。
【図7】本発明のアダプタ付きシリンジの第2の実施の形態に係るフランジ側接合部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のアダプタ及びアダプタ付きシリンジの実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0015】
1.第1の実施の形態
[アダプタ付きシリンジの構成例]
まず、本発明のアダプタ付きシリンジの第1の実施の形態について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、アダプタ付きシリンジの第1の実施の形態を示す斜視図である。
【0016】
図1に示すように、アダプタ付きシリンジ1は、シリンジ2と、このシリンジ2に固定されるアダプタ3から構成されている。このアダプタ付きシリンジ1は、医療用器具の端部に設けられたメスコネクタ(不図示)に接続可能になっている。
【0017】
[シリンジ]
次に、シリンジ2について、図2及び図3を参照して説明する。
図2は、アダプタ付きシリンジ1をシリンジ2とアダプタ3に分解した分解斜視図である。図3は、アダプタ付きシリンジ1の断面図である。
【0018】
図2及び図3に示すように、シリンジ2は、シリンジ本体11と、シリンジ本体11内に収納されたガスケット12と、ガスケット12に取り付けられたプランジャ13とを備えている。シリンジ本体11内には、薬剤が充填される。なお、薬剤をシリンジ本体11内に予め充填しておくと、シリンジ2は、いわゆるプレフィルドシリンジとなる。
【0019】
シリンジ本体11内に充填される薬剤としては、例えば、インフルエンザ等の感染症を予防する各種のワクチン、血液製剤、ブドウ糖等の糖質注射液、塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、抗生物質注射液等を挙げることができる。
【0020】
シリンジ本体11は、円筒状に形成されている。このシリンジ本体11の軸方向の一端(先端)には、ノズル部15が連続しており、他端(基端)には、フランジ16が設けられている。
シリンジ本体11の外径は、6〜7mmが好ましく、6.3〜6.9mmがより好ましい。また、シリンジ本体11の内径は、4〜6mmが好ましく、4.4〜5.1mmがより好ましい。
【0021】
ノズル部15は、シリンジ本体11よりも径の小さい筒体からなり、先端に向かうにつれて連続的に径が小さくなるテーパ状に形成されている。このノズル部15は、医療用器具の端部に設けられたメスコネクタ(不図示)の内腔部に嵌合される。つまり、ノズル部15は、医療用器具の端部に設けられたメスコネクタに接続可能なオスコネクタになっている。
【0022】
シリンジ本体11の周面には、充填された薬剤の量を確認するための目盛り(不図示)が形成されている。この目盛りは、例えば、シリンジ本体11の外周面に印刷を施すことで形成される。
また、シリンジ本体11の先端における周縁には、周方向に連続する切欠き部11aが形成されている(図4参照)。この切欠き部11aには、アダプタ3の後述するシリンジ本体側接合部35が当接する。
【0023】
フランジ16は、シリンジ本体11の外周面から略垂直に突出する板状に形成されており、シリンジ本体11の軸方向に直交する平面16a,16bを有している。このフランジ16は、アダプタ3の後述する係合体33に係合される。
【0024】
フランジ16におけるシリンジ本体11側の平面16aには、突条部17が形成されている。この突条部17は、平面16aの周縁に設けられており、フランジ16の周方向に連続して延びる環状に形成されている。そして、突条部17には、周方向に連続する係合溝17a(図5参照)が設けられている。この係合溝17aには、アダプタ3の後述するフランジ側接合部43が係合される。
【0025】
シリンジ本体11、ノズル部15及びフランジ16の構成材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂や、ガラス材料を適用してもよい。なお、シリンジ本体11は、内部に充填された薬液を視認可能な透明または半透明であることが好ましい。
【0026】
ガスケット12は、略円柱状に形成されている。このガスケット12は、シリンジ本体11内に摺動可能に収納されており、シリンジ本体11の内周面に液密に密着しながら移動する。このガスケット12は、シリンジ本体11内の空間を仕切っており、シリンジ本体11内のガスケット12よりも先端側の空間及びノズル部15内の空間は、薬液が充填された液室になる。一方、シリンジ本体11内のガスケット12よりも基端側の空間には、プランジャ13が配置される。
【0027】
ガスケット12の底面には、プランジャ13の後述する接続突部22が挿入される凹部12aが設けられている。この凹部12aを形成するガスケット12の内面には、例えば、プランジャ13の接続突部22を螺合するためのねじ部が形成されている。
【0028】
ガスケット12の構成材料は、特に限定されないが、シリンジ本体11との液密性を良好にするために弾性材料で構成することが好ましい。この弾性材料としては、例えば、天然ゴム、イソブチレンゴム、シリコーンゴムなどの各種ゴム材料や、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等を挙げることができる。
【0029】
プランジャ13は、プランジャ本体21と、接続突部22と、フランジ片23とを備えている。
プランジャ本体21は、略棒状に形成されている。また、フランジ片23は、プランジャ本体21の基端に設けられている。このフランジ片23は、プランジャ本体21の周面から略垂直に突出するリング状に形成されている。
【0030】
接続突部22は、プランジャ本体21の先端に設けられており、プランジャ本体21の軸方向に突出している。この接続突部22は、螺合によりガスケット12と接続されている。そのため、接続突部22の外周面には、ガスケット12のねじ部に螺合されるねじ部が形成されている。なお、接続突部22とガスケット12との接続方法は、螺合に限定されるものではなく、例えば、嵌合や接着剤などの接続方法を採用することもできる。
【0031】
[アダプタ]
次に、アダプタ3について、図2〜図5を参照して説明する。
図4は、アダプタ3に設けられるシリンジ本体側接合部を示す断面図である。図5は、アダプタ3に設けられるフランジ側接合部を示す断面図である。
【0032】
図2及び図3に示すように、アダプタ3は、円筒状の筒体31と、筒体31の一端に設けられた接続体32と、筒体31の他端に設けられた係合体33とを備えている。これら筒体31、接続体32及び係合体33は、一体に形成されている。
【0033】
アダプタ3の構成材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂や、ガラス材料を適用してもよい。なお、アダプタ3は、内包するシリンジ2のシリンジ本体11を視認可能な透明または半透明であることが好ましい。
筒体31の外径は、9〜11mmが好ましく、9.1〜10.4mmがより好ましい。また、筒体31の内径は、6〜8mmが好ましく、6.5〜7.5mmがより好ましい。
【0034】
筒体31は、シリンジ2のシリンジ本体11を内包する。この筒体31の内径は、シリンジ本体11の外径と略等しくなっている。
アダプタ3を透明な材料で形成することにより、シリンジ本体11に設けた目盛りを筒体31の外側から視認することができる。また、筒体31がシリンジ本体11を内包するため、シリンジ本体11に設けた目盛りに手指が直接触れることが無い。したがって、筒体31は、目盛りが磨耗して消えることを防止する。
【0035】
図4に示すように、筒体31の一端における内面には、筒体31をシリンジ本体11に接合するためのシリンジ本体側接合部35が設けられている。シリンジ本体側接合部35は、筒体31の半径内方向に突出する環状に形成されている。このシリンジ本体側接合部35は、シリンジ本体11の切欠き部11aに当接し、超音波融着又は加熱融着によりシリンジ本体11の先端に固着されている。
なお、シリンジ本体側接合部35は、接着剤によってシリンジ本体11に固着してもよい。
【0036】
接続体32は、筒体31と同軸の円筒状に形成されたロック筒36と、このロック筒36の内面に形成されたロック用ねじ部37から構成されている。ロック用ねじ部37は、接続対象となる医療用器具におけるメスコネクタ(不図示)の外周面に形成されたねじ部に嵌合可能となっている。
【0037】
ロック筒36は、シリンジ2のノズル部15の周囲を所定の間隔をあけて囲む。このロック筒36の軸方向の長さは、ノズル部15の軸方向の長さよりも短くなっている。そのため、ノズル部15の先端部は、ロック筒36の開口36aから突出した状態になっている。
【0038】
また、ロック筒36の外径は、筒体31の外径と略等しくなっている。そのため、アダプタ3の成形を容易なものにすることができる。また、筒体31の外周面とロック筒36の外周面との間に段差が生じないため、アダプタ3を取り扱いやすい形状にすることができる。
【0039】
図2及び図3に示すように、係合体33は、筒体31の外周面から略垂直に突出する板状に形成されており、筒体31の軸方向に直交する平面33a,33bを有している。この係合体33は、アダプタ付きシリンジ1を把持する際の把持部としての役割も有している。アダプタ付きシリンジ1を把持する場合は、例えば、人差し指と中指で筒体31の基端部を挟み込むようにして、両指を係合体33における筒体31側の平面33aに引っ掛ける。
【0040】
係合体33の平面33aには、複数の滑り止め用突部41が形成されている。一方、係合体33の平面33bには、収納用凹部42が形成されている。この収納用凹部42には、シリンジ2のフランジ16が収納される。収納用凹部42の平面形状は、フランジ16の平面形状と相似であり、その深さは、フランジ16の厚みと略等しくなっている。
【0041】
図5に示すように、収納用凹部42の底面には、係合体33をシリンジ2のフランジ16に接合するためのフランジ側接合部43が設けられている。このフランジ側接合部43は、収納用凹部42の底面から突出しており、係合体33の周方向に連続する環状に形成されている。このフランジ側接合部43は、フランジ16の突条部17に設けた係合溝17aに係合され、超音波融着又は加熱融着により突条部17に固着されている。
なお、フランジ側接合部43は、接着剤によってフランジ16の突条部17に固着してもよい。
【0042】
[アダプタ付きシリンジの組み立て方法]
次に、アダプタ付きシリンジ1の組み立て方法について説明する。
アダプタ付きシリンジ1を組み立てるには、まず、アダプタ3の筒体31の他端側からシリンジ2を挿入する。
これにより、シリンジ2におけるノズル部15の先端部が、アダプタ3に設けたロック筒36の開口36aから突出し、アダプタ3のシリンジ本体側接合部35がシリンジ本体11の切欠き部11aに当接する。また、シリンジ2のフランジ16がアダプタ3の係合体33に設けた収納用凹部42に収納され、係合体33のフランジ側接合部43がフランジ16の突条部17に設けた係合溝17aに係合される。
【0043】
次に、シリンジ本体側接合部35をシリンジ本体11の先端に超音波融着により固着し、フランジ側接合部43をフランジ16の突条部17に超音波融着により固着する。これにより、アダプタ3とシリンジ2が接合され、アダプタ付きシリンジ1の組み立てが完了する。
【0044】
本実施の形態のアダプタ付きシリンジ1では、アダプタ3の筒体31にシリンジ2のシリンジ本体11が内包される。筒体31の一端には、ロック用ねじ部37が形成されたロック筒36が設けられており、ロック筒の外径は、筒体の外径と略等しい。したがって、シリンジ本体11の径が小さくても、アダプタ3のロック筒36を容易に成形することができる。しかも、筒体31の外周面とロック筒36の外周面との間に段差が生じないため、アダプタ3を取り扱いやすい形状にすることができる。
【0045】
また、シリンジ本体側接合部35をシリンジ本体11に固着し、フランジ側接合部43をフランジ16の突条部17に固着するだけで簡単にアダプタ付きシリンジ1を組み立てることができる。
【0046】
上述した第1の実施の形態では、シリンジ本体側接合部35をシリンジ本体11の切欠き部11aに当接させて融着させる構成とした。しかしながら、本実施の形態に係るシリンジ本体側接合部としては、シリンジ本体の任意の位置に融着させることができる。なお、シリンジ本体の肉厚を考慮すると、リンジ本体側接合部は、シリンジ本体の先端部に融着することが好ましい。
【0047】
また、上述した第1の実施の形態では、フランジ側接合部43をシリンジ2のフランジ16に設けた突条部17に融着させる構成とした。しかしながら、本実施の形態に係るフランジ側接合部としては、シリンジにおけるフランジの任意の位置に融着させることができる。例えば、係合体33に設けた収納用凹部42の側面にフランジ側接合部を設け、シリンジにおけるフランジの側部に融着させてもよい。
【0048】
2.第2の実施の形態
[アダプタ付きシリンジの構成例]
次に、本発明のアダプタ付きシリンジの第2の実施の形態について、図6及び図7を参照して説明する。
図6は、アダプタ付きシリンジの第2の実施の形態を示す斜視図である。図7は、アダプタ付きシリンジの第2の実施の形態に係るフランジ側接合部を示す断面図である。
【0049】
第2の実施の形態のアダプタ付きシリンジ51は、第1の実施の形態のアダプタ付きシリンジ1と同様の構成を備えている。アダプタ付きシリンジ51がアダプタ付きシリンジ1と異なるところは、アダプタ53の係合体63のみである。そのため、ここでは、係合体63について説明する。
【0050】
[アダプタ]
アダプタ53は、円筒状の筒体31と、筒体31の一端に設けられた接続体32と、筒体31の他端に設けられた係合体63とを備えている。これら筒体31、接続体32及び係合体63は、一体に形成されている。
【0051】
アダプタ53の構成材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂や、ガラス材料を適用してもよい。なお、アダプタ53は、内包するシリンジ2のシリンジ本体11を視認可能な透明または半透明であることが好ましい。
【0052】
係合体63は、筒体31の外周面から略垂直に突出する板状に形成されており、筒体31の軸方向に直交する平面63a,63bを有している。この係合体63は、第1の実施の形態の係合体33と同様に、アダプタ付きシリンジ51を把持する際の把持部となる。
【0053】
係合体63の平面63aには、複数の滑り止め用突部41が形成されている。一方、係合体63の平面63bには、複数のフランジ側接合部64が形成されている。図7に示すように、各フランジ側接合部64は、係合体63における平面63bの周縁部から略垂直に突出する立上り片64aと、この立上り片64aの先端に設けられた係合爪64bからなっている。
【0054】
フランジ側接合部64の立上り片64aは、シリンジ2におけるフランジ16の側部に当接し、係合爪64bは、フランジ16の平面16bに係合する。このように複数のフランジ側接合部64がシリンジ2のフランジ16に係合することにより、係合体63は、シリンジ2のフランジ16に接合される。
【0055】
[アダプタ付きシリンジの組み立て方法]
次に、アダプタ付きシリンジ51の組み立て方法について説明する。
アダプタ付きシリンジ51を組み立てるには、まず、アダプタ53の筒体31の他端側からシリンジ2を挿入する。
これにより、シリンジ2におけるノズル部15の先端部が、アダプタ53に設けたロック筒36の開口36aから突出し、アダプタ53のシリンジ本体側接合部35がシリンジ本体11の切欠き部11aに当接する。また、アダプタ3の係合体33に設けた複数のフランジ側接合部64がシリンジ2のフランジ16に係合される。その結果、アダプタ3とシリンジ2が接合され、アダプタ付きシリンジ51の組み立てが完了する。
【0056】
本実施の形態のアダプタ付きシリンジ51においても、第1の実施の形態のアダプタ付きシリンジ1と同様に、シリンジ本体11の径が小さくても、アダプタ53のロック筒36を容易に成形することができる。
【0057】
また、シリンジ本体側接合部35をシリンジ本体11の切欠き部11aに当接させ、係合体33に設けた複数のフランジ側接合部64をシリンジ2のフランジ16に係合させるだけで簡単にアダプタ付きシリンジ51を組み立てることができる。しかも、アダプタ付きシリンジ51の組み立てを特殊な工具や機械を用いずに行うことができるため、医療現場でシリンジ2とアダプタ3の組み立てを行うこともできる。
【0058】
上述した第2の実施の形態では、平面63bの周縁部から略垂直に突出する立上り片64aと、この立上り片64aの先端に設けられた係合爪64bからなるフランジ側接合部64により係合体63をシリンジ2のフランジ16に接合した。しかしながら、本発明に係るフランジ側接合部としては、シリンジのフランジが圧入されて嵌合する嵌合凹部にしてもよい。
【0059】
本発明は、上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施の形態では、アダプタ3(53)に係合体33(63)を設ける構成としたが、本発明に係るアダプタとしては、筒体31と、接続体32から構成してもよい。この場合は、筒体31の他端(接続体32とは反対側の端部)をフランジ側接合部とし、融着や接着剤等の固着方法によりシリンジのフランジに接合する。
また、筒体31の内面とシリンジ本体11の外周面との嵌合のみでシリンジ2とアダプタ3(53)とを固定するものであってもよい。
【0060】
また、上述した実施の形態では、アダプタ3(53)の筒体31の内径を、シリンジ本体11の外径と略等しくして、筒体31の内面とシリンジ本体11の外周面との間に間隙が生じないように構成した。しかしながら、本発明に係るアダプタの筒体としては、その内径がシリンジ本体の外径よりも大きければよく、筒体の内面とシリンジ本体の外周面との間に間隙が生じていてもよい。これにより、製造時に一つのサイズのアダプタに、容量の異なるシリンジを適選して用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1,51…アダプタ付きシリンジ、 2…シリンジ、 3,53…アダプタ、 11…シリンジ本体、 11a…切欠き部、 12…ガスケット、 13…プランジャ、 15…ノズル部、 16…フランジ、 17…突条部、 17a…係合溝、 21…プランジャ本体、 22…接続突部、 23…フランジ片、 31…筒体、 32…接続体、 33,63…係合体、 35…シリンジ本体側接合部、 36…ロック筒、 37…ロック用ねじ部、 41…滑り止め用突部、 42…収納用凹部、 43,64…フランジ側接合部、 64a…立上り片、 64b…係合爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジのシリンジ本体を内包する筒体と、
前記筒体の一端に前記筒体と同軸に設けられ、前記シリンジ本体の一端に設けられたノズル部の周囲を囲むロック筒と、前記ロック筒の内面に形成されたロック用ねじ部とを有する接続体と、
前記筒体の内面に設けられ、前記シリンジ本体に接合されるシリンジ本体側接合部と、を備え、
前記ロック筒の外径は、前記筒体の外径と略等しい
ことを特徴とするアダプタ。
【請求項2】
前記シリンジ本体側接合部は、融着により前記シリンジ本体に固着される
ことを特徴とする請求項1に記載のアダプタ。
【請求項3】
前記筒体の他端に設けられ、前記シリンジ本体の他端に設けられたフランジに接合されるフランジ側接合部を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアダプタ。
【請求項4】
前記筒体の他端に設けられ、前記シリンジの前記フランジが係合される係合体を備え、
前記フランジ側接合部は、前記係合体に設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載のアダプタ。
【請求項5】
前記フランジ側接合部は、融着により前記シリンジの前記フランジに接合される
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のアダプタ。
【請求項6】
筒状のシリンジ本体と、前記シリンジ本体の一端に設けられたノズル部とを有するシリンジと、
前記シリンジに取り付けられたアダプタと、を備え、
前記アダプタは、
前記シリンジ本体を内包する筒体と、
前記筒体の一端に前記筒体と同軸に設けられ、前記ノズル部の周囲を囲むロック筒と、前記ロック筒の内面に形成されたロック用ねじ部とを有する接続体と、
前記筒体の内面に設けられ、前記シリンジ本体に接合されるシリンジ本体側接合部と、を有し、
前記ロック筒の外径は、前記筒体の外径と略等しい
ことを特徴とするアダプタ付きシリンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−29724(P2012−29724A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169519(P2010−169519)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】