説明

アドミッタンス分光測定を用いた医療流体中の化合物の識別のためのシステム及び方法

本明細書では、流体の組成を判断するための、特に、静脈内流体のような医療流体が有する1つ又はそれよりも多くの成分の種類及び濃度を表すための装置、システム、及び方法を説明する。これらの装置、システム、及び方法は、流体の成分の種類及び濃度を識別するために流体試料から複数の複素アドミッタンス測定値を取得する。溶液の成分の全ての種類及び濃度は、同時かつ迅速に判断することができる。一部の変形では、アドミッタンス分光測定に加えて、光学的、熱的、化学的などを含む付加的な測定又は感知方式を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本特許出願は、2009年6月8日出願の米国特許仮出願出願番号第61/185,148号明細書(「特許仮出願のためのIV感知物(IV SENSING ITEMS FOR PROVISIONAL PATENT APPLICATION)」という名称)、2009年7月30日出願の米国特許仮出願出願番号第61/230,057号明細書(「IV流体の測定及び識別(MEASUREMENT AND IDENTIFICATION OF IV FLUIDS)」という名称)、2009年9月9日出願の米国特許仮出願出願番号第61/240,835号明細書(「薬剤の測定及び識別への複数センサの適用(APPLICATION OF MULTIPLE SENSORS TO MEASUREMENT AND IDENTIFICATION OF DRUGS)」という名称)、2009年11月18日出願の米国特許仮出願出願番号第61/262,155号明細書(「複数電極アドミッタンス分光測定の適用による医療流体中の成分の識別のためのシステム及び方法(SYSTEMS AND METHODS FOR THE IDENTIFICATION OF COMPONENTS IN MEDICAL FLUIDS THROUGH THE APPLICATION OF MULTIPLE ELECTRODE ADMITTANCE SPECTROSCOPY)」という名称)、及び2010年2月8日出願の米国特許仮出願出願番号第61/302,174号明細書(「薬剤溶液の測定及び識別のためのシステム及び方法(SYSTEMS AND METHODS FOR MEASUREMENT AND IDENTIFICATION OF DRUG SOLUTIONS)」という名称)に対する優先権を請求する。
【0002】
本出願はまた、2009年3月9日出願のPCT出願出願番号第PCT/US2009/001494号明細書(「静脈内流体モニタリング(INTRAVENOUS FLUID MONITORING)」という名称)にも関連する場合がある。
【0003】
これらの特許出願の全ては、その全部が引用によって本明細書に組み込まれている。
【0004】
〔引用による組込み〕
本出願において言及する全ての文献及び特許出願は、各個々の文献又は特許出願が引用によって組み込まれていることを具体的かつ個別に示しているかのように、その全部が引用によって本明細書に組み込まれている。
【0005】
説明する装置、システム、及び方法は、アドミッタンス分光測定を用いて水溶液中の1つ又はそれよりも多くの成分、又は一部の変形では全ての成分の種類(identity)及び濃度を判断するのに使用することができる。特に、本明細書では、アドミッタンス分光測定を用いて、静脈内薬剤溶液の成分の種類及び濃度を判断するための装置、システム、及び方法を説明する。
【背景技術】
【0006】
患者に与えられる薬品における過誤は、医療サービスの供給に関連する重大で潜在的に回避可能な問題として認識される。
【0007】
薬品過誤は、毎年7,000件の死亡の原因となっていると推定され、薬剤有害事象は、各年で770,000件を超える損傷及び死亡をもたらしている。意図しない薬剤事象を受ける患者は、そのような間違いを受けなかった患者よりも平均で8日から12日長く病院に留まる。2つの最近の研究、すなわち、コロラド及びユタに実施されたもの及びニューヨークに実施された別のものは、有害事象が、入院加療のうちのそれぞれ2.9パーセントと3.7パーセントとにおいて発生していることを明らかにした。
【0008】
有意な害(第4級又は第5級)をもたらす全ての薬品過誤の35%までが輸液装置に起因すると考えられる。一般的に、間違いは、不正な輸液パラメータを手動でプログラムすること、及び正しい患者が正しい投薬を受けることを保証し損ねることからもたらされる。最も一般的な過誤は、装置内への送出速度、薬剤、及び薬剤投与量のような輸液パラメータを手動でプログラムすることである。
【0009】
残念ながら、現時点では、様々な未知の静脈内流体が患者に供給される際にこれらの流体の種類と濃度(従って、投与量)の両方を確実に判断することができる市販のいかなる装置も存在しない。
【0010】
薬剤の存在又はその濃度を検証するためのシステムは提案されているが、これらのシステムの殆どが、専ら光学法(光学分光測定)を拠り所とする。例えば、Allgeyer他に付与されたUS6,847,899は、IV溶液中の薬品を識別するための分光測定分析装置を説明している。類似のシステムは、Poteet他に付与されたUS7,154,102(蛍光分光測定(florescence spectroscopy))、Potuluri他によるPCT/US2007/087062及びPCT/US2006/036612(光学分光測定による固体薬剤の種類の検証(verification of solid drug identity by optical spectroscopy))、並びにRzasa他に付与されたUS7,317,525に説明されている。
【0011】
これらのシステムは、分光測定分析を拠り所とするので、一般的に光学系に固有の制約を欠点とする。これらの制約は、化合物、特に複数の成分を有する化合物の混合物の間で区別を付ける上での限られた機能、並びに異なる化合物の濃度を確実に区別することの難しさを含む場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】US6,847,899
【特許文献2】US7,154,102
【特許文献3】PCT/US2007/087062
【特許文献4】PCT/US2006/036612
【特許文献5】US7,317,525
【特許文献6】US3,286,992
【特許文献7】US4,601,820
【特許文献8】US5,992,643
【特許文献9】PCT/US2009/001494
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Walton C、Gergely S、Economides AP著「プラチナペースメーカー電極:電極−組織界面インピーダンスの発生源と効果(Platinum pacemaker electrodes: origins and effects of the electrode−tissue interface impedance)」、Pacing Clin.Electrophysiol、1987年、10、87〜99ページ
【非特許文献2】Helmholtz H.著「Studien uber electrische Grenzschichten. Annalen der Physik und Chemie」、1879年、243(7):337〜382ページ、
【非特許文献3】P.E.Bocque翻訳「電気境界層の研究(Studies of electric boundary layers)」、Bull.Dep.Engineering Research Univ.Mich.33、5〜47ページ(1951年)
【非特許文献4】Oh他著「バイオセンサ用途のためのナノ間隙電極による電極分極効果の最小化(Minimization of electrode polarization effect by nanogap electrodes for biosensor applications)」、MEMS−03京都マイクロ電気機械システムIEEE第16回年次国際会議(2003年1月19〜23日開催)会報52〜55ページ
【非特許文献5】Sing−Tze Bow著「パターン認識及び画像処理(Pattern Recognition and Image Preprocessing)」、2002年
【非特許文献6】M.S.Nixon、A.S.Aguado著「特性抽出及び画像処理(Feature Extraction and Image Processing)」、2002年
【非特許文献7】D.Maltoni、D.Maio、A.K.Jain、S.Prabhakar著「フィンガプリント認識(Handbook of Fingerprint Recognition)」、2002年
【非特許文献8】Gonzalez、Ramos、Green、Castellanos、及びMorgan著「マイクロ電極上の電解質中に不均一ac電界によって誘発される流体流動、ii.線形二重層分析(Fluid flow induced by nonuniform ac electric fields in electrolytes on microelectrodes.ii.a linear double−layer analysis)」、Phys Rev E Stat Phys Plasmas Fluids Relat Interdiscip Topics、第61巻第4号パートB、4019〜4028ページ、2000年4月
【非特許文献9】Green、Ramos、Gonzalez、Morgan、及びCastellanos著「マイクロ電極上の電解質中に不均一ac電界によって誘発される流体流動、i.実験的測定(Fluid flow induced by nonuniform ac electric fields in electrolytes on microelectrodes.i.experimental measurements)」、Phys Rev E Stat Phys Plasmas Fluids Relat Interdiscip Topics、第61巻第4号パートB、4011〜4018ページ、2000年4月
【非特許文献10】N.G.Green、A.Ramos、A.Gonzalez、H.Morgan、及びA.Castellanos著「マイクロ電極上の電解質中に不均一ac電界によって誘発される流体流動、iii.流線の観察及び数値シミュレーション(Fluid flow induced by nonuniform ac electric fields in electrolytes on microelectrodes.iii.observation of streamlines and numerical simulation)」、Phys Rev E Stat Phys Plasmas Fluids Relat Interdiscip Topics、第66巻第2号パート2、026305ページ、2002年8月
【非特許文献11】P.Suresh Kumar他著「水中の微量亜硝酸塩の検出に使用される光ファイバエバネッセント波センサ(A fibre optic evanescent wave sensor used for the detection of trace nitrites in water)」、2002年J.Opt.A:Pure Appl.Opt.4、247〜250ページ
【非特許文献12】Potyrailo他著「マルチモード光ファイバに基づく近紫外エバネッセント波吸収センサ(Near−Ultraviolet Evanescent−Wave Absorption Sensor Based on a Multimode Optical Fiber)」、Anal.Chem.、1998年、70(8)、1639〜1645ページ、DOI:10.1021/ac970942v
【非特許文献13】H.Bruun著「熱線流速計:原理及び信号分析(Hot−wire anemometry:principles and signal analysis)」、Oxford University Press、米国、1995年
【非特許文献14】P.Libby及びJ.Way著「ヘリウム−空気混合物中で速度及び濃度を測定するための熱線プローブ(Hot−wire probes for measuring velocity and concentration in helium−air mixtures)」、AIAA Journal 第8巻第5号、976〜978ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本明細書では、複数の電気アドミッタンス測定を用いて静脈内溶液のような医療溶液が有する1つ又はそれよりも多くの成分の種類と濃度の両方を判断するアドミッタンス分光測定装置を説明する。アドミッタンス分光測定は、他の状況、主に材料の特徴抽出に関する科学的研究、特に、誘電体、半導体、電解質、並びにこれらのものと金属との界面及び互いの界面の特徴抽出を含む固体材料に関する科学的研究においてこれまでに説明されてきたが、今回のものは、医療流体の種類及び濃度を判断することへのアドミッタンス分光測定の最初の成功した応用であると本発明者は考える。アドミッタンス分光測定に基づくセンサは、クロマトグラフィー検出器及びpHセンサ、酵素センサ、血中グルコースセンサ、並びにウレアーゼセンサを含む。しかし、これらのセンサのうちのいずれも、水溶液中の未知の成分の種類及び濃度を判断することができない。
【0015】
本明細書に説明する装置、システム、及び方法は、上述の問題の一部又は全てに対処することができ、かつ溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の正確で信頼性の高い判断のためのシステム、装置、及び方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書では、アドミッタンス分光測定を用いて流体(又は溶液)の成分を判断するためのシステム、装置、及び方法を説明する。特に、本明細書に説明する装置、システム、及び方法は、流体が有する1つ又はそれよりも多く(又は全て)の成分の種類、濃度、又は種類と濃度を判断するのに有用であるとすることができる。溶液は、水溶液(水性流体)とすることができる。例えば、溶液は、静脈内流体、硬膜外流体、又は非経口流体などのような医療流体とすることができる。この場合、流体の成分は、薬剤とすることができる。一般的に、流体の成分は、イオン、分子、高分子、たんぱく質などを含む(しかし、これらに限定されない)あらゆる化合物とすることができる。
【0017】
本明細書に説明するアドミッタンス分光測定システム、装置、及び方法の特質に起因して、成分の全てが有する種類及び濃度は、同じアドミッタンス分光分析「フィンガプリント」から判断することができる。一般的に、アドミッタンスフィンガプリントは、流体と様々な電極の間の面相互作用が異なる流体に露出される複数の異なる電極から得られる複数の複素インピーダンス測定値を含む。例えば、面が異なる材料で作られるか、又は異なる幾何学形状(サイズを含む)を有する場合には、異なる電極(又は電極対)の面相互作用は異なることになる。異なる面相互作用を発生させるために、面を被覆、ドープ、又は処理することができる。
【0018】
例えば、本明細書では、第1の面を溶液と溶液の境界層が第1の面上に形成されるように接触させる段階と、境界層における第1の面と溶液中の化合物又は化合物の混合物との間の面相互作用を判断するために第1の面を調査する段階と、面相互作用に基づいて1つ又はそれよりも多くの化合物の種類及び濃度を判断する段階とを含む溶液中の化合物又は化合物の混合物の種類及び濃度を判断する方法を説明する。
【0019】
本方法は、面相互作用及び溶液のバルク性質に基づいて1つ又はそれよりも多くの化合物の種類及び濃度を判断する段階を含むことができる。
【0020】
一部の変形では、本方法は、第2の面を溶液と接触させる段階を含む。面(例えば、電極面)は、溶液中に浸漬することができる。例えば、第1の面を溶液と接触させる段階は、第1の面を水溶液中で接触させる段階を含むことができる。第1の面を溶液と接触させる段階は、第1の面を静脈内薬剤溶液、又は非経口溶液(非経口薬剤溶液又は全体非経口人工栄養剤等)、又はいずれかの他の医療溶液と接触させる段階を含むことができる。
【0021】
面は、電極とすることができる。例えば、第1の面は、電極の非反応性面を含むことができる。面には、被覆、処理、又は粗化などを行うことができる。面は、結合活性剤(例えば、結合剤)(抗体、荷電要素等)を含むことができる。
【0022】
調査段階は、エネルギを印加して面相互作用を判断する段階を含むことができる。適切なエネルギ(例えば、一般的に低エネルギ)で適用されるアドミッタンス分光測定は、平衡状態の面相互作用を乱すことなく流体と電極面の間の面相互作用を調査又は検査するのに使用することができる。平衡状態にある特定の電極面と特定の溶液の間の面相互作用は、特定の電極面と溶液(例えば、溶液中の成分及び担体溶液)の特質との特徴を有する。電極面が既知である場合には、溶液の(未知の)特質を判断することができる。例えば、調査は、電気信号を第1の面に印加して、複素アドミッタンスを測定する段階を含むことができる。この場合、調査段階は、複数の電気信号を印加して、各信号における複素アドミッタンスを測定する段階を含むことができる。特に、調査段階は、溶液と電極面の間の面相互作用を維持する方式で実施することができる。例えば、調査段階は、電気化学反応に対する閾値よりも低い電気信号を印加する段階を含むことができる。調査段階は、第1の面上の境界層の動的平衡を乱さないように実施することができる。例えば、面相互作用を調査するために印加されるエネルギは、面相互作用を妨害することに対する閾値よりも低いとすることができる(例えば、電極分極効果と呼ばれるもの範囲)。一部の変形では、この閾値は、約0.5Vの閾値と約1Vの閾値の間にある。
【0023】
溶液の成分を識別するために、判断する段階では、面の調査結果を既知の面相互作用と比較することを有用であるとすることができる。この場合、複数の異なる面(例えば、電極面)を調査すること、又は調査によって識別される面相互作用情報に加えて付加的な特徴データを含めることが有用であるとすることができる。例えば、判断する段階は、面相互作用のインジケータを面相互作用が記憶されたライブラリと比較して、溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の濃度及び種類を判断する段階を含むことができる。判断する段階は、面相互作用のインジケータを面相互作用が記憶されたライブラリと比較して、溶液中の化合物の全てが有する濃度及び種類を判断する段階を含むことができる。一部の変形では、溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類と濃度とを同時に判断する段階を含む。本明細書に説明する方法のいずれも、種類と濃度の両方を判断するのに使用することができる。一部の変形では、種類と濃度は、判断する段階において実質的に同時に判断することができる。
【0024】
同じく本明細書では、電極対を水溶液と水溶液の境界層が電極の一方の第1の面上に形成されるように接触状態に置く段階と、電極対の間に電気励起を印加して第1の面における複素アドミッタンスを判断する段階であって、印加電気励起が、第1の面における電気化学反応に対する閾値レベルよりも低い電圧をもたらす段階と、電極の間で測定された複素アドミッタンスに基づいて、水溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類、濃度、又は種類と濃度を判断する段階とを含む水溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類、濃度、又は種類と濃度を判断する方法を説明する。
【0025】
本明細書に説明する方法の一部の変形では、本方法は、複数の電流周波数において複素アドミッタンスを記録する段階も含む。上述のように、電極対は、異なる材料で作られた導電面を含む。本方法は、第3の電極を電極対の電極上に導電面を形成する材料とは異なる材料で形成されたこの第3の電極の第1の面上に水溶液の境界層が形成されるように水溶液と接触状態に置く段階を含むことができる。
【0026】
電気励起を印加する段階は、複数の周波数で電流を印加する段階を含むことができる。一部の変形では、電気励起を印加する段階は、流体中の熱変動エネルギよりも低いレベルで電気エネルギを印加する段階を含む。一般的に、電気励起を印加する段階は、第1の面上の境界層の平衡を乱さないレベルで励起を印加する段階を含むことができる。
【0027】
更に、判断する段階は、複素アドミッタンスを複素アドミッタンスのライブラリと比較して、水溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類、濃度、又は種類と濃度を判断する段階を含むことができる。判断する段階は、異なる周波数の複素アドミッタンスを複素アドミッタンスのライブラリと比較して、水溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類、濃度、又は種類と濃度を判断する段階を含むことができる。判断する段階は、異なる周波数の複素アドミッタンスを複素アドミッタンスのライブラリと比較して、水溶液中の化合物の全てが有する種類及び濃度を判断する段階を含むことができる。
【0028】
同じく本明細書では、アドミッタンス分光測定によって薬剤溶液の種類を判断するためのシステムを説明し、システムは、流体接触面を有する複数の電極を含むセンサと、センサの流体接触面からの印加に向けて複数の周波数で電気刺激を供給するように構成された信号発生器と、センサから複数の周波数の複素アドミッタンスデータを受信して、複素アドミッタンスデータを所定の複素アドミッタンスデータのライブラリと比較することにより、薬剤溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類、濃度、又は種類と濃度を判断するように構成されたプロセッサとを含む。
【0029】
一部の変形では、センサの電極の流体接触面は、上述のように、複数の異なる材料で形成される。センサの電極の流体接触面は、複数の異なる幾何学形状で形成することができる。一部の変形では、センサは、異なる材料、異なるサイズ、又は異なる材料と幾何学形状で形成された少なくとも3つの異なる流体接触面を含む。
【0030】
センサは、使い捨て(例えば、単回使用)として構成することができ、又は再使用可能(例えば、洗浄可能)とすることができる。複数のセンサは、ストリップ、シート、カートリッジ等として配置することができ、システム又は装置は、1つ又はそれよりも多くのセンサと逐次又は並行(例えば、異なる溶液の並行サンプリングを可能にする)のいずれかで係合するように構成することができる。
【0031】
センサの流体接触面は、所定の複素アドミッタンスデータと符合する所定の基準に対して較正することができる。例えば、センサは、面を形成する幾何学形状及び材料のある所定の許容範囲に較正される流体接触面を各々が有する電極を含むことができる。許容範囲は、標準(ライブラリ情報を判断するのに使用される標準電極に対応する)に基づくとすることができる。一部の変形では、システムは、電極面が許容範囲にあることを検証することができる。例えば、システムは、標準溶液を用いて最初の検査を実施することができる。
【0032】
一部の変形では、センサは、少なくとも6つの独立した流体接触面対を含む。
【0033】
システムは、センサから複素アドミッタンスデータを受信して、それをプロセッサに転送するように構成された信号受信機を含むことができる。一部の変形では、システムは、センサの流体接触面が薬剤溶液に接触するように薬剤溶液を受け取るように構成された測定セルを含む。センサは、測定セルの一部(例えば、底面、側面等)を形成することができる。
【0034】
信号発生器は、約1Hzから約1MHzの電流周波数を印加するように構成することができる。
【0035】
一部の変形では、システムは、溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類及び濃度を表示するように構成されたディスプレイを含む。プロセッサは、薬剤溶液の担体希釈剤の種類を判断するように更に構成することができる。担体希釈剤は、表示することもできる。
【0036】
システムは、信号発生器からの信号の印加とセンサからの複素アドミッタンスデータの取得とを調整するように構成されたコントローラを含むことができる。
【0037】
一般的に、プロセッサは、センサから受信した複素アドミッタンスデータと、所定の複素アドミッタンスデータのライブラリとの間の最も可能性が高い符合を判断するように構成された認識論理を含むことができる。認識論理は、所定の複素アドミッタンスデータのライブラリに基づいて学習させた適応ニューラルネットワークを含むことができる。所定の複素アドミッタンスデータのライブラリは、担体希釈剤中の複数の個々の化合物及び化合物の混合物に対して複数の周波数において測定された複素アドミッタンスデータを含むことができる。
【0038】
本明細書に説明するセンサのうちのいずれも、複素アドミッタンス電極ではない付加的な単一のセンサ(又は複数のセンサ)、又はセンサ要素を含むことができ、プロセッサは、複素アドミッタンスデータに加えて第2のセンサ要素からのデータを用いて、薬剤溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類と濃度の両方を判断するように構成することができる。例えば、第2のセンサ要素は、光センサとすることができる。一部の変形では、システムは、流量センサも含み、又は流量センサから情報を受信するように構成することができる。
【0039】
プロセッサは、センサから複数の周波数で複素アドミッタンスデータを受信し、複素アドミッタンスデータを所定の複素アドミッタンスデータのライブラリと比較することによって薬剤溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類と濃度とを同時に判断するように構成することができる。
【0040】
同じく本明細書では、流体接触面を有する複数の電極を含むセンサと、センサが有する1つ又はそれよりも多くの流体接触面からの印加に向けて複数の周波数で電流を供給するように構成された信号発生器と、センサが有する1つ又はそれよりも多くの流体接触面から複素アドミッタンスデータを受信するように構成された信号受信機と、信号発生器からの信号印加とセンサからの複素アドミッタンスデータ取得とを調整し、静脈内薬剤溶液のアドミッタンス分光分析フィンガプリントを作成するように構成されたコントローラと、アドミッタンス分光分析フィンガプリントを受信して、アドミッタンス分光分析フィンガプリントを担体溶液中の複数の既知の化合物及び化合物の混合物から複数の周波数及び既知の濃度で測定された複素アドミッタンスデータを含むアドミッタンス分光分析データのライブラリと比較することにより、静脈内薬剤溶液の種類、濃度、又は種類と濃度を判断するように構成されたプロセッサとを含むアドミッタンス分光測定によって静脈内薬剤溶液の種類、濃度、又は種類と濃度を判断するためのシステムを説明する。
【0041】
同じく本明細書では、アドミッタンス分光測定によって薬剤溶液の種類、濃度、又は種類と濃度を判断するためのベンチトップ薬剤溶液アナライザを説明し、アナライザは、流体接触面を有する複数の電極を含み、薬剤溶液の試料を受け取るように構成された測定セルと、測定セルが有する1つ又はそれよりも多くの電極対からの印加に向けて複数の周波数で電気励起を供給するように構成された信号発生器と、測定セルが有する1つ又はそれよりも多くの電極対から複素アドミッタンスデータを受信するように構成された信号受信機と、信号発生器からの信号印加と信号受信機からの複素アドミッタンスデータ取得とを調整して薬剤溶液のアドミッタンス分光分析フィンガプリントを作成するように構成されたコントローラと、アドミッタンス分光分析フィンガプリントを受信して、アドミッタンス分光分析フィンガプリントを担体溶液中の複数の既知の化合物及び化合物の混合物から複数の周波数及び既知の濃度で測定された複素アドミッタンスデータを含むアドミッタンス分光分析データのライブラリと比較することにより、薬剤溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類、濃度、又は種類と濃度を判断するように構成されたプロセッサとを含む。
【0042】
一部の変形では、アナライザは、信号発生器、信号受信機、及びコントローラを少なくとも部分的に封入するハウジングを含む。アナライザは、複数の単回使用測定セルを含むことができる。測定セルは、異なる材料、異なる幾何学形状、又は異なる材料と幾何学形状で形成された少なくとも3つの異なる流体接触面を含むことができる。測定セルの流体接触面は、アドミッタンス分光分析データのライブラリの複素アドミッタンスデータと符合する所定の基準に対して較正することができる。
【0043】
上述のように、信号発生器は、約1Hzから約1MHzの電流周波数を印加するように構成することができる。
【0044】
アナライザは、薬剤溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類及び濃度を表示するように構成されたディスプレイを含むことができる。
【0045】
プロセッサは、上述のプロセッサのうちのいずれかである。例えば、プロセッサは、薬剤溶液の担体溶液の種類を判断するように更に構成することができ、プロセッサによって使用される所定の複素アドミッタンスデータのライブラリは、担体溶液中の複数の個々の化合物及び化合物の混合物に対して複数の周波数において測定された複素アドミッタンスデータを含むことができる。
【0046】
測定セルは、第2のセンサ要素を更に含むことができ、プロセッサは、アドミッタンス分光分析フィンガプリントに加えて第2のセンサ要素からのデータを用いて、薬剤溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類と濃度の両方を判断するように構成することができる。第2のセンサ要素は、光センサを含むことができる。
【0047】
一部の変形では、プロセッサは、アドミッタンス分光分析フィンガプリントを受信して、薬剤溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類と濃度とを同時に判断するように構成される。
【0048】
同じく本明細書では、アドミッタンス分光測定を用いて静脈内流体が有する1つ又はそれよりも多くの成分の種類、濃度、又は種類と濃度を判断することによって静脈内流体の供給を制御するためのシステムを説明する。システムは、静脈内流体に接触するように構成された複数の複素アドミッタンス電極を有するセンサと、複数の複素アドミッタンス電極の間の印加に向けて複数の周波数で電気励起を供給するように構成された信号発生器と、センサから複数の周波数の複素アドミッタンスデータを受信して複素アドミッタンスデータを所定の複素アドミッタンスデータのライブラリと比較することにより、静脈内溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類、濃度、又は種類と濃度を判断するように構成されたプロセッサと、静脈内流体中の1つ又はそれよりも多くの化合物の識別された種類、濃度、又は濃度と種類に基づいて静脈内薬剤送達装置の作動を調節するように構成された制御出力とを含むことができる。
【0049】
静脈内薬剤送達装置は、あらゆる適切な薬剤送達システムとすることができる。例えば、静脈内薬剤送達装置は、ポンプとすることができる。ポンプは、ポンプ速度などの電子制御を含む「スマートポンプ」とすることができる。制御出力は、静脈内薬剤送達装置の供給を変調、調節、停止、又は休止させるように構成することができる。
【0050】
プロセッサは、流量センサから流量情報を受信して、静脈内溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の送達投与量を判断するように構成することができる。一部の変形では、センサは、流量センサを更に含む。
【0051】
プロセッサは、静脈内流体中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類と濃度とを同時に判断するように構成することができる。
【0052】
同じく本明細書では、アドミッタンス分光測定によって溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類及び濃度を判断する方法を説明し、本方法は、溶液と接触状態にある少なくとも1つの流体接触面対の間に複数の周波数で電気励起を印加する段階と、複数の周波数の少なくとも1つの流体接触面対の間の複素アドミッタンスを判断する段階と、複数の周波数の少なくとも1つの流体接触面対からの複素アドミッタンスを含む溶液のアドミッタンス分光分析フィンガプリントを作成する段階と、アドミッタンス分光分析フィンガプリントを担体溶液中の複数の既知の化合物及び化合物の混合物から複数の周波数及び既知の濃度で測定された複素アドミッタンスデータを含むアドミッタンス分光分析データのライブラリと比較することにより、溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類と濃度の両方を判断する段階とを含む。
【0053】
上述のように、溶液は、静脈内薬剤溶液、非経口溶液、又は非経口薬剤溶液などとすることができる。本方法は、溶液の成分の全てが有する種類及び濃度を判断する段階を含むことができる。
【0054】
同じく本明細書では、アドミッタンス分光測定によって溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類及び濃度を判断する方法を説明し、本方法は、溶液と接触状態にある2つ又はそれよりも多くの流体接触面対の間に複数の周波数で電気励起を印加する段階であって、流体接触面のうちの少なくとも1つが、他の流体接触面とは異なる材料、異なるサイズ、又は異なる材料とサイズで形成される段階と、複数の周波数で2つ又はそれよりも多くの流体接触面対からの複素アドミッタンスを判断する段階と、複数の周波数の2つ又はそれよりも多くの流体接触面対からの複素アドミッタンスを含む溶液のアドミッタンス分光分析フィンガプリントを作成する段階と、アドミッタンス分光分析フィンガプリントを担体溶液中の複数の既知の化合物及び化合物の混合物から複数の周波数及び既知の濃度で測定された複素アドミッタンスデータを含むアドミッタンス分光分析データのライブラリと比較することにより、溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類と濃度の両方を判断する段階とを含む。
【0055】
同じく本明細書では、静脈内薬剤溶液の組成と濃度の両方を同時に検証する方法を説明し、本方法は、静脈内薬剤溶液を調製する段階と、静脈内薬剤溶液の試料を検査して、静脈内薬剤溶液が有する1つ又はそれよりも多くの成分の種類と濃度の両方を個々に同時に判断する段階とを含む。
【0056】
検査段階は、異なる周波数で取られた複数の複素アドミッタンスを含むアドミッタンス分光分析フィンガプリントを判断する段階を含むことができる。一部の変形では、検査段階は、異なる周波数で取られた複数の複素アドミッタンスを含むアドミッタンス分光分析フィンガプリントを判断する段階と、アドミッタンス分光分析フィンガプリントを担体溶液中の複数の既知の化合物及び化合物の混合物から複数の周波数及び既知の濃度で測定された複素アドミッタンスデータを含むアドミッタンス分光分析データのライブラリと比較する段階とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】流体の組成を判断するためのアドミッタンス分光分析システムの概略図である。
【図2】電極の流体接触面上の溶液成分の動的平衡を示すこの面上の電気二重層の形成の図である。
【図3】図2に示す電極−溶液界面に対する等価回路の図である。
【図4】電極分極効果を示すグラフである(Walton C、Gergely S、Economides AP著「プラチナペースメーカー電極:電極−組織界面インピーダンスの発生源と効果(Platinum pacemaker electrodes: origins and effects of the electrode−tissue interface impedance)」、Pacing Clin.Electrophysiol、1987年、10、87〜99ページからの修正)。
【図5】流体の組成を判断するためのアドミッタンス分光分析システムの一変形の概略図である。
【図6】流体の組成を判断するためのアドミッタンス分光分析システムの別の変形の概略図である。
【図7A】修正された「Scitec Instruments」モデル441ボードレベルロックイン増幅器の概略図である。
【図7B】「Scitec #441 ロックイン」増幅器に関するブロック図である。
【図8】流体の組成を判断するためのアドミッタンス分光分析システムの別の変形の概略図である。
【図9】流体の組成を判断するためのベンチトップアドミッタンス分光分析装置のプロトタイプの図である。
【図10】IV流体供給源とインラインで取り付けられるように構成された流体の組成を判断するためのインラインアドミッタンス分光分析装置の一変形の図である。
【図11】IV流体供給源とインラインで取り付けられた流体の組成を判断するためのインラインアドミッタンス分光分析装置の別の変形の図である。
【図12】IV流体の組成を判断するためのアドミッタンス分光分析装置との併用のためのプロセッサ及びディスプレイの図である。
【図13A】上部に6つの複素アドミッタンス電極が配置されたセンサの一変形の図である。
【図13B】6つの複素アドミッタンス電極(図13Aに示すものと類似)と、流量センサ(熱流速計流量センサ)と、光学導波管とを含むセンサの別の変形の図である。
【図13C】図13Bのセンサの小型バージョンの図である。
【図13D】図13B及び図13Cのセンサの別の図である。
【図14】金属堆積及びリソグラフィを用いて製造することができる図13Bに示すものと類似のセンサのパネルの図である。
【図15A】IV流体の組成を判断するのに使用することができる複素アドミッタンス電極及び光センサのアレイを含む流動チャンバの一変形の図である。
【図15B】IV流体の組成を判断するのに使用することができる複素アドミッタンス電極及び光センサのアレイを含む流動チャンバの一変形の図である。
【図16】熱流速計流量センサの一変形の図である。
【図17A】アドミッタンス分光分析フットプリントを表すデータ構造の変形の概略図である。
【図17B】アドミッタンス分光分析フットプリントを表すデータ構造の変形の概略図である。
【図18A】異なる濃度での様々な医療関連薬剤を列記する表である。
【図18B】異なる濃度での様々な医療関連薬剤を列記する表である。
【図19A】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19B】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19C】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19D】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19E】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19F】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19G】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19H】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19i】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19J】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19K】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19L】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19M】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19N】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19o】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19P】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19Q】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19R】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19S】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図19T】6つの電極対の各々に対する10個の異なる周波数の6つの固有の電極対組合せの各々に関するアドミッタンス分光測定データとしてグラフに示す、図18に列記した化合物のうちの一部に関する複素アドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図20A】類似薬剤であるパンクロニウムとベクロニウムとに関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの横並び比較の図である。
【図20B】類似薬剤であるパンクロニウムとベクロニウムとに関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの横並び比較の図である。
【図21A】類似薬剤であるエピネフリンとノルエピネフリンとに関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの横並び比較の図である。
【図21B】類似薬剤であるエピネフリンとノルエピネフリンとに関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの横並び比較の図である。
【図22A】モルヒネとヒドロモルフォンとに関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの横並び比較の図である。
【図22B】モルヒネとヒドロモルフォンとに関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの横並び比較の図である。
【図23A】増大するインスリン濃度(0.01単位/mlから30単位/mlまで増大)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図23B】増大するインスリン濃度(0.01単位/mlから30単位/mlまで増大)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図23C】増大するインスリン濃度(0.01単位/mlから30単位/mlまで増大)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図23D】増大するインスリン濃度(0.01単位/mlから30単位/mlまで増大)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図23E】増大するインスリン濃度(0.01単位/mlから30単位/mlまで増大)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図23F】増大するインスリン濃度(0.01単位/mlから30単位/mlまで増大)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図23G】増大するインスリン濃度(0.01単位/mlから30単位/mlまで増大)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図23H】増大するインスリン濃度(0.01単位/mlから30単位/mlまで増大)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図24A】増大する塩化カリウム濃度(1mL当たり0.001ミリ当量から0.8ミリ当量)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図24B】増大する塩化カリウム濃度(1mL当たり0.001ミリ当量から0.8ミリ当量)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図24C】増大する塩化カリウム濃度(1mL当たり0.001ミリ当量から0.8ミリ当量)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図24D】増大する塩化カリウム濃度(1mL当たり0.001ミリ当量から0.8ミリ当量)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図24E】増大する塩化カリウム濃度(1mL当たり0.001ミリ当量から0.8ミリ当量)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図24F】増大する塩化カリウム濃度(1mL当たり0.001ミリ当量から0.8ミリ当量)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図24G】増大する塩化カリウム濃度(1mL当たり0.001ミリ当量から0.8ミリ当量)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図24H】増大する塩化カリウム濃度(1mL当たり0.001ミリ当量から0.8ミリ当量)に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図25A】2mg/mlのドーパミンに関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図25B】0.008mg/mlのノルエピネフリンに関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図25C】2mg/mlのドーパミンと0.008mg/mlのノルエピネフリンの両方の溶液に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図26A】0.5mg/mlのミダゾラムに関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図26B】100単位/mlのヘパリンに関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図26C】0.5mg/mlのミダゾラムと100単位/mlのヘパリンの両方の溶液に関するアドミッタンス分光分析フィンガプリントの図である。
【図27A】4つの固有の電極組合せの各々において測定された10kHzでの2mg/mlのドーパミンに関する複素アドミッタンスの同相成分の複数回測定を示す図である。
【図27B】4つの固有の電極組合せの各々において測定された10kHzでの2mg/mlのドーパミンに関する複素アドミッタンスの直交成分の複数回測定を示す図である。
【図28A】4つの固有の電極組合せの各々において測定された50kHzでの2mg/mlのドーパミンに関する複素アドミッタンスの同相成分の複数回測定を示す図である。
【図28B】4つの固有の電極組合せの各々において測定された50kHzでの2mg/mlのドーパミンに関する複素アドミッタンスの直交成分の複数回測定を示す図である。
【図29A】4つの固有の電極組合せの各々において測定された100kHzでの2mg/mlのドーパミンに関する複素アドミッタンスの同相成分の複数回測定を示す図である。
【図29B】4つの固有の電極組合せの各々において測定された100kHzでの2mg/mlのドーパミンに関する複素アドミッタンスの直交成分の複数回測定を示す図である。
【図30A】0.1%のブピバカインに関するアドミッタンスフィンガプリントのグラフ表現の図である。
【図30B】クエン酸フェンタニル(2mcg/ml)のアドミッタンスフィンガプリントの表現の図である。
【図30C】ブピバカイン(0.1%)とクエン酸(2mcb/ml)との混合物の組合せの固有のフィンガプリントの図である。
【図31A】食塩水中のブピバカインとクエン酸フェンタニルとの「新鮮な」(新たに調製された、使用期限内の)混合物のアドミッタンスフィンガプリントのグラフの図である。
【図31B】同じ混合物の満了バージョンのアドミッタンスフィンガプリントの図である。
【図32】溶液中の異なる成分(例えば、MgSO4とKCl)から区別可能な異なるベクトルの一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本明細書に説明するのは、流体の組成を判断するための装置、システム、及び方法である。一般的に組成は種類と濃度の両方を含み、流体の成分の全てが有する特定結果を含むことができる。本明細書に説明する装置、システム、及び方法のうちの多くのものは、流体中の成分の全てが有する濃度及び/又は種類の本質的に同時の特定を可能にすることができる。特に、本明細書に説明するシステム、方法、及び装置は、種類及び濃度を判断するのに使用することができる特徴的な性質を判断するために、複数の面条件及び/又は複数の適用周波数の下で流体の複素電気アドミッタンスを判断する(逐次又は並行のいずれかで)アドミッタンス分光測定のシステム、方法、及び装置である。一部の変形では、アドミッタンス分光測定に加えて、光学的、熱的、化学的などを含む付加的な測定又は感知の方式を使用することができる。
【0059】
一般的に、流体アドミッタンス測定は、特定の周波数の印加電流、周波数の組における印加電流、又は周波数範囲の印加電流に対する流体の交流(ac)応答の実数成分及び虚数成分aの測定を含む。これらの成分は、恐らくはac応答の同相成分及び直交成分又は抵抗成分及び反応成分とも呼ばれる。本明細書では、この技術を流体の識別、流体中の成分の識別、特に医療流体、特に流体薬品の識別、並びにそれらの濃度及び投与量の判断において明らかにする。
【0060】
図1は、水溶液の組成を判断するためのシステム又は装置の一般的な表現を示している。一般的に、システム又は装置は、各々が流体接触領域(103、103’、...、103’’)を有する複数の電極(105、105’、...、105’’)を含むことができる。電極の少なくとも一部は、異なる流体接触面を有することができる。以下により詳細に説明するように、個々の電極対の間で識別される複素アドミッタンスは、電極面(流体接触面)における水溶液の相互作用と溶液中の成分とに依存する可能性がある。この場合、面の性質(サイズ及び面を形成する材料を含む)を制御し、既知の又は標準化された流体接触電極領域と照合させることができる。複数の電極対が使用されるシステムの変形では、一般的に各電極対は、他の対における流体接触面とは異なる少なくとも1つの流体接触面を有することができる。電極は、プローブ107、検査セル又は検査チャンバ、配管の一部として形成することができ、又はポンプ(例えば、IVポンプ)などのような別の装置内に統合することができる。
【0061】
システム又は装置は、1つ又はそれよりも多くの電極対の間に電気信号を印加するための信号発生器121と、複素アドミッタンスを表す電気信号を受信するための信号受信機131とを含むことができる。信号受信機は、処理(増幅、フィルタリングなど)を含むことができる。システムは、1つ又はそれよりも多くの電極対への電気信号の印加を調整し、複素アドミッタンスデータを受信するためのコントローラ119を含むことができる。例えば、コントローラは、電極へのエネルギの印加を調整し、複素アドミッタンスデータを受信するためのトリガ、クロック、又は他のタイミング機構を含むことができる。コントローラ119を含むシステム又は装置は、複素アドミッタンスデータを記録/記憶するためのメモリを含むことができる。一般的に、システム又は装置は、複素アドミッタンスデータに基づいて水溶液の成分の種類及び濃度を判断するために複素アドミッタンスデータを分析するためのプロセッサ131も含む。プロセッサの詳細及び例に対しては下記でより詳細に説明する。一般的に、プロセッサは、受信アドミッタンスデータ(「アドミッタンス分光分析フィンガプリント」を形成する)の全て又は部分集合を既知の成分及び濃度にある既知の流体組成に対応する分光分析データのデータベース(例えば、ライブラリ)と比較する論理(ハードウエア、ソフトウエア、又はファームウエアなどとして実行可能)を含むことができる。プロセッサは、アドミッタンス分光分析フィンガプリントとこの既知のアドミッタンス分光分析データとの間の最も可能性が高い符合を判断するように構成された認識論理を内挿することができる。プロセッサは、アドミッタンスデータと関連して又はそれに加えて他の情報を使用することができる。例えば、システムは、流体が有する1つ又はそれよりも多くの成分を識別するのを助けることができる特徴的な性質(例えば、光学情報)を含む流体の他の性質を判断するための1つ又はそれよりも多くのセンサを含むことができる。プロセッサは、流体の組成を識別するのを助けるためにこの付加的なデータを使用することができる。他の変形では、プロセッサは、流体の投与又は流体に関連する他の装置の作動の特徴を抽出するのを助けるために同様に使用することがきる流体の性質を判断するセンサからの情報を受信することができる。例えば、流量センサをシステムの一部として含めることができ、プロセッサは、流量情報を特定又は受信するように構成することができ、流体が有する1つ又はそれよりも多くの成分の全投与量又は瞬間投与量を計算することができる。
【0062】
最後に、一般的な装置又はシステムは、水溶液の識別された組成を報告し、記録し、及び/又はそれに対して行動を起こすための出力141を含むことができる。出力は、視覚出力、聴覚出力、印刷出力、デジタル出力、又はあらゆる他の適切な出力とすることができる。本明細書に説明する一部の変形では、システム又は装置は、流体又は流体を受ける患者に関連する1つ又はそれよりも多くの装置の作業を調節又は修正することができる。例えば、システムは、流体の組成の分析に基づいて流体ポンプの作動を制御することによって物質の供給を停止又は制限することができる。
【0063】
本明細書に説明する水溶液の組成を判断するためのシステム又は装置は、医療用途に厳密に限定されるわけではないが、医療用途において特に有用であるとすることができる。従って、本明細書に説明する例及び変形のうちの多くのものでは、装置及びシステムは、IV流体及び非経口流体などを含む薬剤溶液又は治療材料のような医療流体を分析し、モニタし、又は検査するためのものである。インライン(例えば、インラインIV流体モニタ)とベンチトップの両方のシステムを説明する。水溶液の組成を判断するための装置/システムが、配管、ポンプ、及び注射器などを含む他の装置又はシステムに接続されるか又は統合される統合システムも考えられており、かつそれに対して説明する。
【0064】
本明細書に説明するアドミッタンス分光測定のシステム及び装置のうちの多くのものでは、同一又は異なる材料から構成される電極対から構成される複数の分極性電極が利用される。上述のように、一部の変形では、複数電極アドミッタンス分光測定が使用され、単独で適用されるか又は光センサを含む他の識別/特徴抽出センサ及び方法と連係して適用されるかのいずれかである。電極(特に流体接触領域を有する電極)を含むプローブ及び測定セルの変形構成における単独又は付加的なセンサとの併用のいずれの電極の例も以下により詳細に説明する。
【0065】
同じく様々なシステムの例も説明する。これらのシステムのうちの多くのものは、アドミッタンス分光測定しか含まない可能性があるが、本明細書に説明する例は、多くの場合に、付加的なセンサを含む。例えば、ある周波数範囲にわたる流体アドミッタンスの測定のために自動コンピュータ制御を組込み、複数の異なる電極の組を使用するシステムが開発されている。このシステムは、データ取得及びシステム制御のために測定システム及びコンピュータに結合された電極の組から構成されるセンサ要素を含む。また、システムは、特定の波長の4つの光学源及び検出器も含む。これらのシステムは、付加的な(例えば、光学)感知方式の使用を必要とせず、アドミッタンス分光測定機能のみで構成され、かつ使用することができることは理解されるものとする。
【0066】
アドミッタンス分光測定
上記に引用によって組み込んだPCT特許出願PCT/US2009/001494は、各々が、静脈内溶液のような溶液の多パラメータフィンガプリントを作成するために組み合わせることができる異なる特徴を与える複数のパラメータの適用(複数のセンサを含む)を説明している。この多パラメータ技術(及びその実施形態)は、病院環境において患者に付与される1つ又はそれよりも多くのIV流体の種類及び投与量を検証するのに使用することができる。本明細書では、溶液の組成を判断するために溶液から得られる「フィンガプリント」が、溶液から得られるアドミッタンス分光測定情報を含む多パラメータのものであるとも考えることができるシステム及び装置を説明する。
【0067】
従って、本発明の開示の関連では、溶液の多パラメータフィンガプリントは、複数のアドミッタンス分光測定データを含むことになる。従って、以下により詳細に説明するように付加的な識別情報(光学的、熱的などのような)を含めることができるが、この「フィンガプリント」をアドミッタンス分光測定フィンガプリントと呼ぶ場合がある。フィンガプリントは、値の行列又は配列として収集又は蓄積することができ、プロット、グラフに分布図化又は類似のことを行うことができる。一部の変形では、フィンガプリントは、時間変化データを含むことができ、時間及び/又は空間要素によって指標付けを行うことができる(例えば、時間経過に沿って得られる点、又はあらゆるトリガ事象の後に得られる点において)。多パラメータフィンガプリントを形成するパラメータ値は、これらのパラメータ値を取得するセンサ(例えば、電極)によって指標付けを行うことができる。フィンガプリントは、少なくとも2つの次元(実数インピーダンス及び複素インピーダンス)を含むことができ、2つよりもかなり多くの次元(例えば、複数の周波数の実数インピーダンス及び複素インピーダンス、又は異なる周波数で流体との異なる面相互作用を有する複数の電極対における実数インピーダンス及び複素インピーダンス)を含むことができる。フィンガプリント内のパラメータ値(例えば、複素インピーダンス値)は、平均値、中央値、又は中間値とすることができる。一部の変形では、フィンガプリントを形成する値をフィルタリングすることができる。一部の変形では、フィンガプリントを形成する値は正規化される。一部の変形では、フィンガプリントを形成する情報は、組合せ(例えば、減算、加算、スケーリングのような)データから導出される。
【0068】
本明細書に説明するアドミッタンス分光測定フィンガプリントは、本明細書に説明するように流体の組成を判断するために比較することができ、この判断する段階は、担体溶液の種類を含む溶液中の全ての成分の種類と濃度とを同時に判断する段階を含むことができる。従って、一部の変形では、得られた(未知の)フィンガプリントを既知の溶液組成に対して提供されているフィンガプリントのライブラリ内に含めることができる既知のフィンガプリントに対して比較することができる。
【0069】
説明するアドミッタンス分光測定システムは、複数の異なる感知要素又はセンサの適用に基づいて溶液中の成分、特に、担体溶液中の薬剤を識別する。以下により詳細に以下に説明するが、使用されるセンサは、各々が少なくとも1つの流体接触面を有する電極とすることができる。
【0070】
本明細書に説明する複素アドミッタンスを測定するのに使用される電極は、一般的に、これらの電極が接触する流体の成分と反応性を持たない金属で作られ、利用される金属のイオンは、一般的に静脈内流体中に存在しない。それによって特徴的な定常状態の複素インピーダンスの特定が可能になる。しかし、そのような電極は、IV薬剤溶液のような水溶液に露出されると、そのような金属に印加されたDC電圧が、ある一定のレベルを超えない限り金属−電解質界面を通じてゼロの実効電荷移動をもたらすといういわゆる「阻害」挙動を提供することが古くから公知であった。この効果は電極分極と呼ばれ、1879年から研究されている(例えば、Helmholtz H.著「Studien uber electrische Grenzschichten. Annalen der Physik und Chemie」、1879年、243(7):337〜382ページ、又はP.E.Bocqueによって翻訳された翻訳バージョン「電気境界層の研究(Studies of electric boundary layers)」、Bull.Dep.Engineering Research Univ.Mich.33、5〜47ページ(1951年)を参照されたい)。
【0071】
電極分極は、この効果の存在が、有効な心臓活動の感知及び刺激を妨害するペースメーカーのための埋め込み電極の分野で特に十分に研究及び文書化されている。例えば、プラチナペースメーカー電極が生理食塩水浴中に浸漬され、この電極に対してある電位範囲でDC電圧が印加されると、電圧が約±1Vの値を超えない限り、電解質を通じて事実上いかなる電流も流れない。この電圧よりも低いと、電極は、容量的挙動を示す。この効果を図4に例示している。限られた利用可能電極面積で良好なペーシングを得るために、一般的に、ペースメーカーは、組織に十分な電荷を渡してこの電極分極効果に打ち勝つために電極界面における化学反応を拠り所とする。例えば、Walton C、Gergely S、Economides AP著「プラチナペースメーカー電極:電極−組織界面インピーダンスの発生源と効果(Platinum pacemaker electrodes: origins and effects of the electrode−tissue interface impedance)」、Pacing Clin.Electrophysiol、1987年、10、87〜99ページを参照されたい。
【0072】
特定の流体接触面から測定される複素アドミッタンスは、溶液と、溶液中のあらゆる化合物(イオン、薬剤などを含む)と、流体接触面の面との相互作用を反映する。流体接触面と流体との相互作用(界面における)は、流体を面に接触させた時に短時間に(事実上瞬時にではないにしろ)確立されるとすることができる。この面は、複素インピーダンスを判断するのに精査することができ(電気エネルギの印加により)、複素インピーダンスは、流体と電極の流体接触面の間の相互作用特徴を有する。この場合、特定の面で識別される複素インピーダンスは、流体接触面と溶液の間の相互作用特質を反映し、従って、流体接触面を形成する材料と、流体接触面の幾何学形状(例えば、面積)とに基づくことができる。流体との相互作用は、異なる流体接触面(サイズ及び流体接触面を形成する材料を含む)の間で異なるとすることができるので、異なる面は、同じ溶液中で異なる複素インピーダンスを生成することができる。本明細書に使用する流体接触面という用語は、一般的に流体と接触する電極の導電(非絶縁)領域を指す。流体接触面はコーティングなどを含むことができ、絶縁領域によって取り囲むことができる。例えば、銀−銀電極対の複素インピーダンスは、同じ周波数及び電流レベルにおいて同じ溶液中で測定され、同じ幾何学形状を有する銀−金電極対の複素インピーダンスとは非常に異なるとすることができる。
【0073】
複素アドミッタンスは非常に可変であり、特に、低電力レベル(例えば、電流レベル及び/又は電圧レベル)において精査される時には電極の流体接触面の組成(及び幾何学形状)に影響され易いので、複素インピーダンスは、これまでは未知の水溶液、特に、医療溶液の組成を判断する方法としては首尾良く使用されなかった。
【0074】
アドミッタンス分光測定は、イミッタンス分光測定(インピーダンス又はアドミッタンス)とも呼ぶ場合があり、周波数の関数としての複素インピーダンス(Z)、複素アドミッタンス(Y)、及び複素誘電率(ε)の測定及び分析のための様々な技術を含む。これらの値は、複素平面にプロットすることができる。一般的に複素平面は、’及び’’が複素値の実数成分及び直交成分である時に、複素インピーダンス(Z=Z’+iZ’’)、アドミッタンス(Y=Y’+iY’’)、及び/又は誘電率(ε=ε’+iε’’)が、x=Z’,y=Z’’;x=Y’,y=Y’’;x=ε’,y=ε’’であるようにプロットされる標準直交xy座標として定められる。
【0075】
溶液が電極面のような面と最初に接触すると、電極と流体の間の面相互作用は、図2に例示しているように階層境界構造をもたらす。この階層境界は、電極面及び溶液の特徴を有することができ、溶液の組成に加えて面の組成及び/又は構造に基づくことができる。一般的に、面と溶液の間には複数の「層」が形成され、いくつかの界面を形成する。例えば、図2では、電極の面と流体のバルクの間に3つの異なる領域を形成することができ、IHP(内部ヘルムホルツ面)が面に最も近く、OHP(外部ヘルムホルツ面)が次の層であり、バルク溶液に徐々に移行する拡散層がそれに続く。
【0076】
本明細書に説明する変形の多くのものでは、電極は、低電位(電圧)、例えば、一般的に少なくとも500mVであるいずれかのΦiよりも低い電位においていかなる電荷移動も可能ではなく、従って、電極面において電気化学反応が発生することにはならない完全分極性電極である。励起電圧ΔVが自然に発生する熱変動よりもシステムを乱さない場合には、印加電流に対する応答は線形であり、従って、kがボルツマン定数であり、Tが絶対温度であり、eが電子電荷である時に、ΔV〜kT/eである。ΔVは、室温で約25mVである。
【0077】
この場合、電極の面では、複素ACインピーダンスZ(ω)又はアドミッタンスY(ω)を図3に示している等価回路として近似することができ、かつ測定することができる。インピーダンスに関する関係は、次式で表現することができる。
【0078】

【0079】
金属−電解質界面のこのモデルからもたらされる等価回路は、溶液中のいずれかの化合物、例えば、担体電解質中の薬剤分子又はイオンの存在による影響を受ける4つの独立パラメータ(R1、R2、C1、C2)を含む。等価回路の個々の成分は、実際には直接取得することができないが、励起電流又は電圧に対するセルの時間依存の応答の測定を通じて、又はACインピーダンス又はアドミッタンスを通じて間接的に測定することができる。インピーダンスではなくAC電流を測定し、アドミッタンスを用いて作業を行う方が直接的であろうが、そうすると、例えば、次式のようなより嵩張った式がもたらされる。

【0080】
4つの独立パラメータの値は、2つの異なる周波数ω1及びω2におけるインピーダンス又はアドミッタンスの2回の測定から計算することができる。複素インピーダンス、Z1=Z(ω1)=a1+ib1及びZ2=a2+ib2が測定されると、等価回路パラメータは、次式の通りに計算される。







【0081】
これらの4つの独立パラメータは、以下に説明するように、薬剤認識のために複素インピーダンスを判断するために、並びに角度計算及びクラスター化のために使用することができる。信号を平均化し、SN比(SNR)を改善するために、1つの周波数又は各周波数で複数回の測定を行うことができる。上述の4つのパラメータを計算するのに、2つの異なる周波数の2回よりも多い測定を使用することができる。複数周波数測定は、データに冗長性を与えることができ、この冗長性は、最小二乗法のような公知のアルゴリズムによってSNRを改善するのに利用することができる。上述の測定は周波数領域測定を基準とするが、時間領域測定から同等の情報を取得することができる。
【0082】
一方、IV溶液のような医療溶液の複素アドミッタンスを判断する時には、複素アドミッタンスの安定した特定を妨げる可能性があり、それと共に検査中の溶液を不適切に改質するか又は影響を及ぼす可能性がある電極面における電気化学反応を阻止するために、可能な限り低い励起エネルギを使用することが望ましい。従って、本明細書に説明する変形では、センサ電極の間に印加される励起エネルギは、一般的に、静脈内流体中で発生する可能性があるあらゆる電気化学反応の閾値電圧よりも低く保たれる。好ましくは、センサ電極の間に印加される励起エネルギは、自然に発生する熱変動に関連するエネルギの特徴的な値よりも低く保たれる。
【0083】
従って、本明細書に説明するセンサは、電極−流体界面における電気化学反応をトリガするのを回避するために、一般的に、電極分極効果を回避するのに必要な閾値よりも有意に低い電圧で作動する。一般的に、この閾値は、約0.5Vと約1Vの間にある(例えば、0.5V、0.6V、0.7V、0.8V、0.9V、1.0V)。本発明者は、本発明者の予備研究に基づいて、一般的に望ましくない電極分極効果が、実際には電極−流体界面の特質及び状態に関して有用な情報及び重要な情報を提供することができることを確認した。セルのACアドミッタンスの項で説明される応答に対しては、測定の全てを電流が電圧に比例する電圧範囲である線形領域内に実施する必要がある。この領域は、電極分極効果が問題と見なされるペースメーカー関連の研究において十分に取り扱われている。電極分極は、溶液中の生物試料のインピーダンスを判断するのに主な努力ファクタであると考えられる(例えば、Oh他著「バイオセンサ用途のためのナノ間隙電極による電極分極効果の最小化(Minimization of electrode polarization effect by nanogap electrodes for biosensor applications)」、MEMS−03京都マイクロ電気機械システムIEEE第16回年次国際会議(2003年1月19〜23日開催)会報52〜55ページを参照されたい)。
【0084】
分極効果に打ち勝つためのほぼ閾値を超える(例えば、1Vを超える)エネルギの印加は、電極面に隣接する二重層内の流体成分の自然な構成を乱すのに十分に強い外部電界をもたらし、電気化学反応をもたらす可能性がある。電極界面に隣接する流体層の構造は静的ではなく、自然に発生する熱変動の下で動的平衡状態で存在する。イオン媒体の熱運動に関連する変動エネルギは、kが、ボルツマン定数であり、Tが、K°を単位とする絶対温度であり、eが、電子電荷である時に、kT/eと見積もることができ、このエネルギは、室温では約25mVである。
【0085】
本明細書に説明する複素アドミッタンスセンサは、一般的に、自然の熱変動に関連する電圧と同じマグニチュードのものである約30mVの振幅(〜21.2mV RMS)の励起電圧で作動する。この作動領域は、センサが、電極/流体界面の有意な外乱を伴わずに流体セルの応答を測定することを保証し、以前は回避された電極分極の領域内で作動する予想外の利点を可能にする。
【0086】
通常は望ましくない電極分極効果を利用することにより、本明細書に説明する装置及びシステムは、この自然に発生する流体成層構造を乱すことなく、電極と検査中の流体との界面において形成される動的平衡を精査することができる。平衡は急速に形成され、流体の特徴を有するので、この情報は、既知の電極面と検査中の未知の流体の間の界面に関する情報を提供することができる。従って、作動時には、装置及びシステムは、複数の異なる電極(例えば、検査中の溶液との異なる面相互作用を有する電極)を使用することができる。アドミッタンススペクトルを発生させるのに使用されるこれらの電極は、一般的に分極性のものであり、システムは、試料の熱エネルギよりも下で作動される。それによって溶液中の成分の組成及び濃度に依存する複素アドミッタンスに基づいて形跡を発生させる再現性の高い複数回の測定を可能にすることができる。
【0087】
ベンチトップシステム又は装置
本明細書に説明する装置及びシステムの一部の変形は、一般的に流動状態にない溶液を検査するのに使用されるように構成される。例えば、システムは、薬局で調製されるか又は商業的に調製されたIV薬剤溶液のような水溶液の事前調製混合物を検査するように構成することができる。従って、これらのシステムをベンチトップ装置又はベンチトップシステムと呼ぶ場合がある。例えば、ベンチトップシステムは、薬剤師又は薬局が、医療溶液の調製投与量を確認するのに使用することができる。調製薬品におけるいずれの過誤も、誤って調製された薬品が患者に投与された場合に非常に深刻な結果を有する可能性がある。
【0088】
一般的に、ベンチトップ装置は、検査される溶液試料が付加される測定セル又は測定チャンバを含む。例えば、一部の変形では、システムは、センサ要素が成形又は挿入される光学セルの形態にあるとすることができるセンサチャンバを有することになる。検査される薬剤はセル内に導入され、3つ又はそれよりも多くの独立した測定値の組を発生させるために、その電気的性質(一部の変形では、同様に光学的性質も)を測定することができる。これらの値は、一緒に、特定の薬剤を別のものから識別するための手段をもたらすことになり、この手段は、試料のアドミッタンス分光分析フィンガプリントとすることができる。複数のデータチャンネルの各々が有する値は、組み合わされると、各々が測定する各化合物に対して固有のパターンを発生させることができ、従って、薬剤のような流体化合物を識別するための手段を提供することができる。
【0089】
本明細書に説明するベンチトップシステムの一例では、システム(又は装置)は、測定セルの一部である測定センサを含み、測定センサは、励起信号を供給するロックイン増幅器と共に利用されて、得られる異なる周波数の複素アドミッタンスを反映する信号を検出する。コントローラ(例えば、コンピュータシステム又は専用プロセッサなど)は、信号を制御し、データを取得することができる。
【0090】
例えば、図5は、ベンチトップシステムの一変形の図を示している。この例では、システムは、センサ要素(一般的に複数の電極を有する)と、電極に信号を印加し、そこから信号を受信するためのロックイン増幅器と、エネルギの印加及び複素アドミッタンスの記録を制御する制御及びデータ取得システムとを含む。
【0091】
このベンチトップシステムは、複数電極流体アドミッタンス測定を実施する。一部の変形では、システムは、付加的な(非アドミッタンス)センサを実施することができる。例えば、以下により詳細に解説する光センサ(例えば、複数の波長の屈折率及び吸光測定値を測定する)である。
【0092】
図6は、複素アドミッタンスと光センサ要素の両方を測定するように構成されたベンチトップシステムの若干詳細な概略図を示している。このシステムは、信号を発生させて検出するためのアナログからデジタルへの回路及びデジタルからアナログへの回路、並びにフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)及び埋め込み実時間オペレーティングシステムを有するオンボードマイクロプロセッサを含むことができる制御及び取得サブシステム601(例えば、「National Instruments」の「sbRIO 9632」)を含む。このシステムは、100本を超えるデジタル線を設けることができ、そのうちの一部は、装置における制御及び切り換え用途に使用することができる。
【0093】
この例では、改造した「Scitec Instruments」モデル441ボードレベルロックイン増幅器603(その概略図を図7Aに示している)が信号検出に使用される。プログラマブル励起信号発振源605を「Hagerty Radio」から入手した「AD9951 DDS VFO」ボードキットを改造することによって構成した。システムは、センサチップ上の6つの要素と全ての4つの光学測定チャンネルとの全ての組合せからの信号の自動測定を可能にするために切換システム613と連係して利用され、測定セル611の一部であるセンサ要素609も含む。この切り換えサブシステム613は、コンピュータ制御することができる。
【0094】
図6に示している例示的なプロトタイプは、複数のアドミッタンス電極及び光センサチャンネルの検査及び切り換えを可能にする。この切り換えは、システムが複数回の複素アドミッタンス測定を行い(多くの場合に同時に)、これらのデータを付加的な(任意的な)光学データと共に記憶し、流体の組成の特徴を有するアドミッタンス分光測定フィンガプリントを構成することを可能にする。あらゆる適切な同期検出器又は他のロックイン増幅器を使用することができるが、図7A及び7Bは、上述の「Scitec #441 ロックイン」増幅器の例に関するボードレイアウト及びブロック図を示している。
【0095】
流体の組成を判断するための装置及びシステムのベンチトップ変形の別の例を図8に示している。この例では、センサ801は、測定セル(図示せず)の一部とすることができ、再使用可能センサ又は使い捨て/単回使用センサとすることができる。センサは、測定セルに埋め込むことができ(又はその一部を形成することができ)、又は測定セル内に挿入することができる。この例では、センサ801は、6つの電極を含み、これらの電極は、各電極が試料流体との明瞭に異なる面相互作用を有する場合に、複素アドミッタンスを独立してサンプリングするための15個までの異なるチャンネルを形成することができる。図8では、3つの異なる電極が使用されて(例えば、Au、Au、Pd、Pd、Ti、Ti)、6つの固有の電極対(Au−Au、Au−Pd、Au−Ti、Pd−Pd、Pd−Ti、Ti−Ti)を形成し、エネルギを印加して得られる複素アドミッタンスを判断することによる精査においてどの電極が活性状態であるかを制御するためにスイッチマトリックス803が使用される。プログラマブル(及び制御可能)励起源805は、電極対の励起を駆動し、信号調整回路807を含む信号受信サブシステムも使用される。信号調整回路807は、信号を平滑化、フィルタリング、増幅、又はそうでなければ修正するのに使用することができる。受信サブシステムは、ロックイン増幅器809を含むことができる。コントローラ811は、システムを調節、同期、及び/又は起動する段階を含む励起及びデータ収集の制御を行うことができ、データを収集、転送、及び/又は記憶することができる。
【0096】
図8のシステムは、1つ又はそれよりも多くのコンピュータ813又は他のターゲットと通信を行うことができる無線出力を含む。しかし、あらゆる適切なターゲットを使用することができる。更に、受信したアドミッタンス分光測定情報を分析するように構成されたプロセッサは、専用プロセッサとすることができ、又は専用又は汎用コンピュータ上で作動するソフトウエア、ハードウエア、及び/又はファームウエアを含むことができる。一部の変形では、プロセッサは、システムの残りの部分に直接結合される。図8では、プロセッサは、コントローラ811内に統合することができ、又はシステムが無線通信を行うコンピュータ813の一部とすることができる。
【0097】
ベンチトップ装置は、小型装置及び/又は携帯装置とすることができる。例えば、一部の変形では、一般的なベンチトップ装置は、薬局における使用に向けて構成され、調製されたIV溶液中の1つ又はそれよりも多くの薬剤の種類及び濃度を個々に判断するのに使用することができる。溶液の試料は、測定チャンバ内に充填することができる(例えば、100マイクロリットル未満を測定セル内に分取することができる)。次に、装置は、試料を迅速に分析し、結果の出力を供給する。
【0098】
図9は、流体試料を充填することができる検査セル領域903を含むベンチトップシステムのプロトタイプを示している。以下に説明するように、センサをリソグラフィ技術によって形成し、6つの固有の電極対、Au−Au、Au−Pd、Au−Ti、Pd−Pd、Pd−Ti、及びTi−Tiを形成した。実際には、これらの電極又はこれらの電極の対のうちのいずれかを励起及び/又は受け側のいずれかに使用することができる(例えば、励起対:Au−Pd、受け側:Ti、又は励起:Au、受け側:Pd−Ti等)。
【0099】
図9では、装置は、信号発生器/励起源と、複素アドミッタンスを検出するための信号受信機要素とを収容することができるコントローラハウジング905も含む。アドミッタンスフィンガプリントを分析するためのプロセッサをこのハウジング内に含めることができる。この例では、ベンチトップ装置は、約ノートブックコンピュータのサイズであり、スマートセンサチップ(電極の全てを含む)を有する使い捨て試料ホルダを使用する。装置は、一般的にセンサを湿潤又は浸漬させるのに十分なごく僅かな(<100μl)試料しか必要としない。装置は、薬剤の種類及び濃度を瞬時に識別し、結果を報告する。ユーザは、試料に関するいかなる情報も入力することを必要とされないが、一部の変形では、ユーザは、溶液の意図する種類及び濃度を示すことができる。この場合、装置は、試料が予想される混合物に符合するか、又は符合しないかを示すことができる。
【0100】
一部の変形では、装置又はシステムは、検査される溶液が濃度又は組成において過誤を有すると見られるか否か、例えば、ある一定の成分の濃度が一般的に安全と考えられる濃度を上回っているか否かを示すことができる。従って、装置(例えば、プロセッサ)は、既知の化合物の安全な濃度範囲に関する情報、並びに化合物の一般的な混合物に関する情報を含むことができる。装置又はシステムが、検査される溶液のフィンガプリントを認識しない場合には、装置はこれを示すことができる。このフィンガプリントの認識の失敗は、フィンガプリントが、プロセッサに利用可能な既知のフィンガプリントのライブラリと妥当性のある統計範囲で符合しない場合に発生する可能性がある。一部の変形では、システムは、「最も近い符合」を提供し、信頼度レベル(例えば、符合の統計的確率)を示すことができ、又は可能性があらゆる閾値レベルを超える時だけに符合を示すことができる。
【0101】
上述のように、上述のベンチトップ構成は、医療溶液(例えば、静脈内溶液又は非経口溶液など)を調合の後、患者への投与の前に検査することができる薬局環境において特に有用であるとすることができる。これらのシステムは、患者の安全をモニタ及び管理するための既存のシステム内に流体の種類及び濃度の確認として統合することができる。例えば、一部の変形では、本明細書に説明するシステムは、検出/確認した溶液の種類を示すラベルを発生させることができる。システムは、調査される溶液のログ又は記録を発生させることができる。
【0102】
インラインシステム又は装置
図10は、IV流体供給源とインラインで取り付けられるように構成されたインラインセンサの一実施形態を示している。この例では、センサは、複数の複素アドミッタンスを含む複数のパラメータを複数のセンサを用いて同時に(又は基本的に同時に)測定する。センサアセンブリは、患者に供給されているIV溶液と連絡状態で直接結合される。例えば、センサは、IV管又はIVポンプなどとインラインで統合又は挿入することができる。一般的に、センサアセンブリは、既知のアドミッタンス分光測定プロフィールのライブラリに対してアドミッタンス分光測定フィンガプリントを検査することができるプロセッサに結合される。この場合、システムは、流体の種類又は組成を識別して薬剤の種類及び投与量を報告することができ、IV溶液が特定の薬剤の所定のレベルを超えるか、又は薬剤を欠損する場合に警報又はアクションを起動する(例えば、薬剤送達を停止、休止、又は低減する)。一部の変形では、システムは、特定の個別のものに対して予想溶液組成を有するようにプログラムされる。一般的に、システムは、IV溶液の1つ又はそれよりも多くの成分が通常範囲外にあるか否かを判断することができる。
【0103】
例えば、システムは、特に、ある一定の要注意薬品のレベル(又は投与量)をモニタし、これらの薬品が閾値を超える(又はあらゆる量存在する)場合に警報を与えるように構成することができる。要注意薬品は、ヘパリン、インスリン、神経筋遮断剤、細胞毒性化学療法剤、塩化ナトリウム(>0.9%)、カリウム(塩化カリウム、酢酸カリウム、リン酸カリウム、>0.4mEq/mL)、硫酸マグネシウム(>100mL)、アルテプラーゼ(t−PA、アクチバーゼ)、テネクテプラーゼ(TNKase)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン)、麻酔薬/オピオイド(例えば、PCA)、エピネフリン、ノルエピネフリン、イソプロテレノールなどを含むことができる。
【0104】
一部の変形では、センサ構成要素は使い捨てであり、それに対してプロセッサ部分は再使用可能である。一部の変形では、プロセッサとセンサ構成要素の両方が使い捨てであり、又は両方が再使用可能である。
【0105】
図11は、IVライン1105に接続した別の変形のインラインセンサ1103を示している。センサは、プロセッサ(図示せず)に無線接続又は直接接続することができる。図12は、図11に示しているもののようなインラインセンサのための一変形のプロセッサ及びディスプレイ1203を示している。ディスプレイは、検出された種類(例えば、「ヘパリン」、「硫酸モルヒネ」)及び濃度(例えば、48U/mL、2.4mg/mL)、並びに供給された全(累積)投与量を示すことができる。累積投与量は、数値(例えば、10,984U、5.2mg)、グラフ、又はその両方に示すことができる。
【0106】
一部の変形では、プローブ(複素アドミッタンスを判断するための電極を含む)は、流量センサを含むことができ、又は別々の流量センサからの入力を受信することができる。IV流体が供給される間に瞬間的な濃度と共に流体の流量を把握することにより、供給される全投与量の非常に正確な推定が可能になる。
【0107】
本明細書に説明する変形のいずれにおいても、システム又は装置が特定の患者に関連付けられる場合には、患者独特のパラメータに基づいて出力をカスタム化するようにシステム又は装置を構成することができる。例えば、システムは、どの薬剤(又はどれ程の薬剤投与量)を適用されるかを示す患者データを用いてプログラムすることができる。一部の変形では、システムは、患者の電子カルテと通信を行うことができる。患者情報へのアクセスは、システムが薬剤送達を制御し、及び/又は潜在的な有害事象を警告することを可能にすることができる。患者独特のパラメータが、システム又は装置に対して利用可能ではない場合であっても、システム又は装置は、例えば、特定の薬剤の濃度及び/又は投与量が予想値を超えた時に、標準的な値からの変動を示す情報(警報、警告等)を提供することができる。
【0108】
これらの例のうちのいずれにおいても、システムは、システムの出力(例えば、薬剤の種類、濃度、投与量等)を記憶するログ(不揮発性メモリとすることができる)を含むことができる。ログされた情報は、患者の医療情報に接続することができる(例えば、患者の医療記録の一部として記録又は包含する)。
【0109】
統合システム及び装置
一部の変形では、流体の組成を判断するための装置及びシステムは独立型の装置及びシステムではなく、他の装置と統合される。この場合、これらの装置及びシステムは、医療流体供給装置(ポンプ、注射器、配管等)及び医療モニタ(流量センサ、点滴センサ、IVスタンド等)、ワークフロー及び薬品追跡システム(薬局)及び調剤装置/ロボット、並びに類似のものを含む1つ又はそれよりも多くの他の装置と通信を行うことができ、かつ構成要素を共有することができる。
【0110】
例えば、IV流体の組成を判断するためのシステム又は装置は、IVポンプと統合することができ、かつそれを制御することができる。上述のように、本明細書に説明するようにIV溶液の実際の濃度及び種類を実時間でモニタすることができる場合には、IVポンプの送出速度は、この溶液の実際の(推定のものではなく)濃度及び投与量に基づいて調節することができる。一部の変形では、システムは、危険な投与レベルを警告することができ、IV溶液の送出を自動的に遮断することができる。例えば、投与速度を変更するために、センサシステム及びプロセッサは、薬剤の種類、薬剤の濃度、流量、及び送出速度を提供することができ、薬剤又は薬剤の組合せの適正な送出速度を保証するのに必要なポンプ流量を調節するために、これらの情報を制御システム内に供給することができる。
【0111】
本明細書に説明するシステム及び装置は、IVポンプを制御する供給制御システムに入力を供給し、それによって供給される全IV薬剤投与量を制御するのを助けることができる。例えば、全送達投与量を判断するためにセンサデータを統合することができ、処方された投与量が投与され終わった時にポンプの流れを低減又は停止するために、この情報を制御システムに供給することができる。
【0112】
一部の変形では、システム及び装置は、正しい投薬順序が守られることを保証するようにIVポンプを制御するのを助けるのに使用することができる。例えば、2つ又はそれよりも多くの薬剤が1つの多チャンネルポンプに又は2つ又はそれよりも多くの単チャンネルポンプに取り付けられた場合には、各輸液が完了してポンプが次の薬品の供給を開始することが可能になる時にポンプに信号伝達することにより、プログラムされた輸液順序を制御するためにセンサシステムを使用することができる。
【0113】
システムは、薬剤の組合せを制御するようにIVポンプを制御するのを助けるのに使用することができる。例えば、2つ又はそれよりも多くの薬剤が1つの多チャンネルポンプから又は2つ又はそれよりも多くの単チャンネルポンプから同時に輸液される場合には、薬剤の組合せの形跡を測定し、1つ又はそれよりも多くの薬剤の投与速度を調節するポンプに信号を送り、それによって投与中の薬剤の相対比率を調節することにより、投与中の薬剤の相対比率を制御するのにセンサシステムを使用することができる。この制御は、各チャンネル内の薬剤を検証することによって多チャンネルポンプ内のライン接続過誤に関連する供給過誤を排除することになり、IV流体ラインを交差させることからもたらされる過誤を阻止するのに特に有用であるとすることができる。
【0114】
簡単に上述したように、システムは、検出された薬剤有害事象(ADE)の場合に流れを停止又は低減するように1つ又は複数のIVポンプを制御することができる。薬剤過誤が検出された場合には、流れを停止、休止、又は低減して患者への害を回避するようにIVポンプに信号を送ることができる。医療サービス従事者による処置に向けて警告信号をモニタリングシステムに送信することができる。システムは、過度に高い又は低い薬剤溶液濃度の検出に基づいてIVポンプを制御することができる。薬剤が過度に高い濃度で投与された場合には、患者への害を阻止するために、警告信号を発生させてポンプを停止することができる。濃度が過度に低い場合には、警告を医療サービス従事者に送ることができる。患者独特の情報が提供される場合には、システムは、特定の患者に対する間違った薬剤/危険な薬剤の検出に基づいてIVポンプを制御することができる。例えば、システムは、処方された薬品/併用薬、診断された疾病、及び薬品アレルギーに関する特定の患者の電子診療記録の照会、並びにIVライン内で検出された薬剤及び投与量との相関性に基づいて警報を与えるか、又はIVポンプを制御することができる。
【0115】
一部の変形では、システムは、患者制御鎮痛法(PCA)を調節することができる。自宅環境又は病院/診療所環境において、センサシステムは、薬剤及び投与量を個々に確認し、PCAポンプに報告することにより、患者の安全に向けてプログラムされたPCA制限が超えられないことを保証する制御器として機能することができる。過剰薬剤が検出されると、PCAポンプは、薬品の流れを自動的に遮断又は低減することができる。更に、センサがPCA回路の統合された一部であり、接断された時にPCAユニットを停止させるように、センサシステムを通じてPCA接断回路を実施することができる。
【0116】
本明細書に説明する他の実施形態の複素アドミッタンスシステム及び装置は、IVバッグのような医療装置内での使用を含む。例えば、複素アドミッタンスセンサをIVバッグの一部として含めることができる。センサシステムは、IVバッグ内に含まれる溶液を測定するために、バッグ内に組み込むことができ、又はアクセスポートを通じて導入することができる。このIVバッグへの組込み又は導入は、バッグ内の溶液が予想通りのものであり、正しい濃度及び/又は投与量のものであることを検証するために使用することができる。センサがバッグの一部である場合には、投与までのあらゆる時点においてバッグを検査し、適正な調製、処置、及び/又は保存を確認するためにセンサを使用することができる。同様に、注射器と連係して複素アドミッタンスセンサを使用することができる。複素アドミッタンスセンサは、注射器本体又は針内に組み込むことができ、患者に投与される前に注射器内に含まれるか、又は吸入される吸入流体を識別するために使用することができる。
【0117】
複素アドミッタンスセンサは、自動ロボット調製システムを含む薬局調剤システムと併用することができる。例えば、複素アドミッタンスセンサシステムは、調合過程の間及びその後の両方において薬剤の種類、濃度、及び投与量を確認するために、病院のIV調合調剤システムと併用するか又はこのシステム内に組み込むことができる。
【0118】
複素アドミッタンスを測定するための電極
本明細書に説明する流体成分を判断するためのシステム及び装置は、一般的に複数の電極を含む。各電極は、流体が電極の面と相互作用を行うことができ、面に対して動的平衡を形成する(例えば、図2から説明した階層構造)ように、システム又は装置によって精査される流体と接触するように構成された少なくとも1つの流体接触面を含む。特定の流体の面相互作用は、流体の組成と面の特質の両方の特徴を有する。上述のように、本明細書に説明するシステムは、一般的に未知の流体からの複素アドミッタンスデータを既知の複素アドミッタンスのライブラリに対して比較する。この場合、プローブの電極面は制御され、類型化することができ、測定された複素アドミッタンスの実質的な調節又は正規化を必要とせずに、既知の複素アドミッタンスデータに対するサンプリングされた複素アドミッタンスデータの比較を可能にする。
【0119】
一般的に、本明細書の装置及びシステムは、複素アドミッタンスを判断するための1つ又はそれよりも多くの電極アレイを含むことができる。一般的に電極は、複素インピーダンス又は複素アドミッタンスを判断するために、電極の対又は組合せを刺激して測定することができるように構成される。この場合、電極のアセンブリは、プローブ、検査セル、導管、又は貫流チャンバなどとして構成することができる。これらの変形の全てが、検査溶液(例えば、IV溶液)を電極との接触状態に持ち込むように構成される。2つ又はそれよりも多くの電極のアセンブリを一般的にセンサと呼ぶ場合もある。この場合、センサは、検査流体又は検査溶液と異なって相互作用する流体接触面を有する複数の電極対を有することができる。
【0120】
本明細書に説明する電極は、アドミッタンス電極と呼ぶ場合もあり、これらの電極は、あらゆる適切な方式で構成することができる。本明細書に説明するシステム及び装置は、一般的に、少なくとも2つの導電性電極又は半導電性電極が流体と接触状態に使用される流体アドミッタンス測定を実施する。一般的に、複数の電極は、可変の電圧及び周波数を有する波形信号によって励起することができる。
【0121】
電極は、金属、半導体材料、ガラス質炭素、炭素ナノチューブ、ナノワイヤ、又は多孔性材料などで形成することができる。一部の変形では、電極は、様々なドーピングの程度にある半導電の酸化物(ITO)、硫酸塩、リン酸塩など、又はセラミックから形成される。一部の変形では、電極を形成する材料は、金、プラチナ、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、及びイリジウムのような貴金属、又はこれらの合金である。電極は、ニオブ、タンタル、又はステンレス鋼のような一般的に耐酸化性の金属及び合金、又はチタン、アルミニウム、マグネシウムのような保護酸化物層を形成するもので形成することができる。電極は、電極の上に付加されたSiO2のような薄い保護層を有する金属で形成することができる。電極は、上記に解説した電極材料のいずれか又は全ての組合せから形成することができる。
【0122】
電気インピーダンスセンサでは、複数の金属パッド対を使用することができる。上述のように、アドミッタンス測定に使用される電極は、分極性(又は完全に分極された)電極とすることができる。電極は、同じ材料又は異なる材料で形成することができる。異なる金属及び金属パッド対は、溶液中の薬剤化合物に露出された場合に固有の応答を提供することになる。例えば、各々が金、プラチナ、及びパラジウムから構成される2つの電極を使用することができる場合には、感知において、金+金、金+プラチナ、金+パラジウム、プラチナ+プラチナ、プラチナ+パラジウム、及びパラジウム+パラジウムという金属パッドの組合せを使用することができる。
【0123】
電極は、同じ材料で形成することができるが、流体と電極との間で異なる面相互作用を提供することができる異なる面とバルクとの形態構造、結晶構造、又は粒度を有することができる。一部の変形では、電極は同じ材料のものであるが、その面は、化学的又は物理的に改質及び/又は機能化される(化学的に処理、被覆、単層化、エッチング、プラズマエッチングされ、イオン注入工程に露出される)。
【0124】
電極対は、同じか又は異なる電極(例えば、類似の又は異なる面−流体相互作用を有する電極)で形成することができる。例えば、センサは、所定の電極対における各電極が同じ材料から形成されるか、又は異なる材料から形成される複数の電極対を含むことができる。一部の変形では、センサは、2つ又はそれよりも多くの組成から構成される3つ又はそれよりも多くの電極を同時に有する電極を含む。
【0125】
一般的に、電極は、絶縁基板上に堆積したパッド、トレース、ラメラ、櫛型、又は他のパターンの材料から形成することができる。
【0126】
電極に接続するためのリードは、これらのリードを導電性流体から隔離するために非導電性層によって覆われた導電材料から形成することができる。更に、電極面の一部を流体に露出される電極面を制御する1つ又はそれよりも多くの絶縁材料で覆うことができる。この場合、電極は、流体に露出される作動面の幾何学形状を定める開口部を非導電性層内に含むことができる。
【0127】
一部の変形では、センサは、プローブとして構成された複素アドミッタンスを判断するための電極を含む。例えば、プローブは、溶液中への挿入、又は流体を収容するように構成された容器への取り付けに向けて構成することができる。
【0128】
センサアセンブリの一部の変形では、センサは、互いの近くに配置された流体接触面を有する電極を含むプローブである。一部の変形では、対を形成する電極の間の距離はほぼ同じである。図13Aは、各々が流体接触面1301、1303、1305、1307、1309を有する6つの電極を含むプローブの一変形を示している。この例では、電極は、絶縁された導電性要素(黒色に示している)の上にある層として形成される。絶縁は、電極の流体接触面の上でのみ開放されている(この例では円として示している)。
【0129】
アドミッタンスを判断するための電極に加えて、センサは、屈折率及び/又は光学吸収のような他の特徴的な流体の性質を測定するためのセンサ(例えば、光センサ等)を含む付加的なセンサ要素を含むことができる。センサは、熱伝導度、又は熱拡散率、及び/又は流体が定常状態又は流動状態のいずれにあるかのような流体のバルク性質を判断するための付加的なセンサ要素を含むことができる。例えば、図13Bは、全てが単一のアセンブリ内に組み込まれた6つのアドミッタンス電極(図13Aに示しているように配置された)、並びに熱速計流量センサ1321及び光学導波管1323を含むセンサの一変形を示している。図13Aにあるように、黒色に示しているトレースは、金のような金属の薄膜で形成される。色付きのドットは、パッドを形成するように堆積した他の金属の薄膜を表す。これらのセンサの活性区域は、トレースの端部にある金属パッドである。これらのパッドは、一般的なIV担体流体中への浸漬に適合するように選択された異なる金属のものである。アドミッタンス電極は、金属パッドの区域内を除いて絶縁コーティングを含む。このコーティングは、センサのリードと導電性流体との接触を阻止するが、検査中の流体との直接接触に向けてパッドの一部分を露出する。このセンサは、アドミッタンス電極の露出面の精密な制御を与えることができる既知の半導体製作技術によって製作することができる。例えば、プローブは、ガラス又は他の基板上でのリソグラフィによって製造することができる。図13Cは、図13Bのセンサアレイの小型の変形を示している。図13Dは、流体組成を判断するためのシステムの残りの部分に結合又は接続することができるセンサアレイのリードフレーム領域が示された図13B及び図13Cの別の図である。図13Dに示している例の寸法は、10.5×8.5mmであり、このセンサアレイは、図の左側に示しているようにリードフレームと統合される。図13Cに示している小型の実施形態は、約2.5×3.875mmである。
【0130】
図13A〜図13Dに示している変形は、高い再現性を有する使い捨て又は単回使用センサの概念も例示している。溶液を検査するのに使用されるシステム内に新しくかつ過去に未使用のセンサを挿入することができ、かつ取り外すことができるように、センサアレイは、非常に高いレベルの精度で製作することができる。使用済みセンサは、再利用又は再調整することができる。例えば、図14は、金属堆積及びリソグラフィを用いて製造することができる図13Bに示しているものと類似のセンサの完全なパネルを示している。センサ要素のパネルの全体寸法は、5×5インチであり、個々のセンサは切り離すことができ、又はパネル又はストリップの一部として検査することができる(例えば、接続されたままであるが、別々の流体を検査するのに使用される)。
【0131】
本明細書に説明するセンサは、測定セルとして構成することができる。測定セルは、センサが、流体を収容するチャンバの底面を形成するか又はセンサがチャンバの壁の一部を形成することができるように構成することができる。一部の変形では、測定セルは、使用する準備が整うまで密封され、測定される試料を導入するように針で穿孔される。測定セルは、試料が差空気圧によって引き込まれることになるように密封及び排気することができる。測定セルは、毛細管、マイクロチャネル、ウィック、又は他のスポンジ状の多孔性材料を通じる流体の毛細管作用によって充填することができる。一部の変形では、セルは密封され、測定される溶液中に付加的なイオンを導入するために、測定済みの量の乾燥材料又はイオン流体を収容することができる。この場合、水溶液又はデキストロース溶液の改善された測定に向けて、電解質がイオンを供給することができる。付加的な電解質の存在を薬剤形跡の分析及び認識の中に含めることができ、かつそれは、測定される薬剤に適合するものでなければならない。
【0132】
一部の変形では、システムは、第1のセンサが検査下にある流体の試料に露出される間に、第2の等しいセンサ又は感知位置が、密封チャンバ内で生理食塩水のような標準の基準流体の試料に露出される測定セルを含む。励起は両方のセンサに印加され、両方からの信号が同時に収集され、差測定及び/又はレシオメトリック測定に使用される。
【0133】
センサ又は測定セルは、自動使用に適合することができる。例えば、測定セルは、自動選出及び配置アセンブリにおいて面装着電子構成要素を収容するのに使用されるもののようなトラック又はベルト内に収容することができる。電子機器産業では、このトラック又はベルトは、「テープ及びリール」として公知である。一部の変形では、測定セルは、測定セルストリップの一部として構成される。
【0134】
信号発生器
一般的に、複素アドミッタンスの測定は、上記に例示したように電極対の間のエネルギの印加によって実施される。あらゆる適切な信号発生器(励起源)を使用することができる。印加信号は、一般的に1Vよりも低い(更に一般的には0.5Vよりも低い)。
【0135】
電気インピーダンスセンサは、上記に例示したように電極対の間にエネルギを印加することにより、アドミッタンス信号の検出に向けて励起される。アドミッタンス電極は、単一の固定周波数の電圧、2つ又はそれよりも多くの離散周波数の組、及び/又は定められた範囲にわたる周波数の連続掃引という電圧波形を用いて励起することができる。一部の変形では、異なる測定条件を与えるためにAC励起に加えてDCバイアス電流を印加することができる。これらの測定からのデータは、面性質とバルク性質の両方に関連し、従って、センサに接触する流体の組成に関連する信号を提供する。従って、図8及び図13A〜図13Dで上述したもののような電気インピーダンスセンサパッド対は、単一の固定周波数、2つ又はそれよりも多くの離散周波数の組、及び/又は定められた範囲にわたる周波数の連続掃引におけるac電流を用いて励起することができる。各周波数では、1つ又はそれよりも多くの励起振幅レベルをセンサに印加することができる。
【0136】
従って、信号発生器は、単一の励起周波数又は2つ又はそれよりも多くの異なる励起周波数を印加するように構成することができる。一部の変形では、信号プロセッサは、10個又はそれよりも多い異なる励起周波数を印加するように構成される。上述のように、信号プロセッサは、開始周波数から終了周波数まで周波数を連続的に掃引するように構成することができる。印加周波数は、開始周波数から終了周波数にして定められた段差で変更することができる。一部の変形では、開始周波数が終了周波数よりも低いか又は開始周波数が終了周波数よりも高い掃引周波数流体アドミッタンス測定が行われる。
【0137】
一部の変形では、励起信号は、純正弦波、振幅変調正弦波、周波数変調正弦波、又は位相変調正弦波から構成される。印加される時間変化励起信号波形は、矩形波形、三角波形、鋸歯波形、任意時間関数波形のような成形波形、又は白色ノイズ、フリッカノイズのピンクノイズのような様々な種類のノイズとすることができる。
【0138】
信号発生器は、エネルギをアドミッタンス電極に単一の励起電圧レベル又は様々な励起電圧レベルで印加することができる。例えば、信号発生器は、10個又はそれよりも多い異なる励起電圧レベルでエネルギをアドミッタンス電極に印加することができる。ac励起レベルは、検査される材料中の熱エネルギレベルのもの又はそれよりも低いとすることができる。上述のように、一部の変形では、ac励起に加えてdcバイアス電圧が印加される。
【0139】
一部の変形では、システムは、励起信号と測定信号とが電極対の間で切り換えられるように構成及び配置される。切り換えは、タイマ、コンピュータ、又は他のコントローラ(例えば、マイクロコントローラ)によって制御することができる。励起信号レベル、並びに励起信号周波数は、タイマ、コンピュータ、又は他のコントローラ(例えば、マイクロコントローラ)によって制御することができる(個別に又は併せて)。
【0140】
一部の変形では、励起周波数の間及び/又は電極の対/組の間の切り換えは、切り換えが所定の励起電圧レベルだけにおいて発生する例えば正弦波形の場合には、励起電圧がゼロレベルを交差する時に又は最大値又は最小値又はあらゆる他の所定のレベルに達する時に発生するように励起電圧と同期させることができる。
【0141】
一部の変形では、システムは、単一の信号発生器が使用されるように構成することができる。一部の変形では、装置又はシステムは、複数の信号発生器を含むことができる。例えば、システムは、2つよりも多い電極又は電極対を活性化し、同じ周波数又は異なる周波数で同時に測定を行うように構成することができる。
【0142】
アドミッタンス測定に使用されない電極が使用される変形では(例えば、流速計のような電気流量検出器の場合)、同じ信号発生器を使用することができ、又は別々の信号発生器を使用することができる。
【0143】
本明細書に説明する変形のいずれにおいても、同じくコントローラを使用することもできる。上述のように、コントローラは、専用コントローラ(マイクロコントローラのような)とすることができ、又は使用に適応させた汎用コンピュータとすることができる。一部の変形では、プロセッサはコントローラと統合される。一般的にコントローラは、励起波形の発生、並びにあらゆる付加的センサを調節し、センサ間の切り換えを調節することができる。コントローラは、センサ(アドミッタンス電極を含む)からデータを収集し、収集したデータを記憶し、及び/又は配信することができる。すなわち、コントローラは、センサ応答及び検出器応答の調整及び読み取りに使用することができる。コントローラは、これらの機能をそれ自体で実施することができ、又は1つ又はそれよりも多くのサブシステムによるこれらの機能の実施を調整することができる。
【0144】
例えば、本明細書に説明するシステム及び装置は、センサ応答及び検出器応答のデジタル化を制御するコントローラを含むことができる。コントローラは、デジタル化したデータをフィルタリング及び記憶することができる。コントローラは、データを事前調整することができる(例えば、データを増幅、平滑化、又はフィルタリングするか又はデータをベースラインから減算する等)。
【0145】
一部の変形では、システムは、1つ又はそれよりも多くのネットワーク(有線又は無線のものとすることができる)との通信用ネットワークインタフェースも含む。システム又は装置は、適切なユーザ入力及び出力を含むユーザインタフェース(ディスプレイ/プリンタ、キーボード、ボタン、タッチスクリーン、トラックボール等)を含むことができる。
【0146】
更に、システムは、刺激パラメータ及びユーザ入力データの記憶を含むデータの記憶を行うための1つ又はそれよりも多くのメモリ要素を含むことができる。記憶される情報は、実施された測定のログ、及び/又はタイムスタンプと共に測定された薬剤の種類、濃度、及び流量に基づく輸液治療の完全な履歴を含むことができる。取外し可能媒体メモリを含むあらゆる適切な(デジタル)メモリを使用することができる。
【0147】
プロセッサ
本明細書に説明するシステム及び装置は、一般的に、複素アドミッタンス(例えば、アドミッタンス分光測定フィンガプリント)を分析し、それを既知の複素アドミッタンスのライブラリ及び測定されたいずれか付加的な特徴パラメータと比較するためのプロセッサも含む。プロセッサは電子的なものとすることができ、ハードウエア、ソフトウエア、又はファームウエアなどを含むことができる。プロセッサは、専用プロセッサ又は汎用プロセッサとすることができ、ローカル又はリモートのものとすることができる。一部の変形では、プロセッサは分散プロセッサである。
【0148】
プロセッサは、既知のパラメータ値のライブラリを含むことができる。パラメータ値は、既知の種類及び/又は濃度の成分を有する溶液に対して調整される。パラメータ値は、定められた組成及び濃度にある既知の流体から測定された複素アドミッタンス値を含むことができる。ライブラリは、プロセッサのメモリに記憶することができ、又はプロセッサによってアクセス可能(リモート又はローカルに)とすることができる。例えば、ライブラリは、定期的に更新することができるフラッシュドライブに記憶することができ、又はリモートサーバ上に設置し、システム又は装置によってアクセス(又はダウンロード)することができる。一部の変形では、ライブラリは、較正モードで作動するシステム又は装置によって構成されるか又はそれに追加することができる。
【0149】
一般的に、ライブラリ値は、検査条件と類似の条件下で測定される。特に、複素アドミッタンスは、検査装置又はシステムによって使用されるセンサと同様に又はほぼ等しく構成されたセンサを用いて測定することができる。従って、ライブラリは、アドミッタンス電極の測定パラメータに対応する(又は符合する)複素アドミッタンスデータを含むことができる。例えば、流体の既知の組成に関するライブラリアドミッタンス分光分析フィンガプリントは、同じ印加エネルギ(周波数及びエネルギレベル)にある同じ電極対(例えば、Au−Au等)によって指標付けすることができる。測定を行うアドミッタンス電極は、ライブラリの基準アドミッタンスパラメータを判断するのに使用される実際の電極である必要はないが、ほぼ同じ面相互作用を有さなければならず、これは、流体接触面を形成する材料及び流体接触面の幾何学形状をほぼ同等とすることができることを意味することができる。
【0150】
検査装置又はシステムから収集されるフィンガプリントは、ライブラリのフィンガプリントにおけるパラメータよりも多いもの又はその部分集合を含むことができる。一般的に、プロセッサは、検査試料の組成を識別するのにパラメータの部分集合(例えば、アドミッタンス分光測定データ及びあらゆる他のデータ)のみを使用することができる。
【0151】
本明細書に説明するプロセッサは、一般的に、検査フィンガプリントとフィンガプリントのライブラリとの間でパターンを認識するための論理も含む。例えば、プロセッサは、既知の溶液(例えば、担体中に薬剤又は薬剤の混合物を有する溶液)に対応するパターンを認識するように学習させたパターン認識アルゴリズムを含むことができる。例えば、プロセッサは、学習パターンからの薬剤認識に対して利用される多次元データクラスター化、パターン認識、及び/又はニューラルネットワークアルゴリズムを実行するように構成された論理を含むことができる。プロセッサの論理は、上述のように、あらゆる適切なハードウエア又はファームウエアなどで典型的に実行可能である。
【0152】
多パラメータセンサデータから薬剤を認識するためのアルゴリズムは、溶液中の薬剤化合物を識別するのに複数のチャンネルからのセンサデータを利用することができる。調査されるデータセット(例えば、フィンガプリント)は、単一データ点、2次元曲線、並びに多次元空間内で特定の薬剤成分を認識するための経路を含むことができる。一部の変形では、入力データから薬剤を検出するソフトウエアアルゴリズムは、閾値、ピーク当て嵌め及び分析、クラスター化、並びに2D空間又は多次元空間内の角度に基づくことができる。プロセッサは、既知の薬剤溶液のライブラリに基づいて学習させたニューラルネットワークを含むことができ、薬剤又は薬剤の組合せの種類及び濃度を判断するために既知のデータ点の間で内挿を行うことができる。
【0153】
プロセッサは、薬剤の種類及び/又は濃度を判断するのにあらゆる適切なパターン認識アルゴリズム又は分類アルゴリズムを使用することができる。本明細書に説明するように、一部の変形では、複素アドミッタンス(及びあらゆる他の測定された特徴パラメータ)を2次及び3次よりも大きい多次元ベクトル(n次元)を含むベクトルとして表すことができる。例えば、試料から得られたフィンガプリントには、多次元空間を通る各薬剤対濃度に関する曲線によって辿られる経路の式を定めるために曲線を当て嵌めることができる。
【0154】
一部の変形では、プロセッサは、ソフトウエアではなくハードウエアとして作動するように構成された専用チップ(例えば、FPGA等)内にハードコーディングされたフィンガプリントを比較及び/又は認識するための論理又はアルゴリズムを含むことができる。この実施では、専用チップは、薬剤パターンを用いて事前プログラムするか又は学習させることができ、センサ入力パターンとチップ内にプログラムされたものとのハードウエアレベル照合を行うことができる。
【0155】
一部の変形では、パターン認識論理を「適応的」と呼ぶ場合がある。本明細書に使用する適応的という用語は、一般的に学習可能なシステム又はネットワーク(例えば、フィンガプリントのライブラリに基づいて学習させた適応ニューラルネットワーク)を指す。一部の変形では、パターン認識論理は、事前学習させたもの又は固定で従来の意味で「学習可能」ではないとすることができる。例えば、ネットワークは、フィンガプリントデータのライブラリに基づいて検査フィンガプリントを認識するように構成することができる。
【0156】
一般的に、プロセッサは、フィンガプリント「パターン」(例えば、複素アドミッタンスデータ及びいずれかの付加的な特徴データ)を受信し、このパターンを既知のライブラリフィンガプリントパターンと比較することができる。プロセッサは、パターン取得、特性抽出、前処理、分類、回帰記述、事後処理、並びに結果の通信及び/又は警報という段階の一部又は全てを実施することができる。一般的に、パターン取得は、多次元センサデータの収集を意味する。特性抽出は、信号レベルの特定、及びベクトル又は曲線記述子のようなプリミティブの抽出を含むことができる。前処理は、センサ応答及び電子機器応答のあらゆる非線形性を含む装置伝達関数に対して特性値又は記述子値を正しくスケーリングし、補正するのに必要とされる場合がある。特性を単位値にスケーリングすることを必要とするニューラルネットワークアルゴリズムが利用される場合には、この処理は、特に有用な機能とすることができる。一般的に、事後処理は、分類段階、回帰段階、及び記述段階から得られる出力を解釈する。溶液中の化合物の識別に基づいて、事後処理段階は、識別された薬剤に対する患者の敏感度に関する情報をロードする段階を含むことができ、濃度及び投与量を計算することができ、警報を発生させることができるポンプインタフェース又はグラフィックユーザインタフェースのいずれかにメッセージを送る。
【0157】
上述のように、データクラスター化アルゴリズム、統計的分類アルゴリズム、ニューラルネットワークアルゴリズム、及び構造分析アルゴリズムを含むあらゆる適切なパターン認識アルゴリズムを使用することができる。
【0158】
プロセッサが実施することができる薬剤認識工程の簡単な例を提供する。この例では、金属電極対が流体に露出され、電極をAC電圧又はAC電流で活性化し、得られる複素電流又は複素電圧を測定することによって電極と流体の間の面相互作用を調べることができる。上述のように、システムが線形に応答するには活性化信号が小さすぎる場合には、システムを複素ACインピーダンス又は複素ACアドミッタンスの項で説明することができ、例えば、実数(x)及び虚数(y)の応答成分を測定することができる。
【0159】
x及びyの値、並びにこれらの値の相対的なマグニチュード変化は、主に流体の流れ及び流体−電極界面の電気的性質と共に変化し、これらの電気的性質の両方は、流れの組成による影響を大きく受ける。これらの値の変化は、流体材料の特質に相関され、特定の材料を識別するのに使用することができる。IV薬剤の場合には、これらの応答は、食塩水又は乳酸リンゲル液のような担体流体の流れの中に存在する特定の薬剤を識別するのに使用することができる。
【0160】
この例では、直径0.32mmの2つの円形共面金電極が、非導電性の流動経路の壁の上に互いから0.75mmの距離の位置に配置される。100KHzの8mV振幅AC電圧を50オームの抵抗と直列にある電極の間に印加し、抵抗の両端における電圧降下を「Stanford Research Model SR830」ロックイン増幅器を用いて測定した。RS232インタフェースを通じてロックイン増幅器にPCを接続し、ロックインによって毎秒ほぼ2回読み出された複素電圧をソフトウエアが記録した。データは、測定電圧値の実数部がX軸に沿い、かつ虚数部がY軸に沿うようにプロットした。この実験では、自然に発生するノイズの理由から、平均値(x0+iy0)及び標準偏差(σ)を識別した。XYグラフ上のあらゆる方向において平均値から|Δx+iΔy|>6σだけ外れる測定電圧値(x+iy)は、流体中での変化の統計的に有意な指示である。この場合、arg(Δx+iΔy)は、偏位ベクトルの角度方向を定める。|Δx1+iΔy1|>6σ及び|Δx2+iΔy2|>6σ、更に|Δx1−Δx2+i(Δy1−Δy2)|>6σである場合には、2つの偏位Δx1+iΔy1とΔx2+iΔy2とは統計的に区別可能である。最後の不等式は、これらの2つの偏位を互いから区別可能にする偏位のマグニチュードの間の関係及び偏位の間の角度を定める。
【0161】
本出願人の実験は、食塩水流への非常に希釈された添加剤では、純食塩水点からの偏位距離は、添加剤の濃度と分子又はイオンの組成の両方に依存し、それに対して方向は、主に添加剤の分子又はイオンの組成に依存することを示す(更に理論的に説明することができる)。より高い濃度の添加剤では、偏位のマグニチュードと方向の両方が、添加剤の特質に依存して固有の区別可能な方式で濃度依存するようになる。
【0162】
この例では、センサは、流れている食塩水を測定することになり、食塩水希釈塩化カリウムのような薬剤1mlが大量瞬時投与量として流れの中に注入される。薬塊の「前線」が電極の近くに達した状態で、複素電流は純食塩水中でのその平均値から外れ、薬塊の「後縁」が電極の近傍を通過する時に元に戻り、特徴的な曲線又は形跡をもたらす。塩化カリウム注入の「前線」は、6σ検出閾値よりも遥かに大きい距離の位置ではほぼ真っ直ぐである食塩水点からの偏位をもたらし、それによって偏位ベクトルの方向の正確な特定が可能になることが分る。例えば、残差が6σを超え始める位置で、6σ検出閾値からこの距離への測定点の線形回帰を実行することができる。結果をより明確にするために、回帰係数に基づいてX軸と偏位の方向ベクトルの間の角度を計算することができ、この例ではこの角度が74.4°であることが見出されている。
【0163】
1mlの食塩水希釈硫酸マグネシウムの薬塊がシステムの中に注入された場合には、測定複素電圧は、塩化カリウム注入とは非常に異なる曲線を辿った。図32で明らかなように、食塩水点からの偏位はより垂直であり、より小さいマグニチュードのものである。上述のように計算された初期偏位の角度は、85.6°であることが見出されている。
【0164】
約1mlの純粋な脱イオン水を同様に食塩水の流れの中に注入した。この水は異なる曲線を発生させ、従来の注入とはほぼ反対の方向に外れた。水注入における初期偏位の角度は、−118.2°であることが見出されている。
【0165】
これらの角度測定の統計的不確実性を角度を判断する係数を計算するのに用いた線形回帰の残差から推定し、この不確実性は、3つ全ての物質において±0.62°であることが見出されている。
【0166】
一部の変形では、プロセッサは、センサからデータを連続して収集し、値が6σ閾値を超えるか否かを検査することによる薬剤の認識に向けて構成することができる。閾値を超えた状態で、ソフトウエアは、流れの中に異なる物質が存在する可能性が高いことを示し、順次測定される点に対して線形回帰を開始し、残差が6σ閾値を超えるか否かを検査する。この時点で、アルゴリズムは、偏位曲線の線形区間が終了したと結論付けることができ、低減されているデータセットの方向ベクトルを計算する。次に、方向ベクトルを特定の薬剤におけるベクトルに対して過去に識別された値と比較することができる。一部の変形では、分析は、角度に関して行うことができる。例えば、検出された偏位が74.4±0.62°の範囲に収まる場合には、注入された薬塊は塩化カリウムである可能性が高く、85.6±0.62°又は−118.2±0.62°の範囲に収まる場合には、注入された物質は、それぞれ硫酸マグネシウム又は水である。角度が既知の境界の外側にある場合には、アルゴリズムは、流れ内の未知の物質を報告する。上述のように、2つよりも多い次元を用いて同じ分析を実施することができる。
【0167】
この単純なアルゴリズムは、様々な方向に偏位をもたらす他の物質を予想角度に関する値を供給することによって認識するように適応させることができる。例えば、Sing−Tze Bow著「パターン認識及び画像処理(Pattern Recognition and Image Preprocessing)」、2002年、M.S.Nixon、A.S.Aguado著「特性抽出及び画像処理(Feature Extraction and Image Processing)」、2002年、及びD.Maltoni、D.Maio、A.K.Jain、S.Prabhakar著「フィンガプリント認識(Handbook of Fingerprint Recognition)」、2002年に説明されているように、感知システムによって多次元空間内に発生する曲線の差別化及び認識に対して更に精巧なパターン認識アルゴリズムを適用することができる。例えば、認識ソフトウエアは、人工ニューラルネットワーク及びファジー論理アルゴリズムに基づくものとすることができる。
【0168】
プロセッサは、潜在的な薬剤過誤を判断するためのアルゴリズムを含むことができる。例えば、プロセッサは、識別された薬剤、濃度、及び流量データに基づいて患者が受ける可能性が高い特定の薬剤の投与量を計算し、見積もった投与量を患者に対して一般的に安全な事前指定投与量制限と比較することができる。それによって薬剤過誤を予想することが可能になる。一部の変形では、プロセッサは、進行中の過誤の予測を改善し、及び/又は検出対象の過誤の数量及び種類を拡張するために、体重及び年齢等であるが、これらに限定されない患者データも組み込んでいる。患者データは、EMR(電子診療記録)から自動的に取得するか又はコンピュータを通じて手動でユニット内に又はプロセッサ内に直接プログラムすることができる。
【0169】
上述のように、プロセッサは、システムの残りの部分から全体的に又は部分的にローカル又はリモートのものとすることができる。例えば、一部の変形では、データ処理、薬剤認識、及びADE検出は、完全にセンサのローカルプロセッサにおいて行われる。他の変形では、データ処理は、センサのプロセッサにおいて少なくとも部分的に行われ、部分的にポンプのマイクロコントローラ(埋め込みマイクロコントローラ)において行われる。一部の変形では、検査フィンガプリントの処理の全ては、リモートプロセッサ、例えば、IVポンプのマイクロコントローラで行われるか、又は医療サービス提供者のネットワーク内のリモートサーバ上で行われる。
【0170】
上述のように、本明細書に説明する装置及びシステムは、装置の使用結果及び/又は作動データを記憶又は記録するためのログ又はメモリを含むことができる。一般的に輸液ログは、プロセッサ又はポンプのマイクロコントローラ又はその両方に記憶され、これらからダウンロードすることができる。検出された薬剤及び投与量のログは、プロセッサ、IVポンプ、又はリモート受信機ユニットに付随するメモリに記憶することができる。そのようなデータは、後に病院のITシステムに送信するか又はローカル装置からダウンロードすることができる。
【0171】
上述の変形の大多数は、アドミッタンス分光測定が未知の溶液の成分を識別すること及び成分の濃度を検証することの両方に使用されるシステム及び装置を含むが、一部の変形では、システム又は装置は、溶液の1つ又はそれよりも多くの成分の種類のみを判断するように構成することができる。
【0172】
本明細書に説明するアドミッタンス分光測定法の一変形は、溶液の1つ又はそれよりも多くの成分の種類の判断における特殊な場合を提供する。低濃度では(例えば、非常に希薄な条件下では)、溶液中の薬剤のうちの1つ又はその混合物の種類を実際の濃度に関係なく即座に判断することができる。
【0173】
上述のように、電気信号を含む多次元信号の角度依存性は、複素インピーダンスに基づいて特定の電極対において判断することができる。それによって溶液中の化合物の濃度がゼロから非ゼロ値に増大する時に化合物の種類の推定を可能にすることができる。ベクトルとして表現された場合、多次元信号のベクトルの方向は、化合物の種類(又は化合物の混合物の場合は複数の種類)を反映することができる。本出願人は、低濃度にあるいくつかの薬剤では、ac信号の同相成分及び直交成分からもたらされる角度は濃度に関連しないことを究明した。従って、角度は、薬剤の濃度ではなく、薬剤の特質だけに依存する。本明細書に説明するシステムは、多パラメータのものであり、かつ溶液中の各物質又は物質の混合物に対して複数の信号が記録されるので、その応答は、センサ信号空間内のベクトルによって表すことができる。
【0174】
この場合、一部の変形では、既知の担体輸液流体(例えば、0.9%食塩水溶剤、又は乳酸リンゲル液又はデキストロース溶液のような他の一般的な流体)を背景として測定を実施することができる。この場合、種類は、担体中で濃度が最初にゼロから増大する時に、最終的な濃度に関係なく判断することができる。従って、この変形では、座標の原点を既知の担体輸液流体(例えば、食塩水)に対して発生する信号ベクトルの終点に配置し、完全な信号ベクトルを使用するのではなく、この終点からの信号偏位を用いて演算を行い、既知の担体輸液流体点からの偏位を「信号」と呼ぶことが便利であると考えられる。センサ信号は、異なる種類の薬剤における異なる薬剤濃度及びパラメータに対して非線形応答を提供する可能性がある。非常に低い薬剤濃度では、センサ信号は、濃度にほぼ比例することになる(濃度に対する非線形応答は、既知の担体輸液流体点の近くでテイラー級数によって表すことができ、線形項のみが保持される)。この場合、線形項における定数を「感度」と呼ぶことができ、siがi番目のセンサ信号(又はチャンネル)の感度であり、ベクトル(s1,s2,...sn)を異なる種類の薬剤に対して異なることになる「感度ベクトル」と呼ぶことができる場合に、応答ベクトル(r1,r2,...rn)の各座標は、濃度Δcに比例し、ベクトル座標は、s1Δc,s2Δc,...snΔc、又はΔc*(s1,s2,...sn)である。濃度Δcの薬剤#1においてセンサが応答:

をもたらし、濃度ΔCにある薬剤#2において応答:

をもたらした場合には、これらの2つのベクトルの間の角度の余弦は次式のように計算することができる。

【0175】
ここで、

及び

は、それぞれ薬剤#1及び#2に対する感度ベクトルである。この考察は、低濃度の薬剤では、応答ベクトル間の角度は濃度に依存せず、特定の薬剤、例えば、薬剤の種類に対するセンサ感度にのみ依存することを指定している。従って、薬剤の濃度が低い限り、薬剤の濃度とは無関係に、応答ベクトル間の角度を薬剤の間で区別を付けるための簡単な基準値として使用することができる。自然に発生するノイズの存在下では、ベクトル間の角度は、ノイズの特徴及びセンサ応答の感度によって判断される有限の精度でしか計算することができない。実用目的では、単一の薬剤に対して実施された多くの測定において連続して測定された応答ベクトルの間で角度を計算することができ、そのようなデータセットに対して計算された標準偏差が、分解することができる最小角度、従って、最大利用可能分解能を定めることになる。高濃度では、所定の薬剤に対して注意する範囲の濃度の組に対して測定されたセンサ応答が、ルックアップテーブル又は多項式当て嵌めのような形態でメモリに記憶されることになる。これらの情報は、特定の薬剤に対して較正関数を確立することになる。

【0176】
従って、薬剤が識別されると、その濃度をセンサ応答から次式のように計算することができる。

これらの情報は濃度計算において重複し、従って、ノイズがチャンネル間で非相関又は部分相関のいずれのものであるかに基づいて、1つのセンサチャンネルだけ、いくつかのチャンネル、又は応答ベクトルの絶対値のいずれかを使用することができる。薬剤が時間tにおいて識別されると、センサ応答をデータベースから引き出すことができ、瞬間的な薬剤濃度を次式のように計算することができる。

注入の間のあらゆる時点で薬剤濃度が安全制限を超えた場合には、システムはアラームを与えることができる。薬剤が識別されると、応答が最初に食塩水点からの2つの標準偏差を超えた時点t0まで時間を遡って応答データを追跡することができる。次に、時間tにおける累積投与量D(t)を次式のように推定することができる。

ここでq(t)は、流量計によって測定された瞬間的な体積測定流量である。
【0177】
データ通信方法
本明細書に説明するシステムの様々な例において、システムの構成要素部分は、互いに直接接続することによって(有線)、又は無線によって互いに通信を行う。これらの装置及びシステムによってサンプリングされる医療流体の多くのものは導電性の水溶液であるから、一部の変形では、システムは、他のシステム構成要素がシステムの他の構成要素と通信を行う上で流体を利用することができる。例えば、サンプリングされるIV流体をデータ通信チャンネルとして使用することができる。センサデータストリームは、導電流体によって伝達される電気信号内に符号化することができる。センサデータは、IV流体を通信チャンネルとして使用することにより、センサアセンブリ及び/又はプロセッサユニットからこの流体を通じて送信することができる。電気信号は、導電性IV流体を通じて非常に低い信号レベルで送信することができる。異なる周波数及び/又は変調法を使用することにより、複数のデータチャンネルを符号化することができる。
【0178】
一部の変形では、IV配管をデータ通信チャンネルとして使用することができる。センサデータストリームは、IV配管によって伝達することができる信号(光学、音響、又は電気)内に符号化することができる。透明プラスチックであるから、IV配管をセンサ又はプロセッサから受信機に光学的、電気的、又は音響的に符号化された信号を送信する導管として使用することができる。
【0179】
IV流体は、光によってセンサ信号を伝導するための媒体として使用することができる。センサデータは、センサ信号が符号化された光を伝導するための媒体としてIV流体及び配管を使用することによって送信することができる。この場合、流体及び管のシステムは、光信号を封じ込め、1つの点から別の点に送信する導管として機能する上で光ファイバと同様に機能することができる。
【0180】
一部の変形では、センサ通信チャンネル(導ワイヤ、光ファイバ等)をIV配管内に組み込むことができる。センサデータを送信するためのデータ経路を設けるために、製造時に通信経路をIV配管内に組み込むことができる。導ワイヤ、導電性ポリマー、及び/又は光ファイバの組込みは、センサユニット及び/又はプロセッサユニットから受信機ユニット又はIVポンプに信号を送信するための手段を与えることになる。
【0181】
センサユニットプロセッサとポンプとは、配管又はIV流体を電気的、光学的、更に音響的(超音波)に通信を行うための媒体として用いてIVラインを通じて通信を行うことができる。ポンプに送信され、センサ及び/又はプロセッサからの情報は、流量、流動温度、気泡の存在、薬剤の種類、薬剤濃度、薬剤送達速度、及び担体流体の種類を含むことができる。
【0182】
本明細書に説明するシステム及び装置は、光学インタフェースによってセンサデータをIVポンプに通信することができる。通信は、光ファイバリンク又は自由空間光信号リンクのいずれかによるとすることができる。
【0183】
本明細書に説明するシステム及び装置は、シリアル、イーサネット(登録商標)、無線、又は光による通信手段を通じて、IVポンプを含む1つ又はそれよりも多くの他の装置(又はシステムの構成要素)と統合することができる。例えば、装置又はシステムは、イーサネット(登録商標)、無線、光、及び音響を含むが、これらに限定されないいずれか一般的なデータ通信インタフェースを通じてIVポンプに接続することができる。
【0184】
上述のように、センサユニットからリモートプロセッサへのデータ通信は、有線、無線、又は光手段によって実施することができる。この場合、プロセッサユニットは、センサユニットからある距離の位置に物理的に設置することができ、センサ信号は、イーサネット(登録商標)、無線、光、超音波を含む音響を含むが、これらに限定されない通信リンクを通じて通信される。
【0185】
一部の変形では、IV流体は、装置又はシステムによってRFアンテナとして使用することができる。この場合、プロセッサと、ポンプ及び病院IT基盤構造と、個々の通信装置(PDA、移動電話等)との間の通信をライン内のIV流体をアンテナとして用いて無線で確立することができる。RF信号は、IV配管又は流体バッグ内に収容された導電流体内に結合することができ、この流体は、信号を発し、受信するアンテナとして機能することになる。
【0186】
出力
本明細書に説明する未知の溶液の成分を判断するためのシステム及び装置は、情報出力(表示物、印刷物、警報光、音等)、メモリ出力(ログ、デジタル記録等)、制御出力(結果に基づいて装置の作動を変更する)、又はこれらの出力のあらゆる組合せを含むあらゆる適切な出力を含むことができる。
【0187】
例えば、一部の変形では、システム又は装置はディスプレイを含む。ディスプレイは、装置に結合するか又はそれに対してリモートに設置することができる。ディスプレイは、流体の1つ又はそれよりも多くの成分の種類及び/又は濃度を示す段階を含む、分析の結果の表示を行うことができる。ディスプレイは、命令及びシステム情報(例えば、装置を如何に作動させるかを示す)又は作動に関連するエラーコードを提供することができる。
【0188】
例えば、パネル又はディスプレイをセンサ、プロセッサ、又は装置と統合されたIVポンプ上に存在させることができる。ディスプレイは、どの薬剤(単一/複数の)が検出されたかを示すことができ、予想外の薬剤、濃度、及び投与量を警告する。薬剤の識別情報及びADEをセンサのプロセッサユニットにおいて示される進行中の警報又はメッセージ内に示すことができる。IV薬剤溶液の成分を判断するためのシステムがIVポンプと統合される変形では、システムとIVポンプの両方(又はIVポンプだけ)が、警報を与えるためにテキストディスプレイ又は様々な色及び点滅シーケンスを有する光を使用するディスプレイのようなディスプレイを含むことができる。警報(例えば、潜在的な薬剤有害事象によって起動される)は、潜在的なエラーであるか否かに関わらず薬品が投与されている時の可聴アラーム、光信号(光輝、色変化等)を含むことができるが、これらに限定されない。
【0189】
可聴警報信号を使用することもできる。同様に、特定の可聴警報信号は、センサシステムにより、又はIVポンプ(又は他の付随装置)により、又はIVポンプだけによって発生させることができる。そのような信号は、過剰量投与条件又は過少量投与条件、又は特定の患者に対して禁忌である薬剤を示すことができるが(要注意薬品の存在が誘発された場合)、これらに限定されない。
【0190】
視覚警報信号は、特定の色の点滅光又は光の連続的な光輝を含むことができる。視覚及び/又は聴覚の警報信号は、過誤が識別されると進行中の過誤の種類及び深刻度を符号化することができる。
【0191】
一部の変形では、システムは、システムが正しく/間違って接続したこと、又は接続されていないことを示すことができる。例えば、システム又は装置は、IVライン内のセンサの存在又は不在、及び/又はセンサのプロセッサとポンプのマイクロコントローラの間の通信が確立されているか否かを示すことができる。
【0192】
他のセンサ方式を使用するアドミッタンス分光測定の使用
本明細書では、種類及び濃度を判断する多パラメータセンサ測定の一般的な概念をアドミッタンス分光測定の特定の事例において展開している。しかし、これらの同じ一般的な概念を特定の溶液組成の特徴を反映する性質を検出する他の方式を用いて適用することができる。例を以下に提供するこれらの付加的な方式は、本明細書に説明するアドミッタンス分光測定装置及び方法との組合せに使用することができる。
【0193】
本明細書では、種類及び濃度を判断するのに使用される多パラメータ分析の一般的な原理を一般的な事例で表すことができる。例えば、屈折率及び比重に応答する2つの異なるセンサは、種類及び濃度を判断するのに使用することができる多パラメータデータを提供することができる。屈折率又は比重に応答するセンサは、導入された成分の特質(MW、極性のような性質)Δpとその濃度Δcの両方に依存する測定応答Δrを有することができる。従って、Δr=f(Δp,Δc)である。成分の特質が既知である場合には、1回の測定から濃度を推定することができ、その逆も同様である。複数のセンサが使用される場合には、測定応答は今度はベクトルΔr=(Δr1,Δr2)であり、このベクトルは、導入された成分の特質(Δp)とその濃度(Δc)の両方に依存する、つまりΔr=f(Δp,Δc)である。非常に低い濃度では、Δr≒(∂f(Δp,0)/∂c)*Δcである。値∂f(Δp,0)/∂cは濃度に依存せず、「感度ベクトル」と呼ぶことができる。センサが、それぞれ濃度Δc1及びΔc2にある2つの異なる物質Δp1及びΔp2に露出されると、応答ベクトルは、Δr1≒(∂f(Δp1,0)/∂c)*Δc1、及びΔr2≒(∂f(Δp2,0)/∂c)*Δc2になる。
【0194】
これらの2つのベクトルの間の角度の余弦は、次式のように、これらのベクトルのスカラー積をその絶対値で割算したものである。
cos(ψ) = (Δr1・Δr2)/|Δr1|/|Δr2| =
[(∂f(Δp1,0)/∂c)*Δc1・(∂f(Δp2,0)/∂c)*Δc2] /
(|(∂f(Δp1,0)/∂c)*Δc1|*|(∂f(Δp2,0)/∂c)*Δc2|)

(∂f(Δp1,0)/∂c)・(∂f(Δp2,0)/∂c) / |∂f(Δp1,0)
/∂c| / |∂f(Δp2,0)/∂c|.
【0195】
従って、一般的な意味では、感度ベクトルの間の角度は、物質の特質Δp1及びΔp2だけに依存し、濃度には依存しない。感度ベクトル及び濃度ベクトルを形成するパラメータは、アドミッタンス分光測定データを含むことができるが、上述のように、付加的なセンサ情報を含むことができる。更に、システム又は方法の次元、例えば、パラメータ数は、必要に応じて大きいとすることができ、一方、依然として、必要な処理が取り扱い可能な(例えば、実時間)レベルに保たれる。
【0196】
すなわち、特に本明細書に説明するアドミッタンス分光測定システムを含む多パラメータシステムは、薬剤(及びあらゆる他の成分)を含む未知の溶液が与えられた場合に薬剤の種類及び濃度を判断するのに使用することができる。複素アドミッタンス及びアドミッタンス分光測定の使用は、未知の溶液の識別において豊富なデータソースを提供するが、アドミッタンス分光測定の使用は他のセンサ方式にも適合する。付加的なセンサ方式の使用は、本明細書に説明するアドミッタンス分光測定法、システム、及び装置を強化することができる。これらの方法は、病院、薬局、又は類似の環境における薬剤検証において特に有用であるとすることができる。調製投与量の検証は、薬剤師及び薬剤師補助に対して高い価値のものである。調製薬品における何らかの過誤は、間違って調製された薬品が患者に投与された場合に非常に深刻な結果を有する場合がある。例えば、多パラメータ流体測定及び分析は、医療流体(例えば、IV流体)の組成を判断するのに、流体アドミッタンス感知と、多波長光学吸収感知と、多波長屈折率感知との組合せを使用することができる。
【0197】
上述のアドミッタンス測定技術に加えて、特定の用途において必要とされる場合には、電気化学センサ(例えば、電気化学電位センサ)、熱センサ(例えば、熱流速計センサを流体熱拡散率センサとして作動させることができる)、光センサ(例えば、屈折率測定センサ、透過センサ、吸光度センサ、分光計(測色計を含む)、濁度センサ、流体力学センサ(例えば、粘度計)、電気性質センサ(例えば、コンデンサーセンサ、pHセンサ、導電率センサ、及び誘導性センサ)、並びに流体変位又は流体せん断(例えば、共振器)センサというセンサ技術を使用することができる。流体の性質及びこれらの性質を測定するセンサ技術を下記の表に示している。
【0198】
(表1)

【0199】
異なるセンサ方式の適用例として、液体の屈折率に応答するセンサ及び液体の導電率に応答する別のセンサに注意する必要がある。薬剤のような添加成分が溶解した食塩水(0.9%食塩水)溶液のような担体流体が存在すると仮定する必要がある。更に、添加成分が液体中に存在する場合に両方のセンサの応答が価値r1及びr2に達すると仮定する必要がある。屈折率と導電率の両方が、添加された成分の濃度cと、分子量、極性、イオン強度のようなパラメータの集積効果であるその「特質」pとに依存することになる。個々のセンサの応答は、次式のように、添加された成分の濃度と特質の両方の関数である。

従って、個々のセンサの応答は、既知の成分の濃度を測定するか又は濃度が既知である場合に成分が何であるかを判断するようにのみ較正することができる。第2のセンサからの応答を利用すると、2つの変数を有する2つの式から構成されるこのシステムは、実際の場合の大部分において解くことができるので、次式のように、今度は成分の濃度と特質の両方を測定することができる。

【0200】
2つのセンサ応答は、2Dベクトルとして処理することができ、その式は、次式のようにベクトル形式で書くことができる。

【0201】
異なる特質p1,p2...nを有する成分では、このベクトルの終点は、濃度が変化する時に曲線:

...

を辿り、全ての曲線はゼロ濃度において、担体流体における応答である同じ点から始まる。注意する成分に対して、これらの「濃度曲線」又は「形跡」を実験的に記録し、データベースに記憶することができる。未知の溶液が測定されると、その応答を形跡データベースと照合することができる。
【0202】
この簡単な説明を一般性の損失なしに2つよりも多いセンサに拡張することができる。更に別のセンサは、ベクトルに更に別の次元を与え、単一成分の場合には、この情報は冗長的になる。この冗長性は、実験的な曲線が、自然に発生するノイズによって常に不鮮明にされ、あらゆる追加情報は、この技術の全体的な解決力を改善するので、実際には非常に有用である。
【0203】
組み合わされた電気(アドミッタンス分光測定)システムと光学系との一例を図13B〜図13Dに示しているプローブにおいて上記に例示した。流体が流れる透明チャンバを組み込んだセンサアレイの別の変形(測定セルとして構成された)を図15A及び図15Bに示している。この例では、250nmから1000nm又はそれよりも多い範囲の離散波長の光を発光する発光ダイオード(LED)のような光学源の組が、光路が透明流路に広がるように、指標付けられた検出器(発光する光学源に対して指標付けられた)の組の向かいに組み込まれる。光検出器は、応答が光学源(例えば、LED)に指標付けられた光ダイオード又は光トランジスタとすることができる。光学源及び検出器を互いに対して整列させ、発光/受光される光を制限するために、光学源及び検出器に対する不透明なホルダを使用することができ、このホルダは、視野角を判断し、かつ光学源及び検出器を流体容器又は(この例では)流動経路と整列させる開口を含むことができる。透明チャンバには、図15A及び図15Bに示している端面図に例示しているように、内部に流体が配置されるか、又は通過して流れる円筒形のプロフィールを含めることができる。流体チャンバは、上述したもの(例えば、図13Aに示している)のような統合された電気センサ要素に対する流体接近点を含む。
【0204】
合計で12個の測定チャンネルを生成する複素アドミッタンスを判断するための電気センサ(例えば、同相成分と直交成分の両方を測定する6つの固有の電極対)の6つまでの測定チャンネルを生成する光学系との組合せは、この設計では、測定対象の各化合物に関する固有のパターンを生成するのに使用される18個の独立した測定値の組を生成する。このセンサシステム又はセンサアレイは、薬局のような薬剤が調製されている分野における薬剤のベンチトップ測定に適用することができる。調製中の薬剤の測定及び識別は、上述のように、正しい薬剤、正しい濃度、及び正しい調合に対して薬剤を検証することになる。作動時には、電気(アドミッタンス分光測定)情報と光情報の両方をプロセッサに供給することができ、溶液の成分を判断するのに使用することができる。
【0205】
本明細書に説明する変形の多くのものは、検査中の医療溶液の化合物、無菌性、又は有効性を変化させることにはならない低電力アドミッタンス分光測定のような非破壊的感知技術を使用するが、特に、上述のベンチトップ変形のような実施形態では破壊的な薬剤感知法又はセンサを使用することができる。破壊的な技術は、上述の複素アドミッタンス法、装置、及びシステムに加えて、又はそれに連係して使用することができる。インラインIV輸液モニタとは対照的に、薬局環境では、識別工程は、試料とセンサの両方に対して破壊的なもの又は異物混入することができる。それによって適用可能な技術又は方式のリストが拡張され、これらの拡張された技術又は方式は、注意する薬剤分子が反応又は結合し、そのような反応又は結合の生成物が色変化によって光学的に、電気的に、又は共振器を利用する技術によって検出される化学的に改質される感知位置又は感知面の配列、ボルタンメトリー又はアンペロメトリー技術、溶液中の分子及びイオンが電気的に誘発された酸化還元反応に露出され、そこから固有のサイクリックボルタモグラムを記録し、含まれる化学種の識別に使用することができるサイクリックボルタンメトリーを含むように使用することができる。
【0206】
薬剤溶液は、電界発光をもたらす電流に露出することができ、収集されるスペクトルを薬剤識別に使用することができる。更に、薬剤溶液は、音響ルミネセンスをもたらす十分な強度の超音波に露出することができる、収集されるスペクトルを薬剤識別に使用することができる。薬剤溶液中に電気アーク放電を発生させることができ、そのスペクトルを薬剤識別に使用することができる。特徴的な信号を生成する他の破壊的な技術は、薬剤溶液を火炎中に噴射する段階を含むことができ、そのスペクトルを薬剤識別に使用することができる。薬剤溶液は、光を生成するのに十分な強度のマイクロ波電磁場に露出することができ、収集スペクトルを薬剤識別に使用することができる。
【0207】
一部の変形では、溶液の沸点を測定するのに小型の加熱器/温度計を使用することができ、薬剤識別のための付加的なデータとして沸点を使用する。温度関数における溶液成分の熱トリガ化学反応、濁度、析出、又は留分を薬剤識別に使用することができる。
【0208】
アドミッタンスセンサ作動の別のモードは、検査下の流体中の電気浸透流の援用を含むことができる。電気浸透流は、検査下の流体又は流体の流れ内のあらゆる不均一性を除去又は大幅に低減するセンサ面の近傍又はセンサ面における流体の置換又は入れ替えを促進する運動を滞留した流体中に発生させるか、又は更に別の対流を流れる流体中に発生させる。この現象の詳細説明は、Gonzalez、Ramos、Green、Castellanos、及びMorgan著「マイクロ電極上の電解質中に不均一ac電界によって誘発される流体流動、ii.線形二重層分析(Fluid flow induced by nonuniform ac electric fields in electrolytes on microelectrodes.ii.a linear double−layer analysis)」、Phys Rev E Stat Phys Plasmas Fluids Relat Interdiscip Topics、第61巻第4号パートB、4019〜4028ページ、2000年4月、Green、Ramos、Gonzalez、Morgan、及びCastellanos著「マイクロ電極上の電解質中に不均一ac電界によって誘発される流体流動、i.実験的測定(Fluid flow induced by nonuniform ac electric fields in electrolytes on microelectrodes.i.experimental measurements)」、Phys Rev E Stat Phys Plasmas Fluids Relat Interdiscip Topics、第61巻第4号パートB、4011〜4018ページ、2000年4月、及びN.G.Green、A.Ramos、A.Gonzalez、H.Morgan、及びA.Castellanos著「マイクロ電極上の電解質中に不均一ac電界によって誘発される流体流動、iii.流線の観察及び数値シミュレーション(Fluid flow induced by nonuniform ac electric fields in electrolytes on microelectrodes.iii.observation of streamlines and numerical simulation)」、Phys Rev E Stat Phys Plasmas Fluids Relat Interdiscip Topics、第66巻第2号パート2、026305ページ、2002年8月という文献に求めることができる。
【0209】
本明細書に説明する変形のうちのいずれにおいても、システムは、センサが感知する流体組成を均一化するために、センサの前に混合器又は攪拌器を含むことができる。上述のように、混合は、本明細書に説明するベンチトップの例では特に有用であるとすることができ、水溶液が溶液中に懸濁物を含む場合にも有用であるとすることができる。
【0210】
検査溶液(例えば、IV溶液)がセンサによって精査される前の溶液の混合は、測定精度を改善することができる。例えば、上述の電気浸透流を誘発するアドミッタンスセンサは、そのような付加的な混合から恩典を得ることができる。あらゆる適切な混合器又は混合法を使用することができる。例えば、US3,286,992に説明されているもののような静的流体混合器を例えば、注入口とセンサとの間に使用することができる。センサが、注入口の下流に配置される変形では、センサの近くの担体流体中に注入された薬塊のあらゆる不均一な濃度分布をセンサ較正によって考慮するか、又は混合器の使用を含む測定の時点で物理的に除去するかのいずれかを行うことができる。更に、1つ又はそれよりも多くのIV流体フィルタを使用することができる(例えば、US4,601,820及びUS5,992,643)。そのようなフィルタは、流動経路を制流又は不規則化する粗いメッシュを有する金網フィルタ布を含むことができ、専用静的混合器の代わりに(又はそれに加えて)混合において有用であるとすることができる。能動混合器を使用することができる。例えば、システムは、センサから上流又はその近くに設けられるか又はセンサアセンブリ又はセンサ基板内に統合された圧電アクチュエータのような超音波変換器を使用する混合器を含むことができる。
【0211】
別の感知方式を含むアドミッタンス分光分析システムの一例では、使い捨ての多パラメータセンサ要素を使用するシステムは、光学測定チャンネル、アドミッタンスセンサ、並びにデータ取得及び処理システムを含む。このシステムは、薬剤又は他の化合物の試料を測定し、多パラメータセンサデータセットを取得し、センサ内に発生したパターンを過去に得られた薬剤形跡に対して照合する。
【0212】
上述のように、システムの一部として収集された光学データは、少なくとも1つであるが、好ましくは、2つ又はそれよりも多くの波長からの屈折率及び/又は吸収を含むことができる。センサ要素(プローブ、アレイ、測定セルなどとすることができる)は、センサ要素を検査される流体と接触状態に置くハウジングを含むことができる。一部の変形では、図15A及び図15Bに例示しているように、屈折率及び吸収のような光学パラメータの測定のためのセンサ要素内に光路が含まれる。例えば、センサハウジングを通じる経路は、流体への光学的接近のための射出成形された光学窓を含むことができる。光センサの例は、発光ダイオード(LED)光源、光ダイオード、及び/又は光トランジスタ検出器、又はあらゆる他の適用可能な構成を含むことができる。固体LED装置から構成される光学源は、250nMから1500nMの範囲にわたるとすることができる目標光波長を有することができる。例えば、ベンチプロトタイプでは375nM及び900nMの光源を用いた。他の変形は、更に別のデータチャンネルを設けるために、250nMから150nM又はそれよりも多い範囲の更に別の波長における光源及び検出器を組み込むことができる。
【0213】
光センサを含むシステムは、各々が、特定の波長に対するフィルタを組み込む検出器の組と共に使用することができる白色LEDのような広帯域発光LED光源を使用することができる。例えば、一部の変形では、2つ又はそれよりも多くの光センサチャンネルが、2つ又はそれよりも多くの異なる波長における薬剤の光学吸収を測定する。一部の変形では、2つ又はそれよりも多くのセンサチャンネルは、2つ又はそれよりも多くの波長における薬剤の屈折率を測定する。一般的に、特定の波長において光学検出器はLED光源に指標付けされる。光源に対して外部又は内部にある光学フィルタを使用することができる。
【0214】
これらの例のいずれにおいても、上述のように、組合せ電気システム/光学系を含む信号調整のための電子機器を使用することができる。例えば、信号は、増幅(例えば、演算増幅器、ロックイン増幅器)、インピーダンスアナライザ、電流から電圧へのコンバータ、バッファ、及びフィルタなどによって調整することができる。信号処理は、データ取得の前に、データ取得の一部として、及び/又はデータ取得の後に行うことができる。例えば、アナログ/デジタルコンバータ、プロセッサ、特化された特定用途向け集積回路(ASIC)の回路、及び特化された機能のためのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)装置を含むデータ取得システムを使用することができる。
【0215】
認識論理を含むプロセッサは、光学データとアドミッタンスデータの両方を解釈するように適応させることができる。従って、得られたセンサパターンを既知のパターンと比較して薬剤及び濃度を識別するのに両方の種類のデータを使用することができる。
【0216】
本明細書に説明するシステムのうちのいずれも、自動化された試料調製及び検査される試料の充填との併用を含むか又はそれに適合することができる。例えば、使い捨て検査セルを使用することができる。ロボット流体処理を使用することもでき、本明細書に説明するシステムは、ロボット流体処理に適合することができる。これらのシステムのうちのいずれも、薬局、薬剤実験室、工場、及び薬剤濃度及び種類の測定を必要とすることになるあらゆる他の位置における薬剤のモニタリングを含む薬剤調製のモニタ及び検証の用途に対して使用することができる。
【0217】
従って、アドミッタンス分光測定の測定を補足するのに光学測定のような更に別の方式を使用することができる。上述のシステムの作動中には、測定が行われる間にLEDを一度に1つ点灯することができ、次に、消灯することができる。それによってチャンネル間のクロストークが回避され、LEDからの加熱が低減し、LEDの寿命が延長される。
【0218】
測定セル内の流動経路の円柱特質は、流体の芯を有する円柱レンズをもたらすことができ、従って、透過光を光源及び検出器の所定の波長における流体の屈折率、並びに不透明度の両方に対して高感度にする。図13B〜図13Dのセンサアレイに示している例に加えて、この例では、光学系は、4つの異なる光波長において測定を行うことにより、試料識別に向けて更に別の4つのデータチャンネルを設ける。
【0219】
LED又はレーザのような光学源に対して時間変化励起を印加することにより、得られる光学刺激は、時間変化特徴を有することになる。励起周波数とは別のノイズ及びスプリアス信号を阻止することによって検出を改善するために、ロックインのような周波数参照検出システムを光学検出器信号に適用することができる。この1つ又は複数の周波数が正しく選択された場合には、他のシステムからの干渉を最小限に止めることができ、この技術の感度はDC測定技術を上回って改善される。
【0220】
一部の変形では、図15Aに例示しているように、センサを円柱透明測定セルの一部として使用することができ、それによって屈折率と吸収との組合せ効果の同時測定が可能になる。薬剤は、円柱空間領域又は測定セル内で測定することができる。発光ダイオード又は他の光学源は、小さい開口部を通じて円柱空間領域軸に対して垂直な方向にこの円柱空間領域を照明するように構成される。検出器は、円柱流体空間領域の反対側に設けられ、光源及び流体空間領域の中心と整列する。使用される光源の特定の波長における屈折率及び吸収という流体性質は、検出器における照明の強度、従って、測定信号に影響を及ぼすことになる。屈折率変化は、光の集束又は非集束に影響し、照明される検出器の面積に影響を与え、従って、流体の屈折率に比例する信号を生成することになる。あらゆる吸収は合計強度に影響を与えることになり、従って、同様に測定信号に影響することになる。そのようなセンサを用いて2つ又はそれよりも多くの波長において測定を行うことにより、吸収効果と屈折率効果とを分離することができる。しかし、固有のセンサ応答の組を発生させて測定対象の流体に固有の形跡を生成するためには、これらのパラメータの分離は不要なものとすることができる。
【0221】
光学吸収は、赤外線からUVまでの範囲にわたる複数の光学波長において同時に測定することができる。特定の波長の吸収は、特徴的な吸収帯域を有する化合物に対して、溶液中の薬剤化合物を識別するのに使用することができる。特定の薬剤における吸収領域に対応する光を供給する段階をその材料の存在又は不在を確認するのに使用することができる。吸収のマグニチュードを濃度の判断に使用することができる。多チャンネル吸収システムは、各々が異なる波長を発光し、別々の検出器又は単一の検出器に関連付けられたLEDのような複数の異なる光学源、及び各LEDを順次点灯させて単一の検出器からの信号を測定するための切換システムを有することができる。測定される各異なる波長は、分析して薬剤の検出及び識別に使用することができる更に別のデータチャンネルをもたらす。
【0222】
色検出をセンサ方式として適用することができる。溶液中の多くの薬剤化合物は、一部の光波長の吸収に起因して、特定の色スペクトルを提供することになる。光を印加して複数の波長において検出を行うことにより、溶液の色を判断することができる。この技術は、3色ledに加えて光ダイオード又は光トランジスタを使用するか、又は白色光を印加することを通して、光が流体を通過した後に得られる色スペクトルを検出することによって実施することができる。TAOS光学系TS230Dなどのような色感知検出器チップを使用することができる。代替的に、光源と検出器の間に赤色、緑色、及び青色のフィルタの組を配置することができ、測定される3つ値から、流体の色座標が識別される。
【0223】
屈折率効果をエバネッセント波効果から分離するのに、複数の波長における屈折率(RI)検出を使用することができる。複数の波長において流体の屈折率を測定し、結果を比較することにより、流体の屈折率からもたらされる信号は、流体の物理的及び化学的な性質に対してより高い感度を有するエバネッセント波効果から分離することができる(エバネッセント波センサは、例えば、P.Suresh Kumar他著「水中の微量亜硝酸塩の検出に使用される光ファイバエバネッセント波センサ(A fibre optic evanescent wave sensor used for the detection of trace nitrites in water)」、2002年J.Opt.A:Pure Appl.Opt.4、247〜250ページ、並びにPotyrailo他著「マルチモード光ファイバに基づく近紫外エバネッセント波吸収センサ(Near−Ultraviolet Evanescent−Wave Absorption Sensor Based on a Multimode Optical Fiber)」、Anal.Chem.、1998年、70(8)、1639〜1645ページ、DOI:10.1021/ac970942vに説明されている)。例示的に、検出器は、複数の波長における振幅を同時に測定し、溶液の吸収スペクトル又は色を判断するのに、「TAOS Optics」からのTCS230のような色感知ICチップを使用することができる。
【0224】
エバネッセント波効果は、流体媒体中の変化に対して高い感度を有することが示されている。非被覆光ファイバをセンサとして使用することにより、反映面と液体界面の間にいかなる層も存在しなので、エバネッセント波が測定されることになる。これは、光ファイバ、並びに媒体−流体界面からの反射変化を有するあらゆる他の屈折率法に適用することができる。センサは、流体中のエバネッセント波蛍光発光効果に応答することができる。流体中の特定の材料の選択を可能にするために、選択性コーティングを光学界面に付加することができる。測定は、IRからUVまでの波長範囲で行うことができ、波長は、特定の流体を識別する特定の吸収又は蛍光発光領域に対して選択することができる。この測定は、IV流体の測定及び識別に適用することができる。
【0225】
流量センサ
本明細書に説明するシステム及び装置のうちのいずれも、流量を測定するための1つ又はそれよりも多くのセンサを含むことができる。例えば、図13B〜図13Dに例示している一般的なセンサアセンブリ内に流量検出器を組み込むことができる。この例におけるセンサアセンブリは、電気アドミッタンスセンサと流量計とを形成するパターン形成電極を含む。透明基板を光路として使用することができ、及び/又は基板に光に対する導波管として機能する透明層を付加することができる。代替的に、屈折率センサを形成するために、光ファイバ又は他の光学導波管を基板に結合することができる。
【0226】
一部の変形では、流量センサは、熱線流速計流量検出器である。薄膜熱線流速計を図16に示している(その変形が図13B〜図13D内に組み込まれる)。このセンサは、持続的流動における1つの点で非常に少量の熱を印加することによって流れを測定し、下流のセンサの温度変化から流量を判断することができる。図16では、薄膜金属トレースが3つの抵抗を形成する。1つを上流に有し、中央の加熱トレースの下流に1つを有することで、このセンサは、感度及び安定性を改善する差動構成に使用することができる。このセンサは、流動方向を測定する機能も有する。
【0227】
図16の設計は、金属堆積及びリソグラフィによって製造される薄膜流速計を含む。この設計は、1mmの長さ、10μmのトレース幅、10μmのトレース間隔という寸法を有する3つのトレースの組を含む。
【0228】
作動時に、流速計の流量センサ電極は、流体の熱的性質を測定することができる。例えば、上述したもののような熱線流速計は、流体の流量を測定するのに使用することができる(例えば、H.Bruun著「熱線流速計:原理及び信号分析(Hot−wire anemometry:principles and signal analysis)」、Oxford University Press、米国、1995年を参照されたい)。追加的又は代替的に、複数の導ワイヤ又はトレースが利用可能であり、流量が既知である場合には、この流量は、流体の熱伝導度及び/又は流体の熱容量の変化を測定するのに使用することができる。流量と流体の性質との同時測定のための熱線技術の基本的な概念は、キングの法則に基づく通常の較正を「較正定数」が流体の性質の較正関数になるように流体の性質(薬剤濃度のような)に拡張することができるということである。それに応じて、測定に2つの導ワイヤが利用可能である場合には、キングの法則では流体の性質の依存性が異なる2つの較正関数が各導ワイヤに対して存在する。この場合、2つのキングの式のシステムを速度と流体の性質という2つの未知数に対して、導ワイヤの実施及び測定システムのSN比によって判断される精度で解くことができる。キングの法則における較正係数は、混合物の熱伝導度に強度に依存し、従って、薬剤の特質及び濃度の高感度の関数である。類似の方式が、ガス混合物に対して開発されている(例えば、P.Libby及びJ.Way著「ヘリウム−空気混合物中で速度及び濃度を測定するための熱線プローブ(Hot−wire probes for measuring velocity and concentration in helium−air mixtures)」、AIAA Journal 第8巻第5号、976〜978ページ)。
【0229】
流体組成を判断するためのアドミッタンス分光分析装置の作動
作動時に、本明細書に説明する変形のうちのいずれも、複素アドミッタンスデータ、並びに流体から測定されたいずれか付加的なデータを含むフィンガプリントを発生させることができる。一般的に、フィンガプリントは、アレイと考えることができるデータ構造であるが、行列として配置する必要はない。フィンガプリントは、既知の値(既知のフィンガプリントと考えることができる)のライブラリと比較されることになるので、フィンガプリント内のデータの編成をフォーマットに定型化することができる。例えば、図17Aは、120個の電気チャンネル、従って、少なくとも120個のデータ点を有するアドミッタンス分光測定フィンガプリントの一変形を概念的に例示している。このフィンガプリントは、例えば、6つの固有の電極対を有するためのシステムにおいて特に有用である。上述のように、電極対は、対における電極のうちの少なくとも一方が、他の対の上にある流体接触面と比較して異なる流体接触面を示す場合は、一意的である(例えば、電極の流体接触面の組成又は幾何学形状が異なる)。図17Aでは、フィンガプリントデータ構造の視覚化表現を一方の側部に縦に電極対によって見出しを付けており、Au−Au、Au−Pd、Au−Ti、Pd−Pd、Pd−Ti、及びTi−Tiという6つの固有の電極の組合せを用いている。各電極対を用いて、横に10、20、30、40、50、60、70、80、90、及び100kHzと見出しを付けた10個の異なる周波数を調査する。上述のように、あらゆる適切な周波数を調査することができる。一部の変形では、DCオフセット、印加電力などを含む付加的なパラメータを変更することができる(アレイとして表される場合は付加的な次元として視覚化することができる)。各電極、及び各周波数では、複素アドミッタンスの同相成分1703及び直交成分1705の両方を判断する。従って、120個の異なるパラメータが存在する。アドミッタンス分光測定フィンガプリントの他の変形は、より多いか又はより少ないパラメータを含むことができ、上述したものうちのいずれかを含む他の方式から測定された付加的なパラメータを含むことができる。例えば、図17Bは、4つの光学チャンネル(IR1、IR2、Vis、UV)を含むフィンガプリントデータ構造の一変形の表現を示している。4つの光学チャンネルは、結合された吸収データと屈折率データとを保持することができる。
【0230】
測定されるパラメータ(又はその部分集合)の各々は、複数回サンプリングすることができ、値の集合は処理されて、フィンガプリント内に入力される値を与える(例えば、中間値、平均値、ピーク、最小値、中央値などを使用することができる)。
【0231】
図9に示しているもののような例示的な装置をプロトタイプとして構成し、既知の試料フィンガプリントを発生させること、及び未知の流体試料を調査して試料の種類及び濃度を判断することの両方に対して用いた。
【0232】
この例示的な装置では、インピーダンスセンサチャンネルの組は、図13B及び図13Dに示しているものと同様であった。この組では、Au−Au、Au−Pd、Au−Ti、Pd−Pd、Pd−Ti、及びTi−Tiという電気(複素アドミッタンス)測定チャンネルが利用可能である。
【0233】
プロトタイプでは、ロックイン増幅器によって複素ac応答を実数(同相)信号と虚数(又は直交)信号とに分離することができ、従って、各金属電極対から2つのデータチャンネルが設けられ、合計で12個のインピーダンスチャンネルが与えられる。これらの電極チャンネルの複素acインピーダンス応答をロックイン増幅器を用いて一定範囲の周波数(10、20、30、40、50、60、70、80、90、及び100kHz)で作動する電流モードで測定した。
【0234】
複素アドミッタンス測定に加えて、一部の検査では光学測定も行った。例えば、一部の検査では、流体の屈折率センサを用いた。一変形において、RIセンサを910nMで作動させ、IV流体中に浸漬される光ファイバの鋭角屈曲区画を通じて結合されたLED光源と光トランジスタ検出器とから構成した。更に、375nMで作動し、IV流体の流動を流動方向と垂直に通じて光ダイオード検出器に結合されたUV LED光源で構成された流体光学吸収センサを用いた。光学源LEDSは、約1〜3mAのレベルで調節可能な電流ソースによって駆動される。この駆動は、検出器の飽和を回避する低レベルの光強度を与える。この駆動レベルでは、流体に印加される光学強度は最大で正方cm当たり数マイクロワットになる。
【0235】
上述の例示的な装置では、用いたロックイン増幅器は、「National Instruments」のsbRIO装置によって測定され、ボルトを単位としてプロットされるX出力電圧とY出力電圧とを有する。励起電圧は、Vx=21.21mV RMS(30mV振幅)に設定され、X及びYがグラフ値である時に、センサ電極の間の複素アドミッタンスは、オームの逆数を単位として6.09×10-4(X=iY)と計算される。複素電流密度は、X及びYがグラフ値である時に、約1.83×10-4(X+jY)A/mm2である。
【0236】
図18A及び図18Bは、プロトタイプ装置を用いて調査した薬剤及び濃度を列記する表である。このリストは網羅的ではなく、最初に検査した薬剤の部分集合を示すことのみを意図したものである。更に、投与量/濃度曲線、並びに薬剤の組合せを調査した。図19A〜図19Tは、これらの化合物のうちの一部を含有する溶液に対して既知の濃度でのアドミッタンス分光分析フィンガプリントを示している。これらの溶液を生物学的担体溶液(例えば、生理食塩水)中で調製し、全体のアドミッタンス分光分析フィンガプリントを取得した。これらの例では、複素セルアドミッタンス((Y0’+iY0’’)を10〜100KHzの範囲で10KHz刻みで全ての電極組合せに対して全ての段階で5回づつ測定した。最初の測定を純粋な0.9%の生理食塩水中で全ての電極の組合せの間に実施し、全てのスペクトルを記憶した(食塩水基準スペクトル)。セル内の食塩水溶液を同じ食塩水中で調合した薬剤溶液で置換した。電極対の全ての間のスペクトルY1’+iY1’’を同じ手法で測定し、対応する電極対の間の食塩水基準スペクトルをデータから(Y1’−Y0’)+i(Y1’’−Y0’’)のように減算した。次に、セルを別の薬剤溶液で充填し、減算手続きを繰返した。各周波数段階において任意単位であるが同じスケールで同相値(Y1’−Y0’)をX軸に沿ってプロットし、直交値(Y1’’−Y0’’)をY軸に沿ってプロットした。
【0237】
各固有の電極対に関する同相対直交曲線を10個の異なる調査対象周波数で形成された曲線を示す図19A〜図19Tに示している。異なる軌跡から明らかなように、溶液中の各薬剤に対応するパターンは、調査対象の薬剤に固有である。
【0238】
アドミッタンス分光分析曲線の形状は、構造及び/又は電荷において密接に関連するような薬剤であったとしても、これらの薬剤を区別するのに使用することができる。例えば、図20A〜図20Bは、等しい濃度での構造的に類似する薬剤パンクロニウムとベクロニウムとの横並び比較を示している。グラフから明らかなように、2つの薬剤のアドミッタンス分光分析フィンガプリントは劇的に異なる。図21A〜図21Bに示しているエピネフリンとノルエピネフリンとの間、更に図22A〜図22Bに示しているモルヒネとヒドロモルフォンとの間で類似の比較が行われた。
【0239】
生理食塩水中のインスリンの0.01単位/mlから30単位/mlまでの異なる濃度でのアドミッタンス分光分析フィンガプリントを示している図23A〜図23Hによって示しているように、溶液中の薬剤濃度も、溶液のアドミッタンス分光分析フィンガプリントを変化させる。各電極対に対応する曲線は、濃度が増大又は低下する時に個々に漸次的に位置(複素アドミッタンスの同相成分と直交成分とを表す)を変化させる。図34A〜図34Hに示しているように、デキストロース(D5W)中の塩化カリウムの異なる濃度に対して類似のシステム列の曲線を発生させた。
【0240】
薬剤を含む化合物の混合物も、アドミッタンス分光測定の特徴的なパターンを提供する。得られるフィンガプリントは、同じ化合物単独のものと比較した場合であっても混合物の組成及び濃度に固有である。例えば、図25Aは、2mg/mlのドーパミンのアドミッタンス分光分析フィンガプリントを示しており、図25Bは、0.008mg/mlのノルエピネフリンのアドミッタンス分光分析フィンガプリントを示している。2mg/mlのドーパミンと0.008mg/mlのノルエピネフリンとの混合物を図25Cに示しており、この混合物は、完全に固有のパターンを有する。図26A〜26Cは、ミダゾラム(0.5mg/ml)及びヘパリン(100単位/ml)、並びに同じ濃度にある両方の混合物を調べる混合物の別の例を示している。
【0241】
図30A〜図30Cは、硬膜外で一緒に使用される2つの薬剤の混合物、フェンタニル+ブピビカインを示す別の例を示している。図30Aは、0.1%のブピバカインに関するアドミッタンスフィンガプリントの表現を示しており、図30Bは、クエン酸フェンタニル(2mcg/ml)のアドミッタンスフィンガプリントの表現を示している。図30Cは、ブピバカイン(0.1%)とクエン酸フェンタニル(2mcb/ml)との混合物の固有の組合せフィンガプリントを示している。これらのフィンガの全てを同じXYスケールに示している。薬剤の安定性及び/又は異物混入を検出するためのシステムの機能を示すのに、同じ薬剤を使用することができる。例えば、図31Aは、新たに調製されたブピバカイン(0.1%)とクエン酸フェンタニル(2mcg/ml)との混合物に関するアドミッタンスフィンガプリントの表現を示している。図31Bは、有効期日を3日過ぎたブピバカイン(0.1%)とクエン酸フェンタニル(2mcg/ml)との混合物に関するアドミッタンスフィンガプリントの表現を示している。図31Aの混合物は、検査の2日前である2010年1月26日に調製し、図31Bの混合物は、検査の93日前である2009年10月27日に調製した。両方の薬剤混合物を同じ日に検査した。
【0242】
プロトタイプを用いて取得したアドミッタンス分光分析フィンガプリントは、有意な安定性及び再現性も示した。例えば、図27A〜図27は、2mg/mlのドーパミンを10kHzで測定した場合の複素アドミッタンス測定の安定性(図27Aの同相と図27Bの直交の両方の)を示している。y軸は、測定回数を示しており、x軸は、測定値を示している。50kHz及び100kHzの周波数を調査した図28A〜図28B及び図29A〜図29Bに示しているように、この安定性は周波数に依存しない。
【0243】
上述したもののようなアドミッタンス分光分析フィンガプリント(例えば、図19A〜図26C)は、これらの既知の物質のパターンを認識するようにプロセッサに学習させるのに用いられた。次に、プロセッサに、「ノイズ」を人為的に付加した一連の「未知」の混合物を与えた。未知の混合物は、検査済みの濃度範囲にある検査済み化合物のリストから選択した。プロセッサは、元のフィンガプリント信号上への30%に至るまでのノイズ(不規則ノイズ)の付加の後でさえも、未知の化合物の全てを正しく識別した。
【0244】
同じく、他の例示的なシステムも設計した。例えば、一変形において、IV流体のモニタ及び識別システムに向けて、IVライン内のIV供給源(バッグ)とカテーテルとの間で流れが患者に流入する箇所へのルアーロック継手を用いた挿入に向けて構成された複数のアドミッタンス電極を含む複素アドミッタンスシステムを開発した。代替的に、複素アドミッタンスシステムは、製造時にIV配管セット内に組み込むことができる。いずれの場合にも、複素アドミッタンスシステムは、好ましくは、最後の注入口の下流に設けられることになる。複素アドミッタンスシステムは、2つ又はそれよりも多くのセンサ技術を含み、複数のデータチャンネルから連続データストリームを供給する。このデータは、ソフトウエアアルゴリズムによって処理され、センサ応答パターンが発生する。流体又は薬剤がIVライン内に注入されるか、又はそこを通じて流れ始めると、センサ応答は変化することになり、応答の新しい組が、既知のパターンのデータベースと比較される。符合が見つかると、システムは、薬剤、並びに瞬間的な濃度及び流量を示す。濃度及び流量を時間と共に積分することにより、合計投与量が計算され、かつ表示される。
【0245】
薬剤識別のためのIVセンサシステムの別の例は、少なくとも2つの電極、好ましくは、6つ又はそれよりも多くの電極対上でのアドミッタンス測定に向けて構成された複数の複素アドミッタンス電極を含む。センサシステムは、1つ又はそれよりも多くのアドミッタンス測定チャンネル及び1つ又はそれよりも多くの光学測定チャンネルを組み込むことができる。一部の変形では、システムは、12個のアドミッタンス測定チャンネル及び3つ又はそれよりも多くの光学測定チャンネルを組み込んでいる。アドミッタンスの測定は、好ましくは、1Hzから1Mhzまでの範囲、より好ましくは、1kHzから500kHzまでの範囲、更に好ましくは、5kHzから200kHzまでの範囲の複数の周波数に実施することができる。光センサは、吸収と屈折率とに対して同時に感度を有することができ、エバネッセント波効果の測定を含むことができる。流体光学吸収及び屈折率センサは、250nMと1500nMの間の調整可能な波長源と共に250nMと1500nMの間の個別の波長で作動させることができる。吸収及び屈折率の複数の波長における測定は、認識アルゴリズムに複数の次元を与えることができる。付加的なセンサは、白色光に基づく色センサ及びフィルタを利用する検出システムを含むことができる。例えば、白色光LEDと、赤色、緑色、及び青色のフィルタを組み込む検出器との併用である。赤色、緑色、及び青色の光源に基づく色センサと単一の検出器との併用で、各光源の強度が順次測定される。光センサは、パルス又は正弦波のような時間変化励起で作動させることができる。時間変化信号に対する光学検出器は、ロックイン検出法を組み込むことができ、光学源は、改善された安定性に向けて強度フィードバックを組み込むことができる。本明細書に説明するプロセッサのうちのいずれも、既知の材料を検査することによって発生する学習パターンから薬剤認識に適用され、多次元データクラスター化によるパターン認識及び/又はニューラルネットワークアルゴリズムを組み込むことができる。
【0246】
用途/使用方法
一般的に、本明細書に説明する装置及びシステムは、流体、特に静脈内流体又は非経口流体のような医療流体の組成を判断するのに使用することができる。組成は、流体の成分の全て又は部分集合に対して判断することができる。本明細書に説明するシステム、装置、及び方法の特別な長所は、これらのものを担体溶液自体の識別を含む溶液中の成分の全ての種類又は濃度のあらゆる特定、又は種類と濃度の両方の本質的に同時の特定を行うように構成することができることである。更に、本明細書に説明するシステムは、非常に迅速な応答時間(マイクロ秒又は秒程度の)を有することができ、実時間で制御又は警報を与えるように構成することができる。
【0247】
特に、本明細書に説明するシステム及び方法は、薬局の保存溶液の検証に対して使用することができる。例えば、複素アドミッタンスシステムは、生理食塩水、リンゲル溶液、2.5%、5%、又は10%のデキストロース水溶液、5%デキストロースの1/4生理食塩水溶液、1/2生理食塩水溶液、又は生理食塩水溶液、乳酸リンゲル溶液、5%デキストロースリンゲル溶液、5%デキストロース乳酸リンゲル溶液、6%デキストランのD5W溶液又は生理食塩水溶液、10%果糖の水溶液又は生理食塩水溶液、又は10%転化糖の水溶液又は生理食塩水溶液等であるがこれらに限定されない静脈内に供給されるか、又は静脈内供給に向けて薬品溶液を調剤/調合するのに使用される特定の一般的に使用される保存溶液を認識するようにプログラムすることができる。不適切に作成されたか又は有効期限満了の保存溶液は、適正に作成された溶液の形跡から逸脱する形跡をもたらすことになり、システムは、この不符合を検出し、オペレータに警告することになる。
【0248】
一部の変形では、本明細書に説明する複素アドミッタンスシステム及び装置は、純正の薬局医療/薬品溶液の検証及び定量化に対して使用することができる。例えば、複素アドミッタンスシステムは、上記に列記した生理食塩水、デキストロースのような特定の薬剤化合物の適合担体溶液中で標準濃度及び非標準濃度にあるこれらの薬剤化合物を認識するようにプログラムすることができる。システムは、薬剤及び担体溶液の独立した識別/確認をもたらし、担体溶液中の薬剤の濃度を推定することができる。薬剤濃度又は担体溶液が病院/診療所の通常の調合慣例又は推奨投与量と符合しない場合には、システムは、オペレータに対して警告を発生させることになる。システムは、過誤メッセージ及び可能な治療段階を発生させるのに使用される指針に関して案内又は提案を提供することができる。システムは、薬剤、投与量、及び担体溶液の電子又は紙の記録を作成することができる。
【0249】
本明細書に説明する複素アドミッタンスシステム及び装置は、組合せ薬局医療/薬品溶液の検証及び定量化を可能にすることができる。例えば、複素アドミッタンスシステムは、上記に列記した生理食塩水、デキストロースのような薬剤化合物の適合担体溶液中で標準濃度及び非標準濃度で一般的に互いに調合されるこれらの薬剤化合物の特定の組合せを認識するようにプログラムすることができる。システムは、薬剤及び担体溶液の独立した識別/確認をもたらし、担体溶液中の各薬剤の濃度を推定することができる。薬剤濃度又は担体溶液が病院/診療所の通常の調合慣例又は推奨投与量と符合しない場合には、システムは、オペレータに対して警告を発生させることになる。システムは、過誤メッセージ及び可能な治療段階を発生させるのに使用される指針に関して案内又は提案を提供することができる。システムは、薬剤、投与量、及び担体溶液の電子又は紙の記録を作成することができる。
【0250】
一部の変形では、複素アドミッタンスシステム及び装置は、偽造薬品の識別に対して使用することができる。例えば、複素アドミッタンスシステムは、特定の薬剤化合物を認識するようにプログラムすることができる。偽造薬品の場合には、偽造薬剤の異なる構成が検出されることになり、警告を発生させることができる。
【0251】
同様に、複素アドミッタンスシステムは、汚染又は異物混入された薬品の識別において有用であるとすることができる。複素アドミッタンスシステムは、特定の薬剤化合物を認識するようにプログラムすることができる。汚染又は異物混入された薬品の場合には、汚染物又は添加物が予想外の信号をもたらすことになり、センサシステムは、この潜在的に危険な状態を警告することになる。
【0252】
複素アドミッタンスシステムは、不適切な保存又は調剤条件、又は薬品に対して許容可能な期限を超えた長期保存に起因して有効性を失ったか又は分解した液体薬品の識別において有用であるとすることができる。複素アドミッタンスシステムは、特定の薬剤化合物を認識するようにプログラムすることができる。不適切な保存又は調製に起因して又は長期保存中の故に分解した薬品の場合には、分解生成物は、より低濃度の活性薬剤との組合せで予想外の信号をもたらすことになり、センサシステムは、この潜在的に危険な条件を警告することになる。
【0253】
複素アドミッタンスシステム、装置、及び方法は、麻酔薬の乱用検出に対して使用することができる。麻酔薬の代用又は希釈及びそれに続く乱用は、医療サービス環境において問題である。適正な疼痛管理は、患者が、処方された薬品投与量を受けることを必要とする。濃度及び/又は合計投与量のあらゆる低下は、不要な患者の苦しみをもたらすことになる。本明細書に説明する複素アドミッタンスシステム及び装置は、麻酔薬の乱用検出に対して使用することができる。低い濃度又は少ない投与量、又は溶液の代用は、本出願人の複素アドミッタンスシステムによって検出することができ、患者が適正な投与量を受けることを保証するように警告又はログを発生させることができる。
【0254】
本明細書に説明する複素アドミッタンスシステム及び方法は、薬品製造業者、調合、ロットなどを識別するのに使用することができる。複素アドミッタンスシステム、装置、及び方法は、異なる製造業者によって供給される同じ薬剤の固有のフィンガプリントを認識するように学習させることができる。薬剤を生成する異なる手段、並びに異なる緩衝剤及び安定剤等が検出されることになり、薬剤及び製造業者を識別するのにこれらを使用することができる。
【0255】
一部の変形では、複素アドミッタンスシステム、装置、及び方法は、臨床研究において患者に供給される研究上の薬剤及び投与量を識別及び記録するのに使用することができる。システムは、研究薬剤の固有の形跡を認識するように学習させて、臨床試験においてこれらの薬剤の投与を記録するのに使用することができる。システムは、対照薬剤又はプラセボの固有の形跡を認識するように学習させて、臨床研究において適切な患者内のその存在を記録するのに使用することができる。
【0256】
複素アドミッタンスシステム及び装置は、自動IV調製の工程中の制御及び検証に使用することができる。システムは、一般的なIV及び腫瘍学上のIVそれぞれの調製を自動化して、製品がロボットから配出される前の工程中及び最終段階の製品の確認を可能にする、RIVA(ロボットIV自動化−インテリジェント病院システム)又はCytocare(医療ロボット)システムのようなロボットIV調製システム内に組み込むことができる。システムは、適正な成分が適正な位置に充填され、かつ各成分の原材料に対する使用最低仕様に依然として従うことを検証するために、各IV溶液中に組み合わせるべき原材料の工程中の検証を可能にすることができる。
【0257】
本明細書に説明する複素アドミッタンス装置及びシステムは、薬剤製造に対して使用することができる。例えば、複素アドミッタンスシステム、装置、及び方法は、薬剤調合施設において、薬剤及びバイオ技術製品の調合及び製造に対する薬剤調合システム、バイオ反応器などのようなシステムのオンラインでの工程のモニタリング及び制御を提供にするのに使用することができる。システムは、1つ又はそれよりも多くの望ましい製造中の/バイオ反応器の生成物の存在及び量を測定し、及び/又は1つ又はそれよりも多くの望ましくない副産物の存在及び量を測定することができる。システムは、バイオ反応器又は調合液槽の調節を必要とする時間、及びシステムが採取に向けて準備が整う時間を判断するのに使用することができる。
【0258】
一部の変形では、複素アドミッタンスシステム及び装置は、血液及び体液の検査のための医療用途に対して使用することができる。例えば、本明細書に説明する複素アドミッタンスシステム、装置、及び方法は、ベンチスクリーン又はある一定の場合には埋め込み型モニタリング装置のいずれかとして、血液中の血中グルコース、尿素濃度、製薬薬剤レベルなど、尿、血漿、リンパ、涙、唾液、及び他の体液の測定に対して使用することができる。
【0259】
本明細書に説明する複素アドミッタンスシステム及び装置は、生物学的流体中の不法薬剤及びアルコールのレベルに対して検査するのに使用することができる。本明細書に説明する複素アドミッタンスシステム、装置、及び方法は、コカイン、マリファナ、MDMA、メタンフェタミン、LSD、ヘロインのような不法薬剤、及び血液中のヒドロコドン、オキシコンチン、及びステロイドのような転用合法薬品、尿、血漿、リンパ、涙、唾液、及び他の体液の存在及び濃度を測定するのに使用することができる。
【0260】
本明細書に説明する複素アドミッタンス装置、システム、及び方法は、複雑な製薬流体中の主要原材料の測定又は検証において有用であるとすることができる。例えば、複素アドミッタンスシステムは、20種又はそれよりも多い原材料を含有する場合があるが、存在又は比率が患者の安全に対して重要な一部のものを含有するTPN(全体非経口栄養輸液)のような非常に複雑な製薬流体の主要成分の存在又は不在の測定に対して使用することができる。システムは、インスリン、グルコース、デキストロース、ヘパリン、マグネシウム、カリウム、カルシウム、及び他の主要化合物のような、非常に複雑な製薬流体中に存在する主要成分の比率を推定するのに使用することができる。
【0261】
本明細書では、アドミッタンス分光測定を用いて溶液の組成を判断する方法、装置、及びシステムを具体例及び実施例を用いてある程度詳細に説明したが、そのような具体例及び実施例は、理解の明瞭化の目的に限ったものである。本明細書の教示を踏まえると、当業者には、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、これらの装置及びシステムにある一定の変形及び修正を加えることができることが直ちに明らかであろう。
【符号の説明】
【0262】
103、103’、103’’ 流体接触領域
105、105’、105’’ 電極
107 プローブ
121 信号発生器
131 信号受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液中の化合物又は化合物の混合物の種類及び濃度を判断する方法であって、
第1の面を溶液に溶液の境界層が該第1の面上に形成されるように接触させる段階と、
前記境界層での前記第1の面と前記溶液中の前記化合物又は化合物の混合物との間の面相互作用を判断するために該第1の面を調査する段階と、
前記面相互作用に基づいて1つ又はそれよりも多くの前記化合物の前記種類及び濃度を判断する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記面相互作用及び前記溶液のバルク性質に基づいて前記1つ又はそれよりも多くの化合物の前記種類及び濃度を判断する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の面を前記溶液に接触させる段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の面を前記溶液に接触させる前記段階は、該第1の面を水溶液中で接触させる段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の面を前記溶液に接触させる前記段階は、該第1の面を静脈内薬剤溶液に接触させる段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の面は、電極の非反応性面を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記調査する段階は、電気信号を前記第1の面に印加し、かつ複素アドミッタンスを測定する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記調査する段階は、複数の電気信号を印加し、かつ各信号での複素アドミッタンスを測定する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記調査する段階は、電気化学反応に対する閾値よりも低い電気信号を印加する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記調査する段階は、前記第1の面上の前記境界層の動的平衡を乱さないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記判断する段階は、前記溶液中の前記1つ又はそれよりも多くの化合物の前記種類及び濃度を同時に判断する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記判断する段階は、面相互作用のインジケータを面相互作用が記憶されたライブラリと比較して前記溶液中の前記1つ又はそれよりも多くの化合物の濃度及び種類を判断する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記判断する段階は、面相互作用のインジケータを面相互作用が記憶されたライブラリと比較して前記溶液中の前記化合物の全ての濃度及び種類を判断する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
水溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類、濃度、又は種類と濃度を判断する方法であって、
1対の電極を水溶液の境界層が該電極の一方の第1の面上に形成されるように該水溶液に接触させて置く段階と、
前記電極の対の間に電気励起を印加して前記第1の面での複素アドミッタンスを判断する段階であって、該印加電気励起が、該第1の面での電気化学反応に対する閾値レベルよりも低い電圧をもたらす前記段階と、
前記電極の間で測定された前記複素アドミッタンスに基づいて前記水溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類、濃度、又は種類と濃度を判断する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記印加電気励起は、500mVよりも低い電圧をもたらすことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記種類、濃度、又は種類と濃度を判断する前記段階は、該種類及び濃度を同時に判断する段階を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
複数の電流周波数で前記複素アドミッタンスを記録する段階を更に含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記電極の対は、異なる材料で作られた導電面を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
第3の電極を水溶液の境界層が該第3の電極の第1の面上に形成されるように該水溶液と接触させて置く段階を更に含み、
前記第3の電極の前記第1の面は、前記電極の対の電極上に導電面を形成する材料とは異なる材料で形成される、
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項20】
電気励起を印加する前記段階は、複数の周波数で電流を印加する段階を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項21】
電気励起を印加する前記段階は、流体中の熱変動エネルギよりも低いレベルで電気エネルギを印加する段階を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項22】
電気励起を印加する前記段階は、前記第1の面上の前記境界層の平衡を乱さないレベルで励起を印加する段階を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記判断する段階は、前記複素アドミッタンスを複素アドミッタンスのライブラリと比較して、前記水溶液中の前記1つ又はそれよりも多くの化合物の種類、濃度、又は種類と濃度を判断する段階を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記判断する段階は、異なる周波数の前記複素アドミッタンスを複素アドミッタンスのライブラリと比較して、前記水溶液中の前記1つ又はそれよりも多くの化合物の種類、濃度、又は種類と濃度を判断する段階を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記判断する段階は、前記水溶液中の前記化合物の全ての種類及び濃度に対して、異なる周波数の前記複素アドミッタンスを複素アドミッタンスのライブラリと比較する段階を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項26】
アドミッタンス分光測定によって薬剤溶液の種類を判断するためのシステムであって、
流体接触面を有する複数の電極を含むセンサと、
前記センサの前記流体接触面からの印加に向けて複数の周波数で電気刺激を供給するように構成された信号発生器と、
前記複数の周波数で前記センサから複素アドミッタンスデータを受信し、かつ該複素アドミッタンスデータを所定の複素アドミッタンスデータのライブラリと比較することによって薬剤溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類、濃度、又は該種類及び濃度を判断するように構成されたプロセッサと、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項27】
前記センサの前記電極の前記流体接触面は、複数の異なる材料で形成されることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記センサの前記電極の前記流体接触面は、複数の異なる幾何学形状で形成されることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記センサは、異なる材料、異なるサイズ、又は異なる材料と幾何学形状で形成された少なくとも3つの異なる流体接触面を含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項30】
前記センサは、単回使用として構成されることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項31】
前記センサの前記流体接触面は、前記所定の複素アドミッタンスデータと符合する所定の基準に対して較正されることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項32】
前記センサは、流体接触面の少なくとも6つの独立した対を含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項33】
前記センサから複素アドミッタンスデータを受信し、かつそれを前記プロセッサに転送するように構成された信号受信機を更に含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項34】
前記薬剤溶液を前記センサの前記流体接触面が該薬剤溶液に接触するように受け取るように構成された測定セルを更に含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項35】
前記信号発生器は、約1Hzから約1MHzの電流周波数を印加するように構成されることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項36】
前記溶液中の前記1つ又はそれよりも多くの化合物の前記種類及び濃度を表示するように構成されたディスプレイを更に含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項37】
前記プロセッサは、前記薬剤溶液の担体希釈剤の種類を判断するように更に構成されることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項38】
前記信号発生器からの信号の印加を調整し、かつ前記センサから複素アドミッタンスデータを取得するように構成されたコントローラを更に含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項39】
前記プロセッサは、前記センサから受信した前記複素アドミッタンスデータと所定の複素アドミッタンスデータの前記ライブラリとの間の最も可能性が高い符合を判断するように構成された認識論理を含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項40】
前記認識論理は、所定の複素アドミッタンスデータの前記ライブラリに基づいて学習させた適応ニューラルネットワークを含むことを特徴とする請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
所定の複素アドミッタンスデータの前記ライブラリは、担体希釈剤中の複数の個々の化合物及び化合物の混合物に対して複数の周波数で測定された複素アドミッタンスデータを含むことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項42】
前記センサは、複素アドミッタンス電極ではない第2のセンサ要素を更に含み、更に、
前記プロセッサは、前記複素アドミッタンスデータに加えて前記第2のセンサ要素からのデータを用いて、前記薬剤溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の前記種類及び前記濃度の両方を判断するように構成される、
ことを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項43】
前記第2のセンサ要素は、光センサを含むことを特徴とする請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記プロセッサは、前記センサから前記複数の周波数の複素アドミッタンスデータを受信し、かつ該複素アドミッタンスデータを所定の複素アドミッタンスデータのライブラリと比較することによって前記薬剤溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の前記種類及び濃度を同時に判断するように構成されることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項45】
アドミッタンス分光測定によって静脈内薬剤溶液の種類、濃度、又は種類と濃度を判断するためのシステムであって、
流体接触面を有する複数の電極を含むセンサと、
前記センサの1つ又はそれよりも多くの流体接触面からの印加に向けて複数の周波数で電流を供給するように構成された信号発生器と、
前記センサの1つ又はそれよりも多くの流体接触面から複素アドミッタンスデータを受信するように構成された信号受信機と、
前記信号発生器からの信号の印加と前記センサからの複素アドミッタンスデータの取得とを調整して静脈内薬剤溶液のアドミッタンス分光分析フィンガプリントを作成するように構成されたコントローラと、
前記アドミッタンス分光分析フィンガプリントを受信し、かつ該アドミッタンス分光分析フィンガプリントを担体溶液中の複数の既知の化合物及び化合物の混合物から複数の周波数及び既知の濃度で測定された複素アドミッタンスデータを含むアドミッタンス分光分析データのライブラリと比較することによって前記静脈内薬剤溶液の種類、濃度、又は種類と濃度を判断するように構成されたプロセッサと、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項46】
前記センサの前記電極の前記流体接触面は、複数の異なる材料で形成されることを特徴とする請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
前記センサの前記電極の前記流体接触面は、複数の異なる幾何学形状で形成されることを特徴とする請求項45に記載のシステム。
【請求項48】
前記センサは、異なる材料、異なる幾何学形状、又は異なる材料と幾何学形状で形成された少なくとも3つの異なる流体接触面を含むことを特徴とする請求項45に記載のシステム。
【請求項49】
前記センサは、単回使用として構成されることを特徴とする請求項45に記載のシステム。
【請求項50】
前記センサの前記流体接触面は、アドミッタンス分光分析データの前記ライブラリの複素アドミッタンスデータと符合する所定の基準に対して較正されることを特徴とする請求項45に記載のシステム。
【請求項51】
前記静脈内薬剤溶液を前記センサの前記流体接触面が該静脈内薬剤溶液に接触するように受け取るように構成された測定セルを更に含むことを特徴とする請求項45に記載のシステム。
【請求項52】
前記信号発生器は、約1Hzから約1MHzの電気励起周波数を印加するように構成されることを特徴とする請求項45に記載のシステム。
【請求項53】
前記静脈内溶液中の前記1つ又はそれよりも多くの化合物の前記種類及び濃度を表示するように構成されたディスプレイを更に含むことを特徴とする請求項45に記載のシステム。
【請求項54】
前記プロセッサは、前記静脈内薬剤溶液の前記担体溶液の種類を判断するように更に構成されることを特徴とする請求項45に記載のシステム。
【請求項55】
前記プロセッサは、前記アドミッタンス分光分析フィンガプリントとアドミッタンス分光分析データの前記ライブラリとの間の最も可能性が高い符合を判断するように構成された認識論理を含むことを特徴とする請求項45に記載のシステム。
【請求項56】
前記認識論理は、アドミッタンス分光分析データの前記ライブラリに対して学習させた適応ニューラルネットワークを含むことを特徴とする請求項55に記載のシステム。
【請求項57】
所定の複素アドミッタンスデータの前記ライブラリは、担体溶液中の複数の個々の化合物及び化合物の混合物に対して複数の周波数で測定された複素アドミッタンスデータを含むことを特徴とする請求項45に記載のシステム。
【請求項58】
前記センサは、第2のセンサ要素を更に含み、更に、
前記プロセッサは、前記複素アドミッタンスデータに加えて前記第2のセンサ要素からのデータを用いて、前記静脈内薬剤溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の前記種類及び前記濃度の両方を判断するように構成される、
ことを特徴とする請求項45に記載のシステム。
【請求項59】
前記第2のセンサ要素は、光センサを含むことを特徴とする請求項58に記載のシステム。
【請求項60】
アドミッタンス分光測定によって薬剤溶液の種類、濃度、又は種類と濃度を判断するためのベンチトップ薬剤溶液アナライザであって、
流体接触面を有する複数の電極を含み、薬剤溶液の試料を受け取るように構成された測定セルと、
前記測定セルの電極の1つ又はそれよりも多くの対からの印加に向けて複数の周波数で電気励起を供給するように構成された信号発生器と、
前記測定セルの電極の1つ又はそれよりも多くの対から複素アドミッタンスデータを受信するように構成された信号受信機と、
前記信号発生器からの信号の印加と前記信号受信機からの複素アドミッタンスデータの取得とを調整して前記薬剤溶液のアドミッタンス分光分析フィンガプリントを作成するように構成されたコントローラと、
前記アドミッタンス分光分析フィンガプリントを受信し、かつ該アドミッタンス分光分析フィンガプリントを担体溶液中の複数の既知の化合物及び化合物の混合物から複数の周波数及び既知の濃度で測定された複素アドミッタンスデータを含むアドミッタンス分光分析データのライブラリと比較することによって前記薬剤溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類、濃度、又は種類と濃度を判断するように構成されたプロセッサと、
を含むことを特徴とするアナライザ。
【請求項61】
前記信号発生器、信号受信機、及びコントローラを少なくとも部分的に封入するハウジングを更に含むことを特徴とする請求項60に記載のアナライザ。
【請求項62】
複数の単回使用測定セルを更に含むことを特徴とする請求項60に記載のアナライザ。
【請求項63】
前記測定セルは、異なる材料、異なる幾何学形状、又は異なる材料と幾何学形状で形成された少なくとも3つの異なる流体接触面を含むことを特徴とする請求項60に記載のアナライザ。
【請求項64】
前記測定セルの前記流体接触面は、アドミッタンス分光分析データの前記ライブラリの複素アドミッタンスデータと符合する所定の基準に対して較正されることを特徴とする請求項60に記載のアナライザ。
【請求項65】
前記信号発生器は、約1Hzから約1MHzの電流周波数を印加するように構成されることを特徴とする請求項60に記載のアナライザ。
【請求項66】
前記薬剤溶液中の前記1つ又はそれよりも多くの化合物の前記種類及び濃度を表示するように構成されたディスプレイを更に含むことを特徴とする請求項60に記載のアナライザ。
【請求項67】
前記プロセッサは、前記薬剤溶液の前記担体溶液の種類を判断するように更に構成されることを特徴とする請求項60に記載のアナライザ。
【請求項68】
前記プロセッサは、前記アドミッタンス分光分析フィンガプリントとアドミッタンス分光分析データの前記ライブラリとの間の最も可能性が高い符合を判断するように構成された認識論理を含むことを特徴とする請求項60に記載のアナライザ。
【請求項69】
前記認識論理は、アドミッタンス分光分析データの前記ライブラリに対して学習させた適応ニューラルネットワークを含むことを特徴とする請求項68に記載のアナライザ。
【請求項70】
所定の複素アドミッタンスデータの前記ライブラリは、担体溶液中の複数の個々の化合物及び化合物の混合物に対して複数の周波数で測定された複素アドミッタンスデータを含むことを特徴とする請求項60に記載のアナライザ。
【請求項71】
前記測定セルは、第2のセンサ要素を更に含み、更に、
前記プロセッサは、前記アドミッタンス分光分析フィンガプリントに加えて前記第2のセンサ要素からのデータを用いて、前記薬剤溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の前記種類及び前記濃度の両方を判断するように構成される、
ことを特徴とする請求項60に記載のアナライザ。
【請求項72】
前記第2のセンサ要素は、光センサを含むことを特徴とする請求項71に記載のシステム。
【請求項73】
前記プロセッサは、前記アドミッタンス分光分析フィンガプリントを受信し、かつ前記薬剤溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類及び濃度を同時に判断するように構成されることを特徴とする請求項60に記載のシステム。
【請求項74】
アドミッタンス分光測定を用いて静脈内流体の1つ又はそれよりも多くの成分の種類、濃度、又は種類と濃度を判断することによって静脈内流体の送達を制御するためのシステムであって、
静脈内流体に接触するように構成された複数の複素アドミッタンス電極を有するセンサと、
前記複数の複素アドミッタンス電極間の印加に向けて複数の周波数で電気励起を供給するように構成された信号発生器と、
前記複数の周波数で前記センサから複素アドミッタンスデータを受信し、かつ該複素アドミッタンスデータを所定の複素アドミッタンスデータのライブラリと比較することによって前記静脈内流体中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類、濃度、又は該種類と該濃度を判断するように構成されたプロセッサと、
前記静脈内流体中の1つ又はそれよりも多くの化合物の前記判断された種類、濃度、又は濃度と種類に基づいて静脈内薬剤送達装置の作動を調節するように構成された制御出力と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項75】
前記静脈内薬剤送達装置は、ポンプを含むことを特徴とする請求項74に記載のシステム。
【請求項76】
前記センサは、流量センサを更に含むことを特徴とする請求項74に記載のシステム。
【請求項77】
前記プロセッサは、前記静脈内流体と連通する流量センサから流量情報を受信し、かつ該静脈内流体中の前記1つ又はそれよりも多くの化合物の送達投与量を判断するように構成されることを特徴とする請求項74に記載のシステム。
【請求項78】
前記制御出力は、前記静脈内薬剤送達装置の送達を変調し、調節し、停止し、又は休止するように構成されることを特徴とする請求項74に記載のシステム。
【請求項79】
前記プロセッサは、前記静脈内流体中の1つ又はそれよりも多くの化合物の前記種類及び前記濃度を同時に判断するように構成されることを特徴とする請求項74に記載のシステム。
【請求項80】
アドミッタンス分光測定によって溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類及び濃度を判断する方法であって、
溶液と接触した少なくとも1対の流体接触面の間に複数の周波数で電気励起を印加する段階と、
前記複数の周波数で少なくとも1対の流体接触面の間の複素アドミッタンスを判断する段階と、
前記複数の周波数の前記少なくとも1対の流体接触面からの前記複素アドミッタンスを含む前記溶液のアドミッタンス分光分析フィンガプリントを作成する段階と、
前記溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類及び濃度の両方を前記アドミッタンス分光分析フィンガプリントを担体溶液中の複数の既知の化合物及び化合物の混合物から複数の周波数及び既知の濃度で測定された複素アドミッタンスデータを含むアドミッタンス分光分析データのライブラリと比較することによって判断する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項81】
前記溶液は、静脈内薬剤溶液であることを特徴とする請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記溶液は、非経口溶液であることを特徴とする請求項80に記載の方法。
【請求項83】
前記溶液は、非経口薬剤溶液であることを特徴とする請求項80に記載の方法。
【請求項84】
前記溶液の成分の全ての前記種類及び濃度を判断する段階を更に含むことを特徴とする請求項80に記載の方法。
【請求項85】
アドミッタンス分光測定によって溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類及び濃度を判断する方法であって、
溶液と接触した2つ又はそれよりも多くの対の流体接触面の間に複数の周波数で電気励起を印加する段階であって、該流体接触面のうちの少なくとも1つが、他の流体接触面とは異なる材料、異なるサイズ、又は異なる材料とサイズで形成される前記段階と、
前記複数の周波数の前記2つ又はそれよりも多くの対の流体接触面からの複素アドミッタンスを判断する段階と、
前記複数の周波数の前記2つ又はそれよりも多くの対の流体接触面からの前記複素アドミッタンスを含む前記溶液のアドミッタンス分光分析フィンガプリントを作成する段階と、
前記溶液中の1つ又はそれよりも多くの化合物の種類及び濃度の両方を前記アドミッタンス分光分析フィンガプリントを担体溶液中の複数の既知の化合物及び化合物の混合物から複数の周波数及び既知の濃度で測定された複素アドミッタンスデータを含むアドミッタンス分光分析データのライブラリと比較することによって判断する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項86】
前記溶液は、静脈内薬剤溶液であることを特徴とする請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記溶液は、非経口溶液であることを特徴とする請求項85に記載の方法。
【請求項88】
前記溶液の成分の全ての前記種類及び濃度を判断する段階を更に含むことを特徴とする請求項85に記載の方法。
【請求項89】
静脈内薬剤溶液の組成及び濃度の両方を同時に検証する方法であって、
静脈内薬剤溶液を調製する段階と、
前記静脈内薬剤溶液の試料を検査して、該静脈内薬剤溶液の1つ又はそれよりも多くの成分の種類及び濃度の両方を独立にかつ同時に判断する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項90】
前記検査する段階は、異なる周波数で取られた複数の複素アドミッタンスを含むアドミッタンス分光分析フィンガプリントを判断する段階を含むことを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記検査する段階は、異なる周波数で取られた複数の複素アドミッタンスを含むアドミッタンス分光分析フィンガプリントを判断する段階と、該アドミッタンス分光分析フィンガプリントを担体溶液中の複数の既知の化合物及び化合物の混合物から複数の周波数及び既知の濃度で測定された複素アドミッタンスデータを含むアドミッタンス分光分析データのライブラリと比較する段階とを含むことを特徴とする請求項89に記載の方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図19E】
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【図19F】
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【図19G】
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【図19H】
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【図19i】
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【図19J】
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【図19K】
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【図19L】
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【図19M】
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【図19N】
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【図19o】
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【図19P】
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【図19Q】
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【図19R】
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【図19S】
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【図19T】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図23D】
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【図23E】
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【図23F】
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【図23G】
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【図23H】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図24E】
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【図24F】
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【図24G】
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【図24H】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28A】
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【図28B】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30A】
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【図30B】
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【図30C】
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【図31A】
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【図31B】
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【図2】
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【図13D】
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【図32】
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【公表番号】特表2012−529656(P2012−529656A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515074(P2012−515074)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/037817
【国際公開番号】WO2010/144482
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511297834)エス.イー.エイ. メディカル システムズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】