説明

アニオン性高分子電解質分散剤で安定化された濃縮フルオロポリマー分散液

約10〜約400nmの平均粒度を有するフルオロポリマー粒子を含む水性フルオロポリマー分散液。本分散液は、少なくとも約35〜約70質量%の固形分含有率を有し、そしてフルオロポリマー固形分の質量を基準として約0.03質量%〜約10質量%のアニオン性高分子電解質分散剤を含む。本分散液は少なくとも約100秒のゲル化時間を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮フルオロポリマー分散液に、より具体的には低減フルオロ界面活性剤含有率の濃縮安定化分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーは、剥離、耐化学薬品性および耐熱性、腐食保護、クリーニング可能性、低燃焼性、ならびに耐候性を与えるために幅広い数の基材に塗布される。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ホモポリマーおよび変性PTFEの塗膜は、フルオロポリマーの中でも最高の熱安定性を提供するが、テトラフルオロエチレン(TFE)共重合体とは違って、溶融加工してフィルムおよび塗膜を形成することができない。それ故、他の方法がPTFEホモポリマーおよび変性PTFEの塗膜を塗布するために開発されてきた。かかる一方法は、分散形態でフルオロポリマーを塗布する分散コーティングである。コーティング法に使用される分散液は通常濃縮形態にあり、マークス(Marks)らの米国特許第3,037,953号明細書に教示されているように、かなりの量、例えば6〜8質量パーセントの非イオン界面活性剤を含有する。類似の分散液およびコーティング法はまた、溶融加工可能なフルオロポリマーの塗膜を製造するためにも用いられる。
【0003】
幾つかの特殊フルオロポリマーコーティング分散液については、安定化のためのアルキルフェノールエトキシレートまたは脂肪族アルコールエトキシレートなどの普通の非イオン界面活性剤は不適当である。かかる一分散液は、クロム酸が金属基材への接着性を上げるためのプライマーコーティングの成分として使用される調合物である。クロム酸は、(TRITON)(登録商標)X−100、アルキルフェノールエトキシレートなどの非イオン界面活性剤を攻撃することが示されてきた。歴史的に、ラルリル硫酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤が、それがクロム酸の存在下に安定であるのでこのプライマー調合物に使用されてきた。
【0004】
フルオロ界面活性剤は典型的には、フルオロポリマーの分散重合に一成分として使用され、フルオロ界面活性剤は非テロゲン分散剤として機能する。例えば、フルオロ界面活性剤のこの使用の早期記載は、ベリー(Berry)に付与された米国特許第2,559,752号明細書に見いだされる。しかしながら、環境上の懸念のために、およびフルオロ界面活性剤が高価であるために、水性フルオロポリマー分散液からのフルオロ界面活性剤の低減および回収方法が開発されてきた。
【0005】
一慣用法は、米国特許第3,882,153号明細書(セキ(Seki)ら)および米国特許第4,282,162号明細書(クールス(Kuhls))および米国特許第6,833,403号明細書(ブラーデル(Bladel)ら)に教示されているように、イオン交換樹脂上への吸着によってフルオロ界面活性剤を除去することである。効果的な除去のために、かかる分散液は、マークスらに付与された米国特許第3,037,953号明細書、ミウラらに付与された米国特許第6,153,688号明細書、およびキャバノー(Cavanaugh)らに付与された米国特許第6,956,078号明細書に開示されているようにアルキルフェノールエトキシレートまたは脂肪族アルコールエトキシレートなどの、非イオン界面活性剤で安定化される。非イオン界面活性剤が存在しない状態でのフルオロ界面活性剤の除去は一般に分散液の凝固をもたらすので、非イオン界面活性剤で安定化された分散液が使用される。
【0006】
非イオン界面活性剤の代わりにラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン炭化水素界面活性剤で安定化されている、上に議論されたフルオロポリマー分散液についてアニオン交換法を用いることが試みられる場合、アニオン炭化水素界面活性剤はフルオロ界面活性剤と一緒に分散液から除去され、分散液の凝固を引き起こすであろう。
【0007】
低減フルオロ界面活性剤含有率の改良された安定化濃縮フルオロポリマー分散液が望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、約10〜約400nmの平均粒度を有するフルオロポリマー粒子を含む水性フルオロポリマー分散液を提供する。本分散液は、少なくとも約35〜約70質量%の固形分含有率を有し、フルオロポリマー固形分の質量を基準として約0.03質量%〜約10質量%のアニオン性高分子電解質分散剤を含む。本分散液は少なくとも約100秒のゲル化時間を有する。
【0009】
本発明の分散液の好ましい実施形態では、アニオン性高分子電解質分散剤は約150より大きい当量を有する。好ましくは、アニオン性高分子電解質分散剤の当量は約50,000未満である。アニオン性高分子電解質分散剤は好ましくは少なくとも約500の数平均分子量を有する。好ましい一実施形態は、約2000〜約100,000の分子量を有するアクリル共重合体分散剤を用いる。好ましくは、本分散液は、分散液の質量を基準として約300ppm未満のフルオロ界面活性剤を含む。
【0010】
本発明はさらに、約10〜約400nmの平均サイズを有するフルオロポリマー粒子と、約15〜約55質量%の固形分含有率とを含むフルオロポリマー分散液をアニオン性高分子電解質分散剤で安定化させる工程と、安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液をアニオン交換樹脂と接触させてフルオロ界面活性剤含有率を所定のレベルに下げる工程と、フルオロ界面活性剤含有率が低減フルオロ界面活性剤分散液を生成するために下げられた後にアニオン交換樹脂を分散液から分離する工程と、非イオン界面活性剤を実質的に含まない分散液を生成する方法を用いて分散液を少なくとも約35質量%に濃縮する工程とを含む、水性フルオロ界面活性剤含有フルオロポリマー分散液のフルオロ界面活性剤含有率を低減させ、そして該分散液を濃縮する方法を提供する。
【0011】
本発明はさらに、フルオロポリマー粒子を含み、そして約35〜約70質量%の固形分含有率を有する濃縮水性フルオロポリマー分散液であって、フルオロポリマー固形分の質量を基準として約0.03質量%〜約10質量%のアニオン性高分子電解質分散剤を含み、そして分散液の質量を基準として約300ppm未満のフルオロ界面活性剤を含有し、非イオン分散液を実質的に含まない分散液を提供する工程と、分散液を基材に塗布する工程と、分散液で被覆された基材を加熱してフルオロポリマー粒子を基材上で融合させる工程とを含む基材へのフルオロポリマーの塗布方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
フルオロポリマー
本発明に従って用いられる水性フルオロポリマー分散液は、分散重合(乳化重合としても知られる)によって製造される。フルオロポリマー分散液は、モノマーの少なくとも1つがフッ素を含有するモノマーから製造されたポリマーの粒子から構成される。本発明の水性分散液の粒子のフルオロポリマーは独立して、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、モノクロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルエチレンモノマー、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)モノマー、フッ化ビニリデン、およびフッ化ビニルのポリマーおよび共重合体の群から選択される。
【0013】
本発明に用いられる分散液に使用される好ましいフルオロポリマー粒子は、溶融加工できない変性PTFEを含むポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の溶融加工できない粒子である。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、いかなる有意なコモノマーも存在せずに重合したテトラフルオロエチレンそのものを意味する。変性PTFEは、TFEと得られたポリマーの融点がPTFEのそれより下に実質的に低下しないような低濃度のコモノマーとの共重合体を意味する。かかるコモノマーの濃度は好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満である。少なくとも約0.05質量%の最小量が顕著な効果を有するために好ましくは使用される。変性PTFEは好ましくは、パーフルオロオレフィン、特にヘキサフルオロプロピレン(HFP)またはパーフルオロ(エチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(プロピルビニル)エーテルが好ましい、アルキル基が1〜5個の炭素原子を含有する、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)などの、ベーキング(融解)中のフィルム形成能力を向上させるコモノマー変性剤を含有する。クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、または嵩高い側基を分子中へ導入する他のモノマーもまた含められる。本発明のこの好ましい形態では、PTFEは典型的には少なくとも1×10Pa・sの溶融クリープ粘度を有する。本発明のこの形態に使用される分散液中の樹脂は、単離され、そして乾燥されたときに、このように溶融加工できない。
【0014】
溶融加工できないとは、溶融加工可能なポリマーについての標準的な溶融粘度測定手順によって試験されるときにメルトフローが全く検出されないことを意味する。この試験は次の通り修正されたASTM(米国材料試験協会)D−1238−00による:シリンダー、オリフィスおよびピストン先端は、耐食性合金、ハイネス・ステライト社(Haynes Stellite Co.)によって製造された、ハイネス・ステライト(Haynes Stellite)19でできている。5.0gのサンプルが372℃に維持される9.53mm(0.375インチ)内径シリンダーに装入される。サンプルがシリンダーに装入された5分後に、それは、5000グラムの負荷(ピストン・プラス重り)下に2.10mm(0.0825インチ直径)、8.00mm(0.315インチ)長さの平方形エッジオリフィスを通して押し出される。これは、44.8KPa(平方インチ当たり6.5ポンド)の剪断応力に相当する。溶融押出物は全く観察されない。
【0015】
好ましい一実施形態では、本発明に使用される分散液中のフルオロポリマー粒子は、高分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の芯とより低分子量ポリテトラフルオロエチレンまたは変性ポリテトラフルオロエチレンの鞘とを含む。
【0016】
好ましい溶融加工できないPTFEまたは変性PTFEは、約2.13〜約2.50の標準比重(SSG)を有する。好ましくは、SSGは約2.40未満、より好ましくは約2.30未満、最も好ましくは約2.25未満である。SSGは一般に、PTFEまたは変性PTFEの分子量に反比例する。
【0017】
本発明に使用される分散液中のフルオロポリマー粒子は、約10nm〜約400nm、好ましくは、約100nm〜約350nmの数平均粒度を有する。
【0018】
好ましいPTFEポリマーの典型的な水性分散重合法は、TFE蒸気がフルオロ界面活性剤、パラフィンワックスおよび脱イオン水を含有する加熱された反応器にフィードされる方法である。連鎖移動剤もまた、PTFEの分子量を下げることが望まれる場合には添加されてもよい。フリーラジカル開始剤溶液が添加され、重合が進行するにつれて、追加のTFEが圧力を維持するために添加される。反応の発熱は、反応器外套を通して冷却水を循環させることによって除去される。数時間後に、フィードは停止され、反応器はガス抜きされ、窒素でパージされ、容器中の生の分散液は冷却容器に移される。パラフィンワックスは除去され、分散液は単離され、分散剤で安定化される。
【0019】
分散液の製造に使用されるフルオロ界面活性剤は、非テロゲンのアニオン性分散剤で、水に可溶であり、アニオン性の親水性基および疎水性部分を含む。好ましくは、疎水性部分は、少なくとも4個の炭素原子を含有し、フッ素原子を持ち、そして親水性基に隣接したフッ素原子を持たない2個以下の炭素原子を有する脂肪族フルオロアルキル基である。これらのフルオロ界面活性剤は分散させるための重合助剤として使用され、それらが連鎖移動しないので、それらは望ましくない短鎖長のポリマーの形成を引き起こさない。好適なフルオロ界面活性剤の広範囲に及ぶリストは、ベリーに付与された米国特許第2,559,752号明細書に開示されている。好ましくは、フルオロ界面活性剤は、6〜10個の炭素原子を有するパーフッ素化カルボン酸またはスルホン酸であり、典型的には塩形態で使用される。好適なフルオロ界面活性剤は、パーフルオロカルボン酸アンモニウム塩、例えば、パーフルオロカプリル酸アンモニウムまたはパーフルオロオクタン産アンモニウムである。フルオロ界面活性剤は通常、形成されるポリマーの量に関して0.02〜1質量%の量で存在する。フッ素化界面活性剤は重合プロセスを助けるために使用されるが、分散液中に残る量は下に説明されるようにかなり下げられる。
【0020】
本発明の分散液を製造するために好ましくは使用される開始剤はフリーラジカル開始剤である。それらは、比較的長い半減期を有するもの、好ましくは過硫酸塩、例えば、過硫酸アンモニウムまたは過硫酸カリウムであってもよい。過硫酸塩開始剤の半減期を短くするために、Fe(III)などの金属触媒作用塩ありまたはなしで、亜硫酸水素アンモニウムまたはメタ亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤を使用することができる。あるいはまた、過マンガン酸カリウム/シュウ酸などの短い半減期の開始剤を使用することができる。
【0021】
長い半減期の過硫酸塩開始剤に加えて、コハク酸などの少量の短鎖ジカルボン酸またはジコハク酸パーオキシド(DSP)などのコハク酸を生成する開始剤もまた凝塊を減らすために添加されてもよい。
【0022】
下記のような低いフルオロ界面活性剤含有率の分散液を製造するために、本明細書で以下により詳細に記載されるように十分なアニオン性高分子電解質分散剤が、フルオロ界面活性剤含有率が下げられるときに分散液の凝固を防ぐために添加される。典型的には、分散剤は、安定化のためにフルオロ界面活性剤低減の前に添加される。
【0023】
分散液は下記の通り濃縮される。濃縮水性分散液は、少なくとも約35質量%、好ましくは少なくとも約40質量%、より好ましくは少なくとも約45質量%のフルオロポリマー固形分含有率を有する。濃縮水性分散液は、フルオロポリマー含有率が少なくとも約35質量%〜約70質量%、好ましくは少なくとも約40質量%〜約70質量%、より好ましくは少なくとも約45質量%〜約70質量%、特に少なくとも約50質量%〜約70質量%の範囲であることができる。
【0024】
本発明に従う水性分散液は、非イオン界面活性剤を実質的に含まない。「実質的に含まない」は、非イオン界面活性剤を全く含有しないか、かかる非イオン界面活性剤が最終使用用途の妨げにならないほど少ない非イオン界面活性剤を含有するかのどちらかであることを意味する。好ましくは、分散液は、分散液質量を基準として約2質量%未満、好ましくは約1質量%未満、より好ましくは約0.5質量%未満、特に0.1質量%未満の非イオン界面活性剤を含有する。
【0025】
分散剤
フルオロポリマー分散液は典型的には界面活性剤で安定化される。界面活性剤は親水性部分と疎水性部分とを同じ分子上に有する。これらは、陽イオン性、非イオンまたはアニオンのどれかであることができる。典型的な陽イオン性界面活性剤は、アルキル化アンモニウムハライドなどの正に帯電した親水性部分と長鎖脂肪酸などの疎水性部分とを有する。アニオン界面活性剤は、カルボキシレートまたはサルフェート塩などの負に帯電した親水性部分と疎水性部分としての長鎖炭化水素部分とを有する。非イオン界面活性剤は帯電した基を含有しないが、他の2つのタイプの界面活性剤に似た典型的には長鎖炭化水素である疎水性部分を有する。非イオン界面活性剤の親水性部分は典型的には、エチレンオキシドとの重合から誘導されるエチレンエーテルの鎖などの水溶性官能性を含有する。水溶性は、エーテル酸素原子と水からのプロトンとの水素結合に起因する。界面活性剤はポリマー粒子を、界面活性剤の疎水性部分が粒子の方に、そして界面活性剤の親水性部分が水相に配向した状態で粒子をコートすることによって安定化させる。帯電した界面活性剤の場合には、幾らかの安定性はまた、粒子間の電荷の反発力に起因する。界面活性剤は典型的には、表面張力を著しく低下させ、分散液での表面のより良好な湿潤を可能にする。対照的に、アニオン性高分子電解質分散剤が安定化のために本発明に従って分散液に用いられる。これらの分散剤は、それらが明確な親水性部分と疎水性部分とを含有しないという点において界面活性剤とは異なる。フルオロポリマー分散液の安定化は、アニオン性高分子電解質分散剤がフルオロポリマー粒子をコートするときに起こると考えられる。分散剤上にあるアニオン性基は、粒子上の表面電荷を増加させ、粒子間の電荷の反発力によって安定性を与える。界面活性剤とは違って、これらの分散剤は典型的には、分散液の表面張力に、たとえあったとしてもほとんど有意な影響を及ぼさない。アニオン性高分子電解質分散剤を含有する分散液の表面張力は、界面活性剤が湿潤性を変えるために、粘度調整のために、安定性を向上させるためになど添加されない限り、高いままである。非イオン界面活性剤は、水溶液の表面張力を実質的に低下させる。対照的に高分子電解質はしばしば、コロイド状分散液の凝集剤として使用されるが、一方、界面活性剤は普通はコロイド状分散液を安定化させるために使用される。本発明に従う好ましい分散液の表面張力は25℃で約35ダイン/cmより大きく、好ましくは約40ダイン/cmより大きく、さらにより好ましくは約45ダイン/cmより大きい。
【0026】
本発明の方法の分散液および方法に従って用いられるアニオン性高分子電解質分散剤は好ましくは、アニオン性基がポリマー鎖に沿って分布した、場合により鎖末端基中にも存在する、線状または分岐の構造を有する、アニオン性ポリマーである。高分子電解質は好ましくは、約150より大きい、好ましくは約200より大きい、さらにより好ましくは約250より大きい、分子量/高分子電解質中に存在するアニオン性基の数と定義される、当量を有する。一般に、本発明の方法に使用できるアニオン性高分子電解質分散剤の当量は約50,000未満、好ましくは約10,000未満、より好ましくは約3,000未満、さらにより好ましくは約1,500未満である。
【0027】
アニオン性高分子電解質分散剤の数平均分子量は好ましくは少なくとも約500、より好ましくは約500〜約100,000の範囲にある。より好ましくは、分子量は少なくとも約1,000である。特に好ましい実施形態は、約2,000〜約100,000、好ましくは5,000〜20,000の分子量を有する。
【0028】
本発明に従った方法に使用できるアニオン性高分子電解質分散剤は好ましくは2より多いまたはそれに等しい、より好ましくは5より多いまたはそれに等しい多数のアニオン性官能基を分子中に含有する。アニオン性高分子電解質分散剤の分子中に存在するアニオン性基は好ましくは、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネートから選択され、より好ましくはカルボキシレート、サルフェート、スルホネートであり、さらにより好ましくはカルボキシレートである。一般に、アニオン性高分子電解質分散剤はフッ素原子を含有しない。
【0029】
好ましくは、本発明に従って使用されるアニオン性高分子電解質分散剤は、上述のような多数のアニオン性基を好ましくは与え、上に定義されたような当量を与えるアクリルまたはビニルモノマーから選択されたモノマーのアニオン性ホモポリマーまたは共重合体から選択される。好ましくは、アクリルモノマーは、(メタ)アクリルアミド、相当する塩の形態での(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸の線状もしくは分岐のC〜Cヒドロキシエステル、アルキルが線状もしくは分岐であることができるC〜C12アルキル(メタ)アクリレート、次の一般式:
【化1】


(式中、RはHまたはCHであり、RおよびRは、同一または異なっていて、Hまたは場合により分岐のC〜Cアルキルであり、Mはアルカリもしくはアルカリ土類金属またはアンモニウムであり、そしてAはNH、OまたはNCHである)
の化合物から選択される。
【0030】
本発明に従って用いるためのアニオン性高分子電解質を与えることができるビニルモノマーの中で、ビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレンおよび芳香環の1つ以上の水素原子をヒドロキシルまたはメチルでおよび/またはビニルの1つ以上の水素原子をメチルで置換することによって得られるその誘導体、例えば、アルファ−メチルスチレン;メチル−、エチル−、n−プロピル−、イソプロピル−、n−ブチル−、イソブチル−および2−エチルヘキシル−ビニルエーテルなどの、C〜C12アルキルビニルエーテル;ならびに酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、およびステアリン酸ビニルなどの、C〜C18脂肪族モノカルボン酸のビニルエステルを使用することができる、
【0031】
アクリルまたはビニルモノマーから選択された1つ以上のモノマーのホモポリマーまたは共重合体は、先行技術の周知の方法に従って、ラジカルまたはイオン付加による水性懸濁重合によって得ることができる。例えばカーク−オスマー「化学技術事典」(Kirk Othmer“Encyclopedia of Chemical Technology”)、第III版、第18巻、720−744ページを参照されたい。水性懸濁液でのラジカル重合の場合には、ラジカル開始剤として、モノマーに可溶なものが好ましくは使用され、さらに懸濁剤、界面活性剤も使用される。
【0032】
ラジカル開始剤として、例えばt−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシジエチルアセテートのような、脂肪族および芳香族過酸化物または例えばアゾジイソブチロニトリルのような不安定なアゾ化合物が例えば使用される。モノマー混合物中に連鎖移動剤を場合により使用することができる。メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンのような、メルカプタン化合物に例えば言及することができる。重合温度は、開始剤分解がある温度であり、一般には約50℃〜120℃である。懸濁剤については例えばEP 457,356を参照されたい。
【0033】
他の使用できるアニオン性高分子電解質分散剤は、ポリアミド酸、好ましくは芳香族ポリアミド酸またはポリアミドアミド酸である。これらのポリマーの繰り返し単位の例は、アミドアミド酸:
【化2】

【0034】
アミドイミド単位:
【化3】


(式中、RIIは二価アリーレン基である)
である。例えば、かかるポリマーの製造を記載している米国特許第6,479,581号明細書を参照されたい。
【0035】
他の使用できるアニオン性高分子電解質分散剤は、アルキルが1〜5個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を含む、カルボキシアルキルセルロース、例えばカルボキシメチルセルロースである。
【0036】
本発明に従って使用できる高分子電解質分散剤は、例えば、商標クレイムル(Craymul)(登録商標)8212(クレイ・バレイ(Cray Valley))、トルロン(Torlon)(登録商標)AI30(ソルベイ・アドバンスト・ポリマーズ(Solvay Advanced Polymers))、トルロン(登録商標)AI50(ソルベイ・アドバンスト・ポリマーズ)、エルバサイト(Elvacite)(登録商標)2669およびエルバサイト(登録商標)2776(ルーサイト・インターナショナル(Lucite International))、およびジョンクリル(Joncryl)(登録商標)DFC3025(ジョンソン・ポリマー(Johnson Polymer))で販売されているものである。
【0037】
本発明に従って使用されるためのアニオン性高分子電解質は一般に水に可溶性である。アルコール、例えば、イソプロピルアルコール、ケトン、例えば、N−メチルピロリドンなどの水と混和する共溶剤を場合により添加することができる。
【0038】
アニオン性高分子電解質分散剤は、フルオロポリマー固形分の質量を基準とする質量パーセントで約0.03〜約10質量%、好ましくは約0.1質量%〜約10質量%、より好ましくは約0.2質量%〜約5質量%、さらにより好ましくは約0.5質量%〜約3質量%の量で添加される。高分子電解質量は一般に、使用される高分子電解質のタイプに依存する。当業者は、所望の安定性を与えるのに十分な適切な量を容易に決定することができる。
【0039】
一クラスの好ましいアニオン性分散剤はアクリル共重合体、より好ましくは疎水性アクリル共重合体であると記載されるアクリル共重合体分散剤である。このタイプのポリマーの例は、ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)によって販売される商標タモール(TAMOL)(登録商標)681、タモール(登録商標)2001、タモール(登録商標)165A、およびタモール(登録商標)731Aで販売されている。かかる分散剤は、顔料の凝集を防ぐためのアクリル−ベースのペイントでの使用について知られているが、それらはフルオロポリマー分散液での使用については知られていない。本発明に用いるための好ましいアクリル共重合体分散剤は、メタクリル酸/ブチルメタクリレート共重合体を含む。より好ましくはメタクリル酸/ブチルメタクリレート共重合体は、約30〜約50モル%のメタクリル酸単位と約50〜約70モル%のブチルメタクリレート単位とを含む。このタイプのアクリル共重合体アニオン性高分子電解質を用いる本発明の実施形態では、フルオロポリマー固形分の質量を基準として約0.5質量%〜約5.5質量%のアクリル共重合体量が特に有用であることが分かった。アクリル共重合体分散剤の百分率は活性成分を基準としている。
【0040】
本発明のための好ましいアクリル共重合体分散剤は、約2,000〜約100,000の分子量、より好ましくは約5,000〜約20,000の分子量を有する。
【0041】
アクリル共重合体分散剤は酸形態で供給されてもよいが、それは効果的な安定化のため本発明のフルオロポリマー分散液には塩形態で用いられる。様々な塩形態を用いることができるが、アクリル共重合体分散剤の好ましい形態は、それが異質の陽イオンを分散液へ導入しないようにアンモニウム塩の形態でである。アクリル共重合体分散剤が主として塩形態であり、そして水に可溶性であるために、フルオロポリマー分散液のpHは好ましくは少なくとも約9、より好ましくは少なくとも約9.5である。
【0042】
分散液剪断安定性−ゲル化時間
本発明によれば、分散液は、本出願の試験方法に記載されるゲル化時間試験によって測定されるように少なくとも約100秒のゲル化時間を有する。ゲル化時間は、高い剪断条件下の凝固に対する分散液の抵抗の測定であり、従って分散液を剪断にかける処理中の分散液の安定性の指標である。固形分含有率、pH、ポリマーの分子量、ポリマー粒子モルホロジー、分散液中の他の物質などをはじめとする様々な因子によって影響を受けるが、少なくとも100秒のゲル化時間は、アニオン性高分子電解質分散剤が通常のハンドリングおよび処理のために十分にポリマーを安定化させる働きをしていることを示唆し、例えば、アニオン交換カラムでのフルオロ界面活性剤除去のために十分に安定化されている。より好ましくは、ゲル化時間は少なくとも約300秒、さらにより好ましくは少なくとも約500秒、さらにより好ましくは少なくとも約1000秒、最も好ましくは少なくとも約1500秒である。本発明によって提供されるゲル化時間の好ましい範囲は約100秒〜約2000秒である。本発明の好ましい形態によれば、分散液は、分散液の質量を基準として約300ppm未満のフルオロ界面活性剤を含有し、また上述のようなゲル化時間を有する。好ましくは、上記のゲル化時間は、フルオロ界面活性剤含有率が約100ppm未満、最も好ましくは約50ppm未満であるときに観察される。
【0043】
上記の疎水性アクリル共重合体アニオン性高分子電解質は、望ましいゲル化時間を与えるために本発明に従って特に有用である。
【0044】
フルオロ界面活性剤低減
フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液のフルオロ界面活性剤の本発明の低減および分散液の濃縮方法に従って、アニオン性高分子電解質分散剤で安定化された分散液のフルオロ界面活性剤含有率は所定のレベルに下げられる。生じた分散液は、重合したままの分散液より低下したフルオロ界面活性剤含有率を有し、好ましくは総分散液質量を基準として約300ppm未満のフルオロ界面活性剤含有率を有する。好ましくは、フルオロ界面活性剤含有率は約100ppm未満、より好ましくは約50ppm未満である。
【0045】
フルオロ界面活性剤含有率は、当該技術で知られるような様々な手順のいずれかによって下げることができる。本発明の好ましい実施形態では、フルオロ界面活性剤は、アニオン交換樹脂上への吸着によって除去される。分散液とアニオン交換樹脂との接触は、好ましい濃縮法がジョウンズ(Jones)に付与された米国特許第5,272,186号明細書に記載されている高い酸含有率のアクリルポリマーの添加を使用して用いられるときに特に、高い酸含有率のアクリルポリマーがアニオン交換樹脂上へ吸着されるかもしれないので、濃縮前に好ましくは行われる。
【0046】
分散液をアニオン交換樹脂と接触させる様々な技法のいずれかを用いて本方法のイオン交換を実施することができる。例えば、本方法は、分散液と樹脂とのスラリーが形成される、撹拌タンク中の分散液へのイオン交換樹脂ビーズの添加、引き続く濾過によるアニオン交換樹脂からの分散液の分離によって実施することができる。別の好適な方法は、撹拌タンクを用いる代わりにアニオン交換樹脂の固定床に分散液を通すことである。流れは床を通って上向きまたは下向きであることができ、樹脂が固定床中に留まっているので、別個の分離工程は全く必要とされない。
【0047】
分散液の接触は、イオン交換の速度を促進するのに、かつ、分散液の粘度を下げるのに十分に高いが、樹脂がひどく高い速度で分解するかまたは粘度上昇が観察される温度より下である温度で行われる。上の処理温度は、ポリマーのタイプおよび用いられる非イオン界面活性剤で変わるであろう。典型的には、温度は20℃〜80℃であろう。
【0048】
フルオロ界面活性剤は、必要ならばアニオン交換樹脂から回収することができか、またはフルオロ界面活性剤付き樹脂は環境上受け入れられる方法で、例えば、焼却によって処分することができる。フルオロ界面活性剤を回収することが望まれる場合、フルオロ界面活性剤は溶出によって樹脂から取り去られてもよい。アニオン交換樹脂上に吸着されたフルオロ界面活性剤の溶出は、米国特許第3,882,153号明細書にセキによって実証されているようにアンモニア溶液を用いて、米国特許第4,282,162号明細書にクールスによって実証されているように希鉱酸と有機溶剤との混合物(例えば、HCl/エタノール)によって、または硫酸および硝酸などの強い鉱酸によって容易に達成され、吸着されたフッ素化カルボン酸を溶出液に移す。高濃度での溶出液中のフルオロ界面活性剤は、酸析、塩析、および濃縮の他の方法などのような慣用法によって純粋な酸の形態で、または塩の形態で容易に回収することができる。
【0049】
イオン交換樹脂
水性分散液のフルオロ界面活性剤含有率の低減に用いるためのイオン交換樹脂は、アニオン樹脂を含むが、例えば、混合床での、陽イオン性樹脂などの他の樹脂タイプもまた含むことができる。用いられるアニオン樹脂は、強塩基性または弱塩基性であることができる。好適な弱塩基性アニオン交換樹脂は第一級、第二級、または第三級アミン基を含有する。好適な強塩基性アニオン交換樹脂は第四級アンモニウム基を含有する。弱塩基性樹脂は、それらをより容易に再生できるので有用であるが、フルオロ界面活性剤を非常に低いレベルに、かつ、樹脂の高い利用度で低減することが望まれるときには、強塩基性樹脂が好ましい。強塩基性イオン交換樹脂はまた、媒体のpHへ感受性が少ないという利点を有する。強塩基アニオン交換樹脂は同伴対イオンを有し、典型的には塩化物または水酸化物形態で入手可能であるが、必要ならば他の形態に容易に変換される。水酸化物、塩化物、サルフェート、およびナイトレートのアニオン交換樹脂をフルオロ界面活性剤の除去に使用することができるが、水酸化物の形態でのアニオン交換樹脂が、追加アニオンの導入を防ぐために、かつ、アニオン交換中にpHを上げるために好ましい。なぜなら、高い、すなわち、9より大きいpHが、細菌増殖を抑制するために発送前の製品に望ましいからである。トリメチルアミン部分を持った第四級アンモニウム基の好適な商業的に入手可能な強塩基アニオン交換樹脂の例には、ダウエックス(DOWEX)(登録商標)550A、USフィルター(US Filter)A464−OH、サイブロン(SYBRON)M−500−OH、サイブロンASB1−OH、ピュロライト(PUROLITE)A−500−OH、伊藤忠(Itochu)TSA1200、アンバーライト(AMBERLITE)(登録商標)IR402が挙げられる。ジメチルエタノールアミン部分を持った第四級アンモニウム基の好適な商業的に入手可能な強塩基アニオン交換樹脂の例には、USフィルターA244−OH、アンバーライト(登録商標)410、ダウエックス(登録商標)マラソン(MARATHON)A2、およびダウエックス(登録商標)アップコア・モノ(UPCORE Mono)A2が挙げられる。
【0050】
本方法に用いるためのフルオロ界面活性剤を低減するために使用されるイオン交換樹脂は好ましくは単分散である。好ましくは、イオン交換樹脂ビーズは、ビーズの95%が数平均ビーズ径のプラスまたはマイナス100μm内の直径を有する数平均サイズ分布を有する。
【0051】
濃縮
非イオン界面活性剤を実質的に含まない濃縮分散液を提供する方法を用いる濃縮が、本発明に従って実施される。フルオロポリマー分散液の安定化のために典型的に使用される、アルキルフェノールエトキシレートまたは脂肪族アルコールエトキシレートなどの、非イオン界面活性剤は、マークスらに付与された米国特許第3,037,953号明細書に開示されているものなどの相分離法による濃縮を可能にする約30℃〜約90℃の曇点を有する。一方、アニオン性高分子電解質分散剤は、約30℃〜約90℃に有意な曇点を全く持たない。それ故、非イオン界面活性剤を含まない濃縮分散液を残す所望の濃縮を提供するために、他の方法が本発明に従って用いられる。
【0052】
好ましい一濃縮法は、ジョウンズに付与された米国特許第5,272,186号明細書に記載されているように高い酸含有率のアクリルポリマーを用いる。濃縮は、20質量%以上の酸含有率のアクリルポリマーを、分散液の水性分を基準として約0.01〜約1質量%の量で低減−フルオロ界面活性剤分散液に添加して、そして分散液をフルオロポリマー固形分が高い下相とフルオロポリマー固形分が低い上相とに分離させる条件に分散液をかけ、そして下相を濃縮低減フルオロ界面活性剤分散液として回収することによって行われる。
【0053】
好ましい濃縮プロセスを実施するために、米国特許第5,272,186号明細書は、分散液のpHが少なくとも約6に調整されるべきであると述べている。上に議論されたように、調整が通常必要ではないように好ましいアニオン性高分子電解質分散剤による有効な安定化のためには分散液のpHは少なくとも約9、より好ましくは少なくとも9.5であることが好ましい。pH調整が必要である場合、典型的には水酸化アンモニウムなどの塩基が使用される。濃縮に好ましくは使用されるアクリルポリマー濃縮剤は、20質量%以上の酸含有率を有する。好ましくは、高い酸含有率のアクリルポリマーは、約50,000〜約1,000,000の質量平均分子量を有し、分散液の水性部分の質量を基準として約0.01質量%〜約0.5質量%、より好ましくは約0.02〜約0.4質量%の量で用いられる。好ましい実施形態では、アクリルポリマーは約200,000〜1,000,000の分子量を有する。別の好ましい実施形態ではアクリルポリマーは、分散液の水性部分の質量を基準として約0.03〜約0.2質量%の量で添加される。高い酸含有率の特に好ましいアクリルポリマーはポリアクリル酸である。
【0054】
20質量%以上の酸含有率を有するアクリルポリマーの添加後に、分散液は、相分離を起こさせる条件にかけられる。典型的には、これは分散液を周囲条件で、好ましくはかき混ぜなしに放置することを含む。相分離は、下相として、約35質量%〜約70質量%、好ましくは約40質量%〜約70質量%、より好ましくは約50質量%〜約70質量%の典型的な固形分含有率の濃縮分散液を形成する。上相は実質的により低い、好ましくは約1質量%未満の固形分を有するであろう。
【0055】
濃縮のための別の好ましい方法は電気デカンテーションである。電気デカンテーションによる固形分の濃縮は、分散液を含有する容器の片側で電極から印可される直流電位を用いるPTFE粒子の電気泳動移行によって達成される。アニオン性分散剤で取り囲まれた負に帯電したPTFE粒子は、印可場中を陽極の方へ移動する。半透膜障壁が容器中で電極間に吊され、濃縮セルを形成し、粒子が陽極と接触するのを防ぐ。濃縮分散液はこの膜の一面によって下方へ移動し、そして空乏分散液は他の面上を上方へ移動する。より濃い濃縮分散液は容器の底部に沈降し、間隔を置いて抜き出すことができる。上澄液体はオーバーヘッドのままである。
【0056】
コーティング用途
本発明はさらに、フルオロポリマー粒子を含み、そして約35〜約70質量%の固形分含有率を有する濃縮水性フルオロポリマー分散液であって、フルオロポリマー固形分の質量を基準として約0.03質量%〜約10質量%のアニオン性高分子電解質分散剤を含み、そして分散液の質量を基準として約300ppm未満のフルオロ界面活性剤を含有し、非イオン分散液を実質的に含まない分散液を提供する工程と、分散液を基材に塗布する工程と、分散液で被覆された基材を加熱してフルオロポリマー粒子を基材上で融合させる工程とを含む基材へのフルオロポリマーの塗布方法に関する。
【0057】
本発明の方法は特に、金属基材向けに、好ましくは金属基材への接着性を上げるためのプライマーコーティングの成分としてクロム酸を含有するコーティング組成物向けに好適である。かかる一用途は、カテーテル・ガイドワイヤのコーティングである。他の用途には、ローラー、タンク、トレーなどの、様々な金属プロセス装置構成要素のいずれかのコーティングが含まれる。コーティング用途のための公知の技法および装置を、本発明の方法に従った使用に適合させることができる。
【0058】
幾つかの用途向けには、ラウリル硫酸アンモニウムまたはアルカリ金属塩、例えばラルリル硫酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤が本発明のフルオロポリマー分散液に添加される。アニオン界面活性剤の添加は、分散液の粘度を下げ、そして安定性を高めることができる。コーティング用途向けには、アニオン界面活性剤は湿潤特性を改善することができる。アニオン界面活性剤は、フルオロ界面活性剤低減後のいつでも分散液に添加することができる。しかしながら、濃縮中に除去される水相と一緒のアニオン界面活性剤の損失を防ぐために濃縮後にアニオン界面活性剤を添加することが一般に好ましい。好ましくは、アニオン界面活性剤は、フルオロポリマー固形分の質量を基準として約0.05〜約5質量%の量で本発明の安定化分散液に存在する、
【0059】
試験方法
生の(重合したままの)フルオロポリマー分散液の固定分含有率は、秤量されたアリコートの分散液を蒸発乾固し、そして乾燥固形分を秤量することによって質量測定法で測定される。固形分含有率は、PTFEと水との総合質量を基準として質量%単位で記載される。あるいはまた、固形分含有率は、分散液の比重を測定するための浮き秤を用いることによって、そして次に比重を固形分含有率に関係付ける表の参照によって測定することができる。(この表は、水の密度と重合したままのPTFEの密度とから誘導される代数式から構成される。)
【0060】
生の分散液に関する数平均分散液粒度は、光子相間分光法によって測定される。
【0061】
PTFE樹脂の標準比重(SSG)は、ASTM D−4895の方法によって測定される。界面活性剤が存在する場合、それはASTM D−4895によってSSGを測定する前にASTM−D−4441での抽出手順によって除去することができる。
【0062】
安定化分散液の界面活性剤および固形分含有率は、概してASTM D−4441に従って、しかし水は蒸発するが界面活性剤は蒸発しないような時間および温度を用いて少量の秤量されたアリコートの分散液を蒸発乾固することによって質量測定法で測定される。このサンプルは次に界面活性剤を除去するために380℃で加熱され、再秤量される。界面活性剤含有率は、フルオロポリマー固形分を基準として質量%単位で記載される。
【0063】
ゲル化時間は、分散液がブレンダー中で完全にゲル化するのに要する時間によって測定される。200mlの分散液がワーリング(Waring)市販耐爆ブレンダー(モデル707SB、1クオートサイズ、高速、必要空気量−10psiで10scfm−で運転される、コネチカット州ニューハートフォードのワーリング(Waring of New Hartford,Connecticut)から入手可能な)に入れられる。このブレンダーは1リットルの容量を有し、モーター用の空気パージを有する。分散液は、分散液がゲル化するまで最高速度で撹拌される。ゲル化点は全くシャープであり、測定するのが容易である。ゲル化時間は秒単位で記録される。分散液が1/2時間(1800秒)でゲル化しない場合、ブレンダーへの損傷を回避するために試験は打ち切られる。ブレンダーは次に各測定後に完全に解体され、きれいにされる。
【0064】
フルオロ界面活性剤含有率は、フルオロ界面活性剤が酸性メタノールでエステル化されるGC技法によって測定される。パーフルオロヘプタン酸が内部標準として使用される。電解質およびヘキサンを添加すると、エステルは上方ヘキサン層へ抽出される。ヘキサン層は、120℃に保持された、70/80メッシュのクロモソルブ(Chromosorb)W.AW.DMCS上の10%OV−210で充填された20フィート×2mmIDのガラスGCカラムへの注入によって分析される。検出器はECDであり、95%アルゴン/5%メタンのキャリアガスは20〜30ml/分の流量を有する。
【実施例】
【0065】
フルオロポリマー
TFEを重合させて約2.20のSSGおよびおおよそ220nmの数平均粒度を有するPTFE粒子を含有する生のPTFEホモポリマー分散液を製造する。生の重合したままの分散液は、おおよそ45%のフルオロポリマー固形分を含有し、約1800ppmのAPFO含有率を有する。ゲル化時間を測定するために、生の重合したままの分散液を、下の実施例に記載されるように使用する。
【0066】
分散剤
ローム・アンド・ハースによって供給されるタモール(登録商標)681は、おおよそ10,000の分子量の約39%のメタクリル酸と約61%のブチルメタクリレートとを含有する共重合体のアンモニウム塩である。この分散剤は、9700cpsの粘度を有する水中の非常に粘稠な液体として受け取られ、35%の活性成分を含有する。この共重合体は疎水性であると記載されている。
【0067】
ローム・アンド・ハースによって供給されるタモール(登録商標)2001は、タモール(登録商標)681と同じもののナトリウム塩である。この分散剤は、3.4のpHで20cpsの粘度を有するプロピレングリコール中の乳白色液体として受け取られ、42%の活性成分を含有する。有効な使用のために、水酸化アンモニウムを添加してイオン化塩を形成する。タモール(登録商標)2001に水酸化アンモニウムを添加すると、非常に高い粘度、おおよそ38,000cpsをもたらす。このタモールを20%以下に希釈する場合、粘度は、水酸化アンモニウムを添加したときに40cps未満である。あるいはまた、このタモールを分散液に混ぜ込むことができ、次に水酸化アンモニウムを添加することができる。
【0068】
タモール(登録商標)165A−疎水性アクリル共重合体。タモール(登録商標)165Aは660cpsの粘度を有する。この銘柄は21%の活性成分を含有する。
タモール(登録商標)731A−疎水性アクリル共重合体。タモール(登録商標)731Aは56cpsの粘度を有し、25%の活性成分を含有する。
タモール(登録商標)1124−50%の活性成分を含有する親水性アクリル共重合体。
タモール(登録商標)963−35%の活性成分を含有するポリ酸分散剤。
【0069】
イオン交換樹脂
USフィルターによるA244−OHは、水酸化物形態でのジメチルエタノールアミン部分を持った第四級アンモニウム基の、商業的に入手可能な強塩基アニオン交換樹脂である。
【0070】
実施例1
41質量%固形分での200グラムの重合したままの(生の)PTFE分散液の数サンプルを8オンスのガラスジャーに入れる。このジャーはおおよそ3/4満ちである。
【0071】
サンプル1は、重合したままのPTFE分散液だけを含有する。
サンプル2は、PTFEの乾燥質量を基準として1.22質量%のタモール(登録商標)681(活性成分基準)で安定化された重合したままのPTFE分散液を含有する。
サンプル3は、6質量%の湿ったUSフィルターA−244−OHイオン交換樹脂入りの重合したままのPTFE分散液を含有する。
サンプル4は、PTFEの乾燥質量を基準として1.22質量%のタモール(登録商標)681と6質量%の湿ったUSフィルターA−244−OHイオン交換樹脂とで安定化された重合したままのPTFE分散液を含有する。
【0072】
ジャーをブルンネル手首運動振盪機(Brunnell Wrist Action Shaker)上に置き、室温で1の速度設定、サンプル3および4でイオン交換樹脂とPTFE分散液との良好な混合を得るための好適な設定で振盪する。
【0073】
PTFE分散液だけを含有するサンプル1は、約1.5時間振盪した後に2/3凝固する。
PTFEの乾燥質量を基準として1.22質量%のタモール(登録商標)681を含有するサンプル2は、2時間の振盪後に目視では変化せず、タモール(登録商標)681がある程度の剪断安定性を提供したことを示唆する。
イオン交換樹脂を含有するサンプル3は、イオン交換樹脂が添加されるや否や即時の凝集を示す。1時間振盪した後、pHは3.5から4.1に上昇し、導電率はcm当たり1685マイクロジーメンスから183に低下し、APFO除去が起こりつつあることを示唆する。2時間後にPTFEは完全に凝固し、イオン交換樹脂はPTFEゲルによって封入される。
3.5%のタモール(登録商標)681と6質量%のA−244−OHイオン交換樹脂とを含有するサンプル4は、2時間の振盪後に目視では変化せず、すなわち、凝固は全く存在せず、イオン交換樹脂は分散液の表面上に依然として浮んでいた。pHは上昇し、そして導電率は低下し、幾らかのAPFO除去が起こったことを示唆した。
【0074】
実施例2−ゲル化時間によって測定されるような剪断安定性
タモール(登録商標)681の有効レベルを明らかにするために、重合したままのPTFE分散液とタモール(登録商標)681とのサンプルを、分散液がゲル化するまでワーリング・ブレンダーにて高速で剪断する。得られたゲル化時間を表1で下に示す。剪断安定性は、タモール(登録商標)の濃度に大いに依存することが分かる。質量%タモール681は、PTFE固形分に対する活性成分に基づいて表す。
【0075】
【表1】

【0076】
実施例3−フルオロ界面活性剤除去
41質量%固形分の重合したままのPTFE中に1.75質量%のタモール(登録商標)681(活性成分基準)を含有する分散液を製造する。pHが9.5より上に留まることを確実にするために追加の水酸化アンモニウムを添加する。様々なレベルのA−244−OHイオン交換樹脂を添加し、サンプルをブルンネル手首運動振盪機で、1の速度設定で3時間振盪する。サンプルを次に、総分散液質量を基準とするAPFOレベルについて分析する。結果を下に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
結果は、タモール(登録商標)681がイオン交換を可能にしてフルオロポリマー分散液中のAPFOのレベルを下げるのに十分な安定性を提供することを示唆する。それはまた、イオン交換樹脂がAPFOと同様にタモール(登録商標)を除去しないことを良く示す。
【0079】
イオン交換の速度は、追加のイオン交換樹脂を使用することによってかまたはイオン交換体が行われる温度を高めることによってさらに向上させることができる。
【0080】
実施例4
代わりの銘柄のタモール(登録商標)を、APFOが存在する重合したままのPTFE分散液での剪断安定性について試験する。下で分かるように、疎水性アクリル共重合体は、親水性アクリル共重合体が示さない良好な剪断安定性を示す。試験は、下の表に示されるように十分な剪断安定性を提供するための異なる銘柄の最小量を測定するために実施する。下に示されるように、疎水性共重合体分散剤は望ましい剪断安定性を示すが、親水性共重合体分散剤およびポリ酸銘柄は示さない。
【0081】
【表3】

【0082】
実施例5
本実施例は、アニオン交換樹脂カラムでのアクリル共重合体分散剤を含有するフルオロ界面活性剤−含有フルオロポリマー分散液の低減および高い酸含有率のアクリルポリマーを使用するそれに続く濃縮を例示する。
【0083】
100部の重合したままのPTFE(43.5質量%の固形分)を1.74部のタモール(登録商標)2001(活性成分基準)と混合する。分散液を穏やかに撹拌し、水酸化アンモニウムを添加してpHを9.8以下にする。分散液を、USフィルターA−244OHイオン交換樹脂を含有するカラムに通す。カラムは、直径が14インチであり、8:1の長さ対直径比を有する。分散液の温度を52〜54℃に維持する。カラムを通しての流量はおおよそ10ポンド毎分である。これは1600ppmから8.1ppmへのAPFOレベルの低下をもたらす。
【0084】
イオン交換後に、固形分レベルは41.2質量%と測定される。ポリアクリル酸(PAA)の溶液を、分散液を濃縮するために調製する。42.7グラムのアクアトリート(Aquatreat)AR−7H(15%溶液としてアルコ・ケミカルズ(Alco Chemicals)から入手可能な)を157.3グラムの水に添加する。水酸化アンモニウムを添加してpHを9.5に上げてPAAをアンモニウム塩に変換し(原液の粘度を13cpsから238cpsを上げ)、PAAを塩形態で分散液に添加させる。酸性形態で添加される場合、PAAは分散液のpHを下げ、タモール(登録商標)は不溶性になり、PTFE分散液の局部的な凝固をもたらすであろう。
【0085】
37.2グラムのPAA原液を、イオン交換プロセスにかけた2058グラムのタモール(登録商標)安定化分散液に添加する。混合物を撹拌しながら75℃に加熱し、撹拌機を次に切って濃縮を起こさせる。1時間後に、上層を除去する。濃縮下層は66.0%のPTFE固形分を含有する。分散液の粘度は318cpsである。
【0086】
濃縮分散液を脱塩水で60.0%の固形分に希釈する。これは粘度を84cpsに下げる。PTFE固形分を基準として2.4%のラウリル硫酸ナトリウムを添加して湿潤特性を改善し、粘度をさらに33cpsに下げる。
【0087】
実施例6
本実施例は、アニオン交換樹脂カラムでのアクリル共重合体分散剤を含有するフルオロ界面活性剤−含有フルオロポリマー分散液の低減および電気デカンテーションを用いるそれに続く濃縮を例示する。
【0088】
実施例5と同様に、100部の重合したままのPTFE(43.5質量%の固形分)を1.74部のタモール(登録商標)2001(活性成分基準)と混合する。分散液を穏やかに撹拌し、水酸化アンモニウムを添加してpHを9.8以下にする。分散液を、USフィルターA−244OHイオン交換樹脂を含有するカラムに通す。カラムは、直径が14インチであり、8:1の長さ対直径比を有する。分散液の温度を52〜54℃に維持する。カラムを通しての流量はおおよそ10ポンド毎分である。これは1600ppmから8.1ppmへのAPFOレベルの低下をもたらす。
【0089】
イオン交換後に、固形分レベルは41.2質量%と測定される。固形分の濃縮は電気デカンテーションによって行う。分散液を容器にフィードし、直流電位を容器の片側で電極から印可する(240V直流)。アニオン性分散剤で取り囲まれた負に帯電したPTFE粒子は、印可場中で陽極の方へ移動する。容器中で電極間に垂直に吊された複数の半透膜障壁が濃縮セルを形成し、粒子が陽極と接触するのを防ぐ。濃縮分散液は膜の一面に沿って下方へ移動し、そして空乏分散液は他の面上を上方へ移動する。定期的な電流反転は樹脂粒子の圧縮および凝固を防ぐ。より濃い濃縮分散液は、濃縮セルに分離されていない容器の傾斜した底部に沈降する。濃縮分散液を30分間隔でデカンターの底部から抜き出す。上澄液体はオーバーヘッドのままである。印可電流は90秒毎に反転してPTFE粒子の流れを逆にし、こうして膜および電極上でのPTFE粉末の凝固を防ぐ。濃縮下層は54.0%のPTFE固形分を含有する。分散液の粘度はおおよそ30cpsである。
【0090】
実施例7
本実施例は、カテーテル・ガイドワイヤへのフルオロポリマーの塗布のための本発明に従ったコーティング法を例示する。カテーテル・ガイドワイヤ、典型的にはステンレススチールを、動脈システムへのアクセスを容易にするためにフルオロポリマーで被覆する。
【0091】
実施例6で製造したような分散液を使用する。かかる分散液を、オスダル(Osdal)に付与された米国特許第2,562,118号明細書に説明されているようにコーティング組成物へ調合する。コーティング組成物を、約1質量%のラウリル硫酸ナトリウムを含有する100部のPTFE分散液とクロム酸およびリン酸を含有する35部の酸促進剤システムとから形成する。コーティング組成物を、全てのミリングオイル、汚れなどを除去するために完全にきれいにし、そして乾燥させたステンレススチール・ワイヤ(0.15〜0.40インチ、3.8〜10mmの外径)上へ10〜15マイクロメートルの乾燥フィルム厚さに湿式で吹き付ける。コーティングを、750°F(399℃)の温度で3〜5分間ベーキングすることによって硬化させる。
【0092】
実施例8
本実施例は、例えば、化学品処理タンクの内側に塗布されるなどの工業用塗料としてフルオロポリマーを塗布するための本発明に従ったコーティング法を例示する。
【0093】
実施例6で製造したような分散液を、炭素鋼の基材を被覆するためにさらに使用する。炭素鋼の基材を、粗いグリット(10〜20メッシュ)および90〜100psi(0.62〜0.69MPa)の空気圧を用いて約75〜約125マイクロメートルの表面粗さRaを達成するために酸化アルミニウムでグリットブラストすることによって粗化する。実施例6の分散液を、オスダルに付与された米国特許第2,562,118号明細書に説明されているようにコーティング組成物へ調合し、プライマーとして準備完了基材に塗布する。コーティング組成物を、クロム酸およびリン酸を含有する35部の酸促進剤システムとブレンドされた、約1質量%のラウリル硫酸ナトリウムを含有する100部のPTFE分散液から形成する。プライマーを約12〜25マイクロメートルのフィルム厚さに通常の方法によって湿式塗布する。
【0094】
PFA粉末(タイプ350、デュポン・カンパニーによって製造される製品コード532−5450)の第1層を、ITWジェマ・カンパニー(ITW GEMA Company)によって供給される粉末スプレーガンを用いて湿ったプライマーに静電気的に塗布する。ガン設定値は15kV、3.0搬送空気、10投与空気および6バール圧力である。第1コーティング層を、湿ったプライマー上へ塗布し、熱電対を被覆基材に取り付ける。被覆基材を加熱し、加熱しながら、基材の温度を熱電対で測定し、被覆基材を725°F〜750°F(385〜399℃)で10分間ベーキングする。基材をオーブンから取り出し、第2およびそれに続く層を塗布する。各層を、被覆当たり約80〜約120ミクロンDFTで塗布し、再被覆した基材を次に700°F〜725°F(371〜385℃)で10分間ベーキングする。ベーキング時間は、コーティングの完全な溶融および融合を確実にすることが望ましい場合には延長することができる。625マイクロメートルの範囲のDFTに達するまで基材をPFA粉末組成物で繰り返し被覆する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約10〜約400nmの平均粒径を有するフルオロポリマー粒子を含む水性フルオロポリマー分散液であって、約35〜約70質量%の固形分含有率を有し、フルオロポリマー固形分の質量を基準として約0.03質量%〜約10質量%のアニオン性高分子電解質分散剤を含み、非イオン界面活性剤を実質的に含まず、そして少なくとも約100秒のゲル化時間を有する分散液。
【請求項2】
20質量%またはそれ以上の酸含有率のアクリルポリマーをさらに含む請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
フルオロポリマー粒子が約100〜約350nmの平均粒径を有する請求項1に記載の分散液。
【請求項4】
固形分含有率が約50〜約70質量%である請求項1に記載の分散液。
【請求項5】
アニオン性高分子電解質分散剤が、フルオロポリマー固形分の質量を基準として約0.1質量%〜約10質量%の量で存在する請求項1に記載の分散液。
【請求項6】
20%またはそれ以上の酸含有率のアクリルポリマーが、分散液の水性部分の質量を基準として約0.01〜約0.5質量%の量で存在する請求項2に記載の分散液。
【請求項7】
20%またはそれ以上の酸含有率のアクリルポリマーが、分散液の水性部分の質量を基準として約0.02〜約0.4質量%の量で存在する請求項2に記載の分散液。
【請求項8】
分散液の質量を基準として約300ppm未満のフルオロ界面活性剤を含有する請求項1に記載の分散液。
【請求項9】
分散液が分散液の質量を基準として約100ppm未満のフルオロ界面活性剤を含有する請求項1に記載の分散液。
【請求項10】
分散液が分散液の質量を基準として約50ppm未満のフルオロ界面活性剤を含有する請求項1に記載の分散液。
【請求項11】
少なくとも300秒のゲル化時間を有する請求項1に記載の分散液。
【請求項12】
少なくとも500秒のゲル化時間を有する請求項1に記載の分散液。
【請求項13】
アニオン界面活性剤をさらに含む請求項1に記載の分散液。
【請求項14】
アニオン界面活性剤が、フルオロポリマー固形分の質量を基準として約0.05〜約10質量%の量で存在する請求項13に記載の分散液。
【請求項15】
少なくとも約9.0のpHを有する請求項1に記載の分散液。
【請求項16】
少なくとも約9.5のpHを有する請求項1に記載の分散液。
【請求項17】
約35mS/cmより大きい表面張力を有する請求項1に記載の分散液。
【請求項18】
アニオン性高分子電解質分散剤が、アニオン性基がポリマー鎖に沿って分布した、線状または分岐の構造を有するアニオン性ポリマーである請求項1に記載の分散液。
【請求項19】
アニオン性高分子電解質分散剤が約150より大きい当量を有する請求項1に記載の分散液。
【請求項20】
アニオン性高分子電解質分散剤の当量が約50,000未満である請求項1に記載の分散液。
【請求項21】
アニオン性高分子電解質分散剤の数平均分子量が少なくとも約500である請求項1に記載の分散液。
【請求項22】
アニオン性高分子電解質分散剤が分子当たり少なくとも2つのアニオン性官能基を含有する請求項1に記載の分散液。
【請求項23】
アニオン性高分子電解質分散剤がカルボキシレート、サルフェート、スルホネート、ホスフェート、およびホスホネートから選択されたアニオン性官能基を含有する請求項1に記載の分散液。
【請求項24】
アニオン性高分子電解質分散剤がフッ素原子を含有しない請求項1に記載の分散液。
【請求項25】
アニオン性高分子電解質分散剤が、アクリルモノマーまたはビニルモノマーから選択されたモノマーのアニオン性ホモポリマーもしくはコポリマーから選択される請求項1に記載の分散液。
【請求項26】
アクリルモノマーが(メタ)アクリルアミド、相当する塩の形態での(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸の線状もしくは分岐のC〜Cヒドロキシエステル、アルキルが線状もしくは分岐であることができる、C〜C12アルキル(メタ)アクリレート、次の一般式:
【化1】


(式中、RはHまたはCHであり、RおよびRは、同一または異なっていて、Hまたは場合により分岐のC〜Cアルキルであり、Mはアルカリもしくはアルカリ土類金属またはアンモニウムであり、そしてAはNH、OまたはNCHである)
の化合物から選択される請求項25に記載の分散液。
【請求項27】
アニオン性高分子電解質分散剤がアクリル共重合体である請求項25に記載の分散液。
【請求項28】
アニオン性高分子電解質分散剤が、フルオロポリマー固形分の質量を基準として約0.5質量%〜約5.5質量%の量で存在する請求項27に記載の分散液。
【請求項29】
アクリル共重合体分散剤が約2,000〜約100,000の分子量を有する請求項27に記載の分散液。
【請求項30】
アクリル共重合体分散剤が疎水性である請求項27に記載の分散液。
【請求項31】
アクリル共重合体分散剤がメタクリル酸/ブチルメタクリレート共重合体を含む請求項27に記載の分散液。
【請求項32】
メタクリル酸/ブチルメタクリレート共重合体が約30〜約50モル%のメタクリル酸単位と約50〜約70モル%のブチルメタクリレート単位とを含む請求項31に記載の分散液。
【請求項33】
ビニルモノマーがビニル芳香族モノマー、C〜C12アルキルビニルエーテル、およびC〜C18脂肪族モノカルボン酸のビニルエステルから選択される請求項25に記載の分散液。
【請求項34】
ビニル芳香族モノマーがスチレン並びに芳香環の1つもしくはそれ以上の水素原子をヒドロキシルまたはメチルでおよび/またはビニルの1つもしくはそれ以上の水素原子をメチルで置換することによって得られるその誘導体から選択される請求項33に記載の分散液。
【請求項35】
アニオン性高分子電解質分散剤がポリアミド酸を含む請求項1に記載の分散液。
【請求項36】
アニオン性高分子電解質分散剤が芳香族ポリアミド酸またはポリアミドアミド酸から選択されたポリアミド酸を含む請求項35に記載の分散液。
【請求項37】
ポリアミド酸が次の単位:
【化2】


(式中、RIIは二価アリーレン基である)
を含有する請求項35に記載の分散液。
【請求項38】
アニオン性高分子電解質分散剤が、アルキルが1〜5個の炭素原子を含むカルボキシアルキルセルロースを含む請求項1に記載の分散液。
【請求項39】
約10〜約400nmの平均サイズを有するフルオロポリマー粒子と、約15〜約55質量%の固形分含有率とを含むフルオロポリマー分散液をアニオン性高分子電解質分散剤で安定化させる工程、
該安定化フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散液をアニオン交換樹脂と接触させてフルオロ界面活性剤含有率を所定のレベルに下げる工程、
フルオロ界面活性剤含有率が低減フルオロ界面活性剤分散液を生成するために下げられた後に、該アニオン交換樹脂を該分散液から分離する工程、および
非イオン界面活性剤を実質的に含まない分散液を生成する方法を用いて該分散液を少なくとも約35質量%に濃縮する工程
を含む、水性フルオロ界面活性剤含有フルオロポリマー分散液のフルオロ界面活性剤含有率を低減させ、そして該分散液を濃縮する方法。
【請求項40】
濃縮工程が、20質量%またはそれ以上の酸含有率のアクリルポリマーを分散液の水性分を基準として約0.01〜約1質量%の量で低減フルオロ界面活性剤分散液に添加する工程、分散液をフルオロポリマー固形分が高い下相とフルオロポリマー固形分が低い上相とに分離させる条件に該分散液を供する工程、および該下相を濃縮低減フルオロ界面活性剤分散液として回収する工程とによって行われる請求項39に記載の方法。
【請求項41】
20%またはそれ以上の酸含有率のアクリルポリマーの添加が行われるときに安定化フルオロポリマー分散液のpHが少なくとも約6である請求項40に記載の方法。
【請求項42】
20%またはそれ以上の酸含有率のアクリルポリマーの添加が行われるときに安定化フルオロポリマー分散液のpHが少なくとも約9である請求項40に記載の方法。
【請求項43】
20%またはそれ以上の酸含有率のアクリルポリマーの添加が行われるときに安定化フルオロポリマー分散液のpHが少なくとも約9.5である請求項40に記載の方法。
【請求項44】
濃縮工程がエレクトロデカンテーションによって行われる請求項39に記載の方法。
【請求項45】
回収された濃縮低減フルオロ界面活性剤分散液が約35〜約70質量%の固形分含有率を有する請求項39に記載の方法。
【請求項46】
回収された濃縮低減フルオロ界面活性剤分散液が約300ppm未満のフルオロ界面活性剤を含む請求項39に記載の方法。
【請求項47】
フルオロポリマー粒子を含み、そして約35〜約70質量%の固形分含有率を有する濃縮水性フルオロポリマー分散液であって、フルオロポリマー固形分の質量を基準として約0.03質量%〜約10質量%のアニオン性高分子電解質分散剤を含み、そして該分散液の質量を基準として約300ppm未満のフルオロ界面活性剤を含有し、非イオン分散液を実質的に含まない該分散液を提供する工程、
該分散液を該基材に塗布する工程、および
分散液で被覆された該基材を加熱して該フルオロポリマー粒子を該基材上で融合させる工程
を含む、基材へのフルオロポリマーの塗布方法。
【請求項48】
基材が金属である請求項47に記載の方法。
【請求項49】
水性分散液がクロム酸をさらに含む請求項47に記載の方法。
【請求項50】
基材がカテーテル・ガイドワイヤである請求項47に記載の方法。
【請求項51】
クロム酸をさらに含む請求項1に記載の分散液を含むコーティング組成物。

【公表番号】特表2009−538968(P2009−538968A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513209(P2009−513209)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/012509
【国際公開番号】WO2007/142888
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】