説明

アミドフェノール化合物およびナフトキノンジアジド化合物

【課題】ポジ型感光性樹脂組成物に用いた場合に、高感度、高解像度を示す、保存安定性の良好な、ハロゲン元素を含まないナフトキノンジアジド化合物と、その製造に有用な中間体であるアミドフェノール化合物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物。


(式中、RおよびRは互いに独立にフェニル基を有する1価の有機基であり、R、R、RおよびRは互いに独立に、水素原子または1価の有機基である。QおよびQは、互いに独立であり、少なくとも1つは4-又は5−ナフトキノンジアジドスルホニル基のどちらかである。また、Xはハロゲン元素を含まない2価の基または単結合である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光活性剤として好適に利用できる新規ナフトキノンジアジド化合物及びその製造に有用な中間体であるアミドフェノール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜としては、優れた耐熱性と電気特性、機械特性などを併せ持つポリイミド樹脂やポリベンゾオキサゾール樹脂が用いられている。これら樹脂は、通常、その前駆体組成物を塗布した後、熱処理を行い、イミド化もしくは、オキサゾール化により、樹脂を形成する。この樹脂をパターン化する必要がある場合は、一般に感光性の前駆体組成物が用いられている。その理由は、感光性前駆体組成物であれば、これを塗布した後、活性光線により露光し、次いで現像、熱イミド化等の処理を施すことによって簡単にポリイミドパターンを形成させることができ、非感光性ポリイミドを用いた場合に比べて大幅な工程の短縮が可能となるからである。
【0003】
これらの感光性性能として、添加する感光剤の選択によりポジ型とネガ型、およびアルカリ現像タイプと溶剤現像タイプがあるが、最近では、フォトレジストと同様に希薄アルカリ水溶液で現像可能なアルカリ現像タイプの耐熱性感光性樹脂材料の提案が種々なされている。
中でもアルカリ現像タイプのヒドロキシポリアミド、例えばポリベンゾオキサゾール(以下、「PBO」ともいう。)前駆体をナフトキノンジアジドなどの光活性成分(以下、「PAC」ともいう。)と混合して用いる方法が近年注目されている(例えば、特許文献1、2参照)。
これらの樹脂は露光及びアルカリ水溶液による現像で、ポジパターンを容易に形成することができ、現像性、保存安定性も良好で、パターン化後熱硬化によりポリベンズオキサゾール化することができ、耐熱性、機械特性、電気特性などの膜特性を有する被膜を得ることができる。
【0004】
元来、ナフトキノンジアジドを用いた感光性樹脂組成物の場合、アルカリ可溶性ポリマーにナフトキノンジアジドを添加することにより、組成物のアルカリ溶解性を低下させる(溶解抑止)能力が発現し、未露光部の現像液への溶解に対する耐性が生じる。一方露光部は、ナフトキノンジアジドがインデンカルボン酸に変換され、溶解抑止能力が消失して現像液に溶解するようになる。
この露光部、未露光部のアルカリ溶解性の差を利用してパターニングを行うわけであるが、高感度でかつ高残膜率(高コントラスト)のパターニング性能を得るには、露光部、未露光部の溶解性の差を充分に取ることができるPACの選定が重要となる。
すなわち、PACの添加により未露光部ではアルカリ可溶性ポリマーのアルカリ水溶液への溶解性を極端に低下させることで、充分なアルカリ現像液への溶解に対する耐性を持たせ、一方露光部では、僅かな光によっても効率よく分解し、充分なアルカリ溶解性が発現する、高感度なPACを用いなければならない。
【0005】
中でも、ある特定の構造をもつPACを用いることで、高感度を達成するポジ型感光性樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献3参照)。このPACは厚膜条件下においても、未露光部の現像液への溶解に対する耐性を高いレベルに保ったまま、露光部における短時間の露光によっても充分なアルカリ溶解性を実現しうる、高感度なPACであった。しかしながらここに開示されているPACにも問題点、懸念点があり、改良する必要性がある。
例えば、半導体用途として特許文献3に開示のポジ型感光性樹脂組成物を用いる場合、残留するハロゲン元素が、基板、回路等の金属部分の腐食を発生させる懸念があるため、該組成物中において、ハロゲン元素を低減したタイプが望まれている。特に添加剤成分において、ハロゲン元素を含まないタイプが望まれている。従って、上記PACを、ハロゲン元素を含まない化合物にすることがより好ましいといえる。
そこで、上記の問題を解決するために、高感度で、ハロゲン元素を含まないナフトキノンジアジド構造を有するPACが必要とされていた。
【0006】
【特許文献1】特公平01−046862号公報
【特許文献2】特開昭63−096162号公報
【特許文献3】特開2003−131368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
感度が高く、高解像度を示し、保存安定性が良好な、ポジ型感光性樹脂組成物を実現するための光活性剤を提供することを目的とする。更に詳しくは、ハロゲン元素を含まないナフトキノンジアジド化合物と、その製造に有用な中間体であるアミドフェノール化合物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、特定の構造を有するアミドフェノール化合物から得られる、ナフトキノンジアジド化合物が、前記特性を満足し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.下記一般式(1)で表されるナフトキノンジアジド化合物。
【化1】

(式中、RおよびRはフェニル基を有する1価の有機基であり、R、R、RおよびRは互いに独立に、水素原子または1価の有機基である。QおよびQは、互いに独立であり、少なくとも1つは下記式(2)で示される二つの基のどちらかである。また、Xはハロゲン元素を含まない2価の基または単結合である。)
【化2】

2.R、R、R、及びRはフェニル基を有する1価の有機基であり、RおよびRは互いに独立に水素原子または1価の有機基であることを特徴とする上記1に記載のナフトキノンジアジド化合物。
3.Xが−SO−または、−CR−、(ここで、RおよびRは互いに独立に炭素数が1〜4の1価の有機基である。)であることを特徴とする上記1または2に記載のナフトキノンジアジド化合物。
4.R、R、R、及びRがフェニル基でありR及びRが水素原子であり、Xが−SO−または−C(CH−であることを特徴とする上記3に記載のナフトキノンジアジド化合物。
5.下記一般式(3)で表されるアミドフェノール化合物。
【化3】

(式中、RおよびR12はフェニル基を有する1価の有機基であり、R10、R11、R13およびR14は互いに独立に水素原子または1価の有機基である。また、Xはハロゲン元素を含まない2価の基または単結合である。)
6.R、R10、R12、及びR13はフェニル基を有する1価の有機基であり、R11およびR14は互いに独立に水素原子または1価の有機基であることを特徴とする上記5に記載のアミドフェノール化合物。
7.Xが−SO−または、−CR1516−、(ここで、R15およびR16は互いに独立に炭素数が1〜4の1価の有機基である。)であることを特徴とする上記5または6に記載のアミドフェノール化合物。
8.R、R10、R12、及びR13がフェニル基でありR11及びR14が水素原子であり、Xが−SO−または−C(CH−であることを特徴とする上記7に記載のアミドフェノール化合物。
9.アルカリ可溶性樹脂100質量部と上記1〜4のいずれか1項に記載のナフトキノンジアジド化合物1〜50質量部を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
10.上記9に記載のポジ型感光性樹脂組成物から形成された耐熱性被膜を有することを特徴とする半導体装置。
11.上記9に記載のポジ型感光性樹脂組成物を半導体素子上に塗布し、プリベーク、露光、現像、加熱することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のナフトキノンジアジド化合物はハロゲン元素を含まず、ポジ型感光性樹脂組成物に用いた場合に、高感度、高解像度を示し、保存安定性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のナフトキノンジアジド化合物は、特定のアミノフェノール化合物からアミドフェノール化合物を経由して合成される。
<アミドフェノール化合物の合成方法>
本発明のアミドフェノール化合物は、アミノフェノール化合物1当量に対して、1.5〜2.5当量のカルボン酸クロリドを作用させて得ることができる。また、アミノフェノール化合物1当量に対して、1.5〜2.5当量のカルボン酸をジシクロヘキシルカルボジイミド(以下、「DCC」、ともいう。)の存在下で得ることができる。DCCの添加量は、アミノフェノールのフェニル基1当量に対して、2〜3当量が好ましい。
反応条件は、カルボン酸クロリドを作用させて得るケースでは、塩基触媒を加え、−10〜10℃で、1〜3時間で行い、カルボン酸を作用させて得るケースでは、塩基触媒を加えてもよく、0〜70℃で、1〜20時間行い、アミドフェノール化合物を得ることができる。アミノフェノール化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0011】
【化4】

【0012】
また、アミノフェノール化合物に作用させるカルボン酸、カルボン酸クロリドの具体例としては、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、フェニルアセチルクロリド、フェノキシアセチルクロリド、2−フェニルブチリルクロリド、ジフェニル酢酸、ジフェニルプロピオン酸、ジフェニル酢酸クロリド等のフェニル基を持つ化合物であり、中でも、ジフェニル酢酸、ジフェニルプロピオン酸、ジフェニル酢酸クロリドといった、フェニル基を2個以上持つ化合物が好ましい。
前記アミドフェノール化合物を合成する際に、通常用いられる溶剤としては、原料のアミノフェノール化合物およびカルボン酸またはカルボン酸クロリドを共に溶解するものが好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」ともいう。)、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」ともいう。)、γ−ブチロラクトン(以下、「GBL」ともいう。)、ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」ともいう。)、テトラヒドロフラン(以下、「THF」ともいう。)等が挙げられる。溶剤の添加量は選択するアミノフェノールとカルボン酸が溶解する量であれば、いくらでも構わないが、アミドフェノール化合物100質量部に対して、100〜1000質量部が好ましい。
【0013】
また、塩基触媒はアミドフェノール化合物の合成反応を加速するために加えられるが、例えば、ピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(以下、「DABCO」ともいう)、ジアザビシクロウンデセン(以下、「DBU」ともいう)が挙げられる。
塩基触媒の添加量は、アミノフェノールの有するフェノール基1当量に対して、1〜2当量である。
このようにして合成されたアミドフェノール化合物は、水等の貧溶媒中で再沈殿させた後、THF等の溶剤に再溶解し、陽イオン交換樹脂で処理することで塩基性化合物を除去できる。アミドフェノール化合物を合成する際、カルボン酸クロリド等の使用により塩素イオン等が発生する場合は、これを除去するために陰イオン交換樹脂を併用することが好ましい。こうして処理された溶液を水中にて再沈殿後、濾過、加熱乾燥することにより目的物を単離することができる。
【0014】
<ナフトキノンジアジド化合物の合成方法>
ナフトキノンジアジド化合物(以下、「NQD」ともいう。)は、前記、アミドフェノール化合物のフェノール性水酸基の一部または全てをキノンジアジドスルホン酸エステル化することにより、得ることが出来る。
キノンジアジドスルホン酸エステル化に当たっては、1,2−ナフトキノンジアジド構造を有する各種のスルホン酸誘導体を用いることが出来るが、好ましくは、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロライドもしくは1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロライドが好ましい。また、これらのエステル化剤は単独あるいは混合して使用してもよい。
NQDは、アミドフェノールのヒドロキシ基1当量に対して、スルホン酸誘導体0.8〜1当量を25〜40℃で1時間〜3時間反応させることで得られる。
【0015】
この反応は、通常、脱ハロゲン化水素剤の存在下で行われる。脱ハロゲン化水素剤としては、一般にハロゲン化水素と塩を形成しうる塩基性の化合物、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩基類、エチルアミン、エタノールアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジンなどのアミン類などが挙げられる。
脱ハロゲン化水素剤は、単独、もしくは数種を混合して用いることができ、数種を段階的に添加して用いてもよい。添加量はアミドフェノールのヒドロキシ基1当量に対して、1〜1.3当量である。
エステル化反応は、通常、溶媒中で行われる。反応溶媒としては、ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグライム類、ガンマブチロラクトンなどのラクトン類、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類、アセトン、メチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン類などを使用することができるがこれらに限定されない。溶媒の添加量はエステル化反応が進行する量であればいくらでも構わないが、好ましくは、アミドフェノール100質量部に対して、200〜2000質量部である。
【0016】
<ポジ型感光性樹脂組成物>
本発明のナフトキノンジアジド化合物は、アルカリ可溶性ポリマーとからなるポジ型感光性樹脂組成物の成分として好適に用いられ、特に該アルカリ可溶性ポリマーがフェノール性水酸基を有するポリマー、具体的には、Mwが・・・〜・・・のポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレンの場合に有用である。
ナフトキノンジアジド化合物の添加量は、アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対して、1〜50質量部の範囲で用いられる。
また、本発明のナフトキノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物は、これらの成分を溶剤に溶解したワニス状の形態をとる。ここで用いる溶剤としては、DMAc、ジメチルホルムアミド、NMP、GBL、DMSO、THF等が挙げられ、単独でも混合して用いても良い。溶剤の使用量は、得られる膜厚によって異なり、アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対して、70〜1900質量部の範囲で用いられる。
【0017】
本発明のナフトキノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物は、次のようにして使用できる。まず、該組成物を、適当な基板、例えばシリコンウエハー、セラミック基板、アルミ基板等にスピナーを用いた回転塗布やロールコーターにより塗布する。これをオーブンやホットプレートを用いて50〜140℃で10秒〜1時間乾燥し、マスクを介して、コンタクトアライナーやステッパーを用いて化学線の照射を行う。次に照射部を現像液で溶解除去し、引き続きリンス液によるリンスを行うことで所望のレリーフパターンを得る。現像方法としてはスプレー、パドル、ディップ、超音波等の方式が可能である。リンス液は蒸留水、脱イオン水等が使用できる。得られたレリーフパターンを200〜380℃で10秒〜2時間、加熱処理して、耐熱性被膜を形成することができる。
上記ポジ型感光性樹脂組成物は半導体用途のみならず、多層回路の層間絶縁やフレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜や液晶配向膜としても有用である。半導体用途の具体的な好ましい例は、半導体表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、バンプ構造を有する装置の保護膜などである。
【実施例】
【0018】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態の具体例を説明する。
[参考例1]
<ポリマー製造例>
容量2リットルのセパラブルフラスラスコ中で、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン197.8g(0.54mol)、ピリジン71.2g(0.9mol)、DMAc692gを室温(25℃)で混合攪拌し、ジアミンを溶解させた。これに、別途DMDG(・・・名称・・・)88g中に5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物29.6g(0.18mol)を溶解させたものを、滴下ロートより滴下した。滴下に要した時間は40分、反応液温は最大で28℃であった。
滴下終了後、湯浴により50℃に加温し18時間撹拌したのち反応液のIRスペクトルの測定を行い1385−1および1772cm−1のイミド基の特性吸収が現れたことを確認した。
【0019】
次にこれを水浴により8℃に冷却し、これに別途DMDG398g中に4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロライド132.8g(0.45mol)を溶解させたものを、滴下ロートより滴下した。滴下に要した時間は80分、反応液温は最大で12℃であった。
滴下終了から3時間後、上記反応液を12Lの水に高速攪拌下で滴下し重合体を分散析出させ、これを回収し、適宜水洗、脱水の後に真空乾燥を施し、ポリベンゾオキサゾール前駆体(P−1)を得た。
このようにして合成されたポリベンゾオキサゾール前駆体(P−1)のGPCによる重量平均分子量は、ポリスチレン換算で8900であった。GPCの分析条件を以下に記す。
カラム:昭和電工社製 商標名 Shodex KF807/806M/806M/802.5
容離液:テトラヒドロフラン 40℃
流速 :1.0ml/分
検出器:昭和電工製 商標名 Shodex RI RI−101
【0020】
[実施例1]
<アミドフェノール化合物の合成>
容量500mlのセパラブルフラスラスコに(3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシフェニル)スルホン28.0g(0.1mol)、DMAc142g、ピリジン15.8g(0.2mol)を入れ、これに−15℃でジフェニル酢酸クロリド46.1g(0.2mol)をGBL230gに溶解した溶液を滴下した。そのまま室温で3日間撹拌反応を行ったあと、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて反応を確認したところ、原料は全く検出されず、生成物が単一ピークとして純度99%で検出された。この反応液をそのまま2リットルのイオン交換水中に撹拌下で滴下し、生成物を析出させた。
【0021】
次に析出物を濾別した後、これにTHF200mlを加え撹拌溶解し、この均一溶液を陽イオン交換樹脂:アンバーリスト15(オルガノ株式会社製)20gが充填されたガラスカラムを通し残存するピリジンを除去した。次にこの溶液を1リットルのイオン交換水中に高速撹拌下で滴下することにより生成物を析出させ、これを濾別した後、真空乾燥することにより下記構造のアミドフェノール化合物(A−1)を収率80%で得た。(A−1)のH−NMRの測定結果を次に示す。(H−NMRシグナルピーク:5.6ppm(s)、7.0ppm(d)、7.2〜7.4(m)、7.5ppm(d)、8.6ppm(s)、9.7ppm(s))また、スペクトルデータを図1に示した。
H−NMRの測定条件を下記に記す。
装置:ブルカー・バイオスピン株式会社製 BulkerGPX スペクトロメーター
溶媒:重クロロホルム(Uvasol社製 Chloroform−D1 MERCK)
測定温度:25℃
【0022】
【化5】

【0023】
[実施例2]
実施例1の3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシフェニル)スルホンの代わりに、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン25.8g(0.1mol)を用いて、実施例1と同様に合成を行い、下記構造のアミドフェノール化合物(A−2)を収率75%で得た。実施例1と同じ条件でA−2のH−NMRを測定した結果を次に示す。(H−NMRシグナルピーク:1.5ppm(s)、5.4ppm(s)、6.7ppm(s)、7.2〜7.4(m)、7.8ppm(s)、9.5ppm、(s)、9.6ppm(s))また、スペクトルデータを図2に示した。
【0024】
【化6】

【0025】
[参考例2]
実施例1のジフェニル酢酸クロリドの代わりに、t−ブチルアセチルクロリド26.9g(0.2mol)を用いて、実施例1と同様に合成を行ったところ、得られたアミドフェノール化合物(B−1)がアセトンに溶解せず、ナフトキノンジアジド化するのが困難であった。
【0026】
[参考例3]
実施例1のジフェニル酢酸クロリドの代わりに、1−アダマンタンカルボニルクロリド39.7g(0.2mol)を用いて、実施例1と同様に合成を行ったところ、得られたアミドフェノール化合物(B−2)がアセトンに溶解せず、ナフトキノンジアジド化するのが困難であった。
【0027】
<アミドフェノール化合物の溶解性評価>
上記、参考例2及び3、並びに実施例1及び2にて得られた、アミドフェノール化合物のGBL、またはアセトンに対する溶解性の結果を表1に示す。
【表1】

表1の結果から、本発明に用いられるアミドフェノールは、溶剤に対して優れた溶解性を示すことが分かる。
【0028】
<ナフトキノンジアジド化合物の合成>
[実施例3]
実施例1で得られたアミドフェノール化合物20.1g(0.03モル)、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロライドを14.9g(0.059モル)、アセトン240g加え、20℃で撹拌溶解した。これに、トリエチルアミン7.3g(0.072モル)をアセトン35gで希釈したものを、30分かけて一定速度で滴下した。この際、反応液は氷水浴などを用いて20〜30℃の範囲で温度制御した。
滴下終了後、更に30分間、20℃で撹拌放置した後、36重量%濃度の塩酸水溶液0.6gを加え、次いで反応液を氷水浴で冷却し、析出した固形分を吸引濾別した。この際得られた濾液を、0.5重量%濃度の塩酸水溶液1リットルに、その撹拌下で1時間かけて滴下し、目的物を析出させ、吸引濾別して回収した。得られたケーク状回収物を、再度イオン交換水5リットルに分散させ、撹拌、洗浄、濾別回収し、この水洗操作を3回繰り返した。最後に得られたケーク状物を、40℃で24時間真空乾燥し、下記構造のナフトキノンジアジド化合物Q−1を得た。実施例1と同じ条件でQ−1のH−NMRを測定した結果を次に示した。(H−NMRシグナルピーク:5.4ppm(s)、7.2ppm(d)、7.2〜7.4(m)、7.5〜7.7ppm(m)、8.2ppm(d)、8.3ppm(d)、8.5ppm(s)、10.4ppm(s))また、スペクトルデータを図3に示した。
【0029】
【化7】

【0030】
[実施例4]
実施例3の、実施例1で得られたアミドフェノール化合物の代わりに実施例2で得られたアミドフェノール化合物19.4g(0.03mol)を用いて、実施例3と同様に合成し、下記構造のナフトキノンジアジド化合物Q−2を得た。実施例1と同じ条件でQ−2のH−NMRを測定した結果を次に示した。(H−NMRシグナルピーク:1.5ppm(s)、5.3ppm(s)、6.8ppm(m)、7.2〜7.4ppm(m)、7.6〜7.8ppm(m)、8.2〜8.3ppm(m)、8.4ppm(m))また、スペクトルデータを図4に示した。
【0031】
【化8】

【0032】
<ポジ型感光性樹脂組成物の調製およびその評価>
(実施例5〜6、比較例1)
上記参考例1にて得られたポリベンゾオキサゾール前駆体(P−1)100質量部、実施例3および4にて得られたナフトキノンジアジド化合物(Q−1及びQ−2)、並びに下記化合物(Q−3)15質量部をそれぞれGBL185質量部に溶解し、表2に示す組合せで調整した。その後、0.2μmのフィルターで濾過してポジ型感光性樹脂組成物を調製し、そのパターニング特性、ワニス析出安定性を評価した。
【0033】
【化9】

【0034】
(1)パターニング特性(感度及び解像度)評価
上記ポジ型感光性樹脂組成物を東京エレクトロン社製スピンコーター(CLEANTRACK MK−8)にて、6インチシリコンウエハーにスピン塗布し、130℃、180秒間ホットプレートにてプリベークを行い、11μmの塗膜を形成した。膜厚は大日本スクリーン製造社製膜厚測定装置(ラムダエース)にて測定した。
この塗膜に、テストパターン付きレチクルを通してi線(365nm)の露光波長を有するニコン社製ステッパー(NSR2005i8A)を用いて露光量を段階的に変化させて露光した。
これをAZエレクトロニックマテリアルズ社製アルカリ現像液(AZ300MIFデベロッパー、2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)を用い、23℃の条件下で現像後膜厚が9.3μmとなるように現像時間を調整して現像を行い、ポジ型レリーフパターンを形成した。現像時間、感光性樹脂組成物の感度、解像度を表2に示す。
【0035】
なお、感光性樹脂組成物の感度、解像度は、次のようにして評価した。
[感度(mJ/cm)]
上記現像時間において、塗膜の露光部を完全に溶解除去しうる最小露光量。
[解像度(μm)]
上記露光量での最小解像パターン寸法。
表2に示した結果から、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いることにより、適当な現像時間で、高感度、高解像度のパターンを形成することができることが分かる。
【0036】
(2)保存安定性評価
上記、ポジ型感光性樹脂組成物を、室温で1週間または2週間放置したときに、固形分の析出が認められるかどうかを目視で観察した結果を表2に示す。
表2に示した結果から、本発明のナフトキノンジアジド化合物は、感光性樹脂組成物中において、保存安定性に優れていることが分かる。
【0037】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のナフトキノンジアジド化合物及びその製造に有用な中間体であるアミドフェノール化合物は、ポジ型感光性樹脂組成物の成分として使用することにより、半導体装置の表面保護膜、層間絶縁膜、及び再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、バンプ構造を有する装置の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、電子部品、表示素子並びに液晶配向膜等として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1で合成したアミドフェノール化合物(A−1)のH−NMRの測定結果である。
【図2】実施例2で合成したアミドフェノール化合物(A−2)のH−NMRの測定結果である。
【図3】実施例3で合成したナフトキノンジアジド化合物(Q−1)のH−NMRの測定結果である。
【図4】実施例4で合成したナフトキノンジアジド化合物(Q−2)のH−NMRの測定結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるナフトキノンジアジド化合物。
【化1】

(式中、RおよびRはフェニル基を有する1価の有機基であり、R、R、RおよびRは互いに独立に、水素原子または1価の有機基である。QおよびQは、互いに独立であり、少なくとも1つは下記式(2)で示される二つの基のどちらかである。また、Xはハロゲン元素を含まない2価の基または単結合である。)
【化2】

【請求項2】
、R、R、及びRはフェニル基を有する1価の有機基であり、RおよびRは互いに独立に水素原子または1価の有機基であることを特徴とする請求項1に記載のナフトキノンジアジド化合物。
【請求項3】
Xが−SO−または、−CR−、(ここで、RおよびRは互いに独立に炭素数が1〜4の1価の有機基である。)であることを特徴とする請求項1または2に記載のナフトキノンジアジド化合物。
【請求項4】
、R、R、及びRがフェニル基でありR及びRが水素原子であり、Xが−SO−または−C(CH−であることを特徴とする請求項3に記載のナフトキノンジアジド化合物。
【請求項5】
下記一般式(3)で表されるアミドフェノール化合物。
【化3】

(式中、RおよびR12はフェニル基を有する1価の有機基であり、R10、R11、R13およびR14は互いに独立に水素原子または1価の有機基である。また、Xはハロゲン元素を含まない2価の基または単結合である。)
【請求項6】
、R10、R12、及びR13はフェニル基を有する1価の有機基であり、R11およびR14は互いに独立に水素原子または1価の有機基であることを特徴とする請求項5に記載のアミドフェノール化合物。
【請求項7】
Xが−SO−または、−CR1516−、(ここで、R15およびR16は互いに独立に炭素数が1〜4の1価の有機基である。)であることを特徴とする請求項5または6に記載のアミドフェノール化合物。
【請求項8】
、R10、R12、及びR13がフェニル基でありR11及びR14が水素原子であり、Xが−SO−または−C(CH−であることを特徴とする請求項7に記載のアミドフェノール化合物。
【請求項9】
アルカリ可溶性樹脂100質量部と請求項1〜4のいずれか1項に記載のナフトキノンジアジド化合物1〜50質量部を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のポジ型感光性樹脂組成物から形成された耐熱性被膜を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項9に記載のポジ型感光性樹脂組成物を半導体素子上に塗布し、プリベーク、露光、現像、加熱することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−79028(P2009−79028A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308768(P2007−308768)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】