説明

アミノ酸の新規かつ効率的な合成方法

本発明は、強力な抗痙攣薬であるプレガバリン、(S)−(+)−3−(アミノメチル)−5−メチル−ヘキサン酸(2)およびこれら類似体の調製における重要な中間体である、(±)−3−(アミノメチル)−5−メチル−ヘキサン酸(1)等のγ−アミノ酸の新規な調製方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強力な抗痙攣薬であるプレガバリン、(S)−(+)−3−(アミノメチル)−5−メチル−ヘキサン酸(2)およびこれら類似体の調製における重要な中間体である、(±)−3−(アミノメチル)−5−メチル−ヘキサン酸(1)等のγ−アミノ酸の新規な調製方法に関する。
【0002】
【化1】

【背景技術】
【0003】
以降ラセミのプレガバリン(1)と呼ばれる(±)−3−(アミノメチル)−5−メチル−ヘキサン酸、または(±)−β−イソブチル−γ−アミノ−酪酸、または(±)−イソブチル−GABAは、Synthesis,1989,953で初めて報告された。報告された合成方法は、ニトロメタンをエチル 2−アルケノアートに付加することを含み、生成されたニトロエステルはパラジウム炭素を用いて還元された。続く塩酸を用いる加水分解によって、ラセミのプレガバリン(1)が塩酸塩として得られた。その後、ラセミのプレガバリン(1)の遊離塩基はイオン交換クロマトグラフィによって調製された。
【0004】
US5,637,767に報告された代替の方法は、イソバレルアルデヒドのマロン酸ジエチルとの縮合について記載している。生成された2−カルボキシ−2−アルケン酸をシアニド源、特にシアン化カリウムと反応させた。シアノジエステル生成物は、DMSOおよび水の中で塩化ナトリウムと加熱することにより脱炭酸させ、KOHを用いて加水分解して、シアノ酸のカリウム塩が得られた。これはスポンジニッケルを用いてin situで水素化し、酢酸で中和してラセミのプレガバリン(1)を得た。
【0005】
ラセミのプレガバリン塩酸塩を調製するための別の方法がUS2005/0034565に報告されている。この方法は、エチル 2−アルケノアートを生成するための、イソバレルアルデヒドおよびホスホノ酢酸トリエチルの間のウィッティヒ−ホーナー反応を含む。TBAFを用いてニトロメタンを付加し、ラネーニッケルを用いて水素化を行なってラクタムが生成され、これはHClを用いて加水分解してアミノ酸の塩酸塩が生成された。
【0006】
Synthesis1989の記事に開示された方法の大きな不利点は、非常に低い温度条件(−78℃)で高価なリチウムビス(トリメチルシリルアミド)試薬を使用することであり、これは大きなスケールで行なうには困難であった。
【0007】
US5,637,767に報告されている方法はいくつもの不利点があり、ICHガイドラインに従った許容可能な不純物のプロファイルおよびプレガバリン(2)の許容可能なキラル純度を達成するのが難しかった。US5,637,767に報告されている方法は、毒性が高いKCNを使用し、これは避けるべきものであり、さらにスポンジニッケルの使用は危険性が高い。さらに、US5,637,767に報告されている方法は、非常に長い反応時間および非常に高い温度を含み、それによって、分解物が生成され、収率が低くなる。
【0008】
US2005/0034565に報告されている方法は、最終の生成物からの除去が非常に困難である、亜リン酸化合物の使用を含み、反応時間が長く、かつ高圧の反応を伴う。さらに、この方法は、遊離塩基ではなく塩酸塩をもたらし、両性イオン性の化学種を生成するために、水性媒体からアミノ酸を分離するのは実務上難しいことは周知である。ラセミのプレガバリン(1)の塩酸塩が生成するために、水を用いるワークアップが必要となり、それによって、収率が低くなり、長いワークアップ手順が伴われる。
【0009】
発明者たちは、上記の先行技術の方法に伴われる問題を回避する、ラセミのプレガバリン(1)および他のγ−アミノ酸の調製を必要とした。特に、発明者たちは高い収率で、便利で短いルートであって、危険性の高いおよび/または環境に不適切な試薬の使用をも回避する、ラセミのプレガバリン(1)および他のγ−アミノ酸の調製を必要とした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の目的
したがって、本発明の目的は、ラセミのプレガバリン(1)、プレガバリン(2)およびこれらの類似体等の、γ−アミノ酸の効率的で単純で、かつ危険性のない調製方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、ICHガイドラインの要件を満たすプレガバリン(2)を容易に与える、非常に高い純度のラセミのプレガバリン(1)を生成させるための、簡単かつ正確な実験パラメータで商業的に許容可能な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
定義
本発明の目的のため、「アルキル」基は1価の飽和炭化水素と定義され、これは直鎖もしくは分岐鎖、または環状基であってもよく、または環状基を含んでいてもよい。アルキル基は必要に応じて置換されていてもよく、また必要に応じてその炭素骨格中に1つ以上のヘテロ原子N、OまたはSを含んでいてもよい。好ましくは、アルキル基は直鎖または分岐鎖である。好ましくは、アルキル基は置換されていない。好ましくは、アルキル基はその炭素骨格中にヘテロ原子を含んでいない。アルキル基の例として、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチル基を挙げることができる。好ましくは、アルキル基はC1−12アルキル基(すなわち、1〜12個の炭素原子を含むアルキル基)、好ましくはC1−6アルキル基である。好ましくは、環状アルキル基はC3−12環状アルキル基、好ましくはC5−7環状アルキル基である。「アルキレン」基は2価のアルキル基として同様に定義される。
【0013】
「アルケニル」基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、1価の炭化水素と定義され、これは直鎖もしくは分岐鎖または環状基であってもよく、または環状基を含んでいてもよい。アルケニル基は必要に応じて置換されていてもよく、また必要に応じてその炭素骨格中に1つ以上のヘテロ原子N、OまたはSを含んでいてもよい。好ましくは、アルケニル基は直鎖または分岐鎖である。好ましくは、アルケニル基は置換されていない。好ましくは、アルケニル基はその炭素骨格中にヘテロ原子を含んでいない。アルケニル基の例として、ビニル、アリル、ブト−1−エニル、ブト−2−エニル、シクロヘキセニル、およびシクロヘプテニル基を挙げることができる。好ましくは、アルケニル基はC2−12アルケニル基、好ましくはC2−6アルケニル基である。好ましくは、環状アルケニル基はC3−12環状アルケニル基、好ましくはC5−7環状アルケニル基である。「アルケニレン」基は2価のアルケニル基として同様に定義される。
【0014】
「アルキニル」基は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む、1価の炭化水素と定義され、これは直鎖もしくは分岐鎖または環状基であってもよく、または環状基を含んでいてもよい。アルキニル基は必要に応じて置換されていてもよく、また必要に応じてその炭素骨格中に1つ以上のヘテロ原子N、OまたはSを含んでいてもよい。好ましくは、アルキニル基は直鎖または分岐鎖である。好ましくは、アルキニル基は置換されていない。好ましくは、アルキニル基はその炭素骨格中にヘテロ原子を含んでいない。アルキニル基の例として、エチニル、プロパルギル、ブト−1−イニル、およびブト−2−イニル基を挙げることができる。好ましくは、アルキニル基はC2−12アルキニル基、好ましくはC2−6アルキニル基である。好ましくは、環状アルキニル基はC3−12環状アルキニル基、好ましくはC5−7環状アルキニル基である。「アルキニレン」基は2価のアルキニル基として同様に定義される。
【0015】
「アリール」基は1価の芳香族炭化水素として定義される。アリール基は必要に応じて置換されていてもよく、また必要に応じてその炭素骨格中に1つ以上のヘテロ原子N、OまたはSを含んでいてもよい。好ましくは、アリール基は置換されていない。好ましくは、アリール基はその炭素骨格中にヘテロ原子を含んでいない。アリール基の例として、フェニル、ナフチル、アントラセニル、およびフェナントレニル基を挙げることができる。好ましくは、アリール基はC4−14アリール基、好ましくはC6−10アリール基である。「アリーレン」基は2価のアリール基として同様に定義される。
【0016】
本発明の目的のため、たとえばアリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリール基のように、置換基が、複数の基の組合せとして言及される場合、最後に記載される基は、その部分が分子の残りに結合される原子を含む。アリールアルキル基の典型的な例はベンジルである。
【0017】
本発明の目的のため、必要に応じて置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリール基は、−F、−Cl、−Br、−I、−CF、−CCl、−CBr、−CI、−OH、−SH、−NH、−CN、−NO、−COOH、−Rα−O−Rβ、−Rα−S−Rβ、−Rα−SO−Rβ、−Rα−SO−Rβ、−Rα−SO−ORβ、−RO−SO−Rβ、−Rα−SO−N(Rβ、−Rα−NRβ−SO−Rβ、−RO−SO−ORβ、−RO−SO−N(Rβ、−Rα−NRβ−SO−ORβ、−Rα−NRβ−SO−N(Rβ、−Rα−N(Rβ、−Rα−N(Rβ、−Rα−P(Rβ、−Rα−Si(Rβ、−Rα−CO−Rβ、−Rα−CO−ORβ、−RαO−CO−Rβ、−Rα−CO−N(Rβ、−Rα−NRβ−CO−Rβ、−RαO−CO−ORβ、−RαO−CO−N(Rβ、−Rα−NRβ−CO−ORβ、−Rα−NRβ−CO−N(Rβ、−Rα−CS−Rβ、−Rα−CS−ORβ、−RO−CS−Rβ、−Rα−CS−N(Rβ、−Rα−NRβ−CS−Rβ、−RαO−CS−ORβ、−RαO−CS−N(Rβ、−Rα−NRβ−CS−ORβ、−Rα−NRβ−CS−N(Rβ、−Rβや、−O−、−S−、−NRβ−もしくは−Rα−等の架橋性置換基、または=O、=Sもしくは=NRβ等のπ−結合置換基の1つ以上で置換されてもよい。これに関連して、−Rα−は独立して化学結合、またはC−C10アルキレン、C−C10アルケニレンまたはC−C10アルキニレン基である。−Rβは独立して水素、または無置換のC−Cアルキルまたは無置換のC−C10アリール基である。オプションとしての置換基は、好ましくはオプションとしての置換基で置換された親基における炭素原子の総個数を計算する場合に考慮される。好ましくは、必要に応じて置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリール基は、架橋性置換基では置換されていない。好ましくは、必要に応じて置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリール基は、π−結合置換基では置換されていない。好ましくは、置換された基は1個、2個、または3個の置換基、より好ましくは1個または2個の置換基、より好ましくは1個の置換基を含む。
【0018】
好ましくは、必要に応じて置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリール基は、1つ以上のハロ、アルキルハロ、ヒドロキシ、チオ、ニトロ、アミノ、アルキル、アルコキシまたはカルボキシ基で置換される。
【0019】
オプションとしての置換基はいずれも保護されていてもよい。オプションとしての置換基を保護するための適切な保護基は、たとえば、T.W. Greene および P.G.M. Wutsの "Protective Groups in Organic Synthesis" (Wiley-Interscience, 第3版、1999年および第4版、2006年)で、当該技術分野において知られている。
【0020】
「アルコキシ」基は−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−アリール、−O−アリールアルキル、−O−アリールアルケニル、−O−アリールアルキニル、−O−アルキルアリール、−O−アルケニルアリールまたは−O−アルキニルアリール基として定義される。好ましくは、「アルコキシ」基は−O−アルキルまたは−O−アリール基である。より好ましくは、「アルコキシ」基は−O−アルキル基である。「アルコキシド」は、結合している化学結合の代わりに、酸素原子に負電荷を有するアルコキシ基として同様に定義される。
【0021】
「ハロ」基は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード基である。
「アルキルハロ」基は、1つ以上のハロ基で置換されたアルキル基である。
【0022】
「ヒドロキシ」基は、−OH基である。「チオ」基は−SH基である。「ニトロ」基は−NO基である。「アミノ」基は−NH基である。「カルボキシ」基は−COH基である。
【0023】
本発明の方法の出発物質、中間体または生成物のいずれをも含む本発明の化合物は、その遊離酸もしくは遊離塩基の形態で、または酸付加塩もしくはカルボン酸官能基と適切な陽イオンとの間で形成された塩等の塩として、用いることができる。好ましくは、塩が使用される場合、その塩は医薬的に許容可能な塩である。
【0024】
酸付加塩は好ましくは適切な酸との無毒の付加塩であり、その酸には、ハロゲン化水素酸(たとえばフッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸またはヨウ化水素酸)もしくは他の無機酸(たとえば硝酸、過塩素酸、硫酸またはリン酸)等の無機酸;または有機カルボン酸(たとえば、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、クエン酸、酢酸、安息香酸、サリチル酸、コハク酸、リンゴ酸もしくはヒドロキシコハク酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、ムチン酸もしくはガラクタル酸、グルコン酸、パントテン酸またはパモン酸)、有機スルホン酸(たとえばメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸またはカンファスルホン酸)もしくはアミノ酸(たとえばオルニチン、グルタミン酸またはアスパラギン酸)等の有機酸が含まれるが、これらに限定されない。酸付加塩は、一酸付加塩または二酸付加塩であってもよい。好ましい塩は、ハロゲン化水素酸、硫酸、リン酸、または有機酸付加塩である。より好ましい塩は、塩酸付加塩である。
【0025】
薬学上許容される酸付加塩に加えて、他の酸付加塩も本発明に含まれる。なぜなら、これらは、たとえば他の薬学上許容される酸付加塩を精製または調製するための中間体として機能する可能性があり、または遊離塩基の特定、特徴付け、調製もしくは精製に有用だからである。
【0026】
本発明の化合物のカルボン酸官能基と塩を形成するための適切な陽イオンには、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、およびアンモニウムが含まれるが、これらに限定されない。塩はモノ、ジ、またはトリ塩であってもよい。好ましくは、塩はリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたはアンモニウムのモノもしくはジ塩である。より好ましくは、塩はモノまたはジナトリウム塩である。
【0027】
しかし、本発明の方法の出発物質、中間体および生成物は、特に記載されていない限り、その遊離酸または遊離塩基の形態で使用されるのが好ましい。
【0028】
本発明のγ−アミノ酸は、少なくとも1つのキラル中心を有していてもよく、その場合、少なくとも2つの立体異性体の形態で存在することができる。本発明の目的のため、1つのキラル中心を有するγ−アミノ酸は、2つの立体異性体が60:40から40:60の割合、好ましくは約50:50の割合で含まれていれば「ラセミ」である。γ−アミノ酸は、1つの立体異性体だけが60%以上、好ましくは70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上含まれていれば、「鏡像異性的に高められて」いる。γ−アミノ酸は、1つの立体異性体だけが95%以上、好ましくは98%以上、好ましくは99%以上、好ましくは99.5%以上、好ましくは99.9%以上含まれていれば、「鏡像異性的に純粋」である。
【0029】
本発明の目的のため、γ−アミノ酸は、ラクタム不純物(3b)等のラクタム不純物(3a)を3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.1%未満しか含んでいなければ、ラクタム不純物を「実質的に有さない」。「ラクタム不純物」は、ラセミのプレガバリンまたはプレガバリン等のγ−アミノ酸それぞれの分子内縮合反応で得られるラセミのラクタム(3b)等のラクタム不純物(3a)(ここでR′およびR″は下記の定義のとおりである。)、またはその鏡像異性体である。
【0030】
【化2】

【0031】
発明の概要
ラセミのプレガバリン(1)を調製する際に先行技術で見られる困難は、本発明で成功裏に解消された。本発明の方法は、プレガバリンの合成に適用される場合、イソバレルアルデヒドを重要な出発物質として用いてラセミのプレガバリン(1)を合成する。本発明によって調製されたラセミのプレガバリン(1)は、続いて光学分割することで光学的に純粋なプレガバリン(2)を得ることができる。代替的に、ラセミのプレガバリン(1)を光学分割する代わりに、この方法の中間体のいずれかを光学分割することもできる。この光学分割は、よく知られ、報告されているルートに従って行なうことができる。たとえば、引用によりその全体が援用されるUS5,637,767は、(S)−または(R)−マンデル酸との選択的結晶化により、ラセミのプレガバリン(1)をプレガバリン(2)に光学分割することを報告している。
【0032】
したがって、本発明の第1の局面は、以下から選択される1つ以上の工程を含むγ−アミノ酸VIの調製方法を提供する。
【0033】
(i) カルボニル化合物Iをニトロメタンと反応させて、アルコールIIを生成する工程:
【0034】
【化3】

【0035】
および/または
(ii) アルコールIIを中間体IVに変換させる工程:
【0036】
【化4】

【0037】
および/または
(iii) 中間体IVをγ−ニトロ酸Vに変換させ、つづいてγ−ニトロ酸Vをγ−アミノ酸VIに還元する工程:
【0038】
【化5】

【0039】
[式中、各Rは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリール基(これらの基の各々は必要に応じて置換されていてもよく、またこれらの基の各々は必要に応じてその炭素骨格中に1つ以上のヘテロ原子N、OまたはSを含んでいてもよい。)である。
式中、R′およびR″は、独立して水素またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリール基(これらの基の各々は必要に応じて置換されていてもよく、またこれらの基の各々は必要に応じてその炭素骨格中に1つ以上のヘテロ原子N、OもしくはSを含んでいてもよい。)であるか、またはR′およびR″の両方は、それらが結合する炭素原子とともに、環状アルキルもしくは環状アルケニル基(これらの基の各々は必要に応じて置換されていてもよく、またこれらの基の各々は必要に応じてその炭素骨格中に1つ以上のヘテロ原子N、OまたはSを含んでいてもよい。)を形成する。]
疑問を避けるために記すが、本発明の方法が化合物を調製するためであって、工程を含む場合、前記工程は方法の不可欠な部分であり、その工程の最終生成物は最終的には所望の化合物に変換されることは理解されるべきである。
【0040】
本発明の第1の局面の第1の実施態様において、本方法は工程(i)から(iii)のうちの2つ、たとえば工程(i)および(ii)、または工程(i)および(iii)、または工程(ii)および(iii)を含む。代替的に、または付加的に、この本方法は工程(ii)と、上記の工程(iii)で示された中間体IVのγ−ニトロ酸Vへの変換とを含んでもよい。好ましくは、本方法は3つの工程(i)から(iii)すべてを含む。
【0041】
本発明の第1の局面の別の実施態様において、各々のRは1〜12個の炭素原子、または1〜6個の炭素原子を含む。必要に応じて、各々のRは同じである。好ましくは、各々のRは独立して、メチル、エチル、プロピル、またはブチル基等のアルキル基である。最も好ましくは、各々のRはメチル基である。
【0042】
本発明の第1の局面のいずれかの実施態様において、カルボニル基に結合しているR′およびR″の両方の原子は、水素または炭素であることが好ましい。同様に、カルボキシル基の酸素に結合している両方のR基の原子は、ヘテロ原子ではないことが好ましい。
【0043】
本発明の第1の局面の一実施態様において、R′およびR″は独立して水素であるか、または1〜12個の炭素原子、または1〜6個の炭素原子を含む。ある好ましい実施態様において、R′およびR″の一方は水素であり、必要に応じて他方は水素ではない。
【0044】
本発明の第1の局面の別の実施態様において、R′およびR″は独立して水素もしくはアルキル基、好ましくはC1−6アルキル基であるか、またはR′およびR″の両方はそれらが結合する炭素原子とともに、環状アルキル基、好ましくはC5−7環状アルキル基を形成する。ある好ましい実施態様において、R′およびR″の一方は水素であり、他方はi−ブチルである。別の好ましい実施態様において、R′およびR″の両方はそれらが結合する炭素原子とともに、シクロヘキシル基を形成する。
【0045】
本発明の第1の局面のさらに別の実施態様において、工程(i)においてニトロメタンのカルボアニオンが塩基で生成される。必要に応じて、塩基は第1アミンまたは第2アミンではなく、好ましくはアミンではない。好ましくは、塩基はアルカリ金属の水素化物、アルコキシド、もしくは水酸化物等の、水素化物、アルコキシド、または水酸化物である。より好ましくは、塩基はアルコキシドである。アルコキシドの例としては、たとえばMeO、EtO、i−PrO、t−BuOおよびPhOが含まれる。好ましいアルコキシドはメトキシド、より好ましくはナトリウムメトキシドである。
【0046】
塩基を使用する場合、0.001〜0.040モル当量(eq)、より好ましくは約0.015モル当量等の触媒量で使用される。カルボニル化合物Iに対するニトロメタンの好ましい量は、1〜6モル当量、より好ましくは約2モル当量である。
【0047】
工程(i)は必要に応じて非プロトン性溶媒、好ましくはエーテル溶媒またはN,N−ジメチルホルアミド、ジメチルスルホキシドもしくはアセトニトリル等の双極性非プロトン性溶媒の中で行なわれる。好ましくは、工程(i)はテトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテルまたはそれらの混合物等のエーテル溶媒の中で行なわれる。最も好ましくは、工程(i)はテトラヒドロフランの中で行なわれる。
【0048】
本発明の第1の局面の一実施態様において、工程(ii)の変換は、アルコールIIの水酸基を置換して以下の中間体IIIaを生成することを含む。
【0049】
【化6】

【0050】
[式中、Yは適切な脱離基である。]
中間体IIIaは、中間体IIからたとえば活性化した水酸基をYでS2置換することにより、生成できる。好ましくは、活性化した水酸基はin-situで生成される。
【0051】
Yは、たとえば−Cl、−Brまたは−I等のハロ基であってよい。好ましくは、Yは−Brである。好ましくは、Yがハロ基である場合、中間体IIIaは、中間体IIからYおよびRPを用いるか、またはHY,PY,PY,N−ハロスクシンイミドもしくはSOYを用いて、生成される[式中、各Rは、独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリール基(これらの基の各々は必要に応じて置換されていてもよく、またこれらの基の各々は必要に応じてその炭素骨格中に1つ以上のヘテロ原子N、OまたはSを含んでいてもよい。)から選択される。]。好ましくはRPはトリフェニルホスフィンである。代替的に、Yがハロ基である場合、中間体IIIaは、中間体IIからアゾジカルボキシレート(たとえばジエチルアゾジカルボキシレート)、ハロゲン化アルキル(たとえばヨウ化メチル)およびRP(式中、Rは上記の定義のとおりである。)(たとえばトリフェニルホスフィン)を用いて生成することができる。
【0052】
本発明の第1の局面の別の実施態様において、工程(ii)の変換はアルコールIIの水酸基を活性化させて中間体IIIbを生成することを含む。
【0053】
【化7】

【0054】
[式中、Zは水酸基の脱離基としての能力を高めることができるいずれかの基である。]
Zは、たとえば−SO、−SOOR、−NO、−COR、−P(=O)(ORまたは−B(OR基から選択することができる[式中、各Rは独立して水素、ハロゲン、または必要に応じて置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、もしくはアリールアルキニル基から選択されるか、またはいずれか2つのR基はそれらが結合する原子とともに環を形成してもよい。]。好ましくは、各Rは、独立して−F、−Cl、−Brまたは−NOから選択される1つ以上の基で必要に応じて置換されアルキル、アリール、またはアリールアルキル基から選択される。
【0055】
一実施態様において、Zは、−SO,−SOORまたは−COR基から選択される。たとえば、Zはトシレート、ブロシレート、ノシレート、メシレート、トレシレート、ノナフレートまたはトリフレート基から選択できる。代替的に、Zは−COR基であってもよく、その場合、Rは好ましくは−F、−Cl、−Brまたは−NOから選択される1つ以上の基で必要に応じて置換されるC1−12アルキル、アリール、またはアリールアルキル基であり、より好ましくはRは−F、−Cl、または−Brから選択される1つ以上の基で必要に応じて置換されるC1−6アルキル基である。最も好ましくは、Zはアセチルまたはトリフルオロアセチル基である。
【0056】
Zが−COR基である場合、その基は、たとえばアルコールIIの水酸基を、ClCOR等の酸塩化物、またはRC(O)OC(O)R等の酸無水物と反応させることによって生成できる。好ましくは、無水酢酸または無水トリフルオロ酢酸が使用される。酸塩化物または酸無水物は、アルコールIIに対してたとえば1〜6モル当量の量で、好ましくは1〜2モル当量の量で、より好ましくは約1.3モル当量で用いることができる。
【0057】
工程(ii)における中間体IIIaまたは中間体IIIbの生成は、必要に応じて非プロトン性溶媒、好ましくはエーテル溶媒またはN,N−ジメチルホルアミド、ジメチルスルホキシドもしくはアセトニトリル等の双極性非プロトン性溶媒の中で行なわれる。好ましくは、中間体IIIaまたは中間体IIIbの生成は、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテルまたはそれらの混合物等のエーテル溶媒の中で行なわれる。最も好ましくは、中間体IIIaまたはIIIbの生成はテトラヒドロフランの中で行なわれる。
【0058】
本発明の第1の局面のある実施態様において、工程(ii)の変換は中間体IIIaまたは中間体IIIbを中間体IVに変換させることをさらに含む。
【0059】
【化8】

【0060】
このような変換は、たとえばCH(COR)のカルボアニオンを用いることにより達成できる。このようなカルボアニオンは、水素化物または好ましくはアルカリ金属アルコキシドまたは他のアルコキシド塩基等の塩基を用いて、必要に応じてアルカリ金属炭酸塩等の金属炭酸塩と組合せて、生成できる。アルコキシドの例としては、たとえばMeO,EtO,i−PrO,t−BuOおよびPhOが含まれる。好ましいアルコキシドはメトキシド、最も好ましくはナトリウムメトキシドである。好ましい炭酸金属は炭酸ナトリウムである。好ましくは、CH(COR)のカルボアニオンは、中間体IIIaまたは中間体IIIbと接触する前に生成される。
【0061】
工程(ii)の変換は、必要に応じて非プロトン性溶媒、好ましくはエーテル溶媒またはN,N−ジメチルホルアミド、ジメチルスルホキシドもしくはアセトニトリル等の双極性非プロトン性溶媒の中で行なわれる。好ましくは、変換はテトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテルまたはそれらの混合物等のエーテル溶媒の中で行なわれる。最も好ましくは、変換はテトラヒドロフランの中で行なわれる。好ましくは、変換は中間体IIIaまたは中間体IIIbの生成で用いられたものと同じ溶媒の中で行なわれる。
【0062】
好ましくは、変換は中間体IIIaまたは中間体IIIbを単離することなく行なわれる。
【0063】
本発明の第1の局面の一実施態様において、工程(iii)における中間体IVのγ−ニトロ酸Vへの変換は、加水分解および脱炭酸を含む。
【0064】
加水分解および脱炭酸は、たとえば、水の存在下、有機酸または鉱酸を用いて達成することができる。好ましい鉱酸は塩酸である。代替的に、加水分解および脱炭酸は水の存在下、NaOH等のヒドロキシド源を用いて達成することができる。
【0065】
好ましくは、加水分解および脱炭酸は、40℃より高い温度、より好ましくは60℃より高い、または80℃より高い温度で行なわれる。最も好ましくは、加水分解および脱炭酸は約100℃で行なわれる。
【0066】
本発明の第1の局面の別の実施態様において、工程(iii)におけるγ−ニトロ酸Vのγ−アミノ酸VIへの還元は、接触水素化反応を用いて行なわれる。接触水素化反応は、Pt、Pt/C、PtO、Pd、Pd/C、Rh、Ru、NiまたはラネーNiから選択される触媒を用いて行なうことができる。好ましくは、水素化触媒はPd/C、Pt/C、またはPtOから選択される。最も好ましくは、水素化触媒はPd/Cである。
【0067】
接触水素化反応は、アルコール等の極性プロトン性溶媒で行なわれる。好ましくは、アルコールはメタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、または1−オクタノールから選択される。最も好ましくは、アルコールはメタノールである。
【0068】
代替的に、工程(iii)におけるγ−ニトロ酸Vのγ−アミノ酸VIへの還元は、LiAlH等の水素化物;Zn、SnまたはFeおよび酸;AlH−AlCl;ヒドラジンおよび触媒;[Fe(CO)12]−メタノール;TiCl;熱水パラフィン;ギ酸またはギ酸アンモニウムおよびPd/C等の触媒;またはNaHS、(NHSまたはポリスルフィド等のスルフィドを用いて行なうことができる。
【0069】
本発明の第1の局面のさらに別の実施態様において、方法が工程(i)および/または工程(ii)を含む場合、工程(iii)は加水分解、脱炭酸および還元をどの代替の順序で含んでもよく、工程(iii)の全体的な結果が、中間体IVのγ−アミノ酸VIへの変換となる。
【0070】
本発明の第1の局面の一実施態様において、γ−アミノ酸VIはアキラルである。たとえば、γ−アミノ酸VIはギャバペンチンである。
【0071】
代替的に、γ−アミノ酸VIは、ラセミの混合物等の、キラルのγ−アミノ酸VIの混合物であってもよい。好ましくは、γ−アミノ酸VIはラセミのプレガバリンである。このような場合、方法はさらにキラルのγ−アミノ酸VIの混合物を光学分割して、γ−アミノ酸VIの鏡像異性的に純粋なまたは鏡像異性的に高められた立体異性体を与える工程を含んでもよい。好ましくは、γ−アミノ酸VIの鏡像異性的に純粋なまたは鏡像異性的に高められた立体異性体はプレガバリンである。代替的に、キラルのγ−アミノ酸VIの混合物を光学分割する代わりに、中間体IVまたはγ−ニトロ酸V等の本方法の中間体を分割することもできる。
【0072】
本発明の第1の局面の別の実施態様において、γ−アミノ酸VIは、ラクタム不純物を実質的に有さずに得られる。
【0073】
本発明の第2の局面は、以下から選択される1つ以上の工程を含むプレガバリンまたはラセミのプレガバリンの調製方法を提供する。
【0074】
(a) イソバレルアルデヒドをニトロメタンと反応させて、2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタンを形成する工程;および/または
(b) 2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタンを3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸に変換させる工程;および/または
(c) 3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸をプレガバリンまたはラセミのプレガバリンに変換させる工程。
【0075】
本発明の第2の局面の一実施態様において、本方法は工程(a)から(c)のうちの2つ、たとえば工程(a)および(b)、または工程(a)および(c)、または工程(b)および(c)を含む。好ましくは、本方法はこれら3つの工程(a)から(c)すべてを含む。
【0076】
好ましくは工程(a)においてニトロメタンのカルボアニオンが塩基で生成される。塩基は好ましくは触媒量で用いられる。必要に応じて、塩基は第1アミンまたは第2アミンではなく、好ましくはアミンではない。好ましくは、塩基はアルカリ金属アルコキシドもしくはアルカリ金属水酸化物等の、水素化物、アルコキシドまたは水酸化物である。より好ましくは、塩基はアルコキシドである。アルコキシドの例としては、たとえばMeO,EtO,i−PrO,t−BuOおよびPhOが含まれる。好ましいアルコキシドはメトキシド、最も好ましくはナトリウムメトキシドである。
【0077】
塩基を使用する場合、好ましくは0.001〜0.040モル当量(eq)、より好ましくは約0.015モル当量で使用される。イソバレルアルデヒドに対するニトロメタンの好ましい量は、1〜6モル当量、より好ましくは約2モル当量である。
【0078】
工程(a)は必要に応じて非プロトン性溶媒、好ましくはエーテル溶媒またはN,N−ジメチルホルアミド、ジメチルスルホキシドもしくはアセトニトリル等の双極性非プロトン性溶媒の中で行なわれる。好ましくは、工程(a)はエーテル溶媒、好ましくはテトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテルまたはそれらの混合物から選択されるエーテル溶媒の中で行なわれる。最も好ましくは、エーテル溶媒はテトラヒドロフランである。
【0079】
好ましくは、工程(b)は、2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタンの水酸基を脱離基に変換し、前記脱離基をジアルキルマロネートアニオンで置換し、つづいて加水分解および脱炭酸を行なって3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸を生成することを含む。
【0080】
好ましくは、脱離基は、−Cl、−Brまたは−I等のハロ基、トシレート、ブロシレート、ノシレート、メシレート、トレシレート、ノナフレートまたはトリフレート基等のスルホン酸エステル基、または−OCOR等のカルボン酸エステル基である、[式中、Rは独立して水素または必要に応じて置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、もしくはアリールアルキニル基から選択される。]。好ましくは、Rは独立して−F、−Cl、−Brまたは−NOから選択される1つ以上の基で必要に応じて置換されるアルキル、アリール、またはアリールアルキル基から選択される。より好ましくは、Rは−F、−Cl、−Brまたは−NOから選択される1つ以上の基で必要に応じて置換されるC1−12アルキル、アリール、またはアリールアルキル基であり、より好ましくは、Rは−F、−Cl、または−Brから選択される1つ以上の基で必要に応じて置換されるC1−6アルキル基である。最も好ましくは、脱離基はトリフルオロアセテート基等の必要に応じて置換されるアセテート基である。
【0081】
脱離基がカルボン酸エステル基である場合、その基はたとえば水酸基を、ClCOR等の酸塩化物、またはRC(O)OC(O)R等の酸無水物と反応させることによって生成できる。好ましくは、無水酢酸または無水トリフルオロ酢酸が使用される。酸塩化物または酸無水物は、2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタンに対してたとえば1〜6モル当量の量で、好ましくは1〜2モル当量の量で、より好ましくは約1.3モル当量で用いることができる。
【0082】
工程(b)における2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタンの水酸基の脱離基への変換は、必要に応じて非プロトン性溶媒、好ましくはエーテル溶媒またはN,N−ジメチルホルアミド、ジメチルスルホキシドもしくはアセトニトリル等の双極性非プロトン性溶媒の中で行なわれる。好ましくは、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテルまたはそれらの混合物等のエーテル溶媒の中で行なわれる。最も好ましくは、水酸基の脱離基への変換は、テトラヒドロフランの中で行なわれる。
【0083】
好ましくは、工程(b)は、水素化物または好ましくはアルカリ金属アルコキシドまたは他のアルコキシド塩基等の塩基で、必要に応じて、アルカリ金属炭酸塩等の金属炭酸塩と組合せて、ジアルキルマロネートアニオンを生成することを含む。アルコキシドの例としては、たとえばMeO,EtO,i−PrO,t−BuOおよびPhOが含まれる。好ましいアルコキシドはメトキシドである。好ましくはアルカリ金属アルコキシド塩基はナトリウムメトキシドである。好ましくはアルカリ金属炭酸塩は炭酸ナトリウムである。好ましくはジアルキルマロネートアニオンは、2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタンの水酸基が脱離基に変換されることで形成される中間体と接触する前に生成される。
【0084】
好ましくは、ジアルキルマロネートはジ−(C1−12アルキル)マロネート、好ましくはジ−(C1−6アルキル)マロネートである。より好ましくは、ジアルキルマロネートはジメチル、ジエチル、ジプロピル、またはジブチルマロネートである。最も好ましくは、ジアルキルマロネートはジメチルマロネートである。
【0085】
工程(b)の変換は、必要に応じて非プロトン性溶媒、好ましくはエーテル溶媒またはN,N−ジメチルホルアミド、ジメチルスルホキシドもしくはアセトニトリル等の双極性非プロトン性溶媒の中で行なわれる。好ましくは、変換はテトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテルまたはそれらの混合物等のエーテル溶媒の中で行なわれる。最も好ましくは、変換はテトラヒドロフランの中で行なわれる。好ましくは、変換は、2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタンの水酸基が脱離基に変換される際に用いられたものと同じ溶媒の中で行なわれる。
【0086】
好ましくは変換は、2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタンの水酸基が脱離基に変換されることで形成される中間体を分離せずに達成される。
【0087】
好ましくは工程(b)は、たとえば、水の存在下、有機酸または鉱酸を用いた加水分解および脱炭酸を含む。最も好ましくは、鉱酸は塩酸である。代替的に、工程(b)は、水の存在下、NaOH等のヒドロキシド源を用いた加水分解および脱炭酸を含み得る。
【0088】
好ましくは、加水分解および脱炭酸は、40℃より高い温度、より好ましくは60℃より高い、または80℃より高い温度で行なわれる。最も好ましくは、加水分解および脱炭酸は約100℃で行なわれる。
【0089】
好ましくは、工程(c)は接触水素化反応を含み、その水素化触媒は、好ましくはPt、Pt/C、PtO、Pd、Pd/C、Rh、Ru、NiまたはラネーNiから選択され、より好ましくは、Pd/C、Pt/C、またはPtOから選択される。最も好ましくは、水素化触媒はPd/Cである。
【0090】
接触水素化反応は、アルコール等の極性プロトン性溶媒の中で行なわれる。好ましくは、アルコールはメタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、または1−オクタノールから選択される。最も好ましくは、アルコールはメタノールである。
【0091】
代替的に、工程(c)の還元は、LiAlH等の水素化物;Zn、SnまたはFeおよび酸;AlH−AlCl;ヒドラジンおよび触媒;[Fe(CO)12]−メタノール;TiCl;熱水パラフィン;ギ酸またはギ酸アンモニウムおよびPd/C等の触媒;またはNaHS、(NHSまたはポリスルフィド等のスルフィドを用いて行なうことができる。
【0092】
本発明の第2の局面の方法において、ラセミのプレガバリンまたはプレガバリンは、好ましくはラクタム不純物を実質的に有さずに得られる。
【0093】
好ましくは本発明の第2の局面の方法は、ラセミのプレガバリンを光学分割してプレガバリンを生成する工程をさらに含む。代替的に、ラセミのプレガバリンを光学分割する代わりに、たとえば2−カルボメトキシ−3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステルまたは3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸等の本方法の中間体を光学分割することもできる。好ましくは、得られるプレガバリンは鏡像異性的に高められているか、または鏡像異性的に純粋である。
【0094】
本発明の第3の局面は、本発明の第1の局面による方法で調製される、γ−アミノ酸VIを提供する。好ましくは、γ−アミノ酸VIはラクタム不純物を実質的に有さない。γ−アミノ酸VIは鏡像異性的に純粋であるか、または鏡像異性的に高められ得る。
【0095】
本発明の第4の局面は、以下のγ−アミノ酸VIを、ラクタム不純物を実質的に有さずに提供する。
【0096】
【化9】

【0097】
[式中、R′およびR″は上記の定義のとおりである。]
γ−アミノ酸VIは鏡像異性的に純粋であるか、または鏡像異性的に高められ得る。
【0098】
本発明の第5の局面は、本発明の第1または第2の局面による方法で調製される、ラセミのプレガバリン、または鏡像異性的に高められたプレガバリン、または鏡像異性的に純粋なプレガバリンを提供する。
【0099】
本発明の第6の局面は、ラクタム不純物を実質的に有さない、ラセミのプレガバリン、または鏡像異性的に高められたプレガバリン、または鏡像異性的に純粋なプレガバリンを提供する。
【0100】
好ましくは、本発明の第3もしくは第4の局面によるγ−アミノ酸、または本発明の第5もしくは第6の局面によるラセミの、鏡像異性的に高められた、もしくは鏡像異性的に純粋なプレガバリンは、癲癇、痛み、神経障害性疼痛、脳虚血、うつ病、精神病、線維筋痛または不安症の治療または予防に適している。
【0101】
本発明の第7の局面は、本発明の第3もしくは第4の局面によるγ−アミノ酸、または本発明の第5もしくは第6の局面によるラセミの、鏡像異性的に高められた、もしくは鏡像異性的に純粋なプレガバリンを含有する医薬組成物を提供する。好ましくは、この医薬組成物は、癲癇、痛み、神経障害性疼痛、脳虚血、うつ病、精神病、線維筋痛または不安症の治療または予防に適している。
【0102】
本発明の第8の局面は、本発明の第3もしくは第4の局面によるγ−アミノ酸、または本発明の第5もしくは第6の局面によるラセミの、鏡像異性的に高められた、もしくは鏡像異性的に純粋なプレガバリン、または本発明の第7の局面による医薬組成物を、治療もしくは予防に有効な量、それを必要とする患者に投与することを含む、癲癇、痛み、神経障害性疼痛、脳虚血、うつ病、精神病、線維筋痛または不安症を治療または予防する方法を提供する。患者は好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
【0103】
本発明の第9の局面は、2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタンを提供する。
【0104】
本発明の第10の局面は、式IVaの化合物を提供する。
【0105】
【化10】

【0106】
[式中、各Rは、独立してアルキル基である。]
好ましくは、各Rは、独立してメチル、エチル、プロピル、またはブチル等のC1−6アルキル基であり、最も好ましくは各Rはメチル基であり、それによって式IVaの化合物は、2−カルボメトキシ−3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステルとなる。
【0107】
疑問を避けるために記すが、実施可能である限りにおいて、本発明の所与の局面のいずれの実施態様も、本発明の同じ局面の他の実施態様と組合せてもよい。さらに、実施可能である限りにおいて、本発明のいずれの局面のいずれの好ましい、またはオプションとしての実施態様も、本発明の他の局面の好ましい、またはオプションとしての実施態様として理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0108】
発明の詳細な説明
本発明は、プレガバリン(2)の重要な合成中間体であるラセミのプレガバリン(1)の単純、好適および安価な調製方法を提供する。
【0109】
本発明者たちは、本発明の利点が、安価で危険性のない合成試薬の使用;単純かつ好適な方法の条件;およびラセミのプレガバリン(1)の不純物プロファイルを厳格に制御して、それにより非常に高い化学純度および光学純度のプレガバリン(2)を提供する、非常に速い合成方法であることを、見出した。
【0110】
スキーム1に示される本発明の方法の好ましい実施態様は、4つの工程:ニトロメタンをイソバレルアルデヒドと反応させて、2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタン(4)を生成する工程;2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタン(4)を2−カルボメトキシ−3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステル(5)に変換させる工程;2−カルボメトキシ−3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステル(5)を3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸(6)に変換させる工程;および3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸(6)をラセミのプレガバリン(1)に変換させる工程を含む。
【0111】
【化11】

【0112】
スキーム1に示される試薬および溶媒は、本発明の単なる例示であり、本反応はこれらの試薬および溶媒に限定されない。以下で簡単に述べるように、いかなる適切な代替品を用いることもできる。
【0113】
第1の工程において、2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタン(4))はニトロアルドール縮合によって調製される。この方法は、ニトロメタンカルボアニオンの生成と、それに続くイソバレルアルデヒドに対するカルボアニオンの攻撃を含む。ニトロメタンカルボアニオンはいかなる適切な塩基でも生成させることができ、好ましくはカルボアニオンの生成には触媒量の塩基が用いられる。
【0114】
ニトロメタンカルボアニオンの生成に用いられる好ましい塩基は、アルカリ金属アルコキシドまたはアルカリ金属水酸化物、より好ましくはアルカリ金属アルコキシド、および最も好ましくはナトリウムメトキシドである。
【0115】
カルボアニオン生成のために選択される、ナトリウムメトキシド等の塩基の好ましい量は、0.001〜0.040モル当量(当量)、より好ましくは約0.015モル当量である。
【0116】
ニトロメタンカルボアニオンは、好ましくはアルコール溶媒、ケトン溶媒、炭化水素溶媒もしくはエーテル溶媒等の有機溶媒、またはこれらの混合物の中で調製される。より好ましくは、溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、またはジエチルエーテル等のエーテルである。溶媒は最も好ましくはテトラヒドロフランである。
【0117】
好ましくは、最初のカルボアニオン生成は、15〜50℃、より好ましくは20〜30℃で行なわれる。
【0118】
イソバレルアルデヒドに対するニトロメタンの好ましい量は、1〜6モル当量、より好ましくは約2モル当量である。
【0119】
好ましい実施態様において、触媒量のナトリウムメトキシドが、ニトロメタンのテトラヒドロフラン溶液に添加された。ナトリウムメトキシドの添加の後、反応混合物は25〜30℃で5分〜5時間、より好ましくは約30分撹拌され、つぎに約−10〜15℃、より好ましくは約−5〜0℃に冷却された。次に、イソバレルアルデヒドは温度が−5〜0℃の範囲に留まるように制御された添加速度で添加された。次に反応混合物は約25〜30℃の好ましい温度にされ、6〜8時間撹拌された。生成物は、好ましくは35〜45℃で減圧下、テトラヒドロフランを除去することにより単離された。残留物はさらに0〜10℃に冷却され、水で処理されて無機副産物を溶解した。生成物は酢酸エチル等の有機溶媒で抽出することにより単離され、溶媒を除去することで2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタン(4)を薄い黄色油状物として得た。
【0120】
好ましくは、生成物(4)は80%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上の収率で得られた。
【0121】
第2の工程において、その2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタン(4)は、さらにその水酸基を適切な脱離基に変換し、その脱離基をジメチルマロネートの陰イオンで容易に置換することで2−カルボメトキシ−3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステル(5)に変換された。好ましくは、脱離基は、ハロ、カルボン酸エステル基またはスルホン酸エステル基である。脱離基がハロ基である場合、ハロ基はクロロ、ブロモまたはヨード基、好ましくはブロモ基であってよい。脱離基がスルホン酸エステル基である場合、スルホン酸エステル基はメシレート、トリフレート、トシレート、またはベシレート基であってよい。脱離基がカルボン酸エステル基である場合、カルボン酸エステル基はアセテートまたはトリフルオロアセテート基であってよい。最も好ましくは脱離基はトリフルオロアセテート基である。
【0122】
好ましい実施態様において、2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタン(4)の水酸基は、無水トリフルオロ酢酸等の無水物試薬で反応させることにより、カルボン酸エステル脱離基に変換される。この反応のために選択される溶媒は、好ましくはエーテル溶媒、最も好ましくはテトラヒドロフランである。
【0123】
好ましい手順において、2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタン(4)の溶液は、0.5〜10容積のテトラヒドロフラン、より好ましくは約2容積のテトラヒドロフランの中で調製され、好ましくは0〜5℃に冷却された。好ましくは約1〜1.5モル当量の無水トリフルオロ酢酸の添加は、発熱を避けるために、ゆっくりした添加制御速度で行なわれた。不純物の生成を避けるために、無水トリフルオロ酢酸の添加は15℃未満で行なわれた。添加が完了すると、反応が完了するように反応混合物は好ましくは1〜10時間、より好ましくは約1時間、撹拌された。
【0124】
その間、ジメチルマロネート等のジアルキルマロネートのカルボアニオン溶液は、アルカリ金属アルコキシドまたはアルカリ金属水素化物等の適切な塩基で生成させることができる。ナトリウムメトキシドが好ましい塩基である。
【0125】
好ましい手順において、ジメチルマロネートのカルボアニオン溶液は、テトラヒドロフラン中の1モル当量のナトリウムメトキシドを用いて、25〜30℃で1〜4時間撹拌することにより調製された。そのジメチルマロネートカルボアニオンの溶液は、反応混合物の温度が10℃を超えないよう、制御された速度で無水トリフルオロ酢酸に添加された。反応混合物は10℃で1時間撹拌され、この10℃での1時間の撹拌の後、反応媒体の塩基度を増加させて反応を促進するために、1.5当量の炭酸ナトリウムが10℃で添加された。混合物を55〜60℃で4〜6時間加熱して、反応を完了させ、生成物は続く水中でのワークアップ手順により単離された。テトラヒドロフランを減圧下で除去して油性の残留物が得られ、この残留物を2N HClで酸性化して無機塩を分解させた。水が反応混合物に加えられて、生成物は酢酸エチルで抽出された。酢酸エチルの除去の後、2−カルボメトキシ−3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステル(5)を赤みがかった油状物として単離した。
【0126】
好ましくは、生成物(5)は80%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上の収率で得られる。
【0127】
第3の工程において、2−カルボメトキシ−3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステル(5)を、好ましくは加水分解および脱炭酸の2段階を含む方法で、3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸(6)に変換した。この加水分解および脱炭酸のための最も好ましい試薬は、水の存在下、有機酸または鉱酸であり、好ましくは適度に高い温度で行なわれる。
【0128】
こうして、好ましい手順において、2−カルボメトキシ−3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステル(5)は水に入れられて、適切な割合の鉱酸、好ましくは塩酸が添加される。好ましい条件は、30%塩酸および、6〜8時間、100〜105℃での加熱であり、これによってジエステル生成物が二塩基酸に加水分解されて、二塩基酸が一塩基酸に脱炭酸されて、3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸(6)を得る。
【0129】
3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸(6)は酢酸エチルで抽出することにより単離され、酢酸エチル層は水で洗浄されて、有機層からいかなる少量の酸も除去した。生成物は減圧下で酢酸エチルを除去することにより単離されて、3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸(6)を赤みがかった黄色い油状物として得た。
【0130】
好ましくは、生成物(6)は80%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上の収率で得られた。
【0131】
第4の工程において、3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸(6)を、ニトロ基をアミン基に還元することにより、ラセミのプレガバリン(1)に変換した。3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸(6)にあるような脂肪族ニトロ基は、接触水素化反応(水素ガスおよびPt、Pt/C、PtO、Pd、Pd/C、Rh、Ru、NiまたはラネーNi等の触媒を用いて);Zn、SnまたはFeおよび酸;AlH−AlCl;ヒドラジンおよび触媒;[Fe(CO)12]−メタノール;TiCl;熱水パラフィン;ギ酸またはギ酸アンモニウムおよびPd/C等の触媒;LiAlH;およびNaHS、(NHS、ポリスルフィド等のスルフィドを含む多くの還元剤によってアミン基に還元することができる。好ましくは、還元は25〜30℃で大気圧下、Pd/C触媒および水素ガスを用いる接触水素化反応によって行なわれる。
【0132】
典型的な手順において、3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸(6)はメタノール等のアルコール溶媒で溶解され、その透明な溶液はさらにPd/Cと撹拌されて触媒を完全に混合させた。水素ガスを6〜8時間、25〜30℃で混合物中にバブリングして、ニトロ基のアミン基への還元を完了させた。反応が完了すると、触媒は濾過により除去され、生成物は減圧下で溶媒を濃縮することにより単離されて、プレガバリン(1)を薄い黄色の油状物として得た。薄い黄色の油状物はさらにイソプロパノールおよび水で処理することにより固体に変換された。この方法によって得られたプレガバリン(1)は、必要に応じて好ましくはイソプロパノールおよび水の混合物から、結晶化された。
【0133】
好ましくは、生成物(1)は70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上の収率で得られる。好ましくは、ラセミのプレガバリン(1)はラクタム不純物を実質的に有さない。
【0134】
ラセミのプレガバリン(1)のプレガバリン(2)への変換は、たとえばUS5,637,767に記載の手順に従うことにより、よく確立され報告された光学分割ルートによって達成できる。代替的に、ラセミのプレガバリン(1)の光学分割の代わりに、2−カルボメトキシ−3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステル(5)または3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸(6)等のこの方法の中間体のいずれかを、光学分割することもできる。
【0135】
好ましくは、ラセミのプレガバリン(1)、光学分割されたプレガバリン(2)、ならびに合成中間体(4)、(5)および(6)は、商業的規模で、好ましくは1kg以上、10kg以上、100kg以上、500kg以上、または1000kg以上の単位で得られる。
【0136】
本発明の方法は、ラセミのプレガバリンまたはプレガバリンの類似体であるγ−アミノ酸の調製にも容易に適用できる。
【0137】
本発明の第7の局面による医薬組成物は、溶液または懸濁液とすることができるが、好ましくは固体の経口投薬形態である。本発明に従う好ましい投薬形態は、錠剤、カプセルなどを含み、望むのなら必要に応じて被覆されてもよい。錠剤は、直接圧縮、湿式造粒および乾式造粒を含む従来の技術によって調製できる。カプセルは一般にゼラチン材から形成され、本発明に従い従来的に調製された粒状の賦形剤を含むことができる。
【0138】
本発明の医薬組成物は、充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤を含むグループから選択される従来の薬学上許容される1つ以上の賦形剤を典型的に含み、および必要に応じて着色剤、吸着剤、界面活性剤、膜形成剤および可塑剤から選ばれた少なくとも1つの賦形剤をさらに含む。
【0139】
上記のように、本発明の安定した医薬組成物は、結晶セルロース、ラクトース、糖類、デンプン、修飾デンプン、マンニトール、ソルビトール、および他のポリオール、デキストリン、デキストラン、またはマルトデキストリン等の1つ以上の充填剤;ラクトース、デンプン、修飾デンプン、トウモロコシデンプン、デキストリン、デキストラン、マルトデキストリン、結晶セルロース、糖類、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、トラガント、ポリビニルピロリドンまたはクロスポビトン等の1つ以上の結合剤;クロスカルメロースナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、クロスポビドン、架橋カルボキシメチルデンプン、デンプン、結晶セルロースまたはポリアクリリン(polyacrylin)カリウム等の1つ以上の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、マグネシウムトリシリケート、ステアリン酸、パルミチン酸、カルナウバろうまたは二酸化珪素等の1つ以上の異なる滑剤および潤滑剤を含む。
【0140】
必要であれば、本発明の医薬組成物は、表面活性剤や他の従来の賦形剤をも含むことができる。使用することができる典型的な表面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム等のイオン性表面活性剤、または異なるポロクサマー(ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレン共重合体)、天然もしくは合成のレシチン、ソルビタンと脂肪酸とのエステル(たとえばSpano(登録商標))、ポリオキシエチレンソルビタンと脂肪酸とのエステル(たとえばTween(登録商標))、ポリオキシエチル化硬化ヒマシ油(たとえばCremophor(登録商標))、ポリオキシエチレンステアレート(たとえばBrij(登録商標))、ジメチルポリシロキサン等の非イオン性表面活性剤または上記の界面活性剤のいずれかの組合せを挙げることができる。
【0141】
固体医薬性剤がコーティング錠の形態である場合、コーティングはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはメタクリレートポリマー等の少なくとも1つの膜形成剤から調製することができ、これらは必要に応じて、ポリエチレングリコール、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチルのような可塑剤のうちの少なくとも1つ、および色素や充填剤等の膜コーティングにとって慣用的に用いられる医薬補助物質を含むことができる。
【0142】
本発明の好ましい実施例の実験上の詳細を以下に示す。
【実施例】
【0143】
2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタン(4)
テトラヒドロフラン(1vol,1.0L)、ニトロメタン(2当量,1248ml)および触媒量のナトリウムメトキシド(0.015当量,9.4g)を30分間撹拌して、ニトロメタンアニオンのスラリーを生成させた。反応物を氷塩浴の中で0℃に冷却し、イソバレルアルデヒド(1当量,1kg)を、温度が5℃を超えないように1時間以内で制御された添加で、加えた。最終の添加の後、反応混合物を6〜8時間、25〜30℃で撹拌した。反応の完了はTLCで確認した。
【0144】
テトラヒドロフランを50℃で減圧(0.6kg/cm)下、除去した。得られた残留物を20〜30℃に冷却し、水(4vol,4.0L)でクエンチした。生成物を酢酸エチル(3vol,3.0L)で抽出し、分離した。水性層をさらに酢酸エチル(2.5vol,2.5L)で抽出し、合わせられた有機層を水(3vol,3.0L)で洗浄した。酢酸エチルを減圧下で取り除いて、2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタン(4)を薄い黄色の油状物として得た。
モル収率:95〜98%。
【0145】
2−カルボメトキシ−3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステル(5)
ジメチルマロネート(1当量,89.76g)、テトラヒドロフラン(3vol,300ml)およびナトリウムメトキシド(1当量,36.7g)を混合し、反応混合物を25〜30℃で1.5時間継続して撹拌して、ジメチルマロネートのエノラートを生成させた。
【0146】
同時に、2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタン(4)(1当量,100g)をテトラヒドロフラン(2.5vol,250ml)に溶解させ、その透明溶液を0〜5℃に冷却した。無水トリフルオロ酢酸(1.3当量,122.8ml)を、溶液の温度が15℃を超えないように、制御された添加速度で、0〜5℃でその透明溶液に慎重に添加した。無水トリフルオロ酢酸の添加の後、反応混合物を1時間撹拌した。反応の完了はTLCで確認した。
【0147】
反応が完了した後、そのトリフルオロアセテート誘導体を10℃でジメチルマロネートのエノレートに添加し、混合物を10℃で1時間撹拌した。1時間の撹拌の後、炭酸ナトリウム(1.5当量,108g)を10℃で添加し、反応混合物をさらに6〜8時間、55〜60℃で撹拌した。反応の完了を確認した後、テトラヒドロフランを除去し、反応混合物を氷塩浴の中で10〜15℃に冷却した。10〜15℃において、残留物を1N HCl(1vol,100ml)で酸性化し、生成物を酢酸エチル(5vol,500ml)で抽出した。水性層をさらに、酢酸エチル(3vol,300ml)で抽出し、合わせられた酢酸エチル層を5%の炭酸ナトリウム溶液(5vol,500ml)および水(3vol,300ml)で洗浄した。生成物である2−カルボメトキシ−3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステル(5)を、減圧下で酢酸エチルを除去することで単離して、赤みがかった油状物を得た。
モル収率:85〜90%。
【0148】
3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸(6)
2−カルボメトキシ−3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステル(5)(1当量,100g)を水(2vol,200ml)に加え、混合物を塩酸(3.5vol,350ml)で酸性化した。反応混合物を6〜8時間、100〜105℃で還流した。反応が完了した後、混合物を25〜30℃に冷却し、生成物を酢酸エチル(6vol,600ml)で抽出した。水性層をさらに酢酸エチル(3vol,300ml)で抽出し、合わせられた酢酸エチル層を水(2.5vol,250ml)で洗浄した。生成物である3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸(6)は、45〜50℃で減圧下、酢酸エチルを除去することにより単離した。
モル収率:85〜90%。
【0149】
ラセミのプレガバリン(1)
3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸(6)(1当量,70g)およびメタノール(20vol,1400ml)の混合物を15分間撹拌して透明溶液を得た。この透明溶液に、Pd/C(5%)(20.0g)を添加し、反応混合物をさらに15分撹拌した。
【0150】
水素ガスを6〜8時間、25〜30℃で混合物中にバブリングさせた。反応の完了をTLCで確認した。反応が完了した後、水素ガスのバブリングを止め、反応物をセライト(登録商標)のベッドで濾過した。セライト(登録商標)のベッドをさらにメタノールで洗浄し、メタノールを45〜50℃で、減圧下、完全に取り除いた。イソプロパノールを上記の残留物の塊に加え、反応物の塊を60℃に加熱し、10〜20分間撹拌してスラリーを得た。このスラリーを25〜27℃に冷却し、25〜30℃で2時間撹拌した。生成物を濾過し、イソプロパノール(100ml)で洗浄した。濾過された生成物は減圧下、6〜8時間、50〜55℃で乾燥して、ラセミのプレガバリン(1)を得た。
モル収率:80%。
HPLC純度:98〜99.5%。
H NMR (DO, δ): 0.83 (d, 3H, J=6.48Hz), 0.87 (d, 3H, J=6.48Hz), 1.20 (m, 2H), 1.64 (m, 1H), 2.21 (m, 3H), 3.00 (m, 2H)
13C NMR (DO + DCl + DMSOd, δ): 23.39, 23.96, 26.26, 32.92, 39.26, 42.14, 45.02, 179.36
IR (cm−1, KBr): 2896, 2690, 1645
本発明は、4つの短い工程で、収率が高く、非常に純度の高い生成物を与えるイソバレルアルデヒドからラセミのプレガバリン(1)の有効な合成を提供する。ラセミのプレガバリン(1)のプレガバリン(2)への変換は、上記のように、よく確立され報告された光学分割ルートに従うことにより、達成することができる。
【0151】
ラセミのプレガバリン(1)の調製における先行技術で見られた困難は、本発明の方法および新規の中間物の使用により、成功裏に解消された。
【0152】
本発明の方法に従い調製されるラセミのプレガバリン(1)またはプレガバリン(2)には、厄介なラクタム不純物(3)は、HPLCで観測されなかった。
【0153】
本発明についての上記の記載は、例示のためにのみあることが理解されるであろう。実施例は本発明の範囲を限定するものではない。さまざまな修正および実施形態は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく行なうことができ、その範囲と精神は特許請求の範囲によってのみ規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下から選択される1つ以上の工程を含む:
(i) カルボニル化合物Iをニトロメタンと反応させて、アルコールIIを生成する工程:
【化1】

および/または
(ii) アルコールIIを中間体IVに変換させる工程:
【化2】

および/または
(iii) 中間体IVをγ−ニトロ酸Vに変換させ、つづいてγ−ニトロ酸Vをγ−アミノ酸VIに還元する工程:
【化3】

[式中、各Rは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリール基(これらの基の各々は必要に応じて置換されていてもよく、またこれらの基の各々は必要に応じてその炭素骨格中に1つ以上のヘテロ原子N、OまたはSを含んでいてもよい。)である。
式中、R′およびR″は、独立して水素またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリールまたはアルキニルアリール基(これらの基の各々は必要に応じて置換されていてもよく、またこれらの基の各々は必要に応じてその炭素骨格中に1つ以上のヘテロ原子N、OもしくはSを含んでいてもよい。)であるか、またはR′およびR″の両方は、それらが結合する炭素原子とともに、環状アルキルもしくは環状アルケニル基(これらの基の各々は必要に応じて置換されていてもよく、またこれらの基の各々は必要に応じてその炭素骨格中に1つ以上のヘテロ原子N、OまたはSを含んでいてもよい。)を形成する。]、γ−アミノ酸VIの調製方法。
【請求項2】
方法は、工程(i)〜(iii)のうちの2つまたは3つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各Rは独立してアルキル基である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各Rは独立して、メチル、エチル、プロピル、またはブチル基である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各Rはメチル基である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
カルボニル基に結合しているR′およびR″の両方の原子は、水素または炭素である、前掲のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
R′およびR″は独立して水素またはアルキル基であるか、またはR′およびR″の両方はそれらが結合する炭素原子とともに、環状アルキル基を形成する、前掲のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
R′およびR″は独立して水素もしくはC1−6アルキル基であるか、またはR′およびR″の両方はそれらが結合する炭素原子とともに、C5−7環状アルキル基を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
R′およびR″の一方は水素であり、他方はi−ブチルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
R′およびR″の両方はそれらが結合する炭素原子とともに、シクロヘキシル基を形成する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ニトロメタンのカルボアニオンが、工程(i)において塩基で生成される、前掲のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
塩基はアミンではない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
塩基は水素化物、アルコキシド、または水酸化物である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
塩基はナトリウムメトキシドである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(i)はエーテル溶媒の中で行なわれる、前掲のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
エーテル溶媒は、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、またはこれらの混合物から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
エーテル溶媒はテトラヒドロフランである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程(ii)の変換は、アルコールIIの水酸基を置換して、中間体IIIaを与えることを含む、前掲のいずれか1項に記載の方法。
【化4】

[式中、Yは適切な脱離基である。]
【請求項19】
Yはハロ基である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
Yは−Brである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程(ii)の変換は、アルコールIIの水酸基を活性化させて、中間体IIIbを与えることを含む、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【化5】

[式中、Zは水酸基の脱離基としての能力を高めることができる基である。]
【請求項22】
Zは、−SO、−SOOR、−NO、−COR、−P(=O)(ORまたは−B(OR基から選択される[式中、各Rは、独立して水素、ハロゲン、または必要に応じて置換されるアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、もしくはアリールアルキニル基から選択されるか、または、いずれか2つのR基はそれらが結合する原子とともに環を形成する。]、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
各Rは、独立して−F、−Cl、−Brまたは−NOから選択される1つ以上の基で必要に応じて置換されるアルキル、アリール、またはアリールアルキル基から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
Zは、−SO、−SOOR、または−COR基から選択される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
−OZは、トシレート、ブロシレート、ノシレート、メシレート、トレシレート、ノナフレートまたはトリフレート基から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
Zは−COR基である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
Zはアセチルまたはトリフルオロアセチル基である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
工程(ii)の変換は、中間体IIIaまたは中間体IIIbを中間体IVに変換することをさらに含む、請求項18から27のいずれか1項に記載の方法。
【化6】

【請求項29】
変換は、CH(COR)のカルボアニオンを用いて達成される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
CH(COR)のカルボアニオンは、アルコキシド塩基を用いて、必要に応じて金属炭酸塩と組合せて、生成される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
アルコキシド塩基はナトリウムメトキシドである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
金属炭酸塩は炭酸ナトリウムである、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
中間体IVをγ−ニトロ酸Vに変換する工程(iii)は、加水分解および脱炭酸を含む、前掲のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
加水分解および脱炭酸は、水の存在下、有機酸または鉱酸を用いて行なわれる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
鉱酸は塩酸である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
工程(iii)におけるγ−ニトロ酸Vのγ−アミノ酸VIへの還元は、接触水素化反応を用いて行なわれる、前掲のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
水素化触媒はPd/C、Pt/CまたはPtOから選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
水素化触媒はPd/Cである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
γ−アミノ酸VIはアキラルである、前掲のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
γ−アミノ酸VIはギャバペチンである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
γ−アミノ酸VIはキラルのγ−アミノ酸VIの混合物である、請求項1から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
γ−アミノ酸VIはラセミの混合物である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
γ−アミノ酸VIはラセミのプレガバリンである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
方法は、キラルのγ−アミノ酸VIの混合物を光学分割して、γ−アミノ酸VIの鏡像異性的に純粋なまたは鏡像異性的に高められた立体異性体を生成する工程をさらに含む、請求項41から43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
γ−アミノ酸VIの鏡像異性的に純粋なまたは鏡像異性的に高められた立体異性体はプレガバリンである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
γ−アミノ酸VIはラクタム不純物を実質的に有さずに得られる、前掲のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
以下の工程を含む、プレガバリンまたはラセミのプレガバリンの調製方法:
(a) イソバレルアルデヒドをニトロメタンと反応させて、2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタンを生成する工程;
(b) 2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタンを3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸に変換させる工程;および
(c) 3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸をプレガバリンまたはラセミのプレガバリンに変換させる工程。
【請求項48】
ニトロメタンのカルボアニオンが、工程(a)において塩基で生成される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
塩基は触媒量で用いられる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
塩基はアルカリ金属アルコキシドまたはアルカリ金属水酸化物である、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
塩基はナトリウムメトキシドである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
工程(a)はエーテル溶媒の中で行なわれる、請求項47から51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
エーテル溶媒は、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、またはこれらの混合物から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
エーテル溶媒はテトラヒドロフランである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
工程(b)は、2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタンの水酸基を脱離基に変換し、前記脱離基をジアルキルマロネートアニオンで置換し、つづいて加水分解および脱炭酸を行なって、3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸を生成することを含む、請求項47から54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
脱離基はハロ基、スルホン酸エステル基、またはカルボン酸エステル基である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
脱離基はトリフルオロアセテート基である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
工程(b)は、アルカリ金属アルコキシド塩基で、必要に応じてアルカリ金属炭酸塩と組合せて、ジアルキルマロネートアニオンを生成することを含む、請求項55から57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
アルカリ金属アルコキシド塩基は、ナトリウムメトキシドである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
アルカリ金属炭酸塩は炭酸ナトリウムである、請求項58または59に記載の方法。
【請求項61】
ジアルキルマロネートは、ジメチルマロネートである、請求項55から60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
工程(b)は、水の存在下、有機酸または鉱酸を用いる加水分解および脱炭酸を含む、請求項55から61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
鉱酸は塩酸である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
工程(c)は接触水素化反応を含む、請求項47から63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
水素化触媒は、Pd/C、Pt/CまたはPtOから選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
水素化触媒はPd/Cである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
ラセミのプレガバリンまたはプレガバリンは、ラクタム不純物を実質的に有さずに得られる、請求項47から66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
方法は、ラセミのプレガバリンを光学分割してプレガバリンを生成する工程をさらに含む、請求項47から67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
鏡像異性的に高められた、または鏡像異性的に純粋なプレガバリンが得られる、請求項47から68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
請求項1から46のいずれか1項に記載の方法で調製された、γ−アミノ酸VI。
【請求項71】
ラクタム不純物を実質的に有さない、γ−アミノ酸VI。
【化7】

[式中、R′およびR″は前掲の請求項のいずれか1項に規定されているとおりである。]
【請求項72】
γ−アミノ酸は、鏡像異性的に純粋な、または鏡像異性的に高められている、請求項70または71に記載のγ−アミノ酸VI。
【請求項73】
請求項47から67のいずれか1項に記載の方法によって調製された、ラセミのプレガバリン。
【請求項74】
請求項47から69のいずれか1項に記載の方法によって調製された、鏡像異性的に純粋な、または鏡像異性的に高められたプレガバリン。
【請求項75】
ラクタム不純物を実質的に有さない、ラセミのプレガバリン。
【請求項76】
ラクタム不純物を実質的に有さない、鏡像異性的に純粋な、または鏡像異性的に高められたプレガバリン。
【請求項77】
癲癇、痛み、神経障害性疼痛、脳虚血、うつ病、精神病、線維筋痛または不安症を治療または予防するための、請求項70、71もしくは72に記載のγ−アミノ酸VI、または請求項73もしくは75に記載のラセミのプレガバリン、または請求項74もしくは76に記載の鏡像異性的に純粋な、または鏡像異性的に高められたプレガバリン。
【請求項78】
請求項70、71、72もしくは77に記載のγ−アミノ酸VI、または請求項73、75、もしくは77に記載のラセミのプレガバリン、または請求項74、76、もしくは77に記載の鏡像異性的に純粋な、または鏡像異性的に高められたプレガバリンを含有する医薬組成物。
【請求項79】
癲癇、痛み、神経障害性疼痛、脳虚血、うつ病、精神病、線維筋痛または不安症を治療または予防するための、請求項78に記載の医薬組成物。
【請求項80】
請求項70、71、72もしくは77に記載のγ−アミノ酸VI、または請求項73、75、もしくは77に記載のラセミのプレガバリン、または請求項74、76、もしくは77に記載の鏡像異性的に純粋な、または鏡像異性的に高められたプレガバリン、または請求項78もしくは79に記載の医薬組成物を、治療もしくは予防に有効な量、それを必要とする患者に投与することを含む、癲癇、痛み、神経障害性疼痛、脳虚血、うつ病、精神病、線維筋痛または不安症を治療または予防するための方法。
【請求項81】
2−ヒドロキシ−4−メチル−1−ニトロ−ペンタン。
【請求項82】
以下の式IVaの化合物。
【化8】

[式中、Rは独立してアルキル基である。]
【請求項83】
Rは独立して、メチル、エチル、プロピル、またはブチル基である、請求項82に記載の化合物。
【請求項84】
Rはメチル基である、請求項83に記載の化合物。
【請求項85】
2−カルボメトキシ−3−ニトロメチル−5−メチル−ヘキサン酸メチルエステル。

【公表番号】特表2011−522027(P2011−522027A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512217(P2011−512217)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050612
【国際公開番号】WO2009/147434
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(508116469)ジェネリクス・(ユーケー)・リミテッド (34)
【Fターム(参考)】