説明

アラミド繊維コードとゴム組成物との接着方法及び該接着方法により得られる複合体

【課題】 アラミド繊維コードとアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含むゴム組成物との間の接着性を向上するようにしたアラミド繊維コードとゴム組成物との接着方法及びその複合体を提供する。
【解決手段】 アラミド繊維コードを、エポキシ樹脂を含む第1処理液に浸漬し、60〜180℃の温度で乾燥させた後に210〜260℃の温度でヒートセット処理を施し、レゾルシン・ホルマリン初期縮合物とゴムラテックスの固形分を合わせた全固形分濃度が5〜23重量%であってゴムラテックス中に固形分比率で少なくとも30重量%のアクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスを含む第2処理液に浸漬し、60〜180℃の温度で乾燥させた後に160〜200℃の温度でノルマライジング処理を施し、ゴム成分中に少なくとも25重量%のアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含む未加硫のゴム組成物に埋設する。これらアラミド繊維コードとゴム組成物との複合体を加硫して一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤやホース等のゴム製品におけるアラミド繊維コードとゴム組成物とを接着する方法に関し、更に詳しくは、アラミド繊維コードとアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含むゴム組成物との間に良好な接着性を確保するようにしたアラミド繊維コードとゴム組成物との接着方法及び該接着方法により得られる複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリアミド繊維コード(以下、アラミド繊維コードという)は、高強度かつ高弾性であるため、空気入りタイヤやホース等のゴム製品の補強材として用いられている。このようなアラミド繊維コードは接着性に劣るため、通常、2浴処理を施し、その接着性を高めるようにしている。例えば、アラミド繊維コードを、ポリエポキシド化合物を含む第1処理液で処理し、次いで、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)にクロロフェノール化合物を配合した第2処理液で処理することが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。しかしながら、クロロフェノール化合物を用いる処理は環境上の観点から好ましいものではない。
【0003】
一方、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)は、耐油性に優れていることから、ホースは勿論のこと、空気入りタイヤのようなゴム製品においても、耐油性が要求される部位に使用されている。しかしながら、上述したアラミド繊維コードとアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含むゴム組成物との接着性は必ずしも十分ではない。そのため、アラミド繊維コードとアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含むゴム組成物とを組み合わせてゴム製品に適用するに際し、両者の接着性を改善することが望まれている。
【特許文献1】特開平2−84585号公報
【特許文献2】特開平9−31854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、アラミド繊維コードとアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含むゴム組成物との間の接着性を向上することを可能にしたアラミド繊維コードとゴム組成物との接着方法及び該接着方法により得られる複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明のアラミド繊維コードとゴム組成物との接着方法は、アラミド繊維コードをエポキシ樹脂を含む第1処理液に浸漬し、該第1処理液を付着させたアラミド繊維コードを60〜180℃の温度で乾燥させた後に210〜260℃の温度でヒートセット処理を施し、該ヒートセット処理を施したアラミド繊維コードをレゾルシン・ホルマリン初期縮合物とゴムラテックスの固形分を合わせた全固形分濃度が5〜23重量%であってゴムラテックス中に固形分比率で少なくとも30重量%のアクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスを含む第2処理液に浸漬し、該第2処理液を付着させたアラミド繊維コードを60〜180℃の温度で乾燥させた後に160〜200℃の温度でノルマライジング処理を施し、該ノルマライジング処理を施したアラミド繊維コードをゴム成分中に少なくとも25重量%のアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含む未加硫のゴム組成物に埋設し、該アラミド繊維コードと該ゴム組成物との複合体を加硫して一体化することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明者は、アラミド繊維コードとアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含むゴム組成物とを接着するにあたって、第1処理液と第2処理液の添加物を規定し、かつヒートセット処理及びノルマライジング処理の温度範囲を規定することにより、アラミド繊維コードとアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含むゴム組成物との接着性が向上することを知見し、本発明に至ったのである。
【0007】
即ち、本発明では、アラミド繊維コードに対してエポキシ樹脂を含む第1処理液とアクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスを含む第2処理液とを用いた2浴処理を実施し、第1処理液を付着させた後のヒートセット処理温度を210〜260℃の範囲に設定すると共に、第2処理液を付着させた後のノルマライジング処理温度を160〜200℃の範囲に設定することにより、クロロフェノール化合物を用いる従来の処理方法とは異なって、環境上の問題を生じることなく、アラミド繊維コードとアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含むゴム組成物との接着性を向上することができる。
【0008】
第1処理液は、レゾルシン・ホルマリン初期縮合物とゴムラテックスの水系混合液と、常温固体でエポキシ当量が300以下で実質的に水に不溶なエポキシ樹脂の水分散液との混合液を含み、該第1処理液におけるレゾルシン・ホルマリン初期縮合物とゴムラテックスの固形分に対するエポキシ樹脂の重量比が0.15〜1.0であることが好ましい。第1処理液において、レゾルシンに対するホルマリンのモル比が2.5〜3.3であり、ゴムラテックスの固形分に対するレゾルシン・ホルマリン初期縮合物の重量比が0.12〜0.20であることが好ましい。
【0009】
第2処理液は、ゴムラテックス中に固形分比率で40〜70重量%のアクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスを含むことが好ましい。第2処理液において、レゾルシンに対するホルマリンのモル比が1.8〜3.3であり、ゴムラテックスの固形分に対するレゾルシン・ホルマリン初期縮合物の重量比が0.12〜0.33であることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、上記接着方法により複合化されたアラミド繊維コードとゴム組成物との複合体が提供される。これら複合体は、ホース、空気入りタイヤ、コンベアベルト等のゴム製品を包含するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、複合体の補強材となるアラミド繊維コードは、先ず、エポキシ樹脂を含む第1処理液に浸漬される。第1処理液として、レゾルシン(R)・ホルマリン(F)初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)の水系混合液と、エポキシ樹脂の水分散液との混合液を用いることができる。ここで、第1処理液におけるレゾルシン・ホルマリン初期縮合物とゴムラテックスの固形分に対するエポキシ樹脂の重量比は0.15〜1.0であると良い。RFLに対するエポキシ樹脂の重量比が0.15未満であると良好な接着力が得られず、逆に1.0を超えるとコードが硬くなり疲労性や加工性を低下させる恐れがある。
【0012】
レゾルシン・ホルマリン初期縮合物としては、レゾルシンとホルマリン水溶液を水に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を触媒として反応させたレゾール型、又はシュウ酸、塩酸等の酸性触媒下で反応させたノボラック型があるが、本発明ではいずれのものも用いることができる。ノボラック型の初期縮合物としては、住友化学工業(株)製のスミカノール700や保土ヶ谷化学工業(株)のアドハーRFなどが市販されている。これらのノボラック型RF樹脂を用いる場合には、RF樹脂を水に溶解するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を少量添加することが必要である。通常、ノボラック型RF樹脂を用いる場合には、ホルマリン水溶液を後添加することが必要である。
【0013】
ゴムラテックスとしては、例えば、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、天然ゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスを用いることができる。特に、接着性の観点からビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックスを用いるのが良い。
【0014】
第1処理液においては、良好な接着性を確保するため、レゾルシンに対するホルマリンのモル比が2.5〜3.3であり、ゴムラテックスの固形分に対するレゾルシン・ホルマリン初期縮合物の固形分の重量比が0.12〜0.20であることが望ましい。
【0015】
第1処理液に配合されるエポキシ樹脂は、水溶性であっても良いが、実質的に水に不溶であることが好ましい。特に、常温固体でエポキシ当量が300以下で実質的に水に不溶なエポキシ樹脂は、繊維とゴムとの接着処理に好適である。例えば、ポリオールとエピクロルヒドリンとの反応から得られる水溶性エポキシ樹脂は、水溶性であるためにRFLに添加するとエポキシがRF樹脂と反応し、接着剤のゲル化や接着性の低下を生ずるので好ましくない。ここで「実質的に水に不溶な」とは室温にて水90重量部にエポキシ樹脂10重量部を溶解した時の水溶率が10%未満であることを言う。
【0016】
また、エポキシ樹脂は常温で固体、好ましくは融点が40℃以上であることが好ましい。その理由は、本発明においてエポキシ樹脂は常温で用いられ、5〜40℃の環境下に曝される。かかる温度雰囲気下で液状であるエポキシは、RFLと混合した状態で放置されるとRF樹脂と反応し、接着剤のゲル化や接着低下を招く恐れがある。これは、RF樹脂が水に溶解しているのに対し、エポキシ樹脂が液体状で分散していると、エポキシ樹脂が固体状態で分散している場合に比較して反応し易くなるためと推定される。従って、通常の使用環境温度、例えば40℃未満では熱軟化による液状化を生じないエポキシ樹脂が推奨される。
【0017】
また、エポキシ樹脂のエポキシ当量は300以下であることが好ましい。ここで「エポキシ当量」とはエポキシ樹脂のエポキシ基1個当たりの分子量であり、エポキシ当量が300以上の場合には、実質的に繊維と反応するエポキシ基の数が少ないために、十分な接着力が得られない。接着性の観点からエポキシ当量は250以下であるのが更に好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、ポリフェノール型エポキシ樹脂類のうち、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ハイドロキノン型、臭素化ノボラック型、キシレン変性ノボラック型、フェノールグリオキザール型、トリスオキシフェニルメタン型、トリスフェノールPA型、ビスフェノールAノボラック型のエポキシ樹脂が挙げられる。接着性や汎用性の点で、特に好ましいエポキシ樹脂はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂である。
【0018】
エポキシ樹脂の水分散液には実質的に有機溶剤が含まれていないことが好ましい。通常の処理では、エポキシ樹脂を水分散するために、一旦、エポキシ樹脂をトルエン等の有機溶剤に溶解し、適当な分散剤を用いて水分散化する方法が行われる。しかしながら、エポキシ樹脂を水の中に分散させた場合にはRF樹脂との反応が起こり易く、接着力が低下するという問題がある。また、RFLと混合するとエポキシ樹脂が凝集して沈澱を起こし易くなる。
【0019】
実質的に有機溶剤を含まないエポキシ樹脂の水分散液を得るには、公知の方法を用いることができる。例えば、常温で固体状のエポキシ樹脂を熱軟化温度以上に加熱し、溶融状態とし、熱水と分散剤とを混合攪拌し、更に微細化するためにコロイドミルを通して、平均粒子径を例えば5μm以下にする。この方法は、水の沸点以下で溶融するエポキシ樹脂に適用できる。また、熱軟化温度が高いエポキシ樹脂を用いる場合には、そのエポキシ樹脂が可溶な有機溶剤を用いてエポキシ樹脂を溶解し、水及び分散剤を加えて高剪断力を持つ攪拌装置にて所定の分散度まで混合攪拌し、更に、有機溶剤を除去するために、減圧蒸留を行う。これにより、有機溶剤を実質的に含まないエポキシ樹脂の水分散液を得ることができる。
【0020】
水分散液中のエポキシ樹脂の平均分散粒子径は5μm以下であるのが好ましく、0.1〜4μmであるのが更に好ましい。この平均粒子径が5μmを超えると水分散液の分散安定性に劣り、第1処理液においてエポキシ樹脂が沈降し易く十分な接着力が得られない場合がある。従って、より安定した接着を得るには、平均粒子径を5μm以下とするのが好ましい。
【0021】
第1処理液を付着させたアラミド繊維コードは、60〜180℃の温度で緊張下に乾燥させた後、210〜260℃の比較的高い温度でヒートセット処理が施される。ヒートセット処理での張力は、0.08〜2.0cN/dtex の範囲が好ましい。このようなヒートセット処理での温度が上記範囲から外れると接着性が低下する。
【0022】
ヒートセット処理を施したアラミド繊維コードは、レゾルシン・ホルマリン初期縮合物とゴムラテックスの水系混合液からなる第2処理液に浸漬される。この第2処理液は、レゾルシン・ホルマリン初期縮合物とゴムラテックスの固形分を合わせた全固形分濃度が5〜23重量%であって、ゴムラテックス中に固形分比率で少なくとも30重量%のアクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスを含むものである。ゴムラテックス中のアクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスの比率が30重量%未満であるとアラミド繊維コードとアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含むゴム組成物との接着性が低下する。特に、ゴムラテックス中のアクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスの比率は40〜70重量%であることが好ましい。
【0023】
第2処理液においては、良好な接着性を確保するため、レゾルシンに対するホルマリンのモル比が1.8〜3.3であり、ゴムラテックスの固形分に対するレゾルシン・ホルマリン初期縮合物の重量比が0.12〜0.33であることが望ましい。
【0024】
第2処理液を付着させたアラミド繊維コードは、60〜180℃の温度で緊張下に乾燥させた後、160〜200℃の比較的低い温度でノルマライジング処理が施される。ノルマライジング処理での張力は、0.08〜2.0cN/dtex の範囲が好ましい。このノルマライジング処理での温度が上記範囲から外れると接着性が低下する。
【0025】
ノルマライジング処理を施したアラミド繊維コードは、ゴム成分中に少なくとも25重量%のアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含む未加硫のゴム組成物に埋設され、これらアラミド繊維コードとゴム組成物との複合体は加硫を通して一体化される。即ち、一連の処理を経たアラミド繊維コードは、アクリロニトリル−ブタジエンゴムを含むゴム組成物に対する接着性が良好であるが、アクリロニトリル−ブタジエンゴムがゴム成分の25重量%未満であると接着性の改善効果を発揮することができない。
【0026】
このようにして得られたアラミド繊維コードとゴム組成物との複合体は、接着性に優れている。従って、これら複合体をホース、空気入りタイヤ、コンベアベルト等のゴム製品に適用することは極めて有益である。例えば、上記複合体を建設車両用空気入りタイヤのビード部に配置されるチェーファーに適用した場合、耐油性及び耐カット性を同時に満足することが可能になる。
【実施例】
【0027】
アラミド繊維コードとゴム組成物とを複合体について、その接着性を評価するため、以下の実験を行った。
【0028】
ディップ処理は以下の通りである。先ず、シングルコードをディップ処理するための熱処理炉を用いて、1670dtex /2(1670dtex の2本撚り:JIS L1017表記)のアラミド繊維コードのディップ処理を行った。ディップ処理に際して、アラミド繊維コードを、最初に第1処理液に浸漬し、0.3cN/dtex の張力条件にて60秒間乾燥後、同張力にて60秒間ヒートセット処理を実施した。その後、アラミド繊維コードを、第2処理液に浸漬し(比較例1は除く)、0.25cN/dtex の張力条件にて60秒間乾燥後、同張力にて60秒間ノルマライジング処理を実施した。なお、乾燥温度(DRY1,DRY2)はいずれも130℃であり、ヒートセット温度(HS)及びノルマライジング温度(NL)は表1〜3に示す通り種々異ならせた。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
ここで、第1処理液の配合(D1−A〜D1−F)は下記表4の通りであり、第2処理液の配合(D2−A〜D2−E)は下記表5の通りである。表4及び表5の備考欄において、R/Fはレゾルシンとホルマリンとのモル比、RF/Lはレゾルシン・ホルマリン初期縮合物とラテックスの固形分との重量比、EPO/RFLはエポキシ樹脂とレゾルシン・ホルマリン初期縮合物及びゴムラテックスの固形分との重量比、VP/NBRはビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックスの固形分とアクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスの固形分との重量比である。
【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
表4及び表5において、
*1 スミカノール700S 住友化学工業(株)製
レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物(ノボラック型RF)
固形分65重量%
*2 ニポール1562 日本ゼオン(株)製
アクリルニトリル・ブタジエン系ラテックス
固形分41重量%
*3 ニポール2518FS 日本ゼオン(株)製
ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックス
固形分40.5重量%
*4 オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂水分散液
固形分40重量%
【0036】
アラミド繊維コードとゴム組成物との接着試験は以下の通りである。即ち、上述の如くディップ処理されたアラミド繊維コードと、下記表6の配合からなるゴム組成物(R1〜R4)を用い、加硫条件を148℃×30分として試験片を得た。この試験片は、厚さ2mmのゴムシート上にディップ処理済みのアラミド繊維コードを互いに平行に最密充填で幅25mmにわたって引き揃え、その上に厚さ1mmのゴムシートを重ね、更に、その上にディップ処理済みのアラミド繊維コードを上記同様に最密充填で幅25mmにわたって引き揃え、その上に厚さ2mmのゴムシートを重ねた所謂2プライ積層試料である。この2プライ積層試料をプライ間で剥離し、その破壊状況(ゴム付き率)の観察を行い、その評価結果を表1〜3に併せて示した。ゴム付き率は、ゴム破壊が剥離界面の全面に生じている場合を100%とし、コードとゴムとの界面破壊が全面に発生している場合を0%として表示した。接着性が良いものはゴム破壊が100%であって接着力が高い。
【0037】
【表6】

【0038】
表1〜表3から判るように、本発明で規定する条件を満足する実施例1〜14は、いずれもアラミド繊維コードとゴム組成物との接着性が良好であった。表1の比較例1は、一浴処理であるため接着性が不十分であった。表1の比較例2〜5は、ヒートセット処理又はノルマライジング処理の温度条件が規定範囲から外れているため接着性が不十分であった。表2の比較例6は、アラミド繊維コードを被覆するゴム組成物に含まれるゴム成分中のアクリロニトリル−ブタジエンゴムの比率が低いため接着性が不十分であった。表2の比較例7は、第2処理液におけるゴムラテックス中のアクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスの比率が低いため接着性が不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミド繊維コードをエポキシ樹脂を含む第1処理液に浸漬し、該第1処理液を付着させたアラミド繊維コードを60〜180℃の温度で乾燥させた後に210〜260℃の温度でヒートセット処理を施し、該ヒートセット処理を施したアラミド繊維コードをレゾルシン・ホルマリン初期縮合物とゴムラテックスの固形分を合わせた全固形分濃度が5〜23重量%であってゴムラテックス中に固形分比率で少なくとも30重量%のアクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスを含む第2処理液に浸漬し、該第2処理液を付着させたアラミド繊維コードを60〜180℃の温度で乾燥させた後に160〜200℃の温度でノルマライジング処理を施し、該ノルマライジング処理を施したアラミド繊維コードをゴム成分中に少なくとも25重量%のアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含む未加硫のゴム組成物に埋設し、該アラミド繊維コードと該ゴム組成物との複合体を加硫して一体化することを特徴とするアラミド繊維コードとゴム組成物との接着方法。
【請求項2】
前記第1処理液が、レゾルシン・ホルマリン初期縮合物とゴムラテックスの水系混合液と、常温固体でエポキシ当量が300以下で実質的に水に不溶なエポキシ樹脂の水分散液との混合液を含み、該第1処理液におけるレゾルシン・ホルマリン初期縮合物とゴムラテックスの固形分に対するエポキシ樹脂の重量比が0.15〜1.0であることを特徴とする請求項1に記載のアラミド繊維コードとゴム組成物との接着方法。
【請求項3】
前記第1処理液において、レゾルシンに対するホルマリンのモル比が2.5〜3.3であり、ゴムラテックスの固形分に対するレゾルシン・ホルマリン初期縮合物の重量比が0.12〜0.20であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアラミド繊維コードとゴム組成物との接着方法。
【請求項4】
前記第2処理液がゴムラテックス中に固形分比率で40〜70重量%のアクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアラミド繊維コードとゴム組成物との接着方法。
【請求項5】
前記第2処理液において、レゾルシンに対するホルマリンのモル比が1.8〜3.3であり、ゴムラテックスの固形分に対するレゾルシン・ホルマリン初期縮合物の重量比が0.12〜0.33であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアラミド繊維コードとゴム組成物との接着方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の接着方法により複合化されたことを特徴とするアラミド繊維コードとゴム組成物との複合体。

【公開番号】特開2006−45703(P2006−45703A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225777(P2004−225777)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】