説明

アルカリ電気化学電池

ハイテクドレイン速度および低ドレイン速度の両方において、最適の放電効率を提供できるアルカリ電気化学電池が開示される。一つの実施形態では、カソードの電気化学容量に対するアノードの電気化学容量の比率が1.33:1〜1.40:1であり、カソード界面に対するアノードの表面積が最大化される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、一般的には二酸化マンガンを含んでなるアルカリ電池に関する。特に、本発明は、種々の放電条件において最適なサービスを提供できるアルカリ電気化学電池に関する。
【0002】
商業的に入手可能な円筒形のアルカリ電気化学電池は、LR6(AA)、LR03(AAA)、LRl4(C)、およびLR20(D)として一般に知られている電池サイズで広く入手可能である。
【0003】
多くの場合、これらの電池は消費者が購入し、装置への電力供給が必要とされるまで保管される。バッテリーで電力を供給される装置の増大により、多くの消費者はバッテリーを備えた多くの装置を保有している。一つの家庭に見られるこのような装置の幾つかには、ラジオ;テレビジョンセットのための遠隔コントローラ;テープレコーダ;子供の玩具;手持ち型電子ゲーム機;コンパクトディスクプレーヤー;フラッシュ照明ユニットおよび35ミリメータフィルムを組込んだカメラ;およびデジタルカメラが含まれる。全体として、これらの装置は広範な放電条件に相当する。例えば、テーププレーヤは、低速で電流を供給することを必要とし、且つ駆動と駆動の間では実質的な停止期間を伴うため、バッテリー製造分野においては「低ドレイン」装置として知られている。テーププレーヤーのためのバッテリーの典型的な放電様式は、単一のLR6サイズのバッテリーを、1日当り1時間だけ100ミリアンペアで放電することによってシミュレートすることができる。フラッシュライトのような、LR6サイズのバッテリーで電力供給を受けるもう一つの装置は、該バッテリーに対して、低レベルから中程度の電流消費を課する。1日当り8時間で1時間当り4分間だけ、3.3Ωの抵抗器を通してLR6バッテリーを放電させることは、フラッシュライトにおけるLR6の特性をシミュレートするために許容された試験である。コンパクトディスクプレーヤーのような更にもう一つの装置は、駆動の間の実質的な停止期間を伴って、テーププレーヤーに要求されるよりも高い速度で電流を供給する(即ち250ミリアンペアで1日当り1時間)幾つかのバッテリーを必要とするものであり、「ハイテク」装置として知られている。その中に35mmフィルムおよびフラッシュユニットが含まれるカメラのような他の装置は、かなりの電流(即ち、1000ミリアンペアで10秒オン、50秒オフ、1日当り1時間)で電流を供給することを必要とし、「高ドレイン」装置として認識されている。消費者がバッテリーを購入するとき、消費者は、特定のバッテリーが挿入されるべき装置を知らないかもしれない。結局、消費者は、低ドレイン、高ドレインまたはハイテク放電を課す可能性のある種々の装置において、十分な特性を示すバッテリーを購入しようとするであろう。消費者が、特定のブランドのバッテリーが全ての装置に使用したときに最適なサービスを提供すると確信すれば、消費者は、異なるブランドのバッテリーではなく当該ブランドのバッテリーを購入するように動機付けられるであろう。結局、バッテリーは広範な装置に許容可能な時間だけ電力を供給するから、多くのバッテリー製造業者は、「全目的」のバッテリーとして消費者に認められる電池を開発および販売するように競争する。
【0004】
バッテリー製造業者は、彼等の製品が種々の装置に電力を供給する時間長を改善することに加えて、該バッテリーのコストを低減するように常に努力している。コストを低減するための一つの方法は、バッテリーの電極の一方または両方において電気化学的活性材料の量を減少させることである。例えば、アノードの亜鉛の量および/またはカソードにおける二酸化マンガンの量は低減され得るであろう。しかし、電気化学的活性材料の量の如何なる減少も、該バッテリーが装置を動かす時間の長さであるバッテリーの「稼動時間」を減少させるから、製造業者にとってこのオプションは許容できないであろう。
【0005】
カメラのような特定の装置において、バッテリーの性能を如何にして改善するかという問題に対処するための従来の試みには、通常は電池の内部構造を変えることが含まれている。一つの例では、アノードにおける亜鉛の量を増大させることによって、電池構造が変更された。しかし、この変更により、電池が深く放電されてしまった後には、許容できない電解質の漏出が生じた。もう一つの例では、一方の電極が、他の電極により定義されるキャビティーの中心に整列して挿入される電池設計を使用する代りに、或る製造業者は「ゼリーロール」構造を使用してきたが、これは二つのストリップ形状の電極および一つのセパレータを相互対して配列し、次いで巻回してコイルに形成したものである。ゼリーロール構造を備えたバッテリーは、典型的には高ドレイン装置において充分な特性を発揮する。不運にも、ゼリーロールの大きなアノード/カソード表面積に起因して、電気化学的活性物質が化学的に不活性なセパレータで置換えられなければならないので、この同じ電池が、低ドレイン装置においては実質的に低下したサービスを与える。結局、ゼリーロール構造で作製されたバッテリーは、迅速に放電する能力よりも電池の全電気化学容量の方が重要な装置に使用するためには、十分には適していない。
【0006】
従って、ハイテクドレイン速度で放電するバッテリーを必要とする装置において充分な稼動時間を提供する能力を有すると共に、低ドレイン速度で放電するバッテリーを必要とする装置においても充分な稼働時間を提供する、安価なアルカリ電気化学電池が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、種々の放電条件下において効率的な方法で放電することができる電気化学電池を提供する。一つの実施形態において、本発明の電気化学電池は、少なくとも以下の構成要素を含んでいる。第一の電極、第二の電極、アルカリ電解質およびセパレータを収容する容器。その中にキャビティーを定義する前記第一の電極は、電気化学的活性材料としての二酸化マンガンを含んでいる。該第一の電極の電気化学的容量は、二酸化マンガンのグラム数に285mAhr/gを乗算することによって決定される。前記キャビティーの中に配置される第二の電極は、電気化学的活性材料として亜鉛を含んでいる。第二の電極の電気化学的容量は、亜鉛のグラム数に821mAhr/gを乗算することによって決定される。前記セパレータは、前記第一および第二の電極の界面に配置される。その界面の面積は、12.6cm2〜13.2cm2である。前記第一の電極の電気化学的容量に対する、前記第二の電極の電気化学的容量の比率は、1.33:1〜1.40:1である。
【0008】
もう一つの実施形態において、本発明の電気化学電池は、少なくとも以下の構成要素および特性を含むLR6バッテリーである。その中にキャビティーを定義する第一の電極を収容する円筒形容器。50ppm未満の水銀を含有し、前記第一の電極に定義されたキャビティー内に配置された第二の電極。これら電極の間に配置されたセパレータ。該セパレータおよび両電極に接触するアルカリ電解質。前記第一の電極は、電気化学的活性材料として二酸化マンガンを含み、これは二酸化マンガンのグラム数に285mAhr/gを乗算することによって決定される電気化学的容量を有する。前記第二の電極は、電気化学的活性材料として亜鉛を含んでいる。第二の電極の電気化学的容量は、亜鉛のグラム数に821mAhr/gを乗算することによって決定される。第二の電極の電気化学的容量の、第一の電極の電気化学的容量に対する比は、1.33:1〜1.40:1である。この電池は、該電池の閉じた回路電圧が0.9ボルト未満に低下するまで、250ミリアンペアの一定電流で1日当り1時間放電されたならば、第一の電極の電気化学的容量に基づいて81.0%の最小放電効率を有するであろう。或いは、該電池は、該電池の電圧が0.90ボルト未満に低下するまで、3.3オームの抵抗器を通して1時間当り4分、1日当り8時間放電されたならば、第一の電極の電気化学容量に基づいて少なくとも78.0%の最小放電効率を有するであろう。或いは、この電池は、該電池の閉じた回路電圧が0.9ボルト未満に低下するまで、100ミリアンペアの速度で1日当り1時間放電されたならば、第一の電極の電気化学的容量に基づいて93.0%の最小放電効率を有するであろう。
【0009】
更にもう一つの実施形態において、本発明は、以下の構成要素を含む電気化学電池である。その中にキャビティーを定義する第一の電極を収容する容器。該キャビティーは、第一の電極を管状体に衝撃モールドする円筒形の器具を利用することによって形成された。該器具の円周は、少なくとも29.12mmである。該容器は、13.89mm〜14.00mmの外径を有する。セパレータは、該キャビティーをライニングしている。亜鉛粉末を含んでなる第二の電極は、該セパレータでライニングされたキャビティー内に配置される。該亜鉛粉末は、2.80g/ccよりも大きく且つ 3.65g/ccよりも小さいタップ密度、400cm2/gを越えるBET比表面積、少なくとも14%のKOH吸収値、および130ミクロン未満のD50を有している。前記容器内に配置された電解質は、前記電極およびセパレータに接触する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に図面、特に図1を参照すると、本発明の組立てられた電気化学電池の断面図が示されている。該電池の外側から始めると、電池の構成要素は、容器10、該容器10の内表面に隣接して配置された第一の電極12、第一の電極12の内部表面に接触したセパレータ14、該セパレータ14により定義されたキャビティー内に配置された第二の電極18、および容器10に固定された閉鎖アセンブリー20である。容器10は、開放端22、閉鎖端24、およびそれらの間の側壁26を有している。閉鎖端24、則壁26および閉鎖アセンブリー20は、電池の電極が収容される密封された容積空間を定義する。
【0011】
ここではカソードとも称する第一の電極12は、電気化学的活性材料としての二酸化マンガンを含んでいる。該電極は、或る量の混合物を一端が開放された容器の中に配置し、次いでラムを使用して、該混合物を、容器の側壁に対して同心円のキャビティーを定義する固い管構造にモールドする。第一の電極12は、棚状突起28および内部表面30を有している。或いは、二酸化マンガンを含む混合物から複数のリングを予成形し、次いで該リングを容器の中に挿入して、管形状の第一の電極を形成することによりカソードを形成してもよい。図1に示した電池の場合は、典型的には三つまたは四つのリングを含むであろう。
【0012】
ここではアノードとも称する第二の電極18は、水性アルカリ電解質、亜鉛粉末および架橋ポリアクリル酸のようなゲル化剤の均一な混合物である。亜鉛粉末は、第二の電極の電気化学的活性材料である。水性アルカリ電解質は、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、またはそれらの混合物のようなアルカリ金属水酸化物を含んでいる。水酸化カリウムが好ましい。本発明の電池に使用するために適したゲル化剤は、架橋ポリアクリル酸、例えばNoveon・Inc社(合衆国オハイオ州クリーブランド)から入手可能なカルボポール940(登録商標)である。カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミドおよびポリアクリル酸ナトリウムは、アルカリ電解質溶液に使用するのに適したゲル化剤である。亜鉛粉末は、純粋な亜鉛または合金であってよい。気泡発生阻害剤、有機もしくは無機の腐蝕防止剤、バインダまたは表面活性剤のような任意成分が、上記に挙げた成分に加えられてよい。気泡発生阻害剤または腐蝕防止剤の例は、インジウム塩(例えば水酸化インジウム)、パーフルオロアルキルアンモニウム塩、アルカリ金属硫化物等を含むことができる。表面活性剤の例は、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンアルキルエーテル、パーフルオロアルキル化合物等を含むことができる。第二の電極は、上記で述べた成分をリボンブレンダまたはドラムミキサの中で混合し、次いで該混合物を湿式スラリーに加工することによって製造すればよい。
【0013】
アノード製造プロセスの間にゲル化剤に吸収された水性アルカリ電解質に加えて、ここでは「遊離電解質」とも称する追加量の水酸化カリウム水溶液を、製造プロセスの際に電池に添加してもよい。この遊離電解質は、それを第一の電極により定義されたキャビティーの中に配置することによって、該電池の中に組込まれてよい。遊離電解質を電池の中に組込むために使用される方法は、該溶液が第一の電極12、第二の電極18およびセパレータ14に接触する限り、重要ではない。図1に示した電池に使用してよい一つの遊離電解質は、37.0重量%のKOHを含有する水溶液である。
【0014】
図1に示したボビン型の亜鉛/二酸化マンガンアルカリ電池において、セパレータ14は、カソード(第一の電極)をアノード(第二の電極)から分離するための、通常は重層されたイオン透過性の不織布として提供される。適切なセパレータは、WO03/043103に記載されている。該セパレータは、正電極の電気化学的材料(二酸化マンガン)および負電極の電気化学的活性材料(亜鉛)の物理的誘電体分離を維持し、これら電極材料の間のイオンの輸送を可能にする。加えて、セパレータは電解質の吸い上げ媒体として働き、またアノードの断片化した部分がカソードの頂部と接触するのを防止するカラーとして働く。典型的なセパレータは、通常は二以上の紙の層を含んでいる。従来のセパレータは、通常はセパレータ材料をカップ形状のバスケットに予成形し、その後に第一の電極により定義されたキャビティーの中に挿入することによって、または電池組立ての際に、前記キャビティーの中にセパレータ材料の二つの矩形シートを相互に90°回転させて挿入し、バスケットを形成することによって形成される。従来の予成形されたセパレータは、典型的には、第一の電極の内壁に一致し且つ閉じた底部末端を有する円筒形状に巻き上げられた不織布のシートで作製されている。
【0015】
閉鎖アセンブリー20は、閉鎖部材32および電流コレクタ34を具備している。閉鎖部材32は、電池の内部圧が過剰になったときには該閉鎖部材が破断することを可能にする通気孔を含むようにモールドされる。電流コレクタ34が、第一の電極のための電流コレクタとして働く容器10から電気的に絶縁されるならば、閉鎖部材32は、ナイロン6,6または他の材料(例えば金属)で製造されてよい。電流コレクタ34は、真鍮製の細長い釘形状の部品である。コレクタ34は、閉鎖部材32の中心に位置する孔を貫通して挿入される。
【0016】
本発明の電池に使用するのに適した第一の電極の処方が、表1に示されている。量は重量パーセントで表されている。
(表1)

【0017】
二酸化マンガン、グラファイトおよび硫酸バリウムを一緒に混合して、均一な混合物を形成する。混合プロセスの間に、37%KOH溶液が該混合物中に均一に分散され、それによって、カソード材料の全体に亘って該溶液の均一な分布を保証する。二酸化マンガン(MnO2)は、天然の二酸化マンガン(NMD)、化学的二酸化マンガン(CMD)または電解二酸化マンガン(EMD)として商業的に入手可能である。本発明の電池に使用するための好ましい二酸化マンガンは、EMDである。アルカリバッテリーに使用するためのEMDの供給業者には、オクラホマ州オクラホマ市のKerr−McGeeケミカルコーポレーション;日本国東京のトーソー・コーポレーション;およびメリーランド州バルチモアのErachem・Comilog社が含まれる。グラファイトは二酸化マンガンと混合されて、カソードの全体に導電性マトリックスを提供する。該グラファイトは、地中(天然)から採掘され、または製造(合成)されてよい。更に、グラファイトは発泡型でも非発泡型でもよい。アルカリバッテリーに使用するためのグラファイトの供給業者には、オハイオ州ウエストレークのTimcal・America;イリノイ州シカゴのSuperior・Graphiteカンパニー;およびスイス国バーゼルのLonza・Ltdが含まれる。硫酸バリウムは、イタリア国マッサのBario・E・Derivati・S.p.A.から購入することができる。
【0018】
本発明の電池に使用するために適した第二の電極の処方が、表2に示されている。ゲル化された電極の組成が表3に示されている。量は、重量パーセントで表されている。
(表2)

(表3)

【0019】
アノードを調製するためのプロセスには、以下の工程が含まれる。表3に示した成分を混合して、その中に酸化亜鉛および珪酸ナトリウムが溶解された溶液を形成する。次いでこの溶液をゲル化剤と混合して、ゲル化した電解質を形成する。該ゲル化した電解質の組成が表4に示されている。
(表4)

(表5)

【0020】
表面活性剤溶液を、表5に示した比率で、ドイツ国に所在のBYK化学から入手可能なDisperbyk190を脱イオン水と混合することにより調製した。次いで、このゲル化した電解質を、表2に示した比率に従って、亜鉛粉末、表面活性剤溶液および0.1N・KOHと混合し、それによって本発明の電池に使用するのに適した第二の電極を形成した。
【0021】
アルカリ電解質を有する一次電池(充電不能)に使用するのに適したアノードは、典型的には、粒状亜鉛を、上記で述べたようにゲル化剤、水性アルカリ溶液および任意の添加剤と混合することによって製造される。何れか一つの成分の、他の1以上の成分に対する比率は、加工装置;粒子/粒子接触を維持するために必要なもの等の電池設計基準;およびコスト拘束によって課される種々の制限に合致させるように、一定の制限内で調節することができる。ここではアノード中に50ppm未満の水銀を含有するものとして定義される水銀フリーのバッテリーにおいて、粒子/粒子接触を維持することに関しては、商業的に入手可能な円筒形アルカリバッテリーの多くの電池設計が、亜鉛粒子の間での粒子/粒子接触を維持するために、少なくとも28容量パーセントの亜鉛粉末を使用するように使用明細書に記載している。本発明の電池の好ましい実施形態において、アノード中の亜鉛の量は、28.0容量パーセント未満にまで低減される。27.0容量パーセントの亜鉛、26.0容量パーセントの亜鉛、または24.0容量パーセントの亜鉛を用いて作製されたアノードは実施可能である。この亜鉛の容量パーセントは、以下で説明するように、亜鉛の容積を、アノードをセパレータでライニングしたキャビティーの中に供給される直前のアノードの容積で除算することによって決定される。アノードの中に組込まれる電解質の一部は、セパレータによって定義されるキャビティーの中にアノードが挿入されると直ちにセパレータおよびカソードの中に移動するから、亜鉛の容量パーセントは、アノードをセパレータバスケットの中に供給する前に決定しなければならない。亜鉛の容量パーセントは、以下の方法を使用して決定される。電池の中の亜鉛の重量を亜鉛の密度(7.13g/cc)で除算することによって、亜鉛の容積を計算する。アノード混合物を電池の中に配置する直前のアノード混合物の重量を、測定されたアノード混合物の密度で除算することによって、アノード混合物の容積を計算する。次いで、亜鉛の容積をアノード混合物の容積で除算して、亜鉛の容量パーセントを得る。アノード混合物の見掛けの密度を、以下の方法を使用して決定する。即ち、既知の容積(例えば35cc)を有する空の容器を秤量する。アノードが該容器を完全に充填するように、アノードの一定量を容器の中に配置する。充填された容器を秤量し、次いで前記空の容器の重量を差引くことによってアノードの重量を計算する。該アノードの重量を前記容器の容積で除算して、前記アノードの見掛けの密度を得る。
【0022】
前記アノードの全高さおよび全幅に亘って均一に分布される亜鉛粒子の間で、粒子/粒子接触を樹立および維持するためには、50ppm未満の水銀を含有するゲル化されたアノードが粒状亜鉛の最小容積を有していなければならないので、亜鉛の量を28容量パーセント未満にまで減少させることは有意である。粒子/粒子接触は、バッテリーの有用な全寿命の間は維持されなければならない。アノードにおける亜鉛の容積が低過ぎれば、該電池が装置に電力を供給しているときに、電池の電圧は許容できないほど低い値に急激に降下する可能性がある。この電圧降下は、幾つかのアノードにおける亜鉛粒子間の連続性の喪失、およびそれによりアノードの一部を電気的に絶縁して、電池の放電に関与できないようにすることによって生じると考えられる。電圧が低いままであれば、該電池は消費者によって置き換えられなければならない。該電圧が迅速に許容可能な値に回復するならば、該装置は正常な方法で動作を回復するであろう。しかし、消費者は誤って、装置特性の一時的な中断をバッテリーの寿命が切れそうになったサインと感じ、早期に電池を置換するように動機付けられるかもしれない。結局、電池製造業者は、バッテリーの完全な寿命の全体を通して信頼性のあるサービスを保証するために、水銀フリーのゲル化アノードにおける粒状亜鉛の最小容積よりも多くを従来使用してきた。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において有用な亜鉛は、ベルギー国ブラッセルのN.V.UMICORE,S.A.から、BIA115の指定の下で購入することができる。該亜鉛は、2000年8月17日に公開された国際公開番号WO00/48260に一般的に記載された、遠心噴霧プロセスにおいて製造される。この刊行物は、亜鉛合金の組成および亜鉛粉末を製造するために使用される製造プロセスを開示している。しかし、亜鉛粒子の多くの物理的特徴は開示されていない。好ましい実施形態において、該亜鉛粉末は以下の物理的および化学的特徴の多くを有する。第一に、亜鉛粉末の粒子サイズは、130ミクロン未満、より好ましくは100〜130ミクロン、最も好ましくは110〜120ミクロンのD50中間値を有するものとして特徴付けられる。該D50中間値は、顆粒金属粉末の篩分析のための標準試験方法と題するアメリカ試験および材料協会(ASTM)標準B214−92に記載された篩分析法、および顔料の粒子サイズ特性を報告するための標準実務と題するASTMD1366−86(1991年改訂)を使用して決定される。ASTM標準B214−92およびD1366−86(1991年改訂)を、本明細書の一部として援用する。この文書で使用されているように、亜鉛粉末のD50中間値は、ASTMD−1366−86に示すように、累積重量パーセンテージを上位クラスのサイズ限界データに対してプロットし、次いで50パーセント累積重量値に対応する半径(即ちD50)を見出すことにより決定される。第二に、亜鉛粉末のBET比表面積は少なくとも400cm2/gである。更に詳細に言えば、該表面積は少なくとも450cm2/gである。BET比表面積は、亜鉛粉末を150℃で1時間脱ガスした後に複数点キャリブレーションを用いて、MicromeriticsのモデルTriStar3000BET比表面積アナライザ上で測定される。第三に、亜鉛粉末のタップ密度は2.80g/ccよりも大きく、且つ3.65g/ccよりも小さい。更に好ましくは、該タップ密度は2.90g/ccよりも大きいが、3.55g/ccよりも小さい。最も好ましくは、該タップ密度は3.00g/ccよりも大きく、且つ3.45g/ccよりも小さい。このタップ密度は次の手順を使用して測定される。50gの亜鉛粉末を50ccの目盛付きシリンダの中に投入する。亜鉛粉末を収容したこの目盛付きシリンダを、アメリカ合衆国フロリダ州BoyntonビーチのQuanta・Chrome社により作製されたモデルAT−2「オートタップ」タップ密度アナライザのような、タップ密度分析器上に固定する。 該タップ密度アナライザを、520回タッピングするように設定する。該タップ密度アナライザを運転し、該目盛付きシリンダを垂直方向に520回迅速に移動させることによって目盛付きシリンダをタッピングする。該目盛付きシリンダの中の、亜鉛粉末の最終容積を読取る。亜鉛粉末の重量を、タッピング後の亜鉛粉末が占める容積で除算することによって、亜鉛粉末のタップ密度を決定する。第四に、亜鉛粉末は、少なくとも14%のKOH吸収値を有している。更に好ましくは、このKOH吸収値は15%以上である。KOH吸収値を決定するための方法は、図3に関する明細書部分において以下で説明する。
【0024】
上記で述べた物理的特徴に加えて、好ましい亜鉛は、その中に組込まれたビスマスおよび/またはインジウムおよび/またはアルミニウムとの合金である。ビスマスの好ましい量は、75〜125ppmである。インジウムの好ましい量は、175〜225ppmである。アルミニウムの好ましい量は、75〜125ppmである。
【0025】
電池設計を特徴付けるためにバッテリー設計者が使用する一つのパラメータは、一方の電極の電気化学的容量の、対向電極の電気化学容量に対する比率である。例えば、亜鉛を含有する第二の電極の理論的電気化学容量(ここではアノードと称され、Aと略称される)が3528mAhrであり、且つ二酸化マンガンを含有する第一の電極(ここではカソードと称され、Cと略称される)の理論容量が2667mAhrであれば、A:Cの比は1.32:1である。アノードに亜鉛を用い、カソードに二酸化マンガンを用いる商業的に入手可能なLR6アルカリ一次電池については、A:Cの比は1.32:1未満である。しかし、本発明の一実施形態おいて、本発明の電池におけるA:Cの比率は、1.38:1にまで増大した。1.32:1よりも大きいA:C比(例えば1.34:1、または1.40:1)を有する電池構成は実行可能である。
【0026】
電池構成を特徴付けするためにバッテリー設計者が使用するもう一つのパラメータは、アノードおよびカソード間の界面の面積である。該界面の面積は、第一の電極における管形状の内表面の面積として定義され、これはカソード材料を管形状に衝撃モールドするために使用したモールドラムの円周に、第二の電極と対抗する第一の電極の高さを乗算することによって計算される。好ましくは、LR6サイズのバッテリーにおいて、該界面の面積は12.6cm2〜13.2cm2であるべきである。より好ましくは、該界面の面積は12.75cm2〜13.10cm2であるべきである。更に好ましくは、該界面の面積は12.90cm2〜13.05cm2であるべきである。図4を参照すると、第一の電極12の高さ(H)にモールドラム36の円周を乗算する。本発明の完全な利益を達成するためには、モールドラムの円周は、少なくとも29.12mmであるべきである。より好ましくは、該モールドラムの円周は少なくとも29.53mmであるべきである。更に好ましくは、該モールドラムの円周は少なくとも29.92mmであるべきである。本発明の好ましい実施形態において、前記第一の電極は、単一の管形状のキャビティーを定義している。更に、該キャビティーは、前記容器内の開口部に同心円的に整列される。前記第一の電極を、前記容器の則壁の内表面に対して衝撃モールドすることは、第一の電極を前記容器の中に形成するための好ましい方法である。
【0027】
バッテリー産業において、バッテリーを評価および特徴付けするために使用される一つの広く許容されたプロトコールは、個々の電池を予め定義された電気的試験回路上で放電させることと、次いで、バッテリーの閉じた回路電圧が最小値を越えたまま残る時間長を記録することを含んでいる。これらの「放電試験」は、異なる電池構成の運転時間を評価するために、バッテリー製造業者によって使用される。放電試験上でのバッテリー特性の評価を標準化するために、多くの電池サイズおよび試験法が、アメリカ国立標準研究所(ANSI)および国際電子技術委員会(IEC)のような組織によって定義され、是認されてきた。LR6サイズバッテリーのようなバッテリーサイズは、50.5mmの最大高さ、および14.5mmの最大直径を有するものとして、IECの国際標準60086−2第10.1版によって定義されている。典型的にはLR6バッテリーに使用されるスチール製容器は、通常は13.89mm〜14.00mmの外径を有している。LR6バッテリーのようなバッテリーのための放電試験を記載した一つの刊行物は、水性電解質を用いたポータブル一次電池およびバッテリーのためのANSI C18.1M.パート1−2001−アメリカ国内標準−一般明細と題されており、これは国立電気製造業者協会によって2001年に発行されたものである。その第19頁に記載されたLR6バッテリーのための放電試験は、バッテリーの電気化学的サービス特性を評価するための許容可能な方法として、バッテリー産業において広く受け入れられている。幾つかの試験は、通常は「高速試験」と称される一方、他の試験は「ハイテク」試験と称され、更に他の試験は「低速」試験として知られている。
【0028】
一つの実験において、本発明の幾つかのLR6バッテリーが構築された。該電池の電極、セパレータ、閉鎖アセンブリー、および容器の物理的構成が、図1に開示されている。第一の電極を作製するために使用された処方が、表1に開示されている。EMDは、Kerr−McGeeから購入した。グラファイトは、Timcalによって供給された。硫酸バリウムは、Bario・E・Derivati・S.p.A.から購入した。第二の電極を作製するために使用した処方は、表1、3、4および5に開示されている。この実験電池は次のようにして製造された。カソード材料を一緒に混合して流動性の粉末を形成し、これを容器の中に配置した。図4を参照すると、円形断面、9.52mm(0.375”)の外径(OD)(これは29.92mmの円周に対応する)、および鈍端38を有する固体ロッド形状の器具36を、容器の開口部と同心円的に整列させ、次いで迅速且つ力強くカソード材料の中に挿入し、それによって前記粉末を、4.338cmの高さを有し、且つここではカソードと称される固体の管形状部品へと衝撃モールドする。カソードの合計重量は11.18gである。表1に示したEMDのパーセンテージに基づけば、各電池における二酸化マンガンの量は9.30gである。しかし、EMDは2重量パーセントの水を含有しているので、電池内の電気化学的反応に関与するために利用可能なEMDのグラム数は9.11gであり、これは9.30に0.98を乗算することによって得られたものである。カソードによって定義されるキャビティーは、ラムと称する器具の外径に等しい初期内径を有している。しかし、カソード材料の物理的特性に起因して、キャビティーの内径はモールドラムを引き抜いた直後に僅かに減少する。カソードの内表面は、円形の中心に配置されたキャビティーを定義する。次に、セパレータ紙の第一の矩形ストリップが、第一の電極によって定義されたキャビティーの上に配置され、次いでキャビティーの中に挿入され、それによって該キャビティーの底壁および側壁がライニングされた。セパレータ紙の第二の矩形ストリップが、前記セパレータでライニングされたキャビティーの上に配置された。この第二のストリップは、前記第一のストリップに対して直角に配向された。次いで、第二のストリップの中心が前記キャビティーの中に挿入され、それによって前記セパレータの第一の層の内部に第二のセパレータ層を形成する。前記アノードおよびカソードの間の界面の表面積は12.98cm2であり、これはラムの円周である29.92mmに、カソードの高さである4.338cmを乗算することによって得られる。次いで、第二の電極の量である2,87g/ccの見かけの密度を有する6.38グラムが、セパレータにライニングされたキャビティーの中に配置された。アノードの容積2.22ccが、6.38gを2.87g/ccで除算することによって決定された。各電池における亜鉛の量は、4.36gであった。亜鉛の容積0.61ccが、4.36gを7.13g/ccで除算することによって決定された。亜鉛の容量パーセントである27.48%が、0.61ccを2.22ccで除算することによって決定された。第二の電極に含まれる電解質に加えて、別の0.95 ccの37.0重量%KOH溶液を、セパレータでライニングされたキャビティーの中に配置した。第二の電極が挿入される前に、0.95ccの第一の部分を、セパレータでライニングされたキャビティーの中に注入した。37.0重量%のKOHの残りの部分を、第二の電極が挿入された後に、該セパレータでライニングされたキャビティーの中に注入した。次いで、閉鎖アセンブリーを容器の開放端に固定した。末端カバーおよびラベルを容器の外表面に固定した。
【0029】
本発明の電池は、1.38のA:Cを有しており、これは亜鉛含有電極のアンペア時容量(4.36g×821mAhr/gを乗算することによって3580mAhrを得る)を、二酸化マンガン含有電極のアンペア時容量(9.11gx285mAhr/gを乗算することにより2596mAhrを得る)で除算することによって得られた。
【0030】
次いで、本発明に従って構築された電池は、以下で述べるようにして、三つの別々のサービス試験機上で放電された。同じ実験の一部として、異なる製造業者から得た商業的に入手可能なLRバッテリーについても評価した。図2に示したものは、本発明の構成の電池および商業的に入手可能なLR6電池を含む種々の電池構成のチャートであり、三つの異なる放電試験機におけるカソードの放電効率を示している。ここで使用するカソードの放電効率とは、電池のアンペア時出力を、二酸化マンガンの理論アンペア時入力で除算することによって決定される。二酸化マンガンの入力は、二酸化マンガンのグラム数に、285mAhr/gを乗算することによって計算される。例えば、9.36gの二酸化マンガンを含有する電池は、2.667Ahrの入力を有すると看做されるであろう。同じ電池が放電試験において2.000Ahrの出力を与えるとすれば、二酸化マンガンの放電効率は75%であろう。
【0031】
LR6サイズのバッテリーについての低速試験の一つは、バッテリーを100ミリアンペアの一定の電流で1時間放電させ、次いで23時間停止させることを指定している。この試験は、電池の閉回路電圧が、テーププレーヤのような多くの装置が動作を停止する機能的な終点とみなされる0.9ボルト未満に低下するまで、毎日継続される。図2に示すように、本発明の電池を上記で述べたようにして1日1時間だけ100ミリアンペア試験機上で放電させたときに、二酸化マンガンのアンペア時入力に基づく放電効率は、94.4%〜95.7%であった。対照的に、商業的に入手可能な何れかの電池から得られる最良の個別の放電効率は、92.7%であった。
【0032】
IR6サイズのバッテリーについてのハイテク試験は、該バッテリーを250ミリアンペアの一定の電流で1日当り1時間放電させ、次いで23時間停止させることを指定している。この試験は、電池の閉回路電圧が0.9ボルト未満に低下するまで毎日継続される。図2に示すように、本発明の電池を上記で述べたようにして1日1時間だけ250ミリアンペア試験機上で放電させたときに、二酸化マンガンのアンペア時入力に基づく放電効率は、78.5%〜84.3%であった。試験した5個の電池のうちの4個の効率は、81%よりも大きかった。個別の電池効率のうち、81.0%、82.0%および83.0%は実施可能である。図2におけるデータはまた、商業的に入手可能な最良の放電効率が80.3%であったことをも示している。
【0033】
LR6バッテリーのための低速ないし中速放電試験は、バッテリーを、3.3オームの抵抗器を通して1時間当り4分、1日当り8時間だけ放電させ、次いで16時間停止させることを含んでいる。この試験は、電池の閉回路電圧が0.9ボルト未満に低下するまで毎日継続される。図2に示すように、本発明の電池を3.3オーム試験で放電させたときに、二酸化マンガンのアンペア時入力に基づく放電効率は、83.3%〜84.6%であった。これとは対照的に、四つの競業者の全てから得た一つの最良の電池の放電効率は、77.3%であった。所望であれば、本発明の電池は、78.0%、80.0%または82.0%の放電効率で製造できるであろう。
【0034】
上記で述べたバッテリー試験は、周囲温度が約21℃である環境において行われた。放電試験におけるバッテリーの運転時間は周囲温度が増大するときに増大し、周囲温度が低下するときに減少するであろうから、周囲温度を19℃〜23°に維持することが重要である。運転時間に対する周囲温度変化の影響の範囲は、試験によって変化する。バッテリー製造工業では周知なように、バッテリーが放電されると、発熱化学反応がバッテリー内で生じ、バッテリーの温度を増大させる。高ドレイン試験時には、電池表面における温度は40℃を超えるであろう。結局、電池の温度および周囲温度は実質的に異なる可能性があり、二つの異なる特性と看做されるべきである
【0035】
図3は、異なる重量パーセントのKOHを使用したKOH吸収値を示している。亜鉛のKOH吸収値を決定するために、以下のプロセスを使用した。第一に、5ccのシリンジと、32重量%KOH中に浸漬され且つ前記シリンジの大きな開口端の中への挿入を容易にするように適切に採寸された一つのセパレータ片を準備する;該セパレータ片は、前記シリンジを通して押込むことができ、それによって前記シリンジの反対端における小さい開口部を閉鎖できるようになっている。第二に、前記シリンジ、および吸収した電解質を含有するセパレータを秤量する。第三に、2ミリリットルの32重量%KOH水溶液を前記シリンジの大きな開口端の中に配置すると共に、前記シリンジの反対端にある小さい開口部を通して電解質が流れるのを阻止する。第四に、既知量の粒状亜鉛(例えば5グラム)を注意深く秤量し、前記シリンジの開放端の中に配置する。容器の形状、溶液の容積および亜鉛の容積は、亜鉛粒子の全部が完全にKOH水溶液の表面下に沈むことを保証するように調整されなければならない。第五に、追加の1.5ccの32重量%KOH溶液が容器の中に導入されて、該溶液で亜鉛が完全に覆われるのを保証する。第六に、該シリンジを垂直位置に配向させ、且つ小さい開口部を塞ぐ物体を除去することにより、120分にわたって、KOH溶液をシリンジの一端の小さい開口部を通して排出させる。亜鉛粒子間にトラップされた未吸収溶液の液滴が存在しないことを確認するために、ペーパータオル上に落ちて付着するKOH溶液が観察されなくなるまで、容器を数回ペーパータオル上で軽くタッピングする。第七に、その上に溶液が吸着された亜鉛、シリンジおよびセパレータの合計重量を測定する。亜鉛の表面に吸着された電解質溶液の量は、乾燥亜鉛粒子、湿ったセパレータおよびシリンジの重量を、電解質を吸着した亜鉛および湿ったセパレータを含むシリンジの合計重量から差引くことによって決定される。KOH吸収値は、亜鉛上に吸着されたKOHの重量を、それらの溶液中に配置する前の亜鉛粒子の重量で除算することによって決定される。
【0036】
図3において、曲線42は、本発明の好ましい実施形態において有用なKOH吸着値を表している。曲線44は、商業的に入手可能な亜鉛についてのKOH吸着値を表している。吸着された溶液中のKOHの重量パーセントは30%〜40%で変化したが、本発明の好ましい実施形態において有用な亜鉛により吸着された溶液の量は、少なくとも14%であった。更に、同じサンプルについてのKOH吸着は、少なくとも15%を越えた。これとは対照的に、商業的に入手可能な亜鉛についてのKOH吸着は13%を越えなかった。粒状亜鉛粉末のKOH吸着値は、本発明の好ましい実施形態において有用である亜鉛を同定する際に有用な、幾つかの測定可能な特性のうちの一つと考えられる。
【0037】
上記の説明は、単なる好ましい実施形態についてのものと看做されるものである。当業者および本発明を実施しようとする者には、本発明の変形が思い浮かぶであろう。従って、図面および上記説明に示した実施形態は単なる説明目的のためのものであり、特許請求の範囲によって定義され且つ均等論を含む特許法の原理に従って解釈される本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明のアルカリ電気化学電池の断面図である。
【図2】図2は、本発明の電池および商業的に入手可能な電池の放電効率を示す図である。
【図3】図3は、二つの亜鉛粉末についてのKOH吸収値を示すグラフである。
【図4】図4は、衝撃モールドされたカソードを収容する容器の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学電池であって:
第一の電極、第二の電極、アルカリ電解質およびセパレータを収容する容器を具備し、前記第一の電極はその中にキャビティーを定義すると共に、電気化学的活性材料としての二酸化マンガンを含んでおり、前記第一の電極の電気化学的容量は、二酸化マンガンのグラム数に285mAhr/gを乗算することによって決定され;前記キャビティーの中に配置される第二の電極は、電気化学的活性材料として亜鉛を含んでおり、該第二の電極の電気化学的容量は、亜鉛のグラム数に821mAhr/gを乗算することによって決定され、前記セパレータは、前記第一および第二の電極の界面に配置され、ここでの該界面の面積は12.6cm2〜13.2cm2であり、また前記第一の電極の電気化学的容量に対する前記第二の電極の電気化学的容量の比率は、1.33:1〜1.40:1である電気化学電池。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学電池であって、前記第一の電極の電気化学的容量に対する前記第二の電極の電気化学的容量の比率が、1.34:1である電気化学電池。
【請求項3】
請求項1に記載の電気化学電池であって、前記第一の電極の電気化学的容量に対する前記第二の電極の電気化学的容量の比率が、1.36:1である電気化学電池。
【請求項4】
請求項1に記載の電気化学電池であって、前記第一の電極の電気化学的容量に対する前記第二の電極の電気化学的容量の比率が、1.38:1である電気化学電池。
【請求項5】
請求項1に記載の電気化学電池であって、前記容器が円筒形状である電気化学電池。
【請求項6】
請求項5に記載の電気化学電池であって、前記界面が管形状である電気化学電池。
【請求項7】
請求項5に記載の電気化学電池であって、前記キャビティーは少なくとも9.52mmの初期内径を有し、また前記容器の外径は13.89mm〜14.00mmである電気化学電池。
【請求項8】
請求項7に記載の電気化学電池であって、前記キャビティーが管形状のキャビティーを定義している電気化学電池。
【請求項9】
請求項8に記載の電気化学電池であって、前記第一の電極が一つのキャビティーを定義している電気化学電池。
【請求項10】
請求項1に記載の電気化学電池であって、前記第一の電極が、衝撃モールドによって形成される電気化学電池。
【請求項11】
請求項1に記載の電気化学電池であって、前記亜鉛が粒状亜鉛を含んでなる電気化学電池。
【請求項12】
請求項11に記載の電気化学電池であって、前記亜鉛が粒状亜鉛からなる電気化学電池。
【請求項13】
請求項12に記載の電気化学電池であって、前記粒状亜鉛が、400cm2/gを越えるBET比表面積、少なくとも14%のKOH吸収値、および130ミクロン未満のD50を有している電気化学電池。
【請求項14】
請求項12に記載の電気化学電池であって、前記粒状亜鉛は2.80g/ccよりも大きく且つ 3.65g/ccよりも小さいタップ密度を有し、前記第二の電極は既知の体積を有し、前記粒状亜鉛が、前記第二の電極の容積の28.0容量パーセント未満を占めている電気化学電池。
【請求項15】
請求項1に記載の電気化学電池であって、前記界面の面積が12.75cm2〜13.10cm2である電気化学電池。
【請求項16】
請求項1に記載の電気化学電池であって、前記界面の面積が12.90cm2〜13.05cm2である電気化学電池。
【請求項17】
LR6サイズの電気化学電池であって:
その中にキャビティーを定義する第一の電極、50ppm未満の水銀を含有し且つ前記第一の電極に定義されたキャビティー内に配置された第二の電極、これら電極の間に配置されたセパレータ、並びに該セパレータおよび両電極に接触するアルカリ電解質を収容する円筒形容器を具備し、
前記第一の電極は、電気化学的活性材料として二酸化マンガンを含み、該第一の電極は二酸化マンガンのグラム数に285mAhr/gを乗算することによって決定される電気化学的容量を有し、
前記第二の電極は、電気化学的活性材料として亜鉛を含み、該第二の電極の電気化学的容量は、亜鉛のグラム数に821mAhr/gを乗算することによって決定され、
前記第一の電極の電気化学的容量に対する前記第二の電極の電気化学的容量の比は、1.33:1〜1.40:1であり、
前記電池は、該電池の閉じた回路電圧が0.9ボルト未満に低下するまで、250ミリアンペアの一定電流で1日当り1時間放電されたときに、前記第一の電極の電気化学的容量に基づいて81.0%の最小放電効率を有する電気化学電池。
【請求項18】
請求項17に記載の電気化学電池であって、前記最小放電効率が少なくとも82%である電気化学電池。
【請求項19】
請求項17に記載の電気化学電池であって、前記最小放電効率が少なくとも83%である電気化学電池。
【請求項20】
請求項17に記載の電気化学電池であって、前記電池の電圧が0.90ボルト未満に低下するまで、3.3オームの抵抗器を通して1時間当り4分、1日当り8時間放電されたときには、前記第一の電極の電気化学容量に基づいて少なくとも78.0%の最小放電効率を有する電気化学電池。
【請求項21】
請求項20に記載の電気化学電池であって、前記3.3オーム試験での最小放電効率が少なくとも80.0%である電気化学電池。
【請求項22】
請求項20に記載の電気化学電池であって、前記3.3オーム試験での最小放電効率が少なくとも82.0%である電気化学電池。
【請求項23】
LR6サイズの電気化学電池であって:
その中にキャビティーを定義する第一の電極、50ppm未満の水銀を含有し且つ前記第一の電極に定義されたキャビティー内に配置された第二の電極、これら電極の間に配置されたセパレータ、並びに該セパレータおよび両電極に接触するアルカリ電解質を収容する円筒形容器を具備し、
前記第一の電極は、電気化学的活性材料として二酸化マンガンを含み、該第一の電極は二酸化マンガンのグラム数に285mAhr/gを乗算することによって決定される電気化学的容量を有し、
前記第二の電極は、電気化学的活性材料として亜鉛を含み、該第二の電極の電気化学的容量は、亜鉛のグラム数に821mAhr/gを乗算することによって決定され、
前記第一の電極の電気化学的容量に対する前記第二の電極の電気化学的容量の比は、1.33:1〜1.40:1であり、
前記電池は、該電池の閉じた回路電圧が0.9ボルト未満に低下するまで、100ミリアンペアの速度で1日当り1時間放電されたときに、第一の電極の電気化学的容量に基づいて93.0%の最小放電効率を有する電気化学電池。
【請求項24】
請求項23に記載の電気化学電池であって、前記電池の放電効率が少なくとも94.4%である電気化学電池。
【請求項25】
請求項23に記載の電気化学電池であって、前記電池の放電効率が少なくとも95.7%である電気化学電池。
【請求項26】
請求項23に記載の電気化学電池であって、前記電池は、該電池の閉じた回路電圧が0.9ボルト未満に低下するまで、250ミリアンペアの一定の電流で1日当り1時間放電させたときに、前記第一の電極の電気化学的容量に基づいて81.0%の最小放電効率を有する電気化学電池。
【請求項27】
請求項26に記載の電気化学電池であって、前記電池の放電効率が少なくとも82.0%である電気化学電池。
【請求項28】
請求項26に記載の電気化学電池であって、前記電池の放電効率が少なくとも83.0%である電気化学電池。
【請求項29】
電気化学電池であって:
a)第一の電極を収容する円筒形容器であって、前記電極はその中にキャビティーを定義し、該キャビティーは、前記第一の電極を管形状に衝撃モールドする円筒形の器具を利用することによって形成され、前記器具は少なくとも29.12mmの円周を有し、前記容器は13.89mm〜14.00mmの外径を有する円筒形容器と;
b)前記キャビティーをライニングし、且つ前記第一の電極に接触するセパレータと;
c)亜鉛粉末を含んでなり、且つ前記セパレータでライニングされたキャビティー内に配置された第二の電極であって、前記亜鉛粉末は2.80g/ccよりも大きく且つ 3.65g/ccよりも小さいタップ密度、400cm2/gを越えるBET比表面積、少なくとも14%のKOH吸収値、および130ミクロン未満のD50を有している第二の電極と;
d)前記容器内に配置され、且つ前記電極および前記セパレータに接触した或る量のアルカリ電解質と
を具備してなる電気化学電池。
【請求項30】
請求項29に記載の電気化学電池であって、前記円周が少なくとも29.53mmである電気化学電池。
【請求項31】
請求項29に記載の電気化学電池であって、前記円周が少なくとも29.92mmである電気化学電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−515168(P2008−515168A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534770(P2007−534770)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/035069
【国際公開番号】WO2006/039425
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(397043422)エバレデイ バツテリ カンパニー インコーポレーテツド (123)
【Fターム(参考)】