説明

アルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法、該精製品を含有する化粧料原料および化粧料

【課題】実質的に無臭化されており、油剤として使用した場合であっても、他の化粧料原料成分と相溶性に優れるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を製造する方法を提供する。また、特有の臭気について実質的に無臭化されており、他の化粧料配合成分との溶解性、混合性の良い化粧料原料および該精製品を含有する化粧料を提供する。
【解決手段】ヒドロシリル基含有ポリジメチルシロキサンと炭素原子数2〜30のα−オレフィンとをヒドロシリル化反応させることにより、アルキル変性ポリジメチルシロキサンを合成する工程〔A〕および前記工程〔A〕によって得られた粗製品を、水素化触媒の存在下、(c)沸点が70℃以上であり、活性水素原子を実質的に含有しない有機溶媒中で水素添加反応による無臭化処理を行う工程〔B〕を有することを特徴とするアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法および該精製品を含有する化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法および化粧料に関し、更に詳しくは、アルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品に対して、活性水素原子を実質的に含有しない有機溶媒中で水素添加反応による無臭化処理を行う工程を有するアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法、この製造方法により得られる無臭化された精製品を含有する化粧料原料および化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素原子数2〜30のアルキル基によって変性されたポリジメチルシロキサン(アルキル変性ポリジメチルシロキサン)は、シリコーンとしての特性およびアルカンとしての特性を兼ね備えており、潤滑性、保湿性(水蒸気閉塞性)、吸着残留性などの点で優れている。
【0003】
アルキル変性ポリジメチルシロキサンのうち、特に、炭素原子数が4〜18程度のアルキル基により変性された液状のアルキル変性ポリジメチルシロキサンは、長鎖アルキル基により変性されたワックス状のアルキル変性ポリジメチルシロキサンと比較して取扱性に優れ、乳化系の化粧料を構成する油剤として用いる場合の乳化性および乳化物の安定性に優れ、良好な塗布感と撥水性を発揮するものであり、これにより、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、サンスクリーン、保湿クリームなどに幅広く利用されている(例えば特許文献1〜特許文献3参照)。
【0004】
一方、アルキル変性ポリジメチルシロキサンは、一般にヒドロシリル基(Si−H基)含有ポリジメチルシロキサンと、α−オレフィンとを、白金触媒の存在下にヒドロシリル化反応(付加反応)させる方法により合成されるが、かかるアルキル変性ポリジメチルシロキサンは、特有の臭気(不快な臭い)がある。かかる臭気の原因の1つとして、合成の際に過剰に使用したα−オレフィンが反応生成物(粗製品)中に残留し、これが酸化されることによって臭気発生物質となることが考えられる。そこで、特許文献3には、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒などの有機溶媒中でアルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品に対して、水素化触媒の存在下、水素添加反応による無臭化処理を行うことにより、アルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を得るための製造方法および該精製品を含有する化粧料が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記方法により得られたアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品は、経時的な特有の臭気(不快な臭い)の発生がある程度抑制されているが、香りが品質・使用感に大きく影響する化粧品類においては、更なる臭気の改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−12466号公報
【特許文献2】特開2003−48813号公報
【特許文献3】特開2005−232235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、実質的に無臭化されたアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明はアルキル変性ポリジメチルシロキサンに起因する特有の臭気を感じさせない化粧料原料および該精製品を含有してなり、臭気の問題が改善された化粧料を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、発明者らは、本願発明が解決すべき新たな技術的課題を発見した。特許文献3等に記載の方法により得られたアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品は、化粧料原料として使用した場合、他の化粧料原料、特に新油性化粧料原料成分との相溶性が不十分となる。本発明者らは、かかるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を化粧料、特に該アルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を油剤とする油中水型エマルジョン化粧料に用いた場合、他の新油性化粧料原料成分と相溶性、詳細には他成分との溶解性および均一混合性が不十分であるため、化粧料が白濁して透明性が低下し、特に、美観が求められる化粧品類に用いることができないという問題を見出した。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に加え、油剤として使用した場合であっても、他の化粧料原料成分と相溶性に優れ、均一で透明であり、保存安定性に優れた化粧料を製造することができるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品、該精製品を含有する化粧料原料および化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、炭素原子数2〜30のアルキル基を有するアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法であって、ヒドロシリル基含有ポリジメチルシロキサンと炭素原子数2〜30のα−オレフィンとをヒドロシリル化反応させることにより、アルキル変性ポリジメチルシロキサンを合成する工程〔A〕および前記工程〔A〕によって得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品を、水素化触媒の存在下、(c)25℃、1気圧における沸点が70℃以上であり、活性水素原子を実質的に含有しない有機溶媒中で水素添加反応による無臭化処理を行う工程〔B〕を有することを特徴とするアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法により達成される。また、本発明の目的は、上記の製造方法により得られたアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を含有する化粧料により達成される。
【0011】
特に、本発明の目的は、炭素原子数2〜30のアルキル基を有するアルキル変性トリシロキサン精製品の製造方法であって、1,1,1,3,5,5,5−へプタメチルトリシロキサンと、炭素数2〜30のα−オレフィンとをヒドロシリル化反応させることにより、下記一般式(3)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンを合成する工程〔A1〕および前記工程〔A1〕によって得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品を、ラネーニッケル触媒からなる水素化触媒の存在下、(c1)炭素数7〜9のアルキルシクロヘキサン中で水素添加反応による無臭化処理を行う工程〔B1〕を有することを特徴とする製造方法により、より好適に達成することができる。同様に、本発明の目的は、上記の製造方法により得られたアルキル変性トリシロキサン精製品を含有する化粧料により達成される。
【0012】
すなわち、上記目的は、
「[1] 下記一般式(1)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法であって、
一般式(1):
【化1】

(式中、Rは−C−C2p+1(pは0〜28の数)で示される炭素原子数2〜30のアルキル基であり、Rはメチル基またはRで示される基である。mは0〜300の範囲の数であり、nは0〜50の範囲の数である。但し、n=0のとき、Rの少なくとも一方はRで示される基である。)

(a)下記一般式(2)で示されるヒドロシリル基含有ポリジメチルシロキサンと、
一般式(2):
【化2】

(式中、Rはメチル基または水素原子であり、m、nは前記同様の範囲の数である。但し、n=0のとき、Rの少なくとも一方は水素原子である。)
(b)一般式:CH=CH−C2p+1(pは0〜28の数)で示される炭素原子数2〜30のα−オレフィンとをヒドロシリル化反応させることにより、上記一般式(1)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンを合成する工程〔A〕;および
前記工程〔A〕によって得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品を、水素化触媒の存在下、(c)25℃、1気圧における沸点が70℃以上であり、活性水素原子を実質的に含有しない有機溶媒中で水素添加反応による無臭化処理を行う工程〔B〕
を有することを特徴とするアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法。
[2] 工程〔B〕〕における水素化触媒がラネーニッケル触媒であり、有機溶媒が、(c1)炭素数7〜9のアルキルシクロヘキサンである、[1]に記載のアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法。
[3] 工程〔A〕が、
(a1)1,1,1,3,5,5,5−へプタメチルトリシロキサンと、
(b)CH=CH−C2p+1(pは0〜28の数)で示される炭素数2〜30のα−オレフィンとをヒドロシリル化反応させることにより、下記一般式(3)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンを合成する工程〔A1〕であり、
工程〔B〕が、前記工程〔A1〕によって得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品を、水素化触媒の存在下、(c1)炭素数7〜9のアルキルシクロヘキサン中で水素添加反応による無臭化処理を行う工程〔B1〕であることを特徴とする、[1]または[2]に記載のアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法。
一般式(3):
【化3】

(式中、Rは前記同様の基である。)
[4] 工程〔B〕の前工程または後工程として、アルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品または水素添加反応の生成物に対して、減圧下に、窒素ガスを接触させて軽質物を留去するストリッピング工程を有する[1]〜[3]のいずれか1項に記載のアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法。
[5] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を含有する化粧料原料。
[6] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を含有する化粧料。
[7] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品および1種類以上の新油性化粧料原料を含有する化粧料。
[8] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品および有機紫外線吸収剤を含有する化粧料。
[9] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を油剤とする油中水型エマルジョン化粧料である、[6]〜[8]のいずれか1項に記載の化粧料。」により達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法により、実質的に無臭化されており、油剤として使用した場合であっても、他の化粧料原料成分と相溶性に優れるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を製造する方法を提供することができる。また、本発明によりアルキル変性ポリジメチルシロキサンに起因する特有の臭気を感じさせず、他の化粧料配合成分との溶解性、混合性、配合安定性に優れた化粧料原料および該アルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を含有する化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法は、
(a)下記一般式(2)で示されるヒドロシリル基含有ポリジメチルシロキサンと、
一般式(2):
【化4】

(b)一般式:CH=CH−C2p+1(pは0〜28の数)で示される炭素原子数2〜30のα−オレフィンとをヒドロシリル化反応させることにより、上記一般式(1)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンを合成する工程〔A〕;および
前記工程〔A〕によって得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品を、水素化触媒の存在下、(c)25℃、1気圧における沸点が70℃以上であり、活性水素原子を実質的に含有しない有機溶媒中で水素添加反応による無臭化処理を行う工程〔B〕
を有することを特徴とする。
【0015】
<工程〔A〕>
工程〔A〕は、上記一般式(2)で示されるヒドロシリル基含有ポリジメチルシロキサンと、炭素数2〜30のα−オレフィンとをヒドロシリル化反応させることにより、上記一般式(1)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品を合成する工程である。
【0016】
上記の(a)成分は、ヒドロシリル基含有ポリジメチルシロキサンであり、後述する(b)成分の末端炭素−炭素二重結合が珪素結合水素原子(Si−H)とヒドロシリル化反応することにより、アルキル変性ポリジメチルシロキサンが形成される。上式中、Rはメチル基または水素原子であり、n=0のとき、Rの少なくとも一方は水素原子である。すなわち、(a)成分は必ず1以上の珪素結合水素原子を分子中に含む。また、mは0〜300の範囲の数であり、0〜50の範囲の数であることが好ましく、0〜6の範囲の数であることが特に好ましい。nは0〜50の範囲の数であり、1〜20の範囲の数であることが好ましく、1〜3の範囲の数であることが特に好ましい。
【0017】
本発明の目的を達成する上でも最も好適には、一般式(2)において、m=0かつn=1の場合である。この場合、(a)成分は(a1)1,1,1,3,5,5,5−へプタメチルトリシロキサンである。
【0018】
上記の(b)成分は、一般式:CH=CH−C2p+1(pは0〜28の数)で示される炭素原子数2〜30のα−オレフィンであり、本発明に係るアルキル変性ポリジメチルシロキサンに、ポリジメチルシロキサン主鎖としての特性に加えて、アルカンとしての特性を付与する成分であり、ヒドロシリル化反応により(a)成分に導入される。該α−オレフィンは、末端に炭素−炭素二重結合を有する限り、直鎖状、分岐鎖状または一部に環状構造を有する鎖状のいずれの構造であってもよいが、油剤として使用する場合の乳化性および乳化物の安定性、塗布感および撥水性などの見地から、上記のpが1〜28であるα−オレフィンが好ましく、pが2〜28であることがより好ましい。また、一般式:CH=CH−(CH−CH(qは1〜27の数)である、直鎖状のα−オレフィンであることが好ましい。また、一部の水素基がフッ素で置換されたフッ化アルキル構造を有するものでも良い。
【0019】
上記の(b)成分であるα−オレフィンは、20℃において液状を呈する中鎖アルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を得ようとする場合、炭素原子数が4〜18(すなわち、上記のpが2〜16)であることが好ましく、炭素原子数が6〜12(すなわち、上記のpが4〜14)であることがさらに好ましく、炭素原子数が6〜10(すなわち、上記のpが4〜8)であることが特に好ましい。また、当該α−オレフィンの炭素原子数が8であることが最も好ましく、CH=CH−(CH−CHで表される1−オクテンが最も好適である。該α−オレフィンによれば、油剤として使用する場合の乳化性および乳化物の安定性、塗布感および撥水性などが特に優れたアルキル変性ポリジメチルシロキサンを合成することができる。
【0020】
アルキル変性ポリジメチルシロキサンを合成するためのヒドロシリル化反応は、溶媒の存在下または不存在下、公知の方法に従って行うことができる。ここに、反応溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ジオキサン、THFなどのエーテル系溶剤を挙げることができる。また、ヒドロシリル化反応を行う工程〔A〕の後、溶媒交換を行わずに水素添加反応による無臭化処理を行う工程〔B〕を行う場合には、後述する(c)25℃、1気圧における沸点が70℃以上であり、活性水素原子を実質的に含有しない有機溶媒中で反応を行うことが必要である。
【0021】
ヒドロシリル化反応は、触媒の不存在下で行ってもよいが、触媒の存在下に行うことにより低温で短時間で反応が進行するので好ましい。かかる触媒としては、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムなどの化合物を挙げることができ、その触媒活性が高いことから白金化合物が特に有効である。白金化合物の例としては、塩化白金酸;金属白金;アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの坦体に金属白金を坦持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフイン錯体、白金−ホスファイト錯体、白金アルコラート触媒などの白金錯体を挙げることができる。触媒の使用量は、白金触媒を使用する場合、金属白金として0.5〜100ppm程度である。
【0022】
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、通常50〜150℃であり、反応時間は、通常10分間〜24時間、好ましくは1〜10時間である。ヒドロシリル化反応により、下記一般式(1)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンが合成され、その粗製品が得られる。
【0023】
一般式(1):
【化5】

【0024】
式中、Rは−C−C2p+1(pは0〜28の数)で示される炭素原子数2〜30のアルキル基(炭素原子数2〜30のα−オレフィンに由来する基)であり、好適なpの値の範囲は、前記と同様である。Rはメチル基またはRで示される基である。mおよびnは、上記一般式(2)の定義と同じである。但し、n=0のとき、Rの少なくとも一方はRで示される基である。)
【0025】
化粧品原料であるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの最も好適な例として、下記一般式(3)で示されるトリシロキサンを主鎖とする変性ポリジメチルシロキサンを挙げることができる。一般式(3)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンは、1,1,1,3,5,5,5−へプタメチルトリシロキサン(好適なヒドロシリル基含有ポリジメチルシロキサン)と、炭素数2〜30のα−オレフィンとをヒドロシリル化反応させることにより合成される。
【0026】
一般式(3):
【化6】

(式中、Rは前記同様の基である。)
【0027】
上記一般式(3)で示される液状アルキル変性ポリジメチルシロキサンの具体例としては、下記式(I)〜(VII) で示される化合物を例示することができる。
【化7】

【0028】
ヒドロシリル化反応においては、副反応として、α−オレフィン中の二重結合の内部転位反応が起こり、副生成物として、ヒドロシリル基と付加反応しない内部転位オレフィンが生成する。
一方、ヒドロシリル化反応によって得られた製品中に、反応性の高いヒドロシリル基が残留していると、当該製品が不安定なものとなり不都合である。従って、通常は、ヒドロシリル基に対して不飽和基が過剰に存在するように、(a)成分であるヒドロシリル基含有ポリジメチルシロキサンおよび(b)成分であるα−オレフィンの仕込量が調整される(α−オレフィンが過剰に供給される)。このため、ヒドロシリル化反応により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品中には、未反応のα−オレフィンおよび内部転位オレフィンが不可避的に含有されることになる。
【0029】
本発明の製造方法で使用するα−オレフィンとして、その炭素数が4〜18と比較的小さい(沸点が比較的低い)ものを選択することにより、未反応のα−オレフィンを比較的容易に除去することが可能である。また、本発明の製造方法で使用される(a)成分として、一般式(1)において、mが0〜6の範囲の数であり、nが1〜3の範囲の数である(a)成分を選択することにより、該(a)成分は比較的低分子量で揮発性が高いので、これを過剰に仕込んでヒドロシリル化反応させた後、未反応のヒドロシリル基含有ポリジメチルシロキサンおよび内部転位オレフィンを含む軽質分を除去することもできる。ここに、未反応のα−オレフィンまたはヒドロシリル基含有ポリジメチルシロキサン、並びに内部転位オレフィンを含む軽質物の除去方法(ストリッピング工程)については後述する。
【0030】
<工程〔B〕>
工程〔B〕は、工程〔A〕によって得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品を、水素化触媒の存在下、(c)25℃、1気圧における沸点が70℃以上であり、活性水素原子を実質的に含有しない有機溶媒中で水素添加反応による無臭化処理を行う工程である。
【0031】
水素添加反応による無臭化処理は、水素化触媒の存在下に行われる。
ここに、水素化触媒としては、一般的な白金系触媒及びパラジウム系触媒等の貴金属系触媒、並びにニッケル系触媒を用いることができる。より具体的には、ニッケル、バラジウム、白金、ロジウム、コバルトなどの単体並びに白金−パラジウム、ニッケル−銅−クロム、ニッケル−銅−亜鉛、ニッケル−夕ングステン及びニッケル−モリブデン等の複数の金属を組み合わせた触媒を例示することができる。任意に使用される触媒担体としては、活性炭、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、ゼオライト等を挙げることができ、金属の担持量としては、貴金属触媒系では、0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、ニッケル系触媒では、20〜70質量%、好ましくは40〜60質量%である。また、合成工程(ヒドロシリル化反応)で使用した白金触媒をそのまま使用することもできる。これらの水素化触媒は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
本願発明の工程〔B〕において、好適な水素化触媒は、ニッケル系触媒であり、ニッケル/珪藻土またはラネーニッケル触媒であることが好ましい。特に、水素添加による無臭化の促進の観点から、ラネーニッケル触媒の使用が最も好ましい。
【0033】
本願発明は、特に工程〔B〕における水素添加反応を、(c)25℃、1気圧における沸点が70℃以上であり、活性水素原子を実質的に含有しない有機溶媒中で行うことを特徴とする。ここで、「活性水素原子」とは、前記の(a)成分の残余のヒドロシリル基との反応性を有する水素原子であり、具体的には、水酸基(−OH)またはカルボキシル基(−COOH)に含まれる酸素に結合した水素原子を意味する。本願発明の(c)成分は、活性水素原子を実質的に含有しない有機溶媒であり、(a)成分の残余のヒドロシリル基との反応性が抑制されており、精製後のアルキル変性ポリジメチルシロキサンと他の化粧料原料成分との相溶性が良好であるという利点がある。
【0034】
また、(c)成分である有機溶媒は、25℃、1気圧における沸点が70℃以上であり、特にラネーニッケル触媒等の水素添加反応における引火を抑制することができ、その取り扱いが比較的容易であるという利点がある。一方、水素添加反応後、減圧下において、窒素ガスを接触させて軽質物を留去するストリッピング工程において(c)成分である有機溶媒を容易に除去できることから、沸点が70℃〜230℃の有機溶媒が好ましく、沸点が70℃〜100℃の有機溶媒の使用が特に好ましい。
【0035】
かかる(c)成分は、具体的には、1−ヘプタン等の炭素原子数7〜12のアルカン類; シクロヘキサン等の炭素原子数6〜10のシクロアルカン類; メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,シクロヘキサノン等の炭素原子数4〜10のケトン類; 酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル類から選択される1種類以上の有機溶媒である。これらの有機溶媒を使用することにより、水素添加反応により得られたアルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品は実質的に無臭化され、エーテル様の臭気をほぼ全く感じさせないという利点がある。
【0036】
本願発明の(c)成分は好適には炭素原子数6〜10のシクロアルカン類であり、特に、炭素原子数7〜9のアルキルシクロヘキサン系溶剤が最も好適に用いることができる。特に、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサンからなる群から選択される1種以上のアルキルシクロヘキサン系溶剤中において水素添加反応を行うことにより、実質的に無臭化されており、油剤として使用した場合であっても、他の化粧料原料成分と相溶性に優れるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を容易かつ大規模に製造することができる。
【0037】
水素添加反応は、常圧または加圧下で行うことができる。現実的には、水素加圧下(水素圧=0.1〜20MPa(約1〜200kg/cm )で行う。反応温度としては、通常0〜200℃とされ、反応時間の短縮の観点から50〜170℃であることが好ましい。
【0038】
水素添加反応は、回分式および連続式の何れの方式で行ってもよい。回分式で行う場合における反応時間は、触媒量および反応温度などによっても異なるが、概ね1〜10時間の範囲で行う。
回分式で行う場合、水素添加反応の終点は、水素圧の減少が殆ど観測されなくなった時点から、さらに1〜2時間反応させた時点とすることができる。なお、反応途中で水素圧が減少した場合、水素ガスを再び導入し水素圧を高く保持することが反応時間短縮の観点から好ましい。
【0039】
水素添加反応終了後、窒素加圧下に、濾紙、けい藻土または活性炭を使用して、水素添加反応触媒(反応系に存在する場合にはヒドロシリル化反応触媒)を分離除去する。
【0040】
<ストリッピング工程>
本発明の製造方法においては、工程〔B〕の前工程または後工程として、アルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品または水素添加物に対して、減圧下に窒素ガスを接触させて軽質物を留去するストリッピング工程を行うことが好ましい。
【0041】
ここに、ストリッピング工程によって留去される「軽質物」には、ヒドロシリル化反応(工程〔A〕)または水素添加反応(工程〔B〕)を行うに使用した反応溶媒のほか、工程〔A〕において、過剰に使用されて反応生成物中に残留している未反応のα−オレフィンまたはヒドロシリル基含有ポリジメチルシロキサン、更に、副生成物である内部転位オレフィン、オレフィンの水素化物などが含まれる。
【0042】
ストリッピング工程(軽質物の留去)は、工程〔B〕の前工程として、アルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品に対して実施してもよいし、工程〔B〕の後工程として、アルキル変性ポリジメチルシロキサンの水素添加反応の生成物に対して実施してもよい。また、工程〔B〕の前工程および後工程としてそれぞれ実施することもできる。
【0043】
軽質物の留去操作の一例を示せば、軽質物が含まれている粗製品または水素添加物を、還流冷却管、窒素挿入口などを備えたフラスコに仕込み、窒素ガスを供給しながら内部を減圧して昇温し、圧力と温度を一定に保持することにより軽質物を留去させる。ここに減圧条件としては、0.1〜10.0KPaとされ、加熱温度としては50〜170℃とされ、処理時間としては10分間〜24時間とされる。
【0044】
<アルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品>
以上の工程〔A〕および工程〔B〕、並びに必要に応じて実施されるストリッピング工程を有する本発明の製造方法により、上記一般式(2)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの精製品が得られる。
【0045】
本発明の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品は、工程〔B〕において水素添加反応による無臭化処理が施されていることにより、この精製品は、特有の臭気(不快な臭い)を感じさせず、実質的に無臭のものである。さらに、工程〔B〕において(c)25℃、1気圧における沸点が70℃以上であり、活性水素原子を実質的に含有しない有機溶媒中で水素添加反応が行われているため、他の化粧料原料、特に新油性化粧料原料との相溶性に優れ、均一な混合物を形成することができる。これにより、本発明の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品は、各種化粧料の原料として好適に配合することができる。
【0046】
また、本発明の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品は、良好な乳化状態を形成することができ、形成された乳化状態(乳化物)は、広い温度範囲(特に10℃以下の低温環境下)において経時的に安定である。また、この乳化物は、みずみずしく、さっぱりとした使用感を与えるとともに、塗布時には十分な伸びがあって均一な被膜を形成することができる。そして、形成される被膜は良好な撥水性を示すので、これを含有する化粧料は、化粧効果の持続性に優れたものとなる。
【0047】
本発明の製造方法により得られる精製品のうち、上記一般式(3)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの精製品は、化粧料の原料として特に好適である。特に、該アルキル変性ポリジメチルシロキサンの精製品は、化粧料原料である油剤として好適であり、新油性化粧料原料(特には有機紫外線吸収剤)と相溶性にすぐれるため、該精製品を油剤(油性成分)とする油中水型エマルジョン化粧料として好適に使用することができる。
【0048】
<化粧料>
本発明の化粧料は、本発明の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を含有する点に特徴を有する。かかる化粧料は、前記の特許文献3(特開2005−232235号公報)と同様の化粧料および該特許文献3に記載の化粧料原料成分と同様の成分との組み合わせ及び用途を例示することができる。
【0049】
(C1)本発明の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を含有する油中水型エマルジョン化粧料としては、
(C2)本発明の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を含む油剤0. 1〜95質量%、
HLBの値が7以下の界面活性剤0.1〜25質量%および
水4.9〜95質量%を含有するもの(以下、「油中水型エマルジョン化粧料」ともいう。)を挙げることができる。
【0050】
(C1)成分について:
本発明の油中水型エマルジョン化粧料を構成する(C1)成分は、本発明の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を必須成分とし、他の油剤を任意成分とする油性成分である。
【0051】
アルキル変性シリコーン精製品とともに(C1)成分を構成する「他の油剤」としては、デカメチルシクロペンタシロキサン等の公知の揮発性シリコーン;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、1,3,3,5−テトラメチル−1,1,5,5−テトラフェニルトリシロキサンおよび1,3,5−トリメチル−1,1,3,5,5−ペンタフェニルトリシロキサン等の鎖状シリコーンを挙げることができる。
【0052】
(C1)成分を構成する「他の油剤」として、環状シリコーンおよび鎖状シリコーン以外のシリコーン油、液状イソパラフィン系炭化水素、エステル系炭化水素、パラフィン系炭化水素、スクワラン、ラノリン誘導体、高級アルコール、アボガド油、パーム油、牛脂、ホホバ油、ポリアルキレングリコールポリエーテルおよびそのカルボン酸オリゴエステル化合物、テルペン系炭化水素油などを挙げることができる。
【0053】
(C2)成分について:
本発明の油中水型エマルジョン化粧料の(C2)成分として含有される界面活性剤は、「HLB=曇数A×0.89+1.11」により定義されるHLBの値が7以下のものである。HLBの値が7を超える界面活性剤では、親水性が高過ぎるために、安定な油中水型エマルジョン化粧料を調製することができず好ましくない。
【0054】
(C2)成分を構成するHLBの値が7以下の界面活性剤としては、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート等のグリセリン脂肪酸エステル類;POE(5)硬化ヒマシ油、POE(7.5)硬化ヒマシ油、POE(10)硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせることにより、(C2)成分として使用することができる。
【0055】
(C2)成分として、ポリエーテル変性シリコーンからなるHLBの値が7以下の界面活性剤が特に好適に使用することができる。
【0056】
本発明の油中水型エマルジョン化粧料に含有される水は、主として内相(水相)を構成する成分であり、精製水などを好適に使用することができる。なお、水の一部が外相(油相)に存在していてもよい。
【0057】
本発明の化粧料には、有機変性粘土鉱物が含有されていてもよい。かかる有機変性粘土鉱物としては、特に限定されるものでなく、一般に化粧品等において使用される公知の有機変性粘土鉱物を使用することができる。中でも、水膨潤性粘土鉱物を、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理したカチオン変性粘土鉱物が好適に用いられる。
【0058】
本発明の化粧料には、油相として、油剤である(C1)成分および有機変性粘土鉱物(任意成分)のほか、本発明の効果を損なわない範囲で任意に添加成分を配合することができる。かかる添加成分としては、例えば通常、化粧品、医薬部外品等に用いられる成分として、油溶性高分子、粉末、高分子顆粒等を配合することができる。特に、本願発明のアルキル変性シリコーン精製品は、(C3)親油性化粧品原料との相溶性に優れるため、かかる成分と共に水中に均一に乳化されており、経日で、該成分の化粧料からの分離等を生じないという利点を有する。
【0059】
(C3)親油性化粧品原料は、疎水性であり、本願発明のアルキル変性シリコーン精製品に対する相溶性または分散性に優れた化粧品原料である。かかる成分は、室温において、水に対して全く溶解しないか、水100gに対する該成分の溶解度が1wt%未満であるような親油性化粧品原料である。
【0060】
具体的には、(C3)成分として、紫外線防御剤、室温でガム状を呈するシリコーン、シリコーン樹脂、シリコーンエラストマー粉末、生理活性成分、香料および色素からなる群から選択される1種類以上の親油性化粧品原料が例示される。特に、該(C3)成分は紫外線防御剤であることが特に好ましい。
【0061】
紫外線防御剤には、無機系の紫外線防御剤と有機系の紫外線防御剤がある。本発明の化粧料が日焼け止め化粧料であれば、成分(C3)は、少なくとも1種の有機系の紫外線防御剤を含有する親油性化粧品原料であることが好ましく、UV−Aに対応した紫外線防御成分とUV−Bに対応した紫外線防御成分を併用することがさらに好ましい。
【0062】
無機紫外線防御剤は、無機系の粉体顔料、金属粉末顔料などを紫外線分散剤として配合するものであっても良く、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、低次酸化チタン、鉄ドーピング酸化チタンなどの金属酸化物、水酸化鉄などの金属水酸化物、板状酸化鉄、アルミニウムフレークなどの金属フレーク類、炭化珪素などのセラミック類が挙げられる。
【0063】
有機紫外線防御剤は親油性の紫外線防御成分であり、4-(2-β-グルコピラノシロキシ)プロポキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2、2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−N−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル(別名;パラメトキシケイ皮酸オクチル)、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、2,5−ジイソプロピルケイ皮酸メチル、2,4,6−トリス[4−(2−エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]−1,3,5−トリアジン、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、p−メトキシハイドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩等のケイ皮酸系;2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン等のベンゾイルメタン系;2―シアノ―3,3―ジフェニルプロパ―2―エン酸2―エチルヘキシルエステル(別名;オクトクリレン)、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルへキシル、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオン、シノキサート、メチル−O−アミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、3−(4−メチルベンジリデン)カンフル、オクチルトリアゾン、4−(3,4−ジメトキシフェニルメチレン)−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、これらの高分子誘導体、及びシラン誘導体が例示される。
【0064】
生理活性成分は、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与える物質であって、親油性であるものが例示される。例えば、抗炎症剤、老化防止剤、ひきしめ剤、発毛剤、育毛剤、保湿剤、血行促進剤、乾燥剤、冷感剤、温感剤、ビタミン類、アミノ酸、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、酵素成分等であって親油性であるものが挙げられる。その中でも、天然系の植物抽出成分、海藻抽出成分、生薬成分であって、親油性であるものが特に好ましい。
【0065】
香料は、親油性の香料であれば特に限定されるものではなく、種々の植物の花、種子、葉、根等から抽出した香料、海藻類から抽出した香料、動物の各部位または分泌物から抽出した香料(例、じゃこう、マッコウ)、人工的に合成した香料(例、メントール、ムスク、酢酸エステル、バニラ)が例示される。香料は、化粧料に香気、香りを付与するために配合される。色素は油溶性染料、体質顔料、無機顔料、有機顔料、親油性の蛍光増白剤などがある。
【0066】
本発明の化粧料の水相には、水のほか、本発明の効果を損なわない範囲で任意に水溶性の添加成分を配合することができる。水相を構成する成分としては、例えば、ビタミンB群、ビタミンCおよびその誘導体、パントテン酸およびその誘導体、ビオチン等のビタミン類などの水溶性活性物質、グルタミン酸ナトリウム、アルギニン、アスパラギン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸などの緩衝剤、EDTAなどのキレート剤などの他、水溶性紫外線吸収剤、各種水溶性の色素等を配合することができるが、これらに限定されるものでない。また、化粧料の保存安定性等を改善する目的で、公知のpH調整剤、防腐剤、抗菌剤または酸化防止剤を適宜配合することができる。
【0067】
本発明の油中水型エマルジョン化粧料の内相(水相)は、油剤からなる微粒子が分散されてなる水中油型(O/W型)エマルジョンからなるものであってもよく、このようなエマルジョンを内相(分散粒子)とする乳化組成物(O/W/O型エマルジョン)も本発明の範囲に包含される。
【0068】
本発明の油中水型エマルジョン化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、多価アルコールおよびその誘導体ならびに保湿剤を配合することができ、これにより保湿効果を高めることができる。また、水溶性高分子を配合することも可能である。このような水溶性高分子としては、天然の水溶性高分子、半合成の水溶性高分子、合成の水溶性高分子、無機の水溶性高分子等が挙げられる。
【0069】
本発明の油中水型エマルジョン化粧料は、例えば、皮膚化粧料および毛髪化粧料などとして利用される。
【0070】
本発明の油中水型エマルジョン化粧料は、常法に従って製造することができる。ここに、製造方法の一例を示せば、アルキル変性シリコーン精製品を含む油剤と、界面活性剤とを均一に混合(予備混合)し、得られる予備混合物を攪拌しながら、水を徐々に添加し、更に均一に攪拌する方法を挙げることができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらにより限定されるものではない。また、各アルキル変性ポリジメチルシロキサンの精製品の臭気(臭気試験)および化粧料成分との相溶性は以下に述べる方法により評価した。
[臭気試験]
検体を蓋付き200ml容積のガラス瓶に、体積にして約8割となる量を注入し、25℃の恒温室で1時間以上保管した後、ガラス瓶の空隙の臭気を以下の基準で判定し、結果を表1に記入した。
◎:ほとんど着臭が知覚できないレベル
○:僅かに着臭(エーテル様の特異臭)が感じられる
△:少しの着臭(エーテル様の特異臭)が感じられる
×:着臭(エーテル様の特異臭)が有るとはっきり感じられる

[化粧料成分との相溶性]
実施例および比較例で得られたアルキル変性トリシロキサンとメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(有機紫外線吸収剤;BASF社製ユビナールMC80N)を重量比1:1でバイヤル瓶中で混合し静置した。
5分後、混合物の相溶状態を目視にて以下の基準で評価し、結果を表1に併記した。
○:透明溶解
△:微濁
×:白濁
【0072】
<実施例1>
(1)工程〔A〕:
攪拌機、還流冷却器、温度計および窒素挿入口を備えたガラス製の反応容器内に、1,1,1,3,5,5,5−へプタメチルトリシロキサン1000質量部と、塩化白金酸(触媒)の10%エタノール溶液0.100質量部とを仕込み、攪拌しながら昇温し、液温を74℃に安定させた後、1−オクテンの滴下を開始した。これによりヒドロシリル化反応に伴う発熱が認められた。液温が120℃を超えないように滴下量を調整しながら、1−オクテンの全量(555質量部)を滴下した。滴下終了後、攪拌混合を継続した。1時間経過後に反応液を採取し、これを、水酸化カリウムの水/エタノール溶液と混合したところ水素ガスが全く発生しなかったことから、ヒドロシリル化反応が終了したと判断した。
次いで、反応液(85℃)に炭酸水素ナトリウム1.55質量部を添加し、30分間にわたり攪拌混合することにより中和処理を行った。
その後、窒素ガスを供給しながら内部を減圧して120℃まで昇温し、1.3kPaで1時間にわたり低沸分(軽質物)を除去した(ストリッピング工程)。
得られた反応生成物を室温まで冷却し、常圧に戻して、珪藻土10質量部を混合して加圧濾過処理を行うことにより固液分離(触媒の除去)操作を行った。濾液として、下記化学式(i)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品1300質量部を得た。
得られた粗製品は、微黄色透明な均一液状の外観を有し、製造直後より不快な臭いを有するものであった。
【0073】
【化8】

【0074】
(2)工程〔B〕:
撹拌機付の内容量1リットルのステンレス製オートクレーブに、上記アルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品 400質量部、ラネーニッケル触媒(水素化触媒)16質量部を、メチルシクロヘキサンで5回置換した後に仕込み、更に10質量部のメチルシクロヘキサンを溶剤として使用した。オートクレーブ内(気相)を水素ガスに置換した後、水素圧8.0MPaに加圧した。この系を撹拌しながら、徐々に昇温し、140℃で6時間にわたり水素添加反応による無臭化処理を行った。
【0075】
(3)後工程(触媒の分離工程およびストリッピング工程):
上記の工程〔B〕により得られた反応生成物を40℃まで冷却して水素ガスをブローし、窒素ガスによる置換を行った。
次いで、反応生成物からラネーニッケル触媒を加圧濾過により除去した。
このようにして得られた濾液を、還流冷却器および窒素挿入口を備えた容量1リットルの2つ口フラスコに仕込み、窒素ガスを供給しながら内部を減圧して120℃まで昇温し、1.3kPaで5時間にわたり低沸分(軽質物)を除去し、濾液の濃縮物として、上記化学式(i)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの精製品(P1)370質量部を得た。
【0076】
<実施例2>
実施例1の工程〔B〕において、メチルシクロヘキサンの代わりに等量のエチルシクロヘキサンを用いた他は実施例1と同様にして、上記化学式(i)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの精製品(P2)を得た。
【0077】
<比較例1>
実施例1の工程〔B〕において、メチルシクロヘキサンの代わりに等量のイソプロパノールを用いた他は実施例1と同様にして、上記化学式(i)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの精製品(C1)を得た。
【0078】
<比較例2>
実施例1の工程〔B〕において、メチルシクロヘキサンの代わりに等量のn−ブタノールを用いた他は実施例1と同様にして、上記化学式(i)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの精製品(C2)を得た。
【0079】
<比較例3>
実施例1の工程〔B〕において、メチルシクロヘキサンの代わりに等量のテトラヒドロフラン(THF,沸点66℃)を用いた他は実施例1と同様にして、上記化学式(i)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの精製品(C3)を得た。
【0080】
上記実施例1〜2、比較例1〜3について、各アルキル変性ポリジメチルシロキサンの精製品の臭気および新油性化粧料原料との相溶性を評価した結果を下表1に示す。
本願実施例に係るアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品は全て、製造直後において不快な臭いは全く感じられず、実質的に無臭の製品であった。また、有機紫外線吸収剤であるメトキシケイヒ酸エチルヘキシルと均一な相溶性を示した。一方、比較例に係るアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品は製造直後において臭気があり、有機紫外線吸収剤であるメトキシケイヒ酸エチルヘキシルと均一に相溶させることができなかった。














【0081】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法であって、
一般式(1):
【化1】

(式中、Rは−C−C2p+1(pは0〜28の数)で示される炭素原子数2〜30のアルキル基であり、Rはメチル基またはRで示される基である。mは0〜300の範囲の数であり、nは0〜50の範囲の数である。但し、n=0のとき、Rの少なくとも一方はRで示される基である。)

(a)下記一般式(2)で示されるヒドロシリル基含有ポリジメチルシロキサンと、
一般式(2):
【化2】

(式中、Rはメチル基または水素原子であり、m、nは前記同様の範囲の数である。但し、n=0のとき、Rの少なくとも一方は水素原子である。)
(b)一般式:CH=CH−C2p+1(pは0〜28の数)で示される炭素原子数2〜30のα−オレフィンとをヒドロシリル化反応させることにより、上記一般式(1)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンを合成する工程〔A〕;および
前記工程〔A〕によって得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品を、水素化触媒の存在下、(c)25℃、1気圧における沸点が70℃以上であり、活性水素原子を実質的に含有しない有機溶媒中で水素添加反応による無臭化処理を行う工程〔B〕
を有することを特徴とするアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法。
【請求項2】
工程〔B〕における水素化触媒がラネーニッケル触媒であり、有機溶媒が、(c1)炭素数7〜9のアルキルシクロヘキサンである、請求項1に記載のアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法。
【請求項3】
工程〔A〕が、
(a1)1,1,1,3,5,5,5−へプタメチルトリシロキサンと、
(b)CH=CH−C2p+1(pは0〜28の数)で示される炭素数2〜30のα−オレフィンとをヒドロシリル化反応させることにより、下記一般式(3)で示されるアルキル変性ポリジメチルシロキサンを合成する工程〔A1〕であり、
工程〔B〕が、前記工程〔A1〕によって得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品を、水素化触媒の存在下、(c1)炭素数7〜9のアルキルシクロヘキサン中で水素添加反応による無臭化処理を行う工程〔B1〕であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法。
一般式(3):
【化3】

(式中、Rは前記同様の基である。)
【請求項4】
工程〔B〕の前工程または後工程として、アルキル変性ポリジメチルシロキサンの粗製品または水素添加反応の生成物に対して、減圧下に、窒素ガスを接触させて軽質物を留去するストリッピング工程を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を含有する化粧料原料。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を含有する化粧料。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品および1種類以上の新油性化粧料原料を含有する化粧料。
【請求項8】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品および有機紫外線吸収剤を含有する化粧料。
【請求項9】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の製造方法により得られるアルキル変性ポリジメチルシロキサン精製品を油剤とする油中水型エマルジョン化粧料である、請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の化粧料。

【公開番号】特開2011−57611(P2011−57611A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208768(P2009−208768)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】