説明

アルギナーゼ活性促進剤及びそれを含有する皮膚外用剤

【課題】 従来よりもアルギナーゼの活性促進効果が高いアルギナーゼ活性促進剤及び優れた保湿持続効果及び肌荒れ改善効果を有する皮膚外用剤の提供。
【解決手段】 アンズ果汁を有効成分として含有するアルギナーゼ活性促進剤。このアンズ果汁を有効成分として含有するアルギナーゼ活性促進剤をアンズ果汁の乾燥残留物として0.0001〜5重量%、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸またはそれらの塩から選ばれる1種または2種以上を0.001〜10重量%含有する皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルギナーゼ活性促進剤及びそれを含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、人の皮膚の最外層は角層に覆われていて、そこで水分の蒸散が制御されている。皮膚の水分を適切な範囲に保つことは皮膚の健康の面から見て大変重要なことであり、水分が不足すると肌荒れ等を生じやすくなる。そこで、化粧料や皮膚外用剤においては、肌荒れの防止、改善等の為に、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸塩、ヒアルロン酸等の酸性ムコ多糖類、キチン、キトサン及びそれらの誘導体、蛋白加水分解物、植物抽出物及び尿素等の保湿成分が配合されてきた。しかしながら、これらの保湿成分は皮膚表面においてその物質の物理化学的な保湿の性質を利用しているだけであり、その物質の皮膚細胞におよぼす生理的な機能に基づくものではない。また、化粧料、皮膚外用剤中の配合量が多い場合は、不快なべたつき感を有し、感触が好まれない場合がある。さらに、これらの保湿成分は皮膚より除去されると効果は消失するため、その効果は一過性であると言わざるを得ない。なお、これらのうち、尿素は高い保湿能だけでなく、角質溶解剥離作用や角質柔軟化作用を有する点で好ましいものであるが、その反面、水と反応して分解し易く、分解するとアンモニアと炭酸ガスを生じることから、臭気や安全性の点で問題を生じ易く、また、尿素を配合した皮膚外用剤は特有の刺激感を有する為、使用部位が限定されるという欠点がある。
【0003】
一方、アルギナーゼはアルギニンをオルニチンと尿素に加水分解する酵素で、通常、肝臓においてアンモニアから尿素を生成する尿素回路を構成する酵素の一つであり、表皮においてもアルギナーゼの存在が認められている。すなわち、表皮中のアルギナーゼは表皮細胞の増殖に関連したポリアミン生合成やコラーゲン新生に必要なプロリン生合成のためのオルニチン供給酵素として知られている。したがって、アルギナーゼ活性促進剤によって尿素を皮膚内で生合成させることは、上記の“尿素”を配合した皮膚外用剤が有する欠点を解消しながら、“尿素”が有する保湿成分としての優れた効果を引き出すこと、さらに該効果の持続性も期待できるので、非常に有用な手段といえる(すなわち、アルギナーゼ活性促進剤は、皮膚細胞に働きかけ、保湿成分の産出を促す薬剤として使用できる。)。このような尿素の皮膚内で生合成を意図したアルギナーゼ活性促進剤としては、例えば、木通抽出物によるもの(特許文献1)、桔梗抽出物によるもの(特許文献2)、呉茱萸抽出物によるもの(特許文献3)及び麦門冬抽出物によるもの(特許文献4)等が知られているが、これらの抽出物によるアルギナーゼの活性促進効果は充分に高いとは言い難く、より高いアルギナーゼの活性促進効果が得られるアルギナーゼ活性促進剤が望まれている。
【特許文献1】特開平10−7581号公報
【特許文献2】特開2002−29983号公報
【特許文献3】特開2002−29991号公報
【特許文献4】特開2003−277285号公報
【特許文献5】特開2000−72647号公報
【特許文献6】特開2000−119153号公報
【特許文献7】特開2000−264828号公報
【特許文献8】特開2001−114640号公報
【特許文献9】特開2001−270818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、従来よりもアルギナーゼの活性促進効果が高いアルギナーゼ活性促進剤を提供することである。また、優れた保湿持続効果及び肌荒れ改善効果が得られる皮膚外用剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記の目的を達成すべく鋭意研究した結果、アンズ果汁が極めて高いアルギナーゼ活性促進効果を有すること、さらに、かかるアンズ果汁(アルギナーゼ活性促進剤)と、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸またはそれらの塩との組合せによって、皮膚外用剤の保湿持続効果及び肌荒れ改善効果が大きく向上することを知見し、該知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)アンズ果汁を有効成分として含有するアルギナーゼ活性促進剤。
(2)(a)上記(1)記載のアルギナーゼ活性促進剤をアンズ果汁の乾燥残留物として0.0001〜5重量%及び(b)L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸またはそれらの塩から選ばれる1種以上を0.001〜10重量%含有する皮膚外用剤。
【0007】
特許文献5〜9に記載の化粧料のように、アンズ果汁を含有する皮膚外用剤は公知である。しかし、これら従来のアンズ果汁を含有する化粧料(皮膚外用剤)は、いずれも、保湿持続効果や肌荒れ改善効果は必ずしも充分ではなかった(すなわち、保湿持続効果と肌荒れ改善効果の両方を充分に満足できるものはなかった)。本発明は、アンズ果汁を有効成分として含有するアルギナーゼ活性促進剤と、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸またはそれらの塩から選ばれる1種または2種以上を配合して皮膚外用剤を調製することで、従来では達成できなかった高いレベルの保湿持続効果と肌荒れ改善効果を有する皮膚外用剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来のアルギナーゼ活性促進剤よりも高いアルギナーゼ活性促進効果を示すアルギナーゼ活性促進剤を得ることができ、該アルギナーゼ活性促進剤を使用することで、尿素産生の効率を高めることができる。
また、本発明によれば、優れた保湿持続効果及び肌荒れ改善効果を有し、製剤的経時安定性も良好な皮膚外用剤を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるアンズ果汁とは、植物学上バラ科サクラ属のホンアンズ(学名:Prunus armenica L.)、ホンアンズの栽培品種であるアンズ(学名:Prunus armeniaca L. var. ansu Maxim.)、マンシュウアンズ(学名:Prunus mandshurica Koehne)およびモウコアンズ(学名:Prunus sibirica L.)等の果実から得られる果汁のことであり、ホンアンズ又は/及びアンズの果実から得られる果汁が特に好ましい。
【0010】
本発明におけるアンズ果汁は、果実を圧搾して得られた果汁をそのまま使用しても、これをさらに濃縮した濃縮果汁を使用してもよい。また、果実を圧搾して得られた果汁に、ろ過、希釈、有機溶媒等による抽出などの処理を施した処理物を使用することも可能である。すなわち、本発明における「アンズ果汁」とは、果実を圧搾して得た果汁そのもの、濃縮果汁若しくはこれらの処理物をいう。
なお、本発明における「アンズ果汁」は、アンズの種子(生薬名をキョウニンという)から各種溶媒にて抽出して得られるエキスである「キョウニンエキス」とは異なる。「キョウニンエキス」では本発明の課題を解決することはできない。
【0011】
本発明のアルギナーゼ活性促進剤は、アンズ果汁を有効成分とするものであり、アンズ果汁単体であっても、アンズ果汁のアルギナーゼ活性促進作用を阻害しない範囲で、その他の添加剤を適宜配合した組成物であってもよい。該組成物としては、例えば、アンズ果汁の腐敗、菌の繁殖などを防止するために、エタノール、パラオキシ安息香酸エステルまたはその塩類、安息香酸またはその塩類、サルチル酸またはその塩類、ソルビン酸またはその塩類、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、クレゾール、フェノキシエタノールなどの防腐剤や腐敗を抑えるための、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコールを適宜添加した組成物が挙げられる。
【0012】
本発明のアルギナーゼ活性促進剤は、従来のアルギナーゼ活性促進剤に比べてより高いアルギナーゼ活性促進効果を示す。従って、本発明のアルギナーゼ活性促進剤を使用することで、尿素の産生効率を向上させることができる。
【0013】
本発明の皮膚外用剤は、次のa及びbを有効成分として含有する組成物である。
a.上記のアンズ果汁を有効成分とするアルギナーゼ活性促進剤
b.L−アスパラギン酸及びL−グルタミン酸またはそれらの塩から選ばれる1種または2種以上
【0014】
本発明の皮膚外用剤において、a成分のアルギナーゼ活性促進剤の含有量は、皮膚外用剤(組成物全量)中の当該アルギナーゼ活性促進剤の有効成分であるアンズ果汁の含有量が乾燥残留物として0.0001〜5重量%となる量にすることが重要であり、好ましくは当該アンズ果汁(乾燥残留物)の含有量が0.0005〜3重量%となる量である。アンズ果汁(乾燥残留物)の含有量が0.0001重量%未満である場合、優れた保湿持続効果や肌荒れ改善効果が得られにくくなる。一方、アンズ果汁(乾燥残留物)の含有量が5重量%を超える場合は、皮膚外用剤(組成物)の経時安定性が低下し、またコスト的に不利になる。
【0015】
なお、「アンズ果汁の乾燥残留物」は、アンズ果汁を105℃で乾燥するかまたは減圧乾固して溶媒を除去した時の残留物である溶質を指し、乾燥または減圧乾固する前後の重量を測定することによって定量される。なお、抽出溶媒が不揮発性の場合にはガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等により溶媒量を定量した値から溶質量を計算値として求め、乾燥残留物量とみなす。
【0016】
本発明の皮膚外用剤において、b成分のL−アスパラギン酸、L−グルタミン酸またはそれらの塩は、製剤学的に組成物中に配合できるのであれば特に制限されない。すなわち、L−アスパラギン酸及びL−グルタミン酸はそれらの塩の形でも用いることができ、L−アスパラギン酸の塩としては、例えばL−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム等が挙げられ、L−グルタミン酸の塩としては、例えばL−グルタミン酸カリウム、L−グルタミン酸ナトリウム、L−グルタミン酸マグネシウム等が挙げられる。これら以外の塩であっても製剤学的に配合可能であればいずれの塩であっても使用することができる。該b成分のL−アスパラギン酸、L−グルタミン酸またはそれらの塩は、いずれか1種または2種以上を使用でき、その配合量は、皮膚外用剤全体(組成物全量)当たり0.001〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.005〜5重量%である。配合量が0.001重量%未満の場合、そのような皮膚外用剤は優れた保湿持続効果や肌荒れ改善効果を発揮し難いものとなり、10重量%を超える場合は皮膚外用剤の経時安定性が低下し、またコスト的に不利になる。
【0017】
すなわち、本発明の皮膚外用剤は、a成分のアルギナーゼ活性促進剤を、当該アルギナーゼ活性促進剤の有効成分であるアンズ果汁の含有量が乾燥残留物として0.0001〜5重量%となる量含有し、かつ、b成分のL−アスパラギン酸、L−グルタミン酸またはそれらの塩から選ばれる1種または2種以上を0.001〜10重量%含有する組成に調製することで、優れた保湿持続効果及び肌荒れ改善効果を有し、製剤的経時安定性も良好なものとなる。
【0018】
上記の通り、本発明のアルギナーゼ活性促進剤は、特に皮膚外用剤に配合して好適に使用でき、優れた保湿性の化粧料、医薬品等の皮膚外用剤を構成し得る。なお、本発明の皮膚外用剤においては、化粧料や医薬品等の皮膚外用剤に常用されている添加剤を本発明の性能を損なわない範囲で配合することも可能である。例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、ワセリン、固形パラフィン等の炭化水素系油、牛脂、豚脂、魚油等の天然油脂、エステル油、ロウ、直鎖および環状のジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン誘導体、セラミド、コレステロール、蛋白誘導体、ラノリン、ラノリン誘導体、レシチン等の油性基剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルカノールアミド等の非イオン性界面活性剤;せっけん、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン塩、アシルグルタミン酸塩、アシルグリシン塩、アシルザルコシン塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アミドエーテル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アミドアミノ酸塩、アルキルイミノジ酢酸塩等の両性界面活性剤;アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミンオキシド等の半極性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤;アルキルアミン、アミドアミン等の塩酸塩または酢酸塩;無機顔料、パール顔料、金属粉末顔料、有機顔料、ジルコニウム等の顔料;クロロフィル、β−カロチン等の天然色素、アルギン酸、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ヒアルロン酸等の水溶性高分子;硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等の無機塩または有機塩;pH調製剤である酸およびアルカリ;殺菌剤、キレート剤、抗酸化剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、動植物由来の天然エキス、香料等を配合できる。
【0019】
本発明の皮膚外用剤の剤型は特に限定されず、例えば、溶液、乳化液、分散液、ジェル、クリーム、軟膏などの任意の剤型を採ることができる。また、その製法は各剤型での定法に従えばよい。
【実施例】
【0020】
以下、実施例と比較例を示して本発明をより具体的に説明する。
1.アンズ果汁の調製
アンズの果実を圧搾した果汁を1週間冷蔵保存した後、おりをろ過し、アンズ果汁を得た。このアンズ果汁の乾燥残留分は10.1重量%であった。
【0021】
2.木通エキスの調製
乾燥後粉砕した30gの木通に300mLの水を加え70℃で3時間加熱し、その後濾過により抽出液から不溶物を除去し、得られた瀘液を減圧乾固して木通エキスを得た。この木通エキスの乾燥残留分は1.5重量%であった。
【0022】
3.桔梗エキスの調製
乾燥後粉砕した30gの桔梗に300mLの水を加え70℃で3時間加熱し、その後濾過により抽出液から不溶物を除去し、得られた瀘液を減圧乾固して桔梗エキスを得た。この桔梗エキスの乾燥残留分は4.0重量%であった。
【0023】
4.麦門冬エキスの調製
乾燥後粉砕した30gの麦門冬に300mLの水を加え70℃で3時間加熱し、その後濾過により抽出液から不溶物を除去し、得られた瀘液を減圧乾固して麦門冬エキスを得た。この麦門冬エキスの乾燥残留分は7.4重量%であった。
【0024】
なお、上記アンズ果汁、木通エキス、桔梗エキス及び麦門冬エキスの乾燥残留分は、乾燥または減圧乾固する前後の重量を測定することで定量した。
【0025】
実験例1(培養細胞によるアルギナーゼ活性促進効果の確認実験)
マウス表皮細胞(PAM212株)を直径10cmの培養皿に蒔き、ダルベッコ改変イーグル培地に牛胎児血清を10%配合した培地で、培養皿が細胞で完全に覆われるまで培養を継続した。その後、被験物としてアンズ果汁および各種エキスをその培地中濃度が乾燥残留物として0〜0.05重量%となるように添加し、3日間培養した。培養後、細胞を回収し、細胞内のアルギナーゼ活性量を被験物の各濃度につき5回ずつ測定し、その平均値を算出した。細胞内のアルギナーゼ活性量は細胞を1mLの25mMトリス−塩酸緩衝液(pH=7.5)中でホモジナイズしたホモジネートを用いて測定した。ホモジネート0.05mlを1.5mLの栓付きのマイクロチューブに移し取り、アルギナーゼの活性化のため50℃で10分間加熱処理を行った。0.04mLの0.1ML−アルギニン溶液を添加し37℃にて30分間インキュベートした。
インキュベート終了後0.01mLの60%過塩素酸を添加、混和し酵素反応を停止させ、10000Gで遠心分離を行い、得られた上清中の尿素量を測定した。細胞内のアルギナーゼ活性量は、無添加の場合の生成尿素量を100%とすることで相対的に表した。結果を表1に示す。なお、尿素量は和光純薬工業株式会社製の尿素窒素−テストワコーを用い、取扱説明書通りに使用した。つまり、上清0.02mLと発色試液(発色原液Aと発色原液Bを5:1で混合したもの)5mLを混和し、沸騰水浴中で25分間加熱後、流水中で冷却し、分光光度計を用いて530nmの吸光度を測定し、別に求めた尿素の検量線より上清中の尿素量を算出した。
【0026】
【表1】

【0027】
表1より、アンズ果汁(実施例1)は低濃度から優れた細胞内アルギナーゼ活性促進効果を示し、特に0.05%濃度において、従来技術の木通エキス(比較例1)、桔梗エキス(比較例2)及び麦門冬エキス(比較例3)よりも著しくその促進効果が高く、アンズ果汁が強力なアルギナーゼ活性促進剤と成り得ることが分かった。
【0028】
実験例2
定法に従って、表2に示す配合組成のクリームである皮膚外用剤を調製し、乾燥による肌荒れを生じている10名の女性(25才〜35才)を被験者として、塗布部位を左腕上腕内側部、無塗布部位を右腕上腕内側部と定め、クリームを朝の洗顔後と夜の入浴後の一日2回ずつ(1回の使用量:0.1g)連続2週間使用してもらい、(1)保湿持続効果及び(2)肌荒れ改善効果について下記のように評価した。また、調製したクリームの(3)経時安定性についても下記のように評価した。結果を表2に示す。
【0029】
(1)保湿持続効果
塗布終了の翌日と1週間後にSKICON−200(IBS社製)を用いて、各皮膚外用剤の塗布部位と無塗布部位の角層水分含量を測定した。塗布終了の翌日において塗布部位の角層水分含量値から無塗布部位の角層水分含量値を差し引いた値をW(0)とし、塗布終了の1週間後において塗布部位の角層水分含量値から無塗布部位の角層水分含量値を差し引いた値をW(1)とした場合、次式により保湿持続効果を求めた。
保湿持続効果(%)=W(1)/W(0)x100
該式から求めた保湿持続効果の値について、10名の平均値を求め、その平均値が80%以上を示したときを保湿持続効果の良好な皮膚外用剤であると判定した。
【0030】
(2)肌荒れ改善効果
連続2週間使用した時の肌荒れの状態変化について下記のように評価点を付け、10名の評価点の平均値を求めて、平均値1.5点以上を肌荒れ改善効果に優れた皮膚外用剤であると判定した。
2点:肌荒れが明らかに治ってきたと感じた場合。
1点:肌荒れがやや治ってきたと感じた場合。
0点:肌荒れ改善効果が全くないと感じた場合。
【0031】
(3)経時安定性
クリームを透明ガラス容器に密封して−5℃、25℃および40℃で3ヶ月間保存したときの状態を調査し、下記に示す3段階で評価した。
○:安定性良好(いずれの温度においても外観の変化がなくブツ等も生じない。)
△:安定性やや不良(いずれかの温度において僅かに沈殿を生じるか僅かに分離が見られる。または僅かにブツやダマを生じる。)
×:安定性不良(いずれの温度においても明らかに沈殿を生じるか分離する。またはブツやダマを生じる。)
【0032】
【表2】

【0033】
表2から、アンズ果汁と、L−アスパラギン酸ナトリウムまたはL−グルタミン酸ナトリウムとを配合した実施例2、3の剤は優れた肌の保湿持続効果及び肌荒れ改善効果を有し、保存時の経時安定性も良好であることが分かる。一方、アンズ果汁に替えて麦門冬エキスを配合した比較例4の剤は肌の保湿持続効果及び肌荒れ改善効果がともに低く、アンズ果汁及びL−アスパラギン酸ナトリウムを最適配合量を超えて配合した比較例5の剤は経時安定性が悪かった。
【0034】
実験例3
定法に従って、表3に示す組成の化粧水である皮膚外用剤を調製し、クリームのときの評価と同様に、乾燥による肌荒れを感じている10名の女性(25才〜35才)を被験者として、化粧水を朝の洗顔後と夜の入浴後の一日2回ずつ連続2週間使用してもらい、(1)保湿持続効果及び(2)肌荒れ改善効果についてはクリームのときと同様にして評価した。また、調製した化粧水の(4)経時安定性についても下記のように評価した。結果を表3に示す。
【0035】
(4)経時安定性
化粧水を透明ガラス容器に密封して0℃、25℃および40℃で3ヶ月間保存し、その外観を観察して、下記に示す3段階で評価した。
○:安定性良好(いずれの温度でも外観の変化がない。)
△:安定性やや不良(いずれかの温度において若干おり、沈殿を生じるか若しくは若干着色を生じる。)
×:安定性不良(いずれの温度においてもおり、沈殿を生じるか若しくは分離するか、または着色が著しい。)
【0036】
【表3】

【0037】
表3から、アンズ果汁と、L−アスパラギン酸ナトリウムまたはL−グルタミン酸ナトリウムとを配合した実施例4、5の剤は、優れた肌の保湿持続効果及び肌荒れ改善効果を有し、しかも保存時の経時安定性も良好であることが分かる。一方、アンズ果汁に替えて麦門冬エキスを配合した比較例6の剤は肌の保湿持続効果及び肌荒れ改善効果がともに低く、アンズ果汁及びL−アスパラギン酸ナトリウムを最適配合量を超えて配合した比較例7の剤は経時安定性が悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンズ果汁を有効成分として含有するアルギナーゼ活性促進剤。
【請求項2】
(a)請求項1記載のアルギナーゼ活性促進剤をアンズ果汁の乾燥残留物として0.0001〜5重量%及び(b)L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸またはそれらの塩から選ばれる1種以上を0.001〜10重量%含有する皮膚外用剤。

【公開番号】特開2006−143608(P2006−143608A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332467(P2004−332467)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】