説明

アルミニウム多孔質焼結体を有するアルミニウム複合体の製造方法

【課題】高気孔率の均質なアルミニウム多孔質焼結体と、アルミニウムの箔または板とが一体化された複合体を、容易かつ安価に得ることができるアルミニウム複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム粉末にチタンおよび/または水素化チタンを含む焼結助剤粉末を混合してアルミニウム混合原料粉末とし、次いでこのアルミニウム混合原料粉末に、水溶性樹脂結合剤、水、可塑剤、炭素数5〜8の非水溶性炭化水素系有機溶剤を添加・混合して粘性組成物とし、これをアルミニウムの箔または板上に成形して発泡させた後に、非酸化性雰囲気にて、アルミニウム混合原料粉末が融解を開始する温度をTm(℃)としたときに、Tm−10(℃)≦T≦685(℃)となる加熱焼成温度T(℃)で加熱焼成することにより、アルミニウムの箔8または板上にアルミニウム多孔質焼結体15が一体に接合されたアルミニウム複合体16を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にリチウムイオン二次電池や電気二重層型キャパシタの集電体、LED放熱板ヒートシンク、ラジエータ等に好適に用いられる、アルミニウムの箔または板上にアルミニウム多孔質焼結体が一体化されたアルミニウム複合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、リチウムイオン電池や電気二重層型のキャパシタの正極集電体として一般的にアルミニウム箔が用いられている。そして、近年、これらの電池やキャパシタが電気自動車などにも用いられるようになり、そのような用途拡大に伴って電池やキャパシタにおける電極集電体の高出力化、高エネルギー密度化が要求され、特許文献1および2に示すように、電極集電体として三次元網目構造の開気孔を有するアルミニウム多孔質体が知られるようになりつつある。
【0003】
このようなアルミニウム多孔質体の製造方法としては、例えば、特許文献3に開示されるように、溶融アルミニウムに増粘剤を加えて増粘させた後に、発泡剤としての水素化チタンを添加して、水素化チタンの熱分解反応によって生じる水素ガスを利用して溶融アルミニウムを発泡させつつ固化させる発泡溶融法が知られている。しかしながら、同方法によって得られる発泡アルミニウムは、数mmの大きな閉気孔を有するものであった。
【0004】
その他、第2の方法として、スポンジウレタンを中子にした鋳型にアルミニウムを圧入し、ウレタンが焼失して形成される空洞にアルミニウムを充填することにより、スポンジ骨格の発泡アルミニウムを得る方法がある。同方法によれば、40PPI以下の孔径、すなわち、1インチ当たり40セル以下の孔径(孔径約600μm以上)の開気孔を有する発泡アルミニウムが得られる。
【0005】
さらに、第3の方法として、特許文献4に開示されるように、中空セラミックスからなる強化材にアルミニウム合金を加圧浸透させて、強化材の寸法に応じた500μm以下の孔径の閉気孔を有する発泡アルミニウムを得る方法もある。
【0006】
また、第4の方法として、特許文献5に開示されるように、AlSi合金粉末とTiH2粉末との混合粉末をアルミニウム板材に挟んで加熱圧延することによって、TiH2粉末の分解によりアルミニウムを発泡させる方法があるものの、同方法によって得られる発泡アルミニウムは、数mm単位の大きな孔径を有するものである。
【0007】
さらには、第5の方法として、特許文献6に開示されるように、アルミニウムとの共晶温度がアルミニウムの融点よりも低い金属をアルミニウムに混合し、共晶温度よりも高くアルミニウムの融点よりも低い温度に加熱焼成する方法があるものの、同方法によって得られる発泡アルミニウムは、孔径を小さくすることができても気孔率が40%前後と小さい。このため、集電体としての発泡アルミニウムの気孔に浸透する正極活物質や負極活物質の量が少なく、所望の高出力化、高エネルギー密度化が図れない。
【0008】
従って、上述の発泡溶融法および第2〜第5の方法の中では、高出力化、高エネルギー密度化の目的を達成し得る微小の開気孔を有する発泡アルミニウムを製造する方法として、スポンジウレタンを中子にした鋳型にアルミニムを圧入する第2の方法が採用されうる。
【0009】
しかしながら、この第2の方法であっても、さらに開気孔の孔径を小さくするためには、目の細かいスポンジウレタンを用いざるを得ず、アルミニウムの流れが悪くなって圧入不能となったり、鋳造圧力が高くなりすぎたりすることから、40PPIよりも小孔径の発泡アルミニウムを製造することは困難である。
【0010】
これに対して、多数の微小の開気孔が均等に配置された小孔径・整寸の開気孔を有する高気孔率の発泡金属を製造する方法として、特許文献7に示すように、金属粉および発泡剤を含有する発泡性スラリーを発泡させ、乾燥させた後に焼結させるスラリー発泡法がある。同方法によれば、焼結可能な原料粉末が入手できれば、約10PPI〜約500PPI、すなわち、孔径2.5mm〜50μmの範囲の任意の孔径の整寸な開気孔を有する高気孔率の発泡金属を容易に製造することができる。なお、スラリー発泡法は、上述のように発泡剤を含有させることによって発泡させ、あるいは気体の注入や攪拌によって発泡させることにより、その発泡状態のまま発泡性スラリーなどを上述のように焼結させて発泡金属を得る方法を意味する。
【0011】
しかし、従来、スラリー発泡法では発泡アルミニウムを製造することは困難であった。
その理由について述べると、このスラリー発泡法では、金属粉末に圧縮等の応力をかけることなく焼結するフリーシンタリングによって焼結して発泡金属を得ることになる。しかし、アルミニウム粉末は表面に数nm〜数10nmの緻密な酸化アルミニウム被膜で覆われていて、それが固相、液相を問わずに焼結を阻害する。そのためにフリーシンタリンングでは焼結が困難であって、そのためスラリー発泡法で均質な発泡アルミニウムが得られなかった。
【0012】
また、このアルミニウム粉末をフリーシンタリングする方法として上述の第5の方法に、スラリー発泡法を組み合わせた手法を採用し、アルミニウムとの共晶温度がアルミニウムの融点よりも低い金属である銅粉末を発泡材とともにアルミニウムに混合し、共晶温度よりも高くアルミニウムの融点よりも低い温度に加熱焼成して発泡アルミニウムを得ても、その表面にアルミニウムの液滴が滲み出し、それが凝固した多数の半球状のアルミニウムの塊が形成されてしまう。特に、発泡アルミニウムが薄板状であると、図9に示すように、アルミニウムの塊の形成が顕著であり、所望の均質な発泡アルミニウムを製造することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3591055号公報
【特許文献2】特開2009―43536号公報
【特許文献3】特開平08−209265号公報
【特許文献4】特開2007−238971号公報
【特許文献5】特表2003−520292号公報
【特許文献6】特公昭61−48566号公報
【特許文献7】特許第3535282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明者等は、先に特願2009−82498号として、孔径が40PPI以上、すなわち600μm以下の微小・整寸の開気孔を有する高気孔率の均質な発泡アルミニウムを得ることができるアルミニウム多孔質焼結体の製造方法を提案した。
【0015】
一方、上記製造方法によって得られたアルミニウム多孔質焼結体自体は、厚さ寸法が薄くなると機械的強度に劣るとともに、両面に開口が形成されている。このため、リチウムイオン二次電池や電気二重層型キャパシタの集電体、LED放熱板ヒートシンク、ラジエータ等として用いる場合や、もっぱら面方向に流体を流したい用途に用いる場合には、機械的強度を担保したり、あるいは一方の面を塞いだりするために、金属箔や金属板を接合して一体化する必要がある。この結果、製造工程が増えるとともに、特にこの種のアルミニウム材は、接合方法に制約があり、当該加工に手間を要するという問題点が生じる。
【0016】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、600μm以下の微小・整寸の開気孔を有する高気孔率の均質なアルミニウム多孔質焼結体と、アルミニウム箔またはアルミニウム板とが一体化された複合体を、容易かつ安価に得ることができるアルミニウム複合体の製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、アルミニウム粉末にチタンを含む焼結助剤粉末を混合して所定の範囲の温度で加熱焼成すると、フリーシンタリングであっても、液滴の塊が生成することなく焼結できる条件があることを見出し、アルミニウム多孔質焼結体に係る発明を完成した。そして、上記アルミニウム多孔質焼結体を製造する際に、アルミニウム粉末にチタンおよび/または水素化チタンを含む焼結助剤粉末等を混合した発泡前の粘性組成物を、アルミニウム箔またはアルミニウム板上に成形して発泡させた後に、所定の温度範囲において加熱焼結することにより、上記アルミニウム箔等にアルミニウム多孔質焼結体が一体化されたアルミニウム複合体を製造することができるとの知見を得るに至った。
【0018】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたもので、請求項1に記載の発明は、アルミニウム粉末にチタンおよび/または水素化チタンを含む焼結助剤粉末を混合してアルミニウム混合原料粉末とし、次いでこのアルミニウム混合原料粉末に、水溶性樹脂結合剤と、水と、多価アルコール、エーテルおよびエステルのうちの少なくとも1種からなる可塑剤と、炭素数5〜8の非水溶性炭化水素系有機溶剤とを添加・混合して粘性組成物とし、この粘性組成物をアルミニウム箔またはアルミニウム板上に成形して発泡させることにより焼結前成形体とした後に、この焼結前成形体を非酸化性雰囲気にて、上記アルミニウム混合原料粉末が融解を開始する温度をTm(℃)としたときに、Tm−10(℃)≦T≦685(℃)となる加熱焼成温度T(℃)で加熱焼成することにより、上記アルミニウム箔またはアルミニウム板上にアルミニウムの多孔質焼結体が一体に接合されたアルミニウム多孔質焼結体を有するアルミニウム複合体を得ることを特徴とするものである。
【0019】
ここで、非酸化性雰囲気とは、不活性雰囲気あるいは還元性雰囲気を含めアルミニウム混合原料粉末を酸化させない雰囲気であることを意味する。また、上述の加熱焼成温度は、アルミニウム混合原料粉末の温度ではなく、すなわち、アルミニウム混合原料粉末の反応温度などを測定したものでなく、アルミニウム混合原料粉末の周囲の保持温度を意味するものである。
【0020】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記アルミニウム粉末は、平均粒子径が2〜200μmであることを特徴とするものである。
【0021】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記焼結助剤粉末の平均粒子径をr(μm)、上記焼結助剤粉末の配合比をW質量%としたときに、1(μm)≦r≦30(μm)、1≦W≦20(質量%)であり、かつ0.1≦W/r≦2であることを特徴とするものである。
【0022】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、上記水溶性樹脂結合剤が、上記アルミニウム混合原料粉末の質量の0.5%〜7%の範囲内で含まれていることを特徴とするものであり、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、上記アルミニウム混合原料粉末に、当該のアルミニウム混合原料粉末の質量の0.02〜3%の範囲内の界面活性剤を添加することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載のアルミニウム多孔質焼結体を有するアルミニウム複合体の製造方法によれば、アルミニウム粉末にチタンおよび/または水素化チタンを含む焼結助剤粉末を混合してアルミニウム混合原料粉末とし、このアルミニウム混合原料粉末に、水溶性樹脂結合剤、水、可塑剤および非水溶性炭化水素系有機溶剤を添加・混合してアルミニウム箔またはアルミニウム板上に成形し、発泡させて焼結前成形体とした後に、この焼結前成形体を非酸化性雰囲気にて、所定の温度範囲において加熱焼成することにより、上記アルミニウム箔またはアルミニウム板上にアルミニウムの多孔質焼結体が一体に接合されたアルミニウム多孔質焼結体を有するアルミニウム複合体を得ることができる。
【0024】
ここで、加熱焼成温度をTm−10(℃)以上に限定した理由は、アルミニウム混合原料粉末に含まれるアルミニウム粉末とチタンを含む焼結助剤粉末が反応を開始する温度がTm−10(℃)だからである。アルミニウムの融点をTmと記載したのは、純粋なアルミニウム融点は660℃であるが、工業的に利用されるアルミニウムは不純物として鉄やシリコンを含有するので融点は660℃よりも低くなるからである。他方、加熱焼成温度を685℃以下に限定した理由は、その温度よりも高い温度に加熱保持すると、焼結体にアルミニウムの液的状の塊が発生するようになるからである。
【0025】
その際、上記アルミニウム混合原料粉末は水溶性樹脂結合剤と水と可塑剤とを混合して粘性組成物とし、この粘性組成物に気泡を混合させた状態で乾燥させて焼結前成形体とし、次いで、この焼結前成形体を上記温度範囲にて加熱焼成しているために、上記焼結前成形体がスポンジ骨格構造体(三次元骨格構造体、開気孔の発泡骨格構造体)なので、得られる焼結体は、スポンジ骨格で囲まれる気孔とスポンジ骨格自体に形成される気孔との2種類の形態の異なる気孔を有するアルミニウム多孔質体になる。
【0026】
また、上記アルミニウム粉末は、上記粘性組成物がアルミニウム箔またはアルミニウム板上に所望の形状に成形可能な程度に粘性を有し、かつ発泡後の焼結前成形体が所望のハンドリング強度を有するようするように調製される。すなわち、その平均粒子径が小さくなると、アルミニウム粉末の質量に対する水溶性樹脂結合剤の質量を多くして、上記粘性やハンドリング強度を確保する必要があるものの、水溶性樹脂結合剤の質量が多くなると焼結前成形体を加熱焼成する際にアルミニウム中に残存する炭素量が増加して、焼結反応が阻害されてしまう。他方、アルミニウム粉末の粒子径が大きすぎると、多孔質焼結体の強度が低下してしまう。
【0027】
従って、請求項2に記載のアルミニウム多孔質焼結体の製造方法のように、好ましくはアルミニウム粉末の平均粒子径を2μm以上として水溶性樹脂結合剤の質量を多くすることによる焼結反応の阻害を防止し、かつ200μm以下として多孔質焼結体の強度を確保する。さらに好ましくはアルミニウム粉末の平均粒子径を7μm〜40μmとする。
【0028】
さらに、焼結助剤粉末は、請求項3に記載のアルミニウム多孔質焼結体の製造方法のように、その平均粒子径r、配合比W質量%を1(μm)≦r≦30(μm)、0.1(質量%)≦W≦20(質量%)、0.1≦W/r≦2とすることが好ましい。
これは、焼結助剤粉末の配合比Wが20質量%を超えるとアルミニウム混合原料粉末中で焼結助剤粉末同士が接点を持つようになって、アルミニウムとチタンの反応熱を制御できなくなるとともに所望の多孔質焼結体が得られないようになるので、0.1(質量%)≦W≦20(質量%)とする。
【0029】
また、0.1(質量%)≦W≦20(質量%)の範囲内であっても、焼結助剤粉末の粒子径によってはアルミニウムとチタンの反応熱が大きくなりすぎる場合があり、反応熱によって溶解したアルミニウムの温度がさらに上昇して粘性が下がり、液滴を生じてしまう場合があった。
【0030】
そこで、種々の条件で作製した試験片を電子顕微鏡で観察した結果から、発熱量をチタンの配合量および粒子径で制御できる範囲内では、チタン粒子の露出表面側からほぼ一定の厚さの表層部だけがアルミニウム反応していることがわかった。これにより、液滴の発生を防止するためには1(μm)≦r≦30(μm)、かつ0.1≦W/r≦2であることが望ましいことを実験的に導出した。
【0031】
なお、0.1≦W/r≦2の意味について、焼結助剤粉末にチタンを利用する場合にて以下に説明すると、チタンの平均粒子径をr、チタンの粒子数をN、チタンの添加質量をw、チタンの比重をD、アルミニウムとの反応によるチタン粒径の減少量をdとすると、反応熱量Qは反応したチタンの体積に比例することから、Q∝4πr2dNである。さらに、チタン粒子の添加量は、チタン粒子1個の平均体積とチタン粒子の数との積により算出されることから、w=4/3πr3DNである。よって後者の式を前者の式に代入すると、Q∝3wd/rDとなる。ここで、3/Dが定数であること、ならびにdが焼結条件によらずほぼ一定であるという観察結果からQ∝w/rである。従って、液滴が発生しないW/rの範囲を実験的に求めて上述のように限定することによって、アルミニウムとチタンの反応熱が大きすぎることによる液滴の発生を防止するものである。
【0032】
また、焼結助剤粉末としての水素化チタンは、そのチタン含有量が95質量%以上である上に、470〜530℃にて脱水素してチタンとなるため、上述の加熱焼成により熱分解してチタンとなる。このため、焼結助剤粉末としてチタンおよび/または水素化チタンを用いることによって、アルミニウム粉末との反応効率を高めることができる。
【0033】
また、上記水溶性結合剤は、アルミニウム混合原料粉末の質量の7%を超えて含まれると、加熱焼成する際に焼結前成形体などに残留する炭素量が増加して、焼結反応が阻害されやすい。他方、0.5%未満であると、焼結前成形体のハンドリング強度を確保することが難しくなる。このため、請求項4に記載の発明のように、アルミニウム混合原料粉末の質量の0.5%〜7%の範囲内で含まれていることが好ましい。
【0034】
これに加え、請求項5に記載の発明のように、アルミニウム混合原料粉末に界面活性剤を添加することにより、効果的に気泡を生成させることができ、この界面活性剤の添加量をアルミニウム混合原料粉末の質量の0.02%以上とすることによって、上記界面活性剤の添加による効果を得ることができ、3%以下とすることによって、焼結前成形体などに残存する炭素量が増加することによる焼結反応の阻害を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るアルミニウム多孔質焼結体を有するアルミニウム複合体の製造方法を実施するための装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態によって製造されたアルミニウム多孔質焼結体を有するアルミニウム複合体の形状を示す斜視図である。
【図3】図2のアルミニウム箔の表面のSEM写真である。
【図4】図2の発泡アルミニウム(アルミニウム多孔質焼結体)の表面のSEM写真である。
【図5】図2の複合体の断面のSEM写真であり、(a)は50倍、(b)は100倍、(c)は400倍である。
【図6】実施例1の発泡アルミニウムのSEM写真である。
【図7】図6の一部拡大SEM写真図である。
【図8】比較例1の発泡アルミニウムのSEM写真である。
【図9】アルミニウム粉末をフリーシンタリングする方法としての従来技術における第5の方法にスラリー発泡法を組み合わせた手法にて得られた発泡アルミニウムの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係るアルミニウム多孔質焼結体を有するアルミニウム複合体の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の製造方法を概略説明すれば、先ず、アルミニウム粉末にチタンおよび/または水素化チタンを混合してアルミニウム混合原料粉末を調製する(アルミニウム混合原料粉末調製工程)。そして、このアルミニウム混合原料粉末に、水溶性樹脂結合剤と水と多価アルコール、エーテルおよびエステルのうちの少なくとも1種からなる可塑剤と炭素数5〜8の非水溶性炭化水素系有機溶剤とを添加して混合し、粘性組成物を調製する(粘性組成物調製工程)。
【0037】
次いで、この粘性組成物のスラリーを、ドクターブレード法等によりアルミニウム箔上に均一の所定厚さで引き延ばしてから乾燥させて、焼結前成形体を得る(焼結前工程)。
そして、この焼結前成形体を非酸化性雰囲気下において、Tm−10(℃)≦加熱焼成温度T≦685(℃)で加熱焼成する(焼結工程)。ここで、Tm(℃)は、アルミニウム混合原料粉末が溶解を開始する温度である。
【0038】
次に、上記製造方法の各工程について詳細に説明する。
上記アルミニウム混合原料粉末調製工程では、アルミニウム粉末として平均粒子径2〜200μmのものが用いられる。すなわち、平均粒子径が小さくなると、粘性組成物が所望の形状に成形可能な程度に粘性を有し、かつ焼結前成形体がハンドリング強度を有するようにするため、アルミニウム粉末に対して水溶性樹脂結合剤を多量に加える必要が生じる。しかしながら、水溶性樹脂結合剤を多量に加えると、焼結前成形体を加熱焼成する際に、アルミニウム中に残存する炭素量が増加して、焼結反応が阻害されてしまう。他方、アルミニウム粉末の粒子径が大きすぎると、発泡アルミニウムの強度が低下してしまう。したがって、アルミニウム粉末としては、上述したように平均粒子径2〜200μmの範囲内、より好ましくは7μm〜40μmの範囲内のものが用いられる。なお、上記平均粒子径は、レーザー回折法によって測定することができる。
【0039】
そして、このアルミニウム粉末に、チタンおよび/または水素化チタンを含む焼結助剤粉末を混合する。これにより、焼結前成形体をTm−10(℃)≦加熱焼成温度T≦685(℃)にて加熱焼成する際に、液滴の塊を生成させることのないアルミニウムの常圧焼結が可能になる。また、水素化チタン(TiH2 )は、そのチタン含有量が47.88(チタンの分子量)/(47.88+1(水素の分子量)×2)で95質量%以上である上に、470〜530℃にて脱水素してチタンとなるため上述の加熱焼成により熱分解してチタンとなる。従って、水素化チタンを混合した場合にも液滴の塊を生成させることのないアルミニウムの常圧焼結が可能となる。なお、上記焼結助剤は、チタンおよび/または水素化チタンを含む限りにおいて、他の焼結助剤粉末を加えてもよい。
【0040】
その際、チタンを含む焼結助剤においては、アルミニウムとチタンの合計100質量%に対して、チタンを0.1〜20質量%含むことが好ましい。
ここで、チタンおよび/または水素化チタンの平均粒子径をr(μm)、チタンおよび/または水素化チタンの配合比をW(質量%)としたときに、1(μm)≦r≦30(μm)、0.1(質量%)≦W≦20(質量%)とし、かつ0.1≦W/r≦2とすることが好ましい。
【0041】
すなわち、平均粒子径が4μmの水素化チタン粉の場合には、0.1≦W/4≦2であることから、上記配合比Wは0.4〜8質量%が好ましい。また、平均粒子径20μmのチタン粉の場合に、0.1≦W/20≦2の条件からは、配合比Wが2〜40質量%となるが、0.1(質量%)≦W≦20(質量%)の条件を付加することにより、2〜20質量%であることが好ましい。
【0042】
また、水素化チタンの平均粒子径は0.1(μm)≦r≦30(μm)としたが、より好ましくは4(μm)≦r≦20(μm)である。すなわち、水素化チタンの平均粒径が1μmより小さいと、自然発火する恐れがあり、他方30μmを超えると、焼結により生成されるAl−Ti化合物が被覆されたチタン粒子から、Al−Ti化合物相が剥離しやすくなり、焼結体に所望の強さが得られなるためである。
【0043】
また、0.1(質量%)≦W≦20(質量%)が好ましいとしたのは、焼結助剤粉末の配合比Wが20質量%を超えると、アルミニウム混合原料粉末中で焼結助剤粉末同士が接点を持つようになって、アルミニウムとチタンの反応熱を制御できなくなるとともに、所望の多孔質焼結体が得られないようになるためである。
【0044】
しかしながら、種々の条件によって試験を行ったところ、0.1(質量%)≦W≦20(質量%)の範囲内であっても、焼結助剤粉末の粒子径によってはアルミニウムとチタンの反応熱が大きくなりすぎる場合があり、反応熱によって溶解したアルミニウムの温度がさらに上昇して粘性が下がり、液滴を生じてしまう場合があった。
【0045】
そこで、上記種々の条件で作製した試験片を電子顕微鏡で観察した結果から、発熱量をチタンの配合量および粒子径で制御できる範囲内では、チタン粒子の露出表面側からほぼ一定の厚さの表層部だけが、アルミニウム反応していることがわかった。これにより、液滴の発生を防止するためには1(μm)≦r≦30(μm)、かつ0.1≦W/r≦2であることが望ましいことを実験的に導出した。
【0046】
次に、上記粘性組成物調製工程においては、上記アルミニウム混合原料粉末に、水溶性樹脂結合剤として、ポリビニルアルコール、メチルセルロースおよびエチルセルロースからなる群から選択される少なくともいずれか一種を、また可塑剤として、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびフタル酸ジ−N−ブチルからなる群から選択される少なくとも一種を、それぞれ加えるとともに、蒸留水と界面活性剤としてのアルキルベタインとを、それぞれ加える。
【0047】
このように、水溶性樹脂結合剤として、ポリビニルアルコール、メチルセルロースやエチルセルロースを用いると、その添加量が比較的少量で足りる。このため、上記水溶性樹脂結合剤の添加量は、アルミニウム混合原料粉末の100質量部に対して、0.5〜7質量%の範囲内である。アルミニウム混合原料粉末の100質量に対して、7質量%を超えると、加熱焼成する際に焼結前成形体などに残留する炭素量が増加して焼結反応が阻害され、他方0.5質量%に満たないと、焼結前成形体のハンドリング強度が確保されないためである。
【0048】
また、アルキルベタインは、アルミニウム混合原料粉末の100質量部に対して、0.02〜3質量%が添加される。アルミニウム混合原料粉末の100質量に対して、0.02質量%を超えると、後述の非水溶性炭化水素系有機溶剤の混合の際に気泡が効果的に生成され、他方3質量%に満たないと、焼結前成形体などに残存する炭素量が増加することによる焼結反応の阻害が防止されるからである。
【0049】
そして、これらを混練した後に、さらに炭素数5〜8非水溶性炭化水素系有機溶剤を混合することにより発泡させて、気泡の混合した粘性組成物を調整する。この炭素数5〜8非水溶性炭化水素系有機溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンの少なくとも一種以上が使用可能である。
【0050】
次に、本実施形態においては、上記焼結前工程は、図1に示すような成形装置を用いて行う。
この成形装置1は、ドクターブレード2、粘性組成物3のホッパ4、予備乾燥室5、恒温・高湿度槽6、乾燥槽7、アルミニウム箔8の送り出しリール9、アルミニウム箔8の支持ロール10、11およびアルミニウム箔8上に焼結前のアルミニウム多孔質体が塗布された焼結前成形体14を案内・支持するロール13を備えた構成になっている。
【0051】
そして、上記焼結前工程においては、ホッパ4に投入された粘性組成物3を、送り出しリール9から連続的に繰り出される、厚さ20μmの帯状の99.9%アルミニウム箔8の上面(塗布面)に、ドクターブレード2によって0.05〜5mmの厚さになるように塗布した後に、予備乾燥室5から恒温・高湿度槽7において発泡させて、その気泡を整寸化した後、乾燥槽7において温度70℃で乾燥させる。次いで、ロール13から送り出されてきた焼結前成形体14を、必要に応じて直径100mmの円形などの所定形状に切り出す。
【0052】
次に、上記焼結工程では、上記焼結前成形体14を、ジルコニア敷粉を敷いたアルミナセッターの上に載置して、露点が−20℃以下のアルゴン雰囲気中に520℃で1時間加熱保持する仮焼成を行う。これにより、焼結前成形体14の水溶性樹脂結合剤成分、可塑剤成分、蒸留水およびアルキルベタインのバインダー溶液を揮発および/または分解させる脱バインダーが行われるとともに、焼結助剤粉末として水素化チタンを用いた場合には脱水素がなされる。
【0053】
その後、仮焼成後の焼結前成形体を、露点が−40℃以下のアルゴンガス雰囲気中において、Tm−10(℃)≦加熱焼成温度T≦685(℃)で加熱焼成することにより、図2に示すような、アルミニウム箔8の片面に、アルミニウム多孔質焼結体15が一体に接合されたアルミニウム複合体16が得られる。
【0054】
この際に、上記焼結前成形体は、アルミニウムの融解温度であるTm(=660)℃まで加熱されると、焼結助剤としてのチタン成分は、アルミニウム粉末とアルミニウム箔との反応が開始するものと考えられるが、アルミニウム粉末およびアルミニウム箔に不純物としてFeやSiなどの共晶合金元素により融点が低下し、実際にはTm−10(℃)までの加熱により、アルミニウムとチタンとの反応が開始して、アルミニウム多孔質焼結体が形成されると同時に、アルミニウム箔も強固に接合される。
【0055】
具体的には、アルミニウムの融点が660℃であるのに対して、純アルミニウム粉として流通している純度98%〜99.7%程度のアトマイズ粉では、650℃前後が溶解開始温度となる。他方、685℃℃より高い温度で加熱焼成を行うと、焼結体にアルミニウムの液滴状の塊が発生してしまう。
【0056】
なお、焼結工程における加熱焼成は、アルミニウム粒子表面およびチタン粒子表面の酸化被膜の成長を抑制するため、非酸化性雰囲気にて行う必要がある。但し、予備加熱として、400℃以下の加熱温度に30分間程度保持する場合には、空気中で加熱してもアルミニウム粒子表面およびチタン粒子表面の酸化被膜はさほど成長しないので、例えば、焼結前成形体を、一旦空気中で300℃〜400℃に10分間程度加熱保持して脱バインダーした後、アルゴン雰囲気中で所定の温度に加熱して焼成してもよい。
【0057】
これにより得られたアルミニウム複合体は、図3〜図5に見られるように、一方の面に緻密なアルミニウム箔層を有するとともに、他方の面に三次元網目構造の金属骨格を有し、かつほぼ均一にAl−Ti化合物が分散したアルミニウム多孔質焼結体を有している。
そして、上記アルミニウム多孔質焼結体は、空孔が直線長さ1cm当たりに20ヶ以上形成されて、70〜90%の全体気孔率を有している。
【0058】
さらに、図5(c)の拡大したSEM写真に見られるように、アルミニウム多孔質焼結体とアルミニウム箔との間には、明瞭な界面がなく、完全にアルミニウム多孔質焼結体とアルミニウム箔とが一体化している。
このため、上記アルミニウム複合体は、リチウムイオン二次電池や電気二重層型キャパシタの集電体として好適に用いることができる。
【実施例】
【0059】
(実施例1〜16)
次に、平均粒子径2.1μm、9.4μm、24μm、87μmおよび175μmのAl粉と、平均粒子径9.8μm、24μmおよび42μmのTi粉と、平均粒子径4.2μm、9.1μmおよび21μmのTiH2粉とを用意する。そして、上述の実施の形態に従って、表1に示す割合でAl粉にTi粉および/またはTiH2粉を混合したアルミニウム混合原料粉末1〜10を調製し、表2に示す配合組成でバインダー溶液1〜5を調製し、それらと非水溶性炭化水素系有機溶剤を表3に示す割合で混練して実施例1〜16の粘性組成物を製造した。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
次いで、これらの実施例1〜16の粘性組成物を、ドクターブレード法によってアルミニウム箔上に引き伸ばして塗布し、温度および湿度を一定時間保持するよう管理して、気泡を整寸化した後、大気乾燥機にて温度70℃で乾燥させる。その際の粘性組成物の塗布厚さ並びに上記温度、湿度及び保持時間を表3に示す。そして、乾燥後の粘性組成物を、アルミニウム箔と共に直径100mmの円形に切り出して実施例1〜16の焼結前成形体を得る。
【0064】
そして、これらの実施例1〜16の焼結前成形体を、ジルコニア敷粉を敷いたアルミナセッターの上に載置して、アルゴン気流雰囲気中または大気中で脱バインダーを行った後に、加熱焼成して、発泡アルミニウムを得る。その際の加熱焼成温度と加熱焼成保持時間についても表3に示す。
【0065】
次に、これにより得られた実施例1〜16の発泡アルミニウムの収縮率と気孔率とを算出した。また、実体顕微鏡写真から3次元空孔数および走査型電子顕微鏡(SEM)写真から骨格の孔数をそれぞれ計測するとともに、同SEM写真にて液滴凝固の有無を確認し、さらには、電子線マイクロアナライザー(EPMA)による面分析によって発泡アルミニウムの骨格表面にAl−Ti化合物の有無を確認した。それらの結果を表5に示すとともに、実施例1の発泡アルミニウムのSEM写真を図6に、その一部拡大写真を図7にそれぞれ示した。
【0066】
次に、実施例1〜16の発泡アルミニウムについて、それぞれ圧下率20%にてロール圧延テストを行って割れの有無を黙視にて確認した後に、20mm×50mmの矩形状に切り出して対向角部間の電気抵抗を測定した。次いで、これらの矩形状の発泡アルミニウムをそれぞれ直径5mmの円柱体の外周に巻きつけて、割れの有無を目視にて確認した。それらの結果を表5に示した。
【0067】
(比較例1〜9)
次いで、実施例と同一のAl粉、Ti粉およびTiH2粉を用意して調製した比較アルミニウム混合原料粉末1〜5を上記アルミニウム混合原料粉末1〜9とともに用いて、表2に示すバインダー溶液1〜5によって非水溶性炭化水素系有機溶剤を表4に示す割合で混練した他は、実施例と同様にして比較例1〜9の発泡アルミニウムを製造した。そして、比較例1〜9の発泡アルミニウムを実施例と同様の方法にて評価して表5に示すとともに、比較例1の発泡アルミニウムのSEM写真を図8した。
【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
表5から判るように、実施例1〜16の発泡アルミニウムは、有孔金属焼結体の骨格長さ100μm当たりの孔数2〜4であるとともに、金属骨格間にある3次元空孔を1インチ当たり52ヶ以上有し、すなわち、1cm当たりに20ヶ以上有している。そして、発泡アルミニウムに液滴状の塊が生じることもなく、電気抵抗も低く、巻き付け試験による割れもなかった。従って、高出力化、高エネルギー密度化が要求される電池やキャパシタの正極集電体に適している。
【0071】
次に、活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)粉末と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdE)と、導電材として人造黒鉛粉とを重量比で86:6:8に混合して正極剤を調製し、この正極剤に溶剤としてN−メチル−2ピロリドンを混合して正極活物質スラリーを調製した。
【0072】
次いで、この正極活物質スラリーに、実施例1〜16の発泡アルミニウムおよび従来例1の発泡アルミニウムを10分間浸漬し、取り出して乾燥させた後に、圧延して厚さ0.5mmの実施例1〜16のリチウムイオン電池の正極を作製した。
【0073】
なお、従来例1の発泡アルミニウムとしては、従来技術の第2の方法であるスポンジウレタンを中子にした鋳型にアルミニウムを圧入する方法で製造した30PPIの発泡アルミニウムを用いた。また、これらの実施例1〜16の発泡アルミニウムおよび従来例1の発泡アルミニウムの正極活物質の充填密度は表5に示した。
【0074】
次いで、直径1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mmの円柱体をそれぞれ用意して、実施例1〜16および従来例1のリチウムイオン電池の正極を巻き付けて、活物質が剥離するか否かを目視観察し、剥離が認められなかった最小径を表5に示した。
【0075】
その結果、表5から判るように、実施例1〜16のリチウムイオン電池の正極は、直径1.5mm〜2.5mmの円柱体に巻き付けても活物質が剥離しなかったのに対して、従来例1の正極は、直径3mmの円柱体に巻き付けた段階で活物質が剥離してしまった。さらには、実施例1〜16のリチウムイオン電池の正極は、活物質の充填密度が4.1g/cm3以上であるのに対して、従来例1の正極は、活物質の充填密度が3.84.1g/cm3と小さかった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
リチウムイオン二次電池や電気二重層型キャパシタの集電体等として用いて好適な、アルミニウムの箔または板上にアルミニウム多孔質焼結体が一体化されたアルミニウム複合体の製造方法として利用できる。
【符号の説明】
【0077】
成形装置
3 粘性組成物
8 アルミニウム箔
14 焼結前成形体
15 アルミニウム多孔質焼結体
16 アルミニウム複合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム粉末にチタンおよび/または水素化チタンを含む焼結助剤粉末を混合してアルミニウム混合原料粉末とし、次いでこのアルミニウム混合原料粉末に、水溶性樹脂結合剤と、水と、多価アルコール、エーテルおよびエステルのうちの少なくとも1種からなる可塑剤と、炭素数5〜8の非水溶性炭化水素系有機溶剤とを添加・混合して粘性組成物とし、この粘性組成物をアルミニウム箔またはアルミニウム板上に成形して発泡させることにより焼結前成形体とした後に、この焼結前成形体を非酸化性雰囲気にて、上記アルミニウム混合原料粉末が融解を開始する温度をTm(℃)としたときに、Tm−10(℃)≦T≦685(℃)となる加熱焼成温度T(℃)で加熱焼成することにより、上記アルミニウム箔またはアルミニウム板上にアルミニウムの多孔質焼結体が一体に接合されたアルミニウム多孔質焼結体を有するアルミニウム複合体を得ることを特徴とするアルミニウム多孔質焼結体を有するアルミニウム複合体の製造方法。
【請求項2】
上記アルミニウム粉末は、平均粒子径が2〜200μmであることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム多孔質焼結体を有するアルミニウム複合体の製造方法。
【請求項3】
上記焼結助剤粉末の平均粒子径をr(μm)、上記焼結助剤粉末の配合比をW質量%としたときに、1(μm)≦r≦30(μm)、1≦W≦20(質量%)であり、かつ0.1≦W/r≦2であることを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム多孔質焼結体を有するアルミニウム複合体の製造方法。
【請求項4】
上記水溶性樹脂結合剤は、上記アルミニウム混合原料粉末の質量の0.5%〜7%の範囲内で含まれていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のアルミニウム多孔質焼結体を有するアルミニウム複合体の製造方法。
【請求項5】
上記アルミニウム混合原料粉末に、当該のアルミニウム混合原料粉末の質量の0.02〜3%の範囲内の界面活性剤を添加することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のアルミニウム多孔質焼結体を有するアルミニウム複合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−280951(P2010−280951A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135021(P2009−135021)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】