説明

アロステリックヘモグロビン修飾体の組成物および前記組成物の製造法

本発明は、不純物(特にポリマー不純物)を実質的に含有しない、アロステリックヘモグロビン修飾体の新規組成物を提供する。1つの実施態様においては、本発明の新規組成物は、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物と、この化合物の製造時に生じる100ppm未満のポリマー不純物とを含有する。ポリマー不純物を実質的に含有しないアロステリックヘモグロビン修飾体を製造する方法は本発明に含まれる。本発明の方法によって形成される生成物を精製するための改良法も本発明に含まれる。新規の精製法は、粗製組成物を水不混和性もしくはある程度水不混和性の溶媒〔たとえばメチルイソブチルケトン(MIBK)〕で抽出して不純物(特にポリマー不純物)の量を減少させることを含む。新規精製法はさらに、粗製の合成生成物を再結晶し、次いで再結晶した生成物を濾過することによって不純物を減少させることを含む。本発明はさらに、本発明の製造法によって製造される生成物、およびこれらの生成質を含んだ組成物を分析するための方法も含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
【0002】
本発明は、不純物の含有量が低レベルである、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物に関する。本発明はさらに、このような組成物の新規製造法に関する。アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物を精製するための改良された方法も本発明に含まれる。さらに、不純物の検出と定量を可能にする、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物の分析法も本発明に含まれる。
【背景技術】
【0003】
ヘモグロビンは、アロステリック機構によって酸素を送達する四量体タンパク質である。それぞれのタンパク質鎖が1つのヘム基を有しているので、ヘモグロビン分子上の酸素にとって4つの結合部位がある。それぞれのヘム基が、置換ポルフィリンと中央の鉄原子を有している。ヘム中の鉄原子は、第一鉄(+2)の状態であっても、第二鉄(+3)の状態であってもよいが、第一鉄形だけが酸素に結合する。第一鉄-酸素結合は可逆性が高い。第1のO2分子がヘモグロビンに結合すると、同じヘモグロビン分子へのさらなるO2の結合が促進される。言い換えると、O2は協同的にヘモグロビンに結合する。したがって、第1の酸素のヘムへの結合は、第2の酸素分子の場合よりはるかに高い結合エネルギーを必要とし、第3の酸素の結合はより低い結合エネルギーを必要とし、第4の酸素は最も低い結合エネルギーを必要とする。ヘモグロビンA(成人における主要なヘモグロビン)は、二つ折りシンメトリーで配置された2つのαサブユニットと2つのβサブユニットとからなる。αダイマーとβダイマーは、酸素放出時に回転して中央の大きな水キャビティをオープンにする。αβダイマーの運動を伴うアロステリック遷移は、第3の酸素の結合と第4の酸素の結合との間で起こる。
【0004】
AMINCO(商標)HEM-O-SCAN等のよく知られている装置を使用して酸素解離曲線をプロットして、ヘモグロビンの親和性と協同作用(アロステリック作用)の程度を調べることができる。プロットにおいて、Y軸はヘモグロビンの酸素化のパーセントを示し、X軸は水銀ミリメートル表示(mmHg)での酸素の分圧を示す。50%酸素飽和点から水平線を引き、この水平線と曲線との交点から分圧のX軸まで垂直線を引くと、一般にP50として知られている値が求められる。この値は、ヘモグロビンサンプルが酸素で50%飽和されたときの分圧(mmHg)である。生理学的な条件下(すなわち、37℃、pH7.4、および二酸化炭素の分圧40mmHg)では、標準的な成人のヘモグロビンに対するP50値は約26.5mmHgである。試験されるヘモグロビンに対して通常より低いP50値が得られる場合は、酸素解離曲線が“左シフトしている”と考えられ、高親和性のヘモグロビンが存在していることがわかる。これとは逆に、試験されるヘモグロビンに対して通常より高いP50値が得られる場合は、酸素解離曲線が“右シフトしている”と考えられ、低親和性のヘモグロビンが存在していることがわかる。このような低親和性のヘモグロビンは、より低い酸素分圧にてより容易に酸素を失い、したがって酸素を組織により効率的に送達するのに有用である場合がある。
【0005】
ヘモグロビンのアロステリック平衡に影響を及ぼすことは、酸素の送達によって影響を受ける疾患を処置するための実行可能な方法となる場合がある、ということが見出されている。たとえば、ヘモグロビンを高親和性状態に転化させることは、一般には、デオキシヘモグロビンSに関連した問題(鎌状赤血球貧血)を処置するのに有用であると考えられている。ヘモグロビンを低親和性状態に転化させることは、組織が低酸素圧によって悩まされる種々の病状(たとえば、虚血、腫瘍の放射線増感、一酸化炭素中毒、胎児性酸素送達、および保存血液の酸素親和性の回復)に対して一般的に有用であると考えられている。
【0006】
図1A〜1Dは、ヘモグロビンに“右シフトの”アロステリック効果を及ぼす種々の化合物(本明細書では“アロステリックヘモグロビン修飾体化合物”または“アロステリックエフェクター化合物”と呼ぶ)の化学構造を示している。図1Dに記載の一般構造によって示される系列の化合物(本明細書では“RSR化合物”と呼ぶ)は、強力なアロステリック効果を有する広範囲の系列の化合物を示している。たとえば、下記の構造
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、X+はH+である)を有する、この系列における1つの化合物である2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸(エファプロキシラル、RSR13とも呼ばれる)は、ヘモグロビンのアロステリックエフェクターであり、インビボでの組織の酸素化を促進することがわかっている。一般には、エファプロキシラルは、生理学的に許容しうる塩(たとえば、モノナトリウム塩;すなわちX+がNa+である)として投与される。エファプロキシラルは、酸素に対する結合親和性が低下するようにヘモグロビンのアロステリック修飾を引き起こし、この結果、赤血球による組織への酸素分配が増大する。エファプロキシラルは、ルイス肺癌に罹っているマウスにおいて分割放射線治療の効果を高めることが報告されている。Teicher(1996)によるDrug Dev.Res.38:1-11を参照。放射線効果の増大は、エファプロキシラルと酸素呼吸とを組み合わせた処置によって、EMT6マウスの乳腺腫瘍において観察され、このとき正常な組織に対しては放射線による影響の増大は認められなかった。Rockwell and Kelley(1998)によるRad.Oncol.Invest.6:199-208を参照。さらに、放射線単独の場合と比較して、放射線とエファプロキシラルとを組み合わせることによって、マウスの線維肉腫の増殖が減少することが示されている。Teicher(1996)によるDrug Dev.Res.38:1-11、およびKhandelwalら(1996)によるRad.Oncol.Invest.4:51-59を参照。この系列の化合物が、それらの有用性および使用法と共に、1997年8月26日付け取得の米国特許第5,661,182号;1994年3月1日付け取得の米国特許第5,290,803号;1995年1月17日付け取得の米国特許第5,382,680号;1995年7月11日付け取得の米国特許第5,432,191号;1997年7月15日付け取得の米国特許第5,648,375号;1997年10月14日付け取得の米国特許第5,677,330号;1998年3月24日付け取得の米国特許第5,731,454号;1992年6月16日付け取得の米国特許第5,122,539号;1999年7月27日付け取得の米国特許第5,927,283号;1998年10月27日付け取得の米国特許第5,827,888号;1991年9月17日付け取得の米国特許第5,049,695号;1997年1月7日付け取得の米国特許第5,591,892号;1991年9月17日付け取得の米国特許第5,049,695号;1993年10月5日付け取得の米国特許第5,250,701号;1993年9月28日付け取得の米国特許第5,248,785号;1998年1月6日付け取得の米国特許第5,705,521号;および1996年6月11日付け取得の米国特許第5,525,630号;を含めた多くの特許に記載されている。これら特許文献の全開示内容を参照により本明細書に含める。
【0009】
これらの化合物が一般的に有用かつ重要であることから、これらを合成するための多くの方法が開発されている。現在までに開発されている主要な方法のうちの2つが図2に比較されており、ここでは例示のために、2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸のナトリウム塩(エファプロキシラルナトリウムやエファプロキシラル-Naとも呼ばれる)(5)の合成を使用している。図2を参照すると、第1の方法(プロセスAと呼ぶ)においては、エファプロキシラル-Na(5)を遊離酸(6)として合成し、次いでこれを塩基で処理してナトリウム塩(5)を得ている(Randad et al.,(1991) J.Med.Chem.34:752-757)。第2の方法(プロセスBと呼ぶ)においては、この化合物をエチルエステル(4)として合成し、次いでこれをケン化してナトリウム塩(5)を得ている(Witt et al.,DE2,432,560、1976年1月22日付け公開)。プロセスAは、高度の発熱反応のために工業規模の製造に簡単には適用することができず、またハロゲン化炭化水素溶媒を使用する。プロセスBはハロゲン化炭化水素溶媒を使用せず、また工業規模の製造により適用しやすく、したがって好ましい方法である。しかしながら、プロセスBの主要な欠点は、ポリ(エチルメタクリレート)とこの化合物の前駆体(本明細書ではこれらを総称してPEMと呼ぶ)というポリマー不純物の予期せぬ生成であり、こうしたポリマー不純物は、下記のメカニズムにしたがって工程2において形成される。
【0010】
【化2】

【0011】
プロセスBによるエファプロキシラルナトリウム(5)の製造においては、ポリ(エチルメタクリレート)は一般に、約0.5重量%(5000パーツ・パー・ミリオン(ppm))〜約9重量%(90,000ppm)の濃度にて形成される。
【0012】
これらの化合物は、疾患を処置する際に一般的に有用かつ重要であるにも関わらず、医薬グレードの組成物を得る上で幾つかの問題が残っている。これらの化合物は特に、無菌の静脈注射用(IV)溶液製剤として患者に投与される。これらの化合物を試験するプロセスにおいて、製剤の製造(IV溶液の形成)に伴う難題は、上記のような合成時に生じるPEM副生物によるものであることがつきとめられている。したがって、患者に対して使用できるよう、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の製剤中のポリマー不純物のレベルを減少させるための方法が求められている。さらに、一般には不純物の量がより少ない、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物が求められている。本発明は、高純度のアロステリックエフェクター化合物を製造するための改良された方法を提供する。
【0013】
先行技術の方法に関連する他の問題は、これらの化合物を含んだ組成物から調製されるIV溶液に不具合を引き起こすおそれがある低レベルの不純物を測定するための有効な方法が現時点ではないということである。前述したように、特に望ましくない不純物はPEMである。PEMを測定するための先行技術の方法は、幾つかの点において(特に、極めて低レベルのPEMを検出できないという点において)問題がある。PEMを検出・測定するための現在の方法としては、1H-NMR、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)もしくはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、MALDI-TOFマススペクトロメトリー、紫外線(UV)分析、および赤外線(IR)分析などがある。エファプロキシラルエチルエステル(4)もしくはエファプロキシラルナトリウム(5)中に≧2〜4重量%のPEMを含有する混合物に対しては、後の2つの方法が正確である。前の方法は、≧0.5重量%のPEMの濃度を測定するのに使用することができる。たとえば、≧0.5重量%のPEMを含んだ中間体を分析するには、PEMのメチレンのプロトンシグナルの積分と、エファプロキシラルエチルエステル(4)のエトキシ-メチレンのプロトンシグナルの積分とを比較することによって1H-NMRを使用することができる。PEMとエファプロキシラルエチルエステルのそれぞれのシグナルに適切な分子量を掛けることによって、PEMの重量%(%w/w)を求めるための式を得ることができる。Mugurumaらは、熱分解-ガスクロマトグラフィー(PY/GC)を使用して薬物物質中のポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)を定量分析するための方法を説明している。この方法を使用することで、Mugurumaは≧0.1重量%のレベルのPMMAを検出することができ、このとき精度は、0.1%のレベルにて約4.5%であった(Muguruma et al.(July 1999)LC-GC International,pp.432-436)。
【0014】
しかしながら、アロステリックヘモグロビン修飾体の高純度組成物を分析するためには、先行技術の方法はいずれも使用することができない。検出限界が十分に低い値ではないからである。本発明の改良された方法は、極めて低いレベルの不純物(エファプロキシラル-Na中に≦100ppm(0.0100重量%)のPEM)を含有する、アロステリックヘモグロビン修飾体の組成物をもたらす。したがって、極めて低いレベルのPEMおよび他のポリマー不純物を十分な感度で測定すべく、低い検出限界値と良好な特異性を有する、これら化合物の分析法が依然として求められている。比較的扱いにくいマトリックス中のポリマーの同定に対して熱分解/ガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(PY/GC/MS)が使用されているので、この方法が、エファプロキシラル-Na中のポリマーの痕跡レベルの分析に対して有用であるかどうかを調べた。広範囲に及ぶ検討により、PEMの痕跡レベルを定量する(定量限界=10ppm)ための方法が見出された。ここに記載のPY/GC/MS法は、痕跡レベルの不純物の検出と定量化に必要とされる感度、精度、正確さ、および再現性を得るために、単一イオンモニタリングと同位体標識のPEM内部標準を使用する新規の分析法である。この方法は、図3に示されている合成法に変更が加えられる場合には、PEM以外のポリマー不純物を含有するアロステリックヘモグロビン修飾体の組成物の分析にも適用することができる。
【0015】
したがって本発明の目的は、ポリマー不純物(特にPEM)の含有量がより少ない、そして一般的に不純物の含有量がより少ない、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、ポリマー不純物の含有量がより少ない、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物を合成するための改良された方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、公知のいずれかの合成法によって(特に本明細書に開示の方法によって)製造されるアロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物を精製するための改良された方法を提供することにある。
【0017】
最後に、本発明の他の目的は、低レベルの不純物(特にポリマー不純物)の検出と定量化を可能にする、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物を分析する方法を提供することにある。
【発明の開示】
【0018】
本発明は、不純物(特にポリマー不純物)を実質的に含有しない、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の新規組成物を含む。本発明の範囲内に含まれるアロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物は、下記の式
【0019】
【化3】

【0020】
〔式中、
XとZは、CH2、CO、NH、およびOからなる群から独立的に選択され、Yは、COおよびNHからなる群から選択され、但しXとYとZは互いに異なっていなければならず;
R5とR6は、水素、ハロゲン、未置換C1-12アルキル基、置換C1-12アルキル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、未置換芳香族基、置換芳香族基、未置換ヘテロ芳香族基、置換ヘテロ芳香族基、およびR5とR6を連結している脂肪族環の一部であるアルキル部分からなる群から独立的に選択され;
R7は、水素;ナトリウム、カリウム、およびアンモニウム(これらに限定されない)を含めた群から選択されるカチオン性の対イオン;金属;未置換C1-6アルキル基;ならびに置換C1-6アルキル基;からなる群から選択され;そして
R8-12は、水素、ハロゲン、未置換C1-3アルキル基、置換C1-3アルキル基、およびR8-12部位のうちの2つを組み込んでいる芳香族環もしくは脂肪族環のアルキル部分からなる群から独立的に選択される〕によって一般的に示される。
【0021】
本発明の好ましい実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物は、下記の式
【0022】
【化4】

【0023】
〔式中、
R5とR6は、水素、ハロゲン、未置換C1-12アルキル基、置換C1-12アルキル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、未置換芳香族基、置換芳香族基、未置換ヘテロ芳香族基、置換ヘテロ芳香族基、およびR5とR6を連結している脂肪族環の一部であるアルキル部分からなる群から独立的に選択され;
R7は、水素;ナトリウム、カリウム、およびアンモニウム(これらに限定されない)を含めた群から選択されるカチオン性の対イオン;金属;未置換C1-6アルキル基;ならびに置換C1-6アルキル基;からなる群から選択され;そして
R8-12は、水素、ハロゲン、未置換C1-3アルキル基、置換C1-3アルキル基、およびR8-12部位のうちの2つを組み込んでいる芳香族環もしくは脂肪族環のアルキル部分からなる群から独立的に選択される〕によって一般的に示される。
【0024】
R5とR6がHまたはCH3から独立的に選択され、そしてR7が水素または上記のカチオン性対イオンから選択されるのがさらに好ましい。
本発明の最も好ましい実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物は2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸(エファプロキシラル)(5)である。
【0025】
【化5】

【0026】
ここで言う不純物とは、アロステリックヘモグロビン修飾体組成物に属さないあらゆる物質を含む。一般には、組成物中に存在する不純物は、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物を製造するのに使用されるプロセスの結果として生じるものである。たとえばポリマー不純物は、プロセスBの方法によってこれら化合物を合成するのに使用される出発物質のうちのある物質の重合によって生じる。本発明の好ましい実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体組成物は、0.010%未満の非ポリマー不純物と100ppm(0.01%)未満のポリマー不純物(より具体的にはポリマー不純物PEM)を含有する、エファプロキシラルのナトリウム塩(5)である。最も好ましい実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体組成物は、80ppm(0.008%)未満のポリマー不純物(具体的にはポリマー不純物PEM)を含有する。
【0027】
本発明は、ポリマー不純物を実質的に含有しない、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物の製造法を含む。アロステリックヘモグロビン修飾体化合物を製造するための改良された方法が図3に示されており、該方法は、代表的な化合物としてのエファプロキシラルナトリウム(5)の合成を表わしている。本発明の最も好ましい実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物を、ポリマー副生物の形成を促進する金属を含有しない反応容器中で合成し、得られる粗製合成物質をメチルイソブチルケトン(MIBK)による抽出で精製し、次いでエタノール/アセトン中にて再結晶を行う。本発明のこの実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物を製造する方法は、(a)置換アニリンと4-ヒドロキシフェニル酢酸とをカップリングさせて、対応する置換フェノールを生成させる工程;(b)工程(a)の生成物をハロゲン化アルキルエステルに加えて、置換エステルを生成させる工程;および(c)前記置換エステルをケン化して、当該酸の塩を得る工程;を含む。上記したように、好ましい実施態様においては、全ての工程が、ポリマー副生物の形成を促進する金属(ここでは“触媒金属”と呼ぶ)を含有しない反応容器中で行われる。ポリマー副生物の形成を促進する触媒金属の例としては、銅、鉄、ニッケル、パラジウム、およびロジウムなどがあるが、これらに限定されない。反応容器のための許容しうる材料としては、市販触媒金属の含有量の少ない、ガラスライニングステンレス鋼、不動態化ステンレス鋼、ハステロイ(Hastelloy)(登録商標)合金、および類似の合金などがあるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明はさらに、不純物(特にポリマー不純物)を含有するアロステリックヘモグロビン修飾体組成物の粗製合成組成物を精製するための改良された方法を含む。これらの組成物を精製するための改良された方法は、工程(c)にしたがって得られた粗製組成物を、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、およびクロロホルムと塩化メチレン(これらに限定されない)を含めた群から選択される塩素化溶媒(これらに限定されない)を含めた、工程(c)において形成されるエステルが溶解可能であるような任意の水不混和性又はある程度水不混和性の溶媒で抽出する工程;および粗製組成物を、エタノール、アセトン、アセトン/エタノールの混合物、アセトン/メタノールの混合物、およびエタノール/メタノール/アセトン/水の混合物(これらに限定されない)を含めた溶媒で再結晶する工程;を含む。好ましい実施態様においては、再結晶した生成物を、ポリマーフィルターを通して濾過することによってさらに精製する。前記ポリマーフィルターは、ポリ(二フッ化ビニリデン)(PVDF)フィルターとセルロースエステルフィルター(これらに限定されない)を含めた群から選択される。
【0029】
最後に、本発明は、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物を、不純物(特にポリマー不純物、そして特にPEM)に関して分析するための方法を含む。本発明のこの実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物を分析するための方法は、(a)アロステリックヘモグロビン修飾体化合物を含んだ組成物を熱分解する(PY)工程;および(b)前記熱分解組成物をガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(GC/MS)によって分析する工程;を含む。この方法の感度を、痕跡量のポリマー不純物を測定するのに必要な二桁程度だけ向上させるために、分析の前に同位体内部標準をサンプルに加える。これは、薬物中のポリマーの痕跡レベルの分析に対して、PY/GC/MSによる分析の前に内部標準(特に同位体内部標準)を使用することに関する最初の報告である、考えられる。内部標準は、分析される化合物中のポリマー不純物(本出願においては内発的なPEM))に対して推測される濃度とほぼ同じ濃度をもたらすような量にて加えられる。上記したように、内部標準(特に同位体内部標準)を使用すると、分析方法における精度と正確さを維持しつつ感度が大幅に向上し、したがって10〜100ppmの範囲の定量的測定が可能となる。水素の同位体、炭素の同位体、および窒素の同位体(これらに限定されない)を含めたいかなる原子の同位体も使用することができる。このような同位体の例としては、重水素(D)、炭素13(13C)、酸素18(18O)、および窒素15(15N)等があるが、これらに限定されない。ここに記載の方法は、PY/GC/MSによる分析が適用可能なあらゆる化合物の同定と定量に拡張することができる。
【0030】
本発明のさらなる利点と新規特徴は、一部は下記の説明と実施例において示されており、また一部は下記の説明を考察することで当業者には明らかとなるであろう。あるいは、本発明のさらなる利点と新規特徴は本発明を実施することによって理解することができる。本発明の利点は、特定の計器によって実現・達成することができ、そして特許請求の範囲に特に指摘されている組み合わせにて実現・達成することができる。言うまでもないが、上記の一般的な説明と下記の詳細な説明は代表的且つ解説的なものにすぎず、特許請求されている本発明がこれらによって限定されることはない。
【0031】
本発明は、不純物(特にポリマー不純物)を実質的に含有しない、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の新規組成物を含む。1つの実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物は、100ppm未満のポリマー不純物〔ポリ(エチルメタクリレート)(PEM)〕を含有する2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸(エファプロキシラルとしても知られている)である。本発明は、極めて低レベルの不純物を含有するアロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物の製造法を含む。1つの実施態様においては、本発明の方法は、ポリマー副生物の形成を促進する使用可能な金属(available metals)を含有しない反応容器を使用して、本明細書に記載の方法にしたがってアロステリックヘモグロビン修飾体化合物を合成することを含む。
【0032】
本発明はさらに、不純物(特にポリマー不純物)を含有するアロステリックヘモグロビン修飾体組成物の粗製合成組成物を精製するための改良された方法を含む。これらの組成物を精製するための改良された方法は、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、およびクロロホルムと塩化メチレン(これらに限定されない)を含めた群から選択される塩素化溶媒(これらに限定されない)を含めた、ポリマー不純物が溶解可能であるような任意の水不混和性又はある程度水不混和性の溶媒で粗製組成物を抽出する工程;およびエタノール、アセトン、アセトン/エタノールの混合物、アセトン/メタノールの混合物、およびエタノール/メタノール/アセトン/水の混合物(これらに限定されない)を含めた溶媒で粗製組成物を再結晶する工程;を含むが、これらの工程に限定されない。好ましい実施態様においては、再結晶生成物の溶液を、ポリマーフィルターを通して濾過することによってさらに精製し、このとき前記ポリマーフィルターは、ポリ(二フッ化ビニリデン)(PVDF)フィルターとセルロースエステルフィルター(これらに限定されない)を含めた群から選択される。
【0033】
最後に、本発明は、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物を不純物(特にPEM))に関して分析する方法を含む。本発明のこの実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物を分析する方法は、(a)アロステリックヘモグロビン修飾体化合物を含んだ組成物を熱分解する工程;および(b)特にポリマー検体の同位体標識バージョンを内部標準として、あるいはポリマー検体の類縁体を内部標準として使用するガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(GC/MS)によって、前記熱分解組成物を分析する工程;を含む。
【0034】
本発明の態様を説明する上で種々の用語が使用される。本発明の成分についての説明を分類しやすいように、下記のような定義を適用する。
言うまでもないが、“a”または“an”実在物(“a” or “an” entity)という用語は、当該実在物の1種以上を表わしている。たとえば、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物(an allosteric hemoglobin modifying compound)は、1種以上のアロステリックヘモグロビン修飾体化合物を表わしている。したがって、“a”もしくは“an”、“1種以上(one or more)”、および“少なくとも1種(at least one)”は、本明細書では区別なく使用されている。
【0035】
本明細書で使用している“アロステリックヘモグロビン修飾体化合物”または“アロステリックエフェクター化合物”とは、下記の式
【0036】
【化6】

【0037】
〔式中、
XとZは、CH2、CO、NH、およびOからなる群から独立的に選択され、Yは、COおよびNHからなる群から選択され、但しXとYとZは互いに異なっていなければならず;
R5とR6は、水素、ハロゲン、未置換C1-12アルキル基、置換C1-12アルキル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、未置換芳香族基、置換芳香族基、未置換ヘテロ芳香族基、置換ヘテロ芳香族基、およびR5とR6を連結している脂肪族環の一部であるアルキル部分からなる群から独立的に選択され;
R7は、水素;ナトリウム、カリウム、およびアンモニウム(これらに限定されない)を含めた群から選択されるカチオン性の対イオン;金属;未置換C1-6アルキル基;ならびに置換C1-6アルキル基;からなる群から選択され;そして
R8-12は、水素、ハロゲン、未置換C1-3アルキル基、置換C1-3アルキル基、およびR8-12部位のうちの2つを組み込んでいる芳香族環もしくは脂肪族環のアルキル部分からなる群から独立的に選択される〕で一般的に示すことができる特定の種類の化合物を表わしている。
【0038】
本発明の好ましい実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物は、下記の式
【0039】
【化7】

【0040】
〔式中、
XとZは、CH2、NH、およびOからなる群から独立的に選択され;
R5とR6は、水素、ハロゲン、未置換C1-12アルキル基、置換C1-12アルキル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、未置換芳香族基、置換芳香族基、未置換ヘテロ芳香族基、置換ヘテロ芳香族基、およびR5とR6を連結している脂肪族環の一部であるアルキル部分からなる群から独立的に選択され;
R7は、水素;ナトリウム、カリウム、およびアンモニウム(これらに限定されない)を含めた群から選択されるカチオン性の対イオン;金属;未置換C1-6アルキル基;ならびに置換C1-6アルキル基;からなる群から選択され;そして
R8-12は、水素、ハロゲン、未置換C1-3アルキル基、置換C1-3アルキル基、およびR8-12部位のうちの2つを組み込んでいる芳香族環もしくは脂肪族環のアルキル部分からなる群から独立的に選択される〕で一般的に示される。
【0041】
本発明の他の好ましい実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物は、下記の式
【0042】
【化8】

【0043】
〔式中、
R5とR6は、水素、ハロゲン、未置換C1-12アルキル基、置換C1-12アルキル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、未置換芳香族基、置換芳香族基、未置換ヘテロ芳香族基、置換ヘテロ芳香族基、およびR5とR6を連結している脂肪族環の一部であるアルキル部分からなる群から独立的に選択され;
R7は、水素;ナトリウム、カリウム、およびアンモニウム(これらに限定されない)を含めたカチオン性の対イオン;金属;未置換C1-6アルキル基;ならびに置換C1-6アルキル基;からなる群から選択され;そして
R8-12は、水素、ハロゲン、未置換C1-3アルキル基、置換C1-3アルキル基、およびR8-12部位のうちの2つを組み込んでいる芳香族環もしくは脂肪族環のアルキル部分からなる群から独立的に選択される〕で一般的に示される。
【0044】
R5とR6がHまたはCH3から独立的に選択され、そしてR7が上記の水素またはカチオン性対イオンから選択されるのがさらに好ましい。
最も好ましい実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物は2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸(エファプロキシラル)(5)である。
【0045】
【化9】

【0046】
本明細書で使用している“不純物”は、一般には、アロステリックヘモグロビン修飾体の合成時に生じる、あるいはアロステリックヘモグロビン修飾体の分解生成物からの、アロステリックヘモグロビン修飾体組成物に属さないあらゆる物質を含む。“不純物”としては、ポリ(エチルメタクリレート)や前記化合物の前駆体等のポリマー不純物(ここでは総称的にPEMと呼ぶ)、ならびに合成プロセス時に生じる他の関連した不純物があるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書で使用している“ポリマー不純物”とは、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物を得るのに使用されるプロセスのあらゆる重合副生物を表わしている。1つの実施態様においては、ポリマー不純物は、下記の構造
【0048】
【化10】

【0049】
(式中、
R,R’,R”,およびR”’は、未置換C1-12アルキル基、置換C1-12アルキル基、および水素からなる群から独立的に選択され;そして
nは、反復構造単位を有するポリマーにとって適切なあらゆる単位数である)を有する化合物から選択される。
【0050】
本明細書に記載の化合物(5)の合成の結果として生じるポリマー不純物はポリ(エチルメタクリレート)(PEM)である。
本発明のアロステリックヘモグロビン修飾体の合成では、反応条件によって最大で約10重量%のポリマー副生物が生じることがある。前述したように、プロセスBによるエファプロキシラルナトリウム(5)の合成においては、一般には、ポリマー不純物PEMが約0.5重量%(5000ppm)〜約9重量%(90,000ppm)の濃度にて形成される。
【0051】
“関連した不純物”とは、合成プロセスから生じる、ポリマーではない全ての不純物(たとえば、構造異性体や分解生成物)を表わしている。関連した不純物としては、3-モノメチルエファプロキシラル(3MMRS13)、α-デスメチルエファプロキシラル(DDMRS13)、モノメチルα to COOH(DMRS13)、3,4-ジメチルエファプロキシラル(3,4-DMRS13)、α-エチル-エファプロキシラル、二価酸(DA)、3,5-ジメチルアニリン、アミドフェノール、および表1に示す構造を有する関連した不純物のエチルエステルなどがあるが、これらに限定されない。他の関連した不純物は、当業者にとっては明らかであろう。関連した不純物に関して、本明細書に記載の精製法は、International Conference on Harmonisation(ICH) Guidelines(連邦公報にて、あるいはEMEAによって公開)に示されている、高用量非経口薬物に対する不純物の許容レベルに適合しているか、あるいは許容レベルを凌ぐ。高用量薬物の場合、不適格な不純物(unqualified impurity)に対する限度はNMT0.05%である。本発明の好ましい実施態様においては、関連した不純物は、合計して約0.75重量%(75000ppm)を超えない量にて存在する。
【0052】
不純物を“実質的に含有しない”とは、ポリマー不純物の程度が約0.5重量%(5000ppm)を超えない、さらに好ましくはポリマー不純物の程度が、0.1%、0.07%、0.05%、0.025%、0.02%、0.015%、0.01%(100ppm)、もしくは0.009%を超えない、そして最も好ましくはポリマー不純物の量が0.008%(80ppm)もしくは0.007%を超えないか、または0.006%(60ppm)以下であり〔0.005%(50ppm)、0.004%(40ppm)、0.003%(30ppm)、および0.001%(10ppm)を含む〕、関連した不純物の程度が約0.1重量%を超えない、さらに好ましくは関連した不純物の程度が0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、または0.05%を超えない、ということを意味している。
【0053】
当業者には周知のことであるが、97%が不純物を実質的に含有しない組成物は、実質的に97%の純度であると見なされる。
本明細書で使用している“触媒”とは、反応において消費されることなく、化学反応を開始させるか又は化学反応の速度を早める物質を表わしている。触媒は一般に、反応のための代替経路をもたらすことで化学反応に対する活性化エネルギーを低下させる。ポリマー副生物の形成を促進する触媒としては、銅、鉄、ニッケル、パラジウム、およびロジウム等の金属があるが、これらに限定されない。ポリマー副生物の形成を促進する金属を“触媒金属”と呼ぶ。
【0054】
本明細書で使用している“抽出(extraction)”または“抽出すること(extracting)”とは、液体-液体分配、または溶解した物質をある液相から、それと接触している別の(不混和性もしくはある程度混和性の)液相に移すプロセスを表わしている。
【0055】
本明細書で使用している“再結晶(recrystallization)”または“再結晶すること(recrystallizing)”は、溶媒からの沈殿によって物質を精製する方法を表わしている標準的な用語である。
【0056】
本出願の全体にわたって、種々の引用文献が記載されていることに注意しなければならない。各文献の全内容を参照により本明細書に含める。
本発明は、不純物(特にポリマー不純物)を実質的に含有しない、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の新規組成物を含む。本発明の範囲内に含まれる、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物が、上記にて一般構造で示されている。前述したように、不純物は、所望のアロステリックヘモグロビン修飾体組成物ではない全ての物質を含む。一般には、組成物中に存在する不純物は、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物を得るのに使用されるプロセスの結果として生じる物質である。たとえば、ポリマー不純物は、プロセスBで示されている方法にしたがって、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物を合成するのに使用される出発物質のうちのある物質の重合によって生じる。本発明の好ましい実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体組成物は、100ppm(0.01%)未満のポリマー不純物(具体的にはポリマー不純物PEM)と1000ppm(0.1%)未満の関連不純物を含有するエファプロキシラルのナトリウム塩(5)である。最も好ましい実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体組成物は、80ppm未満のポリマー不純物と500ppm未満の関連不純物を含有する。
【0057】
本発明は、不純物を実質的に含有しない、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物を製造する方法を含む。不純物を“実質的に含有しない”とは、ポリマー不純物の程度が約0.5重量%(5000ppm)を超えない、さらに好ましくはポリマー不純物の程度が、0.1%、0.07%、0.05%、0.025%、0.02%、0.015%、0.01%(100ppm)、もしくは0.009%を超えない、そして最も好ましくはポリマー不純物の量が0.008%(80ppm)もしくは0.007%を超えないか、または0.006%(60ppm)以下であり〔0.005%(50ppm)、0.004%(40ppm)、0.003%(30ppm)、および0.001%(10ppm)を含む〕、関連不純物の程度が約0.1重量%を超えない、さらに好ましくは関連不純物の程度が0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、または0.05%を超えない、ということを意味している。本発明のこの実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物を製造する方法は、(a)置換アニリンと4-ヒドロキシフェニル酢酸とをカップリングさせて、対応する置換フェノールを生成させる工程;(b)工程(a)の生成物をハロゲン化アルキルエステルに加えて、置換エステルを生成させる工程;および(c)置換エステルをケン化して、当該酸の塩を得る工程;を含み、このとき全ての工程を、ポリマー副生物の形成を促進する金属類(本明細書では触媒金属と呼ぶ)を含有しない反応容器中にて行う。触媒金属の例としては、銅、鉄、ニッケル、パラジウム、およびロジウムなどがあるが、これらに限定されない。ステレンレス鋼(SS)は一般に、主としてニッケル、クロム、およびモリブデンを含む。反応容器用として許容しうる材料としては、ガラスライニングステンレス鋼、不動態化ステンレス鋼、ハステロイ合金、および類似の合金などがあるが、これらに限定されない。ハステロイ276合金は、主としてニッケル、クロム、およびモリブデンを含む。
【0058】
実施例1は、ハステロイ反応容器またはSS反応容器を使用した場合の、本発明の方法によるエファプロキシラルのナトリウム塩(エファプロキシラル-Na)(5)の合成を説明している。エファプロキシラル-Na(5)の合成は、ポリマー不純物PEMの形成を促進しないいかなる反応溶液でも行うことができ、こうした反応容器としては、SS(316)反応器、ハステロイ276反応器、またはガラスライニングSS反応器などがあるが、これらに限定されない。好ましい実施態様においては、(5)の合成は、ハステロイ276反応器、SS反応器、またはガラスライニングSS反応器中にて行う。実施例1に記載の方法によって製造した生成物は、3重量%未満のポリ(エチルメタクリレート)(PEM)不純物を含有した。他方、モネル(Monel)(登録商標)反応容器を使用すると、約9重量%のPEMを含有する生成物が得られた。モネルは、主として銅とニッケルを含んだ合金である。このように、反応容器を変えると、反応時に形成されるPEMの量が大幅に減少した。
【0059】
本発明はさらに、不純物(特にポリマー不純物)を含有するアロステリックヘモグロビン修飾体組成物の粗製合成組成物を精製するために改良された方法を含む。本発明のこの実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物を製造する方法は、(a)置換アニリンと4-ヒドロキシフェニル酢酸とをカップリングさせて、対応する置換フェノールを生成させる工程;(b)工程(a)の生成物をハロゲン化アルキルエステルに加えて、置換アルキルエステルを生成させる工程;(c)置換アルキルエステルをケン化して、当該酸の塩を得る工程;および(d)工程(c)から得られた生成物を精製して、不純物(特にポリマー不純物)を実質的に含有しない生成物を得る工程;を含み、このとき全ての工程を、ポリマー副生物の形成を促進する金属類を含有しない反応容器中にて行う。これらの組成物を精製するための改良された方法は、粗製組成物を、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、およびクロロホルムと塩化メチレン(これらに限定されない)を含めた群から選択される塩素化溶媒(これらに限定されない)を含めた、ポリマー不純物が溶解可能であるような任意の水不混和性又はある程度水不混和性の溶媒で抽出する工程;および粗製組成物を、エタノール、アセトン、アセトン/エタノールの混合物、アセトン/メタノールの混合物、およびエタノール/メタノール/アセトン/水の混合物(これらに限定されない)を含めた溶媒で再結晶する工程;を含むが、これらの工程に限定されない。好ましい実施態様においては、再結晶した生成物を、ポリマーフィルターを通すことによってさらに精製する。ポリマーフィルターは、ポリ(二フッ化ビニリデン)(PVDF)フィルターとセルロースエステルフィルター(これらに限定されない)を含めた群から選択される。
【0060】
アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の粗製合成組成物を精製するための本発明の改良法を、例示のためにエファプロキシラル-Na(5)の合成を使用して図3に概略的に示す。先行技術の方法と比較して、本発明の改良法は、抽出による精製工程、再結晶工程、および濾過工程を加えること、ならびにポリマー副生物の形成を促進する金属類を含有しない反応容器中での合成を含む。特に、ポリマー不純物〔たとえば、ポリ(エチルメタクリレート)すなわちPEM〕のレベルを抑えるために幾つかの変更を加えた。本発明の1つの実施態様においては、粗製の合成生成物(アロステリックヘモグロビン修飾体化合物)をメチルイソブチルケトン(MIBK)等の溶媒で抽出して、ケン化の前に不純物(特にポリマー不純物)を除去する。粗製生成物を抽出するのに使用できる溶媒の例としては、MIBK、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、およびクロロホルムと塩化メチレン(これらに限定されない)を含めた群から選択される塩素化溶媒(これらに限定されない)を含めて、ポリマー不純物が溶解可能であるような任意の水不混和性又はある程度水不混和性の溶媒が挙げられる。粗製生成物は少なくとも1回抽出されるが、他の実施態様においては、粗製生成物は、除去しようとする不純物に応じて2回以上抽出してよい。正確な抽出手順は、当業者であれば容易に決定することができる。
【0061】
実施例2は、実施例1に記載の方法にしたがって製造されるエファプロキシラル-Na(5)の、メチルイソブチルケトン(MIBK)を使用する抽出による精製を説明している。
実施例3は、実施例1と2に記載の方法にしたがって製造されるエファプロキシラルナトリウム(5)の、アセトン/エタノールを使用する再結晶による精製を説明している。粗製合成組成物または抽出処理された粗製合成組成物を、エタノール、アセトン、アセトン/エタノールの混合物、アセトン/メタノールの混合物、およびエタノール/メタノール/アセトン/水の混合物等の溶媒系を使用して再結晶して、不純物(特にポリマー不純物)の量を減少させる。これらの生成物を再結晶するのに使用できる溶媒の例としては、エタノール、アセトン、アセトン/エタノールの混合物、アセトン/メタノールの混合物、およびエタノール/メタノール/アセトン/水の混合物などがあるが、これらに限定されない。精製処理した生成物のPEM含量は100ppm未満であった。
【0062】
本発明の最も好ましい実施態様においては、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物を、ポリマー副生物の形成を促進する金属類を含有しない反応容器中にて合成し、次いで得られる粗製合成生成物をメチルイソブチルケトン(MIBK)で抽出することによって精製し、次にエタノール/アセトンによる再結晶によって精製する。
【0063】
実施例4は、GC/MS法(サンプルをGCカラムに導入する前に、サンプルを熱分解処理する)を使用して、アロステリックヘモグロビン修飾体化合物の組成物中における痕跡量の不純物(具体的にはポリマー不純物、より詳細にはポリマー不純物PEM)を検出・定量化するために開発された方法を説明している(Matheson et al.(May 1997) American Laboratory,pp24C-24F;Irwin(1982) in Analytical Pyrolysis,A Comprehensive Guide,Marcel Dekker,Inc.)。例示のために不純物PEMを使用した場合の、熱分解/ガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(PY/GC/MS)機器内のサンプルの流れをスキーム2に概略的に示す。シグナル対ノイズ比を向上させるために、そしてメタクリル酸エチルモノマーから生じる特定のマスフラグメントを選択的にモニターするために、単一イオンモニタリング(SIM)を使用してマススペクトロメトリーのデータを収集した〔Hites(1997) in Handbook of Instrumental Techniques for Analytical Chemistry,Settles,F.Ed.,Prentice-Hall Inc.p.620〕。この方法を使用して、10ppmという低レベルのPEMを高信頼性にて定量化することができる。
【0064】
【化11】

【0065】
分析にかける前に、同位体内部標準〔重水素化ポリ(エチル-d5メタクリレート)(PEM-d5)〕をサンプルに加える(PEM-d5のMwは12,555、Mnは12,260、PIは1.02)。これは、薬物中のポリマーの痕跡レベルの分析に対して、PY/GC/MSによる分析の前に内部標準(特に同位体内部標準)を使用する最初の報告であると考えられる。現在、この方法によるサンプルの分析においては、内部標準は使用されていない。内部標準は、内生的なPEMとほぼ同じ推測濃度にて加えられる。内部標準(特に同位体内部標準)を使用すると、分析法における精度と正確さが大幅に向上し、したがって10〜100ppmの範囲の定量的な測定が可能となる。精度と正確さの増大は、実質的に同じ化合物(同位体含量だけが、したがって分子量だけが異なる)は、分析しようとする化合物と同じ熱分解条件にさらされる、という事実によるものである。前述したように、実施例4において使用されている内部標準は水素の同位体(すなわちPEM-d5)であるが、水素以外の原子の同位体(炭素の同位体、酸素の同位体、および窒素の同位体などがあるが、これらに限定されない)も使用することができる。このような同位体の例としては、重水素(D)、炭素13(13C)、酸素18(18O)、および窒素15(15N)などがあるが、これらに限定されない。スキーム3は、PEMとPEM-d5の熱分解から生成するモノマーを示しており、スキーム4は、PEMとPEM-d5からマススペクトロメーターにて検出される実際のイオンを示している。
【0066】
【化12】

【0067】
【化13】

【0068】
図4は、エファプロキシラルのサンプルに対するトータルイオンクロマトグラフ(TIC)を表わしており、薬物の熱分解とイオン化によって生じる全てのイオンが示されている。図4を参照すると、サンプルが低レベルのPEM(50ppm未満)とPEM-d5(内部標準)を含有していることがわかる。図5は、図4のTICにおける4.7分〜5.7分の領域を拡大したものであり、クロマトグラフィー的に分離されたPEM-d5(主イオン:m/e 104;5.25分)とPEM(主イオン:m/e 99;5.38分)から生じるイオンの保持時間を示している。図6Aと6Bは、SIMモード分析を使用した場合の、PEM-d5のクロマトグラム(図6A)とマススペクトル(SIM)(図6B)を示している。図7Aと7Bは、SIMモード分析を使用した場合の、PEMのクロマトグラム(図7A)とマススペクトル(SIM)(図7B)を示している。
【0069】
エチルメタクリレート(EM)の量(最終的にはPEMの量)を定量化するために、エファプロキシラル-Naサンプル中の許容しうる範囲のPEMに対応したPEM濃度範囲にわたって標準曲線を作成する。次いで各サンプルについて3回分析し、重水素化PEMのPY/GC/MSの結果に基づいて作成した直線検量線を使用してPEMの濃度を測定する。実施例5は、PY/GC/MSによるPEMの定量化のための典型的な標準検量線の作成について説明している。図8は、実施例5に記載のPY/GC/MS法に対する標準検量線を示している。
【0070】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例によって本発明が限定されることはない。科学的用語と技術的用語はいずれも、当業者によって理解されている意味を有する。下記の特定の実施例は、本発明の組成物を製造する方法を説明しており、これらの実施例によって本発明の範囲が限定されると見なすべきではない。これらの方法は、本発明に包含されるが、具体的には開示されていない組成物を得るために、種々のバリエーションに適応させることができる。さらに、同じ組成物を幾らか異なった方法で得るべく方法を変えることは、当業者にとっては明らかであろう。
【0071】
実施例6は、実施例3から得られる再結晶生成物を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルター、セルロースエステルフィルター、およびポリ(二フッ化ビニリデン)(PVDF)フィルターの3種のフィルターを通して濾過することによる、実施例1、2、および3に記載の方法にしたがって製造されるエファプロキシラルナトリウム(5)の精製を説明している。結果を表3に示す。表3を参照すると、PVDFによる濾過で、PEMのレベルが約55ppmから約9ppmに減少したことがわかる。
【実施例】
【0072】
物質. 下記の反応は、ハステロイ276反応器、SS(316)反応器、またはガラスライニングSS反応器中にて行った。ガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリーは、5971、5972、もしくは5973マススペクトロメーター(低温冷却オプションを装備、GC/MSケムステーションソフトウェアのバージョンA.03.00以上)と結びつけたヒューレット・パッカード5890もしくは6890ガスクロマトグラフを使用して行った。ガスクロマトグラフィーカラム、DB-5カラム15m×0.25mm×0.25μm、VWR。
【0073】
実施例1 2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸の製造
図3は、2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸を製造するための、一般的な5工程反応スキーム(詳細については後述)を示している。
【0074】
アミドフェノール(3)の合成
図3に示すように、4-ヒドロキシフェニル酢酸(200kg)(2)をキレシン(760リットル)に攪拌しながら加えた。この混合物に3,5-キシリデン(3,5-ジメチルアニリン)(178リットル)(1)を加えた。反応混合物を加熱還流し、反応の進行と共に水を共沸蒸留によって除去した。水の除去が完了した後、反応混合物を蒸留してアミドフェノール(3)を得た(温度が下がると固化した)。再結晶するために、固体にエタノール(1180リットル)とメチルイソブチルケトン(MIBK)(56リットル)を加え、溶解するまで混合物を還流した。溶解したら、水を加え(70℃、490リットル)、混合物を攪拌し、6時間で約0℃まで徐々に冷却した。この温度で混合物を少なくとも1時間攪拌した。混合物を濾過し、得られた固体を5℃にてエタノール/水(1:2)で洗浄し、次いで5℃にてキシレン(452リットル)で洗浄した。
【0075】
エファプロキシラルエチルエステル(4)の合成
結晶化したアミドフェノール(3)にメチルイソブチルケトン(MIBK)(827リットル)を加え、混合物を還流し、共沸蒸留によって水を除去した。反応混合物を70℃未満に冷却し、無水エタノール(731リットル)を加え、次いで無水炭酸カリウム(668kg)と2-ブロモイソ酪酸エチル(366リットル)を加えた。反応混合物を少なくとも7時間還流し、次いで0℃未満に冷却した。混合物を濾過し、得られた固体をMIBKで洗浄した(洗浄液と濾液とを合わせた体積が1208リットルになった)。混合物を蒸留してエタノールを除去し、MIBKを加えて体積を約2163リットルに調整した。MIBK混合物を、希薄塩基水溶液(32kgの重炭酸ナトリウムを604リットルの水中に溶解して得られる水溶液)で、次いで酸水溶液(63リットルの を572リットルの水中に溶解して得られる水溶液)で、次いで水(3×700リットル)で抽出した。混合物を蒸留してMIBKを除去し、約35℃に冷却した。ヘプタン(約572リットル)を加え、そして追加のヘプタン(約1145リットル)を1時間で徐々に加えながら溶液を攪拌した。混合物を約12℃に冷却し、少なくとも2時間攪拌し、次いで濾過した。固体であるエファプロキシラルエチルエステル(4)をヘプタン(318リットル)で洗浄した。
【0076】
エファプロキシラルナトリウム(5)の合成
先ず無水エタノール(880リットル)と水(19リットル)とを混合し、次いで水酸化ナトリウム(36kg)を加えた。混合物を濾過し、エファプロキシラルエチルエステル(4)を加え、反応混合物を少なくとも3時間還流した。水酸化ナトリウム(10N,1モル当量)を加え、最後の添加から少なくとも5時間、還流を続けた。反応混合物を蒸留によって濃縮し、無水エタノール(1056リットル)を加えた。水の含量は0.5%未満であった。反応混合物を約40℃に、次いで35℃に冷却し、少なくとも2時間攪拌した。反応混合物を減圧にて約1408リットルに濃縮し、約10℃に冷却し、少なくとも5時間攪拌した。反応混合物を濾過し、得られた固体〔主として、2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸のナトリウム塩(エファプロキシラルナトリウム)(5)で構成される〕をエタノール(10℃にて282リットル)で洗浄した。
【0077】
実施例2 MIBKでの抽出によるエファプロキシラルナトリウム(5)の精製
実施例1に記載の方法を使用して得られた生成物(5)(325kg)に精製水(1658リットル)を加えた。約423リットルの溶媒が除去されるまで、混合物を減圧にて50℃以下の温度で蒸留した。さらに423リットルの精製水を加え、得られた水溶液をMIBK(390リットル,30℃未満)で抽出した。有機相を廃棄し、水性相を再度MIBK(228リットル,30℃未満)で抽出し、有機相を廃棄した。
【0078】
実施例3 アセトン/エタノールでの再結晶によるエファプロキシラルナトリウム(5)の精製
水溶液中にて実施例1と2に記載のように合成したエファプロキシラルのナトリウム塩(5)を、減圧にて50℃以下の温度で、溶媒が最大限除去されるまで濃縮し、それから無水エタノール(406リットル)を加えて5〜5.4%の水分を有する混合物を得た。次いで混合物を約47℃に冷却し、アセトン(975リットル)を加え、本混合物を、温度を保持しながら攪拌した。結晶化後、混合物を少なくとも1時間攪拌してから、等体積のアセトンを加えた。次いで混合物を約15℃の温度に徐々に冷却し、少なくとも5時間攪拌した。得られた結晶をフィルター上に捕集し、アセトン(146リットル)で洗浄した。
【0079】
実施例4 2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸中の痕跡量のポリ-エチルメタクリレート不純物の定量化
以下に記載するのは、熱分解/ガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(PY/GC/MS)を使用して、2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸中の痕跡量のPEM不純物を測定する方法である。PY/GC/MSは、当該検体が高い分子量を有していて、幾らか揮発性であるか又は不揮発性である場合に有用である。上記にて詳細に説明したように、一般には、分析しようとするサンプルを制御された仕方で加熱して、再現性のある熱分解誘導化合物のフラグメントを生成させ、次いでこのフラグメントを通常のGCまたはGC/MSによって分析する。痕跡量のPEMを含有するサンプルを熱分解に付すという場合においては、エチルメタクリレート(EM)モノマーが生成し、これをGCまたはGC/MSによって正確に測定する。重水素化PEMのメタノール/塩化メチレン溶液等の内部標準を導入して、分析試験において必要な精度と正確さを得る。重水素化PEMは、そのより大きな質量単位によって検体PEMと区別される。
【0080】
固体である2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸ナトリウム塩(5)の5gサンプルをメタノール中に溶解し、この溶液に、PEMの重水素化類縁体を塩化メチレン中に溶解して得た溶液を内部標準として加えた。次いで、40:60のメタノール:塩化メチレン比が達成されるまで、さらなる塩化メチレンを加えた。塩化メチレンは、マトリックスから放出されるPEMを可溶化するのに必要とされた。サンプルのアリコートを、ガラスウールを詰めた調製石英管(a prepared quartz tube)中に入れた。溶媒を蒸発除去した後、石英管を熱分解ユニット中に装入し、公知の方法を使用してPY/GC/MSによって分析した。サンプル中のPEM濃度を、実施例5に記載のように、重水素化PEMのPY/GC/MSの結果に基づいて作成された直線検量線を使用して算出した。
【0081】
実施例5 PY/GC/MSによるPEMの定量化のための標準検量線の作成
実施例4に記載の方法にしたがって3種の標準溶液を調製し、分析した。許容しうる直線性が、該方法にて規定されるキャリブレーション範囲の両端を超えることを実証するために、さらに3種の標準溶液を調製した。表2は、分析された各標準の濃度を示している。該方法にて通常使用されるキャリブレーションレベルに相当するキャリブレーションレベルを星印で示す。標準溶液を最も低い濃度から最も高い濃度まで分析し、量比(Amount Ratio)(X軸)vs.レスポンス比(Response Ratio)(Y軸)を下記のようにプロットすることによって濃度検量線を作成した。
【0082】
量比(X軸)は、PEMの濃度を各標準溶液中に存在するPEM-d5の濃度で割って得られる値である。濃度はいずれも、分析される化合物サンプルの量として表示され、表2に示されている濃度(ng/μl)に、分析される標準溶液の体積(μl)を掛けることによって算出される。本実施例の場合、結果として得られる単位は、分析されるサンプル中のngである。“ng/分析サンプル”という単位の使用においては、カラムへの物質移動率(%)が、内部標準とサンプルの両方に関して同じである、という仮定がなされている。こうした仮定が適切であることが回復実験(recovery experiments)にて実証されている。
【0083】
“レスポンス比”(Y軸)は、PEMピーク(m/z=99)の実測エリアをPEM-d5ピーク(m/z=104)の実測エリアで割ることによって算出される。対になっているデータポイント(各標準に関して対応している比)に対して非加重最小二乗直線回帰を行って、キャリブレーションプロットのライン式(勾配とy切片)を求める。サンプル溶液の濃度〔“ng オンカラム(ng on-column)”〕を求めるには、式1に示すように、ライン式をPEM濃度関して解く(すなわち、y=mx+bをxに関して解く)。
【0084】
【数1】

【0085】
固体サンプル中の濃度を算出するには、式(1)から誘導した[PEM]値に、分析されるサンプル溶液の体積(μlの単位)を掛け、これをサンプル溶液中の固体サンプルの濃度(mg/μlの単位)で割る。こうして得られる結果は、PEM(ng)/エファプロキシラル-Na(mg)で表示されるPEM濃度である。この数はさらに、ppmとして表わすこともできる。
【0086】
式(1)に示されている算出は、「Hewlett-Packard MS ChemStation User’s Guide for HP G1034C MS Chemstation Software,Hewlett-Packard Company,Publication number G1034-90043,第1版,2/93」に一般的に説明されている。この算出は、内部標準を含めた分析のためのMS Chemstationソフトウェアによって自動的に行われる。この手順を使用して、分析される6つの標準に対する検量線プロットを作成した。こうして得られる検量線(図8に示す)においてR2の値は0.994であった。
【0087】
実施例6 ポリ(二フッ化ビニリデン)(PVDF)フィルターを通して濾過することによるエファプロキシラルナトリウム(5)の精製
実施例1、2、および3に記載のように製造した2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸ナトリウム塩(エファプロキシラル-Na)のサンプルを、実施例5に記載のようにPEMに関して分析した。この分析の結果によれば、PEMの含量は、エファプロキシラル-Naの1g当たり50.3±0.3μg(50ppm)であった。このRSR13-Na組成物を、下記のように、薬物として使用すべく配合した。1リットル容量のフラスコに、塩化ナトリウム(2.25g)、無水リン酸二水素ナトリウム(135mg)、第二リン酸ナトリウム七水和物(7mg)、次いで約800mlの脱イオン水を加えた。固体が完全に溶解するまで混合物をかき混ぜた。この溶液にエファプロキシラル-Na(21.3g)を加えた。再び、固体が完全に溶解するまで混合物をかき混ぜた。0.1Nの塩酸を使用して、溶液のpHを約7.9に調節した。最後に、脱イオン水を使用して所定の体積に希釈した。こうして得られる溶液は、配合されたエファプロキシラル薬物となる。
【0088】
製剤化エファプロキシラル-Naの分析
13×100mmの試験管中にて、4mlアリコートの配合されたエファプロキシラル薬物に20μlのPEM-d5内部標準溶液を加えた。混合物を渦流によって均一にし、ドライアイス-イソプロパノール浴中に入れて凍結させた。次いでこの凍結サンプルを一晩凍結乾燥した。こうして得られた凍結乾燥ケークに400μlのメタノールを加え、渦流混合した。得られた混合物に600μlの塩化メチレンを加え、渦流混合した。調製混合物の代表的なサンプルを、卓上用の遠心分離機にて5分処理した。5μlの上澄み液を遠心分離管から石英管に移し、前述のようにPY/GC/MSによって分析した。この分析に基づいた、製剤中のPEMに対する測定値は、エファプロキシラル-Naの1g当たり50.9±5.0μgのPEMであった。
【0089】
配合されたエファプロキシラル-NaのPVDF濾過による精製
上記のように製造した配合エファプロキシラル薬物のサンプル(50ml)を50mlのガラスシリンジ中に入れた。0.22μm、25mmの3つの使い捨てシリンジフィルター(フィルター面積3.9cm2)(表3に記載)のうちの1つをシリンジに取り付けた。選定されたフィルターを通して約8ml/分の割合で溶液を押し出した。全部で50mlの濾液を清浄なガラス容器中に集めた。各フィルターのタイプに対し、4mlの均一なアリコートの濾液を、前述したようにPEM含量に関して分析した。これらの濾過実験の結果を表3に示す。
【0090】
これまでの説明では、本発明の原理だけが説明されていると考えられる。“含む(comprise)”、“含む(comprising)”、“含む(include)”、“含む(including)”、および“含む(includes)”という用語は、本明細書と特許請求の範囲において使用されているときは、1つ以上の規定された特徴、整数、成分、または工程の存在を明示することを意図しているが、1つ以上の他の特徴、整数、成分、工程、またはこれらの群の存在もしくは追加を排除してはいない。さらに、当業者にとっては多くの改良や変更を容易に行えるので、本発明を上記の組成物と方法だけに限定することは望ましくない。したがって、全ての改良形と等価物も、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内に含まれる。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1A〜1Eは、ヘモグロビンに対して“右シフトの”アロステリック作用を及ぼす種々の化合物の化学構造を示している。図1Dで示されている化合物(RSR化合物と呼ぶ)は、強いアロステリック作用を有する大きな系列の化合物のうちの代表的な化合物である。
【図2】アロステリックヘモグロビン修飾体である2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸(エファプロキシラルとしても知られている)を合成するために開発された、先行技術による主要な方法のうちの2つを示している。
【図3】アロステリックヘモグロビン修飾体である2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸(エファプロキシラルとしても知られている)を合成するために開発された、本発明の改良法を示している。
【図4】エファプロキシラルのサンプルに対するトータルイオンクロマトグラフ(TIC)を表わしており、薬物の熱分解とイオン化によって生じる全てのイオンが示されている。さらに、サンプルは低レベルのPEM(50ppm未満)とPEM-d5(内部標準)を含有している。
【図5】図4のTICにおける4.7分〜5.7分の領域を拡大したものであり、クロマトグラフィー的に分離されたPEM-d5(主イオン:m/e 104;5.25分)とPEM(主イオン:m/e 99;5.38分)から生じるイオンの保持時間を示している。
【図6A】図6Aと図6Bは、SIMモード分析を使用した場合の、PEM-d5のクロマトグラム(図6A)とマススペクトル単一イオンモニタリング(SIM)(図6B)を示している。
【図6B】図6Aと図6Bは、SIMモード分析を使用した場合の、PEM-d5のクロマトグラム(図6A)とマススペクトル単一イオンモニタリング(SIM)(図6B)を示している。
【図7A】図7Aと図7Bは、SIMモード分析を使用した場合の、PEMのクロマトグラム(図7A)とマススペクトル(SIM)(図7B)を示している。
【図7B】図7Aと図7Bは、SIMモード分析を使用した場合の、PEMのクロマトグラム(図7A)とマススペクトル(SIM)(図7B)を示している。
【図8】実施例4に記載のPY/GC/MS法に対する標準検量線を示している。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物を実質的に含有しない、アロステリックエフェクター化合物を含む組成物であって、前記アロステリックエフェクター化合物が、下記の式
【化1】

(式中、
XとZは、CH2、CO、NH、およびOからなる群から独立的に選択され、Yは、COおよびNHからなる群から選択され、但しXとYとZは互いに異なっていなければならず;
R5とR6は、水素、ハロゲン、未置換C1-12アルキル基、置換C1-12アルキル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、未置換芳香族基、置換芳香族基、未置換ヘテロ芳香族基、置換ヘテロ芳香族基、およびR5とR6を連結している脂肪族環の一部であるアルキル部分からなる群から独立的に選択され;
R7は、水素;ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択されるカチオン性の対イオン;金属;未置換C1-6アルキル基;ならびに置換C1-6アルキル基;からなる群から選択され;そして
R8-12は、水素、ハロゲン、未置換C1-3アルキル基、置換C1-3アルキル基、およびR8-12部位のうちの2つを組み込んでいる芳香族環もしくは脂肪族環のアルキル部分からなる群から独立的に選択される)を有する化合物の群から選択される前記組成物。
【請求項2】
前記不純物が、ポリ(エチルメタクリレート)(PEM)、3-モノメチルエファプロキシラル(3MMRS13)、α-デスメチルエファプロキシラル(DDMRS13)、モノメチルα to COOH(DMRS13)、3,4-ジメチルエファプロキシラル(3,4-DMRS13)、α-エチル-エファプロキシラル、二価酸(DA)、3,5-ジメチルアニリン(3,5-DMA)、アミドフェノール、およびエファプロキシラルのエチルエステルからなる群から選択されるポリマー不純物と他の関連不純物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記不純物が、下記の構造
【化2】

(式中、
R、R’、R”、およびR”’は、未置換C1-12アルキル基、置換C1-12アルキル基、水素、ハロゲン、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、未置換ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から独立的に選択され;そして
nは、反復構造単位を有するポリマーにとって適切なあらゆる単位数である)を有する化合物の群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
R’が未置換C1-3アルキル基または置換C1-3アルキル基から選択され、Rがメチル基またはエチル基である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマー不純物がポリ(エチルメタクリレート)(PEM)である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリマー不純物が組成物中に約500ppm未満の量にて存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマー不純物が組成物中に約200ppm未満の量にて存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリマー不純物が組成物中に約100ppm未満の量にて存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリマー不純物が組成物中に約80ppm未満の量にて存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリマー不純物が組成物中に約10ppm未満の量にて存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
前記関連不純物がそれぞれ、組成物中に約1000ppm未満の量にて存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
前記関連不純物がそれぞれ、組成物中に約500ppm未満の量にて存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
前記アロステリックエフェクター化合物が、下記の化学構造
【化3】

(式中、
R5とR6は、水素、ハロゲン、未置換C1-12アルキル基、置換C1-12アルキル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、未置換芳香族基、置換芳香族基、未置換ヘテロ芳香族基、置換ヘテロ芳香族基、およびR5とR6を連結している脂肪族環の一部であるアルキル部分からなる群から独立的に選択され;
R7は、水素;ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択されるカチオン性の対イオン;金属;未置換C1-6アルキル基;ならびに置換C1-6アルキル基;からなる群から選択され;そして
R8-12は、水素、ハロゲン、未置換C1-3アルキル基、置換C1-3アルキル基、およびR8-12部位のうちの2つを組み込んでいる芳香族環もしくは脂肪族環のアルキル部分からなる群から独立的に選択される)を有する化合物の群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
R5とR6がHまたはCH3から独立的に選択され、R7が水素またはカチオン性対イオンから選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記アロステリックエフェクター化合物が、式
【化4】

(式中、Xは、H;ならびに、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択されるカチオン性対イオン;からなる群から選択される)で示される2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸(エファプロキシラル)(5)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
ポリマー不純物を実質的に含有しない、アロステリックエフェクター化合物を含んだ組成物の製造法であって、
(a) 置換アニリンと4-ヒドロキシフェニル酢酸とをカップリングさせて、対応する置換フェノールを生成させる工程;
(b) 工程(a)の生成物をアルキルエステルハロゲン化物に加えて、置換エチルエステルを生成させる工程;および
(c) 置換アルキルエステルをケン化して、当該酸の塩を得る工程;
を含み、このとき全ての工程を、ポリマー副生物の形成を促進する金属類を含有しない反応容器中にて行う、前記製造法。
【請求項17】
前記ポリマー不純物が、下記の構造
【化5】

(式中、
R、R’、R”、およびR”’は、未置換C1-12アルキル基、置換C1-12アルキル基、水素、ハロゲン、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、未置換ヘテロ芳香族基、および置換ヘテロ芳香族基からなる群から独立的に選択され;そして
nは、反復構造単位を有するポリマーにとって適切なあらゆる単位数である)を有する化合物の群から選択される、請求項16に記載の製造法。
【請求項18】
R’が未置換C1-3アルキル基または置換C1-3アルキル基から独立的に選択され、Rがメチル基またはエチル基である、請求項17に記載の製造法。
【請求項19】
前記ポリマー不純物がポリ(エチルメタクリレート)(PEM)である、請求項16に記載の製造法。
【請求項20】
前記ポリマー不純物が組成物中に約500ppm未満の量にて存在する、請求項16に記載の製造法。
【請求項21】
前記ポリマー不純物が組成物中に約200ppm未満の量にて存在する、請求項16に記載の製造法。
【請求項22】
前記ポリマー不純物が組成物中に約100ppm未満の量にて存在する、請求項16に記載の製造法。
【請求項23】
前記ポリマー不純物が組成物中に約80ppm未満の量にて存在する、請求項16に記載の製造法。
【請求項24】
前記ポリマー不純物が組成物中に約10ppm未満の量にて存在する、請求項16に記載の製造法。
【請求項25】
前記反応容器が、ガラスライニングステンレス鋼(SS)、不動態化ステンレス鋼、ハステロイ合金、および類似の合金からなる群から選択される、請求項16に記載の製造法。
【請求項26】
前記反応容器がハステロイ276反応器またはSS(316)反応器から選択される、請求項16に記載の製造法。
【請求項27】
前記アロステリックエフェクター化合物が、下記の式
【化6】

(式中、
XとZは、CH2、CO、NH、およびOからなる群から独立的に選択され、Yは、COおよびNHからなる群から選択され、但しXとYとZは互いに異なっていなければならず;
R5とR6は、水素、ハロゲン、未置換C1-12アルキル基、置換C1-12アルキル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、未置換芳香族基、置換芳香族基、未置換ヘテロ芳香族基、置換ヘテロ芳香族基、およびR5とR6を連結している脂肪族環の一部であるアルキル部分からなる群から独立的に選択され;
R7は、水素;ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択されるカチオン性の対イオン;金属;未置換C1-6アルキル基;ならびに置換C1-6アルキル基;からなる群から選択され;そして
R8-12は、水素、ハロゲン、未置換C1-3アルキル基、置換C1-3アルキル基、およびR8-12部位のうちの2つを組み込んでいる芳香族環もしくは脂肪族環のアルキル部分からなる群から独立的に選択される)を有する化合物の群から選択される、請求項16に記載の製造法。
【請求項28】
前記アロステリックエフェクター化合物が、下記の化学構造
【化7】

(式中、
R5とR6は、水素、ハロゲン、未置換C1-12アルキル基、置換C1-12アルキル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、未置換芳香族基、置換芳香族基、未置換ヘテロ芳香族基、置換ヘテロ芳香族基、およびR5とR6を連結している脂肪族環の一部であるアルキル部分からなる群から独立的に選択され;
R7は、水素;ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択されるカチオン性の対イオン;金属;未置換C1-6アルキル基;ならびに置換C1-6アルキル基;からなる群から選択され;そして
R8-12は、水素、ハロゲン、未置換C1-3アルキル基、置換C1-3アルキル基、およびR8-12部位のうちの2つを組み込んでいる芳香族環もしくは脂肪族環のアルキル部分からなる群から独立的に選択される)を有する化合物の群から選択される、請求項27に記載の製造法。
【請求項29】
R5とR6がHまたはCH3から独立的に選択され、R7が水素またはカチオン性対イオンから選択される、請求項28に記載の製造法。
【請求項30】
前記アロステリックエフェクター化合物が、式
【化8】

(式中、Xは、H;ならびに、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択されるカチオン性対イオン;からなる群から選択される)で示される2-[4-((((3,5-ジメチルフェニル)アミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸(エファプロキシラル)(5)である、請求項28に記載の製造法。
【請求項31】
前記製造法が、メチルイソブチルケトン;酢酸イソプロピル;酢酸エチル;メチルエチルケトン;およびクロロホルムと塩化メチレンからなる群から選択される塩素化溶媒;からなる群から選択される溶媒で工程(c)の生成物を少なくとも1回抽出することをさらに含む、請求項16に記載の製造法。
【請求項32】
前記抽出を2回行う、請求項31に記載の製造法。
【請求項33】
前記製造法が、工程(c)の生成物を適切な溶媒中にて再結晶することをさらに含む、請求項16に記載の製造法。
【請求項34】
前記溶媒が、エタノール、アセトン、アセトン/エタノールの混合物、アセトン/メタノールの混合物、およびエタノール/メタノール/アセトン/水の混合物からなる群から選択される、請求項33に記載の製造法。
【請求項35】
前記製造法が、工程(c)の生成物を適切な溶媒で抽出すること、次いで抽出した生成物を再結晶することをさらに含む、請求項16に記載の製造法。
【請求項36】
前記製造法が、工程(c)の生成物を適切な溶媒で抽出すること、次いで抽出した生成物を再結晶し、再結晶した生成物を濾過することをさらに含む、請求項16に記載の製造法。
【請求項37】
前記濾過を、ポリ(二フッ化ビニリデン)(PVDF)フィルターとセルロースエステルフィルターからなる群から選択されるポリマーフィルターを使用して行う、請求項36に記載の製造法。
【請求項38】
前記ポリマーフィルターがPDVFである、請求項37に記載の製造法。
【請求項39】
請求項16に記載の製造法にしたがって製造される物品。
【請求項40】
請求項35に記載の製造法にしたがって製造される物品。
【請求項41】
請求項36に記載の製造法にしたがって製造される物品。
【請求項42】
ポリマー不純物を実質的に含有しない、アロステリックエフェクター化合物であるエファプロキシラル-Naの組成物の製造法であって、
(a) 4-ヒドロキシフェニル酢酸の溶液と3,5-ジメチルアニリンとを反応させてアミドフェノールを生成させる工程;
(b) 工程(a)の生成物と2-ブロモイソ酪酸エチルとを反応させてエチルエステルを生成させる工程;および
(c) 工程(b)の生成物をケン化してカルボン酸塩を生成させる工程;
を含み、このとき全ての工程を、ポリマー副生物の形成を促進する金属類を含有しない反応容器中にて行う、前記製造法。
【請求項43】
前記反応容器が、ハステロイ276反応器、SS(316)反応器、またはガラスライニングSS反応器から選択される、請求項42に記載の製造法。
【請求項44】
前記方法が、メチルイソブチルケトン;酢酸イソプロピル;酢酸エチル;メチルエチルケトン;およびクロロホルムと塩化メチレンからなる群から選択される塩素化溶媒;からなる群から選択される溶媒で工程(c)の生成物を少なくとも1回抽出することをさらに含む、請求項42に記載の製造法。
【請求項45】
前記抽出を2回行う、請求項44に記載の製造法。
【請求項46】
前記製造法が、工程(c)の生成物を適切な溶媒中にて再結晶することをさらに含む、請求項42に記載の製造法。
【請求項47】
前記溶媒が、エタノール、アセトン、アセトン/エタノールの混合物、アセトン/メタノールの混合物、およびエタノール/メタノール/アセトン/水の混合物からなる群から選択される、請求項46に記載の製造法。
【請求項48】
前記製造法が、工程(c)の生成物を適切な溶媒で抽出すること、次いで抽出した生成物を再結晶し、再結晶した生成物を濾過することをさらに含む、請求項42に記載の製造法。
【請求項49】
前記濾過を、PVDFフィルターとセルロースエステルフィルターからなる群から選択されるポリマーフィルターを使用して行う、請求項48に記載の製造法。
【請求項50】
前記ポリマーフィルターがPVDFフィルターである、請求項449記載の製造法。
【請求項51】
請求項42に記載の製造法にしたがって製造される物品。
【請求項52】
請求項48に記載の製造法にしたがって製造される物品。
【請求項53】
不純物を実質的に含有しないエファプロキシラル-Na(5)化合物の製造法であって、
(a) 4-ヒドロキシフェニル酢酸の溶液と3,5-ジメチルアニリンとを反応させてアミドフェノールを生成させる工程;
(b) 工程(a)の生成物と2-ブロモイソ酪酸エチルとを反応させてエチルエステルを生成させる工程;
(c) 工程(b)の生成物をケン化してカルボン酸塩を生成させる工程;および
(d) 工程(c)の生成物を適切な溶媒で少なくとも1回抽出する工程;
を含み、このとき全ての工程を、ポリマー副生物の形成を促進する金属類を含有しない反応容器中にて行う、前記製造法。
【請求項54】
不純物がポリマー不純物である、請求項53に記載の製造法。
【請求項55】
前記ポリマー不純物が組成物中に約100ppm未満の量にて存在する、請求項54に記載の製造法。
【請求項56】
請求項53に記載の製造法にしたがって製造される物品
【請求項57】
不純物を実質的に含有しないエファプロキシラル-Na(5)化合物の製造法であって、
(a) 4-ヒドロキシフェニル酢酸の溶液と3,5-ジメチルアニリンとを反応させてアミドフェノールを生成させる工程;
(b) 工程(a)の生成物と2-ブロモイソ酪酸エチルとを反応させてエチルエステルを生成させる工程;
(c) 工程(b)の生成物をケン化してカルボン酸塩を生成させる工程;
(d) 工程(c)の生成物を適切な溶媒で少なくとも1回抽出する工程;および
(e) 工程(d)の生成物を適切な溶媒中にて再結晶する工程;
を含み、このとき全ての工程を、ポリマー副生物の形成を促進する金属類を含有しない反応容器中にて行う、前記製造法。
【請求項58】
工程(d)の溶媒がMIBKであり、工程(e)の溶媒がエタノールおよび/またはアセトンから選択される、請求項57に記載の製造法。
【請求項59】
前記ポリマー不純物が組成物中に約100ppm未満の量にて存在する、請求項57に記載の製造法。
【請求項60】
請求項57に記載の製造法にしたがって製造される物品。
【請求項61】
不純物を実質的に含有しないエファプロキシラル-Na(5)化合物の製造法であって、
(a) 4-ヒドロキシフェニル酢酸の溶液と3,5-ジメチルアニリンとを反応させてアミドフェノールを生成させる工程;
(b) 工程(a)の生成物と2-ブロモイソ酪酸エチルとを反応させてエチルエステルを生成させる工程;
(c) 工程(b)の生成物をケン化してカルボン酸塩を生成させる工程;
(d) 工程(c)の生成物を適切な溶媒で少なくとも1回抽出する工程;および
(e) 工程(d)の生成物を適切な溶媒中にて再結晶する工程;および
(f) ポリマー不純物を除去するフィルターで工程(e)の生成物を濾過する工程;
を含み、このとき全ての工程を、ポリマー副生物の形成を促進する金属類を含有しない反応容器中にて行う、前記製造法。
【請求項62】
工程(d)の溶媒がMIBKであり、工程(e)の溶媒がエタノールおよび/またはアセトンから選択され、工程(f)のポリマーフィルターがPVDFフィルターである、請求項61に記載の製造法。
【請求項63】
工程(d)の溶媒がMIBKであり、工程(e)の溶媒がエタノールおよび/またはアセトンから選択され、工程(f)のポリマーフィルターが改質セルロースフィルターである、請求項61に記載の製造法。
【請求項64】
請求項62に記載の製造法にしたがって製造される物品。
【請求項65】
アロステリックヘモグロビン修飾体化合物を含んだ組成物の分析法であって、
(a) 前記組成物を熱分解する工程;および
(b) 前記熱分解生成物をガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(GC/MS)によって分析する工程;
を含む前記分析法。
【請求項66】
工程(a)の前に、組成物に内部標準を加える工程をさらに含む、請求項65に記載の分析法。
【請求項67】
前記内部標準を同位体で標識付けする、請求項66に記載の分析法。
【請求項68】
前記内部標準を、水素、炭素、酸素、および窒素からなる群から選択される原子の同位体で標識付けする、請求項67に記載の分析法。
【請求項69】
前記同位体が、重水素(D)、炭素13(13C)、酸素18(18O)、および窒素15(15N)からなる群から選択される、請求項67に記載の分析法。
【請求項70】
前記の同位体標識付けされた内部標準が重水素化PEMである、請求項67に記載の分析法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2007−534691(P2007−534691A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509685(P2007−509685)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/013876
【国際公開番号】WO2005/102305
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(504380286)アロス・セラピューティクス・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】